春秋《左氏傳》(隱公、桓公 、莊公、閔公)   [温故知新 TOP]
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春秋左氏傳校本


 春秋《左氏傳》(隱公、桓公 、莊公、閔公)

春秋左氏傳
(隱公 桓公莊公閔公)(僖公上、中、下 )(文公上、下 )(宣公上、下 )(成公上、下 )
(襄公一、二、三) (四、五、六 )(昭公一、二、三、四) (五、六、七)(定公上、下)(哀公上、下)(序杜預略傳 ・後序)

隱公、桓公 、莊公、閔公

春秋左氏傳校本第一

隱公 起元年盡十一年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

隱公 名息姑。惠公之子。母聲子。謚法、不尸其位曰隱。
【読み】
隱公 名は息姑。惠公の子。母は聲子。謚法に、其の位を尸[つかさど]らざるを隱と曰う、と。

〔傳〕惠公元妃孟子。言元妃、明始適夫人也。子、宋姓。○惠公、名不皇。謚法、愛人好與曰惠。適、丁歷反。
【読み】
〔傳〕惠公の元妃は孟子。元妃と言うは、始適の夫人なることを明かすなり。子は、宋の姓。○惠公、名は不皇。謚法に、人を愛し與うるを好むを惠と曰う、と。適は、丁歷反。

孟子卒。不稱薨、不成喪也。無謚、先夫死、不得從夫謚。○謚、實至反。
【読み】
孟子卒す。薨ずと稱せざるは、喪を成さざればなり。謚無きは、夫に先だちて死して、夫の謚に從うことを得ざればなり。○謚は、實至反。

繼室以聲子。生隱公。聲、謚也。蓋孟子之姪娣也。諸侯始娶、則同姓之國、以姪娣媵。元妃死、則次妃攝治内事。猶不得稱夫人。故謂之繼室。○姪、直結反。又丈一反。兄女也。娣、大計反。女弟也。
【読み】
室を繼ぐに聲子を以てす。隱公を生む。聲は、謚なり。蓋し孟子の姪娣[てってい]ならん。諸侯始めて娶れば、則ち同姓の國、姪娣を以て媵[よう]す。元妃死すれば、則ち次妃内事を攝治す。猶夫人と稱することを得ず。故に之を繼室と謂う。○姪は、直結反。又丈一反。兄の女なり。娣は、大計反。女弟なり。

宋武公生仲子。仲子生而有文在其手、曰爲魯夫人。故仲子歸于我。婦人謂嫁曰歸。以手理自然成字、有若天命、故嫁之於魯。○婦人謂嫁曰歸、本或無曰字。此依公羊傳。
【読み】
宋の武公仲子を生む。仲子生まれて文の其の手に在る有り、曰く魯の夫人と爲らん、と。故に仲子我に歸[とつ]げり。婦人嫁を謂いて歸と曰う。手理の自然に字を成すは、天命の若くなること有るを以て、故に之を魯に嫁す。○婦人謂嫁曰歸は、本或は曰の字無からん。此れ公羊傳に依れり。

生桓公、而惠公薨。言歸魯而生男。惠公不以桓生之年薨。
【読み】
桓公を生みて、惠公薨ず。魯に歸ぎて男を生むを言う。惠公は桓の生まるるの年を以て薨ぜず。

是以隱公立、而奉之。隱公、繼室之子、當嗣世。以禎祥之故、追成父志。爲桓尙少、是以立爲大子、帥國人奉之。爲經元年春不書卽位傳。○禎、音貞。爲桓、于僞反。大、音泰。按仲子生桓、已而惠薨。或至桓公截、恐非杜意。立奉、與襄七年、奉而立之、廿五年、立而相之同。或謂、隱代立、桓爲大弟、恐非傳意。此傳先經始事、伏下簒立之禍、緣父偏愛。
【読み】
是を以て隱公立てて、之を奉ず。隱公は、繼室の子、當に世を嗣ぐべし。禎祥の故を以て、父の志を追成す。桓尙少きが爲に、是を以て立てて大子と爲し、國人を帥いて之を奉ず。經元年春卽位を書さざるが爲の傳なり。○禎は、音貞。爲桓は、于僞反。大は、音泰。按ずるに仲子桓を生みて、已にして惠薨ぜり。或ひと桓公に至りて截てるとは、恐らくは杜の意に非ず。立てて奉ずるは、襄七年、奉じて之を立つ、廿五年、立てて之に相たりと同じ。或ひと謂く、隱代わりて立ち、桓大弟と爲るとは、恐らくは傳の意に非ず。此れ傳の經に先だちて事を始むる、下簒立の禍い、父の偏愛に緣ることを伏せるなり。


〔經〕
元年、春、王正月。隱公之始年、周王之正月也。凡人君卽位、欲其體元以居正。故不言一年一月也。隱雖不卽位、然攝行君事。故亦朝廟告朔也。告朔朝正例、在襄二十九年、卽位例、在隱・莊・閔・僖元年。○朝、直遙反。下同。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月。隱公の始年にして、周王の正月なり。凡そ人君の位に卽くは、其の元を體し以て正に居らんことを欲す。故に一年一月と言わざるなり。隱位に卽かずと雖も、然れども君の事を攝行す。故に亦廟に朝し朔を告ぐ。告朔朝正の例は、襄二十九年に在り、卽位の例は、隱・莊・閔・僖元年に在り。○朝は、直遙反。下も同じ。

三月、公及邾儀父盟于蔑。附庸之君未王命、例稱名。能自通于大國、繼好息民。故書字貴之。名例、在莊五年。邾、今魯國鄒縣也。蔑、姑蔑。魯地、魯國卞縣南有姑城。○蔑、亡結反。
【読み】
三月、公邾[ちゅ]の儀父と蔑に盟う。附庸の君未だ王に命ぜられざれば、例は名を稱す。能く自ら大國に通じて、好を繼ぎ民を息う。故に字を書して之を貴ぶなり。名の例は、莊五年に在り。邾は、今の魯國鄒縣なり。蔑は、姑蔑。魯の地、魯國卞縣の南に姑城有り。○蔑は、亡結反。

夏、五月、鄭伯克段于鄢。不稱國討而言鄭伯、譏失敎也。段不弟。故不言弟。明鄭伯雖失敎、而段亦凶逆。以君討臣。而用二君之例者、言段强大儁傑、據大都以耦國。所謂得雋曰克也。國討例、在莊二十二年、得儁例、在莊十一年、母弟例、在宣十七年。鄭、在滎陽宛陵縣西南。鄢、今潁川鄢陵縣。○段、徒亂反。鄢、於晩反。又於建反。又於然反。
【読み】
夏、五月、鄭伯段に鄢[えん]に克つ。國討を稱せずして鄭伯と言うは、敎えを失うを譏るなり。段は不弟なり。故に弟と言わず。鄭伯敎えを失うと雖も、段も亦凶逆なるを明かす。君を以て臣を討ず。而して二君の例を用ゆる者は、段强大儁傑[しゅんけつ]、大都に據りて以て國に耦[なら]ぶを言う。所謂雋[すい]を得るを克と曰うなり。國討の例は、莊二十二年に在り、得儁の例は、莊十一年に在り、母弟の例は、宣十七年に在り。鄭は、熒陽宛陵縣の西南に在り。鄢は、今の潁川鄢陵縣なり。○段は、徒亂反。鄢は、於晩反。又於建反。又於然反。

秋、七月、天王使宰咺來歸惠公仲子之賵。宰、官。咺、名也。咺贈死不及尸、弔生不及哀、豫凶事。故貶而名之。此天子大夫、稱字之例。仲子者、桓公之母。婦人無謚。故以字配姓。來者、自外之文。歸者、不反之辭。○咺、吁阮反。賵、芳鳳反。
【読み】
秋、七月、天王宰咺[けん]をして來りて惠公仲子の賵[ぼう]を歸[おく]らしむ。宰は、官。咺は、名なり。咺死に贈りて尸に及ばず、生を弔して哀に及ばず、凶事を豫めす。故に貶[おと]して之を名いう。此れ天子の大夫には、字を稱するの例なり。仲子は、桓公の母。婦人は謚無し。故に字を以て姓に配す。來は、外よりするの文。歸とは、反らざるの辭。○咺は、吁阮反。賵は、芳鳳反。

九月、及宋人盟于宿。客主無名、皆微者也。宿、小國。東平無鹽縣也。凡盟、以國地者、國主亦與盟。例在僖十九年。宋今梁國睢陽縣。○與、音預。下同。睢、音雖。
【読み】
九月、宋人と宿に盟う。客主名無きは、皆微者なればなり。宿は、小國。東平無鹽縣なり。凡そ盟は、國を以て地する者は、國主も亦盟に與れるなり。例は僖十九年に在り。宋は今の梁國睢[すい]陽縣。○與は、音預。下も同じ。睢は、音雖。

冬、十有二月、祭伯來。祭伯、諸侯爲王卿士者。祭、國。伯、爵也。傳曰、非王命也。釋其不稱使。○祭、側界反。傳祭仲同。
【読み】
冬、十有二月、祭伯來る。祭伯は、諸侯の王の卿士爲る者。祭は、國。伯は、爵なり。傳に曰く、王命に非ず、と。其の使と稱せざるを釋くなり。○祭は、側界反。傳の祭仲と同じ。

公子益師卒。傳例曰、公不與小斂、故不書日。所以示薄厚也。春秋不以日月爲例、唯卿佐之喪、獨託日以見義者、事之得失、旣未足以襃貶人君。然亦非死者之罪、無辭可以寄文、而人臣輕賤、死日可畧。故特假日以見義。○斂、力驗反。見、賢遍反。下同。
【読み】
公子益師卒す。傳例に曰く、公小斂に與らず。故に日を書さず、と。薄厚を示す所以なり。春秋は日月を以て例とせざるに、唯卿佐の喪のみ、獨り日に託して以て義を見す者は、事の得失、旣に未だ以て人君を襃貶するに足らず。然れども亦死者の罪に非ず、辭の以て文に寄す可き無く、而して人臣は輕賤、死日畧す可し。故に特に日を假りて以て義を見すのみ。○斂は、力驗反。見は、賢遍反。下も同じ。

〔傳〕元年、春、王周正月。言周以別夏・殷。○別、彼列反。夏、戶雅反。三代之號、可以意求。
【読み】
〔傳〕元年、春、王は周の正月。周と言いて以て夏・殷に別つ。○別は、彼列反。夏は、戶雅反。三代の號、意を以て求む可し。

不書卽位、攝也。假攝君政、不脩卽位之禮。故史不書於策。所以見異於常。○見、賢遍反。
【読み】
卽位を書さざるは、攝すればなり。君政を假攝して、卽位の禮を脩めず。故に史策に書さず。常に異なるを見す所以なり。○見は、賢遍反。

三月、公及邾儀父盟于蔑。邾子克也。克、儀父名。
【読み】
三月、公邾の儀父と蔑に盟う。邾子克なり。克は、儀父の名。

未王命。故不書爵。曰儀父、貴之也。王未賜命以爲諸侯。其後儀父服事齊桓、以奬王室。王命以爲邾子。故莊十六年經、書邾子克卒。○故不書爵、一本無故字。奬、將丈反。
【読み】
未だ王に命ざられず。故に爵を書さず。儀父と曰うは、之を貴んでなり。王未だ命を賜いて以て諸侯とせず。其の後儀父齊桓に服事して、以て王室を奬[たす]く。王命じて以て邾子とす。故に莊十六年の經に、邾子克卒すと書す。○故不書爵は、一本に故の字無し。奬は、將丈反。

公攝位、而欲求好於邾。故爲蔑之盟。解所以與盟也。○好、呼報反。
【読み】
公位を攝して、好を邾に求めんと欲す。故に蔑の盟を爲す。與に盟う所以を解くなり。○好は、呼報反。

夏、四月、費伯帥師城郎。不書、非公命也。費伯、魯大夫。郎、魯邑。高平方與縣東南有郁郎亭。傳曰、君舉必書。然則史之策書、皆君命也。今不書於經、亦因史之舊法。故傳釋之。諸魯事、傳釋不書、他皆放此。○費、音秘。郁、於六反。
【読み】
夏、四月、費伯師を帥いて郎に城[きず]く。書さざるは、公命に非ざればなり。費伯は、魯の大夫。郎は、魯の邑。高平方與縣の東南に郁郎亭有り。傳に曰く、君の舉は必ず書す、と。然らば則ち史の策書は、皆君命なり。今經に書さざるは、亦史の舊法に因るなり。故に傳に之を釋く。諸々魯の事、傳に書さずと釋くは、他も皆此に放え。○費は、音秘。郁は、於六反。

初、鄭武公娶于申。曰武姜。申國、今南陽宛縣。○宛、於元反。
【読み】
初め、鄭の武公申に娶る。武姜と曰う。申國は、今の南陽宛縣なり。○宛は、於元反。

生莊公、及共叔段。段、出奔共。故曰共叔。猶晉侯在鄂、謂之鄂侯。○共、音恭。地名。
【読み】
莊公と、共叔段とを生む。段は、共に出奔す。故に共叔と曰う。猶晉侯鄂[がく]に在りて、之を鄂侯と謂うがごとし。○共は、音恭。地の名なり。

莊公寤生、驚姜氏。故名曰寤生。遂惡之。寐寤而莊公已生。故驚而惡之。○寤、五故反。惡、烏路反。
【読み】
莊公寤生して、姜氏を驚かす。故に名づけて寤生と曰う。遂に之を惡む。寐ね寤めて莊公已に生まる。故に驚いて之を惡む。○寤は、五故反。惡は、烏路反。

愛共叔段、欲立之。欲立以爲大子。
【読み】
共叔段を愛して、之を立てんと欲す。立てて以て大子とせんと欲す。

亟請於武公。公弗許。
【読み】
亟々[しばしば]武公に請う。公許さず。

及莊公卽位、爲之請制。公曰、制、巖邑也。虢叔死焉。他邑唯命。虢叔、東虢君也。恃制巖險而不修德、鄭滅之。恐段復然。故開以他邑。虢國、今熒陽縣。○亟、欺冀反。數也。爲、于僞反。虢、瓜伯反。國名。
【読み】
莊公の位に卽くに及んで、之が爲に制を請う。公曰く、制は、巖邑なり。虢叔死せり。他の邑は唯命のままにせん、と。虢叔は、東虢君なり。制の巖險を恃んで德を修めず、鄭之を滅ぼす。段も復然らんことを恐る。故に開くに他の邑を以てす。虢國は、今の熒陽縣なり。○亟は、欺冀反。數々なり。爲は、于僞反。虢は、瓜伯反。國の名なり。

請京。使居之。謂之京城大叔。公順姜請、使段居京。謂之京城大叔、言寵異於衆臣。京、鄭邑。今熒陽京縣。○大、音泰。下皆同。
【読み】
京を請う。之に居らしむ。之を京城大叔と謂う。公姜の請に順いて、段をして京に居らしむ。之を京城大叔と謂うは、寵の衆臣に異なるを言う。京は、鄭の邑。今の熒陽京縣なり。○大は、音泰。下も皆同じ。

祭仲曰、都城過百雉、國之害也。祭仲、鄭大夫。方丈、曰堵。三堵、曰雉。一雉之牆、長三丈、高一丈。侯伯之城、方五里、徑三百雉。故其大都、不得過百雉。○長、直亮反。又如字。高、古報反。又如字。
【読み】
祭仲曰く、都城の百雉に過ぐるは、國の害なり。祭仲は、鄭の大夫。方丈を、堵と曰う。三堵を、雉と曰う。一雉の牆、長さ三丈、高さ一丈。侯伯の城、方五里なれば、徑りは三百雉なり。故に其の大都、百雉に過ぐることを得ず。○長は、直亮反。又字の如し。高は、古報反。又字の如し。

先王之制、大都不過參國之一。三分國城之一。○參、七南反。又音三。
【読み】
先王の制、大都は國を參にするの一に過ぎず。國城を三分にするの一なり。○參は、七南反。又音三。

中、五之一。小、九之一。今京不度、非制也。不合法度、非先王制。
【読み】
中は、五の一。小は、九の一。今京度あらず、制に非ず。法度に合わず、先王の制に非ず。

君將不堪。公曰、姜氏欲之。焉辟害。對曰、姜氏何厭之有。不如早爲之所。使得其所宜。○焉、於虔反。厭、於鹽反。
【読み】
君將に堪えざらんとす、と。公曰く、姜氏之を欲す。焉に害を辟けん、と。對えて曰く、姜氏何の厭くことか之れ有らん。早く之が所を爲さんに如かず。其の宜しき所を得せしむ。○焉は、於虔反。厭は、於鹽反。

無使滋蔓。蔓難圖也。蔓草猶不可除。況君之寵弟乎。公曰、多行不義、必自斃。子姑待之。斃、踣也。姑、且也。○踣、蒲北反。
【読み】
滋蔓せしむること無かれ。蔓すれば圖り難し。蔓草も猶除く可からず。況んや君の寵弟をや、と。公曰く、多く不義を行わば、必ず自ら斃れん。子姑く之を待て、と。斃は、踣[たお]れるなり。姑は、且くなり。○踣は、蒲北反。

旣而大叔命西鄙北鄙貳於己。鄙、鄭邊邑。貳、兩屬。
【読み】
旣にして大叔西鄙北鄙に命じて己に貳せしむ。鄙は、鄭の邊邑。貳は、兩屬なり。

公子呂曰、國不堪貳。君將若之何。公子呂、鄭大夫。
【読み】
公子呂曰く、國貳に堪えず。君將に之を若何せん。公子呂は、鄭の大夫なり。

欲與大叔、臣請事之。若弗與、則請除之。無生民心。叔久不除、則舉國之民、當生他心。
【読み】
大叔に與えんと欲せば、臣請う之に事えん。若し與えずんば、則ち請う之を除かん。民心を生ずること無かれ、と。叔久しく除かざれば、則ち舉國の民、當に他心を生すべし。

公曰、無庸。將自及。言無用除之。禍將自及。
【読み】
公曰く、庸ゆること無かれ。將に自ら及ばんとす。言うこころは、之を除くことを用ゆること無かれ。禍い將に自ら及ばんとす。

大叔又收貳以爲己邑。前兩屬者、今皆取以爲己邑。
【読み】
大叔又貳を收めて以て己が邑とす。前の兩屬は、今皆取りて以て己が邑とす。

至于廩延。言轉侵多也。廩延、鄭邑。陳留酸棗縣北有延津。○廩、力錦反。
【読み】
廩延に至る。轉侵の多きを言うなり。廩延は、鄭の邑。陳留酸棗縣の北に延津有り。○廩は、力錦反。

子封曰、可矣。厚將得衆。子封、公子呂也。厚、謂土地廣大。
【読み】
子封曰く、可なり。厚くば將に衆を得んとす、と。子封は、公子呂なり。厚は、土地の廣大なるを謂う。

公曰、不義不暱、厚將崩。不義於君、不親於兄、非衆所附。雖厚必崩。○暱、女乙反。親也。
【読み】
公曰く、義あらず暱[した]しからざれば、厚くとも將に崩れんとす、と。君に義あらず、兄に親しからざるは、衆の附く所に非ず。厚しと雖も必ず崩る。○暱[じつ]は、女乙反。親しむなり。

大叔完聚、完城郭、聚人民。○完、音桓。
【読み】
大叔完聚し、城郭を完くし、人民を聚む。○完は、音桓。

繕甲兵、具卒乘、步曰卒、車曰乘。○繕、市戰反。乘、繩證反。下同。
【読み】
甲兵を繕して、卒乘を具え、步を卒と曰い、車を乘と曰う。○繕は、市戰反。乘は、繩證反。下も同じ。

將襲鄭。夫人將啓之。啓、開也。
【読み】
將に鄭を襲わんとす。夫人將に之を啓かんとす。啓は、開くなり。

公聞其期曰、可矣。命子封帥車二百乘以伐京。古者兵車一乘、甲士三人、步卒七十二人。
【読み】
公其の期を聞いて曰く、可なり、と。子封に命じて車二百乘を帥て以て京を伐たしむ。古は兵車一乘に、甲士三人、步卒七十二人なり。

京叛大叔段。段入于鄢。公伐諸鄢。五月辛丑、大叔出奔共。共國、今汲郡共縣。○共、音恭。
【読み】
京大叔段に叛く。段鄢[えん]に入る。公諸を鄢に伐つ。五月辛丑[かのと・うし]、大叔出でて共に奔る。共國は、今の汲郡共縣なり。○共は、音恭。

書曰鄭伯克段于鄢、段不弟。故不言弟。如二君。故曰克。稱鄭伯、譏失敎也。謂之鄭志。不言出奔、難之也。傳言夫子作春秋、改舊史以明義。不早爲之所、而養成其惡。故曰失敎。段實出奔。而以克爲文、明鄭伯志在於殺、難言其奔。○難、乃旦反。
【読み】
書して鄭伯段に鄢に克つと曰うは、段不弟なり。故に弟と言わず。二君の如し。故に克つと曰う。鄭伯と稱するは、敎えを失うを譏るなり。之を鄭の志と謂う。出奔すと言わざるは、之を難しとするなり。傳に夫子の春秋を作る、舊史を改めて以て義を明かすを言う。早く之が所を爲さずして、其の惡を養成す。故に敎えを失うと曰う。段實は出奔す。而るを克を以て文を爲すは、鄭伯の志殺すに在りて、其の奔るを言うことを難しとするを明らかにするなり。○難は、乃旦反。

遂寘姜氏于城潁、城潁、鄭地。○寘、之鼓反。
【読み】
遂に姜氏を城潁に寘[お]いて、城潁は、鄭の地。○寘[し]は、之鼓反。

而誓之曰、不及黃泉、無相見也。地中之泉、故曰黃泉。
【読み】
之に誓いて曰く、黃泉に及ばずんば、相見ること無からん、と。地中の泉、故に黃泉と曰う。

旣而悔之。潁考叔爲潁谷封人。封人、典封疆者。
【読み】
旣にして之を悔ゆ。潁考叔は潁谷の封人爲り。封人は、封疆を典る者なり。

聞之、有獻於公。公賜之食。食舍肉。公問之。對曰、小人有母。皆嘗小人之食矣。未嘗君之羹。請以遺之。食而不啜羹、欲以發問也。宋華元殺羊爲羹饗士。蓋古賜賤官之常。○舍、音捨。遺、唯季反。下同。華、戶化反。
【読み】
之を聞き、公に獻ずること有り。公之に食を賜う。食いて肉を舍く。公之を問う。對えて曰く、小人母有り。皆小人の食を嘗めり。未だ君の羹を嘗めず。請う、以て之に遺らん、と。食いて羹を啜らざるは、以て問いを發せしめんと欲するなり。宋の華元羊を殺して羹を爲り士に饗す。蓋し古賤官に賜うの常ならん。○舍は、音捨。遺は、唯季反。下も同じ。華は、戶化反。

公曰、爾有母遺。繄我獨無。繄、語助。○繄、烏兮反。又烏帝反。
【読み】
公曰く、爾母有りて遺る。繄[ああ]我れ獨り無し。繄[えい]は、語助。○繄は、烏兮反。又烏帝反。

潁考叔曰、敢問何謂也。據武姜在設疑也。
【読み】
潁考叔曰く、敢えて問う、何の謂ぞや、と。武姜の在るに據りて疑いを設くるなり。

公語之故、且告之悔。對曰、君何患焉。若闕地及泉、隧而相見、其誰曰不然。隧、若今延道。○語、魚據反。闕、其月反。隧、音遂。
【読み】
公之に故を語げ、且つ之に悔いを告ぐ。對えて曰く、君何ぞ患えん。若し地を闕[ほ]りて泉に及ぼし、隧[すい]にして相見えば、其れ誰か然らずと曰わん。隧は、今の延道の若し。○語は、魚據反。闕は、其月反。隧は、音遂。

公從之。公入而賦、大隧之中、其樂也融融。賦、賦詩也。融融、和樂也。○樂、音洛。下同。
【読み】
公之に從う。公入りて賦す、大隧の中、其の樂しみ融融たり、と。賦は、詩を賦するなり。融融は、和樂なり。○樂は、音洛。下も同じ。

姜出而賦、大隧之外、其樂也洩洩。洩洩、舒散也。○洩、羊世反。
【読み】
姜出でて賦す、大隧の外、其の樂しみ洩洩たり、と。洩洩は、舒散なり。○洩は、羊世反。

遂爲母子如初。
【読み】
遂に母子爲ること初めの如し。

君子曰、潁考叔純孝也。純、猶篤也。
【読み】
君子曰く、潁考叔は純孝なり、と。純は、猶篤きがごとし。

愛其母、施及莊公。詩曰、孝子不匱、永錫爾類、其是之謂乎。不匱、純孝也。莊公雖失之於初、孝心不忘。考叔感而通之。所謂永賜爾類。詩人之作、各以情言。君子論之、不以文害意。故春秋傳引詩、皆不與今說詩者同。他皆放此。○施、以鼓反。又式智反。匱、其位反。
【読み】
其の母を愛して、施[ひ]いて莊公に及ぼせり。詩に曰く、孝子匱[とぼ]しからず、永く爾に類を錫うとは、其れ是を之れ謂うか。匱しからざるは、純孝なり。莊公之を初めに失うと雖も、孝心忘れず。考叔感ぜしめて之を通ず。所謂永く爾に類を賜うなり。詩人の作れるは、各々情を以て言う。君子の之を論ずるは、文を以て意を害せず。故に春秋傳に詩を引くは、皆今の詩を說く者と同じからず。他も皆此に放え。○施は、以鼓反。又式智反。匱は、其位反。

秋七月、天王使宰咺來歸惠公仲子之賵。
【読み】
秋七月、天王宰咺[けん]をして來りて惠公仲子の賵[ぼう]を歸[おく]らしむ。

緩。且子氏未薨。故名。惠公葬在春秋前。故曰緩也。子氏、仲子也。薨、在二年。賵、助喪之物。
【読み】
緩[おく]るるなり。且[また]子氏未だ薨ぜず。故に名いう。惠公の葬は春秋の前に在り。故に緩るると曰うなり。子氏は、仲子なり。薨は、二年に在り。賵は、喪を助くる物なり。

天子七月而葬。同軌畢至。言同軌以別四夷之國。○別、彼列反。
【読み】
天子七月にして葬る。同軌畢く至る。同軌と言うは以て四夷の國に別つなり。○別は、彼列反。

諸侯五月。同盟至。同在方嶽之盟。
【読み】
諸侯は五月。同盟至る。同じく方嶽の盟に在り。

大夫三月。同位至。古者行役不踰時。
【読み】
大夫は三月。同位至る。古は行役時を踰えず。

士踰月。外姻至。踰月、度月也。姻猶親也。此言赴弔、各以遠近爲差、因爲葬節。
【読み】
士は踰月。外姻至る。踰月は、度月なり。姻は猶親のごとし。此れ赴弔、各々遠近を以て差と爲し、因りて葬節とするを言う。

贈死不及尸。尸、未葬之通稱。○稱、尺證反。
【読み】
死に贈りて尸に及ばず。尸は、未だ葬らざるの通稱なり。○稱は、尺證反。

弔生不及哀。諸侯已上、旣葬則縗麻除無哭位。諒闇終喪。○上、時掌反。縗、七雷反。諒、音亮。又音良。闇、如字。
【読み】
生を弔して哀に及ばず。諸侯已上は、旣に葬れば則ち縗麻[さいま]除いて哭位無し。諒闇して喪を終う。○上は、時掌反。縗は、七雷反。諒は、音亮。又音良。闇は、字の如し。

