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春秋左氏傳校本


 春秋《左氏傳》(成公上、下)

春秋左氏傳
(隱公 桓公莊公閔公)(僖公上、中、下 )(文公上、下 )(宣公上、下 )(成公上、下 )
(襄公一、二、三) (四、五、六 )(昭公一、二、三、四) (五、六、七)(定公上、下)(哀公上、下)(序杜預略傳 ・後序)

春秋左氏傳校本第十二

成公 起元年盡十年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

成公 名、黑肱。宣公子。謚法、安民立政曰成。
【読み】
成公 名は、黑肱。宣公の子。謚法に、民を安んじ政を立つるを成と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王正月、公卽位。無傳。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。

二月、辛酉、葬我君宣公。無傳。
【読み】
二月、辛酉[かのと・とり]、我が君宣公を葬る。傳無し。

無冰。無傳。周二月、今之十二月。而無冰、書冬溫。
【読み】
冰無し。傳無し。周の二月は、今の十二月。而るに冰無きは、冬の溫かなるを書すなり。

三月、作丘甲。周禮、九夫爲井、四井爲邑、四邑爲丘。丘、十六井。出戎馬一匹、牛三頭。四丘爲甸。甸、六十四井。出長轂一乘、戎馬四匹、牛十二頭、甲士三人、步卒七十二人。此甸所賦。今魯使丘出之。譏重斂故書。○甸、繩證反。斂、力驗反。
【読み】
三月、丘甲を作る。周禮に、九夫を井と爲し、四井を邑と爲し、四邑を丘と爲す、と。丘は、十六井。戎馬一匹、牛三頭を出だす。四丘を甸[しょう]と爲す。甸は、六十四井。長轂一乘、戎馬四匹、牛十二頭、甲士三人、步卒七十二人を出だす。此れ甸の賦する所なり。今魯丘をして之を出ださしむ。重斂を譏る故に書す。○甸は、繩證反。斂は、力驗反。

夏、臧孫許及晉侯盟于赤棘。晉地。
【読み】
夏、臧孫許晉侯と赤棘に盟う。晉の地。

秋、王師敗績于茅戎。茅戎、戎別種。不言戰、王者至尊、天下莫之得校。故以自敗爲文。不書敗地、而書茅戎、明爲茅戎所敗。書秋、從告。○茅、亡交反。
【読み】
秋、王の師茅戎に敗績す。茅戎は、戎の別種。戰を言わざるは、王者は至尊、天下之に校することを得ること莫し。故に自ら敗るるを以て文を爲す。敗るる地を書さずして、茅戎を書すは、茅戎の爲に敗らるるを明かすなり。秋に書すは、告ぐるに從うなり。○茅は、亡交反。

冬、十月。
【読み】
冬、十月。

〔傳〕元年、春、晉侯使瑕嘉平戎于王。平文十七年、邥垂之役。詹嘉處瑕。故謂之瑕嘉。○邥、音審。
【読み】
〔傳〕元年、春、晉侯瑕嘉をして戎を王に平らげしむ。文十七年、邥垂[しんすい]の役を平らぐ。詹嘉瑕に處る。故に之を瑕嘉と謂う。○邥は、音審。

單襄公如晉拜成。單襄公、王卿士。謝晉爲平戎。○單、音善。爲、于僞反。
【読み】
單襄公晉に如きて成[たい]らぎを拜す。單襄公は、王の卿士。晉の爲に戎を平らぐるを謝す。○單は、音善。爲は、于僞反。

劉康公徼戎、將遂伐之。康公、王季子也。戎平還。欲要其無備。○徼、古堯反。
【読み】
劉康公戎を徼[むか]え、將に遂に之を伐たんとす。康公は、王季子なり。戎平らぎて還る。其の備え無きを要[むか]えんと欲す。○徼[きょう]は、古堯反。

叔服曰、背盟而欺大國。此必敗。叔服、周内史。○背、音佩。下同。
【読み】
叔服曰く、盟に背きて大國を欺く。此れ必ず敗れん。叔服は、周の内史。○背は、音佩。下も同じ。

背盟不祥。欺大國不義。神人弗助。將何以勝。不聽。遂伐茅戎。三月、癸未、敗績于徐吾氏。徐吾氏、茅戎之別也。
【読み】
盟に背くは不祥なり。大國を欺くは不義なり。神人助けず。將[はた]何を以て勝たん、と。聽かず。遂に茅戎を伐つ。三月、癸未[みずのと・ひつじ]、徐吾氏に敗績す。徐吾氏は、茅戎の別なり。

爲齊難故、作丘甲。前年、魯乞於楚、欲以伐齊。楚師不出。故懼而作丘甲。○難、乃旦反。下同。
【読み】
齊の難の爲の故に、丘甲を作る。前年、魯楚に乞いて、以て齊を伐たんと欲す。楚の師出でず。故に懼れて丘甲を作る。○難は、乃旦反。下も同じ。

聞齊將出楚師、夏、盟于赤棘。與晉盟。懼齊・楚。
【読み】
齊の將に楚の師を出ださんとするを聞き、夏、赤棘に盟う。晉と盟う。齊・楚を懼るるなり。

秋、王人來告敗。解經所以秋乃書。
【読み】
秋、王人來りて敗を告ぐ。經の秋乃ち書す所以を解く。

冬、臧宣叔令脩賦繕完、治完城郭。○繕、市戰反。完、和端反。
【読み】
冬、臧宣叔賦を脩め繕完して、城郭を治完す。○繕は、市戰反。完は、和端反。

具守備。曰、齊・楚結好、我新與晉盟。晉・楚爭盟、齊師必至。雖晉人伐齊、楚必救之。是齊・楚同我也。同、共也。○守、手又反。
【読み】
守備を具えしむ。曰く、齊・楚は好を結び、我は新たに晉と盟う。晉・楚盟を爭えば、齊の師必ず至らん。晉人齊を伐つと雖も、楚必ず之を救わん。是れ齊・楚我を同[とも]にするなり。同は、共なり。○守は、手又反。

知難而有備、乃可以逞。逞、解也。爲二年、齊侯伐我傳。○解、音蟹。
【読み】
難を知りて備え有らば、乃ち以て逞[と]く可し。逞は、解くなり。二年、齊侯我を伐つ爲の傳なり。○解は、音蟹。


〔經〕二年、春、齊侯伐我北鄙。夏、四月、丙戌、衛孫良夫帥師及齊師戰于新築。衛師敗績。新築、衛地。皆陳曰戰、大崩曰敗績。四月無丙戌。丙戌、五月一日。
【読み】
〔經〕二年、春、齊侯我が北鄙を伐つ。夏、四月、丙戌[ひのえ・いぬ]、衛の孫良夫師を帥いて齊師と新築に戰う。衛の師敗績す。新築は、衛の地。皆陳するを戰と曰い、大いに崩るるを敗績と曰う。四月に丙戌無し。丙戌は、五月一日。

六月、癸酉、季孫行父・臧孫許・叔孫僑如・公孫嬰齊帥師會晉郤克・衛孫良夫・曹公子首、及齊侯戰于鞌。齊師敗績。魯乞師於晉。而不以與謀之例者、從盟主之令、上行於下、非匹敵和成之類。例在宣七年。曹大夫常不書、而書公子首者、首命於國、備於禮、成爲卿故也。鞌、齊地。○郤、去逆反。鞌、音安。
【読み】
六月、癸酉[みずのと・とり]、季孫行父・臧孫許・叔孫僑如・公孫嬰齊師を帥いて晉の郤克・衛の孫良夫・曹の公子首に會して、齊侯と鞌[あん]に戰う。齊の師敗績す。魯師を晉に乞う。而るを與謀の例を以いざるは、盟主の令に從うは、上下に行いて、匹敵和成の類に非ざればなり。例は宣七年に在り。曹の大夫常に書さずして、公子首を書すは、首國に命ぜられて、禮を備えて、卿爲ることを成す故なり。鞌は、齊の地。○郤は、去逆反。鞌は、音安。

秋、七月、齊侯使國佐如師。己酉、及國佐盟于袁婁。穀梁曰、鞌、去齊五百里。袁婁、去齊五十里。
【読み】
秋、七月、齊侯國佐をして師に如かしむ。己酉[つちのと・とり]、國佐と袁婁[えんろう]に盟う。穀梁に曰く、鞌は、齊を去ること五百里。袁婁は、齊を去ること五十里、と。

八月、壬午、宋公鮑卒。未同盟、而赴以名。○鮑、步卯范。
【読み】
八月、壬午[みずのえ・うま]、宋公鮑卒す。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。○鮑は、步卯范。

庚寅、衛侯速卒。宣十七年、盟于斷道。據傳、庚寅、九月七日。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]、衛侯速卒す。宣十七年、斷道に盟う。傳に據るに、庚寅は、九月七日なり。

取汶陽田。晉使齊還魯。故書取。不以好得。故不言歸。○好、呼報反。
【読み】
汶陽[ぶんよう]の田を取る。晉齊をして魯に還さしむ。故に取ると書す。好を以て得るにあらず。故に歸すと言わず。○好は、呼報反。

冬、楚師・鄭師侵衛。子重不書、不親伐。
【読み】
冬、楚の師・鄭の師衛を侵す。子重書さざるは、親伐たらざればなり。

十有一月、公會楚公子嬰齊于蜀。公與大夫會、不貶嬰齊者、時有許・蔡之君故。
【読み】
十有一月、公楚の公子嬰齊に蜀に會す。公大夫と會して、嬰齊を貶せざるは、時に許・蔡の君有る故なり。

丙申、公及楚人・秦人・宋人・陳人・衛人・鄭人・齊人・曹人・邾人・薛人・鄫人盟于蜀。齊在鄭下、非卿。傳曰、卿不書、匱盟也。然則楚卿於是始與中國準。自此以下、楚卿不書、皆貶惡也。
【読み】
丙申[ひのえ・さる]、公楚人・秦人・宋人・陳人・衛人・鄭人・齊人・曹人・邾人[ちゅひと]・薛人・鄫人[しょうひと]と蜀に盟う。齊鄭の下に在るは、卿に非ざればなり。傳に曰く、卿書さざるは、匱盟[きめい]なればなり、と。然らば則ち楚の卿是に於て始めて中國と準ずるなり。此より以下、楚の卿書さざるは、皆惡を貶するなり。

〔傳〕二年、春、齊侯伐我北鄙、圍龍。龍、魯邑。在泰山博縣西南。
【読み】
〔傳〕二年、春、齊侯我が北鄙を伐ち、龍を圍む。龍は、魯の邑。泰山博縣の西南に在り。

頃公之嬖人盧蒲就魁門焉。攻龍門也。
【読み】
頃公[けいこう]の嬖人盧蒲就魁門[せ]む。龍の門を攻むるなり。

龍人囚之。齊侯曰、勿殺。吾與而盟、無入而封。封、竟。
【読み】
龍人之を囚う。齊侯曰く、殺すこと勿かれ。吾而[なんじ]と盟いて、而の封に入ること無からん、と。封は、竟。

弗聽。殺而膊諸城上。膊、磔也。○膊、普各反。磔、陟百反。
【読み】
聽かず。殺して諸を城上に膊[はりつけ]にす。膊[はく]は、磔なり。○膊は、普各反。磔[たく]は、陟百反。

齊侯親鼓。士陵城。三日取龍、遂南侵、及巢丘。取龍侵巢丘不書、其義未聞。
【読み】
齊侯親ら鼓つ。士城を陵ぐ。三日にして龍を取り、遂に南侵して、巢丘に及ぶ。龍を取りて巢丘を侵すこと書さざるは、其の義未だ聞かざればなり。

衛侯使孫良夫・石稷・甯相・向禽將侵齊。與齊師遇。齊伐魯還、相遇於衛地。良夫、孫林父之父。石稷、石碏四世孫。甯相、甯兪子。○相、息亮反。向、舒亮反。
【読み】
衛侯孫良夫・石稷・甯相[ねいしょう]・向禽[しょうきん]をして將に齊を侵さんとせしむ。齊の師と遇う。齊魯を伐ちて還り、衛の地に相遇うなり。良夫は、孫林父の父。石稷は、石碏四世の孫。甯相は、甯兪の子。○相は、息亮反。向は、舒亮反。

石子欲還。孫子曰、不可。以師伐人、遇其師而還、將謂君何。言無以答君。
【読み】
石子還らんと欲す。孫子曰く、不可なり。師を以て人を伐ち、其の師に遇いて還らば、將に君に何とか謂わんとする。以て君に答うること無きを言う。

若知不能、則如無出。今旣遇矣。不如戰也。
【読み】
若し能わざるを知らば、則ち出づること無きに如かんや。今旣に遇えり。戰うに如かざるなり、と。

夏有。闕文。失新築戰事。
【読み】
夏有り。闕文。新築の戰事を失う。

石成子曰、師敗矣。子不少須、衆懼盡。成子、石稷也。衛師已敗。而孫良夫復欲戰。故成子欲使須救。
【読み】
石成子曰く、師敗れたり。子少[しばら]く須たずんば、衆懼らくは盡きん。成子は、石稷なり。衛の師已に敗れぬ。而るを孫良夫復戰わんと欲す。故に成子救いを須たしめんと欲す。

子喪師徒、何以復命。皆不對。又曰、子國卿也。隕子辱矣。隕、見禽獲。
【読み】
子師徒を喪わば、何を以て復命せん、と。皆對えず。又曰く、子は國卿なり。子を隕[おと]さば辱なり。隕は、禽獲せらるるなり。

子以衆退。我此乃止。我於此止、禦齊師。
【読み】
子衆を以[い]て退け。我は此に乃ち止らん、と。我れ此に於て止まり、齊の師を禦がん。

且告車來甚衆。新築人救孫桓子。故竝告令軍中。
【読み】
且車の來ること甚だ衆[おお]しと告ぐ。新築の人孫桓子を救うなり。故に竝に軍中に告令す。

齊師乃止、次于鞫居。鞫居、衛地。○鞫、居六反。
【読み】
齊の師も乃ち止まり、鞫居[きくきょ]に次[やど]る。鞫居は、衛の地。○鞫は、居六反。

新築人仲叔于奚救孫桓子。桓子是以免。于奚、守新築大夫。
【読み】
新築の人仲叔于奚孫桓子を救う。桓子是を以て免れぬ。于奚は、新築を守る大夫。

旣衛人賞之以邑。賞于奚。
【読み】
旣にして衛人之を賞するに邑を以てす。于奚を賞す。

辭。請曲縣、軒縣也。周禮、天子樂宮縣、四周。諸侯軒縣、闕南方。○縣、音玄。
【読み】
辭す。曲縣し、軒縣なり。周禮に、天子の樂は宮縣、四周。諸侯は軒縣、南方を闕く、と。○縣は、音玄。
*「四周」について、頭注に、「四周、一作四面。」とある。

繁纓以朝。許之。繁纓、馬飾。皆諸侯之服。○繁、步于反。
【読み】
繁纓[はんえい]して以て朝せんと請う。之を許す。繁纓は、馬の飾。皆諸侯の服。○繁は、步于反。

仲尼聞之曰、惜也。不如多與之邑。唯器與名、不可以假人。器、車服。名、爵號。
【読み】
仲尼之を聞きて曰く、惜しいかな。多く之に邑を與えんに如かず。唯器と名とは、以て人に假す可からず。器は、車服。名は、爵號。

君之所司也。名以出信、名位不愆、爲民所信。
【読み】
君の司る所なり。名以て信を出だし、名位愆[あやま]らざれば、民の爲に信ぜらる。

信以守器、動不失信、則車服可保。
【読み】
信以て器を守り、動きて信を失わざれば、則ち車服保つ可し。

器以藏禮、車服、所以表尊卑。
【読み】
器以て禮を藏[おさ]め、車服は、尊卑を表する所以なり。

禮以行義、尊卑有禮、各得其義。
【読み】
禮以て義を行い、尊卑禮有れば、各々其の義を得。

義以生利、得其宜、則利生。
【読み】
義以て利を生じ、其の宜を得れば、則ち利生ず。

利以平民。政之大節也。若以假人、與人政也。政亡、則國家從之。弗可止也已。
【読み】
利以て民を平らかにす。政の大節なり。若し以て人に假さば、人に政を與うるなり。政亡ぶれば、則ち國家之に從う。止む可からざるのみ、と。

孫桓子還於新築、不入。不入國。
【読み】
孫桓子新築より還り、入らず。國に入らず。

遂如晉乞師。臧宣叔亦如晉乞師。皆主郤獻子。宣十七年、郤克至齊、爲婦人所笑。遂怒。故魯・衛因之、孫桓子・臧宣叔皆不以國命、各自詣郤克。故不書。
【読み】
遂に晉に如きて師を乞う。臧宣叔も亦晉に如きて師を乞う。皆郤獻子を主とす。宣十七年、郤克齊に至り、婦人の爲に笑わる。遂に怒る。故に魯・衛之に因る、孫桓子・臧宣叔皆國命を以てせずして、各々自ら郤克に詣る。故に書さず。

晉侯許之七百乘。五萬二千五百人。
【読み】
晉侯之に七百乘を許す。五萬二千五百人。

郤子曰、此城濮之賦也。城濮、在僖二十八年。
【読み】
郤子曰く、此れ城濮の賦なり。城濮は、僖二十八年に在り。

有先君之明、與先大夫之肅、故捷。克於先大夫、無能爲役。不中爲之役使。
【読み】
先君の明と、先大夫の肅と有り、故に捷[か]てり。克が先大夫に於る、能く役爲ること無し。之が役使爲るに中らず。

請八百乘。許之。六萬人。
【読み】
八百乘を請う。之を許す。六萬人。

郤克將中軍。士燮將上軍。范文子代荀庚。
【読み】
郤克中軍に將たり。士燮[ししょう]上軍に將たり。范文子荀庚に代わる。

欒書將下軍。代趙朔。
【読み】
欒書下軍に將たり。趙朔に代わる。

韓厥爲司馬。以救魯・衛。
【読み】
韓厥[かんけつ]司馬爲り。以て魯・衛を救う。

臧宣叔逆晉師、且道之。季文子帥師會之。及衛地。韓獻子將斬人。郤獻子馳將救之。至則旣斬之矣。郤子使速以徇。告其僕曰、吾以分謗也。不欲使韓氏獨受謗。
【読み】
臧宣叔晉の師を逆[むか]え、且つ之を道[みちび]く。季文子師を帥いて之に會す。衛の地に及ぶ。韓獻子將に人を斬らんとす。郤獻子馳せて將に之を救わんとす。至れば則ち旣に之を斬れり。郤子速やかに以て徇[とな]えしむ。其の僕に告げて曰く、吾は以て謗りを分かたんとなり。韓氏をして獨り謗りを受けしむることを欲せず。

師從齊師于莘。莘、齊地。
【読み】
師齊の師に莘[しん]に從う。莘は、齊の地。

六月、壬申、師至于靡筓之下。靡筓、山名。○靡、如字。又音摩。筓、音雞。
【読み】
六月、壬申[みずのえ・さる]、師靡筓[ひけい]の下[ふもと]に至る。靡筓は、山の名。○靡は、字の如し。又音摩。筓は、音雞。

齊侯使請戰、曰、子以君師、辱於敝邑、不腆敝賦、詰朝請見。詰朝、平旦。○見、賢遍反。
【読み】
齊侯戰を請わしめて、曰く、子君の師を以て、敝邑を辱くすれば、不腆の敝賦、詰朝に請う見えん、と。詰朝は、平旦。○見は、賢遍反。

對曰、晉與魯・衛、兄弟也。來告曰、大國朝夕釋憾於敝邑之地。大國、謂齊。敝邑、魯・衛自稱。
【読み】
對えて曰く、晉と魯・衛とは、兄弟なり。來り告げて曰く、大國朝夕憾みを敝邑の地に釋く、と。大國は、齊を謂う。敝邑は、魯・衛自ら稱す。

寡君不忍、使羣臣請於大國。無令輿師淹於君地。輿、衆也。淹、久也。
【読み】
寡君忍びずして、羣臣をして大國に請わしむ。輿師をして君の地に淹[ひさ]しからしむること無かれ、と。輿は、衆なり。淹は、久しきなり。

能進不能退。君無所辱命。言自欲戰。不復須君命。
【読み】
能く進みて退くこと能わず。君命を辱くする所無し、と。言うこころは、自ら戰わんと欲す。復君命を須たず。

齊侯曰、大夫之許、寡人之願也。若其不許、亦將見也。
【読み】
齊侯曰く、大夫の許すは、寡人の願いなり。若し其れ許さざるも、亦將に見えんとするなり、と。

齊高固入晉師、桀石以投人、桀、擔也。○擔、丁甘反。
【読み】
齊の高固晉の師に入り、石を桀[にな]いて以て人に投げ、桀は、擔うなり。○擔は、丁甘反。

禽之而乘其車、旣獲其人。因釋己車、而載所獲者車。
【読み】
之を禽にして其の車に乘り、旣に其の人を獲。因りて己が車を釋[す]てて、獲る所の者の車に載るなり。

繫桑本焉、以徇齊壘、將至齊壘。以桑樹繫車而走、欲自異。
【読み】
桑本を繫けて、以て齊の壘に徇えて、將に齊の壘に至らんとす。桑樹を以て車に繫けて走るは、自ら異にせんと欲するなり。

曰、欲勇者、賈余餘勇。賈、買也。言己勇有餘、欲賣之。
【読み】
曰く、勇を欲する者は、余が餘勇を賈え、と。賈は、買うなり。己が勇餘有り、之を賣らんと欲するを言う。

癸酉、師陳于鞌。邴夏御齊侯。逢丑父爲右。晉解張御郤克。鄭丘緩爲右。
【読み】
癸酉、師鞌に陳す。邴夏[へいか]齊侯に御たり。逢丑父右爲り。晉の解張郤克に御たり。鄭丘緩右爲り。

齊侯曰、余姑翦滅此而朝食。姑、且也。翦、盡也。○陳、直覲反。邴、音丙。解、音蟹。
【読み】
齊侯曰く、余姑く此を翦滅して朝食せん、と。姑は、且くなり。翦は、盡くすなり。○陳は、直覲反。邴は、音丙。解は、音蟹。

不介馬而馳之。介、甲也。
【読み】
馬に介せずして之に馳す。介は、甲なり。

郤克傷於矢、流血及屨、未絕鼓音。中軍將自執旗鼓。故雖傷而擊鼓不息。
【読み】
郤克矢に傷つき、流血屨に及べども、未だ鼓音を絕たず。中軍の將は自ら旗鼓を執る。故に傷つくと雖も鼓を擊ちて息まず。

曰、余病矣。張侯曰、自始合、而矢貫余手及肘、余折以御、左輪朱殷、豈敢言病。吾子忍之。張候、解張也。朱、血色。血色久則殷。殷音近烟。今人謂赤黑爲殷色。言血多汙車輪、御猶不敢息。○折、之設反。殷、於閑反。又於辰反。汙、音烏。又一故反。
【読み】
曰く、余病めり、と。張侯曰く、始め合いてよりして、矢余が手と肘とを貫きしを、余折りて以て御して、左輪朱殷[しゅあん]なるも、豈敢えて病めりと言わんや。吾子之を忍べ、と。張候は、解張なり。朱は、血色。血色久しければ則ち殷[あか]し。殷の音は烟に近し。今の人赤黑を謂いて殷色と爲す。言うこころは、血多く車輪を汙すも、御して猶敢えて息まず。○折は、之設反。殷は、於閑反。又於辰反。汙は、音烏。又一故反。

緩曰、自始合、苟有險、余必下推車。子豈識之。然子病矣。以其不識己推車。○推、昌誰反。又他回反。
【読み】
緩曰く、始め合いてよりして、苟も險有れば、余必ず下りて車を推せり。子豈之を識らんや。然らば子は病めり、と。其の己が車を推すを識らざるを以てなり。○推は、昌誰反。又他回反。

張侯曰、師之耳目、在吾旗鼓。進退從之。此車一人殿之、可以集事。殿、鎭也。集、成也。○殿、多練反。
【読み】
張侯曰く、師の耳目は、吾が旗鼓に在り。進退之に從う。此の車一人之に殿たらば、以て事を集[な]す可し。殿は、鎭なり。集は、成すなり。○殿は、多練反。

若之何其以病、敗君之大事也。擐甲執兵、固卽死也。擐、貫也。卽、就也。○擐、音患。
【読み】
之を若何ぞ其れ病めるを以て、君の大事を敗らんや。甲を擐[つらぬ]き兵を執るは、固より死に卽くなり。擐[かん]は、貫くなり。卽は、就くなり。○擐は、音患。

病未及死。吾子勉之。左幷轡、右援枹而鼓。馬逸不能止。師從之。晉師從郤克車。○幷、必政反。援、音爰。枹、音浮。鼓槌也。
【読み】
病むも未だ死に及ばず。吾子之を勉めよ、と。左に轡を幷せ、右に枹[ふ]を援[と]りて鼓つ。馬逸して止むること能わず。師之に從う。晉の師郤克が車に從う。○幷は、必政反。援は、音爰。枹は、音浮。鼓槌なり。

齊師敗績。逐之、三周華不注。華不注、山名。○華、如字。又戶化反。
【読み】
齊の師敗績す。之を逐いて、三たび華不注を周れり。華不注は、山の名。○華は、字の如し。又戶化反。

韓厥夢子輿謂己、曰且辟左右。子輿、韓厥父。
【読み】
韓厥子輿己に謂いて、且く左右を辟けよと曰いしと夢みす。子輿は、韓厥の父。

故中御而從齊侯。居中代御者。自非元帥、御者皆在中。將在左。
【読み】
故に中に御して齊侯を從[お]う。中に居りて御者に代わるなり。元帥に非ざるよりは、御者皆中に在り。將は左に在り。

邴夏曰、射其御者。君子也。公曰、謂之君子而射之、非禮也。齊侯不知戎禮。○射、食亦反。下皆同。
【読み】
邴夏曰く、其の御者を射よ。君子なり、と。公曰く、之を君子と謂いて之を射るは、禮に非ざるなり、と。齊侯戎禮を知らず。○射は、食亦反。下も皆同じ。

射其左。越于車下。越、隊也。○隊、直類反。
【読み】
其の左を射る。車下に越[お]つ。越は、隊[お]つるなり。○隊は、直類反。

射其右。斃于車中。綦毋張喪車、從韓厥曰、請寓乘。綦毋張、晉大夫。寓、寄也。○毋、音無。乘、繩證反。
【読み】
其の右を射る。車中に斃る。綦毋張車を喪い、韓厥に從りて曰く、請う、寓乘せん、と。綦毋張は、晉の大夫。寓は、寄るなり。○毋は、音無。乘は、繩證反。

從左右。皆肘之、使立於後。以左右皆死、不欲使立其處。
【読み】
左右從りす。皆之を肘して、後に立たしむ。左右皆死するを以て、其の處に立たしむることを欲せず。

韓厥俛定其右。俛、俯也。右被射仆車中。故俯安隱之。○俛、音勉。
【読み】
韓厥俛[ふ]して其の右を定む。俛[べん]は、俯すなり。右射られて車中に仆る。故に俯して之を安隱す。○俛は、音勉。

逢丑父與公易位。居公處。
【読み】
逢丑父公と位を易う。公の處に居る。

將及華泉。驂絓於木而止。驂馬絓也。○華、戶化反。絓、戶卦反。一音圭。
【読み】
將に華泉に及ばんとす。驂木に絓[かか]りて止まる。驂馬絓るなり。○華は、戶化反。絓は、戶卦反。一に音圭。

丑父寢於轏中、轏、士車。○轏、士產反。亦仕諫反。臥車也。
【読み】
丑父轏中[さんちゅう]に寢ねしに、轏は、士の車。○轏は、士產反。亦仕諫反。臥車なり。

蛇出於其下、以肱擊之、傷而匿之。故不能推車而及。爲韓厥所及。丑父欲爲右。故匿其傷。
【読み】
蛇其の下より出でしを、肱を以て之を擊ち、傷つきて之を匿[かく]せり。故に車を推すこと能わずして及ばる。韓厥の爲に及ばる。丑父右爲らんと欲す。故に其の傷を匿すなり。

韓厥執縶馬前、縶、馬絆也。執之、示脩臣僕之職。○縶、張立反。絆、音半。
【読み】
韓厥縶[ちゅう]を馬前に執り、縶は、馬絆なり。之を執るは、臣僕の職を脩むるを示すなり。○縶は、張立反。絆は、音半。

再拜稽首、奉觴加璧以進、進觴璧、亦以示敬。
【読み】
再拜稽首して、觴[さかずき]を奉じ璧を加えて以て進めて、觴璧を進むるは、亦以て敬を示すなり。

曰、寡君使羣臣爲魯・衛請、曰、無令輿師陷入君地。本但爲二國救請。不欲乃過入君地。謙辭。○爲、于僞反。
【読み】
曰く、寡君羣臣をして魯・衛の爲に請わしめて、曰く、輿師をして君の地に陷入せしむること無かれ、と。本但二國の救の爲に請うのみ。乃ち君の地に過入することを欲せず、と。謙辭なり。○爲は、于僞反。

下臣不幸、屬當戎行、無所逃隱。屬、適也。○屬、音燭。行、下郎反。
【読み】
下臣不幸にして、屬[たま]々戎行に當たりて、逃隱する所無し。屬は、適々なり。○屬は、音燭。行は、下郎反。

且懼奔辟而忝兩君。臣辱戎士、若奔辟則爲辱晉君、幷爲齊侯羞。故言二君。此蓋韓厥自處臣僕、謙敬之飾言。○辟、音避。
【読み】
且懼れらくは奔辟して兩君を忝めんことを。臣戎士を辱くすれば、若し奔辟せば則ち晉君を辱むることを爲し、幷せて齊侯の羞と爲らん。故に二君と言う。此れ蓋し韓厥自ら臣僕に處る、謙敬の飾言ならん。○辟は、音避。

敢告不敏。攝官承乏。言欲以己不敏、攝承空乏、從君倶還。
【読み】
敢えて告ぐ、不敏なり。官を攝して乏しきを承けん、と。言うこころは、己が不敏を以て、空乏を攝承して、君に從いて倶に還らんと欲す。

丑父使公下如華泉取飮。鄭周父御佐車、宛茷爲右、載齊侯以免。佐車、副車。○宛、紆元反。茷、扶廢反。
【読み】
丑父公をして下りて華泉に如きて飮を取らしむ。鄭周父佐車に御となり、宛茷[えんはい]右と爲り、齊侯を載せて以て免る。佐車は、副車。○宛は、紆元反。茷は、扶廢反。

韓厥獻丑父。郤獻子將戮之。呼曰、自今無有代其君任患者。有一於此、將爲戮乎。郤子曰、人不難以死免其君。我戮之、不祥。赦之以勸事君者。乃免之。
【読み】
韓厥丑父を獻ず。郤獻子將に之を戮せんとす。呼[よ]ばいて曰く、今より其の君に代わりて患に任ずる者有ること無からん。此に一有るも、將に戮することを爲さんとするか、と。郤子曰く、人死を以て其の君を免れしむることを難[はばか]らず。我れ之を戮するは、不祥なり。之を赦して以て君に事る者を勸めん、と。乃ち之を免す。

齊侯免、求丑父、三入三出。重其代己。故三入晉軍求之。○呼、火故反。任、音壬。難、乃旦反。
【読み】
齊侯免れ、丑父を求めんとして、三たび入り三たび出づ。其の己に代わるを重んず。故に三たび晉軍に入りて之を求めんとす。○呼は、火故反。任は、音壬。難は、乃旦反。

每出齊師以帥退、入于狄卒。齊師大敗、皆有退心。故齊侯輕出其衆、以帥厲退者、遂逬入狄卒。狄卒者、狄人從晉討齊者。○輕、遣政反。逬、補諍反。
【読み】
齊の師を出づる每に以て退けるを帥い、狄の卒に入る。齊の師大敗して、皆退心有り。故に齊侯輕々しく其の衆を出でて、以て退く者を帥厲して、遂に狄の卒に逬入[ほうにゅう]す。狄の卒は、狄人の晉に從いて齊を討ずる者なり。○輕は、遣政反。逬は、補諍反。

狄卒皆抽戈、楯冒之、以入于衛師。衛師免之。狄・衛畏齊之强。故不敢害齊侯、皆共免護之。○楯、食準反。又音
【読み】
狄の卒皆戈を抽[ひ]き、楯にて之を冒いて、以て衛の師に入れぬ。衛の師も之を免す。狄・衛齊の强きを畏る。故に敢えて齊侯を害せず、皆共に之を免護す。○楯は、食準反。又音

遂自徐關入。
【読み】
遂に徐關より入る。

齊侯見保者曰、勉之。齊師敗矣。所過城邑、皆勉勵其守者。
【読み】
齊侯保者を見て曰く、之を勉めよ。齊の師敗れたり、と。過ぐる所の城邑、皆其の守者を勉勵す。

辟女子。使辟君也。齊侯單還。故婦人不辟之。○辟、音避。
【読み】
女子を辟けしむ。君を辟けしむるなり。齊侯單還す。故に婦人之を辟けず。○辟は、音避。

女子曰、君免乎。曰、免矣。曰、銳司徒免乎。曰、免矣。銳司徒、主銳兵者。○銳、悅歲反。
【読み】
女子曰く、君免れたりや、と。曰く、免れたり、と。曰く、銳司徒免れたりや、と。曰く、免れたり、と。銳司徒は、銳兵を主る者。○銳は、悅歲反。

曰、苟君與吾父免矣。可若何。言餘人不可復若何。
【読み】
曰く、苟も君と吾が父と免れたり。若何にす可けん、と。言うこころは、餘人は復若何ともす可からず。

乃奔。走辟君。
【読み】
乃ち奔る。走りて君を辟く。

齊侯以爲有禮。先問君後問父故也。
【読み】
齊侯以て禮有りとす。先ず君を問いて後に父を問う故なり。

旣而問之、辟司徒之妻也。辟司徒、主壘壁者。○辟、音壁。
【読み】
旣にして之を問えば、辟司徒の妻なり。辟司徒は、壘壁を主る者。○辟は、音壁。

予之石窌。石窌、邑名。濟北廬縣東有地、名石窌。○窌、力救反。一力到反。
【読み】
之に石窌[せきりゅう]を予う。石窌は、邑の名。濟北廬縣の東に地有り、石窌と名づく。○窌は、力救反。一に力到反。

晉師從齊師、入自丘輿、擊馬陘。丘輿・馬陘、皆齊邑。○陘、音刑。
【読み】
晉の師齊の師を從[お]い、丘輿より入り、馬陘を擊つ。丘輿・馬陘は、皆齊の邑。○陘は、音刑。

齊侯使賓媚人賂以紀甗・玉磬與地。媚人、國佐也。甗、玉甑。皆滅紀所得。○甗、魚輦反。又音彥。又音言。甑、子孕反。
【読み】
齊侯賓媚人をして賂うに紀の甗[げん]・玉磬と地とを以てせしむ。媚人は、國佐なり。甗は、玉甑[ぎょくそう]。皆紀を滅ぼして得る所。○甗は、魚輦反。又音彥。又音言。甑は、子孕反。

不可、則聽客之所爲。賓媚人致賂。晉人不可、曰、必以蕭同叔子爲質、同叔、蕭君之字。齊侯外祖父。子、女也。難斥言其母。故遠言之。○質、音致。下同。難、乃旦反。
【読み】
可[き]かずんば、則ち客のする所を聽け、と。賓媚人賂を致す。晉人可かずして、曰く、必ず蕭同叔の子を以て質と爲して、同叔は、蕭君の字。齊侯の外祖父なり。子は、女なり。其の母を斥言するを難る。故に之を遠言す。○質は、音致。下も同じ。難は、乃旦反。

而使齊之封内、盡東其畝。使壟畝東西行。○盡、津忍反。行、戶郎反。又如字。
【読み】
齊の封内をして、盡く其の畝を東にせしめよ、と。壟畝をして東西行にせしむ。○盡は、津忍反。行は、戶郎反。又字の如し。

對曰、蕭同叔子非他、寡君之母也。若以匹敵、則亦晉君之母也。吾子布大命於諸侯、而曰必質其母以爲信、其若王命何。言違王命。
【読み】
對えて曰く、蕭同叔の子とは他に非ず、寡君の母なり。若し匹敵を以てせば、則ち亦晉君の母なり。吾子大命を諸侯に布きて、必ず其の母を質として以て信とせんと曰わば、其れ王命を若何。王命に違うを言う。

且是以不孝令也。詩曰、孝子不匱、永錫爾類。詩、大雅。言孝心不乏者、又能以孝道長賜其志類。
【読み】
且つ是れ不孝を以て令するなり。詩に曰く、孝子匱[とぼ]しからざるは、永く爾の類に錫う、と。詩は、大雅。孝心乏しからざる者は、又能く孝道を以て長く其の志類に賜うを言う。

若以不孝令於諸侯、其無乃非德類也乎。不以孝德賜同類。
【読み】
若し不孝を以て諸侯に令せば、其れ乃ち德類に非ざること無からんや。孝德を以て同類を賜わず。

先王疆理天下、物土之宜而布其利。疆、界也。理、正也。物土之宜、播殖之物、各從土宜。
【読み】
先王の天下を疆理するは、物ごと土の宜をして其の利を布けり。疆は、界なり。理は、正すなり。物ごと土の宜とは、播殖の物、各々土宜に從うなり。

故詩曰、我疆我理、南東其畝。詩、小雅。或南或東、從其土宜。
【読み】
故に詩に曰く、我れ疆し我れ理して、其の畝を南東にす、と。詩は、小雅。或は南或は東、其の土宜に從うなり。

今吾子疆理諸侯、而曰盡東其畝而已、唯吾子戎車是利、晉之伐齊、循壟東行易。
【読み】
今吾子諸侯を疆理して、盡く其の畝を東にせんのみと曰わば、唯吾子は戎車をのみ是れ利して、晉の齊を伐つに、壟に循いて東行すれば易し。

無顧土宜。其無乃非先王之命也乎。反先王則不義。何以爲盟主。
【読み】
土宜を顧みること無きなり。其れ乃ち先王の命に非ざること無からんや。先王に反するは則ち不義なり。何を以て盟主爲らん。

其晉實有闕。闕、失。
【読み】
其れ晉實に闕くること有り。闕は、失。

四王之王也、禹・湯・文・武。○之王、于況反。
【読み】
四王の王たるや、禹・湯・文・武。○之王は、于況反。

樹德而濟同欲焉。樹、立也。濟、成也。
【読み】
德を樹てて同欲を濟[な]せり。樹は、立つなり。濟は、成すなり。

五伯之霸也、夏伯、昆吾。商伯、大彭・豕韋。周伯、齊桓・晉文。○或曰、桓・文・宋襄・秦穆・楚莊。
【読み】
五伯の霸たるや、夏の伯は、昆吾。商の伯は、大彭・豕韋。周の伯は、齊桓・晉文。○或は曰く、桓・文・宋襄・秦穆・楚莊、と。

勤而撫之、以役王命。役、事也。
【読み】
勤めて之を撫でて、以て王命に役せり。役は、事うるなり。

今吾子求合諸侯、以逞無疆之欲。疆、竟也。
【読み】
今吾子は諸侯を合わせて、以て無疆の欲を逞しくせんことを求む。疆は、竟なり。

詩曰、布政優優、百祿是遒。詩、頌。殷湯布政優和。故百祿來聚。遒、聚也。
【読み】
詩に曰く、政を布くこと優優たり、百祿是れ遒[あつ]まる、と。詩は、頌。殷湯政を布くこと優和なり。故に百祿來聚す。遒[しゅう]は、聚まるなり。

子實不優、而棄百祿、諸侯何害焉。言不能爲諸侯害。
【読み】
子實に優ならずして、百祿を棄てば、諸侯何の害あらん。言うこころは、諸侯の害を爲すこと能わず。

不然、不見許。
【読み】
然らずんば、許されざるなり。

寡君之命使臣、則有辭矣。曰、子以君師辱於敝邑、不腆敝賦、以犒從者、戰而曰犒、爲孫辭。○使、所吏反。從、才用反。
【読み】
寡君の使臣に命ぜし、則ち辭有り。曰く、子君の師を以て敝邑に辱くすれば、不腆なる敝賦、以て從者を犒[ねぎら]いしも、戰いて犒うと曰うは、孫辭を爲すなり。○使は、所吏反。從は、才用反。

畏君之震、師徒橈敗。震、動。橈、曲也。○橈、乃敎反。
【読み】
君の震を畏れて、師徒橈敗[どうはい]せり。震は、動く。橈は、曲るなり。○橈は、乃敎反。

吾子惠徼齊國之福、不泯其社稷、使繼舊好、唯是先君之敝器土地不敢愛。子又不許、請收合餘燼、燼、火餘木。○燼、似刃反。
【読み】
吾子惠みて齊國の福を徼めんとして、其の社稷を泯[ほろ]ぼさずして、舊好を繼がしめば、唯是れ先君の敝器土地敢えて愛[お]しまじ。子又許さずんば、請う、餘燼を收合して、燼は、火餘の木なり。○燼は、似刃反。

背城借一。欲於城下復借一戰。○背、音佩。
【読み】
城を背にして一を借らん。城下に於て復一戰を借らんと欲す。○背は、音佩。

敝邑之幸、亦云從也。況其不幸、敢不唯命是聽。言完全之時、尙不敢違晉。今若不幸則從命。
【読み】
敝邑の幸いなるも、亦云[ここ]に從えり。況んや其れ不幸なるをや、敢えて唯命是れ聽かざらんや、と。言うこころは、完全の時も、尙敢えて晉に違わざりき。今不幸の若きは則ち命に從わん。

魯・衛諫曰、齊疾我矣。諫郤克也。
【読み】
魯・衛諫めて曰く、齊我を疾[にく]めり。郤克を諫むるなり。

其死亡者、皆親暱也。子若不許、讎我必甚。唯子則又何求。子得其國寶、謂甗磬。○暱、女乙反。
【読み】
其の死亡する者は、皆親暱[しんじつ]なり。子若し許さずんば、我を讎とすること必ず甚だしからん。唯子は則ち又何をか求めん。子其の國寶を得、甗磬を謂う。○暱は、女乙反。

我亦得地、齊歸所侵。
【読み】
我も亦地を得て、齊侵す所を歸す。

而紓於難、齊服則難緩。○紓、音舒。難、乃旦反。
【読み】
難を紓[ゆる]べば、齊服すれば則ち難緩む。○紓は、音舒。難は、乃旦反。

其榮多矣。齊・晉亦唯天所授。豈必晉。
【読み】
其の榮多し。齊・晉も亦唯天の授くる所なり。豈必ずしも晉のみならんや、と。

晉人許之。對曰、羣臣帥賦輿、賦輿、猶兵車。
【読み】
晉人之を許す。對えて曰く、羣臣賦輿を帥いて、賦輿は、猶兵車のごとし。

以爲魯・衛請、若苟有以藉口而復於寡君、藉、薦也。復、白也。○爲、于僞反。藉、在夜反。
【読み】
以て魯・衛の爲に請いしに、若し苟も以て口に藉[し]きて寡君に復[もう]すこと有らば、藉は、薦[し]くなり。復は、白[もう]すなり。○爲は、于僞反。藉は、在夜反。

君之惠也。敢不唯命是聽。
【読み】
君の惠みなり。敢えて唯命を是れ聽かざらんや、と。

禽鄭自師逆公。禽鄭、魯大夫。歸逆公會晉師。
【読み】
禽鄭師より公を逆う。禽鄭は、魯の大夫。歸りて公を逆えて晉の師に會す。

秋、七月、晉師及齊國佐盟于爰婁。使齊人歸我汶陽之田。公會晉師于上鄍。上鄍、地闕。公會晉師不書、史闕。
【読み】
秋、七月、晉の師齊國の佐と爰婁[えんろう]に盟う。齊人をして我が汶陽の田を歸さしむ。公晉の師に上鄍[じょうべい]に會す。上鄍は、地闕く。公晉の師に會すること書さざるは、史の闕なり。

賜三帥先路三命之服、三帥、郤克・士燮・欒書。已嘗受王先路之賜。今改而易新。幷此車所建所服之物。
【読み】
三帥に先路三命の服を賜い、三帥は、郤克・士燮・欒書。已に嘗て王の先路の賜を受く。今改めて新に易う。幷せて此の車の建つる所服する所の物までをす。

司馬・司空・輿帥・候正・亞旅、皆受一命之服。晉司馬・司空、皆大夫。輿帥、主兵車。候正、主斥候。亞旅、亦大夫也。皆魯侯賜。
【読み】
司馬・司空・輿帥・候正・亞旅は、皆一命の服を受く。晉の司馬・司空は、皆大夫なり。輿帥は、兵車を主る。候正は、斥候を主る。亞旅も、亦大夫なり。皆魯侯の賜なり。

八月、宋文公卒。始厚葬、用蜃炭、益車馬、始用殉、燒蛤爲炭以瘞壙、多埋車馬、用人從葬。○蜃、市忍反。
【読み】
八月、宋の文公卒す。始めて厚葬し、蜃炭を用い、車馬を益し、始めて殉を用い、蛤を燒きて炭と爲して以て壙を瘞[うず]め、多く車馬を埋め、人を用いて葬に從う。○蜃は、市忍反。

