[温故知新 TOP]
↓ あらゆる時を示す六十四卦 上経(乾~謙)~ 、六十四卦 下経(豫~離)~ 、易経百科事典

竹村亞希子の出版物 
上経(乾~謙) 、下経(豫~離)

『易経』はやわかり 

1.易経とは

歴史

『易経』は易占いのテキストです。 書物としての歴史は大変古く、エジプトのパピルス文書と肩を並べる東洋最古の書物です。『易』という根本的な書物にはじまり、周の時代に解釈が大きく発展した『周易』を基に、現代に読みつがれている『易経』の体裁になりました。

『易』の本文は、暗示的、抽象的な短い辞(卦辞、爻辞)が記されただけのもので、用いられる時代によって、さまざまな解釈が必要でした。その結果、長い歴史を経て、多くの優れた賢人、学者の手による解釈文が加えられました。

著者については、あまりに発祥が古いため誰が最初を記し、また誰がその後の解釈書を記したかもさだかではありません。『漢書芸文志』に易の作者について、「人は三聖を更え世は三古を歴たり」とあります。三聖とは、伏羲、文王、孔子のことで、伏羲は古代の伝説上、神、賢人と崇められる人物です。

この伏羲が陰陽を唱え、周の文王が本文を記し、孔子が解釈書をまとめたとされていますが、あくまでも伝説であり、歴史的事実ではないといわれています。

占いの書、学問の書

『易経』は、学ぶべき書物として多面的な特徴をもつています。

  • 占いのテキスト
  • 哲学書
  • 儒教の経典
  • 処世術・智恵の書
  • 道の書

多くの学者によって解釈がなされたことで、占いの書にとどまらず、学問・智慧の書としての側面をもつようになったのです。

四書五経の筆頭にあげられる儒教の経典であり、そして「帝王学の書」、「智慧の書」、「哲学・倫理」という多彩な分野に用いられてきました。「君子占わず」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。これは、荀子が「よく易を修める者は占わず」といったことに由来します。よく易を学んだならば、占わなくても先々を知り、行動の出処進退を判断することができるという意味です。

易経は、時について説き、そして兆しについて言及している書物です。物事が起こる微かな兆しを示すだけではなく、いかにすれば禍を避け得るかが、書いてあります。学ぶことによって、時の変化を知り、禍の兆しを察し、未然にそれを避けるということを実践していけるようになります。そして、禍を避けるのみならず、物事を見事に仕上げていく方法も書いてある、処世の智慧に満ち満ちた実用書なのです。

「易」と「易経」、呼び方はどちらでもいいのですが、ここでは根本となる文献を「易」といい、体裁が整った後、儒教の経典として四書五経にあげられ、現在まで読まれている書物を『易経』と区別します。

2.変化の書・時の専門書

「易」という字は十二時虫と呼ばれる蜥蜴の意味といわれています。光の変化によって日に十二回、体の色を変えることから「易わる」、変化を意味します。『易経』は英語訳では『book of changes』、直訳すると「変化の書」です。つまり、「変化」について説かれた書物なのです。 では、変化するものとは何でしょう?それは「時」です。 『易経』は常に時、時、時と説く、時の専門書といえます。 書いてある内容をニュアンスをつかんでもらうために要約すると、「春が来て、夏が来て、その次に秋が来て、冬になる。そして冬の次には新たな春が来る」と書いてあります。 自然の変化に則した、この世の中の時の変化変遷の法則を説いているのです。 この変化の法則をわかりやすくあらわした「易の三義」というものがあります。

変化の定義「易の三義」

「易」には一字に、変易、不易、易簡(簡易)三つの意味があります。これを「易の三義」といいます。

「変易」とは・・・
森羅万象、すべてひと時たりとも変化しないものはない。
「不易」とは・・・
変化には必ず一定の不変の法則性がある。
「易簡」とは・・・
その変化の法則性を我々人間が理解さえすれば、天下の事象も知りやすく、分かりやすいものになる。

私たちは生々流転して、常に変化して止まない「時」の中で生きています。宇宙は刻々と変化して止まず、時はめぐり巡って、すべての物事は変化しつづけ、ひと時たりとも同じ時はありません。これが変易です。

しかし、変化の中には一定の不変の法則があります。一年は春夏秋冬、一日は朝昼夜と時がめぐり、春の次に一足飛びに秋が来たり、朝が急に夜になることはありません。 そして必ず、春夏秋冬は一年を、朝昼晩は一日を循環して、絶えずめぐっていきます。昼と夜、夏と冬が交互に入れ替わって、順序を違えることなく変化します。これを不易といいます。

易簡(簡易)は、容易い、分かり易いという意味です。小宇宙である私たちの人生の時も変易、不易にのっとって変化していきます。この変化の法則にならったならば、私たちが遭遇するあらゆる時も理解しやすく、スムースに運ぶというのです。

時間・空間・立場

ひとことに「時」といってきましたが、易経の「時」とは、「時・処・位」をいいます。

時間だけでなく、空間、場所、状況や立場・地位をも含んでいます。 人生という舞台の一場面と考えていただけるといいでしょう。苦しみの時、喜びの時、戦いの時、止まる時。人生にはさまざまな時があります。その場面においての時の意義、内容、勢い、変遷過程をあらわしているのです。

易経は自然の変化と、人生の時を照らし合わせて考察できるように、人生で遭遇するであろう、ありとあらゆる六十四種類の「時」を例にあげ、その変化過程を解き明かしています。


3.陰陽の考え方

(図1) 易の根底にあるのは陰陽の概念です。春夏秋冬がなぜめぐるのかというと、夏(陽)と冬(陰)が入れ替わり変化すればこそ、循環していくという考え方です。
(図1)
易は宇宙の変化を象るために、すべてのものが陰と陽で成り立っていると考えました。そして、陰陽は互いに相反しながらも、交ざり合おうとして大きな循環をおこし、あらたな進化をするとしています。
八卦太極図(図2)は易の構成図です。陰は--、陽は―という記号(爻)であらわします。まずはじめに「太極」をおき、そこから陰陽が生じるとしました。太極とは、陰陽に分かれる前の混沌とした宇宙の始まりと考えてください。右も左も縦も横もない、有も無もないものです。そこから陰陽の両極は発生するとして、便宜的に消極を陰、積極を陽として、正反対の特徴に分けます。

+は陽、-は陰、天と地では天は陽、地は陰、強いは陽、弱いは陰になります。

〈陰〉- 地 夜 悪 邪 止 弱 柔 小 月 寒 女
〈陽〉+ 天 昼 善 正 動 強 剛 大 日 暑 男

陰と陽は一体のもの

陰陽の考え方のまず大事なポイントは、陰と陽は別々のものではないということです。これをおさえておくと、『易経』が理解しやくすなります。
はじめにおいた太極は大きくは宇宙ですが、一つの物、事象とも考えられます。
一つのものに、陰の面と陽の面があるという考え方です。
太極はあらゆるものに置き換えてみることができます。たとえば、自然界を大きく陰陽に分けると、天(陽)と地(陰)です。 手をみてください。手を太極として、手の甲を表(陽)とするならば、手のひらは裏(陰)です。このようにさまざまなものを陰陽を分けます。一人の人間も正(陽)と邪(陰)の二つの側面を持ち合わせています。長所(陽)だけで短所(陰)のない人などいません。おなじく、どんな人にも正と邪の両面があります。
天候も晴れれば陽、雨なら陰になります。ですから、陰のグループ、陽のグループというような、横のつながりは全く関係がありません。善(陽)と悪(陰)、夏(陽)と冬(陰)、だからといって、冬は悪にはならないのです。

転化と成長

陰陽は転化します。たとえば、母親と息子の場合、性別としてみた場合は、息子が陽で母親が陰になります。長幼の序としてみると母親が陽で息子が陰になります。では、大地のように慈しみ育む面からみると母親が陰で息子は陽になります。一つのものを強い(陽)か、弱い(陰)に判断するとしても、視点や状況が変われば転化します。
何が陰で何が陽かと固定するのは、卵が先か、にわとりが先かを論ずるようなもの。固定して決まっているわけではなく、陰陽は変幻自在なのです。あくまでも、一つの対象をある視点から見たときの便宜的な判断です。
そして陰と陽はつねに対立しあって、対になって作用します。そこからすべての変化が生じます。夜があるから昼がある、不在があるから存在があり、静があるから動があります。
一年は、冬から夏へと向かい、夏はまた冬へと向かい、転化して作用しあって春夏秋冬がめぐります。
また、陰陽は変化して循環するだけでなく、交ざり合うことで新たなものを生む進化をします。自然界は天から雨や陽射しが大地に降り注ぎ、人間や動植物を育みます。男女が交わって、新しい生命が誕生します。人は正と邪の内面の葛藤があってこそ、精神的成長をするものです。これが易経の根底にある陰陽の概念です。


4.八卦の成り立ち

易経は全部で六十四の卦で構成されています。「卦(か)」というのはある時の様相をあらわし、人生で遭遇するであろう、あらゆる時を示しています。易の特徴は、陰陽六本の爻で示された卦の記号(象)があり、そのかたちから読みとった時の様相が辞で記されていることです。

六十四卦の象の成り立ちは、まず八卦太極図を見てください。

易経に「この故に易に太極あり。これ両儀を生ず。 両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず。」(繋辞上伝)とあります。

太極から陰陽二つにわかれ、次に四つ象(老陽・少陽・老陰・少陰)にわかれ、さらに分裂して三本の爻からなる八種類の象(八卦)になります。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と耳にしたことがある でしょう。古代の原型的な易占いはこの八卦で判断していました。

八卦には、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」(けん・だ・り・しん・そん・かん・ごん・こん)の名まえがついています。これらの性質を自然現象にたとえると、「天・沢・火・雷・風・水・山・地」 (てん・たく・か・らい・ふう・すい・さん・ち)になります。それぞれが象徴する属性、性質があります。占いでは、この属性を参考に時・処・位を読みとっていきます。


5.あらゆる時をしめす六十四卦

さて、八卦だけでは、時の詳細をあらわすには大まかすぎるので、八卦太極図をより進め広げて、六十四卦にしました。一つの卦は、三本の爻の八卦を上下二つに重ねた、陰陽の六本の爻で成り立っています。 この記号を卦のかたちという意味で「卦象」といいます。

卦辞はある時の全体像をあらわし、爻辞は六本各爻について記し、変遷を説いています。

八卦の属性やかたちから六十四卦にはそれぞれ、全体的な時の様相を示す名称がついています。六十四卦早見表は、縦の八卦と横の八卦の組み合わせでみます。

たとえば、自然現象からあらわす時を読みとれるものもあります。山(艮)と天(乾)の山天大畜の卦は、「山の中に健やかな天の気を蓄えるような、大いなる蓄積の時」をあらわしています。また、火風鼎の卦は、卦象が鼎(食べ物を煮るための足つきの鍋)のかたちをしていることから名づけています。

乾(天)と兌(沢)は、天沢履という卦です。

履とは「踏む」の意。「虎の尾を踏む」のことわざの出典の卦です。 上下が同じ八卦である、乾(天)と乾は八卦の名称と自然現象を組み合わせ、乾為天という卦になります。同じく坤(地)と坤は坤為地といいます。

易 六十四卦索引表(※クリックすると易経の本文が見られます)
坤 艮 坎 巽 震 離 兌 乾
地天泰 山天大畜 水天需 風天小畜 雷天大壮 火天大有 沢天夬 乾為天
地澤臨 山沢損 水沢節 風沢中孚 雷沢帰妹 火沢睽 兌為沢 天沢履 兌
地火明夷 山火賁 水火既済 風火家人 雷火豊 離為火 沢火革 天火同人 離
地雷復 山雷頤 水雷屯 風雷益 震為雷 火雷噬嗑 沢雷随 天雷无妄 震
地風升 山風蠱 水風井 巽為風 雷風恒 火風鼎 沢風大過 天風姤 巽
地水師 山水蒙 坎為水 風水渙 雷水解 火水未済 沢水困 天水訟 坎
地山謙 艮為山 水山蹇 風山漸 雷山小過 火山旅 沢山咸 天山遯 艮
坤為地 山地剥 水地比 風地観 雷地豫 火地晋 沢地萃 天地否 坤

6.爻の見方

中と正

(図4)陰陽の爻の位置には、中と正があります。

中は、上下八卦のそれぞれ真ん中の二爻と五爻をいいます。

初爻から上爻までを数字で数え、初、三、五爻の奇数で陽、二、四、上爻は偶数で陰としています。奇数の位に陽の爻があれば、正、陰の爻であったら、不正といいます。(図4)一般にその時の立場にあった出処進退ができているかどうか、などの判断基準になります。 多くは正は吉、不正は凶になります。中庸を重んじる易では、中にあたる二爻と五爻が正である場合は、ほとんどが吉と記されます。

火水未済と水火既済の卦を例にあげました。火水未済はすべての爻が不正です。逆に水火既済はすべてが正です。ここから、火水未済はまだ何もなっていない未完成の時をあらわし、水火既済は完成の時をあらわす卦です。

応と比

(図5)爻は応じあう、親しむ関係をもしめしています。人間関係などを判断するときに応と比をみます。応は、初爻と四爻、二爻と五爻、三爻と上爻が持っている相応関係で、本来の相手をあらわします。この対応が一方が陰、一方が陽ならば、「正応」で助け応じあい、陽と陽、陰と陰では応じない「不応(敵応)」の関係になります。(図5) 比は、隣り合わせの爻の関係をいいます。陰と陽であれば、親しく助け合う関係であり、比するといいます。 応は夫婦、師弟、上司と部下など本来応じあうべき関係です。比は親友、兄弟姉妹、同僚、同士という関係です。 比よりも重要なのは正応の相手であり、結ぶべきは、比の関係よりも正応の関係です。


7.易経の術語

吉凶悔吝咎なし

吉凶悔吝咎なしの図易経の辞には、吉・凶・悔・吝・咎なしという言葉が出てきます。

「吉」は良し。

「凶」は悪い。

「悔」は後悔することになる。

「吝」は吝嗇、改めることを厭がり行きづまる。

「悔」「吝」は進むべき道から外れるきっかけとなるごくわずかな傷であり、吉凶禍福の兆しです。

「悔」は吉→福(幸い)の兆し。

「吝」は凶→禍(災い)の兆し。

「悔」は後悔することで本文には「悔いあり」、「悔いなし」と記されます。

「吝」は失敗や過ちに気づいても、改めることをケチって惜しむこと。「吝なり」と記されます。

「咎なし」は咎めがあるようなことがあるが、咎めは受けない。禍をあやうく回避できるということです。

吉凶悔吝咎なしの図

この「吉・凶・悔・吝」は人の心と行動のめぐりをあらわしています。

凶→悔→吉→吝→凶→悔→吉

「凶」~ 失敗して気付き、

「悔」~ 気付いて後悔し、過ちを改めれば吉になる。

「吉」~ 吉になると人はつい油断して、楽しみを貪るようになる。

「吝」~ 知らず知らずのうちに奢りが出て、注意信号が点滅しても侮り、 過ちを改めるのを惜しみ、ぐずぐずとしている内に悪い方向へ向かい、凶となる。

「凶」~ 凶になって初めて悔い改める。

という巡りです。

九と六

爻辞のはじめに初六、九二、六三という爻の順と九か六の組み合わせが記されています。

九は陽、六は陰という意味です。初六は初爻が陰爻、九二は二爻が陽爻であることをしめしています。

時義・時用・時中

「時義」はその卦の時の意義。

「時用」は苦しい時、困難な時をあらわす卦に記されます。あまり用いたくない時をあえて用いるという意味です。

「時中」は中庸と同じ意味で、「時に中る」時の本質、中心を鋭く射抜くことをいいます。「時中」は、易経の教えの真髄といえます。


8.易経の構成

吉凶悔吝咎なし

易経は「経」と呼ばれる本文と「伝」と呼ばれる注釈と解説で構成されています。

本文は六十四卦を上経と下経に分け、上経は三十卦、下経は三十四卦です。

「経」には「卦辞」と「爻辞」が記されています。

「伝」(解説)はその本文の解釈を十の翼で助けるという意味で「十翼」といいます。

解説・注釈としてのちに書き加えられたのがこの十翼です。

「上彖伝」・「下彖伝」「上象伝」・「下象伝」・「繋辞上伝」・「繋辞下伝」・「文言伝」・「説卦伝」・「序卦伝」・「雑卦伝」の全部で十伝です。

易経は、まず六十四卦それぞれについて記された、「卦辞」、「爻辞」の本文と、その解説である十翼「上彖伝」、「下彖伝」、「上象伝」、「下象伝」で構成されています。純粋な陽の卦である乾為天と、純粋な陰の卦である坤為地には、「文言伝」が加わります。

「繋辞上伝」、「繋辞下伝」、「説卦伝」、「序卦伝」、「雑卦伝」は六十四卦の後にそれぞれ独立してまとめられています。

この伏羲が陰陽を唱え、周の文王が本文を記し、孔子が解釈書をまとめたとされていますが、あくまでも伝説であり、歴史的事実ではないといわれています。

卦辞

卦の全体の内容。その「時」の全体像。彖辞ともいいます。

爻辞

六本の各爻にかかる辞で、その「時」、シチュエーションの六段階の変遷過程。立場、時間的経過、環境、状況の詳細をあらわしています。乾為天と坤為地の二卦には、六爻だけでなく、用九(陽の用い方)、用六(陰の用い方)が加わります。

クリックすると易経の本文が見られます

十翼(本文の解説・注釈)

彖伝(上・下)

卦辞(彖辞)の解説。六本の爻を組み合わせたかたち、卦象などから卦の意味を解説します。「彖に曰く」と始まるのが、「彖伝」の部分です。

象伝(上・下)

「大象」と「小象」の二つに分けられ、「大象」は卦辞の解説。「彖伝」の解説とはやや異なり、地と雷など八卦の組み合わせから、道徳的、政治的な解説をしています。

「小象」は、爻辞の解釈で各爻の意味、位置と他の爻との関わりなどを説いています。

どちらも「象に曰く」と始まるのが「象伝」です。

繋辞伝(上・下)

易経の概論を哲学として高め、解説したもの。「兆し」に言及しているのが、繋辞伝です。

この伝に記される「形而上者謂之道、形而下者謂之 器」[形而上なるもの、これを道といい、形而下なるもの、これを器という]の一文が「形而上学」(メタフィジックス)の語源といわれています。

文言伝

六十四卦のうち、純粋な陽と純粋な陰の卦である、乾為天と坤為地にとくに重きをおき、詳細を述べたもの。二卦だけに付けられた解説です。

序卦伝

六十四卦には配列順がありますが、その配列の意味を説明したものです。

説卦伝

易経の概論と八卦が象徴する自然現象、天・沢・火・雷・風・水・山・地のほか、該当するあらゆる事物を上げています。

雑卦伝

六十四卦のそれぞれの様相を短く要約してあらわしたものです。


9.占筮の心得

易占いをする前に次のような心得が大切です。

占う事柄は出来るだけ具体的に絞ること。
占筮は、問題を充分に考え、客観的な条件も考慮に入れて自分なりに検討します。 「私の人生はどうですか」と占ったとしても、何も出ません。占う事柄を具体的に細かく、的を絞ります。絞れば絞るほど当たりやすいです。何を占うのかを突き詰めて考えて、占う事柄の的(占的)を絞ることです。何が問題なのかを冷静によく考えて頭を整理することです。そうすると占機、占うチャンスがやってきます。問題が煮詰まった時、機が熟した時、本当に答えが切実に必要な時は具体的に答えがでます。占果を得るために必ず必要なことです。
同じことを2度占ってはならない。
「初筮は告ぐ、再三すれば涜る。涜るれば告げず。」という言葉が山水蒙の卦にあります。 答えが気に入らないからといって再筮してはならない。再筮するのはなにがいけないかといったら、精神が汚れます。事実を知りたいという気持ちではなくて、自分に都合のいい答えを知りたい。そのためだったら自分さえも騙すという気持がいけないというのです。
不正なことを占ってはならない。
まず、おもしろ半分に不純な気持で占ってはいけません。悪事について、他人に危害を及ぼすようなこと、私欲に関することは占わない。道理として、すべきことは占うことではありません。たとえば今、育児が大変だから、放棄してもいいかどうか、邪魔者に危害を加えてもいいかどうか、などということです。また、死に関しては占わない。自分や他人の死に関しても占いません。

「五不看」はこんな時は精神集中ができないので、占ってはいけないという五箇条です。

一. 酒を飲んだり、酔ったりしている時に占ってはならない。
酒を飲んで占った場合は、まず当たりません。集中度が少ないからです。
二. 房事の後に占ってはならない。
ぼわんとしているからです。
三. 喧嘩した後に占ってはならない。
かっかとしているから、集中どころではありません。
四. 人込みの中で占ってはならない。だが、熟練者の場合だと、それでも精神集中できる者がいる。精神集中できれば可。
静かになって、気持を落ち着けてできる環境づくりが大切です。ただし、プロの占い師は人ごみの中で集中できるように訓練しています。
五. 苦悶、煩悶を抱いている時に占ってはならない。
パニックになっている状況や苦悶のある時は集中できません。苦悶のある時は一番占いたい時ですが、だいたい集中力がありません。

10. 占筮法

本筮法・中筮法・略筮法

易占いは五十本の竹を削った筮竹を使って占います。本筮法・中筮法・略筮法の3種があります。本筮法を簡略化したものが、中筮法・略筮法です。現代ではほとんどは中筮法か、略筮法によって占います。 50という数字には意味があって、1から10までの数字を奇数は陽で天とし、偶数は陰で地とします。天の数を足すと25、地の数を足すと30、その合計は 55、そこから五行の5を引いて50本としたわけです。

本筮法

  1. 五十本の筮竹は、片方が少し細くなっていて、その細い方を左手に握ります。その中から一本を抜き取ります。
    この一本は筮筒に立てて、太極として使用しません。
  2. 次に握った49本を扇形に少しひろげて、その中ほどあたりから、右手でパッと分けます。
    ※このときに二つの言葉「至誠通天」「至誠無息」を頭に入れておいてください。
    「至誠天に通ず」は、真心を込めて筮を立てれば、必ず天に通じ、易神が正しい卦を立ててくださるということを信じる。これがまず、絶対に必要な精神です。 「至誠息するなし」筮竹をさばくとき、占うべき事柄をじっと心に念じ、そのことをこの額のところ、つまり前頭葉に集中し、軽く目を閉じます。そうしてずうっと息を吐いて、すっかり空っぽにします。そして、もうこれ以上は、と吐き尽くした瞬間、パッと分けます。
  3. 二つに分けたら、右手の方の筮竹は机の上に置き、そこから一本取って、左手の小指と薬指の間に挟みます。
    左手に握っているのが天策、1本挟んだのが人策、机にあるのが地策です。これで天地人の三才が象られます。
  4. 次に天策を四本ずつ数えてゆき、余った策(割りきれる場合は四本を余りとする)を薬指と中指の間にはさみます。次に机上に置いてあった地策をとりあげ、同じように四本ずつ数えて、余りを中指と人さし指の間にはさみます(第三、四営)。
  5. 指にはさんだ策数を合計すると、それは必ず5か9となります。これを第一変といいます。
  6. この5本または9本を除いて、44本~40本の筮竹で、第一変と同じように1~4を繰り返すと、こんどは指にはさむ策数は必ず4か8となります。これが第二変です。
  7. さらにこれを除いて、もう一度繰り返すと指にはさむ策数は、こんども必ず4か8となります。(第三変)
  8. 三変まで行なうと、指にはさんで除いていった策数の合計は、必ず25、21、17、13のいずれかとなり、除かれずに残った策数は24、28、32、36(4の6倍、7倍、8倍、9倍)となります。6は老陰、7は少陽、8は少陰、9は老陽とします。24本、32本残った場合は陰、28本、36本残った場合は陽として、一つの卦の六爻のはじめの初爻が決まります。
  9. あとは同じことを繰り返して、下から順に二爻~上爻と定めてゆきます。一爻を定めるために三変、六爻を定めるためには十八変を必要とするので、十八変筮ともいわれています。

中筮法

中筮法本筮法は十八変でした。中筮法は六変で卦を出す筮法です。

  1. 本筮法1~3までの手順と同じです。
  2. 地策はそのままにして左手の天策を2本ずつ4回で、八本払います。
  3. その余り(割り切れる場合は0本)に、小指にはさんだ一本を加えた数で、老陽、老陰、少陽、少陰(右表参照)を定めます。これを6回行って、初爻から上爻へ、順番に六爻が定まります。これを六変筮法ともいいます。

略筮法

中筮法では一変で一爻を定めますが、略筮法では一変で八卦(小成卦)を定めます。

  1. 中筮法とまったく同じ操作で余りの数を出し、右表にしたがって下卦を定めます。
  2. 2本残ったとすれば、下卦は「兌」です。これをもう一度繰り返して上卦を定めます。 こうして、陽―と陰--の六つの組み合わせによる、ひとつの卦ができたわけです。
  3. 次にそれから該当する爻を見るために、太極、天策、地策、人策まではこれまでと同様ですが、今度は天策を2本ずつ3回の六本払いをして、こんどは左手の天策を六本ずつ数え てゆき、その余りに人策を加えた数が爻を示します。たとえば、5本であったとすれば、五爻が該当の爻です。

11. 簡単にできるコイン占い

初心者でも簡単にできるのがコイン占いです。

手軽な方法ですが、筮法と同じ心構えで占えば、きちんと答えが得られます。

硬貨は「日本国」とある方が表で陽、裏が陰です。

  1. 硬貨を六枚用意します。そのうち一枚は違う種類のものか、しるしをつけてください。
    (よく使うのは、十円玉五枚、百円玉一枚)
  2. 六枚を振り、よくまぜあわせます。
  3. 的をしぼった問いをもって、精神をそれに集中します。
  4. 六枚を下から上へ並べます。
  5. 上三枚(上卦)、下三枚(下卦)をみて、卦をみます。
  6. 六枚のうち種類の違う一枚を変爻とします。
  7. 六十四卦のうち該当する卦の卦辞と、変爻にあたる爻の爻辞を読みます。

変爻・変卦(之卦)

変爻と変卦とは、占ってでた卦が表、変卦が裏にあたります。表面にあらわれたことだけでなく、裏に秘められたこともみるためです。略筮法で三度目に別に筮竹を数えて得た爻が変爻になります。

変爻というのは、変化する爻のことで陽は陰に、陰は陽に変化します。

変爻が変化してできた卦を「変卦(之卦)」といいます。該当する爻の陰陽を逆転させた卦が変卦です。たとえば、略筮法で乾為天の五爻を得た場合、変卦は火天大有になります。

本筮法、中筮法では老陽と老陰が変爻です。これらを陰陽逆転させて変爻、変卦をみます。略筮法は変爻は一つしかありませんが、本筮法・中筮法で得た卦は六爻全部が変爻ということもあり、また変爻がない場合もあります。

主たる変爻は上卦(外卦)の爻をみます。

引用文献




TOP

あらゆる時を示す六十四卦

上経(乾~謙)

乾下乾上 乾為天(けんいてん)

乾下乾上 乾為天(けんいてん)

乾、元亨利貞。

初九。潜龍。勿用。

九二。見龍在田。利見大人。

九三。君子終日乾乾、夕{心|易}若。无咎。

九四。或躍在淵。无咎。

九五。飛龍在天。利見大人。

上九。亢龍有悔。

用九。見羣龍无首。吉。

乾は、元いに亨りて貞しきに利ろし。

初九。潜龍なり。用うるなかれ。

九二。見龍田に在り。大人を見るに利ろし。

九三。君子終日乾乾し、夕べに{心|易}若たり。{厂/萬}うけれども咎なし。

九四。あるいは躍りて淵に在り。咎なし。

九五。飛龍天に在り。大人を見るに利ろし。

上九。亢龍悔あり。

用九。群龍首なきを見る。吉なり。

彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍、以御天。乾道變化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。

彖に曰く、大いなるかな乾元、万物資りて始む。すなわち天を統ぶ。雲行き雨施し、品物形を流く。大いに終始を明らかにし、六位時に成る。時に六龍に乗り、もって天を御す。乾道変化して、おのおの性命を正しくし、大和を保合するは、すなわち利貞なり。庶物に首出して、万国ことごとく寧し。

象曰、天行健。君子以自強不息。

潜龍勿用、陽在下也。見龍在田、徳施普也。終日乾乾、反復道也。或躍在淵、進无咎也。飛龍在天、大人造也。亢龍有悔、盈不可久也。用九、天徳不可爲首也。

象に曰く、天行は健なり。君子もって自強して息まず。

潜龍用うるなかれとは、陽にしてしたに在ればなり。見龍田に在りとは、徳の施し普きなり。終日乾乾すとは、道を反復するなり。あるいは躍りて淵に在りとは、進むも咎なきなり。飛龍天に在りとは、大人の造なるなり。亢龍悔ありとは、盈つれば久しかるべからざるなり。用九は、天徳首たるべからざるなり。

文言曰、元者善之長也。亨者嘉之會也。利者義之和也。貞者事之幹也。君子體仁足以長人。嘉會足以合禮、利物足以和義。貞固足以幹事。君子行此四徳者、故曰、乾元亨利貞。

文言に曰く、元は善の長なり。亨は嘉の会なり。利は義の和なり。貞は事の幹なり。君子は仁を体すればもって人に長たるに足り、会を嘉すればもって礼に合するに足り、物を利すればもって義を和するに足り、貞固なればもって事に幹たるに足る。君子はこの四徳を行う者なり。故に曰く、乾は元亨利貞と。

初九曰、潛龍勿用、何謂也。

子曰。龍徳而隱者也。不易乎世、不成乎名、遯世无悶、不見是而无悶。樂則行之、憂則違之。確乎其不可拔、潛龍也。

九二曰、見龍在田、利見大人、何謂也。

子曰。龍徳而正中者也。庸言之信、庸行之謹、閑邪存其誠、善世而不伐、徳博而化。易曰、見龍在田、利見大人、君徳也。

九三曰、君子終日乾乾、夕{心|易}若、{厂/萬}无咎、何謂也。

子曰、君子進徳脩業。忠信所以進徳也。脩辭立其誠、所以居業也。知至至之、可與幾也。知終終之、可與存義也。是故居上位而不驕、在下位而不憂。故乾乾。因其時而{心|易}、雖危而无咎矣。

九四曰、或躍在淵、无咎、何謂也。

子曰、上下无常、非爲邪也。進退无恆、非離羣也。君子進徳脩業、欲及時也。故无咎。

九五曰、飛龍在天、利見大人、何謂也。

子曰、同聲相應。同氣相求。水流濕、火就燥。雲從龍、風從虎、聖人作而萬物覩。本乎天者親上、本乎地者親下。則各從其類也。

上九曰、亢龍有悔、何謂也。

子曰、貴而无位。高而无民。賢人在下位而无輔。是以動而有悔也。

初九に曰く、潜龍用うるなかれとは、何の謂いぞや。

子曰く、龍徳ありて隠れたる者なり。世に易えず、名を成さず、世を遯れて悶うることなく、是とせられずして悶うることなし。楽しめばこれを行い、憂うればこれを違る。確乎としてそれ抜くべからざるは、潜龍なり。

