詩經(TOP)

《詩經-朱熹集傳》 読み下し・訳
[西周 (公元前1046年 - 公元前771年)]





詩經-朱熹集傳
國風周南召南邶風 衛風王風鄭風 齊風魏風唐風秦風陳風檜風 曹風豳風
小雅鹿鳴之什白華之什彤弓之什祈父之什小旻之什北山之什桑扈之什都人士之什
大雅文王之什生民之什蕩之什
頌發周頌魯頌商頌) 、、 毛詩品物図攷( 1・2 艸部), (3・4 木鳥部), (5至7 獣虫魚部)
詩經のすべて 《詩經》 國風,小雅,大雅,頌    (その構成は 1.各地の民謡「風(ふう)」 2.貴族や朝廷の公事・宴席などで奏した音楽の歌詞「雅(が)」 3.朝廷の祭祀に用いた廟歌の歌詞「頌(ょう)」の3つに大別される)


詩經卷之八  朱熹集傳


頌四。頌者、宗廟之樂歌。大序所謂、美盛德之形容、以其成功告于神明者也。蓋頌與容、古字通用。故序以此言之。周頌三十一篇、多周公所定、而亦或有康王以後之詩。魯頌四篇、商頌五篇、因亦以類附焉。凡五巻。
【読み】
頌[しょう]四。頌は、宗廟の樂歌。大序に所謂、盛德の形容を美め、其の成功を以て神明に告ぐる者なり。蓋し頌と容とは、古字通用す。故に序此を以て之を言う。周頌三十一篇、多く周公の定むる所にして、亦或は康王以後の詩有り。魯頌四篇、商頌五篇、因りて亦類を以て附す。凡て五巻。


周頌淸廟之什四之一
【読み】
周頌淸廟[しゅうしょうせいびょう]の什四の一


<音烏>穆淸廟、肅雝顯相<去聲>。濟濟<上聲>多士、秉文之德、對越在天、駿奔走在廟。不顯不承、無射<音亦>於人斯。賦也。於、歎辭。穆、深遠也。淸、淸靜也。肅、敬。雝、和。顯、明。相、助也。謂助祭之公卿諸侯也。濟濟、衆也。多士、與祭執事之人也。越、於也。駿、大而疾也。承、尊奉也。斯、語辭。○此周公旣成洛邑而朝諸侯。因率之以祀文王之樂歌。言於穆哉、此淸靜之廟。其助祭之公侯、皆敬且和、而其執事之人、又無不執行文王之德。旣對越其在天之神、而又駿奔走其在廟之主。如此則是文王之德、豈不顯乎、豈不承乎。信乎其無有厭斁於人也。
【読み】
於[ああ]<音烏>穆たる淸廟、肅み雝[やわ]らげる顯相<去聲>あり。濟濟 [せいせい]<上聲>たる多士も、文の德を秉り、天に在[いま]せるに對し、駿[と]く廟に在せるに奔走せり。顯らかならざるや承 [つかまつ]らざるや、人に射[いと]<音亦>わるること無いかな。賦なり。於は、歎辭。穆は、深く遠きなり。淸は、淸 [いさぎよ]く靜かなり。肅は、敬むなり。雝[ゆう]は、和らぐ。顯は、明らか。相は、助くるなり。祭を助くる公卿諸侯を謂うなり。濟濟は、衆きなり。多士は、祭に與り事を執る人なり。越は、於なり。駿は、大いにして疾きなり。承は、尊び奉るなり。斯は、語の辭。○此れ周公旣に洛邑を成して諸侯を朝す。因りて之を率いて以て文王を祀るの樂歌なり。言うこころは、於穆たるかな、此の淸靜の廟。其の祭を助くる公侯、皆敬み且つ和らぎて、其事を執る人も、又文王の德を執り行わざる無し。旣に其の天に在せる神に對して、又駿く其の廟に在せるの主に奔走す。此の如くなれば則ち是れ文王の德、豈顯らかならざるや、豈承らざらるや。信なるかな其れ人に厭い斁 [いと]わるること有ること無き。

淸廟一章八句。書稱、王在新邑。烝祭歲、文王騂牛一、武王一。實周公攝政之七年。而此其升歌之辭也。書大傳曰、周公升歌淸廟、苟在廟中。嘗見文王者、愀然如復見文王焉。樂記曰、淸廟之瑟朱弦而疏越、壹倡而三嘆。有遺言者矣。鄭氏曰、朱弦練。朱弦練、則聲濁。越、瑟底孔也。疏之使聲遲也。倡、發歌句也。三嘆、三人從嘆之耳。漢因秦樂、乾豆上奏登歌。獨上歌、不以筦絃亂人聲。欲在位者徧聞之。猶古淸廟之歌也。
【読み】
淸廟[せいびょう]一章八句。書に稱す、王新邑に在す。烝祭の歲、文王に騂[せい]牛一つ、武王に一つ、と。實に周公政を攝すること七年。而して此れ其の升歌の辭なり。書の大傳に曰く、周公淸廟を升歌して、苟に廟中に在せり。嘗て文王を見る者、愀然として復文王を見るが如し、と。樂記に曰く、淸廟の瑟朱弦にして疏越、壹倡して三嘆す。遺言有る者なり、と。鄭氏が曰く、朱弦は練る。朱弦練るときは、則ち聲濁る。越は、瑟底の孔なり。之を疏すれば聲を遲ならしむるなり。倡は、發歌の句なり。三嘆は、三人從いて之を嘆ずるのみ。漢は秦の樂に因りて、乾豆の上に登歌を奏す。獨り上歌は、筦絃を以て人の聲を亂さず。位に在る者徧く之を聞かんことを欲す。猶古の淸廟の歌のごとし、と。


維天之命、於<音烏>穆不已、於<同上><音呼>不顯、文王之德之純。賦也。天命、卽天道也。不已、言無窮也。純、不雜也。○此亦祭文王之詩。言天道無窮、而文王之德純一不雜、與天無閒。以贊文王之德之盛也。子思子曰、維天之命、於穆不已、蓋曰天之所以爲天也。於乎不顯、文王之德之純、蓋曰文王之所以爲文也、純亦不已。程子曰、天道不已、文王純於天道亦不已。純則無二無雜。不已則無閒斷先後。
【読み】
維れ天の命、於[ああ]<音烏>穆として已まず、於<上に同じ><音呼>顯らかならずや、文王の德の純 [もっぱ]らなる。賦なり。天命は、卽ち天道なり。已まずは、窮まり無きを言うなり。純は、雜らざるなり。○此れ亦文王を祭るの詩。言うこころは、天道窮まり無くして、文王の德も純一にして雜らず、天と閒て無し。以て文王の德の盛んなるを贊す。子思子が曰く、維れ天の命、於穆として已まざるとは、蓋し天の天爲る所以を曰う。於乎顯らかならずや、文王の德の純らなるとは、蓋し文王の文爲る所以を曰う。純らにして亦已まず、と。程子が曰く、天道已まず、文王天道に純らにして亦已まず。純らなるときは則ち二無く雜り無し。已まざるときは則ち閒斷先後無し、と。

△假以溢我、我其收之、駿惠我文王、曾孫篤之。何之爲假、聲之轉也。恤之爲溢、字之訛也。收、受。駿、大。惠、順也。曾孫、後王也。篤、厚也。○言文王之神、將何以恤我乎。有則我當受之、以大順文王之道。後王又當篤厚之而不忘也。
【読み】
△假[なに]を以て我を溢[めぐ]まん、我れ其れ之を收[う]けて、駿[おお]いに我が文王に惠[したが]わん、曾孫も之を篤くせよ。何を假とするは、聲の轉ずるなり。恤を溢とするは、字の訛 [あやま]りなり。收は、受く。駿は、大い。惠は、順うなり。曾孫は、後王なり。篤は、厚きなり。○言うこころは、文王の神、將[はた]何を以てか我を恤[めぐ]まんや。有れば則ち我れ當に之を受けて、以て大いに文王の道に順うべし。後王も又當に之を篤く厚くして忘れざるべし。

維天之命一章八句
【読み】
維天之命[いてんしめい]一章八句


維淸緝煕、文王之典。肇禋<音因>、迄<音肸>用有成、維周之禎。賦也。淸、淸明也。緝、續。煕、明。肇、始。禋、祀。迄、至也。○此亦祭文王之詩。言所當淸明而緝煕者、文王之典也。故自始祀至今有成、實維周之禎祥也。然此詩疑有闕文焉。
【読み】
維れ淸[いさぎよ]く緝[つ]ぎ煕[あき]らかにせん、文王の典。肇めて禋[まつ]<音因>りしより、迄 [いまにいたるまで]<音肸>用[もっ]て成すこと有り、維れ周の禎[さいわい]なり。賦なり。淸は、淸明なり。緝は、續ぐ。煕は、明らか。肇は、始め。禋 [いん]は、祀る。迄は、至るなり。○此れ亦文王を祭るの詩。言うこころは、當に淸明にして緝煕すべき所の者は、文王の典なり。故に始めて祀りしより今成すこと有るに至るまで、實に維れ周の禎祥なり。然れども此の詩疑うらくは闕文有らん。

維淸一章五句
【読み】
維淸[いせい]一章五句


烈文<音璧>公、錫茲祉福。惠我無疆、子孫保之。賦也。烈、光也。辟公、諸侯也。○此祭於宗廟、而獻助祭諸侯之樂歌。言諸侯助祭、使我獲福。則是諸侯錫此祉福、而惠我以無疆、使我子孫保之也。
【読み】
烈[ひかり]文[あや]なせる辟<音璧>公、茲の祉福を錫えり。我を惠[いつく]しむに疆り無く、子孫之を保てり。賦なり。烈は、光なり。辟公は、諸侯なり。○此れ宗廟を祭りて、祭を助くる諸侯に獻ずるの樂歌。言うこころは、諸侯祭を助けて、我をして福を獲せしむ。則ち是れ諸侯此の祉福を錫いて、我を惠しむに疆り無きを以てし、我が子孫をして之を保たしめり。

△無封靡于爾邦、維王其崇之。念茲戎功、繼序其皇之。封靡之義、未詳。或曰、封、專利以自封殖也。靡、汰侈也。崇、尊尙也。戎、大。皇、大也。○言汝能無封靡于汝邦、則王當尊汝。又念汝有此助祭錫福之大功、則使汝之子孫、繼序而益大之也。
【読み】
△爾の邦に封[むさぼ]り靡[おご]ること無し、維れ王其れ之を崇[たっと]ばん。茲の戎[おお]いなる功を念わば、繼ぎ序で其れ之を皇[おお]いにせん。封靡の義、未だ詳らかならず。或ひと曰く、封は、利を專らにして以て自ら封殖す。靡は、汰侈、と。崇は、尊尙なり。戎は、大い。皇は、大いなり。○言うこころは、汝能く汝の邦に封り靡ること無くば、則ち王當に汝を尊ぶべし。又汝が此の祭を助け福を錫うの大功有らんことを念わば、則ち汝の子孫をして、繼ぎ序で益々之を大いにせん。

△無競維人、四方其訓之。不顯維德、百辟其刑之。於<音烏><音呼>前王不忘。又言莫强於人、莫顯於德。先王之德、所以人不能忘者、用此道也。此戒飭而勸勉之也。中庸引不顯惟德、百辟其刑之、而曰故君子篤恭而天下平。大學引於乎前王不忘、而曰君子賢其賢而親其親、小人樂其樂而利其利。此以沒世不亡也。
【読み】
△競[つよ]きこと無けんや維の人、四方其れ之を訓えとせり。顯らかならずや維の德、百辟其れ之に刑[のっと]れり。於<音烏><音呼>前王忘られず。又言う、人より强きは莫く、德より顯らかなるは莫し、と。先王の德、人の忘るること能わざる所以の者は、此の道を用うればなり。此れ戒飭して之を勸勉するなり。中庸に顯らかならずや惟の德、百辟其れ之に刑れりを引いて、曰く、故に君子は篤恭にして天下平らかなり、と。大學に於呼前王忘られずを引いて、曰く、君子は其の賢を賢として其の親を親とす、小人は其の樂を樂として其の利を利とす。此を以て世を沒して亡れず、と。

烈文一章十三句。此篇以公・疆兩韻相叶。未審當從何讀。意亦可互用也。
【読み】
烈文[れつぶん]一章十三句。此の篇は公・疆兩韻を以て相叶えり。未だ當に何に從りて讀むべきか審らかならず。意も亦互いに用う可し。


天作高山、大<音泰>王荒之。彼作矣、文王康之。彼徂矣岐、有夷之行<叶戶郎反>。子孫保之。賦也。高山、謂岐山也。荒、治。康、安也。徂、險僻之意也。夷、平。行、路也。○此祭大王之詩。言天作岐山、而大王始治之。大王旣作、而文王又安之。於是彼險僻之岐山、人歸者衆、而有平易之道路。子孫當世世保守而不失也。
【読み】
天高山を作[な]して、大<音泰>王之を荒[おさ]めり。彼作せり、文王之を康んぜり。彼徂[けわ]しき岐も、夷 [たい]らかなる之の行[みち]<叶戶郎反>有り。子孫之を保てよや。賦なり。高山は、岐山を謂うなり。荒は、治むる。康は、安んずるなり。徂は、險僻の意なり。夷は、平らか。行は、路なり。○此れ大王を祭るの詩。言うこころは、天岐山を作して、大王始めて之を治む。大王旣に作して、文王又之を安んず。是に於て彼の險僻の岐山、人歸する者衆くして、平易の道路有り。子孫當に世世保ち守りて失わざるべし。

天作一章七句
【読み】
天作[てんさく]一章七句


昊天有成命、二后受之。成王不敢康、夙夜基命宥密。於<音烏>緝熙、單厥心。肆其靖之。賦也。二后、文武也。成王名誦、武王之子也。基、積累于下、以承藉乎上者也。宥、宏深也。密、靜密也。於、嘆詞。靖、安也。○此詩多道成王之德。疑祀成王之詩也。言天祚周以天下、旣有定命、而文武受之矣。成王繼之、又能不敢康寧、而其夙夜積德、以承藉天命者、又宏深而靜密。是能繼續光明文武之業、而盡其心。故今能安靖天下、而保其所受之命也。國語叔向引此詩而言曰、是道成王之德也。成王能明文昭、定武烈者也。以此證之、則其爲祀成王之詩無疑矣。
【読み】
昊天[こうてん]成れる命有り、二りの后之を受けり。成王敢えて康んぜず、夙夜命を基[う]けしこと宥[ひろ]く密なり。於[ああ]<音烏>緝 [つ]ぎ熙[あき]らかにして、厥の心を單[つ]くせり。肆[ゆえ]に其れ之を靖んぜり。賦なり。二后は、文武なり。成王名は誦、武王の子なり。基は、下に積み累ねて、以て上を承け藉く者なり。宥は、宏く深きなり。密は、靜密なり。於は、嘆詞。靖は、安んずるなり。○此の詩多く成王の德を道う。疑うらくは成王を祀る詩なり。言うこころは、天周に祚 [さいわい]するに天下を以てし、旣に定命有りて、文武之を受けり。成王之を繼ぎ、又能く敢えて康寧せずして、其れ夙夜德を積み、以て天命を承け藉く者も、又宏深にして靜密なり。是れ能く文武の業を繼ぎ續いで光明にして、其の心を盡くす。故に今能く天下を安靖にして、其の受くる所の命を保てり。國語に叔向此の詩を引いて言いて曰く、是れ成王の德を道うなり。成王能く文昭を明らかにし、武烈を定むる者なり、と。此を以て之を證すれば、則ち其の成王を祀るの詩爲ること疑い無し。

昊天有成命一章七句。此康王以後之詩。
【読み】
昊天有成命[こうてんゆうせいめい]一章七句。此れ康王以後の詩なり。


我將我享、維羊維牛、維天其右<叶音由>之。賦也。將、奉。享、獻。右、尊也。神坐東向、在饌之右。所以尊之也。○此宗祀文王於明堂、以配上帝之樂歌。言奉其牛羊以享上帝、而曰天庶其降、而在此牛羊之右乎。蓋不敢必也。
【読み】
我れ將[すす]め我れ享[たてまつ]る、維れ羊維れ牛、維れ天其れ之に右<叶音由>せん。賦なり。將は、奉ずる。享は、獻る。右は、尊ぶなり。神坐は東に向き、饌 [せん]の右に在り。之を尊ぶ所以なり。○此れ文王を明堂に宗祀して、以て上帝に配するの樂歌なり。言うこころは、其の牛羊を奉じて以て上帝を享りて、曰く、天庶わくは其れ降りて、此の牛羊の右に在さんか、と。蓋し敢えて必とせざるなり。

△儀式刑文王之典、日靖四方。伊嘏<音假>文王、旣右享<叶虛良反>之。儀・式・刑、皆法也。嘏、錫福也。○言我儀式刑文王之典、以靖天下、則此能錫福之文王、旣降而在此之右、以享我祭。若有以見其必然矣。
【読み】
△文王の典に儀[のっと]り式[のっと]り刑[のっと]りて、日々に四方を靖んぜり。伊[こ]の嘏[さいわい]<音假>する文王、旣に右して之を享 [う]<叶虛良反>けたり。儀・式・刑は、皆法るなり。嘏[か]は、福を錫うなり。○言うこころは、我れ文王の典に儀り式り刑りて、以て天下を靖んずれば、則ち此れ能く福を錫うる文王、旣に降りて此の右に在して、以て我が祭を享く。以て其の必ず然るを見ること有るが若し。

△我其夙夜、畏天之威、于時保之。又言天與文王、旣皆右享我矣、則我其敢不夙夜畏天之威、以保天與文王、所以降鑒之意乎。
【読み】
△我れ其れ夙夜に、天の威を畏れ、時[ここ]に之を保たん。又言う、天と文王と、旣に皆右して我を享くるときは、則ち我れ其れ敢えて夙夜に天の威を畏れて、以て天と文王の、降鑒する所以の意を保たざらんや、と。

我將一章十句。程子曰、萬物本於天、人本乎祖。故冬至祭天、而以祖配之。以冬至氣之始也。萬物成形於帝、而人成形於父。故季秋享帝、而以父配之。以季秋成物之時也。陳氏曰、古者祭天於圜丘、掃地而行事。器用陶匏、牲用犢、其禮極簡。聖人之意、以爲未足以盡其意之委曲。故於季秋之月、有大享之禮焉。天、卽帝也。郊而曰天、所以尊之也。故以后稷配焉。后稷遠矣。配稷於郊、亦以尊稷也。明堂而曰帝、所以親之也。以文王配焉。文王親也。配文王於明堂、亦以親文王也。尊尊而親親。周道備矣。然則郊者古禮、而明堂者周制也。周公以義起之也。東萊呂氏曰、於天維庶其饗之、不敢加一詞焉。於文王則言儀式其典、日靖四方。天不待贊。法文王、所以法天也。卒章惟言畏天之威、而不及文王者、統於尊也。畏天、所以畏文王也。天與文王一也。
【読み】
我將[がしょう]一章十句。程子が曰く、萬物は天に本づき、人は祖に本づく。故に冬至に天を祭りて、祖を以て之に配す。冬至は氣の始めなるを以てなり。萬物は形を帝に成して、人は形を父に成す。故に季秋に帝を享りて、父を以て之に配す。季秋は物を成すの時なるを以てなり、と。陳氏が曰く、古は天を圜 [えん]丘に祭り、地を掃いて事を行えり。器には陶匏[とうほう]を用い、牲には犢を用い、其の禮極めて簡なり。聖人の意、以爲えらく、未だ以て其の意の委曲を盡くすに足らず、と。故に季秋の月に於て、大享の禮有り。天は、卽ち帝なり。郊にして天と曰うは、之を尊ぶ所以なり。故に后稷を以て配す。后稷は遠し。稷を郊に配すも、亦以て稷を尊ぶなり。明堂にして帝と曰うは、之を親しむ所以なり。文王を以て配す。文王は親し。文王を明堂に配するも、亦以て文王を親しむなり。尊を尊として親を親とす。周の道備われり。然らば則ち郊は古の禮にして、明堂は周の制なり。周公義を以て之を起こすなり、と。東萊の呂氏が曰く、於天維れ庶わくは其れ之を饗 [う]けよは、敢えて一詞を加えず。文王に於ては則ち言う、其の典に儀り式りて、日々に四方を靖んぜり、と。天の贊するを待たず。文王に法るは、天に法る所以なり。卒章惟天の威を畏ると言いて、文王に及ばざるは、尊きを統ぶるなり。天を畏るるは、文王を畏るる所以なり。天と文王とは一なり、と。