豫凶事、非禮也。仲子在。而來贈。故曰豫凶事。
【読み】
凶事を豫めするは、禮に非ざるなり。仲子在り。而るに來り贈る。故に凶事を豫めすと曰う。

八月、紀人伐夷。夷不告。故不書。夷國、在城陽莊武縣。紀國、在東莞劇縣。隱十一年傳例曰、凡諸侯有命、告則書。不然則否。史不書於策。故夫子亦不書於經。傳見其事、以明春秋例也。他皆放此。○莞、音官。
【読み】
八月、紀人夷を伐つ。夷告げず。故に書さず。夷國は、城陽莊武縣に在り。紀國は、東莞劇縣に在り。隱十一年の傳例に曰く、凡そ諸侯命有るときは、告ぐれば則ち書す。然らざれば則ち否らず、と。史策に書さず。故に夫子も亦經に書さず。傳其の事を見して、以て春秋の例を明かす。他も皆此に放え。○莞は、音官。

有蜚。不爲災。亦不書。蜚、負蠜也。莊二十九年傳例曰、凡物不爲災不書。又於此發之者、明傳之所據、非唯史策、兼采簡牘之記。他皆放此。○蜚、扶味反。蠜、音煩。
【読み】
蜚[ひ]有り。災いを爲さず。亦書さず。蜚は、負蠜[ふうはん]なり。莊二十九年の傳例に曰く、凡そ物災いを爲さざれば書さず、と。又此に於て之を發する者は、傳の據る所は、唯史策のみに非ず、簡牘の記を兼ね采るを明かす。他も皆此に放え。○蜚は、扶味反。蠜は、音煩。

惠公之季年、敗宋師于黃。黃、宋邑。陳留外黃縣東有黃城。○敗、必邁反。敗他也。後放此。
【読み】
惠公の季年、宋の師を黃に敗る。黃は、宋の邑。陳留外黃縣の東に黃城有り。○敗は、必邁反。他を敗るなり。後も此に放え。

公立而求成焉。九月、及宋人盟于宿、始通也。經無義例。故傳直言其歸趣而已。他皆放此。
【読み】
公立ちて成[たい]らぎを求む。九月、宋人と宿に盟うは、始めて通ずるなり。經に義例無し。故に傳直に其の歸趣を言うのみ。他も皆此に放え。

冬十月、庚申、改葬惠公。公弗臨。故不書。以桓爲大子。故隱公讓而不敢爲喪主。隱攝君政。故據隱而言。
【読み】
冬十月、庚申[かのえ・さる]、惠公を改め葬る。公臨せず。故に書さず。桓を以て大子とす。故に隱公讓りて敢えて喪主と爲らず。隱君政を攝す。故に隱に據りて言う。

惠公之薨也、有宋師、大子少。葬故有闕。是以改葬。○少、詩照反。
【読み】
惠公の薨ずるや、宋の師有りて、大子少[わか]し。葬故に闕くこと有り。是を以て改め葬る。○少は、詩照反。

衛侯來會葬。不見公。亦不書。諸侯會葬、非禮也。不得接公成禮。故不書於策。他皆放此。衛國在汲郡朝歌縣。○朝、如字。
【読み】
衛侯來りて葬に會す。公を見ず。亦書さず。諸侯葬に會するは、禮に非ず。公に接して禮を成すことを得ず。故に策に書さず。他も皆此に放え。衛國は汲郡朝歌縣に在り。○朝は、字の如し。

鄭共叔之亂、公孫滑出奔衛。公孫滑、共叔段之子。○滑、干八反。又乎八反。
【読み】
鄭の共叔の亂に、公孫滑出でて衛に奔る。公孫滑は、共叔段の子。○滑は、干八反。又乎八反。

衛人爲之伐鄭、取廩延。鄭人以王師虢師、伐衛南鄙。虢、西虢國也。弘農陝縣東南有虢城。○爲、于僞反。陝、失冉反。
【読み】
衛人之が爲に鄭を伐ち、廩延を取る。鄭人王の師虢の師を以[い]て、衛の南鄙を伐つ。虢は、西虢國なり。弘農陝縣の東南に虢城有り。○爲は、于僞反。陝は、失冉反。

請師於邾。邾子使私於公子豫。公子豫、魯大夫。私請師。○豫、音預。
【読み】
師を邾に請う。邾子公子豫に私せしむ。公子豫は、魯の大夫。私に師を請う。○豫は、音預。

豫請往。公弗許。遂行、及邾人・鄭人、盟于翼。翼、邾地。
【読み】
豫往かんと請う。公許さず。遂に行き、邾人・鄭人と、翼に盟えり。翼は、邾の地。

不書、非公命也。
【読み】
書さざるは、公の命に非ざればなり。

新作南門。不書、亦非公命也。非公命不書二見者、皆興作大事。各舉以備文。
【読み】
新たに南門を作る。書さざるは、亦公の命に非ざればなり。公の命に非ざれば書さざること二たび見す者は、皆大事を興作すればなり。各々舉げて以て文を備うるなり。

十二月、祭伯來、非王命也。
【読み】
十二月、祭伯來るとは、王の命に非ざればなり。

衆父卒。衆父、公子益師字。○衆、音終。
【読み】
衆父卒す。衆父は、公子益師の字。○衆は、音終。

公不與小斂。故不書日。禮、卿佐之喪、小斂大斂、君皆親臨之。崇恩厚也。始死情之所篤、禮之所崇。故以小斂爲文。至於但臨大斂、及不臨其喪、亦同不書日。○與、音預。斂、力驗反。疏。喪記、君於大夫、大斂焉。爲之賜、則小斂焉。卿是大夫之尊者。明大小斂君皆親之。按臨喪、弔殯也、不臨大斂、及不弔殯、亦同不日。卿喪不曰。胡氏舉辨三傳、甚詳。
【読み】
公小斂に與らず。故に日を書さず。禮に、卿佐の喪は、小斂大斂に、君皆親ら之に臨む。恩厚を崇ぶなり。始めて死するは情の篤き所、禮の崇ぶ所。故に小斂を以て文を爲す。但大斂に臨んで、及び其の喪に臨まざるに至るも、亦同じく日を書さず。○與は、音預。斂は、力驗反。疏。喪記に、君大夫に於て、大斂す。之が爲に賜いて、則ち小斂す、と。卿は是れ大夫の尊者。大小斂は君皆之を親らするを明かすなり。按ずるに喪に臨み、殯を弔うや、大斂に臨まず、及び殯を弔わざれば、亦同じく日いわず。卿喪も曰いわず。胡氏三傳を舉げ辨えて、甚だ詳らかなり。


〔經〕二年、春、公會戎于潛。戎狄夷蠻、皆氐羗之別種也。戎而書會者、順其俗以爲禮。皆謂居中國若戎子駒支者。陳留濟陽縣東南有戎城。潛、魯地。○氐、都兮反。羗、郤良反。種、章勇反。駒、音拘。濟、子禮反。水名。凡地名皆同。
【読み】
〔經〕二年、春、公戎に潛に會す。戎狄夷蠻は、皆氐羗[しきょう]の別種なり。戎にして會を書す者は、其の俗に順いて以て禮を爲すなり。皆中國に居りて戎子駒支の若き者を謂う。陳留濟陽縣の東南に戎城有り。潛は、魯の地。○氐は、都兮反。羗は、郤良反。種は、章勇反。駒は、音拘。濟は、子禮反。水の名。凡そ地名は皆同じ。

夏、五月、莒人入向。向、小國也。譙國龍亢縣東南有向城。莒國、今城陽莒縣也。將卑師少稱人。弗地曰入。例在襄十三年。○向、舒亮反。亢、音剛。又苦浪反。
【読み】
夏、五月、莒[きょ]人向[しょう]に入る。向は、小國なり。譙國龍亢縣の東南に向城有り。莒國は、今の城陽の莒縣なり。將卑しく師少なきを人と稱す。地もたざるを入ると曰う。例は襄十三年に在り。○向は、舒亮反。亢は、音剛。又苦浪反。

無駭帥師入極。無駭、魯卿。極、附庸小國。無駭不書氏、未賜族。賜族例在八年。○駭、戶楷反。
【読み】
無駭師を帥いて極に入る。無駭は、魯の卿。極は、附庸の小國。無駭氏を書さざるは、未だ族を賜わざればなり。族を賜うの例は八年に在り。○駭は、戶楷反。

秋、八月、庚辰、公及戎盟于唐。高平方與縣北有武唐亭。八月無庚辰。庚辰七月九日也。日月必有誤。○方、音房。與、音預。
【読み】
秋、八月、庚辰[かのえ・たつ]、公戎と唐に盟う。高平方與縣の北に武唐亭有り。八月に庚辰無し。庚辰は七月九日なり。日月に必ず誤り有らん。○方は、音房。與は、音預。

九月、紀裂繻來逆女。裂繻、紀大夫。傳曰、卿爲君逆也。以別卿自逆也。逆女、或稱使。或不稱使。昏禮不稱主人、史各隨其實而書。非例也。他皆放此。○繻、音須。
【読み】
九月、紀の裂繻來りて女を逆[むか]う。裂繻は、紀の大夫。傳に曰く、卿君の爲に逆う、と。以て卿自ら逆うるに別つなり。女を逆うるに、或は使と稱し、或は使と稱せず。昏禮は主人を稱せず、史各々其の實に隨いて書す。例に非ざるなり。他も皆此に放え。○繻は、音須。

冬、十月、伯姬歸于紀。無傳。伯姬、魯女。裂繻所逆者。
【読み】
冬、十月、伯姬紀に歸ぐ。傳無し。伯姬は、魯の女。裂繻が逆うる所の者なり。

紀子帛・莒子盟于密。子帛、裂繻字也。莒・魯有怨、紀侯旣昏于魯、使大夫盟莒、以和解之。子帛爲魯結好息民。故傳曰、魯故也。比之内大夫、而在莒子上、稱字以嘉之也。字例在閔元年。密、莒邑。城陽淳于縣東北有密郷。○帛、音白。解、如字。又戶買反。好、呼報反。
【読み】
紀の子帛・莒子密に盟う。子帛は、裂繻の字なり。莒・魯怨み有り、紀侯旣に魯に昏し、大夫をして莒に盟わしめて、以て之を和解す。子帛魯の爲に好を結び民を息わしむ。故に傳に曰く、魯の故なり、と。之を内大夫に比して、莒子の上に在[お]き、字を稱して以て之を嘉す。字の例は閔元年に在り。密は、莒の邑。城陽淳于縣の東北に密郷有り。○帛は、音白。解は、字の如し。又戶買反。好は、呼報反。

十有二月、乙卯、夫人子氏薨。無傳。桓未爲君、仲子不應稱夫人。隱讓桓以爲大子、成其母喪、以赴諸侯。故經於此稱夫人也。不反哭。故不書葬。例在三年。
【読み】
十有二月、乙卯[きのと・う]、夫人子氏薨ず。傳無し。桓未だ君と爲らず、仲子夫人と稱す應からず。隱桓に讓りて以て大子とし、其の母の喪を成して、以て諸侯に赴[つ]ぐ。故に經此に於て夫人を稱す。反哭せず。故に葬を書さず。例は三年に在り。

鄭人伐衛。凡師、有鐘鼓曰伐。例在莊二十九年。
【読み】
鄭人衛を伐つ。凡そ師、鐘鼓有るを伐と曰う。例は莊二十九年に在り。

〔傳〕二年、春、公會戎于潛、修惠公之好也。戎請盟。公辭。許其修好、而不許其盟、禦夷狄者、不壹而足。○好、呼報反。下同。
【読み】
〔傳〕二年、春、公戎に潛に會するは、惠公の好を修むるなり。戎盟を請う。公辭す。其の好を修むるを許して、其の盟を許さざるは、夷狄を禦ぐ者は、壹たびにして足らざればなり。○好は、呼報反。下も同じ。

莒子娶于向。向姜不安莒而歸。夏、莒人入向、以姜氏還。傳言失昏姻之義。凡得失小故、經無異文、而傳備其事、案文則是非足以爲戒。他皆放此。○還、音旋。後皆同。
【読み】
莒子向に娶る。向姜莒に安んぜずして歸る。夏、莒人向に入り、姜氏を以[い]て還る。傳に昏姻の義を失うことを言う。凡そ得失の小故、經に異文無くして、傳其の事を備にするは、文を案ずれば則ち是非以て戒めとするに足ればなり。他も皆此に放え。○還は、音旋。後も皆同じ。

司空無駭入極、費庈父勝之魯司徒・司馬・司空、皆卿也。庈父、費伯也。前年城郎、今因得以勝極。故傳於前年發之。○庈、音琴。
【読み】
司空無駭極に入るは、費庈父[きんほ]が之に勝てるなり。魯の司徒・司馬・司空は、皆卿なり。庈父は、費伯なり。前年郎に城き、今因りて以て極に勝つことを得。故に傳前年に於て之を發す。○庈は、音琴。

戎請盟。秋、盟于唐、復修戎好也。○復、扶又反。
【読み】
戎盟を請う。秋、唐に盟うは、復戎の好を修むるなり。○復は、扶又反。

九月、紀裂繻來逆女、卿爲君逆也。○爲、于僞反。
【読み】
九月、紀の裂繻來り女を逆うるは、卿君の爲に逆うるなり。○爲は、于僞反。

冬、紀子帛・莒子盟于密、魯故也。
【読み】
冬、紀の子帛・莒子密に盟うは、魯の故なり。

鄭人伐衛、討公孫滑之亂也。治元年取廩延之亂。以姜氏還、附注還、如字。戶關反。後皆同。
【読み】
鄭人衛を伐つは、公孫滑の亂を討ずるなり。元年廩延を取るの亂を治む。以姜氏還の、附注の還は、字の如し。戶關反。後も皆同じ。


〔經〕三年、春、王二月、己巳、日有食之。無傳。日行遲。一歲一周天。月行疾。一月一周天。一歲凡十二交會。然日月動物、雖行度有大量、不能不小有盈縮。故有雖交會而不食者、或有頻交而食者。唯正陽之月、君子忌之。故有伐鼓用幣之事。今釋例以長歷推經傳、明此食是二月朔也。不書朔、史失之。書朔日例、在桓十七年。○己巳、上音紀、下音祀。後倣此。食、如字。本或作蝕。音同。量、音亮。縮、所六反。
【読み】
〔經〕三年、春、王の二月、己巳[つちのと・み]、日之を食すること有り。傳無し。日の行くこと遲し。一歲に一周天す。月の行くこと疾し。一月に一周天す。一歲に凡そ十二たび交會す。然れども日月は動物、行度大量有りと雖も、小しく盈縮有らざること能わず。故に交會すと雖も食せざる者有り、或は頻りに交わりて食する者有り。唯正陽の月のみ、君子之を忌む。故に鼓を伐ち幣を用ゆるの事有り。今釋例長歷を以て經傳を推すに、明らかに此の食は是れ二月朔なり。朔と書さざるは、史之を失するなり。朔日を書すの例は、桓十七年に在り。○己巳は、上は音紀、下は音祀。後も此に倣え。食は、字の如し。本或は蝕に作る。音同じ。量は、音亮。縮は、所六反。

三月、庚戌、天王崩。周平王也。實以壬戌崩、欲諸侯之速至。故遠日以赴。春秋不書實崩日、而書遠日者、卽傳其僞、以懲創臣子之過也。襄二十九年傳曰、鄭上卿有事、使印段如周會葬。今不書葬、魯不會。○卽傳、直專反。印、因刃反。
【読み】
三月、庚戌[かのえ・いぬ]、天王崩ず。周の平王なり。實は壬戌を以て崩ずれども、諸侯の速やかに至らんことを欲す。故に日を遠くして以て赴[つ]げり。春秋實の崩日を書さずして、遠日を書す者は、卽ち其の僞りを傳えて、以て臣子の過ちを懲創するなり。襄二十九年の傳に曰く、鄭の上卿事有り、印段をして周に如いて葬に會せしむ、と。今葬を書さざるは、魯會せざればなり。○卽傳は、直專反。印は、因刃反。

夏、四月、辛卯、君氏卒。隱不敢從正君之禮。故亦不敢備禮於其母。
【読み】
夏、四月、辛卯[かのと・う]、君氏卒す。隱敢えて正君の禮に從わず。故に亦敢えて禮を其の母に備えず。

秋、武氏子來求賻。武氏子、天子大夫之嗣也。平王喪在殯、新王未得行其爵命、聽於冢宰。故傳曰、王未葬。釋其所以稱父族、又不稱使也。魯不共奉王喪、致令有求。經直文以示不敬。故傳不復具釋也。○賻、音附。共、音恭。
【読み】
秋、武氏の子來りて賻[ふ]を求む。武氏の子とは、天子の大夫の嗣なり。平王の喪殯に在れば、新王未だ其の爵命を行うことを得ず、冢宰に聽かしむ。故に傳に曰く、王未だ葬らず、と。其の父の族を稱し、又使と稱せざる所以を釋くなり。魯王の喪に共奉せずして、求むること有らしむるを致す。經直文して以て不敬を示す。故に傳には復具に釋かざるなり。○賻は、音附。共は、音恭。

八月、庚辰、宋公和卒。稱卒者、略外以別内也。元年大夫盟於宿。故赴以名。例在七年。○別、必列反。
【読み】
八月、庚辰[かのえ・たつ]、宋公和卒す。卒すと稱する者は、外を略して以て内に別つなり。元年大夫宿に盟う。故に赴[つ]ぐるに名を以てす。例は七年に在り。○別は、必列反。

冬、十有二月、齊侯・鄭伯盟于石門。來告、故書。石門、齊地。或曰、濟北盧縣故城西南濟水之門。
【読み】
冬、十有二月、齊侯・鄭伯石門に盟う。來り告ぐ、故に書す。石門は、齊の地なり。或ひと曰く、濟北盧縣の故城の西南の濟水の門、と。

癸未、葬宋穆公。無傳。魯使大夫會葬。故書。始死書卒、史在國承赴、爲君故惡其薨名、改赴書也。書葬、則舉謚稱公者、會葬者在外、據彼國之辭也。書葬例在昭六年。○爲、于僞反。惡、烏路反。
【読み】
癸未[みずのと・ひつじ]、宋の穆公を葬る。傳無し。魯大夫をして葬に會せしむ。故に書す。始めて死するに卒と書すは、史國に在りて赴[つ]げを承けて、君の爲の故に其の薨の名を惡み、赴げを改めて書すなり。葬を書すときは、則ち謚を舉げて公と稱する者は、會葬する者外に在りて、彼の國の辭に據るなり。葬を書すの例は昭六年に在り。○爲は、于僞反。惡は、烏路反。

〔傳〕三年、春、王三月、壬戌、平王崩。赴以庚戌。故書之。
【読み】
〔傳〕三年、春、王の三月、壬戌[みずのえ・いぬ]、平王崩ず。赴[つ]ぐるに庚戌[かのえ・いぬ]を以てす。故に之を書す。

夏、君氏卒、聲子也。不赴於諸侯、不反哭于寢、不祔于姑。故不曰薨。不稱夫人。故不言葬。夫人喪禮有三。薨則赴於同盟之國、一也。旣葬日中自墓反虞於正寢。所謂反哭于寢、二也。卒哭而祔於祖姑、三也。若此則書曰夫人某氏薨、葬我小君某氏。此備禮之文也。其或不赴不祔、則爲不成喪。故死不稱夫人薨、葬不言葬我小君某氏。反哭則書葬、不反哭則不書葬。今聲子三禮皆闕。釋例論之詳矣。○祔、音附。
【読み】
夏、君氏卒するは、聲子なり。諸侯に赴[つ]げず、寢に反哭せず、姑に祔[ふ]せず。故に薨ずと曰わず。夫人と稱せず。故に葬ると言わず。夫人の喪禮に三つ有り。薨ずれば則ち同盟の國に赴ぐ、一なり。旣に葬り日中に墓より反りて正寢に虞す。所謂寢に反哭する、二なり。卒哭して祖姑に祔く、三なり。此の若くなれば則ち書して夫人某氏薨ず、我が小君某氏を葬ると曰う。此れ禮を備うるの文なり。其の或は赴げず祔せざれば、則ち喪を成さずとす。故に死して夫人薨ずと稱せず、葬るに我が小君某氏を葬ると言わず。反哭すれば則ち葬を書し、反哭せざれば則ち葬を書さず。今聲子は三禮皆闕く。釋例之を論ずること詳らかなり。○祔は、音附。

不書姓、爲公故、曰君氏。不書姓、辟正夫人也。隱見爲君。故特書於經、稱曰君氏、以別凡妾媵。○爲、公于僞反。
【読み】
姓を書さずして、公の爲の故に、君氏と曰えり。姓を書さざるは、正夫人を辟くるなり。隱見[げん]に君爲り。故に特に經に書して、稱して君氏と曰いて、以て凡妾媵に別てり。○爲は、公于僞反。

鄭武公・莊公、爲平王卿士。卿士、王卿之執政者。言父子秉周之政。
【読み】
鄭の武公・莊公、平王の卿士と爲る。卿士は、王卿の政を執る者なり。父子周の政を秉るを言う。

王貳于虢。虢、西虢公。亦仕王朝。王欲分政於虢、不復專任鄭伯。○朝、直遙反。復、扶又反。任、而鴆反。後不音者皆同。
【読み】
王虢に貳にせんとす。虢は、西虢公。亦王朝に仕う。王政を虢に分かち、復鄭伯に專任せざらんことを欲す。○朝は、直遙反。復は、扶又反。任は、而鴆反。後音せざる者は皆同じ。

鄭伯怨王。王曰、無之。故周・鄭交質、王子狐爲質於鄭、鄭公子忽爲質於周。王子狐、平王子。○質、音致。下同。孤、音胡。
【読み】
鄭伯王を怨む。王曰く、之れ無し、と。故に周・鄭交々質をし、王子狐鄭に質と爲り、鄭の公子忽周に質と爲れり。王子狐は、平王の子。○質は、音致。下も同じ。孤は、音胡。

王崩。周人將畀虢公政。周人遂成平王本意。○畀、必二反。與也。
【読み】
王崩ず。周人將に虢公に政を畀[あた]えんとす。周人遂に平王の本意を成さんとす。○畀[ひ]は、必二反。與うるなり。

四月、鄭祭足帥師取溫之麥。秋、又取成周之禾。四月、今二月也。秋、今之夏也。麥・禾、皆未熟。言取者、蓋芟踐之。溫、今河内溫縣。成周、洛陽縣也。○祭、側界反。芟、所銜反。
【読み】
四月、鄭の祭足師を帥いて溫の麥を取る。秋、又成周の禾を取る。四月は、今の二月なり。秋は、今の夏なり。麥・禾は、皆未だ熟せず。取ると言う者は、蓋し之を芟踐[さんせん]するならん。溫は、今河内溫縣。成周は、洛陽縣なり。○祭は、側界反。芟は、所銜反。

周・鄭交惡。兩相疾惡。
【読み】
周・鄭交々惡む。兩ながら相疾惡す。

君子曰、信不由中、質無益也。明恕而行、要之以禮、雖無有質、誰能閒之。苟有明信、澗谿沼沚之毛、谿、亦潤也。沼、池也。沚、小渚也。毛、草也。○要、於遙反。
【読み】
君子曰く、信中よりせざれば、質も益無し。明恕して行い、之を要するに禮を以てせば、質有ること無しと雖も、誰か能く之を閒てん。苟も明信有れば、澗谿沼沚の毛、谿も、亦潤なり。沼は、池なり。沚は、小渚なり。毛は、草なり。○要は、於遙反。

蘋蘩薀藻之菜、蘋、大■(草冠に洴)也。蘩、皤蒿。薀藻、聚藻也。○薀、紆粉反。■(草冠に洴)、蒲丁反。皤、蒲多反。白蒿也。
【読み】
蘋[ひん]蘩[ばん]薀藻の菜、蘋は、大■(草冠に洴)なり。蘩は、皤蒿。薀藻は、聚藻なり。○薀は、紆粉反。■(草冠に洴)は、蒲丁反。皤は、蒲多反。白蒿なり。

筐筥錡釜之器、方曰筐、圓曰筥、無足曰釜、有足曰錡。○筐、丘方反。筥、九呂反。錡、其綺反。筐・筥、皆器也。
【読み】
筐筥錡釜の器、方を筐と曰い、圓を筥と曰い、足無きを釜と曰い、足有るを錡と曰う。○筐は、丘方反。筥は、九呂反。錡は、其綺反。筐・筥は、皆器なり。

潢汙行潦之水、潢汙、渟水。行潦、流潦。○潢、音黃。汙、音烏。
【読み】
潢汙行潦の水も、潢汙は、渟水。行潦は、流潦。○潢は、音黃。汙は、音烏。

可薦於鬼神、可羞於王公。羞、進也。
【読み】
鬼神に薦む可く、王公に羞[すす]む可し。羞は、進むなり。

而況君子結二國之信、行之以禮、又焉用質。通言盟約彼此之情。故言二國。○焉、於虔反。
【読み】
而るを況んや君子二國の信を結び、之を行うに禮を以てせば、又焉ぞ質を用いん。言を通じて彼此の情を盟約す。故に二國と言う。○焉は、於虔反。

風有采繁・采蘋、采繁・采蘋、詩國風。義取於不嫌薄物。
【読み】
風に采繁・采蘋有り、采繁・采蘋は、詩の國風なり。義薄物を嫌わざるに取る。

雅有行葦・泂酌、詩大雅也。行葦篇、義取忠厚也。泂酌篇、義取雖行潦、可以共祭祀也。○泂、音迥。
【読み】
雅に行葦・泂酌有るは、詩の大雅なり。行葦の篇は、義忠厚に取るなり。泂酌の篇は、義行潦と雖も、以て祭祀に共す可きに取るなり。○泂は、音迥。

昭忠信也。明有忠信之行、雖薄物皆可爲用。○行、下孟反。
【読み】
忠信を昭らかにするなり。忠信の行有れば、薄物と雖も皆用を爲す可きことを明かす。○行は、下孟反。

武氏子來求賻、王未葬也。
【読み】
武氏の子來りて賻を求むるとは、王未だ葬らざればなり。

宋穆公疾。召大司馬孔父、而屬殤公焉曰、先君舍與夷而立寡人。先君、穆公兄宣公也。與夷、宣公子。卽所屬殤公。○屬、章欲反。殤、舒羊反。舍、音捨。與、如字。一音餘。
【読み】
宋の穆公疾む。大司馬孔父を召して、殤公を屬して曰く、先君與夷を舍てて寡人を立てり。先君は、穆公の兄の宣公なり。與夷は、宣公の子。卽ち屬する所の殤公なり。○屬は、章欲反。殤は、舒羊反。舍は、音捨。與は、字の如し。一に音餘。

寡人弗敢忘。若以大夫之靈、得保首領以沒、先君若問與夷、其將何辭以對。請子奉之、以主社稷。寡人雖死、亦無悔焉。對曰、群臣願奉馮也。馮、穆公子。莊公也。○馮、皮氷反。
【読み】
寡人敢えて忘れず。若し大夫の靈を以て、首領を保ちて以て沒することを得んに、先君若し與夷を問わば、其れ將何の辭を以て對えん。請う子之を奉じて、以て社稷を主らしめよ。寡人死すと雖も、亦悔い無けん、と。對えて曰く、群臣は馮を奉ぜんことを願えり、と。馮は、穆公の子。莊公なり。○馮は、皮氷反。

公曰、不可。先君以寡人爲賢、使主社稷。若弃德不讓、是廢先君之舉也。豈曰能賢。言不讓則不足稱賢。
【読み】
公曰く、不可なり。先君寡人を以て賢なりとして、社稷を主らしめり。若し德を弃[す]てて讓らずんば、是れ先君の舉を廢つるなり。豈能く賢なりと曰わんや。言うこころは、讓らずんば則ち賢と稱するに足らず。

光昭先君之令德、可不務乎。吾子其無廢先君之功。先君以舉賢爲功。我若不賢、是廢之。
【読み】
先君の令德を光昭にせんこと、務めざる可けんや。吾子其れ先君の功を廢つること無かれ、と。先君賢を舉ぐるを以て功とす。我れ若し不賢ならば、是れ之を廢つるなり。