九二に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、何の謂いぞや。

子曰く、龍徳ありて正中なる者なり。庸言これ信にし、庸行これ謹み、邪を閑ぎてその誠を存し、世に善くして伐らず、徳博くして化す。

易に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、君徳あるなり。

九三に曰く、君子終日乾乾し、夕べに{心|易}若たり、{厂/萬}けれども咎なしとは、何の謂いぞや。

子曰く、君子は徳に進み業を修む。忠信は徳に進む所以なり。辞を修めその誠を立つるは、業に居る所以なり。至るを知りてこれに至る、ともに幾(を言う)べきなり。終わるを知りてこれを終わる、ともに義を存すべきなり。この故に上位に居りて驕らず、下位に在りて憂えず。故に乾乾す。その時に因りて{心|易}る。危うしといえども咎なきなり。

九四に曰く、あるいは躍りて淵に在り、咎なしとは、何の謂いぞや。

子曰く、上下すること常になきも、邪をなすにはあらざるなり。進退することも恒なきも、群を離るるにはあらざるなり。君子徳に進み業を修むるは、時に及ばんことを欲するなり。故に咎なきなり。

九五に曰く、飛龍天に在り、大人を見るに利ろしとは、何の謂いぞや。

子曰く、同声相い応じ、同気相い求む。水は湿えるに流れ、火は燥けるに就く。雲は龍に従い、風は虎に従う。聖人作りて万物観る。天に本づく者は上に親しみ、地に本づく者は下に親しむ。すなわち各各その類に従うなり。

上九に曰く、亢龍悔いありとは、何の謂いぞや。

子曰く、貴くして位なく、高くして民なく、賢人下位にあるも輔くるなし。ここをもって動きて悔あるなり。

潛龍勿用、下也。見龍在田、時舍也。終日乾乾、行事也。或躍在淵、自試也。飛龍在天、上治也。亢龍有悔、窮之災也。乾元用九、天下治也。

潜龍用うるなかれとは、下なればなり。見龍田に在りとは、時舍つるなり。終日乾乾すとは、事を行うなり。あるいは躍りて淵に在りとは、みずから試みるなり。飛龍天に在りとは、上にして治むるなり。亢龍悔ありとは、窮まるの災いあるなり。乾元の用九は、天下治まるなり。

潛龍勿用、陽氣潛藏。見龍在田、天下文明。終日乾乾、與時偕行。或躍在淵、乾道乃革。飛龍在天、乃位乎天徳。亢龍有悔、與時偕極。乾元用九、乃見天則。

潜龍用うるなかれとは、陽気潜蔵すればなり。見龍田に在りとは、天下文明なるなり。終日乾乾すとは、時とともに行うなり。あるいは躍りて淵に在りとは、乾道すなわち革まるなり。飛龍天に在りとは、すなわち天徳に位するなり。亢龍悔ありとは、時とともに極まるなり。乾元の用九は、すなわち天の則を見すなり。

乾元者、始而亨者也。利貞者、性情也。乾始能以美利利天下。不言所利大矣哉。大哉乾乎。剛健中正、純粹精也。六爻發揮、旁通情也。時乘六龍、以御天也。雲行雨施、天下平也。

乾元は、始にして亨るものなり。利貞は性情なり。乾始は能く美利をもって天下を利し、利するところを言わず、大いなるかな。大いなるかな乾や、剛健中正、純粋にして精なり。六爻発揮して、旁く情を通ずるなり。時に六龍に乗じて、もって天を御するなり。雲行き雨施して、天下平らかなるなり。

君子以成徳爲行、日可見之行也。潛之爲言也、隱而未見、行而未成。是以君子弗用也。君子學以聚之。問以辨之。寛以居之。仁以行之。易曰、見龍在田、利見大人、君徳也。

九三、重剛而不中。上不在天、下不在田。故乾乾。因其時而{心|易}。雖危无咎矣。

九四、重剛而不中。上不在天。下不在田、中不在人。故或之。或之者、疑之也。故无咎。夫大人者、與天地合其徳、與日月合其明。與四時合其序。與鬼神合其吉凶。先天而天弗違。後天而奉天時。天且弗違。而況於人乎、況於鬼神乎。

亢之爲言也、知進而不知退、知存而不知亡、知得而不知喪。其唯聖人乎。知進退存亡、而不失其正者、其唯聖人乎。

君子は成徳をもって行ないを為し、日にこれを行ないに見わすべきなり。潜の言たる、隠れていまだ見われず、行ないていまだ成らざるなり。ここをもって君子は用いざるなり。

君子は学もってこれを聚め、問をもってこれを辨ち、寛をもってこれに居り、仁をもってこれを行なう。易に曰く、見龍田に在り、大人を見るに利ろしとは、君徳あるなり。

九三は重剛にして中ならず。上は天に在らず、下は田に在らず。故に乾乾す。その時に因りて{心|易}る。危うしといえども咎なきなり。

九四は重剛にして中ならず。上は天に在らず、下は田に在らず、中は人に在らず。故にこれを或す。これを或すとは、これを疑うなり。故に咎なきなり。

それ大人は、天地とその徳を合わせ、日月とその明を合わせ、四時とその序を合わせ、鬼神とその吉凶を合わす。天に先だちて天違わず、天に後れて天の時を奉ず。天すら且つ違わず、しかるをいわんや人をおいてをや、いわんや鬼神においてをや。

亢の言たる、進を知って退くを知らず、存するを知って亡ぶを知らず、得るを知って喪うを知らざるなり。それただ聖人か。進退存亡を知って、その正を失わざる者は、それただ聖人か。


坤下坤上 坤為地(こんいち)

坤下坤上 坤為地(こんいち)

坤、元亨。利牝馬之貞。君子有攸往、先迷、後得主。利西南朋得。東北喪朋。安貞吉。

象曰、至哉坤元、萬物資生。乃順承天。坤厚載物、徳合无疆、含弘光大、品物咸亨。牝馬地類、行地无疆。柔順利貞、君子攸行。先迷失道、後順得常。西南得朋、乃與類行。東北喪朋、乃終有慶。安貞之吉、應地无疆。

坤は、元いに亨る。牝馬の貞に利ろし。君子往くところあるに、先んずれば迷い、後るれば主を得。西南には朋を得、東北には朋を喪うに利ろし。貞に安んずれば吉なり。

彖に曰く、至れるかな坤元、万物資りて生ず。すなわち順いて天を承く。坤は厚くして物を載せ、徳は无疆に合し、含弘光大にして、品物ことごとく亨る。牝馬は地の類、地を行くこと疆りなし、柔順利貞は、君子の行うところなり。先んずれば迷いて道を失い、後るれば順いて常を得。西南には朋を得とは、すなわち類と行けばなり。東北には朋を喪うとは、すなわち終に慶びあるなり。貞に安んずるの吉は、地の疆りなきに応ずるなり。

象に曰く、地勢は坤なり。君子もって厚徳もて物を戴す。

初六履霜堅冰至。

六二、直方大不習无不利。

六三、含章、可貞或從王事、无成有終。

六四、括、无咎无譽。

六五、黄裳元吉。

上六、龍戰于野、其血玄黄。

用六、利永貞。

初六。霜を履みて堅氷至る。

象に曰く、霜を履みて堅氷(至る)とは、陰のはじめて凝るなり。その道を馴致すれば、堅氷に至るなり。

六二。直・方・大なり。習わざれども利ろしからざるなし。象に曰く、六二の動は、直ににして大なり。習わざれども利ろしからざるなしとは、地道光いなればなり。

六三。章を含みて貞にすべし。あるいは王事に従うも、成すことなくして終わり有り。

象に曰く、章を含みて貞にすべしとは、時をもって発せよとなり。あるいは王事に従うとは知光大なればなり。

六四。嚢を括る。咎もなく誉れもなし。

象に曰く、嚢を括る、咎なしとは、慎めば害あらざるなり。

六五。黄裳、元吉なり。

象に曰く、黄裳元吉なりとは、文中に在ればなり。

上六。竜野に戦う。その血玄黄なり。

竜野に戦うとは、その道窮まればなり。

用六。永く貞しきに利ろし。

象に曰く、用六の永貞は、大をもって終わるなり。

文言曰、坤至柔而動也剛。至靜而徳方。後得主而有常。含萬物而化光。坤道其順乎。承天而時行。

積善之家必有餘慶。積不善之家必有餘殃。臣弑其君、子弑其父、非一朝一夕之故。其所由來者漸矣。由辨之不早辨也。易曰、履霜堅冰至。葢言順也。

直其正也、方其義也。君子敬以直内、義以方外。敬義立而徳不孤。直方大、不習无不利、則不疑其所行也。 陰雖有美、含之以從王事、弗敢成也。地道也、妻道也、臣道也。地道無成、而代有終也。天地變化、草木蕃、天地閉、賢人隱。易曰、嚢括、无咎无譽。葢言謹也。

君子黄中通理、正位居體。美在其中、而暢於四支、發於事業。美之至也。

陰疑於陽必戰。爲其嫌於无陽也、故稱龍焉。猶未離其類也、故稱血焉。夫玄黄者、天地之雜也。天玄而地黄。

文言に曰く、坤は至柔にして動くや剛なり。至静にして徳方なり。後るれば主を得て常あり。万物を含んで化光いなり。坤道はそれ順なるか。天を承けて時に行う。

積善の家には必ず余慶あり。積不善の家には必ず余殃あり。臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず。その由って来るところのもの漸なり。これを弁じて早く弁ぜざるに由るなり。易に曰く、霜を履んで堅氷至ると。蓋し順なるを言えるなり。

直はそれ正なり、方はそれ義なり。君子は敬もって内を直くし、義をもって外を方にす。敬義立てば徳孤ならず。直・方・大なり、習わざれども利ろしからざるなしとは、その行なうところを疑わざるなり。

陰は美ありといえども、これを含んでもって王事に従い、あえて成さざるなり。地の道なり、妻の道なり、臣の道なり。地の道は成すことなくして、代わって終わり有るなり。

天地変化して、草木蕃く、天地閉じて、賢人隠る。易に曰く、嚢を括る、咎もなく誉れもなしと。蓋し謹むべきを言えるなり。

君子は黄中にして理に通じ、正位にして体に居る。美その中に在って、四支に暢び、事業に発す。美の至りなり。

陰の陽に疑わしきときは必ず戦う。その陽なきに嫌わしきために、故に龍と称す。なおいまだその類を離れず、故に地と称す。それ玄黄は、天地の雑わりなり。天は玄にして地は黄なり。


震下坎上 水雷屯(すいらいちゅん)

震下坎上 水雷屯(すいらいちゅん)

屯、元亨利貞。勿用有攸往。利建侯。

彖曰、屯剛柔始交而難生、動乎險中。大亨貞、雷雨之動滿盈。天造艸昧、宜建侯而不寧。象曰、雲雷屯。君子以經綸。

屯は元いに亨りて貞しきに利ろし。往くところあるに用うるなかれ。候を建つるに利ろし。彖に曰く、屯は剛柔はじめて交わりて難生じ、険中に動くなり。元いに亨りて貞なるは、雷雨の動きを満盈すればなり。天造草昧、よろしく候を建つべくしていまだ寧からず。

彖に曰く、雲雷は屯なり。君子もって経綸す。

初九。磐桓。利居貞。利建侯。

象曰、雖磐桓、志行正也。以貴下賤、大得民也。

六二。屯如、{辷<亶}如、乘馬班如。匪冦婚媾。女子貞不字、十年乃字。

象曰、六二之難、乘剛也。十年乃字、反常也。

六三。即鹿无虞。惟入于林中。君子幾不如舎。往吝。

象曰、既鹿无虞、以從禽也。君子舍之、往吝、窮也

六四。乘馬班如。求婚媾往、吉无不利。

象曰、求而往、明也。

九五。屯其膏。小貞吉、大貞凶。

象曰、屯其膏、施未光也。

上六。乘馬班如。泣血漣如。

象曰、泣血漣如、何可長也。

初九。磐桓たり。貞に居るに利ろし。候を建つるに利ろし。

象に曰く、磐桓すといえども、志は正を行なうなり。貴をもって賤に下る、大いに民を得るなり。

六二、屯如たり、{辷<亶}如たり、馬に乗りて班如たり。寇するにあらず、婚媾せんとす。女子貞にして字せず、十年にしてすなわち字す。

象に曰く、六二の難は、剛に乗ればなり。十年にしてすなわち字すとは、常に反るなり。

六三。鹿に即くに虞なく、ただ林中に入る。君子は幾をみて舎むにしかず。往けば吝なり。

象に曰く、鹿に即くに虞なしとは、もって禽に従うなり。君子はこれを舎む。往けば吝なりとは、窮すべければなり。

六四。馬に乗りて班如たり。婚媾を求めて往けば、吉にして利ろしからざるなし。

象に曰く、求めて往くは、明らかなるなり。

九五。その膏を屯らす。小貞なれば吉、大貞なれば凶なり。

象に曰く、その膏を屯らすとは、施すこといまだ光いならざるなり。

上六。馬に乗りて班如たり。泣血漣如たり。

象に曰く、泣血漣如たり、なんぞ長かるべけんや。


坎下艮上 山水蒙(さんすいもう)

坎下艮上 山水蒙(さんすいもう)

蒙、亨。匪我求童蒙。童蒙求我。初筮告。再三{水|賣}。{水|賣}則不告。利貞。

彖曰、蒙、山下有險。險而止蒙。蒙亨、以亨行、時中也。匪我求童蒙、童蒙求我、志應也。初筮告、以剛中也。再三{水|賣}、{水|賣}則不告、蒙也。蒙以養正、聖功也。

象曰、山下出泉蒙。君子以果行育徳。

蒙は亨る。我より童蒙に求むるにあらず。童蒙より我に求む。初筮には告ぐ。再三すれば涜る。涜るれば告げず。貞しきに利ろし。

彖に曰く、蒙は、山下に険あり。険にして止まるは蒙なり。蒙は亨るとは、亨るべきをもって行ない、時中ればなり。我より童蒙に求むるにあらず、童蒙(来りて)我に求むとは、志応ずるなり。初筮には告ぐとは、剛中をもってなり。再三すれば涜る、涜るれば告げずとは、蒙を涜せばなり。蒙をもって正を養うは、聖の功なり。

象に曰く、山下に出泉あるは蒙なり。君子もって行を果たし徳を育う。

初六。發蒙。利用刑人。用説桎梏。以往吝。

象曰、利用刑人、以正法也。

九二。包蒙、吉。納婦、吉。子克家。

象曰、子克家、剛柔接也。

六三。勿用取女。見金夫、不有躬。无攸利。

象曰、勿用取女、行不順也。

六四。困蒙、吝。

象曰、困蒙之吝、獨遠實也。

六五。童蒙、吉。

象曰、童蒙之吉、順以巽也。

上九。撃蒙。不利爲冦。利禦冦。

象曰、利用禦寇、上下順也。

初九。蒙を発く。もって人を刑するに利ろし。もって桎梏を説き、もって往けば吝なり。

象に曰く、もって人を刑するに利ろしとは、もって法を正すなり。

九二。蒙を包ぬ、吉なり。婦を納る、吉なり。子にして家を克む。

象に曰く、子にして家を克むとは、剛柔接わるなり。

六三。女を取るに用うるなかれ。金夫を見れば、躬を有たず。利しきところなし。

象に曰く、女を取るに用うるなかれとは、行い順ならざればなり。

六四。蒙に困しむ、吝なり。

象に曰く、蒙に困しむの吝なるは、独り実に遠ければなり。

六五。童蒙、吉なり。

象に曰く、童蒙の吉なるは、順にして巽なればなり。

上九。蒙を撃つ。寇をなすに利ろしからず。寇を禦ぐに利ろし。

象に曰く、もって寇を禦ぐに利ろしとは、上下順なればなり。


乾下坎上 水天需(すいてんじゅ)

乾下坎上 水天需(すいてんじゅ)

需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。

彖曰、需須也。險在前也。剛健而不陷、其義不困窮矣。需有孚、光亨、貞吉、位乎天位、以正中也。利渉大川、往有功也。

象曰、雲上於天需。君子以飲食宴樂。

需は、孚あり。光いに亨る。貞なれば吉なり。大川を渉るに利ろし。

彖に曰く、濡は須つなり。険前に在るなり。剛健にして陥らず、その義困窮せず。需は孚あり、光いに亨る、貞なれば吉なりとは、天位に位して、もって正中なればなり。大川を渉るに利ろしとは、往きて功あるなり。

象に曰く、雲の天に上るは需なり。君子もって飲食宴楽す。

初九。需于郊。利用恆。无咎。

象曰、需于郊、不犯難行也。利用恆、无咎、未失常也。

九二。需于沙。小有言、終吉。

象曰、需于沙、衍在中也。雖小有言、以終吉也。

九三。需于泥。致冦至。

象曰、需于泥、災在外也。自我致寇、敬愼不敗也。

六四。需于血。出自穴。

象曰、需于血、順以聽也。

九五。需于酒食。貞吉。

象曰、酒食貞吉、以中正也。

上六。入于穴。有不速之客三人來。敬之終吉。

象曰、不速之客來、敬之終吉、雖不當位、未大失也。

初九。郊に需つ。恒を用うるに利ろし。咎なし。

象に曰く、郊に需つとは、難を犯して行かざるなり。恒を用うるに利ろし、咎なしとは、いまだ常を失わざるなり。

九二。沙に需つ。小しく言あれど、終には吉なり。

象に曰く、沙に需つとは、衍にして中に在るなり。小しく言ありといえども、吉をもって終るなり。

九三。泥に需つ。寇の至るを致す。

象に曰く、泥に需つとは、災い外に在るなり。我より寇を致す、敬慎すれば敗れざるなり。

九四。血に需つ。穴より出づ。

象に曰く、血に需つとは、順にしてもって聴うなり。

九五。酒食に需つ。貞なれば吉なり。

象に曰く、酒食の貞吉とは、中正なるをもってなり。

上六。穴に入る。速かざるの客三人来るあり。これを敬すれば終には吉なり。

象に曰く、速かざるの客の来る、これを敬すれば終には吉なりとは、位に当たらずといえども、いまだ大いに失わざるなり。


坎下乾上 天水訟(てんすいしょう)

坎下乾上 天水訟(てんすいしょう)

訟、有孚窒。{心|易}中吉、終凶。利見大人。不利渉大川。

彖曰、訟上剛下險。險而健訟。訟有孚窒、{心|易}中吉、剛來而得中也。終凶、訟不可成也。利見大人、尚中正也。不利渉大川、入于淵也。

象曰、天與水違行、訟君子以作事謀始。

訟は、孚ありて塞がる。{心|易}れて中すれば吉、終われば凶なり。大人を見るに利ろし。大川を渉るに利ろしからず。

彖に曰く、訟は上剛にして下険なり。険にして健なるは訟なり。訟は孚ありて塞がる、{心|易}れて中すれば吉とは、剛来たりて中を得ればなり。終われば凶とは、訟は成すべからざればなり。大人を見るに利ろしとは、中正を尚ぶなり。大川を渉るに利ろしからずとは、淵に入るべければなり。

象に曰く、天と水の違い行くは訟なり。君子もって事を作すに始めを謀る。

初六。不永所事、小有言、終吉。

象曰、不永所事、訟不可長也。雖小有言、其辯明也。

九二。不克訟。歸而逋。其邑人三百戸、无{生/目}。

象曰、不克訟、歸逋竄也。自下訟上、患至{手|(綴-糸)}也

六三。食舊徳、貞{厂/萬}終吉。或從王事、无成。

象曰、食舊徳、從上吉也。

九四。不克訟。復即命。渝安貞吉。

象曰、復即命、渝安貞、不失也。

九五。訟、元吉。

象曰、訟元吉。以中正也

上九。或錫之{般/革}帶。終朝三{衣|(厂/虎}之。

象曰、以訟受服、亦不足敬也。

初六。事とするところを永くせざれば、小しく言あるも、終には吉なり。

象に曰く、事とすることろを永くせずとは、訟は長くすべからさるなり。小しく言ありといえども、その弁明らかなり。

九二。訟に克たず。帰りて逋る。その邑人三百戸なれば、{生/目}いなし。

象に曰く、訟に克たず、帰りて逋れ竄るるなり。下より上を訟う、患いの至ること{手|(綴-糸)}うがごとくなり。

六三。旧徳に食む。貞なれば{厂/萬}けれども終には吉なり。あるいは王事に従うとも、成すことなかれ。

象に曰く、旧徳に食むとは、上に従えば吉なるなり。

九四。訟に克たず。復りて命に即き、渝えて貞に安んれば吉なり。

象に曰く、訟に克たず。復りて命に即き、渝えて貞に安んずとは、失わざるなり。

九五。訟え、元吉なり。

象に曰く、訟え元吉なりとは中正なるをもってなり。

上九。あるいはこれに{般/革}帯を錫わるも、終朝に三たびこれを{衣|(厂/虎}わる。

象に曰く、訟をもって復を受くるは、また敬するに足らざるなり。

坎下坤上 地水師(ちすいし)

坎下坤上 地水師(ちすいし)

師、貞。丈人吉无咎。

彖曰、師衆也。貞正也。能以衆正、可以王矣。剛中而應、行險而順。以此毒天下、而民從之。吉又何咎矣。

象曰、地中有水師。君子以容民畜衆。

師は、貞なり。丈人なれば吉にして咎なし。

彖に曰く、師は衆なり。貞は正なり。能く衆を以いて正しければ、もって王たるべし。剛中にして応じ、険を行ないて順なり。ここをもって天下を毒しめて、しかも民これに従う。吉にして何の咎かあらん。

象に曰く、地中に水あるは師なり。君子もって民を容れ衆を畜う。

初六。師出以律。否臧凶。

象曰、師出以律、失律凶也。

九二。在師中。吉无咎。王三錫命。

象曰、在師中、吉、承天寵也。王三錫命、懷萬邦也。

六三。師或輿尸。凶。

象曰、師或輿尸、大无功也。

六四、師左次。无咎。

象曰、左次、无咎、未失常也。

六五。田有禽、利執言。无咎。長子帥師。弟子輿尸。貞凶。

象曰、長子帥師、以中行也。弟子輿尸、使不當也。

上六。大君有命。開國承家。小人勿用。

象曰、大君有命、以正功也。小人勿用、必亂邦也。

初六。師は出づるに律をもってす。否らざれば臧きも凶なり。

象に曰く、師は出づるに律をもってすとは、律を失えば凶なるなり。

九二。師に在りて中す。吉にして咎なし。王三たび命を錫う。

象に曰く、師に在りて中す、吉なりとは、天寵を承くるなり。王三たび命を錫うとは、万邦を懐くるなり。

六三。師あるいは尸を輿す。凶なり。

象に曰く、師あるいは尸を輿すとは、大いに功なきなり。

六四。師左き次る。咎なし。

象に曰く、左き次る、咎なしとは、いまだ常を失わざればなり。

六五。田して禽あり、言を執るに利ろし。咎なし。長子師を帥ゆべしとは、中行なるをもってなり。弟子なれば尸を輿すとは、使うこと当たらざればなり。

上六。大君命あり。国を開き家を承けしむ。小人は用うるなかれ。

象に曰く、大君命ありとは、もって功を正すなり。小人は用うるなかれとは、必ず邦を乱ればなり。


坤下坎上 水地比(すいちひ)

坤下坎上 水地比(すいちひ)

比、吉。原筮、元永貞、无咎。不寧方來。後夫凶。

彖曰、比吉也。比輔也。下順從也。原筮、元永貞、无咎、以剛中也。不寧方來、上下應也。後夫凶、其道窮也。

象曰、地上有水比。先王以建萬國親諸侯。

比は、吉なり。原ね筮いて、元永貞なれば、咎なし。寧からざるものもまさに来らん。後るる夫は凶なり。

彖に曰く、比は吉なり。比は輔くるなり。下順従するなり。原ね筮いて、元永貞なれば、咎なしとは、剛中なるをもってなり。寧からざるものもまさに来らんとは、上下応ずればなり。後るる夫は凶なりとは、その道窮まればなり。

象に曰く、地上に水あるは比なり。先王もって万国を建て諸侯を親しむ。

初六。有孚比之、无咎。有孚盈缶、終來有它吉。

象曰、比之初六、有它吉也。

六二。比之自内。貞吉。

象曰、比之自内、不自失也。

六三、比之匪人。

象曰、比之匪人、不亦傷乎。

六四。外比之。貞吉。

象曰、外比於賢、以從上也。

九五。顯比。王用三驅失前禽。邑人不誡。吉。

象曰、顯比之吉、位正中也。舍逆取順、失前禽也。邑人不誡、上使中也。

上六、比之无首。凶。

象曰、比之无首、无所終也。

初六。孚ありてこれに比すれば、咎なし。孚ありて缶に盈つるごとくになれば、終に来りて它の吉あり。

象に曰く、比の初六は、它の吉あるなり。

六二。これに比すること内よりす。貞にして吉なり。

象に曰く、これに比すること内よりすとは、みずから失わざるなり。

六三。これに比せんとすれど人に匪ず。

象に曰く、これに比せんとすれど人に匪ず、また傷ましからずや。

六四。外これに比す。貞にして吉なり。

象に曰く、外にありて賢に比し、もって上に従うなり。

九五。比を顕らかにす。王もって三駆して前禽を失う。邑人誡めず。吉なり。

象に曰く、比を顕らかにするの吉なるは、位正中なればなり。逆を舎て順を取る、前禽を失うなり。邑人誡めずとは、上の使うこと中なればなり。

上六。これを比せんとすれど首めなし。凶なり。

象に曰く、これに比せんとすれど首めなしとは、終わるところなきなり。

乾下巽上 風天小畜(ふうてんしょうちく)

乾下巽上 風天小畜(ふうてんしょうちく)

小畜亨。密雲不雨、自我西郊。

彖曰、小畜柔得位而上下應之、曰小畜。健而巽、剛中而志行。乃亨。密雲不雨、尚往也。自我西郊、施未行也。

象曰、風行天上小畜。君子以懿文徳。

小畜は、亨る。密雲あれど雨ふらず、わが西郊よりす。

彖に曰く、小畜は柔、位を得て上下これに応ずるを、小畜と曰う。健にして巽い、剛中にして志行わる。すなわち亨るなり。密雲あれど雨ふらずとは、往くを尚ぶなり。わが西郊よりすとは、施しいまだ行われざるなり。

象に曰く、風天上を行くは小畜なり。君子もって文徳を懿す。

初九。復自道。何其咎。吉。

象曰、復自道、其義吉也。

九二。牽復。吉。

象曰、牽復在中、亦不自失也。

九三。輿説輻。夫妻反目。

象曰、夫妻反目、不能正室也。

六四。有孚。血去{心|易}出。无咎。

象曰、有孚、{心|易}出、上合志也。

九五。有孚攣如。富以其鄰。

象曰、有孚攣如、不獨富也。

上九。既雨既處。尚徳載。婦貞{厂/萬}。月幾望。君子征凶。

象曰、既雨既處、徳積載也。君子征凶、有所疑也。

初九。復ること道による。何ぞそれ咎あらん。吉なり。

象に曰く、復ること道によるとは、その義吉なるなり。

九二。牽きて復る。吉なり。

象に曰く、牽きて復りて中に在り、またみずから失わざるなり。

九三。輿輻を説く。夫妻反目す。

象に曰く、夫妻反目すとは、室を正すこと能わざるなり。

六四。孚あり。血去り{心|易}れ出づ。咎なし。

象に曰く、孚あり。血去り{心|易}れ出づとは、上、志を合わせばなり。

九五。孚ありて攣如たり。富その隣と以にす。

象に曰く、孚ありて攣如たりとは、独り富めりとせざるなり。

上九。既に雨ふり既に処る。徳を尚びて載つ。婦は貞なれども{厂/萬}し。月望に幾し。君子も征けば凶なり。

象に曰く、既に雨ふり既に処るとは、徳積みて載てるなり。君子も征けば凶なりとは、疑わしきところあればなり。

兌下乾上 天沢履(てんたくり)

兌下乾上 天沢履(てんたくり)

履虎尾不咥人。亨。

彖曰、履、柔履剛也。説而應乎乾。是以履虎尾不咥人、亨。剛中正、履帝位而不疚、光明也。

象曰、上天下澤履。君子以辯上下、定民志。

虎の尾を履むも人を咥わず。亨る。

彖に曰く、履は、柔にして剛を履むなり。説びて乾に応ず。ここをもて虎の尾を履むも人を咥わず、亨るなり。剛中正にして、帝位を履みて疚しからず、光明あるなり。

象に曰く、上、天にして下、沢なるは履なり。君子もって上下を弁ち、民の志を定む。

初九。素履。往无咎。

象曰、素履之往、獨行願也。

九二。履道坦坦。幽人貞吉。

象曰、幽人貞吉、中不自亂也。

六三。眇能視、跛能履。履虎尾咥人。凶。武人爲于大君。

象曰、眇能視、不足以有明也。跛能履、不足以與行也。咥人之凶、位不當也。武人爲于大君、志剛也。

九四。履虎尾。愬愬終吉。

象曰、愬愬終吉、志行也。

九五。夬履。{厂/萬}貞。

象曰、夬履、貞{厂/萬}、位正當也。

上九。視履考祥。其旋元吉。

象曰、元吉在上、大有慶也。

初九。素履す。往くも咎なし。

象に曰く、素履の往くは独り願いを行うなり。

九二。道を履むこと坦坦たり。幽人貞にして吉なり。

象に曰く、幽人貞にして吉なりとは、中みずから乱れざればなり。

六三。眇にして能く視るとし、跛にして能く履むとす。虎の尾を履めば咥う。凶なり。武人大君となる。

象に曰く、眇にして能く視るとすとは、もって明あるとするに足らざるなり。跛にして能く履むとすとは、もって行をともにするに足らざるなり。人を咥うの凶は、位当たらざればなり。武人大君となるとは、志のみ剛なるなり。

九四。虎の尾を履む。愬愬たれば終には吉なり。

象に曰く、愬愬たれば終には吉なりとは、志行わるるなり。

九五。夬めて履む。貞なれども{厂/萬}し。

象に曰く、貞なれども{厂/萬}しとは位正しく当たればなり。

上九。履むを視て祥を考う。それ旋るときは元吉なり。

象に曰く、元吉にして上に在るは、大いに慶びあるなり。


乾下坤上 地天泰

乾下坤上 地天泰 (ちてんたい)