重器備。重、猶多也。○重、直恭反。
【読み】
器備を重ぬ。重は、猶多きがごとし。○重は、直恭反。

椁有四阿、棺有翰檜。四阿、四注椁也。翰、旁飾。檜、上飾。皆王禮。○翰、戶旦反。一音韓。檜、古外反。又音會。
【読み】
椁に四阿有り、棺に翰檜[かんかい]有り。四阿は、四注椁なり。翰は、旁飾。檜は、上飾。皆王の禮なり。○翰は、戶旦反。一に音韓。檜は、古外反。又音會。

君子謂、華元・樂舉於是乎不臣。臣、治煩去惑者也。是以伏死而爭。今二子者、君生則縱其惑、謂文十八年、殺母弟須。○去、起呂反。
【読み】
君子謂えらく、華元・樂舉是に於て不臣なり。臣は、煩を治め惑を去る者なり。是を以て死に伏して爭う。今二子の者は、君生くるときは則ち其の惑いを縱にして、文十八年、母弟須を殺すを謂う。○去は、起呂反。

死又益其侈。是棄君於惡也。何臣之爲。若言何用爲臣。
【読み】
死するときは又其の侈りを益す。是れ君を惡に棄つるなり。何ぞ臣と之れせんや、と。何を用て臣爲らんと言うが若し。

九月、衛穆公卒。晉三子自役弔焉、哭於大門之外。師還過衛。故因弔之。未復命。故不敢成禮。
【読み】
九月、衛の穆公卒す。晉の三子役より弔して、大門の外に哭す。師還りて衛を過ぐ。故に因りて之を弔う。未だ復命せず。故に敢えて禮を成さず。

衛人逆之、逆於門外設喪位。
【読み】
衛人之を逆え、門外に逆えて喪位を設く。

婦人哭於門内。喪位、婦人哭於堂。賓在門外。故移在門内。
【読み】
婦人門内に哭す。喪位は、婦人は堂に哭す。賓門外に在り。故に移して門内に在るなり。

送亦如之。遂常以葬。至葬行此禮。
【読み】
送るも亦之の如し。遂に常として以いて葬れり。葬に至るまで此の禮を行う。

楚之討陳夏氏也、在宣十一年。
【読み】
楚の陳の夏氏を討ぜしや、宣十一年に在り。

莊王欲納夏姬。申公巫臣曰、不可。君召諸侯、以討罪也。今納夏姬、貪其色也。貪色爲淫、淫爲大罰。周書曰、明德愼罰。周書、康誥。
【読み】
莊王夏姬を納れんと欲す。申公巫臣曰く、不可なり。君諸侯を召すは、以て罪を討ずるなり。今夏姬を納れば、其の色を貪るなり。色を貪るを淫と爲し、淫を大罰と爲す。周書に曰く、德を明らかにし罰を愼む、と。周書は、康誥。

文王所以造周也。明德、務崇之之謂也。愼罰、務去之之謂也。若興諸侯以取大罰、非愼之也。君其圖之。王乃止。
【読み】
文王の周を造[な]せし所以なり。德を明らかにすとは、務めて之を崇くするの謂なり。罰を愼むとは、務めて之を去るの謂なり。若し諸侯を興して以て大罰を取らば、之を愼むに非ざるなり。君其れ之を圖れ、と。王乃ち止む。

子反欲取之。巫臣曰、是不祥人也。是夭子蠻、子蠻、鄭霊公。夏姬之兄。殺死無後。○殺、申志反。下殺靈候同。
【読み】
子反之を取らんと欲す。巫臣曰く、是れ不祥の人なり。是れ子蠻を夭せしめ、子蠻は、鄭の霊公。夏姬の兄。殺死せられて後無し。○殺は、申志反。下の殺靈候も同じ。

殺御叔、御叔、夏姬之夫。亦早死。
【読み】
御叔を殺し、御叔は、夏姬の夫。亦早く死す。

弑靈侯、陳靈公也。
【読み】
靈侯を弑し、陳の靈公なり。

戮夏南、夏姬子、徵舒。
【読み】
夏南を戮し、夏姬の子、徵舒。

出孔・儀、孔寧、儀行父。
【読み】
孔・儀を出だし、孔寧・儀行父。

喪陳國。楚滅陳。○喪、息浪反。
【読み】
陳國を喪ぼせり。楚陳を滅ぼす。○喪は、息浪反。

何不祥如是。人生實難。其有不獲死乎。言死易得。無爲取夏姬以速之。
【読み】
何の不祥か是に如かん。人の生は實に難し。其れ死を獲ざること有らんや。言うこころは、死は得易し。夏姬を取りて以て之を速[まね]くことを爲すこと無かれ。

天下多美婦人。何必是。子反乃止。王以予連尹襄老。襄老死於邲、不獲其尸。邲戰、在宣十二年。
【読み】
天下に美婦人多し。何ぞ必ずしも是れのみならん、と。子反乃ち止む。王以て連尹襄老に予う。襄老邲[ひつ]に死して、其の尸を獲ず。邲の戰は、宣十二年に在り。

其子黑要烝焉。黑要、襄老子。○要、一遙反。
【読み】
其の子黑要烝す。黑要は、襄老の子。○要は、一遙反。

巫臣使道焉、曰、歸。吾聘女。道夏姬使歸鄭。○女、音汝。
【読み】
巫臣道[みちび]かしめて、曰く、歸れ。吾れ女を聘せん、と。夏姬を道きて鄭に歸らしむ。○女は、音汝。

又使自鄭召之、曰、尸可得也。襄老尸。
【読み】
又鄭より之を召[よ]ばしめて、曰く、尸得可し。襄老の尸なり。

必來逆之。姬以告王。王問諸屈巫。屈巫、巫臣。○屈、居勿反。
【読み】
必ず來りて之を逆えよ、と。姬以て王に告ぐ。王諸を屈巫に問う。屈巫は、巫臣。○屈は、居勿反。

對曰、其信。知罃之父、成公之嬖也、而中行伯之季弟也。知罃父、荀首也。中行伯、荀林父也。邲之戰、楚人囚知罃。○知、音智。罃、於耕反。
【読み】
對えて曰く、其れ信ならん。知罃[ちおう]の父は、成公の嬖にして、中行伯の季弟なり。知罃の父は、荀首なり。中行伯は、荀林父なり。邲の戰に、楚人知罃を囚う。○知は、音智。罃は、於耕反。

新佐中軍、而善鄭皇戌。甚愛此子、愛知罃也。
【読み】
新たに中軍に佐として、鄭の皇戌に善し。甚だ此の子を愛すれば、知罃を愛するなり。

其必因鄭而歸王子與襄老之尸、以求之。王子、楚公子穀臣也。邲之戰荀首囚之。
【読み】
其れ必ず鄭に因りて王子と襄老の尸とを歸して、以て之を求めん。王子は、楚の公子穀臣なり。邲の戰に荀首之を囚う。

鄭人懼於邲之役、而欲求媚於晉、其必許之。
【読み】
鄭人邲の役に懼れて、媚を晉に求めんと欲すれば、其れ必ず之を許さん、と。

王遣夏姬歸。將行。謂送者曰、不得尸、吾不反矣。巫臣聘諸鄭。鄭伯許之。聘夏姬。
【読み】
王夏姬をして歸らしむ。將に行かんとす。送者に謂いて曰く、尸を得ずんば、吾れ反らじ、と。巫臣諸を鄭に聘す。鄭伯之を許す。夏姬を聘す。

及共王卽位、將爲陽橋之役。楚伐魯至陽橋。在此年冬。○共、音恭。
【読み】
共王の位に卽くに及びて、將に陽橋の役を爲さんとす。楚魯を伐ちて陽橋に至る。此の年の冬に在り。○共は、音恭。

使屈巫聘於齊、且告師期。巫臣盡室以行。室家盡去。
【読み】
屈巫をして齊に聘せしめ、且師の期を告ぐ。巫臣室を盡くして以て行[さ]る。室家盡く去る。

申叔跪從其父將適郢、遇之、叔跪、申叔時之子。○從、才用反。郢、以井反。
【読み】
申叔跪[しんしゅくき]其の父に從いて將に郢[えい]に適かんとし、之に遇いて、叔跪は、申叔時の子。○從は、才用反。郢は、以井反。

曰、異哉。夫子有三軍之懼、而又有桑中之喜。宜將竊妻以逃者也。桑中、衛風。淫奔之詩。
【読み】
曰く、異なるかな。夫子三軍の懼れ有りて、又桑中の喜び有り。宜なり將に妻を竊みて以て逃げんとする者なること、と。桑中は、衛風。淫奔の詩。

及鄭、使介反幣、而以夏姬行。介、副也。幣、聘物。
【読み】
鄭に及び、介をして幣を反さしめて、夏姬を以[い]て行る。介は、副なり。幣は、聘物。

將奔齊。齊師新敗。曰、吾不處不勝之國。遂奔晉、而因郤至、至、郤克族子。
【読み】
將に齊に奔らんとす。齊の師新たに敗れたり。曰く、吾れ不勝の國に處らず、と。遂に晉に奔りて、郤至に因り、至は、郤克の族子。

以臣於晉。晉人使爲邢大夫。邢、晉邑。
【読み】
以て晉に臣たり。晉人邢の大夫爲らしむ。邢は、晉の邑。

子反請以重幣錮之。禁錮勿令仕。○錮、音固。
【読み】
子反重幣を以て之を錮せんと請う。禁錮して仕えしむること勿からんとす。○錮は、音固。

王曰、止。其自爲謀也則過矣。其爲吾先君謀也則忠。忠、社稷之固也。所蓋多矣。蓋、覆也。○自爲、于僞反。又如字。爲吾、于僞反。
【読み】
王曰く、止めよ。其の自ら爲に謀るや則ち過てり。其の吾が先君の爲に謀るや則ち忠なり。忠は、社稷の固めなり。蓋う所多し。蓋は、覆うなり。○自爲は、于僞反。又字の如し。爲吾は、于僞反。

且彼若能利國家、雖重幣、晉將可乎。言不許。
【読み】
且つ彼若し能く國家に利あらば、重幣と雖も、晉將[はた]可[き]かんや。許さざるを言う。

若無益於晉、晉將棄之。何勞錮焉。爲七年、楚滅巫臣族、晉南通吳張本。
【読み】
若し晉に益無くば、晉將に之を棄てんとす。何ぞ錮することを勞せん、と。七年、楚巫臣の族を滅ぼし、晉南吳に通ずる爲の張本なり。

晉師歸。范文子後入。武子曰、無爲吾望爾也乎。武子、士會。文子之父。
【読み】
晉の師歸る。范文子後れて入る。武子曰く、吾れ爾を望むとすることを無からんや、と。武子は、士會。文子の父。

對曰、師有功。國人喜以逆之。先入、必屬耳目焉。是代帥受名也。故不敢。武子曰、吾知免矣。知其不益己禍。○屬、章欲反。
【読み】
對えて曰く、師功有り。國人喜びて以て之を逆う。先ず入らば、必ず耳目を屬けん。是れ帥に代わりて名を受くるなり。故に敢えてせず、と。武子曰く、吾免ることを知れり、と。其の己が禍を益さざるを知る。○屬は、章欲反。

郤伯見。公曰、子之力也夫。對曰、君之訓也。二三子之力也。臣何力之有焉。郤伯、郤克。○見、賢遍反。
【読み】
郤伯見ゆ。公曰く、子の力めなるかな、と。對えて曰く、君の訓えなり。二三子の力めなり。臣何の力めか之れ有らん、と。郤伯は、郤克。○見は、賢遍反。

范叔見。勞之如郤伯。對曰、庚所命也。克之制也。燮何力之有焉。荀庚、將上軍。時不出。范文子、上軍佐。代行。故稱帥以讓。○勞、力報反。
【読み】
范叔見ゆ。之を勞すること郤伯の如し。對えて曰く、庚が命ずる所なり。克の制なり。燮何の力めか之れ有らん、と。荀庚は、上軍に將たり。時に出でず。范文子は、上軍の佐。代わり行く。故に帥を稱して以て讓る。○勞は、力報反。

欒伯見。公亦如之。對曰、燮之詔也。士用命也。書何力之有焉。詔、告也。欒書、下軍帥。故推功上軍。傳言晉將帥克讓。所以能勝齊。
【読み】
欒伯見ゆ。公亦之の如し。對えて曰く、燮の詔げなり。士命を用ゆるなり。書何の力めか之れ有らん、と。詔は、告げなり。欒書は、下軍の帥。故に功を上軍に推す。傳晉の將帥克く讓る。能く齊に勝つ所以を言う。

宣公使求好于楚、莊王卒、宣公薨、不克作好。在宣十八年。
【読み】
宣公好を楚に求めしめんとせしに、莊王卒し、宣公薨じて、好を作すこと克わざりき。宣十八年に在り。

公卽位、受盟于晉、元年、盟赤棘。
【読み】
公位に卽きて、盟を晉に受け、元年、赤棘に盟う。

會晉伐齊、衛人不行使于楚、不聘楚。
【読み】
晉に會して齊を伐ち、衛人も使いを楚に行[や]らずして、楚に聘せず。

而亦受盟于晉、從於伐齊。故楚令尹子重爲陽橋之役以救齊。
【読み】
亦盟を晉に受け、齊を伐つに從えり。故に楚の令尹子重陽橋の役を爲して以て齊を救う。

將起師、子重曰、君弱、傳曰、寡人生十年而喪先君。共王卽位、至是三年。蓋年十二三矣。
【読み】
將に師を起こさんとするとき、子重曰く、君弱[わか]く、傳に曰く、寡人生まれて十年にして先君を喪う。共王位に卽きてより、是に至りて三年なり。蓋し年十二三ならん。

羣臣不如先大夫。師衆而後可。詩曰、濟濟多士、文王以寧。詩、大雅。言文王以衆士安。
【読み】
羣臣先大夫に如かず。師衆くして後に可なり。詩に曰く、濟濟たる多士、文王以て寧し、と。詩は、大雅。文王衆士を以て安きを言う。

夫文王猶用衆。況吾儕乎。儕、等。
【読み】
夫れ文王も猶衆きを用いたり。況んや吾が儕[ともがら]をや。儕は、等なり。

且先君莊王屬之曰、無德以及遠方、莫如惠恤其民而善用之。乃大戶、閱民戶口。
【読み】
且つ先君莊王之を屬して曰く、德の以て遠方に及ぶこと無くば、其の民を惠恤して善く之を用ゆるに如くは莫し、と。乃ち大いに戶し、民の戶口を閱す。

已責、棄逋責。○逋、補吳反。
【読み】
責を已め、逋責を棄つ。○逋は、補吳反。

逮鰥、施及老鰥。○施、始豉反。
【読み】
鰥[かん]に逮[およ]ぼし、老鰥に施及す。○施は、始豉反。

救乏、赦罪、悉師。王卒盡行。彭名御戎。蔡景公爲左。許靈公爲右。王卒盡行。故王戎車亦行。雖無楚王、令二君當左右之位。
【読み】
乏を救い、罪を赦し、師を悉くす。王の卒盡く行く。彭名戎に御たり。蔡の景公左爲り。許の靈公右爲り。王の卒盡く行く。故に王の戎車も亦行く。楚王無しと雖も、二君をして左右の位に當たらしむ。

二君弱。皆強冠之。
【読み】
二君弱し。皆強いて之を冠せしむ。

冬、楚師侵衛、遂侵我、師于蜀。公賂之而退。故不書侵。○强、其丈反。冠、古亂反。
【読み】
冬、楚の師衛を侵し、遂に我を侵し、蜀に師す。公之に賂いて退く。故に侵を書さず。○强は、其丈反。冠は、古亂反。

使臧孫往。臧孫、宣叔也。
【読み】
臧孫をして往かしむ。臧孫は、宣叔なり。

辭曰、楚遠而久。固將退矣。無功而受名、臣不敢。不敢虛受退楚名。
【読み】
辭して曰く、楚遠くして久し。固より將に退かんとす。功無くして名を受くるは、臣敢えてせず、と。敢えて虛しく楚を退くるの名を受けず。

楚侵及陽橋。陽橋、魯地。
【読み】
楚侵して陽橋に及ぶ。陽橋は、魯の地。

孟孫請往賂之。楚侵遂深。故孟孫請以賂往。孟孫、獻子也。
【読み】
孟孫往きて之に賂わんと請う。楚の侵すこと遂に深し。故に孟孫賂を以て往かんと請う。孟孫は、獻子なり。

以執斲・執鍼・織紝、執斲、匠人。執鍼、女工。織紝、織繒布者。○斲、竹角反。鍼、之林反。紝、女金反。亦而鴆反。
【読み】
執斲[しったく]・執鍼[しっしん]・織紝[しょくじん]、執斲は、匠人。執鍼は、女工。織紝は、繒布を織る者。○斲は、竹角反。鍼は、之林反。紝は、女金反。亦而鴆反。

皆百人、公衡爲質、公衡、成公子。○質、音致。
【読み】
皆百人を以てし、公衡質と爲り、公衡は、成公の子。○質は、音致。

以請盟。楚人許平。十一月、公及楚公子嬰齊・蔡侯・許男・秦右大夫說・宋華元・陳公孫寧・衛孫良夫・鄭公子去疾、及齊國之大夫盟于蜀。齊大夫不書其名、非卿也。○說、音悅。去、起呂反。
【読み】
以て盟を請う。楚人平らぎを許す。十一月、公楚の公子嬰齊・蔡侯・許男・秦の右大夫說・宋の華元・陳の公孫寧・衛の孫良夫・鄭の公子去疾と、齊國の大夫と蜀に盟う。齊の大夫其の名を書さざるは、卿に非ざればなり。○說は、音悅。去は、起呂反。

卿不書、匱盟也。於是乎畏晉而竊與楚盟。故曰匱盟。匱、乏也。
【読み】
卿書さざるは、匱盟なればなり。是に於て晉を畏れて竊かに楚と盟う。故に匱盟と曰う。匱は、乏しきなり。

蔡侯・許男不書、乘楚車也。謂之失位。乘楚王車爲左右、則失位也。卿不書、則稱人、諸侯不書、皆不見經。君臣之別。
【読み】
蔡侯・許男書さざるは、楚の車に乘ればなり。之を位を失うと謂う。楚王の車に乘りて左右と爲るは、則ち位を失うなり。卿の書さざるは、則ち人と稱し、諸侯の書さざるは、皆經に見さず。君臣の別なり。

君子曰、位其不可不愼也乎。蔡・許之君、一失其位、不得列於諸侯。況其下乎。詩曰、不解于位、民之攸墍、詩、大雅。言在上者、勤正其位、則國安而民息也。攸、所也。墍、息也。○解、佳賣反。墍、許器反。
【読み】
君子曰く、位は其れ愼まずんばある可からざるなり。蔡・許の君、一たび其の位を失いて、諸侯に列ぬることを得ず。況んや其の下をや。詩に曰く、位に解[おこた]らざるは、民の墍[いこ]う攸なりとは、詩は、大雅。言うこころは、上に在る者、勤めて其の位を正しくすれば、則ち國安んじて民息うなり。攸は、所なり。墍[き]は、息うなり。○解は、佳賣反。墍は、許器反。

其是之謂矣。
【読み】
其れ是を之れ謂うなり、と。

楚師及宋。公衡逃歸。臧宣叔曰、衡父不忍數年之不宴、宴、樂也。○數、所主反。
【読み】
楚の師宋に及ぶ。公衡逃げ歸る。臧宣叔曰く、衡父數年の宴[たの]しまざるを忍びずして、宴は、樂しむなり。○數は、所主反。

以棄魯國。國將若之何。誰居、後之人必有任是夫。國棄矣。居、辭也。言後人必有當此患。○居、音基。任、音壬。夫、音扶。
【読み】
以て魯國を棄つ。國將に之を若何にせんとす。誰ぞや、後の人必ず是に任ずること有らん。國棄れられたり、と。居は、辭なり。言うこころは、後の人必ず此の患えに當たるもの有らん。○居は、音基。任は、音壬。夫は、音扶。

是行也、晉辟楚、畏其衆也。君子曰、衆之不可以已也、大夫爲政、猶以衆克。況明君而善用其衆乎。大誓所謂商兆民離、周十人同者、衆也。大誓、周書。萬億曰兆。民離則弱、合則成衆。言殷以散亡、周以衆興。
【読み】
是の行や、晉楚を辟けしは、其の衆を畏れてなり。君子曰く、衆の以て已む可からざるや、大夫政を爲すも、猶衆を以て克てり。況んや明君にして善く其の衆を用ゆるをや。大誓に所謂商の兆民は離れ、周の十人は同じとは、衆なればなり、と。大誓は、周書。萬億を兆と曰う。民離るれば則ち弱く、合えば則ち衆を成す。殷は散を以て亡び、周は衆を以て興るを言う。

晉侯使鞏朔獻齊捷于周。王弗見。使單襄公辭焉、曰、蠻夷・戎狄、不式王命、式、用也。
【読み】
晉侯鞏朔をして齊の捷を周に獻ぜしむ。王見ず。單襄公をして辭せしめて、曰く、蠻夷・戎狄、王命を式[もち]いず、式は、用ゆるなり。

淫湎毀常、王命伐之、則有獻捷。王親受而勞之、所以懲不敬、勸有功也。兄弟・甥舅、侵敗王略、兄弟、同姓國。甥舅、異姓國。略、經略法度。○湎、面善反。勞、力報反。敗、必邁反。
【読み】
淫湎して常を毀るを、王命じて之を伐たすれば、則ち捷を獻ずること有り。王親ら受けて之を勞うは、不敬を懲らして、有功を勸むる所以なり。兄弟・甥舅、王略を侵し敗るとき、兄弟は、同姓の國。甥舅は、異姓の國。略は、經略法度。○湎は、面善反。勞は、力報反。敗は、必邁反。

王命伐之、告事而已。不獻其功、所以敬親暱、告伐事、而不獻囚俘。
【読み】
王命じて之を伐たすれば、事を告ぐるのみ。其の功を獻ぜざるは、親暱を敬して、伐事を告げて、囚俘を獻ぜず。

禁淫慝也。淫慝、謂虣掠百姓、取囚俘也。○慝、他得反。虣、薄報反。掠、音亮。
【読み】
淫慝を禁ずる所以なり。淫慝は、百姓を虣掠[ほうりょう]し、囚俘を取るを謂うなり。○慝は、他得反。虣は、薄報反。掠は、音亮。

今叔父克遂有功于齊。克、能也。
【読み】
今叔父克く遂に齊に功有り。克は、能くなり。

而不使命卿鎭撫王室、所使來撫余一人、而鞏伯實來。未有職司於王室、鞏朔、上軍大夫。非命卿。名位不達於王室。
【読み】
而るを命卿をして王室を鎭撫せしめずして、來りて余一人を撫せしむる所にして、鞏伯實に來れり。未だ王室に職司有らず、鞏朔は、上軍の大夫。命卿に非ず。名位王室に達せず。

又奸先王之禮。謂獻齊捷。
【読み】
又先王の禮を奸せり。齊の捷を獻ずるを謂う。

余雖欲於鞏伯、欲受其獻。
【読み】
余鞏伯に欲すと雖も、其の獻を受けんと欲す。

其敢廢舊典以忝叔父。夫齊、甥舅之國也、而大師之後也。齊世與周昏。故曰甥舅。
【読み】
其れ敢えて舊典を廢して以て叔父を忝めんや。夫れ齊は、甥舅の國にして、大師の後なり。齊世々周と昏す。故に甥舅と曰う。

寧不亦淫從其欲、以怒叔父。抑豈不可諫誨。
【読み】
寧ろ亦其の欲を淫從にして、以て叔父を怒らすならざらんや。抑々豈諫誨す可からざらんや、と。

士莊伯不能對。莊伯、鞏朔。○從、子用反。
【読み】
士莊伯對うること能わず。莊伯は、鞏朔。○從は、子用反。

王使委於三吏、委、屬也。三吏、三公也。三公者、天子之吏也。
【読み】
王三吏に委ねしめて、委は、屬すなり。三吏は、三公なり。三公は、天子の吏なり。

禮之如侯伯克敵、使大夫告慶之禮、降於卿禮一等。王以鞏伯宴、而私賄之。使相告之曰、非禮也。勿籍。相、相禮者。籍、書也。王畏晉。故私宴賄以慰鞏朔。○相、息亮反。
【読み】
之を禮すること侯伯の敵に克ちて、大夫をして慶を告げしむるの禮の如くにして、卿の禮より降すこと一等。王鞏伯と宴して、私に之を賄う。相をして之に告げしめて曰く、禮に非ざるなり。籍すること勿かれ、と。相は、禮を相る者。籍は、書なり。王晉を畏る。故に私に宴賄して以て鞏朔を慰む。○相は、息亮反。


〔經〕三年、春、王正月、公會晉侯・宋公・衛侯・曹伯伐鄭。宋・衛未葬。而稱爵以接鄰國、非禮也。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、公晉侯・宋公・衛侯・曹伯に會して鄭を伐つ。宋・衛未だ葬らず。而るを爵を稱して以て鄰國に接わるは、禮に非ざるなり。

辛亥、葬衛穆公。無傳。
【読み】
辛亥[かのと・い]、衛の穆公を葬る。傳無し。

二月、公至自伐鄭。無傳。
【読み】
二月、公鄭を伐ちてより至る。傳無し。

甲子、新宮災。三日哭。無傳。三年喪畢、宣公神主新入廟。故謂之新宮。書三日哭、善得禮。宗廟、親之神靈所憑居、而遇災。故哀而哭之。
【読み】
甲子[きのえ・ね]、新宮災あり。三日哭す。傳無し。三年の喪畢わりて、宣公の神主新たに廟に入る。故に之を新宮と謂う。三日哭すを書すは、禮を得るを善してなり。宗廟は、親の神靈の憑居する所にして、災に遇う。故に哀しみて之を哭す。

乙亥、葬宋文公。無傳。七月而葬、緩。
【読み】
乙亥[きのと・い]、宋の文公を葬る。傳無し。七月にして葬るは、緩[おそ]きなり。

夏、公如晉。鄭公子去疾帥師伐許。公至自晉。無傳。
【読み】
夏、公晉に如く。鄭の公子去疾師を帥いて許を伐つ。公晉より至る。傳無し。

秋、叔孫僑如帥師圍棘。棘、汶陽田之邑。在濟北蛇丘縣。○蛇、以支反。一如字。
【読み】
秋、叔孫僑如師を帥いて棘を圍む。棘は、汶陽の田の邑。濟北蛇丘縣に在り。○蛇は、以支反。一字の如し。

大雩。無傳。以過時書。
【読み】
大いに雩[う]す。傳無し。以て時を過ぐるを書す。

晉郤克・衛孫良夫伐廧咎如。赤狄別種。○廧、在良反。咎、古刀反。種、章勇反。
【読み】
晉の郤克・衛の孫良夫廧咎如[しょうこうじょ]を伐つ。赤狄の別種。○廧は、在良反。咎は、古刀反。種は、章勇反。

冬、十有一月、晉侯使荀庚來聘。衛侯使孫良夫來聘。丙午、及荀庚盟。丁未、及孫良夫盟。先晉後衛、尊霸主。
【読み】
冬、十有一月、晉侯荀庚をして來聘せしむ。衛侯孫良夫をして來聘せしむ。丙午[ひのえ・うま]、荀庚と盟う。丁未[ひのと・ひつじ]、孫良夫と盟う。晉を先にして衛を後にするは、霸主を尊ぶなり。

鄭伐許。無傳。不書將帥、告辭略。
【読み】
鄭許を伐つ。傳無し。將帥を書さざるは、告辭略すればなり。

〔傳〕三年、春、諸侯伐鄭、次于伯牛、討邲之役也。伯牛、鄭地。邲役、在宣十二年。
【読み】
〔傳〕三年、春、諸侯鄭を伐ち、伯牛に次[やど]るは、邲の役を討ずるなり。伯牛は、鄭の地。邲の役は、宣十二年に在り。

遂東侵鄭。晉潛軍深入。
【読み】
遂に東して鄭を侵す。晉軍を潛めて深く入る。

鄭公子偃帥師禦之。偃、穆公子。
【読み】
鄭の公子偃師を帥いて之を禦ぐ。偃は、穆公の子。

使東鄙覆諸鄤、覆、伏兵也。○覆、扶又反。鄤、亡袁反。又武旦反。
【読み】
東鄙をして諸を鄤[ばん]に覆せしめ、覆は、伏兵なり。○覆は、扶又反。鄤は、亡袁反。又武旦反。

敗諸丘輿。鄤・丘輿、皆鄭地。晉偏軍爲鄭所敗。故不書。
【読み】
諸を丘輿に敗る。鄤・丘輿は、皆の鄭の地。晉の偏軍鄭の爲に敗らる。故に書さず。

皇戌如楚獻捷。
【読み】
皇戌楚に如きて捷を獻ず。

夏、公如晉、拜汶陽之田。前年、晉使齊歸魯汶陽田故。
【読み】
夏、公晉に如くは、汶陽の田を拜するなり。前年、晉齊をして魯に汶陽の田を歸さしむる故なり。

許恃楚而不事鄭。鄭子良伐許。
【読み】
許楚を恃みて鄭に事えず。鄭の子良許を伐つ。

晉人歸楚公子穀臣與連尹襄老之尸于楚、以求知罃。邲之戰楚獲知罃。
【読み】
晉人楚の公子穀臣と連尹襄老の尸とを楚に歸して、以て知罃[ちおう]求む。邲の戰に楚知罃を獲たり。

於是荀首佐中軍矣。荀首、知罃父。
【読み】
是に於て荀首中軍に佐たり。荀首は、知罃の父。

故楚人許之。
【読み】
故に楚人之を許す。

王送知罃曰、子其怨我乎。對曰、二國治戎、臣不才、不勝其任、以爲俘馘、執事不以釁鼓、以血塗鼓爲釁鼓。○勝、音升。
【読み】
王知罃を送りて曰く、子其れ我を怨むるか、と。對えて曰く、二國戎を治め、臣不才、其の任に勝えずして、以て俘馘[ふかく]と爲りしを、執事以て鼓に釁[ちぬ]らずして、血を以て鼓に塗るを釁鼓[きんこ]と爲す。○勝は、音升。

使歸卽戮、君之惠也。臣實不才。又誰敢怨。王曰、然則德我乎。對曰、二國圖其社稷、而求紓其民、紓、緩也。
【読み】
歸りて戮に卽かしむるは、君の惠みなり。臣實に不才なり。又誰をか敢えて怨みん、と。王曰く、然らば則ち我を德とせんか、と。對えて曰く、二國其の社稷を圖りて、其の民を紓[ゆる]べんことを求め、紓は、緩むなり。

各懲其忿以相宥也、宥、赦也。
【読み】
各々其の忿りを懲らして以て相宥し、宥は、赦すなり。

兩釋纍囚以成其好。纍、繫也。
【読み】
兩つながら纍囚を釋きて以て其の好を成す。纍は、繫ぐなり。

二國有好、臣不與及。其誰敢德。言二國本不爲己。
【読み】
二國好有り、臣與り及ばず。其れ誰をか敢えて德とせん、と。二國本己が爲にせざるを言う。

王曰、子歸、何以報我。對曰、臣不任受怨、君亦不任受德、無怨無德。不知所報。王曰、雖然、必告不穀。對曰、以君之靈、纍臣得歸骨於晉、寡君之以爲戮、死且不朽。戮其不勝任。○任、音壬。下同。
【読み】
王曰く、子歸らば、何を以て我に報いん、と。對えて曰く、臣怨みを受くるに任ぜず、君も亦德を受くるに任ぜず、怨み無く德無し。報いん所を知らず、と。王曰く、然りと雖も、必ず不穀に告げよ、と。對えて曰く、君の靈を以て、纍臣骨を晉に歸すことを得、寡君の以て戮することを爲さば、死するも且に朽ちざらんとす、と。其の任に勝えざるを戮す。○任は、音壬。下も同じ。

若從君之惠而免之、以賜君之外臣首、稱於異國君曰外臣。
【読み】
若し君の惠みに從いて之を免して、以て君の外臣首に賜い、異國の君に稱して外臣と曰う。

首其請於寡君、而以戮於宗、亦死且不朽。若不獲命、君不許戮。
【読み】
首其れ寡君に請いて、以て宗に戮せしも、亦死すとも且に朽ちざらんとす。若し命を獲ずして、君戮を許さず。

而使嗣宗職、嗣其祖宗之位職。
【読み】
宗職を嗣がしめ、其の祖宗の位職を嗣ぐ。

次及於事、而帥偏師以脩封疆、雖遇執事、遇楚將帥。
【読み】
次で事に及びて、偏師を帥いて以て封疆を脩めば、執事に遇うと雖も、楚の將帥に遇う。

其弗敢違、違、辟也。
【読み】
其れ敢えて違けずして、違は、辟くなり。

其竭力致死、無有二心、以盡臣禮。所以報也。王曰、晉未可與爭。重爲之禮而歸之。
【読み】
其れ力を竭くし死を致して、二心有ること無くして、以て臣の禮を盡くさん。報ゆる所以なり、と。王曰く、晉は未だ與に爭う可からず、と。重く之が禮を爲して之を歸す。

秋、叔孫僑如圍棘。
【読み】
秋、叔孫僑如棘を圍む。

取汶陽之田、棘不服。故圍之。僑如、叔孫得臣子。
【読み】
汶陽の田を取るとき、棘服せざりき。故に之を圍むなり。僑如は、叔孫得臣の子。

晉郤克・衛孫良夫伐廧咎如、討赤狄之餘焉。宣十五年、晉滅赤狄潞氏。其餘民散入廧咎如。故討之。
【読み】
晉の郤克・衛の孫良夫廧咎如を伐つは、赤狄の餘を討ずるなり。宣十五年、晉赤狄潞氏を滅ぼす。其の餘民廧咎如に散入す。故に之を討ず。

廧咎如潰、上失民也。此傳釋經之文、而經無廧咎如潰。蓋經闕此四字。
【読み】
廧咎如潰ゆとは、上民を失うなり。此の傳經の文を釋して、經に廧咎如潰ゆと無し。蓋し經に此の四字を闕くならん。

冬、十一月、晉侯使荀庚來聘、且尋盟。尋元年赤棘盟。荀庚、林父之子。
【読み】
冬、十一月、晉侯荀庚をして來聘し、且つ盟を尋[かさ]ねしむ。元年赤棘の盟を尋ぬるなり。荀庚は、林父の子。

衛侯使孫良夫來聘、且尋盟。尋宣七年盟。
【読み】
衛侯孫良夫をして來聘し、且つ盟を尋ねしむ。宣七年の盟を尋ぬるなり。

公問諸臧宣叔曰、中行伯之於晉也、其位在三。下卿。
【読み】
公諸を臧宣叔に問いて曰く、中行伯の晉に於るや、其の位三に在り。下卿。

孫子之於衛也、位爲上卿。將誰先。對曰、次國之上卿、當大國之中。中當其下。下當其上大夫。降一等。
【読み】
孫子の衛に於るや、位上卿爲り。將に誰をか先にせんとする、と。對えて曰く、次國の上卿は、大國の中に當たる。中は其の下に當たる。下は其の上大夫に當たる。一等を降す。

小國之上卿、當大國之下卿。中當其上大夫。下當其下大夫。降大國二等。
【読み】
小國の上卿は、大國の下卿に當たる。中は其の上大夫に當たる。下は其の下大夫に當たる。大國に降ること二等。

上下如是、古之制也。古制、公爲大國、侯伯爲次國、子男爲小國。
【読み】
上下是の如きは、古の制なり。古の制は、公を大國と爲し、侯伯を次國と爲し、子男を小國と爲す。

衛在晉、不得爲次國。春秋時、以强弱爲大小。故衛雖侯爵、猶爲小國。
【読み】
衛の晉に在るは、次國爲ることを得ず。春秋の時は、强弱を以て大小を爲す。故に衛は侯爵と雖も、猶小國と爲す。

晉爲盟主。其將先之。計等則二人位敵。以盟主故先晉。
【読み】
晉は盟主爲り。其れ將[はた]之を先にせん、と。等を計れば則ち二人位敵す。盟主を以ての故に晉を先にす。

丙午、盟晉、丁未、盟衛。禮也。
【読み】
丙午、晉に盟い、丁未、衛に盟う。禮なり。

十二月、甲戌、晉作六軍。爲六軍、僭王也。萬二千五百人爲軍。
【読み】
十二月、甲戌[きのえ・いぬ]、晉六軍を作る。六軍を爲るは、王に僭するなり。萬二千五百人を軍と爲す。

韓厥・趙括・鞏朔・韓穿・荀騅・趙旃、皆爲卿。賞鞌之功也。韓厥爲新中軍。趙括佐之。鞏朔爲新上軍。韓穿佐之。荀騅爲新下軍。趙旃佐之。晉舊自有三軍、今增此。故爲六軍。○騅、音隹。
【読み】
韓厥・趙括・鞏朔・韓穿・荀騅・趙旃、皆卿と爲す。鞌の功を賞するなり。韓厥新中軍と爲る。趙括之に佐たり。鞏朔新上軍と爲る。韓穿之に佐たり。荀騅新下軍と爲る。趙旃之に佐たり。晉舊自ら三軍有り、今此を增す。故に六軍とす。○騅は、音隹。

齊侯朝于晉。將授玉。行朝禮。
【読み】
齊侯晉に朝す。將に玉を授けんとす。朝禮を行う。

郤克趨進曰、此行也、君爲婦人之笑辱也。寡君未之敢任。言齊侯之來、以謝婦人之笑。非爲脩好。故云晉君不任當此惠。○任、音壬。
【読み】
郤克趨り進みて曰く、此の行や、君婦人の笑いの爲に辱くするなり。寡君未だ之に敢えて任[た]えず、と。言うこころは、齊侯の來るは、以て婦人の笑いを謝するなり。好を脩むる爲に非ず。故に晉君此の惠みに任當せずと云う。○任は、音壬。

晉侯享齊侯。齊侯視韓厥。韓厥曰、君知厥也乎。齊侯曰、服改矣。戎朝、異服也。言服改、明識其人。
【読み】
晉侯齊侯を享す。齊侯韓厥を視る。韓厥曰く、君厥を知れりや、と。齊侯曰く、服改まれり、と。戎朝は、服を異にす。服改まると言うは、其の人を識るを明かす。

韓厥登、舉爵曰、臣之不敢愛死、爲兩君之在此堂也。
【読み】
韓厥登り、爵を舉げて曰く、臣の敢えて死を愛まざりしは、兩君の此の堂に在らんが爲なり、と。

荀罃之在楚也、鄭賈人有將寘諸褚中以出。旣謀之、未行、而楚人歸之。賈人如晉。荀罃善視之、如實出己。賈人曰、吾無其功、敢有其實乎。吾小人。不可以厚誣君子。遂適齊。傳言知罃之賢。○賈、音古。褚、中呂反。
【読み】
荀罃の楚に在りしや、鄭の賈人將に諸を褚中に寘きて以て出ださんとする有り。旣に之を謀り、未だ行わずして、楚人之を歸す。賈人晉に如く。荀罃善く之を視る、實に己を出だせるが如し。賈人曰く、吾れ其の功無くして、敢えて其の實を有たんや。吾は小人なり。以て厚く君子を誣う可からず、と。遂に齊に適く。傳知罃の賢を言う。○賈は、音古。褚は、中呂反。


〔經〕四年、春、宋公使華元來聘。三月、壬申、鄭伯堅卒。無傳。二年、大夫盟于蜀。壬申、二月二十八日。
【読み】
〔經〕四年、春、宋公華元をして來聘せしむ。三月、壬申[みずのえ・さる]、鄭伯堅卒す。傳無し。二年、大夫蜀に盟う。壬申は、二月二十八日。

杞伯來朝。夏、四月、甲寅、臧孫許卒。無傳。
【読み】
杞伯來朝す。夏、四月、甲寅[きのえ・とら]、臧孫許卒す。傳無し。

公如晉。葬鄭襄公。無傳。
【読み】
公晉に如く。鄭の襄公を葬る。傳無し。

秋、公至自晉。冬、城鄆。無傳。公欲叛晉。故城而爲備。○鄆、音運。
【読み】
秋、公晉より至る。冬、鄆[うん]に城く。傳無し。公晉に叛かんと欲す。故に城きて備えを爲す。○鄆は、音運。

鄭伯伐許。
【読み】
鄭伯許を伐つ。

〔傳〕四年、春、宋華元來聘、通嗣君也。宋共公卽位。
【読み】
〔傳〕四年、春、宋の華元來聘するは、嗣君を通ずるなり。宋の共公位に卽く。

杞伯來朝、歸叔姬故也。將出叔姬、先脩禮朝魯、言其故。
【読み】
杞伯來朝するは、叔姬を歸す故なり。將に叔姬を出ださんとして、先ず禮を脩め魯に朝し、其の故を言う。

夏、公如晉。晉侯見公。不敬。季文子曰、晉侯必不免。言將不能壽終也。後十年、陷厠而死。
【読み】
夏、公晉に如く。晉侯公を見る。不敬なり。季文子曰く、晉侯必ず免れじ。言うこころは、將に壽終すること能わざらん。後十年、厠に陷りて死す。

詩曰、敬之敬之。天惟顯思。命不易哉。詩、頌。言天道顯明。受其命甚難。不可不敬以奉之。○易、以豉反。
【読み】
詩に曰く、之を敬せよ之を敬せよ。天惟れ顯らかなり。命易からざるかな、と。詩は、頌。天道顯明なり。其の命を受くること甚だ難し。敬して以て之を奉ぜずんばある可からざるを言う。○易は、以豉反。

夫晉侯之命、在諸侯矣。可不敬乎。敬諸侯、則得天命。
【読み】
夫れ晉侯の命は、諸侯に在り。敬せざる可けんや、と。諸侯を敬すれば、則ち天命を得。

秋、公至自晉。欲求成于楚而叛晉。季文子曰、不可。晉雖無道、未可叛也。國大臣睦、而邇於我。邇、近也。
【読み】
秋、公晉より至る。成[たい]らぎを楚に求めて晉に叛かんと欲す。季文子曰く、不可なり。晉無道なりと雖も、未だ叛く可からざるなり。國大に臣睦まじくして、我に邇し。邇は、近きなり。

諸侯聽焉。未可以貳。聽、服也。
【読み】
諸侯聽く。未だ以て貳す可からず。聽は、服すなり。

史佚之志有之、周文王大史。
【読み】
史佚の志に之れ有り、周の文王の大史。

曰、非我族類、其心必異。楚雖大、非吾族也。與魯異姓。
【読み】
曰く、我が族類に非ざれば、其の心必ず異なり、と。楚大なりと雖も、吾が族に非ず。魯と姓を異にす。

其肯字我乎。公乃止。字、愛也。
【読み】
其れ肯えて我を字[いつく]しまんや、と。公乃ち止む。字は、愛しむなり。

冬、十一月、鄭公孫申帥師疆許田。前年、鄭伐許、侵其田。今正其界。
【読み】
冬、十一月、鄭の公孫申師を帥いて許の田を疆[さか]う。前年、鄭許を伐ちて、其の田を侵す。今其の界を正す。

許人敗諸展陂。鄭伯伐許、取鉏任・泠敦之田。展陂、亦許地。○任、音壬。泠、力丁反。
【読み】
許人諸を展陂に敗る。鄭伯許を伐ち、鉏任[しょじん]・泠敦[れいとん]の田を取る。展陂も、亦許の地。○任は、音壬。泠は、力丁反。

晉欒書將中軍、代郤克。
【読み】
晉の欒書中軍に將となり、郤克に代わる。

荀首佐之、士燮佐上軍、以救許、伐鄭、取・祭。・祭、鄭地。成皐縣東有汜水。、音凡、或音祀。祭、側介反。
【読み】
荀首之に佐となり、士燮[ししょう]上軍に佐となりて、以て許を救い、鄭を伐ち、[し]・祭を取る。・祭は、鄭の地。成皐縣の東に汜水有り。○は、音凡、或は音祀。祭は、側介反。
*「氾」は「音凡」であれば「氾」だが、「音祀」であれば「汜」の誤り。頭注に「鄭有東西氾、而此非彼二氾。蓋成皐縣東汜水。晉取之知之。」とある。

楚子反救鄭。鄭伯與許男訟焉。於子反前爭曲直。
【読み】
楚の子反鄭を救う。鄭伯と許男と訟う。子反の前に於て曲直を爭う。

皇戌攝鄭伯之辭。代之對。
【読み】
皇戌鄭伯の辭を攝す。之に代わりて對う。

子反不能決也。曰、君若辱在寡君、寡君與其二三臣、共聽兩君之所欲、成其可知也。欲使自屈於楚子前決之。
【読み】
子反決すること能わず。曰く、君若し辱く寡君に在りて、寡君と其の二三臣と、共に兩君の欲する所を聽かば、成らぎ其れ知る可し。自ら楚子の前に屈せしめて之を決せんと欲す。