使公子馮出居於鄭。辟殤公也。
【読み】
公子馮をして出でて鄭に居らしむ。殤公を辟くるなり。

八月、庚辰、宋穆公卒、殤公卽位。
【読み】
八月、庚辰[かのえ・たつ]、宋の穆公卒し、殤公位に卽く。

君子曰、宋宣公可謂知人矣。立穆公、其子饗之、命以義夫。命出於義也。夫、語助。○夫、音符。
【読み】
君子曰く、宋の宣公は人を知ると謂う可し。穆公を立てて、其の子之を饗[う]けしは、命ずるに義を以てすればか。命ずること義より出づるなり。夫は、語助。○夫は、音符。

商頌曰、殷受命咸宜、百祿是荷、其是之謂乎。詩頌、言殷湯・武丁、受命皆以義。故任荷天之百祿也。帥義而行、則殤公宜受此命、宜荷此祿。公子馮不帥父義、忿而出奔、因鄭以求入、終傷咸宜之福。故知人之稱、唯在宣公也。殷禮有兄弟相及、不必傳子孫。宋其後也。故指稱商頌。○荷、河可反。又音何。稱、尺證反。
【読み】
商頌に曰く、殷の命を受くるは咸宜し、百祿是れ荷うとは、其れ是を之れ謂うか、と。詩の頌、言うこころは、殷湯・武丁、命を受くること皆義を以てす。故に天の百祿を任荷せしなり。義に帥いて行わば、則ち殤公宜しく此の命を受くべく、宜しく此の祿を荷うべし。公子馮父の義に帥わず、忿りて出奔し、鄭に因りて以て入らんことを求めて、終に咸宜の福を傷れり。故に人を知るの稱は、唯宣公に在るのみ。殷の禮は兄弟相及ぼすこと有り、必ずしも子孫に傳えず。宋は其の後なり。故に商頌を指稱せり。○荷は、河可反。又音何。稱は、尺證反。

冬、齊・鄭盟于石門、尋盧之盟也。盧盟、在春秋前。盧、齊地。今濟北盧縣故城。
【読み】
冬、齊・鄭石門に盟うは、盧の盟を尋[かさ]ぬるなり。盧の盟は、春秋の前に在り。盧は、齊の地。今の濟北盧縣の故城なり。

庚戌、鄭伯之車僨于濟。旣盟而遇大風。傳記異也。十二月無庚戌。日誤。○僨、弗問反。仆也。
【読み】
庚戌[かのえ・いぬ]、鄭伯の車濟に僨[たお]れぬ。旣に盟いて大風に遇う。傳異を記すなり。十二月に庚戌無し。日の誤りなり。○僨[ふん]は、弗問反。仆るるなり。

衛莊公娶于齊東宮得臣之妹。曰莊姜。得臣、齊大子也。大子不敢居上位。故常處東宮。
【読み】
衛の莊公齊の東宮得臣の妹を娶る。莊姜と曰う。得臣は、齊の大子なり。大子は敢えて上位に居らず。故に常に東宮に處る。

美而無子。衛人所爲賦碩人也。碩人詩、義取莊姜美于色、賢于德而不見答、終以無子、國人憂之。○爲、于僞反。
【読み】
美にして子無し。衛人爲に碩人を賦する所なり。碩人の詩は、義莊姜色に美に、德に賢にして答せられず、終に以て子無く、國人之を憂うるを取る。○爲は、于僞反。

又娶于陳。曰厲嬀。生孝伯。早死。陳、今陳國陳縣。○嬀、九危反。
【読み】
又陳に娶る。厲嬀[れいき]と曰う。孝伯を生む。早く死す。陳は、今の陳國陳縣。○嬀は、九危反。

其娣戴嬀、生桓公。莊姜以爲己子。嬀、陳姓也。厲・戴、皆謚。雖爲莊姜子、然大子之位未定。
【読み】
其の娣戴嬀、桓公を生む。莊姜以て己が子とす。嬀は、陳の姓なり。厲・戴は、皆謚なり。莊姜の子と爲ると雖も、然れども大子の位は未だ定まらず。

公子州吁、嬖人之子也。嬖、親幸也。○吁、況于反。嬖、必計反。賤而得幸曰嬖。
【読み】
公子州吁[しゅうく]は、嬖人の子なり。嬖は、親幸なり。○吁は、況于反。嬖は、必計反。賤しくして幸いを得るを嬖と曰う。

有寵而好兵。公弗禁。莊姜惡之。
【読み】
寵有りて兵を好む。公禁ぜず。莊姜之を惡む。

石碏諫曰、臣聞愛子、敎之以義方、石碏、衛大夫。○碏、七略反。
【読み】
石碏諫めて曰く、臣聞く、子を愛するは、之を敎ゆるに義方を以てして、石碏は、衛の大夫。○碏は、七略反。

弗納于邪。驕奢淫泆、所自邪也。四者之來、寵祿過也。將立州吁、乃定之矣。若猶未也、階之爲禍。言將立爲大子、則宜早定。若不早定、州吁必緣寵而爲禍。○泆、音逸。
【読み】
邪に納れず、と。驕奢淫泆は、自りて邪にする所なり。四つの者の來るは、寵祿の過ぎればなり。將に州吁を立てんとせば、乃ち之を定めよ。若し猶未だしならば、之を階にして禍いを爲さん。言うこころは、將に立てて大子と爲さんとせば、則ち宜しく早く定むべし。若し早く定めざれば、州吁必ず寵に緣りて禍いを爲さん。○泆は、音逸。

夫寵而不驕、驕而能降、降而不憾、憾而能眕者、鮮矣。如此者少也。降其身則必恨。恨則思亂。不能自安自重。○憾、胡暗反。眕、之忍反。重也。鮮、息淺反。
【読み】
夫れ寵せられて驕らず、驕りて能く降し、降して憾みず、憾みて能く眕[おも]くする者は、鮮し。此の如き者は少なし。其の身を降せば則ち必ず恨む。恨めば則ち亂を思う。自ら安んじ自ら重くすること能わず。○憾は、胡暗反。眕は、之忍反。重くするなり。鮮は、息淺反。

且夫賤妨貴、少陵長、遠閒親、新閒舊、小加大、小國而加兵於大國、如息侯伐鄭之比。○妨、音芳。少、詩照反。長、丁丈反。閒、閒廁之閒。下同。比、必二反。
【読み】
且つ夫れ賤貴を妨げ、少長を陵ぎ、遠親を閒て、新舊を閒て、小大に加え、小國にして兵を大國に加う、息侯鄭を伐つの比の如し。○妨は、音芳。少は、詩照反。長は、丁丈反。閒は、閒廁の閒。下も同じ。比は、必二反。

淫破義、所謂六逆也。君義、臣行、父慈、子孝、兄愛、弟敬、所謂六順也。臣行君之義。
【読み】
淫義を破るは、所謂六逆なり。君義に、臣行い、父慈に、子孝し、兄愛し、弟敬するは、所謂六順なり。臣君の義を行う。

去順效逆、所以速禍也。君人者、將禍是務去。而速之、無乃不可乎。
【読み】
順を去りて逆に效うは、禍いを速[まね]く所以なり。人に君たる者は、將に禍いを是れ務めて去らんとす。而るを之を速かば、乃ち不可なること無からんや、と。

弗聽。
【読み】
聽かず。

其子厚與州吁游。禁之不可。桓公立、乃老。老、致仕也。四年經書州吁弑其君。故傳先經以始事。○去、起呂反。先、悉薦反。
【読み】
其の子厚州吁と游ぶ。之を禁ずれども可[き]かず。桓公立ちて、乃ち老す。老すとは、致仕なり。四年の經に州吁其の君を弑すと書す。故に傳經に先だちて以て事を始む。○去は、起呂反。先は、悉薦反。


〔經〕四年、春、王二月、莒人伐杞、取牟婁。無傳。書取、言易也。例在襄十三年。杞國、本都陳留雍丘縣。推尋事跡、桓六年、淳于公亡國。杞似幷之遷都淳于。僖十四年、又遷緣陵。襄二十九年、晉人城杞之淳于、杞又遷都淳于。牟婁、杞邑、城陽諸縣東北有婁郷。○杞、音起。牟、亡侯反。易、以豉反。雍、於用反。
【読み】
〔經〕四年、春、王の二月、莒人杞を伐ち、牟婁[ぼうろう]を取る。傳無し。取ると書すは、易きを言うなり。例は襄十三年に在り。杞國は、本陳留雍丘縣に都す。事跡を推し尋ぬるに、桓六年、淳于公國を亡[に]ぐ。杞之を幷せて都を淳于に遷すに似たり。僖十四年、又緣陵に遷る。襄二十九年、晉人杞の淳于に城くは、杞又都を淳于に遷すなり。牟婁は、杞の邑、城陽諸縣の東北に婁郷有り。○杞は、音起。牟は、亡侯反。易は、以豉反。雍は、於用反。

戊申、衛州吁弒其君完。稱臣弑君、臣之罪也。例在宣四年。戊申、三月十七日。有日而無月。
【読み】
戊申[つちのえ・さる]、衛の州吁其の君完を弒す。臣を稱して君を弑するは、臣の罪なり。例は宣四年に在り。戊申は、三月十七日。日有りて月無し。

夏、公及宋公遇于淸。遇者、草次之期。二國各簡其禮、若道路相逢遇也。淸、衛邑。濟北東阿縣有淸亭。
【読み】
夏、公と宋公と淸に遇う。遇は、草次の期なり。二國各々其の禮を簡にして、道路相逢遇するが若し。淸は、衛の邑。濟の北東阿縣に淸亭有り。

宋公・陳侯・蔡人・衛人伐鄭。秋、翬帥師會宋公・陳侯・蔡人・衛人伐鄭。公子翬、魯大夫。不稱公子、疾其固請强君以不義也。諸外大夫貶皆稱人、至於内大夫貶、則皆去族稱名、於記事之體、他國可言某人、而己國之卿佐、不得言魯人、此所以爲異也。翬溺去族、傳曰、疾之。叔孫豹則曰、言違命。此其例也。○翬、許歸反。强、其丈反。去、起呂反。下同。溺、乃歷反。
【読み】
宋公・陳侯・蔡人・衛人鄭を伐つ。秋、翬[き]師を帥いて宋公・陳侯・蔡人・衛人に會して鄭を伐つ。公子翬は、魯の大夫。公子と稱せざるは、其の固く請いて君に强うるに不義を以てするを疾みてなり。諸々外大夫の貶は皆人と稱し、内大夫の貶に至りては、則ち皆族を去てて名を稱するは、記事の體に於て、他國は某人と言う可くして、己が國の卿佐は、魯人と言うことを得ず、此れ異なりとする所以なり。翬溺族を去つるは、傳に曰く、之を疾みてなり、と。叔孫豹には則ち曰く、命に違うを言うなり、と。此れ其の例なり。○翬は、許歸反。强は、其丈反。去は、起呂反。下も同じ。溺は、乃歷反。

九月、衛人殺州吁于濮。州吁弑其君而立、未列於會。故不稱君。例在成十六年。濮、陳地水名。○濮、音卜。
【読み】
九月、衛人州吁を濮に殺す。州吁其の君を弑して立ち、未だ會に列せず。故に君と稱せず。例は成十六年に在り。濮は、陳の地の水の名。○濮は、音卜。

冬、十有二月、衛人立晉。衛人逆公子晉而立之。善其得衆。故不書入於衛、變文以示義。例在成十八年。
【読み】
冬、十有二月、衛人晉を立つ。衛人公子晉を逆えて之を立つ。其の衆を得るを善す。故に衛に入ると書さず、文を變じて以て義を示すなり。例は成十八年に在り。

〔傳〕四年、春、衛州吁弒桓公而立。
【読み】
〔傳〕四年、春、衛の州吁桓公を弒して立つ。

公與宋公爲會、將尋宿之盟。未及期、衛人來告亂。
【読み】
公と宋公と會を爲し、將に宿の盟を尋[かさ]ねんとす。未だ期に及ばず、衛人來りて亂を告ぐ。

夏、公及宋公遇于淸。宿盟、在元年。
【読み】
夏、公と宋公と淸に遇う。宿の盟は、元年に在り。

宋殤公之卽位也、公子馮出奔鄭。鄭人欲納之。及衛州吁立、將脩先君之怨於鄭、謂二年鄭人伐衛之怨。
【読み】
宋の殤公の位に卽くや、公子馮出でて鄭に奔る。鄭人之を納れんと欲す。衛の州吁立つに及んで、將に先君の怨みを鄭に脩め、二年鄭人衛を伐つの怨みを謂う。

而求寵於諸侯、以和其民。諸簒立者、諸侯旣與之會、則不復討。故欲求此寵。
【読み】
寵を諸侯に求めて、以て其の民を和せんとす。諸々簒立する者、諸侯旣に之と會すれば、則ち復討せず。故に此の寵を求めんと欲す。

使告於宋曰、君若伐鄭、以除君害、害、謂宋公子馮。
【読み】
宋に告げしめて曰く、君若し鄭を伐ちて、以て君の害を除かんとならば、害は、宋の公子馮を謂う。

君爲主。敝邑以賦與陳・蔡從。則衛國之願也。言舉國之賦調。○從、才用反。調、徒弔反。
【読み】
君主と爲れ。敝邑賦を以て陳・蔡と從わん。則ち衛國の願いなり、と。國の賦調を舉ぐるを言う。○從は、才用反。調は、徒弔反。

宋人許之。於是陳・蔡方睦於衛。蔡、今汝南上蔡縣。
【読み】
宋人之を許す。是に於て陳・蔡方に衛に睦む。蔡は、今の汝南上蔡縣なり。

故宋公・陳侯・蔡人・衛人伐鄭、圍其東門、五日而還。
【読み】
故に宋公・陳侯・蔡人・衛人鄭を伐ち、其の東門を圍み、五日にして還る。

公問於衆仲曰、衛州吁其成乎。衆仲、魯大夫。
【読み】
公衆仲に問いて曰く、衛の州吁其れ成らんか、と。衆仲は、魯の大夫。

對曰、臣聞以德和民。不聞以亂。亂、謂阻兵而安忍。
【読み】
對えて曰く、臣德を以て民を和するを聞く。亂を以てするを聞かず。亂は、兵を阻[たの]んで忍に安んずるを謂う。

以亂、猶治絲而棼之也。絲見棼縕、益所以亂。○棼、扶云反。縕、於云反。
【読み】
亂を以てするは、猶絲を治めて之を棼[みだ]すがごとし。絲棼縕せらるれば、益々亂る所以なり。○棼は、扶云反。縕は、於云反。

夫州吁阻兵而安忍。阻兵無衆、安忍無親。衆叛親離、難以濟矣。恃兵則民殘。民殘則衆叛。安忍則刑過。刑過則親離。
【読み】
夫れ州吁は兵を阻[たの]んで忍に安んず。兵を阻めば衆無く、忍に安んずれば親無し。衆叛き親離れば、以て濟[な]り難し。兵を恃めば則ち民殘[そこな]わる。民殘わるれば則ち衆叛く。忍に安んずれば則ち刑過ぐ。刑過ぐれば則ち親離る。

夫兵猶火也。弗戢將自焚也。夫州吁弒其君、而虐用其民。於是乎不務令德、而欲以亂成。必不免矣。○戢、莊立反。
【読み】
夫れ兵は猶火のごとし。戢[おさ]めずんば將に自ら焚けんとす。夫の州吁は其の君を弒して、其の民を虐用す。是に於て令德を務めずして、亂を以て成さんと欲す。必ず免れず、と。○戢[しゅう]は、莊立反。

秋、諸侯復伐鄭。宋公使來乞師。乞師不書、非卿。
【読み】
秋、諸侯復鄭を伐つ。宋公來りて師を乞わしむ。師を乞うを書さざるは、卿に非ざればなり。

公辭之。從衆仲之言。
【読み】
公之を辭す。衆仲の言に從うなり。

羽父請以師會之。羽父、公子翬。
【読み】
羽父師を以て之に會せんと請う。羽父は、公子翬なり。

公弗許。固請而行。
【読み】
公許さず。固く請いて行く。

故書曰翬帥師、疾之也。
【読み】
故に書して翬師を帥いると曰うは、之を疾みてなり。

諸侯之師敗鄭徒兵、取其禾而還。時鄭不車戰。
【読み】
諸侯之師鄭の徒兵を敗り、其の禾を取りて還る。時に鄭車戰せず。

州吁未能和其民。厚問定君於石子。石子、石碏也。以州吁不安諮其父。
【読み】
州吁未だ其の民を和すること能わず。厚君を定めんことを石子に問う。石子は、石碏なり。州吁安からざるを以て其の父に諮う。

石子曰、王覲爲可。曰、何以得覲。曰、陳桓公方有寵於王。陳・衛方睦。若朝陳使請、必可得也。厚從州吁如陳。
【読み】
石子曰く、王覲するを可なりとす、と。曰く、何を以て覲することを得ん、と。曰く、陳の桓公方に王に寵有り。陳・衛方に睦まじ。若し陳に朝して請わしめば、必ず得可けん、と。厚州吁に從いて陳に如く。

石碏使告于陳曰、衛國褊小、老夫耄矣。無能爲也。此二人者、實弒寡君。敢卽圖之。八十曰耄。稱國小己老、自謙以委陳、使因其往就圖之。
【読み】
石碏陳に告げしめて曰く、衛國褊小にして、老夫耄[ぼう]せり。能く爲すこと無し。此の二人の者は、實に寡君を弒せり。敢えて卽いて之を圖れ、と。八十を耄と曰う。國小に己老いたりと稱するは、自ら謙じて以て陳に委ね、其の往に因りて就いて之を圖らしむるなり。

陳人執之、而請涖于衛。請衛人自臨討之。○涖、音利。
【読み】
陳人之を執えて、涖[のぞ]むを衛に請う。衛人に自ら臨みて之を討せんことを請う。○涖[り]は、音利。

九月、衛人使右宰醜、涖殺州吁于濮、石碏使其宰獳羊肩、涖殺石厚于陳。
【読み】
九月、衛人右宰醜をして、涖んで州吁を濮に殺さしめ、石碏其の宰獳羊肩をして、涖んで石厚を陳に殺さしむ。

君子曰、石碏、純臣也。惡州吁而厚與焉。大義滅親、其是之謂乎。子從弑君之賊、國之大逆。不可不除。故大義滅親。明小義則當兼子愛之。○獳、奴侯反。惡、烏路反。與焉、音預。
【読み】
君子曰く、石碏は、純臣なり。州吁を惡んで厚與る。大義親を滅すとは、其れ是を之れ謂うか、と。子君を弑するの賊に從うは、國の大逆なり。除かざる可からず。故に大義親を滅す、と。小義は則ち當に子を兼ねて之を愛すべきを明かすなり。○獳は、奴侯反。惡は、烏路反。與焉は、音預。

衛人逆公子晉于邢。冬十二月、宣公卽位。公子晉也。○邢、音刑。國名。
【読み】
衛人公子晉を邢より逆う。冬十二月、宣公位に卽く。公子晉なり。○邢は、音刑。國の名。

書曰衛人立晉、衆也。
【読み】
書して衛人晉を立つと曰うは、衆なればなり。


〔經〕五年、春、公矢魚于棠。書陳魚、以示非禮也。書棠譏遠地也。今高平方與縣北有武唐亭、魯侯觀魚臺。
【読み】
〔經〕五年、春、公魚を棠[とう]に矢[つら]ぬ。魚を陳ぬると書すは、以て非禮を示すなり。棠を書すは遠地なるを譏るなり。今高平方與縣の北に武唐亭、魯侯の觀魚臺有り。

夏、四月、葬衛桓公。秋、衛師入郕。將卑師衆、但稱師。此史之常也。○郕、音成。國名。
【読み】
夏、四月、衛の桓公を葬る。秋、衛の師郕[せい]に入る。將卑しく師衆ければ、但師と稱す。此れ史の常なり。○郕は、音成。國の名なり。

九月、考仲子之宮。初獻六羽。成仲子宮、安其主而祭之。惠公以仲子手文娶之、欲以爲夫人。諸侯無二嫡。蓋隱公成父之志、爲別立宮也。公問羽數。故書羽。婦人無謚。因姓以名宮。
【読み】
九月、仲子の宮を考[な]す。初めて六羽を獻ず。仲子の宮を成して、其の主を安んじて之を祭る。惠公仲子の手文を以て之を娶り、以て夫人とせんと欲す。諸侯は二嫡無し。蓋し隱公父の志を成して、爲に別に宮を立つならん。公羽數を問う。故に羽を書す。婦人は謚無し。姓に因りて以て宮に名づく。

邾人・鄭人伐宋。邾主兵。故序鄭上。
【読み】
邾人・鄭人宋を伐つ。邾兵を主る。故に鄭の上に序ず。

螟。無傳。蟲食苗心者。爲災。故書。
【読み】
螟[めい]あり。傳無し。蟲の苗心を食う者なり。災いを爲す。故に書す。

冬、十有二月、辛巳、公子彄卒。大夫書卒不書葬、葬者、臣子之事、非公家所及。○彄、苦侯反。
【読み】
冬、十有二月、辛巳[かのと・み]、公子彄[こう]卒す。大夫卒を書して葬を書さざるは、葬は、臣子の事にして、公家の及ぶ所に非ざればなり。○彄は、苦侯反。

宋人伐鄭、圍長葛。
潁川長社縣北有長葛城。
【読み】
宋人鄭を伐ちて、長葛を圍む。潁川長社縣の北に長葛城有り。

〔傳〕五年、春、公將如棠觀魚者。
【読み】
〔傳〕五年、春、公將に棠に如いて魚者を觀んとす。

臧僖伯諫曰、凡物不足以講大事、臧僖伯、公子彄也。僖、謚也。大事、祀與戎。
【読み】
臧僖伯[ぞうきはく]諫めて曰く、凡そ物以て大事を講[なら]わすに足らず、臧僖伯は、公子彄なり。僖は、謚なり。大事は、祀と戎となり。

其材不足以備器用、則君不舉焉。材、謂皮革・齒牙・骨角・毛羽也。器用、軍國之器。
【読み】
其の材以て器用に備うるに足らざれば、則ち君舉せず。材は、皮革・齒牙・骨角・毛羽を謂うなり。器用は、軍國の器なり。

君將納民於軌物者也。故講事以度軌量謂之軌。取材以章物采謂之物。不軌不物、謂之亂政。亂政亟行、所以敗也。言器用衆物不入法度、則爲不軌不物。亂敗之所起。○度、待洛反。一音如字。亟、欺冀反。數也。
【読み】
君は將に民を軌物に納れんとする者なり。故に事を講いて以て軌量に度る之を軌と謂う。材を取りて以て物采を章らかにする之を物と謂う。不軌不物、之を亂政と謂う。亂政亟[しば]々行わるは、敗るる所以なり。言うこころは、器用衆物の法度に入らざるは、則ち不軌不物とす。亂敗の起こる所なり。○度は、待洛反。一に音字の如し。亟は、欺冀反。數々なり。

故春蒐、夏苗、秋獮、冬狩、蒐、索擇取不孕者。苗、爲苗除害也。獮、殺也。以殺爲名、順秋氣也。狩、圍守也。冬、物畢成。獲則取之。無所擇也。○蒐、所求反。獮、息淺反。
【読み】
故に春は蒐[しゅう]し、夏は苗し、秋は獮[せん]し、冬は狩するも、蒐は、索め擇んで孕まざる者を取る。苗は、苗の爲に害を除くなり。獮は、殺なり。殺を以て名とするは、秋氣に順うなり。狩は、圍守なり。冬は、物畢く成る。獲れば則ち之を取る。擇ぶ所無きなり。○蒐は、所求反。獮は、息淺反。

皆於農隙以講事也。各隨時事之閒。○隙、去逆反。
【読み】
皆農隙に於て以て事を講わすなり。各々時事の閒に隨う。○隙は、去逆反。

三年而治兵、入而振旅、雖四時講武、猶復三年而大習。出曰治兵、始治其事。入曰振旅、治兵禮畢、整衆而還。振、整也。旅、衆也。
【読み】
三年にして治兵し、入りて振旅し、四時武を講わすと雖も、猶復三年にして大いに習わす。出づるに治兵と曰うは、始めて其の事を治むるなり。入るに振旅と曰うは、治兵の禮畢わり、衆を整えて還るなり。振は、整う。旅は、衆なり。

歸而飮至、以數軍實、飮於廟以數車徒器械及所獲也。○數、所主反。
【読み】
歸りて飮至して、以て軍實を數え、廟に飮して以て車徒器械及び獲る所を數うるなり。○數は、所主反。

昭文章、車服旌旗。
【読み】
文章を昭らかにし、車服旌旗なり。

明貴賤、辨等列、等列、行伍。
【読み】
貴賤を明らかにし、等列を辨じ、等列は、行伍なり。

順少長、出則少者在前、還則在後、所謂順也。○少、詩照反。
【読み】
少長を順にし、出づるときは則ち少者前に在り、還るときは則ち後に在るは、所謂順なり。○少は、詩照反。

習威儀也。
【読み】
威儀を習わすなり。

鳥獸之肉、不登於俎、俎、祭宗廟器。
【読み】
鳥獸の肉の、俎に登げず、俎は、宗廟を祭る器。

皮革・齒牙・骨角・毛羽、不登於器、謂以飾法度之器。
【読み】
皮革・齒牙・骨角・毛羽の、器に登げざるは、以て法度の器を飾るを謂う。

則公不射、古之制也。
【読み】
則ち公射ざるは、古の制なり。

若夫山林川澤之實、器用之資、皁隸之事、官司之守。非君所及也。士臣、皁。皁臣、輿。輿臣、隸。言取此雜猥之物、以資器備、是小臣有司之職、非諸侯之所親也。○射、食亦反。皁、才早反。
【読み】
若し夫れ山林川澤の實、器用の資は、皁隸[そうれい]の事、官司の守なり。君の及ぶ所に非ず、と。士の臣は、皁。皁の臣は、輿。輿の臣は、隸。言うこころは、此の雜猥の物を取りて、以て器備を資[たす]くるは、是れ小臣有司の職にして、諸侯の親らする所に非ず。○射は、食亦反。皁は、才早反。

公曰、吾將略地焉。孫辭以略地。略、總攝巡行之名。傳曰、東略之不知、西則否矣。○行、下孟反。
【読み】
公曰く、吾れ將に地を略せんとす、と。孫辭するに地を略するを以てす。略は、總べ攝りて巡行するの名。傳に曰く、東略せんは知らず、西せんは則ち否せず、と。○行は、下孟反。

遂往陳魚而觀之。陳、設張也。公大設捕魚之備而觀之。
【読み】
遂に往いて魚を陳ねて之を觀る。陳は、設け張るなり。公大に捕魚の備を設けて之を觀る。

僖伯稱疾不從。
【読み】
僖伯疾を稱して從わず。

書曰公矢魚于棠、非禮也。且言遠地也。矢、亦陳也。棠、實他竟。故曰遠地。○從、才用反。
【読み】
書して公魚を棠に矢ぬと曰うは、禮に非ざればなり。且[また]遠地なるを言うなり。矢も、亦陳ぬるなり。棠は、實に他竟なり。故に遠地と曰う。○從は、才用反。

曲沃莊伯以鄭人・邢人伐翼。曲沃、晉別封、成師之邑。在河東聞喜縣。莊伯、成師子也。翼、晉舊都。在平陽絳邑縣東。邢國、在廣平襄國縣。○沃、烏毒反。
【読み】
曲沃の莊伯鄭人・邢人を以[い]て翼を伐つ。曲沃は、晉の別封、成師の邑。河東聞喜縣に在り。莊伯は、成師の子なり。翼は、晉の舊都。平陽絳邑縣の東に在り。邢國は、廣平襄國縣に在り。○沃は、烏毒反。

王使尹氏・武氏助之。翼侯奔隨。尹氏・武氏、皆周世族大夫也。晉内相攻伐不告亂。故不書。傳具其事、爲後晉事張本。曲沃及翼本末、見桓二年。隨、晉地。
【読み】
王尹氏・武氏をして之を助けしむ。翼侯隨に奔る。尹氏・武氏は、皆周の世族大夫なり。晉の内相攻伐して亂を告げず。故に書さず。傳其の事を具にして、後の晉の事の張本とす。曲沃及び翼の本末は、桓二年に見ゆ。隨は、晉の地なり。