泰小往大來。吉亨。

彖曰、泰小往大來吉亨則是天地交而萬物通也。上下交而其志同也。内陽而外陰。内健而外順。内君子而外小人君子道長、小人道消也。

象曰、天地交泰。后以財成天地之道、輔相天地之宜、以左右民。

泰は、小往き大来る。吉にして亨る。彖に曰く、泰は小往き大来る、吉にして亨るとは、すなわちこれ天地交わりて万物通ずるなり。上下交わりてその志同じきなり。内陽にして外陰なり、内健にして外順なり、内君子にして外小人なり。君子は道長じ、小人は道消するなり。象に曰く、天地交わるは泰なり。后もって天地の道を財成し、天地の宜を輔相し、もって民を左右す。

初九。拔茅茹。以其彙。征吉。

象曰、拔茅、征吉、志在外也。

九二。包荒、用馮河、不遐遺、朋亡、得尚于中行。

象曰、包荒、得尚于中行、以光大也。

九三、无平不陂。无往不復。艱貞无咎。勿恤其孚。于食有福。

象曰、无往不復、天地際也。

六四、翩翩不富、以其鄰。不戒以孚。

象曰、翩翩不富、皆失實也。不戒以孚、中心願也。

六五、帝乙歸妹。以祉元吉。

象曰、以祉元吉、中以行願也。

上六、城復于隍、勿用師。自邑告命。貞吝。

象曰、城復于隍、其命亂也。

初九。茅を抜くに茹たり。その彙と以にす。征くも吉なり。

象に曰く、茅を抜く、征くも吉なりとは、志外に在ればなり。

九二。荒を包ね、川を馮るを用い、遐きを遺れず、朋亡ぶれば、中行に尚うを得ん。

象に曰く、荒を包ね、中行に尚うを得んとは、光大なるをもってなり。

九三。平らかなるものにして陂かざるはなく、往くものにして復らざるはなし。艱しみて貞にすれば咎なし。その孚を恤うるなかれ。食において福あらん。

象に曰く、往くものにして復らざるはなしとは、天地の際なればなり。

六四。翩翩として富めりとせず、その隣と以にす。戒めずしてもって孚あるは、中心より願えばなり。

六五。帝乙妹を帰がしむ。もって祉ありて元吉なり。

象に曰く、もって祉ありて元吉なりとは、中をもって願いを行なうなり。

上六。城隍に復る。師を用うるなかれ。邑より命を告げんのみ。貞なれども吝なり。

象に曰く、城隍に復るとは、その命乱るるなり。


坤下乾上 天地否(てんちひ)

坤下乾上 天地否(てんちひ)

否之匪人。不利君子貞。大往小來。

彖曰、否之匪人、不利君子貞、大往小來、則是天地不交而萬物不通也。上下不交而天下无邦也。内陰而外陽、内柔外剛、内小人而外君子。小人道長、君子道消也。 象曰、天地不交否。君子以儉徳辟難。不可榮以祿。

否はこれ人にあらず。君子の貞に利しからず。大往き小来る。

彖に曰く、否はこれ人にあらず、君子の貞に利しからず、大往き小来るとは、すなわちこれ天地交わらずして万物通ぜざるなり。上下交わらずして天下に邦なきなり。内陰にして外陽なり、内柔にして外剛なり、内小人にして外君子なり。小人は道長じ、君子は道消

するなり。

象に曰く、天地交わらざるは否なり。君子もって徳を倹にし難を辟く。栄するに禄をもってすべからず。

初六。拔茅茹以其彙貞吉亨。

象曰、拔茅貞吉志在君也

六二。包承。小人吉。大人否亨。

象曰、大人否亨不亂羣也

六三。包羞。

象曰、包羞位不當也

九四。有命。无咎。疇離祉。

象曰、有命无咎志行也

九五。休否。大人吉。其亡其亡、于苞桑。

象曰、大人之吉位正當也

上九。傾否先否後喜。

象曰、否終則傾何可長也。

初六。茅を抜くに茹たり。その彙と以にす。貞なれば吉にして亨る。

象に曰く、茅を抜く、貞なれば吉なりとは、志君に在ればなり。

六二。包承す。小人は吉なり。大人は否にして亨る。

象に曰く、大人は否にして亨るとは、群に乱れざるなり。

六三。羞を包む。

象に曰く、羞を包むとは位当たらざればなり。

九四。命あれば咎なし。疇祉に離かん。

象に曰く、命あれば咎なしとは、志行わるるなり。

九五、否を休む。大人は吉なり。それ亡びなんそれ亡びなんとて、苞桑に繋る

象に曰く、大人の吉なるは、位正しく当たればなり。

上九。否を傾く。先には否がり後には喜ぶ。

象に曰く、否終われば傾く、なんぞ長かるべけんや。

離下乾上 天火同人(てんかどうじん)

離下乾上 天火同人(てんかどうじん)

同人于野。亨。利渉大川。利君子貞。

彖曰、同人、柔得位得中而應乎乾、曰同人。同人曰、同人于野、亨。利渉大川、乾行也。文明以健、中正而應、君子正也。唯君子爲能通天下之志。

象曰、天與火、同人。君子以類族辯物

人に同じうするに野においてす。亨る。大川を渉るに利ろし。君子の貞に利ろし。

彖に曰く、同人は、柔、位を得、中を得て、乾に応ずるを同人と曰う。同人に曰く、人に同じうするに野においてす、亨る、大川を渉るに利ろしとは、乾の行なり。文明にしてもって健、中正にして応ず、君子の正なり。ただ君子のみ能く天下の志を通ずることを為す。象に曰く、天と火とは同人なり。君子もって族を類し物を弁ず。

初九。同人于門。无咎。

象曰、出門同人、又誰咎。

六二。同人于宗吝。

象曰、同人于宗、吝道也

九三、伏戎于莽。升其高陵。三歳不興。

象曰、伏戎于莽、敵剛也。三歳不興、安行也。

九四。乘其{土|庸}弗克攻吉。

象曰、乘其{土|庸}、義弗充也。其吉則困而反則也

九五。同人先號{口|兆}而後笑。大師克相遇。

象曰、同人之先、以中直也。大師相遇。言相克也。

上九。同人于郊无悔。

象曰、同人于郊志未得也

初九。人に同じうするに門においてす。咎なし。

象に曰く、門をい出て人に同じうす、また誰か咎めん。

六二。人に同じうするに宗においてす。吝なり。

象に曰く、人に同じうするに宗においてするは、吝道なり。

九三。戎を莽に伏せ、その高陵に升る。三歳まで興らず。

象に曰く、戎を莽に伏すとは、敵剛なればなり。三歳まで興らず、いずくんぞ行かん。

九四。その{土|庸}に乗るも、攻むるに克わず。吉なり。

象に曰く、その{土|庸}に乗るも、義として克わざるなり。その吉なるは、困しみて則に反ればなり。

九五。人に同じうするに、先には号き{口|兆}び後には笑う。大師克ちて相い遇う。

象に曰く、同人の先とは、中直なるをもってなり。大師相い遇うとは、相い克つを言うなり。

上九。人に同じうするに郊においてす。悔なし。

象に曰く、人に同じうするに郊においてすとは、志いまだ得ざるなり。


乾下離上 火天大有(かてんたいゆう)

乾下離上 火天大有(かてんたいゆう)

大有、元亨。 彖曰、大有、柔得尊位、大中而上下應之、曰大有。其徳剛健而文明、應乎天而時行。是以元亨。

象曰、火在天上大有。君子以遏惡揚善、順天休命。

大有は、元いに亨る。

彖に曰く、大有は柔尊位を得、大中にして上下こうれに応ずるを、大有と曰う。その徳剛健にして文明、天に応じて時に行う。ここをもって元いに亨るなり。

象に曰く、火の天上に在るは大有なり。君子もって悪を遏め善を揚げて、天の休いなる命に順う。

初九。无交害。匪咎。艱則无咎。

象曰、大有初九、无交害也。

九二。大車以載。有攸往无咎。

象曰、大車以載、積中不敗也。

九三。公用亨于天子。小人弗克。

象曰、公用亨于天子。小人害也。

九四。匪其彭。无咎。

象曰、匪其彭、无咎、明辯晢也。

六五。厥孚、交如。威如、吉。

象曰、厥孚交如、信以發志也。威如之吉、易而无備也。

上九。自天祐之。吉无不利。

象曰、大有上吉。自天祐也。

初九。害に交わることなし。咎にあらず。艱むときは咎なし。

象に曰く、大有の初九は害に交わることなきなり。

九二。大車もって載す。往くところあるも咎なし。

象に曰く、大車もって載すとは、中に積みて敗れざるなり。

九三。公もって天子に亨せらる。小人は克わず。

象に曰く、公もって天子に亨せらる。小人は害あるなり。

九四。その彭なるにあらず。咎なし。

象に曰く、その彭なるにあらず、咎なしとは、明弁にして晢かなればなり。

その孚、交如たり。威如たれば、吉なり。

象に曰く、その孚、交如たりとは、信もっと志を発するなり。威如の吉なるは、易りて備うるなければなり。

上九。天よりこれを祐く。吉にして利ろしからざるなし。

象に曰く、大有の上の吉なるは、天より祐くるなり。


艮下坤上 地山謙(ちざんけん)

艮下坤上 地山謙(ちざんけん)

謙、亨。君子有終。

彖曰、謙、亨。天道下濟而光明。地道卑而上行。天道虧盈而益謙、地道變盈而流謙。鬼神害盈而福謙、人道惡盈而好謙。謙尊而光、卑而不可踰。君子之終也。

象曰、地中有山謙。君子以{亠/臼/(衣-亠}多益寡、稱物平施。

謙は、亨る。君子は終わりあり。 彖に曰く、謙は、亨る。天道は下済して光明なり。地道は卑くして上行す。天道は盈を虧きて謙に益し、地道は盈を変じて謙に流き、鬼神は盈を害して謙に福いし、人道は盈を悪みて謙を好む。謙は尊くして光り、卑けれども踰ゆべからず。君子の終りなり。

象に曰く、地中に山あるは謙なり。君子もって多きを{亠/臼/(衣-亠}し寡を益し、物を称り施しを平かにす。

初六。謙謙君子。用渉大川。吉。

象曰、謙謙。君子卑以自牧也。

六二。鳴謙。貞吉。

象曰、鳴謙、貞吉、中心得也。

九三。勞謙。君子有終、吉。

象曰、勞謙君子、萬民服也。

六四。无不利。{手|爲}謙。

象曰、无不利、{手|爲}謙、不違則也

六五。不富以其鄰。利用侵伐、无不利。

象曰、利用侵伐、征不服也。

上六。鳴謙。利用行師征邑國。

象曰、鳴謙、志未得也。可用行師征邑國也。

初六。謙謙す君子。もって大川を渉る。吉なり。

象に曰く、謙謙す。君子卑もってみずから牧うなり。

六二。鳴謙す。貞にして吉なり。

象に曰く、鳴謙す、貞にして吉なりとは中心より得たればなり。

九三。労謙す。君子終ありて吉なり。

象に曰く、労謙す、君子とは、万民服するなり。

六四。利ろしからざるなし。謙を{手|爲}く。

象に曰く、利ろしからざるなし。謙を{手|爲}くとは、則に違わざるなり。

六五。富めりとせずしてその隣と以にす。もって侵伐するに利ろし。利ろしからざるなし。

象に曰く、もって侵伐するに利ろしとは、服せざるを征するなり。

上六。鳴謙す。もって師を行り邑国を征すべきのみなるなり。


坤下震上 雷地豫(らいちよ)

坤下震上 雷地豫(らいちよ)

豫、利建侯行師。

彖曰、豫剛應而志行。順以動豫。豫順以動、故天地如之。而況建侯行師乎。天地以順動、故日月不過而四時不{戈/心}。聖人以順動、則刑罰清而民服。豫之時義、大矣哉。

象曰、雷出地奮豫。先王以作樂崇徳、殷薦之上帝、以配祖考。

豫は、候を建て師を行るに利ろし。

彖に曰く、豫は剛応ぜられて志行わる。順もって動くは豫なり。豫は順もって動く、故に天地もかくのごとし。しかるをいわんや候を建て師を行るをや。天地は順をもって動く、故に日月の過たずして四時{戈/心}わず。聖人順をもって動けば、すなわち刑罰清くして民服す。豫の時義、大いなるかな。

象に曰く、雷の地を出でて奮うは豫なり。先王もって楽を作り徳を崇び、殷んにこれを上帝に薦め、もって祖考を配す。

初六。鳴豫。凶。

象曰、初六鳴豫、志窮凶也。

六二、介于石。不終日。貞吉。

象曰、不終日、貞吉、以中正也。

六三。{目|于}豫。悔。遲有悔。

象曰、{目|于}豫有悔、位不當也。

九四。由豫。大有得。勿疑。朋盍簪。

象曰、由豫、大有得、志大行也。

六五。貞疾。恆不死。

象曰、六五貞疾、乘剛也。恆不死、中未亡也。

上六。冥豫。成有渝、无咎。

象曰、冥豫在上、何可長也。

初六。鳴豫す。凶なり。

象に曰く、初六の鳴豫は、志窮まりて凶なるなり。

六二。介きこと石の于し。日を終えず。貞にして吉なり。

象に曰く、日を終えず、貞にして吉なるは、中正なるをもってなり。

六三。{目|于}豫す。悔ゆ。遅ければ悔あらん。

象に曰く、{目|于}豫の悔あるは、位当たらざればなり。

九四。由豫す。大いに得ることあり。疑うなかれ。朋盍簪らん。

象に曰く、由豫す、大いに得ることありとは、志大いに行わるるなり。

六五。貞疾あり。恒に死せず。

象に曰く、六五の貞疾は、剛に乗ればなり。恒に死せざるは、中いまだ亡びざればなり。

上六。冥豫す。成れども渝うることあれば、咎なし。

象に曰く、冥豫して上に在り、何ぞ長かるべけんや。 


震下兌上 沢雷随(たくらいずい)

震下兌上 沢雷随(たくらいずい)

隨、元亨利貞。无咎。

彖曰、隨剛來而下柔、動而説隨。大亨貞、无咎、而天下隨時。隨時之義、大矣哉。

象曰、澤中有雷隨。君子以嚮晦入宴息。

随は、元いに亨りて貞しきに利ろし。咎なし。

彖に曰く、随は、剛来たりて柔に下る。動きて説ぶは随なり。大いに亨り貞し(きに利ろしくして)、咎なく、天下これに随う。随(の時)義、大いなるかな。

象に曰く、沢中に雷あるは随なり。君子もって晦に嚮えば入りて宴息す。

初九。官有渝。貞吉。出門交有功。

象曰、官有渝、從正吉也。出門交有功、不失也。

六二。係小子、失丈夫。

象曰、係小子、弗兼與也。

六三。係丈夫、失小子。隨有求得。利居貞。

象曰、係丈夫、志舍下也。

九四。隨有獲。貞凶。有孚、在道以明、何咎。

象曰、隨有獲、其義凶也。有孚在道、明功也。

九五。孚于嘉。吉。

象曰、孚于嘉、吉、位正中也。

上六。拘係之、乃從維之。王用亨于西山。

象曰、拘係之、上窮也。

初九。官渝ることあり。貞なれば吉なり。門を出でて交われば功あり。

象に曰く、官渝ることあるは、正に従えば吉なるなり。門を出でて交われば功ありとは、失ならざるなり。

六二。小子に係れば、丈夫を失う。

象に曰く、小子に係るとは、兼ねて与せざるなり。

六三。丈夫に係れば、小子を失う。随いて求むあれば得。貞に居るに利ろし。

象に曰く、丈夫に係るとは、志下を舎つるなり。

九四。随いて獲るにあり。貞なれども凶なり。孚あり、道に在りて明らかなれば、何の咎かあらん。

象に曰く、随いて獲るありとは、その義凶なるなり。孚ありて道に在りとは、明らかなるの功なり。

九五。嘉に孚あり。吉なり。

象に曰く、嘉に孚あり、吉なりとは、位正中なればなり。

上六。これを拘め係ぎ、すなわち従いてこれを維ぐ。王もって西山に亨す。

象に曰く、これを拘め係ぐとは、上窮まるなり。 


巽下艮上 山風蠱(さんぷうこ)

巽下艮上 山風蠱(さんぷうこ)

蠱、元亨。利渉大川。先甲三日。後甲三日。

彖曰、蠱、剛上而柔下。巽而止蠱。蠱元亨而天下治也。利渉大川、往有事也。先甲三日、後甲三日、終則有始、天行也。

象曰、山下有風蠱。君子以振民育徳。

蠱は、元いに亨る。大川を渉るに利ろし。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。

彖に曰く、蠱は剛上りて柔下る。巽いて止まるは蠱なり。蠱は元いに亨りて天下治まるなり。大川を渉るに利ろしとは、往きて事あるなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終われば始あり、天行なるなり。

象に曰く、山下に風あるは蠱なり。君子もって民を振い徳を育う。

初六。幹父之蠱。有子考无咎。{厂/萬}終吉。

象曰、幹父之蠱、意承考也

九二。幹母之蠱。不可貞。

象曰、幹母之蠱、得中道也

九三。幹父之蠱。小有悔。无大咎。

象曰、幹父之蠱、終无咎也

六四。裕父之蠱。往見吝。

象曰、裕父之蠱、往未得也

六五。幹父之蠱。用譽。

象曰、幹父、用譽、承以徳也。

上九。不事王侯。高尚其事。

象曰、不事王侯、志可則也。

初六。父の子を幹す。子あれば考も咎なし。{厂/萬}けれども終には吉なり。

象に曰く、父の蠱を幹すとは、意考に承くるなり。

九二。母の子を幹す。貞いすべからず。

象に曰く、母の子を幹すとは、中道を得るなり。

九三。父の蠱を幹す。小しく悔あれども、大咎なし。

象に曰く、父の蠱を幹すとは、終に咎なきなり。

六四。父の蠱を裕やかにす。往けば吝を見る。

象に曰く、父の蠱を裕やかにすとは、往くもいまだ得ざるなり。

六五。父の蠱を幹す。もって誉れあり。

象に曰く、父の蠱を幹し、もって誉れありとは、承くるに徳をもってすればなり。

上九。王候に事えず。その事を高尚にす。

象に曰く、王候に事えずとは、志則るべきなり。


兌下坤上 地澤臨(ちたくりん)

兌下坤上 地澤臨(ちたくりん)

臨、元亨利貞、至于八月有凶。

彖曰、臨、剛浸而長、説而順、剛中而應。大亨以正、天之道也。至于八月有凶、消不久也。

象曰、澤上有地臨。 君子以教思无、容保民无疆。

臨は、元いに亨りて貞しきに利ろし。八月に至れば凶あらん。

彖に曰く、臨は、剛浸くにして長じ、説びて順い、剛中にして応ず。大いに亨りてもって正しきは、天の道なり。八月に至れば凶あらんとは、消すること久からざればなり。

象に曰く、沢上に地あるは臨なり。君子もって教思すること窮まりなく、民を容れ保んずること疆りなし。

初九。咸臨。貞吉。

象曰、咸臨、貞吉、志行正也

九二。咸臨。吉无不利。

象曰、咸臨、吉无不利、未順命也

六三。甘臨。无攸利。既憂之无咎。

象曰、甘臨、位不當也。既憂之、咎不長也。

六四。至臨。无咎。

象曰、至臨、无咎、位當也。

六五。知臨。大君之宜。吉。

象曰、大君之宜、行中之謂也。

上六。敦臨。吉无咎。

象曰、敦臨之吉、志在内也。

初九。咸じて臨む。貞にして吉なり。

象に曰く、咸じて臨む、貞にして吉なりとは、志正を行えばなり。

九二。咸じて臨む。吉にして利ろしからざるなし。

象に曰く、咸じて臨む、吉にして利ろしからざるなしとは、いまだ命に順わざるなり。

六三。甘んじて臨む。利しきところなし。既にこれを憂うれば咎なし。

象に曰く、甘んじて臨むとは、位当たらざればなり。既にこれを憂うれば、咎は長からざるなり。

六四。至りて臨む。咎なし。

象に曰く、至りて臨む、咎なしとは、位当たればなり。

六五。知にして臨む。大君の宜しきなり。吉なり。

象に曰く、大君の宜しきとは、中を行うの謂なり。

上六。敦く臨む。吉にして咎なし。

象に曰く、敦く臨むことの吉なるは、志内に在ればなり。

坤下巽上 風地観(ふうちかん)

坤下巽上 風地観(ふうちかん)

觀、盥而不薦。有孚禺頁若。

彖曰、大觀在上、順而巽、中正以觀天下。觀盥而不薦、有孚禺頁若、下觀而化也、觀天之神道而四時不{戈/心}。聖人以神道設教、而天下服矣。

象曰、風行地上觀。先王以省方、觀民設教。

観は盥いて薦めず。孚ありて禺頁若たり。

彖に曰く、大観上に在り、順にして巽、中正もって天下に観すなり。観は盥いて薦めず、孚ありて禺頁若たりとは、下観て化するなり。天の神道を観るに四時{戈/心}わず。聖人神道をもって教を設けて、天下服す。

象に曰く、風の地上を行くは観なり。先王もって方を省み、民を観て教えを設く。

初六、童觀。小人无咎。君子吝。

象曰、初六童觀、小人道也。

六二 {門<規}觀、利女貞。

象曰、{門<規}觀、女貞、亦可醜也。

六三、觀我生進退。

象曰、觀我生進退、未失道也。

六四、觀國之光。利用賓于王。

象曰、觀國之光、尚賓也。

九五、觀我生。君子无咎。

象曰、觀我生、觀民也。

上九、觀其生。君子无咎。

象曰、觀其生、志未平也。

初六。童観す。小人は咎なし。君子は吝なり。

象に曰く、初六の童観は、小人の道なり。

六二。{門<規}い観る。女の貞に利ろし。

象に曰く、{門<規}い観る、女の貞のとは、亦醜ずべきなり。

六三。我が生を観て進退す。

象に曰く、我が生を観て進退すとは、いまだ道を失わざるなり。

六四。国の光を観る。もって王に賓たるに利ろし。

象に曰く、国の光を観るとは、賓を尚ぶなり。

九五。我が生を観る。君子なれば咎なし。

象に曰く、我が生を観るとは、民を観るなり。

上九。その生を観る。君子なれば咎なし。

象に曰く、その生を観るとは、志いまだ平らかならざるなり。

震下離上 火雷噬嗑(からいぜいごう)

震下離上 火雷噬嗑(からいぜいごう)

噬嗑、亨。利用獄。

彖曰、頤中有物、曰噬嗑。噬嗑而亨。剛柔分、動而明、雷電合而章。柔得中而上行、雖不當位、利用獄也。象曰、雷電噬嗑。先王以明罰勅法。

 

噬嗑(ぜいごう)は、亨(とお)る。獄(ごく)を用うるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、頤中(いちゅう)に物あるを、噬嗑(ぜいごう)と曰う。噬(か)み嗑(あわ)せて亨(とお)るなり。剛(ごう)柔 (じゅう)分れ、動きて明らかに、雷電(らいでん)合(がっ)して章(あきら)らかなり。柔(じゅう)、中を得て上行(じょうこう)す、位(くらい)に当らずといえども、獄(ごく)を用うるに利(よ)ろしきなり。

象に曰く、雷電(らいでん)あるは噬嗑(ぜいごう)なり。先王(せんのう)もって罰を明らかにし法を勅(ととの)う。

初九。{尸<(彳|婁)}校。滅趾。无咎。

象曰、{尸<(彳|婁)}校滅趾、不行也。

六二。噬膚滅鼻。无咎。

象曰、噬膚滅鼻、乘剛也。

六三。噬{肉|昔}肉、遇毒。小吝无咎。

象曰、遇毒、位不當也。

九四。噬乾{月|*}。得金矢。利艱貞。吉。

象曰、利艱貞、吉、未光也。

六五。噬乾肉。得黄金。貞{厂/萬}无咎。

象曰、貞{厂/萬}无咎、得當也。

上九。何校滅耳。凶。

象曰、何校滅耳、聰不明也。

初九(しょきゅう)。校(かせ)を履(は)いて趾(あし)を滅(やぶ)る。咎なし。

象に曰く、校(かせ)を履(は)いて趾(あし)を滅(やぶ)るとは、行かしめざるなり。

六二(りくじ)。膚(はだえ)を噬(か)みて鼻を滅(やぶ)る。咎なし。

象に曰く、膚(はだえ)を噬(か)みて鼻を滅(やぶ)るとは、剛(ごう)に乗ればなり。

六三(りくさん)。{肉|昔}肉(せきにく)を噬(か)み、毒(どく)に遇(あ)う。少(すこ)しく吝(りん)なれども咎なし。

象に曰く、毒(どく)に遇(あ)うとは、位(くらい)当たらざればなり。

九四(きゅうし)。乾(し)を噬(か)み、金矢(きんし)を得。艱(くる)しみて貞(てい)なるに利(よ)ろし。吉(きつ)なり。

象に曰く、艱(くる)しみて貞(てい)なるに利(よ)ろし、吉(きつ)なりとは、いまだ光(おお)いならざるなり。

六五(りくご)。乾肉(かんにく)を噬(か)み、黄金を得。貞{厂/萬}(ていれい)なれば咎なし。

象に曰く、貞{厂/萬}(ていれい)なれば咎なしとは、当(とう)を得ればなり。

上九(じょうきゅう)。校(かせ)を何(にな)いて耳を滅(やぶ)る。凶なり。

象に曰く、校(かせ)を何(にな)いて耳を滅(やぶ)るとは、聡(そう)、明らかならざればなり。


離下艮上 山火賁(さんかひ)

離下艮上 山火賁(さんかひ)

賁、亨。小利有攸往。

彖曰、賁亨、柔來而文剛、故亨。分剛上而文柔、故小利有攸往。天文也。文明以止人文也。觀乎天文以察時變、觀乎人文以化成天下。

象曰、山下有火賁。君子以明庶政、无敢折獄。

賁は、亨る。少しく往くところあるに利ろし。

彖に曰く、賁は亨るとは、柔来たりて剛を文る、故に亨るなり。剛を分かち上りて柔を文る、故に少しく往くところあるに利ろしきなり。(剛柔交錯するは)天文なり。文明にして止まるは人文なり。天文を観てもって時変を察し、人文を観てもって天下を化成す。

彖に曰く、山下に火あるは賁なり。君子もって庶政を明らかにし、あえて獄を折むることなし。

初九。賁其趾。舎車而徒。

象曰、舍車而徒、義弗乘也。

六二。賁其須。

象曰、賁其須、與上興也。

九三。賁如、濡如、永貞吉。

象曰、永貞之吉、終莫之陵也。

六四。賁如{白|番}如。白馬翰如。匪寇婚媾。

象曰、六四當位疑也。匪寇婚媾、終无尤也。

六五。賁于丘園。束帛戔戔。吝終吉。

象曰、六五之吉、有喜也。

上九。白賁。无咎。

象曰、白賁、无咎、上得志也。

初九。その趾を賁る。車を舎てて徒す。

象に曰く、車を舎てて徒すとは、義として乗らざるなり。

六二。その須を賁る。

象に曰く、その須を賁るとは、上と与に興るなり。

九三。賁如たり。濡如たり。永貞なれば吉なり。

象に曰く、永貞の吉は、終にこれを陵ぐものなきなり。

六四。賁如たり、{白|番}如たり。白馬翰如たり。寇するにあらず婚媾せんとす。

象に曰く、六四は位に当たりて疑うなり。寇するにあらず婚媾せんとすとは、終に尤なきなり。

六五。丘園に賁る。束帛戔戔たり。吝なれども終には吉なり。

象に曰く、六五の吉は、喜びあるなり。

上九。白く賁る。咎なし。

象に曰く、咎なしとは、上にして志を得ればなり。 


坤下艮上 山地剥(さんちはく)

坤下艮上 山地剥(さんちはく)

剥、不利有攸往。

彖曰、剥剥也。柔變剛也。不利有攸往、小人長也。順而止之、觀象也。君子尚消息盈虚、天行也。

象曰、山附於地剥。上以厚下安宅。

剥は、往くところあるに利ろしからず。

彖に曰く、剥は剥ぐなり。柔、剛を変ずるなり。往くところあるに利ろしからずとは、小人長ずればなり。順にしてこれに止まるは、象を観るなり。君子の消息盈虚を尚ぶは、天の行なればなり。

初六。剥牀以足。蔑貞。凶。

象曰、剥牀以足、以滅下也。

六二。剥牀以辨。蔑貞。凶。

象曰、剥牀以辨、未有與也。

六三。剥之。无咎。

象曰、剥之、无咎、失上下也。

六四。剥牀以膚。凶。

象曰、剥牀以膚、切近災也。

六五。貫魚、以宮人寵。无不利。

象曰、以宮人寵、終无尤也。

上九。碩果不食。君子得輿、小人剥廬。

象曰、君子得輿、民所載也。小人剥廬、終不可用也。

初六。牀を剥するに足を以てす。貞を蔑す。凶なり。

象に曰く、牀を剥するに足を以てすとは、もって下を滅ぼすなり。

六二。牀を剥するに弁を以てす。貞を蔑す。凶なり。

象に曰く、牀を剥するに弁を以てすとは、いまだ与するものあらざるなり。

六三。これを剥す。咎なし。

象に曰く、これを剥す、咎なしとは、上下を失えばなり。

六四。牀を剥するに膚を以てす。凶なり。

象に曰く、牀を剥するに膚を以てすとは、切に災い近きなり。

六五。魚を貫き、宮人を以て寵せらる。利ろしからざるなし。

象に曰く、宮人を以て寵せらるとは、終わりに尤なきなり。

上九。碩いなる果食われず。君子は輿を得、小人は廬を剥す。

象に曰く、君子の輿を得とは、民の載するところたるなり。小人は廬を剥すとは、終に用うべからざるなり。


震下坤上 地雷復(ちらいふく)

震下坤上 地雷復(ちらいふく)

復、亨。出入无疾、朋來无咎。反復其道、七日來復。利有攸往。

彖曰、復亨、剛反也。動而以順行。是以出入无疾、朋來无咎。反復其道、七日來復、天行也。利有攸往、剛長也。復其見天地之心乎。

象曰、雷在地中復。先王以至日閉關、商旅不行、后不省方。

復は、亨る。出入疾なく、朋来りて咎なし。その道を反復し、七日にして来復す。往くところあるに利ろし。

彖に曰く、復は亨るとは、剛反るなり。動きて順をもって行く。ここをもって出入疾なく、朋来りて咎なきなり。その道を反復し、七日にして来復するは、天行なり。往くところあるに利ろしとは、剛長ずればなり。復はそれ天地の心をみるか。