不然、側不足以知二國之成。側、子反名。爲明年、許愬鄭於楚張本。
【読み】
然らずんば、側以て二國の成らぎを知るに足らず、と。側は、子反の名。明年、許鄭を楚に愬[うった]うる爲の張本なり。

晉趙嬰通于趙莊姬。趙嬰、趙盾弟。莊姬、趙朔妻。朔、盾之子。
【読み】
晉の趙嬰趙莊姬に通ず。趙嬰は、趙盾の弟。莊姬は、趙朔の妻。朔は、盾の子。


〔經〕五年、春、王正月、杞叔姬來歸。出也。傳在前年。
【読み】
〔經〕五年、春、王の正月、杞の叔姬來歸す。出ださるなり。傳前年に在り。

仲孫蔑如宋。夏、叔孫僑如會晉荀首于穀。穀、齊地。
【読み】
仲孫蔑宋に如く。夏、叔孫僑如晉の荀首に穀に會す。穀は、齊の地。

梁山崩。記異也。梁山、在馮翊夏陽縣北。
【読み】
梁山崩る。異を記すなり。梁山は、馮翊夏陽縣の北に在り。

秋、大水。無傳。
【読み】
秋、大水あり。傳無し。

冬、十有一月、己酉、天王崩。十有二月、己丑、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾子・杞伯、同盟于蟲牢。蟲牢、鄭地。陳留封丘縣北有桐牢。
【読み】
冬、十有一月、己酉[つちのと・とり]、天王崩ず。十有二月、己丑[つちのと・うし]、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾子[ちゅし]・杞伯に會して、蟲牢に同盟す。蟲牢は、鄭の地。陳留封丘縣の北に桐牢有り。

〔傳〕五年、春、原・屛放諸齊。放趙嬰也。原同・屛季、嬰之兄。○屛、步丁反。
【読み】
〔傳〕五年、春、原・屛諸を齊に放つ。趙嬰を放つなり。原同・屛季は、嬰の兄。○屛は、步丁反。

嬰曰、我在。故欒氏不作。我亡、吾二昆其憂哉。且人各有能有不能。言己雖淫、而能令莊姬護趙氏。
【読み】
嬰曰く、我れ在り。故に欒氏作らず。我れ亡びば、吾が二昆其れ憂えんかな。且つ人各々能有り不能有り。言うこころは、己淫なりと雖も、而れども能く莊姬をして趙氏を護らせしむ。

舍我何害。弗聽。
【読み】
我を舍[お]くも何の害あらん、と。聽かず。

嬰夢天使謂己。祭余。余福女。使問諸士貞伯。貞伯曰、不識也。旣而告其人、自告貞伯從人。○舍、音捨。又音赦。聽、吐丁反。女、音汝。從、才用反。
【読み】
嬰夢みらく、天己に謂わしむ。余を祭れ。余女に福せん、と。諸を士貞伯に問わしむ。貞伯曰く、識らず、と。旣にして其の人に告げて、自ら貞伯の從人に告ぐ。○舍は、音捨。又音赦。聽は、吐丁反。女は、音汝。從は、才用反。

曰、神福仁而禍淫。淫而無罰、福也。祭其得亡乎。以得放遣爲福。
【読み】
曰く、神は仁に福して淫に禍す。淫にして罰無きは、福なり。祭らば其れ亡[に]ぐることを得んか、と。放遣を得るを以て福と爲す。

祭之之明日而亡。爲八年、晉殺趙同・趙括傳。
【読み】
之を祭るの明日にして亡げたり。八年、晉趙同・趙括を殺す爲の傳なり。

孟獻子如宋、報華元也。前年、宋華元來聘。
【読み】
孟獻子宋に如くは、華元に報ゆるなり。前年、宋の華元來聘す。

夏、晉荀首如齊逆女。故宣伯餫諸穀。野饋曰餫。運糧饋之、敬大國也。○餫、音鄆。
【読み】
夏、晉の荀首齊に如きて女を逆[むか]う。故に宣伯諸に穀に餫[おく]る。野饋を餫[うん]と曰う。糧を運びて之を饋[おく]るは、大國を敬するなり。○餫は、音鄆[うん]。

梁山崩。晉侯以傳召伯宗。傳、驛。○傳、直戀反。
【読み】
梁山崩る。晉侯傳を以て伯宗を召す。傳は、驛。○傳は、直戀反。

伯宗辟重曰、辟傳。重載之車。○辟、匹亦反。又甫赤反。曰辟、音避。
【読み】
伯宗重を辟かしめて曰く、傳を辟けよ、と。重載の車。○辟は、匹亦反。又甫赤反。曰辟は、音避。

重人曰、待我、不如捷之速也。捷、邪也。
【読み】
重人曰く、我を待たんより、捷するの速やかなるには如かじ、と。捷は、邪[ななめ]なり。

問其所。曰、絳人也。問絳事焉。曰、梁山崩。將召伯宗謀之。問將若之何。曰、山有朽壤而崩。可若何。國主山川。主謂所主祭。
【読み】
其の所を問う。曰く、絳人なり。絳の事を問う。曰く、梁山崩る。將に伯宗を召して之を謀らんとす、と。問う、將に之を若何にせんとする、と。曰く、山に朽壤有りて崩る。若何にす可けん。國は山川を主る。主は主り祭る所を謂う。

故山崩川竭、君爲之不舉、去盛饌。○爲、于僞反。饌、志戀反。
【読み】
故に山崩れ川竭くれば、君之が爲に舉せず、盛饌を去る。○爲は、于僞反。饌は、志戀反。

降服、損盛服。
【読み】
服を降し、盛服を損す。

乘縵、車無文。○縵、武旦反。
【読み】
縵に乘り、車文無し。○縵は、武旦反。

徹樂、息八音。
【読み】
樂を徹し、八音を息む。

出次、舍於郊。
【読み】
出でて次[やど]り、郊に舍る。

祝幣、陳玉帛。
【読み】
祝幣し、玉帛を陳ぬ。

史辭、自罪責。
【読み】
史辭し、自ら罪責す。

以禮焉。禮山川。
【読み】
以て禮す。山川を禮す。

其如此而已。雖伯宗若之何。伯宗請見之。見之於晉君。○見、賢遍反。
【読み】
其れ此の如きのみ。伯宗と雖も之を若何にせん、と。伯宗之を見えんと請う。之を晉君に見えしむ。○見は、賢遍反。

不可。不肯見。
【読み】
可[き]かず。見ゆることを肯わず。

遂以告而從之。從重人言。
【読み】
遂に以て告げて之に從う。重人の言に從う。

許靈公愬鄭伯于楚。前此年、鄭伐許故。
【読み】
許の靈公鄭伯を楚に愬[うった]う。此より前の年、鄭許を伐つ故なり。

六月、鄭悼公如楚訟。不勝。楚人執皇戌及子國。以鄭伯不直故也。子國、鄭穆公子。
【読み】
六月、鄭の悼公楚に如きて訟う。勝たず。楚人皇戌と子國とを執う。鄭伯の不直を以ての故なり。子國は、鄭の穆公の子。

故鄭伯歸、使公子偃請成于晉。秋、八月、鄭伯及晉趙同盟于垂棘。垂棘、晉地。
【読み】
故に鄭伯歸りて、公子偃をして成らぎを晉に請わしむ。秋、八月、鄭伯晉の趙同と垂棘に盟う。垂棘は、晉の地。

宋公子圍龜爲質于楚而歸。圍龜、文公子。○質、音致。
【読み】
宋の公子圍龜楚に質と爲りて歸る。圍龜は、文公の子。○質は、音致。

華元享之。請鼓譟以出、鼓譟以復入。出入輒擊鼓。○復、扶又反。
【読み】
華元之を享す。鼓譟して以て出で、鼓譟して以て復入らんと請う。出入に輒ち鼓を擊つ。○復は、扶又反。

曰、習攻華氏。宋公殺之。蓋宣十五年、宋・楚平後、華元使圍龜代己爲質。故怨而欲攻華氏。
【読み】
曰く、華氏を攻むるを習わん、と。宋公之を殺す。蓋し宣十五年、宋・楚平らぐの後、華元圍龜をして己に代わりて質爲らしむ。故に怨みて華氏を攻めんと欲す。

冬、同盟于蟲牢、鄭服也。
【読み】
冬、蟲牢に同盟するは、鄭服すればなり。

諸侯謀復會。宋公使向爲人辭以子靈之難。子靈、圍龜也。宋公不欲會。以新誅子靈爲辭。爲明年、侵宋傳。○向、舒亮反。
【読み】
諸侯復會せんことを謀る。宋公向爲人[しょういじん]をして辭するに子靈の難を以てせしむ。子靈は、圍龜なり。宋公會することを欲せず。新たに子靈を誅するを以て辭と爲す。明年、宋を侵す爲の傳なり。○向は、舒亮反。

十一月、己酉、定王崩。經在蟲牢上、傳在下、月倒錯。衆家傳、悉無此八字。或衍文。
【読み】
十一月、己酉、定王崩ず。經には蟲牢の上に在り、傳には下に在りて、月倒錯す。衆家の傳、悉く此の八字無し。或は衍文ならん。


〔經〕六年、春、王正月、公至自會。無傳。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、公會より至る。傳無し。

二月、辛巳、立武宮。魯人自鞌之功至今無患。故築武軍、又作先君武公宮、以告成事、欲以示後世。
【読み】
二月、辛巳[かのと・み]、武宮を立つ。魯人鞌の功より今に至るまで患え無し。故に武軍を築き、又先君武公の宮を作りて、以て成事を告げ、以て後世に示さんと欲す。

取鄟。附庸國也。○鄟、音專。又市臠反。
【読み】
鄟[せん]を取る。附庸の國なり。○鄟は、音專。又市臠反。

衛孫良夫帥師侵宋。夏、六月、邾子來朝。無傳。
【読み】
衛の孫良夫師を帥いて宋を侵す。夏、六月、邾子[ちゅし]來朝す。傳無し。

公孫嬰齊如晉。嬰齊、叔肸子。
【読み】
公孫嬰齊晉に如く。嬰齊は、叔肸[しゅくきつ]の子。

壬申、鄭伯費卒。前年、同盟蟲牢。○費、音祕。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、鄭伯費卒す。前年、蟲牢に同盟す。○費は、音祕。

秋、仲孫蔑・叔孫僑如帥師侵宋。楚公子嬰齊帥師伐鄭。冬、季孫行父如晉。晉欒書帥師救鄭。
【読み】
秋、仲孫蔑・叔孫僑如師を帥いて宋を侵す。楚の公子嬰齊師を帥いて鄭を伐つ。冬、季孫行父晉に如く。晉の欒書師を帥いて鄭を救う。

〔傳〕六年、春、鄭伯如晉拜成。謝前年再盟。
【読み】
〔傳〕六年、春、鄭伯晉に如きて成[たい]らぎを拜す。前年に再び盟うを謝す。

子游相。子游、公子偃。
【読み】
子游相[たす]く。子游は、公子偃。

授玉于東楹之東。禮、授玉兩楹之閒。鄭伯行疾。故東過。
【読み】
玉を東楹[えい]の東に授く。禮に、玉を兩楹の閒に授く、と。鄭伯行くこと疾し。故に東に過ぐ。

士貞伯曰、鄭伯其死乎。自棄也已。視流而行速。不安其位。宜不能久。視流、不端諦。
【読み】
士貞伯曰く、鄭伯其れ死せんか。自ら棄つるのみ。視ること流れて行くこと速やかなり。其の位に安んぜず。宜しく久しきこと能わざるべし、と。視ること流るとは、端諦せざるなり。

二月、季文子以鞌之功立武宮。非禮也。宣十二年、潘黨勸楚子立武軍。楚子答以武有七德、非己所堪、其爲先君宮、告成事而已。今魯倚晉之功、又非霸主而立武宮。故譏之。
【読み】
二月、季文子鞌の功を以て武宮を立つ。禮に非ざるなり。宣十二年、潘黨楚子に武軍を立てんことを勸む。楚子答うるに武に七德有り、己が堪うる所に非ず、其れ先君の宮を爲り、成事を告げんのみを以てす。今魯は晉の功に倚り、又霸主に非ずして武宮を立つ。故に之を譏る。

聽於人以救其難、不可以立武。立武由己。非由人也。言請人救難、勝非己功。○難、乃旦反。
【読み】
人に聽きて以て其の難を救うは、以て武を立つ可からず。武を立つるは己に由る。人に由るに非ざるなり。人に請いて難を救うは、勝己が功に非ざるを言う。○難は、乃旦反。

取鄟、言易也。
【読み】
鄟を取るとは、易きを言うなり。

三月、晉伯宗・夏陽說・衛孫良夫・甯相・鄭人・伊雒之戎・陸渾蠻氏侵宋。夏陽說、晉大夫。蠻氏、戎別種也。河南新城縣東南有蠻城。經唯書衛孫良夫、獨衛告也。○說、音悅。渾、戶門反。
【読み】
三月、晉の伯宗・夏陽說・衛の孫良夫・甯相・鄭人・伊雒の戎・陸渾の蠻氏宋を侵す。夏陽說は、晉の大夫。蠻氏は、戎の別種なり。河南新城縣の東南に蠻城有り。經に唯衛の孫良夫のみを書すは、獨り衛のみ告ぐればなり。○說は、音悅。渾は、戶門反。

以其辭會也。辭會、在前年。
【読み】
其の會を辭するを以てなり。會を辭するは、前年に在り。

師于鍼。衛人不保。不守備。○鍼、其廉反。一音針。
【読み】
鍼[けん]に師す。衛人保せず。守備せず。○鍼は、其廉反。一に音針。

說欲襲衛。曰、雖不可入、多俘而歸。有罪不及死。伯宗曰、不可。衛唯信晉。故師在其郊而不設備。若襲之、是棄信也。雖多衛俘、而晉無信、何以求諸侯。乃止。師還。衛人登陴。聞說謀故。○陴、音皮。
【読み】
說衛を襲わんと欲す。曰く、入る可からずと雖も、俘多くして歸らん。罪有るも死に及ばじ、と。伯宗曰く、不可なり。衛は唯晉を信ず。故に師其の郊に在りて備えを設けず。若し之を襲わば、是れ信を棄つるなり。衛の俘多しと雖も、晉に信無くば、何を以て諸侯を求めん、と。乃ち止む。師還る。衛人陴に登りぬ。說の謀を聞く故なり。○陴は、音皮。

晉人謀去故絳。晉復命新田爲絳。故謂此故絳。
【読み】
晉人故絳を去らんことを謀る。晉復新田を命[な]づけて絳とす。故に此を故絳と謂う。

諸大夫皆曰、必居郇瑕氏之地。郇瑕、古國名。河東解縣西北有郇城。○郇、音荀。解、音蟹。
【読み】
諸大夫皆曰く、必ず郇瑕氏[じゅんかし]の地に居れ。郇瑕は、古の國の名。河東解縣の西北に郇城有り。○郇は、音荀。解は、音蟹。

沃饒而近盬。盬、鹽也。猗氏縣鹽池是也。○盬、音古。猗、於宜反。
【読み】
沃饒にして盬[こ]に近し。盬は、鹽なり。猗氏縣の鹽池是れなり。○盬は、音古。猗は、於宜反。

國利君樂。不可失也。韓獻子將新中軍、且爲僕大夫。兼大僕。○樂、音洛。
【読み】
國利あり、君樂しむ。失う可からざるなり、と。韓獻子新中軍に將として、且僕大夫爲り。大僕を兼ぬ。○樂は、音洛。

公揖而入。獻子從公立於寢庭。路寢之庭。
【読み】
公揖[ゆう]して入る。獻子公に從いて寢庭に立つ。路寢の庭。

謂獻子曰、何如。問諸大夫言是非。
【読み】
獻子に謂いて曰く、何如、と。諸大夫の言の是非を問う。

對曰、不可。郇瑕氏、土薄水淺。土薄、地下。
【読み】
對えて曰く、不可なり。郇瑕氏は、土薄くして水淺し。土薄しとは、地下きなり。

其惡易覯。惡、疾疢。覯、成也。○易、以豉反。覯、古豆反。疢、勑覲反。
【読み】
其の惡覯[な]り易し。惡は、疾疢[しっちん]。覯[こう]は、成るなり。○易は、以豉反。覯は、古豆反。疢は、勑覲反。

易覯則民愁。民愁則墊隘。墊隘、羸困也。○墊、丁念反。隘、於賣反。羸、劣僞反。
【読み】
覯り易きときは則ち民愁う。民愁うるときは則ち墊隘[てんあい]す。墊隘は、羸困[るいこん]なり。○墊は、丁念反。隘は、於賣反。羸は、劣僞反。

於是乎有沈溺重膇之疾。沈溺、濕疾。重膇、足腫。○膇、治僞反。
【読み】
是に於て沈溺重膇[ちょうつい]の疾有り。沈溺は、濕疾。重膇は、足腫。○膇は、治僞反。

不如新田。今平陽絳邑縣是。
【読み】
新田に如かず。今の平陽絳邑縣是れなり。

土厚水深、居之不疾。高燥故。
【読み】
土厚く水深くして、之に居て疾まず。高燥の故なり。

有汾・澮以流其惡、汾水、出大原經絳北、西南入河。澮水、出平陽絳縣南、西入汾。惡、垢穢。○汾、扶云反。澮、古外反。
【読み】
汾・澮有りて以て其の惡を流し、汾水は、大原に出でて絳の北を經、西南して河に入る。澮水は、平陽絳縣の南に出でて、西して汾に入る。惡は、垢穢。○汾は、扶云反。澮は、古外反。

且民從敎。無災患。
【読み】
且民敎えに從う。災患無し。

十世之利也。夫山澤林盬、國之寶也。國饒、則民驕佚。財易致則民驕侈。
【読み】
十世の利なり。夫れ山澤林盬は、國の寶なり。國饒[ゆた]かなれば、則ち民驕佚す。財致に易きときは則ち民驕侈す。

近寶、公室乃貧。不可謂樂。近寶則民務本。
【読み】
寶に近づけば、公室乃ち貧し。樂しと謂う可からず、と。寶に近づくときは則ち民本を務めず。

公說、從之。
【読み】
公說び、之に從う。

夏、四月、丁丑、晉遷于新田。爲季孫如晉傳。
【読み】
夏、四月、丁丑[ひのと・うし]、晉新田に遷る。季孫晉に如く爲の傳なり。

六月、鄭悼公卒。終士貞伯言。
【読み】
六月、鄭の悼公卒す。士貞伯の言を終える。

子叔聲伯如晉。命伐宋。晉人命聲伯。
【読み】
子叔聲伯晉に如く。命じて宋を伐たしむ。晉人聲伯に命ず。

秋、孟獻子・叔孫宣伯侵宋、晉命也。
【読み】
秋、孟獻子・叔孫宣伯宋を侵すは、晉の命なり。

楚子重伐鄭、鄭從晉故也。前年、從晉盟。
【読み】
楚の子重鄭を伐つは、鄭晉に從う故なり。前年、晉に從うを盟う。

冬、季文子如晉、賀遷也。
【読み】
冬、季文子晉に如くは、遷るを賀するなり。

晉欒書救鄭、與楚師遇於繞角。繞角、鄭地。
【読み】
晉の欒書鄭を救い、楚の師と繞角[じょうかく]に遇う。繞角は、鄭の地。

楚師還。晉師遂侵蔡。楚公子申・公子成以申・息之師救蔡、申・息、楚二縣。
【読み】
楚の師還る。晉の師遂に蔡を侵す。楚の公子申・公子成申・息の師を以[い]て蔡を救い、申・息は、楚の二縣。

禦諸桑隧。汝南朗陵縣東有桑里、在上蔡西南。
【読み】
諸を桑隧に禦ぐ。汝南朗陵縣の東に桑里有り、上蔡の西南に在り。

趙同・趙括欲戰、請於武子。武子將許之。武子、欒書。
【読み】
趙同・趙括戰わんと欲し、武子に請う。武子將に之を許さんとす。武子は、欒書。

知莊子、荀首、中軍佐。
【読み】
知莊子、荀首は、中軍の佐。

范文子、士燮、上軍佐。
【読み】
范文子、士燮[ししょう]は、上軍の佐。

韓獻子、韓厥、新中軍將。
【読み】
韓獻子、韓厥は、新中軍の將。

諫曰、不可。吾來救鄭。楚師去我、吾遂至於此、此、蔡地。
【読み】
諫めて曰く、不可なり。吾が來るは鄭を救うなり。楚の師我を去り、吾れ遂に此に至りしは、此は、蔡の地。

是遷戮也。戮而不已、又怒楚師、戰必不克。遷戮不義。怒敵難當。故不克。
【読み】
是れ戮を遷すなり。戮して已まず、又楚の師を怒らさば、戰わば必ず克たざらん。戮を遷すは不義なり。敵を怒らすは當たり難し。故に克たず。

雖克不令。成師以出、而敗楚之二縣、何榮之有焉。六軍悉出。故曰成師。以大勝小。不足爲榮。
【読み】
克つと雖も令[よ]からず。師を成して以て出でて、楚の二縣を敗るとも、何の榮か之れ有らん。六軍悉く出づ。故に成師と曰う。大を以て小に勝つ。榮とするに足らず。

若不能敗、爲辱已甚。不如還也。乃遂還。
【読み】
若し敗ること能わざれば、辱爲ること已甚だし。還るに如かず、と。乃ち遂に還る。

於是軍師之欲戰者衆。或謂欒武子曰、聖人與衆同欲。是以濟事。子盍從衆。盍、何不也。○帥、所類反。
【読み】
是に於て軍師の戰わんと欲する者衆し。或ひと欒武子に謂いて曰く、聖人は衆と欲を同じくす。是を以て事を濟[な]す。子盍ぞ衆に從わざる。盍は、何ぞせざるなり。○帥は、所類反。

子爲大政、中軍元帥。
【読み】
子は大政を爲して、中軍の元帥。

將酌於民者也。酌取民心以爲政。
【読み】
將に民に酌まんとする者なり。民心を酌み取りて以て政を爲す。

子之佐十一人、六軍之卿佐。
【読み】
子の佐十一人、六軍の卿佐。

其不欲戰者、三人而已。知・范・韓也。
【読み】
其の戰を欲せざる者は、三人のみ。知・范・韓なり。

欲戰者可謂衆矣。商書曰、三人占、從二人、衆故也。商書、洪範。
【読み】
戰を欲する者衆しと謂う可し。商書に曰く、三人占えば、二人に從うとは、衆の故なり、と。商書は、洪範。

武子曰、善鈞從衆。鈞、等也。
【読み】
武子曰く、善鈞[ひと]しければ衆に從う。鈞は、等しきなり。

夫善、衆之主也。三卿爲主。可謂衆矣。三卿、皆晉之賢人。
【読み】
夫れ善は、衆の主なり。三卿を主と爲す。衆と謂う可し。三卿は、皆晉の賢人。

從之、不亦可乎。傳善欒書得從衆之義。且爲八年、晉侵蔡傳。
【読み】
之に從わば、亦可ならずや、と。傳欒書が衆に從うの義を得ることを善す。且八年、晉蔡を侵す爲の傳なり。


〔經〕七年、春、王正月、鼷鼠食郊牛角。改卜牛。鼷鼠又食其角。乃免牛。無傳。稱牛、未卜日。免、放也。免牛可也。不郊、非禮也。○鼷、音兮。
【読み】
〔經〕七年、春、王の正月、鼷鼠[けいそ]郊牛の角を食む。改めて牛を卜す。鼷鼠又其の角を食む。乃ち牛を免[はな]つ。傳無し。牛と稱するは、未だ日を卜せざるなり。免は、放つなり。牛を免つは可なり。郊せざるは、禮に非ざるなり。○鼷は、音兮。

吳伐郯。○郯、音談。
【読み】
吳郯[たん]を伐つ。○郯は、音談。

夏、五月、曹伯來朝。不郊。猶三望。無傳。書不郊、閒有事。三望、非禮。
【読み】
夏、五月、曹伯來朝す。郊せず。猶三望す。傳無し。郊せざるを書すは、閒に事有ればなり。三望は、禮に非ず。

秋、楚公子嬰齊帥師伐鄭。公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子・杞伯救鄭。八月、戊辰、同盟于馬陵。馬陵、衛地。陽平元城縣東南有地、名馬陵。
【読み】
秋、楚の公子嬰齊師を帥いて鄭を伐つ。公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・杞伯に會して鄭を救う。八月、戊辰[つちのえ・たつ]、馬陵に同盟す。馬陵は、衛の地。陽平元城縣の東南に地有り、馬陵と名づく。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

吳入州來。州來、楚邑。淮南下蔡縣是也。
【読み】
吳州來に入る。州來は、楚の邑。淮南下蔡縣是れなり。

冬、大雩。無傳。書過。
【読み】
冬、大いに雩[う]す。傳無し。過ぐるを書すなり。

衛孫林父出奔晉。
【読み】
衛の孫林父出でて晉に奔る。

〔傳〕七年、春、吳伐郯。郯成。
【読み】
〔傳〕七年、春、吳郯を伐つ。郯成[たい]らぐ。

季文子曰、中國不振旅、蠻夷入伐、而莫之或恤。振、整也。旅、衆也。
【読み】
季文子曰く、中國振旅せずして、蠻夷入り伐ちて、之を恤[あわ]れむこと或ること莫し。振は、整うなり。旅は、衆なり。

無弔者也夫。言中國不能相愍恤。故夷狄内侵。
【読み】
弔[あわ]れむ者無ければなるか。言うこころは、中國相愍恤すること能わず。故に夷狄内侵す。

詩曰、不弔昊天、亂靡有定、其此之謂乎。詩、小雅。刺在上者不能弔愍下民。故號天告亂。○昊、戶老反。號、戶刀反。
【読み】
詩曰く、弔れまず昊天、亂定むること有ること靡しとは、其れ此を之れ謂うか。詩は、小雅。上に在る者下民を弔愍すること能わず。故に天を號びて亂を告ぐるを刺[そし]る。○昊は、戶老反。號は、戶刀反。

有上不弔。其誰不受亂。上謂霸主。
【読み】
上有るも弔れまれず。其れ誰か亂を受けざらん。上は霸主を謂う。

吾亡無日矣。
【読み】
吾が亡びんこと日無けん、と。

君子曰、知懼如是、斯不亡矣。
【読み】
君子曰く、懼れを知ること是の如きは、斯れ亡びじ、と。

鄭子良相成公以如晉見、且拜師。謝前年、晉救鄭之師。爲楚伐鄭張本。○相、息亮反。見、賢遍反。
【読み】
鄭の子良成公を相けて以て晉に如きて見え、且つ師に拜す。前年、晉鄭を救うの師を謝す。楚鄭を伐つ爲の張本なり。○相は、息亮反。見は、賢遍反。

夏、曹宣公來朝。
【読み】
夏、曹の宣公來朝す。

秋、楚子重伐鄭、師于氾。氾、鄭地。在襄城縣南。○氾、音凡。
【読み】
秋、楚の子重鄭を伐ち、氾に師す。氾は、鄭の地。襄城縣の南に在り。○氾は、音凡。

諸侯救鄭。鄭共仲・侯羽軍楚師。二子、鄭大夫。
【読み】
諸侯鄭を救う。鄭の共仲・侯羽楚の師に軍す。二子は、鄭の大夫。

囚鄖公・鍾儀、獻諸晉。
【読み】
鄖公[うんこう]・鍾儀を囚え、諸を晉に獻ず。

八月、同盟于馬陵、尋蟲牢之盟、且莒服故也。蟲牢盟、在五年。莒本屬齊。齊服故莒從之。
【読み】
八月、馬陵に同盟するは、蟲牢の盟を尋[かさ]ね、且莒服する故なり。蟲牢の盟は、五年に在り。莒は本齊に屬す。齊服する故に莒之に從う。

晉人以鍾儀歸、囚諸軍府。軍藏府也。爲九年、晉侯見鍾儀張本。○藏、才浪反。
【読み】
晉人鍾儀を以[い]て歸り、諸を軍府に囚う。軍の藏府なり。九年、晉侯鍾儀を見る爲の張本なり。○藏は、才浪反。

楚圍宋之役、在宣十四年。
【読み】
楚宋を圍むの役に、宣十四年に在り。

師還。子重請取於申・呂、以爲賞田。王許之。分申・呂之田、以自賞。
【読み】
師還る。子重申・呂に取りて、以て賞田と爲さんと請う。王之を許す。申・呂の田を分けて、以て自ら賞す。

申公巫臣曰、不可。此申・呂所以邑也。是以爲賦、以御北方。若取之、是無申・呂也。言申・呂賴此田成邑耳。不得此田、則無以出兵賦、而二邑壞也。○御、魚呂反。
【読み】
申公巫臣曰く、不可なり。此れ申・呂の邑とする所以なり。是を以て賦を爲して、以て北方を御[ふせ]ぐ。若し之を取らば、是れ申・呂無きなり。言うこころは、申・呂此の田に賴りて邑を成すのみ。此の田を得ざれば、則ち以て兵賦を出だすこと無くして、二邑壞るるなり。○御は、魚呂反。

晉・鄭必至于漢。王乃止。子重是以怨巫臣。子反欲取夏姬、巫臣止之、遂取以行、子反亦怨之。及共王卽位、楚共王以魯成公元年卽位。
【読み】
晉・鄭必ず漢に至らん、と。王乃ち止む。子重是を以て巫臣を怨む。子反夏姬を取[めと]らんと欲して、巫臣之を止め、遂に取りて以て行[さ]りしかば、子反も亦之を怨む。共王の位に卽くに及びて、楚の共王は魯の成公元年を以て位に卽く。

子重・子反殺巫臣之族子閻・子蕩及淸尹弗忌、皆巫臣之族。
【読み】
子重・子反巫臣の族子閻・子蕩と淸尹弗忌と、皆巫臣の族。

及襄老之子黑要、以夏姬故、幷怨黑要。
【読み】
襄老の子黑要とを殺して、夏姬を以ての故に、幷せて黑要を怨む。

而分其室。子重取子閻之室、使沈尹與王子罷、分子蕩之室、子反取黑要與淸尹之室。巫臣自晉遺二子書、子重・子反。○罷、音皮。
【読み】
其の室を分かつ。子重子閻の室を取り、沈尹と王子罷とをして、子蕩の室を分かたしめ、子反黑要と淸尹との室を取る。巫臣晉より二子に書を遺りて、子重・子反なり。○罷は、音皮。

曰、爾以讒慝貪惏事君、而多殺不辜。余必使爾罷於奔命以死。
【読み】
曰く、爾讒慝貪惏[たんらん]を以て君に事えて、多く不辜を殺せり。余必ず爾をして奔命に罷[つか]れて以て死せしめん、と。

巫臣請使於吳。晉侯許之。吳子壽夢說之。乃通吳于晉。壽夢、季札父。○惏、力含反。夢、莫公反。
【読み】
巫臣吳に使いせんと請う。晉侯之を許す。吳子壽夢之を說ぶ。乃ち吳を晉に通ず。壽夢は、季札の父。○惏は、力含反。夢は、莫公反。

以兩之一卒適吳、舍偏兩之一焉、司馬法、百人爲卒、二十五人爲兩、車九乘爲小偏、十五乘爲大偏。蓋留九乘車及一兩二十五人、令吳習之。○舍、音赦。舊音捨。乘、繩證反。
【読み】
兩の一卒を以[い]て吳に適き、偏兩の一を舍き、司馬法に、百人を卒と爲し、二十五人を兩と爲し、車九乘を小偏と爲し、十五乘を大偏と爲す、と。蓋し九乘の車と一兩二十五人とを留めて、吳をして之を習わしむるならん。○舍は、音赦。舊音捨。乘は、繩證反。

與其射御、敎吳乘車、敎之戰陳、敎之叛楚。前是、吳常屬楚。○戰陳、直覲反。
【読み】
其れに射御を與え、吳に車に乘ることを敎え、之に戰陳を敎え、之に楚に叛くことを敎ゆ。是より前、吳常に楚に屬す。○戰陳は、直覲反。

寘其子狐庸焉、使爲行人於吳。吳始伐楚、伐巢、伐徐。巢・徐、楚屬國。
【読み】
其の子狐庸を寘いて、吳に行人爲らしむ。吳始めて楚を伐ち、巢を伐ち、徐を伐つ。巢・徐は、楚の屬國。

子重奔命。救徐・巢。
【読み】
子重奔命す。徐・巢を救う。

馬陵之會、吳入州來。子重自鄭奔命。因伐鄭而行。
【読み】
馬陵の會に、吳州來に入る。子重鄭より奔命す。鄭を伐つに因りて行く。

子重・子反於是乎一歲七奔命。蠻夷屬於楚者、吳盡取之。是以始大。
【読み】
子重・子反是に於て一歲に七たび奔命す。蠻夷の楚に屬する者、吳盡く之を取る。是を以て始めて大なり。

通吳於上國。上國、諸夏。
【読み】
吳を上國に通ぜり。上國は、諸夏。

衛定公惡孫林父。冬、孫林父出奔晉。林父、孫良夫之子。
【読み】
衛の定公孫林父を惡む。冬、孫林父出でて晉に奔る。林父は、孫良夫の子。

衛侯如晉。晉反戚焉。戚、林父邑。林父出奔、戚隨屬晉。
【読み】
衛の侯晉に如く。晉戚を反す。戚は、林父の邑。林父出奔して、戚隨いて晉に屬す。


〔經〕八年、春、晉侯使韓穿來言汶陽之田、歸之于齊。齊服事晉。故晉來語魯使還二年所取田。○語、魚據反。
【読み】
〔經〕八年、春、晉侯韓穿をして來りて汶陽の田を言いて、之を齊に歸さしむ。齊晉に服事す。故に晉來りて魯に語りて二年に取る所の田を還さしむ。○語は、魚據反。

晉欒書帥師侵蔡。公孫嬰齊如莒。宋公使華元來聘。夏、宋公使公孫壽來納幣。昏聘不使卿。今華元將命。故特書之。宋公無主昏者、自命之。故稱使也。公孫壽、蕩意諸之父。
【読み】
晉の欒書師を帥いて蔡を侵す。公孫嬰齊莒に如く。宋公華元をして來聘せしむ。夏、宋公公孫壽をして來りて幣を納れしむ。昏聘には卿を使わず。今華元命を將[おこな]う。故に特に之を書す。宋公昏を主れる者無く、自ら之を命ず。故に使むと稱す。公孫壽は、蕩意諸の父。

晉殺其大夫趙同・趙括。傳曰、原屛、咎之徒也。明本不以德義自居、宜其見討。故從告辭而稱名。
【読み】
晉其の大夫趙同・趙括を殺す。傳に曰く、原屛は、咎の徒なり、と。本德義を以て自ら居らざれば、宜しく其の討ぜらるべきを明かす。故に告辭に從いて名を稱す。

秋、七月、天子使召伯來賜公命。諸侯卽位、天子賜以命圭、與之合瑞。八年乃來、緩也。天子・天王、王者之通稱。○稱、尺證反。
【読み】
秋、七月、天子召伯をして來りて公に命を賜わしむ。諸侯位に卽けば、天子賜うに命圭を以てして、之と瑞を合す。八年にして乃ち來るは、緩[おく]るるなり。天子・天王は、王者の通稱。○稱は、尺證反。

冬、十月、癸卯、杞叔姬卒。前五年來歸者。女旣適人、雖見出弃、猶以成人禮書之。終爲杞伯所葬。故稱杞叔姬。
【読み】
冬、十月、癸卯[みずのと・う]、杞の叔姬卒す。前五年に來歸する者なり。女旣に人に適けば、出弃せらると雖も、猶成人の禮を以て之を書す。終に杞伯の爲に葬らる。故に杞の叔姬と稱す。

晉侯使士燮來聘。叔孫僑如會晉士燮・齊人・邾人伐郯。先謀而稱會、盟主之命、不同之於列國。
【読み】
晉侯士燮[ししょう]をして來聘せしむ。叔孫僑如晉の士燮・齊人・邾人[ちゅひと]に會して郯[たん]を伐つ。先ず謀りて會すと稱するは、盟主の命、之を列國と同じくせざるなり。

衛人來媵。古者諸侯取適夫人及左右媵。各有姪娣。皆同姓之國。國三人、凡九女。所以廣繼嗣也。魯將嫁伯姬於宋。故衛來媵之。○媵、以證反。適、丁歷反。姪、大結反。又丈一反。
【読み】
衛人來り媵[よう]す。古は諸侯適夫人と左右媵とを取る。各々姪娣有り。皆同姓の國。國ごとに三人、凡そ九女。繼嗣を廣むる所以なり。魯將に伯姬を宋に嫁せんとす。故に衛來りて之に媵す。○媵は、以證反。適は、丁歷反。姪は、大結反。又丈一反。

〔傳〕八年、春、晉侯使韓穿來言汶陽之田、歸之于齊。季文子餞之。餞、送行飮酒。○餞、錢淺反。祖而舍軷、飮酒於其側曰餞。
【読み】
〔傳〕八年、春、晉侯韓穿をして來りて汶陽の田を言いて、之を齊に歸さしむ。季文子之を餞す。餞は、行[さ]るを送りて酒を飮むなり。○餞は、錢淺反。祖して軷[はつ]を舍き、其の側に飮酒するを餞と曰う。

私焉、私與之言。
【読み】
私して、私に之と言う。

曰、大國制義、以爲盟主。是以諸侯懷德畏討、無有貳心。謂汶陽之田、敝邑之舊也、而用師於齊、使歸諸敝邑。用師、鞌之戰。
【読み】
曰く、大國義を制して、以て盟主と爲る。是を以て諸侯德に懷き討を畏れて、貳心有ること無し。汶陽の田を、敝邑の舊なりと謂いて、師を齊に用いて、諸を敝邑に歸さしめたり。師を用ゆるは、鞌の戰なり。

今有二命、曰歸諸齊。信以行義、義以成命、小國所望而懷也。信不可知、義無所立、四方諸侯其誰不解體。言不復肅敬於晉。
【読み】
今二命有りて、諸を齊に歸せと曰う。信以て義を行い、義以て命を成すは、小國の望みて懷く所なり。信知る可からず、義立つ所無くば、四方の諸侯其れ誰か解體せざらん。復晉を肅敬せざるを言う。

詩曰、女也不爽、士貳其行。士也罔極。二三其德。爽、差也。極、中也。詩、衛風。婦人怨丈夫不一其行。喩魯事晉、猶女之事夫、不敢過差。而晉有罔極之心、反二三其德。○差、初買反。又初佳反。
【読み】
詩に曰く、女は爽[たが]わず、士は其の行いを貳にす。士は極罔し。其の德を二三にす、と。爽は、差うなり。極は、中なり。詩は、衛風。婦人丈夫の其の行いを一にせざるを怨む。魯の晉に事うるは、猶女の夫に事うるがごとく、敢えて過差せず。而るに晉に罔極の心有り、反って其の德を二三にするを喩う。○差は、初買反。又初佳反。

七年之中、一與一奪、二三孰甚焉。士之二三、猶喪妃耦。而況霸主。霸主、將德是以。以、用也。
【読み】
七年の中、一たびは與え一たびは奪うは、二三孰れか焉より甚だしからん。士の二三も、猶妃耦を喪う。而るを況んや霸主をや。霸主は、將に德是れ以[もち]いんとす。以は、用ゆるなり。

而二三之、其何以長有諸侯乎。詩曰、猶之未遠、是用大簡。猶、圖也。簡、諫也。詩、大雅。言王者圖事不遠。故用大道諫之。
【読み】
而るに之を二三にせば、其れ何を以て長く諸侯を有たんや。詩に曰く、之を猶[はか]ること未だ遠からず、是に大を用いて簡[いさ]む、と。猶は、圖るなり。簡は、諫むなり。詩は、大雅。王者事を圖ること遠からず。故に大道を用いて之を諫むるを言う。

行父懼晉之不遠猶、而失諸侯也。是以敢私言之。
【読み】
行父晉の遠猶せずして、諸侯を失わんことを懼る。是を以て敢えて私に之を言う、と。

晉欒書侵蔡、六年、未得志故。
【読み】
晉の欒書蔡を侵し、六年、未だ志を得ざる故なり。

遂侵楚、獲申驪。申驪、楚大夫。○驪、力馳反。
【読み】
遂に楚を侵して、申驪を獲たり。申驪は、楚の大夫。○驪は、力馳反。

楚師之還也、謂六年、遇於繞角時。
【読み】
楚の師の還りしや、六年、繞角に遇う時を謂う。

晉侵沈、獲沈子揖。初從知・范・韓也。繞角之役、欒書從知莊子・范文子・韓獻子之言、不與楚戰。自是常從其謀、師出有功。故傳善之。沈國、今汝南平與縣。○揖、音集。又於立反。
【読み】
晉沈を侵して、沈子揖を獲たり。初めて知・范・韓に從えり。繞角の役に、欒書知莊子・范文子・韓獻子の言に從いて、楚と戰わず。是より常に其の謀に從い、師出でて功有り。故に傳之を善す。沈國は、今の汝南平與縣。○揖は、音集。又於立反。

君子曰、從善如流、宜哉。宜有功也。如流、喩速。
【読み】
君子曰く、善に從うこと流るるが如しとは、宜なるかな。宜なり功有ること。流るるが如きは、速やかなるに喩う。

詩曰、愷悌君子、遐不作人。遐、遠也。作、用也。詩、大雅。言文王能遠用善人。不、語助。
【読み】
詩に曰く、愷悌の君子、遐[とお]く人を作[もち]ゆ、と。遐は、遠きなり。作は、用ゆるなり。詩は、大雅。文王能く遠く善人を用ゆると言う。不は、語助。

求善也夫。作人、斯有功績矣。
【読み】
善を求むればなるかな。人を作ゆれば、斯に功績有り、と。

是行也、鄭伯將會晉師、會伐蔡之師。○夫、音扶。
【読み】
是の行や、鄭伯將に晉の師に會せんとし、蔡を伐つの師に會す。○夫は、音扶。

門于許東門、大獲焉。過許見其無備。因攻之。○過、古禾反。
【読み】
許の東門を門[せ]め、大いに獲たり。許を過ぎて其の備え無きを見る。因りて之を攻む。○過は、古禾反。

聲伯如莒、逆也。自爲逆婦。不書者、因聘而逆。○爲、于僞反。
【読み】
聲伯莒に如くは、逆[むか]うるなり。自ら爲に婦を逆う。書さざるは、聘に因りて逆うればなり。○爲は、于僞反。

宋華元來聘、聘共姬也。穆姜之女、成公姊妹、爲宋共公夫人。聘、不應使卿。故傳發其事而已。
【読み】
宋の華元來聘するは、共姬を聘するなり。穆姜の女、成公の姊妹、宋の共公の夫人と爲る。聘は、應に卿を使うべからず。故に傳其の事を發するのみ。

夏、宋公使公孫壽來納幣、禮也。納幣、應使卿。
【読み】
夏、宋公公孫壽をして來りて幣を納れしむるは、禮なり。納幣は、應に卿を使うべし。

晉趙莊姬爲趙嬰之亡故、譖之于晉侯、趙嬰亡、在五年。
【読み】
晉の趙莊姬趙嬰の亡[に]ぐる爲の故に、之を晉侯に譖りて、趙嬰の亡ぐるは、五年に在り。

曰、原・屛將爲亂。欒・郤爲徵。欒氏・郤氏亦徵其爲亂。
【読み】
曰く、原・屛將に亂を爲さんとす、と。欒・郤徵を爲す。欒氏・郤氏も亦其の亂を爲すを徵す。

六月、晉討趙同・趙括。武從姬氏畜于公宮。趙武、莊姬之子。莊姬、晉成公女。畜、養也。
【読み】
六月、晉趙同・趙括を討ず。武姬氏に從いて公宮に畜[やしな]わる。趙武は、莊姬の子。莊姬は、晉の成公の女。畜は、養うなり。

以其田與祁奚。韓厥言於晉侯曰、成季之勳、宣孟之忠、成季、趙衰。宣孟、趙盾。○祁、巨之反。盾、徒本反。
【読み】
其の田を以て祁奚に與う。韓厥晉侯に言いて曰く、成季の勳、宣孟の忠にして、成季は、趙衰。宣孟は、趙盾なり。○祁は、巨之反。盾は、徒本反。

而無後、爲善者其懼矣。三代之令王、皆數百年保天之祿。夫豈無辟王。賴前哲以免也。言三代亦有邪辟之君。但賴其先人以免禍耳。○數、所主反。辟、匹亦反。
【読み】
後無くば、善を爲す者其れ懼れん。三代の令王は、皆數百年天の祿を保てり。夫れ豈辟王無からんや。前哲に賴りて以て免れぬ。言うこころは、三代も亦邪辟の君有り。但其の先人に賴りて以て禍を免るるのみ。○數は、所主反。辟は、匹亦反。

周書曰、不敢侮鰥寡、所以明德也。周書、康誥。言文王不侮鰥寡、而德益明。欲使晉侯之法文王。
【読み】
周書に曰く、敢えて鰥寡を侮らずとは、德を明らかにする所以なり、と。周書は、康誥。文王鰥寡を侮らずして、德益々明らかなるを言う。晉侯をして文王に法らしめんことを欲す。