時邁其邦。昊天其子之。賦也。邁、行也。邦、諸侯之國也。周制十有二年、王巡守殷國、柴望祭告、諸侯畢朝。○此巡守、而朝會祭告之樂歌也。言我之以時巡行諸侯也。天其子我乎哉。蓋不敢必也。
【読み】
時に其の邦に邁[ゆ]く。昊天[こうてん]其れ之を子とせん。賦なり。邁は、行くなり。邦は、諸侯の國なり。周制十有二年に、王殷國を巡守し、柴望祭告し、諸侯畢く朝す。○此れ巡守して、朝會祭告するの樂歌なり。言うこころは、我が時を以て諸侯を巡行す。天其れ我を子とするならんかな。蓋し敢えて必とせざるなり。

△實右序有周。薄言震之、莫不震疊。懷柔百神、及河喬嶽。允王維后。右、尊。序、次。震、動。疊、懼。懷、來。柔、安。允、信也。○旣而曰、天實右序有周矣。是以使我薄言震之。而四方諸侯、莫不震懼。又能懷柔百神、以至于河之深廣、嶽之崇高、而莫不感格、則是信乎周王之爲天下君矣。
【読み】
△實に有周を右[たっと]び序でたり。薄[いささ]か言[ここ]に之を震[うご]かせば、震き疊[おそ]れざる莫し。百神、及び河喬嶽を懷柔せり。允に王は維れ后[きみ]なり。右は、尊ぶ。序は、次。震は、動く。疊は、懼るる。懷は、來る。柔は、安んず。允は、信なり。○旣にして曰く、天實に有周を右び序ず。是を以て我をして薄か言に之を震かさしむ。而して四方の諸侯、震き懼れざる莫し。又能く百神を懷柔し、以て河の深廣なる、嶽の崇高なるに至りても、感格せざること莫くば、則ち是れ信なるかな周王の天下の君爲たること。

△明昭有周、式序在位。載戢干戈、載櫜<音高>弓矢、我求懿德、肆于時夏。允王保之。戢、聚。櫜、韜。肆、陳也。夏、中國也。○又言明昭乎我周也。旣以慶讓黜陟之典、式序在位之諸侯。又收其干戈弓矢、而益求懿美之德、以布陳于中國、則信乎王之能保天命也。或曰、此詩卽所謂肆夏。以其有肆于時夏之語、而命之也。
【読み】
△明らかに昭らかなる有周、式[もっ]て位に在るを序でたり。載[すなわ]ち干戈を戢[あつ]め、載ち弓矢を櫜[ふくろ]<音高>にし、我れ懿德を求めて、時 [こ]の夏に肆[つら]ねたり。允に王之を保てり。戢[しゅう]は、聚むる。櫜[こう]は、韜[ゆぶくろ]。肆は、陳ぬるなり。夏は、中國なり。○又言う、明らかに昭らかなるかな我が周や。旣に慶讓黜陟の典を以て、式て位に在るの諸侯を序でたり。又其の干戈弓矢を收斂して、益々懿美の德を求めて、以て中國に布いて陳ぶれば、則ち信なるかな王の能く天命を保つこと、と。或ひと曰く、此の詩は卽ち所謂肆夏。其の時の夏に肆ねたりの語有るを以て、之を命 [なづ]く、と。

時邁一章十五句。春秋傳曰、昔武王克商作頌曰、載戢干戈。而外傳又以爲、周文公之頌。則此詩乃武王之世、周公所作也。外傳又曰、金奏肆夏・樊・遏・梁。天子以饗元侯也。韋昭注云、肆夏、一名樊、韶夏、一名遏、納夏、一名梁。卽周禮九夏之三也。呂叔玉云、肆夏、時邁也。樊遏、執競也。梁、思文也。
【読み】
時邁[じばい]一章十五句。春秋傳に曰く、昔武王商に克ちて頌を作りて曰く、載ち干戈を戢む、と。而して外傳に又以爲えらく、周の文公の頌、と。則ち此の詩は乃ち武王の世、周公の作る所なり。外傳に又曰く、金もて肆夏・樊・遏・梁を奏す。天子以て元侯を饗す、と。韋昭が注に云う、肆夏は、一名樊、韶夏は、一名遏、納夏は、一名梁。卽ち周禮九夏の三つなり、と。呂叔玉が云う、肆夏は、時邁なり。樊遏は、執競なり。梁は、思文なり、と。


執競武王、無競維烈。不顯成康、上帝是皇。賦也。此祭武王・成王・康王之詩。競、强也。言武王持其自强不息之心、故其功烈之盛、天下莫得而競。豈不顯哉、成王・康王之德、又上帝之所君也。
【読み】
競[つよ]きを執れる武王、競[あらそ]うこと無き維の烈。顯らかならずや成康、上帝是れ皇[きみ]とせり。賦なり。此れ武王・成王・康王を祭るの詩。競は、强きなり。言うこころは、武王其の自ら强 [つと]めて息まざるの心を持って、故に其の功烈の盛んなる、天下得て競うこと莫し。豈顯らかならざらんや、成王・康王の德、又上帝の君とする所なり。

△自彼成康、奄有四方、斤<去聲>斤其明<叶謨郎反>○斤斤、明之察也。言成康之德明著如此也。
【読み】
△彼の成康より、奄[つい]に四方を有ち、斤<去聲>斤として其れ明<叶謨郎反>らかなり。○斤斤は、明らかなることの察らかなり。言うこころは、成康の德明著なること此の如し。

△鐘鼓喤<音橫>喤、磬筦<音管>將將<音槍>、降福穰穰<音攘>○喤喤、和也。將將、集也。穰穰、多也。言今作樂以祭而受福也。
【読み】
△鐘鼓喤[こう]<音橫>喤たり、磬筦[けいかん]<音管>將將<音槍>たり、福を降すこと穰穰<音攘>たり。○喤喤は、和らぐなり。將將は、集まるなり。穰穰は、多きなり。言うこころは、今樂を作りて以て祭りて福を受くるなり。

△降福簡簡、威儀反反、旣醉旣飽、福祿來反。簡簡、大也。反反、謹重也。反、覆也。言受福之多、而愈益謹重。是以旣醉旣飽、而福祿之來、反覆而不厭也。
【読み】
△福を降すこと簡簡たり、威儀反反たり、旣に醉い旣に飽きて、福祿來り反せり。簡簡は、大いなり。反反は、謹み重んずるなり。反は、覆るなり。言うこころは、福を受くること多くして、愈々益々謹しみ重んず。是を以て旣に醉い旣に飽きて、福祿の來ること、反覆して厭わざるなり。

執競一章十四句。此昭王以後之詩。國語說見前篇。
【読み】
執競[しっけい]一章十四句。此れ昭王以後の詩。國語の說は前の篇に見えたり。


思文后稷、克配彼天。立我烝民、莫匪爾極。貽我來牟、帝命率育<叶逼反>。無此疆爾界<叶訖力反>、陳常于時夏。賦也。思、語詞。文、言有文德也。立、粒通。極、至也。德之至也。貽、遺也。來、小麥。牟、大麥也。率、徧。育、養也。○言后稷之德、眞可配天。蓋使我烝民、得以粒食者、莫非其德之全也。且其貽我民以來年之種、乃上帝之命、以此徧養下民者。是以無有遠近彼此之殊、而得以陳其君臣父子之常道於中國也。或曰、此所謂納夏者、亦以其有時夏之語、而命之也。
【読み】
思[そ]れ文なる后稷、克[よ]く彼の天に配せり。我が烝民を立[は]ましむ、爾[そ]の極[いた]れるに匪ざる莫し。我に來牟を貽[おく]るは、帝命じて率[あまね]く育<叶逼反>わしむるなり。此の疆り爾の界<叶訖力反>無く、常を時 [こ]の夏に陳[し]けり。賦なり。思は、語の詞。文は、文德有るを言うなり。立は、粒と通ず。極は、至るなり。德の至りなり。貽は、遺るなり。來は、小麥。牟は、大麥なり。率は、徧く。育は、養うなり。○言うこころは、后稷の德、眞に天に配す可し。蓋し我が烝民をして、以て粒食するを得せしむる者は、其の德の全きに非ざる莫し。且つ其れ我が民に貽るに來年の種を以てするは、乃ち上帝の命にて、此を以て徧く下民を養う者なり。是を以て遠近彼此の殊なり有ること無くして、以て其の君臣父子の常道を中國に陳くことを得。或ひと曰く、此れ所謂納夏なる者にて、亦其の時夏の語有るを以て、之に命 [なづ]く、と。

思文一章八句。國語說見時邁篇。
【読み】
思文[しぶん]一章八句。國語の說は時邁の篇に見えたり。


淸廟之什十篇十章九十五句


周頌臣工之什四之二
【読み】
周頌臣工[しゅうしょうしんこう]の什四の二


嗟嗟臣工、敬爾在公。王釐<音離>爾成、來咨來茹<音孺>○賦也。嗟嗟、重歎以深敕之也。臣工、群臣百官也。公、公家也。釐、賜也。成、成法也。茹、度也。○此戒農官之詩。先言王有成法以賜女。女當來咨度也。
【読み】
嗟嗟[ああ]臣工、爾の公に在るを敬め。王爾に成を釐[たま]<音離>わる、來り咨[と]い來り茹[はか]<音孺>れ。○賦なり。嗟嗟は、重く歎じて以て深く之を敕 [いまし]むるなり。臣工は、群臣百官なり。公は、公家なり。釐[り]は、賜うなり。成は、成法なり。茹は、度るなり。○此れ農官を戒むるの詩。先ず言う、王成法有りて以て女に賜う。女當に來りて咨い度るべし、と。

△嗟嗟保介、維莫<音慕>之春、亦又何求、如何新畬<音余>。於<音烏>皇來牟、將受厥明。明昭上帝、迄用康年。命我衆人、庤<音時>乃錢<音剪><音博>、奄觀銍<音質><音刈>○保介、見月令・呂覽。其說不同。然皆爲籍田而言。蓋農官之副也。莫春、斗柄建辰。夏正之三月也。畬、三歲田也。於皇、歎美之詞。來牟、麥也。明、上帝之明賜也。言麥將熟也。迄、至也。康年、猶豐年也。衆人、甸徒也。庤、具。錢銚・鎛鉏、皆田器也。銍、穫禾短鎌也。艾、穫也。○此乃言所戒之事。言三月則當治其新畬矣。今如何哉。然麥已將熟、則可以受上帝之明賜。而此明昭之上帝、又將賜我新畬以豐年也。於是命甸徒具農器、以治其新畬、而又將忽見其收成也。
【読み】
△嗟嗟保介、維れ莫<音慕>の春、亦又何をか求めん、如何ぞや新畬[しんよ]<音余>。於<音烏>皇 [ああ]來牟、將に厥の明を受けんとす。明らかに昭らかなる上帝、康年も用うるに迄[いた]らん。我が衆人に命じて、乃[なんじ]の錢[すき]<音剪>鎛 [くわ]<音博>を庤[そな]<音時>えしめ、奄[たちま ]ちに銍[かま]<音質>もて艾[か]<音刈>るを觀ん。○保介は、月令・呂覽に見えたり。其の說同じからず。然れども皆籍田の爲にして言う。蓋し農官の副なり。莫春は、斗柄辰を建す。夏正の三月なり。畬は、三歲の田なり。於皇は、歎美する詞。來牟は、麥なり。明は、上帝の明賜なり。言うこころは、麥將に熟さんとするなり。迄は、至るなり。康年は、猶豐年のごとし。衆人は、甸徒 [てんと]なり。庤[じ]は、具うる。錢銚[せんちょう]・鎛鉏[はくしょ]は、皆田器なり。銍[ちつ]は、禾を穫る短き鎌なり。艾は、穫るなり。○此れ乃戒むる所の事を言う。言 [ここ]に三月なれば則ち當に其の新畬を治むるべし。今如何ぞや。然るに麥已に將に熟さんとすれば、則ち以て上帝の明賜を受く可し。而も此れ明昭の上帝、又將に我に新畬を賜いて以て豐年ならんとす。是に於て甸徒に命じて農器を具えて、以て其の新畬を治めて、又將に忽ちに其の收成を見ん。

臣工一章十五句
【読み】
臣工[しんこう]一章十五句


噫嘻成王、旣昭假<音格>爾。率時農夫、播厥百穀。駿發爾私、終三十里、亦服爾耕、十千維耦<叶音擬>○賦也。噫嘻、亦嘆詞也。昭、明。假、格也。爾、田官也。時、是。駿、大。發、耕也。私、私田也。三十里、萬夫之地、四方有川、内方三十三里有奇。言三十里、舉成數也。耦、二人並耕也。○此連上篇亦戒農官之詞。昭假爾、猶言格汝衆庶。蓋成王始置田官、而嘗戒命之也。爾當率是農夫、播其百穀、使之大發其私田、皆服其耕事、萬人爲耦而並耕也。蓋耕本以二人爲耦。今合一川之衆爲言。故云萬人畢出、幷力齊心、如合一耦也。此必郷遂之官、司稼之屬、其職以萬夫爲界者。溝洫用貢法、無公田。故皆謂之私。蘇氏曰、民曰、雨我公田、遂及我私。而君曰、駿發爾私、終三十里。其上下之閒、交相忠愛如此。
【読み】
噫嘻[ああ]成王、旣に昭らかに<音格>爾を假[いた]せり。時[こ]の農夫を率いて、厥の百穀を播[し]け。駿 [おお]いに爾の私を發[たがや]して、三十里を終えしめ、亦爾の耕えしに服[つ]けて、十千維れ耦<叶音擬>せよ。○賦なり。噫嘻は、亦嘆詞なり。昭は、明らか。假は、格るなり。爾は、田官なり。時は、是。駿は、大い。發は、耕すなり。私は、私田なり。三十里は、萬夫の地、四方に川有り、内方三十三里有奇なり。三十里と言うは、成數を舉ぐるなり。耦は、二人並んで耕すなり。○此れ上篇に連ねて亦農官を戒むるの詞。昭らかに爾を假せりとは、猶格れ汝衆庶と言うがごとし。蓋し成王始めて田官を置いて、嘗て戒めて之に命ずるなり。爾當に是の農夫を率いて、其の百穀を播けとは、之をして大いに其の私田を發して、皆其の耕事に服して、萬人耦を爲して並び耕さしむるなり。蓋し耕すに本二人を以て耦とす。今一川の衆を合わせて言を爲す。故に云う、萬人畢く出でて、力を幷せ心を齊しくして、一耦を合わせるが如し、と。此れ必ず郷遂の官、司稼の屬にて、其の職は萬夫を以て界と爲す者なり。溝洫 [こうきょく]は貢法を用い、公田無し。故に皆之を私と謂う。蘇氏が曰く、民曰く、我が公田に雨ふらし、遂に我が私に及ぼさん、と。而して君曰く、駿いに爾の私を發して、三十里を終えよ、と。其の上下の閒、交々相忠愛すること此の如し、と。

噫嘻一章八句
【読み】
噫嘻[いき]一章八句


振鷺于飛、于彼西雝。我客戾止、亦有斯容。賦也。振、羣飛貌。鷺、白鳥。雝、澤也。客、謂二王之後。夏之後杞、商之後宋。於周爲客。天子有事膰焉、有喪拜焉者也。○此二王之後、來助祭之詩。言鷺飛于西雝之水、而我客來助祭者、其容貌脩整、亦如鷺之潔白也。或曰、興也。
【読み】
振たる鷺于[ここ]に飛ぶ、彼の西の雝[さわ]に。我が客戾[いた]れるも、亦斯の容有り。賦なり。振は、羣がり飛ぶ貌。鷺は、白き鳥。雝 [ゆう]は、澤なり。客は、二王の後を謂う。夏の後は杞、商の後は宋。周に於て客爲り。天子事有りて膰[はん]し、喪有りて拜する者なり。○此れ二王の後、來り祭を助くるの詩なり。言うこころは、鷺西雝の水に飛んで、我が客の來りて祭を助くる者、其の容貌脩まり整いて、亦鷺の潔白なるが如し。或ひと曰く、興、と。

△在彼無惡、在此無斁<叶丁故反>。庶幾夙夜<叶羊茹反>、以永終譽。彼、其國也。在國無惡之者。在此無厭之者。如是則庶幾其能夙夜、以永終此譽矣。陳氏曰、在彼不以我革其命、而有惡於吾。知天命無常、惟德是與。其心服也、在我不以彼墜其命、而有厭於彼。崇德象賢、統承先王。忠厚之至也。
【読み】
△彼に在りても惡まれ無く、此に在りて斁[いと]<叶丁故反>われ無し。庶幾わくは夙夜<叶羊茹反>に、以て永く譽れを終えん。彼は、其の國なり。國に在りて之を惡む者無し。此に在りて之を厭う者無し。是の如くなれば則ち庶幾わくは其れ能く夙夜に、以て永く此の譽れを終えん。陳氏が曰く、彼に在りて我が其の命を革むるを以て、吾を惡むこと有らず。天命常無し、惟德是れ與ることを知る。其の心服すれば、我に在りて彼の其の命を墜つるを以て、彼を厭うこと有らず。德を崇び賢を象り、先王を統べ承く。忠厚の至りなり、と。

振鷺一章八句
【読み】
振鷺[しんろ]一章八句


豐年多黍多稌<音杜>、亦有高廩<力錦反>。萬億及秭<咨履反>、爲酒爲醴、烝畀祖妣、以洽百禮。降福孔皆<叶舉里反>○賦也。稌、稻也。黍、宜高燥而寒。稌、宜下濕而暑。黍稌皆熟、則百穀無不熟矣。亦、助語辭。數萬至萬、曰億。數億至億、曰秭。烝、進。畀、予。洽、備。皆、徧也。○此秋冬報賽田事之樂歌。蓋祀田祖・先農・方社之屬也。言其收入之多、至於可以供祭祀備百禮、而神降之福將甚徧也。
【読み】
豐年黍多く稌[いね]<音杜>多し、亦高き廩<力錦反>有り。萬億及び秭 [し]<咨履反>、酒を爲り醴を爲りて、祖妣に烝[すす]め畀[あた]え、以て百禮を洽[そな]う。福を降すこと孔 [はなは]だ皆[あまね]<叶舉里反>からん。○賦なり。稌[と]は、稻なり。黍は、高く燥きて寒きに宜し。稌は、下 [ひく]く濕[うるお]いて暑きに宜し。黍稌皆熟すれば、則ち百穀熟さざる無し。亦は、助語の辭。萬を數えて萬に至るを、億と曰う。億を數えて億に至るを、秭と曰う。烝は、進む。畀は、予うる。洽は、備う。皆は、徧くなり。○此れ秋冬田事を報賽するの樂歌なり。蓋し田祖・先農・方社の屬を祀るなり。言うこころは、其の收入の多き、以て祭祀に供し百禮を備う可きに至りて、神之に福を降して將に甚だ徧からんとす。

豐年一章七句
【読み】
豐年[ほうねん]一章七句


有瞽有瞽、在周之庭。賦也。瞽、樂官無目者也。○序以此爲始作樂、而合乎祖之詩。兩句總序其事也。
【読み】
瞽有り瞽有り、周の庭に在り。賦なり。瞽は、樂官の目無き者なり。○序に此を以て始めて樂を作りて、祖に合うの詩とす、と。兩句總べて其の事を序ず。

△設業設虡<音巨>、崇牙樹羽。應田縣鼓、鞉磬柷<尺叔反><音語>、旣備乃奏<叶音祖>、簫管備舉<以上叶瞽字>○業虡・崇牙、見靈臺篇。樹羽、置五采之羽於崇牙之上也。應、小鞞。田、大鼓也。鄭氏曰、田、當作朄。小鼓也。縣鼓、周制也。夏后氏、足鼓。殷、楹鼓。周、縣鼓。鞉、如鼓而小。有柄兩耳。持其柄揺之。則旁耳還自擊。磬、石磬也。柷、狀如漆桶。以木爲之。中有椎。連底挏之、令左右擊以起樂者也。圉、亦作敔。狀如伏虎。皆上有二十七鉏鋙。刻以木。長尺。擽之以止樂者也。簫、編小竹管爲之。管、如篴。倂兩而吹之者也。
【読み】
△業を設け虡[きょ]<音巨>を設けて、崇牙羽を樹[た]てり。應田の縣鼓、鞉磬[とうけい]柷[しゅく]<尺叔反>圉 [ぎょ]<音語>、旣に備わり乃ち奏<叶音祖>で、簫管 [しょうかん]も備え舉<以上叶瞽字>げり。○業虡・崇牙は、靈臺の篇に見えたり。羽を樹つとは、五采の羽を崇牙の上に置くなり。應は、小鞞 [つづみ]。田は、大鼓なり。鄭氏が曰く、田は、當に朄[いん]に作るべし。小鼓なり、と。縣鼓は、周の制なり。夏后氏は、足鼓。殷は、楹[えい]鼓。周は、縣鼓。鞉は、鼓の如くにして小さし。柄有りて兩耳なり。其の柄を持ちて之を揺らす。則ち旁の耳還りて自ら擊つなり。磬は、石磬なり。柷は、狀は漆桶の如し。木を以て之を爲る。中に椎 [つち]有り。連底之を挏[うご]かして、左右をして擊ちて以て樂を起こさしむる者なり。圉は、亦敔[ぎょ]に作る。狀は伏虎の如し。皆上に二十七の鉏鋙 [そご]有り。刻むに木を以てす。長さ尺。之を擽[う]ちて以て樂を止むる者なり。簫は、小竹の管を編みて之を爲る。管は、篴[ふえ]の如し。兩つを倂わせて之を吹く者なり。