象に曰く、雷の地中に在るは復なり。先王もって至日に関を閉じ、商旅行かず、后は方を省みず。

初九。不遠復。无祗悔。元吉。

象曰、不遠之復、以脩身也。

六二。休復。吉。

象曰、休復之吉、以下仁也。

六三。頻復。{厂/萬}无咎。

象曰、頻復之{厂/萬}、義无咎也。

六四。中行獨復。

象曰、中行獨復、以從道也。

六五。敦復。无悔。

象曰、敦復、无悔、中以自考也。

上六。迷復。凶。有災{生/目}。用行師、終有大敗、以其國君、凶。至于十年不克征。

象曰、迷復之凶、反君道也。

初九。遠からずして復る。悔に祗ることなし。元吉なり。

象に曰く、遠からざるの復とは、もって身を修むるなり。

六二。休く復る。吉なり。

象に曰く、休く復るの吉なるは、もって仁に下ればなり。

六三。頻りに復る。{厂/萬}けれども咎なし。

象に曰く、頻りに復るの{厂/萬}きは、義として咎なきなり。

六四。中行にして独り復る。

象に曰く、中行にして独り復るとは、もって道に従うなり。

六五。敦く復る。悔なし。

象に曰く、敦く復る、悔なしとは、中もってみずから考せばなり。

上六。復に迷う。凶なり。災{生/目}あり。もって師を行れば、終に大敗あり、その国君に以ぶ、凶なり。十年に至るまで征するに克わず。

象に曰く、復に迷うの凶とは、君道に反すればなり。


震下乾上 天雷无妄(てんらいむぼう)

震下乾上 天雷无妄(てんらいむぼう)

无妄、元亨、利貞。其匪正有{生/目}、不利有攸往。

彖曰、无妄、剛自外來而爲主於内。動而健。剛中而應。大亨以正、天之命也。其匪正有{生/目}、不利有攸往、无妄之往、何之矣。天命不祐、行矣哉。 象曰、天下雷行、物與无妄。先王以茂對時育萬物。

无妄は元いに亨り貞しきに利ろし。それ正にあらざるときは{生/目}いあり。往くところあるに利ろしからず。

彖に曰く、无妄は剛外より来りて内に主となる。動きて健なり。剛中にして応ず。大いに亨りて正しきは、天の命なればなり。それ正にあらざるときは{生/ 目}あり、往くところあるに利ろしからずとは、无妄の往くは、いずくにか之かん。天命祐けず、行かんや。

象に曰く、天の下に雷行き、物ごとに无妄を与う。先王もって茂んに時に対し万物を育う。

初九。无妄。往吉。

象曰、无妄之往、得志也。

六二。不耕穫、不{艸/(巛<一)/田}{余/田}、則利有攸往。

象曰、不耕穫、未富也。

六三。无妄之災。或繁之牛。行人之得、邑人之災。

象曰、行人得牛、邑人災也。

九四。可貞。无咎。

象曰、可貞、无咎、固有之也。

九五。无妄之疾。勿藥有喜。

象曰、无妄之藥、不可試也。

上九。无妄。行有{生/目}。无攸利。

象曰、无妄之行、窮之災也。

初九。无妄なり。往けば吉なり。

象に曰く、无妄の往くは、志を得るなり。

六二。耕穫せず、{艸/(巛<一)/田}{余/田}せざれば、往くところあるに利ろし。

象に曰く、耕穫せずとは、いまだ富まんとせざるなり。

六三。无妄の災あり。あるいはこれば牛を繋ぐ。行人の得るは、邑人の災いなり。

象に曰く、行人の牛を得るは、邑人の災いなるなり。

九四。貞にすべし。咎なし。

象に曰く、貞にすべし、咎なしとは、固くこれを有つなり。

九五。无妄の疾あり。薬することなくして喜びあり。

象に曰く、无妄の薬は試うべからざるなり。

上九。无妄なり。行けば{生/目}いあり。利ろしきところなし。

象に曰く、无妄の行くは、窮まるの災いあるなり。


乾下艮上 山天大畜(さんてんたいちく)

乾下艮上 山天大畜(さんてんたいちく)

大畜、利貞。不家食吉。利渉大川。

彖曰、大畜、剛健篤實輝光、日新其徳。剛上而尚賢。能止健、大正也。不家食吉、養賢也。利渉大川、應矣天也

象曰、天在山中、大畜。君子以多識前言往行、以畜其徳。

大畜は、貞しきに利ろし。家食せずして吉なり。大川を渉るに利ろし。

彖に曰く、大畜は剛健篤実にして輝光あり、日にその徳を新たにす。剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むは、大正なり。家食せずして吉なりとは、賢を養えばなり。大川を渉るに利ろしとは、天に応ずればなり。

象に曰く、天の山中に在るは大畜なり。君子もって多く前言往行を識し、もってその徳を畜う。

初九。有{厂/萬}。利已。

象曰、有{厂/萬}、利已、不犯災也。

九二。輿説輹。

象曰、輿説輹、中无尤也。

九三。良馬逐。利艱貞、日閑輿衞、利有攸往。

象曰、利有攸往、上合志也。

六四。童牛之{牛|告}。元吉。

象曰、六四元吉、有喜也。

六五。{豕|賁}豕之牙。吉。

象曰、六五之吉、有慶也。

上九。何天之衢。亨。

象曰、何天之衢、道大行也。

初九。{厂/萬}うきことあり。已むに利ろし。

象に曰く、{厂/萬}うきことあり、已むに利ろしとは、災いを犯さざるなり。

九二。輿、輹を説く。

象に曰く、輿、輹を説くとは、中にして尤なきなり。

九三。良馬を逐う。艱しみて貞なるに利ろし。(日に)輿衞を閑えば、往くところあるに利ろし。

象に曰く、往くところあるに利ろしとは、上志を合わすればなり。

六四。童牛の{牛|告}なり。元吉なり。

象に曰く、六四の元吉なるは、喜びあるなり。

六五。{豕|賁}豕の牙なり。吉なり。

象に曰く、六五の吉なるは、慶びあるなり。

上九。天の衢を何う。亨る

象に曰く、天の衢を何うとは、道大いに行わるるなり。


震下艮上 山雷頤(さんらいい)

震下艮上 山雷頤(さんらいい)

頤、貞吉。觀頤自求口實。

彖曰、頤貞吉、養正則吉也。觀頤、觀其所養也。自求口實、觀其自養也。天地養萬物、聖人養賢以及萬民。頤之時大矣哉。

象曰、山下有雷頤。君子以愼言語、節飲食。

頤は、貞しければ吉なり。頤を観てみずから口実を求む。

彖に曰く、頤は貞しければ吉なりとは、正を養えば吉なるなり。頤を観るとは、その養うところを観るなり。みずから口実を求むとは、そのみずから養うところを観るなり。天地は万物を養い、聖人は賢を養いてもって万民に及ぼす。頤の時大いなる哉。

象に曰く、山下に雷あるは頤なり。君子もって言語を慎み、飲食を節す。

初九。舎爾靈龜、觀我朶頤。凶。

象曰、觀我朶頤、亦不足貴也。

六二。顛頤。拂經。于丘頤。征凶。

象曰、六二征凶、行失類也。

六三。拂頤。貞凶。十年勿用。无攸利。

象曰、十年勿用、道大悖也。

六四。顛頤吉。虎視眈眈。其欲逐逐无咎。

象曰、顛頤之吉、上施光也。

六五。拂經。居貞吉。不可渉大川。

象曰、居貞之吉、順以從上也。

上九。由頤。{厂/萬}吉。利渉大川。

象曰、由頤、{厂/萬}吉、大有慶也。

初九。爾の霊亀を舎て、我を観て頤を朶る。凶なり。

象に曰く、我を観て頤を朶るるは、また貴ぶに足らざるなり。

六二。顛に頤わる。経に払れり。丘において頤わる。征けば凶なり。

象に曰く、六二の征きて凶なるは、行きて類を失えばなり。

六三。頤に払る。貞なれども凶なり。十年用うるなかれ。利ろしきところなし。

象に曰く、十年用うるなかれとは、道大いに悖ればなり。

六四。顛に頤わるるも吉なり。虎視眈眈、その欲逐逐たれば、咎なし。

象に曰く、顛に頤わるるの吉なるは、上の施し光いなればなり。

六五。経に払る。貞に居れば吉なり。大川を渉るべからず。

象に曰く、貞に居るの吉なるは、順にしてもって上に従えばなり。

上九。由りて頤わる。{厂/萬}うけれども吉なり。大川を渉るに利ろし。

象に曰く、由りて頤わる、{厂/萬}うけれども吉なりとは、大いに慶びあるなり。


巽下兌上 沢風大過(たくふうたいか)

巽下兌上 沢風大過(たくふうたいか)

大過、棟橈。利有攸往。亨。

彖曰、大過、大者過也。棟橈、本末弱也。剛過而中、巽而説行。利有攸往、乃亨。大過之時大矣哉。

象曰、澤滅木大過。君子以獨立不懼、遯世无悶。

大過は、棟撓む。往くところあるに利ろし。亨る。

彖に曰く、大過は、大なる者の過ぎるなり。棟撓むとは、本末弱きなり。剛過ぎたれども中、巽いて説び行く。往くところあるに利ろしく、すなわち亨る。大過の時大なるかな。

象に曰く、沢の木を滅すは大過なり。君子もって独立して懼れず、世を遯れて悶うることなし。

初六。藉用白茅。无咎。

象曰、藉用白茅、柔在下也。

九二。枯楊生{禾|弟}。老夫得其女妻。无不利。

象曰、老夫女妻、過以相與也。

九三。棟橈。凶。

象曰、棟橈之凶、不可以有輔也。

九四。棟隆。吉。有它吝。

象曰、棟隆之吉、不橈乎下也。

九五。枯楊生華、老婦得其士夫。无咎无譽。

象曰、枯楊生華、何可久也。老婦士夫、亦可醜也。

上六。過渉滅頂。凶无咎。

象曰、過渉之凶、不可咎也。

初六。藉くに白茅を用う。咎なし。

象に曰く、藉くに白茅を用うとは、柔にして下に在ればなり。

九二。枯楊{禾|弟}を生じ、老夫その女妻を得たり。利ろしからざるなし。

象に曰く、老夫女妻とは、過ぎてもって相い与するなり。

九三。棟撓む。凶なり。

象に曰く、棟撓むの凶なるは、もって輔くることあるべからざればなり。

九四。棟隆し。吉なり。它あれば吝なり。

象に曰く、棟の隆きの吉なるは、下に撓まざればなり。

九五。枯楊華を生じ、老婦その士夫を得たり。咎もなく誉れもなし。

象に曰く、枯楊華を生ずるは、なんぞ久しかるべけんや。老婦士夫とは、また醜づべきなり。

上六。過ぎて渉り頂きを滅す。凶なれども咎なし。

象に曰く、過ぎて渉るの凶なるは、咎むべからざるなり。


坎下坎上 坎為水(かんいすい)(習坎)

坎下坎上 坎為水(かんいすい)(習坎)

習坎、有孚。維心亨。行有尚。

彖曰、習坎、重險也。水流而不盈。行險而不失其信。維心亨、乃以剛中也。行有尚、往有功也。天險不可升也。地險山川丘陵也。王公設險、以守其國。險之時用大矣哉。

象曰、水{水|存}至習坎也。君子以常徳行、習教事。

習坎は、孚あり。維れ心亨る。行けば尚ばるることあり。

彖に曰く、習坎は、重険なり。水は流れて盈たず、険を行きてその信を失わざるなり。維れ心亨るとは、すなわち剛中なるをもってなり。行けば尚ばるることありとは、往きて功あるなり。

天険は升るべからざるなり。地険は山川丘陵なり。王公は険を設けて、もってその国を守る。険の時用大いなる哉。

象に曰く、水{水|存}りに至るは習坎なり。君子もって徳行を常にし、教事を習う。

初六。習坎。入于坎{穴/(陷-阜}。凶。

象曰、習坎、入坎、失道凶也。

九二。坎有險。求小得。

象曰、求小得、未出中也

六三。來之坎坎。險且枕。入于坎{穴/(陷-阜}。勿用。

象曰、來之坎坎、終无功也。

六四。樽酒{竹/艮/皿}貳用缶。納約自{片|戸<甫}。終无咎。

象曰、樽酒{竹/艮/皿}貳、剛柔際也

九五。坎不盈。祇既平。无咎。

象曰、坎不盈、中未大也。

上六。係用徽{糸|墨}。{宀/眞}于叢棘。三歳不得。凶。

象曰、上六失道、凶三歳也。

初六。坎を習ねて、坎{穴/(陷-阜}に入る。凶なり。

象に曰く、坎を習ねて坎に入るとは、道を失いて凶なるなり。

九二。坎にして険あり。求めて小しく得。

象に曰く、求めて小しく得とは、いまだ中を出でざればなり。

六三。来るも之くも坎坎たり。険にして且つ沈す。坎たんに入る。用うるなかれ。

象に曰く、来るも之くも坎坎たりとは、終に功なきなり。

六四。樽酒{竹/艮/皿}弐、缶を用う。約を納るるに{片|戸<甫}よりす。 終に咎なし。

象に曰く、樽酒{竹/艮/皿}弐とは、剛柔の際なればなり。

九五。坎盈たず。既に平らかなに祗らば、咎なからん。

象に曰く、坎盈ずとは、中いまだ大ならざればなり。

上六。係ぐ徽{糸|墨}を用い、叢棘に{宀/眞}く。三歳まで得ず。凶なり。

象に曰く、上六の道を失うは、凶なること三歳なるなり。


離下離上 離為火(りいか)

離下離上 離為火(りいか)

離、利貞亨。畜牝牛吉。

彖曰、離麗也。日月麗乎天、百穀艸木麗乎土、重明以麗乎正、乃化成天下。柔麗乎中正、故亨。是以畜牝牛吉。

象曰、明兩作離。大人以繼明、照于四方。

離は、貞しきに利し。亨る。牝牛を畜えば吉なり。

彖に曰く、離は麗なり。月日は天に麗き、百穀草木は土に麗く。重明をもって正に麗けば、すなわち天下を化成す。柔、中正に麗く、故に亨る。ここをもって牝牛を畜えば吉なるなり。

象に曰く、明両たび作るは離なり。大人もって明を継ぎ、四方を照らす。

初九、履錯然。敬之无咎。

象曰、履錯之敬、以辟咎也。

六二、黄離、元吉。

象曰、黄離、元吉、得中道也。

九三、日昃之離。不鼓缶而歌、則大{老/至}之嗟。凶。

象曰、日昃之離、何可久也。

九四、突如其來如。焚如、死如、棄如。

象曰、突如其來如、无所容也。

六五、出涕沱若。戚嗟若。吉。

象曰、六五之吉、離王公也。

上九、王用出征。有嘉折首。獲匪其醜、无咎。

象曰、王用出征、以正邦也。

初九。履むこと錯然たり。これを敬すれば咎なし。

象に曰く、履むこと錯たるの敬は、もって咎を辟くるなり。

六二。黄離、元吉なり。

象に曰く、黄離、元吉とは、中道を得ればなり。

九三。日昃くの離なり。缶を鼓ちて歌わざれば、大耋の嗟あらん。凶なり。

象に曰く、日昃くの離は、何ぞ久しかるべけんや。

九四。突如それ来如たり。焚如たり、死如たり。棄如たり。

象に曰く、突如それ来如たりとは、容れらるるところなきなり。

六五。涕を出すこと沱若たり。戚むこと嗟若たり。吉なり。

象に曰く、六五の吉なるは、王公に離けばなり。

上九。王もって出征す。嘉きことありて首を折く。獲るものその醜に匪ざれば、咎なし。

象に曰く、王もって出征すとは、もって邦を正すなり。


引用文献



TOP

あらゆる時を示す六十四卦

下経(豫~離)

艮下兌上 沢山咸(たくさんかん)

艮下兌上 沢山咸(たくさんかん)

咸、亨。利貞。取女吉。

彖曰、咸、感也。柔上而剛下。二氣感應以相與。止而説男下女是以亨、利貞、取女吉也。天地感而萬物化生。聖人感人心而天下和平。觀其所感而天地萬物之情可見矣。

象曰、山上有澤咸。君子以受人。

咸(かん)は、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よ)ろし、女(じょ)を取(めと)るは吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、咸(かん)は感(かん)なり。柔(じゅう)上(のぼ)りて剛(ごう)下(くだ)り、二気感応してもって相い与(くみ)するなり。止(とど)まりて説(よろこ)び、男は女(じょ)に下(くだ)る。ここをもって亨(とお)り、貞しきに利(よ)ろしく、女(じょ)を取(めと)るは吉(きつ)なるなり。天地感じて万物化生(かせい)し、聖人人心(じんしん)を感ぜしめて、天下和平なり。その感ずるところを観て、天地万物の情見るべし。

象に曰く、山上(さんじょう)に沢あるは咸(かん)なり。君子もって虚(きょ)にして人に受(う)く。

初六、咸其拇。

象曰、咸其拇志在外也。

六二、咸其腓。凶。居吉。

象曰、雖凶居吉順不害也。

九三、咸其股。執其隨。往吝。

象曰、咸其股亦不處也。志在隨人、所執下也。

九四、貞吉悔亡。憧憧往來、朋從爾思。

象曰、貞吉悔亡未感害也。憧憧往來未光大也。

九五、咸(肉|毎)其。无悔。

象曰、咸其志末也。

上六、咸其輔頬舌。

象曰、咸其輔頬舌滕口説也。

初六(しょりく)、その拇(おやゆび)に咸(かん)ず。

象に曰く、その拇(おやゆび)に咸(かん)ずとは、志外(そと)に在るなり。

六二(りくじ)、その腓(こむら)に咸(かん)ず。凶なり。居(お)れば吉(きつ)なり。

象に曰く、凶なりといえども居(お)れば吉(きつ)なりとは、順(したが)えば害あらざるなり。

九三(きゅうさん)、その股(もも)に咸(かん)ず。執(と)りてそれ随(したが)う。往(ゆ)けば吝(りん)なり。

象に曰く、その股(もも)に咸(かん)ずとは、また処(とど)まらざるなり。志(こころざし)人に随(したが)うに在り、執(と)るところ下(ひく)きなり。

九四(きゅうし)。貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。憧憧(しょうしょう)として往来すれば、朋(とも) 爾(なんじ)の思いに従う。

象に曰く、貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶとは、いまだ感(かん)に害(がい)せられざるなり。憧憧 (しょうしょう)として往来すとは、いまだ光大(こうだい)ならざるなり。

九五(きゅうご)。その(肉|毎(せじし)に咸(かん)ず。悔いなし。

象に曰く、その(肉|毎(せじし)に咸(かん)ずとは、志(こころざし)末(すえ)なるなり。

上六(じょうりく)。その輔(ほ)頬(きょう)舌(ぜつ)に咸(かん)ず。

象に曰く、その輔(ほ)頬(きょう)舌(ぜつ)に咸(かん)ずとは、口説(こうせつ)を滕(あ)ぐるなり。


巽下震上 雷風恒(らいふうこう)

巽下震上 雷風恒(らいふうこう)

恒亨。无咎。利貞。利有攸往。

彖曰、恒、久也。剛上而柔下雷風相與、巽而動剛、柔皆應恒。恒亨无咎、利貞。久於其道也。天地之道、恒久而不已也。利有攸。往終則有始也。日月得天而能久照四時變化而能久成。聖人久於其道而天下化成。觀其所恒而天地萬物之情可見矣。

彖曰、雷風恒君子以立不易方。

恒(こう)は、亨(とお)る。咎なし貞(ただ)しきに利(よ)ろし。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、恒(こう)は久(きゅう)なり、剛(ごう)上って柔(じゅう)下る。雷風(らいふう)相い与(くみ)し、巽(したが)いて動き、剛(ごう)柔(じゅう)みな応ずるは恒(こう)なり。恒(こう)は亨(とお)る、咎なし、貞(ただ)しきに利(よ)ろしとは、その道に久しければなり。天地の道は、恒久(こうきゅう)にして已(や)まざるなり。往くところあるに利(よ)ろしとは、終われば始めあるなり。日月(じつげつ)は天を得て能(よ)く久しく照らし、四時(しいじ)は変化して能(よ)く久しく成し、聖人はその道に久しくして天下化成(かせい)す。その恒(つね)とするところを観て天地万物の情(じょう)見るべし。

象に曰く、雷風(らいふう)は恒(こう)なり。君子もって立ちて方(ほう)を易(か)えず。

初六、浚恒。貞凶。无攸利。

象曰、浚恆之凶、始求深也。

九二、悔亡。

象曰、九二悔亡能久中也。

九三、不恒其徳或承之羞貞吝。

象曰、不恆其徳、无所容也。

九四、田无禽。

象曰、久非其位安得禽也。

六五、恒其徳貞。婦人吉夫子凶。

象曰、婦人貞吉從一而終也。夫子制義從婦凶也。

上六、振恒凶。

象曰、振恒在上大无功也。

初六(しょりく)、恒(つね)を浚(ふか)くす。貞(ただ)しけれども凶なり。利(よ)ろしきところなし。

象に曰く、恒(つね)を浚(ふか)くするの凶なるは、始めに求むること深ければなり。

九二(きゅうじ)、悔亡ぶ。

象に曰く、九二(きゅうじ)の悔亡ぶるは、能(よ)く中(ちゅう)に久(ひさ)しければなり。

九三(きゅうさん)、その徳を恒(つね)にせず。あるいはこれが羞(はじ)を承(う)く。貞(ただ)しけれども吝(りん)なり。

象に曰く、その徳を恒(つね)にせざれば、容(い)れらるるところなきなり。

九四(きゅうし)、田(かり)して禽(えもの)なし。

象に曰く、久(ひさ)しきもその位(くらい)にあらず、いずくんぞ禽(えもの)を得んや。

六五(りくご)、その徳を恒(つね)にして貞(ただ)し。婦人は吉(きつ)なれど、夫子(ふうし)は凶なり。

象に曰く、婦人は貞(ただ)しければ吉(きつ)とは、一に従いて終わればなり。夫子(ふうし)は義を制す、婦に従えば凶なるなり。

上六(じょうりく)、恒(つね)を振(ふる)う。凶なり。

象に曰く、恒(つね)を振(ふる)って上(かみ)に在り、大いに功(こう)なきなり。


艮下乾上 天山遯(てんざんとん)

艮下乾上 天山遯(てんざんとん)

彖曰、遯、亨。小利貞。遯亨。遯而亨也。剛。當位而應與時行也。小利貞浸而長也。遯之時義大矣哉。

象曰、天下有山、遯。君子以遠小人不惡而嚴。

遯(とん)は、亨(とお)る。小(しょう)は貞(てい)なるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、遯(とん)は亨(とお)るとは、遯(のが)れて亨(とお)るなり。剛(ごう)、位(くらい)に当たりて応じ、時とともに行うなり。小 (しょう)は貞なるに利(よ)ろしとは、浸(ようや)くにして長(ちょう)ずればなり。遯(とん)の時義(じぎ)大いなる哉。

象に曰く、天の下に山あるは遯(とん)なり。君子もって小人を遠(とお)ざけ、悪(にく)まずして厳(きび)しくす。

初六、遯尾。勿用有攸往。

象曰、遯尾之、不往何災也.

六二、執之用黄牛之革莫之勝説。

象曰、執用黄牛、固志也。

九三、係遯有疾畜臣妾吉。

象曰、係遯之、有疾憊也畜臣妾吉、不可大事也。

九四、好遯。君子吉小人否。

象曰、君子好遯小人否也。

九五、嘉遯。貞吉。

象曰、嘉遯貞吉以正志也。

上九、肥遯无不利。

象曰、肥遯无不利、无所疑也。

初六(しょりく)、遯尾(とんび)なり。(厂/萬(あやう)し。往(ゆ)くところあるに用うるなかれ。

象に曰く、遯尾(とんび)の(厂/萬(あやう)きは、往(ゆ)かざれば何の災いかあらん。

六二(りくじ)、これを執(とら)うるに黄牛(こうぎゅう)の革(つくりかわ)を用う。これを勝(あ)げて説(と)くものなし。

象に曰く、執(とら)うるに黄牛(こうぎゅう)を用うとは、志を固くするなり。

九三(きゅうさん)、遯(とん)に係(つな)がる。疾(やまい)ありて(厂/萬(あやう)し。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)うには吉(きつ)なり。

象に曰く、遯(とん)に係(つな)がるの(厂/萬(あやう)きは、疾(やまい)ありて憊(つか)るるなり。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)うには吉(きつ)なりとは大事には可(か)ならざるなり。

九四(きゅうし)、好(よみ)すれども遯(のが)る。

象に曰く、君子は好(よみ)すれども遯(のが)る、小人は否(しか)らざるなり。

九五(きゅうご)。嘉(よ)く遯(のが)る、貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。

象に曰く、嘉(よ)く遯(のが)る、貞(ただ)しければ吉(きつ)なりとは、志(こころざし)を正しくするをもってなり。

上九(じょうきゅう)。肥(ゆた)かに遯(のが)る。利(よ)ろしからざるなし。

象に曰く、肥(ゆた)かに遯(のが)る、利(よ)ろしからざるなしとは、疑うところなければなり。


乾下震上 雷天大壮(らいてんたいそう)

乾下震上 雷天大壮(らいてんたいそう)

大壯、利貞。

彖曰、大壯、大者壯也。剛以動、故壯。大壯利貞大者正也。正大而天地之情可見矣

象曰、雷在天上、大壯。君子以非禮弗履

大壮(たいそう)は、貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、大壮(たいそう)は、大(だい)なる者壮(さか)んなるなり。剛(ごう)にしてもって動く、故に壮(さか)んなり。大壮(たいそう)は貞しきに利(よ)ろしとは、大(だい)なる者正しきなり。正大(せいだい)にして天地の情(じょう)見るべし。

象に曰く、雷(たい)の天上にあるは大壮(たいそう)なり。君子もって礼(れい)にあらざれば履(ふ)まず。

初九、壯于趾征凶有孚。

象曰、壯于趾、其孚也

九二、貞吉。

象曰、九二貞吉、以中也

九三、小人用壯。君子用罔貞。羝羊觸藩。羸其角。

象曰、小人用壯、君子罔也

九四、貞吉、悔亡。藩決不羸。壯于大輿之輹。

象曰、藩決不羸、尚往也

六五、喪羊于易。无悔。

象曰、喪羊于易、位不當也

上六、羝羊觸藩。不能退、不能遂。无攸利、艱則吉。

象曰、不能退、不能遂、不詳也。艱則吉、咎不長也

初九(しょきゅう)。趾(あし)に壮(さか)んなり。征(ゆ)けば凶。孚あり。

象に曰く、趾(あし)に壮(さか)んなりとは、その孚(まこと)窮(きわ)まるなり。

九二(きゅうじ)。貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。

象に曰く、九二(きゅうじ)の貞(ただ)しければ吉(きつ)なるは、中をもってなり。

九三(きゅうさん)。小人は壮(そう)を用い、君子は罔(もう)を用う。貞(てい)なれども(厂/萬(あやう)し。羝羊(ていよう)藩(まがき)に触れてその角を羸(くるし)ましむ。

象に曰く、小人は壮(そう)を用うれど、君子は罔(な)きなり。

九四(きゅうし)。貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。藩(はん)決(ひら)けて羸(くるし)まず。大輿(だいよ)の輹(とこしばり)に壮(さか)んなり。

象に曰く、藩(はん)決(ひら)けて羸(くるし)まずとは、往くを尚(たっと)ぶなり。

六五(りくご)。羊を易(えき)に喪(うしな)う。悔いなし。

象に曰く、羊を易(えき)に喪(うしな)う。悔いなしとは、位(くらい)当たらざればなり。

上六(じょうりく)。羝羊(ていよう)藩(まがき)に触れ、退くこと能(あた)わず、遂(すす)むことも能(あた)わず。利(よ)ろしきところなし。艱 (くるし)しめば吉(きつ)なり。

象に曰く、羝羊(ていよう)藩(まがき)に触れ、退くこと能(あた)わず、遂(すす)むことも能(あた)わずとは、詳(つまびら)からなざるなり。艱(くるし)しめば吉(きつ)なりとは、咎長(なが)からざるなり。


坤下離上 火地晋(かちしん)

坤下離上 火地晋(かちしん)

晉、康侯用錫馬蕃庶。晝日三接。

彖曰、晉、進也明出地上、順而麗乎大明、柔進而上行、是以康侯用錫馬蕃庶晝日三接也

象曰、明出地上、晉。君子以自昭明徳

晋(しん)は康侯(こうこう)もって馬を錫(たま)わること蕃庶(はんしょ)にして、昼日(ちゅうじつ)に三たび接(せっ)せらる。

彖(たん)に曰く、晋(しん)は、進(しん)なり。明(めい)地上に出で、順(じゅん)にして大明に麗(つ)き、柔(じゅう)進みて上行(じょうこう) す。ここをもって康侯(こうこう)馬を錫(たま)わること蕃庶(はんしょ)にして、昼日(ちゅうじつ)に三たび接(せっ)せらるるなり。

象に曰く、明(めい)地上に出(い)づるは晋(しん)なり。君子持ってみずから明徳(めいとく)を昭(あきら)らかにす。

初六、晉如摧如。貞吉罔孚、裕无咎。

象曰、晉如摧如、獨行正也。裕无咎、未受命也

六二、晉如愁如。貞吉。受茲介福于其王母。

象曰、茲受介福、以中正也。

六三、衆允。悔亡。

象曰、衆允之、志上行也

九四、晉如(鼠|石)鼠。貞(厂/萬)。

象曰、(鼠|石)鼠貞(厂/萬)。位不當也。

六五、悔亡。失得勿恤。往吉无不利。

象曰、失得勿恤、往有慶也

上九、晉其角。維用伐邑。吉无咎。貞吝。

象曰、維用伐邑、道未光也。

初六(しょりく)。晋如(しんじょ)たり摧如(さいじょ)たり。貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。孚(まこと)とせらるること罔(な)けれども、裕(ゆた)かなるときは咎なし。

象に曰く、晋如(しんじょ)たり摧如(さいじょ)たりとは、独り正(せい)を行なうなり。裕(ゆた)かなるときは咎なしとは、いまだ命(めい)を受けざればなり。

六二(りくじ)。晋如(しんじょ)たり愁如(しゅうじょ)たり。貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。この介(おお)いなる福(さいわい)をその王母(おうぼ)より受(う)く。

象に曰く、この介(おお)いなる福(さいわい)を受(う)くとは、中正(ちゅうせい)をもってなり。

六三(りくさん)。衆(しゅう)允(まこと)とす。悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、衆(しゅう)允(まこと)とすとは、志上行(じょうこう)すればなり。