夏、葬衛桓公。衛亂。是以緩。有州吁之亂、十四月乃葬。傳明其非慢也。
【読み】
夏、衛の桓公を葬る。衛亂る。是を以て緩[おく]るるなり。州吁の亂有り、十四月にして乃ち葬る。傳其の慢るに非ざることを明かすなり。

四月、鄭人侵衛牧、牧、衛邑。經書夏四月葬衛桓公、今傳直言夏、而更以四月附鄭人侵衛牧者、於下事宜得月以明事之先後。故不復備舉經文、三年君氏卒、其義亦同。他皆放此。
【読み】
四月、鄭人衛の牧を侵して、牧は、衛の邑。經は夏四月衛の桓公を葬ると書すに、今傳は直に夏と言いて、更に四月を以て鄭人の衛の牧を侵すに附する者は、下事に於て月を得て以て事の先後を明かすに宜し。故に復經文を備舉せず、三年の君氏卒する、其の義も亦同じ。他も皆此に放え。

以報東門之役。東門役、在四年。
【読み】
以て東門の役に報ゆ。東門の役は、四年に在り。

衛人以燕師伐鄭。南燕國、今東郡燕縣。
【読み】
衛人燕の師を以て鄭を伐つ。南燕國は、今の東郡燕縣なり。

鄭祭足・原繁・洩駕以三軍軍其前、使曼伯與子元、潛軍軍其後。燕人畏鄭三軍、而不虞制人。北制、鄭邑。今河南成皐縣也。一名虎牢。○洩、息列反。
【読み】
鄭の祭足・原繁・洩駕三軍を以て其の前に軍し、曼伯と子元とをして、軍を潛めて其の後に軍せしむ。燕人鄭の三軍を畏れて、制人を虞らず。北制は、鄭の邑。今の河南成皐縣なり。一名は虎牢。○洩は、息列反。

六月、鄭二公子以制人、敗燕師于北制。二公子、曼伯・子元也。
【読み】
六月、鄭の二公子制人を以て、燕の師を北制に敗る。二公子は、曼伯・子元なり。

君子曰、不備不虞、不可以師。
【読み】
君子曰く、不虞に備えずんば、以て師す可からず、と。

曲沃叛王。秋、王命虢公伐曲沃、而立哀侯于翼。春、翼侯奔隨。故立其子光。
【読み】
曲沃王に叛く。秋、王虢公に命じて曲沃を伐たしめて、哀侯を翼に立つ。春、翼侯隨に奔る。故に其の子光を立つるなり。

衛之亂也、郕人侵衛。故衛師入郕。郕、國也。東平剛父縣西南有郕郷。
【読み】
衛の亂れしや、郕人衛を侵せり。故に衛の師郕に入る。郕は、國なり。東平剛父縣の西南に郕郷有り。

九月、考仲子之宮。將萬焉。萬、舞也。
【読み】
九月、仲子の宮を考す。將に萬せんとす。萬は、舞なり。

公問羽數於衆仲。問執羽人數。
【読み】
公羽數を衆仲に問う。羽を執る人數を問う。

對曰、天子用八、八八六十四人。
【読み】
對えて曰く、天子は八を用い、八八六十四人なり。

諸侯用六、六六三十六人。
【読み】
諸侯は六を用い、六六三十六人なり。

大夫四、四四十六人。
【読み】
大夫は四、四四十六人なり。

士二。二二四人。士有功賜用樂。
【読み】
士は二。二二四人なり。士功有れば樂を用ゆることを賜う。

夫舞所以節八音、而行八風。八音、金・石・絲・竹・匏・土・革・木也。八風、八方之風也。以八音之器、播八方之風。手之舞之、足之蹈之、節其制而序其情。○八音、金鐘、石磬、絲琴瑟、竹簫管、土塤、木柷敔、匏笙、革鼓也。八方之風、謂東方谷風、東南淸明風、南方凱風、西南涼風、西方閶闔風、西北不周風、北方廣莫風、東北融風。
【読み】
夫れ舞は八音を節して、八風を行[めぐ]らす所以なり。八音は、金・石・絲・竹・匏・土・革・木なり。八風は、八方の風なり。八音の器を以て、八方の風を播く。手の之を舞い、足の之を蹈み、其の制を節して其の情を序ず。○八音は、金の鐘、石の磬、絲の琴瑟、竹の簫管、土の塤[けん]、木の柷敔[しゅくぎょ]、匏の笙、革の鼓なり。八方の風は、東方は谷風、東南は淸明風、南方は凱風、西南は涼風、西方は閶闔[しょうこう]風、西北は不周風、北方は廣莫風、東北は融風を謂う。

故自八以下。唯天子得盡物數。故以八爲列。諸侯則不敢用八。
【読み】
故に八より以て下す、と。唯天子のみ物數を盡くすことを得。故に八を以て列と爲す。諸侯は則ち敢えて八を用いず。

公從之。
【読み】
公之に從う。

於是初獻六羽。始用六佾也。魯唯文王・周公廟得用八。而他公遂因仍僭而用之。今隱公特立此婦人之廟、詳問衆仲、衆仲因明大典。故傳亦因言始用六佾。其後季氏舞八佾於庭、知唯在仲子廟用六。○佾、音逸。
【読み】
是に於て初めて六羽を獻ず。始めて六佾を用ゆるなり。魯は唯文王・周公の廟のみ八を用ゆることを得。而るを他公遂に因りて仍ち僭して之を用ゆ。今隱公特に此の婦人の廟を立てて、詳らかに衆仲に問い、衆仲因りて大典を明かせり。故に傳も亦因りて始めて六佾を用ゆと言う。其の後季氏八佾を庭に舞わせば、知る、唯仲子の廟に在りてのみ六を用ゆることを。○佾は、音逸。

宋人取邾田。邾人告於鄭曰、請君釋憾於宋。敝邑爲道。釋四年再見伐之恨。○道、音導。
【読み】
宋人邾の田を取る。邾人鄭に告げて曰く、請う君憾みを宋に釋け。敝邑道[みちび]きを爲さん、と。四年再び伐たるるの恨みを釋くなり。○道は、音導。

鄭人以王師會之、王師不書、不以告也。
【読み】
鄭人王の師を以て之に會して、王の師書さざるは、以て告げざればなり。

伐宋、入其郛、以報東門之役。郛、郭也。東門役在四年。○郛、芳夫反。
【読み】
宋を伐ち、其の郛[ふ]に入りて、以て東門の役に報ゆ。郛は、郭なり。東門の役は四年に在り。○郛は、芳夫反。

宋人使來告命。告命、策書。
【読み】
宋人來りて命を告げしむ。命を告ぐれば、策書す。

公聞其入郛也、將救之。問於使者曰、師何及。對曰、未及國。忿公知而故問、責窮辭。○使、所吏反。
【読み】
公其の郛に入ると聞くや、將に之を救わんとす。使者に問いて曰く、師何にか及べる、と。對えて曰く、未だ國に及ばず、と。公の知って故[ことさら]に問うは、責窮の辭なるを忿る。○使は、所吏反。

公怒、乃止。辭使者曰、君命寡人、同恤社稷之難。今問諸使者、曰師未及國。非寡人之所敢知也。爲七年公伐邾傳。○難、乃旦反。
【読み】
公怒りて、乃ち止む。使者に辭して曰く、君寡人に命じて、同じく社稷の難きを恤えしむ。今諸を使者に問えば、師未だ國に及ばずと曰う。寡人の敢えて知る所に非ず、と。七年公邾を伐つ爲の傳なり。○難は、乃旦反。

冬十二月、辛巳、臧僖伯卒。公曰、叔父有憾於寡人。諸侯稱同姓大夫、長曰伯父、少曰叔父。有恨、恨諫觀魚不聽。
【読み】
冬十二月、辛巳[かのと・み]、臧僖伯卒す。公曰く、叔父寡人に憾み有り。諸侯同姓の大夫を稱するに、長きを伯父と曰い、少きを叔父と曰う。恨み有りとは、魚を觀ることを諫めて聽かざるを恨むなり。

寡人弗敢忘。葬之加一等。加命服之等。
【読み】
寡人敢えて忘れず、と。之を葬むるに一等を加う。命服の等を加う。

宋人伐鄭、圍長葛。以報入郛之役也。僖伯、孝公之子、惠公之弟。故曰叔父。
【読み】
宋人鄭を伐ち、長葛を圍む。以て郛に入るの役に報ゆるなり。僖伯は、孝公の子、惠公の弟。故に叔父と曰う。


〔經〕六年、春、鄭人來渝平。和而不盟曰平。○渝、羊朱反。變也。
【読み】
〔經〕六年、春、鄭人來り渝[か]えて平らぐ。和して盟わざるを平と曰う。○渝[ゆ]は、羊朱反。變なり。

夏、五月、辛酉、公會齊侯盟于艾。泰山牟縣東南有艾山。○艾、五蓋反。
【読み】
夏、五月、辛酉[かのと・とり]、公齊侯に會して艾[がい]に盟う。泰山牟縣の東南に艾山有り。○艾は、五蓋反。

秋、七月。雖無事而書首月、具四時以成歲也。他皆放此。
【読み】
秋、七月。事無しと雖も首月を書すは、四時を具えて以て歲を成すなり。他も皆此に放え。

冬、宋人取長葛。秋取、冬乃告也。上有伐鄭圍長葛、長葛鄭邑可知。故不言鄭也。前年冬圍、不克而還、今冬乘長葛無備而取之。言易也。○易、以豉反。
【読み】
冬、宋人長葛を取る。秋に取り、冬に乃ち告ぐるなり。上に鄭を伐ちて長葛を圍むと有れば、長葛は鄭の邑なること知る可し。故に鄭と言わざるなり。前年の冬圍み、克たずして還り、今冬長葛の備え無きに乘じて之を取る。易きを言うなり。○易は、以豉反。

〔傳〕六年、春、鄭人來渝平、更成也。渝、變也。公之爲公子、戰於孤壤、爲鄭所執、逃歸怨鄭。鄭伐宋、公欲救宋。宋使者失辭、公怒而止。忿宋則欲厚鄭。鄭因此而來。故經書渝平、傳曰更成。
【読み】
〔傳〕六年、春、鄭人來り渝[か]えて平らぐとは、更めて成[たい]らぐなり。渝は、變わるなり。公の公子爲りしとき、孤壤に戰い、鄭の爲に執えられ、逃げ歸りて鄭を怨む。鄭宋を伐つとき、公宋を救わんと欲す。宋の使者辭を失い、公怒りて止む。宋を忿るときは則ち鄭に厚くせんと欲す。鄭此に因りて來るなり。故に經には渝えて平らぐと書し、傳には更めて成らぐと曰う。

翼九宗五正頃父之子嘉父、逆晉侯于隨、翼、晉舊都也。唐叔始封、受懷姓九宗、職官五正、遂世爲晉强家。五正、五官之長、九宗、一姓爲九族也。頃父之子嘉父、晉大夫。○頃、音傾。
【読み】
翼の九宗五正の頃父[けいほ]の子嘉父、晉侯を隨に逆え、翼は、晉の舊都なり。唐叔始めて封ぜられて、懷姓の九宗、職官の五正を受け、遂に世々晉の强家爲り。五正は、五官の長、九宗は、一姓九族と爲るなり。頃父の子嘉父は、晉の大夫。○頃は、音傾。

納諸鄂。晉人謂之鄂侯。鄂、晉別邑。諸地名疑者、皆言有以示不審、闕者不復記其闕。他皆放此。前年桓王立此侯之子於翼。故不得復入翼、別居鄂。
【読み】
諸を鄂に納る。晉人之を鄂侯と謂う。鄂は、晉の別邑なり。諸々の地名疑わしき者は、皆有りと言いて以て審らかならざるを示し、闕けたる者は復其の闕けたるを記さず。他も皆此に放え。前年桓王此の侯の子を翼に立つ。故に復翼に入ることを得ず、別に鄂に居るなり。

夏、盟于艾。始平于齊也。春秋前、魯與齊不平、今乃弃惡結好。故言始平于齊。○好、呼報反。
【読み】
夏、艾に盟うは、始めて齊に平らぐなり。春秋の前、魯と齊と平らかならず、今乃ち惡を弃てて好を結ぶ。故に始めて齊に平らぐと言う。○好は、呼報反。

五月、庚申、鄭伯侵陳、大獲。
【読み】
五月、庚申[かのえ・さる]、鄭伯陳を侵して、大いに獲たり。

往歲鄭伯請成于陳。成、猶平也。
【読み】
往歲鄭伯成[たい]らぎを陳に請う。成は、猶平のごとし。

陳侯不許。五父諫曰、親仁善鄰、國之寶也。君其許鄭。五父、陳公子侘。
【読み】
陳侯許さず。五父諫めて曰く、仁に親しみ鄰に善くするは、國の寶なり。君其れ鄭に許せ、と。五父は、陳の公子侘。

陳侯曰、宋・衛實難。可畏難也。○難、乃旦反。
【読み】
陳侯曰く、宋・衛は實に難し。畏難す可し。○難は、乃旦反。

鄭何能爲。遂不許。
【読み】
鄭は何ぞ能く爲さん、と。遂に許さず。

君子曰、善不可失、惡不可長、其陳桓公之謂乎。長惡不悛、從自及也。悛、止也。從、隨也。○悛、七全反。
【読み】
君子曰く、善は失う可からず、惡は長ず可からずとは、其れ陳の桓公を之れ謂うか。惡を長じて悛[あらた]めざれば、從りて自ら及ばん。悛は、止むなり。從は、隨うなり。○悛は、七全反。

雖欲救之、其將能乎。商書曰、惡之易也、如火之燎于原。不可郷邇。商書、盤庚。言惡易長、如火焚原野。不可郷近。
【読み】
之を救わんと欲すと雖も、其れ將能くせんや。商書に曰く、惡の易きや、火の原を燎くが如し。郷[む]かい邇づく可からず。商書は、盤庚なり。言うこころは、惡の長じ易きは、火の原野を焚くが如し。郷かい近づく可からず。

其猶可撲滅。言不可撲滅。
【読み】
其れ猶撲ち滅ぼす可けんや、と。撲滅す可からざるを言うなり。

周任有言、周任、周大夫。
【読み】
周任言えること有り、周任は、周の大夫。

曰、爲國家者、見惡如農夫之務去草焉、芟夷薀崇之、絕其本根、勿使能殖、則善者信矣。芟、刈也。夷、殺也。薀、積也。崇、聚也。○去、起呂反。芟、所銜反。薀、紆粉反。信、如字。一音申。
【読み】
曰く、國家を爲むる者は、惡を見ては農夫の務めて草を去るが如くし、芟夷[さんい]して之を薀崇し、其の本根を絕ち、能く殖せしむること勿ければ、則ち善なる者信[の]ぶ、と。芟は、刈るなり。夷は、殺すなり。薀は、積むなり。崇は、聚むるなり。○去は、起呂反。芟は、所銜反。薀は、紆粉反。信は、字の如し。一に音申。

秋、宋人取長葛。
【読み】
秋、宋人長葛を取る。

冬、京師來告饑。公爲之請糴於宋・衛・齊・鄭。禮也。告饑不以王命。故傳言京師、而不書於經也。雖非王命、而公共以稱命、己國不足、旁請鄰國。故曰禮也。傳見隱之賢。○爲、于僞反。
【読み】
冬、京師來りて饑を告ぐ。公之が爲に糴[てき]を宋・衛・齊・鄭に請う。禮なり。饑を告ぐること王命を以てせず。故に傳に京師と言いて、經に書さず。王命に非ずと雖も、而れども公共[つつし]みて以て命に稱わんとするも、己が國足らず、旁々鄰國に請う。故に禮なりと曰う。傳に隱の賢を見す。○爲は、于僞反。

鄭伯如周、始朝桓王也。桓王卽位、周・鄭交惡。至是乃朝。故曰始。
【読み】
鄭伯周に如き、始めて桓王に朝す。桓王位に卽き、周・鄭交々惡し。是に至りて乃ち朝す。故に始めてと曰う。

王不禮焉。周桓公言於王曰、我周之東遷、晉・鄭焉依。周桓公、周公黑肩也。周、采地。扶風雍縣東北有周城。幽王爲犬戎所殺。平王東徙、晉文侯、鄭武公左右王室。故曰晉・鄭焉依。○焉依、如字。或於虔反、非。
【読み】
王禮せず。周の桓公王に言いて曰く、我が周の東に遷れるとき、晉・鄭焉れ依れり。周の桓公は、周公黑肩なり。周は、采地。扶風雍縣の東北に周城有り。幽王犬戎の爲に殺さる。平王東に徙るとき、晉の文侯、鄭の武公王室を左右[たす]けり。故に晉・鄭焉れ依れりと曰う。○焉依は、字の如し。或は於虔反は、非なり。

善鄭以勸來者、猶懼不蔇。蔇、至也。○蔇、其器反。
【読み】
鄭を善して以て來者を勸むるも、猶蔇[いた]らざらんことを懼る。蔇[き]は、至るなり。○蔇は、其器反。

況不禮焉。鄭不來矣。爲桓五年、諸侯從王伐鄭傳。爲桓、釋文、于僞反。附注、如字。此類上下放之。
【読み】
況んや禮せざるをや。鄭來らざらん、と。桓五年、諸侯王に從いて鄭を伐つ爲の傳なり。爲桓、釋文は、于僞反。附注は、字の如し。此の類上下之に放え。


〔經〕七年、春、王三月、叔姬歸于紀。無傳。叔姬、伯姬之娣也。至是歸者、待年於父母國、不與嫡倶行。故書。
【読み】
〔經〕七年、春、王の三月、叔姬紀に歸[とつ]ぐ。傳無し。叔姬は、伯姬の娣なり。是に至りて歸ぐ者は、年を父母の國に待ちて、嫡と倶に行かざりしなり。故に書す。

滕侯卒。傳例曰、不書名、未同盟也。滕國、在沛國公丘縣東南。○沛、音貝。
【読み】
滕侯卒す。傳例に曰く、名を書さざるは、未だ同盟せざればなり。滕國は、沛國公丘縣の東南に在り。○沛は、音貝。

夏、城中丘。城例在莊二十九年。中丘、在琅邪臨沂縣東北。
【読み】
夏、中丘に城[きず]く。城の例は莊二十九年に在り。中丘は、琅邪臨沂縣の東北に在り。

齊侯使其弟年來聘。諸聘、皆使卿執玉帛、以相存問。例在襄元年。
【読み】
齊侯其の弟年をして來聘せしむ。諸々の聘は、皆卿をして玉帛を執りて、以て相存[と]い問わせしむ。例は襄元年に在り。

秋、公伐邾。冬、天王使凡伯來聘。凡伯、周卿士。凡、國。伯、爵也。汲郡共縣東南有凡城。
【読み】
秋、公邾を伐つ。冬、天王凡伯をして來聘せしむ。凡伯は、周の卿士。凡は、國。伯は、爵なり。汲郡共縣の東南に凡城有り。

戎伐凡伯于楚丘、以歸。戎鳴鐘鼓以伐天子之使、見夷狄强虣。不書凡伯敗者、單使無衆、非戰陳也。但言以歸、非執也。楚丘、衛地、在濟陰成武縣西南。○虣、蒲報反。補正。楚丘、曹地。非衛。其曰成武縣則是也。按楚丘、以歸句。
【読み】
戎凡伯を楚丘に伐ちて、以[い]て歸る。戎鐘鼓を鳴らして以て天子の使を伐つは、夷狄の强虣[きょうほう]を見すなり。凡伯の敗れを書さざる者は、單使にして衆無く、戰陳に非ざればなり。但以て歸ると言うは、執うるに非ず。楚丘は、衛の地、濟陰成武縣の西南に在り。○虣は、蒲報反。補正。楚丘は、曹の地。衛に非ず。其の成武縣と曰うは則ち是なり。按ずるに楚丘のは、以て歸るの句あればなり。

〔傳〕七年、春、滕侯卒。不書名、未同盟也。
【読み】
〔傳〕七年、春、滕侯卒す。名を書さざるは、未だ同盟せざればなり。

凡諸侯同盟、於是稱名。故薨則赴以名。盟、以名告神。故薨亦以名告同盟。
【読み】
凡そ諸侯同盟すれば、是に於て名を稱す。故に薨ずれば則ち赴[つ]ぐるに名を以てす。盟は、名を以て神に告ぐ。故に薨ずるも亦名を以て同盟に告ぐ。

告終稱嗣也、以繼好息民。告亡者之終、稱嗣位之主。嗣位之主、當奉而不忘。故曰繼好。好同則和親。故曰息民。
【読み】
終を告げ嗣を稱して、以て好を繼ぎ民を息う。亡者の終を告げ、嗣位の主を稱す。嗣位の主は、當に奉じて忘れざるべし。故に好を繼ぐと曰う。好同じければ則ち和親す。故に民を息うと曰う。

謂之禮經。此言凡例乃周公所制禮經也。十一年不告之例、又曰不書於策、明禮經皆當書於策。仲尼脩春秋皆承策爲經、丘明之傳、博采衆記。故始開凡例、特顯此二句。他皆放此。
【読み】
之を禮經と謂う。此れ凡例は乃ち周公制する所の禮經なるを言うなり。十一年告げざるの例に、又策に書さずと曰うは、禮經は皆當に策に書すべきを明かすなり。仲尼の春秋を脩むるは皆策を承けて經を爲し、丘明の傳は、博く衆記を采る。故に始めて凡例を開き、特に此の二句を顯すなり。他も皆此に放え。

夏、城中丘、書不時也。
【読み】
夏、中丘を城くは、時ならざるを書すなり。

齊侯使夷仲年來聘、結艾之盟也。艾盟、在六年。
【読み】
齊侯夷仲年をして來聘せしむるは、艾の盟を結ぶなり。艾の盟は、六年に在り。

秋、宋及鄭平。七月、庚申、盟于宿。
【読み】
秋、宋と鄭と平らぐ。七月、庚申[かのえ・さる]、宿に盟う。

公伐邾、爲宋討也。公距宋而更與鄭平、欲以鄭爲援。今鄭復與宋盟。故懼而伐邾、欲以求宋。故曰爲宋討。○爲宋、于僞反。
【読み】
公邾を伐つは、宋の爲に討つなり。公宋を距てて更に鄭と平らぎ、鄭を以て援けと爲さんと欲す。今鄭復宋と盟う。故に懼れて邾を伐ち、以て宋に求めんと欲す。故に宋の爲に討つと曰う。○爲宋は、于僞反。

初戎朝于周、發幣于公卿、凡伯弗賓。朝而發幣於公卿、如今計獻詣公府卿寺。
【読み】
初め戎周に朝して、幣を公卿に發[いた]せしとき、凡伯賓せず。朝して幣を公卿に發すは、今の計獻の公府卿寺に詣[いた]るが如し。

冬、王使凡伯來聘。還。戎伐之于楚丘、以歸。傳言凡伯所以見伐。
【読み】
冬、王凡伯をして來聘せしむ。還る。戎之を楚丘に伐ちて、以て歸る。傳凡伯の伐たるる所以を言う。

陳及鄭平。六年鄭侵陳大獲。今乃平。
【読み】
陳と鄭と平らぐ。六年鄭陳を侵して大いに獲たり。今乃ち平らぐ。

十二月、陳五父如鄭涖盟。涖、臨也。
【読み】
十二月、陳の五父鄭に如いて涖みて盟う。涖[り]は、臨むなり。

壬申、及鄭伯盟。歃如忘。志不在於歃血。○歃、色洽反。忘、亡亮反。服虔云、如、而也。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、鄭伯と盟う。歃[すす]ること忘るるが如し。志血を歃るに在らず。○歃[そう]は、色洽反。忘は、亡亮反。服虔が云う、如は、而、と。

洩伯曰、五父必不免。不賴盟矣。洩伯、鄭洩駕。○洩、息列反。
【読み】
洩伯曰く、五父必ず免れじ。盟も賴らず、と。洩伯は、鄭の洩駕。○洩は、息列反。

鄭良佐如陳蒞盟。良佐、鄭大夫。
【読み】
鄭の良佐陳に如いて蒞みて盟う。良佐は、鄭の大夫。

辛巳、及陳侯盟。亦知陳之將亂也。入其國觀其政治。故總言之也。皆爲桓五年六年陳亂、蔡人殺陳佗傳。
【読み】
辛巳[かのと・み]、陳侯と盟う。亦陳の將に亂れんとするを知れり。其の國に入りて其の政治を觀る。故に總べて之を言うなり。皆桓五年六年陳亂れ、蔡人陳佗を殺す爲の傳なり。

鄭公子忽在王所。故陳侯請妻之。以忽有王寵故也。○妻、七計反。
【読み】
鄭の公子忽王の所に在り。故に陳侯之を妻せんと請う。忽王の寵有るを以ての故なり。○妻は、七計反。

鄭伯許之。乃成昏。爲鄭忽失齊昏援、以至出奔傳。
【読み】
鄭伯之を許す。乃ち昏を成す。鄭忽齊の昏援を失いて、以て出奔に至る爲の傳なり。


〔經〕八年、春、宋公・衛侯遇于垂。垂、衛地。濟陰句陽縣東北有垂亭。○句、古侯反。
【読み】
〔經〕八年、春、宋公・衛侯垂に遇う。垂は、衛の地。濟陰句陽縣の東北に垂亭有り。○句は、古侯反。

三月、鄭伯使宛來歸祊。宛、鄭大夫。不書氏、未賜族。祊、鄭祀泰山之邑。在琅邪費縣東南。○宛、於阮反。祊、必彭反。費、音祕。
【読み】
三月、鄭伯宛をして來りて祊[ほう]を歸[おく]らしむ。宛は、鄭の大夫。氏を書さざるは、未だ族を賜わざればなり。祊は、鄭の泰山を祀るの邑。琅邪費縣の東南に在り。○宛は、於阮反。祊は、必彭反。費は、音祕。

庚寅。我入祊。桓元年乃卒易祊田。知此入祊、未肯受而有之。
【読み】
庚寅[かのえ・とら]。我れ祊に入る。桓元年乃ち卒に祊の田を易う。知る、此の祊に入るは、未だ肯えて受けて之を有たざるを。

夏、六月、己亥、蔡侯考父卒。無傳。襄六年傳曰、杞桓公卒。始赴以名、同盟故也。諸侯同盟稱名者、非唯見在位二君也。嘗與其父同盟、則亦以名赴其子。亦所以繼好也。蔡未與隱盟。蓋春秋前與惠公盟。故赴以名。○見、賢遍反。
【読み】
夏、六月、己亥[つちのと・い]、蔡侯考父卒す。傳無し。襄六年の傳に曰く、杞の桓公卒す。始めて赴[つ]ぐるに名を以てするは、同盟の故なり。諸侯の同盟名を稱する者は、唯見[げん]に在位の二君のみに非ず。嘗て其の父と同盟すれば、則ち亦名を以て其の子に赴ぐ。亦好を繼ぐ所以なり。蔡は未だ隱と盟わず。蓋し春秋の前に惠公と盟うならん。故に赴ぐるに名を以てするなり。○見は、賢遍反。

辛亥、宿男卒。無傳。元年宋・魯大夫盟于宿、宿與盟也。晉荀偃禱河、稱齊・晉君名、然後自稱名、知雖大夫出盟、亦當先稱己君之名、以啓神明。故薨、皆從身盟之例、當告以名也。傳例曰、赴以名則亦書之。不然則否。辟不敏也。今宿赴不以名。故亦不書名。諸例或發於始事、或發於後者、因宜有所異同。亦或丘明所得記注、本末不能皆備故。
【読み】
辛亥[かのと・い]、宿男卒す。傳無し。元年宋・魯の大夫宿に盟うとき、宿も盟に與れり。晉の荀偃[じゅんえん]河に禱るとき、齊・晉の君の名を稱して、然して後に自ら名を稱すれば、知る、大夫と雖も出でて盟えば、亦當に先ず己が君の名を稱して、以て神明に啓すべきを。故に薨ずれば、皆身ら盟うの例に從いて、當に告ぐるに名を以てすべし。傳例に曰く、赴ぐるに名を以てすれば則ち亦之を書す。然らざれば則ち否せず。不敏を辟くるなり、と。今宿赴ぐるに名を以てせず。故に亦名を書さず。諸々の例或は始事に發し、或は後に發する者は、宜しく異同する所有るべきに因りてなり。亦或は丘明が得る所の記注、本末皆備わること能わざる故ならんか。