△喤喤<音橫>厥聲、肅雝和鳴。先祖是聽、我客戾止、永觀厥成<以上叶庭字>○我客、二王之後也。觀、視也。成、樂闋也。如簫韶九成之成。獨言二王後者、猶言虞賓在位、我有嘉客。蓋尤以是爲盛耳。
【読み】
△喤喤<音橫>たる厥の聲、肅雝[しゅくよう]にして和らぎ鳴れり。先祖是れ聽き、我が客戾[いた]れるも、永く厥の成 [お]<以上叶庭字>われるを觀る。○我が客は、二王の後なり。觀は、視るなり。成は、樂闋 [お]わるなり。簫韶九成の成の如し。獨り二王の後と言うは、猶虞賓位に在り、我に嘉客有りと言うがごとし。蓋し尤も是を以て盛んとするのみ。

有瞽一章十三句
【読み】
有瞽[ゆうこ]一章十三句


<於宜反><音余>漆沮<七余反>、潛有多魚。有鱣<張連反>有鮪<叶于軌反>、鰷<音條><音常><音偃>鯉。以享以祀、以介景福<叶筆力反>○賦也。猗與、歎詞。潛、槮也。蓋積柴養魚、使得隱藏避寒、因以薄圍取之也。或曰、藏之深也。鰷、白鰷也。月令季冬命漁師始漁。天子親往、乃嘗魚。先薦寢廟、季春薦鮪于寢廟。此其樂歌也。
【読み】
猗[あ]<於宜反>與[あ]<音余>漆沮<七余反>、潛 [ふしづけ]に多き魚有り。鱣[てん]<張連反>有り鮪<叶于軌反>有り、鰷 [じょう]<音條>鱨[しょう]<音常>鰋[えん]<音偃>鯉。以て享 [まつ]り以て祀りて、以て景[おお]いなる福<叶筆力反>を介[おお]いにせん。○賦なり。猗與は、歎詞。潛は、槮 [しん]なり。蓋し柴を積んで魚を養い、隱藏して寒を避くることを得せしめ、因りて薄を以て之を圍[かこ]み取るなり。或ひと曰く、藏るることの深き、と。鰷は、白鰷なり。月令に季冬漁師に命じて始めて漁す。天子親ら往いて、乃ち魚を嘗む。先ず寢廟に薦め、季春に鮪を寢廟に薦む、と。此れ其の樂歌なり。

潛一章六句
【読み】
潛[せん]一章六句


有來雝雝<與公叶。篇内同>、至止肅肅。相<息亮反>維辟<音璧>公、天子穆穆。賦也。雝雝、和也。肅肅、敬也。相、助祭也。辟公、諸侯也。穆穆、天子之容也。○此武王祭文王之詩。言諸侯之來、皆和且敬、以助我之祭事、而天子有穆穆之容也。
【読み】
來ること有りて雝雝[ようよう]<與公叶。篇内同じ>たり、至りて肅肅たり。相[たす]<息亮反>くるは維れ辟<音璧>公、天子は穆穆たり。賦なり。雝雝は、和らぐなり。肅肅は、敬むなり。相は、祭を助くるなり。辟公は、諸侯なり。穆穆は、天子の容なり。○此れ武王の文王を祭るの詩。言うこころは、諸侯の來る、皆和らいで且つ敬み、以て我が祭事を助けて、天子は穆穆たる容有り。

△於<音烏>薦廣牡、相<同上>予肆祀<叶養里反>。假<古雅反>哉皇考<叶音口>、綏予孝子<叶獎里反>○於、歎辭。廣牡、大牲也。肆、陳。假、大也。皇考、文王也。綏、安也。孝子、武王自稱也。○言此和敬之諸侯、薦大牲、以助我之祭事。而大哉文王、庶其享之、以安我孝子之心也。
【読み】
△於[ああ]<音烏>廣[おお]いなる牡を薦め、予を相<同上>けて祀<叶養里反>を肆 [つら]ねたり。假[おお]<古雅反>いなるかな皇考<叶音口>、予れ孝子<叶獎里反>を綏 [やす]んぜん。○於は、歎辭。廣牡は、大いなる牲なり。肆は、陳ぬる。假は、大いなり。皇考は、文王なり。綏は、安んずるなり。孝子は、武王自ら稱するなり。○言うこころは、此の和らぎ敬める諸侯、大いなる牲を薦めて、以て我が祭事を助く。而して大いなるかな文王、庶わくは其れ之を享けて、以て我が孝子の心を安んぜよ。

△宣哲維人、文武維后。燕及皇天<叶鐵因反>、克昌厥後。宣、通。哲、知。燕、安也。○此美文王之德。宣哲則盡人之道、文武則備君之德。故能安人、以及于天、而克昌其後嗣也。蘇氏曰、周人以諱事神。文王名昌、而此詩曰克昌厥後、何也。曰、周之所謂諱、不以其名號之故、而遂廢其文也。諱其名而廢其文者、周禮之未失也。
【読み】
△宣哲なるは維れ人、文武なるは維れ后。燕んじて皇天<叶鐵因反>に及ぼし、克く厥の後を昌んにせり。宣は、通る。哲は、知。燕は、安んずるなり。○此れ文王の德を美む。宣哲なれば則ち人の道を盡くし、文武なれば則ち君の德を備う。故に能く人を安んじて、以て天に及んで、克く其の後嗣を昌んにす。蘇氏が曰く、周人諱を以て神に事う。文王名は昌にして、此の詩克く厥の後を昌んにすと曰うは、何ぞや。曰く、周の所謂諱は、其の名號の故を以て、遂に其の文を廢せざるなり。其の名を諱みて其の文を廢するは、周の禮之れ未だ失とせざるなり、と。

△綏我眉壽<叶殖酉反>、介以繁祉、旣右<音又>烈考<叶音口>、亦右文母<叶滿彼反>○右、尊也。周禮所謂享右祭祀、是也。烈考、猶皇考也。文母、太姒也。○言文王昌厥後、而安之以眉壽、助之以多福、使我得以右于烈考文母也。
【読み】
△我を眉壽<叶殖酉反>に綏んじ、介[たす]くるに繁[おお]き祉[さいわい]を以てし、旣に烈考<叶音口>を右 [たっと]<音又>び、亦文母<叶滿彼反>を右ばしむ。○右は、尊ぶなり。周禮に所謂享るに祭祀を右ぶとは、是れなり。烈考は、猶皇考のごとし。文母は、太姒なり。○言うこころは、文王厥の後を昌んにして、之を安んずるに眉壽を以てし、之を助くるに多福を以てし、我をして以て烈考文母を右ぶことを得せしめり。

雝一章十六句。周禮樂師及徹、帥學士而歌徹。說者以爲、卽此詩。論語亦曰、以雍徹。然則此蓋徹祭所歌、而亦名爲徹也。
【読み】
雝[よう]一章十六句。周禮に樂師徹するに及んで、學士を帥いて徹を歌う、と。說く者以爲えらく、卽ち此の詩、と。論語に亦曰く、雍を以て徹す、と。然らば則ち此れ蓋し祭を徹するに歌う所にして、亦名づけて徹とするならん。


載見<音現><音璧>王、曰求厥章。龍旂陽陽、和鈴央央<音秧>、鞗<音條>革有鶬<音槍>、休有烈光。賦也。載、則也。發語辭也。章、法度也。交龍曰旂。陽、明也。軾前曰和、旂上曰鈴。央央・有鶬、皆聲和也。休、美也、此諸侯助祭于武王廟之詩。先言其來朝禀受法度、其車服之盛如此。
【読み】
載ち辟<音璧>王に見<音現>えて、曰[ここ]に厥の章 [のり]を求めり。龍の旂[はた]陽陽たり、和鈴央央<音秧>たり、鞗[たづな]<音條>の革 [つか]鶬[しょう]<音槍>たる有り、休[うるわ]しくして烈光有り。賦なり。載は、則ちなり。發語の辭なり。章は、法度なり。交龍を旂 [き]と曰う。陽は、明らかなり。軾の前を和と曰い、旂の上を鈴と曰う。央央・有鶬は、皆聲の和らげるなり。休は、美しきなり、此れ諸侯祭を武王の廟に助くるの詩。先ず其の來朝して法度を禀け受けて、其の車服の盛んなること此の如くなるを言えり。

△率見昭考、以孝以享<叶虛良反>○昭考、武王也。廟制、太祖居中、左昭右穆。周廟文王當穆、武王當昭。故書稱穆考文王。而此詩及訪落、皆謂武王爲昭考。此乃言王率諸侯、以祭武王廟也。
【読み】
△率いて昭考に見えて、以て孝し以て享<叶虛良反>せり。○昭考は、武王なり。廟の制に、太祖中に居り、左は昭右は穆、と。周廟は文王穆に當たり、武王昭に當たる。故に書に穆考文王を稱す、と。而るに此の詩及び訪落は、皆武王を謂いて昭考とす。此れ乃ち王諸侯を率いて、以て武王の廟を祭るを言うなり。

△以介眉壽、永言保之、思皇多祜<音戶>。烈文辟公、綏以多福、俾緝熙于純嘏<叶音古>○思、語辭。皇、大也、美也。○又言孝享以介眉壽、而受多福。是皆諸侯助祭有以致之、使我得繼而明之、以至於純嘏也。蓋歸德于諸侯之詞。猶烈文之意也。
【読み】
△以て眉壽を介[たす]け、永く言[ここ]に之を保てり、思[そ]れ皇[おお]いなる多祜[たこ]<音戶>。烈 [ひかり]文ある辟公、綏[やす]んずるに多福を以てして、純[おお]いなる嘏[さいわい]<叶音古>を緝[つ ]ぎ熙[あき]らかにせしめり。○思は、語の辭。皇は、大いなり、美きなり。○又言う、孝享以て眉壽を介けて、多福を受く。是れ皆諸侯祭を助けて以て之を致すこと有り、我をして繼いで之を明らかにして、以て純いなる嘏に至ることを得せしむるなり。蓋し德を諸侯に歸するの詞なり。猶烈文の意のごとし。

載見一章十四句
【読み】
載見[さいけん]一章十四句


有客有客、亦白其馬<叶滿補反>。有萋有且<上聲>、敦<音堆>琢其旅。賦也。客、微子也。周旣滅商、封微子於宋、以祀其先王。而以客禮待之、不敢臣也。亦、語辭也。殷尙白。脩其禮物、仍殷之舊也。萋且、未詳。傳曰、敬愼貌。敦琢、選擇也。旅、其卿大夫從行者也。○此微子來見祖廟之詩、而此一節、言其始至也。
【読み】
客有り客有り、亦其の馬<叶滿補反>を白くせり。萋[せい]たる有り且[しょ]<上聲>たる有り、其の旅を敦 [えら]<音堆>び琢[えら]べり。賦なり。客は、微子なり。周旣に商を滅ぼして、微子を宋に封じ、以て其の先王を祀らしむ。而も客の禮を以て之を待ちて、敢えて臣とせず。亦は、語の辭なり。殷は白を尙ぶ。其の禮物を脩むるに、殷の舊に仍 [よ]るなり。萋且は、未だ詳らかならず。傳に曰く、敬愼の貌、と。敦琢は、選び擇ぶなり。旅は、其の卿大夫の從いて行く者なり。○此れ微子來りて祖廟に見ゆるの詩にして、此の一節は、其の始めて至るを言うなり。

△有客宿宿、有客信信。言授之縶<音執>、以縶其馬。一宿曰宿、再宿曰信。縶其馬、愛之不欲其去也。此一節、言其將去也。
【読み】
△客有り宿宿し、客有り信信す。言[ここ]に之に縶[きずな]<音執>を授けて、以て其の馬を縶[つな]がん。一宿を宿と曰い、再宿を信と曰う。其の馬を縶がんとは、之を愛して其の去ることを欲せざるなり。此の一節は、其の將に去らんとするを言うなり。

△薄言追之、左右綏之。旣有淫威、降福孔夷。追之、已去而復還之。愛之無已也。左右綏之、言所以安而留之者無方也。淫威、未詳。舊說、淫、大也。統承先王、用天子禮樂。所謂淫威也。夷、易也、大也。此一節、言其留之也。
【読み】
△薄[しばら]く言に之を追いて、左右に之を綏[やす]んぜん。旣に淫[おお]いなる威有り、福を降すこと孔[はなは]だ夷[やす]けん。之を追うとは、已に去りて復之を還らしむ。之を愛して已むこと無きなり。左右に之を綏んずとは、安んじて之を留むる所以の者方無きを言う。淫威は、未だ詳らかならず。舊說に、淫は、大いなり。統を先王に承 [つ]いで、天子の禮樂を用う。所謂淫威なり、と。夷は、易きなり、大いなり。此の一節は、其の之を留むるを言うなり。

有客一章十二句
【読み】
有客[ゆうかく]一章十二句


<音烏>皇武王、無競維烈。允文文王、克開厥後、嗣武受之。勝殷遏劉、耆<音指>定爾功。賦也。於、歎詞。皇、大。遏、止。劉、殺。耆、致也。○周公象武王之功、爲大武之樂。言武王無競之功。實文王開之。而武王嗣而受之。勝殷止殺、以致定其功也。
【読み】
於[ああ]<音烏>皇[おお]いなるかな武王、競[あらそ]うこと無き維の烈あり。允に文あるかな文王、克く厥の後を開き、嗣いで武之を受けたり。殷に勝ちて劉 [ころ]すことを遏[や]め、爾[そ]の功を耆[いた]<音指>し定めたり。賦なり。於は、歎詞。皇は、大い。遏は、止む。劉は、殺す。耆は、致すなり。○周公武王の功を象りて、大武の樂を爲れり。言うこころは、武王競うこと無きの功あり。實に文王之を開く。而して武王嗣いで之を受く。殷に勝ちて殺すことを止めて、以て其の功を致し定めたり。

武一章七句。春秋傳、以此爲大武之首章也。大武、周公象武王武功之舞、歌此詩以奏之。禮曰、朱干玉戚、冕而舞大武。然傳以此詩爲武王所作、則篇内已有武王之謚、而其說誤矣。
【読み】
武[ぶ]一章七句。春秋傳に、此を以て大武の首章とす、と。大武は、周公の武王の武功を象るの舞にて、此の詩を歌いて以て之を奏す。禮に曰く、朱干玉戚もて、冕して大武を舞う、と。然れども傳に此の詩を以て武王作る所とするは、則ち篇の内に已に武王の謚有りて、其の說誤れり。


臣工之什十篇十章一百六句


周頌閔予小子之什四之三
【読み】
周頌閔予小子[しゅうしょうびんよしょうし]の什四の三


閔予小子、遭家不造<叶徂候反>、嬛嬛<音>在疚<音救>。於<音烏><音呼>皇考<叶祛候反>、永世克孝<叶呼候反>○賦也。成王免喪、始朝于先王之廟、而作此詩也。閔、病也。予小子、成王自稱也。造、成也。嬛、與煢同。無所依怙之意。疚、哀病也。匡衡曰、焭焭在疚。言成王喪畢思慕意氣未能平也。蓋所以就文武之業、崇大化之本也。皇考、武王也。歎武王之終身能孝也。
【読み】
閔[やま]しいかな予れ小子、家の造[な]<叶徂候反>らざるに遭い、嬛嬛[けいけい]<音>として疚 [かな]<音救>しきに在り。於<音烏><音呼>皇考<叶祛候反>、永世までに克く孝<叶呼候反>あり。○賦なり。成王喪を免 [ぬ]ぎて、始めて先王の廟に朝して、此の詩を作るなり。閔は、病むなり。予れ小子は、成王自ら稱するなり。造は、成るなり。嬛は、煢[けい]と同じ。依り怙[たの]む所無きの意。疚は、哀しみ病むなり。匡衡が曰く、焭焭として疚しきに在り、と。言うこころは、成王喪畢わりて思慕の意氣未だ能く平らかなることあらず。蓋し文武の業に就いて、大化の本を崇くする所以なり。皇考は、武王なり。武王の身を終うるまで能く孝なるを歎ずるなり。

△念茲皇祖、陟降庭<叶去聲>止。維予小子、夙夜敬止。皇祖、文王也。承上文、言武王之孝。思念文王、常若見其陟降於庭。猶所謂見堯於墻、見堯於羹也。楚詞云、三公揖讓登降堂。只與此文勢正相似。而匡衡引此句、顏注亦云、若神明臨其朝庭是也。
【読み】
△茲の皇祖を念えること、庭<叶去聲>に陟[のぼ]り降れるがごとし。維れ予れ小子、夙夜に敬めり。皇祖は、文王なり。上の文を承けて、武王の孝を言う。文王を思い念いて、常に其の庭に陟り降るを見るが若し。猶所謂堯を墻に見、堯を羹に見るがごとし。楚詞に云う、三公揖讓して堂に登り降る、と。此の文勢と正に相似れり。而して匡衡此の句を引き、顏が注に亦云う、神明其の朝庭に臨むが若しとは是れなり。

△於乎皇王、繼序思不忘。皇王、兼指文武也。承上文言。我之所以夙夜敬止者、思繼此序而不忘耳。
【読み】
△於乎皇王、序を繼がんこと思いて忘れず。皇王は、文武を兼ねて指すなり。上の文を承けて言う。我が夙夜に敬む所以の者は、此の序を繼がんことを思いて忘れざるのみ。

閔予小子一章十一句。此成王除喪朝廟所作。疑後世遂以爲嗣王朝廟之樂。後三篇放此。
【読み】
閔予小子[びんよしょうし]一章十一句。此れ成王喪を除[お]えて廟に朝して作れる所。疑うらくは後世遂に以て嗣王廟に朝するの樂とせり。後の三篇も此に放え。


訪予落止、率時昭考。於乎悠哉、朕未有艾。將予就之、繼猶判渙。維予小子、未堪家多難<去聲>。紹庭上下、陟降厥家。休矣皇考、以保明其身。賦也。訪、問。落、始。悠、遠也。艾、如夜未艾之艾。判、分。渙、散。保、安。明、顯也。○成王旣朝于廟。因作此詩。以道延訪羣臣之意。言我將謀之於始、以循我昭考武王之道。然而其道遠矣。予不能及也。將使予勉强以就之。而所以繼之者、猶恐其判渙而不合也。則亦繼其上下於庭陟降於家、庶幾賴皇考之休、有以保明吾身而已矣。
【読み】
予が落[はじ]めに訪[と]うて、時[こ]の昭考に率[したが]わん。於乎悠[とお]いかな、朕れ未だ艾[つ]くすこと有らず。將に予れ之に就かんとすれども、繼ぐこと猶判れ渙 [ち]らん。維れ予れ小子、未だ家の難[なや]<去聲>み多きに堪えず。庭に上り下り、厥の家に陟[のぼ]り降れるに紹 [つ]がん。休[よ]いかな皇考、以て其の身を保んじ明らかにせん。賦なり。訪は、問う。落は、始め。悠は、遠きなり。艾は、夜未だ艾きずの艾の如し。判は、分かつ。渙は、散る。保は、安んず。明は、顯らかなり。○成王旣に廟に朝す。因りて此の詩を作れり。道を以て延いて羣臣に訪うの意なり。言うこころは、我れ將に之を始めに謀らんとして、以て我が昭考武王の道に循わんとす。然れども其の道遠し。予れ及ぶこと能わざるなり。將に予をして勉め强めて以て之に就かしめんとす。而れども之を繼ぐ所以の者、猶恐らくは其れ判れ渙りて合わざるなり。則ち亦繼いで其れ庭に上り下り家に陟り降りし、庶幾わくは皇考の休きに賴りて、以て吾が身を保んじ明らかにすること有るのみ。

訪落一章十二句。說同上篇。
【読み】
訪落[ほうらく]一章十二句。說は上の篇に同じ。


敬之敬之、天維顯思<叶新夷反>、命不易<去聲><叶獎黎反>。無曰高高在上、陟降厥士、日監在茲<叶津之反>賦也。顯、明也。思、語辭也。士、事也。○成王受羣臣之戒、而述其言曰、敬之哉敬之哉、天道甚明、其命不易保也。無謂其高而不吾察。當知其聦明明畏、常若陟降於吾之所爲、而無日不臨監于此者。不可以不敬也。
【読み】
敬めや敬めや、天維れ顯らかなり、命易<去聲>からざるかな。高高として上に在りと曰うこと無かれ、厥の士[こと ]に陟[のぼ]り降り、日々に監みて茲<叶津之反>に在り。賦なり。顯は、明らかなり。思は、語の辭なり。士は、事なり。○成王羣臣の戒めを受けて、其の言を述べて曰く、敬めや敬めや、天道甚だ明らかなり、其の命保ち易からず。其の高くして吾を察せずと謂うこと無かれ。當に知るべし、其の聦明明畏、常に吾がする所に陟り降りするが若く、日として此に臨監せざること無し。以て敬まずんばある可からず、と。