乃立武而反其田焉。
【読み】
乃ち武を立てて其の田を反す。

秋、召桓公來賜公命。召桓公、周卿士。
【読み】
秋、召桓公來りて公に命を賜う。召桓公は、周の卿士。

晉侯使申公巫臣如吳、假道于莒。與渠丘公立於池上。渠丘公、莒子朱也。池、城池也。梁丘、邑名。莒縣有蘧里。○蘧、其居反。
【読み】
晉侯申公巫臣をして吳に如かしめ、道を莒に假る。渠丘公と池上に立つ。渠丘公は、莒子朱なり。池は、城池なり。梁丘は、邑の名。莒縣に蘧里[きょり]有り。○蘧は、其居反。

曰、城已惡。莒子曰、辟陋在夷。其孰以我爲虞。虞、度也。○度、待洛反。
【読み】
曰く、城已[はなは]だ惡し、と。莒子曰く、辟陋にして夷に在り。其れ孰か我を以て虞[はか]ることをせん、と。虞は、度るなり。○度は、待洛反。

對曰、夫狡焉、狡猾之人。○狡、交卯反。猾、干八反。
【読み】
對えて曰く、夫の狡焉として、狡猾の人。○狡は、交卯反。猾は、干八反。

思啓封疆、以利社稷者、何國蔑有。唯然。故多大國矣。唯或思或縱也。世有思開封疆者、有縱其暴掠者。莒人當唯此爲命。○掠、音亮。
【読み】
封疆を啓きて、以て社稷を利せんと思う者、何れの國か有ること蔑[な]からん。唯然り。故に大國多し。唯或は思い或は縱にす。世々封疆を開かんと思う者有り、其の暴掠を縱にする者有り。莒人當に唯此を命と爲すべし。○掠は、音亮。

勇夫重閉。況國乎。爲明年、莒潰傳。○重、直龍反。又直勇反。
【読み】
勇夫も重閉す。況んや國をや、と。明年、莒潰ゆる爲の傳なり。○重は、直龍反。又直勇反。

冬、杞叔姬卒。來歸自杞。故書。愍其見出來歸。故書卒也。若更適大夫、則不復書卒。
【読み】
冬、杞の叔姬卒す。杞より來歸す。故に書す。其の出だされて來歸するを愍[あわ]れむ。故に卒を書すなり。若し更に大夫に適けば、則ち復卒を書さず。

晉士燮來聘、言伐郯也。以其事吳故。七年、郯與吳成。
【読み】
晉の士燮來聘するは、郯を伐たんことを言うなり。其の吳に事うるを以ての故なり。七年、郯と吳と成らぐ。

公賂之、請緩師。文子不可。文子、士燮。
【読み】
公之に賂いて、師を緩くせんことを請う。文子可[き]かず。文子は、士燮。

曰、君命無貳。失信不立。禮無加貨、事無二成。公私不兩成。
【読み】
曰く、君命は貳無し。信を失えば立たず。禮には加貨無く、事には二成無し。公私兩成せず

君後諸侯、是寡君不得事君也。欲與魯絕。
【読み】
君諸侯に後れば、是れ寡君君に事うるを得ざるなり。魯と絕たんと欲す。

燮將復之。季孫懼、使宣伯帥師會伐郯。
【読み】
燮將に之を復[もう]さんとす、と。季孫懼れ、宣伯をして師を帥いて郯を伐つに會せしむ。

衛人來媵共姬。禮也。
【読み】
衛人來りて共姬に媵す。禮なり。

凡諸侯嫁女、同姓媵之。異姓則否。必以同姓者、參骨肉至親、所以息陰訟。
【読み】
凡そ諸侯女を嫁すときは、同姓之に媵す。異姓は則ち否[しか]らず。必ず同姓を以てするは、骨肉の至親を參えて、陰訟を息むる所以なり。


〔經〕九年、春、王正月、杞伯來逆叔姬之喪以歸。公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・杞伯同盟于蒲。蒲、衛地。在長垣縣西南。
【読み】
〔經〕九年、春、王の正月、杞伯來りて叔姬の喪を逆[むか]えて以て歸る。公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・杞伯に會して蒲に同盟す。蒲は、衛の地。長垣縣の西南に在り。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

二月、伯姬歸于宋。宋不使卿逆、非禮。
【読み】
二月、伯姬宋に歸[とつ]ぐ。宋卿をして逆えしめざるは、禮に非ず。

夏、季孫行父如宋致女。女嫁三月、又使大夫隨加聘問。謂之致女。所以致成婦禮、篤昏姻之好。
【読み】
夏、季孫行父宋に如きて女を致す。女嫁して三月、又大夫をして隨いて聘問を加えしむ。之を致女と謂う。婦禮を成すことを致して、昏姻の好を篤くする所以なり。

晉人來媵。媵伯姬也。
【読み】
晉人來りて媵す。伯姬に媵するなり。

秋、七月、丙子、齊侯無野卒。無傳。五同盟。丙子、六月一日。書七月、從赴。
【読み】
秋、七月、丙子[ひのえ・ね]、齊侯無野卒す。傳無し。五たび同盟す。丙子は、六月一日。七月と書すは、赴[つ]ぐるに從う。

晉人執鄭伯。鄭伯旣受盟於蒲、又受楚賂、會於鄧。故晉執之。稱人者、晉以無道於民告諸侯。例在十五年。
【読み】
晉人鄭伯を執う。鄭伯旣に盟を蒲に受け、又楚の賂を受けて、鄧に會す。故に晉之を執う。人と稱するは、晉民に無道なるを以て諸侯に告ぐればなり。例は十五年に在り。

晉欒書帥師伐鄭。冬、十有一月、葬齊頃公。無傳。
【読み】
晉の欒書師を帥いて鄭を伐つ。冬、十有一月、齊の頃公を葬る。傳無し。

楚公子嬰齊帥師伐莒。庚申、莒潰。民逃其上曰潰。
【読み】
楚の公子嬰齊師を帥いて莒を伐つ。庚申[かのえ・さる]、莒潰ゆ。民其の上を逃るるを潰ゆと曰う。

楚人入鄆。鄆、莒別邑也。楚偏師入鄆。故稱人。
【読み】
楚人鄆[うん]に入る。鄆は、莒の別邑なり。楚の偏師鄆に入る。故に人と稱す。

秦人・白狄伐晉。鄭人圍許。城中城。魯邑也。在東海廩丘縣西南。此閏月城、在十一月之後、十二月之前。故傳曰書時。
【読み】
秦人・白狄晉を伐つ。鄭人許を圍む。中城を城く。魯の邑なり。東海廩丘縣の西南に在り。此れ閏月に城きて、十一月の後、十二月の前に在り。故に傳時なるを書すと曰う。

〔傳〕九年、春、杞桓公來逆叔姬之喪、請之也。叔姬已絕於杞。魯復强請杞、使還取葬。○强、其丈反。
【読み】
〔傳〕九年、春、杞の桓公來りて叔姬の喪を逆うは、之を請うなり。叔姬已に杞に絕ゆ。魯復强いて杞に請いて、還して取りて葬らしむ。○强は、其丈反。

杞叔姬卒、爲杞故也。還爲杞婦。故卒稱杞。○爲、于僞反。下文及爲魯・爲歸同。
【読み】
杞の叔姬卒すとは、杞の爲の故なり。還りて杞の婦と爲る。故に卒するに杞と稱す。○爲は、于僞反。下文及び爲魯・爲歸も同じ。

逆叔姬、爲我也。旣弃而復逆其喪。明爲魯故。○逆叔姬絶句。爲我也、本或無爲字。
【読み】
叔姬を逆うるは、我が爲なり。旣に弃てられて復其の喪を逆う。魯の爲の故なることを明かす。○逆叔姬は絶句。爲我也は、本或は爲の字無からん。

爲歸汶陽之田故、諸侯貳於晉。歸田、在前年。
【読み】
汶陽の田を歸す爲の故に、諸侯晉に貳あり。田を歸すは、前年に在り。

晉人懼、會於蒲、以尋馬陵之盟。馬陵、在七年。
【読み】
晉人懼れ、蒲に會して、以て馬陵の盟を尋[かさ]ぬ。馬陵は、七年に在り。

季文子謂范文子曰、德則不競、尋盟何爲。競、强也。
【読み】
季文子范文子に謂いて曰く、德を則ち競[つよ]めずして、盟を尋ぬるも何をかせん、と。競は、强きなり。

范文子曰、勤以撫之、寬以待之、堅彊以御之、明神以要之、柔服而伐貳、德之次也。
【読み】
范文子曰く、勤以て之を撫で、寬以て之を待ち、堅彊以て之を御し、明神以て之を要し、服するを柔[やす]んじて貳を伐つは、德の次なり、と。

是行也、將始會吳。吳人不至。爲十五年、會鐘離傳。○御、魚呂反。要、一遙反。
【読み】
是の行や、將に始めて吳に會せんとす。吳人至らず。十五年、鐘離に會する爲の傳なり。○御は、魚呂反。要は、一遙反。

二月、伯姬歸于宋。爲致女復命起。
【読み】
二月、伯姬宋に歸ぐ。致女復命の爲に起こす。

楚人以重賂求鄭。鄭伯會楚公子成于鄧。爲晉人執鄭伯傳。
【読み】
楚人重賂を以て鄭に求む。鄭伯楚の公子成に鄧に會す。晉人鄭伯を執うる爲の傳なり。

夏、季文子如宋致女。復命。公享之。賦韓奕之五章。韓奕、詩大雅篇名。其五章言、蹶父嫁女於韓候。爲女相所居。莫如韓樂。文子喩魯候有蹶父之德、宋公如韓候、宋土如韓樂。○蹶、九衛反。爲、于僞反。樂、音洛。
【読み】
夏、季文子宋に如きて女を致す。復命す。公之を享す。韓奕[かんえき]の五章を賦す。韓奕は、詩の大雅の篇の名。其の五章に言う、蹶父[けいほ]女を韓候に嫁す。女の爲に居る所を相る。韓の樂しきに如くは莫し、と。文子魯候に蹶父の德有り、宋公韓候の如く、宋土韓の樂しきが如くなるを喩う。○蹶は、九衛反。爲は、于僞反。樂は、音洛。

穆姜出于房、再拜曰、大夫勤辱、不忘先君、以及嗣君、施及未亡人。穆姜、伯姬母。聞文子言宋樂、喜而出、謝其行勞。婦人夫死、自稱未亡人。○施、以豉反。
【読み】
穆姜房より出でて、再拜して曰く、大夫勤辱して、先君を忘れずして、以て嗣君に及ぼし、施[ひ]いて未亡人に及ぼす。穆姜は、伯姬の母。文子宋の樂しきを言うを聞きて、喜びて出でて、其の行勞を謝す。婦人夫死すれば、自ら未亡人と稱す。○施は、以豉反。

先君猶有望也。言先君亦望文子之若此。
【読み】
先君も猶望むこと有り。先君も亦文子の此の若きを望むを言う。

敢拜大夫之重勤。又賦綠衣之卒章而入。綠衣、詩邶風也。取其我思古人、實獲我心。喩文子言得己意。○重、直勇反。又直用反。邶、音佩。
【読み】
敢えて大夫の重勤を拜す、と。又綠衣の卒章を賦して入る。綠衣は、詩の邶風[はいふう]なり。其の我が古人を思い、實に我が心を獲るに取る。文子の言の己が意を得るに喩う。○重は、直勇反。又直用反。邶は、音佩。

晉人來媵。禮也。同姓故。
【読み】
晉人來り媵す。禮なり。同姓の故なり。

秋、鄭伯如晉。晉人討其貳於楚也、執諸銅鞮。銅鞮、晉別縣。在上黨。○鞮、丁兮反。
【読み】
秋、鄭伯晉に如く。晉人其の楚に貳あるを討じて、諸を銅鞮[どうてい]に執う。銅鞮は、晉の別縣。上黨に在り。○鞮は、丁兮反。

欒書伐鄭。鄭人使伯蠲行成。晉人殺之。非禮也。
【読み】
欒書鄭を伐つ。鄭人伯蠲[はくけん]をして成[たい]らぎを行わしむ。晉人之を殺す。禮に非ざるなり。

兵交、使在其間可也。明殺行人例。○蠲、古玄反。又音圭。
【読み】
兵交わるとき、使其の閒に在りて可なり。行人を殺すの例を明かす。○蠲は、古玄反。又音圭。

楚子重侵陳以救鄭。陳與晉故。
【読み】
楚の子重陳を侵して以て鄭を救う。陳晉に與する故なり。

晉侯觀于軍府、見鍾儀。問之曰、南冠而縶者、誰也。南冠、楚冠。縶、拘執。○縶、陟立反。
【読み】
晉侯軍府を觀て、鍾儀を見る。之を問いて曰く、南冠して縶がるる者は、誰ぞや、と。南冠は、楚の冠。縶[ちゅう]は、拘執。○縶、陟立反。

有司對曰、鄭人所獻楚囚也。使稅之、鄭獻鐘儀、在七年。稅、解也。○稅、吐活反。又私銳反。
【読み】
有司對えて曰く、鄭人の獻ぜし所の楚の囚なり、と。之を稅[と]かしめて、鄭鐘儀を獻ずるは、七年に在り。稅は、解くなり。○稅は、吐活反。又私銳反。

召而弔之。再拜稽首。問其族。對曰、泠人也。泠人、樂官。○泠、力丁反。
【読み】
召して之を弔う。再拜稽首す。其の族を問う。對えて曰く、泠人[れいじん]なり、と。泠人は、樂官。○泠は、力丁反。

公曰、能樂乎。對曰、先父之職官也。敢有二事。言不敢學他事。
【読み】
公曰く、能く樂せんか、と。對えて曰く、先父の職官なり。敢えて二事有らんや、と。敢えて他事を學ばざるを言う。

使與之琴。操南音。南音、楚聲。○操、七刀反。
【読み】
之に琴を與えしむ。南音を操る。南音は、楚の聲。○操は、七刀反。

公曰、君王何如。對曰、非小人之所得知也。固問之。對曰、其爲大子也、師保奉之、以朝于嬰齊、而夕于側也。嬰齊、令尹子重。側、司馬子反。言其尊卿敬老。
【読み】
公曰く、君王は何如、と。對えて曰く、小人の知ることを得る所に非ざるなり、と。固く之を問う。對えて曰く、其の大子爲りしや、師保之を奉じて、以て嬰齊に朝して、側に夕せり。嬰齊は、令尹子重。側は、司馬子反。其の卿を尊び老を敬するを言う。

不知其他。公語范文子。文子曰、楚囚、君子也。言稱先職、不背本也。樂操土風、不忘舊也。稱大子、抑無私也。舍其近事、而遠稱少小、以示性所自然。明至誠。○語、魚據反。
【読み】
其の他を知らず、と。公范文子に語[つ]ぐ。文子曰く、楚の囚は、君子なり。言先職を稱するは、本に背かざるなり。樂土風を操るは、舊を忘れざるなり。大子を稱するは、抑々私無きなり。其の近事を舍てて、遠く少小を稱して、以て性の自然なる所を示す。至誠を明かすなり。○語は、魚據反。

名其二卿、尊君也。尊晉君也。
【読み】
其の二卿に名いうは、君を尊ぶなり。晉君を尊ぶなり。

不背本、仁也。不忘舊、信也。無私、忠也。尊君、敏也。敏、達也。
【読み】
本に背かざるは、仁なり。舊を忘れざるは、信なり。私無きは、忠なり。君を尊ぶは、敏なり。敏は、達するなり。

仁以接事、信以守之、忠以成之、敏以行之、事雖大必濟。言有此四德、必能成大事。
【読み】
仁以て事に接わり、信以て之を守り、忠以て之を成し、敏以て之を行わば、事大なりと雖も必ず濟[な]らん。此の四德有れば、必ず能く大事を成すを言う。

君盍歸之、使合晉・楚之成。公從之、重爲之禮、使歸求成。爲下十二月、晉・楚結成張本。
【読み】
君盍ぞ之を歸して、晉・楚の成らぎを合わせしめざる、と。公之に從い、重く之が禮を爲して、歸りて成らぎを求めしむ。下の十二月、晉・楚成らぎを結ぶ爲の張本なり。

冬、十一月、楚子重自陳伐莒、圍渠丘。渠丘城惡。衆潰奔莒。戊申、楚入渠丘。月六日。
【読み】
冬、十一月、楚の子重陳より莒を伐ち、渠丘を圍む。渠丘城惡し。衆潰えて莒に奔る。戊申[つちのえ・さる]、楚渠丘に入る。月の六日。

莒人囚楚公子平。楚人曰、勿殺。吾歸而俘。莒人殺之。楚師圍莒。莒城亦惡。庚申、莒潰。月十八日。
【読み】
莒人楚の公子平を囚う。楚人曰く、殺すこと勿かれ。吾れ而[なんじ]の俘を歸さん、と。莒人之を殺す。楚の師莒を圍む。莒の城も亦惡し。庚申、莒潰ゆ。月の十八日。

楚遂入鄆。莒無備故也。終巫臣之言。
【読み】
楚遂に鄆に入る。莒備え無き故なり。巫臣の言を終える。

君子曰、恃陋而不備、罪之大者也。備豫不虞、善之大者也。莒恃其陋、而不脩城郭、浹辰之閒、而楚克其三都、無備也夫。浹辰、十二日也。○浹、子協反。又子答反。
【読み】
君子曰く、陋を恃みて備えざるは、罪の大なる者なり。不虞に備豫するは、善の大なる者なり。莒其の陋を恃みて、城郭を脩めずして、浹辰の閒にして、楚其の三都に克ちしは、備え無ければなるかな。浹辰は、十二日なり。○浹は、子協反。又子答反。

詩曰、雖有絲麻、無棄菅蒯。雖有姬姜、無棄蕉萃。凡百君子、莫不代匱、言備之不可以已也。逸詩也。姬姜、大國之女。蕉萃、陋賤之人。○菅、古顏反。蒯、苦怪反。蕉、在遙反。
【読み】
詩に曰く、絲麻有りと雖も、菅蒯[かんかい]を棄つること無かれ。姬姜有りと雖も、蕉萃を棄つること無かれ。凡百の君子、匱[とぼ]しきに代へざること莫しとは、備えの以て已む可からざるを言うなり、と。逸詩なり。姬姜は、大國の女。蕉萃は、陋賤の人。○菅は、古顏反。蒯は、苦怪反。蕉は、在遙反。

秦人・白狄伐晉、諸侯貳故也。
【読み】
秦人・白狄晉を伐つは、諸侯貳ある故なり。

鄭人圍許、示晉不急君也。此秋、晉執鄭伯。
【読み】
鄭人許を圍むは、晉に君を急にせざるを示すなり。此の秋、晉鄭伯を執う。

是則公孫申謀之曰、我出師以圍許、示不畏晉。
【読み】
是れ則ち公孫申之を謀りて曰く、我れ師を出だして以て許を圍み、晉を畏れざるを示す。

爲將改立君者、而紓晉使、紓、緩也。勿亟遣使詣晉、示欲更立君。○爲・將、竝如字。亟、紀力反。或欺冀反。
【読み】
將に君を改め立てんとする者の爲[まね]して、晉の使いを紓[ゆる]くせば、紓は、緩きなり。亟[しば]々使いをして晉に詣らしむること勿くして、更に君を立てんと欲するを示す。○爲・將は、竝字の如し。亟は、紀力反。或は欺冀反。

晉必歸君。爲明年、晉侯歸鄭伯張本。
【読み】
晉必ず君を歸さん、と。明年、晉侯鄭伯を歸す爲の張本なり。

城中城、書時也。
【読み】
中城に城くは、時なるを書すなり。

十二月、楚子使公子辰如晉。報鍾儀之使、請修好結成。鍾儀奉晉命歸。故楚報之。
【読み】
十二月、楚子公子辰をして晉に如かしむ。鍾儀の使いに報い、好を修め成らぎを結ばんことを請う。鍾儀晉の命を奉じて歸る。故に楚之に報ゆ。


〔經〕十年、春、衛侯之弟黑背帥師侵鄭。夏、四月、五卜郊。不從。乃不郊。無傳。卜常祀、不郊、皆非禮。故書。
【読み】
〔經〕十年、春、衛侯の弟黑背師を帥いて鄭を侵す。夏、四月、五たび郊を卜す。從わず。乃ち郊せず。傳無し。常祀を卜し、郊せざるは、皆禮に非ず。故に書す。

五月、公會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯伐鄭。晉侯、大子州蒲也。稱爵、見其生代父居位、失人子之禮。○見、賢遍反。
【読み】
五月、公晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯に會して鄭を伐つ。晉侯は、大子州蒲なり。爵を稱するは、其の生きながら父に代わり位に居り、人子の禮を失うを見す。○見は、賢遍反。

齊人來媵。無傳。媵伯姬也。異姓來媵、非禮也。
【読み】
齊人來り媵す。傳無し。伯姬に媵するなり。異姓來り媵するは、禮に非ざるなり。

丙午、晉侯獳卒。六同盟。據傳、丙午、六月七日。有日無月。○獳、乃侯反。
【読み】
丙午[ひのえ・うま]、晉侯獳[どう]卒す。六たび同盟す。傳に據るに、丙午は、六月七日。日有りて月無し。○獳は、乃侯反。

秋、七月、公如晉。冬、十月。
【読み】
秋、七月、公晉に如く。冬、十月。

〔傳〕十年、春、晉侯使糴茷如楚。糴茷、晉大夫。○糴、徒弔反。一杜敖反。茷、扶廢反。一蒲發反。
【読み】
〔傳〕十年、春、晉侯糴茷[てきはい]をして楚に如かしむ。糴茷は、晉の大夫。○糴は、徒弔反。一に杜敖反。茷は、扶廢反。一に蒲發反。

報大宰子商之使也。子商、楚公子辰。使、在前年。
【読み】
大宰子商の使いに報ゆるなり。子商は、楚の公子辰。使いは、前年に在り。

衛子叔黑背侵鄭、晉命也。晉命衛使侵鄭。
【読み】
衛の子叔黑背鄭を侵すは、晉の命なり。晉衛に命じて鄭を侵さしむ。

鄭公子班聞叔申之謀、改立君之謀。
【読み】
鄭の公子班叔申の謀を聞き、君を改め立つの謀。

三月、子如立公子繻。子如、公子班。○繻、音須。
【読み】
三月、子如公子繻を立つ。子如は、公子班。○繻は、音須。

夏、四月、鄭人殺繻、立髡頑。子如奔許。髡頑、鄭成侯大子。○髡、苦門反。
【読み】
夏、四月、鄭人繻を殺して、髡頑[こんがん]を立つ。子如許に奔る。髡頑は、鄭の成侯の大子。○髡は、苦門反。

欒武子曰、鄭人立君。我執一人焉何益。不如伐鄭而歸其君、以求成焉。
【読み】
欒武子曰く、鄭人君を立つ。我れ一人を執うとも何の益あらん。鄭を伐ちて其の君を歸して、以て成[たい]らぎを求めんに如かず、と。

晉侯有疾。五月、晉立大子州蒲以爲君、而會諸侯伐鄭。生立子爲君。此父不父子不子。經因書晉侯。其惡明。
【読み】
晉侯疾有り。五月、晉大子州蒲を立てて以て君と爲して、諸侯を會して鄭を伐つ。生きながら子を立てて君と爲す。此れ父父ならず子子ならざるなり。經因りて晉侯と書す。其の惡明らかなり。

鄭子罕賂以襄鍾。子罕、穆公子。襄鐘、鄭襄公之廟鐘。
【読み】
鄭の子罕賂うに襄鍾を以てす。子罕は、穆公の子。襄鐘は、鄭の襄公の廟鐘。

子然盟于脩澤。子駟爲質。子然・子駟、皆穆公子。滎陽卷縣東有脩武亭。○質、音致。卷、音權。又丘權反。
【読み】
子然脩澤に盟う。子駟質と爲る。子然・子駟は、皆穆公の子。滎陽卷縣の東に脩武亭有り。○質は、音致。卷は、音權。又丘權反。

辛巳、鄭伯歸。鄭伯歸不書、鄭不告入。
【読み】
辛巳[かのと・み]、鄭伯歸る。鄭伯歸ること書さざるは、鄭入ることを告げざればなり。

晉侯夢、大厲被髮及地、搏膺而踊曰、殺余孫不義。厲、鬼也。趙氏之先祖也。八年、晉侯殺趙同・趙括。故怒。○被、皮寄反。
【読み】
晉侯夢みらく、大厲髮を被りて地に及び、膺を搏[う]ちて踊りて曰く、余が孫を殺せしこと不義なり。厲は、鬼なり。趙氏の先祖ならん。八年、晉侯趙同・趙括を殺す。故に怒る。○被は、皮寄反。

余得請於帝矣。壞大門及寢門而入。公懼入于室。又壞戶。公覺、召桑田巫。桑田、晉邑。○壞、音怪。覺、古孝反。
【読み】
余帝に請うことを得たり、と。大門と寢門とを壞りて入る。公懼れて室に入る。又戶を壞る。公覺め、桑田の巫を召す。桑田は、晉の邑。○壞は、音怪。覺は、古孝反。

巫言如夢。巫云鬼怒、如公所夢。
【読み】
巫の言うこと夢の如し。巫鬼の怒りを云うこと、公の夢みる所の如し。

公曰、何如。曰、不食新矣。言公不得及食新麥。
【読み】
公曰く、何如、と。曰く、新を食わじ、と。言うこころは、公新麥を食うに及ぶことを得ず。

公疾病。求醫于秦。秦伯使醫緩爲之。緩、醫名。爲、猶治也。
【読み】
公疾病なり。醫を秦に求む。秦伯醫緩をして之を爲[おさ]めしむ。緩は、醫の名。爲は、猶治むるのごとし。

未至、公夢、疾爲二豎子、曰、彼良醫也。懼傷我。焉逃之。其一曰、居肓之上、膏之下、若我何。肓、鬲也。心下爲膏。○焉、於虔反。一讀如字。屬上句。肓、音荒。心下、鬲上也。
【読み】
未だ至らずして、公夢みらく、疾二豎子と爲りて、曰く、彼は良醫なり。懼らくは我を傷らん。焉[いずく]に之を逃れん、と。其の一曰く、肓[こう]の上、膏[こう]の下に居らば、我を若何にせん、と。肓は、鬲[かく]なり。心の下を膏と爲す。○焉は、於虔反。一に讀みて字の如し。上の句に屬く。肓は、音荒。心の下、鬲の上なり。

醫至。曰、疾不可爲也。在肓之上、膏之下。攻之不可、達之不及、藥不至焉。不可爲也。達、針。
【読み】
醫至る。曰く、疾爲む可からざるなり。肓の上、膏の下に在り。之を攻むとも可ならず、之に達するとも及ばず、藥も至らず。爲む可からざるなり、と。達は、針。

公曰、良醫也。厚爲之禮而歸之。
【読み】
公曰く、良醫なり、と。厚く之が禮を爲して之を歸す。

六月、丙午、晉侯欲麥。周六月、今四月。麥始熟。
【読み】
六月、丙午、晉侯麥を欲す。周の六月は、今の四月。麥始めて熟す。

使甸人獻麥。甸人、主爲公田者。○甸、徒練反。
【読み】
甸人[てんじん]をして麥を獻ぜしむ。甸人は、公田を爲ることを主る者。○甸は、徒練反。

饋人爲之。召桑田巫、示而殺之。將食。張。如廁。陷而卒。張、腹滿也。○饋、其媿反。張、中亮反。
【読み】
饋人之を爲す。桑田の巫を召して、示して之を殺す。將に食わんとす。張す。廁に如く。陷りて卒す。張は、腹滿つるなり。○饋は、其媿反。張は、中亮反。

小臣有晨夢負公以登天。及日中、負晉侯出諸廁。遂以爲殉。傳言巫以明術見殺、小臣以言夢自禍。
【読み】
小臣晨に公を負いて以て天に登ると夢みる有り。日中に及びて、晉侯を負いて諸を廁より出だす。遂に以て殉と爲す。傳巫は術に明なるを以て殺され、小臣は夢を言うを以て自ら禍するを言う。

鄭伯討立君者、戊申、殺叔申・叔禽。叔禽、叔申弟。
【読み】
鄭伯君を立つる者を討じ、戊申[つちのえ・さる]、叔申・叔禽を殺す。叔禽は、叔申の弟。

君子曰、忠爲令德、非其人猶不可。況不令乎。言叔申爲忠、不得其人、還害身。
【読み】
君子曰く、忠は令德爲れども、其の人に非ざれば猶不可なり。況んや不令をや、と。叔申忠を爲して、其の人を得ずして、還って身を害することを言う。

秋、公如晉。親弔非禮。
【読み】
秋、公晉に如く。親ら弔うは禮に非ず。

晉人止公。使送葬。於是糴茷未反。是春晉使糴茷至楚結成。晉謂魯貳於楚。故留公須糴茷還、驗其虛實。
【読み】
晉人公を止む。葬を送らしむ。是に於て糴茷未だ反らず。是の春晉糴茷をして楚に至りて成らぎを結ばしむ。晉魯は楚に貳ありと謂う。故に公を留めて糴茷の還るを須ちて、其の虛實を驗す。

冬、葬晉景公。公送葬。諸侯莫在。魯人辱之。故不書。諱之也。諱不書晉葬也。
【読み】
冬、晉の景公を葬る。公葬を送る。諸侯在ること莫し。魯人之を辱とす。故に書さず。之を諱みてなり。諱みて晉の葬を書さざるなり。



經元年。一乘。繩證反。卒七。尊忽反。茅戎。史記及二傳、皆作貿戎。別種。章勇反。
傳。詹嘉。之廉反。欲要。一遙反。結好。呼報反。
經二年。新築。音竹。皆陳。直覲反。僑如。其驕反。注同。以與。音預。匹敵。如字。本或作適。亦音敵。汶。音問。匱盟。其位反。
傳。頃公。音傾。嬖人。必計反。魁。苦囘反。封竟。音境。石碏。七略反。甯兪。羊朱反。復欲。扶又反。子喪。息浪反。隕。于敏反。止御。魚呂反。○今本禦。愆。起虔反。百乘。繩證反。下同。濮。音卜。將中。子匠反。且道。音導。以徇。似俊反。于莘。所巾反。不腆。他典反。詰。起吉反。朝。如字。注及下朝夕・朝食同。釋感。胡暗反。本又作憾。○今本亦憾。無令。力呈反。輿師。如字。下無令輿師同。一音所類反。不復。扶又反。齊壘。力軌反。欲賣。摩懈反。邴。一音彼命反。夏。戶雅反。解張。如字。一音直亮反。軍將。子匠反。下將在左同。貫余。古亂反。下注同。肘。竹九反。近烟。附近之近。左幷。徐方聘反。桴。字林云、擊鼓柄也。○今本枹。不注。之住反。元帥。所類反。綦。音其。喪車。息浪反。寓乘。繩證反。其處。昌慮反。仆車。音赴。又蒲北反。驂。七南反。轏。一音仕板反。以肱。古弘反。而匿。女力反。注同。奉觴。式羊反。無令。力呈反。奔辟。徐扶臂反。服氏扶亦反。從君。才用反。又如字。狄卒。子忽反。注及下同。冒之。亡報反。守者。手又反。辟女子。一音扶亦反。單還。音丹。可復。扶又反。辟司徒。必覓反。注同。徐甫亦反。賓媚。美冀反。賂以。音路。甗。字林、牛健反。甑。一音慈陵反。盡東。津忍反。壟。力勇反。疆理。居良反。注下皆同。易也。以豉反。疆竟。如字。又音境。遒。在由反。徐子由反。犒。苦報反。不泯。彌忍反。舊好。呼報反。敢合。如字。一音閤。復借。扶又反。而紓。一音直呂反。鄍。覓經反。三帥。所類反。注及下同。炭。吐旦反。用殉。似俊反。蛤。古荅反。瘞。於例反。壙。苦晃反。一音曠。椁。音郭。而爭。爭鬭之爭。其侈。昌氏反。又式氏反。過衛。古禾反。又古臥反。夏氏。戶雅反。下同。殺御叔。魚據反。死易。以豉反。烝。之承反。使道。音導。注同。吾聘。匹政反。跪。其委反。一音居委反。郢。一音以政反。使介。音界。邢。音刑。勿令。力呈反。代帥。所類反。下注稱帥軍帥・將帥同。也夫。音扶。庚將。子匠反。下同。求好。呼報反。下同。行使。所吏反。濟濟。子禮反。儕。仕皆反。閱。音悅。鰥。古頑反。王卒。子忽反。注同。令二君。力呈反。不見。賢遍反。之別。彼列反。宴樂。音洛。捷。在妾反。暱。女乙反。謂暴。本又作虣。○今本亦虣。奸。音干。大師。音泰。淫從。本又作縱。
經三年。所馮。皮冰反。書將。子匠反。帥。所類反。
傳。鄤。一音莫干反。徐一音万。俘。芳夫反。馘。古獲反。以釁。許覲反。求紓。音舒。懲。直升反。宥。音又。纍。力誰反。其好。呼報反。下同。不與。音預。不爲。于僞反。疆。居良反。楚將。子亮反。帥。所類反。如潰。戶内反。君爲。于僞反。下爲兩君同。寘諸。之豉反。
經四年。
傳。
大史。音泰。疆。居良反。陂。彼皮反。鉏。仕居反。將中。子匠反。愬。音素。
經五年。
傳。
能令。力呈反。饋。其媿反。驛也。音亦。捷之。在妾反。邪出。似嗟反。絳人。古巷反。壤。如丈反。去盛。起呂反。縵。一音莫半反。譟。素報反。之難。乃旦反。月倒。丁老反。
經六年。
傳。
子游相。息亮反。下甯相同。諦。音帝。魯倚。於綺反。言易。以豉反。夏陽。戶雅反。別種。章勇反。登陴。毗支反。復命。扶又反。而近。附近之近。下及注近實皆同。將新。子匠反。下注軍將同。大僕。音泰。疾疢。本或作■(疒に尓)、同。溺。乃歷反。重膇。一音直媿反。足腫。章勇反。一音常勇反。垢。古口反。驕佚。音逸。公說。音悅。公子成。音城。禦諸。魚呂反。桑隧。音遂。子盍。戶臘反。
經七年。
傳。
也夫。音扶。共仲。音恭。鄖。本亦作員。音云。邑名。閻。音鹽。黑要。一遙反。遺。唯季反。慝。他得反。請使。所吏反。說之。音悅。季札。側八反。一卒。子忽反。注同。令吳。力呈反。寘其。之豉反。諸夏。戶雅反。惡孫。烏路反。反戚。七狄反。
經八年。來媵。一音繩證反。娣。大計反。
傳。不復。扶又反。其行。下孟反。注同。猶喪。息浪反。妃耦。音配。下五口反。長有。如字。一音丁丈反。平與。音餘。一音預。愷。開在反。樂也。悌。徒禮反。易也。共姬。音恭。祁奚。字林、上尸反。趙衰。初危反。盾。徒本反。喆。陟列反。○今本哲。邪。似嗟反。敢侮。亡甫反。鰥、古頑反。城已惡。如字。已猶太也。本或作城已惡矣。虞度。待洛反。封疆。居良反。注同。唯然。音維。本或作雖。後人改也。閉。補計反。又補結反。一音戶旦反。不復。扶又反。君後。如字。徐胡豆反。
經九年。之好。呼報反。頃。音傾。
傳。魯復。扶又反。下同。相所。息亮反。綠衣。如字。本又作褖。吐亂反。注同。使在。所吏反。拘。九于反。不背。音佩。下同。舍其。音捨。少小。詩照反。君盍。戶臘反。也夫。音扶。萃。在醉反。匱。其位反。爲將。于僞反、非也。而紓。音舒。晉使。所吏反。注及下同。脩好。呼報反。
經十年。
傳。
糶、一音土弔反。今本糴。茷。一音蒲艾反。大宰。音泰。之使。所吏反。下及注使在同。頑。如字。徐五班反。州蒲。本或作州滿。卷縣。字林、丘權反。如淳漢書音同。搏膺。音博。而踊。音勇。及寢門。一本無及字。求醫。於其反。懼傷我。絶句。逃之。絶句。鬲。音革。攻之。音工。鍼也。音針。○今本針。爲之。如字。

春秋左氏傳校本第十三

成公 起十一年盡十八年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
十有一年、春、王三月、公至自晉。正月、公在晉。不書、諱見止。
【読み】
〔經〕十有一年、春、王の三月、公晉より至る。正月、公晉に在り。書さざるは、止めらるるを諱みてなり。

晉侯使郤犫來聘。己丑、及郤犫盟。郤犫、郤克從父兄弟。○犫、尺由反。
【読み】
晉侯郤犫[げきしゅう]をして來聘せしむ。己丑[つちのと・うし]、郤犫と盟う。郤犫は、郤克の從父兄弟。○犫は、尺由反。

夏、季孫行父如晉。秋、叔孫僑如如齊。○僑、其驕反。
【読み】
夏、季孫行父晉に如く。秋、叔孫僑如齊に如く。○僑は、其驕反。

冬、十月。
【読み】
冬、十月。

〔傳〕十一年、春、王三月、公至自晉。
【読み】
〔傳〕十一年、春、王の三月、公晉より至る。

晉人以公爲貳於楚。故止公。公請受盟、而後使歸。前年七月、公如晉弔。至是乃得歸。
【読み】
晉人公を以て楚に貳ありと爲す。故に公を止む。公盟を受けんと請いて、而して後に歸らしむ。前年七月、公晉に如きて弔う。是に至りて乃ち歸ることを得たり。

郤犫來聘、且涖盟。公請受盟。故使大夫來臨之。
【読み】
郤犫來聘し、且涖[のぞ]みて盟う。公盟を受けんと請う。故に大夫をして來りて之に臨ましむ。

聲伯之母不聘。聲伯之母、叔肸之妻。不聘、無媒禮。○肸、許乙反。
【読み】
聲伯の母は聘せず。聲伯の母は、叔肸[しゅくきつ]の妻なり。聘せずとは、媒禮無きなり。○肸は、許乙反。

穆姜曰、吾不以妾爲姒。昆弟之妻、相謂爲姒。穆姜、宣公夫人。宣公叔肸、同母昆弟。
【読み】
穆姜曰く、吾れ妾を以て姒[じ]と爲さず、と。昆弟の妻、相謂いて姒と爲す。穆姜は、宣公の夫人。宣公叔肸は、同母昆弟。

生聲伯而出之。嫁於齊管于奚、生二子而寡、以歸聲伯。聲伯以其外弟爲大夫、外弟、管于奚之子。爲魯大夫。
【読み】
聲伯を生みて之を出だす。齊の管于奚に嫁し、二子を生みて寡となり、以[い]て聲伯に歸す。聲伯其の外弟を以て大夫と爲して、外弟は、管于奚の子。魯の大夫と爲す。

而嫁其外妹於施孝叔。孝叔、魯惠公五世孫。
【読み】
其の外妹を施孝叔に嫁す。孝叔は、魯の惠公五世の孫。

郤犫來聘、求婦於聲伯。聲伯奪施氏婦以與之。婦人曰、鳥獸猶不失儷。儷、耦也。○儷、力計反。
【読み】
郤犫來聘して、婦を聲伯に求む。聲伯施氏の婦を奪いて以て之に與えんとす。婦人曰く、鳥獸も猶儷[れい]を失わず。儷は、耦なり。○儷は、力計反。

子將若何。曰、吾不能死亡。言不與郤犫婦、懼能忿致禍。
【読み】
子將[はた]若何にせん、と。曰く、吾れ死亡すること能わず、と。言うこころは、郤犫に婦を與えざれば、懼れらくは能く忿りて禍を致さんことを。

婦人遂行、生二子於郤氏。郤氏亡、晉人歸之施氏。施氏逆諸河、沈其二子。沈之於河。○沈、直蔭反。一如字。
【読み】
婦人遂に行き、二子を郤氏に生む。郤氏亡び、晉人之を施氏に歸す。施氏諸を河に逆[むか]え、其の二子を沈む。之を河に沈む。○沈は、直蔭反。一に字の如し。

婦人怒曰、已不能庇其伉儷而亡之、伉、敵也。○已、音以。又音紀。伉、苦浪反。
【読み】
婦人怒りて曰く、已に其の伉儷[こうれい]を庇うこと能わずして之を亡い、伉は、敵なり。○已は、音以。又音紀。伉は、苦浪反。

又不能字人之孤而殺之。字、愛也。
【読み】
又人の孤を字[めぐ]むこと能わずして之を殺す。字は、愛むなり。

將何以終。遂誓施氏。約誓不復爲之婦也。傳言郤犫淫縱所以亡也。
【読み】
將[はた]何を以て終わらんや、と。遂に施氏に誓う。復之が婦と爲らずと約誓す。傳郤犫淫縱にして亡ぶる所以を言う。

夏、季文子如晉報聘、且蒞盟也。郤犫・文子交盟魯・晉之君。其意一也。故但書來盟。舉重略輕。
【読み】
夏、季文子晉に如きて報聘し、且蒞みて盟えり。郤犫・文子交々魯・晉の君に盟う。其の意一なり。故に但來盟のみを書す。重きを舉げて輕きを略するなり。

周公楚惡惠・襄之偪也、惠王・襄王之族。○惡、烏路反。
【読み】
周公楚惠・襄の偪るを惡み、惠王・襄王の族。○惡は、烏路反。

且與伯與爭政。伯與、周卿士。○與、音餘。
【読み】
且伯與と政を爭う。伯與は、周の卿士。○與は、音餘。

不勝。怒而出、及陽樊。陽樊、晉地。
【読み】
勝たず。怒りて出でて、陽樊に及ぶ。陽樊は、晉の地。

王使劉子復之。盟于鄄而入。三日、復出奔晉。王旣復之而復出。所以自絕於周。爲明年、周公出奔傳。鄄、周邑。○鄄、音絹。
【読み】
王劉子をして之を復さしむ。鄄[けん]に盟いて入る。三日、復出でて晉に奔る。王旣に之を復して復出づ。自ら周に絕つ所以なり。明年、周公出でて奔る爲の傳なり。鄄は、周の邑。○鄄は、音絹。

秋、宣伯聘于齊、以脩前好。鞌以前之好。
【読み】
秋、宣伯齊に聘して、以て前好を脩む。鞌以前の好なり。

晉郤至與周爭鄇田。鄇、溫別邑。今河内懷縣西南有鄇人亭。○鄇、音侯。又音候。
【読み】
晉の郤至周と鄇[こう]の田を爭う。鄇は、溫の別邑。今の河内懷縣の西南に鄇人亭有り。○鄇は、音侯。又音候。

王命劉康公・單襄公訟諸晉。郤至曰、溫吾故也。故不敢失。言溫、郤氏舊邑。○單、音善。
【読み】
王劉康公・單襄公に命じて諸を晉に訟えしむ。郤至曰く、溫は吾が故なり。故に敢えて失わじ、と。言うこころは、溫は、郤氏の舊邑。○單は、音善。

劉子・單子曰、昔周克商、使諸侯撫封、各撫有其封内之地。
【読み】
劉子・單子曰く、昔周商に克ちて、諸侯をして封を撫でしめしとき、各々其の封内の地を撫有す。

蘇忿生以溫爲司寇、與檀伯達封于河。蘇忿生、周武王司寇蘇公也。與檀伯達倶封於河内。
【読み】
蘇忿生溫を以て司寇と爲り、檀伯達と河に封ぜられぬ。蘇忿生は、周の武王の司寇蘇公なり。檀伯達と倶に河内に封ぜらる。

蘇氏卽狄、又不能於狄、而奔衛、事在僖十年。
【読み】
蘇氏狄に卽き、又狄に能からずして、衛に奔りしかば、事は僖十年に在り。

襄王勞文公、而賜之溫、在僖二十五年。○勞、力報反。
【読み】
襄王文公を勞いて、之に溫を賜い、僖二十五年に在り。○勞は、力報反。

狐氏・陽氏先處之、狐溱・陽處父先食溫地。○溱、側巾反。
【読み】
狐氏・陽氏先ず之に處りて、狐溱・陽處父先ず溫の地を食む。○溱は、側巾反。

而後及子。若治其故、則王官之邑也。子安得之。晉侯使郤至勿敢爭。傳言郤至貪、所以亡。
【読み】
而して後に子に及べり。若し其の故を治めば、則ち王官の邑なり。子安ぞ之を得ん、と。晉侯郤至をして敢えて爭うこと勿からしむ。傳郤至貪りて、亡ぶる所以を言う。

宋華元善於令尹子重、又善於欒武子。聞楚人旣許晉糴茷成、而使歸復命矣。在往年。○華、戶化反。
【読み】
宋の華元令尹子重に善く、又欒武子に善し。楚人旣に晉の糴茷[てきはい]に成[たい]らぎを許して、歸りて復命せしむと聞く。往年に在り。○華は、戶化反。