秋、七月、庚午、宋公・齊侯・衛侯盟于瓦屋。齊侯尊宋使主會。故宋公序齊上。瓦屋、周地。
【読み】
秋、七月、庚午[かのえ・うま]、宋公・齊侯・衛侯瓦屋に盟う。齊侯宋を尊んで會を主らしむ。故に宋公齊の上に序ず。瓦屋は、周の地なり。

八月、葬蔡宣公。無傳。三月而葬、速。
【読み】
八月、蔡の宣公を葬る。傳無し。三月にして葬るは、速きなり。

九月、辛卯、公及莒人盟于浮來。莒人、微者。不嫌敵公侯。故直稱公。例在僖二十九年。浮來、紀邑。東莞縣北有邳郷、邳郷西有公來山、號曰邳來閒。○邳、蒲悲反。
【読み】
九月、辛卯[かのと・う]、公と莒人と浮來に盟う。莒人は、微なる者なり。公侯に敵するに嫌あらず。故に直に公と稱す。例は僖二十九年に在り。浮來は、紀の邑。東莞縣の北に邳郷有り、邳郷の西に公來山有り、號して邳來閒と曰う。○邳は、蒲悲反。

螟。無傳。爲災。
【読み】
螟[めい]あり。傳無し。災いを爲す。

冬、十有二月、無駭卒。公不與小斂。故不書日。卒而後賜族。故不書氏。
【読み】
冬、十有二月、無駭卒す。公小斂に與らず。故に日を書さず。卒して後に族を賜う。故に氏を書さず。

〔傳〕八年、春、齊侯將平宋・衛。平宋・衛於鄭。
【読み】
〔傳〕八年、春、齊侯將に宋・衛を平らげんとす。宋・衛を鄭に平らぐなり。

有會期。宋公以幣請於衛、請先相見。宋敬齊命。
【読み】
會期有り。宋公幣を以て衛に請い、先ず相見えんと請う。宋齊の命を敬す。

衛侯許之。故遇于犬丘。犬丘、垂也。地有兩名。
【読み】
衛侯之を許す。故に犬丘に遇う。犬丘は、垂なり。地に兩つの名有り。

鄭伯請釋泰山之祀而祀周公、以泰山之祊易許田。三月、鄭伯使宛來歸祊、不祀泰山也。成王營王城、有遷都之志。故賜周公許田、以爲魯國朝宿之邑。後世因而立周公別廟焉。鄭桓公、周宣王之母弟、封鄭有助祭泰山湯沐之邑在祊。鄭以天子不能復巡狩。故欲以祊易許田、各從本國所近之宜。恐魯以周公別廟爲疑。故云、己廢泰山之祀、而欲爲魯祀周公。孫辭以有求也。許田、近許之田。
【読み】
鄭伯泰山の祀を釋てて周公を祀り、泰山の祊を以て許の田に易えんと請う。三月、鄭伯宛をして來りて祊を歸らしむるは、泰山を祀らざるなり。成王王城を營じて、遷都の志有り。故に周公に許の田を賜いて、以て魯國朝宿の邑とす。後世因りて周公の別廟を立つ。鄭の桓公は、周の宣王の母弟、鄭に封ぜられて泰山を助祭する湯沐の邑の祊に在る有り。鄭以えらく、天子復巡狩すること能わず、と。故に祊を以て許の田に易えて、各々本國近き所の宜しきに從わんと欲す。魯周公の別廟を以て疑いを爲さんことを恐る。故に云う、己泰山の祀を廢して、魯の爲に周公を祀らんと欲す、と。孫辭して以て求むること有るなり。許の田とは、許に近きの田なり。

夏、虢公忌父、始作卿士于周。周人於此遂畀之政。
【読み】
夏、虢公忌父、始めて周に卿士と作れり。周人此に於て遂に之に政を畀[あた]う。

四月、甲辰、鄭公子忽如陳、逆婦嬀。辛亥、以嬀氏歸、甲寅、入于鄭。陳鍼子送女。先配而後祖。
【読み】
四月、甲辰[きのえ・たつ]、鄭の公子忽陳に如いて、婦嬀[き]を逆う。辛亥[かのと・い]、嬀氏を以[い]て歸り、甲寅[きのえ・とら]、鄭に入る。陳の鍼子[しんし]女を送る。先ず配して後に祖す。

鍼子曰、是不爲夫婦。誣其祖矣。非禮也。何以能育。鍼子、陳大夫。禮逆婦、必先告祖廟而後行。故楚公子圍稱告莊共之廟。鄭忽先逆婦而後告廟。故曰先配而後祖。○鍼、其廉反。
【読み】
鍼子曰く、是れ夫婦と爲らず。其の祖を誣いたり。禮に非ず。何を以てか能く育せん、と。鍼子は、陳の大夫。禮に婦を逆うるは、必ず先ず祖廟に告げて後に行く、と。故に楚公子圍莊共の廟に告ぐと稱す。鄭忽は先ず婦を逆えて後に廟に告ぐ。故に先ず配して後に祖すと曰う。○鍼は、其廉反。

齊人卒平宋・衛于鄭。秋、會于溫、盟于瓦屋、以釋東門之役。禮也。會溫不書、不以告也。定國息民。故曰禮也。平宋・衛二國忿鄭之謀。鄭不與盟。故不書。
【読み】
齊人卒に宋・衛を鄭に平らぐ。秋、溫に會し、瓦屋に盟いて、以て東門の役を釋く。禮なり。溫に會するを書さざるは、以て告げざればなり。國を定め民を息う。故に禮なりと曰う。宋・衛二國鄭を忿るの謀を平らぐ。鄭盟に與らず。故に書さず。

八月、丙戌、鄭伯以齊人朝王。禮也。言鄭伯不以虢公得政而背王。故禮之。齊稱人、略從國辭。上有七月庚午、下有九月辛卯、則八月不得有丙戌。
【読み】
八月、丙戌[ひのえ・いぬ]、鄭伯齊人を以[い]て王に朝す。禮なり。言うこころは、鄭伯虢公が政を得たるを以て王に背かず。故に之を禮とす。齊人と稱するは、略して國辭に從うなり。上に七月庚午と有り、下に九月辛卯と有れば、則ち八月に丙戌有ることを得ず。

公及莒人盟于浮來、以成紀好也。二年紀・莒盟于密、爲魯故。今公尋之。故曰以成紀好。
【読み】
公と莒人と浮來に盟うは、以て紀の好を成すなり。二年紀と莒と密に盟うは、魯の爲の故なり。今公之を尋[かさ]ぬ。故に以て紀の好を成すと曰う。

冬、齊侯使來告成三國。齊侯冬來告、稱秋和三國。
【読み】
冬、齊侯來りて三國を成[たい]らげしことを告げしむ。齊侯冬來りて告げ、秋三國を和すると稱す。

公使衆仲對曰、君釋三國之圖、以鳩其民。君之惠也。寡君聞命矣。敢不承受君之明德。鳩、集也。
【読み】
公衆仲をして對えしめて曰く、君三國の圖を釋き、以て其の民を鳩[あつ]む。君の惠みなり。寡君命を聞けり。敢えて君の明德を承受せざらんや、と。鳩は、集むるなり。

無駭卒。羽父請諡與族。公問族於衆仲。衆仲對曰、天子建德、立有德以爲諸侯。
【読み】
無駭卒す。羽父諡と族とを請う。公族を衆仲に問う。衆仲對えて曰く、天子は德を建て、有德を立てて以て諸侯とす。

因生以賜姓、因其所由生以賜姓。謂若舜由嬀汭、故陳爲嬀姓。
【読み】
生に因りて以て姓を賜い、其の由りて生ずる所に因りて以て姓を賜う。舜の嬀汭[ぎぜい]に由る、故に陳を嬀姓とするが若きを謂う。

胙之土而命之氏。報之以土、而命氏曰陳。○胙、才故反。
【読み】
之に土を胙[むく]いて之に氏を命ず。之に報ゆるに土を以てして、氏を命じて陳と曰う。○胙[そ]は、才故反。

諸侯以字。諸侯位卑。不得賜姓。故其臣因氏其王父字。
【読み】
諸侯は字を以てす。諸侯は位卑し。姓を賜うことを得ず。故に其の臣因りて其の王父の字を氏とす。

爲諡、因以爲族。或便卽先人之謚、稱以爲族。
【読み】
諡を爲り、因りて以て族とす。或は便ち先人の謚に卽いて、稱して以て族とす。

官有世功、則有官族。邑亦如之。謂取其舊官舊邑之稱以爲族。皆稟之時君。○稱、尺證反。
【読み】
官世功有れば、則ち官族有り。邑も亦之の如し、と。其の舊官舊邑の稱を取りて以て族とするを謂う。皆之を時君に稟くるなり。○稱は、尺證反。

公命以字爲展氏。諸侯之子稱公子、公子之子稱公孫。公孫之子以王父字爲氏。無駭、公子展之孫。故爲展氏。
【読み】
公命ずるに字を以てして展氏とす。諸侯の子を公子と稱し、公子の子を公孫と稱す。公孫の子は王父の字を以て氏とす。無駭は、公子展の孫。故に展氏とす。


〔經〕九年、春、天子使南季來聘。無傳。南季、天子大夫也。南、氏。季、字也。
【読み】
〔經〕九年、春、天子南季をして來聘せしむ。傳無し。南季は、天子の大夫なり。南は、氏。季は、字なり。

三月、癸酉、大雨震電。庚辰、大雨雪。三月、今正月。○雨雪、于付反。傳同。
【読み】
三月、癸酉[みずのと・とり]、大雨震電す。庚辰[かのえ・たつ]、大いに雪雨[ふ]る。三月は、今の正月。○雨雪は、于付反。傳も同じ。

挾卒。無傳。挾、魯大夫。未賜族。○挾、音協。
【読み】
挾卒す。傳無し。挾は、魯の大夫。未だ族を賜わらず。○挾は、音協。

夏、城郎。秋、七月、冬、公會齊侯于防。防、魯地。在琅邪華縣東南。
【読み】
夏、郎に城く。秋、七月、冬、公齊侯に防に會す。防は、魯の地。琅邪華縣の東南に在り。

〔傳〕九年、春、王三月、癸酉、大雨霖以震、書始也。書癸酉、始雨日。
【読み】
〔傳〕九年、春、王の三月、癸酉[みずのと・とり]、大雨霖して以て震すとは、始めを書すなり。癸酉を書すは、始めて雨ふる日なり。

庚辰、大雨雪、亦如之。書時失也。夏之正月微始出。未可震電。旣震電、又不當大雨雪。故爲時失。
【読み】
庚辰[かのえ・たつ]、大いに雪雨[ふ]るも、亦之の如し。時の失するを書すなり。夏の正月微始めて出づ。未だ震電す可からず。旣に震電すれば、又當に大いに雪雨るべからず。故に時の失爲り。

凡雨、自三日以往爲霖。此解經書霖也。而經無霖字。經誤。
【読み】
凡そ雨、三日より以往を霖とす。此は經の霖を書すを解するなり。而るに經に霖の字無し。經の誤りなり。

平地尺爲大雪。
【読み】
平地尺を大雪とす。

夏、城郎、書不時也。
【読み】
夏、郎に城くは、時ならざるを書すなり。

宋公不王。不共王職。
【読み】
宋公王せず。王職に共せず。

鄭伯爲王左卿士。以王命討之、伐宋。
【読み】
鄭伯王の左卿士爲り。王命を以て之を討し、宋を伐つ。

宋以入郛之役怨公、不告命。入郛在五年。公以七年伐邾、欲以說宋。而宋猶不和也。○說、音悅。
【読み】
宋郛[ふ]に入るの役を以て公を怨み、命を告げず。郛に入るは五年に在り。公七年邾を伐つを以て、以て宋を說ばしめんと欲す。而るに宋猶和せず。○說は、音悅。

公怒、絕宋使。
【読み】
公怒りて、宋の使を絕つ。

秋、鄭人以王命來告伐宋。遣使致王命也。伐宋未得志。故復更告之。
【読み】
秋、鄭人王命を以て來りて宋を伐たんことを告ぐ。使を遣わして王命を致すなり。宋を伐ちて未だ志を得ず。故に復更に之を告ぐ。

冬、公會齊侯于防。謀伐宋也。
【読み】
冬、公齊侯に防に會す。宋を伐たんことを謀るなり。

北戎侵鄭。鄭伯禦之。患戎師曰、彼徒我車、懼其侵軼我也。徒、歩兵也。軼、突也。○軼、音迭、又音逸。
【読み】
北戎鄭を侵す。鄭伯之を禦ぐ。戎の師を患えて曰く、彼は徒我は車、懼れらくは其れ我を侵軼[しんいつ]せんことを、と。徒は、歩兵なり。軼は、突なり。○軼は、音迭、又音逸。

公子突曰、使勇而無剛者、嘗寇而速去之。公子突、鄭厲公也。嘗、試也。勇則能往、無剛不恥退。
【読み】
公子突曰く、勇にして剛無き者をして、寇を嘗[こころ]みて速やかに之を去らしめん。公子突は、鄭の厲公なり。嘗は、試みるなり。勇なれば則ち能く往き、剛無ければ退くことを恥じず。

君爲三覆以待之。覆、伏兵也。○覆、扶又反。下同。
【読み】
君三覆を爲して以て之を待て。覆は、伏兵なり。○覆は、扶又反。下も同じ。

戎輕而不整、貪而無親、勝不相讓、敗不相救、先者見獲、必務進。進而遇覆、必速奔。後者不救、則無繼矣。乃可以逞。逞、解也。○輕、遣政反。
【読み】
戎は輕々しくして整わず、貪りて親無く、勝ちて相讓らず、敗れて相救わず、先なる者獲あるを見ば、必ず務めて進まん。進みて覆に遇わば、必ず速やかに奔らん。後なる者救わざれば、則ち繼ぐもの無からん。乃ち以て逞[と]く可し、と。逞、解くなり。○輕は、遣政反。

從之。
【読み】
之に從う。

戎人之前遇覆者奔。祝耼逐之、祝耼、鄭大夫。○耼、乃甘反。一音土甘反。
【読み】
戎人の前[すす]みて覆に遇う者奔る。祝耼[しゅくたん]之を逐い、祝耼は、鄭の大夫。○耼は、乃甘反。一に音土甘反。

衷戎師、前後擊之、盡殪。爲三部伏兵、祝耼帥勇而無剛者、先犯戎而速奔、以過二伏兵。至後伏兵起、戎還走。祝耼反逐之。戎前後及中、三處受敵。故曰衷戎師。殪、死也。○衷、丁仲反。又音忠。殪、於計反。
【読み】
戎の師を衷[うち]にして、前後より之を擊ち、盡く殪[たお]す。三部の伏兵を爲し、祝耼勇にして剛無き者を帥いて、先ず戎を犯して速やかに奔り、以て二つの伏兵を過ぐ。後の伏兵起こるに至りて、戎還り走る。祝耼反して之を逐う。戎前後と中と、三處敵を受く。故に戎の師を衷にすと曰う。殪は、死すなり。○衷は、丁仲反。又音忠。殪は、於計反。

戎師大奔。後駐軍不復繼也。
【読み】
戎の師大いに奔る。後軍を駐めて復繼がず。

十一月、甲寅、鄭人大敗戎師。此皆春秋時事。雖經無正文、所謂必廣記而備言之。將令學者原始要終、尋其枝葉、究其所窮。他皆放此。○要、於遙反。
【読み】
十一月、甲寅[きのえ・とら]、鄭人大いに戎の師を敗れり。此れ皆春秋の時の事なり。經に正文無しと雖も、所謂必ず廣く記して備に之を言うなり。將に學者をして始めに原づき終わりを要し、其の枝葉を尋ねて、其の窮まる所を究めしめんとす。他も皆此に放え。○要は、於遙反。


〔經〕十年、春、王二月、公會齊侯・鄭伯于中丘。傳言正月會、癸丑盟。釋例推經傳日月、癸丑、是正月二十六日。知經二月誤。
【読み】
〔經〕十年、春、王の二月、公齊侯・鄭伯に中丘に會す。傳には正月會し、癸丑盟うと言う。釋例經傳の日月を推すに、癸丑は、是れ正月二十六日なり。知る、經の二月は誤りなるを。

夏、翬帥師會齊人・鄭人伐宋。公子翬不待公命、而貪會二國之君。疾其專進。故去氏。齊・鄭以公不至、故亦更使微者從之伐宋。不言及、明翬專行、非鄧之謀也。及例在宣七年。
【読み】
夏、翬[き]師を帥いて齊人・鄭人に會して宋を伐つ。公子翬公命を待たずして、二國の君に會するを貪る。其の專進を疾む。故に氏を去る。齊・鄭公の至らざるを以て、故に亦更に微者をして之に從いて宋を伐たしむ。及と言わざるは、翬專行して、鄧の謀に非ざるを明かすなり。及の例は宣七年に在り。

六月、壬戌、公敗宋師于菅。齊・鄭後期。故公獨敗宋師。書敗、宋未陳也。敗例、在莊十一年。菅、宋地。○菅、古頑反。
【読み】
六月、壬戌[みずのえ・いぬ]、公宋の師を菅に敗る。齊・鄭期に後る。故に公獨り宋の師を敗る。敗ると書すは、宋未だ陳せざればなり。敗るの例は、莊十一年に在り。菅は、宋の地。○菅は、古頑反。

辛未、取郜。辛巳、取防。鄭後至、得郜・防二邑歸功于魯。故書取。明不用師徒也。濟陰成武縣東南有郜城。高平昌邑縣西南有西防城。○郜、古報反。
【読み】
辛未[かのと・ひつじ]、郜[こう]を取る。辛巳[かのと・み]、防を取る。鄭後れて至り、郜・防二邑を得て功を魯に歸す。故に取ると書す。師徒を用いざることを明かすなり。濟陰成武縣の東南に郜城有り。高平昌邑縣の西南に西防城有り。○郜は、古報反。

秋、宋人・衛人入鄭。宋人・蔡人・衛人伐戴。鄭伯伐取之。三國伐戴。鄭伯因其不和、伐而取之。書伐、用師徒也。書取、克之易也。戴、國。今陳留外黃縣東南有戴城。
【読み】
秋、宋人・衛人鄭に入る。宋人・蔡人・衛人戴を伐つ。鄭伯伐ちて之を取る。三國戴を伐つ。鄭伯其の和せざるに因りて、伐ちて之を取るなり。伐つと書すは、師徒を用ゆるなり。取ると書すは、克つことの易きなり。戴は、國。今の陳留外黃縣の東南に戴城有り。

冬、十月、壬午、齊人・鄭人入郕。
【読み】
冬、十月、壬午[みずのえ・うま]、齊人・鄭人郕[せい]に入る。

〔傳〕十年、春、王正月、公會齊侯・鄭伯于中丘。癸丑、盟于鄧、爲師期。尋九年會于防、謀伐宋也。公旣會而盟。盟不書、非後也。蓋公還告會而不告盟。鄧、魯地。
【読み】
〔傳〕十年、春、王の正月、公齊侯・鄭伯に中丘に會す。癸丑[みずのと・うし]、鄧に盟いて、師の期を爲す。九年防に會して、宋を伐つことを謀りしを尋[かさ]ぬるなり。公旣に會して盟う。盟書さざるは、後れたるに非ず。蓋し公還りて會を告げて盟を告げざるならん。鄧は、魯の地。

夏、五月、羽父先會齊侯・鄭伯伐宋。言先會、明非公本期、釋翬之去族。
【読み】
夏、五月、羽父先ず齊侯・鄭伯に會して宋を伐つ。先ず會すと言うは、公の本期に非ざることを明かして、翬の族を去るを釋く。

六月、戊申、公會齊侯・鄭伯于老桃。會不書、不告於廟也。老桃、宋地。六月無戊申。戊申、五月二十三日。日誤。
【読み】
六月、戊申[つちのえ・さる]、公齊侯・鄭伯に老桃に會す。會書さざるは、廟に告げざればなり。老桃は、宋の地。六月に戊申無し。戊申は、五月二十三日なり。日の誤りなり。

壬戌、公敗宋師于菅。庚午、鄭師入郜。辛未、歸于我。庚辰、鄭師入防。辛巳、歸于我。壬戌、六月七日。庚午、十五日。庚辰、二十五日。鄭伯後期、而公獨敗宋師。故鄭頻獨進兵以入郜・防。入而不有、命魯取之。推功上爵、讓以自替、不有其實。故經但書魯取、以成鄭志、善之也。
【読み】
壬戌[みずのえ・いぬ]、公宋の師を菅に敗る。庚午[かのえ・うま]、鄭の師郜に入る。辛未[かのと・ひつじ]、我に歸[おく]る。庚辰[かのえ・たつ]、鄭の師防に入る。辛巳[かのと・み]、我に歸る。壬戌は、六月七日。庚午は、十五日。庚辰は、二十五日。鄭伯期に後れて、公獨り宋の師を敗る。故に鄭頻りに獨り兵を進めて以て郜・防に入る。入りて有たず、魯に命じて之を取らしむ。功を上爵に推して、讓りて以て自ら替[す]て、其の實を有たず。故に經に但魯取ると書して、以て鄭の志を成すは、之を善するなり。

君子謂、鄭莊公於是乎可謂正矣。以王命討不庭、下之事上、皆成禮於庭中。
【読み】
君子謂く、鄭の莊公是に於て正と謂う可し。王命を以て不庭を討ち、下の上に事うるは、皆禮を庭中に成すなり。

不貪其土、以勞王爵。正之體也。勞者、敍其勤以答之。諸侯相朝、逆之以饔餼、謂之郊勞。魯侯爵尊、鄭伯爵卑。故言以勞王爵。○勞、力報反。
【読み】
其の土を貪らず、以て王爵を勞う。正の體なり、と。勞は、其の勤を敍で以て之に答うるなり。諸侯相朝すれば、之を逆[むか]うるに饔餼[ようき]を以てする、之を郊勞と謂う。魯侯は爵尊く、鄭伯は爵卑し。故に以て王爵を勞うと言う。○勞は、力報反。

蔡人・衛人・郕人不會王命。不伐宋也。
【読み】
蔡人・衛人・郕人王命に會せず。宋を伐たざるなり。

秋、七月、庚寅、鄭師入郊、猶在郊。鄭師還駐兵於遠郊。
【読み】
秋、七月、庚寅[かのえ・とら]、鄭の師郊に入り、猶郊に在り。鄭の師還りて兵を遠郊に駐む。

宋人・衛人入鄭。宋・衛奇兵、乘虛入鄭。
【読み】
宋人・衛人鄭に入る。宋・衛の奇兵、虛に乘じて鄭に入る。

蔡人從之伐戴。從宋・衛伐戴也。
【読み】
蔡人之に從いて戴を伐つ。宋・衛に從いて戴を伐つなり。

八月、壬戌、鄭伯圍戴、癸亥、克之、取三師焉。三國之軍在戴。故鄭伯合圍之。師者、軍旅之通稱。○稱、尺證反。
【読み】
八月、壬戌[みずのえ・いぬ]、鄭伯戴を圍み、癸亥[みずのと・い]、之に克ち、三師を取れり。三國の軍戴に在り。故に鄭伯之を合圍す。師とは、軍旅の通稱なり。○稱は、尺證反。

宋・衛旣入鄭、而以伐戴召蔡人。伐戴乃召之。
【読み】
宋・衛旣に鄭に入りて、戴を伐つを以て蔡人を召[よ]ぶ。戴を伐つとき乃[はじ]めて之を召ぶ。

蔡人怒。故不和而敗。言鄭取之易也。
【読み】
蔡人怒る。故に和せずして敗れたり。鄭之を取るの易きを言うなり。

九月、戊寅、鄭伯入宋。報入鄭也。九月無戊寅。戊寅、八月二十四日。
【読み】
九月、戊寅[つちのえ・とら]、鄭伯宋に入る。鄭に入るに報ゆるなり。九月に戊寅無し。戊寅は、八月二十四日なり。

冬、齊人・鄭人入郕、討違王命也。
【読み】
冬、齊人・鄭人郕に入るは、王命に違うを討つなり。


〔經〕十有一年、春、滕侯・薛侯來朝。諸侯相朝例、在文十五年。
【読み】
〔經〕十有一年、春、滕侯・薛侯來朝す。諸侯相朝するの例は、文十五年に在り。

夏、公會鄭伯于時來。時來、郲也。滎陽縣東有釐城。鄭地也。○釐、音來。又力之反。
【読み】
夏、公鄭伯に時來に會す。時來は、郲[らい]なり。滎陽縣の東に釐城有り。鄭の地なり。○釐は、音來。又力之反。

秋、七月、壬午、公及齊侯・鄭伯入許。與謀曰及。還使許叔居之。故不言滅也。許、潁川許昌縣。○與、音預。還、音環。
【読み】
秋、七月、壬午[みずのえ・うま]、公と齊侯・鄭伯と許に入る。謀に與るを及と曰う。還[す]ぐに許叔をして之に居らしむ。故に滅ぼすと言わざるなり。許は、潁川許昌縣なり。○與は、音預。還は、音環。

冬、十有一月、壬辰、公薨。實弑書薨、又不地者、史策所諱也。
【読み】
冬、十有一月、壬辰[みずのえ・たつ]、公薨ず。實は弑せられて薨ずと書し、又地いわざる者は、史策の諱む所なればなり。

〔傳〕十一年、春、滕侯・薛侯來朝。爭長。薛、魯國薛縣。
【読み】
〔傳〕十一年、春、滕侯・薛侯來朝す。長を爭う。薛は、魯國薛縣なり。

薛侯曰、我先封。薛祖奚仲、夏所封、在周之前。
【読み】
薛侯曰く、我は先封なり、と。薛の祖奚仲は、夏の封ずる所、周の前に在り。

滕侯曰、我周之卜正也。卜正、卜官之長。
【読み】
滕侯曰く、我は周の卜正なり。卜正は、卜官の長。

薛、庶姓也。我不可以後之。庶姓、非周之同姓。
【読み】
薛は、庶姓なり。我れ以て之に後る可からず、と。庶姓は、周の同姓に非ず。

公使羽父請於薛侯曰、君與滕君辱在寡人。周諺有之曰、山有木、工則度之、賓有禮、主則擇之。擇所宜而行之。○度、大洛反。
【読み】
公羽父をして薛侯に請わしめて曰く、君と滕君と辱く寡人に在り。周の諺に之れ有り曰く、山に木有れば、工則ち之を度り、賓に禮有れば、主則ち之を擇ぶ、と。宜しき所を擇びて之を行う。○度は、大洛反。

周之宗盟、異姓爲後。盟載書皆先同姓。例、在定四年。
【読み】
周の宗盟は、異姓を後とす。盟の載書は皆同姓を先にす。例は、定四年に在り。

寡人若朝于薛、不敢與諸任齒。薛、任姓。齒、列也。○任、音壬。
【読み】
寡人若し薛に朝せば、敢えて諸任と齒せず。薛は、任姓。齒は、列なるなり。○任は、音壬。

君若辱貺寡人、則願以滕君爲請。
【読み】
君若し辱く寡人に貺[たま]わば、則ち願わくは滕君を以て請うことを爲さん、と。

薛侯許之。乃長滕侯。
【読み】
薛侯之を許す。乃ち滕侯を長とす。

夏、公會鄭伯于郲、謀伐許也。
【読み】
夏、公鄭伯に郲に會するは、許を伐たんことを謀るなり。

鄭伯將伐許。五月、甲辰、授兵于大宮。大宮、鄭祖廟。○大、音泰。
【読み】
鄭伯將に許を伐たんとす。五月、甲辰[きのえ・たつ]、兵を大宮に授く。大宮は、鄭の祖廟。○大は、音泰。