△維予小子<叶獎里反>、不聰敬止、日就月將、學有緝熙于光明<叶謨郎反>。佛<音弼>時仔<音茲>肩、示我顯德行<去聲。叶戶郎反>○將、進也。佛、弼通。仔肩、任也。○此乃自爲答之言曰、我不聰而未能敬也。然願學焉。庶幾日有所就、月有所進、續而明之、以至于光明。又賴群臣輔助我所負荷之任、而示我以顯明之德行、則庶乎其可及爾。
【読み】
△維れ予れ小子<叶獎里反>、聰くして敬まず、日々に就[な]し月々に將[すす]み、學んで光明<叶謨郎反>に緝 [つ]ぎ熙[あき]らかなること有らん。時[こ]の仔[じ]<音茲>肩を佛[たす]<音弼>けて、我に顯らかなる德行<去聲。叶戶郎反>を示せ。○將は、進むなり。佛は、弼と通ず。仔肩は、任なり。○此れ乃ち自ら之に答うるの言を爲して曰く、我れ聰くして未だ敬むこと能わず。然らば願わくは焉を學ばん。庶幾わくは日々に就る所有り、月々に進む所有りて、續けて之を明らかにして、以て光明に至らん。又群臣我が負荷する所の任を輔け助くるを賴み、而して我に示すに顯明の德行を以てせば、則ち庶わくは其れ及ぶ可きのみ、と。

敬之一章十二句
【読み】
敬之[けいし]一章十二句


予其懲、而毖後患。莫予荓<音俜>蜂、自求辛螫<音釋>。肇允彼桃蟲、拚<音翻>飛維鳥。未堪家多難<去聲>、予又集于蓼<音了>○賦也。懲、有所傷而知戒也。毖、愼。荓、使也。蜂、小物而有毒。肇、始。允、信也。桃蟲、鷦鷯、小鳥也。拚、飛貌。鳥、大鳥也。鷦鷯之雛、化而爲鵰。故古語曰、鷦鷯生鵰。言始小而終大也。蓼、辛苦之物也。○此亦訪落之意。成王自言、予何所懲、而謹後患乎。荓蜂而得辛螫、信桃蟲而不知其能爲大鳥。此其所當懲者、蓋指管蔡之事也。然我方幼冲、未堪多難、而又集于辛苦之地。羣臣柰何捨我而弗助哉。
【読み】
予れ其れ懲りて、後の患えを毖[つつし]まん。予れ蜂を荓[つか]<音俜>いて、自ら辛く螫[さ]<音釋>すことを求むること莫けんや。肇め彼の桃蟲を允とせしに、拚 [ひるがえ]<音翻>り飛ぶ維れ鳥となれり。未だ家の難[なや]<去聲>み多きに堪えず、予れ又蓼 [りょう]<音了>に集[す]めり。○賦なり。懲は、傷む所有りて戒めを知るなり。毖 [ひ]は、愼む。荓[へい]は、使うなり。蜂は、小物にして毒有り。肇は、始め。允は、信なり。桃蟲は、鷦鷯[しょうりょう]、小鳥なり。拚[はん]は、飛ぶ貌。鳥は、大鳥なり。鷦鷯の雛、化して鵰 [ちょう]と爲る。故に古語に曰く、鷦鷯鵰を生す、と。言うこころは、始め小にして終わり大なり。蓼は、辛苦なる物なり。○此れ亦訪落の意。成王自ら言う、予れ何の懲る所にして、後の患えを謹まんや。蜂を荓いて辛く螫さるることを得、桃蟲を信じて其の能く大鳥と爲るを知らず、と。此れ其の當に懲るべき所の者は、蓋し管蔡が事を指すなり。然れども我れ方に幼冲にして、未だ難み多きに堪えずして、又辛苦の地に集めり。羣臣柰何ぞ我を捨てて助けざらんや、と。

小毖一章八句。蘇氏曰、小毖者、謹之於小也。謹之於小、則大患無由至矣。
【読み】
小毖[しょうひ]一章八句。蘇氏が曰く、小毖は、之を小さきなるに謹むなり。之を小さきなるに謹めば、則ち大いなる患え由りて至ること無し、と。


載芟載柞<音窄。叶疾各反>、其耕澤澤<音釋。叶徒洛反>○賦也。除草曰芟、除木曰柞。秋官柞氏、掌攻草木是也。澤澤、解散也。
【読み】
載[すなわ]ち芟[くさか]り載ち柞[きか]<音窄。叶疾各反>り、其の耕すこと澤澤[せきせき]<音釋。叶徒洛反>たり。○賦なり。草を除くを芟 [さん]と曰い、木を除くを柞[さく]と曰う。秋官柞氏、草木を攻[き]ることを掌るとは是れなり。澤澤は、解け散るなり。

△千耦其耘、徂隰徂畛<音眞>○耘、去苗閒草也。隰、爲田之處也。畛、田畔也。
【読み】
△千耦其の耘[くさぎ]り、隰[さわ]に徂き畛[くろ]<音眞>に徂く。○耘は、苗の閒の草を去くなり。隰 [しゅう]は、田を爲る處なり。畛[しん]は、田の畔なり。

△侯主侯伯、侯亞侯旅、侯彊侯以。有嗿<他感反>其饁<音曄>、思媚其婦、有依其士。有略其耜<叶養里反>、俶載南畝<叶滿委反>○主、家長也。伯、長子也。亞、仲叔也。旅、衆子弟也。彊、民之有餘力、而來助者。遂人所謂以彊予任甿者也。能左右之曰以。太宰所謂閒民轉移執事者。若今時傭力之人、隨主人所左右者也。嗿、衆飮食聲也。媚、順。依、愛。士、夫也。言餉婦與耕人相慰勞也。略、利。俶、始。載、事也。
【読み】
△侯[こ]れ主侯れ伯、侯れ亞侯れ旅、侯れ彊侯れ以。嗿[たん]<他感反>たること有り其の饁[かれいい]<音曄>、思 [そ]れ其の婦に媚[したが]えり、依[いつく]しむこと有り其の士[おっと]に。略[と]きこと有り其の耜[すき]<叶養里反>、載 [こと]を南畝<叶滿委反>に俶[はじ]めたり。○主は、家長なり。伯は、長子なり。亞は、仲叔なり。旅は、衆子弟なり。彊は、民の餘力有りて、來り助くる者。遂人に所謂彊予を以て甿 [たみ]に任ずる者なり。能く之を左右するを以と曰う。太宰に所謂閒民轉移して事を執る者、と。今時の傭力の人の、主人に隨いて左右せらるる者の若し。嗿は、衆の飮食する聲なり。媚は、順う。依は、愛しむ。士は、夫なり。言うこころは、餉婦と耕人と相慰勞するなり。略は、利し。俶は、始め。載は、事なり。

△播厥百穀、實函斯活<叶呼酷反>○函、含。活、生也。旣播之、其實含氣而生也。
【読み】
△厥の百穀を播[し]く、實函[ふく]んで斯れ活<叶呼酷反>けり。○函は、含む。活は、生きるなり。旣に之を播いて、其の實氣を含んで生ずるなり。

△驛驛其達<叶佗悅反>、有厭其傑。驛驛、苗生貌。達、出土也。厭、受氣足也。傑、先長者也。
【読み】
△驛驛たり其の達[おいい]<叶佗悅反>ずること、厭きたれること有り其の傑。驛驛は、苗の生ずる貌。達は、土を出づるなり。厭は、氣を受くること足れるなり。傑は、先ず長ずる者なり。

△厭厭其苗、緜緜其麃<表驕反>○緜緜、詳密也。麃、耘也。
【読み】
△厭厭たり其の苗、緜緜たり其の麃[くさぎ]<表驕反>ること。○緜緜は、詳密なり。麃 [ほう]は、耘るなり。

△載穫濟濟<上聲>、有實其積<音漬。叶上聲>、萬億及秭。爲酒爲醴、烝畀祖妣、以洽百禮。濟濟、人衆貌。實、積之實也。積、露積也。
【読み】
△載ち穫りて濟濟[せいせい]<上聲>たり、實てること有り其の積<音漬。叶上聲>、萬億及び秭 [し]。酒を爲り醴を爲って、祖妣に烝[すす]め畀[あた]え、以て百禮に洽[そな]う。濟濟は、人の衆き貌。實は、之が實を積むなり。積は、露積なり。

△有飶<音邲>其香、邦家之光。有椒其馨、胡考之寧。飶、芬香也。未詳何物。胡、壽也。以燕享賓客、則邦家之所以光也。以共養耆老、則胡考之所以安也。
【読み】
△飶[ひつ]<音邲>たる有り其の香、邦家の光なり。椒[しょう]たる有り其の馨、胡考の寧んじなり。飶は、芬 [ふん]香なり。未だ何物なるか詳らかならず。胡は、壽なり。以て賓客を燕享するは、則ち邦家の光なる所以なり。以て耆老[きろう]を共養するは、則ち胡考の安んずる所以なり。

△匪且有且、匪今斯今<叶音經>、振古如茲<無韻。未詳>○且、此。振、極也。言非獨此處有此稼穡之事、非獨今時有今豐年之慶、蓋自極古以來、如此矣。猶言自古有年也。
【読み】
△且[ここ]にのみ且[こ]れ有るに匪ず、今のみ斯れ今<叶音經>なるに匪ず、振古より茲[かく]<無韻。未詳>の如し。○且は、此。振は、極なり。言うこころは、獨り此の處にのみ此の稼穡の事有るに非ず、獨り今の時にのみ今の豐年の慶有るに非ず、蓋し極古より以來、此の如し。猶古より有年と言うがごとし。

載芟一章三十一句。此詩、未詳所用。然辭意、與豐年相似。其用應亦不殊。
【読み】
載芟[さいさん]一章三十一句。此の詩、未だ用うる所詳らかならず。然れども辭意は、豐年と相似たり。其の用應も亦殊ならず。


畟畟<音測>良耜<叶養里反>、俶<音蓄>載南畝<叶蒲委反>○賦也。畟畟、嚴利也。
【読み】
畟畟[しょくしょく]<音測>たる良き耜[すき]<叶養里反>、載 [こと]を南畝<叶蒲委反>に俶[はじ]<音蓄>む。○賦なり。畟畟は、嚴しく利きなり。

△播厥百穀、實函斯活<叶呼酷反>○說見前篇。
【読み】
△厥の百穀を播[し]く、實函[ふく]んで斯れ活<叶呼酷反>けり。○說は前の篇に見えたり。

△或來瞻女、載筐及筥、其饟<式亮反>伊黍。或來瞻女、婦子之來饁者也。筐・筥、饟具也。
【読み】
△來ること或[あ]り女を瞻れば、載[すなわ]ち筐及び筥、其れ饟[かれいい]<式亮反>は伊[こ]れ黍。來ること或り女を瞻るとは、婦子の來り饁 [かれいい]する者なり。筐・筥は、饟の具なり。

△其笠伊糾<叶其了反>、其鎛<音博>斯趙<直了反>、以薅<音蒿>荼蓼。糾然、笠之輕舉也。趙、刺。薅、去也。荼、陸草。蓼、水草。一物而有水陸之異也。今南方人、猶謂蓼爲辣荼。或用以毒溪取魚。卽所謂荼毒也。
【読み】
△其の笠伊れ糾[かろ]<叶其了反>く、其の鎛[すき]<音博>斯れ趙 [さ]<直了反>して、以て荼蓼[とりょう]を薅[はら]<音蒿>えり。糾然は、笠の輕く舉がれるなり。趙は、刺す。薅は、去るなり。荼は、陸草。蓼は、水草。一物にして水陸の異なり有り。今南方の人、猶蓼を謂いて辣荼 [らっと]とす。或は用いて以て溪に毒して魚を取る。卽ち所謂荼毒なり。

△荼蓼朽止、黍稷茂<叶莫口反>止。毒草朽、則土熟而苗盛。
【読み】
△荼蓼朽ちたり、黍稷茂<叶莫口反>れり。毒草朽ちれば、則ち土熟して苗盛んなり。

△穫之挃挃<音窒>、積之栗栗。其崇如墉、其比<去聲>如櫛<側瑟反>。以開百室。挃挃、穫聲也。栗栗、積之密也。櫛、理髪器。言密也。百室、一族之人也。五家爲比、五比爲閭、四閭爲族。族人輩作相助。故同時入穀也。
【読み】
△之を穫ること挃挃[ちつちつ]<音窒>たり、之を積むこと栗栗[りつりつ]たり。其の崇きこと墉[しろ]の如く、其の比 [なら]<去聲>べること櫛<側瑟反>の如し。以て百室を開けり。挃挃は、穫る聲なり。栗栗は、積むことの密なるなり。櫛は、髪を理むる器。密なるを言うなり。百室は、一族の人なり。五家を比とし、五比を閭とし、四閭を族とす。族人の輩相助を作す。故に時を同じくして穀を入るるなり。

△百室盈止、婦子寧止。盈、滿。寧、安也。
【読み】
△百室盈てり、婦子寧んぜり。盈は、滿つ。寧は、安んず。

△殺時犉<音淳>牡、有捄<音求>其角<叶盧谷反>。以似以續、續古之人。黃牛黑唇曰犉。捄、曲貌。續、謂續先祖以奉祭祀。
【読み】
△時[こ]の犉[じゅん]<音淳>牡[ぼう]を殺す、捄[まが]<音求>れる其の角<叶盧谷反>有り。以て似 [つ]ぎ以て續[つ]いで、古の人に續がん。黃牛の黑き唇を犉と曰う。捄は、曲れる貌。續は、先祖に續いで以て祭祀に奉るを謂う。

良耜一章二十三句。或疑、思文・臣工・噫嘻・豐年・載芟・良耜等篇、卽所謂豳頌者。其詳見於豳風及大田篇之末。亦未知其是否也。
【読み】
良耜[りょうし]一章二十三句。或ひと疑う、思文・臣工・噫嘻・豐年・載芟・良耜等の篇は、卽ち所謂豳頌なる者なり。其の詳は豳風及び大田の篇の末に見えたり、と。亦未だ其の是否を知らず。


絲衣其紑<孚浮反>、載弁俅俅<音求>。自堂徂基、自羊徂牛、鼐<音柰>鼎及鼒<叶津之反>。兕觥其觩<音求>、旨酒思柔。不吳<音話>不敖<音傲>、胡考之休。賦也。絲衣、祭服也。紑、潔貌。載、戴也。弁、爵弁也。士祭於王之服。俅俅、恭順貌。基、門塾之基。鼐、大鼎。鼒、小鼎也。思、語辭。柔、和也。吳、譁也。○此亦祭而飮酒之詩。言此服絲衣爵弁之人、升門堂視壺濯籩豆之屬、降往於基告濯具。又視牲從羊至牛、反告充、已乃舉鼎羃告潔。禮之次也。又能謹其威儀、不諠譁、不怠傲。故能得壽考之福。
【読み】
絲衣其れ紑[いさぎよ]<孚浮反>し、弁を載[いただ]けること俅俅[きゅうきゅう]<音求>たり。堂より基に徂き、羊より牛に徂く、鼐 [おお]<音柰>鼎及び鼒[かなえ]<叶津之反>。兕 [つの]の觥[さかずき]其れ觩[まが]<音求>れり、旨き酒思[そ]れ柔らかなり。吳[かまびす]<音話>しからず敖 [おこた]<音傲>らず、胡考の休[よ]きことあらん。賦なり。絲衣は、祭服なり。紑 [ふう]は、潔き貌。載は、戴くなり。弁は、爵弁なり。士の王を祭るの服なり。俅俅は、恭しく順う貌。基は、門塾の基[もとい]。鼐[だい]は、大鼎。鼒[さい]は、小鼎なり。思は、語の辭。柔は、和らぐなり。吳は、譁しきなり。○此れ亦祭りて酒を飮むの詩。言うこころは、此の絲衣爵弁を服する人、門堂に升りて壺濯籩豆の屬を視て、降りて往いて基に於て濯い具われるを告ぐ。又牲を視るに羊より牛に至り、反りて充 [こ]えたるを告げ、已に乃ち鼎の羃[おおい]を舉げて潔きを告ぐ。禮の次なり。又能く其の威儀を謹み、諠譁せず、怠傲せず。故に能く壽考の福を得。

絲衣一章九句。此詩或紑・俅・牛・觩・柔・休並叶基韻。或基・鼒並叶紑韻。
【読み】
絲衣[しい]一章九句。此の詩或は紑・俅・牛・觩・柔・休並[とも]に基の韻に叶えり。或は基・鼒並に紑の韻に叶えり。


<音烏><音爍>王師、遵養時晦。時純煕矣。是用大介。我龍受之、蹻蹻<音矯>王之造<叶祖候反>。載用有嗣<叶音祠>、實維爾公允師。賦也。於、歎辭。鑠、盛。遵、循。煕、光。介、甲也。所謂一戎衣也。龍、寵也。蹻蹻、武貌。造、爲。載、則。公、事。允、信也。○此亦頌武王之詩。言其初有於鑠之師而不用、退自循養、與時皆晦。旣純光矣、然後一戎衣而天下大定。後人於是寵而受此蹻蹻然王者之功。其所以嗣之者、亦維武王之事是師爾。
【読み】
於[ああ]<音烏>鑠[さか]<音爍>んなる王の師、遵い養いて時に晦し。時純 [もっぱ]らに煕[ひか]れり。是に用て大いに介[よろい]せり。我れ龍[いつく]しみ受けたり、蹻蹻[きょうきょう]<音矯>たる王の造 [しわざ]<叶祖候反>。載[すなわ]ち用いて嗣<叶音祠>ぐこと有るには、實に維れ爾の公 [こと]允に師なり。賦なり。於は、歎辭。鑠[しゃく]は、盛ん。遵は、循う。煕は、光。介は、甲なり。所謂一たび戎衣するなり。龍は、寵 [いつく]しむり。蹻蹻は、武き貌。造は、爲す。載は、則ち。公は、事。允は、信なり。○此れ亦武王を頌[ほ]むるの詩。言うこころは、其の初め鑠んなるの師有りて用いず、退いて自ら循い養いて、時と與に皆晦ませり。旣に光を純らにし、然して後に一たび戎衣して天下大いに定まれり。後人是に於て寵しんで此の蹻蹻然たる王者の功を受く。其の之を嗣ぐ所以の者も、亦維れ武王の是の師を事とするのみ。

酌一章八句。酌、卽勺也。内則十三舞勺。卽以此詩爲節而舞也。然此詩與賚・般、皆不用詩中字名篇。疑取樂節之名。如曰武宿夜云爾。
【読み】
酌[しゃく]一章八句。酌は、卽ち勺なり。内則に十三にして勺を舞う、と。卽ち此の詩を以て節を爲して舞うなり。然も此の詩と賚・般と、皆詩中の字を用いて篇に名づけず。疑うらくは樂節の名を取れるか。武宿夜と曰うが如しと爾か云う。


綏萬邦、屢<音慮>豐年。天命匪解<音懈>、桓桓武王、保有厥士、于以四方、克定厥家。於<音烏>昭于天、皇以閒之。賦也。綏、安也。桓桓、武貌。大軍之後、必有凶年。而武王克商、則除害以安天下。故屢穫豐年之祥。傳所謂周饑、克殷而年豐、是也。然天命之於周、久而不厭也。故此桓桓之武王、保有其士、而用之於四方以定其家。其德上昭于天也。閒字之義未詳。傳曰、閒、代也。言君天下、以代商也。此亦頌武王之功。
【読み】
萬邦を綏[やす]んじ、屢<音慮>々豐年なり。天命解[おこた]<音懈>らず、桓桓たる武王、厥の士を保んじ有ち、于 [ここ]に四方に以[もち]いて、克く厥の家を定めり。於[ああ]<音烏>天に昭らかにして、皇とし以て之に閒 [か]われり。賦なり。綏は、安んずるなり。桓桓は、武き貌。大軍の後は、必ず凶年有り。而るに武王商に克てるは、則ち害を除きて以て天下を安んず。故に屢々豐年の祥を穫。傳に所謂周饑え、殷に克ちて年豐とは、是れなり。然も天命の周に於る、久しくして厭わず。故に此の桓桓たるの武王、其の士を保んじ有ちて、之を四方に用いて以て其の家を定めり。其の德は上天に昭らかなり。閒の字の義未だ詳らかならず。傳に曰く、閒は、代、と。言うこころは、天下に君として、以て商に代わるなり。此れ亦武王の功を頌む。