九四(きゅうし)。晋如(しんじょ)たる(鼠|石鼠(せきそ)貞(ただ)しけれど(厂/萬(あやう)し。

象に曰く、(鼠|石鼠(せきそ)貞(ただ)しけれど(厂/萬(あやう)しとは、位(くらい)当たらざればなり。

六五(りくご)。悔(くい)亡ぶ。失得(しっとく)恤(うれ)うることなかれ。往(ゆ)くときは吉(きつ)にして利(よ)ろしからざるなし。

象に曰く、失得(しっとく)恤(うれ)うることなかれとは、往(ゆ)きて慶びあるなり。

上九(じょうきゅう)。その角(つの)に晋(すす)む。これ邑(ゆう)を伐(う)つに用いれば、(厂/萬(あやう)けれども吉(きつ)にして咎なし。貞 (ただ)しけれども吝(りん)なり。

象に曰く、邑(ゆう)を伐(う)つに用いるとは、道いまだ光(おお)いならざるなり。


離下坤上 地火明夷(ちかめいい)

離下坤上 地火明夷(ちかめいい)

明夷、利艱貞。

彖曰、明入地中明夷内文明而外柔順以蒙大難、文王以之利艱貞晦其明也。内難而能正其志箕子以之

象曰、明入地中、明夷。君子以莅衆用晦而明

明夷(めいい)は艱(くるし)みて貞(てい)なるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、明(めい)の地中にあるは明夷(めいい)なり。内(うち)文明にして外(そと)柔順、もって大難を蒙(こうむ)る。文王(ぶんのう)これをもってせり。艱(くるし)しみて貞(てい)なるに利(よ)ろしとは、その明(めい)を晦(くら)ますなり。内難(ないなん)にして能(よ)くその志を正しくす。箕子(きし)これをもってせり。

象に曰く、明(めい)の地中に入(い)るは明夷(めいい)なり。君子もって衆に莅(のぞ)み、晦(かい)を用いてしかも明なり。

初九、明夷、于飛埀其翼。君子于行、三日不食。有攸往、主人有言。

象曰、君、子于行、義不食也。

六二、明夷。夷于左股。用拯馬壯吉。

象曰、六二之吉、順以則也。

九三、明夷于南狩。得其大首。不可疾貞。

象曰、南狩之志、乃大得也。

六四、入于左腹。獲明夷之心、于出門庭。

象曰、入于左腹、獲心意也。

六五、箕子之明夷利貞。

象曰、箕子之貞、明不可息也

上六、不明晦。初登于天後入于地。

象曰、初登于天、照四國也。後入于地、失則也。

初九(しょきゅう)。明夷(めいやぶ)る、于(ゆ)きて飛びてその翼を垂(た)る。君子于(ゆ)き行(ゆ)きて、三日食(くら)わず。往くところあれば、主人言(げん)あり。

象に曰く、君子于(ゆ)き行(ゆ)きてとは、義として食(ほ)まざるなり。

六二(りくじ)。明夷(めいやぶ)る。左股(さこ)を夷(やぶ)る。もって拯(すく)うに馬壮(さか)んなれば、吉(きつ)なり。

象に曰く、六二(りくじ)の吉(きつ)は順(じゅん)にしてもって則(のり)あればなり。

九三(きゅうさん)。明夷(めいやぶ)る。于(ゆ)きて南狩(なんしゅう)して、その大首(たいしゅ)を得たり。疾(と)く貞(ただ)しくすべからず。

象に曰く、南狩(なんしゅう)の志は、すなわち大いに得るなり。

六四(りくし)、左腹(さふく)に入(い)り、明夷(めいい)の心を獲(え)て、于(ゆ)きて門庭(もんてい)を出(い)づ。

象に曰く、左腹(さふく)に入(い)るとは、心意(しんい)を獲(う)るなり。

六五(りくご)。箕子(きし)の明夷(めいやぶ)る。貞しきに利(よ)ろし。

象に曰く、箕子(きし)の貞(てい)は、明息(や)むべからざるなり。

上六(じょうりく)。明かならずして晦(くら)し。初めは天に登り、後には地に入る。

象に曰く、初めは天に登るとは、四国(しこく)を照らすなり。後には地に入るとは、則(のり)を失うなり。


離下巽上 風火家人(ふうかかじん)

離下巽上 風火家人(ふうかかじん)

家人、利女貞。

彖曰、家人、女正位乎内、男正位乎外。男女正天地之大義也。家人有嚴君焉、父母之謂也。父父、子子、兄兄弟弟、夫夫、婦婦而家道正。正家而天下定矣

象曰、風自火出家人君子以言有物而行有恒

家人(かじん)は、女(じょ)の貞に利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、家人(かじん)は女(じょ)、位(くらい)を内(うち)に正しくし、男、位を外(そと)に正しくす。男女正しきは天地の大義なり。家人 (かじん)に厳君(げんくん)ありとは、父母の謂(い)いなり。父は父たり、子は子たり、兄は兄たり、弟は弟たり、夫(おっと)は夫たり、婦(つま)は婦たり、しかして家道(かどう)正し。家を正しくして天下定まる。

象に曰く、風の火より出(い)づるは家人(かじん)なり。君子もって言(げん)には物あり、行いには恒(つね)あり。

初九、閑有家、悔亡。

象曰、閑有家、志未變也

六二、无攸遂。在中饋。貞吉。

象曰、六二之吉、順以巽也。

九三、家人(口|高)(口|高)。悔(厂/萬)吉。婦子(口|喜)(口|喜)。終吝。

象曰、家人(口|高)(口|高)、未失也。婦子(口|喜)(口|喜)、失家節也。

六四、富家、大吉。

象曰、富家、大吉、順在位也

九五、王假有家、勿恤吉。

象曰、王假有家、交相愛也

上九、有孚威如。終吉。

象曰、威如之吉、反身之謂也。

初九(しょきゅう)。有家(ゆうか)を閑(ふせ)ぐ。悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、有家(ゆうか)を閑(ふせ)ぐとは、志いまだ変(へん)ぜざるなり。

六二(りくじ)。遂(と)ぐるところなし。中饋(ちゅうき)に在り。貞(てい)なれば吉(きつ)なり。

象に曰く、六二(りくじ)の吉(きつ)は順(じゅん)もって巽(そん)なればなり。

九三(きゅうさん)。家人(かじん)(口|喜(口|喜(かくかく)たり。(厂/萬(あやう)しきを悔ゆれば吉(きつ)なり。婦子(口|喜(口|喜(かくかく)たればついに吝なり。

象に曰く、家人(かじん)(口|喜(口|喜(かくかく)たりとはいまだ失わざるなり。婦子(口|喜(口|喜(かくかく)たりとは、家節(かせつ)を失うなり。

六四(りくし)。家を富(と)ます。大(だい)吉(きつ)なり。

象に曰く、家を富(と)ます、大(だい)吉(きつ)なりとは、順(じゅん)にして位(くらい)に在ればなり。

九五(きゅうご)。王有家(ゆうか)に仮(いた)る。恤(うれ)うることなかれ、吉(きつ)なり。

象に曰く、王有家(ゆうか)に仮(いた)るはこもごも相愛するなり。

上九(じょうきゅう)。孚(まこと)ありて、威如(いじょ)たれば、ついには吉(きつ)なり。

象に曰く、威如(いじょ)たるの吉(きつ)とは、身に反(かえ)るの謂(い)いなり。


兌下離上 火沢睽(かたくけい)

兌下離上 火沢睽(かたくけい)

睽、小事吉。

彖曰、火動而上。澤動而下。二女同居、其志不同行説而麗乎明、柔進而上行、得中而。應乎剛是以小事吉。天地、而其事同也男女、而其志通也。萬物而其事類也。之時用大矣哉

象曰、上火下澤。君子以同而異

睽(けい)は、小事に吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、睽(けい)は火動きて上り、沢動きて下る。二女(じょ)同居して、その志は行いを同じくせず。説(よろこ)びて明(めい)に麗 (つ)き、柔(じゅう)進みて上行(じょうこう)し、中を得て剛(ごう)に応ず。ここをもって小事に吉(きつ)なるなり。天地は睽(そむ)けどもその事同じきなり。男女(じょ)は(そむ)けどもその志通ずるなり。万物は睽(そむ)けどもその事類(るい)するなり。睽(けい)の時用、大いなる哉。

象に曰く、上(かみ)に火あり下(しも)に沢あるは睽(けい)なり。君子もて同じくして異なる。

初九、悔亡。喪馬勿逐自復。見惡人无咎。

象曰、見惡人、以辟咎也

九二、遇主于巷。无咎。

象曰、遇主于巷、未失道也。

六三、見輿曳。其牛掣。其人天且。无初有終。

象曰、見輿曳、位不當也。无初有終、遇剛也

九四、睽孤。遇元夫交孚。无咎。

象曰、交孚无咎、志行也

六五、悔亡。厥宗噬膚。往何咎。

象曰、厥宗噬膚、往有慶也。

上九、睽孤。見豕負塗、載鬼一車。先張之弧、後説之弧。匪冦婚媾。往遇雨則吉。

象曰、遇雨之吉、羣疑亡也

初九(しょきゅう)。悔(くい)亡ぶ。馬を喪(うしな)うも逐(お)うことなかれ。おのずから復(かえ)る。悪人を見るも咎なし。

象に曰く、悪人を見るは、もって咎を辟(さ)くるなり。

九二(きゅうじ)。主(しゅ)に巷(ちまた)に遇う。咎なし。

象に曰く、主(しゅ)に巷(ちまた)に遇うとは、いまだ道を失わざればなり。

六三(りくさん)。輿(くるま)の曳(ひ)かるるを見る。その牛掣(ひきとど)めらる。その人天(かみき)られ且つ(鼻|刀(はなき)らる。初めなくして終わりあり。

象に曰く、輿(くるま)の曳(ひ)かるるを見るとは、位(くらい)当たらざればなり。初めなくして終わりありとは、剛(ごう)に遇えばなり。

九四(きゅうし)。睽(そむ)きて孤(ひとり)なり。元夫(げんぷ)に遇い、こもごも孚(まこと)あり。(厂/萬(あやう)けれども咎なし。

象に曰く、こもごも孚(まこと)あり、咎なしとは、志(こころざし)行なわるるなり。

六五(りくご)。悔(くい)亡ぶ。厥(そ)の宗(ともがら)膚(はだえ)を噬(か)む。往(ゆ)くも何の咎かあらん。

象に曰く、厥(そ)の宗(ともがら)膚(はだえ)を噬(か)むとは、往きて慶(けい)あるなり。

上九(じょうきゅう)。睽(そむ)きて孤(ひとり)なり。豕(いのこ)の塗(どろ)を負(お)うを見、鬼(き)を一車に載(の)す。先にはこれが弧 (ゆみ)を張り、後にはこれが弧を説く。冦(あだ)するにあらず婚媾(こんこう)せんとす。往(ゆ)きて雨に遇えば吉(きつ)なり。

象に曰く、雨に遇うの吉(きつ)とは、群疑(ぐんぎ)亡ぶればなり。


兌下離上 火沢睽(かたくけい)

兌下離上 火沢睽(かたくけい)

睽、小事吉。

彖曰、火動而上。澤動而下。二女同居、其志不同行説而麗乎明、柔進而上行、得中而。應乎剛是以小事吉。天地、而其事同也男女、而其志通也。萬物而其事類也。之時用大矣哉

象曰、上火下澤。君子以同而異

睽(けい)は、小事に吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、睽(けい)は火動きて上り、沢動きて下る。二女(じょ)同居して、その志は行いを同じくせず。説(よろこ)びて明(めい)に麗 (つ)き、柔(じゅう)進みて上行(じょうこう)し、中を得て剛(ごう)に応ず。ここをもって小事に吉(きつ)なるなり。天地は睽(そむ)けどもその事同じきなり。男女(じょ)は(そむ)けどもその志通ずるなり。万物は睽(そむ)けどもその事類(るい)するなり。睽(けい)の時用、大いなる哉。

象に曰く、上(かみ)に火あり下(しも)に沢あるは睽(けい)なり。君子もて同じくして異なる。

初九、悔亡。喪馬勿逐自復。見惡人无咎。

象曰、見惡人、以辟咎也

九二、遇主于巷。无咎。

象曰、遇主于巷、未失道也。

六三、見輿曳。其牛掣。其人天且。无初有終。

象曰、見輿曳、位不當也。无初有終、遇剛也

九四、睽孤。遇元夫交孚。无咎。

象曰、交孚无咎、志行也

六五、悔亡。厥宗噬膚。往何咎。

象曰、厥宗噬膚、往有慶也。

上九、睽孤。見豕負塗、載鬼一車。先張之弧、後説之弧。匪冦婚媾。往遇雨則吉。

象曰、遇雨之吉、羣疑亡也

初九(しょきゅう)。悔(くい)亡ぶ。馬を喪(うしな)うも逐(お)うことなかれ。おのずから復(かえ)る。悪人を見るも咎なし。

象に曰く、悪人を見るは、もって咎を辟(さ)くるなり。

九二(きゅうじ)。主(しゅ)に巷(ちまた)に遇う。咎なし。

象に曰く、主(しゅ)に巷(ちまた)に遇うとは、いまだ道を失わざればなり。

六三(りくさん)。輿(くるま)の曳(ひ)かるるを見る。その牛掣(ひきとど)めらる。その人天(かみき)られ且つ(鼻|刀(はなき)らる。初めなくして終わりあり。

象に曰く、輿(くるま)の曳(ひ)かるるを見るとは、位(くらい)当たらざればなり。初めなくして終わりありとは、剛(ごう)に遇えばなり。

九四(きゅうし)。睽(そむ)きて孤(ひとり)なり。元夫(げんぷ)に遇い、こもごも孚(まこと)あり。(厂/萬(あやう)けれども咎なし。

象に曰く、こもごも孚(まこと)あり、咎なしとは、志(こころざし)行なわるるなり。

六五(りくご)。悔(くい)亡ぶ。厥(そ)の宗(ともがら)膚(はだえ)を噬(か)む。往(ゆ)くも何の咎かあらん。

象に曰く、厥(そ)の宗(ともがら)膚(はだえ)を噬(か)むとは、往きて慶(けい)あるなり。

上九(じょうきゅう)。睽(そむ)きて孤(ひとり)なり。豕(いのこ)の塗(どろ)を負(お)うを見、鬼(き)を一車に載(の)す。先にはこれが弧 (ゆみ)を張り、後にはこれが弧を説く。冦(あだ)するにあらず婚媾(こんこう)せんとす。往(ゆ)きて雨に遇えば吉(きつ)なり。

象に曰く、雨に遇うの吉(きつ)とは、群疑(ぐんぎ)亡ぶればなり。


坎下震上 雷水解(らすいかい)

坎下震上 雷水解(らすいかい)

解、利西南无所往、其來復吉有攸往夙吉。

彖曰、解、險以動動而免乎解。解利西南往得衆也。其來復吉、乃得中也。有攸往夙吉、往有功也。天地解而雷雨作。雷雨作百果艸木皆甲拆。解之時大矣哉

象曰、雷雨作解君子以赦過宥罪

解(かい)は、西南に利(よ)ろし。往(ゆ)く所なければ、それ来(きた)り復(かえ)って吉(きつ)なり。往くところあり、夙(はや)くするときは吉 (きつ)なり。

彖(たん)に曰く、解(かい)は、険(けん)にしてもって動く。動きて険(けん)より免(まぬが)るるは解(かい)なり。解(かい)は西南に利(よ)ろしとは、往(ゆ)きて衆(しゅう)を得るなり。それ来(きた)り復(かえ)って吉(きつ)なりとは、すなわち中(ちゅう)を得ればなり。往(ゆ)くところあり、夙(はや)くするときは吉(きつ)なりとは、往きて功あるなり。天地解(と)けて雷雨作(おこ)り、雷雨作(おこ)って百果草木(ひゃっかそうもく) みな甲(拆(たく))す。解の時、大いなる哉。

象に曰く、雷雨(らいう)作(おこ)るは解(かい)なり。君子もって過(あやまち)を赦(ゆる)し罪を宥(なだ)む。

初六、无咎。

象曰、剛柔之際、義无咎也

九二、田獲三狐。得黄矢。貞吉。

象曰、九二貞吉、得中道也

六三、負且乘。致冦至。貞吝。

象曰、負且乘、亦可醜也。自我致戎又誰咎也

九四、解而拇朋至斯孚。

象曰、解而拇、未當位也

六五、君子維有解吉。有孚于小人。

象曰、君子有解小人退也

上六、公用射隼于高之上。獲之无不利。

象曰、公用射隼以解悖也

初六(しょりく)。咎なし。

象に曰く、剛(ごう)柔(じゅう)の際(まじわ)りは義(ぎ)として咎なきなり。

九二(きゅうじ)。田(かり)して三狐(さんこ)を獲(え)、黄矢(こうし)を得たり。貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。

象に曰く、九二(きゅうじ)の貞しければ吉(きつ)なるは、中道(ちゅうどう)を得ればなり。

六三(りくさん)。負(お)い且(か)つ乗り、冦(あだ)の至るを致(いた)す。貞(ただ)しくとも吝なり。

象に曰く、負(お)い且(か)つ乗るとは、また醜(は)ずべきなり。我より戎(じゅう)を致す、また誰かを咎めん。

九四(きゅうし)。而(なんじ)の拇(おやゆび)を解く。朋(とも)至りて斯(こと)に孚(まこと)あり。

象に曰く、而(なんじ)の拇(おやゆび)を解くとは、いまだ位(くらい)に当たらざればなり。

六五(りくご)。君子維(こ)れ解くことあらば、吉(きつ)なり。小人に孚(まこと)あり。

象に曰く、君子維(こ)れ解くことありとは、小人退くなり。

上六(じょうりく)。公もって隼(はやぶさ)を高{土|庸}(こうよう)の上に射(い)る。これを獲(え)て利(よ)ろしからざるなし。

象に曰く、公もって隼(はやぶさ)を射るとは、もって悖(もと)れるを解くなり。


兌下艮上 山沢損(さんたくそん)

兌下艮上 山沢損(さんたくそん)

損、有孚元吉。无咎。可貞利有攸往曷之用。二{竹/艮/皿}可用享。

彖曰、損、損下益上其道上行損而有乎元吉。无咎可貞利攸。往曷之用二可用享二應有時損剛益柔有時損益盈與時偕行

象曰、山下有澤、損。君子以懲忿窒欲。

損(そん)は、孚(まこと)あれば元吉(げんきつ)にして咎なし。貞(ただ)しくすべし。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。曷(なに)をかこれ用いん。二{竹/艮/皿}(き)をもって享(まつ)るべし。

彖(たん)に曰く、損(そん)は、下(しも)を損(そん)して上(かみ)に益(ま)し、その道上行(じょうこう)す。損して孚(まこと)あれば、元吉(げんきつ)にして咎なし、貞(ただ)しくすべし、往(ゆ)くところあるに利(よ)し、曷(なに)をかこれ用いん、二{竹/艮/皿}(き)をもって享(まつ) るべしとは、二{竹/艮/皿}(き)もてするはまさに時あるべしとなり。剛(ごう)を損(そん)して柔(じゅう)に益すに時あり。損益(そんえき)盈虚 (えいきょ)は、時と偕(とも)に行なわる。

象に曰く、山下(さんか)に沢あるは損なり。君子もって忿(いか)りを懲(こ)らし欲を塞(ふさ)ぐ。

初九、已事往。无咎。酌損之。

象曰、巳事往尚合志也

九二、利貞。征凶。弗損益之。

象曰、九二利貞、中以爲志也

六三、三人行、則損一人一人行則得其友。

象曰、一人行、三則疑也

六四、損其疾。使(辷<(山/而))。有喜无咎。

象曰、損其疾、亦可喜也

六五或益之十朋之龜弗克違。元吉。

象曰、六五元吉自上祐也

上九弗損益之。无咎。貞吉利有攸往。得臣无家。

象曰、弗損益之大得志也

初九(しょきゅう)。事を已(や)めて(辷<(山/而(すみや)かに往(ゆ)けば、咎なし。酌(く)みてこれを損(そん)すべし。

象に曰く、事を已(や)めて(辷<(山/而(すみや)かに往くとは、志を合わすことを尚(たっと)ぶなり。

九二(きゅうじ)。貞しきに利(よ)ろし。征(ゆ)けば凶なり。損せずしてこれを益す。

象に曰く、九二(きゅうじ)の貞(ただ)しきに利(よ)ろしきは、中(ちゅう)もって志となせばなり。

六三(りくさん)。三人いけば、一人を損す。一人行けばその友を得。

象に曰く、一人行く、三なれば疑うなり。

六四(りくし)。その疾(やまい)を損す。(辷<(山/而(すみや)かならしめば喜びあり。咎なし。

その疾(やまい)を損すとは、また喜ぶべきなり。

六五(りくご)。あるいはこれを益す。十朋(じつぽう)の亀も違(たが)う克(あた)わず。元吉(げんきつ)なり。

象に曰く、六五(りくご)の元吉(げんきつ)は、上より祐(たす)くるなり。

上九(じょうきゅう)。損ぜずしてこれを益す。貞しければ吉(きつ)なり。往くところあるに利(よ)ろし。臣(しん)を得て家なし。

象に曰く、損せずしてこれを益すとは、大いに志を得るなり。


兌下艮上 山沢損(さんたくそん)

兌下艮上 山沢損(さんたくそん)

損、有孚元吉。无咎。可貞利有攸往曷之用。二{竹/艮/皿}可用享。

彖曰、損、損下益上其道上行損而有乎元吉。无咎可貞利攸。往曷之用二可用享二應有時損剛益柔有時損益盈與時偕行

象曰、山下有澤、損。君子以懲忿窒欲。

損(そん)は、孚(まこと)あれば元吉(げんきつ)にして咎なし。貞(ただ)しくすべし。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。曷(なに)をかこれ用いん。二{竹/艮/皿}(き)をもって享(まつ)るべし。

彖(たん)に曰く、損(そん)は、下(しも)を損(そん)して上(かみ)に益(ま)し、その道上行(じょうこう)す。損して孚(まこと)あれば、元吉(げんきつ)にして咎なし、貞(ただ)しくすべし、往(ゆ)くところあるに利(よ)し、曷(なに)をかこれ用いん、二{竹/艮/皿}(き)をもって享(まつ) るべしとは、二{竹/艮/皿}(き)もてするはまさに時あるべしとなり。剛(ごう)を損(そん)して柔(じゅう)に益すに時あり。損益(そんえき)盈虚 (えいきょ)は、時と偕(とも)に行なわる。

象に曰く、山下(さんか)に沢あるは損なり。君子もって忿(いか)りを懲(こ)らし欲を塞(ふさ)ぐ。

初九、已事往。无咎。酌損之。

象曰、巳事往尚合志也

九二、利貞。征凶。弗損益之。

象曰、九二利貞、中以爲志也

六三、三人行、則損一人一人行則得其友。

象曰、一人行、三則疑也

六四、損其疾。使(辷<(山/而))。有喜无咎。

象曰、損其疾、亦可喜也

六五或益之十朋之龜弗克違。元吉。

象曰、六五元吉自上祐也

上九弗損益之。无咎。貞吉利有攸往。得臣无家。

象曰、弗損益之大得志也

初九(しょきゅう)。事を已(や)めて(辷<(山/而(すみや)かに往(ゆ)けば、咎なし。酌(く)みてこれを損(そん)すべし。

象に曰く、事を已(や)めて(辷<(山/而(すみや)かに往くとは、志を合わすことを尚(たっと)ぶなり。

九二(きゅうじ)。貞しきに利(よ)ろし。征(ゆ)けば凶なり。損せずしてこれを益す。

象に曰く、九二(きゅうじ)の貞(ただ)しきに利(よ)ろしきは、中(ちゅう)もって志となせばなり。

六三(りくさん)。三人いけば、一人を損す。一人行けばその友を得。

象に曰く、一人行く、三なれば疑うなり。

六四(りくし)。その疾(やまい)を損す。(辷<(山/而(すみや)かならしめば喜びあり。咎なし。

その疾(やまい)を損すとは、また喜ぶべきなり。

六五(りくご)。あるいはこれを益す。十朋(じつぽう)の亀も違(たが)う克(あた)わず。元吉(げんきつ)なり。

象に曰く、六五(りくご)の元吉(げんきつ)は、上より祐(たす)くるなり。

上九(じょうきゅう)。損ぜずしてこれを益す。貞しければ吉(きつ)なり。往くところあるに利(よ)ろし。臣(しん)を得て家なし。

象に曰く、損せずしてこれを益すとは、大いに志を得るなり。


乾下兌上 沢天夬(たくてんかい)

乾下兌上 沢天夬(たくてんかい)

夬、揚于王庭。孚號(厂/萬)有。告自邑。不利即戎、利有攸往。

彖曰、夬、決也。剛決柔也。健而説決而和。揚于王庭、柔乘五剛也。孚號(厂/萬)有、其危乃光也。告自邑不利即戎、所尚乃也。利有攸往、剛長乃終也

象曰、澤上於天、夬。君子以施祿及下、居徳則忌

夬(かい)は、王庭(おうてい)に揚(あ)ぐ。孚(まこと)あって号(さけ)び、(厂/萬(あやう)きことあり。告(つ)ぐること邑(ゆう)よりす。戎 (じゅう)に即(つ)くに利(よ)ろしからず。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、夬(かい)は決(けつ)なり。剛(ごう)の柔(じゅう)を決するなり。健にして説(よろこ)び、決して和す。王庭(おうてい)に揚 (あ)ぐとは、柔(じゅう)五剛(ごう)に乗ればなり。孚(まこと)あって号(さけ)び、(厂/萬(あやう)きことありとは、それ危(あや)ぶむときはすなわち光(おお)いなるなり。告(つ)ぐること邑(ゆう)よりす。戎(じゅう)に即(つ)くに利(よ)ろしからずとは、尚(たっと)ぶところすなわち窮 (きわ)まるなり。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろしとは、剛(ごう)長(ちょう)ずればすなわち終ればなり。

象に曰く、沢の天に上(のぼ)るは夬なり。君子もって禄(ろく)を施して下に及ぼし、徳に居(お)ることすなわち忌(い)む。

初九、壯于前趾。往不勝爲咎。

象曰、不勝而往、咎也

九二、{心|易}號。莫夜有戎勿恤。

象曰、有戎勿恤、得中道也

九三、壯于{九|頁}有凶。君子夬夬。獨行遇雨。若濡有慍。无咎。

象曰、君子夬夬、終无咎也

九四、臀无膚。其行次且牽羊悔亡聞言不信。

象曰、其行次且、位不當也。聞言不信聰不明也

九五、陸夬夬中行无咎。

象曰、中行无咎、中未光也

上六、无號。終有凶。

象曰、无號之凶、終不可長也

初九(しょきゅう)。趾(あし)を前(すす)むるに壮(さか)んなり。往(ゆ)きて勝たざるを咎となす。

象に曰く、勝たずして往(ゆ)くは、咎なり。

九二(きゅうじ)。{心|易}(おそ)れて号(さけ)ぶ。莫夜(ぼや)に戎(じゅう)あれども恤(うれ)うるなかれ。

象に曰く、戎あれども恤うるなかれとは、中道を得ればなり。

九三(きゅうさん)。{九|頁}(つらぼね)に壮(さか)んなり。凶あり。君子は夬(さ)るべきを夬る。独り行きて雨に遇い、濡(ぬ)るるがごとくにして慍(いか)らるることあれども、咎なし。

象に曰く、君子は夬(さ)るべきを夬るとは、終(つい)に咎なきなり。

九四(きゅうし)。臀(しり)に膚(はだえ)なし。その行(ゆ)くこと次且(ししょ)たり。羊を牽(ひ)けば悔(くい)亡ぶ。言(げん)を聞くも信ぜず。

象に曰く、その行くこと次且(ししょ)たりとは、位(くらい)当たらざればなり。言(げん)を聞くも信ぜずとは、聡(そう)、明らかならざればなり。

九五(きゅうご)。莫陸(けんりく)なり。夬(さ)るべきを夬る。中行(ちゅうこう)なれば咎なし。

象に曰く、中行(ちゅうこう)なれば咎なきとは、中(ちゅう)の未だ光(おお)いならざればなり。

上六(じょうりく)。号(さけ)ぶことなかれ。終(つい)に凶あり。

象に曰く、号(さけ)ぶことなきの凶とは、終(つい)に長(なが)かるべからざるなり。


巽下乾上 天風姤(てんぷうこう)

巽下乾上 天風姤(てんぷうこう)

姤、女壯。勿用取女。

彖曰、姤、遇也。柔遇剛也。勿用取女不可與長也。天地相遇、品物咸章也。剛遇中正、天下大行也。之時義大矣哉

象曰、天下有風、后以施命誥四方

姤(こう)は女(じょ)、壮(さか)んなり。この女(じょ)を取(めと)る用うるかれ。

彖(たん)に曰く、姤(こう)は遇うなり。剛(ごう)、柔(じゅう)に遇うなり。この女(じょ)を取(めと)るに用うるなかれとは、与(とも)に長(なが)かるべからざればなり。天地相い遇いて、品物咸(ことごと)く章(あき)らかなり。剛(ごう)中正に遇いて、天下大(おお)いに行なわるるなり。姤(こう)の時義(じぎ)、大(おお)いなるかな。

象に曰く、天の下に風あるは姤(こう)なり。后(きみ)もって命(めい)を施し、四方(しほう)に誥(つ)ぐ。

初六、繋于金(木|尼)。貞吉。有攸往見凶。羸豕孚躅。

象曰、于金、柔道牽也。

九二、包有魚。无咎。不利賓。

象曰、包有魚。義不及賓也。

九三、臀无膚。其行次且、无大咎。

象曰、其行次且行未牽也

九四、包无魚。起凶。

象曰、无魚之凶。遠民也

九五、以杞包瓜含章有隕自天。

象曰、九五含章、中正也。有隕自天志不舍命也

上九、其角。吝。无咎。

象曰、其角、上吝也

初六(しょりく)。金(木|尼)(きんじ)に繋ぐ。貞(ただ)しくして吉(きつ)なり。往(ゆ)くところあれば、凶を見る。羸豕(るいし)孚に(足|(滴 -水)躅(てきちょく)たり。

象に曰く、金(木|尼)(きんじ)に繋ぐとは、柔(じゅう)道(どう)は牽(ひ)けばなり。

九二(きゅうじ)。包(つつみ)に魚(うお)あり。咎なし。賓(ひん)に利(よ)ろしからず。

象に曰く、包(つつみ)に魚(うお)ありとは、義(ぎ)賓(ひん)に及ばざるなり。

九三(きゅうさん)。臀(しり)に膚(はだえ)なし。その行くこと次且(ししょ)たり。(厂/萬(あやう)けれども大いなる咎はなし。

象に曰く、その行くこと次且(ししょ)たりとは、行きていまだ牽(ひ)かれざるなり。

九四(きゅうし)。包(つつみ)に魚(うお)なし。起(た)てば凶なり。

象に曰く、魚なきの凶とは、民に遠ざかればなり。

九五(きゅうご)。杞(き)をもって爪(か)を包む。章(しょう)を含めば、天より隕(お)つることあり。

象に曰く、杞(き)をもって爪(か)を包むは、中正なればなり。天より隕(お)つることありとは、志、命(めい)を舍(す)てざるなり。

上九(じょうきゅう)。その角(つの)に姤(あ)う。吝なれども咎なし。

象に曰く、その角(つの)に姤(あ)うとは、上(かみ)窮(きわ)まりて吝なるなり。


坤下兌上 沢地萃(たくちすい)