公孫閼與潁考叔爭車。公孫閼、鄭大夫。○閼、於葛反。
【読み】
公孫閼[あつ]と潁考叔と車を爭う。公孫閼は、鄭の大夫。○閼は、於葛反。

潁考叔挾輈以走。輈、車轅也。○輈、張留反。
【読み】
潁考叔輈[ながえ]を挾んで以て走る。輈[ちゅう]は、車轅なり。○輈は、張留反。

子都拔棘以逐之、子都、公孫閼。棘、戟也。
【読み】
子都棘を拔いて以て之を逐い、子都は、公孫閼。棘は、戟なり。

及大逵。弗及。子都怒。逵、道方九軌也。○逵、求龜反。九達謂之逵。
【読み】
大逵[たいき]に及ぶ。及ばず。子都怒る。逵は、道九軌を方[なら]ぶるなり。○逵は、求龜反。九達之を逵と謂う。

秋、七月、公會齊侯・鄭伯伐許。庚辰、傅于許。傅于許城下。○傅、音附。
【読み】
秋、七月、公齊侯・鄭伯に會して許を伐つ。庚辰[かのえ・たつ]、許に傅[つ]く。許の城下に傅く。○傅は、音附。

潁考叔取鄭伯之旗蝥弧以先登。蝥弧、旗名。○蝥、莫侯反。
【読み】
潁考叔鄭伯の旗蝥弧[ぼうこ]を取りて以て先登す。蝥弧は、旗の名。○蝥は、莫侯反。

子都自下射之。顚。顚隊而死。○射、食亦反。隊、直類反。
【読み】
子都下より之を射る。顚[くつがえ]る。顚隊[てんつい]して死す。○射は、食亦反。隊は、直類反。

瑕叔盈又以蝥弧登。瑕叔盈、鄭大夫。
【読み】
瑕叔盈又蝥弧を以て登る。瑕叔盈は、鄭の大夫。

周麾而呼曰、君登矣。周、徧也。麾、招也。○呼、火故反。
【読み】
周く麾[さしまね]いて呼んで曰く、君登れり、と。周は、徧きなり。麾は、招くなり。○呼は、火故反。

鄭師畢登。壬午、遂入許。許莊公奔衛。奔不書、兵亂遁逃未知所在。
【読み】
鄭の師畢く登る。壬午[みずのえ・うま]、遂に許に入る。許の莊公衛に奔る。奔るを書さざるは、兵亂遁逃して未だ所在を知らざればなり。

齊侯以許讓公。公曰、君謂許不共。不共職貢。○共、音恭。
【読み】
齊侯許を以て公に讓る。公曰く、君許を共にせずと謂う。職貢を共にせざるなり。○共は、音恭。

故從君討之。許旣伏其罪矣。雖君有命、寡人弗敢與聞。乃與鄭人。
【読み】
故に君に從いて之を討つ。許旣に其の罪に伏せり。君命有りと雖も、寡人敢えて與り聞かず、と。乃ち鄭人に與う。

鄭伯使許大夫百里、奉許叔以居許東偏。許叔、許莊公之弟。東偏、東鄙也。○與、音預。
【読み】
鄭伯許の大夫百里をして、許叔を奉じて以て許の東偏に居らしむ。許叔は、許の莊公の弟。東偏は、東鄙なり。○與は、音預。

曰、天禍許國、鬼神實不逞于許君、而假手于我寡人。借手于我寡德之人以討許。
【読み】
曰く、天許國に禍いし、鬼神實に許君に逞[こころよ]からずして、手を我れ寡人に假れり。手を我が寡德の人に借りて以て許を討つなり。

寡人唯是一二父兄不能共億。父兄、同姓羣臣。共、給。億、安也。
【読み】
寡人唯是の一二の父兄も共億すること能わず。父兄は、同姓の羣臣。共は、給う。億は、安んずるなり。

其敢以許自爲功乎。寡人有弟、不能和協、而使餬其口於四方。弟、共叔段也。餬、鬻也。段出奔、在元年。
【読み】
其れ敢えて許を以て自ら功とせんや。寡人弟有るも、和協すること能わずして、其の口を四方に餬[こ]せしめり。弟は、共叔段なり。餬は、鬻[いく]なり。段の出奔は、元年に在り。

其況能久有許乎。吾子其奉許叔、以撫柔此民也。吾將使獲也佐吾子。獲、鄭大夫公孫獲。
【読み】
其れ況んや能く久しく許を有たんや。吾子其れ許叔を奉じて、以て此の民を撫柔せよ。吾れ將に獲をして吾子を佐けしめんとす。獲は、鄭の大夫公孫獲なり。

若寡人得沒于地、以壽終。
【読み】
若し寡人地に沒することを得て、壽を以て終うるなり。

天其以禮悔禍于許、言天加禮於許、而悔禍之。
【読み】
天其れ禮を以てして許に禍いせしを悔いば、言うこころは、天禮を許に加えて、之に禍いせしを悔ゆ。

無寧茲許公、復奉其社稷。無寧、寧也。茲、此也。○復、扶又反。又音服。
【読み】
無寧ぞ茲の許公、復其の社稷を奉ずるのみならんや。無寧は、寧ぞなり。茲は、此なり。○復は、扶又反。又音服。

唯我鄭國之有請謁焉、如舊昏媾、謁、告也。婦之父曰昏。重昏曰媾。
【読み】
唯我が鄭國の請謁有るに、舊昏媾の如くにして、謁は、告ぐるなり。婦の父を昏と曰う。重昏を媾と曰う。

其能降以相從也。降、降心也。
【読み】
其れ能く降して以て相從え。降は、心を降すなり。

無滋他族、實偪處此、以與我鄭國爭此土也。吾子孫其覆亡之不暇。而況能禋祀許乎。潔齊以享、謂之禋。祀、謂許山川之祀。
【読み】
他族を滋[しげ]らして、實に此に偪り處らせて、以て我が鄭國と此の土を爭わしむること無かれ。吾が子孫其れ覆亡も之れ暇あらず。而るを況んや能く許を禋祀[いんし]せんや。潔齊して以て享する、之を禋と謂う。祀は、許の山川の祀を謂う。

寡人之使吾子處此、不唯許國之爲、亦聊以固吾圉也。圉、邊埀也。○爲、于僞反。
【読み】
寡人の吾子をして此に處らしむるは、唯許國の爲のみならず、亦聊か以て吾が圉を固くせんとなり、と。圉は、邊埀なり。○爲は、于僞反。

乃使公孫獲處許西偏曰、凡而器用財賄、無寘於許。我死、乃亟去之。吾先君新邑於此、此今河南新鄭。舊鄭、在京兆。○寘、之豉反。
【読み】
乃ち公孫獲をして許の西偏に處らしめて曰く、凡そ而[なんじ]の器用財賄を、許に寘[お]くこと無かれ。我れ死なば、乃ち亟[すみ]やかに之を去れ。吾が先君新たに此に邑せしとき、此れ今の河南の新鄭なり。舊鄭は、京兆に在り。○寘は、之豉反。

王室而旣卑矣、周之子孫、日失其序。鄭、亦周之子孫。
【読み】
王室にして旣に卑く、周の子孫、日に其の序を失えり。鄭も、亦周の子孫なり。

夫許、大岳之胤也。大岳、神農之後。堯四岳也。胤、繼也。○大、音泰。
【読み】
夫れ許は、大岳の胤なり。大岳は、神農の後。堯の四岳なり。胤は、繼ぐなり。○大は、音泰。

天而旣厭周德矣。吾其能與許爭乎。
【読み】
天にして旣に周の德を厭えり。吾れ其れ能く許と爭わんや、と。

君子謂、鄭莊公於是乎有禮。禮、經國家、定社稷、序民人、利後嗣者也。許無刑而伐之、服而舍之、刑、法也。
【読み】
君子謂く、鄭の莊公是に於て禮有り。禮は、國家を經[おさ]め、社稷を定め、民人を序で、後嗣を利する者なり。許刑無くして之を伐ち、服して之を舍て、刑は、法なり。

度德而處之、量力而行之、相時而動、無累後人。我死、乃亟去之、無累後人。○度、待洛反。量、音良。相、息良反。
【読み】
德を度りて之を處し、力を量りて之を行い、時を相て動き、後人を累わすこと無し。我れ死なば、乃ち亟やかに之を去れとは、後人を累わすこと無きなり。○度は、待洛反。量は、音良。相は、息良反。

可謂知禮矣。
【読み】
禮を知れりと謂う可し、と。

鄭伯使卒出豭、行出犬雞、以詛射潁考叔者。百人爲卒、二十五人爲行。行亦卒之行列。疾射潁考叔者。故令卒及行閒皆詛之。○豭、音加。行、戶剛反。
【読み】
鄭伯卒をして豭[か]を出だし、行をして犬雞を出だして、以て潁考叔を射る者を詛[のろ]わしむ。百人を卒と爲し、二十五人を行と爲す。行も亦卒の行列なり。潁考叔を射る者を疾む。故に卒と行閒とをして皆之を詛わしむ。○豭は、音加。行は、戶剛反。

君子謂、鄭莊公失政刑矣。政以治民、刑以正邪。旣無德政、又無威刑。是以及邪。大臣不睦、又不能用刑於邪人。
【読み】
君子謂く、鄭の莊公政刑を失えり。政は以て民を治め、刑は以て邪を正す。旣に德政無く、又威刑無し。是を以て邪に及べり。大臣睦まず、又刑を邪人に用ゆること能わず。

邪而詛之、將何益矣。
【読み】
邪にして之を詛うとも、將何の益かあらん、と。

王取鄔・劉・二邑在河南緱氏縣、西南有鄔聚、西北有劉亭。○鄔、烏戶反。
【読み】
王鄔[お]・劉・二邑は河南の緱氏縣に在り、西南に鄔聚有り、西北に劉亭有り。○鄔は、烏戶反。

蔿・邘之田于鄭、蔿・邘、鄭二邑。○蔿、尤委反。邘、音于。
【読み】
蔿[い]・邘[う]の田を鄭に取りて、蔿・邘は、鄭の二邑なり。○蔿は、尤委反。邘は、音于。

而與鄭人蘇忿生之田、蘇忿生、周武王司寇、蘇公也。○忿、芳粉反。
【読み】
鄭人に蘇忿生の田、蘇忿生は、周の武王の司寇、蘇公なり。○忿は、芳粉反。

溫・今溫縣。
【読み】
溫・今の溫縣なり。

原・在沁水縣西。
【読み】
原・沁水縣の西に在り。

絺・在野王縣西南。○絺、勑之反。
【読み】
絺・野王縣の西南に在り。○絺は、勑之反。

樊・一名陽樊。野王縣西南有陽城。
【読み】
樊・一名は陽樊。野王縣の西南に陽城有り。

隰郕・在懷縣西南。
【読み】
隰郕[しゅうせい]・懷縣の西南に在り。

欑茅・在脩武縣北。○欑、才官反。
【読み】
欑茅[さんぼう]・脩武縣の北に在り。○欑は、才官反。

向・軹縣西有地、名向上。○向、音餉。
【読み】
向・軹[し]縣の西に地有り、向上と名づく。○向は、音餉[しょう]。

盟・今盟津。○盟、音孟。
【読み】
盟[もう]・今の盟津なり。○盟は、音孟。

州・今州縣。
【読み】
州・今の州縣なり。

陘・闕。○陘、音刑。
【読み】
陘・闕く。○陘は、音刑。

隤・在脩武縣北。○隤、徒囘反。
【読み】
隤[たい]・脩武縣の北に在り。○隤は、徒囘反。

懷。今懷縣。凡十二邑、皆蘇忿生之田。欑茅・隤、屬汲郡。餘皆屬河内。
【読み】
懷を與う。今の懷縣なり。凡そ十二邑は、皆蘇忿生の田なり。欑茅・隤は、汲郡に屬す。餘は皆河内に屬す。

君子是以知桓王之失鄭也。恕而行之、德之則也。禮之經也。己弗能有、而以與人。人之不至、不亦宜乎。蘇氏叛王、十二邑、王所不能有。爲桓五年從王伐鄭張本。
【読み】
君子是を以て桓王の鄭を失わんことを知れり。恕して之を行うは、德の則なり。禮の經なり。己有つこと能わずして、以て人に與う。人の至らざること、亦宜ならずや。蘇氏王に叛き、十二邑は、王の有すること能わざる所なり。桓五年王に從いて鄭を伐つ爲の張本なり。

鄭・息有違言。以言語相違恨。
【読み】
鄭・息違言有り。言語相違うことを以て恨む。

息侯伐鄭。鄭伯與戰于竟。息師大敗而還。息國、汝南新息縣。○竟、音境。
【読み】
息侯鄭を伐つ。鄭伯與に竟に戰う。息の師大いに敗れて還る。息國は、汝南新息縣。○竟は、音境。

君子是以知息之將亡也。不度德、鄭莊賢。○度、待洛反。
【読み】
君子是を以て息の將に亡びんとするを知れり。德を度らず、鄭の莊は賢なり。○度は、待洛反。

不量力、息國弱。
【読み】
力を量らず、息の國は弱し。

不親親、鄭・息同姓之國。
【読み】
親を親とせず、鄭・息は同姓の國なり。

不徵辭、不察有罪、言語相恨、當明徵其辭、以審曲直。不宜輕鬭。
【読み】
辭を徵さず、有罪を察せず、言語相恨みば、當に其の辭を明徵して、以て曲直を審らかにすべし。宜しく輕々しく鬭うべからず。

犯五不韙、而以伐人。其喪師也、不亦宜乎。韙、是也。○韙、韋鬼反。喪、息浪反。
【読み】
五つの不韙[ふい]を犯して、以て人を伐つ。其の師を喪えるや、亦宜ならずや。韙は、是なり。○韙は、韋鬼反。喪は、息浪反。

冬、十月、鄭伯以虢師伐宋。壬戌、大敗宋師、以報其入鄭也。入鄭在十年。
【読み】
冬、十月、鄭伯虢の師を以て宋を伐つ。壬戌[みずのえ・いぬ]、大いに宋の師を敗り、以て其の鄭に入りしに報ゆるなり。鄭に入るは十年に在り。

宋不告命。故不書。
【読み】
宋命を告げず。故に書さず。

凡諸侯有命、告則書。不然則否。命者、國之大事政令也。承其告辭、史乃書之于策。若所傳聞行言、非將君命、則記在簡牘而已。不得記於典策。此蓋周禮之舊制。
【読み】
凡そ諸侯命有りて、告ぐれば則ち書す。然らざれば則ち否せず。命は、國の大事政令なり。其の告辭を承けて、史乃ち之を策に書す。傳聞する所の行言の、君命を將[おこな]うに非ざるが若きは、則ち記して簡牘に在るのみ。典策に記することを得ず。此れ蓋し周禮の舊制ならん。

師出臧否、亦如之。臧否、謂善惡得失也。滅而告敗、勝而告克。此皆互言。不須兩告乃書。○否、音鄙。又方九反。
【読み】
師の出づる臧否[ぞうひ]も、亦之の如けん。臧否は、善惡得失を謂うなり。滅びて敗を告げ、勝ちて克を告ぐ。此れ皆互いに言う。兩告を須ちて乃ち書さず。○否は、音鄙。又方九反。

雖及滅國、滅不告敗、勝不告克、不書于策。
【読み】
國を滅ぼすに及ぶと雖も、滅びて敗を告げず、勝ちて克を告げざれば、策に書さず。

羽父請殺桓公。將以求大宰。大宰、官名。○大、音泰。
【読み】
羽父桓公を殺さんと請う。將に以て大宰を求めんとす。大宰は、官の名。○大は、音泰。

公曰、爲其少故也。吾將授之矣。授桓位。○爲、于僞反。少、詩照反。
【読み】
公曰く、其の少[わか]きが爲の故なり。吾れ將に之に授けんとす。桓に位を授く。○爲は、于僞反。少は、詩照反。

使營菟裘、吾將老焉。菟裘、魯邑。在泰山梁父縣南。不欲復居魯朝。故別營外邑。○菟、兔都反。
【読み】
菟裘[ときゅう]を營ましめて、吾れ將に老いんとす、と。菟裘は、魯の邑。泰山梁父縣の南に在り。復魯の朝に居ることを欲せず。故に別に外邑を營むなり。○菟は、兔都反。

羽父懼、反譖公于桓公、而請弒之。
【読み】
羽父懼れて、反って公を桓公に譖りて、之を弒せんと請う。

公之爲公子也、與鄭人戰于狐壤、止焉。内諱獲。故言止。狐壤、鄭地。○譖、側鴆反。
【読み】
公之公子爲りしや、鄭人と狐壤に戰いて、止めらる。内獲らるるを諱む。故に止めらると言う。狐壤は、鄭の地。○譖は、側鴆反。

鄭人囚諸尹氏。尹氏、鄭大夫。
【読み】
鄭人諸を尹氏に囚う。尹氏は、鄭の大夫。

賂尹氏、而禱於其主鍾巫、主、尹氏所主祭。
【読み】
尹氏に賂して、其の主鍾巫に禱り、主は、尹氏が主祭する所なり。

遂與尹氏歸、而立其主。立鍾巫於魯。
【読み】
遂に尹氏と歸りて、其の主を立つ。鍾巫を魯に立つ。

十一月、公祭鍾巫、齊于社圃、社圃、園名。○圃、布古反。
【読み】
十一月、公鍾巫に祭らんとし、社圃に齊し、社圃は、園の名。○圃は、布古反。

館于寪氏。館、舍也。寪氏、魯大夫。○寪、于委反。
【読み】
寪氏[いし]に館[やど]る。館は、舍[やど]るなり。寪氏は、魯の大夫。○寪は、于委反。

壬辰、羽父使賊弒公于寪氏、立桓公、而討寪氏。有死者。欲以弑君之罪、加寪氏。而復不能正法誅之。傳言進退無據。
【読み】
壬辰[みずのえ・たつ]、羽父賊をして公を寪氏に弒せしめ、桓公を立てて、寪氏を討つ。死する者有り。君を弑するの罪を以て、寪氏に加えんと欲す。而れども復法を正して之を誅すること能わず。傳進退據るところ無きを言う。

不書葬、不成喪也。桓弑隱簒立。故喪禮不成也。
【読み】
葬を書さざるは、喪を成さざればなり。桓隱を弑して簒立す。故に喪禮成らず。


音義拾遺 穆本載陸氏音義、大抵在難字轉音、不出全文。今附其遺者于每卷之末、始爲完物。
【読み】
音義拾遺 穆本に陸氏の音義を載する、大抵難字轉音在れども、全文を出ださず。今其の遺れる者を每卷の末に附して、始めて完物にす。

隱公
傳。元妃。芳非反。傳曰、嘉耦曰妃。始娶。七住反。娣媵。以證反。又繩證反。尙少。詩照反。大子。舊太字皆作大。後大子皆放此。爲經元年。于僞反。後凡爲經爲傳張本起本之例皆放此。更不音。
經元年。儀父。音甫。凡人名字皆放此。繼好。呼報反。鄒縣。側留反。卞縣。皮彥反。本或作弁。不弟。音悌。又如字。儁傑。音俊。下音桀。宛陵。於阮反。又於元反。稱使。如字。又所吏反。
傳。與盟。如字。又音預。皆放。甫往反。後此例皆同。娶于。取住反。共叔。音恭。凡國名・地名・人名字氏族、皆不重音、疑者復出、後放此。鄂。五各反。嚴。五銜反。本又作巖。○鼎按今本巖。復然。扶又反。過百。古臥反。後不音者皆同。曰堵。丁古反。徑三。古定反。滋蔓。音萬。自斃。婢世反。本又作弊。舊扶設反。具卒。尊忽反。注及下同。汲郡。居及反。不弟。大計反。又如字。遂寘。置也。封疆。居良反。不啜。川悅反。融融。羊弓反。傳見。賢遍反。下三見同。負蠜。一音盤。陝縣。依字作陝。
經二年。譙國。在遙反。將卑。子匠反。紀裂。音列。卿爲。于僞反。下爲魯同。以別。彼列反。
傳。

經三年。殯。必刃反。不共。音恭。本又作供。音同。致令。力呈反。不復。扶又反。
傳。隱見。賢遍反。以別。彼列反。閒之。閒廁之閒。澗谿。苦兮反。沼。之紹反。畤。音止。本又作沚。音市。○今本亦沚。蘋。音頻。蘩。音煩。藻。音早。行潦。音老。盟約。如字。又於妙反。行葦。于鬼反。以共。音恭。以歿。音沒。○今本沒。奉馮。本亦作憑。商頌。似用反。是何。本又作荷。○今本亦荷。任何。音壬。忿而。芳粉反。必傳。直專反。而好。呼報反。弗禁。居鴆反。一音金。惡之。烏路反。於邪。似嗟反。下同。夫寵。音扶。發句之端。後放此。不憾。本又作感同。弑其。音試。
經四年。弑其。本又作殺。同音試。凡弑君之例皆放此。可以意求。不重音。君完。音丸。
傳。諸簒。初患反。不復。扶又反。下文復伐同。王覲。其靳反。見也。朝陳。直遙反。後不出皆放此。褊小。必淺反。一音必殄反。耄矣。莫報反。請涖。音類。
經五年。將卑。子匠反。二嫡。丁歷反。爲別。于僞反。螟。亡丁反。
傳。觀魚者。本亦作魚者。秋獮。說文作■(上が獮、下が土)。穀梁傳云、春曰田、夏曰蒐。冬狩。手又反。蒐索。所白反。不孕。以證反。爲苗。于僞反。振旅。之愼反。猶復。扶又反。下同。器械。戶戒反。辨等。如字。又方免反。別也。行伍。戶郎反。長。丁丈反。下注同。鳥獸之肉。一本作其肉。於俎。莊呂反。臣輿。音餘。雜猥。烏罪反。捕魚。音步。一音搏。他竟。音境。傳見。賢遍反。一本作具。○今本又具。衛牧。州牧之牧。徐音目。以燕。於賢反。曼伯。音萬。剛父。音甫。匏。白交反。蹈之。徒報反。而僭。子念反。爲道。本亦作導。
經六年。
傳。
狐壤。如掌反。使者。所吏反。之長。丁丈反。下文及注同。諸鄂。五各反。不復。扶又反。下同。子佗。徒河反。人名皆同。之燎。力召反。又力弔反。郷邇。本又作嚮。同許亮反。郷近。附近之近。可撲。普卜反。周任。音壬。請糴。直歷反。傳見。賢遍反。雍縣。於用反。左右。音佐。下音佑。又竝如字。
經七年。與嫡。本又作適。同丁歷反。琅邪。音郎。臨沂。魚依反。共縣。音恭。汎城。音凡。○今本凡。之使。所吏反。下同。見夷。賢遍反。戰陳。直覲反。
傳。繼好。呼報反。注同。爲援。于眷反。鄭復。扶又反。政治。直吏反。爲鄭。于僞反。
經八年。繼好。呼報反。宿與盟。音預。下不與同。禱河。丁老反。或丁報反。邳來閒。如字。小斂。力驗反。
傳。泰山。如字。東岳。能復。扶又反。巡守。手又反。○今本狩。所近。附近之近。下同。又如字。欲爲。于僞反。下爲魯同。遂畀。必二反。誣其。亡符反。莊共。音恭。本又作恭。不與。音預。而背。音佩。紀好。呼報反。注同。嬀汭。如銳反。
經九年。震電。徒練反。華縣。戶化反。
傳。雨霖。音林。爾雅云、久雨謂之淫。淫雨謂之霖。不共。音恭。本亦作供。下同。宋使。所吏反。注同。故復。扶亦反。以逞。勑領反。解也。音蟹。或佳賣反。三處。昌慮反。後駐。丁住反。將令。力呈反。
經十年。去氏。起呂反。傳同。未陳。直覲反。取郜。字林、工竺反。易也。以豉反。傳注同。
傳。饔餼。許氣反。
經十一年。薛侯。息列反。郲。音來。
傳。爭長。丁丈反。下注及文同。夏所。戶雅反。挾。音協。孤。音胡。周麾。許危反。又許僞反。周徧。音遍。遁逃。徒頓反。不共。音恭。本亦作供。音同。共億。於力反。餬其。音胡。鬻。本又作粥。之育反。又與六反。以壽。如字。又音授。昏媾。古豆反。重昏。直龍反。覆亡。芳服反。不暇。行嫁反。禋祀。音因。潔齊。側皆反。本亦作齋。吾圉。魚呂反。財賄。呼罪反。字林、音悔。乃亟。紀力反。急也。下注同。旣厭。於豔反。無累。劣僞反。注同。使卒。尊忽反。注同。出豭。豭別名。以詛。側慮反。故令。力呈反。正邪。似嗟反。下及注同。緱氏。古侯反。一音苦候反。鄔聚。才遇反。在沁。七浸反。字林、先衽反。郭僕三蒼解詁、音狗沁之沁。沈文何、疏鴆反。韋昭、思金反。水名。樊。扶袁反。隰。詳立反。郕。尙征反。軹縣。音紙。鄎。音息。一本作息。○今本亦息。傳聞。直專反。菟裘。音求。梁父。音甫。復居。扶又反。下同。請殺。音試。下同。一音如字。○今本弑。賂尹氏。音路。而禱。丁老反。或多報反。鐘巫。亡夫反。齊于。側皆反。○按泰山如字。狗沁之沁竝未考。

春秋左氏傳校本第二

桓公 起元年盡十八年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

桓公 名、軌。惠公之子。隱公之弟。母仲子。史記、亦名允。謚法、辟土服遠曰桓。
【読み】
桓公 名は、軌。惠公の子。隱公の弟。母は仲子。史記に、亦名は允、と。謚法に、土を辟き遠きを服するを桓と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王正月、公卽位。嗣子位、定於初喪。而改元必須踰年者、繼父之業、成父之志、不忍有變於中年也。諸侯每首歲、必有禮於廟。諸遭喪繼位者、因此而改元正位、百官以序。故國史亦書卽位之事於策。桓公簒立、而用常禮、欲自同於遭喪繼位者。釋例論之備矣。○簒、初患反。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。嗣子の位は、初喪に定まる。而るを元を改むるは必ず年を踰ゆるを須つ者は、父の業を繼ぎ、父の志を成すこと、中年に變ずること有るに忍びざればなり。諸侯首歲每に、必ず廟に禮有り。諸々喪に遭いて位を繼ぐ者、此に因りて元を改め位を正し、百官以て序ず。故に國史も亦卽位の事を策に書すなり。桓公簒立して、常禮を用ゆるは、自ら喪に遭い位を繼ぐ者に同じくせんと欲するなり。釋例之を論ずること備われり。○簒は、初患反。

三月、公會鄭伯于垂。鄭伯以璧假許田。夏、四月、丁未、公及鄭伯盟于越。公以簒立而修好於鄭。鄭因而迎之、成禮于垂、終易二田、然後結盟。垂、犬丘。衛地也。越、近垂地名。鄭求祀周公。魯聽受祊田、令鄭廢泰山之祀。知其非禮。故以璧假爲文。時之所隱。○祊、百庚反。
【読み】
三月、公鄭伯に垂に會す。鄭伯璧を以て許の田を假る。夏、四月、丁未[ひのと・ひつじ]、公鄭伯と越に盟う。公簒立するを以て好を鄭に修む。鄭因りて之を迎え、禮を垂に成し、終に二田を易えて、然して後に盟を結ぶ。垂は、犬丘。衛の地なり。越は、垂に近き地の名。鄭周公を祀らんことを求む。魯聽[ゆる]して祊[ほう]の田を受け、鄭をして泰山の祀を廢せしむ。其の禮に非ざるを知る。故に璧假を以て文を爲す。時の隱す所なり。○祊は、百庚反。