桓一章九句。春秋傳以此爲大武之六章。則今之篇次、蓋已失其舊矣。又篇内已有武王之諡、則其謂武王時作者亦誤矣。序以爲講武類禡之詩。豈後世取其義而用之於其事也歟。
【読み】
桓[かん]一章九句。春秋傳に此を以て大武の六章とす。則ち今の篇次は、蓋し已に其の舊を失えり。又篇内に已に武王の諡有れば、則ち其の武王の時の作と謂う者も亦誤れり。序に以爲らく、武を講ずる類禡 [るいば]の詩、と。豈後世其の義を取りて之を其の事に用うるか。


文王旣勤止、我應受之。敷時繹思、我徂維求定。時周之命、於繹思。賦也。應、當也。敷、布。時、是也。繹、尋繹也。於、歎詞。繹思、尋繹而思念也。○此頌文武之功、而言其大封功臣之意也。言文王之勤勞天下至矣。其子孫受而有之。然而不敢專也。布此文王功德之在人、而可繹思者、以賚有功、而往求天下之安定。又以爲凡此皆周之命、而非復商之舊矣。遂歎美之、而欲諸臣受封賞者、繹思文王之德而不忘也。
【読み】
文王旣に勤めり、我れ之を應[あ]たり受く。時[こ]の繹[たず]ね思うべきを敷いて、我れ徂いて維れ定まらんことを求む。時れ周の命なり、於[ああ]繹ね思えよや。賦なり。應は、當たるなり。敷は、布く。時は、是なり。繹は、尋繹なり。於は、歎詞。繹思は、尋繹して思念するなり。○此れ文武の功を頌めて、其の大いに功臣を封ずるの意を言う。言うこころは、文王の天下を勤勞すること至れり。其の子孫受けて之を有てり。然れども敢えて專らにせず。此の文王の功德の人に在りて、繹ね思う可き者を布いて、以て有功に賚 [たま]いて、往いて天下の安んじ定まらんことを求む。又以爲えらく、凡そ此れ皆周の命にして、商の舊に復するに非ず。遂に之を歎美して、諸臣の封賞を受くる者、文王の德を繹ね思いて忘れざらんことを欲せり。

賚一章六句。春秋傳以此爲大武之三章。而序以爲大封於廟之詩。說同上篇。
【読み】
賚[らい]一章六句。春秋傳に此を以て大武の三章とす。而るに序に以爲えらく、大いに廟を封ずるの詩、と。說は上の篇に同じ。


<音烏>皇時周、陟其高山、嶞<音惰>山喬嶽。允猶翕<音吸>河。敷天之下、裒<音抔>時之對。時周之命。賦也。高山、泛言山耳。嶞、則其狹而長者。喬、高也。嶽、則其高而大者。允猶、未詳。或曰、允、信也。猶、與由同。翕河、河善泛溢。今得其性。故翕而不爲暴也。裒、聚也。對、答也。言美哉此周也。其巡守而登此山、以柴望。又道於河以周四嶽。凡以敷天之下、莫不有望於我、故聚而朝之方嶽之下、以答其意耳。
【読み】
於[ああ]<音烏>皇[よ]いかな時[こ]の周、其の高山に陟[のぼ]ること、嶞[た]<音惰>山喬嶽。允に翕 [おさ]<音吸>まれる河に猶[したが]えり。敷天の下、裒[あつ]<音抔>めて時れ對 [こた]う。時れ周の命なり。賦なり。高山は、泛[ひろ]く山を言うのみ。嶞は、則ち其の狹くして長き者。喬は、高きなり。嶽は、則ち其の高くして大いなる者。允猶は、未だ詳らかならず。或ひと曰く、允は、信なり。猶は、由と同じ、と。翕河は、河は善く泛溢す。今其の性を得。故に翕まりて暴を爲さざるなり。裒は、聚むるなり。對は、答うるなり。言うこころは、美きかな此の周。其れ巡守して此の山に登りて、以て柴望す。又河に道 [よ]りて以て四嶽を周れり。凡そ敷天の下、我を望むこと有らざる莫きを以て、故に聚めて之を方嶽の下に朝し、以て其の意に答うるのみ。

般一章七句。般義、未詳。
【読み】
般[はん]一章七句。般の義、未だ詳らかならず。


閔予小子之什十一篇一百三十六句


魯頌四之四。魯、少暤之墟。在禹貢徐州、蒙羽之野。成王以封周公長子伯禽。今襲慶・東平府・沂密海等州、卽其地也。成王以周公有大勳勞於天下、故賜伯禽以天子之禮樂。魯於是乎有頌、以爲廟樂。其後又自作詩、以美其君。亦謂之頌。舊說皆以爲伯禽十九世孫僖公申之詩。今無所考。獨閟宮一篇爲僖公之詩、無疑耳。夫以其詩之僭如此。然夫子猶錄之者、蓋其體固列國之風、而所歌者、乃當時之事、則猶未純於天子之頌。若其所歌之事、又皆有先王禮樂敎化之遺意焉、則其文疑若猶可予也。况夫子魯人、亦安得而削之哉。然因其實而著之、而其是非得失、自有不可揜者。亦春秋之法也。或曰、魯之無風、何也。先儒以爲、時王褒周公之後、比於先代。故巡守不陳其詩、而其篇第不列於太師之職。是以宋魯無風。其或然歟。或謂、夫子有所諱而削之、則左氏所記。當時列國大夫賦詩、及吳季子觀周樂、皆無曰魯風者。其說不得通矣。
【読み】
魯頌[ろしょう]四の四。魯は、少暤[しょうこう]の墟。禹貢の徐州、蒙羽の野に在り。成王以て周公の長子伯禽を封ず。今の襲慶・東平府・沂密海等の州は、卽ち其の地なり。成王、周公の天下に大勳勞有るを以て、故に伯禽に賜うに天子の禮樂を以てす。魯是に於て頌を有ちて、以て廟樂とす。其の後又自ら詩を作りて、以て其の君を美む。亦之を頌と謂う。舊說に皆以爲えらく、伯禽十九世の孫僖公申が詩、と。今考うる所無し。獨 [ただ]閟宮[ひきゅう]の一篇は僖公の詩爲ること、疑い無きのみ。夫れ以[おもん]みるに其の詩の僭此の如し。然れども夫子猶之を錄せるは、蓋し其の體固に列國の風にして、歌う所の者、乃ち當時の事なれば、則ち猶未だ天子の頌を純 [もっぱ]らにせず。其の歌う所の事の若きも、又皆先王禮樂敎化の遺意有れば、則ち其の文疑うらくは猶予[あずか]る可きが若し。况んや夫子は魯人、亦安んぞ得て之を削らんや。然して其の實に因りて之を著して、其の是非得失、自ずから揜う可からざる者有り。亦春秋の法なり。或ひと曰く、魯の風無きは、何ぞや、と。先儒以爲えらく、時の王周公の後を褒めて、先代に比す。故に巡守して其の詩を陳ねず、而して其の篇第も太師の職に列ねず。是を以て宋魯に風無し、と。其れ或は然らんか。或ひと謂う、夫子諱む所有りて之を削るときは、則ち左氏記す所、と。當時の列國の大夫詩を賦し、及び吳の季子周樂を觀ること、皆魯風と曰う者無し。其の說通ずるを得ず。


駉駉<音扃>牡馬<叶滿補反>、在坰<音扃>之野<叶上與反>。薄言駉者<叶章與反>、有驈<音聿>有皇、有驪<音離>有黃、以車彭彭<叶鋪郎反>。思無疆、思馬斯臧。賦也。駉駉、腹幹肥張貌。邑外謂之郊。郊外謂之牧。牧外謂之野。野外謂之林。林外謂之坰。驪馬白跨曰驈。黃白曰皇。純黑曰驪。黃騂曰黃。彭彭、盛貌。思無疆、言其思之深廣無窮也。臧、善也。○此詩言僖公牧馬之盛、由其立心之遠。故美之曰、思無疆、則思馬斯臧矣。衛文公秉心塞淵而騋牝三千、亦此意也。
【読み】
駉駉[けいけい]<音扃>たる牡馬<叶滿補反>、坰 [けい]<音扃>の野<叶上與反>に在り。薄[いささ ]か言[ここ]に駉<叶章與反>たるに、驈[きつ]<音聿>有り皇有り、驪<音離>有り黃有り、以て車かくれば彭彭<叶鋪郎反>たり。思うこと疆り無し、馬を思いて斯れ臧 [よ]くせり。賦なり。駉駉は、腹幹肥え張る貌。邑の外之を郊と謂う。郊の外之を牧と謂う。牧の外之を野と謂う。野の外之を林と謂う。林の外之を坰と謂う。驪 [くろ]き馬の白き跨[また]を驈と曰う。黃白を皇と曰う。純ら黑きを驪と曰う。黃騂[あか]を黃と曰う。彭彭は、盛んなる貌。思うこと疆り無しとは、言うこころは、其の思うことの深く廣くして窮まり無きなり。臧は、善なり。○此の詩言うこころは、僖公の牧馬の盛んなるは、其の心を立つることの遠きに由る。故に之を美めて曰く、思うこと疆り無くば、則ち馬を思いて斯れ臧くせり、と。衛の文公心を秉ること塞 [み]ち淵くして騋[らい]牝三千とは、亦此の意なり。

○駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者、有騅<音隹>有駓<音丕>、有騂有騏、以車伾伾。思無期、思馬斯才<叶前西反>○賦也。倉白雜毛曰騅。黃白雜毛曰駓。赤黃曰騂。靑黑曰騏。伾伾、有力也。無期、猶無疆也。才、材力也。
【読み】
○駉駉たる牡馬、坰の野に在り。薄か言に駉たるに、騅[すい]<音隹>有り駓[ひ]<音丕>有り、騂 [せい]有り騏有り、以て車かくれば伾伾[ひひ]たり。思うこと期[かぎ]り無し、馬を思いて斯れ才<叶前西反>あらしめり。○賦なり。倉 [あお]白の雜毛を騅と曰う。黃白の雜毛を駓と曰う。赤黃を騂と曰う。靑黑を騏と曰う。伾伾は、力有るなり。期り無しは、猶疆り無きがごとし。才は、材力なり。

○駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者、有驒<音駄>有駱、有駵<音留>有雒、以車繹繹<叶弋灼反>。思無斁<叶弋灼反>、思馬斯作。賦也。靑驪驎曰驒。色有深淺班駁、如魚鱗。今之連錢騘也。白馬黑鬣曰駱。赤身黑鬣曰駵。黑身白鬣曰雒。繹繹、不絕貌。斁、厭也。作、奮起也。
【読み】
○駉駉たる牡馬、坰の野に在り。薄か言に駉たるに、驒[た]<音駄>有り駱有り、駵[りゅう]<音留>有り雒 [らく]有り、以て車かくれば繹繹<叶弋灼反>たり。思いて斁[いと]<叶弋灼反>うこと無し、馬を思いて斯れ作 [た]たしめり。賦なり。靑驪の驎あるを驒と曰う。色に深淺の班駁有り、魚鱗の如し。今の連錢騘[れんせんあしげ]なり。白馬の黑き鬣[たてがみ ]を駱と曰う。赤身の黑き鬣を駵と曰う。黑身の白き鬣を雒と曰う。繹繹は、絕えざる貌。斁[えき]は、厭うなり。作は、奮起なり。

○駉駉牡馬、在坰之野。薄言駉者、有駰<音因>有騢<音遐。叶洪孤反>、有驔<音簟>有魚、以車祛祛<音區>。思無邪<叶祥余反>、思馬斯徂。賦也。陰白雜毛曰駰。陰、淺黑色。今泥騘也。彤白雜毛曰騢。豪骭曰驔。毫在骭而白也。二目白曰魚。似魚目也。祛祛、彊健也。徂、行也。孔子曰、詩三百、一言以蔽之。曰思無邪。蓋詩之言、美惡不同。或勸或懲、皆有以使人得其情性之正。然其明白簡切、通于上下、未有若此言者。故特稱之、以爲可當三百篇之義。以其要爲不過乎此也。學者誠能深味其言、而審於念慮之閒、必使無所思而不出於正、則日用云爲、莫非天理之流行矣。蘇氏曰、昔之爲詩者、未必知此也。孔子讀詩至此、而有合於其心焉、是以取之。蓋斷章云爾。
【読み】
○駉駉たる牡馬、坰の野に在り。薄か言に駉たるに、駰[いん]<音因>有り騢[か]<音遐。叶洪孤反>有り、驔 [てん]<音簟>有り魚有り、以て車かくれば祛祛[きょきょ]<音區>たり。思うこと邪<叶祥余反>無し、馬を思いて斯れ徂かしめり。賦なり。陰白雜毛を駰と曰う。陰は、淺黑き色。今の泥騘 [でいそう]なり。彤[あか]白雜毛を騢と曰う。豪骭[ごうかん]を驔と曰う。毫[ほそげ]骭[はぎ]に在りて白し。二目白きを魚と曰う。魚の目に似たり。祛祛は、彊く健やかなり。徂は、行くなり。孔子曰く、詩三百、一言以て之を蔽う。曰く思い邪無し、と。蓋し詩の言、美惡同じからず。或は勸め或は懲らし、皆以て人をして其の情性の正しきを得せしむること有り。然れども其の明白簡切にして、上下に通ずる、未だ此の言の若くなる者有らず。故に特に之を稱して、以て三百篇の義に當たる可しとす。其の要此に過ぎずとするを以てなり。學者誠に能く深く其の言を味わいて、念慮の閒を審らかにし、必ず思う所として正しきに出でざること無からしめば、則ち日用云爲、天理の流行に非ざる莫し。蘇氏が曰く、昔の詩を爲れる者、未だ必ずしも此を知らず。孔子詩を讀んで此に至りて、其の心に合うこと有り、是を以て之を取れり。蓋し章を斷ちて爾か云えり。

駉四章章八句
【読み】
駉[けい]四章章八句


有駜<蒲必反>有駜。駜彼乘<繩證反>黃、夙夜在公。在公明明<叶謨郎反>。振振鷺、鷺于下<叶後五反>。鼓咽咽<鳥玄反>。醉言舞、于胥樂<音洛>兮。興也。駜、馬肥强貌。明明、辨治也。振振、羣飛貌。鷺、鷺羽、舞者所持。或坐或伏、如鷺之下也。咽、與淵同。鼓聲之深長也。或曰、鷺亦興也。胥、相也。醉而起舞以相樂也。此燕飮而頌禱之詞也。
【読み】
駜[ひつ]<蒲必反>たる有り駜たる有り。駜たる彼の乘<繩證反>黃、夙夜公に在り。公に在りて明明<叶謨郎反>たり。振振たる鷺 [さぎのは]、鷺于[ここ]に下<叶後五反>れるがごとし。鼓咽咽<鳥玄反>たり。醉いて言 [ここ]に舞い、于に胥[あい]樂<音洛>しめり。興なり。駜は、馬の肥えて强き貌。明明は、辨れ治まれるなり。振振は、羣れ飛ぶ貌。鷺は、鷺の羽、舞う者持する所。或は坐し或は伏すこと、鷺の下るが如し。咽は、淵と同じ。鼓聲の深く長きなり。或ひと曰く、鷺も亦興、と。胥は、相なり。醉いて起舞して以て相樂しむなり。此れ燕飮して頌禱するの詞なり。

○有駜有駜。駜彼乘牡、夙夜在公。在公飮酒。振振鷺、鷺于飛。鼓咽咽。醉言歸、于胥樂兮。興也。鷺于飛、舞者振作、鷺羽如飛也。
【読み】
○駜たる有り駜たる有り。駜たる彼の乘牡、夙夜公に在り。公に在りて酒を飮む。振振たる鷺、鷺于に飛ぶがごとし。鼓咽咽たり。醉いて言に歸り、于に胥樂しめり。興なり。鷺于に飛ぶがごとしとは、舞う者振作して、鷺の羽飛ぶが如し。

○有駜有駜。駜彼乘駽<呼縣反>、夙夜在公。在公載燕。自今以始、歲其有<叶羽已反>、君子有穀、詒孫子<叶奬里反>。于胥樂兮。興也。靑驪曰駽。今鐵騘也。載、則也。有、有年也。穀、善也。或曰、祿也。詒、遺也。頌禱之辭也。
【読み】
○駜たる有り駜たる有り。駜たる彼の乘駽[けん]<呼縣反>、夙夜公に在り。公に在りて載[すなわ]ち燕す。今より以て始めて、歲ごとに其れ有<叶羽已反>に、君子穀 [よ]きこと有りて、孫子<叶奬里反>に詒[おく]れり。于に胥樂しまん。興なり。靑き驪を駽と曰う。今の鐵騘 [てっそう]なり。載は、則ちなり。有は、有年なり。穀は、善きなり。或ひと曰く、祿、と。詒は、遺るなり。頌禱の辭なり。

有駜三章章九句
【読み】
有駜[ゆうひつ]三章章九句


思樂<音洛><普半反>水、薄采其芹<其斤反>。魯侯戾止、言觀其旂<叶其斤反>。其旂茷茷<蒲害反>、鸞聲噦噦<呼會反>。無小無大、從公于邁。賦其事、以起興也。思、發語辭也。泮水、泮宮之水也。諸侯之學、郷射之宮、謂之泮宮。其東西南方有水、形如半璧。以其半於辟廱、故曰泮水。而宮亦以名也。芹、水菜也。戾、至也。茷茷、飛揚也。噦噦、和也。此飮於泮宮、而頌禱之詞也。
【読み】
思[そ]れ泮[はん]<普半反>水に樂<音洛>しみ、薄 [いささ]か其の芹<其斤反>を采る。魯侯戾[いた]れり、言[ここ]に其の旂[はた]<叶其斤反>を觀る。其の旂茷茷 [はいはい]<蒲害反>たり、鸞[すず]の聲噦噦[かいかい]<呼會反>たり。小と無く大と無く、公に從いて于 [ここ]に邁けり。其の事を賦して、以て興を起こすなり。思は、發語の辭なり。泮水は、泮宮の水なり。諸侯の學は、郷射の宮、之を泮宮と謂う。其の東西南方に水有り、形半璧の如し。其の辟廱 [へきよう]に半なるを以て、故に泮水と曰う。而して宮も亦以て名づくなり。芹は、水菜なり。戾は、至るなり。茷茷は、飛揚するなり。噦噦は、和らぐなり。此れ泮宮に飮みて、頌禱するの詞なり。

○思樂泮水、薄采其藻。魯侯戾止、其馬蹻蹻<居表反>。其馬蹻蹻、其音昭昭<叶之繞反>。載色載笑、匪怒伊敎。賦其事、以起興也。蹻蹻、盛貌。色、和顏色也。
【読み】
○思れ泮水に樂しみ、薄か其の藻を采る。魯侯戾れり、其の馬蹻蹻[きょうきょう]<居表反>たり。其の馬蹻蹻たり、其の音昭昭<叶之繞反>たり。載ち色よく載ち笑い、怒らずして伊 [こ]れ敎えり。其の事を賦して、以て興を起こすなり。蹻蹻は、盛んなる貌。色は、顏色を和らぐるなり。

○思樂泮水、薄采其茆<叶謨九反>。魯侯戾止、在泮飮酒。旣飮旨酒、永錫難老<叶魯吼反>。順彼長道<叶徒吼反>、屈此群醜。賦其事、以起興也。茆、鳬葵也。葉大如手、赤圓而滑。江南人謂之蓴菜者也。長道、猶大道也。屈、服。醜、衆也。此章以下皆頌禱之詞也。○茆音卯。
【読み】
○思れ泮水に樂しみ、薄か其の茆[ぼう]<叶謨九反>を采る。魯侯戾れり、泮に在りて酒を飮めり。旣に旨酒を飮めり、永く老<叶魯吼反>い難きを錫わん。彼の長道<叶徒吼反>に順いて、此の群醜を屈 [したが]えよ。其の事を賦して、以て興を起こすなり。茆は、鳬葵[ふき]なり。葉大きくして手の如く、赤く圓くして滑らか。江南の人之を蓴菜 [じゅんさい]と謂う者なり。長道は、猶大道のごとし。屈は、服す。醜は、衆なり。此の章以下は皆頌禱の詞なり。○茆は音卯。

○穆穆魯侯、敬明其德、敬愼威儀、維民之則。允文允武、昭假<音格>烈祖。靡有不孝、自求伊祜<候五反>○賦也。昭、明也。假、與格同。烈祖、周公魯公也。
【読み】
○穆穆たる魯侯、敬んで其の德を明らかにし、敬んで威儀を愼み、維れ民の則なれ。允に文允に武にして、昭らかに烈祖に假[いた]<音格>れ。不孝有ること靡くして、自ら伊の祜 [さいわい]<候五反>を求めよ。○賦なり。昭は、明らかなり。假は、格と同じ。烈祖は、周公魯公なり。