坤下兌上 沢地萃(たくちすい)

萃、亨。王假有廟。利見大人亨。利貞用大牲吉。利有攸往。

彖曰、萃、聚也。順以説剛中而應、故聚也。王假有廟、致孝享也。利見大人亨、聚以正也。用大牲吉、利有攸往、順天命也。觀其所聚而天地萬物之情可見矣

象曰、澤上於地、萃。君子以除戎器戒不虞

萃(すい)は亨(とお)る。王(おう)有廟(ゆうびょう)に仮(いあ)る。大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし。亨(とお)る。貞しきに利ろし。大牲 (たいせい)を用いて吉(きつ)。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、萃(すい)は、聚(しゅう)なり。順(じゅん)にしてもって説(よろこ)び、剛(ごう)中にして応ず、故に聚(あつ)まるなり。王(おう)有廟(ゆうびょう)に仮(いあ)るは、孝享(こうきょう)を致すなり。大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし、亨(とお)るとは、聚(あつ)むるに正をもってすればなり。大牲(たいせい)を用うるに吉(きつ)、往(ゆ)くところあるに利(よ)ろしとは、天命に順(したが)うなり。その聚(あつ)まるところを観て、天地萬物の情を見るべし。

象に曰く、沢の地に上るは萃(すい)なり。君子もって戎器(じゅうき)を除(おさ)め、不虞(ふぐ)を戒(いまし)む。

初六、有孚不終。乃亂乃萃。若號、一握爲笑。勿恤往、无咎。

象曰、乃亂乃萃、其志亂也

六二引吉、无咎。孚乃利用(示|龠)。

象曰、引吉无咎、中未變也

六三、萃如嗟如。无攸利。往无咎。小吝。

象曰、往无咎、上巽也

九四、大吉、无咎。

象曰、大吉无咎、位不當也

九五、萃有位。无咎。匪孚、元永貞悔亡。

象曰、萃有位、志未光也

上六、齎咨涕洟无咎。

象曰、齎咨涕洟未安上也

初六(しょりく)。孚(まこと)あるも終らず。すなわち乱れすなわち萃(あつ)まる。もし号(さけ)べば一握(いちあく)して笑いを為さん。恤(うれ)うるなかれ。往けば咎なし。

象曰、すなわち乱れすなわち萃(あつ)まるとは、その志の乱(みだ)るるなり。

六二(りくじ)。引けば吉(きつ)にして、咎なし。孚(まこと)あればすなわち(示|龠(やく)を用うるに利(よ)ろし。

象に曰く、引けば吉(きつ)にして咎なしとは、中(ちゅう)いまだ変(へん)ぜざればなり。

六三(りくさん)。萃如(すいじょ)たり、嗟如(さじょ)たり。利(よ)しきところなし。往けば咎なけれど少(すこ)しく吝なり。

象に曰く、往けば咎なしとは、上(かみ)、巽(したが)えばなり。

六四(りくし)。大吉(きつ)にして、咎なし。

象に曰く、大吉(きつ)にして、咎なしとは、位(くらい)当たらざればなり。

九五(きゅうご)。萃(あつ)めて位(くらい)を有(たも)つ。咎なし。孚(まこと)とせらるることあらざるも、元永貞(げんえいてい)なれば、悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、萃(あつ)めて位(くらい)を有(たも)つとも、志いまだ光(おお)いならざるなり。

上六(じょうりく)。齎咨(せいし)、涕洟(ていい)す。咎なし。

象に曰く、齎咨(せいし)、涕洟(ていい)すとは、いまだ上に安(やす)んぜざるなり。


巽下坤上 地風升(ちふうしょう)

巽下坤上 地風升(ちふうしょう)

升、元亨。用見大人。勿恤南征吉。

彖曰、柔以時升、巽而順、剛中而應、是以大亨。用見大人、勿恤、有慶也。南征吉、志行也。

象曰、地中生木、升。君子以順徳、積小以高大。

升(しょう)は、元(おお)いに亨(とお)る。もって大人(たいじん)を見る。恤(うれ)うるなかれ。南征(なんせい)すれば吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、柔(じゅう)、時をもって升(のぼ)り、巽(そん)にして順(じゅん)、剛(ごう)中にして応ず、ここをもって大いに亨(とお)るなり。もって大人(たいじん)を見る、恤(うれ)うるなかれとは、慶びあるなり。南征(なんせい)すれば吉(きつ)なりとは、志(こころざし)行なわるるなり。

象に曰く、地中に木を生ずるは升(しょう)なり。君子もって徳に順(したが)い、小を積みてもって高大(こうだい)なり。

初六、允升大吉。

象曰、允升大吉上合志也

九二、孚乃利用(示|龠)。无咎。

象曰、九二之孚、有喜也

九三升虚邑。

象曰、升虚邑无所疑也

六四、王用亨于岐山。吉无咎。

象曰、王用亨于岐山、順事也

六五、貞吉升階。

象曰、貞吉升階、大得志也

上六、冥升。利于不息之貞。

象曰、冥升、在上消不富也

初六(しょりく)。允(まこと)に升(のぼ)る。大吉なり。

象に曰く、允(まこと)に升(のぼ)る大吉なりとは、上(かみ)志を合わすればなり。

九二(きゅうじ)。孚(まこと)あればすなわち(示|龠(やく)を用うるに利(よ)ろし。咎なし。

象に曰く、九二(きゅうじ)の孚(まこと)とは、喜びあるなり。

九三(きゅうさん)。虚邑(きょゆう)に升(のぼ)る。

象に曰く、虚邑(きょゆう)に升(のぼ)るとは、疑うところなきなり。

六四(りくし)。王もって岐山(きざん)に亨(きょう)す。吉(きつ)にして咎なし。

象に曰く、王もって岐山(きざん)に亨(きょう)すとは、事に順(したが)うなり。

六五(りくご)。貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。階(きざはし)に升(のぼ)る。

象に曰く、貞(ただ)しければなり、階(きざはし)に升(のぼ)るとは、大いに志を得るなり。

上六(じょうりく)。冥(くら)くして升(のぼ)る。息(や)まざるの貞(てい)に利(よ)ろし。

象に曰く、冥(くら)くして升(のぼ)りて上(かみ)にあり、消(しょう)して富まざるなり。


坎下兌上 沢水困(たくすいこん)

坎下兌上 沢水困(たくすいこん)

困、亨。貞、大人吉。无咎。有言不信。

彖曰、困、剛也。險以説困而不失其所亨其唯君子乎、貞大人吉以剛中也。有言不信、尚口乃也

象曰、澤无水、困。君子以致命遂志

困(こん)は、亨(とお)る。貞(ただ)し、大人(たいじん)は吉(きつ)にして咎なし。言うことあるも信ぜられず。

彖(たん)に曰く、困(こん)は剛(ごう)(手|(合/廾(おお)わるるなり。険(けん)にしてもって説ぶ。困(くる)しみてその亨(とお)るところを失わざるは、それ唯(た)だ君子のみか。貞(ただ)し、大人(たいじん)は吉(きつ)なりとは、剛(ごう)中なるをもってなり。言うことあるも信じぜられずとは、口を尚(たっと)べばすなわち窮(きゅう)するなり。

象に曰く、沢に水なきは困(こん)なり。君子もって命(めい)を致し志を遂(と)ぐ。

初六、臀困于株木。入于幽谷三歳不覿。

入于幽谷、幽不明也

九二困于酒食朱(糸|(祓-示))方來。利用亨祀征凶。无咎。

困于酒食、中有慶也

六三、困于石。據于(艸/疾)藜。入于其宮、不見其妻。凶。

據于藜乘剛也。入于其宮不見其妻、不祥也

九四、來徐徐。困于金車、吝、有終。

來徐徐、志在下也。雖不當位有與也

九五、(鼻|刀)(肉|刀)。困于赤(糸|(祓-示))乃徐有説。利用祭祀。

志未得也。乃徐有説、以中直也。利用祭祀、受福也

上六、困于葛(苗/田|田)于(自/木|危)(兀|危)。曰動悔。有悔。征吉。

困于葛、未當也。動悔有悔、吉行也

初六(しょりく)。臀(しり)株木(しゅぼく)に困しむ。幽谷(ゆうこく)に入りて、三歳まで覿(み)ず。

象に曰く、幽谷(ゆうこく)に入るとは、幽(ゆう)にして明かならざるなり。

九二(きゅうじ)。酒食(しゅしょく)に困(くる)しむ。朱(糸|(祓-示(しゅふつ)まさに来たらんとす。もって亨祀(きょうし)するに利(よ)ろし。征けば凶なり。咎なし。

象に曰く、酒食(しゅしょく)に困(くる)しむとは中(ちゅう)にして慶びあるなり。

六三(りくさん)。石に困(くる)しみ、(艸/疾藜(しつり)に拠(よ)る。その宮に入りて、その妻を見ず。凶なり。

象に曰く、(艸/疾藜(しつり)に拠(よ)るとは、剛(ごう)に乗ればなり。その宮に入りて、その妻を見ずとは不祥(ふしょう)なるなり。

九四(きゅうし)。来(きた)ること徐徐(じょじょ)たり。金車(きんしゃ)に困(くる)しむ。吝なれども終わりあり。

象に曰く、来(きた)ること徐徐(じょじょ)たりとは、志下(しも)に在ればなり。位に当たらずといえども、与(くみ)するものあるなり。

九五(きゅうご)。(鼻|刀(はなき)られ(肉|刀(あし)れ、赤(糸|(祓-示(せきふつ)に困(くる)しむ。すなわち徐(おもむ)ろに説びあり。もって祭祀するに利(よ)ろし。

象に曰く、(鼻|刀(はなき)られ(肉|刀(あし)らるとは、志いまだ得ざるなり。すなわち徐(おもむ)ろに説びありとは、中直(ちゅうちょく)なるをもってなり。もって祭祀するに利(よ)ろしとは、福を受くるなり。

上六(じょうりく)。葛(苗/田|田(るい)に(自/木|危(兀|危(げっこつ)に困(くる)しむ。日(ここ)に動けば悔(くい)あり。悔(く)ゆることありて征けば吉(きつ)なり。

象に曰く、葛(苗/田|田(るい)に困(くる)しむとは、いまだ当たらざるなり。動けば悔(くい)あり、悔ゆることあれば吉(きつ)なりとは、行けばなり。


巽下坎上 水風井(すいふうせい)

巽下坎上 水風井(すいふうせい)

井、改邑不改井。无喪无得。往來井井。至亦未{糸|(橘-木)}井、羸其瓶、凶。

彖曰、巽乎水而上水、井井養而不也。改邑不改井、乃以剛中也。至亦未{糸|(橘-木)}井、未有功也。羸其瓶、是以凶也

象曰、木上有水、井。君子以勞民勸相

井(せい)は、邑(ゆう)を改めて井(せい)を改めず。喪(うしな)うなく得(う)るなし。往来(おうらい)井を井とす。ほとんど至らんとして、またいまだ井に{糸|(橘-木}(つりいと)せず、その瓶(つるべ)を羸(やぶ)るは、凶なり。

彖(たん)に曰く、水に巽(い)れて水を上(あ)ぐるは井なり。井は養いて窮(きわ)まらざるなり。邑(ゆう)を改めて井(せい)を改めずとは、すなわち剛(ごう)中(ちゅう)なるをもってなり。ほとんどいたらんとして、またいまだ井に{糸|(橘-木}(つりいと)せずとは、いまだ功あらざるなり。その瓶 (つるべ)を羸(やぶ)る、ここをもって凶なるなり。

象に曰く、木の上に水あるは井なり。君子もって民を労(ねぎら)い勧(すす)め相(たす)く。

初六、井泥不食、舊井无禽。

象曰、井泥不食、下也。舊井无禽、時舍也

九二、井谷射鮒。甕敝漏。

象曰、井谷射鮒、无與也

九三、井渫不食。爲我心惻可用汲。王明竝受其福。

象曰、井渫不食、行惻也。求王明、受福也

六四、井甃。无咎。

象曰、井甃无咎、脩井也

九五、井冽寒泉食。

象曰、寒泉之食中正也

上六、井収勿幕有孚元吉。

象曰、元吉在上大成也

初六(しょりく)。井(せい)泥(でい)にして食らわれず。旧井(きゅうせい)に禽(きん)なし。

象に曰く、井(せい)泥(でい)して食らわれずとは、下(しも)なればなり。旧井(きゅうせい)に禽(きん)なしとは、時舍(す)つるなり。

九二(きゅうじ)。井(せい)谷(こく)鮒(ふな)に射(そそ)ぐ。甕(かめ)敝(やぶ)れて漏(も)る。

象に曰く、井(せい)谷(こく)鮒(ふな)に射(そそ)ぐとは、与(くみ)するものなければなり。

九三(きゅうさん)。井(せい)渫(さら)えたれども食らわれず。我が心の惻(いあ)みをなす。もって汲むべし。王(おう)明らかなれば、並(とも)にその福(ふく)を受けん。

象に曰く、井(せい)渫(さら)えたれども食らわれずとは、行くもの惻(いあ)むなり。王の明かならんことを求むるは、福を受けんとてなり。

六四(りくし)。井(せい)甃(いしだたみ)す。咎なし。

象に曰く、井(せい)甃(いしだたみ)す、咎なしとは、井を脩(おさ)むるなり。

九五(きゅうご)。井(せい)冽(きよ)くして、寒泉(かんせん)食わる。

象に曰く、寒泉(かんせん)食わるるは、中正なればなり。

上六(じょうりく)。井(せい)収(みずく)みて幕(おお)うことなかれ。孚(まこと)あれば元吉(げんきつ)なり。

象に曰く、元吉(げんきつ)にして上(かみ)に在り、大いに成るなり。


離下兌上 沢火革(たくかかく)

離下兌上 沢火革(たくかかく)

革、已日乃孚。元亨。利貞。悔亡。

彖曰、革水火相息、二女同居其志不相得、曰革。已日乃乎、革而信之文明以説。大亨以正革而當、其悔乃亡。天地革而四時成。湯武革命順乎天而應乎人革之時大矣哉

象曰、澤中有火、革君子以治歴明時

革(かく)は、已日(いじつ)にしてすなわち孚(まこと)とせらる。元(おお)いに亨(とお)り貞しきに利(よ)ろし。悔(くい)亡ぶ。

彖(たん)に曰く、革(かく)は、水火相い息(そく)し、二女(じょ)同居してその志(こころざし)相い得ざるを革(かく)と曰う。已日(いじつ)にしてすなわち孚(まこと)とせらるとは、革(あらた)めてこれを信ずるなり。文明にして以(もっ)て説び、大いに亨(とお)りてもって正し。革(あらた)めて当たれば、その悔いすなわち亡ぶ。天地革(あらた)って四時(しいじ)成り、湯武(とうぶ)命(めい)を革(あらた)めて、天に順(したが)い人に応ず。革(かく)の時(とき)大いなるかな。

象に曰く、沢中(たく)に火あるは革なり。君子もって、歴(こよみ)を治め時を明かにす。

初九、鞏用黄牛之革。

鞏用黄牛不可以有爲也

六二、已日乃革之。征吉无咎。

已日革之、行有嘉也

九三、征凶。貞革言三就有孚。

革言三就、又何之矣

九四、悔亡。有孚改命。吉。

改命之吉信志也

九五、大人虎變。未占有孚。

大人虎變其文炳也

上六、君子豹變。小人革面。征凶。居貞吉。

君子豹變其文蔚也。小人革面、順以從君也

初九(しょきゅう)。鞏(かた)むるに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用う。

象に曰く、鞏(かた)むるに黄牛(こうぎゅう)の革(かわ)を用うとは、もって為すあるべからざるなり。

六二(りくじ)。已日(いじつ)にしてすなわちこれを革(あらた)む。征(ゆ)けば吉(きつ)にして咎なし。

象に曰く、已日(いじつ)にしてこれを革(あらた)むとは、行きて嘉(よ)きことあるなり。

九三(きゅうさん)。征(ゆ)けば凶なり。貞(ただ)しけれども(厂/萬(あやう)し。革言(かくげん)三たび就(な)れば、孚(まこと)あり。

象に曰く、革言(かくげん)三たび就(な)れば、また何(いづ)くにか之(ゆ)かん。

九四(きゅうし)。悔(くい)亡ぶ。孚(まこと)ありて命(めい)を改めれば、吉(きつ)なり。

象に曰く、命(めい)を改むるの吉(きつ)とは、志を信ずればなり。

九五(きゅうご)。大人(たいじん)虎変(こへん)す。いまだ占わずして孚(まこと)あり。

象に曰く、大人(たいじん)虎変(こへん)すとは、その文炳(へい)たるなり。

上六(じょうりく)。君子豹変(ひょうへん)す。小人は面(めん)を革(あらた)む。征(ゆ)けば凶なり。居(お)れば貞(ただ)しくして吉(きつ)なり。

象に曰く、君子豹変(ひょうへん)すとは、その文蔚(うつ)たるなり。小人は面(めん)を革(あらた)むとは、順(じゅん)にしてもって君に従うなり。


巽下離上 火風鼎(かふうてい)

巽下離上 火風鼎(かふうてい)

鼎、元吉亨。

彖曰、鼎象也以木巽火亨(食|壬)也。聖人亨以享上帝而大亨以養聖賢巽而耳目聰明柔進而上行、得中而應乎剛、是以元亨

象曰、木上有火、鼎。君子以正位凝命

鼎(てい)は元(おお)いに(吉(きつ)にして)亨(とお)る。

彖(たん)に曰く、鼎(てい)は象なり。木をもって火に巽(い)れて、亨(食|壬(ほうじん)するなり。聖人は亨(ほう)してもって上帝を享(まつ)り、大亨(たいほう)してもって聖賢(せいけん)を養う。巽(そん)にして耳目聰明(じもくそうめい)なり。柔(じゅう)進みて上行(じょうこう)し、中 (ちゅう)を得て剛(ごう)に応ず。ここをもって元(おお)いに亨(とお)るなり。

象に曰く、木の上に火あるは鼎(かなえ)なり。君子もって位(くらい)を正し命を凝(な)す。

初六、鼎顛趾。利出否得妾以其子。无咎。

象曰、鼎顛趾、未悖也。利出否、以從、貴也

九二、鼎有實。我仇有疾、不我能即。吉。

象曰、鼎有實、愼所之也。我仇有疾、終无尤也

九三、鼎耳革。其行塞。雉膏不食。方雨虧悔。終吉。

象曰、鼎耳革、失其義也

九四、鼎折足。覆公(食|束)。其形渥。凶。

象曰、覆公信如何也

六五、鼎黄耳金鉉。利貞

象曰、鼎黄耳、中以爲實也

上九、鼎玉鉉。大吉无不利。

象曰、玉鉉在上、剛柔節也

初六(しょりく)。鼎(かなえ)趾(あし)を顛(さか)しまにす。否(ひ)を出(い)だすに利(よ)ろし。妾(しょう)を得てその子に以(およ)ぶ。咎なし。

象に曰く、鼎(かなえ)趾(あし)を顛(さか)しまにすとは、いまだ悖(もと)らざるなり。否(ひ)を出(い)だすに利(よ)ろしとは、もって貴(き)に従うなり。

九二(きゅうじ)。鼎(かなえ)に実(み)あり。我が仇(あだ)疾(にく)むことあり。我に即(つ)くに能(あた)わず。吉(きつ)なり。

象に曰く、鼎(かなえ)に実(み)ありとは、之(ゆ)くところを慎むなり。我が仇(あだ)疾(にく)むことありとは、終わりに尤(とが)なきなり。

九三(きゅうさん)。鼎(かなえ)の耳革(あらた)まり、その行(こう)塞(ふさ)がる。雉(きじ)の膏(こう)食らわれず。方(まさ)に雨ふらんとして悔を虧(か)く。終(つい)に吉(きつ)なり。

象に曰く、鼎(かなえ)の耳革(あらた)まるとは、その義(ぎ)を失うなり。

九四(きゅうし)。鼎(かなえ)足を折り、公の(食|束(そく)を覆(くつが)えす。その形渥(あく)たり。凶なり。

象に曰く、公の(食|束(そく)を覆(くつが)えす、信(まこと)に如何(いかん)せん。

六五(りくご)。鼎(かなえ)黄耳(こうじ)金鉉(きんげん)あり。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

象に曰く、鼎(かなえ)黄耳(こうじ)ありとは、中(ちゅう)もって実(じつ)となすなり。

上九(じょうきゅう)。鼎(かなえ)玉鉉(ぎょくげん)あり。大吉にして利(よ)ろしからざるなし。

象に曰く、玉鉉(ぎょくげん)上(かみ)に在りとは、剛(ごう)柔(じゅう)節(せつ)あるなり。


震下震上 震為雷(しんいらい)

震下震上 震為雷(しんいらい)

震亨、震來((隙-阜)|虎)((隙-阜)|虎)。笑言唖唖。震驚百里、不喪鬯。

彖曰、震亨。震來((隙-阜)|虎)((隙-阜)|虎)、恐致福也。笑言唖唖、後有則也。震驚百里驚遠而懼邇也。出可以守宗廟社稷以爲祭主也

象曰、(水|存)雷震君子以恐懼脩省。

震(しん)は、亨(とお)る。震(しん)の来(きた)るとき((隙-阜|虎((隙-阜|虎(げきげき)たり。笑言唖唖(しょうげんあくあく)たり。震(しん)は百里を驚かせども、匕鬯(ひちょう)を喪(うしな)わず。

彖(たん)に曰く、震(しん)は亨(とお)る、震の来るとき((隙-阜|虎((隙-阜|虎(げきげき)たりとは、恐れて福を致すなり。笑言唖唖(しょうげんあくあく)たりとは、後には則(のり)あるなり。震は百里を驚かすとは、遠きを驚かし邇(ちか)きを懼(おそ)れしむなり。(匕鬯(ひちょう)を喪(うしな)わざるものは)出でてもって、宗廟(そうびょう)社稷(しゃしょく)を守り、もって祭主(さいしゅ)となるべきなり。

象に曰く、(水|存(しきり)りに雷(らい)あるは震(しん)なり。君子もって恐懼(きょうく)修省(しゅうせい)す。

初九、震來((隙-阜)|虎)((隙-阜)|虎)。後笑言唖唖。吉。

象曰、震來((隙-阜)|虎)((隙-阜)|虎)、恐致福也。笑言唖唖、後有則也。

六二、震來(厂/萬)。億喪貝躋于九陵。勿逐、七日得。

象曰、震來乘剛也

六三、震蘇蘇。震行无。

象曰、震蘇蘇、位不當也

九四、震遂泥。

象曰、震遂泥未光也

六五震往來。意无喪有事。

象曰、震往來、危行也。其事在中、大无喪也

上六、震索索視矍矍征凶。震不于其。于其鄰无咎婚、媾有言。

象曰、震索索、中未得也。雖凶无咎畏鄰戒也

初九(しょきゅう)。震(しん)の来(きた)るとき((隙-阜|虎((隙-阜|虎(げきげき)たり。後には笑言唖唖(しょうげんあくあく)たり。吉(きつ)なり。

象に曰く、震の来るとき((隙-阜|虎((隙-阜|虎(げきげき)たりとは、恐れて福を致すなり。笑言唖唖(しょうげんあくあく)たりとは、後には則(のり)あるなり。

六二(りくじ)。震(しん)の来るとき(厂/萬(あやう)し。億(はか)りて貝(ばい)を喪(うしな)い、九陵(きゅうりょう)に躋(のぼ)る。逐(お) うなかれ。七日にして得ん。

象に曰く、震(しん)の来るとき(厂/萬(あやう)しとは、剛(ごう)に乗ればなり。

六三(りくさん)。震(ふる)いて蘇蘇(そそ)たり。震いて行けば(生/目(わざわい)なし。

象に曰く、震(ふる)いて蘇蘇(そそ)たりとは、位当たらざればなり。

九四(きゅうし)。震(ふる)いて遂(つい)に泥(なず)む。

象に曰く、震(ふる)いて遂(つい)に泥(なず)むとは、いまだ光(おお)いならざればなり。

六五(りくご)。震(ふる)いて往くも来るも(厂/萬(あやう)し。意(はか)りて有事を喪(うしな)うことなかれ。

象に曰く、震(ふる)いて往くも来るも(厂/萬(あやう)しとは、危行(きこう)なり。その事中(ちゅう)に在り、大いに喪(うしな)うことなきなり。

上六(じょうりく)。震(ふる)いて策策(さくさく)たり。視ること矍矍(かくかく)たり。征(ゆ)けば凶なり。震(ふる)うことその(窮-穴(み)においてせず、その隣りにおいてすれば、咎なし。婚媾(こんこう)言あり。

象に曰く、震いて策策(さくさく)たりとは、中(ちゅう)いまだ得ざればなり。凶なりといえども咎なしとは、隣りを畏(おそ)れて戒むなり。


艮下艮上 艮為山(ごんいさん)

艮下艮上 艮為山(ごんいさん)

艮其背不獲其身。行其庭、不見其人无咎。

彖曰、艮、止也。時止則止時行則行動靜不失其時其道光明。艮其止、止其所也上下敵應、不相與也是以不獲其身、行其庭不見其人、无咎也

象曰、兼山、艮。君子以思不出其位

その背(せ)に艮(とど)まりてその身を獲(え)ず。その庭に行きてその人を見ず。咎なし。

彖(たん)に曰く、艮(ごん)は、止(し)なり。時(とき)止まるべければすなわち止まり、時(とき)行くべければすなわち行き、動静その時を失わず、その道(みち)光明なり。その止(し)に艮(とど)まるとは、その所に止まるなり。上下(じょうか)敵応(てきおう)して、相い与(くみ)せず。ここをもってその身を獲ず、その庭に行きてその人を見ず、咎なきなり。

象に曰く、兼(か)ねて山あるは艮なり。君子もって思うことその位(くらい)を出(い)でず。

初六、艮其趾。无咎。利永貞。

艮其趾、未失正也

六二、艮其腓。不拯其隨。其心不快。

不拯其隨未退聽也

九三、艮其限。列其(夕/寅)。(厂/萬)薫心。

艮其限、危薫心也

六四、艮其身无咎。

艮其身止諸也

六五、艮其輔言有序悔亡。

艮其輔以中正也

上九、敦艮吉。

敦艮之吉、以厚終也

初六(しょりく)。その趾(あし)に艮(とど)まる。咎なし。永貞(えいてい)に利(よ)ろし。

象に曰く、その趾(あし)に艮(とど)まるとは、いまだ正を失わざるなり。

六二(りくじ)。その腓(こむら)に艮(とど)まる。拯(すく)わずしてそれ随(したが)う。その心快(こころよ)からず。

象に曰く、拯(すく)わずしてそれ随(したが)うとは、いまだ退きて聴(き)かざればなり。

九三(きゅうさん)。その限(こし)に艮(とど)まる。その(夕/寅(せぼね)を列(さ)く。(厂/萬(あやう)きこと心を薫(や)く。

象に曰く、その限(こし)に艮(とど)まる、危うきこと心を薫(や)くなり。

六四(りくし)。その身に艮(とど)まる。咎なし。

象に曰く、その身に艮(とど)まるとは、これを(窮-穴(み)に止むなり。

六五(りくご)。その輔(ほほぼね)に艮(とど)まる。言うこと序(じょ)あり。悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、その輔(ほほぼね)に艮(とど)まるとは、中正なるをもってなり。

上九(じょうきゅう)。艮(とど)まるに敦(あつ)し。吉(きつ)なり。

象に曰く、艮(とど)まるに敦(あつ)きの吉(きつ)とは、もって終わりを厚くするなり。


艮下巽上 風山漸(ふうざんぜん)

艮下巽上 風山漸(ふうざんぜん)

漸女歸吉。利貞。

彖曰、漸之進也女歸吉也。進得位往有功也。進以正、可以正邦也。其位、剛得中也止而巽動不也

山上有木漸君子以居賢徳善俗

漸(ぜん)は、女(じょ)の歸(とつ)ぐに吉(きつ)なり。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、漸(ぜん)の進むや、女(じょ)の帰(とつ)ぐに吉(きつ)なり。進んで位(くらい)を得、往きて功あるなり。進むに正をもってし、もって邦(くに)を正すべきなり。その位剛(ごう)にして中(ちゅう)を得るなり。止まりて巽(したが)い、動きて窮(きわ)まらざるなり。

象に曰く、山の上に木あるは漸(ぜん)なり。君子もって賢徳(けんとく)に居(お)りて俗を善(よ)くす。

初六、鴻漸于干。小子。有言无咎。

小子之、義无咎也

六二、鴻漸于磐。飲食(行<干)(行<干)、吉。

飲食(行<干)(行<干)、不素飽也

九三鴻漸于陸。夫征不復婦孕不育凶。利禦寇。

夫征不復、離羣也。婦孕不育、失其道也。利用禦寇、順相保也

六四、鴻漸于木或得其桷。无咎。

或得其桷、順以巽也終莫之勝吉得所願也

九五鴻漸于陵。婦三歳不孕。終莫之勝。吉。

其羽可用爲儀吉、不可亂也

上九、鴻漸于陸、其羽可用爲儀吉。

其羽可用爲儀、吉、不可亂也。

初六(しょりく)。鴻(かり)干(みぎわ)に漸(すす)む。小子(しょうし)は(厂/萬(あやう)し。言(げん)あれども咎なし。

象に曰く、小子(しょうし)の(厂/萬(あやう)きあ、義として咎なきなり。

六二(りくじ)。鴻(かり)磐(いわ)に漸(すす)む。飲食(行<干(行<干(かんかん)たり。吉(きつ)なり。

象に曰く、飲食(行<干(行<干(かんかん)たりとは、素飽(そほう)せざるなり。

九三(きゅうさん)。鴻(かり)陸(くが)に漸(すす)む。夫(おっと)征(ゆ)きて復(かえ)らず、婦(つま)孕(はら)みて育(やしな)わず。凶なり。寇(あだ)を禦(ふせ)ぐに利(よ)ろし。

象に曰く、夫(おっと)征(ゆ)きて復(かえ)らずとは、群醜(ぐんしゅう)を離るるなり。婦(つま)孕(はら)みて育(やしな)わずとは、その道を失えばなり。もって寇(あだ)を禦(ふせ)に利(よ)ろしとは、順(じゅん)にして相い保てばなり。