秋、大水。書災也。傳例曰、凡平原出水爲大水。
【読み】
秋、大水あり。災いを書すなり。傳例に曰く、凡そ平原水を出だすを大水とす、と。

冬、十月。迎之、迎其意。且乘其有惡也。因佯言、以祊之稅賦、供周公之祀。故傳曰、爲周公祊故也。言爲欲祀周公、又以祊與魯故也。然此傳文頗難
【読み】
冬、十月。之を迎うとは、其の意を迎うるなり。且つ其の惡有るに乘ずるなり。因佯言う、祊の稅賦を以て、周公の祀に供す、と。故に傳に曰く、周公と祊との爲の故なり、と。言うこころは、周公を祀り、又祊を以て魯に與えんと欲するが爲の故なり。然れども此の傳文頗る說き難し。

〔傳〕元年、春、公卽位、修好于鄭。鄭人請復祀周公、卒易祊田。事在隱八年。○復、扶又反。
【読み】
〔傳〕元年、春、公位に卽いて、好を鄭に修む。鄭人復周公を祀り、卒に祊の田を易えんと請う。事は隱八年に在り。○復は、扶又反。

公許之。三月、鄭伯以璧假許田、爲周公祊故也。魯不宜聽鄭祀周公。又不宜易取祊田。犯二不宜以動。故隱其實、不言祊、稱璧假、言若進璧以假田、非久易也。○爲、于僞反。
【読み】
公之を許す。三月、鄭伯璧を以て許の田を假るとは、周公と祊との爲の故なり。魯は鄭の周公を祀るを聽す宜からず。又祊の田を易え取る宜からず。二つの不宜を犯して以て動く。故に其の實を隱して、祊を言わずして、璧假を稱するは、言うこころは、璧を進めて以て田を假る、久しく易うるに非ざるが若くす。○爲は、于僞反。

夏、四月、丁未、公及鄭伯盟于越、結祊成也。結成易二田之事也。傳以經不書祊、故獨見祊。○見、賢遍反。
【読み】
夏、四月、丁未[ひのと・ひつじ]、公鄭伯と越に盟うは、祊の成れるを結ぶなり。二田を易うることを成すの事を結ぶなり。傳經に祊を書さざるを以て、故に獨り祊を見すなり。○見は、賢遍反。

盟曰、渝盟無享國。渝、變也。
【読み】
盟いて曰く、盟を渝[か]えば國を享くること無けん、と。渝は、變なり

秋、大水。
【読み】
秋、大水あり。

凡平原出水爲大水。廣平曰原。
【読み】
凡そ平原水を出だすを大水とす。廣平を原と曰う。

冬、鄭伯拜盟。鄭伯若自來、則經不書。若遣使、則當言鄭人、不得稱鄭伯。疑謬誤。
【読み】
冬、鄭伯盟を拜す。鄭伯若し自ら來るとすれば、則ち經に書さず。若し使いを遣らば、則ち當に鄭人と言うべく、鄭伯と稱することを得ず。疑うらくは謬誤ならん。

宋華父督見孔父之妻于路。華父督、宋戴公孫也。孔父嘉、孔子六世祖。○華、戶化反。
【読み】
宋の華父督孔父の妻を路に見る。華父督は、宋の戴公の孫なり。孔父嘉は、孔子六世の祖。○華は、戶化反。

目逆而送之。曰、美而豔。色美曰豔。○豔、以贍反。○此傳先經以著其事。一說、色美而治曰艷。色以質言、艷以神言。杜引毛傳、未是。
【読み】
目逆[むか]えて之を送る。曰く、美にして豔[えん]なり、と。色美なるを豔と曰う。○豔は、以贍反。○此の傳經に先だちて以て其の事を著す。一說に、色美にして治まれるを艷と曰う。色は質を以て言い、艷は神を以て言う。杜毛傳を引くは、是ならず。


〔經〕二年、春、王正月、戊申、宋督弑其君與夷、及其大夫孔父。稱督以弑、罪在督也。孔父稱名者、内不能治其閨門、外取怨於民、身死而禍及其君。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月、戊申[つちのえ・さる]、宋の督其の君與夷を弑して、其の大夫孔父に及ぶ。督を稱して以て弑するは、罪督に在るなり。孔父名を稱するは、内其の閨門を治むること能わず、外怨みを民に取り、身死して禍い其の君に及べばなり。

滕子來朝。無傳。隱十一年稱侯、今稱子者、蓋時王所黜。
【読み】
滕子來朝す。傳無し。隱十一年に侯と稱し、今子と稱するは、蓋し時の王の黜くる所ならん。

三月、公會齊侯・陳侯・鄭伯于稷、以成宋亂。成、平也。宋有弑君之亂。故爲會、欲以平之。稷、宋地。
【読み】
三月、公齊侯・陳侯・鄭伯に稷に會して、以て宋の亂を成[たい]らぐ。成は、平らぐなり。宋君を弑するの亂有り。故に會を爲して、以て之を平らげんと欲す。稷は、宋の地。

夏、四月、取郜大鼎于宋。戊申、納于大廟。宋以鼎賂公。大廟、周公廟也。始欲平宋之亂、終於受賂。故備書之。戊申、五月十日。○郜、古報反。大、音泰。
【読み】
夏、四月、郜[こう]の大鼎を宋に取る。戊申[つちのえ・さる]、大廟に納る。宋鼎を以て公に賂う。大廟は、周公の廟なり。宋の亂を平げんと欲するに始まり、賂を受くるに終わる。故に備に之を書す。戊申は、五月十日。○郜は、古報反。大は、音泰。

秋、七月、杞侯來朝。公卽位而來朝。
【読み】
秋、七月、杞侯來朝す。公位に卽いて來朝す。

蔡侯・鄭伯會于鄧。潁川召陵縣西南有鄧城。
【読み】
蔡侯・鄭伯鄧に會す。潁川召陵縣の西南に鄧城有り。

九月、入杞。不稱主帥、微者也。弗地曰入。○帥、所類反。或作師。
【読み】
九月、杞に入る。主帥を稱せざるは、微者なればなり。地もたざるを入ると曰う。○帥は、所類反。或は師に作る。

公及戎盟于唐。冬、公至自唐。傳例曰、告于廟也。特相會。故致地也。凡公行、還不書至者、皆不告廟也。隱不書至、謙不敢自同於正君、書勞策勳。
【読み】
公戎と唐に盟う。冬、公唐より至る。傳例に曰く、廟に告ぐるなり、と。特りずつ相會す。故に地を致すなり。凡そ公の行、還るに至るを書さざるは、皆廟に告げざればなり。隱至るを書さざるは、謙して敢えて自ら正君に同じくして、勞を書し勳を策せざるなり。

〔傳〕二年、春、宋督攻孔氏、殺孔父而取其妻。公怒。督懼、遂弑殤公。君子以督爲有無君之心、而後動於惡。雖有君、若無也。
【読み】
〔傳〕二年、春、宋の督孔氏を攻め、孔父を殺して其の妻を取る。公怒る。督懼れ、遂に殤公を弑す。君子督を以て君を無するの心有りて、而して後に惡に動くとす。君有りと雖も、無きが若し。

故先書弑其君。
【読み】
故に先ず其の君を弑すと書す。

會于稷、以成宋亂。爲賂故、立華氏也。經稱平宋亂者、蓋以魯君受賂立華氏、貪縱之甚、惡其指斥。故遠言始與齊・陳・鄭爲會之本意也。傳言爲賂故立華氏、明經本書平宋亂、爲公諱。諱在受賂立華氏也。猶璧假許田、爲周公祊故。所謂婉而成章。督未死而賜族、督之妄也。○爲賂、于僞反。
【読み】
稷に會して、以て宋の亂を成[たい]らげんとす。賂の爲の故に、華氏を立てり。經に宋の亂を平らぐと稱するは、蓋し魯君賂を受けて華氏を立つ、貪縱の甚だしきを以て、其の指斥を惡む。故に遠く始めに齊・陳・鄭と會を爲すの本意を言うなり。傳に賂の爲の故に華氏を立つと言うは、經に本宋の亂を平らぐと書すは、公の爲に諱むことを明かすなり。諱むるは賂を受けて華氏を立つるに在り。猶璧もて許の田を假るは、周公と祊との爲の故なりというがごとし。所謂婉にして章を成すなり。督未だ死せずして族を賜うは、督の妄なり。○爲賂は、于僞反。

宋殤公立、十年十一戰。殤公以隱四年立。十一戰、皆在隱公世。
【読み】
宋の殤公立ちて、十年に十一戰す。殤公隱が四年を以て立つ。十一戰は、皆隱公の世に在り。

民不堪命。孔父嘉爲司馬、督爲大宰。故因民之不堪命、先宣言曰、司馬則然。言公之數戰、則司馬使爾。嘉、孔父字。○數、音朔。
【読み】
民命に堪えず。孔父嘉司馬爲り、督大宰爲り。故に民の命に堪えざるに因りて、先ず宣言して曰く、司馬則ち然らん、と。言うこころは、公の數々戰うは、則ち司馬爾[しか]らしむ、と。嘉は、孔父の字。○數は、音朔。

已殺孔父、而弑殤公、召莊公于鄭而立之、以親鄭。莊公、公子馮也。隱三年、出居于鄭。馮入宋不書、不告也。○馮、皮氷反。
【読み】
已に孔父を殺して、殤公を弑し、莊公を鄭より召して之を立てて、以て鄭を親しむ。莊公は、公子馮なり。隱の三年、出でて鄭に居る。馮の宋に入るを書さざるは、告げざればなり。○馮は、皮氷反。

以郜大鼎賂公。郜國所造器也。故繫名於郜。濟陰成武縣東南有北郜城。
【読み】
郜の大鼎を以て公に賂う。郜國造る所の器なり。故に名を郜に繫く。濟陰成武縣の東南に北郜城有り。

齊・陳・鄭皆有賂。故遂相宋公。
【読み】
齊・陳・鄭皆賂有り。故に遂に宋公を相[たす]く。

夏、四月、取郜大鼎于宋、戊申、納于大廟。非禮也。
【読み】
夏、四月、郜の大鼎を宋に取り、戊申[つちのえ・さる]、大廟に納る。禮に非ざるなり。

臧哀伯諫曰、臧哀伯、魯大夫。僖伯之子。
【読み】
臧哀伯[ぞうあいはく]諫めて曰く、臧哀伯は、魯大夫。僖伯の子。

君人者、將昭德塞違、以臨照百官、猶懼或失之。故昭令德以示子孫。是以淸廟茅屋、以茅飾屋、著儉也。淸廟、肅然淸靜之稱也。○稱、尺證反。
【読み】
人に君たる者は、將に德を昭らかにし違えるを塞ぎ、以て百官を臨照せんとするも、猶或は之を失わんことを懼る。故に令德を昭らかにして以て子孫に示す。是を以て淸廟は茅屋、茅を以て屋を飾るは、儉を著すなり。淸廟は、肅然淸靜の稱なり。○稱は、尺證反。

大路越席、大路、玉路。祀天車也。越席、結草。○越、戶括反。
【読み】
大路は越席、大路は、玉路。天を祀るの車なり。越席は、草を結べるなり。○越は、戶括反。

大羹不致、大羹、肉汁。不致五味。
【読み】
大羹は致さず、大羹は、肉汁。五味を致さず。

粢食不鑿、黍稷曰粢。不精鑿。○粢、音咨。食、音嗣。鑿、子洛反。精米也。字林作毇。子沃反。云、糲米一斛、舂爲八斗。
【読み】
粢食は鑿せざるは、黍稷を粢と曰う。精鑿せざるなり。○粢は、音咨。食は、音嗣。鑿は、子洛反。精米なり。字林に毇[さく]に作る。子沃反。云う、糲米一斛は、舂八斗爲り、と。

昭其儉也。此四者皆示儉。
【読み】
其の儉を昭らかにするなり。此の四つの者は皆儉を示すなり。

袞・冕・黻・珽、袞、畫衣也。冕、冠也。黻、韋韠。以蔽膝也。珽、玉笏也。若今吏之持簿。○珽、他頂反。韠、音必。簿、步古反。徐廣云、持簿、手板也。
【読み】
袞[こん]・冕[べん]・黻[ふつ]・珽[てい]、袞は、畫衣なり。冕は、冠なり。黻は、韋韠[いひつ]。以て膝を蔽うなり。珽は、玉笏なり。今の吏の持簿の若し。○珽は、他頂反。韠は、音必。簿は、步古反。徐廣云う、持簿は、手板、と。

帶・裳・幅・舄、帶、革帶也。衣下曰裳。幅、若今行縢者。舄、複履。○幅、音逼。縢、徒登反。複、音福。
【読み】
帶・裳・幅・舄[せき]、帶は、革帶なり。衣の下を裳と曰う。幅は、今の行縢の若き者。舄は、複履。○幅は、音逼。縢は、徒登反。複は、音福。

衡・紞・紘・綖、衡、維持冠者。紞、冠之垂者。紘、纓從下而上者。綖、冠上覆。○紞、多敢反。紘、獲耕反。綖、音延。字林、弋善反。
【読み】
衡・紞[たん]・紘・綖は、衡は、冠を維持する者。紞は、冠の垂るる者。紘は、纓[えい]の下よりして上る者。綖は、冠上の覆い。○紞は、多敢反。紘は、獲耕反。綖は、音延。字林に、弋善反、と。

昭其度也。尊卑各有制度。
【読み】
其の度を昭らかにするなり。尊卑各々制度有り。

藻率・鞞鞛、藻率、以韋爲之。所以藉玉也。王五采、公侯伯三采、子男二采。鞞、佩刀削上飾。鞛、下飾。○率、劣反。鞞、補頂反。鞛、布孔反。削、仙妙反。
【読み】
藻率・鞞鞛[へいほう]、藻率は、韋を以て之を爲る。玉に藉[し]く所以なり。王は五采、公侯伯は三采、子男は二采。鞞は、佩刀の削の上飾り。鞛は、下飾り。○率は、劣反。鞞は、補頂反。鞛は、布孔反。削は、仙妙反。

鞶・厲・游・纓、鞶、紳帶也。一名大帶。厲、大帶之垂者。游、旌旗之遊。纓、在馬膺前。如索帬。○鞶、步干反。游、音留。索、悉各反。
【読み】
鞶・厲・游・纓[えい]は、鞶は、紳帶なり。一に大帶と名づく。厲は、大帶の垂るる者。游は、旌旗の遊。纓は、馬膺の前に在り。索帬[さくぐん]の如し。○鞶は、步干反。游は、音留。索は、悉各反。

昭其數也。尊卑各有數。
【読み】
其の數を昭らかにするなり。尊卑各々數有り。

火・龍・黼・黻、火、畫火也。龍、畫龍也。白與黑謂之黼。形若斧。黑與靑謂之黻。兩己相戾。
【読み】
火・龍・黼[ふ]・黻[ふつ]は、火は、火を畫くなり。龍は、龍を畫くなり。白と黑と之を黼と謂う。形は斧の若し。黑と靑と之を黻と謂う。兩己相戾るなり。

昭其文也。以文章明貴賤。
【読み】
其の文を昭らかにするなり。文章を以て貴賤を明らかにするなり。

五色比象、昭其物也。車服器械之有五色、皆以比象天地四方、以示器物不虛設。○比、幷是反。
【読み】
五色比象は、其の物を昭らかにするなり。車服器械の五色有るは、皆以て天地四方に比象して、以て器物の虛しく設けざるを示すなり。○比は、幷是反。

鍚・鸞・和・鈴、昭其聲也。鍚、在馬額。鸞、在鑣。和、在衡。鈴、在旂。動皆有鳴聲。○錫、音楊。馬面當盧。
【読み】
鍚[よう]・鸞[らん]・和・鈴は、其の聲を昭らかにするなり。鍚は、馬額に在り。鸞は、鑣[ひょう]に在り。和は、衡に在り。鈴は、旂[き]に在り。動けば皆鳴聲有り。○錫は、音楊。馬面の當盧。

三辰旂旗、昭其明也。三辰、日・月・星也。畫於旂旗、象天之明。
【読み】
三辰旂旗[きき]は、其の明を昭らかにするなり。三辰は、日・月・星なり。旂旗に畫いて、天の明を象るなり。

夫德儉而有度、登降有數。登降、謂上下尊卑。
【読み】
夫德儉にして度有り、登降數有り。登降は、上下尊卑を謂う。

文物以紀之、聲明以發之、以臨照百官。百官於是乎戒懼、而不敢易紀律。
【読み】
文物以て之を紀し、聲明以て之を發して、以て百官に臨照す。百官是に於て戒懼して、敢えて紀律を易えず。

今滅德立違、謂立華督違命之臣。
【読み】
今德を滅ぼし違えるを立てて、華督命に違うの臣を立つるを謂うなり。

而寘其賂器於大廟、以明示百官。百官象之、其又何誅焉。國家之敗、由官邪也。官之失德、寵賂章也。郜鼎在廟。章孰甚焉。武王克商、遷九鼎于雒邑、九鼎、殷所受夏九鼎也。武王克商、乃營雒邑而後去之、又遷九鼎焉。時但營雒邑、未有都城。至周公乃卒營雒邑。謂之王城。卽今河南城也。故傳曰成王定鼎于郟鄏。○雒、音洛。
【読み】
其の賂器を大廟に寘[お]いて、以て百官に明示す。百官之に象るとも、其れ又何をか誅[せ]めん。國家の敗るるは、官の邪なるに由れり。官の德を失うは、寵賂章らかなればなり。郜鼎廟に在り。章孰れか焉より甚だしからん。武王商に克ちて、九鼎を雒邑[らくゆう]に遷せしも、九鼎は、殷の夏に受くる所の九鼎なり。武王商に克ち、乃ち雒邑を營じて而して後に之を去り、又九鼎を遷す。時に但雒邑を營じて、未だ都城有らず。周公に至りて乃ち卒に雒邑を營ず。之を王城と謂う。卽ち今の河南城なり。故に傳に成王鼎を郟鄏[こうじょく]に定むと曰う。○雒は、音洛。

義士猶或非之。蓋伯夷之屬。
【読み】
義士猶或は之を非[そし]れり。蓋し伯夷の屬ならん。

而況將昭違亂之賂器於大廟。其若之何。
【読み】
而るを況んや將に違亂の賂器を大廟に昭らかにせんとするをや。其れ之を若何、と。

公不聽。
【読み】
公聽かず。

周内史聞之曰、臧孫達其有後於魯乎。君違不忘諫之以德。内史、周大夫官也。僖伯諫隱觀魚、其子哀伯諫桓納鼎。積善之家、必有餘慶。故曰其有後於魯。
【読み】
周の内史之を聞いて曰く、臧孫達は其れ魯に後有らんか。君違いて之を諫むるに德を以てするを忘れず、と。内史は、周の大夫の官なり。僖伯隱の魚を觀るを諫め、其の子哀伯桓の鼎を納るるを諫む。積善の家には、必ず餘慶有り。故に其れ魯に後有らんかと曰う。

秋、七月、杞侯來廟。不敬。杞侯歸。乃謀伐之。
【読み】
秋、七月、杞侯來廟す。不敬なり。杞侯歸る。乃ち之を伐たんことを謀る。

蔡侯・鄭伯會于鄧、始懼楚也。楚國、今南郡江陵縣北、紀南城也。楚武王始僭號稱王、欲害中國。蔡・鄭、姬姓近楚。故懼而會謀。
【読み】
蔡侯・鄭伯鄧に會するは、始めて楚を懼るるなり。楚國は、今の南郡江陵縣の北、紀の南城なり。楚の武王始めて僭號して王と稱し、中國を害せんと欲す。蔡・鄭は、姬姓にして楚に近し。故に懼れて會し謀る。

九月、入杞、討不敬也。
【読み】
九月、杞に入るは、不敬を討ずるなり。

公及戎盟于唐、脩舊好也。惠・隱之好。
【読み】
公戎と唐に盟うは、舊好を脩むるなり。惠・隱の好なり。

冬、公至自唐、告于廟也。
【読み】
冬、公唐より至るとは、廟に告ぐればなり。

凡公行、告于宗廟。反行飮至、舍爵策勳焉。禮也。爵、飮酒器也。旣飮置爵、則書勳勞於策。言速紀有功也。○舍、音赦。置也。舊音捨。
【読み】
凡そ公の行、宗廟に告ぐ。行より反れば飮至し、爵を舍[お]き勳を策す。禮なり。爵は、飮酒の器なり。旣に飮んで爵を置くは、則ち勳勞を策に書す。速やかに有功を紀すを言うなり。○舍は、音赦。置くなり。舊音捨。

特相會、往來稱地。讓事也。特相會、公與一國會也。會必有主。二人獨會、則莫肯爲主。兩讓會事不成。故但書地。
【読み】
特りずつ相會するは、往來地を稱す。事を讓るなり。特りずつ相會すとは、公一國と會するなり。會には必ず主有り。二人獨會すれば、則ち肯えて主と爲ること莫し。兩りながら讓りて會事成らず。故に但地を書す。

自參以上、則往稱地、來稱會。成事也。成會事。○參、七南反。一音三。
【読み】
參より以上は、則ち往くに地を稱し、來るに會を稱す。事を成せばなり。會事を成す。○參は、七南反。一に音三。

初、晉穆侯之夫人姜氏、以條之役生大子。命之曰仇。條、晉地。大子、文侯也。意取於戰相仇怨。
【読み】
初め、晉の穆侯の夫人姜氏、條の役を以て大子を生む。之を命[な]づけて仇と曰う。條は、晉の地。大子は、文侯なり。意、戰は相仇怨するに取る。

其弟以千畝之戰生。命之曰成師。桓叔也。西河界休縣南有地、名千畝。意取能成其衆。
【読み】
其の弟千畝の戰を以て生まる。之を命づけて成師と曰う。桓叔なり。西河界休縣の南に地有り、千畝と名づく。意、能く其の衆を成すに取る。

師服曰、異哉君子之名子也。師服、晉大夫。
【読み】
師服曰く、異なるかな君子の子に名づくるや。師服は、晉の大夫。

夫名以制義、名之必可言也。
【読み】
夫れ名は以て義を制し、之を名づくること必ず言を可くす。

義以出禮、禮從義出。
【読み】
義以て禮を出だし、禮は義より出づ。

禮以體政、政以禮成。
【読み】
禮以て政を體し、政は禮を以て成る。

政以正民。是以政成而民聽。易則生亂。反易禮義、則亂生也。
【読み】
政以て民を正す。是を以て政成りて民聽く。易うるときは則ち亂を生ず。禮義に反易すれば、則ち亂生ずるなり。

嘉耦曰妃、怨耦曰仇。古之命也。自古有此言。○耦、五口反。妃、芳非反。
【読み】
嘉耦を妃と曰い、怨耦を仇と曰う。古の命なり。古より此の言有り。○耦は、五口反。妃は、芳非反。

今君命大子曰仇、弟曰成師。始兆亂矣。兄其替乎。穆公愛少子桓叔。倶取於戰、以爲名、所附意異。故師服知桓叔之黨、必盛於晉、以傾宗國。故因名以諷諫。
【読み】
今君大子を命づけて仇と曰い、弟を成師と曰う。始めて亂を兆せり。兄其れ替[すた]らん。穆公少子桓叔を愛す。倶に戰に取りて、以て名とすれども、附くる所の意異なり。故に師服桓叔が黨の、必ず晉に盛んにして、以て宗國を傾けんことを知る。故に名に因りて以て諷諫す。

惠之二十四年、晉始亂。故封桓叔于曲沃。惠、魯惠公也。晉文侯卒。子昭侯元年、危不自安、封成師爲曲沃伯。
【読み】
惠の二十四年に、晉始めて亂る。故に桓叔を曲沃に封ず。惠は、魯の惠公なり。晉の文侯卒す。子の昭侯元年、危くして自ら安んぜず、成師を封じて曲沃の伯とす。

靖侯之孫欒賓傅之。靖侯、桓叔之高祖父。言得貴寵公孫爲傅相。○靖、才井反。欒、力官反。
【読み】
靖侯の孫欒賓[らんひん]之に傅たり。靖侯は、桓叔の高祖父。貴寵の公孫を得て傅相とするを言う。○靖は、才井反。欒は、力官反。

師服曰、吾聞國家之立也、本大而末小。是以能固。故天子建國、立諸侯也。
【読み】
師服曰く、吾れ聞く、國家の立つや、本は大にして末は小なり。是を以て能く固し。故に天子は國を建て、諸侯を立つなり。

諸侯立家、卿大夫稱家。
【読み】
諸侯は家を立て、卿大夫に家と稱す。

卿置側室。側室、衆子也。得立此一官。
【読み】
卿は側室を置く。側室は、衆子なり。此の一官を立つるを得。

大夫有貳宗、適子爲小宗、次者爲貳宗。以相輔貳。
【読み】
大夫に貳宗有り、適子を小宗と爲し、次なる者を貳宗と爲す。以て相輔貳す。

士有隸子弟。士卑。自以其子弟爲僕隸。
【読み】
士に隸子弟有り。士は卑し。自ら其の子弟を以て僕隸とす。

庶人工商、各有分親。皆有等衰。庶人無復尊卑。以親疏爲分別也。衰、殺也。○分、扶問反。又如字。親、七刃反。又如字。
【読み】
庶人工商は、各々分親有り。皆等衰[とうさい]有り。庶人は復尊卑無し。親疏を以て分別とす。衰は、殺なり。○分は、扶問反。又字の如し。親は、七刃反。又字の如し。

是以民服事其上、而下無覬覦。下冀望上位。○覬、音冀。覦、羊朱反。
【読み】
是を以て民其の上に服事して、下覬覦[きゆ]すること無し、と。下上位を冀望せず。○覬は、音冀。覦は、羊朱反。

今晉、甸侯也。而建國。本旣弱矣。其能久乎。諸侯而在甸服者。
【読み】
今晉は、甸侯[てんこう]なり。而るに國を建つ。本旣に弱し。其れ能く久しからんや、と。諸侯にして甸服在る者なり。

惠之三十年、晉潘父弑昭侯而納桓叔。不克。潘父、晉大夫也。昭侯、文侯子。
【読み】
惠の三十年、晉の潘父昭侯を弑して桓叔を納れんとす。克わず。潘父は、晉の大夫なり。昭侯は、文侯の子。

晉人立孝侯。昭侯子也。
【読み】
晉人孝侯を立つ。昭侯の子なり。

惠之四十五年、曲沃莊伯伐翼、弑孝侯。莊伯、桓叔子。翼、晉國所都。
【読み】
惠の四十五年、曲沃の莊伯翼を伐ちて、孝侯を弑す。莊伯は、桓叔の子。翼は、晉國の都する所。

翼人立其弟鄂侯。
【読み】
翼人其の弟鄂侯を立つ。

鄂侯生哀侯。鄂侯以隱五年奔隨。其年秋、王立哀侯于翼。
【読み】
鄂侯哀侯を生む。鄂侯隱五年を以て隨に奔る。其の年の秋、王哀侯を翼に立つ。

哀侯侵陘庭之田。陘庭、翼南鄙邑。○陘、音刑。
【読み】
哀侯陘庭の田を侵す。陘庭は、翼の南鄙の邑。○陘は、音刑。

陘庭南鄙、啓曲沃伐翼。
【読み】
陘庭の南鄙、曲沃を啓いて翼を伐たしむ。


〔經〕三年、春、正月、公會齊侯于嬴。經之首時、必書王、明此歷天王之所班也。其或廢法違常、失不班歷、故不書王。嬴、齊邑。今泰山嬴縣。○經三年正月、從此盡十七年、皆無王、唯十年有。二傳以爲義。或有王字者非。嬴、音盈。
【読み】
〔經〕三年、春、正月、公齊侯に嬴[えい]に會す。經の首時には、必ず王を書すは、此の歷は天王の班[わか]つ所なることを明かすなり。其の或は法を廢し常に違い、失して歷を班たざれば、故に王を書さず。嬴は、齊の邑。今の泰山の嬴縣なり。○經三年正月、此より十七年まで、皆王無く、唯十年に有り。二傳以て義とす。或は王の字有るは非ならん。嬴は、音盈。