○明明魯侯、克明其德、旣作泮宮、淮夷攸服。矯矯虎臣、在泮獻馘、淑問如皐陶、在泮獻囚。賦也。矯矯、武貌。馘、所格者之左耳也。淑、善也。問、訊囚也。囚、所虜獲者。蓋古者出兵、受成於學、及其反也、釋奠於學、而以訊馘告。故詩人因魯侯在泮、而願其有是功也。
【読み】
○明明たる魯侯、克く其の德を明らかにし、旣に泮宮を作れり、淮夷の服する攸。矯矯たる虎臣、泮に在りて馘[きりみみ]を獻り、淑[よ]く問うこと皐陶の如き、泮に在りて囚を獻らん。賦なり。矯矯は、武き貌。馘 [かく]は、格[そむ]く所の者の左耳なり。淑は、善きなり。問は、囚を訊[と]うなり。囚は、虜にし獲る所の者。蓋し古は兵を出だすに、成を學に受け、其の反るに及んで、學に釋奠して、訊馘を以て告ぐ。故に詩人魯侯の泮に在るに因りて、其の是の功有らんことを願うなり。

○濟濟多士、克廣德心、桓桓于征、狄彼東南<叶尼心反>。烝烝皇皇、不吳<音話>不揚、不告于訩、在泮獻功。賦也。廣、推而大之也。德心、善意也。狄、猶逷也。東南、謂淮夷也。烝烝皇皇、盛也。不吳不揚、肅也。不告于訩、師克而和、不爭功也。
【読み】
○濟濟[せいせい]たる多士、克く德心を廣め、桓桓として于に征[う]ち、彼の東南<叶尼心反>を狄[さ]けん。烝烝皇皇として、吳 [かまびす]<音話>しからず揚がらず、訩[うった]えに告げずして、泮に在りて功を獻らん。賦なり。廣は、推して之を大いにするなり。德心は、善き意なり。狄は、猶逷 [とおざ]けるのごとし。東南は、淮夷を謂うなり。烝烝皇皇は、盛んなり。吳しからず揚がらずとは、肅むなり。訩えに告げずとは、師克ちて和らぎ、功を爭わざるなり。

○角弓其觩<音求>、束矢其搜。戎車孔博、徒御無斁<叶弋灼反>、旣克淮夷、孔淑不逆<叶宜脚反>。式固爾猶、淮夷卒獲<叶黃郭反>○賦也。觩、弓健貌。五十矢爲束。或曰、百矢也。搜、矢疾聲也。博、廣大也。無斁、言競勸也。逆、違命也。蓋能審固其謀猶、則淮夷終無不獲矣。
【読み】
○角の弓其れ觩[きゅう]<音求>たり、束の矢其れ搜たり。戎車孔[はなは]だ博く、徒御斁[いと]<叶弋灼反>うこと無く、旣に淮夷に克ち、孔だ淑くして逆 [そむ]<叶宜脚反>かず。式[もっ]て爾の猶[はかりごと]を固くすれば、淮夷卒に獲<叶黃郭反>ん。○賦なり。觩は、弓の健なる貌。五十矢を束とす。或ひと曰く、百矢、と。搜は、矢の疾き聲なり。博は、廣大なり。斁うこと無しとは、言うこころは、競い勸むるなり。逆は、命に違うなり。蓋し能く其の謀猶を審らかに固くすれば、則ち淮夷終に獲ざること無けん。

○翩彼飛鴞<音梟>、集于泮林、食我桑黮<音甚>、懷我好音。憬<音耿>彼淮夷、來獻其琛<敕金反>。元龜象齒、大賂南金。興也。鴞、惡聲之鳥也。黮、桑實也。憬、覺悟也。琛、寶也。元龜、尺二寸。賂、遺也。南金、荆上之金也。此章前四句興後四句。如行葦首章之例也。
【読み】
○翩[へん]たる彼の飛ぶ鴞[ふくろう]<音梟>、泮の林に集[い]て、我が桑の黮[み]<音甚>を食み、我に懷くに好き音せり。憬 [さと]<音耿>れる彼の淮夷、來りて其の琛[たから]<敕金反>を獻らん。元 [おお]いなる龜象の齒、大いに南金を賂[おく]らん。興なり。鴞[きょう]は、惡聲の鳥なり。黮[じん]は、桑の實なり。憬[けい]は、覺り悟るなり。琛 [ちん]は、寶なり。元龜は、尺二寸。賂は、遺るなり。南金は、荆上の金なり。此の章は前の四句にて後の四句を興す。行葦の首章の例の如し。

泮水八章章八句
【読み】
泮水[はんすい]八章章八句


<音秘>宮有侐<音洫>、實實枚枚。赫赫姜嫄<音元>、其德不回。上帝是依<叶音隈>、無災無害、彌月不遲<叶陳回反>。是生后稷、降之百福<叶筆力反>。黍稷重<平聲><音六。叶六直反>、稙<音陟>稺菽麥<叶訖力反>。奄有下國<叶于逼反>、俾民稼穡。有稷有黍、有稻有秬<音巨>。奄有下土、纘禹之緒<音序>○賦也。閟、深閉也。宮、廟也。侐、淸靜也。實實、鞏固也。枚枚、礱密也。時蓋修之。故詩人歌詠其事、以爲頌禱之詞、而推本后稷之生、而下及于僖公耳。回、邪也。依、猶眷顧也。說見生民篇。先種曰稙、後種曰稺。奄有下國、封於邰也。緒、業也。禹治洪水旣平、后稷乃播種百穀。
【読み】
閟[ひ]<音秘>宮侐[きょく]<音洫>たる有り、實實枚枚 [ばいばい]たり。赫赫たる姜嫄<音元>、其の德回[よこしま]ならず。上帝是れ依[かえり]<叶音隈>みて、災い無く害 [やぶ]れ無く、月を彌[お]えて遲<叶陳回反>からず。是れ后稷を生みて、之に百の福<叶筆力反>を降せり。黍稷の重<平聲>穋 [りく]<音六。叶六直反>、稙[ちょく]<音陟>稺菽麥<叶訖力反>あり。奄 [つい]に下國<叶于逼反>を有ち、民をして稼穡せしむ。稷有り黍有り、稻有り秬[きょ]<音巨>有り。奄に下土を有ちて、禹の緒<音序>を纘げり。○賦なり。閟は、深く閉ざすなり。宮は、廟なり。侐は、淸く靜かなり。實實は、鞏固なり。枚枚は、礱密 [ろうみつ]なり。時に蓋し之を修す。故に詩人其の事を歌い詠じて、以て頌禱の詞とし、后稷の生まるるに推し本づけて、下僖公に及ぼすのみ。回は、邪なり。依は、猶眷顧のごとし。說は生民の篇に見えたり。先に種えるを稙と曰い、後に種えるを稺と曰う。奄に下國を有つとは、邰 [たい]に封ぜらるるなり。緒は、業なり。禹洪水を治め旣に平かにして、后稷乃ち百穀を播種せり。

○后稷之孫、實維大<音泰>王、居岐之陽、實始翦商。至于文武、纘大王之緒、致天之屆、于牧之野<叶上與反>。無貳無虞、上帝臨女<音汝>。敦<音堆>商之旅、克咸厥功<叶居古反>。王曰叔父、建爾元子<叶子古反>、俾侯于魯、大啓爾宇、爲周室輔。賦也。翦、斷也。大王自豳徙居岐陽、四方之民、咸歸往之。於是而王迹始著。蓋有翦商之漸矣。屆、極也。猶言窮極也。虞、慮也。無貳無虞、上帝臨女、猶大明云上帝臨女、無貳爾心也。敦、治之也。咸、同也。言輔佐之臣、同有其功、而周公亦與焉也。王、成王也。叔父、周公也。元子、魯公伯禽也。啓、開。宇、居也。
【読み】
○后稷の孫、實に維れ大<音泰>王、岐の陽[みなみ]に居り、實に始めて商を翦[た]てり。文武に至りて、大王の緒を纘ぎ、天の屆 [きわ]めを、牧の野<叶上與反>に致せり。貳[うたが]うこと無く虞[おもんばか]ること無かれ、上帝女<音汝>に臨めり。商を敦 [おさ]<音堆>むるの旅、克く厥の功<叶居古反>を咸 [おな]じくす。王曰く叔父、爾の元子<叶子古反>を建てて、魯に侯たらしめ、大いに爾の宇を啓[ひら]いて、周室の輔け爲たらしめん、と。賦なり。翦は、斷つなり。大王豳より徙 [うつ]りて岐陽に居り、四方の民、咸之に歸し往く。是に於て王迹始めて著る。蓋し商を翦つの漸有り。屆は、極なり。猶窮極と言うがごとし。虞は、慮るなり。貳うこと無く虞ること無かれ、上帝女に臨めりとは、猶大明に、上帝女に臨めり、爾の心に貳い無かれと云うがごとし。敦 [たい]は、之を治むるなり。咸は、同じなり。言うこころは、輔佐の臣、同じく其の功有りて、周公も亦焉に與れり。王は、成王なり。叔父は、周公なり。元子は、魯公伯禽なり。啓は、開く。宇は、居なり。

○乃命魯公、俾侯于東、錫之山川、土田附庸。周公之孫、莊公之子<叶獎里反>、龍旂承祀<叶養里反>、六轡耳耳。春秋匪解<音懈。叶訖力反>、享祀不忒。皇皇后帝、皇祖后稷、享以騂犧<虛宜虛何二反>。是饗是宜<奇牛何二反>、降福旣多<章移當何二反>、周公皇祖、亦其福女<音汝>○賦也。附庸、猶屬城也。小國不能自達於天子、而附於大國也。上章旣告周公以封伯禽之意、此乃言其命魯公而封之也。莊公之子、其一閔公、其一僖公。知此是僖公者。閔公在位不久、未有可頌。此必是僖公也。耳耳、柔從也。春秋、錯舉四時也。忒、過差也。成王以周公有大功於王室、故命魯公以夏正孟春、郊祀上帝、配以后稷、牲用騂牡。皇祖、謂羣公。此章以後、皆言僖公致敬郊廟、而神降之福。國人稱願之如此也。
【読み】
○乃ち魯公に命じて、東に侯たらしめ、之に山川、土田附庸を錫えり。周公の孫、莊公の子<叶獎里反>、龍の旂[はた ]して祀<叶養里反>に承[つか]え、六つの轡[たづな]耳耳たり。春秋解[おこた]<音懈。叶訖力反>らずして、享祀すること忒 [たが]わず。皇皇たる后帝、皇祖后稷、享[たてまつ]るに騂[あか]き犧[にえ]<虛宜虛何二反>を以てせり。是れ饗 [う]け是れ宜[やす]<奇牛何二反>んじて、福を降すこと旣に多<章移當何二反>く、周公皇祖も、亦其れ女<音汝>に福せん。○賦なり。附庸は、猶屬城のごとし。小國自ら天子に達すること能わずして、大國に附くなり。上の章は旣に周公以て伯禽を封ずるの意を告げ、此れ乃ち其の魯公に命じて之を封ずるを言うなり。莊公の子は、其の一は閔公、其の一は僖公。知んぬ、此は是れ僖公なる者なるを。閔公位に在ること久しからず、未だ頌す可きこと有らず。此れ必ず是れ僖公ならん。耳耳は、柔らぎ從うなり。春秋は、四時を錯え舉ぐるなり。忒は、過差なり。成王周公の王室に大功有るを以て、故に魯公に命じて夏正孟春を以て、上帝を郊に祀り、配するに后稷を以てし、牲に騂き牡を用ゆ。皇祖は、羣公を謂う。此の章以後は、皆僖公敬を郊廟に致して、神之に福を降すを言う。國人之を稱願すること此の如し。

○秋而載嘗、夏而楅衡<叶戶郎反>。白牡騂剛、犧尊將將<音搶>。毛炰<音庖><音恣><叶盧當反>、籩豆大房、萬舞洋洋。孝孫有慶<叶祛羊反>、俾爾熾而昌、俾爾壽而臧、保彼東方、魯邦是常。不虧不崩、不震不騰、三壽作朋、如岡如陵。賦也。嘗、秋祭名。楅衡、施於牛角、所以止觸也。周禮封人云、凡祭飾其牛牲、設其楅衡是也。秋將嘗、而夏楅衡其牛。言夙戒也。白牡、周公之牲也。騂剛、魯公之牲也。白牡、殷牲也。周公有王禮。故不敢與文武同。魯公則無所嫌。故用騂剛。犧尊、畫牛於尊腹也。或曰、尊作牛形、鑿其背以受酒也。毛炰、周禮、封人祭祀有毛炰之豚。注云、爓去其毛、而炰之也。胾、切肉也。羹、大羹・鉶羹也。大羹、大古之羹。湆煮肉汁不和。盛之以豋。貴其質也。鉶羹、肉汁之有菜和者也。盛之鉶器。故曰鉶羹。大房、半體之俎。足下有跗。如堂房也。萬、舞名。震騰、驚動也。三壽、未詳。鄭氏曰、三卿也。或曰、願公壽與岡・陵等而爲三也。
【読み】
○秋にして載[すなわ]ち嘗すれば、夏よりして楅衡[ふくこう]<叶戶郎反>す。白牡[はくぼう]騂剛[せいごう ]、犧の尊[たる]將將<音搶>たり。毛炰[もうほう]<音庖>胾 [し]<音恣>羹[こう]<叶盧當反>、籩豆大房あり、萬舞洋洋たり。孝孫慶 [さいわい]<叶祛羊反>有り、爾をして熾んに昌んならしめ、爾をして壽ながくして臧[よ]からしめ、彼の東方を保ち、魯邦是れ常あり。虧けず崩れず、震 [うご]かず騰[あ]がらず、三壽朋を作して、岡の如く陵の如けん。賦なり。嘗は、秋の祭の名。楅衡は、牛の角に施して、觸るるを止むる所以なり。周禮封人に云う、凡そ祭は其の牛牲を飾り、其の楅衡を設くとは是れなり。秋將に嘗せんとすれば、夏に其の牛を楅衡す。言うこころは夙に戒むるなり。白牡は、周公の牲なり。騂剛は、魯公の牲なり。白牡は、殷の牲なり。周公王の禮有り。故に敢えて文武と同じからず。魯公は則ち嫌う所無し。故に騂剛を用う。犧の尊は、牛を尊の腹に畫くなり。或ひと曰く、尊を牛の形に作りて、其の背を鑿ちて以て酒を受く、と。毛炰は、周禮に、封人祭祀に毛炰の豚有り、と。注に云う、其の毛を爓 [ゆ]で去りて、之を炰[や]く、と。胾は、切れる肉なり。羹は、大羹・鉶[けい]羹なり。大羹は、大古の羹。湆[きゅう]は煮肉の汁と和せず。之を盛るに豋 [とう]を以てす。其の質を貴べばなり。鉶羹は、肉汁の菜と和すること有る者なり。之を鉶器に盛る。故に鉶羹と曰う。大房は、半體の俎。足の下に跗[ふ]有り。堂房の如し。萬は、舞の名。震騰は、驚き動くなり。三壽は、未だ詳らかならず。鄭氏が曰く、三卿、と。或ひと曰く、願わくは公の壽と岡・陵と等しくして三とす、と。

○公車千乘<去聲。叶神陵反>、朱英綠縢<音滕>、二矛重<平聲><叶姑弘反>。公徒三萬、貝冑朱綅<音纎。叶息稜反>、烝徒增增。戎狄是膺、荆舒是懲、則莫我敢承。俾爾昌而熾、俾爾壽而富<叶方未反>、黃髮台背<叶蒲寐反>、壽胥與試。俾爾昌而大<叶特計反>、俾爾耆而艾<叶五計反>、萬有千歲、眉壽無有害<叶暇反>○賦也。千乘、大國之賦也。成方十里、出革車一乘、甲士三人、左持弓、右持矛、中人。步卒七十二人。將重車者二十五人。千乘之地、則三百十六里有奇也。朱英、所以飾矛、綠縢、所以約弓也。二矛、夷矛酋矛也。重弓、備折壞也。徒、步卒也。三萬、舉成數也。車千乘、法當用十萬人、而爲步卒者七萬二千人。然大國之賦、適滿千乘、苟盡用之、是舉國而行也。故其用之大國、三軍而已。三軍、爲車三百七十五乘、三萬七千五百人。其爲步卒不過二萬七千人。舉其中而以成數言。故曰三萬也。貝冑、貝飾冑也。朱綅、所以綴也。增增、衆也。戎、西戎。狄、北狄。膺、當也。荆、楚之別號。舒、其與國也。懲、艾。承、禦也。僖公嘗從齊桓公伐楚。故以此美之。而祝其昌大壽考也。壽胥與試之義、未詳。王氏曰、壽考者、相與爲公用也。蘇氏曰、願其壽而相與試其才力、以爲用也。
【読み】
○公車千乘<去聲。叶神陵反>、朱の英[かざり]し綠の縢[まとい]<音滕>せる、二つの矛重<平聲>なれる弓<叶姑弘反>あり。公徒三萬、貝の冑に朱の綅 [つづ]<音纎。叶息稜反>りして、烝徒增增たり。戎狄是れ膺[あ]たり、荆舒是れ懲らさば、則ち我を敢えて承 [ふせ]ぐこと莫けん。爾をして昌んにして熾んならしめ、爾をして壽ながくして富<叶方未反>ましめ、黃髮台背<叶蒲寐反>にして、壽ながきも胥 [あい]與に試[もち]いられん。爾をして昌んにして大<叶特計反>いならしめ、爾をして耆[ぎ]にして艾 [がい]<叶五計反>ならしめ、萬有千歲、眉壽にして害<叶暇反>れ有ること無けん。○賦なり。千乘、大國の賦なり。成方十里、革車一乘を出だし、甲士三人、左に弓を持ち、右に矛を持ち、中人は御す。步卒七十二人。重車を將 [ひき]いる者二十五人。千乘の地は、則ち三百十六里有奇なり。朱英は、矛を飾る所以、綠縢[りょくとう]は、弓を約める所以なり。二矛は、夷矛と酋[ゆう]矛なり。重弓は、折れ壞るるに備うるなり。徒は、步卒なり。三萬は、成數を舉ぐるなり。車千乘なれば、法當に十萬人を用うべくして、步卒爲る者七萬二千人。然れども大國の賦、適に千乘に滿ちて、苟に盡く之を用いば、是れ國を舉げて行くなり。故に其れ之を大國に用うるに、三軍なるのみ。三軍は、車三百七十五乘、三萬七千五百人爲り。其の步卒爲るや二萬七千人に過ぎず。其の中を舉げて成數を以て言う。故に三萬と曰うなり。貝冑は、貝にて冑を飾るなり。朱綅 [しゅしん]は、綴る所以なり。增增は、衆きなり。戎は、西戎。狄は、北狄。膺は、當たるなり。荆は、楚の別號。舒は、其の與國なり。懲は、艾[おさ]むる。承は、禦ぐなり。僖公嘗て齊の桓公に從いて楚を伐てり。故に此を以て之を美む。而して其の昌大なる壽考を祝うなり。壽胥與試の義、未だ詳らかならず。王氏が曰く、壽考の者、相與に公用を爲す、と。蘇氏が曰く、願わくは其れ壽ながくして相與に其の才力を試みて、以て用を爲さん、と。

○泰山巖巖<叶魚杴反>、魯邦所詹。奄有龜蒙、遂荒大東、至于海邦<叶卜工反>、淮夷來同、莫不率從、魯侯之功。賦也。泰山、魯之望也。詹、與瞻同。龜・蒙、二山名。荒、奄也。大東、極東也。海邦、近海之國也。
【読み】
○泰山巖巖<叶魚杴反>たり、魯邦の詹[み]る所。奄[つい]に龜蒙を有ちて、遂に大東を荒[おお]いて、海邦<叶卜工反>に至り、淮夷來同して、率い從わざる莫く、魯侯の功ならん。賦なり。泰山は、魯の望なり。詹は、瞻と同じ。龜・蒙は、二山の名。荒は、奄うなり。大東は、極東なり。海邦は、近海の國なり。

○保有鳧繹<叶弋灼反>、遂荒徐宅<叶達各反>、至于海邦、淮夷蠻貊<叶莫博反>、及彼南夷、莫不率從、莫敢不諾、魯侯是若。賦也。鳧・繹、二山名。宅、居也。謂徐國也。諾、應辭。若、順也。○泰山龜蒙鳧繹、魯之所有。其餘則國之東南、勢相連屬。可以服從之國也。
【読み】
○鳧[ふ]繹<叶弋灼反>を保んじ有ちて、遂に徐宅<叶達各反>を荒いて、海邦に至り、淮夷蠻貊 [ばんはく]<叶莫博反>、及び彼の南夷まで、率い從わざる莫く、敢えて諾[こた]えざる莫くして、魯侯是れ若 [したが]わん。賦なり。鳧・繹は、二山の名。宅は、居なり。徐國を謂うなり。諾は、應ずる辭。若は、順うなり。○泰山龜蒙鳧繹は、魯の有する所。其の餘は則ち國の東南にて、勢い相連屬す。以て服從す可きの國なり。