六四(りくし)。鴻(かり)木に漸(すす)む。あるいはその桷(たるき)を得。咎なし。

象に曰く、あるいはその桷(たるき)を得とは、順(じゅん)にしてもって巽(そん)なればなり。

九五(きゅうご)。鴻(かり)陵(おか)に漸(すす)む。婦(つま)三歳まで孕(はら)まず。終(つい)にこれに勝つことなし。吉(きつ)なり。

象に曰く、終(つい)にこれに勝つことなし。吉(きつ)なりとは、願うところを得るなり。

上九(じょうきゅう)。鴻(かり)陸(逵(き))に漸(すす)む。その羽をもって儀(ぎ)となすべし。吉(きつ)なり。

象に曰く、その羽もって儀(ぎ)となすべし、吉(きつ)なりとは、乱るべからざればなり。


兌下震上 雷沢帰妹(らいたくきまい)

兌下震上 雷沢帰妹(らいたくきまい)

歸妹。征凶。无攸利。

彖曰、歸妹、天地之大義也。天地不交而萬物不興歸妹、人之終始也。説以動所歸妹也征凶、位不當也。无攸利、柔乘剛也

象曰、澤上有雷、歸妹。君子以永終知敝

帰妹(きまい)は、征(ゆ)けば凶なり。利(よ)しきところなし。

彖(たん)に曰く、帰妹(きまい)は天地の大義なり。天地交わらなければ、万物興(おこ)らず。帰妹(きまい)は人の終始なり。説びてもって動く。帰(とつ)ぐところのものは妹(まい)なり。征けば凶なりとは、位(くらい)当らざればなり。利(よ)しきところなしとは、柔(じゅう)剛(ごう)に乗ればなり。

象に曰く、沢上に雷あるは帰妹(きまい)あり。君子もって終わりを永(なが)くし敝(やぶ)るるを知る。

初九、歸妹以(女|弟)。跛能履征吉。

歸妹以、以恒也。跛能履吉、相承也

九二、眇能視。利幽人之貞。

利幽人之貞、未變常也

六三、歸妹以須、反歸以(女|弟)。

歸妹以須、未當也

九四、歸妹愆期遲歸有時。

愆期之志有待而行也

六五、帝乙歸妹。其君之袂、不如其(女|弟)之袂良。月幾望。吉。

帝乙歸妹、不如其之袂良也、其位在中、以貴行也

上六、女承筐无實、士(圭|刀)羊无血无攸利。

上六无實、承筐也

初九(しょきゅう)。帰妹(きまい)に(女|弟(てい)をもってす。跛(あしなえ)能(よ)く履(ふ)む。征くときは吉(きつ)なり。

象に曰く、帰妹(きまい)に(女|弟(てい)をもってすとは、恒(つね)をもってするなり。跛(あしなえ)能(よ)く履(ふ)むの吉(きつ)とは相い承 (う)くればなり。

九二(きゅうじ)。眇(すがめ)能(よ)く視る。幽人(ゆうじん)の貞(てい)に利(よ)ろし。

象に曰く、。幽人(ゆうじん)の貞(てい)に利(よ)ろしとは、いまだ常を変ぜざるなり。

六三(りくさん)。帰妹(きまい)に須(しゅ)をもってす。反(かえ)りに帰(とつ)ぐに(女|弟(てい)をもってすべし。

象に曰く、帰妹(きまい)に須(しゅ)をもってすとは、いまだ当たらざればなり。

九四(きゅうし)。帰妹(きまい)に期を愆(あやま)る。帰(とつ)ぐを遅(ま)つこと時あり。

象に曰く、期を愆(あやま)るの志は、待つことありて行くなり。

六五(りくご)。帝乙(ていいつ)妹(まい)を帰(とつ)がしむ。その君の袂(たもと)は、その(女|弟(てい)の袂の良きにしかず。月望(ぼう)に幾 (ちか)し。吉(きつ)なり。

象に曰く、帝乙(ていいつ)妹(まい)を帰(とつ)がしむ。その(女|弟(てい)の袂の良きにしかずとは、その位(くらい)中に在り、貴(き)をもって行けばなり。

上六(じょうりく)。女(じょ)筐(かご)を承(う)けて実(じつ)なく、士(し)羊を(圭|刀(さ)くに血なし。利(よ)しきところなし。

象に曰く、上六(じょうりく)の実(じつ)なきは、虚(むな)しき筐(かご)に承(う)くるなり。


離下震上 雷火豊(らいかほう)

離下震上 雷火豊(らいかほう)

豐。亨。王假之。勿憂宜日中。

彖曰、豐大也。明以動、故豐王假之尚大、也勿憂宜日中、宜照天下也。日中則昃。月盈則食。天地盈與時消息、而況於人乎況於鬼神乎

象曰、雷電皆至、豐。君子以折獄致刑

豊(ほう)は、亨(とお)る。王これに仮(いた)る。憂うるなかれ。日中に宜(よろ)し。

彖(たん)に曰く、豊(ほう)は、大(だい)なり。明(めい)にしてもって動く、故に豊かなり。王これに仮(いた)るとは、大を尚(たっと)ぶなり。憂うるなかれ、日中に宜(よろ)しとは、宜しく天下を照らすべしとなり。日中すればすなわち昃(かたむ)き、月盈(み)つればすなわち食(か)く。天地の盈虚 (えいきょ)は、時と消息す。しかるをいわんや人においてをや、いわんや鬼神(きしん)においてをや。

象に曰く、雷電(らいでん)みな至るは豊なり。君子もって獄を折(さだ)め刑を致す。

初九、遇其配主雖旬无咎。往有尚。

象曰、雖旬无咎、過旬災也

六二豐其蔀。日中見斗。往得疑疾有孚發若吉。

象曰、有孚發若、信以發志也

九三、豐其沛。日中見沫折其右肱。无咎。

象曰、豐其沛、不可大事也。折其右肱終不可用也

九四豐其蔀。日中見斗。遇其夷主。吉。

象曰、豐其蔀、位不當也。日中見斗、幽不明也。遇其夷主、吉行也

六五、來章有慶譽吉。

象曰、六五之吉、有慶也

上六、豐其屋、蔀其家。其戸(門<規)、闃其无人三歳不覿凶。

象曰、豐其屋、天際翔也。其戸、闃其无人、自藏也

初九(しょきゅう)。その配主(はいしゅ)に遇う。旬(ひと)しといえども咎なし。往けば尚(たっと)ばれることあり。

象に曰く、旬(ひと)しといえども咎なしとは、旬しきを過ぐれば災あるなり。

六二(りくじ)。その蔀(しとみ)を豊(おお)いにす。日中に斗(と)を見る。往けば疑い疾(にく)まるるを得ん。孚(まこと)ありて発若(はつじゃく) たれば、吉(きつ)なり。

象に曰く、孚(まこと)ありて発若(はつじゃく)たりとは、信もって志を発するなり。

九三(きゅうさん)。その沛(はい)を豊(おお)いにす。日中に沫(ばい)を見る。その右の肱(ひじ)を折る。咎なし。

象に曰く、その沛(はい)を豊(おお)いにすとは、大事に可ならなるざり。その右の肱(ひじ)を折るとは、終(つい)に用うべからざるなり。

九四(きゅうし)。その蔀(しとみ)を豊(おお)いにす。日中に斗(と)を見る。その夷主(いしゅ)に遇えば、吉(きつ)なり。

象に曰く、その蔀(しとみ)を豊(おお)にすとは、位(くらい)当たらざればなり。日中に斗(と)を見るとは、幽(くら)くして明かならざるなり。その夷主(いしゅ)に遇えば、吉(きつ)なりとは、行けばなり。

六五(りくご)。章(しょう)を来(きた)せば、慶誉(けいよ)あり。吉(きつ)なり。

象に曰く、六五(りくご)の吉(きつ)とは、慶びあるなり。

上六(じょうりく)。その屋(おく)を豊(おお)いにし、その家に蔀(しとみ)す。その戸を(門<規)(うかが)うに闃(げき)としてそれ人なし。三歳まで観(み)ず。凶なり。

象に曰く、その屋(おく)を豊(おお)いにすとは、天際(てんさい)に翔(かけ)るなり。その戸を(門<規)(うかが)うに闃(げき)としてそれ人なしとは、みずから蔵(かく)るるなり。


艮下離上 火山旅(かざんりょ)

艮下離上 火山旅(かざんりょ)

旅。小亨。旅貞吉。

彖曰、旅、小亨、柔得中乎外而順乎剛、止而麗乎明是以小亨旅貞吉也。旅之時義大矣哉

象曰、山上有火、旅。君子以明愼用刑、而不留獄

旅(りょ)は少(すこ)しく亨(とお)る。旅には貞(ただ)しければ吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、旅(りょ)は少(すこ)しく亨(とお)る。柔(じゅう)中を外に得て、剛(ごう)に順(したが)う。止まりて明に麗(つ)く。ここをもって少(すこ)しく亨(とお)り、旅には貞(ただ)しければ吉(きつ)なるなり。旅(りょ)の時義(じぎ)、大いなるかな。

象に曰く、山上(さんじょう)に火あるは旅(りょ)なり。君子もって明かに慎んで刑を用いて獄を留(とど)めず。

初六、旅瑣瑣斯其所取災。

象曰、旅瑣瑣志災也

六二、旅即次懷其資。得童僕貞。

象曰、得童僕貞、終无尤也

九三、旅焚其次喪其童僕貞。

象曰、旅焚其次亦以傷矣。以旅與下其義喪也

九四、旅于處。得其資斧。我心不快。

象曰、旅于處未得位也。得其資斧、心未快也

六五、射雉一矢亡。終以譽命。

象曰、終以譽命、上逮也

上九、鳥焚其巣。旅人先笑後號(口|兆)。喪牛于易。凶。

象曰、以旅在上、其義焚也。喪牛于易、終莫之聞也

初六(しょりく)。旅して瑣瑣(ささ)たり。斯(こ)れその災いを取るところなり。

象に曰く、旅して瑣瑣(ささ)たりとは、志(こころざし)窮して災いあるなり。

六二(りくじ)。旅して次(やど)に即(つ)き、その資(かね)を懐(いだ)き、童僕(どうぼく)の貞(てい)を得たり。

象に曰く、童僕(どうぼく)の貞(てい)を得たりとは、終(つい)に尤(とが)なきなり。

六三(りくさん)。旅してその次(やど)を焚(や)かれ、その童僕(どうぼく)を喪(うしな)う。貞(ただ)しけれども(厂/萬(あやう)し。

象に曰く、旅してその次(やど)を焚(や)かるとは、亦(また)もって傷(いた)まし。旅をもって与(くみ)す、その義を喪(うしな)うなり。

九四(きゅうし)。旅して于(ここ)に処(お)り、その資斧(しふ)を得たりとは、我が心快(こころよ)らず。

象に曰く、旅して于(ここ)に処(お)り、その資斧(しふ)を得たりとは、心いまだ快(こころよ)からざるなり。

六五(りくご)。雉(きじ)を射て、一矢亡(うしな)う。終(つい)にもって譽命(よめい)あり。

象に曰く、終(つい)にもって譽命(よめい)ありとは、上(かみ)に逮(およ)ぶなり。

上九(じょうきゅう)。鳥その巣を焚(や)かる。旅人(りょじん)先には笑い、後には号(な)き{口︱兆}(さけ)ぶ。牛を易(えき)に喪(うしな)う。凶なり。

象に曰く、旅をもて上(かみ)に在り、その義に焚(や)かるるなり。牛を易(えき)に喪(うしな)うおとは、終わりにこれを聴(き)くことなり。


巽下巽上 巽為風(そんいふう)

巽下巽上 巽為風(そんいふう)

巽。小亨。利有攸往、利見大人。

彖曰、重巽、以申命。剛巽乎中正而志行、柔皆順乎剛是以小亨。利有攸往、利見大人

象曰、隨風、巽、君子以申命行事

巽(そん)は、少(すこ)しく亨(とお)る。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、重巽(ちょうそん)はもって命(めい)を申(かさ)ぬるなり。剛(ごう)は中正に巽(したが)いて志(こころざし)行われ、柔(じゅう)はみな剛(ごう)に順(したが)う。こころもって少(すこ)しく亨(とお)り、往(ゆ)くところあるに利(よ)ろしく、大人(たいじん)を見るに利 (よ)しきなり。

象に曰く、随風(ずいふう)は巽(そん)なり。君子もって命(めい)を申(かさ)ね事を行う。

初六、進退利武人之貞。

象曰、進退志疑也。利武人之貞、志治也

九二、巽在牀下。用史巫紛若吉无咎。

象曰、紛若之吉得中也

九三、頻巽吝。

象曰、頻巽之吝、志窮也

六四、悔亡。田獲三品。

象曰、田獲三品、有功也

九五、貞吉。悔亡无不利。无初有終。先庚三日、後庚三日吉。

象曰、九五之吉、位正中也

上九、巽在牀下、喪其資斧。貞凶。

象曰、巽在牀下、上窮也喪其資斧、正乎凶也

初六(しょりく)。進み退く。武人の貞(てい)に利(よ)ろし。

象に曰く、進み退くとは、志(こころざし)疑うなり。武人の貞(てい)に利(よ)ろしとは、志治まるなり。

九二(きゅうじ)。巽(したが)いて牀下(しょうか)に在り。史巫(しふ)を用うること粉若(ふんじゃく)たれば、吉(きつ)にして咎なし。

象に曰く、粉若(ふんじゃく)たるの吉(きつ)とは、中(ちゅう)を得ればなり。

九三(きゅうさん)。頻(しきり)に巽(したが)う。吝なり。

象に曰く、頻(しきり)に巽(したが)うの吝なりとは、志窮(きゅう)すればなり。

六四(りくし)。悔(くい)亡ぶ。田(かり)にして三品(さんぴん)を獲(え)たり。

象に曰く、田(かり)にして三品(さんぴん)を獲(え)たりとは、功あるなり。

九五(きゅうご)。貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。利(よ)ろしからざるなし。初めなくして終わりあり。庚(こう)に先立つこと三日、庚に後(おく)るること三日。吉(きつ)なり。

象に曰く、九五(きゅうご)の吉(きつ)なるは、位(くらい)正中なればなり。

上九(じょうきゅう)。巽(したが)いて牀下(しょうか)に在り。その資斧(しきん)を喪(うしな)う。貞(ただ)しけれども凶なり。

象に曰く、巽(したが)いて牀下(しょうか)にありとは、上(かみ)窮(きわ)まるなり。資斧(しきん)を喪(うしな)とは、正しく凶なるなり。


兌下兌上 兌為沢(だいたく)

兌下兌上 兌為沢(だいたく)

兌。亨利貞。

彖曰、兌、説也。剛中而柔外、説以利貞、是以順乎天而應乎人説以先民、民忘其勞。説以犯難民忘其死。説之大、民勸矣哉

象曰、麗澤、兌。君子以朋友講習

兌(だ)は、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、兌(だ)は説(えつ)なり。剛(ごう)中にして柔(じゅう)外なり。説(よろこ)びてもって貞(てい)なるに利(よ)ろし。ここをもって天に順(したが)い人に応ずるなり。説(よろこ)びてもって民に先立つときは、民その労を忘れ、説びをもって難を犯すときは、民その死を忘る。説(えつ)の大いなる、民勧(すす)むかな。

象に曰く、麗沢(りたく)は兌(だ)なり。君子もって朋友(ほうゆう)講習す。

初九、和兌。吉。

象曰、和兌之吉、行未疑也

九二、孚兌吉悔亡。

象曰、孚兌之吉、信志也

六三、來兌凶。

象曰、來兌之凶、位不當也

九四、商兌未寧。介疾有喜。

象曰、九四之喜有慶也

九五孚于剥(厂/萬有。

象曰、孚于剥位正當也

上六、引兌。

象曰、上六引兌未光也

初九(しょきゅう)。和(わ)して兌(よろこ)ぶ。吉(きつ)なり。

象に曰く、和(わ)して兌(よろこ)ぶの吉(きつ)とは、行いていまだ疑われざるなり。

九二(きゅうじ)。孚(まこと)ありて兌(よろこ)ぶ。吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、孚(まこと)ありて兌(よろこ)ぶの吉(きつ)とは、志を信(まこと)にすればなり。

六三(りくさん)。来(きた)たりて兌(よろこ)ぶ。凶なり。

象に曰く、来(きた)たりて兌(よろこ)ぶの凶とは、位(くらい)当たらざればなり。

九四(きゅうし)。商(はか)りて兌(よろこ)ぶ。いまだ寧(やす)からざるも、介(かた)く疾(にく)めば喜びあり。

象に曰く、九四(きゅうし)の喜びとは、慶びあるなり。

九五(きゅうご)。剥(はく)に孚(まこと)あり。(厂/萬(あやう)きことあり。

象に曰く、剥(はく)に孚(まこと)ありとは、位(くらい)正(まさ)に当たればなり。

上六(じょうりく)。引きて兌(よろこ)ぶ。

象に曰く、上六(じょうりく)の引きて兌(よろこ)ぶとは、いまだ光(おお)いならざるなり。


坎下巽上 風水渙(ふうすいかん)

坎下巽上 風水渙(ふうすいかん)

渙。亨。王假有廟。利渉大川利貞。

彖曰、渙、亨、剛來而不。柔得位乎外而上同。 王假有廟、王乃在中也。 利渉大川、乘木有功也

象曰、風行水上、渙。先王以享于帝立廟

渙(かん)は、亨(とお)る。王(おう)有廟(ゆうびょう)に仮(いた)る。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よ)ろし。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、渙(かん)は、亨(とお)る。剛(ごう)来たりて窮(きわ)まらず、柔(じゅう)位を外(そと)に得て上同(しょうどう)す。王(おう)有廟(ゆうびょう)に仮(いた)とは、王すなわち中(ちゅう)に在るなり。大川(たいせん)を渉るに利(よ)ろしとは、木に乗りて功あるなり。

象に曰く、風の水上(すいじょう)を行くは渙(かん)なり。先王(せんのう)もって帝(てい)を享(まつ)り廟(びょう)を立つ。

初六、用拯馬壯。吉。

象曰、初六之吉、順也

九二、渙奔其机、悔亡。

象曰、渙奔其机、得願也

六三、渙其。无悔。

象曰、渙其、志在外也

六四、渙其羣。元吉。渙有丘匪夷所思。

象曰、渙其羣元吉、光大也

九五、渙汗其大號。渙王居。无咎。

象曰、王居无咎正位也

上九、渙其血去逖出无咎。

象曰、渙其血、遠害也。

初六(しょりく)。用(も)って拯(すく)うに馬壮(さか)んなれば、吉(きつ)なり。

象に曰く、初六(しょりく)の吉(きつ)とは、順(じゅん)なればなり。

九二(きゅうじ)。渙(かん)のときその机(き)に奔(はし)る。悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、渙(かん)のときその机(き)に奔(はし)るとは、願いを得るなり。

六三(りくさん)。その(窮-穴(み)を渙(ち)らす。悔なし。

象に曰く、その(窮-穴(み)を渙(ち)らすとは、志、外(そと)に在るなり。

六四(りくし)。その群(むれ)を渙(ち)らす。元吉(げんきつ)なり。渙(ち)るときは丘(あつま)ることあり。夷(つね)の思うところにあらず。

象に曰く、その群(むれ)を渙(ち)らす、元吉(げんきつ)なりとは、光大(こうだい)なるなり。

九五(きゅうご)。渙(かん)のときその大号(たいごう)を汗(あせ)にす。渙のとき王として居るも咎なし。

象に曰く、王として居るも咎なしとは、正位(せいい)なればなり。

上九(じょうきゅう)。その血を渙(ち)らし、去りて逖(とお)く出(い)づ。咎なし。

象に曰く、その血を渙(ち)らすとは、害に遠ざかるなり。


兌下坎上 水沢節(すいたくせつ)

兌下坎上 水沢節(すいたくせつ)

節。亨。苦節、不可貞。

彖曰、節亨、剛柔分、而剛得中。苦節不可貞、其道也。説以行險。當位以節、中正以通天地節而四時成。節以制度、不傷財、不害民

象曰、澤上有水、節。君子以制數度、議徳行

節(せつ)は、亨(とお)る。苦節(くせつ)は貞(てい)すべからず。

彖(たん)に曰く、節(せつ)は、亨(とお)る。剛(ごう)柔(じゅう)分かれて剛(ごう)中を得ればなり。苦節(くせつ)は貞(てい)すべからずとは、その道窮(きわ)まればなり。説(よろこ)びてもって険(けん)を行き、位(くらい)に当たりもって節(せつ)あり、中正(ちゅうせい)にしてもって通ず。天地は節ありて四時(しいじ)成る。節してもって度を制すれば、財を傷(やぶ)らず民を害せず。

象に曰く、沢上に水あるは節なり。君子もって数度(すうど)を制し徳行を議(ぎ)す。

初九、不出戸庭。无咎。

象曰、不出戸庭、知通塞也

九二、不出門庭凶。

象曰、不出門庭凶、失時極也

六三、不節若則嗟若无咎。

象曰、不節之嗟、又誰咎也

六四、安節。亨。

象曰、安節之亨承上道也

九五、甘節吉。往有尚。

象曰、甘節之吉、居位中也

上六、苦節。貞凶。悔亡。

象曰、苦節貞凶、其道也

初九(しょきゅう)。戸庭(こてい)を出(い)でず。咎なし。

象に曰く、戸庭(こてい)を出(い)でずとは、通塞(つうそく)を知ればなり

九二(きゅうじ)。門庭(もんてい)を出(い)でず。凶なり。

象に曰く、門庭(もんてい)を出でず、凶なりとは、時を失すること極(きわ)まるなり。

六三(りくさん)。節若(せつじゃく)たらざれば嗟若(さじゃく)たり。咎なし。

象に曰く、節せざるの嗟(なげ)きとは、また誰かをか咎めん。

六四(りくし)、節(せつ)に安(やす)んず。亨(とお)る。

象に曰く、節(せつ)に安(やす)んずるの亨(とお)るは、上(かみ)の道を承(う)くればなり。

九五(きゅうご)。節(せつ)に甘(あま)んず。吉(きつ)なり。往けば尚(たっと)ばるることあり。

象に曰く、節(せつ)に甘(あま)んずるの吉(きつ)とは、位(くらい)に居(お)りて中(ちゅう)なればなり。

上六(じょうりく)。苦節(くせつ)は貞(てい)なれば凶なり。悔(くい)亡ぶ。

象に曰く、苦節(くせつ)は貞(てい)なれば凶なりとは、その道窮(きわ)なればなり。


兌下巽上 風沢中孚(ふうたくちゅうふ)

兌下巽上 風沢中孚(ふうたくちゅうふ)

中孚、豚魚吉。利渉大川利貞。

彖曰、中孚、柔在内而剛得中、説而巽孚乃化邦也。豚魚吉、信及豚魚也。利渉大川、乘木舟也。中孚以利貞、乃應乎天也

象曰、澤上有風、中孚。君子以議獄緩死

中孚(ちゅうふ)は、豚魚(とんぎょ)にして吉(きつ)なり。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よ)ろし。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、中孚(ちゅうふ)は、柔(じゅう)、内に在りて剛(ごう)、中(ちゅう)を得たり。説(よろこ)びて巽(したが)い、孚(まこと)ありてすなわち邦(くに)を化(か)するなり。豚魚(とんぎょ)にして吉(きつ)なりとは、信(まこと)豚魚に及ぶなり。大川(たいせん)を渉(わた)るに利 (よ)ろしとは、木に乗りて舟虚(きょ)なればなり。中孚(ちゅうふ)にしてもって貞(ただ)しきに利(よ)ろしとは、すなわち天に応ずるなり。

象に曰く、沢上(たくじょう)に風あるは中孚(ちゅうふ)なり。君子もって獄を議し、死を緩(ゆる)くす。

初九、虞吉。有它、不燕。

象曰、初九虞吉志未變也

九二、鳴鶴在陰其子和之。我有好爵。吾與爾靡之。

象曰、其子和之、中心願也

六三、得敵。或鼓。或罷。或泣。或歌。

象曰、或鼓或罷、位不當也

六四、月幾望。馬匹亡无咎。

象曰、馬匹亡絶類上也

九五、有孚攣如。无咎。

象曰、有孚攣如、位正當也

上九、翰音登于天。貞凶。

象曰、翰音登于天、何可長也

初九(しょきゅう)。虞(やす)ずれば吉(きつ)なり。它(あだ)あれば燕(やす)からず。

象に曰く、初九(しょきゅう)の虞(やす)ずれば吉(きつ)なるは、志いまだ変(へん)ぜざるなり。

九二(きゅうじ)。鳴鶴(めいかっく)の陰に在り、その子これに和す。我に好爵(こうしゃく)あり。吾(われ)、爾(なんじ)とこれに靡(よ)わん。

象に曰く、その子これに和すとは、中心(ちゅうしん)より願うなり。

六三(りくさん)。敵を得たり。あるいは鼓(こ)しあるいは罷(や)め、あるいは泣きあるいは歌う。

象に曰く、あるいは鼓(こ)しあるいは罷(や)むとは、位(くらい)当たらざればなり。

六四(りくし)。月、望(ぼう)に幾(ちか)し。馬匹(ばひつ)亡(うしな)う。咎なし。

象に曰く、馬匹(ばひつ)亡(うしな)うとは、類(るい)を絶ちて上(のぼ)るなり。

九五(きゅうご)。孚(まこと)ありて攣如(れんじょ)たり。咎なし。

象に曰く、孚ありて攣如(れんじょ)たりとは、位(くらい)、正(まさ)に当たればなり。

上九(じょうきゅう)。翰音(かんおん)天に登る。貞しけれども凶なり。

象に曰く、翰音(かんおん)天に登る、何ぞ長(なが)かるべけんや。


艮下震上 雷山小過(らいざんしょうか)

艮下震上 雷山小過(らいざんしょうか)

小過亨。利貞可小事。不可大事飛鳥遺之音。不宜上、宜下。大吉。

彖曰、小過小者過而亨也。過以利貞、與時行也。柔得中、是以小事吉也。 剛失位而不中、是以不可大事也有飛鳥之象焉飛鳥遺之音、不宜上宜下大吉上逆而下順也

象曰、山上有雷、小過。君子以行過乎恭。喪過乎哀。用過乎儉

小過(しょうか)は、亨(とお)る。貞しきに利(よ)ろし。小事には可なり、大事には可ならず。飛鳥(ひちょう)これが音を遺(のこ)す。上(のぼ)るに宜(よろ)しからず、下(くだ)るに宜し。大いに吉(きつ)なり。

彖(たん)に曰く、小過(しょうか)は、小なる者過ぎて亨(とお)るなり。過ぎてもって貞しきに利(よ)ろしとは、時と与(とも)に行うなり。柔(じゅう)中(ちゅう)を得たり。ここをもって小事には吉(きつ)なるなり。剛(ごう)位を失いて中(ちゅう)ならず。ここをもって大事には可ならざるなり。飛鳥(ひちょう)の象あり。飛鳥これが音を遺(のこ)す。上(のぼ)るに宜(よろ)しからず、下(くだ)るに宜し、大いに吉(きつ)なりとは、上るは逆にして下るは順(じゅん)なればなり。

象に曰く、山上に雷あるは小過(しょうか)なり。君子もって行いは恭(きょう)に過ぎ、喪(そう)は哀(あい)に過ぎ、用(よう)は倹(けん)に過ぐ。

初六、飛鳥以凶。

象曰、飛鳥以凶、不可如何也

六二、過其祖。遇其妣。不及其君。遇其臣。无咎。

象曰、不及其君臣不可過也

九三、弗過防之。從或(爿|戈)之。凶。

象曰、從或之凶如何也

九四、无咎。弗過遇之。往必戒。勿用永貞。

象曰、弗過遇之、位不當也。往必戒、終不可長也

六五、密雲不雨。自我西郊。公弋取彼在穴。

象曰、密雲不雨、巳上也

上六、弗遇過之。飛鳥離之凶。是謂災(生/目)。

象曰、弗遇過之、巳亢也

初六(しょりく)。飛鳥(ひちょう)もって凶なり。

象に曰く、飛鳥(ひちょう)もって凶なりとは、如何(いかん)ともすべからざるなり。

六二(りくじ)。その祖を過ぎ、その妣(ひ)に遇う。その君に及ばずして、その臣に遇う。咎なし。

象に曰く、その君に及ばずとは、臣に過ぐべからざるなり。

九三(きゅうさん)。過ぎてこれを防がざれば、従いてあるいはこれを(爿|戈(そこな)う。凶なり。

象に曰く、従いてあるいはこれを(爿|戈(そこな)うとは、凶なること如何にせん。

九四(きゅうし)。咎なし。過ぎずしてこれに遇う。往けば(厂/萬(あやう)し。必ず戒むべし。永貞(えいてい)を用うることなかれ。

象に曰く、過ぎずしてこれに遇うとは、位(くらい)当たらざればなり。往けば(厂/萬(あやう)し、必ず戒むべしとは、終(つい)に長(なが)かるべからざればなり。

六五(りくご)。密雲(みつうん)あれど雨ふらず。我が西郊(せいこう)よりす。公、弋(いぐるみ)して彼の穴に在るを取る。

象に曰く、密雲あれど雨ふらずとは、巳(はなは)だ上ればなり。

上六(じょうりく)。遇わずしてこれを過ぐ。飛鳥(ひちょう)これに離(かか)る。凶なり。これを災(生/目(さいせい)と謂う。

象に曰く、遇わずしてこれを過ぐとは、巳(はなは)だ亢(たかぶ)れるなり。


離下坎上 水火既済(すいかきさい)

離下坎上 水火既済(すいかきさい)

既濟。亨小利貞。初吉。終亂。

彖曰、既濟亨、小者亨也。利貞剛柔正而位當也。 初吉、柔得中也。終止則亂、其道也

象曰、水在火上、既濟。君子以思患而豫防之

既済(きさい)は、亨(とお)ること小なり。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。初めは吉(きつ)にして終わりは乱る。

彖(たん)に曰く、既済(きさい)は亨(とお)るとは、小なる者亨(とお)るなり。貞しきに利(よ)ろしとは、剛(ごう)柔(じゅう)正しくして位当たればなり。初め吉(きつ)なりとは、柔(じゅう)中を得ればなり。終わりに止まれば乱る、その道窮(きわ)まるなり。