冬、華元如楚、遂如晉、合晉・楚之成。爲明年、盟宋西門外張本。
【読み】
冬、華元楚に如き、遂に晉に如き、晉・楚の成らぎを合わす。明年、宋の西門の外に盟う爲の張本なり。

秦・晉爲成、將會于令狐。晉侯先至焉。秦伯不肯涉河、次于王城、使史顆盟晉侯于河東。史顆、秦大夫。○顆、苦果反。
【読み】
秦・晉成らぎを爲し、將に令狐に會せんとす。晉侯先ず至る。秦伯肯えて河を涉[わた]らず、王城に次[やど]り、史顆をして晉侯に河東に盟わしむ。史顆は、秦の大夫。○顆は、苦果反。

晉郤犫盟秦伯于河西。就盟王城。
【読み】
晉の郤犫秦伯に河西に盟う。就きて王城に盟う。

范文子曰、是盟也何益。齊盟、所以質信也。齊、一心。質、成也。
【読み】
范文子曰く、是の盟や何の益あらん。齊盟は、信を質[な]す所以なり。齊は、一心。質は、成すなり。

會所、信之始也。始之不從、其可質乎。
【読み】
會所は、信の始めなり。始めにして從わざるは、其れ質る可けんや、と。

秦伯歸而背晉成。爲十三年、伐秦傳。○背、音佩。卷内皆同。
【読み】
秦伯歸りて晉の成らぎに背く。十三年、秦を伐つ爲の傳なり。○背は、音佩。卷内皆同じ。


〔經〕十有二年、春、周公出奔晉。夏、公會晉侯・衛侯于瑣澤。瑣澤、地闕。
【読み】
〔經〕十有二年、春、周公出でて晉に奔る。夏、公晉侯・衛侯に瑣澤に會す。瑣澤は、地闕く。

秋、晉人敗狄于交剛。交剛、地闕。
【読み】
秋、晉人狄を交剛に敗る。交剛は、地闕く。

冬、十月。
【読み】
冬、十月。

〔傳〕十二年、春、王使以周公之難來告。周公奔在前年。
【読み】
〔傳〕十二年、春、王周公の難を以て來り告げしむ。周公の奔るは前年に在り。

書曰周公出奔晉、凡自周無出。周公自出故也。天子無外。故奔者不言出。周公爲王所復。而自絕於周。故書出以非之。
【読み】
書して周公出でて晉に奔ると曰うは、凡そ周よりは出づること無し。周公自ら出づる故なり。天子は外無し。故に奔るは出づると言わず。周公王に爲に復さる。而るに自ら周に絕つ。故に出づると書して以て之を非[そし]る。

宋華元克合晉・楚之成。終前年事。
【読み】
宋の華元克く晉・楚の成らぎを合わせり。前年の事を終える。

夏、五月、晉士燮會楚公子罷・許偃。二子、楚大夫。○罷、音皮。
【読み】
夏、五月、晉の士燮[ししょう]楚の公子罷・許偃に會す。二子は、楚の大夫。○罷は、音皮。

癸亥、盟于宋西門之外。曰、凡晉・楚無相加戎、好惡同之、同恤菑危、備救凶患。若有害楚、則晉伐之。在晉、楚亦如之。交贄往來、道路無壅、贄、幣也。○好惡、竝如字。又皆去聲。菑、音災。
【読み】
癸亥[みずのと・い]、宋の西門の外に盟う。曰く、凡そ晉・楚戎を相加うること無く、好惡之を同じくし、同じく菑危[さいき]を恤え、凶患に備え救わん。若し楚を害すること有らば、則ち晉之を伐たん。晉に在らば、楚も亦之の如くせん。贄を交えて往來し、道路壅[ふさ]ぐこと無く、贄は、幣なり。○好惡は、竝字の如し。又皆去聲。菑は、音災。

謀其不協、而討不庭。討背叛不來在王庭者。
【読み】
其の不協を謀りて、不庭を討ぜん。背叛して王庭に來在せざる者を討ず。

有渝此盟、明神殛之、殛、誅也。
【読み】
此の盟を渝[か]うること有らば、明神之を殛して、殛は、誅するなり。

俾隊其師、無克胙國。俾、使也。隊、失也。○隊、直類反。胙、才故反。
【読み】
其の師を隊[おと]さしめて、克く國に胙[さいわい]すること無からん、と。俾は、使むなり。隊は、失うなり。○隊は、直類反。胙は、才故反。

鄭伯如晉聽成。聽、猶受也。晉・楚旣成。鄭往受命。
【読み】
鄭伯晉に如きて成らぎを聽く。聽は、猶受くるがごとし。晉・楚旣に成らぐ。鄭往きて命を受く。

會于瑣澤、成故也。晉旣與楚成。合諸侯以申成好。
【読み】
瑣澤に會するは、成らぐ故なり。晉旣に楚と成らぐ。諸侯を合わせて以て好を成すことを申ぶるなり。

狄人閒宋之盟以侵晉、而不設備。○閒宋、閒厠之閒。
【読み】
狄人宋の盟を閒して以て晉を侵して、備えを設けず。○閒宋は、閒厠の閒。

秋、晉人敗狄于交剛。
【読み】
秋、晉人狄を交剛に敗る。

晉郤至如楚聘、且涖盟。楚子享之。子反相。爲地室而縣焉。縣、鐘鼓也。○相、息亮反。縣、音玄。
【読み】
晉の郤至楚に如きて聘し、且涖[のぞ]みて盟う。楚子之を享す。子反相[たす]く。地室を爲りて縣す。縣は、鐘鼓なり。○相は、息亮反。縣は、音玄。

郤至將登。登堂。
【読み】
郤至將に登らんとす。堂に登るなり。

金奏作於下。擊鐘而奏樂。
【読み】
金奏下に作る。鐘を擊ちて樂を奏す。

驚而走出。子反曰、日云莫矣。寡君須矣。吾子其入也。
【読み】
驚きて走り出づ。子反曰く、日云[ここ]に莫[く]れぬ。寡君須つ。吾子其れ入れ、と。

賓曰、君不忘先君之好、施及下臣、貺之以大禮、重之以備樂。貺、賜也。○莫、音暮。施、以豉反。
【読み】
賓曰く、君先君の好を忘れずして、施[ひ]きて下臣に及ぼし、之に貺[たま]うに大禮を以てし、之に重ぬるに備樂を以てす。貺[きょう]は、賜うなり。○莫は、音暮。施は、以豉反。

如天之福、兩君相見、何以代此。下臣不敢。此、言兩君相見之禮。
【読み】
如し天の福ありて、兩君相見えば、何を以て此に代えん。下臣は敢えてせじ、と。此とは、兩君相見ゆるの禮を言う。

子反曰、如天之福、兩君相見、無亦唯是一矢以相加遺。焉用樂。言兩君戰乃相見、無用此樂。○遺、唯季反。焉、於虔反。
【読み】
子反曰く、如し天の福ありて、兩君相見えば、亦唯是れ一矢以て相加遺すること無からんや。焉んぞ樂を用いん。言うこころは、兩君は戰にて乃ち相見ゆれば、此の樂を用ゆること無し。○遺は、唯季反。焉は、於虔反。

寡君須矣。吾子其入也。
【読み】
寡君須つ。吾子其れ入れ、と。

賓曰、傳諸交讓得賓主辭者、多曰賓主以明之。
【読み】
賓曰く、傳諸々交讓して賓主の辭を得る者は、多く賓主と曰いて以て之を明らかにす。

若讓之以一矢、禍之大者。其何福之爲。
【読み】
若し之を讓[せ]むるに一矢を以てするは、禍の大なる者なり。其れ何の福と之れせん。

世之治也、諸侯閒於天子之事、則相朝也。王事閒缺則脩私好。○閒、音閑。
【読み】
世の治まるや、諸侯天子の事に閒あれば、則ち相朝す。王事閒缺なれば則ち私好を脩む。○閒は、音閑。

於是乎有享宴之禮。享以訓共儉、享有體薦。設几而不倚、爵盈而不飮、肴乾而不食。所以訓共儉。
【読み】
是に於て享宴の禮有り。享以て共儉を訓え、享に體薦有り。几を設けて倚らず、爵盈ちて飮まず、肴乾きて食わず。共儉を訓ゆる所以なり。

宴以示慈惠。宴、則折俎、相與共食。
【読み】
宴以て慈惠を示す。宴は、則ち折俎ありて、相與に共に食うなり。

共儉以行禮、而慈惠以布政。政以禮成、民是以息。百官承事、朝而不夕。不夕、言無事。○朝、直遙反。
【読み】
共儉以て禮を行いて、慈惠以て政を布く。政禮を以て成り、民是を以て息う。百官事を承け、朝して夕せず。夕せずとは、事無きを言う。○朝は、直遙反。

此公侯之所以扞城其民也。扞、蔽也。言享宴結好鄰國、所以蔽扞其民。○扞、戶旦反。
【読み】
此れ公侯の其の民を扞城する所以なり。扞は、蔽うなり。言うこころは、享宴して好を鄰國に結ぶは、其の民を蔽扞する所以なり。○扞は、戶旦反。

故詩曰、赳赳武夫、公侯干城。詩、周南之風。赳赳、武貌。干、扞也。言公侯之與武夫、止于扞難而已。○干、戶旦反。又如字。
【読み】
故に詩に曰く、赳赳たる武夫は、公侯の干城たり、と。詩は、周南の風。赳赳は、武き貌。干は、扞ぐなり。言うこころは、公侯と武夫と、難を扞ぐに止まるのみ。○干は、戶旦反。又字の如し。

及其亂也、諸侯貪冒、侵欲不忌、爭尋常以盡其民、八尺曰尋、倍尋曰常。言爭尺寸之地、以相攻伐。○冒、莫報反。又亡北反。
【読み】
其の亂るるに及びてや、諸侯貪冒にして、侵欲忌まず、尋常を爭いて以て其の民を盡くし、八尺を尋と曰い、尋に倍するを常と曰う。尺寸の地を爭いて、以て相攻伐するを言う。○冒は、莫報反。又亡北反。

略其武夫、以爲己腹心・股肱・爪牙。略、取也。言世亂、則公侯制禦武夫、以從己志、使侵害鄰國、爲搏噬之用無已。
【読み】
其の武夫を略[と]りて、以て己が腹心・股肱・爪牙と爲す。略は、取るなり。言うこころは、世亂るれば、則ち公侯武夫を制禦して、以て己が志に從え、鄰國を侵害して、搏噬の用と爲らしめて已むこと無し。

故詩曰、赳赳武夫、公侯腹心。舉詩之正、以駮亂義。詩言、治世則武夫能合德公侯、外爲扞城、内制其腹心。
【読み】
故に詩に曰く、赳赳たる武夫は、公侯の腹心たり、と。詩の正を舉げて、以て亂の義を駮[はく]す。詩には言う、治世には則ち武夫能く德を公侯に合わせ、外は扞城と爲り、内は其の腹心を制す、と。

天下有道、則公侯能爲民干城、而制其腹心。亂則反之。略其武夫、以爲己腹心・爪牙。○能爲、于僞反。
【読み】
天下道有れば、則ち公侯能く民の干城の爲にして、其の腹心を制せしむ。亂るれば則ち之に反す。其の武夫を略りて、以て己が腹心・爪牙と爲す。○能爲は、于僞反。

今吾子之言、亂之道也。不可以爲法。
【読み】
今吾子の言は、亂の道なり。以て法と爲す可からず。

然吾子主也。至敢不從。遂入卒事。
【読み】
然れども吾子は主なり。至敢えて從わざらんや、と。遂に入りて事を卒[お]わる。

歸以語范文子。文子曰、無禮必食言。吾死無日矣夫。言晉・楚不能久和、必復相伐。爲十六年、鄢陵戰張本。○語、魚據反。鄢、謁晩反。又一建反。
【読み】
歸りて以て范文子に語る。文子曰く、禮無ければ必ず言を食む。吾が死なんこと日無からんか、と。言うこころは、晉・楚久しく和すること能わず、必ず復相伐たん。十六年、鄢陵[えんりょう]の戰の爲の張本なり。○語は、魚據反。鄢は、謁晩反。又一建反。

冬、楚公子罷如晉聘、且涖盟。報郤至。
【読み】
冬、楚の公子罷晉に如きて聘し、且涖みて盟う。郤至に報ゆ。

十二月、晉侯及楚公子罷盟于赤棘。晉地。
【読み】
十二月、晉侯楚の公子罷と赤棘に盟う。晉の地。


〔經〕十有三年、春、晉侯使郤錡來乞師。將伐秦也。侯伯當召兵。而乞師、謙辭。○錡、魚綺反。
【読み】
〔經〕十有三年、春、晉侯郤錡をして來りて師を乞わしむ。將に秦を伐たんとするなり。侯伯は當に兵を召すべし。而るを師を乞うとは、謙辭なり。○錡は、魚綺反。

三月、公如京師。伐秦道過京師。因朝王。
【読み】
三月、公京師に如く。秦を伐つの道は京師を過る。因りて王に朝す。

夏、五月、公自京師遂會晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾人・滕人伐秦。曹伯盧卒于師。五同盟。○盧、如字。亦作廬。
【読み】
夏、五月、公京師より遂に晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・邾人[ちゅひと]・滕人に會して秦を伐つ。曹伯盧師に卒す。五たび同盟す。○盧は、字の如し。亦廬に作る。

秋、七月、公至自伐秦。無傳。
【読み】
秋、七月、公秦を伐ちてより至る。傳無し。

冬、葬曹宣公。
【読み】
冬、曹の宣公を葬る。

〔傳〕十三年、春、晉侯使郤錡來乞師。將事不敬。將事、致君命。
【読み】
〔傳〕十三年、春、晉侯郤錡をして來りて師を乞わしむ。事を將[おこな]うこと不敬なり。事を將うとは、君命を致すなり。

孟獻子曰、郤氏其亡乎。禮、身之幹也。敬、身之基也。郤子無基。且先君之嗣卿也。受命以求師、將社稷是衛而惰、棄君命也。不亡何爲。郤錡、郤克子。故曰嗣卿。爲十七年、晉殺郤錡傳。
【読み】
孟獻子曰く、郤氏は其れ亡びんか。禮は、身の幹なり。敬は、身の基なり。郤子基無し。且つ先君の嗣卿なり。命を受けて以て師を求め、將に社稷を是れ衛らんとして惰るは、君命を棄つるなり。亡びずして何をかせん、と。郤錡は、郤克の子。故に嗣卿と曰う。十七年、晉郤錡を殺す爲の傳なり。

三月、公如京師。宣伯欲賜、欲王賜己。
【読み】
三月、公京師に如く。宣伯賜を欲し、王の己に賜わんことを欲す。

請先使。王以行人之禮禮焉。不加厚。○使、所吏反。
【読み】
請いて先ず使いす。王行人の禮を以て禮す。加厚せず。○使は、所吏反。

孟獻子從。王以爲介、而重賄之。介、輔相威儀者。獻子相公以禮。故王重賜之。○從、才用反。
【読み】
孟獻子從う。王以て介と爲して、重く之に賄う。介は、威儀を輔相する者。獻子公を相くるに禮を以てす。故に王重く之に賜う。○從は、才用反。

公及諸侯朝王。遂從劉康公・成肅公、會晉侯伐秦。劉康公、王季子。劉・成二公不書、兵不加秦。
【読み】
公諸侯と王に朝す。遂に劉康公・成肅公に從い、晉侯に會して秦を伐つ。劉康公は、王季子なり。劉・成二公書さざるは、兵秦に加えざればなり。

成子受脤于社。不敬。脤、宜社之肉也。盛以脤器。故曰脤。宜、出兵祭社之名。○脤、市軫反。盛、音成。
【読み】
成子脤[しん]を社に受く。不敬なり。脤は、社を宜するの肉なり。盛るに脤器を以てす。故に脤と曰う。宜は、兵を出すとき社を祭るの名。○脤は、市軫反。盛は、音成。

劉子曰、吾聞之、民受天地之中以生。所謂命也。是以有動作・禮義・威儀之則、以定命也。能者養之以福、養威儀以致福。
【読み】
劉子曰く、吾れ之を聞く、民は天地の中を受けて以て生ず。所謂命なり。是を以て動作・禮義・威儀の則有りて、以て命を定む。能者は之を養いて以て福し、威儀を養いて以て福を致す。

不能者敗以取禍。是故君子勤禮、小人盡力。勤禮莫如致敬、盡力莫如敦篤。敬在養神、篤在守業。
【読み】
不能者は敗りて以て禍を取る。是の故に君子は禮を勤め、小人は力を盡くす。禮を勤むるは敬を致すに如くは莫く、力を盡くすは敦篤に如くは莫し。敬は神を養うに在り、篤は業を守るに在り。

國之大事、在祀與戎。祀有執膰、膰、祭肉。○膰、音煩。
【読み】
國の大事は、祀と戎とに在り。祀に膰[はん]を執ること有り、膰は、祭肉。○膰は、音煩。

戎有受脤。神之大節也。交神之大節。
【読み】
戎に脤を受くること有り。神の大節なり。神に交わるの大節。

今成子惰。棄其命矣。惰則失中和之氣。
【読み】
今成子惰る。其の命を棄てたり。惰れば則ち中和の氣を失う。

其不反乎。爲成肅公卒于瑕張本。
【読み】
其れ反らざらんか、と。成肅公瑕に卒する爲の張本なり。

夏、四月、戊午、晉侯使呂相絕秦、呂相、魏錡子。蓋口宣己命。○相、息亮反。
【読み】
夏、四月、戊午[つちのえ・うま]、晉侯呂相をして秦を絕たしめて、呂相は、魏錡の子。蓋し己が命を口宣するならん。○相は、息亮反。

曰、昔逮我獻公及穆公、晉獻公・秦穆公。○逮、音代。一音大計反。
【読み】
曰く、昔我が獻公の穆公と、晉の獻公・秦の穆公。○逮は、音代。一に音大計反。

相好、戮力同心、申之以盟誓、重之以昏姻。穆公夫人、獻公之女。○好、呼報反。戮、音六。又力幽反。字林、音遼。
【読み】
相好するに逮びて、力を戮[あ]わせ心を同じくし、之を申[かさ]ぬるに盟誓を以てし、之に重ぬるに昏姻を以てせり。穆公の夫人は、獻公の女。○好は、呼報反。戮は、音六。又力幽反。字林に、音遼。

天禍晉國、文公如齊、惠公如秦、辟驪姬也。不言狄・梁、舉所恃大國。○辟、音避。
【読み】
天晉國に禍して、文公齊に如き、惠公秦に如き、驪姬を辟くるなり。狄・梁を言わざるは、恃む所の大國を舉ぐるなり。○辟は、音避。

無祿、獻公卽世、穆公不忘舊德、俾我惠公用能奉祀于晉。僖十年、秦納惠公。
【読み】
無祿にして、獻公卽世せしも、穆公舊德を忘れずして、我が惠公をして用て能く祀を晉に奉ぜしめり。僖十年、秦惠公を納る。

又不能成大勳、而爲韓之師、僖十五年、秦伐晉獲惠公。
【読み】
又大勳を成すこと能わずして、韓の師を爲すも、僖十五年、秦晉を伐ちて惠公を獲たり。

亦悔于厥心、用集我文公、集、成也。
【読み】
亦厥の心に悔いて、用て我が文公を集[な]せしは、集は、成すなり。

是穆之成也。成功于晉。
【読み】
是れ穆の成せるなり。功を晉に成す。

文公躬擐甲冑、跋履山川、草行爲跋。○擐、音患。跋、蒲末反。
【読み】
文公躬ら甲冑を擐[つらぬ]き、山川を跋履し、草行を跋と爲す。○擐は、音患。跋は、蒲末反。

踰越險阻、征東之諸侯、虞・夏・商・周之胤、而朝諸秦、則亦旣報舊德矣。鄭人怒君之疆場、我文公帥諸侯及秦圍鄭、晉自以鄭貳於楚故圍之。鄭非侵秦也。晉以此誣秦軍。事在僖三十年。○場、音亦。
【読み】
險阻を踰越して、東の諸侯を征し、虞・夏・商・周の胤にして、諸を秦に朝せしめしは、則ち亦旣に舊德に報いたり。鄭人君の疆場を怒らせしかば、我が文公諸侯を帥いて秦と鄭を圍みしに、晉自ら鄭の楚に貳あるを以ての故に之を圍めり。鄭秦を侵すに非ず。晉此を以て秦軍を誣ゆ。事は僖三十年に在り。○場は、音亦。

秦大夫不詢于我寡君、擅及鄭盟、詢、謀也。盟者秦伯、謙言大夫。
【読み】
秦の大夫我が寡君に詢[はか]らずして、擅[ほしいまま]に鄭と盟いぬれば、詢は、謀るなり。盟う者秦伯なるも、謙して大夫と言う。

諸侯疾之、將致命于秦、致死命而討秦。時無諸侯。蓋諸侯遙致此意。
【読み】
諸侯之を疾[にく]みて、將に命を秦に致さんとして、死命を致して秦を討ぜんとす。時に諸侯無し。蓋し諸侯遙かに此の意を致すならん。

文公恐懼、綏靜諸侯、秦師克還無害、則是我有大造于西也。造、成也。言晉有成功於秦。
【読み】
文公恐懼し、諸侯を綏靜して、秦の師克く還りて害無かりしは、則ち是れ我が西に大造有るなり。造は、成すなり。言うこころは、晉秦に成功有り。

無祿、文公卽世、穆爲不弔、不見弔傷。
【読み】
無祿にして、文公卽世せしかば、穆不弔を爲して、弔傷せられず。

蔑死我君、寡我襄公、寡、弱也。
【読み】
我が君を蔑死し、我が襄公を寡[わか]しとし、寡は、弱[わか]きなり。

迭我殽地、奸絕我好、伐我保城、殄滅我費滑、伐保城、誣之。費滑、滑國都於費。今緱氏縣。○迭、直結反。又音逸。費、扶味反。緱、古侯反。
【読み】
我が殽[こう]の地を迭[す]ぎ、我が好を奸絕し、我が保城を伐ち、我が費滑を殄滅[てんめつ]し、保城を伐つとは、之を誣いたり。費滑とは、滑國は費に都す。今の緱氏縣。○迭は、直結反。又音逸。費は、扶味反。緱は、古侯反。

散離我兄弟、撓亂我同盟、滑、晉同姓。○撓、乃卯反。
【読み】
我が兄弟を散離し、我が同盟を撓亂し、滑は、晉の同姓。○撓は、乃卯反。

傾覆我國家。我襄公未忘君之舊勳、納文公之勳。
【読み】
我が國家を傾覆せんとす。我が襄公未だ君の舊勳を忘れざるも、文公を納るるの勳。

而懼社稷之隕、是以有殽之師。在僖三十三年。
【読み】
而れども社稷の隕ちんことを懼れ、是を以て殽の師有り。僖三十三年に在り。

猶願赦罪于穆公、晉欲求解於秦。
【読み】
猶罪を穆公に赦さんことを願えども、晉解を秦に求めんと欲す。

穆公弗聽、而卽楚謀我、天誘其衷、成王隕命。秦使鬭克歸楚求成。事見文十四年。文元年、楚弑成王。○見、賢遍反。
【読み】
穆公聽かずして、楚に卽きて我に謀りしに、天其の衷を誘きて、成王隕命せり。秦鬭克をして楚に歸して成らぎを求めしむ。事は文十四年に見ゆ。文元年、楚成王を弑す。○見は、賢遍反。

穆公是以不克逞志于我。逞、快也。
【読み】
穆公是を以て志を我に逞くすること克わざりき。逞は、快きなり。

穆・襄卽世、康・靈卽位。文六年、晉襄・秦穆皆卒。
【読み】
穆・襄卽世し、康・靈卽位す。文六年、晉襄・秦穆皆卒す。

康公我之自出、晉外甥。
【読み】
康公は我が自出[おい]なるに、晉の外甥。

又欲闕翦我公室、傾覆我社稷、帥我蝥賊、以來蕩搖我邊疆、蝥賊、食禾稼蟲名。謂秦納公子雍。○闕、其月反。又如字。蝥、莫侯反。
【読み】
又我が公室を闕翦し、我が社稷を傾覆せんことを欲して、我が蝥賊[ぼうぞく]を帥いて、以て來りて我が邊疆を蕩搖せしかば、蝥賊は、禾稼を食う蟲の名。秦公子雍を納るるを謂う。○闕は、其月反。又字の如し。蝥は、莫侯反。

我是以有令狐之役。在文七年。
【読み】
我れ是を以て令狐の役有り。文七年に在り。

康猶不悛。入我河曲、悛、改也。○悛、七全反。
【読み】
康猶悛[あらた]めず。我が河曲に入り、悛は、改むなり。○悛は、七全反。

伐我涑川、俘我王官、涑川、出河東聞喜縣、西南至蒲坂縣入河。○涑、息錄反。又音速。
【読み】
我が涑川[そくせん]を伐ち、我が王官を俘にし、涑川は、河東聞喜縣に出でて、西南して蒲坂縣に至り河に入る。○涑は、息錄反。又音速。

翦我羈馬、我是以有河曲之戰。在文十二年。
【読み】
我が羈馬を翦[き]れば、我れ是を以て河曲の戰有り。文十二年に在り。

東道之不通、則是康公絕我好也。言康公自絕。故不復東通晉。
【読み】
東道の通ぜざるは、則ち是れ康公我が好を絕てばなり。言うこころは、康公自ら絕つ。故に復東晉に通ぜず。

及君之嗣也、君、秦桓公。
【読み】
君の嗣ぐに及びてや、君は、秦の桓公。

我君景公引領西望曰、庶撫我乎。望秦撫恤晉。
【読み】
我が君景公領を引きて西望して曰く、庶わくは我を撫でんか、と。秦の晉を撫恤せんことを望む。

君亦不惠稱盟、不肯稱晉望而共盟。○稱、尺證反。
【読み】
君も亦惠みて稱盟せず、晉の望みに稱[かな]いて共に盟うことを肯わず。○稱は、尺證反。

利吾有狄難、謂晉滅潞氏時。○難、乃旦反。
【読み】
吾が狄の難有るを利して、晉潞氏を滅ぼす時を謂う。○難は、乃旦反。

入我河縣、焚我箕郜、芟夷我農功、夷、傷也。○郜、古報反。
【読み】
我が河縣に入り、我が箕郜[きこう]を焚き、我が農功を芟夷[さんい]し、夷は、傷つくなり。○郜は、古報反。

虔劉我邊垂、虔・劉、皆殺也。
【読み】
我が邊垂を虔劉せしかば、虔・劉は、皆殺すなり。

我是以有輔氏之聚。聚、衆也。在宣十五年。
【読み】
我れ是を以て輔氏の聚有り。聚は、衆なり。宣十五年に在り。

君亦悔禍之延、延、長也。
【読み】
君も亦禍の延[なが]きを悔いて、延は、長きなり。

而欲徼福于先君獻・穆、晉獻・秦穆。
【読み】
福を先君獻・穆に徼[もと]めんことを欲して、晉の獻・秦の穆。

使伯車來命我景公、伯車、秦桓公子。
【読み】
伯車をして來りて我が景公に命ぜしめて、伯車は、秦の桓公の子。

曰、吾與女同好棄惡、復脩舊德、以追念前勳。言誓未就、景公卽世。我寡君是以有令狐之會。令狐會、在十一年。申厲公之命、宜言寡人。稱君誤也。○復、音服。又扶又反。
【読み】
曰く、吾れ女と好を同じくし惡を棄て、復舊德を脩めて、以て前勳を追念せん、と。言誓未だ就らざるに、景公卽世せり。我が寡君是を以て令狐の會有り。令狐の會は、十一年に在り。厲公の命を申[かさ]ぬれば、宜しく寡人と言うべし。君と稱するは誤りなり。○復は、音服。又扶又反。

君又不祥、祥、善也。
【読み】
君又不祥にして、祥は、善きなり。

背棄盟誓、白狄及君同州、及、與也。
【読み】
盟誓に背棄し、白狄は君と州を同じくし、及は、與なり。

君之仇讎、而我昏姻也、季隗、廧咎如。赤狄之女也。白狄伐而獲之、納諸文公。○隗、五罪反。廧、在良反。咎、音羔。
【読み】
君の仇讎にして、我が昏姻なるに、季隗は、廧咎如[しょうこうじょ]。赤狄の女なり。白狄伐ちて之を獲て、諸を文公に納れぬ。○隗は、五罪反。廧は、在良反。咎は、音羔。

君來賜命曰、吾與女伐狄。寡君不敢顧昏姻、畏君之威、而受命于吏。君有二心於狄、曰、晉將伐女。狄應且憎、是用告我。言狄雖應答秦、心實憎秦無信。
【読み】
君來りて命を賜いて曰く、吾れ女と狄を伐たん、と。寡君敢えて昏姻を顧みず、君の威を畏れて、命を吏に受けぬ。君狄に二心有りて、曰く、晉將に女を伐たんとす、と。狄應うれども且つ憎めば、是を用[もっ]て我に告げたり。言うこころは、狄秦に應答すと雖も、心實に秦の信無きを憎む。

楚人惡君之二三其德也、亦來告我曰、秦背令狐之盟、而來求盟于我、昭告昊天・上帝・秦三公・楚三王、三公、穆・康・共。三王、成・穆・莊。○昊、戶老反。共、音恭。
【読み】
楚人も君の其の德を二三にするを惡むや、亦來りて我に告げて曰く、秦令狐の盟に背きて、來りて盟を我に求め、昭らかに昊天・上帝・秦の三公・楚の三王に告げて、三公は、穆・康・共。三王は、成・穆・莊。○昊は、戶老反。共は、音恭。

曰、余雖與晉出入、出入、猶往來。
【読み】
曰く、余晉と出入すと雖も、出入は、猶往來のごとし。

余唯利是視。不穀惡其無成德、是用宣之、以懲不壹。諸侯備聞此言、斯是用痛心疾首、暱就寡人、疾、亦痛也。暱、親也。○暱、女乙反。
【読み】
余は唯利を是れ視る、と。不穀其の成德無きを惡み、是を用て之を宣べて、以て不壹を懲らす、と。諸侯備に此の言を聞き、斯に是を用て心を痛めしめ首を疾ましめて、寡人に暱就[じっしゅう]すれば、疾も、亦痛むなり。暱は、親しむなり。○暱は、女乙反。

寡人帥以聽命、唯好是求。
【読み】
寡人帥て以て命を聽き、唯好を是れ求めんとす。

君若惠顧諸侯、矜哀寡人、而賜之盟、則寡人之願也。其承寧諸侯以退。承君之意、以寧靜諸侯。
【読み】
君若し諸侯を惠顧し、寡人を矜哀して、之に盟を賜わば、則ち寡人の願いなり。其れ承けて諸侯を寧んじて以て退かん。君の意を承けて、以て諸侯を寧靜せん。

豈敢徼亂。徼、要也。
【読み】
豈敢えて亂を徼めんや。徼[きょう]は、要むるなり。

君若不施大惠、寡人不佞。其不能以諸侯退矣。敢盡布之執事。俾執事實圖利之。俾、使也。
【読み】
君若し大惠を施さずんば、寡人不佞なり。其れ諸侯を以[い]て退くこと能わじ。敢えて盡く之を執事に布く。執事をして實に之を圖利せしむ、と。俾は、使むなり。

秦桓公旣與晉厲公爲令狐之盟、而又召狄與楚、欲道以伐晉。諸侯是以睦於晉。晉辭多誣秦。故傳據此三事、以正秦罪。
【読み】
秦の桓公旣に晉の厲公と令狐の盟を爲して、又狄と楚とを召して、道[みちび]きて以て晉を伐たんことを欲す。諸侯是を以て晉に睦まじ。晉の辭多く秦を誣ゆる。故に傳此の三事に據りて、以て秦の罪を正す。

晉欒書將中軍。荀庚佐之。庚代荀首。
【読み】
晉の欒書中軍に將たり。荀庚之に佐たり。庚荀首に代わる。

士燮將上軍。代荀庚。
【読み】
士燮[ししょう]上軍に將たり。荀庚に代わる。

郤錡佐之。代士燮。
【読み】
郤錡之に佐たり。士燮に代わる。

韓厥將下軍。代郤錡。
【読み】
韓厥[かんけつ]下軍に將たり。郤錡に代わる。

荀罃佐之。代趙同。
【読み】
荀罃[じゅんおう]之に佐たり。趙同に代わる。

趙旃將新軍。代韓厥。○旃、之然反。
【読み】
趙旃[ちょうせん]新軍に將たり。韓厥に代わる。○旃は、之然反。

郤至佐之。代趙括。
【読み】
郤至之に佐たり。趙括に代わる。

郤毅御戎。欒鍼爲右。郤毅、郤至弟。欒鍼、欒書子。○鍼、其廉反。
【読み】
郤毅戎に御たり。欒鍼[らんけん]右爲り。郤毅は、郤至の弟。欒鍼は、欒書の子。○鍼は、其廉反。

孟獻子曰、晉帥乘和。師必有大功。帥、軍帥。乘、車士。○帥、所類反。乘、繩證反。
【読み】
孟獻子曰く、晉の帥乘和す。師必ず大功有らん、と。帥は、軍帥。乘は、車士。○帥は、所類反。乘は、繩證反。

五月、丁亥、晉師以諸侯之師及秦師戰于麻隧。秦師敗績。獲秦成差及不更女父。不更、秦爵。戰敗績不書、以爲晉直秦曲、則韓役書戰。時公在師、復不須告。克獲有功、亦無所諱。蓋經文闕漏、傳文獨存。○差、初佳反。又初宜反。更、音庚。女、音汝。復、扶又反。
【読み】
五月、丁亥[ひのと・い]、晉の師諸侯の師を以て秦の師と麻隧に戰う。秦の師敗績す。秦の成差と不更女父とを獲たり。不更は、秦の爵。戰の敗績を書さざるは、以て晉は直、秦は曲とすれば、則ち韓の役には戰を書せり。時に公師に在れば、復告ぐるを須たず。克獲して功有れば、亦諱む所無し。蓋し經文闕漏して、傳文獨り存するならん。○差は、初佳反。又初宜反。更は、音庚。女は、音汝。復は、扶又反。

曹宣公卒于師。
【読み】
曹の宣公師に卒す。

師遂濟涇、及侯麗而還。涇水、出安定東南、經扶風・京兆・高陸縣入渭也。○麗、力馳反。
【読み】
師遂に涇を濟[わた]り、侯麗に及びて還る。涇水は、安定の東南に出でて、扶風・京兆・高陸縣を經て渭に入るなり。○麗は、力馳反。

迓晉侯于新楚。迓、迎也。旣戰晉侯止新楚。故師還過迎之。麻隧・侯麗・新楚、皆秦地。
【読み】
晉侯を新楚に迓[むか]う。迓[が]は、迎うなり。旣に戰いて晉侯新楚に止まる。故に師還りて過りて之を迎う。麻隧・侯麗・新楚は、皆秦の地。

成肅公卒于瑕。終劉子之言。瑕、晉地。
【読み】
成肅公瑕に卒す。劉子の言を終える。瑕は、晉の地。

六月、丁卯、夜、鄭公子班自訾求入于大宮。不能。殺子印・子羽。訾、鄭地。大宮、鄭祖廟。十年、班出奔許。今欲還爲亂。子印・子羽、皆穆公子。○班、亦作般。訾、子斯反。大、音泰。
【読み】
六月、丁卯[ひのと・う]、夜、鄭の公子班訾[し]より大宮に入らんことを求む。能わず。子印・子羽を殺す。訾は、鄭の地。大宮は、鄭の祖廟。十年、班許に出奔す。今還りて亂を爲さんことを欲す。子印・子羽は、皆穆公の子。○班は、亦作般。訾は、子斯反。大は、音泰。

反軍于市。己巳、子駟帥國人盟于大宮、子駟、穆公子。
【読み】
反りて市に軍す。己巳[つちのと・み]、子駟國人を帥いて大宮に盟い、子駟は、穆公の子。

遂從而盡焚之、焚、燒也。
【読み】
遂に從いて盡く之を焚き、焚は、燒くなり。

殺子如・子駹・孫叔・孫知。子如、公子班。子駹、班弟。孫叔、子如子。孫知、子駹子。○駹、武邦反。
【読み】
子如・子駹[しぼう]・孫叔・孫知を殺す。子如は、公子班。子駹は、班の弟。孫叔は、子如の子。孫知は、子駹の子。○駹は、武邦反。

曹人使公子負芻守、使公子欣時逆曹伯之喪。二子、皆曹宣公庶子。○芻、初倶反。
【読み】
曹人公子負芻[ふすう]をして守らしめ、公子欣時をして曹伯の喪を逆[むか]えしむ。二子は、皆曹の宣公の庶子。○芻は、初倶反。

秋、負芻殺其大子而自立也。宣公大子。
【読み】
秋、負芻其の大子を殺して自立す。宣公の大子。

諸侯乃請討之。晉人以其役之勞、請俟他年。冬、葬曹宣公。旣葬、子臧將亡。子臧、公子欣時。
【読み】
諸侯乃ち之を討ぜんと請う。晉人其の役の勞するを以て、他年を俟たんと請う。冬、曹の宣公を葬る。旣に葬り、子臧將に亡[に]げんとす。子臧は、公子欣時。

國人皆將從之。不義負芻故。
【読み】
國人皆將に之に從わんとす。負芻を不義とする故なり。

成公乃懼、成公、負芻。
【読み】
成公乃ち懼れ、成公は、負芻。

告罪、且請焉。請留子臧。
【読み】
罪を告げ、且つ請う。子臧を留めんと請う。

乃反而致其邑。還邑於成公。爲十五年、執曹伯傳。
【読み】
乃ち反りて其の邑を致す。邑を成公に還す。十五年、曹伯を執うる爲の傳なり。


〔經〕十有四年、春、王正月、莒子朱卒。無傳。九年、盟於蒲。
【読み】
〔經〕十有四年、春、王の正月、莒子朱卒す。傳無し。九年、蒲に盟う。

夏、衛孫林父自晉歸于衛。晉納之。故曰歸。
【読み】
夏、衛の孫林父晉より衛に歸る。晉之を納る。故に歸ると曰う。

秋、叔孫僑如如齊逆女。成公逆夫人、最爲得禮。而經無納幣者、文闕絕也。
【読み】
秋、叔孫僑如齊に如きて女を逆[むか]う。成公の夫人を逆うる、最も禮を得たりとす。而るに經に納幣無きは、文の闕絕ならん。

鄭公子喜帥師伐許。九月、僑如以夫人婦姜氏至自齊。冬、十月、庚寅、衛侯臧卒。五同盟。
【読み】
鄭の公子喜師を帥いて許を伐つ。九月、僑如夫人婦姜氏を以[い]て齊より至る。冬、十月、庚寅[かのえ・とら]、衛侯臧卒す。五たび同盟す。

秦伯卒。無傳。二年、大夫盟於蜀。而不赴以名。例在隱七年。
【読み】
秦伯卒す。傳無し。二年、大夫蜀に盟う。而るに赴[つ]ぐるに名を以てせず。例は隱七年に在り。

〔傳〕十四年、春、衛侯如晉。晉侯强見孫林父焉。林父以七年奔晉。强見、欲歸之。○强、其丈反。見、賢遍反。
【読み】
〔傳〕十四年、春、衛侯晉に如く。晉侯强いて孫林父を見えしめんとす。林父七年を以て晉に奔る。强いて見えしめんとすとは、之を歸さんと欲するなり。○强は、其丈反。見は、賢遍反。

定公不可。夏、衛侯旣歸。晉侯使郤犫送孫林父而見之。衛侯欲辭。定姜曰、不可。定姜、定公夫人。
【読み】
定公可[き]かず。夏、衛侯旣に歸る。晉侯郤犫[げきしゅう]をして孫林父を送りて之を見えしむ。衛侯辭せんと欲す。定姜曰く、不可なり。定姜は、定公の夫人。

是先君宗卿之嗣也。同姓之卿。
【読み】
是れ先君宗卿の嗣なり。同姓の卿。

大國又以爲請。不許將亡。雖惡之、不猶愈於亡乎。君其忍之。違大國、必見伐。故亡。○惡、烏路反。
【読み】
大國又以て請うことを爲す。許さずんば將に亡びんとす。之を惡むと雖も、猶亡ぶるより愈[まさ]らずや。君其れ之を忍べ。大國に違えば、必ず伐たる。故に亡ぶ。○惡は、烏路反。

安民而宥宗卿、不亦可乎。衛侯見而復之。復林父位。
【読み】
民を安んじて宗卿を宥むるは、亦可ならずや、と。衛侯見えて之を復す。林父を位に復す。

衛侯饗苦成叔。成叔、郤犫。
【読み】
衛侯苦成叔を饗す。成叔は、郤犫。

甯惠子相。相、佐禮。惠子、甯殖。
【読み】
甯惠子[ねいけいし]相[たす]く。相は、禮を佐く。惠子は、甯殖。

苦成叔傲。甯子曰、苦成家其亡乎。古之爲享食也、以觀威儀、省禍福也。故詩曰、兕觵其觩。旨酒思柔。詩、小雅。言君子好禮。飮酒皆思柔德、雖設兕觵、觩然不用。以兕觵爲觵、所以罸不敬。觩、陳設之貌。○傲、五報反。食、音嗣。兕、辭姊反。觵、古橫反。觩、音虯。
【読み】
苦成叔傲れり。甯子曰く、苦成は家其れ亡びんか。古の享食を爲すや、以て威儀を觀て、禍福を省みるなり。故に詩に曰く、兕觵[じこう]其れ觩[きゅう]たり。旨酒柔を思う。詩は、小雅。言うこころは、君子禮を好む。酒を飮むとき皆柔德を思い、兕觵を設くと雖も、觩然として用いざるなり。兕觵を以て觵とするは、不敬を罸する所以なり。觩は、陳設の貌。○傲は、五報反。食は、音嗣。兕は、辭姊反。觵は、古橫反。觩は、音虯[きゅう]。

彼交匪傲、萬福來求。彼之交於事、而不惰傲、乃萬福之所求。
【読み】
彼の交わりて傲らざるは、萬福來り求む、と。彼の事に交わりて、惰傲せざるは、乃ち萬福に之れ求めらる。

今夫子傲。取禍之道也。爲七年、郤氏亡傳。
【読み】
今夫子傲れり。禍を取るの道なり、と。七年、郤氏亡ぶる爲の傳なり。

秋、宣伯如齊逆女。稱族、尊君命也。
【読み】
秋、宣伯齊に如きて女を逆う。族を稱するは、君命を尊ぶなり。

八月、鄭子罕伐許、敗焉。爲許所敗。○所敗、必邁反。
【読み】
八月、鄭の子罕許を伐ち、敗らる。許の爲に敗らる。○所敗は、必邁反。

戊戌、鄭伯復伐許。庚子、入其郛。郛、郭也。
【読み】
戊戌[つちのえ・いぬ]、鄭伯復許を伐つ。庚子[かのえ・ね]、其の郛[ふ]に入る。郛は、郭なり。

許人平以叔申之封。四年、鄭公孫申疆許田。許人敗之、不得定其封疆。今許以是所封田、求和於鄭。
【読み】
許人平らぐに叔申の封を以てす。四年、鄭の公孫申許の田を疆う。許人之を敗り、其の封疆を定むることを得ず。今許是の封ずる所の田を以て、和を鄭に求む。

九月、僑如以夫人婦姜氏至自齊。舍族、尊夫人也。舍族、謂不稱叔孫。○舍、音捨。
【読み】
九月、僑如夫人婦姜氏を以て齊より至る。族を舍つるは、夫人を尊ぶなり。族を舍つとは、叔孫を稱せざるを謂う。○舍は、音捨。

故君子曰、春秋之稱、微而顯。辭微而義顯。○稱、尺證反。
【読み】
故に君子曰く、春秋の稱は、微にして顯わる。辭微にして義顯わる。○稱は、尺證反。

志而晦、志、記也。晦、亦微也。謂約言以記事、事敍而文微。
【読み】
志[しる]して晦[くら]く、志は、記すなり。晦も、亦微なり。約言して以て事を記し、事敍でて文微なることを謂う。

婉而成章、婉、曲也。謂曲屈其辭、有所辟諱、以示大順、而成篇章。
【読み】
婉[ま]げて章を成し、婉は、曲ぐるなり。其の辭を曲屈して、辟諱する所有りて、以て大順を示して、篇章を成すを謂う。

盡而不汙、謂直言其事、盡其事實、無所汙曲。○汙、憂于反。
【読み】
盡くして汙ならず、其の事を直言し、其の事實を盡くし、汙曲する所無きを謂う。○汙は、憂于反。

懲惡而勸善。善名必書、惡名不滅。所以爲懲勸。
【読み】
惡を懲らして善を勸む。善名は必ず書し、惡名は滅[け]さず。懲勸を爲す所以なり。

非聖人誰能脩之。脩史策成此五者。
【読み】
聖人に非ずんば誰か能く之を脩めんや、と。史策を脩めて此の五つの者を成す。

衛侯有疾。使孔成子・甯惠子立敬姒之子衎、以爲大子。成子、孔達之孫。敬姒、定公妾。衎、獻公。
【読み】
衛侯疾有り。孔成子・甯惠子をして敬姒の子衎[かん]を立てて、以て大子と爲さしむ。成子は、孔達の孫。敬姒は、定公の妾。衎は、獻公。