○天錫公純嘏<叶果五反>、眉壽保魯、居常與許、復周公之宇、魯侯燕喜、令妻壽母<叶滿委反>、宜大夫庶士、邦國是有<叶羽已反>。旣多受祉、黃髮兒齒。賦也。常或作嘗。在薛之旁。許、許田也。魯朝宿之邑也。皆魯之故地。見侵於諸侯、而未復者。故魯人以是願僖公也。令妻、令善之妻、聲姜也。壽母、壽考之母、成風也。閔公八歲被弑、必是未娶、其母叔姜亦應未老。此言令妻壽母、又可見公爲僖公無疑也。有、常有也。兒齒、齒落更生細者。亦壽徵也。
【読み】
○天公に純[おお]いなる嘏[さいわい]<叶果五反>を錫いて、眉壽にして魯を保ち、常と許とに居て、周公の宇を復し、魯侯燕んじ喜んで、令妻壽母<叶滿委反>あり、大夫庶士に宜しく、邦國是れ有<叶羽已反>たん。旣に多く祉 [さいわい]を受け、黃なる髮兒の齒あらん。賦なり。常は或は嘗に作る。薛の旁らに在り。許は、許田なり。魯の朝宿の邑なり。皆魯の故なり。諸侯に侵されて、未だ復らざる者。故に魯人是を以て僖公を願うなり。令妻は、令善の妻、聲姜なり。壽母は、壽考の母、成風なり。閔公八歲にて弑され、必ず是れ未だ娶らず、其の母叔姜も亦應に未だ老いざるべし。此に令妻壽母と言わば、又公は僖公爲りと見る可きこと疑い無し。有は、常に有つなり。兒齒は、齒落ちて更に生じて細かき者。亦壽の徵なり。

○徂來之松、新甫之柏<叶逋莫反>、是斷<音短>是度<入聲>、是尋是尺<叶尺約反>。松桷<音角>有舄<叶七約反>、路寢孔碩<叶常約反>。新廟奕奕<叶弋灼反>、奚斯所作。孔曼<音萬>且碩<同上>、萬民是若。賦也。徂來・新甫、二山名。八尺曰尋。舄、大貌。路寢、正寢也。新廟、僖公所修之廟。奚斯、公子魚也。作者、敎護屬功課章程也。曼、長。碩、大也。萬民是若、順萬民之望也。
【読み】
○徂來の松、新甫の柏<叶逋莫反>、是れ斷<音短>り是れ度<入聲>り、是れ尋にし是れ尺<叶尺約反>にす。松の桷 [たるき]<音角>舄[おお]<叶七約反>いなること有り、路寢孔 [はなは]だ碩<叶常約反>いなり。新廟奕奕<叶弋灼反>たり、奚斯 [けいし]が作れる所。孔だ曼[なが]<音萬>く且つ碩<上に同じ>いなり、萬民に是れ若えり。賦なり。徂來・新甫は、二山の名。八尺を尋と曰う。舄 [せき]は、大いなる貌。路寢は、正寢なり。新廟は、僖公修する所の廟。奚斯は、公子魚なり。作とは、敎護屬功の章程を課するなり。曼は、長し。碩は、大いなり。萬民是れ若うとは、萬民の望みに順うなり。

閟宮九章。五章章十七句。内第四章脫一句。二章章八句。二章章十句。舊說、八章二章十七句。一章十二句。一章三十八句。二章章八句。二章章十句。多寡不均、雜亂無次。蓋不知第四章有脫句而然。今正其誤。
【読み】
閟宮[ひきゅう]九章。五章章十七句。内第四章一句を脫す。二章章八句。二章章十句。舊說に、八章二章十七句。一章十二句。一章三十八句。二章章八句。二章章十句、と。多寡均しからず、雜亂して次無し。蓋し第四章に脫句有るを知らずして然り。今其の誤れるを正す。


魯頌四篇二十四章二百四十三句


商頌四之五。契爲舜司徒、而封於商。傳十四世、而湯有天下。其後三宗迭興。及紂無道、爲武王所滅。封其庶兄微子啓於宋、修其禮樂、以奉商後。其地在禹貢徐州泗濱西及豫州盟猪之野。其後政衰、商之禮樂日以放失。七世至戴公時、大夫正考甫得商頌十二篇於周大師、歸以祀其先王。至孔子編詩、而又亡其七篇。然其存者亦多闕文疑義。今不敢强通也。商都亳、宋都商丘。皆在今應天府亳州界。
【読み】
商頌[しょうしょう]四の五。契[せつ]舜の司徒と爲りて、商に封ぜらる。傳わりて十四世にして、湯天下を有てり。其の後三宗迭[かわるがわ]る興る。紂が無道なるに及んで、武王の爲に滅さる。其の庶兄微子啓を宋に封じ、其の禮樂を修め、以て商の後を奉ず。其の地禹貢徐州泗濱の西及び豫州盟猪の野に在り。其の後政衰えて、商の禮樂日々に以て放失す。七世戴公の時に至りて、大夫正考甫商頌十二篇を周の大師に得て、歸りて以て其の先王を祀る。孔子詩を編むに至りて、又其の七篇を亡う。然れども其の存する者も亦闕文疑義多し。今敢えて强いて通ぜざれ。商は亳に都し、宋は商丘に都す。皆今の應天府亳州の界に在り。


<音醫><音余>那與、置我鞉<音桃>鼓。奏鼓簡簡、衎我烈祖。賦也。猗、歎詞。那、多。置、陳也。簡簡、和大也。衎、樂也。烈祖、湯也。記曰、商人尙聲、臭・味未成。滌蕩其聲、樂三闋、然後出迎牲、卽此是也。舊說、以此爲祀成湯之樂也。
【読み】
猗[ああ]<音醫>那[おお]いかな、我が鞉[とう]<音桃>鼓を置[つら]ねたり。鼓を奏でること簡簡たり、我が烈祖を衎[たの]しましむ。賦なり。猗は、歎詞。那[だ]は、多い。置は、陳ぬるなり。簡簡は、和らぎ大いなるなり。衎は、樂しむなり。烈祖は、湯なり。記に曰く、商人聲を尙び、臭・味未だ成らず。其の聲を滌蕩して、樂三たび闋 [お]わりて、然して後に出でて牲を迎うとは、卽ち此れ是れなり。舊說に、此を以て成湯を祀るの樂とす、と。

△湯孫奏假、綏我思成。鞉鼓淵淵<叶於巾反>、嘒嘒管聲。旣和且平、依我磬聲。於<音烏>赫湯孫<叶思倫反>、穆穆厥聲。湯孫、主祀之時王也。假、與格同。言奏樂以格于祖考也。綏、安也。思成、未詳。鄭氏曰、安我以所思而成之人。謂神明來格也。禮記曰、齊之日、思其居處、思其笑語、思其志意、思其所樂、思其所嗜。齊三日、乃見其所爲齊者。祭之日、入室、僾然必有見乎其位。周旋出戶、肅然必有聞乎其容聲。出戶而聽、愾然必有聞乎其嘆息之聲。此之謂思成。蘇氏曰、其所見聞、本非有也。生於思耳。此二說近是。蓋齊而思之、祭而如有見聞、則成此人矣。鄭注、頗有脫誤。今正之。淵淵、深遠也。嘒嘒、淸亮也。磬、玉磬也。堂上升歌之樂。非石磬也。穆穆、美也。
【読み】
△湯の孫奏[すす]め假[いた]して、我を綏[やす]んずるに思いて成れるをせり。鞉鼓淵淵<叶於巾反>たり、嘒嘒[けいけい]たる管聲。旣に和らぎ且つ平らかにして、我が磬[けい]の聲に依れり。於[ああ]<音烏>赫[さか ]んなるかな湯の孫<叶思倫反>、穆穆たる厥の聲。湯の孫は、祀を主る時の王なり。假は、格と同じ。言うこころは、樂を奏めて以て祖考に格すなり。綏は、安んずるなり。思成は、未だ詳らかならず。鄭氏が曰く、我を安んずるに思いて成れる所の人を以てするなり。神明の來り格るを謂う。禮記に曰く、齊の日、其の居處を思い、其の笑語を思い、其の志意を思い、其の樂しむ所を思い、其の嗜む所を思う。齊すること三日、乃ち其の爲に齊する所の者を見る。祭の日、室に入り、僾然として必ず其の位に見ること有り。周旋して戶を出づ、肅然として必ず其の容聲を聞くこと有り。戶を出でて聽く、愾然として必ず其の嘆息の聲を聞くこと有り、と。此を之れ思成と謂う、と。蘇氏が曰く、其の見聞する所は、本より有るに非ず。思うより生るのみ、と。此の二說是に近し。蓋し齊して之を思い、祭して見聞有るが如きは、則ち此の人を成すなり。鄭注、頗る脫誤有り。今之を正す。淵淵は、深遠なり。嘒嘒は、淸亮なり。磬は、玉磬なり。堂上升歌の樂。石磬に非ず。穆穆は、美しきなり。

△庸鼓有斁、萬舞有奕。我有嘉客、亦不夷懌。庸、鏞通。斁、斁然、盛也。奕、奕然、有次序也。蓋上文言、鞉鼓管籥作於堂下、其聲依堂上之玉磬、無相奪倫者、至於此。則九獻之後、鐘鼓交作、萬舞陳于庭、而祀事畢矣。嘉客、先代之後、來助祭者也。夷、悅也。亦不夷懌乎、言皆悅懌也。
【読み】
△庸[かね]鼓斁[さか]んなること有り、萬の舞奕[ついで]有り。我れ嘉客有り、亦夷[よろこ]び懌[よろこば]ざらんや。庸は、鏞[よう]と通ず。斁は、斁[えき]然、盛んなり。奕は、奕然、次序有るなり。蓋し上の文に言う、鞉鼓管籥堂下に作りて、其の聲堂上の玉磬に依りて、倫を相奪ぶこと無き者、此に至れり、と。則ち九獻の後、鐘鼓交々作り、萬の舞庭に陳なりて、祀の事畢わる。嘉客は、先代の後、來りて祭を助くる者なり。夷は、悅ぶなり。亦夷び懌ばざらんやとは、言うこころは、皆悅び懌ぶなり。

△自古在昔、先民有作。溫恭朝夕、執事有恪。恪、敬也。言恭敬之道、古人所行不可忘也。閔馬父曰、先聖王之傳恭、猶不敢專、稱曰自古。古曰在昔、昔曰先民。
【読み】
△古より在昔[むかし]、先民作すこと有り。溫恭なること朝夕にして、事を執ること恪[つつし]み有り。恪は、敬むなり。言うこころは、恭敬の道、古人の行う所忘る可からず。閔馬父が曰く、先聖王の恭を傳うる、猶敢えて專らにせず、稱して古よりと曰う、と。古を在昔と曰い、昔を先民と曰う。

△顧予烝嘗、湯孫之將。將、奉也。言湯其尙顧我烝嘗哉、此湯孫之所奉者。致其丁寧之意、庶幾其顧之也。
【読み】
△予が烝嘗を顧みよ、湯の孫の將[たてまつりもの]。將は、奉るなり。言うこころは、湯其れ尙わくは我が烝嘗を顧みんかな、此の湯の孫の奉る所の者を。其の丁寧の意を致して、其の之を顧みんことを庶幾えり。

那一章二十二句。閔馬父曰、正考甫校商之名頌、以那爲首。其輯之亂曰云云、卽此詩也。
【読み】
那[だ]一章二十二句。閔馬父が曰く、正考甫商の名頌を校[かんが]うるに、那を以て首めとす。其の輯の亂に曰く云云とは、卽ち此の詩なり。


嗟嗟烈祖、有秩斯祜<音戶>。申錫無疆、及爾斯所。賦也。烈祖、湯也。秩、常。申、重也。爾、主祭之君。蓋自歌者指之也。斯所、猶言此處也。○此亦祀成湯之樂。言嗟嗟烈祖、有秩秩無窮之福。可以申錫於無疆。是以及於爾今王之所、而修其祭祀、如下所云也。
【読み】
嗟嗟[ああ]烈祖、秩[つね]なる斯の祜[さいわい]<音戶>有り。申[かさ]ね錫うこと疆り無きまでにして、爾の斯の所に及ぼせり。賦なり。烈祖は、湯なり。秩は、常。申は、重ぬるなり。爾は、祭を主るの君。蓋し歌う者より之を指すなり。斯の所とは、猶此の處と言うがごとし。○此れ亦成湯を祀るの樂。言うこころは、嗟嗟烈祖、秩秩として窮まり無きの福有り。以て疆り無きまでに申ね錫う可し。是を以て爾今の王の所に及んで、其の祭祀を修むること、下に云う所の如し。

△旣載淸酤<叶候五反>、賚我思成<叶音常>。亦有和羹<叶音郎>、旣戒旣平<叶音旁>。鬷<音奏><音格>無言<叶音昴>、時靡有爭<叶音章>。綏我眉壽、黃耇無疆。酤、酒。賚、與也。思成義見上篇。和羹、味之調節也。戒、夙戒也。平、猶和也。儀禮於祭祀燕享之始、每言羹定。蓋以羹熟爲節、然後行禮。定、卽戒平之謂也。鬷、中庸作奏。正與上篇義同。蓋古聲奏族相近。族聲轉平、而爲鬷耳。無言、無爭、肅敬而齊也。言其載淸酤、而旣與我以思成矣。及進和羹、而肅敬之至、則又安我以眉壽黃耇之福也。
【読み】
△旣に淸酤[こ]<叶候五反>を載す、我に賚[たま]うに思いて成<叶音常>れるをせり。亦和 [ととの]える羹<叶音郎>有り、旣に戒め旣に平[やわ]<叶音旁>らげり。鬷 [すす]<音奏>め假[いた]<音格>して言<叶音昴>うこと無し、時に爭<叶音章>い有ること靡し。我を綏 [やす]んずるに眉壽、黃耇[こうこう]にして疆り無きをせり。酤は、酒。賚は、與うなり。思成の義は上の篇に見えたり。和羹は、味の節を調うるなり。戒は、夙に戒むるなり。平は、猶和のごとし。儀禮に祭祀燕享の始めに於て、每に羹定むると言う。蓋し羹熟するを以て節とし、然して後に禮を行うなり。定は、卽ち戒め平らぐの謂なり。鬷 [そう]は、中庸に奏に作る。正に上の篇と義同じ。蓋し古の聲は奏族相近し。族の聲平に轉じて、鬷と爲るのみ。言うこと無し、爭い無しは、肅敬して齊するなり。言うこころは、其の淸酤を載せて、旣に我に與うるに思い成れるを以てす。和える羹を進むるに及んで、肅敬の至りなれば、則ち又我を安んずるに眉壽黃耇の福を以てす。

△約軧<音祈>錯衡<叶徒郎反>、八鸞鶬鶬<音搶>。以假<音格>以享<叶虛良反>、我受命溥將。自天降康、豐年穰穰。來假來饗<叶虛良反>、降福無疆。約軧・錯衡・八鸞、見采芑篇。鶬、見載見篇。言助祭之諸侯、乘是車、以假以享于祖宗之廟也。溥、廣。將、大也。穰穰、多也。言我受命旣廣大、而天降以豐年黍稷之多、使得以祭也。假之而祖考來假、享之而祖考來享、則降福無疆矣。
【読み】
△約[まと]える軧[こしき]<音祈>錯[かざ]れる衡[くびき]<叶徒郎反>、八つの鸞 [すず]鶬鶬[しょうしょう]<音搶>たり。以て假<音格>して以て享 [たてまつ]<叶虛良反>る、我が命を受くること溥[ひろ]く將[おお]いなり。天より康きを降し、豐年穰穰たり。來り假り來り饗 [う]<叶虛良反>けて、福を降すこと疆り無し。約軧・錯衡・八鸞は、采芑の篇に見えたり。鶬は、載見の篇に見えたり。言うこころは、祭を助くる諸侯、是の車に乘りて、祖宗の廟に以て假し以て享るなり。溥は、廣し。將は、大いなり。穰穰は、多きなり。言うこころは、我れ命を受くること旣に廣く大いにして、天降すに豐年黍稷の多きを以てして、以て祭ることを得せしむ。之を假して祖考來り假り、之を享りて祖考來り享くれば、則ち福を降すこと疆り無し。

△顧予烝嘗、湯孫之將。說見前篇。
【読み】
△予が烝嘗を顧みよ、湯の孫の將[たてまつりもの]。說は前の篇に見えたり。

烈祖一章二十二句
【読み】
烈祖[れっそ]一章二十二句


天命玄鳥、降而生商、宅殷土芒芒。古帝命武湯、正域彼四方。賦也。玄鳥、鳦也。春分玄鳥降。高辛氏之妃、有娀氏女簡狄、祈于郊禖、鳦遺卵。簡狄呑之而生契。其後世遂爲有商氏、以有天下。事見史記。宅、居也。殷、地名。芒芒、大貌。古、猶昔也。帝、上帝也。武湯、以其有武德號之也。正、治也。域、封境也。○此亦祭祀宗廟之樂、而追叙商人之所由生、以及其有天下之初也。
【読み】
天玄鳥に命じて、降りて商を生ましむ、殷の土の芒芒[ぼうぼう]たるに宅[お]れり。古帝武湯に命じて、域[さかい]を彼の四方に正[おさ]めしむ。賦なり。玄鳥は、鳦 [つばめ]なり。春分に玄鳥降る。高辛氏の妃、有娀[しゅう]氏の女簡狄、郊禖に祈りて、鳦卵を遺す。簡狄之を呑んで契[せつ]を生めり。其の後世遂に有商氏と爲りて、以て天下を有てり。事は史記に見えたり。宅は、居るなり。殷は、地の名。芒芒は、大いなる貌。古は、猶昔のごとし。帝は、上帝なり。武湯は、其の武德有るを以て之を號す。正は、治むるなり。域は、封境なり。○此れ亦宗廟を祭祀するの樂にして、追いで商人の由りて生ずる所を叙 [の]べて、以て其の天下を有つの初めに及ぼせり。

△方命厥后、奄有九有<叶羽已反>。商之先后、受命不殆<叶養里反>、在武丁孫子<叶獎里反>○方命厥后、四方諸侯無不受命也。九有、九州也。武丁、高宗也。言商之先后、受天命不危殆。故今武丁孫子、猶賴其福。
【読み】
△方[かたがた]厥の后[きみ]に命じて、奄[つい]に九有<叶羽已反>を有てり。商の先后、命を受くること殆<叶養里反>からずして、武丁 [ぶてい]の孫子<叶獎里反>に在り。○方々厥の后に命ずとは、四方の諸侯命を受けざること無きなり。九有は、九州なり。武丁は、高宗なり。言うこころは、商の先后、天命を受けて危殆ならず。故に今武丁の孫子も、猶其の福に賴れり。

△武丁孫子、武王靡不勝<音升>。龍旂十乘、大糦<音熾>是承。武王、湯號、而其後世亦以自稱也。龍旂、諸侯所建交龍之旂也。大糦、黍稷也。承、奉也。○言武丁孫子、今襲湯號者、其武無所不勝。於是諸侯無不奉黍稷、以來助祭也。
【読み】
△武丁の孫子、武王勝<音升>えざるは靡し。龍の旂[はた]十乘、大糦[し]<音熾>是れ承 [ささ]げたり。武王は、湯の號にして、其の後世も亦以て自ら稱するなり。龍旂は、諸侯建てる所の交龍の旂なり。大糦は、黍稷なり。承は、奉ぐなり。○言うこころは、武丁の孫子、今湯の號を襲 [つ]ぐ者、其の武勝えざる所無し。是に於て諸侯黍稷を奉げざること無くして、以て來り祭を助く。

△邦畿千里、維民所止、肇域彼四海<叶虎洧反>○止、居。肇、開也。言王畿之内、民之所止、不過千里、而其封域、則極乎四海之廣也。
【読み】
△邦畿千里、維れ民の止[お]る所、域を彼の四海<叶虎洧反>に肇[ひら]けり。○止は、居る。肇は、開くなり。言うこころは、王畿の内、民の止る所、千里に過ぎざれども、其の封域は、則ち四海の廣きに極 [いた]れり。

△四海來假<音格>、來假祁祁。景員維河。殷受命咸宜<叶牛何反>、百祿是何<音荷。叶如字>○假、與格同。祁祁、衆多貌。景員維河之義、未詳。或曰、景、山名。商所都也。見殷武卒章。春秋傳亦曰、商湯有景亳之命、是也。員、與下篇幅隕義同。蓋言周也。河、大河也。言景山四周、皆大河也。何、任也。春秋傳作荷。
【読み】
△四海來り假[いた]<音格>れり、來り假れること祁祁[きき]たり。景の員[めぐ]りは維れ河なり。殷命を受くること咸宜<叶牛何反>しくして、百の祿是れ何 [にな]<音荷。叶字の如し>えり。○假は、格と同じ。祁祁は、衆多き貌。景員維河の義、未だ詳らかならず。或ひと曰く、景は、山の名。商の都する所、と。殷武の卒章に見えたり。春秋傳に亦曰く、商湯景亳 [はく]の命有りとは、是れなり。員は、下の篇の幅隕と義同じ。蓋し周りを言うなり。河は、大河なり。言うこころは、景山の四周は、皆大河なり。何は、任なり。春秋傳に荷に作る。

