地上に“人工太陽”をつくる挑戦が、着実に前進しています。日欧が共同で茨城県那珂市に建設した世界最大級の核融合実験装置「JT-60SA」で、プラズマを安定して維持するための重要部品「高速プラズマ位置制御コイル(FPPC)」2体が完成しました。2026年から始まる予定の本格実験に向け、人工太陽実現への期待がさらに高まっています。
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■ 太陽の仕組みを地上で再現する「人工太陽」
太陽内部構造図 ©Kelvinsong
核融合は、太陽の内部で起きている反応を地上で再現し、エネルギーとして利用しようとする技術です。水素の原子核同士を高温の「プラズマ」状態にして融合させることで膨大なエネルギーを得るため、「地上の太陽」「人工太陽」とも呼ばれています。
燃料は海水由来で枯渇しにくく、二酸化炭素も排出しない次世代エネルギーとして、世界の研究機関が激しく競い合っています。
■ 世界最大級プラズマを安定させる“心臓部”が完成
建設中のJT-60SA 出典:Michel Maccagnan
JT-60SAは、ドーナツ状の真空容器の中に強力な磁場をつくり、そこに超高温プラズマを閉じ込める「トカマク型」と呼ばれる人工太陽装置です。2023年には初のプラズマ生成に成功し、世界最大となる体積約160立方メートルのプラズマを約10秒間維持しました。
しかし、人工太陽の最大の課題は、プラズマが非常に不安定で形が崩れやすいことです。そこで新たに追加されたのが、今回完成した直径約8メートルの銅製コイル「FPPC」です。このコイルに最大5,000アンペアの電流を高速制御して流すことで、
- プラズマの位置を微調整
- 形状の乱れを瞬時に修正
- 崩壊を防ぎ安定状態を維持
といった、人工太陽の“舵取り役”を担います。しかも真空容器の内部という極めて狭い空間で、直径8メートルの巨大コイルを±2mmの精度で組み上げるという、世界的にも前例の少ない難工事を成功させました。
■ 国際核融合炉「ITER」にも技術を還元
国際熱核融合実験炉「ITER」©Oak Ridge National Laboratory
JT-60SAで培われた技術は、南フランスで建設が進む国際熱核融合実験炉「ITER」にも応用されます。ITERは“国際版・人工太陽”とも呼ばれる超大型計画で、今回のコイル技術がその内部コイル製作にも貢献する見通しです。今後、JT-60SAでは
- プラズマ電流 550万アンペア級
- プラズマ維持時間 100秒を目標
- AIを活用した自動プラズマ制御も検証
といった次のステップに挑みます。QSTの担当者は、「AI普及で電力需要が増える中、人工太陽は世界的に重要な研究テーマ。将来の実用炉に向けた大きな礎になる」と期待を語っています。人工太陽の実現まではまだ道半ばですが、今回の成果はそのゴールへ向けた確かな一歩と言えそうです。
皆さんは、核融合による“人工太陽エネルギー”が未来の主力電源になると思いますか?ぜひコメントお待ちしています。