冬、十月、衛定公卒。
【読み】
冬、十月、衛の定公卒す。

夫人姜氏旣哭而息、見大子之不哀也、不内酌飮、歎曰、是夫也、將不唯衛國之敗、其必始於未亡人。定姜言、獻公行無禮、必從己始。下言暴妾使余是也。○内、如字。又音納。酌、市略反。又章略反。
【読み】
夫人姜氏旣に哭して息い、大子の哀しまざるを見て、酌飮を内れず、歎じて曰く、是の夫や、將に唯衛國を敗るのみならず、其れ必ず未亡人より始めんとす。定姜言う、獻公無禮を行うこと、必ず己より始めん、と。下に暴にして余を妾使すと言う、是れなり。○内は、字の如し。又音納。酌は、市略反。又章略反。

烏呼、天禍衛國也夫。吾不獲鱄也、使主社稷。鱄、衎之母弟。○鱄、市臠反。一音專。
【読み】
烏呼、天衛國に禍するかな、吾れ鱄[せん]を獲て、社稷を主らしめざること、と。鱄は、衎の母弟。○鱄は、市臠反。一に音專。

大夫聞之、無不聳懼。孫文子自是不敢舍其重器於衛、寶器。○舍、音赦。或音捨。
【読み】
大夫之を聞きて、聳懼[しょうく]せざること無し。孫文子是より敢えて其の重器を衛に舍かず、寶器。○舍は、音赦。或は音捨。

盡寘諸戚、寘、置也。戚、孫氏邑。
【読み】
盡く諸を戚に寘きて、寘は、置くなり。戚は、孫氏の邑。

而甚善晉大夫。備亂起、欲以爲援。爲襄十四年、衛侯出奔傳。
【読み】
甚だ晉の大夫を善くす。亂の起こるに備え、以て援と爲さんと欲す。襄十四年、衛侯出奔する爲の傳なり。


〔經〕十有五年、春、王二月、葬衛定公。無傳。
【読み】
〔經〕十有五年、春、王の二月、衛の定公を葬る。傳無し。

三月、乙巳、仲嬰齊卒。無傳。襄仲子、公孫歸父弟。宣十八年、逐東門氏、旣而又使嬰齊紹其後、曰仲氏。
【読み】
三月、乙巳[きのと・み]、仲嬰齊卒す。傳無し。襄仲の子、公孫歸父の弟。宣十八年、東門氏を逐い、旣にして又嬰齊をして其の後を紹がしめ、仲氏と曰う。

癸丑、公會晉侯・衛侯・鄭伯・曹伯・宋世子成・齊國佐・邾人同盟于戚。晉侯執曹伯、歸于京師。不稱人以執者、曹伯罪不及民。歸之京師、禮也。
【読み】
癸丑[みずのと・うし]、公晉侯・衛侯・鄭伯・曹伯・宋の世子成・齊の國佐・邾人[ちゅひと]に會して戚に同盟す。晉侯曹伯を執えて、京師に歸[おく]る。人と稱して以て執えざるは、曹伯の罪民に及ばざればなり。之を京師に歸るは、禮なり。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

夏、六月、宋公固卒。四同盟。
【読み】
夏、六月、宋公固卒す。四たび同盟す。

楚子伐鄭。秋、八月、庚辰、葬宋共公。三月而葬。速。
【読み】
楚子鄭を伐つ。秋、八月、庚辰[かのえ・たつ]、宋の共公を葬る。三月にして葬る。速きなり。

宋華元出奔晉。宋華元自晉歸于宋。華元欲挾晉以自重。故以外納告。
【読み】
宋の華元出でて晉に奔る。宋の華元晉より宋に歸る。華元晉を挾みて以て自ら重くせんと欲す。故に外納を以て告ぐ。

宋殺其大夫山。不書氏、明背其族。
【読み】
宋其の大夫山を殺す。氏を書さざるは、其の族に背くを明かすなり。

宋魚石出奔楚。公子目夷之曾孫。
【読み】
宋の魚石出でて楚に奔る。公子目夷の曾孫。

冬、十有一月、叔孫僑如會晉士燮・齊高無咎・宋華元・衛孫林父・鄭公子鰌・邾人、會吳于鍾離。吳、夷。未嘗與中國會。今始來通。晉帥諸侯大夫而會之。故殊會、明本非同好。鐘離、楚邑。淮南縣。○燮、息協反。鰌、音秋。
【読み】
冬、十有一月、叔孫僑如晉の士燮[ししょう]・齊の高無咎・宋の華元・衛の孫林父・鄭の公子鰌[しゅう]・邾人[ちゅひと]に會して、吳に鍾離に會す。吳は、夷なり。未だ嘗て中國と會せず。今始めて來り通ず。晉諸侯の大夫を帥いて之に會す。故に會を殊にして、本同好に非ざることを明らかにす。鐘離は、楚の邑。淮南縣。○燮は、息協反。鰌は、音秋。

許遷于葉。許畏鄭、南依楚。故以自遷爲文。葉、今南陽葉縣也。○葉、舒涉反。
【読み】
許葉[しょう]に遷る。許鄭を畏れて、南楚に依る。故に自ら遷るを以て文を爲す。葉は、今の南陽の葉縣なり。○葉は、舒涉反。

〔傳〕十五年、春、會于戚、討曹成公也。討其殺大子而自立。事在十三年。
【読み】
〔傳〕十五年、春、戚に會するは、曹の成公を討ずるなり。其の大子を殺して自立するを討ず。事は十三年に在り。

執而歸諸京師。
【読み】
執えて諸を京師に歸る。

書曰晉侯執曹伯、不及其民也。惡不及民。
【読み】
書して晉侯曹伯を執うと曰うは、其の民に及ばざればなり。惡民に及ばず。

凡君不道於其民、諸侯討而執之、則曰某人執某侯。稱人、示衆所欲執。
【読み】
凡そ君其の民に不道なるを、諸侯討じて之を執うれば、則ち某の人某の侯を執うと曰う。人と稱するは、衆の執えんことを欲する所なるを示すなり。

不然則否。謂身犯不義者。
【読み】
然らざれば則ち否[しか]せず。身ら不義を犯す者を謂う。

諸侯將見子臧於王而立之。子臧辭曰、前志有之、曰、聖達節、聖人應天命、不拘常禮。
【読み】
諸侯將に子臧を王に見えしめて之を立てんとす。子臧辭して曰く、前志に之れ有り、曰く、聖は節に達し、聖人は天命に應じて、常禮に拘らず。

次守節、謂賢者。
【読み】
次は節を守り、賢者を謂う。

下失節。愚者妄動。
【読み】
下は節を失う、と。愚者は妄りに動く。

爲君非吾節也。雖不能聖、敢失守乎。遂逃奔宋。
【読み】
君爲るは吾が節に非ざるなり。聖なること能わずと雖も、敢えて守りを失わんや、と。遂に逃げて宋に奔る。

夏、六月、宋共公卒。爲下宋亂起。
【読み】
夏、六月、宋の共公卒す。下の宋亂るが爲の起なり。

楚將北師。侵鄭・衛。
【読み】
楚將に師を北にせんとす。鄭・衛を侵す。

子囊曰、新與晉盟而背之、無乃不可乎。子反曰、敵利則進。何盟之有。晉・楚盟在十二年。子囊、莊王子、公子貞。
【読み】
子囊曰く、新たに晉と盟いて之に背かば、乃ち不可なること無からんや、と。子反曰く、敵に利あれば則ち進む。何の盟か之れ有らん、と。晉・楚の盟は十二年に在り。子囊は、莊王の子、公子貞。

申叔時老矣在申。老歸本邑。
【読み】
申叔時老して申に在り。老して本邑に歸る。

聞之曰、子反必不免。信以守禮、禮以庇身。信・禮之亡、欲免得乎。言不得免。
【読み】
之を聞きて曰く、子反は必ず免れじ。信は以て禮を守り、禮は以て身を庇う。信・禮の亡ぶる、免れんことを欲すとも得んや、と。言うこころは、免るることを得ず。

楚子侵鄭、及暴隧、遂侵衛、及首止。鄭子罕侵楚、取新石。新石、楚邑。
【読み】
楚子鄭を侵して、暴隧に及び、遂に衛を侵して、首止に及ぶ。鄭の子罕楚を侵して、新石を取る。新石は、楚の邑。

欒武子欲報楚。韓獻子曰、無庸。庸、用也。
【読み】
欒武子楚に報いんことを欲す。韓獻子曰く、庸[もち]ゆること無かれ。庸は、用ゆるなり。

使重其罪、民將叛之。背盟數戰、罪也。
【読み】
其の罪を重ねしめば、民將に之に叛かんとす。盟に背きて數々戰うは、罪なり。

無民孰戰。爲明年、晉敗楚於鄢陵傳。
【読み】
民無くば孰か戰わん、と。明年、晉楚を鄢陵[えんりょう]に敗る爲の傳なり。

秋、八月、葬宋共公。於是華元爲右師。魚石爲左師。蕩澤爲司馬。蕩澤、公孫壽之孫。
【読み】
秋、八月、宋の共公を葬る。是に於て華元右師爲り。魚石左師爲り。蕩澤司馬爲り。蕩澤は、公孫壽の孫。

華喜爲司徒。華父督之玄孫。
【読み】
華喜司徒爲り。華父督の玄孫。

公孫師爲司城。莊公孫。
【読み】
公孫師司城爲り。莊公の孫。

向爲人爲大司寇。鱗朱爲少司寇。鱗矔孫。○矔、古亂反。
【読み】
向爲人[しょういじん]大司寇爲り。鱗朱少司寇爲り。鱗矔の孫。○矔は、古亂反。

向帶爲大宰。魚府爲少宰。
【読み】
向帶[しょうたい]大宰爲り。魚府少宰爲り。

蕩澤弱公室、殺公子肥。輕公室以爲弱。故殺其枝黨。肥、文公子。
【読み】
蕩澤公室を弱しとして、公子肥を殺す。公室を輕んじて以て弱しと爲す。故に其の枝黨を殺す。肥は、文公の子。

華元曰、我爲右師。君臣之訓、師所司也。今公室卑而不能正、不能討蕩澤。
【読み】
華元曰く、我れ右師爲り。君臣の訓えは、師の司る所なり。今公室卑しくして正すこと能わざるは、蕩澤を討ずること能わず。

吾罪大矣。不能治官、敢賴寵乎。乃出奔晉。
【読み】
吾が罪大なり。官を治むること能わずして、敢えて寵に賴らんや、と。乃ち出でて晉に奔る。

二華、戴族也。華元・華喜。
【読み】
二華は、戴の族なり。華元・華喜。

司城、莊族也。六官者、皆桓族也。魚石・蕩澤・向爲人・鱗朱・向帶・魚府、皆出桓公。
【読み】
司城は、莊の族なり。六官は、皆桓の族なり。魚石・蕩澤・向爲人・鱗朱・向帶・魚府は、皆桓公より出づ。

魚石將止華元。魚府曰、右師反、必討。是無桓氏也。恐華元還討蕩澤、幷及六族。
【読み】
魚石將に華元を止めんとす。魚府曰く、右師反らば、必ず討ぜん。是れ桓氏無からん、と。華元還りて蕩澤を討じて、幷せて六族に及ばんことを恐る。

魚石曰、右師苟獲反、雖許之討、必不敢。言畏桓族强。
【読み】
魚石曰く、右師苟も反ることを獲ば、之に討を許すと雖も、必ず敢えてせじ。桓族の强きを畏るるを言う。

且多大功、國人與之。不反、懼桓氏之無祀於宋也。華元大功、克合晉・楚之成、劫子反以免宋圍。
【読み】
且つ大功多くして、國人之に與す。反さずんば、懼れらくは桓氏の宋に祀無からんことを。華元の大功は、克く晉・楚の成[たい]らぎを合わせ、子反を劫かして以て宋の圍を免れしむるなり。

右師討、猶有戌在。向戌、桓公曾孫。言其賢、華元必討。
【読み】
右師討ずとも、猶戌[じゅつ]が在る有り。向戌は、桓公の曾孫。其の賢を、華元必ず討ぜざるを言う。

桓氏雖亡、必偏。偏、不盡。
【読み】
桓氏亡ぶと雖も、必ず偏ならん、と。偏は、盡きざるなり。

魚石自止華元于河上。請討。許之。乃反。使華喜・公孫師帥國人攻蕩氏、殺子山。喜・師、非桓族。故使攻之。
【読み】
魚石自ら華元を河上に止む。討ぜんと請う。之を許す。乃ち反る。華喜・公孫師をして國人を帥いて蕩氏を攻めしめ、子山を殺す。喜・師は、桓族に非ず。故に之を攻めしむ。

書曰宋殺其大夫山、言背其族也。蕩氏、宋公族。還害公室。故去族以示其罪。
【読み】
書して宋其の大夫山を殺すと曰うは、其の族に背くを言うなり。蕩氏は、宋の公族。還って公室を害す。故に族を去りて以て其の罪を示す。

魚石・向爲人・鱗朱・向帶・魚府出舍於雎上。雎、水名。五大夫畏同族罪及、將出奔。○雎、音雖。
【読み】
魚石・向爲人・鱗朱・向帶・魚府出でて雎上[すいじょう]に舍る。雎は、水の名。五大夫同族にして罪の及ばんことを畏れ、將に出奔せんとす。○雎は、音雖。

華元使止之。不可。冬、十月、華元自止之。不可。乃反。五子不止。華元還。
【読み】
華元之を止めしむ。可[き]かず。冬、十月、華元自ら之を止む。可かず。乃ち反る。五子止まらず。華元還る。

魚府曰、今不從、不得入矣。不得復入宋。○復、扶又反。
【読み】
魚府曰く、今從わずんば、入ることを得じ。復宋に入ることを得ず。○復は、扶又反。

右師視速而言疾。有異志焉。若不我納、今將馳矣。登丘而望之、則馳。騁而從之、五子亦馳逐之。○登丘而望之則馳、絶句。騁、勑景反。
【読み】
右師視ること速やかにして言うこと疾し。異志有り。若し我を納れざれば、今將に馳せんとす、と。丘に登りて之を望めば、則ち馳す。騁[は]せて之を從[お]えば、五子も亦馳せて之を逐う。○登丘而望之則馳は、絶句。騁[てい]は、勑景反。

則決睢澨、澨、水涯。決、壞也。○澨、市制反。涯、魚佳反。壞、音怪。
【読み】
則ち睢の澨[ぜい]を決[さく]り、澨は、水涯。決は、壞るなり。○澨は、市制反。涯は、魚佳反。壞は、音怪。

閉門登陴矣。左師・二司寇・二宰遂出奔楚。四大夫不書、獨魚石告。
【読み】
門を閉じて陴に登れり。左師・二司寇・二宰遂に出でて楚に奔る。四大夫書さざるは、獨り魚石のみを告ぐればなり。

華元使向戌爲左師、老佐爲司馬、樂裔爲司寇、以靖國人。老佐、戴公五世孫。
【読み】
華元向戌をして左師と爲し、老佐を司馬と爲し、樂裔を司寇爲らしめて、以て國人を靖んず。老佐は、戴公五世の孫。

晉三郤害伯宗、譖而殺之、及欒弗忌。欒弗忌、晉賢大夫。
【読み】
晉の三郤伯宗を害し、譖して之を殺し、欒弗忌に及ぶ。欒弗忌は、晉の賢大夫。

伯州犂奔楚。伯宗子。
【読み】
伯州犂[はくしゅうれい]楚に奔る。伯宗の子。

韓獻子曰、郤氏其不免乎。善人、天地之紀也。而驟絕之。不亡何待。旣殺伯宗、又及弗忌。故曰驟也。爲十七年、晉殺三郤傳。
【読み】
韓獻子曰く、郤氏は其れ免れざらんか。善人は、天地の紀なり。而るを驟[しば]々之を絕つ。亡びずして何をか待たん、と。旣に伯宗を殺し、又弗忌に及ぶ。故に驟々と曰うなり。十七年、晉三郤を殺す爲の傳なり。

初、伯宗每朝、其妻必戒之曰、盜憎主人、民惡其上。子好直言。必及於難。傳見雖婦人之言、不可廢。○惡、烏路反。好、呼報反。難、乃旦反。
【読み】
初め、伯宗朝する每に、其の妻必ず之を戒めて曰く、盜主人を憎み、民其の上を惡む。子直言を好む。必ず難に及ばん、と。傳婦人の言と雖も、廢す可からざるを見す。○惡は、烏路反。好は、呼報反。難は、乃旦反。

十一月、會吳于鍾離、始通吳也。始與中國接。
【読み】
十一月、吳に鍾離に會するは、始めて吳に通ずるなり。始めて中國と接わる。

許靈公畏偪于鄭、請遷于楚。辛丑、楚公子申遷許于葉。
【読み】
許の靈公鄭に偪らるるを畏れ、遷らんことを楚に請う。辛丑[かのと・うし]、楚の公子申許を葉に遷す。


〔經〕十有六年、春、王正月、雨木冰。無傳。記寒過節。冰封著樹。
【読み】
〔經〕十有六年、春、王の正月、雨ふりて木冰る。傳無し。寒節に過ぐるを記す。冰樹を封著するなり。

夏、四月、辛未、滕子卒。不書名、未同盟。
【読み】
夏、四月、辛未[かのと・ひつじ]、滕子卒す。名を書さざるは、未だ同盟せざればなり。

鄭公子喜帥師侵宋。喜、穆公子、子罕也。
【読み】
鄭の公子喜師を帥いて宋を侵す。喜は、穆公の子、子罕なり。

六月、丙寅、朔、日有食之。無傳。
【読み】
六月、丙寅[ひのえ・とら]、朔、日之を食する有り。傳無し。

晉侯使欒黶來乞師。將伐鄭。黶、欒書子。○黶、於斬反。又於玷反。
【読み】
晉侯欒黶[らんえん]をして來りて師を乞わしむ。將に鄭を伐たんとす。黶は、欒書の子。○黶は、於斬反。又於玷反。

甲午、晦、晉侯及楚子・鄭伯戰于鄢陵。楚子・鄭師敗績。楚師未大崩、楚子傷目而退。故曰楚子敗績。鄢陵、鄭地。今屬潁川郡。○鄢、謁晩反。又於建反。
【読み】
甲午[きのえ・うま]、晦、晉侯楚子・鄭伯と鄢陵[えんりょう]に戰う。楚子・鄭の師敗績す。楚の師未だ大崩せず、楚子目に傷つきて退く。故に楚子敗績すと曰う。鄢陵は、鄭の地。今潁川郡に屬す。○鄢は、謁晩反。又於建反。

楚殺其大夫公子側。側、子反。背盟無禮、卒以敗師。故書名。
【読み】
楚其の大夫公子側を殺す。側は、子反。盟に背き禮無く、卒に以て師を敗る。故に名を書す。

秋、公會晉侯・齊侯・衛侯・宋華元・邾人于沙隨。沙隨、宋地。梁國寧陵縣北有沙隨亭。
【読み】
秋、公晉侯・齊侯・衛侯・宋の華元・邾人[ちゅひと]に沙隨に會す。沙隨は、宋の地。梁國寧陵縣の北に沙隨亭有り。

不見公。不及鄢陵戰故。不諱者、恥輕於執止。
【読み】
公を見ず。鄢陵の戰に及ばざる故なり。諱まざるは、恥執止より輕ければなり。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

公會尹子・晉侯・齊國佐・邾人伐鄭。尹子、王卿士。子、爵。
【読み】
公尹子・晉侯・齊の國佐・邾人に會して鄭を伐つ。尹子は、王の卿士。子は、爵。

曹伯歸自京師。爲晉侯所赦。故書歸。諸侯歸國、或書名、或不書名、或言歸自某、或言自某歸。傳無義例。從告辭。
【読み】
曹伯京師より歸る。晉侯の爲に赦さる。故に歸ると書す。諸侯の國に歸る、或は名を書し、或は名を書さず、或は歸自某と言い、或は自某歸と言う。傳義例無し。告辭に從うなり。

九月、晉人執季孫行父、舍之于苕丘。苕丘、晉地。舍之苕丘、明不以歸。不稱行人、非使人。○苕、音條。
【読み】
九月、晉人季孫行父を執えて、之を苕丘[ちょうきゅう]に舍く。苕丘は、晉の地。之を苕丘に舍くは、以[い]て歸らざるを明らかにす。行人と稱せざるは、使人に非ざればなり。○苕は、音條。

冬、十月、乙亥、叔孫僑如出奔齊。公未歸。命國人逐之。
【読み】
冬、十月、乙亥[きのと・い]、叔孫僑如出でて齊に奔る。公未だ歸らず。國人に命じて之を逐わしむ。

十有二月、乙丑、季孫行父及晉郤犫盟于扈。晉許魯平。故盟。
【読み】
十有二月、乙丑[きのと・うし]、季孫行父晉の郤犫[げきしゅう]と扈[こ]に盟う。晉魯に平らぎを許す。故に盟う。

公至自會。無傳。伐而以會致、史異文。
【読み】
公會より至る。傳無し。伐にして會を以て致すは、史の異文なり。

乙酉、刺公子偃。魯殺大夫、皆言刺。義取於周禮三刺之法。○刺、七賜反。殺也。
【読み】
乙酉[きのと・とり]、公子偃を刺[ころ]す。魯の大夫を殺すは、皆刺と言う。義周禮三刺の法に取る。○刺は、七賜反。殺すなり。

〔傳〕十六年、春、楚子自武城使公子成以汝陰之田求成于鄭。汝水之南、近鄭地。
【読み】
〔傳〕十六年、春、楚子武城より公子成をして汝陰の田を以て成[たい]らぎを鄭に求めしむ。汝水の南、鄭に近き地。

鄭叛晉。子駟從楚子盟于武城。爲晉伐鄭起。
【読み】
鄭晉に叛く。子駟楚子に從いて武城に盟う。晉鄭を伐つ爲の起なり。

夏、四月、滕文公卒。
【読み】
夏、四月、滕の文公卒す。

鄭子罕伐宋。滕、宋之與國。鄭因滕有喪而伐宋。故傳舉滕公卒。侵伐經傳異文、經從告、傳言實。他皆放此。
【読み】
鄭の子罕宋を伐つ。滕は、宋の與國。鄭滕の喪有るに因りて宋を伐つ。故に傳滕公の卒を舉ぐ。侵伐經傳文を異にするは、經は告ぐるに從い、傳は實を言うなり。他も皆此に放え。

宋將鉏・樂懼敗諸汋陂。敗鄭師也。樂懼、戴公六世孫。將鉏、樂氏族。○鉏、仕魚反。又在魚反。汋、七藥反。又音酌。一市藥反。
【読み】
宋の將鉏[しょうしょ]・樂懼諸を汋陂[しゃくひ]に敗る。鄭の師を敗るなり。樂懼は、戴公六世の孫。將鉏は、樂氏の族。○鉏は、仕魚反。又在魚反。汋は、七藥反。又音酌。一に市藥反。

退舍於夫渠、不儆。宋師不儆備。○夫、音扶。儆、京領反。
【読み】
退きて夫渠に舍り、儆[いまし]めず。宋の師儆備せず。○夫は、音扶。儆は、京領反。

鄭人覆之、敗諸汋陵、獲將鉏・樂懼。宋恃勝也。汋陂、夫渠。汋陵、皆宋地。○覆、敷目反。一音扶又反。
【読み】
鄭人之を覆して、諸を汋陵に敗り、將鉏・樂懼を獲たり。宋勝ちを恃めばなり。汋陂は、夫渠。汋陵は、皆宋の地。○覆は、敷目反。一に音扶又反。

衛侯伐鄭、至于鳴鴈。爲晉故也。鳴鴈、在陳留雍丘縣西北。
【読み】
衛侯鄭を伐ちて、鳴鴈に至る。晉の爲の故なり。鳴鴈は、陳留雍丘縣の西北に在り。

晉侯將伐鄭。范文子曰、若逞吾願、諸侯皆叛、晉可以逞。逞、快也。晉厲公無道、三郤驕。故欲使諸侯叛。冀其懼而思德。
【読み】
晉侯將に鄭を伐たんとす。范文子曰く、若し吾が願いを逞くせんには、諸侯皆叛かば、晉以て逞かる可し。逞は、快きなり。晉の厲公無道、三郤驕る。故に諸侯をして叛かしめんことを欲す。其の懼れて德を思わんことを冀うなり。

若唯鄭叛、晉國之憂、可立俟也。欒武子曰、不可以當吾世而失諸侯。必伐鄭。
【読み】
若し唯鄭のみ叛かば、晉國の憂え、立ちどころに俟つ可し、と。欒武子曰く、以て吾が世に當たりて諸侯を失う可からず。必ず鄭を伐たん、と。

乃興師。欒書將中軍。士燮佐之。代荀庚。
【読み】
乃ち師を興す。欒書中軍に將たり。士燮[ししょう]之に佐たり。荀庚に代わる。

郤錡將上軍。代士燮。
【読み】
郤錡上軍に將たり。士燮に代わる。

荀偃佐之。代郤錡。偃、荀庚子。
【読み】
荀偃之に佐たり。郤錡に代わる。偃は、荀庚の子。

韓厥將下軍。郤至佐新軍。荀罃居守。荀罃、下軍佐。於是郤犫代趙旃將新軍。新上下軍罷矣。
【読み】
韓厥下軍に將たり。郤至新軍に佐たり。荀罃[じゅんおう]居守たり。荀罃は、下軍の佐。是に於て郤犫趙旃に代わりて新軍に將たり。新上下軍は罷む。

郤犫如衛。遂如齊、皆乞師焉。欒黶來乞師。孟獻子曰、有勝矣。卑讓有禮。故知其將勝楚。
【読み】
郤犫衛に如く。遂に齊に如き、皆師を乞う。欒黶來りて師を乞う。孟獻子曰く、勝つこと有らん、と。卑讓にして禮有り。故に其の將に楚に勝たんとするを知る。

戊寅、晉師起。鄭人聞有晉師、使告于楚。姚句耳與往。句耳、鄭大夫。與往、非使也。爲先歸張本。○句、古侯反。與、音預。
【読み】
戊寅[つちのえ・とら]、晉の師起こる。鄭人晉の師有りと聞き、楚に告げしむ。姚句耳[ようこうじ]與り往く。句耳は、鄭の大夫。與り往くとは、使いに非ざるなり。先に歸る爲の張本なり。○句は、古侯反。與は、音預。

楚子救鄭。司馬將中軍。子反。
【読み】
楚子鄭を救う。司馬中軍に將たり。子反。

令尹將左。子重。
【読み】
令尹左に將たり。子重。

右尹子辛將右。公子壬夫。
【読み】
右尹子辛右に將たり。公子壬夫。

過申。子反入見申叔時。叔時老在申。○過、古禾反。
【読み】
申を過ぐ。子反入りて申叔時を見る。叔時老して申に在り。○過は、古禾反。

曰、師其何如。對曰、德・刑・詳・義・禮・信、戰之器也。器、猶用也。
【読み】
曰く、師其れ何如、と。對えて曰く、德・刑・詳・義・禮・信は、戰の器なり。器は、猶用のごとし。

德以施惠、刑以正邪、詳以事神、義以建利、禮以順時、信以守物、民生厚而德正、財足、則思無邪。○邪、似嗟反。
【読み】
德以て惠を施し、刑以て邪を正し、詳以て神に事え、義以て利を建て、禮以て時に順い、信以て物を守るときは、民の生厚くして德正しく、財足れば、則ち思い邪無し。○邪は、似嗟反。

用利而事節、動不失利、則事得其節。
【読み】
用利して事節に、動きて利を失わざれば、則ち事其の節を得。

時順而物成、羣生得所。
【読み】
時順にして物成り、羣生所を得。

上下和睦、周旋不逆、動順理。
【読み】
上下和睦し、周旋して逆わず、動きて理に順う。

求無不具、下應上。
【読み】
求めて具わらざること無く、下上に應ず。

各知其極。無二心。
【読み】
各々其の極を知る。二心無し。

故詩曰、立我烝民、莫匪爾極。烝、衆也。極、中也。詩、頌。言先王立其衆民、無不得中正。
【読み】
故に詩に曰く、我が烝民を立つる、爾の極に匪ざること莫し、と。烝は、衆なり。極は、中なり。詩は、頌。先王其の衆民を立て、中正を得ざることを無きを言う。

是以神降之福、時無災害。民生敦厖、和同以聽、敦、厚也。厖、大也。
【読み】
是を以て神之に福を降して、時災害無し。民の生敦厖[とんぼう]にして、和同して以て聽き、敦は、厚きなり。厖は、大いなり。

莫不盡力以從上命、致死以補其闕。闕、戰死者。
【読み】
力を盡くして以て上命に從い、死を致して以て其の闕けたるを補わざること莫し。闕は、戰死する者。

此戰之所由克也。
【読み】
此れ戰の由りて克つ所なり。

今楚、内棄其民、不施惠。
【読み】
今楚、内は其の民を棄て、惠を施さず。

而外絕其好、義不建利。○好、呼報反。
【読み】
外は其の好を絕ち、義利を建てず。○好は、呼報反。

瀆齊盟、不詳事神。
【読み】
齊盟を瀆[けが]して、詳もて神に事えず。

而食話言、信不守物。○話、戶快反。
【読み】
話言を食み、信物を守らず。○話は、戶快反。

奸時以動、禮不順時。周四月、今二月。妨農業。○奸、音干。
【読み】
時を奸して以て動き、禮時に順わず。周の四月は、今の二月。農業を妨ぐ。○奸は、音干。

而疲民以逞。刑不正邪、而苟快意。
【読み】
民を疲らして以て逞くす。刑邪を正さずして、苟も意を快くす。

民不知信。進退罪也。人恤所底。其誰致死。底、至也。○底、音旨。
【読み】
民信を知らず。進退罪あり。人々底る所を恤う。其れ誰か死を致さんや。底は、至るなり。○底は、音旨。
*「底」は、「厎」。以下、至ると読む時は同じ。

子其勉之。吾不復見子矣。言其必敗不反。○復、扶又反。
【読み】
子其れ之を勉めよ。吾れ復子を見じ、と。其の必ず敗れて反らざるを言う。○復は、扶又反。

姚句耳先歸。子駟問焉。對曰、其行速、過險而不整。速則失志、不思慮也。
【読み】
姚句耳先ず歸る。子駟問う。對えて曰く、其の行速やかにして、險を過ぎて整[おさ]まらず。速やかなれば則ち志を失い、思慮せざるなり。

不整喪列。志失列喪、將何以戰。楚懼不可用也。
【読み】
整まらざれば列を喪う。志失い列喪わば、將に何を以て戰わんとする。楚懼らくは用ゆ可からじ、と。

五月、晉師濟河。聞楚師將至、范文子欲反、曰、我僞逃楚、可以紓憂。紓、緩也。
【読み】
五月、晉の師河を濟[わた]る。楚の師將に至らんとすと聞き、范文子反らんと欲して、曰く、我れ僞りて楚を逃げて、以て憂えを紓[ゆる]くす可し。紓は、緩きなり。

夫合諸侯、非吾所能也。以遺能者。我若羣臣輯睦以事君、多矣。武子曰、不可。
【読み】
夫れ諸侯を合わすは、吾が能くする所に非ざるなり。以て能者に遺らん。我れ若し羣臣輯睦して以て君に事えば、多きなり、と。武子曰く、不可なり、と。

六月、晉・楚遇於鄢陵。范文子不欲戰。郤至曰、韓之戰、惠公不振旅、衆散敗也。在僖十五年。○遺、唯季反。
【読み】
六月、晉・楚鄢陵に遇う。范文子戰わんことを欲せず。郤至曰く、韓の戰に、惠公振旅せず、衆散敗するなり。僖十五年に在り。○遺は、唯季反。

箕之役、先軫不反命、死於狄也。在僖三十三年。
【読み】
箕の役に、先軫反命せず、狄に死するなり。僖三十三年に在り。

邲之師、荀伯不復從、荀林父奔走、不復故道。在宣十二年。○從、子容反。或如字。
【読み】
邲[ひつ]の師に、荀伯復り從わざるは、荀林父奔走して、故道より復らず。宣十二年に在り。○從は、子容反。或は字の如し。

皆晉之恥也。子亦見先君之事矣。見先君成敗之事。
【読み】
皆晉の恥なり。子も亦先君の事を見ん。先君成敗の事を見るなり。

今我辟楚、又益恥也。文子曰、吾先君之亟戰也有故。亟、數也。○亟、去吏反。
【読み】
今我れ楚を辟けば、又恥を益すなり、と。文子曰く、吾が先君の亟[しば]々戰いしや故有り。亟[き]は、數々なり。○亟は、去吏反。

秦・狄・齊・楚皆彊。不盡力、子孫將弱。今三彊服矣。齊・秦・狄。
【読み】
秦・狄・齊・楚皆彊し。力を盡くさざれば、子孫將に弱からしめんとす。今三彊服しぬ。齊・秦・狄。

敵楚而已。唯聖人能外内無患。自非聖人、外寧必有内憂。驕亢、則憂患生也。○亢、苦浪反。
【読み】
敵は楚のみ。唯聖人のみ能く内外患え無し。聖人に非ざるよりは、外寧ければ必ず内の憂え有り。驕り亢[たか]ぶれば、則ち憂患生ず。○亢は、苦浪反。

盍釋楚以爲外懼乎。
【読み】
盍ぞ楚を釋[す]てて以て外懼と爲さざるや、と。

甲午、晦、楚晨壓晉軍而陳。壓笮其未備。○陳、直覲反。下同。笮、側百反。
【読み】
甲午、晦、楚晨に晉の軍を壓[あっ]して陳す。其の未だ備えざるを壓笮[あっさく]す。○陳は、直覲反。下も同じ。笮は、側百反。

軍吏患之。范匃趨進、匃、士燮子。○匃、古害反。
【読み】
軍吏之を患う。范匃[はんかい]趨り進みて、匃は、士燮の子。○匃は、古害反。

曰、塞井夷竈、陳於軍中而疏行首。疏行首者、當陳前、決開營壘爲戰道。○行、戶郎反。又如字。
【読み】
曰く、井を塞ぎ竈を夷[たいら]げ、軍中に陳して行首を疏[ひら]かんのみ。行首を疏くとは、陳前に當たりて、營壘を決開して戰道を爲るなり。○行は、戶郎反。又字の如し。

晉・楚唯天所授。何患焉。文子執戈逐之、曰、國之存亡、天也。童子何知焉。
【読み】
晉・楚は唯天の授くる所なり。何ぞ患えん、と。文子戈を執りて之を逐いて、曰く、國の存亡は、天なり。童子何をか知らん、と。

欒書曰、楚師輕窕。固壘而待之、三日必退。退而擊之、必獲勝焉。郤至曰、楚有六閒、不可失也。其二卿相惡、子重・子反。○窕、勅彫反。又勑弔反。惡、如字。又烏路反。
【読み】
欒書曰く、楚の師輕窕[けいちょう]なり。壘を固くして之を待たば、三日にして必ず退かん。退きしときにして之を擊たば、必ず勝つことを獲ん、と。郤至曰く、楚に六閒有り、失う可からざるなり。其の二卿は相惡み、子重・子反。○窕は、勅彫反。又勑弔反。惡は、字の如し。又烏路反。

王卒以舊、罷老不代。
【読み】
王の卒は舊を以てし、罷老して代えず。

鄭陳而不整、不整列。
【読み】
鄭は陳して整まらず、列を整えず。

蠻軍而不陳、蠻夷從楚者、不結陳。
【読み】
蠻は軍して陳せず、蠻夷の楚に從う者、陳を結ばず。

陳不違晦、晦、月終、陰之盡。故兵家以爲忌。
【読み】
陳するに晦を違[さ]けず、晦は、月の終わり、陰の盡くるなり。故に兵家以て忌とす。

在陳而嚻。嚻、喧譁也。○嚻、許驕反。徐讀五高反。
【読み】
陳に在りて嚻[かまびす]し。嚻は、喧譁なり。○嚻は、許驕反。徐讀みて五高反。

合而加嚻、陳合宜靜。而益有聲。
【読み】
合いて加[ます]々嚻しく、陳合えば宜しく靜なるべし。而るに益々聲有り。

各顧其後、莫有鬭心、人恤其所底。
【読み】
各々其の後を顧みて、鬭心有ること莫く、人々其の底らん所を恤う。

舊不必良、以犯天忌。我必克之。
【読み】
舊は必ずしも良ならずして、以て天忌を犯す。我れ必ず之に克たん、と。

楚子登巢車以望晉軍。巢車、車上爲櫓。○巢、說文作轈。兵車高加巢、以望敵也。
【読み】
楚子巢車に登りて以て晉軍を望む。巢車は、車上に櫓を爲るなり。○巢は、說文に轈に作る。兵車高きこと巢を加えて、以て敵を望むなり。

子重使大宰伯州犂侍于王後。州犂、晉伯宗子。前年、奔楚。
【読み】
子重大宰伯州犂をして王の後に侍らしむ。州犂は、晉の伯宗の子。前年、楚に奔る。

王曰、騁而左右、何也。騁、走也。
【読み】
王曰く、騁[は]せて左右するは、何ぞや、と。騁[てい]は、走るなり。

曰、召軍吏也。皆聚於中軍矣。曰、合謀也。張幕矣。曰、虔卜於先君也。虔、敬也。
【読み】
曰く、軍吏を召すなり、と。皆中軍に聚まる。曰く、謀を合わすなり、と。幕を張る。曰く、先君に虔卜するなり、と。虔は、敬なり。

徹幕矣。曰、將發命也。甚嚻且塵上矣。曰、將塞井夷竈而爲行也。夷、平也。
【読み】
幕を徹す。曰く、將に命を發せんとするなり、と。甚だ嚻しく且塵上がる。曰く、將に井を塞ぎ竈を夷らげて行を爲さんとするなり、と。夷は、平らぐなり。

皆乘矣。左右執兵而下矣。曰、聽誓也。左、將帥。右、車右。○乘、繩證反。
【読み】
皆乘る。左右兵を執りて下る。曰く、誓いを聽くなり、と。左は、將帥。右は、車右。○乘は、繩證反。

戰乎。曰、未可知也。乘而左右皆下矣。曰、戰禱也。禱請於鬼神。
【読み】
戰わんか、と。曰く、未だ知る可からざるなり、と。乘じて左右皆下る。曰く、戰わんとして禱るなり、と。鬼神に禱請す。

伯州犂以公卒告王。公、晉侯。
【読み】
伯州犂公の卒を以て王に告ぐ。公は、晉侯。

苗賁皇在晉侯之側、亦以王卒告。賁皇、楚鬭椒子。宣四年、奔晉。○賁、扶云反。
【読み】
苗賁皇晉侯の側に在り、亦王の卒を以て告ぐ。賁皇は、楚の鬭椒の子。宣四年、晉に奔る。○賁は、扶云反。

皆曰、國士在、且厚。不可當也。晉侯左右、皆以伯州犂在楚、知晉之情。且謂楚衆多。故憚合戰。與苗賁皇意異。○憚、徒旦反。
【読み】
皆曰く、國士在り、且厚し。當たる可からず、と。晉侯の左右、皆以えらく、伯州犂楚に在りて、晉の情を知る、と。且謂う、楚の衆多し、と。故に合戰を憚る。苗賁皇の意と異なるなり。○憚は、徒旦反。

苗賁皇言於晉侯曰、楚之良、在其中軍王族而已。請分良以擊其左右、而三軍萃於王卒、萃、集也。
【読み】
苗賁皇晉侯に言いて曰く、楚の良は、其の中軍の王族に在るのみ。請う良を分けて以て其の左右を擊ちて、而して三軍王の卒に萃まらば、萃は、集まるなり。

必大敗之。公筮之。史曰、吉。其卦遇復震下坤上、復。無變。
【読み】
必ず大いに之を敗らん、と。公之を筮す。史曰く、吉なり。其の卦復に遇う。震下坤上は、復なり。變無し。

曰、南國蹙。射其元、王中厥目。此卜者辭也。復、陽長之卦。陽氣起子、南行推陰。故曰南國蹙也。南國勢蹙、則離受其咎。離爲諸侯、又爲目。陽氣激南、飛矢之象。故曰、射其元、王中厥目。○蹙、子六反。射、食亦反。中、丁仲反。
【読み】
曰く、南國蹙[ちぢ]まる。其の元を射て、王厥の目に中らん、と。此れ卜者の辭なり。復は、陽長の卦。陽氣子に起こり、南行して陰を推す。故に南國蹙まると曰うなり。南國勢蹙まれば、則ち離其の咎を受けん。離を諸侯と爲し、又目と爲す。陽氣南に激するは、飛矢の象なり。故に曰く、其の元を射て、王厥の目に中る、と。○蹙は、子六反。射は、食亦反。中は、丁仲反。

國蹙王傷、不敗何待。公從之。從其言而戰。
【読み】
國蹙まり王傷つかば、敗れずして何をか待たん、と。公之に從う。其の言に從いて戰う。

有淖於前。淖、泥也。○淖、乃孝反。又徒較反。
【読み】
前に淖[とう]有り。淖は、泥なり。○淖は、乃孝反。又徒較反。

乃皆左右、相違於淖。違、避也。
【読み】
乃ち皆左右して、淖を相違[さ]く。違は、避くるなり。

步毅御晉厲公。欒鍼爲右。步毅、卽郤毅。
【読み】
步毅晉の厲公に御たり。欒鍼[らんけん]右爲り。步毅は、卽ち郤毅。

彭名御楚共王。潘黨爲右。石首御鄭成公。唐苟爲右。欒・范以其族夾公行。二族强。故在公左右。
【読み】
彭名楚の共王に御たり。潘黨右爲り。石首鄭の成公に御たり。唐苟右爲り。欒・范其の族を以[い]て公行を夾む。二族强し。故に公の左右に在り。

陷於淖。欒書將載晉侯。鍼曰、書退。國有大任。焉得專之。在君前。故子名其父。大任、謂元帥之職。
【読み】
淖に陷る。欒書將に晉侯を載せんとす。鍼曰く、書退け。國大任有り。焉ぞ之を專らにすることを得ん。君の前に在り。故に子其の父に名いう。大任は、元帥の職を謂う。

且侵官、冒也。載公爲侵官。○冒、莫報反。又莫北反。
【読み】
且つ官を侵すは、冒なり。公を載するを官を侵すと爲す。○冒は、莫報反。又莫北反。

失官、慢也。去將而御、失官也。
【読み】
官を失うは、慢なり。將を去てて御するは、官を失うなり。

離局、姦也。遠其部曲、爲離局。○離、力志反。注同。
【読み】
局を離るは、姦なり。其の部曲を遠ざかるを、局を離ると爲す。○離は、力志反。注も同じ。

有三罪焉。不可犯也。乃掀公以出於淖。掀、舉也。○掀、許言反。
【読み】
三罪有り。犯す可からず、と。乃ち公を掀[あ]げて以て淖より出だす。掀[けん]は、舉ぐるなり。○掀は、許言反。

癸巳、潘尫之黨與養由基、蹲甲而射之、徹七札焉。黨、潘尫之子。蹲、聚也。一發達七札、言其能陷堅。○尫、烏黃反。蹲、在尊反。又在損反。一才官反。
【読み】
癸巳[みずのと・み]、潘尫[はんおう]の黨養由基と、甲を蹲[あつ]めて之を射て、七札を徹[とお]す。黨は、潘尫の子。蹲[そん]は、聚むるなり。一發して七札に達すは、其の能く堅きを陷[やぶ]るを言う。○尫は、烏黃反。蹲は、在尊反。又在損反。一に才官反。

以示王曰、君有二臣如此。何憂於戰。二子以射夸王。
【読み】
以て王に示して曰く、君二臣の此の如くなる有り。何ぞ戰を憂えん、と。二子射を以て王に夸る。

王怒曰、大辱國。賤其不尙知謀。○知、音智。
【読み】
王怒りて曰く、大いに國を辱めん。其の知謀を尙ばざるを賤しむ。○知は、音智。

詰朝、爾射死藝。言女以射自多。必當以藝死也。詰朝、猶明朝。是戰日。○朝、如字。女、音汝。
【読み】
詰朝に、爾射て藝に死せん、と。言うこころは、女射を以て自ら多しとす。必ず當に藝を以て死すべし。詰朝は、猶明朝のごとし。是れ戰の日なり。○朝は、字の如し。女は、音汝。

呂錡夢、射月中之、退入於泥。呂錡、魏錡。○射、食亦反。
【読み】
呂錡夢みらく、月を射て之に中りて、退きて泥に入る、と。呂錡は、魏錡。○射は、食亦反。

占之曰、姬姓、日也。周世、姬姓尊。
【読み】
之を占いて曰く、姬姓は、日なり。周の世、姬姓は尊し。

異姓、月也。異姓卑。
【読み】
異姓は、月なり。異姓は卑し。

必楚王也。射而中之、退入於泥、亦必死矣。錡自入泥、亦死象。○中、丁仲反。
【読み】
必ず楚王ならん。射て之に中て、退きて泥に入るは、亦必ず死なん、と。錡自ら泥に入るも、亦死の象なり。○中は、丁仲反。