玄鳥一章二十二句
【読み】
玄鳥[げんちょう]一章二十二句


濬哲維商、長發其祥。洪水芒芒、禹敷下土方、外大國是疆、幅隕<音員>旣長、有娀<音菘>方將。帝立子生商。賦也。濬、深。哲。知。長、久也。方、四方也。外大國、遠諸侯也。幅、猶言邉幅也。隕、讀作員。謂周也。有娀、契之母家也。將、大也。○言商世世有濬哲之君。其受命之祥、發見也久矣。方禹治洪水、以外大國爲中國之竟、而幅員廣大之時、有娀氏始大。故帝立其女之子、而造商室也。蓋契於是時、始爲舜司徒、掌布五敎于四方。而商之受命實基於此。
【読み】
濬[えい]哲なる維れ商、長[ひさ]しいかな其の祥[しるし]を發[あらわ]せること。洪水芒芒[ぼうぼう]たりしとき、禹下土の方[よも]に敷き、外の大國是れ疆[さか ]いて、幅隕[ふくえん]<音員>旣に長[とお]し、有娀[しゅう]<音菘>方 [はじ]めて將[おお]いなり。帝子を立てて商を生[な]さしむ。賦なり。濬は、深し。哲は。知。長は、久しきなり。方は、四方なり。外の大國は、遠き諸侯なり。幅は、猶邉幅と言うがごとし。隕は、讀んで員に作る。周りを謂うなり。有娀は、契 [せつ]の母の家なり。將は、大いなり。○言うこころは、商は世世濬哲の君有り。其の命を受くるの祥、發見すること久し。禹洪水を治むるに方りて、外の大國を以て中國の竟とし、幅員廣大の時、有娀氏始めて大いなり。故に帝其の女の子を立てて、商室を造れり。蓋し契是の時に於て、始めて舜の司徒と爲りて、五敎を四方に布くことを掌る。而して商の命を受くること實に此に基せり。

○玄王桓撥<叶必烈反>。受小國是達<叶他悅反>、受大國是達、率履不越、遂視旣發<叶方月反>。相土烈烈、海外有截。賦也。玄王、契也。玄者、深微之稱。或曰、以玄鳥降而生也。王者追尊之號。桓、武。撥、治。達、通也。受小國大國、無所不達、言其無所不宜也。率、循。履、禮。越、過。發、應也。言契能循禮、不過越、遂視其民、則旣發以應之矣。相土、契之孫也。截、整齊也。至是而商益大、四方諸侯歸之、截然整齊矣。其後湯以七十里起。豈嘗中衰也與。
【読み】
○玄王桓[たけ]く撥[おさ]<叶必烈反>めり。小國を受けても是れ達[とお]<叶他悅反>り、大國を受けても是れ達り、履 [のり]に率いて越えず、遂に視[しめ]して旣に發[おこ]<叶方月反>れり。相土烈烈として、海外截[ととの ]うる有り。賦なり。玄王は、契なり。玄は、深く微かなる稱。或ひと曰く、玄鳥降りて生めるを以てなり、と。王は追って尊ぶの號。桓は、武き。撥は、治むる。達は、通るなり。小國大國を受けて、達らざる所無しとは、言うこころは、其れ宜しからざる所無きなり。率は、循う。履は、禮。越は、過。發は、應ずるなり。言うこころは、契能く禮に循いて、過ぎ越えず、遂に其の民に視せば、則ち旣に發りて以て之に應ずるなり。相土は、契の孫なり。截 [せつ]は、整齊[せいせい]なり。是に至りて商益々大いに、四方の諸侯之に歸すに、截然として整齊たり。其の後湯七十里を以て起これり。豈嘗て中ごろ衰えたるか。

○帝命不違、至于湯齊。湯降不遲、聖敬日躋<音賷>、昭假遲遲。上帝是祗、帝命式于九圍。賦也。湯齊之義、未詳。蘇氏曰、至湯而王業成、與天命會也。降、猶生也。遲遲、久也。祗、敬。式、法也。九圍、九州也。○商之先祖、旣有明德、天命未嘗去之、以至於湯。湯之生也、應期而降。適當其時其聖敬又日躋升、以至昭假于天、久而不息。惟上帝是敬。故帝命之、以爲法於九州也。
【読み】
○帝命違[さ]らず、湯に至りて齊[ひと]し。湯降[う]まるること遲からず、聖敬日々に躋[のぼ]<音賷>り、昭らかに假 [いた]れること遲遲たり。上帝是れ祗[つつし]む、帝命じて九圍に式[のり]せしむ。賦なり。湯齊の義、未だ詳らかならず。蘇氏が曰く、湯に至りて王業成り、天命と會 [かな]えり、と。降は、猶生まるるがごとし。遲遲は、久しきなり。祗は、敬む。式は、法なり。九圍は、九州なり。○商の先祖、旣に明德有りて、天命未だ嘗て之を去らず、以て湯に至る。湯の生まるるや、期に應じて降まる。適に其の時に當たりて其の聖敬も又日々に躋り升りて、以て昭らかに天に假りて、久しくして息まざるに至る。惟れ上帝是を敬む。故に帝之に命じて、以て法を九州に爲さしめり。

○受小球<音求>大球、爲下國綴<音贄><音流>、何<音賀>天之休。不競不絿<音求>、不剛不柔、敷政優優、百祿是遒<音囚>○賦也。小球・大球之義、未詳。或曰、小國大國所贄之玉也。鄭氏曰、小球、鎭圭、尺有二寸。大球、大圭、三尺也。皆天子之所執也。下國、諸侯也。綴、猶結也。旒、旗之埀者也。言爲天子而爲諸侯所係屬、如旗之縿爲旒所綴著也。何、荷。競、强。絿、緩也。優優、寬裕之意。遒、聚也。
【読み】
○小球<音求>大球を受けて、下國の綴[てい]<音贄>旒 [りゅう]<音流>と爲りて、天の休[よ]きことを何[にな]<音賀>えり。競 [つよ]からず絿[ゆる]<音求>からず、剛[こわ]からず柔らからならず、政を敷くこと優優として、百の祿是れ遒 [あつ]<音囚>まれり。○賦なり。小球・大球の義、未だ詳らかならず。或ひと曰く、小國大國の贄とする所の玉なり、と。鄭氏が曰く、小球は、鎭圭、尺有二寸。大球は、大圭、三尺なり。皆天子の執る所なり、と。下國は、諸侯なり。綴は、猶結ぶがごとし。旒は、旗の埀るる者なり。言うこころは、天子と爲りて諸侯の爲に係り屬かるること、旗の縿 [さん]の旒の爲に綴び著かるるが如し。何は、荷う。競は、强き。絿は、緩きなり。優優は、寬裕の意。遒[しゅう]は、聚まるなり。

○受小共<音恭。叶居勇反>大共、爲下國駿<音峻><音忙。叶莫孔反>、何天之龍<叶丑勇反>。敷奏其勇、不震不動<叶德總反>、不戁<音赧>不竦<音聳>、百祿是總。賦也。小共・大共・駿厖之義、未詳。或曰、小國大國所共之貢也。鄭氏曰、共、執也。猶小球大球也。蘇氏曰、共、珙通。合珙之玉也。傳曰、駿、大也。厖、厚也。董氏曰、齊詩作駿。謂馬也。龍、寵也。敷奏其勇、猶言大進其武功也。戁、恐。竦、懼也。
【読み】
○小共<音恭。叶居勇反>大共を受け、下國の駿<音峻>厖 [ぼう]<音忙。叶莫孔反>と爲りて、天の龍[いつく]<叶丑勇反>しみを何えり。敷 [おお]いに其の勇を奏[すす]めること、震[おどろ]かず動<叶德總反>かず、戁[おそ]<音赧>れず竦 [おのの]<音聳>かず、百の祿是れ總べたり。賦なり。小共・大共・駿厖の義、未だ詳らかならず。或ひと曰く、小國大國の共 [そな]うる所の貢なり、と。鄭氏が曰く、共は、執るなり。猶小球大球のごとし、と。蘇氏が曰く、共は、珙[きょう]に通ず。合珙の玉なり、と。傳に曰く、駿は、大い。厖は、厚きなり、と。董氏が曰く、齊詩に駿駹 [ぼう]に作る。馬を謂うなり、と。龍は、寵しむなり。敷いに其の勇を奏むとは、猶大いに其の武功を進むと言うがごとし。戁[だん]は、恐るる。竦[しょう ]は、懼るるなり。

○武王載旆、有虔秉鉞<音越>。如火烈烈、則莫我敢曷<音遏。叶阿竭反>。苞有三蘖<叶五竭反>、莫遂莫達<叶他悅反>。九有有截。韋顧旣伐<叶房越反>、昆吾夏桀。賦也。武王、湯也。虔、敬也。言恭行天討也。曷、遏通。或曰、曷、誰何也。苞、本也。蘖、旁生萌蘖也。言一本生三蘖也。本則夏桀、蘖則韋也、顧也、昆吾也。皆桀之黨也。鄭氏曰、韋、彭姓。顧・昆吾、己姓。○言湯旣受命、載旆秉鉞、以征不義。桀與三蘖、皆不能遂其惡、而天下截然歸商矣。始伐韋、次伐顧、次伐昆吾、乃伐夏桀。當時用師之序如此。
【読み】
○武王旆[はた]を載せ、虔[つつし]んで鉞[おの]<音越>を秉ること有り。火の烈烈たるが如くして、則ち我を敢えて曷 [とど]むる<音遏。叶阿竭反>莫し。苞[もと]三蘖[げつ]<叶五竭反>有れども、遂ぐること莫く達<叶他悅反>ること莫し。九有截うる有り。韋顧旣に伐<叶房越反>ちぬ、昆吾夏桀をさえ。賦なり。武王は、湯なり。虔は、敬むなり。言うこころは、恭しく天討を行うなり。曷 [かつ]は、遏[あつ]と通ず。或ひと曰く、曷は、誰何、と。苞は、本なり。蘖は、旁らに生ずる萌蘖なり。言うこころは、一本に三蘖を生ずるなり。本は則ち夏の桀、蘖は則ち韋なり、顧なり、昆吾なり。皆桀の黨なり。鄭氏が曰く、韋は、彭姓。顧・昆吾は、己姓、と。○言うこころは、湯旣に命を受けて、旆を載せ鉞を秉り、以て不義を征つ。桀と三蘖と、皆其の惡を遂ぐること能わずして、天下截然として商に歸せり。始め韋を伐ち、次に顧を伐ち、次に昆吾を伐ち、乃ち夏の桀を伐つ。當時師を用うるの序此の如し。

○昔在中葉、有震且業。允也天子<叶奬里反>、降予卿士。實維阿衡<叶戶郎反>、實左<音佐><音又>商王。賦也。葉、世。震、懼。業、危也。承上文而言。昔在、則前乎此矣。豈謂湯之前世中衰時與。允也天子、指湯也。降、言天賜之也。卿士、則伊尹也。言至於湯得伊尹、而有天下也。阿衡、伊尹官號也。
【読み】
○昔中葉に在りて、震[おそ]れ且つ業[あや]うきこと有り。允なるかな天子<叶奬里反>、卿士を降せり。實に維れ阿衡<叶戶郎反>として、實に商王を左 [たす]<音佐>け右[たす]<音又>けり。賦なり。葉は、世。震は、懼るる。業は、危うきなり。上の文を承けて言う。昔在りとは、則ち此より前なり。豈湯の前世中ごろ衰うる時を謂うか。允なるかな天子は、湯を指すなり。降は、天之に賜うを言うなり。卿士は、則ち伊尹なり。言うこころは、湯伊尹を得て、天下を有つに至れり。阿衡は、伊尹の官號なり。

長發七章一章八句四章章七句一章九句一章六句。序以此爲大禘之詩。蓋祭其祖之所出、而以其祖配也。蘇氏曰、大禘之祭、所及者遠。故其詩歷言商之先后、又及其卿士伊尹。蓋與祭於禘者也。商書曰、茲予大享于先王。爾祖其從與享之。是禮也。豈其起於商之世歟。今按大禘不及羣廟之主。此宜爲祫祭之詩。然經無明文。不可考也。
【読み】
長發[ちょうはつ]七章一章八句四章章七句一章九句一章六句。序に此を以て大禘[てい]の詩とす。蓋し其の祖の出づる所を祭りて、其の祖を以て配するなり。蘇氏が曰く、大禘の祭は、及ぶ所の者遠し。故に其の詩歷 [あまね]く商の先后を言いて、又其の卿士伊尹に及べり。蓋し祭に禘に與る者なり、と。商書に曰く、茲れ予れ大いに先王を享するに、爾祖も其れ從りて之を與り享す、と。是の禮なり。豈其れ商の世より起これるか。今按ずるに大禘は羣廟の主に及ばず。此れ宜しく祫 [こう]祭の詩とすべし。然れども經に明文無し。考う可からず。


撻彼殷武、奮伐荆楚、<面規反>入其阻、裒<音抔>荆之旅、有截其所。湯孫之緒<音序>○賦也。撻、疾貌。殷武、殷王之武也。、冒。裒、聚。湯孫、謂高宗。○舊說、以此爲祀高宗之樂。蓋自盤庚沒、而殷道衰、楚人叛之。高宗撻然用武、以伐其國。入其險阻、以致其衆盡平其地、使截然齊一。皆高宗之功也。易曰、高宗伐鬼方、三年克之、蓋謂此歟。
【読み】
撻たる彼の殷の武き、奮いて荆楚を伐ち、[おか]<面規反>して其の阻 [けわ]しきに入り、荆の旅を裒[あつ]<音抔>めて、其の所を截[ととの]うること有り。湯の孫の緒<音序>なり。○賦なり。撻は、疾き貌。殷武は、殷王の武きなり。冞 [めい]は、冒す。裒は、聚むる。湯の孫は、高宗を謂う。○舊說に、此を以て高宗を祀るの樂とす。蓋し盤庚沒してより、殷の道衰え、楚人之に叛けり。高宗撻然として武を用いて、以て其の國を伐てり。其の險阻に入りて、以て其の衆を致し盡く其の地を平らげて、截然 [せつぜん]として齊一ならしむ。皆高宗の功なり。易に曰く、高宗鬼方を伐つ、三年にして之に克つとは、蓋し此を謂うか。

○維女<音汝>荆楚、居國南郷。昔有成湯、自彼氐<音堤>羌、莫敢不來享<叶虛良反>、莫敢不來王。曰商是常。賦也。氐羌、夷狄國。在西方。享、獻也。世見曰王。○蘇氏曰、旣克之、則告之曰、爾雖遠、亦居吾國之南耳。昔成湯之世、雖氐羌之遠、猶莫敢不來朝。曰此商之常禮也。况汝荆楚曷敢不至哉。
【読み】
○維れ女<音汝>荆楚、國の南郷に居れり。昔成湯有り、彼の氐[てい]<音堤>羌 [きょう]より、敢えて來享<叶虛良反>せざる莫く、敢えて來王せざる莫し。曰く商の是の常なり、と。賦なり。氐羌は、夷狄の國。西方に在り。享は、獻るなり。世々見ゆるを王と曰う。○蘇氏が曰く、旣に之に克ちて、則ち之に告げて曰く、爾遠しと雖も、亦吾が國の南に居るのみ。昔成湯の世、氐羌の遠きと雖も、猶敢えて來朝せざる莫し。曰く此れ商の常禮なり、と。况んや汝荆楚曷ぞ敢えて至らざらんや、と。

○天命多辟<音璧>、設都于禹之績、歲事來辟。勿予禍適<音謫>、稼穡匪解<音懈。叶訖力反>○賦也。多辟、諸侯也。來辟、來王也。適、謫通。○言天命諸侯、各建都邑于禹所治之地、而皆以歲事來、至于商、以祈王之不譴曰、我之稼穡不敢解也、庶可以免咎矣。言荆楚旣平、而諸侯畏服也。
【読み】
○天多辟<音璧>に命じて、都を禹の績に設けしむるも、歲事もて來辟す。禍適[かたく]<音謫>を予うること勿けん、稼穡解 [おこた]<音懈。叶訖力反>らず、と。○賦なり。多辟は、諸侯なり。來辟は、來王なり。適は、謫と通ず。○言うこころは、天諸侯に命じて、各々都邑を禹の治むる所の地に建てしむるも、皆歲事を以て來り、商に至りて、以て王の譴 [せ]めざるを祈りて曰く、我が稼穡敢えて解らず、庶わくは以て咎を免るる可し、と。言うこころは、荆楚旣に平らぎて、諸侯畏服するなり。

○天命降監<下與濫反>、下民有嚴<叶五剛反>。不僭不濫、不敢怠遑、命于下國<叶越逼反>、封建厥福<叶筆力反>○賦也。監、視。嚴、威也。僭、賞之差也。濫、刑之過也。遑、暇。封、大也。○言天命降監、不在乎他、皆在民之視聽、則下民亦有嚴矣。惟賞不僭、刑不濫、而不敢怠遑、則天命之以天下、而大建其福。此高宗所以受命而中興也。
【読み】
○天命降り監[み]<下與濫反>る、下民嚴<叶五剛反>かなること有り。僭 [たが]わず濫れず、敢えて怠り遑あらざれば、下國<叶越逼反>を命じて、封[おお]いに厥の福<叶筆力反>を建つ。○賦なり。監は、視る。嚴は、威なり。僭は、賞の差えるなり。濫は、刑の過ぐるなり。遑は、暇。封は、大いなり。○言うこころは、天命の降り監ること、他に在らず、皆民の視聽くに在れば、則ち下民も亦嚴かなること有り。惟賞僭わず、刑濫れずして、敢えて怠り遑あらざれば、則ち天之に命ずるに天下を以てして、大いに其の福を建つ。此れ高宗命を受けて中興する所以なり。

○商邑翼翼、四方之極。赫赫厥聲、濯濯厥靈。壽考且寧、以保我後生<叶桑經反>○賦也。商邑、王都也。翼翼、整敕貌。極、表也。赫赫、顯盛也。濯濯、光明也。言高宗中興之盛如此。壽考且寧云者、蓋高宗之享國、五十有九年。我後生、謂後嗣子孫也。
【読み】
○商邑翼翼たり、四方の極なり。赫赫たり厥の聲、濯濯たり厥の靈。壽考にして且つ寧く、以て我れ後生<叶桑經反>を保んぜり。○賦なり。商邑は、王都なり。翼翼は、整敕の貌。極は、表なり。赫赫は、顯れ盛んなり。濯濯は、光り明らかなり。言うこころは、高宗中興の盛んなること此の如し。壽考にして且つ寧しと云うは、蓋し高宗の國を享くること、五十有九年。我れ後生とは、後嗣の子孫を謂うなり。

○陟彼景山<叶所旃反>、松柏丸丸<叶胡員反>。是斷<音短>是遷、方斲<音卓>是虔。松桷<音角>有梴<五連反>、旅楹有閑<叶胡田反>、寢成孔安<叶於連反>○賦也。景、山名。商所都也。丸丸、直也。遷、徙也。方、正也。虔、亦截也。梴、長貌。旅、衆也。閑、閑然而大也。寢、廟中之寢也。安、所以安高宗之神也。此蓋特爲百世不遷之廟。不在三昭三穆之數。旣成始祔而祭之之詩也。然此章與閟宮之卒章、文意略同。未詳何謂。
【読み】
○彼の景山<叶所旃反>に陟[のぼ]れば、松柏丸丸<叶胡員反>たり。是れ斷 [き]<音短>り是れ遷し、方に斲[けず]<音卓>りて是れ虔 [き]る。松の桷[たるき]<音角>梴[なが]<五連反>きこと有り、旅 [もろもろ]の楹[はしら]閑[おお]<叶胡田反>いなる有り、寢成りて孔[はなは]だ安<叶於連反>んぜり。○賦なり。景は、山の名。商の都する所なり。丸丸は、直なり。遷は、徙 [うつ]るなり。方は、正なり。虔も、亦截[き]るなり。梴は、長き貌。旅は、衆なり。閑は、閑然として大いなり。寢は、廟中の寢なり。安は、高宗の神を安んずる所以なり。此れ蓋し特に百世遷らざるの廟爲り。三昭三穆に數に在らず。旣に成りて始めて祔して之を祭るの詩なり。然れども此の章は閟宮の卒章と、文意略同じ。未だ何の謂か詳らかならず。

殷武六章三章章六句二章章七句一章五句
【読み】
殷武[いんぶ]六章三章章六句二章章七句一章五句


商頌五篇十六章一百五十四句


頌 (終)

(引用文献)

TOP
江守孝三(Emori Kozo)