象に曰く、水の火上に在るは既済(きさい)なり。君子もって患(かん)を思いて予(あらか)じめこれを防ぐ。

初九、曳其輪。濡其尾。无咎。

象曰、曳其輪、義无咎也

六二、婦。喪其(艸/弗)。勿逐。七日得。

象曰、七日得、以中道也

九三、高宗伐鬼方。三年克之。小人勿用。

象曰、三年克之、憊也

六四、繻有衣(衣|如)。終日戒。

象曰、終日戒、有所疑也

九五、東鄰殺牛、不如西鄰之(示|龠)祭。實受其福。

象曰、東鄰殺牛、不如西鄰之時也。實受其福、吉大來也

上六、濡其首。(厂/萬)。

象曰、濡其首、何可久也

初九(しょきゅう)。その輪を曳(ひ)き、その尾を濡(ぬ)らす。咎なし。

象に曰く、その輪を曳(ひ)くとは、義(ぎ)として咎なきなり。

六二(りくじ)。婦(ふ)その(艸/弗(ふつ)を喪(うしな)う。逐(お)うなかれ。七日にして得ん。

象に曰く、七日にして得んとは、中道(ちゅうどう)もってなり。

九三(きゅうさん)。高宗(こうそう)鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にしてこれに克(か)つ。小人は用うるなかれ。

象に曰く、三年にしてこれに克(か)つとは、憊(つか)れたるなり。

六四(りくし)。繻(ぬ)るるとき衣(衣|如(いじょ)あり。終日戒(いまし)む。

象に曰く、終日戒(いまし)むとは、疑うところあればなり。

九五(きゅうご)。東鄰(とうりん)の牛を殺すは、西鄰(せいりん)の(示|龠祭(やくさい)して、実(まこと)にその福を受くるにしかず。

象に曰く、東鄰(とうりん)の牛を殺すは、西鄰(せいりん)の時(とき)なるにしかざるなり。実(まこと)にその福を受くとは、吉(きつ)大いに来るなり。

上六(じょうりく)。その首を濡(ぬ)らす。(厂/萬(あやう)し。

象に曰く、その首を濡らすとは、何ぞ久しかるべけんや。


坎下離上 火水未済(かすいびせい)

坎下離上 火水未済(かすいびせい)

未濟。亨。小狐濟、濡其尾无所利。

彖曰、未濟亨、柔得中也。 小狐濟、未出中也。 濡其尾、无攸利、不續終也雖不當位剛柔應也。

象曰、火在水上、未濟。君子以愼辨物居方

未済(びせい)は、亨(とお)る。小狐ほとんど済(わた)らんとして、その尾を濡らす。利(よ)しきところなし。

彖(たん)に曰く、未済(びせい)は亨(とお)るとは、柔(じゅう)中を得ればなり。小狐ほとんど済(わた)らんとすとは、いまだ中(ちゅう)を出(い) でざるをなり。その尾を濡らす。利(よ)しきところなしとは、続いて終わらざればなり。位に当たらずといえども、剛(ごう)柔(じゅう)応ずるなり。

象に曰く、火の水上に在るは未済(びせい)なり。君子をもって慎みてものを弁(べん)じ方(ほう)に居(お)く。

初六、濡其尾。吝。

象曰、濡其尾、亦不知極也

九二、曳其輪。貞吉。

象曰、九二貞吉、中以行正也

六三未濟征凶。利渉大川。

象曰、未濟征凶、位不當也

九四貞吉、悔亡。震用伐鬼方三年有賞于大國。

象曰、貞吉悔亡、志行也

六五、貞吉。无悔。君子之光有孚。吉。

象曰、君子之光、其暉吉也

上九、有孚于飲酒。无咎。濡其首有孚失是。

象曰、飲酒濡首、亦不知節也

初六(しょりく)。その尾を濡(ぬ)らす吝なり。

象に曰く、その尾を濡(ぬ)らすとは、また極(きょく)を知らざるなり。

九二(きゅうじ)。その輪を曳(ひ)く。貞しくして吉(きつ)なり。

象に曰く、九二(きゅうじ)の貞しくして吉(きつ)なるは、中(ちゅう)をもって正(せい)を行えばなり。

六三(りくさん)。いまだ済(わた)らず。征(ゆ)くは凶なり。大川(たいせん)を渉るに利(よ)ろし。

象に曰く、いまだ済(わた)らず、征(ゆ)くは凶なりとは位(くらい)当たらざればなり。

九四(きゅうし)。貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。震(うご)きてもって鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にして大国に賞(しょう) せらるることあり。

象に曰く、貞しければ、悔亡ぶとは、志行わるるなり。

六五(りくご)、貞しければ吉(きつ)にして悔いなし。君子の光あり。孚(まこと)ありて吉(きつ)なり。

象に曰く、君子の光ありとは、その輝き吉(きつ)なるなり。

上九(じょうきゅう)。飲酒に孚(まこと)あり。咎なし。その首(こうべ)を濡らす時は、孚(まこと)あれども是(ぜ)を失う。象に曰く、酒を飲みて首 (こうべ)を濡らすとは、また節するを知らざるなり。


TOP

引用文献






TOP

YouTube易経

易経

百科事典
道教
Taoism
基礎
 ·  · 無極 · 太極 · 陰陽 · 五行 ·  · 内丹術 · 無為
典籍
老子道徳経 · 荘子南華真経 · 列子 · 参同契 · 抱朴子 · 黄庭経 · 度人経 · 清静経 · 雲笈七籤 · 道蔵
神仙
三清 · 玉皇大帝 · 黄帝 · 西王母 · 八仙 · 関羽 · 嫦娥 · 媽祖 · 鍾馗 · 他の神
人物
老子 · 荘子 · 張陵 · 張角 · 魏伯陽 · 葛洪 · 許遜 · 寇謙之 · 陸修静 · 陶弘景 · 孫思邈 · 陳摶 · 五祖七真 · 王重陽 · 丘長春 · 張三丰
宗派
五斗米道 · 霊宝派 · 上清派 · 重玄派 · 浄明道 · 全真教 · 正一教
聖地
洞天 · 蓬莱

道教 ポータル
· ·
儒家経典
五経
九経



儀礼/周礼
春秋
礼記
春秋左氏伝
春秋公羊伝
春秋穀梁伝
七経 十二経
論語
孝経
爾雅
十三経
孟子

易経』(えききょう、正字体:易經、拼音: Yì Jīng)は、古代中国の書物。『卜』が動物である亀の甲羅や牛や鹿の肩甲骨に入ったヒビの形から占うものであるのに対して、『筮』は植物である『蓍[1]』の茎の本数を用いた占いである。の時代から蓄積された卜辞を集大成したものとして易経は成立した。易経は儒家である荀子の学派によって儒家の経典として取り込まれた。現代では、哲学書としての易経と占術のテキストとしての易経が、一部重なりながらも別のものとなっている。中心思想は、陰陽二つの元素の対立と統合により、森羅万象の変化法則を説く。著者は伏羲とされている[2]

中国では『黄帝内經』・『山海經』と合わせて「上古三大奇書」とも呼ぶ。

I-Ching-chinese-book.jpg

概要

儒教の基本書籍である五経の筆頭に挙げられる経典であり、『周易』(しゅうえき、Zhōu Yì)または単に『』(えき)とも呼ぶ。通常は、基本の「経」の部分である『周易』に儒教的な解釈による附文(十翼または伝)を付け加えたものを一つの書とすることが多く、一般に『易経』という場合それを指すことが多いが、本来的には『易経』はの卦画・卦辞・爻辞部分の上下二篇のみを指す。

三易の一つであり、太古よりの占いの知恵を体系・組織化し、深遠な宇宙観にまで昇華させている。今日行われる易占法の原典であるが、古代における占いは現代にしばしば見られる軽さとは大いに趣きを異にし、共同体の存亡に関わる極めて重要かつ真剣な課題の解決法であり、占師は政治の舞台で命がけの責任を背負わされることもあった。

書名

この書物の本来の書名は『易』または『周易』である。『易経』というのは以降の名称で、儒教の経書に挙げられたためにこう呼ばれる、。

なぜ『易』という名なのか、古来から様々な説が唱えられてきた。ただし、「易」という語がもっぱら「変化」を意味し、また占いというもの自体が過去・現在・未来へと変化流転していくものを捉えようとするものであることから、何らかの点で “変化” と関連すると考える人が多い。

有名なものに「易」という字が蜥蜴に由来するという “蜥蜴説” があり、蜥蜴が肌の色を変化させることに由来するという。

また、「易」の字が「日」と「月」から構成されるとする “日月説” があり、太陽太陰)で陰陽を代表させているとする説もあり、太陽の運行から運命を読みとる占星術に由来すると考える人もいる。

伝統的な儒教の考えでは、『周易正義』が引く『易緯乾鑿度』の「易は一名にして三義を含む」という「変易」「不易」「簡易」(かわる、かわらぬ、たやすい)の “三易説” を採っている。

また、『周易』の「周」は中国王朝の周代の易の意であると言われることが多いが、鄭玄などは「周」は「あまねく」の意味であると解している。

『易経』の構成

現行『易経』は、本体部分とも言うべき(1)「経」(狭義の「易経」。「上経」と「下経」に分かれる)と、これを注釈・解説する10部の(2)「」(「易伝」または「十翼(じゅうよく)」ともいう)からなる。

(1)「経」には、六十四卦のそれぞれについて、図像である卦画像と、卦の全体的な意味について記述する卦辞と、さらに卦を構成している6本の位(こうい)の意味を説明する384の爻辞(乾・坤にのみある「用九」「用六」を加えて数えるときは386)とが、整理され箇条書きに収められ、上経(30卦を収録)・下経(34卦を収録)の2巻に分かれる。「経」における六十四卦の並び方がどのように決定されたのかは現代では不明である。また六十四卦の卦辞や爻辞を調べる場合、「経」における六十四卦の並べ方そのままでは不便であり、六十四卦を上下にわけることで、インデックスとなる小成八卦の組み合わせによって六十四卦が整理された。その後、小成八卦自体が世界の構成要素の象徴となって、様々な意味が付与されることとなった。

具体例をしめすと、乾は以下のとおりである。

Iching-hexagram-01.png 乾、元亨。利貞。初九、潜竜勿用。九二、…。九三、…。九四、…。九五、…。上九、…。用九、…。

陰陽を示す横線(爻)が6本が重ねられた卦のシンボルがある。次に卦辞が続き卦の名前(乾)と卦全体の内容を様々な象徴的な言葉で説明する。 次に初九、九二、九三、九四、九五、上九(、用九)で始まる爻辞があり、シンボル中の各爻について説明する。6本線(爻)の位置を下から上に、初二三四五上という語で表し、九は陽(TXJ 1.svg)を表している。(陰(TXJ 2.svg)は六で表す。) 爻辞は卦辞と似ているが、初から上へと状況が遷移する変化をとらえた説明がされる。象徴的なストーリーと一貫した主題で説明されることも多い。乾では、陽の象徴である龍が地中から天に登るプロセスを描き判断を加えている。

(2)「伝」(「十翼」)は、「彖伝(たんでん)上・下」、「象伝(しょうでん)上・下」、「繋辞伝(けいじでん)上・下」、「文言伝(ぶんげんでん)」、「説卦伝(せっかでん)」、「序卦伝(じょかでん)」、「雑卦伝(ざっかでん)」の計10部である。これらの中で繋辞伝には小成八卦についての記述なく、繋辞伝が最初に作られた「伝」と推測される。

1973年、馬王堆漢墓で発見された帛書『周易』写本に「十翼」は無く、付属文書は二三子問・繋辞・易之義・要・繆和・昭力の六篇で構成されていた。

現代出版されている易経では、一つの卦に対して、卦辞、彖、象、爻辞の順でそれぞれが並べられていることが多く、「経」、「彖」、「象」を一体のものとして扱っている。たとえば「易―中国古典選10」[3]では、一つの卦は、王弼・程頤にならい以下のように編集されている。

卦(経):伏羲作のシンボル

卦辞(経):文王作
彖伝
大象:象伝の卦の説明部分
爻辞(経):周公作
小象:象伝の爻の説明部分
文言伝:乾坤の卦のみ

十翼(易伝)の内容

  • 「彖伝上・下」には、「周易上・下経」それぞれの卦辞の注釈が収められている。
  • 「象伝上・下」には、各卦の象形の意味についての短い解説と、その爻辞の注釈が収められている。易占家の間では、前者部分を「大象」、後者部分を「爻伝」、というふうに呼称を区別していることがある。
  • 「文言伝」では、六十四卦のうち最も重要かつ基本の位置づけにある二卦である、乾(けん)および坤(こん)について、詳しい訓詁的な解説がなされる。
  • 「繋辞伝上・下」には、易の成り立ち、易の思想、占いの方式、など、『易』に関する包括的な説明が収められている。
  • 「説卦伝」では、大成六十四卦のもととなる小成八卦の概念、森羅万象をこの八種の象に分類するその分類のされ方が、詳説される。
  • 「序卦伝」には、現行の「周易上・下経」での六十四卦の並び方の理由が説明されている。
  • 「雑卦伝」では、占いにあたって卦象を読み解く際の、ちょっとしたヒントが、各卦ごとに短い言葉で述べられる。着目ヒント集である。

六十四卦

易の成立と展開

占筮の定義

太玄経』に基づくものを言う場合もごく稀にあるが、一般に「占筮」といえば『易経』に基づき、筮竹(始原には「蓍」(キク科多年草であるノコギリソウのこと、ただし、和名の「メドギ」はメドハギという豆科の植物)の茎を乾燥させたもの)を用いて占をなすことを言う。この占においては、50本の筮竹を操作してを選び定め、それによって吉凶その他を占う。「卜筮」と同義。

易占の成立

易経の繋辞上伝には「易は聖人の著作である」ということが書かれており、儒家によって後に伝説が作られた。古来の伝承によれば、易の成立は以下のようなものであったという。 まず伏羲八卦を作り、さらにそれを重ねて六十四卦とした(一説に神農が重卦したとも)。次に文王が卦辞を作り、周公が爻辞を作った(一説に爻辞も文王の作とする)。そして、孔子が「伝」を書いて商瞿(しょうく)へと伝え、代の田何(でんか)に至ったものとされる。この『易』作成に関わる伏羲・文王(周公)・孔子を「三聖」という(文王と周公を分ける場合でも親子なので一人として数える)。孔子が晩年易を好んで伝(注釈、いわゆる「十翼」といわれる彖伝・繋辞伝・象伝・説卦伝・文言伝)を書いたというのは特に有名であり、『史記』孔子世家には「孔子は晩年易を愛読し、彖・繋・象・説卦・文言を書いた。易を読んで竹簡のとじひもが三度も切れてしまった」と書かれており、「韋編三絶」の故事として名高い。 このような伝説は儒家が『易』を聖人の作った経典としてゆく過程で形成された。伏羲画卦は「易伝」の繋辞下伝の記述に基づいており、包犠(伏羲)が天地自然の造型を観察して卦を作り、神明の徳に通じ、万物の姿を類型化したとあり、以後、包犠-神農-黄帝--と続く聖人たちが卦にもとづき人間社会の文明制度を創造したとある。

しかしながら、この伝説は古くから疑問視されていた。易の文言が伝承と相違している点が多いためである。欧陽脩が、「十翼は複数の人間の著作物だろう」と疑問を呈したのに始まり、宋代以降易経の成立に関する研究が進めば進むほど、上記の伝説が信じがたいことが明らかになった。朱熹は「六十四卦はただ上経だけが整った形になっているが、下経は乱雑な記述になっており、繋辞上伝は整っているが繋辞下伝は彖伝・象伝と整合性が取れない」といい、「彖伝・象伝はよく出来ているので聖人の著作だろう」と考えたが、他の伝は聖人の著作ではないと考えていたのではないか、と内藤湖南は論文『易疑』で述べている。内藤は更に「商瞿以來の傳授が信ぜられぬことの外、即ち田何が始めて竹帛に著はしたといふことは、恐らく事實とするを得べく、少くとも其時までは易の内容にも變化の起り得ることが容易なものと考へられるのである。それ故筮の起原は或は遠き殷代の巫に在りとし、禮運に孔子が殷道を觀んと欲して宋に之て坤乾を得たりとあるのが、多少の據りどころがあるものとしても、それが今日の周易になるには、絶えず變化し、而かも文化の急激に發達した戰國時代に於て、最も多く變化を受けたものと考ふべきではあるまいか。」(『易疑』)と述べ、易が聖人の著作であることを否定した。後には孔子と易との関わりまでも疑問視されたが、これは高田眞治白川静らによって逆に否定された。現代では以下のように考えられている。

古代中国、代には、亀甲を焼き、そこに現れる亀裂の形(卜兆)で、国家的な行事の吉凶を占う「亀卜」が、神事として盛んに行われていたことが、殷墟における多量の甲骨文の発見などにより知られている。西周以降の文の、「蓍亀」や「亀策」(策は筮竹)などの語に見られるように、その後、亀卜と筮占が併用された時代があったらしい。両者の比較については、『春秋左氏伝』僖公4年の記に、亀卜では不吉、占筮では吉と、結果が違ったことについて卜人が、「筮は短にして卜(亀卜)は長なり。卜に従うに如かず(占筮は短期の視点から示し、亀卜は長期の視点から示します。亀卜に従うほうがよいでしょう)」と述べた、という記事が見られる。『春秋左氏伝』には亀卜や占筮に関するエピソードが多く存在するが、それらの記事では、(亀卜の)卜兆と、(占筮の)卦、また、卜兆の形につけられた占いの言葉である繇辞(ちゅうじ)と、卦爻につけられた占いの言葉である卦辞・爻辞が、それぞれ対比的な関係を見せている。こうして占われた結果が朝廷に蓄積され、これが周易のもとになったと考えられている。周易のもとになった書物が各地に普及すると、難解な占いの文の解釈書が必要になり、戦国末期から前漢の初期に彖伝・象伝以外の「十翼」が成立したのであろう…というのが丸山松幸による現在の通説のまとめである。

また周代の理想的な官制を描いた『周礼』の春官宗伯には大卜という官吏が三兆・三易・三夢の法を司ったとされ、三兆(玉兆・瓦兆・原兆)すなわち亀卜に関しては「その経兆の体は皆な百有二十、その頌は皆な千有二百」とあり、後漢鄭玄は卜兆が120体に分類され、1体ごとに10ずつの繇があったと解している。一方、三易(連山・帰蔵・周易)すなわち占筮に関しては「その経卦は皆な八、その別は皆な六十有四」と述べ、卦に八卦があり、それを2つ組み合わせた六十四卦の卦辞がある『易』に対応した記述となっている。なお三易の「連山」「帰蔵」を鄭玄はそれぞれ夏代・殷代の易と解している。「連山」「帰蔵」は後世に伝わっていない。

八卦

筮竹を操作した結果、得られる記号であるは6本の「」と呼ばれる横棒(─か- -の2種類がある)によって構成されているが、これは3爻ずつのものが上下に2つ重ねて作られているとされる。この3爻の組み合わせによってできる8つの基本図像は「八卦」と呼ばれる。

『易経』は従来、占いの書であるが、易伝においては卦の象形が天地自然に由来するとされ、社会事象にまで適用された。八卦の象はさまざまな事物・事象を表すが、特に説卦伝において整理して示されており、自然現象に配当して、乾=天、坤=地、震=雷、巽=風、坎=水、離=火、艮=山、兌=沢としたり(説卦伝3)、人間社会(家族成員)に類推して乾=父、坤=母、震=長男、巽=長女、坎=中男、離=中女、艮=少男、兌=少女としたり(説卦伝10)した。一方、爻については陰陽思想により─を陽、--を陰とし、万物の相反する性質について説明した。このように戦国時代以降、儒家は陰陽思想や黄老思想を取り入れつつ天地万物の生成変化を説明する易伝を作成することで『易』の経典としての位置を確立させた。

なお八卦の順序には繋辞上伝の生成論(太極-両儀-四象-八卦)による「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」と説卦伝5の生成論による「乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌」の2通りがある。前者を伏義先天八卦、後者を文王後天八卦と呼び、前者によって八卦を配置した図を「先天図」、後者によるものを「後天図」という。しかし、実際は11世紀の北宋邵雍の著作『皇極経世書』において初めて伏義先天八卦、文王後天八卦として図と結びつけられたのであり、先天諸図は邵雍の創作と推測されている。

1993年郭店一号墓より竹簡に記された『易』が発見された。これは現存最古の秦代の『易』の写本である。

占法

『易』の経文には占法に関する記述がなく、繋辞上伝に簡単に記述されているのみである。繋辞上伝をもとに孔穎達周易正義』や南宋朱熹周易本義』筮儀[4]によって復元の試みがなされ、現在の占いはもっぱら朱熹に依っている。朱熹の本筮法を筮竹あるいは蓍の使用に限って説明すれば以下のようである。

繋辞上伝には「四営して易を成し、十有八変して卦を成す」とあり、これを四つの営みによって一変ができ、三変で1爻が得られ、それを6回繰り返した18変で1卦が得られるとした。さらに4営は伝文にある「分かちて二と為し以て両に象る」を第1営、「一を掛け以て三に象る」を第2営、「これを(かぞ)うるに四を以てし以て四時に象る」を第3営、「奇をに帰し以て閏に象る(「奇」は残余、「」は指の間と解釈される)」を第4営とした。

  • 第1変
    • 50本の筮竹の中から1本を取り、筮筒に戻す。この1本は使用せず、49本を用いる。この1本は太極に象る。
    • 第1営 - 残りの筮竹を無心で左手と右手で2つに分ける。これはに象る。
    • 第2営 - 右手の中から1本を抜き、左手の小指と薬指の間に挟む。この1本はに象り、あわせて天地人の三才に象る。
    • 第3営(1) - 左手分(天策)の本数を右手で4本ずつ数える。これは四時に象る。
    • 第4営(1) - その余り(割り切れる場合には4本)を薬指と中指の間に挟む。これは閏月に象る。
    • 第3営(2) - 右手分(地策)の本数を左手で4本ずつ数える。
    • 第4営(2) - 残った余り(割り切れる場合は4本)を中指と人差し指の間に挟む。第2営からここまでの5操作のうちに閏月を象る残余を挟む操作が2度あることは五歳二閏(5年に約2回閏月があること)に象る。
    • 左手の指の間に挟みこんだ残余の筮竹の総和を求める。必ず9本か5本になる。(なお、第1変では後述のように陰陽に大きな偏りが出るため占いに使うのは適当ではない。偏りを避けるため、占筮には簡略化した中筮法・略筮法・擲銭法を使うべきである。)
  • 第2変 - 49本から第1変の結果の9本か5本を抜いた44本または40本の筮竹で四営を行う。すると左手の指に挟みこまれた筮竹の総和は8本か4本になる。
  • 第3変 - 第2変の結果の8本か4本を抜いた40本か、36本か、32本の筮竹で四営を行う。すると左手の指に挟みこまれた筮竹の総和は8本か4本になる。
  • - ここで第1変・第2変・第3変の残数により初爻が決まり、それを記録する作業が行われる。これは筆で板に4種類の記号を書き込むが、卦木(算木)で表すこともできる。残余の数は9本か5本、8本か4本であり、これを多いか少ないかによって区別すると、3変とも多い「三多」、2変が少なく1変が多い「二少一多」、2変が多く1変が少ない「二多一少」、3変とも少ない「三少」となる。これらの総和をそれぞれ最初の49本から引くと数えた筮竹の総数に当たるが、これは四時の4と陰陽の数を相乗じることによって得られるとされる。すなわち老陽の9、少陰の8、少陽の7、老陰の6である。ここで導かれた陰陽の属性を表す記号(重・折・単・交)を初爻の位置に記録する。ここで少陽・老陽は陽爻であるが、少陽が不変爻であるのに対し、老陽は陰への変化の可能性をもった変爻である。また少陰・老陰は陰爻であるが、少陰が不変爻であるのに対し、老陰は陽への変化の可能性をもった変爻である。
筮竹
残余の多少 数の意味 属性 記号
三少 5+4+4=13
49-13=36=4*9
老陽 9
(重)
二少一多 5+4+8または5+8+4または9+4+4=17
49-17=32=4*8
少陰 8 - -
(折)
二多一少 9+4+8または9+8+4または5+8+8=21
49-21=28=4*7
少陽 7
(単)
三多 9+8+8=25
49-25=24=4*6
老陰 6 ×
(交)
  • 第4変〜第18変 - 上記と同様の操作を続け、初爻の上に下から上への順に第2爻から上爻までを記録し、6爻1が定まる。
  • 占断 - 以上の操作で定まったを「本卦(ほんか)」といい、さらに本卦の変爻(老陰・老陽)を相対する属性に変化させた卦を求め、これを「之卦(しか)」という。ここではじめて『易経』による占断がなされる。占いの結果は本卦と之卦の卦辞を踏まえたうえで、本卦の変爻の爻辞に求められる。なお2つ以上の変爻がある場合には本卦の卦辞によれ(『春秋左氏伝』)あるいは2変爻であれば本卦のその2爻辞(上位を主とする)により、3爻辞であれば本卦と之卦の各卦辞によれ(朱熹『易学啓蒙』)とされる。
    例えば、左手の指に挟んだ残数が第3変までで9・8・4、第6変までで9・4・8、第9変までで5・8・8、第12変までで9・8・8、第15変までで9・4・4、第18変までで5・8・4であったとすると、¦¦×||| と記録され、本卦は¦¦¦|||、之卦は¦¦||||大壮となる。これを「泰の大壮に之(ゆ)く」といい、占断は泰・大壮の卦辞を参考にしつつ泰卦の変爻、六四の爻辞によって行われる。

上記本筮法は18変を必要とし、しかも第1変の陰陽に偏りがあるため、偏りの無い筮法として、6変筮法である中筮法がある。これは第1変第3営において天策を8本ずつ数えその残余(割り切れる場合は0本)に人策の1本を加えた1〜8本によって次のように初爻を決定する。

  • 1本ならば乾 Ken.png → 老陽(□)
  • 2本ならば兌 Trigram duì of I Ching.png → 少陰(- -)
  • 3本ならば離 Trigram lí of I Ching.png → 少陰(- -)
  • 4本ならば震 Shin.png → 少陽(─)
  • 5本ならば巽 Xun.png → 少陰(- -)
  • 6本ならば坎 Kan.png → 少陽(─)
  • 7本ならば艮 Gon.png → 少陽(─)
  • 8本ならば坤 Kon.png → 老陰(×)

同様のことを6回繰り返して本卦を得る。

さらに簡略化した3変の略筮法もある。これは中筮法の第1変の結果をそのまま内卦(初爻から第3爻)とし、同様に第2変で外卦(第4爻から第6爻)を求めて本卦を得た後、第3変は6本ずつ数えて人策を加えた残余の1〜6本によって変爻の位置(1→初爻〜6→第6爻)を決定するという方法である。

また筮竹を用いずに卦を立てる占法もあり、3枚の硬貨を同時に投げて、3枚裏を老陽(□)、2枚裏・1枚表を少陰(- -)、2枚表・1枚裏を少陽(─)、3枚表を老陰(×)とする擲銭法が賈公彦儀礼正義』に記されている。これは、硬貨の表裏で本筮法の残余の多少を表すとするものであり、他に、硬貨の表裏を以て中筮法の乾兌離震巽坎艮坤を表すとして四象を決める方法や表の枚数の多少をそのまま四象に反映する方法、6枚の硬貨の表裏をそのまま陰陽として並べて本卦にする方法もある。

易の注釈史

『易』にはこれまでさまざまな解釈が行われてきたが、大別すると象数易(しょうすうえき)と義理易(ぎりえき)に分けられる。「象数易」とはの象形や易の数理から天地自然の法則を読み解こうとする立場であり、「義理易」とは経文から聖人が人々に示そうとした義理(倫理哲学)を明らかにしようという立場である。

漢代には天象と人事が影響し、君主の行動が天に影響して災異が起こるとする天人相関説があり、これにもとづいて易の象数から未来に起こる災異を予測する神秘主義的な象数易(漢代の易学)が隆盛した。ここで『易』はもっぱら政治に用いられ、預言書的な性格をもった。特に孟喜京房らは戦国時代以来の五行と呼ばれる循環思想を取り込み、十二消息卦など天文と易の象数とを結合させた卦気説と呼ばれる理論体系を構築した。前漢末の劉歆はこのような象数に基づく律暦思想の影響下のもと漢朝の官暦太初暦を補正した三統暦を作っており、また劉歆から始まる古文学で『易』は五経のトップとされた。

一方、王弼は卦象の解釈に拘泥する「漢易」のあり方に反対し、経文が語ろうとしている真意をくみ取ろうとする「義理易」を打ち立てた。彼の注釈では『易』をもっぱら人事を取り扱うものとし、老荘思想に基づきつつ、さまざまな人間関係のなかにおいて個人が取るべき処世の知恵を見いだそうとした。彼の『易注』は南朝において学官に立てられ、唐代には『五経正義』の一つとして『周易正義』が作られた。

こうして王弼注が国家権威として認定されてゆくなかで「漢易」の系譜は途絶えた。そのなかにあって李鼎祚が漢易の諸注を集めて『周易集解』を残し、後代に漢易の一端を伝えている。

宋代になると、従来のならびに漢唐訓詁学の諸注を否定する新しい経学が興った。易でもさまざまな注釈書が作られたが、「義理易」において王弼注と双璧と称される程頤の『程氏易伝』がある。また「象数易」では数理で易卦の生成原理を解こうとする『皇極経世書』や太極陰陽五行による周敦頤の『通書』、張載の『正蒙』などがある。ここで太極図先天図河図洛書といった図像をが用いられ、図書先天の学という易図学が興った。南宋になると、義理易と象数易を統合しようとする動きが現れ、朱震の『漢上易伝』、朱熹の『周易本義』がある。

周敦頤から二程子を経て後の朱子学に連なる儒教の形而上学的基礎は、『易経』に求められる。

数学との関連性

易卦は二進法で数を表していると解釈でき、次のように数を当てはめることができる。右側は二進法の表示であり、易卦と全く同じ並びになることが理解できる。

  • Kon.png 0   000
  • Shin.png 1   001
  • Kan.png 2   010
  • Trigram duì of I Ching.png 3   011
  • Gon.png 4   100
  • Trigram lí of I Ching.png 5   101
  • Xun.png 6   110
  • Ken.png 7   111

本筮法の第1変においては49本の筮竹を天策(x本)と地策(49-x本)に分け、地策から1本を人策として分ける。よって地策は48-x本となる。第4営後に9本残るのは天策地策ともに4本ずつ残る場合のみであり、これはxが4の倍数の時に限られる。第2変、第3変では4本残る(天地人1−2−1または2−1−1)か8本残る(同3−4−1または4−3−1)かは半々となり偏りはない。(なお、50本から太極として1本除いた49本を使うのではなく、最初に7×7=49本から太極として1本除いた48本を使うとするなら第1変の偏りはなくなる。)

参考文献

現代[編集]

近代

古代

脚注

  1. ^ ノコギリソウの一種であるメドキ。
  2. ^ あくまで伝説である。
  3. ^ 本田済 『易』 朝日新聞社、1997年ISBN 978-4022590107
  4. ^ 原本周易本義巻末下 Chinese Text Project

関連項目

外部リンク