及戰、射共王中目。王召養由基、與之兩矢、使射呂錡。中項伏弢。弢、弓衣。○弢、他刀反。
【読み】
戰に及びて、共王を射て目に中つ。王養由基を召して、之に兩矢を與え、呂錡を射さしむ。項に中りて弢[とう]に伏す。弢は、弓衣。○弢は、他刀反。

以一矢復命。言一發而中。
【読み】
一矢を以て復命す。一發にして中るを言う。

郤至三遇楚子之卒。見楚子必下、免冑而趨風。疾如風。
【読み】
郤至三たび楚子の卒に遇う。楚子を見れば必ず下り、冑を免ぎて趨風す。疾きこと風の如し。

楚子使工尹襄問之以弓。問、遺也。
【読み】
楚子工尹襄をして之に問[おく]るに弓を以てせしむ。問は、遺るなり。

曰、方事之殷也、殷、盛也。
【読み】
曰く、事の殷[さか]んなるに方りて、殷は、盛んなり。

有韎韋之跗注。君子也。韎、赤色。跗注、戎服。若袴而屬於跗、與袴連。○韎、莫拜反。又音妹。跗、方于反。注、之樹反。袴、苦故反。
【読み】
韎韋[ばいい]の跗注する有り。君子なり。韎は、赤色。跗注は、戎服。袴の若くにして跗に屬け、袴と連なる。○韎は、莫拜反。又音妹。跗は、方于反。注は、之樹反。袴は、苦故反。

識見不穀而趨。無乃傷乎。恐其傷。
【読み】
不穀を識見して趨る。乃傷つくこと無からんや、と。其の傷つくを恐る。

郤至見客、免冑承命、曰、君之外臣至、從寡君之戎事、以君之靈、閒蒙甲冑、閒、猶近也。
【読み】
郤至客を見て、冑を免ぎて命を承けて、曰く、君の外臣至、寡君の戎事に從い、君の靈を以て、甲冑を蒙るに閒[まじ]われば、閒は、猶近きがごとし。
*頭注に「釋文、近一作與。音與。今从之。近、誤也。」とある。

不敢拜命。介者不拜。
【読み】
敢えて命を拜せず。介者は拜せず。

敢告、不寧君命之辱、以君辱賜命、故不敢自安。
【読み】
敢えて告[もう]す、君命の辱きに寧んぜざるも、君辱く命を賜うを以て、故に敢えて自ら安んぜず。

爲事之故、敢肅使者。言君辱命來問、以有軍事不得答。故肅使者。肅、手至地。若今撎。○爲、于僞反。撎、伊志反。揖也。
【読み】
事の爲の故に、敢えて使者を肅す、と。言うこころは、君命を辱くして來り問うも、軍事に有るを以て答うることを得ず。故に使者を肅す。肅は、手地に至るなり。今の撎[い]の若し。○爲は、于僞反。撎は、伊志反。揖[ゆう]なり。

三肅使者而退。
【読み】
三たび使者を肅して退く。

晉韓厥從鄭伯。從、逐也。
【読み】
晉の韓厥鄭伯を從[お]う。從は、逐うなり。

其御杜溷羅曰、速從之。其御屢顧、不在馬。可及也。韓厥曰、不可再辱國君。乃止。二年、鞌戰、韓厥已辱齊侯。○溷、戶昏戶本二反。
【読み】
其の御杜溷羅[とこんら]曰く、速やかに之を從え。其の御屢々顧みて、馬に在らず。及ぶ可し、と。韓厥曰く、再び國君を辱む可からず、と。乃ち止む。二年、鞌の戰、韓厥已に齊侯を辱む。○溷は、戶昏戶本二反。
*「可再」は、漢籍國字解全書に「可以再」とある。

郤至從鄭伯。其右茀翰胡曰、諜輅之。余從之乘而俘以下。欲遣輕兵單進、以距鄭伯車前、而自後登其車以執之。○茀、府勿反。翰、音韓。諜、音牒。輅、五嫁反。乘、繩證反。
【読み】
郤至鄭伯を從う。其の右茀翰胡[ふつかんこ]曰く、諜をして之を輅[むか]えよ。余之が乘に從いて俘にして以て下らん、と。輕兵をして單進して、以て鄭伯の車前を距がしめて、而して後より其の車に登りて以て之を執えんと欲す。○茀は、府勿反。翰は、音韓。諜は、音牒。輅は、五嫁反。乘は、繩證反。

郤至曰、傷國君有刑。亦止。石首曰、衛懿公唯不去其旗。是以敗於熒。乃内旌於弢中。熒戰在閔二年。○去、起呂反。熒、戶扃反。
【読み】
郤至曰く、國君を傷るは刑有り、と。亦止む。石首曰く、衛の懿公唯其の旗を去てず。是を以て熒に敗れたり、と。乃ち旌を弢中に内る。熒の戰は閔二年に在り。○去は、起呂反。熒は、戶扃反。

唐苟謂石首曰、子在君側。敗者壹大。我不如子。子以君免。我請止。乃死。敗者壹大、謂軍大崩也。言石首亦君之親臣。而執御、與車右不同。故首當御君以退。己當戰死。
【読み】
唐苟[とうこう]石首に謂いて曰く、子君の側に在れ。敗るること壹に大なり。我は子が如くならず。子君を以[い]て免れよ。我れ請う、止まらん、と。乃ち死す。敗るること壹に大とは、軍の大いに崩るるを謂うなり。言うこころは、石首も亦君の親臣なり。而れども御を執るは、車右と同じからず。故に首は當に君に御して以て退くべし。己は當に戰死すべし。

楚師薄於險。薄、迫也。
【読み】
楚の師險に薄[せま]る。薄は、迫るなり。

叔山冉謂養由基曰、雖君有命、爲國故。子必射。王有死藝命。○冉、如琰反。
【読み】
叔山冉養由基に謂いて曰く、君命有りと雖も、國の爲の故なり。子必ず射よ、と。王藝に死なんの命有り。○冉は、如琰反。

乃射。再發盡殪。叔山冉搏人以投。中車折軾。晉師乃止。言二子皆有過人之能。○中、丁仲反。折、之設反。又市列反。
【読み】
乃ち射る。再發して盡く殪[たお]す。叔山冉人を搏ちて以て投ぐ。車に中りて軾を折る。晉の師乃ち止まる。言うこころは、二子皆人に過ぐるの能有り。○中は、丁仲反。折は、之設反。又市列反。

囚楚公子茷。爲郤至見譖張本。○茷、扶廢反。
【読み】
楚の公子茷[はい]を囚う。郤至譖せらる爲の張本なり。○茷は、扶廢反。

欒鍼見子重之旌、請曰、楚人謂夫旌子重之麾也。彼其子重也。日臣之使於楚也、子重問晉國之勇、臣對曰、好以衆整。曰、又何如。又問其餘。○夫、音扶。好、呼報反。下同。
【読み】
欒鍼子重の旌を見て、請いて曰く、楚人夫旌を子重が麾なりと謂う。彼は其れ子重ならん。日[さき]に臣の楚に使いせしや、子重晉國の勇を問いしに、臣對えて曰いき、衆を以て整うを好む、と。曰く、又何如、と。又其の餘を問う。○夫は、音扶。好は、呼報反。下も同じ。

臣對曰、好以暇。暇、閒暇。
【読み】
臣對えて曰いぬ、以て暇あるを好む、と。暇は、閒暇。

今兩國治戎、行人不使、不可謂整。臨事而食言、不可謂暇。食好整之言。
【読み】
今兩國戎を治めて、行人使いせずんば、整うと謂う可からず。事に臨みて言を食まば、暇ありと謂う可からず。整うを好むの言を食む。

請攝飮焉。攝、持也。持飮往、飮子重。○往飮、於鴆反。
【読み】
請う、飮を攝らん、と。攝は、持つなり。飮を持ちて往きて、子重に飮ましむ。○往飮は、於鴆反。

公許之。使行人執榼承飮、造于子重、承、奉也。○榼、苦臘反。造、七報反。
【読み】
公之を許す。行人をして榼[こう]を執り飮を承[ささ]げて、子重に造らしめて、承は、奉ぐなり。○榼は、苦臘反。造は、七報反。

曰、寡君乏使、使鍼御持矛、御、侍也。
【読み】
曰く、寡君使に乏しく、鍼をして御[はべ]りて矛を持たしむれば、御は、侍るなり。

是以不得犒從者、使某攝飮。子重曰、夫子嘗與吾言於楚。必是故也。不亦識乎。知其以往言好暇故致飮。○從、才用反。
【読み】
是を以て從者を犒[ねぎら]うことを得ず、某をして飮を攝らしむ、と。子重曰く、夫子嘗て吾と楚に言えり。必ず是の故ならん。亦識らざらんや、と。其の往に好暇を言うを以ての故に飮を致すを知る。○從は、才用反。

受而飮之、免使者而復鼓。免、脫也。○復、扶又反。
【読み】
受けて之を飮み、使者を免して復鼓つ。免は、脫[ゆる]すなり。○復は、扶又反。

旦而戰、見星未已。
【読み】
旦よりして戰い、星を見て未だ已まず。

子反命軍吏、察夷傷、夷、亦傷也。
【読み】
子反軍吏に命ずらく、夷傷を察し、夷も、亦傷なり。

補卒乘、補死亡。
【読み】
卒乘を補い、死亡を補う。

繕甲兵、繕、治也。
【読み】
甲兵を繕[おさ]め、繕は、治むるなり。

展車馬、展、陳也。
【読み】
車馬を展[つら]ね、展は、陳ぬるなり。

雞鳴而食、唯命是聽。復欲戰。
【読み】
雞鳴きて食い、唯命是れ聽け、と。復戰わんと欲す。

晉人患之。苗賁皇徇曰、蒐乘補卒、蒐、閱也。
【読み】
晉人之を患う。苗賁皇徇[とな]えて曰く、乘を蒐し卒を補い、蒐は、閱するなり。

秣馬利兵、秣、穀馬也。○秣、音末。
【読み】
馬に秣[まぐさか]い兵を利くし、秣は、馬に穀かうなり。○秣は、音末。

脩陳固列、固、堅也。○陳、直覲反。又如字。
【読み】
陳を脩め列を固くし、固は、堅きなり。○陳は、直覲反。又字の如し。

蓐食申禱、申、重也。
【読み】
蓐[じょく]に食し申ねて禱り、申は、重ぬるなり。

明日復戰、乃逸楚囚。逸、縱也。
【読み】
明日復戰わんといいて、乃ち楚の囚を逸[はな]つ。逸は、縱つなり。

王聞之、召子反謀。穀陽豎獻飮於子反、子反醉而不能見。穀陽、子反内豎。
【読み】
王之を聞きて、子反を召して謀らんとす。穀陽豎飮を子反に獻じて、子反醉いて見ゆること能わず。穀陽は、子反の内豎。

王曰、天敗楚也夫。余不可以待。乃宵遁。
【読み】
王曰く、天楚を敗れるか。余以て待つ可からず、と。乃ち宵遁る。

晉入楚軍、三日穀。食楚粟三日也。○夫、音扶。
【読み】
晉楚の軍に入り、三日穀す。楚の粟を食うこと三日なり。○夫は、音扶。

范文子立於戎馬之前、曰、君幼諸臣不佞、佞、才也。
【読み】
范文子戎馬の前に立ちて、曰く、君幼くして諸臣不佞なるに、佞は、才なり。

何以及此。君其戒之。戒勿驕。
【読み】
何を以て此に及べる。君其れ之を戒めよ。戒めて驕ること勿かれ。

周書曰、惟命不于常。有德之謂。周書、康誥。言勝無常命、惟德是與。
【読み】
周書に曰く、惟れ命常に于[おい]てせず、と。德有るを謂うなり、と。周書は、康誥。勝つこと常命無く、惟德に是れ與するを言う。

楚師還、及瑕。瑕、楚地。
【読み】
楚の師還り、瑕に及ぶ。瑕は、楚の地。

王使謂子反曰、先大夫之覆師徒者、君不在。謂子玉敗城濮時、王不在軍。
【読み】
王子反に謂わしめて曰く、先大夫の師徒を覆せしとき、君在らざりき。子玉城濮に敗れし時、王軍に在ざるを謂う。

子無以爲過。不穀之罪也。子反再拜稽首曰、君賜臣死。死且不朽。王引過亦所以責子反。
【読み】
子以て過ちと爲すこと無かれ。不穀の罪なり、と。子反再拜稽首して曰く、君臣に死を賜う。死すとも且に朽ちざらんとす。王過ちを引くも亦子反を責むる所以なり。

臣之卒實奔。臣之罪也。子重使謂子反曰、初隕師徒者、而亦聞之矣。盍圖之。聞子玉自殺。終二卿相惡。
【読み】
臣の卒實に奔れり。臣の罪なり、と。子重子反に謂わしめて曰く、初め師徒を隕せし者、而[なんじ]も亦之を聞かん。盍ぞ之を圖らざる、と。子玉の自殺せしを聞けん。二卿相惡むを終える。

對曰、雖微先大夫有之、大夫命側。側敢不義。言以義命己。不敢不受。
【読み】
對えて曰く、先大夫之れ有ること微[な]しと雖も、大夫側に命ぜり。側敢えて義とせざらんや。言うこころは、義を以て己に命ず。敢えて受けずんばあらず。

側亡君師。敢忘其死。
【読み】
側君の師を亡[うしな]えり。敢えて其の死を忘れんや、と。

王使止之。弗及而卒。
【読み】
王之を止めしむ。及ばずして卒す。

戰之日、齊國佐・高無咎至于師、無咎、高固子。
【読み】
戰の日、齊の國佐・高無咎師に至り、無咎は、高固の子。

衛侯出于衛、公出于壞隤。壞隤、魯邑。齊・衛皆後。非獨魯。明晉以僑如故不見公。○壞、戶怪反。一音懷。隤、徒回反。
【読み】
衛侯衛を出で、公壞隤[かいたい]を出づ。壞隤は、魯の邑。齊・衛皆後る。獨り魯のみに非ず。晉僑如が故を以て公を見ざることを明らかにす。○壞は、戶怪反。一に音懷。隤は、徒回反。

宣伯通於穆姜。穆姜、成公母。
【読み】
宣伯穆姜に通ず。穆姜は、成公の母。

欲去季・孟、而取其室。季文子・孟獻子。○去、起呂反。
【読み】
季・孟を去りて、其の室を取らんと欲す。季文子・孟獻子。○去は、起呂反。

將行。穆姜送公、而使逐二子。公以晉難告、會晉伐鄭。○難、乃旦反。
【読み】
將に行かんとす。穆姜公を送りて、二子を逐わしむ。公晉の難を以て告げて、晉に會して鄭を伐つ。○難は、乃旦反。

曰、請反而聽命。姜怒。公子偃・公子鉏趨過。二子、公庶弟。
【読み】
曰く、請う、反りて命を聽かん、と。姜怒る。公子偃・公子鉏趨り過ぐ。二子は、公の庶弟。

指之曰、女不可、是皆君也。言欲廢公更立君。○女、音汝。
【読み】
之を指して曰く、女可[き]かずんば、是れ皆君なり、と。言うこころは、公を廢して更に君を立てんと欲す。○女は、音汝。

公待於壞隤、申宮儆備、申勑宮備。
【読み】
公壞隤に待ちて、宮の儆備を申ね、宮の備えを申勑す。

設守而後行。是以後。後晉・楚戰期。
【読み】
守りを設けて而して後に行く。是を以て後れたり。晉・楚の戰期に後る。

使孟獻子守于公宮。
【読み】
孟獻子をして公宮を守らしむ。

秋、會干沙隨、謀伐鄭也。鄭猶未服。
【読み】
秋、沙隨に會するは、鄭を伐たんことを謀るなり。鄭猶未だ服せず。

宣伯使告郤犫曰、魯侯待于壞隤、以待勝者。觀晉・楚之勝負。
【読み】
宣伯郤犫に告げしめて曰く、魯侯壞隤に待ちしは、以て勝つ者を待たんとなり、と。晉・楚の勝負を觀る。

郤犫將新軍、且爲公族大夫、以主東諸侯。主齊・魯之屬。
【読み】
郤犫新軍に將となり、且公族大夫と爲して、以て東の諸侯を主る。齊・魯の屬を主る。

取貨于宣伯、而訴公于晉侯、訴、譖也。
【読み】
貨を宣伯に取りて、公を晉侯に訴う。訴は、譖るなり。

晉侯不見公。
【読み】
晉侯公を見ず。

曹人請于晉曰、自我先君宣公卽世、在十三年。
【読み】
曹人晉に請いて曰く、我が先君宣公卽世せしより、十三年に在り。

國人曰、若之何。憂猶未弭。弭、息也。旣葬。國人皆將從子臧。所謂憂未息。
【読み】
國人曰く、之を若何にせん。憂え猶未だ弭[や]まず、と。弭[び]は、息むなり。旣に葬る。國人皆將に子臧に從わんとす。所謂憂え未だ息まざるなり。

而又討我寡君、前年、晉侯執曹伯。
【読み】
而るに又我が寡君を討じて、前年、晉侯曹伯を執う。

以亡曹國社稷之鎭公子。謂子臧逃奔宋。
【読み】
以て曹國社稷の鎭公子を亡えり。子臧宋に逃奔するを謂う。

是大泯曹也。泯、滅也。
【読み】
是れ大いに曹を泯[ほろ]ぼすなり。泯は、滅ぶなり。

先君無乃有罪乎。言今君無罪而見討。得無以先君故。
【読み】
先君乃ち罪有ること無からんや。言うこころは、今君罪無くして討ぜらる。先君の故を以てすること無きことを得んや。

若有罪、則君列諸會矣。諸侯雖有簒弑之罪、侯伯已與之會、則不復討。前年會于戚、曹伯在列、盟畢、乃執之。故曹人以爲無罪。○簒、初患反。
【読み】
若し罪有りとせば、則ち君諸を會に列ねり。諸侯簒弑の罪有りと雖も、侯伯已に之と會すれば、則ち復討ぜず。前年戚に會するとき、曹伯列に在り、盟畢わりて、乃ち之を執う。故に曹人以て罪無しと爲す。○簒は、初患反。

君唯不遺德刑、遺、失也。
【読み】
君唯德刑を遺[うしな]わずして、遺は、失うなり。

以伯諸侯。豈獨遺諸敝邑。敢私布之。爲曹伯歸、不以名告傳。○伯、如字。
【読み】
以て諸侯に伯たり。豈獨り諸を敝邑に遺わんや。敢えて私に之を布く、と。曹伯歸る、名を以て告げざる爲の傳なり。○伯は、字の如し。

七月、公會尹武公及諸侯伐鄭。將行。姜又命公如初。復欲使公逐季・孟。
【読み】
七月、公尹武公と諸侯とに會して鄭を伐つ。將に行かんとす。姜又公に命ずること初めの如し。復公をして季・孟を逐わしめんと欲す。

公又申守而行。
【読み】
公又守りを申ねて行く。

諸侯之師次于鄭西、我師次于督揚。不敢過鄭。督揚、鄭東地。○守、手又反。
【読み】
諸侯の師鄭の西に次[やど]りて、我が師督揚に次る。敢えて鄭を過ぎず。督揚は、鄭の東の地。○守は、手又反。

子叔聲伯使叔孫豹請逆于晉師、豹、叔孫僑如弟也。僑如於是遂作亂、豹因奔齊。
【読み】
子叔聲伯叔孫豹をして逆えんことを晉の師に請わしめ、豹は、叔孫僑如の弟なり。僑如是に於て遂に亂を作して、豹因りて齊に奔る。

爲食於鄭郊、師逆以至。聲伯戒叔孫、以必須所逆晉師至乃食。
【読み】
食を鄭の郊に爲り、師の逆えの以て至るまでせんとす。聲伯叔孫を戒むるに、必ず逆うる所の晉の師の至るを須ちて乃ち食するを以てす。

聲伯四日不食以待之、食使者、使者、豹之介。○食、音嗣。
【読み】
聲伯四日食わずして以て之を待ち、使者を食わせて、使者は、豹の介。○食は、音嗣。

而後食。言其忠也。
【読み】
而して後に食えり。其の忠を言うなり。

諸侯遷于制田。熒陽宛陵縣東有制澤。
【読み】
諸侯制田に遷る。熒陽の宛陵縣の東に制澤有り。

知武子佐下軍、武子、荀罃。
【読み】
知武子下軍に佐となり、武子は、荀罃。

以諸侯之師侵陳、至于鳴鹿。陳國武平縣西南有鹿邑。
【読み】
諸侯の師を以て陳を侵して、鳴鹿に至る。陳國武平縣の西南に鹿邑有り。

遂侵蔡。未反。侵陳・蔡不書、公不與。
【読み】
遂に蔡を侵す。未だ反らず。陳・蔡を侵すこと書さざるは、公與らざればなり。

諸侯遷于潁上。戊午、鄭子罕宵軍之。宋・齊・衛皆失軍。將主與軍相失。宋・衛不書、後也。
【読み】
諸侯潁上に遷る。戊午[つちのえ・うま]、鄭の子罕宵之に軍す。宋・齊・衛皆軍を失う。將主と軍と相失うなり。宋・衛書さざるは、後れたればなり。

曹人復請于晉。晉侯謂、子臧反、吾歸而君。以曹人重子臧故。
【読み】
曹人復晉に請う。晉侯謂えらく、子臧反らば、吾れ而[なんじ]の君を歸さん、と。曹人子臧を重んずるを以ての故なり。

子臧反。曹伯歸。子臧自宋還。
【読み】
子臧反る。曹伯歸る。子臧宋より還る。

子臧盡致其邑與卿而不出。不出仕。
【読み】
子臧盡く其の邑と卿とを致して出でず。出仕せず。

宣伯使告郤犫曰、魯之有季・孟、猶晉之有欒・范也。政令於是乎成。今其謀曰、晉政多門。不可從也。政不由君。
【読み】
宣伯郤犫に告げしめて曰く、魯の季・孟有るは、猶晉の欒・范有るがごとし。政令是に於て成る。今其の謀に曰く、晉の政門多し。從う可からざるなり。政君に由らず。

寧事齊・楚、有亡而已。蔑從晉矣。蔑、無也。
【読み】
寧ろ齊・楚に事えて、亡ぶること有らんのみ。晉に從うこと蔑[な]からん、と。蔑は、無きなり。

若欲得志於魯、請止行父而殺之。行父、季文子也。
【読み】
若し志を魯に得んことを欲せば、請う、行父を止めて之を殺せ。行父は、季文子なり。

我斃蔑也。蔑、孟獻子。時留守公宮。
【読み】
我れ蔑を斃さん。蔑は、孟獻子。時に公宮を留守す。

而事晉、蔑有貳矣。魯不貳、小國必睦。不然、歸必叛矣。
【読み】
而して晉に事えて、貳有ること蔑からん。魯貳あらざれば、小國必ず睦じからん。然らずんば、歸らば必ず叛かん、と。

九月、晉人執季文子于苕丘。公還、待于鄆。鄆、魯西邑。東郡廩丘縣東有鄆城。○廩、力甚反。
【読み】
九月、晉人季文子を苕丘に執う。公還りて、鄆[うん]に待つ。鄆は、魯の西邑。東郡廩丘縣の東に鄆城有り。○廩は、力甚反。

使子叔聲伯請季孫于晉。郤犫曰、苟去仲孫蔑、而止季孫行父、吾與子國、親於公室。親魯甚於晉公室。○去、起呂反。
【読み】
子叔聲伯をして季孫を晉に請わしむ。郤犫曰く、苟も仲孫蔑を去りて、季孫行父を止めば、吾れ子の國に與すること、公室より親しからん、と。魯を親しむこと晉の公室より甚だしからん。○去は、起呂反。

對曰、僑如之情、子必聞之矣。聞其淫慝情。
【読み】
對えて曰く、僑如の情は、子必ず之を聞かん。其の淫慝の情を聞く。

若去蔑與行父、是大棄魯國、而罪寡君也。若猶不棄、而惠徼周公之福、使寡君得事晉君、則夫二人者、魯國社稷之臣也。若朝亡之、魯必夕亡。以魯之密邇仇讎、仇讎、謂齊・楚。
【読み】
若し蔑と行父とを去らば、是れ大いに魯國を棄てて、寡君を罪するなり。若し猶棄てずして、惠みて周公の福を徼[もと]めんとして、寡君をして晉君に事うることを得せしめば、則ち夫の二人は、魯國社稷の臣なり。若し朝に之を亡ぼさば、魯は必ず夕に亡びん。魯の仇讎に密邇するを以て、仇讎は、齊・楚を謂う。

亡而爲讎、治之何及。言魯屬齊・楚、則還爲晉讎。
【読み】
亡びて讎と爲らば、之を治むとも何ぞ及ばんや、と。言うこころは、魯齊・楚に屬すれば、則ち還って晉の讎と爲る。

郤犫曰、吾爲子請邑。對曰、嬰齊、魯之常隸也。隸、賤官。
【読み】
郤犫曰く、吾れ子の爲に邑を請わん、と。對えて曰く、嬰齊は、魯の常隸なり。隸は、賤官。

敢介大國、以求厚焉。介、因也。
【読み】
敢えて大國に介[よ]りて、以て厚を求めんや。介は、因るなり。

承寡君之命以請。承、奉也。
【読み】
寡君の命を承けて以て請う。承は、奉ずるなり。

若得所請、吾子之賜多矣。又何求。
【読み】
若し請う所を得ば、吾子の賜も多し。又何をか求めん、と。

范文子謂欒武子曰、季孫於魯、相二君矣。二君、宣・成。
【読み】
范文子欒武子に謂いて曰く、季孫が魯に於る、二君に相たり。二君は、宣・成。

妾不衣帛、馬不食粟、可不謂忠乎。信讒慝而棄忠良、若諸侯何。子叔嬰齊奉君命無私、不受郤犫請邑。○衣、於旣反。食、舊如字。對上句。應作嗣音。
【読み】
妾に帛を衣せず、馬に粟を食ませず、忠と謂わざる可けんや。讒慝を信じて忠良を棄てば、諸侯を若何。子叔嬰齊君命を奉じて私無く、郤犫が邑を請うことを受けず。○衣は、於旣反。食は、舊字の如し。上句に對う。應に嗣音に作るべし。

謀國家不貳、謂四日不食、以堅事晉。
【読み】
國家を謀りて貳あらず、四日食わずして、以て晉に堅事するを謂う。

圖其身、不忘其君。辭邑・不食、皆先君而後身。
【読み】
其の身を圖りて、其の君を忘れず。辭邑・不食、皆君を先にして身を後にするなり。

若虛其請、是棄善人也。子其圖之。
【読み】
若し其の請いを虛くせば、是れ善人を棄つるなり。子其れ之を圖れ、と。

乃許魯平、赦季孫。
【読み】
乃ち魯に平らぎを許して、季孫を赦す。

冬、十月、出叔孫僑如而盟之。僑如奔齊。諸大夫共盟、以僑如爲戒。
【読み】
冬、十月、叔孫僑如を出だして之に盟う。僑如齊に奔る。諸大夫共に盟い、僑如を以て戒めとす。

十二月、季孫及郤犫盟于扈。歸刺公子偃。偃與鉏倶爲姜所指。而獨殺偃、偃與謀。
【読み】
十二月、季孫郤犫と扈に盟う。歸りて公子偃を刺[ころ]す。偃と鉏と倶に姜の爲に指ささる。而るに獨り偃を殺すは、偃謀に與ればなり。

召叔孫豹于齊而立之。近此七月、聲伯使豹請逆於晉。聞魯人將討僑如、豹乃辟其難、先奔齊。生二子。而魯乃召之。故襄二年、豹始見經。傳於此因言其終。○難、乃旦反。
【読み】
叔孫豹を齊より召して之を立つ。此に近き七月、聲伯豹をして逆えんことを晉に請わしむ。魯人將に僑如を討ぜんとするを聞き、豹乃ち其の難を辟けて、先ず齊に奔る。二子を生む。而して魯乃ち之を召す。故に襄二年、豹始めて經に見ゆ。傳此に於て因りて其の終わりを言う。○難は、乃旦反。

齊聲孟子通僑如。聲孟子、齊靈公母。宋女。
【読み】
齊の聲孟子僑如に通ず。聲孟子は、齊の靈公の母。宋の女。

使立於高・國之閒。位比二卿。
【読み】
高・國の閒に立たしむ。位二卿に比す。

僑如曰、不可以再罪。奔衛。亦閒於卿。傳亦終言僑如之佞。
【読み】
僑如曰く、以て再び罪ある可からず、と。衛に奔る。亦卿に閒われり。傳亦僑如の佞を終言す。

晉侯使郤至獻楚捷于周。與單襄公語、驟稱其伐。伐、功也。
【読み】
晉侯郤至をして楚の捷を周に獻ぜしむ。單襄公と語り、驟[しば]々其の伐を稱す。伐は、功なり。

單子語諸大夫曰、溫季其亡乎。溫季、郤至。
【読み】
單子諸大夫に語りて曰く、溫季は其れ亡びんか。溫季は、郤至。

位於七人之下、佐新軍、位在八。
【読み】
七人の下に位して、佐新軍は、位八に在り。

而求掩其上。稱己之伐、掩上功。
【読み】
其の上を掩わんことを求む。己の伐を稱するは、上の功を掩うなり。

怨之所聚、亂之本也。多怨而階亂。何以在位。怨爲亂階。
【読み】
怨みの聚まる所は、亂の本なり。怨み多ければ亂を階[きざ]す。何を以て位に在らんや。怨みは亂の階爲り。

夏書曰、怨豈在明。不見是圖。逸書也。不見、細微也。
【読み】
夏書に曰く、怨み豈明らかなるに在らんや。見えざるを是れ圖れ、と。逸書なり。見えざるは、細微なり。

將愼其細也。今而明之。其可乎。言郤至顯稱己功、所以明怨咎。
【読み】
將に其の細を愼まんとするなり。今にして之を明らかにす。其れ可ならんや、と。言うこころは、郤至己の功を顯稱すれば、怨咎を明らかにする所以なり。


〔經〕十有七年、春、衛北宮括帥師侵鄭。括、成公曾孫。
【読み】
〔經〕十有七年、春、衛の北宮括師を帥いて鄭を侵す。括は、成公の曾孫。

夏、公會尹子・單子・晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・邾人伐鄭。晉未能服鄭。故假天子威。周使二卿會之。晉爲兵主。而猶先尹・單、尊王命也。單伯稱子、蓋降爵。
【読み】
夏、公尹子・單子・晉侯・齊侯・宋公・衛侯・曹伯・邾人[ちゅひと]に會して鄭を伐つ。晉未だ鄭を服すること能わず。故に天子の威を假る。周二卿をして之に會せしむ。晉は兵主爲り。而れども猶尹・單を先にするは、王命を尊ぶなり。單伯子と稱するは、蓋し爵を降すならん。

六月、乙酉、同盟于柯陵。柯陵、鄭西地。
【読み】
六月、乙酉[きのと・とり]、柯陵に同盟す。柯陵は、鄭の西の地。

秋、公至自會。無傳。
【読み】
秋、公會より至る。傳無し。

齊高無咎出奔莒。九月、辛丑、用郊。無傳。九月郊祭。非禮明矣。書用郊、從史文。
【読み】
齊の高無咎出でて莒に奔る。九月、辛丑[かのと・うし]、用て郊をす。傳無し。九月に郊祭す。禮に非ざること明らかなり。用て郊をすと書すは、史文に從うなり。

晉侯使荀罃來乞師。無傳。將伐鄭。
【読み】
晉侯荀罃[じゅんおう]をして來りて師を乞わしむ。傳無し。將に鄭を伐たんとす。

冬、公會單子・晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊人・邾人伐鄭。鄭猶未服故。
【読み】
冬、公單子・晉侯・宋公・衛侯・曹伯・齊人・邾人に會して鄭を伐つ。鄭猶未だ服せざる故なり。

十有一月、公至自伐鄭。無傳。
【読み】
十有一月、公鄭を伐ちてより至る。傳無し。

壬申、公孫嬰卒于貍脤。十一月無壬申。日誤也。貍脤、闕。○脤、市軫反。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、公孫嬰貍脤[りしん]に卒す。十一月に壬申無し。日の誤りなり。貍脤は、闕く。○脤は、市軫反。

十有二月、丁巳、朔、日有食之。無傳。
【読み】
十有二月、丁巳[ひのと・み]、朔、日之を食する有り。傳無し。

邾子貜且卒。無傳。五同盟。○貜、倶縛反。且、子餘反。
【読み】
邾子貜且[かくしょ]卒す。傳無し。五たび同盟す。○貜は、倶縛反。且は、子餘反。

晉殺其大夫郤錡・郤犫・郤至。楚人滅舒・庸。
【読み】
晉其の大夫郤錡・郤犫・郤至を殺す。楚人舒・庸を滅ぼす。

〔傳〕十七年、春、王正月、鄭子駟侵晉虛・滑。虛・滑、晉二邑。滑、故滑國。爲秦所滅。時屬晉、後屬周。○虛、起居反。
【読み】
〔傳〕十七年、春、王の正月、鄭の子駟晉の虛・滑を侵す。虛・滑は、晉の二邑。滑は、故の滑の國。秦の爲に滅ぼさる。時に晉に屬し、後に周に屬す。○虛は、起居反。

衛北宮括救晉、侵鄭至于高氏。不書救、以侵告。高氏、在陽翟縣西南。
【読み】
衛の北宮括晉を救い、鄭を侵して高氏に至る。救うを書さざるは、侵すを以て告ぐればなり。高氏は、陽翟縣の西南に在り。

夏、五月、鄭大子髡頑・侯獳爲質於楚。侯獳、鄭大夫。○髡、苦門反。獳、乃侯反。
【読み】
夏、五月、鄭の大子髡頑[こんがん]・侯獳[こうどう]楚に質と爲る。侯獳は、鄭の大夫。○髡は、苦門反。獳は、乃侯反。

楚公子成・公子寅戍鄭。公會尹武公・單襄公及諸侯伐鄭、自戲童至于曲洧。今新汲縣治曲洧城、臨洧水。○戲、許宜反。洧、于軌反。
【読み】
楚の公子成・公子寅鄭を戍る。公尹武公・單襄公と諸侯とに會して鄭を伐ち、戲童より曲洧[きょくい]に至る。今の新汲縣の治の曲洧城、洧水に臨む。○戲は、許宜反。洧は、于軌反。

晉范文子反自鄢陵、前年、鄢陵戰還。
【読み】
晉の范文子鄢陵[えんりょう]より反り、前年、鄢陵の戰より還る。

使其祝宗祈死。祝宗、主祭祀祈禱者。
【読み】
其の祝宗をして死を祈らしむ。祝宗は、祭祀祈禱を主る者。

曰、君驕侈而克敵、是天益其疾也。難將作矣。愛我者、唯祝我、使我速死、無及於難。范氏之福也。
【読み】
曰く、君驕侈にして敵に克つは、是れ天其の疾いを益すなり。難將に作らんとす。我を愛する者は、唯我を祝して、我をして速やかに死して、難に及ぶこと無からしめよ。范氏の福なり、と。

六月、戊辰、士燮卒。傳言厲公無道。故賢臣憂懼、因禱自裁。○難、乃旦反。祝、之又反。
【読み】
六月、戊辰[つちのえ・たつ]、士燮[ししょう]卒す。傳厲公無道。故に賢臣憂懼して、禱に因りて自ら裁するを言う。○難は、乃旦反。祝は、之又反。

乙酉、同盟于柯陵、尋戚之盟也。戚盟、在十五年。
【読み】
乙酉、柯陵に同盟するは、戚の盟を尋[かさ]ぬるなり。戚の盟は、十五年に在り。

楚子重救鄭、師于首止。諸侯還。畏楚强。
【読み】
楚の子重鄭を救い、首止に師す。諸侯還る。楚の强きを畏る。

齊慶克通于聲孟子。與婦人蒙衣乘輦而入于閎。慶克、慶封父。蒙衣、亦爲婦人服、與婦人相冒。閎、巷門。
【読み】
齊の慶克聲孟子に通ず。婦人と與に衣を蒙り輦[れん]に乘りて閎に入る。慶克は、慶封の父。衣を蒙るとは、亦婦人の服を爲して、婦人と與に相冒[かぶ]るなり。閎は、巷門。

鮑牽見之、以告國武子。鮑牽、鮑叔牙曾孫。
【読み】
鮑牽之を見て、以て國武子に告ぐ。鮑牽は、鮑叔牙の曾孫。

武子召慶克而謂之。慶克久不出、慙臥於家。夫人所以怪之。
【読み】
武子慶克を召して之を謂う。慶克久しく出でずして、慙じて家に臥す。夫人之を怪しむ所以なり。

而告夫人曰、國子謫我。謫、譴責也。
【読み】
而して夫人に告げて曰く、國子我を謫[せ]む、と。謫は、譴責なり。

夫人怒。國子相靈公以會。會伐鄭。
【読み】
夫人怒る。國子靈公を相[たす]けて以て會す。鄭を伐つに會す。

高・鮑處守。高無咎・鮑牽。
【読み】
高・鮑處守す。高無咎・鮑牽。

及還、將至、閉門而索客。蒐索備姦人。
【読み】
還るに及びて、將に至らんとするに、門を閉じて客を索[さが]す。蒐索して姦人に備う。

孟子訴之曰、高・鮑將不納君、而立公子角。國子知之。角、頃公子。○頃、音傾。
【読み】
孟子之を訴えて曰く、高・鮑將に君を納れずして、公子角を立てんとす。國子之を知れり、と。角は、頃公の子。○頃は、音傾。

秋、七月、壬寅、刖鮑牽、而逐高無咎。無咎奔莒。高弱以盧叛。弱、無咎子。盧、高氏邑。
【読み】
秋、七月、壬寅[みずのえ・とら]、鮑牽を刖[あしき]りて、高無咎を逐う。無咎莒に奔る。高弱盧を以[い]て叛く。弱は、無咎の子。盧は、高氏の邑。

齊人來召鮑國而立之。國、牽之弟、文子。
【読み】
齊人來りて鮑國を召して之を立つ。國は、牽の弟、文子。

初、鮑國去鮑氏而來、爲施孝叔臣。施氏卜宰。匡句須吉。卜立家宰。○句、其倶反。
【読み】
初め、鮑國鮑氏を去りて來り、施孝叔が臣と爲る。施氏宰を卜す。匡句須[きょうこうしゅ]吉なり。家宰を立つることを卜す。○句は、其倶反。

施氏之宰、有百室之邑。與匡句須邑、使爲宰。以讓鮑國而致邑焉。施孝叔曰、子實吉。對曰、能與忠良、吉孰大焉。鮑國相施氏忠。故齊人取以爲鮑氏後。
【読み】
施氏の宰は、百室の邑有り。匡句須に邑を與えて、宰爲らしむ。以て鮑國に讓りて邑を致す。施孝叔曰く、子實に吉なり、と。對えて曰く、能く忠良に與えば、吉孰れか焉より大ならん、と。鮑國施氏を相けて忠なり。故に齊人取りて以て鮑氏の後とす。

仲尼曰、鮑莊子之知不如葵。葵猶能衛其足。葵傾葉向日、以蔽其根。言鮑牽居亂、不能危行言孫。○知、音智。
【読み】
仲尼曰く、鮑莊子の知は葵に如かず。葵も猶能く其の足を衛る、と。葵葉を傾け日に向かい、以て其の根を蔽う。鮑牽亂に居りて、行を危[たか]くし言孫うこと能わざるを言う。○知は、音智。

冬、諸侯伐鄭。前夏、未得志故。
【読み】
冬、諸侯鄭を伐つ。前の夏、未だ志を得ざる故なり。

十月、庚午、圍鄭。楚公子申救鄭、師于汝上。十一月、諸侯還。不書圍、畏楚救、不成圍而還。
【読み】
十月、庚午[かのえ・うま]、鄭を圍む。楚の公子申鄭を救いて、汝上に師す。十一月、諸侯還る。圍むを書さざるは、楚の救いを畏れ、圍を成さずして還ればなり。

初、聲伯夢、涉洹、洹水、出汲郡林慮縣、東北至魏郡長樂縣、入淸水。○洹、音桓。今土俗音袁。慮、力於反。樂、音洛。
【読み】
初め、聲伯夢みらく、洹[かん]を涉[わた]るとき、洹水は、汲郡林慮縣に出でて、東北して魏郡長樂縣に至り、淸水に入る。○洹は、音桓。今土俗音袁。慮は、力於反。樂は、音洛。

或與己瓊瑰食之。瓊、玉。瑰、珠也。食珠玉、含象。○瑰、古囘反。含、戶暗反。
【読み】
或ひと己に瓊瑰を與えて之を食わしむ。瓊は、玉。瑰は、珠なり。珠玉を食うは、含の象。○瑰は、古囘反。含は、戶暗反。

泣而爲瓊瑰、盈其懷。涙下化爲珠玉、滿其懷。
【読み】
泣[なみだ]ありて瓊瑰と爲りて、其の懷に盈つ。涙下り化して珠玉と爲りて、其の懷に滿つ。

從而歌之曰、濟洹之水、贈我以瓊瑰。歸乎歸乎、瓊瑰盈吾懷乎。從、就也。夢中爲此歌。
【読み】
從[つ]きて之を歌いて曰く、洹の水を濟[わた]れば、我に贈るに瓊瑰を以てせり。歸らんか歸らんか、瓊瑰吾が懷に盈てるか、と。從は、就くなり。夢中に此の歌を爲る。

懼不敢占也。還自鄭、壬申、至于貍脤而占之、曰、余恐死。故不敢占也。今衆繁而從余三年矣。無傷也。言之之莫而卒。繁、猶多也。傳戒數占夢。○莫、音暮。數、所角反。
【読み】
懼れて敢えて占わず。鄭より還り、壬申、貍脤に至りて之を占いて、曰く、余死なんことを恐る。故に敢えて占わざりき。今衆繁くして余に從うこと三年なり。傷むこと無し、と。之を言うの莫にして卒せり。繁は、猶多きがごとし。傳數々夢を占うを戒む。○莫は、音暮。數は、所角反。

齊侯使崔杼爲大夫、使慶克佐之。帥師圍盧。討高弱。○杼、直呂反。
【読み】
齊侯崔杼をして大夫爲らしめ、慶克をして之に佐たらしむ。師を帥いて盧を圍む。高弱を討ず。○杼は、直呂反。

國佐從諸侯圍鄭。以難請而歸。請於諸侯。○難、乃旦反。
【読み】
國佐諸侯に從いて鄭を圍む。難を以て請いて歸る。諸侯に請う。○難は、乃旦反。

遂如盧師、殺慶克以穀叛。疾克淫亂。故殺之。
【読み】
遂に盧の師に如き、慶克を殺し穀を以[い]て叛く。克の淫亂を疾[にく]む。故に之を殺す。

齊侯與之盟于徐關而復之。十二月、盧降。使國勝告難于晉、待命于淸。勝、國佐子。使以高氏難告晉。齊欲討國佐。故留其子於外。淸、陽平樂縣是。爲明年、殺國佐傳。○降、戶江反。
【読み】
齊侯之と徐關に盟いて之を復す。十二月、盧降る。國勝をして難を晉に告げ、命を淸に待たしむ。勝は、國佐の子。高氏の難を以て晉に告げしむ。齊國佐を討ぜんと欲す。故に其の子を外に留む。淸は、陽平の樂縣是れなり。明年、國佐を殺す爲の傳なり。○降は、戶江反。

晉厲公侈、多外嬖。外嬖、愛幸大夫。
【読み】
晉の厲公侈りて、外嬖多し。外嬖は、愛幸の大夫。

反自鄢陵、欲盡去羣大夫而立其左右。終如士燮言。
【読み】
鄢陵より反りて、盡く羣大夫を去てて其の左右を立てんことを欲す。終に士燮の言の如し。

胥童以胥克之廢也、怨郤氏。童、胥克之子。宣八年、郤缺廢胥克。
【読み】
胥童胥克の廢せられしを以てや、郤氏を怨む。童は、胥克の子。宣八年、郤缺胥克を廢す。

而嬖於厲公。郤錡奪夷陽五田。五亦嬖於厲公。郤犫與長魚矯爭田、執而梏之、梏、械也。
【読み】
而して厲公に嬖せらる。郤錡夷陽五の田を奪う。五も亦厲公に嬖せらる。郤犫長魚矯と田を爭い、執えて之を梏し、梏は、械[かせ]なり。

與其父母妻子同一轅。繫之車轅。
【読み】
其の父母妻子と同じく一轅にせり。之を車轅に繫ぐ。

旣矯亦嬖於厲公。欒書怨郤至、以其不從己而敗楚師也、欲廢之。鄢陵戰、欒書欲固壘。郤至言楚有六閒、以取勝也。
【読み】
旣にして矯も亦厲公に嬖せらる。欒書郤至を怨むるに、其の己に從わずして楚の師を敗りしを以てして、之を廢せんと欲す。鄢陵の戰に、欒書壘を固くせんことを欲す。郤至楚に六閒有りと言いて、以て勝を取れり。

使楚公子茷告公曰、此戰也、郤至實召寡君、鄢陵戰、晉囚公子茷以歸。
【読み】
楚の公子茷[はい]をして公に告げしめて曰く、此の戰や、郤至實に寡君を召[よ]ぶに、鄢陵の戰に、晉公子茷を囚えて以て歸る。

以東師之未至也、齊・魯・衛之師。
【読み】
東師の未だ至らざると、齊・魯・衛の師。

與軍帥之不具也、曰此必敗。荀罃佐下軍居守、郤犫將新軍乞師。故言不具。
【読み】
軍帥の具わらざるとを以て、此れ必ず敗れん。荀罃下軍に佐として居守し、郤犫新軍に將として師を乞う。故に具わらずと言う。

吾因奉孫周以事君。孫周、晉襄公曾孫、悼公。君、楚王也。
【読み】
吾れ因りて孫周を奉じて以て君に事えんと曰えり、と。孫周は、晉の襄公の曾孫、悼公なり。君は、楚王なり。

公告欒書。書曰、其有焉。不然、豈其死之不恤、而受敵使乎。謂鄢陵戰時、楚子問郤至以弓。
【読み】
公欒書に告ぐ。書曰く、其れ有らん。然らずんば、豈其の死を恤えずして、敵の使いを受けんや。鄢陵の戰の時、楚子郤至に問[おく]るに弓を以てするを謂う。

君盍嘗使諸周而察之。嘗、試也。○使、所吏反。又如字。
【読み】
君盍ぞ嘗[こころ]みに諸を周に使いさせて之を察せざる、と。嘗は、試みるなり。○使は、所吏反。又字の如し。

郤至聘于周。欒書使孫周見之。公使覘之信。覘、伺也。
【読み】
郤至周に聘す。欒書孫周をして之を見せしむ。公之を覘[うかが]わしむるに信なり。覘[てん]は、伺うなり。

遂怨郤至。
【読み】
遂に郤至を怨む。

厲公田、與婦人先殺而飮酒、後使大夫殺。傳言厲公無道、先婦人而後卿佐。
【読み】
厲公田[かり]し、婦人と先ず殺して酒を飮み、後に大夫をして殺さしむ。傳厲公無道、婦人を先にして卿佐を後にするを言う。

郤至奉豕。進之於公。
【読み】
郤至豕を奉る。之を公に進む。

寺人孟張奪之。寺人、奄士。
【読み】
寺人孟張之を奪う。寺人は、奄士。

郤至射而殺之。公曰、季子欺余。季子、郤至。公反以爲郤至奪孟張豕。○射、食亦反。
【読み】
郤至射て之を殺す。公曰く、季子余を欺けり、と。季子は、郤至。公反って以爲えらく、郤至孟張の豕を奪う、と。○射は、食亦反。

厲公將作難。胥童曰、必先三郤。族大多怨。去大族不偪。不偪公室。○偪、彼力反。
【読み】
厲公將に難を作さんとす。胥童曰く、必ず三郤を先にせよ。族大にして怨み多し。大族を去れば偪らず。公室に偪らず。○偪は、彼力反。

敵多怨有庸。討多怨者、易有功。
【読み】
多怨に敵すれば庸有り、と。怨み多き者を討ずれば、功有り易し。

公曰、然。郤氏聞之。郤錡欲攻公。曰、雖死、君必危。郤至曰、人所以立、信・知・勇也。信不叛君。知不害民。勇不作亂。失茲三者、其誰與我。死而多怨、將安用之。言倶死、無用多其怨咎。○知、音智。下同。
【読み】
公曰く、然り、と。郤氏之を聞く。郤錡公を攻めんと欲す。曰く、死すと雖も、君必ず危うからん、と。郤至曰く、人立つ所以は、信・知・勇なり。信は君に叛かず。知は民を害せず。勇は亂を作さず。茲の三つの者を失わば、其れ誰か我に與せん。死して怨み多くせんこと、將[はた]安ぞ之を用いん。言うこころは、倶に死して、其の怨咎を多くするを用ゆること無かれ。○知は、音智。下も同じ。

君實有臣而殺之。其謂君何。我之有罪、吾死後矣。若殺不辜、將失其民。欲安得乎。言不得安君位。
【読み】
君實に臣有りて之を殺す。其れ君を何とか謂わん。我が罪有らば、吾が死すること後[おそ]し。若し不辜を殺さば、將に其の民を失わんとす。安からんことを欲すとも得んや。言うこころは、君位に安んずることを得ず。

待命而已。受君之祿、是以聚黨。有黨而爭命、爭死命。
【読み】
命を待たんのみ。君の祿を受けて、是を以て黨を聚む。黨を有して命を爭わば、死命を爭う。

罪孰大焉。傳言郤至無反心。
【読み】
罪孰れか焉より大ならん、と。傳郤至反心無きを言う。

壬午、胥童・夷羊五帥甲八百、將攻郤氏。八百人。
【読み】
壬午[みずのえ・うま]、胥童・夷羊五甲八百を帥いて、將に郤氏を攻めんとす。八百人。

長魚矯請無用衆。公使淸沸魋助之。沸魋、亦嬖人。○魋、徒回反。
【読み】
長魚矯衆を用ゆること無からんと請う。公淸沸魋[せいはいたい]をして之を助けしむ。沸魋も、亦嬖人。○魋は、徒回反。

抽戈結衽、衽、裳際。
【読み】
戈を抽き衽を結びて、衽は、裳際。

而僞訟者。僞與淸沸魋訟。
【読み】
訟うる者の僞[まね]す。僞りて淸沸魋と訟う。

三郤將謀於榭。榭、講武堂。
【読み】
三郤將に榭[しゃ]に謀らんとす。榭は、講武堂。

矯以戈殺駒伯・苦成叔於其位。位、所坐處也。駒伯、郤錡。苦成叔、郤犫。
【読み】
矯戈を以て駒伯・苦成叔を其の位に殺す。位は、坐する所の處なり。駒伯は、郤錡。苦成叔は、郤犫。

溫季曰、逃威也。遂趨。郤至本意、欲稟君命而死。今矯等不以君命而來。故欲逃凶賊爲害。故曰威。言可畏也。或曰、威當爲藏。
【読み】
溫季曰く、威に逃るなり、と。遂に趨る。郤至の本意、君命を稟けて死せんことを欲す。今矯等君命を以て來らず。故に凶賊の害を爲すを逃げんと欲す。故に威と曰う。畏る可きを言うなり。或ひと曰く、威當に藏に爲るべし、と。

矯及諸其車、以戈殺之。皆尸諸朝。陳其尸於朝。
【読み】
矯諸に其の車に及び、戈を以て之を殺す。皆諸を朝に尸[さら]す。其の尸を朝に陳ぬ。

胥童以甲劫欒書・中行偃於朝。矯曰、不殺二子、憂必及君。公曰、一朝而尸三卿。余不忍益也。對曰、人將忍君。人、謂書與偃。
【読み】
胥童甲を以て欒書・中行偃を朝に劫かす。矯曰く、二子を殺さずんば、憂え必ず君に及ばん、と。公曰く、一朝にして三卿を尸せり。余益すに忍びざるなり、と。對えて曰く、人將に君に忍びんとす。人は、書と偃とを謂う。

臣聞、亂在外爲姦、在内爲軌。御姦以德、德綏遠。○御、魚呂反。下同。
【読み】
臣聞く、亂外に在るを姦と爲し、内に在るを軌と爲す。姦を御[ふせ]ぐに德を以てし、德は遠きを綏んず。○御は、魚呂反。下も同じ。

御軌以刑。刑治近。
【読み】
軌を御ぐに刑を以てす、と。刑は近きを治む。

不施而殺、不可謂德。臣偪而不討、不可謂刑。德刑不立、姦軌竝至。臣請行。遂出奔狄。行、去也。○施、如字。或式豉反。
【読み】
施さずして殺すは、德と謂う可からず。臣偪りて討ぜざるは、刑と謂う可からず。德刑立たざれば、姦軌竝び至る。臣請う、行[さ]らん、と。遂に出でて狄に奔る。行は、去るなり。○施は、字の如し。或は式豉反。

公使辭於二子、辭謝書與偃。
【読み】
公二子に辭せしめて、書と偃とに辭謝す。

曰、寡人有討於郤氏、郤氏旣伏其辜矣。大夫無辱。其復職位。胥童劫而執之。故云辱。
【読み】
曰く、寡人郤氏を討ずること有りて、郤氏旣に其の辜に伏せり。大夫辱とすること無かれ。其れ職位に復れ、と。胥童劫かして之を執う。故に辱と云う。

皆再拜稽首曰、君討有罪、而免臣於死。君之惠也。二臣雖死、敢忘君德。乃皆歸。公使胥童爲卿。
【読み】
皆再拜稽首して曰く、君有罪を討じて、臣を死に免れしむ。君の惠みなり。二臣死すと雖も、敢えて君の德を忘れんや、と。乃ち皆歸る。公胥童をして卿爲らしむ。

公遊于匠麗氏。匠麗、嬖大夫家。
【読み】
公匠麗氏に遊ぶ。匠麗は、嬖大夫の家。

欒書・中行偃遂執公焉。召士匃。士匃辭。辭不往。
【読み】
欒書・中行偃遂に公を執う。士匃[しかい]を召ぶ。士匃辭す。辭して往かず。

召韓厥。韓厥辭曰、昔吾畜於趙氏、孟姬之讒、吾能違兵。畜、養也。違、去也。韓厥少爲趙盾所待養。及孟姬之亂、晉將討趙氏。而厥去其兵、示不與黨。言此者、明己無所偏助。孟姬亂、在八年。○去、起呂反。
【読み】
韓厥を召ぶ。韓厥辭して曰く、昔吾が趙氏に畜われしに、孟姬の讒に、吾れ能く兵を違[さ]れり。畜は、養うなり。違は、去るなり。韓厥少[わか]くして趙盾の爲に待養せらる。孟姬の亂に及びて、晉將に趙氏を討ぜんとす。而して厥其の兵を去りて、與黨せざることを示せり。此を言うは、己偏助する所無きを明らかにするなり。孟姬の亂は、八年に在り。○去は、起呂反。

古人有言曰、殺老牛、莫之敢尸。而況君乎。二三子不能事君、焉用厥也。尸、主也。○焉、於虔反。
【読み】
古人言えること有り曰く、老牛を殺すも、之を敢えて尸[つかさど]ること莫し、と。而るを況んや君をや。二三子君に事うること能わずんば、焉ぞ厥を用いん、と。尸は、主るなり。○焉は、於虔反。

舒・庸人以楚師之敗也、敗於鄢陵。舒・庸、東夷國。
【読み】
舒・庸の人楚の師の敗るるを以て、鄢陵に敗れぬ。舒・庸は、東夷の國。

道吳人圍巢、伐駕、圍釐・虺。巢・駕・釐・虺、楚四邑。○虺、以鬼反。
【読み】
吳人を道[みちび]きて巢を圍み、駕を伐ち、釐・虺[き]を圍む。巢・駕・釐・虺は、楚の四邑。○虺は、以鬼反。

遂恃吳而不設備。楚公子橐師襲舒・庸滅之。
【読み】
遂に吳を恃みて備えを設けず。楚の公子橐師[たくし]舒・庸を襲いて之を滅ぼす。

閏月、乙卯、晦、欒書・中行偃殺胥童。以其劫己故。○橐、他洛反。
【読み】
閏月、乙卯[きのと・う]、晦、欒書・中行偃胥童を殺す。其の己を劫かすを以ての故なり。○橐は、他洛反。

民不與郤氏。胥童道君爲亂。故皆書曰晉殺其大夫。厲公以私欲殺三郤。而三郤死、不以無罪書。書・偃以家怨害胥童。而胥童受國討文、明郤氏失民、胥童道亂、宜其爲國戮。
【読み】
民郤氏に與せず。胥童は君を道きて亂を爲す。故に皆書して晉其の大夫を殺すと曰う。厲公私欲を以て三郤を殺す。而るに三郤が死、罪無きを以て書さず。書・偃家怨を以て胥童を害す。而るに胥童國討の文を受くるは、郤氏民を失い、胥童亂を道く、宜しく其の國戮爲るべきを明かすなり。


〔經〕十有八年、春、王正月、晉殺其大夫胥童。傳在前年、經在今春、從告。
【読み】
〔經〕十有八年、春、王の正月、晉其の大夫胥童を殺す。傳は前年に在り、經は今春に在るは、告ぐるに從うなり。

庚申、晉弑其君州蒲。不稱臣、君無道。
【読み】
庚申[かのえ・さる]、晉其の君州蒲を弑す。臣を稱せざるは、君無道なればなり。

齊殺其大夫國佐。國武子。
【読み】
齊其の大夫國佐を殺す。國武子。

公如晉。夏、楚子・鄭伯伐宋。宋魚石復入于彭城。傳例曰、以惡入也。彭城、宋邑。今彭城縣。○復、扶又反。
【読み】
公晉に如く。夏、楚子・鄭伯宋を伐つ。宋の魚石彭城に復入す。傳例に曰く、惡を以て入るなり。彭城は、宋の邑。今の彭城縣。○復は、扶又反。

公至自晉。晉侯使士匃來聘。秋、杞伯來朝。八月、邾子來朝。築鹿囿。築牆爲鹿苑。
【読み】
公晉より至る。晉侯士匃[しかい]をして來聘せしむ。秋、杞伯來朝す。八月、邾子[ちゅし]來朝す。鹿囿を築く。牆を築きて鹿苑と爲す。

己丑、公薨于路寢。冬、楚人・鄭人侵宋。子重先遣輕軍侵宋。故稱人而不言伐。○輕、遣政反。
【読み】
己丑[つちのと・うし]、公路寢に薨ず。冬、楚人・鄭人宋を侵す。子重先ず輕軍をして宋を侵さしむ。故に人と稱して伐を言わず。○輕は、遣政反。

晉侯使士魴來乞師。○魴、音房。
【読み】
晉侯士魴をして來りて師を乞わしむ。○魴は、音房。

十有二月、仲孫蔑會晉侯・宋公・衛侯・邾子・齊崔杼同盟于虛朾。虛朾、地闕。○虛、起居反。朾、他丁反。
【読み】
十有二月、仲孫蔑晉侯・宋公・衛侯・邾子・齊の崔杼に會して虛朾[きょてい]に同盟す。虛朾は、地闕く。○虛は、起居反。朾は、他丁反。

丁未、葬我君成公。
【読み】
丁未[ひのと・ひつじ]、我が君成公を葬る。

〔傳〕十八年、春、王正月、庚申、晉欒書・中行偃使程滑弑厲公。程滑、晉大夫。
【読み】
〔傳〕十八年、春、王の正月、庚申、晉の欒書・中行偃程滑をして厲公を弑せしむ。程滑は、晉の大夫。

葬之于翼東門之外、以車一乘。言不以君禮葬。諸侯葬車七乘。
【読み】
之を翼の東門の外に葬るに、車一乘を以てす。言うこころは、君の禮を以て葬らず。諸侯の葬車は七乘。

使荀罃・士魴逆周子于京師而立之。悼公周。
【読み】
荀罃[じゅんおう]・士魴をして周子を京師より逆[むか]えしめて之を立つ。悼公周。

生十四年矣。大夫逆于淸原。周子曰、孤始願不及此。雖及此、豈非天乎。言有命。
【読み】
生まれて十四年なり。大夫淸原に逆う。周子曰く、孤が始めの願いは此に及ばず。此に及ぶと雖も、豈天に非ずや。命有るを言う。

抑人之求君、使出命也。立而不從、將安用君。二三子用我今日。否亦今日。共而從君、神之所福也。傳言其少有才、所以能自固。○少、詩照反。
【読み】
抑々人の君を求むるは、命を出ださしめんとなり。立てて從わずんば、將安ぞ君を用いんや。二三子我を用ゆるも今日なり。否らざるも亦今日なり。共して君に從うは、神の福する所なり、と。傳其の少[わか]くして才有りて、能く自ら固くする所以を言う。○少は、詩照反。

對曰、羣臣之願也。敢不唯命是聽。
【読み】
對えて曰く、羣臣の願いなり。敢えて唯命是れ聽かざらんや、と。

庚午、盟而入、與諸大夫盟。
【読み】
庚午[かのえ・うま]、盟いて入り、諸大夫と盟う。

館于伯子同氏、晉大夫家。館、舍也。
【読み】
伯子同氏に館り、晉の大夫の家。館は、舍なり。

辛巳、朝于武宮。武公、曲沃始命君。
【読み】
辛巳[かのと・み]、武宮に朝す。武公は、曲沃始命の君。

逐不臣者七人。夷羊五之屬。
【読み】
不臣の者七人を逐う。夷羊五の屬。

周子有兄而無慧。不能辨菽・麥。故不可立。菽、大豆也。豆・麥、殊形易別。故以爲癡者之候。不慧、蓋世所謂白癡。○菽、音叔。
【読み】
周子兄有れども無慧なり。菽・麥を辨ずること能わず。故に立つ可からず。菽は、大豆なり。豆・麥は、形を殊にして別ち易し。故に以て癡者の候と爲す。不慧は、蓋し世の所謂白癡なり。○菽は、音叔。

齊爲慶氏之難、前年、國佐殺慶克。○爲、于僞反。
【読み】
齊慶氏の難の爲に、前年、國佐慶克を殺す。○爲は、于僞反。

故甲申、晦、齊侯使士華免以戈殺國佐于内宮之朝。華免、齊大夫。内宮、夫人宮。
【読み】
故に甲申[きのえ・さる]、晦、齊侯士の華免をして戈を以て國佐を内宮の朝に殺さしむ。華免は、齊の大夫。内宮は、夫人の宮。

師逃于夫人之宮。伏兵内宮、恐不勝。
【読み】
師夫人の宮に逃[ふ]す。兵を内宮に伏すは、勝たざらんことを恐るるなり。

書曰齊殺其大夫國佐、棄命專殺、以穀叛故也。國佐本疾淫亂、殺慶克、齊以是討之、嫌其罪不及死。故傳明言其三罪。
【読み】
書して齊其の大夫國佐を殺すと曰うは、命を棄てて殺を專らにし、穀を以[い]て叛く故なり。國佐本淫亂を疾[にく]みて、慶克を殺し、齊是を以て之を討ずれば、其の罪の死に及ばざるに嫌あり。故に傳其の三罪を明言す。

使淸人殺國勝。勝、國佐子。前年、待命于淸者。
【読み】
淸人をして國勝を殺さしむ。勝は、國佐の子。前年、命を淸に待つ者なり。

國弱來奔。弱、勝之弟。
【読み】
國弱來奔す。弱は、勝の弟。

王湫奔萊。湫、國佐黨。○湫、子小反。萊、音來。
【読み】
王湫[おうしょう]萊に奔る。湫は、國佐の黨。○湫は、子小反。萊は、音來。

慶封爲大夫、慶佐爲司寇。封・佐、皆慶克子。
【読み】
慶封を大夫と爲し、慶佐を司寇と爲す。封・佐は、皆慶克の子。

旣齊侯反國弱、使嗣國氏。禮也。佐之罪、不及不祀。
【読み】
旣にして齊侯國弱を反して、國氏を嗣がしむ。禮なり。佐の罪、祀らざるに及ばず。

二月、乙酉、朔、晉悼公卽位于朝。朝廟五日而卽位也。厲公殺絕。故悼公不以嗣子居喪。○殺、音弑。
【読み】
二月、乙酉[きのと・とり]、朔、晉の悼公位に朝に卽く。廟に朝すること五日にして位に卽くなり。厲公殺絕す。故に悼公嗣子を以て喪に居らず。○殺は、音弑。

始命百官、始爲政。
【読み】
始めて百官に命じて、始めて政を爲す。

施舍己責、施恩惠、舍勞役、止逋責。○施舍、如字。一始豉反。
【読み】
施舍し責を己め、恩惠を施し、勞役を舍し、逋責を止む。○施舍は、字の如し。一に始豉反。

逮鰥寡、惠及微。
【読み】
鰥寡に逮ぼし、惠み微に及ぶ。

振廢滯、起舊德。
【読み】
廢滯を振[おこ]し、舊德を起こす。

匡乏困、救災患、匡、亦救也。
【読み】
乏困を匡[すく]い、災患を救い、匡も、亦救うなり。

禁淫慝、薄賦斂、宥罪戾、宥、寛也。○戾、力計反。
【読み】
淫慝を禁じ、賦斂を薄くし、罪戾を宥くし、宥は、寛[ゆる]きなり。○戾は、力計反。

節器用、節、省也。
【読み】
器用を節し、節は、省くなり。

時用民、使民以時。
【読み】
時に民を用いて、民を使うに時を以てす。

欲無犯時。不縱私欲。
【読み】
欲時を犯すこと無し。私欲を縱にせず。

使魏相・士魴・魏頡・趙武爲卿。相、魏錡子。魴、士會子。頡、魏顆子。武、趙朔子。此四人、其父祖皆有勞於晉国。○相、息亮反。頡、戶結反。
【読み】
魏相・士魴・魏頡[ぎけつ]・趙武をして卿爲らしむ。相は、魏錡の子。魴は、士會の子。頡は、魏顆の子。武は、趙朔の子。此の四人は、其の父祖皆晉国に勞有り。○相は、息亮反。頡は、戶結反。

荀家・荀會・欒黶・韓無忌爲公族大夫、使訓卿之子弟共儉孝弟。無忌、韓厥子。○弟、音悌。
【読み】
荀家・荀會・欒黶[らんえん]・韓無忌を公族大夫と爲して、卿の子弟に共儉孝弟を訓えしむ。無忌は、韓厥の子。○弟は、音悌。

使士渥濁爲大傅、使脩范武子之法。渥濁、士貞子。武子、爲景公大傅。
【読み】
士渥濁をして大傅爲らしめて、范武子の法を脩めしむ。渥濁は、士貞の子。武子は、景公の大傅爲り。

右行辛爲司空、使脩士蔿之法。辛將右行。因以爲氏。士蔿、獻公司空也。
【読み】
右行辛を司空と爲して、士蔿[しい]の法を脩めしむ。辛右行に將たり。因りて以て氏と爲す。士蔿は、獻公の司空なり。

弁糾御戎、校正屬焉、弁糾、欒糾也。校正、主馬官。○弁、皮彥反。校、戶孝反。
【読み】
弁糾を御戎として、校正屬し、弁糾は、欒糾なり。校正は、馬を主る官。○弁は、皮彥反。校は、戶孝反。

使訓諸御知義。戎士尙節義。
【読み】
諸御を訓えて義を知らしむ。戎士は節義を尙ぶ。

荀賓爲右、司士屬焉、司士、車右之官。
【読み】
荀賓を右と爲して、司士屬し、司士は、車右の官。

使訓勇力之士時使。勇力、皆車右也。勇力多不順命。故訓之以共時之使。○共、音恭。
【読み】
勇力の士を訓えて時に使わしむ。勇力は、皆車右なり。勇力多くは命に順わず。故に之を訓えて以て時の使に共す。○共は、音恭。

卿無共御、立軍尉以攝之。省卿戎御、令軍尉攝御而已。
【読み】
卿に共御無く、軍尉を立てて以て之を攝[か]ねしむ。卿の戎御を省き、軍尉をして攝御せしむるのみ。

祁奚爲中軍尉、羊舌職佐之。魏絳爲司馬、魏犫子也。
【読み】
祁奚を中軍尉と爲して、羊舌職之を佐く。魏絳を司馬と爲し、魏犫[ぎしゅう]の子なり。

張老爲候奄。鐸遏寇爲上軍尉、藉偃爲之司馬。偃、藉談父。爲上軍司馬。○遏、於葛反。又音謁。
【読み】
張老を候奄と爲す。鐸遏寇[たくあつこう]を上軍尉と爲して、藉偃[しゃえん]之が司馬爲り。偃は、藉談の父。上軍の司馬爲り。○遏は、於葛反。又音謁。
*「藉偃」は、漢籍國辭解全書では「籍偃」。

使訓卒乘、親以聽命。相親以聽上命。
【読み】
卒乘を訓えて、親しみて以て命を聽かしむ。相親しみて以て上命を聽く。

程鄭爲乘馬御、六騶屬焉、使訓羣騶知禮。程鄭、荀氏別族。乘馬御、乘車之僕也。六騶、六閑之騶。周禮、諸侯有六閑馬。乘車尙禮容。故訓羣騶、使知禮。○騶、側留反。
【読み】
程鄭を乘馬御と爲して、六騶屬し、羣騶を訓えて禮を知らしむ。程鄭は、荀氏の別族。乘馬御は、乘車の僕なり。六騶は、六閑の騶。周禮に、諸侯は六閑の馬有り、と。乘車は禮容を尙ぶ。故に羣騶を訓えて、禮を知らしむ。○騶は、側留反。

凡六官之長、皆民譽也。大國、三卿。晉時置六卿爲軍帥。故總舉六官。則知羣官無非其人。○長、丁丈反。
【読み】
凡そ六官の長は、皆民譽なり。大國は、三卿。晉時に六卿を置きて軍帥と爲す。故に六官を總舉す。則ち知る、羣官其の人に非ざること無きを。○長は、丁丈反。

舉不失職、官不易方、官守其業、無相踰易。
【読み】
舉職を失わず、官方を易えず、官其の業を守りて、相踰易すること無し。

爵不踰德、量德授爵。
【読み】
爵德を踰えず、德を量りて爵を授く。

師不陵正、旅不偪師、正、軍將、命卿也。師、二千五百人之帥也。旅、五百人之帥也。言上下有禮、不相陵偪。
【読み】
師正を陵がず、旅師に偪らず、正は、軍將、命卿なり。師は、二千五百人の帥なり。旅は、五百人の帥なり。上下禮有りて、相陵偪せざるを言う。

民無謗言。所以復霸也。此以上通言悼公所行。未必皆在卽位之年。○復、扶又反。
【読み】
民謗言無し。復霸たる所以なり。此れ以上は悼公の行う所を通言す。未だ必ずしも皆卽位の年に在らず。○復は、扶又反。

公如晉、朝嗣君也。
【読み】
公晉に如くは、嗣君に朝するなり。

夏、六月、鄭伯侵宋、及曹門外。曹門、宋城門。
【読み】
夏、六月、鄭伯宋を侵して、曹門の外に及ぶ。曹門は、宋の城門。

遂會楚子伐宋、取朝郟。楚子辛・鄭皇辰侵城郜、取幽丘。同伐彭城、朝郟・城郜・幽丘、皆宋邑。○取朝、如字。郟、古洽反。郜、古報反。
【読み】
遂に楚子に會して宋を伐ち、朝郟[ちょうこう]を取る。楚の子辛・鄭の皇辰城郜[じょうこう]を侵して、幽丘を取る。同じく彭城を伐ち、朝郟・城郜・幽丘は、皆宋の邑。○取朝は、字の如し。郟は、古洽反。郜は、古報反。

納宋魚石・向爲人・鱗朱・向帶・魚府焉、五子以十五年出奔楚。獨書魚石、爲帥告。
【読み】
宋の魚石・向爲人[しょういじん]・鱗朱・向帶[しょうたい]・魚府を納れ、五子十五年を以て楚に出奔す。獨り魚石を書すは、帥と爲して告ぐればなり。

以三百乘戍之而還。
【読み】
三百乘を以て之を戍らしめて還る。

書曰復入。惡其依阻大國、以兵威還。故書復入。
【読み】
書して復入すと曰う。其の大國に依阻して、兵威を以て還るを惡む。故に復入すと書す。

凡去其國、國逆而立之曰入。謂本無位、紹繼而立。
【読み】
凡そ其の國を去るに、國逆えて之を立つるを入ると曰う。本位無く、紹繼して立つを謂う。

復其位曰復歸。亦國逆。○復歸、音服。一扶又反。
【読み】
其の位に復るを復歸と曰う。亦國逆うるなり。○復歸は、音服。一に扶又反。

諸侯納之曰歸。謂諸侯以言語告請而納之。有位無位皆曰歸。
【読み】
諸侯之を納るを歸ると曰う。諸侯言語を以て告請して之を納るを謂う。位有ると位無きと皆歸ると曰う。

以惡曰復入。謂身爲戎首、稱兵入伐、害國殄民者也。此四條、所以明外内之援、辨逆順之辭、通君臣取國有家之大例。○復、扶又反。
【読み】
惡を以てするを復入すと曰う。身ら戎首と爲り、兵を稱げて入伐し、國を害し民を殄[た]つ者を謂うなり。此の四條は、外内の援けを明らかにし、逆順の辭を辨ずる所以にして、君臣に通じて國を取り家を有つの大例なり。○復は、扶又反。

宋人患之。西鉏吾曰、何也。西鉏吾、宋大夫。○吾、音魚。
【読み】
宋人之を患う。西鉏吾[せいしょご]曰く、何ぞや。西鉏吾は、宋の大夫。○吾は、音魚。

若楚人與吾同惡、以德於我、吾固事之也、不敢貳矣。惡、謂魚石。
【読み】
若し楚人吾と惡を同じくして、以て我に德あらば、吾れ固より之に事えて、敢えて貳あらじ。惡は、魚石を謂う。

大國無厭。鄙我猶憾。言己事之、則以我爲鄙邑、猶恨不足。此吾患也。○厭、於鹽反。
【読み】
大國は厭くこと無し。我を鄙にするも猶憾む。言うこころは、己之に事うれば、則ち我を以て鄙邑と爲すも、猶足らざるを恨む。此れ吾が患えなり。○厭は、於鹽反。

不然、而收吾憎、使贊其政、謂不同惡魚石、而用之使佐政。
【読み】
然らずして、吾が憎めるを收めて、其の政を贊けしめ、同じく魚石を惡まずして、之を用いて政を佐けしむるを謂う。

以閒吾釁、亦吾患也。今將崇諸侯之姦、而披其地、崇、長也。謂楚今取彭城、以封魚石。披、猶分也。○閒、如字。又去聲。披、普彼反。長、丁丈反。
【読み】
以て吾が釁[ひま]を閒するも、亦吾が患えなり。今將に諸侯の姦を崇[ま]して、其の地を披[わか]ちて、崇は、長[ま]すなり。楚今彭城を取りて、以て魚石を封ずるを謂う。披は、猶分かつのごとし。○閒は、字の如し。又去聲。披は、普彼反。長は、丁丈反。

以塞夷庚、夷庚、吳・晉往来之要道。楚封魚石於彭城、欲以絕吳・晉之道。
【読み】
以て夷庚を塞ぎ、夷庚は、吳・晉往来の要道。楚魚石を彭城に封じて、以て吳・晉の道を絕たんと欲す。

逞姦而攜服、毒諸侯而懼吳・晉。隔吳・晉之道。故懼。攜、離也。
【読み】
姦を逞しくして服したるを攜[はな]れしめ、諸侯を毒して吳・晉を懼れしめんとす。吳・晉の道を隔つ。故に懼る。攜は、離るるなり。

吾庸多矣。非吾憂也。且事晉何爲。晉必恤之。言宋常事晉、何爲。顧有此患難。
【読み】
吾が庸多し。吾が憂えに非ざるなり。且つ晉に事うるは何の爲ぞや。晉必ず之を恤えん、と。言うこころは、宋常に晉に事うるは、何の爲ぞや。此の患難有るを顧みてなり。

公至自晉。晉范宣子來聘。且拜朝也。拜謝公朝。
【読み】
公晉より至る。晉の范宣子來聘す。且朝するを拜するなり。公の朝するを拜謝す。

君子謂、晉於是乎有禮。有卑讓之禮。
【読み】
君子謂えらく、晉是に於て禮有り、と。卑讓の禮有り。

秋、杞桓公來朝。勞公、且問晉故。公以晉君語之。語其德政。○勞、力報反。語、魚據反。
【読み】
秋、杞の桓公來朝す。公を勞い、且つ晉の故を問う。公晉君を以て之に語ぐ。其の德政を語る。○勞は、力報反。語は、魚據反。

杞伯於是驟朝于晉、而請爲昏。爲平公不徹樂張本。
【読み】
杞伯是に於て驟に晉に朝して、昏を爲さんと請う。平公樂を徹せざる爲の張本なり。

七月、宋老佐・華喜圍彭城。老佐卒焉。言所以不克彭城。
【読み】
七月、宋の老佐・華喜彭城を圍む。老佐卒す。彭城に克たざる所以を言う。

八月、邾宣公來朝、卽位而來見也。○見、賢遍反。
【読み】
八月、邾の宣公來朝するは、位に卽きて來り見ゆるなり。○見は、賢遍反。

築鹿囿、書不時也。非土功時。
【読み】
鹿囿に築くは、時ならざるを書すなり。土功の時に非ず。

己丑、公薨于路寢、言道也。在路寢、得君薨之道。
【読み】
己丑、公路寢に薨ずるは、道あるを言うなり。路寢に在るは、君薨ずるの道を得。

冬十一月、楚子重救彭城伐宋。使偏師與鄭人侵宋。子重爲後鎭。
【読み】
冬十一月、楚の子重彭城を救いて宋を伐つ。偏師をして鄭人と宋を侵さしむ。子重後鎭と爲る。

宋華元如晉告急。韓獻子爲政。於是欒書卒。韓厥代將中軍。
【読み】
宋の華元晉に如きて急を告ぐ。韓獻子政を爲す。是に於て欒書卒す。韓厥代わりて中軍に將たり。

曰、欲求得人、必先勤之。勤恤其急。
【読み】
曰く、人を得んことを求めんと欲せば、必ず先ず之を勤めしめよ。其の急を勤恤す。

成霸安疆、自宋始矣。晉侯師于台谷以救宋。台谷、地闕。○台、勑才反。一音臺。
【読み】
霸を成し疆を安んずること、宋より始めん、と。晉侯台谷に師して以て宋を救う。台谷は、地闕く。○台は、勑才反。一に音臺。

遇楚師于靡角之谷。楚師還。畏晉强也。靡角、宋地。
【読み】
楚の師に靡角の谷に遇う。楚の師還る。晉の强きを畏るるなり。靡角は、宋の地。

晉士魴來乞師。將救宋。
【読み】
晉の士魴來りて師を乞う。將に宋を救わんとす。

季文子問師數於臧武仲。武仲、宣叔之子。
【読み】
季文子師の數を臧武仲に問う。武仲は、宣叔の子。

對曰、伐鄭之役、知伯實來。下軍之佐也。知伯、荀罃。
【読み】
對えて曰く、鄭を伐つの役に、知伯實に來れり。下軍の佐なり。知伯は、荀罃。

今彘季亦佐下軍。彘季、士魴。○彘、勑例反。
【読み】
今彘季[ていき]も亦下軍に佐たり。彘季は、士魴。○彘は、勑例反。

如伐鄭可也。伐鄭在十七年。
【読み】
鄭を伐ちしが如くにして可なり。鄭を伐つは十七年に在り。

事大國、無失班爵、而加敬焉、禮也。從之。從武仲言。
【読み】
大國に事うるは、班爵を失うこと無くして、敬を加うるは、禮なり、と。之に從う。武仲が言に從う。

十二月、孟獻子會于虛朾、謀救宋也。宋人辭諸侯、而請師、以圍彭城。不敢煩諸侯。故但請其師。爲襄元年、圍彭城傳。
【読み】
十二月、孟獻子虛朾に會するは、宋を救わんことを謀るなり。宋人諸侯を辭して、師を請いて、以て彭城を圍む。敢えて諸侯を煩わさず。故に但其の師を請うのみ。襄元年、彭城を圍む爲の傳なり。

孟獻子請于諸侯、而先歸會葬。
【読み】
孟獻子諸侯に請いて、先ず歸りて葬に會す。

丁未、葬我君成公、書順也。薨于路寢、五月而葬、國家安靜、世適承嗣。故曰書順也。
【読み】
丁未、我が君成公を葬るとは、順を書すなり。路寢に薨じ、五月にして葬り、國家安靜にして、世適嗣を承く。故に順を書すと曰うなり。



經十一年。
傳。
且涖。音利。又音類。不娉。本又作聘。匹政反。○今本亦聘。無媒。亡回反。爲姒。音似。庇其。必利反。又音祕。不復。扶又反。下文注復出皆同。伯與。本亦作輿。前好。呼報反。注同。候人。如字。本又作鄇人。○今本亦鄇人。與檀。徒丹反。令狐。力丁反。
經十二年。
傳。
之難。乃旦反。交贄。本又作摯。之二反。無壅。於勇反。有渝。羊朱反。殛。本亦作極。紀力反。注同。卑。必爾反。本又作俾。○今本亦俾。成好。呼報反。盡年皆同。云莫。本亦作暮。重之。直用反。之治。直吏反。下注治世同。享宴。許丈反。舊又許亮反。本又作饗宴。音於見反。徐於顯反。不倚。於綺反。則折。之設反。朝而。直遙反。朝日朝。徐音朝旦之朝。赳赳。居黝反。一音居醜反。扞難。乃旦反。干城。戶旦反。本亦作扞。又如字。爲搏。音博。噬之。市制反。以駮。邦角反。必復。扶又反。
經十三年。道過。古禾反。又古臥反。伯廬。力吳反。○今本盧。
傳。而惰。徒臥反。爲介。音界。輔相。息亮反。下同。盡力。津忍反。下同。勠力。呂靜字韻、與飂同。○今本戮。辟麗。力知反。○今本驪。卑我。必爾反。本亦作俾。下及注同。○今本亦俾。甲冑。直又反。之疆。居良反。不詢。思巡反。擅及。市戰反。恐懼。丘勇反。蔑死我君。本或以我字在死上非。殽地。戶交反。奸絕。音干。滑。干八反。撓亂。徐許高反。傾覆。孚服反。下同。之隕。于敏反。下同。逞志。勑景反。俘我。芳夫反。不復。扶又反。箕。音基。一音其。芟。所銜反。痍。音夷。本又作夷。○今本亦夷。之聚。才喩反。儌福。古堯反。與女。音汝。下文皆同。同好。呼報反。一音如字。我寡君。讀者亦作寡人。狄應。應對之應。注同。惡君。烏路反。下同。以懲。直升反。要也。一遙反。欲道。音導。將中軍。子匠反。凡將某軍者放此。以意求之。麻隧。音遂。徑扶風。音經。○今本經。迓。本又作訝。五嫁反。子般。音班。○今本班。子印。一刃反。守。手又反。欣時。如字。徐云、或作欷。亦音欣。案公羊傳作喜時。宜音忻。
經十四年。
傳。
又以爲。如字。或于僞反。而宥。音又。子相。息亮反。注同。叔傲。本又作敖。音同。觥。古橫反。○今本觵。其觩。徐巨彪反。一音巨秋反。好禮。呼報反。復伐。扶又反。疆許。居良反。下同。而晦。呼内反。婉而。怨晩反。懲惡。直升反。子衎。徐苦旦反。國也夫。音扶。不聳。息勇反。盡寘。之豉反。
經十五年。世子成。音城。共公。音恭。欲挾。音協。無咎。其九反。同好。呼報反。
傳。將見。賢遍反。應天。應對之應。不拘。九于反。子囊。乃郎反。以庇。必利反。又音祕。暴隧。音遂。數戰。所角反。少司寇。詩照反。下同。音帶。本又作帶。○今本亦帶。大宰。音泰。戌在。音恤。故去。起呂反。於雎。徐許惟反。又音綏。登丘而望之則馳。絕句。水涯。本又作崖。一音宜。登陴。毗支反。樂裔。以制反。州犂。力兮反。而驟。仕救反。傳見。賢遍反。
經十六年。著樹。直略反。非使。所吏反。
傳。近鄭。附近之近。陂。彼宜反。覆之。一音芳又反。汋陵。音勺。又七藥反。一音常藥反。爲晉。于僞反。居守。手又反。非使。所吏反。下應。應對之應。烝民。之承反。注同。敦厖。莫邦反。瀆齊。徒木反。奸時。本或作干。而罷。音皮。本亦作疲。下注同。○今本亦疲。所底。一音之履反。吾不復見子矣。一本無復字。喪列。息浪反。下同。以紓。音舒。集睦。集又作輯。音同。又七入反。○今本亦輯。亟數。所角反。盍釋。戶臘反。晨壓。於甲反。徐於輒反。范匃。本又作丐。營壘。力軌反。王卒。子忽反。下皆同。諠。況元反。本又作喧。○今本亦喧。譁。音華。本又作嘩。爲櫓。音魯。大宰。音泰。官名大者多同。以意求之。張幕。音莫。塵上。時掌反。爲行。戶郎反。下夾公行同。左將。子匠反。下去將同。帥。所類反。下元帥同。戰禱。丁老反。或丁報反。萃於。似醉反。陽長。丁丈反。激南。古狄反。共王。音恭。夾公。古洽反。焉得。於虔反。遠其。于萬反。掀公。或曰、掀、引也。胡根反。一音虛斤反。字林云、舉出也。火氣也。又丘近反。之黨。一本作潘尫之子黨。案注云、潘、尫之子也。則傳文不得有子字。古本此及襄二十三年、申鮮虞之傳摯、皆無子字。七札。側八反。徐又側乙反。夸王。苦瓜反。中頃。戶講反。韎韋。徐莫蓋反。而屬。章玉反。介者。音界。使者。所吏反。注及下同。今撎。字林云、舉首下手也。輕兵。遣政反。又如字。内旌。音精。爲國故。于僞反。乃射。食亦反。再發。如字。徐音廢。盡殪。於計反。搏人。音博。軾。音式。之麾。許危反。日臣。人實反。之使。所吏反。下免使者同。閒暇。音閑。不使。所吏反。又如字。得犒。苦報反。卒乘。繩證反。下同。展陳。如字。徇曰。似俊反。蒐乘。所留反。蓐食。音辱。申重。直用反。逸縱。子用反。能見。賢遍反。三日穀。本或作三日館穀誤也。君幼。本或作君幼弱。之覆。芳服反。臣之卒。從此已前皆子忽反。初隕。于敏反。盍圖。戶臘反。子鉏。仕居反。儆備。京領反。設守。手又反。未弭。亡氏反。殺。音試。○今本弑。不復。扶又反。下及下文復請同。以伯。一音霸。敢過。古臥反。又古禾反。使者。所吏反。注同。之介。音界。下文敢介大國同。而後食。一本作聲伯而後食。不與。音預。將主。子匠反。我斃。婢世反。淫慝。吐得反。下文同。則夫。音扶。若朝。如字。我爲。于僞反。相二。息亮反。偃與謀。音預。始見。賢遍反。亦閒。徐音閒厠之閒。讀者或如字。語諸。魚據反。不見。賢遍反。又如字。注同。
經十七年。北宮括。古活反。柯陵。古河反。貍。力之反。貜。徐居碧反。
傳。爲質。音致。治曲。直吏反。驕侈。尺氏反。亦尸氏反。與婦人。如字。徐音預。于閎。音宏。相冒。亡報反。讁我。直革反。今本謫。譴責。遣戰反。相靈。息亮反。下相施氏同。處守。手又反。而索。所白反。注同。刖鮑。音月。又五刮反。嚮日。許亮反。本亦作向。○今本亦向。危行。下孟反。涉洹。一音恆。瓊。求營反。含象。本亦作唅。反自鄢。一本又作自鄢陵。○今本亦同。盡去。起呂反。下文同。而嬖。必計反。魚矯。居表反。而梏。古毒反。械也。戶戒反。軍帥。所類反。居守。手又反。敵使。所吏反。君盍。戶臘反。覘之。勑廉反。伺也。音司。又絲嗣反。易有。以豉反。淸沸。甫味反。結衽。而甚反。徐而鴆反。坐處。昌慮反。一朝。如字。爲軌。本又作宄。音同。厥少。詩照反。道吳。音導。下及注同。伐賀。如字。一音加。釐。力之反。
經十八年。鹿囿。音又。
傳。一乘。繩證反。注同。易別。以豉反。下彼列反。癡者。勑疑反。之難。乃旦反。王湫。徐子鳥反。止逋。布吳反。逮鰥。古頑反。淫慝。他得反。賦斂。力驗反。宥。音又。節省。所景反。下同。不從。子用反。本亦作縱。○今本亦縱。魏顆。苦果反。孝弟。本或作悌。渥濁。於角反。右行。戶郎反。士蔿。于委反。辛將。子匠反。下軍將同。弁。本又作卞同。糾。居黝反。共時。本亦作供。下文同。省卿。所景反。令軍。力呈反。鐸。待洛反。訓卒。子忽反。乘。繩證反。下及注皆同。軍帥。所類反。下之帥爲帥皆同。以上。時掌反。三百乘。繩證反。惡其。烏路反。以惡曰復入。本或作以惡入曰復入。西鉏。仕居反。徐在居反。猶憾。戶暗反。吾釁。許靳反。患難。乃旦反。世適。丁歷反。


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(引用文献)


江守孝三(Emori Kozo)