夏、齊侯・衛侯胥命于蒲。申約言以相命、而不歃血也。蒲、衛地。在陳留長垣縣西南。○歃、所洽反。
【読み】
夏、齊侯・衛侯蒲に胥命ず。約言を申[の]べて以て相命じて、血を歃[すす]らざるなり。蒲は、衛の地。陳留長垣縣の西南に在り。○歃は、所洽反。

六月、公會杞侯于郕。秋、七月、壬辰朔、日有食之。旣。無傳。旣、盡也。歷家之說謂、日光以望時遙奪月光。故月食。日月同會、月奄日。故日食。食有上下者、行有高下。日光輪存而中食者、相奄密。故日光溢出。皆旣者、正相當而相奄、閒疏也。然聖人不言月食日、而以自食爲文者、闕於所不見。
【読み】
六月、公杞侯に郕[せい]に會す。秋、七月、壬辰[みずのえ・たつ]朔、日之を食する有り。旣[つ]く。傳無し。旣は、盡くなり。歷家の說に謂く、日光望時を以て遙かに月光を奪う。故に月食す。日月同會して、月日を奄う。故に日食す。食に上下有るは、行に高下有ればなり。日光輪存して中食するは、相奄うこと密なり。故に日光溢れ出づるなり。皆旣くるは、正しく相當たりて相奄い、閒疏なればなり。然れども聖人月日を食すと言わずして、自ら食するを以て文を爲すは、見ざる所を闕くなり。

公子翬如齊逆女。禮、君有故、則使卿逆。
【読み】
公子翬[き]齊に如いて女を逆[むか]う。禮に、君故有れば、則ち卿をして逆えしむ、と。

九月、齊侯送姜氏于讙。讙、魯地。濟北蛇丘縣西有下讙亭。已去齊國。故不言女。未至於魯。故不稱夫人。○讙、呼端反。蛇、以支反。
【読み】
九月、齊侯姜氏を讙[かん]に送る。讙は、魯の地。濟北蛇丘縣の西に下讙亭有り。已に齊國を去る。故に女と言わず。未だ魯に至らず。故に夫人と稱せず。○讙は、呼端反。蛇は、以支反。

公會齊侯于讙。無傳。
【読み】
公齊侯に讙に會す。傳無し。

夫人姜氏至自齊。無傳。告於廟也。不言翬以至者、齊侯送之、公受之於讙。
【読み】
夫人姜氏齊より至る。傳無し。廟に告ぐればなり。翬以[い]て至ると言わざるは、齊侯之を送り、公之を讙に受ければなり。

冬、齊侯使其弟年來聘。有年。無傳。五穀皆熟書有年。
【読み】
冬、齊侯其の弟年をして來聘せしむ。年有り。傳無し。五穀皆熟するを年有りと書す。

〔傳〕三年、春、曲沃武公伐翼、次于陘庭。韓萬御戎、梁弘爲右、武公、曲沃莊伯子也。韓萬、莊伯弟也。御戎、僕也。右、戎車之右。
【読み】
〔傳〕三年、春、曲沃の武公翼を伐ち、陘庭に次[やど]る。韓萬戎に御となり、梁弘右と爲り、武公は、曲沃の莊伯の子なり。韓萬は、莊伯の弟なり。戎に御たるは、僕なり。右は、戎車の右なり。

逐翼侯于汾隰。汾隰、汾水邊。○汾、扶云反。
【読み】
翼侯を汾隰[ふんしゅう]に逐う。汾隰は、汾水の邊。○汾は、扶云反。

驂絓而止。驂、騑馬。○驂、七南反。絓、戶卦反。
【読み】
驂[さん]絓[か]かりて止まる。驂は、騑馬。○驂は、七南反。絓は、戶卦反。

夜獲之、及欒共叔。共叔、桓叔之傅、欒賓之子也。身傅翼侯。父子各殉所奉之主。故幷見獲而死。
【読み】
夜之を獲、欒共叔[らんきょうしゅく]に及ぶ。共叔は、桓叔の傅、欒賓の子なり。身翼侯に傅たり。父子各々奉ずる所の主に殉[したが]う。故に幷せて獲られて死す。

會于嬴、成昏于齊也。公不由媒介、自與齊侯會而成昏。非禮也。
【読み】
嬴に會するは、昏を齊に成すなり。公媒介に由らずして、自ら齊侯と會して昏を成す。禮に非ざるなり。

夏、齊侯・衛侯胥命于蒲、不盟也。
【読み】
夏、齊侯・衛侯蒲に胥命ずるは、盟わざるなり。

公會杞侯于郕、杞求成也。二年入杞。故今來求成。
【読み】
公杞侯に郕に會するは、杞成[たい]らぎを求むればなり。二年杞に入る。故に今來りて成らぎを求む。

秋、公子翬如齊逆女。修先君之好。故曰公子。昏禮雖奉時君之命、其言必稱先君、以爲禮辭。故公子翬逆女、傳稱修先君之好、公子遂逆女、傳稱尊君命、互舉其義。
【読み】
秋、公子翬齊に如いて女を逆う。先君の好を修む。故に公子と曰う。昏禮時君の命を奉ずと雖も、其の言は必ず先君を稱して、以て禮辭とす。故に公子翬が女を逆うるには、傳に先君の好を修むと稱し、公子遂が女を逆うるには、傳に君命を尊ぶと稱して、互いに其の義を舉ぐるなり。

齊侯送姜氏、非禮也。
【読み】
齊侯姜氏を送るは、禮に非ざるなり。

凡公女嫁于敵國、姊妹則上卿送之。以禮於先君。公子則下卿送之。於大國、雖公子、亦上卿送之。於天子、則諸卿皆行。公不自送。於小國、則上大夫送之。
【読み】
凡そ公の女敵國に嫁すれば、姊妹は則ち上卿之を送る。以て先君に禮するなり。公の子は則ち下卿之を送る。大國に於ては、公の子と雖も、亦上卿之を送る。天子に於ては、則ち諸卿皆行く。公は自ら送らず。小國に於ては、則ち上大夫之を送る。

冬、齊仲年來聘、致夫人也。古者女出嫁、又使大夫隨加聘問。存謙敬、序殷勤也。在魯而出、則曰致女、在他國而來、則總曰聘。故傳以致夫人釋之。
【読み】
冬、齊の仲年來聘するは、夫人を致すなり。古は女出でて嫁すれば、又大夫をして隨いて聘問を加えしむ。謙敬を存し、殷勤を序ずるなり。魯在[よ]りして出づれば、則ち女を致すと曰い、他國在りして來れば、則ち總べて聘と曰う。故に傳夫人を致すを以て之を釋く。

芮伯萬之母芮姜、惡芮伯之多寵人也。故逐之。出居于魏。爲明年秦侵芮張本。芮國、在馮翊臨晉縣。魏國、河東河北縣。○芮、如銳反。惡、烏路反。
【読み】
芮伯[ぜいはく]萬の母芮姜、芮伯の寵人多きを惡む。故に之を逐う。出でて魏に居る。明年秦芮を侵す爲の張本なり。芮國は、馮翊臨晉縣に在り。魏國は、河東の河北縣。○芮は、如銳反。惡は、烏路反。


〔經〕四年、春、正月、公狩于郎。冬獵曰狩。行三驅之禮、得田狩之時。故傳曰書時禮也。周之春、夏之冬也。田狩從夏時。郎非國内之狩地。故書地。
【読み】
〔經〕四年、春、正月、公郎に狩す。冬獵を狩と曰う。三驅の禮を行い、田狩の時を得。故に傳に時の禮あるを書すと曰う。周の春は、夏の冬なり。田狩は夏の時に從う。郎は國内の狩地に非ず。故に地を書す。

夏、天王使宰渠伯糾來聘。宰、官。渠、氏。伯糾、名也。王官之宰、當以才授位。而伯糾攝父之職、出聘列國。故書名以譏之。國史之記、必書年以集此公之事、書首時以成此年之歲。故春秋有空時而無事者。今不書秋冬首月、史闕文。他皆放此。一說、三驅、驅逆車。三面驅禽也。禽唯有背己向己趣己。故左右及于後驅之。禮、天子不合圍。順而來、取之。從前而逸、免之。
【読み】
夏、天王宰渠伯糾をして來聘せしむ。宰は、官。渠は、氏。伯糾は、名なり。王官の宰は、當に才を以て位を授くべし。而るに伯糾父の職を攝して、出でて列國に聘す。故に名を書して以て之を譏る。國史の記、必ず年を書して以て此の公の事を集め、首時を書して以て此の年の歲を成す。故に春秋空しく時しるして事無き者有り。今秋冬の首月を書さざるは、史の闕文なり。他も皆此に放え。一說に、三驅は、驅逆車、と。三面禽を驅るなり。禽唯己に背き己に向かい己に趣くこと有り。故に左右及び後ろに于て之を驅る。禮に、天子は合圍せず。順いて來る、之を取る。前よりして逸る、之を免す、と。

〔傳〕四年、春、正月、公狩于郎、書時禮也。郎非狩地。故唯時合禮。
【読み】
〔傳〕四年、春、正月、公郎に狩するは、時の禮あるを書すなり。郎は狩地に非ず。故に唯時のみ禮に合う。

夏、周宰渠伯糾來聘。父在。故名。
【読み】
夏、周の宰渠伯糾來聘す。父在り。故に名いう。

秋、秦師侵芮。敗焉。小之也。秦以芮小輕之。故爲芮所敗。
【読み】
秋、秦の師芮を侵す。敗らる。之を小とすればなり。秦芮の小を以て之を輕んず。故に芮の爲に敗らる。

冬、王師・秦師圍魏、執芮伯以歸。三年、芮伯出居魏。芮更立君。秦爲芮所敗。故以芮伯歸、將欲納之。
【読み】
冬、王の師・秦の師魏を圍み、芮伯を執えて以[い]て歸る。三年、芮伯出でて魏に居る。芮更に君を立つ。秦芮の爲に敗らる。故に芮伯を以て歸り、將に之を納れんと欲す。


〔經〕五年、春、正月、甲戌、己丑、陳侯鮑卒。未同盟而書名者、來赴以名故也。甲戌、前年十二月二十一日。己丑、此年正月六日。陳亂。故再赴。赴雖日異、而皆以正月起文。故但書正月。愼疑審事。故從赴兩書。○鮑、步飽反。
【読み】
〔經〕五年、春、正月、甲戌[きのえ・いぬ]、己丑[つちのと・うし]、陳侯鮑卒す。未だ同盟せずして名を書すは、來り赴[つ]ぐるに名を以てする故なり。甲戌は、前年の十二月二十一日。己丑は、此の年の正月六日。陳亂る。故に再び赴ぐ。赴ぐること日異なりと雖も、而れども皆正月を以て文を起こす。故に但正月を書す。疑を愼み事を審らかにす。故に赴ぐるに從いて兩つながら書す。○鮑は、步飽反。

夏、齊侯・鄭伯如紀。外相朝、皆言如。齊欲滅紀。紀人懼而來告。故書。
【読み】
夏、齊侯・鄭伯紀に如く。外に相朝するは、皆如くと言う。齊紀を滅ぼさんと欲す。紀人懼れて來り告ぐ。故に書す。

天王使仍叔之子來聘。仍叔、天子之大夫。稱仍叔之子、本於父字、幼弱之辭也。譏使童子出聘。
【読み】
天王仍叔[じょうしゅく]の子をして來聘せしむ。仍叔は、天子の大夫。仍叔の子と稱して、父の字に本づくは、幼弱の辭なり。童子をして出聘せしむるを譏るなり。

葬陳桓公。無傳。
【読み】
陳の桓公を葬る。傳無し。

城祝丘。無傳。齊・鄭將襲紀故。
【読み】
祝丘に城く。傳無し。齊・鄭將に紀を襲わんとする故なり。

秋、蔡人・衛人・陳人從王伐鄭。王自爲伐鄭之主。君臣之辭也。王師敗不書、不以告。○從、如字。又才用反。
【読み】
秋、蔡人・衛人・陳人王に從いて鄭を伐つ。王自ら鄭を伐つの主と爲る。君臣の辭なり。王の師敗るるを書さざるは、以て告げざればなり。○從は、字の如し。又才用反。

大雩。傳例曰、書不時也。失龍見之時。
【読み】
大いに雩[う]す。傳例に曰く、時ならざるを書すなり、と。龍見の時を失うなり。

螽。無傳。蚣蝑之屬。爲災、故書。○蚣、相容反。蝑、相魚反。
【読み】
螽[しゅう]あり。傳無し。蚣蝑[しょうしょ]の屬なり。災いを爲す、故に書す。○蚣は、相容反。蝑は、相魚反。

冬、州公如曹。不書奔、以朝出也。爲下實來書也。曹國、今濟陰定陶縣。州、是畿内之地。河内州縣、是也。蓋州侯旣如曹、先使告魯。故書。
【読み】
冬、州公曹に如く。奔ると書さざるは、朝するを以て出づればなり。下の實に來るが爲に書すなり。曹國は、今の濟陰定陶縣なり。州は、是れ畿内の地。河内州縣、是れなり。蓋し州侯旣に曹に如き、先ず魯に告げしむ。故に書す。

〔傳〕五年、春、正月、甲戌、己丑、陳侯鮑卒、再赴也。
【読み】
〔傳〕五年、春、正月、甲戌[きのえ・いぬ]、己丑[つちのと・うし]、陳侯鮑卒すとは、再び赴[つ]げたればなり。

於是陳亂。文公子佗殺大子免而代之。佗、桓公弟五父也。稱文公子、明侘非桓公母弟也。免、桓公大子。○侘、大何反。免、音問。
【読み】
是に於て陳亂る。文公の子佗大子免を殺して之に代わる。佗は、桓公の弟五父なり。文公の子と稱するは、侘は桓公の母弟に非ざることを明かすなり。免は、桓公の大子。○侘は、大何反。免は、音問。

公疾病而亂作、國人分散。故再赴。
【読み】
公の疾病にして亂作り、國人分散す。故に再び赴ぐるなり。

夏、齊侯・鄭伯朝于紀、欲以襲之。紀人知之。
【読み】
夏、齊侯・鄭伯紀に朝して、以て之を襲わんと欲す。紀人之を知る。

王奪鄭伯政。鄭伯不朝。奪、不使知王政。
【読み】
王鄭伯の政を奪う。鄭伯朝せず。奪うとは、王政を知らしめざるなり。

秋、王以諸侯伐鄭。鄭伯禦之。王爲中軍。虢公林父將右軍。蔡人・衛人屬焉。虢公林父、王卿士。○將、子匠反。下同。
【読み】
秋、王諸侯を以[い]て鄭を伐つ。鄭伯之を禦ぐ。王中軍と爲る。虢公林父右軍に將たり。蔡人・衛人屬す。虢公林父は、王の卿士。○將は、子匠反。下も同じ。

周公黑肩將左軍。陳人屬焉。黑肩、周桓公也。
【読み】
周公黑肩左軍に將たり。陳人屬す。黑肩は、周の桓公なり。

鄭子元請爲左拒、以當蔡人・衛人、子元、鄭公子。拒、方陳。○拒、倶甫反。下同。陳、直覲反。下同。
【読み】
鄭の子元左拒を爲して、以て蔡人・衛人に當たり、子元は、鄭の公子。拒は、方陳。○拒は、倶甫反。下も同じ。陳は、直覲反。下も同じ。

爲右拒、以當陳人。曰、陳亂、民莫有鬭心。若先犯之、必奔。王卒顧之、必亂。蔡・衛不枝、固將先奔。不能相枝持也。
【読み】
右拒を爲して、以て陳人に當たらんと請う。曰く、陳亂れ、民鬭心有ること莫し。若し先ず之を犯さば、必ず奔らん。王の卒之を顧ば、必ず亂れん。蔡・衛枝[ささ]えず、固より將に先ず奔らんとす。相枝持すること能わざるなり。

旣而萃於王卒、可以集事。從之。萃、聚也。集、成也。
【読み】
旣にして王の卒に萃まらば、以て事を集[な]す可し、と。之に從う。萃は、聚まるなり。集は、成すなり。

曼伯爲右拒、曼伯、檀伯。○曼、音萬。
【読み】
曼伯右拒と爲り、曼伯は、檀伯。○曼は、音萬。

祭仲足爲左拒、原繁・高渠彌以中軍奉公、爲魚麗之陳、先偏後伍、伍承彌縫。司馬法、車戰二十五乘爲偏。以車居前、以伍次之、承偏之隙、而彌縫闕漏也。五人爲伍。此蓋魚麗陳法。○麗、力知反。
【読み】
祭仲足左拒と爲り、原繁・高渠彌中軍を以て公を奉じて、魚麗の陳を爲し、偏を先にし伍を後にし、伍承けて彌縫す。司馬法に、車戰二十五乘を偏とす、と。車を以て前に居き、伍を以て之に次ぎ、偏の隙を承けて、闕漏を彌縫するなり。五人を伍とす。此れ蓋し魚麗の陳法ならん。○麗は、力知反。

戰于繻葛。繻葛、鄭地。○繻、音須。
【読み】
繻葛に戰わんとす。繻葛は、鄭の地。○繻は、音須。

命二拒曰、旝動而鼓。旝、旃也。通帛爲之。蓋今大將之麾也。執以爲號令。○旝、古外反。又古活反。說文作檜。建大木、置石其上、發機以磓敵。
【読み】
二拒に命じて曰く、旝[はた]動いて鼓て、と。旝[かい]は、旃[せん]なり。通帛にて之を爲る。蓋し今の大將の麾[き]ならん。執りて以て號令を爲す。○旝は、古外反。又古活反。說文に檜に作る。大木を建てて、石を其上に置き、機を發して以て敵を磓[う]つ。

蔡・衛・陳皆奔。王卒亂。鄭師合以攻之。王卒大敗。祝耼射王中肩。王亦能軍。雖軍敗身傷、猶殿而不奔。故言能軍。○射、食亦反。中、丁仲反。殿、多見反。
【読み】
蔡・衛・陳皆奔る。王の卒亂る。鄭の師合いて以て之を攻む。王の卒大いに敗れぬ。祝耼[しゅくたん]王を射て肩に中つ。王も亦能く軍す。軍敗れ身傷つくと雖も、猶殿して奔らず。故に能く軍すと言う。○射は、食亦反。中は、丁仲反。殿は、多見反。

祝耼請從之。公曰、君子不欲多上人。況敢陵天子乎。苟自救也。社稷無隕多矣。鄭於此收兵自退。○隕、于敏反。
【読み】
祝耼之を從[お]わんと請う。公曰く、君子は多く人を上[しの]ぐことを欲せず。況んや敢えて天子を陵がんや。苟も自ら救わんとてなり。社稷隕つること無くば多なり、と。鄭此に於て兵を收めて自ら退く。○隕は、于敏反。

夜、鄭伯使祭足勞王、且問左右。祭足、卽祭仲之字。蓋名仲、字仲足也。勞王問左右、言鄭志在苟免、王討之非也。○勞、力報反。
【読み】
夜、鄭伯祭足をして王を勞い、且左右を問わしむ。祭足は、卽ち祭仲の字。蓋し名は仲、字は仲足ならん。王を勞い左右を問うは、鄭の志は苟免に在り、王之を討つは非なるを言うなり。○勞は、力報反。

仍叔之子、弱也。仍叔之子來聘、童子將命、無速反之心、久留在魯。故經書夏聘、傳釋之於末秋。
【読み】
仍叔の子とは、弱[わか]ければなり。仍叔の子來聘し、童子命を將[おこな]い、速やかに反るの心無く、久しく留まりて魯に在り。故に經に夏聘すと書し、傳は之を末秋に釋く。

秋、大雩、書不時也。十二公傳、唯此年、及襄二十六年、有兩秋。此發雩祭之例、欲顯天時以指事。故重言秋、異於凡事。
【読み】
秋、大いに雩するは、時ならざるを書すなり。十二公の傳、唯此の年、及び襄二十六年にのみ、兩秋有り。此には雩祭の例を發すれば、天時を顯らかにして以て事を指さんと欲す。故に重ねて秋を言いて、凡事に異にするなり。

凡祀、啓蟄而郊、言凡祀、通下三句、天地宗廟之事也。啓蟄、夏正建寅之月、祀天南郊。○蟄、直立反。
【読み】
凡そ祀は、啓蟄にして郊し、凡そ祀と言うは、下の三句、天地宗廟の事に通ずるなり。啓蟄は、夏正建寅の月、天を南郊に祀る。○蟄は、直立反。

龍見而雩、龍見、建巳之月、蒼龍宿之體、昏見東方。萬物始盛、待雨而大。故、祭天、遠爲百穀祈膏雨。○見、賢遍反。宿、音秀。
【読み】
龍見えて雩し、龍見は、建巳の月、蒼龍宿の體、昏に東方に見る。萬物始めて盛んにして、雨を待ちて大いなり。故に、天を祭りて、遠く百穀の爲に膏雨を祈る。○見は、賢遍反。宿は、音秀。

始殺而嘗、建酉之月、陰氣始殺、嘉穀始熟。故薦嘗於宗廟。
【読み】
始めて殺[さい]して嘗し、建酉の月、陰氣始めて殺し、嘉穀始めて熟す。故に宗廟に薦嘗す。

閉蟄而烝。建亥之月、昆蟲閉戶、萬物皆成。可薦者衆。故烝祭宗廟。釋例論之備矣。
【読み】
閉蟄にして烝す。建亥の月、昆蟲戶を閉じ、萬物皆成る。薦む可き者衆し。故に宗廟に烝祭す。釋例之を論ずること備われり。

過則書。卜日有吉否。過次節則書。以譏慢也。
【読み】
過ぐれば則ち書す。日を卜するに吉否有り。次節を過ぐれば則ち書す。以て慢れるを譏るなり。

冬、淳于公如曹。度其國危、遂不復。淳于、州國所都、城陽淳于縣也。國有危難、不能自安。故出朝而遂不還。○度、待洛反。
【読み】
冬、淳于公曹に如く。其の國の危うきを度りて、遂に復らず。淳于は、州國の都する所、城陽の淳于縣なり。國に危難有りて、自ら安んずること能わず。故に出でて朝して遂に還らず。○度は、待洛反。


〔經〕六年、春、正月、寔來。寔、實也。不言州公者、承上五年冬經如曹、閒無異事、省文從可知。○寔、時力反。
【読み】
〔經〕六年、春、正月、寔[まこと]に來る。寔は、實なり。州公を言わざるは、上の五年冬の經に曹に如くを承けて、閒に異事無ければ、文を省くも從りて知る可ければなり。○寔は、時力反。

夏、四月、公會紀侯于成。成、魯地。在泰山鉅平縣東南。
【読み】
夏、四月、公紀侯に成に會す。成は、魯の地。泰山鉅平縣の東南に在り。

秋、八月、壬午、大閱。齊爲大國。以戎事徵諸侯之戍、嘉美鄭忽。而忽欲以有功爲班、怒而訴齊。魯人懼之。故以非時簡車馬。
【読み】
秋、八月、壬午[みずのえ・うま]、大いに閱す。齊は大國爲り。戎事を以て諸侯の戍を徵して、鄭忽を嘉美す。而して忽功有るを以て班[ついで]を爲さんことを欲し、怒りて齊に訴う。魯人之を懼る。故に非時を以て車馬を簡ぶなり。

蔡人殺陳佗。佗立踰年、不稱爵者、簒立未會諸侯也。傳例在莊二十二年。
【読み】
蔡人陳佗を殺す。佗立ちて年を踰え、爵と稱せざるは、簒立して未だ諸侯に會せざればなり。傳例は莊二十二年に在り。

九月、丁卯、子同生。桓公子莊公也。十二公唯子同是適夫人之長子。備用大子之禮。故史書之於策。不稱大子者、書始生也。
【読み】
九月、丁卯[ひのと・う]、子同生まる。桓公の子莊公なり。十二公は唯子同のみ是れ適夫人の長子なり。大子の禮を備え用ゆ。故に史之を策に書す。大子と稱せざるは、始生を書すなり。

冬、紀侯來朝。
【読み】
冬、紀侯來朝す。

〔傳〕六年、春、自曹來朝。書曰寔來、不復其國也。亦承五年冬傳淳于公如曹也。言奔、則來行朝禮。言朝、則遂留不去。故變文言寔來。
【読み】
〔傳〕六年、春、曹より來朝す。書して寔に來ると曰うは、其の國に復らざればなり。亦五年冬の傳の淳于公曹に如くを承くるなり。奔ると言わんとすれば、則ち來りて朝禮を行う。朝すと言わんとすれば、則ち遂に留まりて去らず。故に文を變じて寔に來ると言う。

楚武王侵隨、隨、國。今義陽隨縣。
【読み】
楚の武王隨を侵し、隨は、國。今の義陽の隨縣なり。

使薳章求成焉。薳章、楚大夫。○薳、于委反。
【読み】
薳章[いしょう]をして成[たい]らぎを求めしむ。薳章は、楚の大夫。○薳は、于委反。

軍於瑕以待之。瑕、隨地。
【読み】
瑕に軍して以て之を待つ。瑕は、隨の地。

隨人使少師董成。少師、隨大夫。董、正也。○少、詩照反。
【読み】
隨人少師をして成らぎを董[ただ]さしむ。少師は、隨の大夫。董は、正すなり。○少は、詩照反。

鬭伯比言于楚子曰、吾不得志於漢東也、我則使然。鬭伯比、楚大夫。令尹子文之父。
【読み】
鬭伯比楚子に言いて曰く、吾が志を漢東に得ざるや、我れ則ち然らしむるなり。鬭伯比は、楚の大夫。令尹子文の父なり。

我張吾三軍、而被吾甲兵、以武臨之。彼則懼、而協以謀我。故難閒也。漢東之國、隨爲大。隨張、必棄小國。張、自侈大也。○隨張、豬亮反。一如字。
【読み】
我れ吾が三軍を張りて、吾が甲兵を被り、武を以て之に臨む。彼れ則ち懼れて、協いて以て我を謀る。故に閒し難し。漢東の國は、隨を大なりとす。隨張らば、必ず小國を棄てん。張は、自ら侈ること大いにするなり。○隨張は、豬亮反。一に字の如し。

小國離、楚之利也。少師侈。請羸師以張之。羸、弱也。○羸、劣追反。
【読み】
小國の離るるは、楚の利なり。少師侈れり。請う師を羸[よわ]めて以て之を張らしめん、と。羸[るい]は、弱きなり。○羸は、劣追反。

熊率且比曰、季梁在。何益。熊率且比、楚大夫。季梁、隨賢臣。○率、音律。且、子余反。
【読み】
熊率且比曰く、季梁在り。何の益あらん、と。熊率且比は、楚の大夫。季梁は、隨の賢臣。○率は、音律。且は、子余反。

鬭伯比曰、以爲後圖。少師得其君。言季梁之諫不過一見從。隨侯卒當以少師爲計。故云以爲後圖。二年、蔡侯・鄭伯會于鄧、始懼楚。楚子自此遂盛、終於抗衡中國。故傳備言其事、以終始之。
【読み】
鬭伯比曰く、以て後圖と爲さん。少師其の君を得たり。言うこころは、季梁の諫めは一たび從わるるに過ぎず。隨侯卒に當に少師を以て計を爲すべし。故に以て後圖と爲さんと云う。二年、蔡侯・鄭伯鄧に會し、始めて楚を懼る。楚子此より遂に盛んにして、中國に抗衡するに終わる。故に傳備に其の事を言いて、以て之を終始す。

王毀軍而納少師。從伯比之謀。
【読み】
王軍を毀ちて少師を納る。伯比の謀に從う。

少師歸、請追楚師。隨侯將許之。信楚弱也。
【読み】
少師歸り、楚の師を追わんと請う。隨侯將に之を許さんとす。楚の弱きを信ずるなり。

季梁止之曰、天方授楚。楚之羸、其誘我也。君何急焉。臣聞小之能敵大也、小道大淫。所謂道、忠於民而信於神也。上思利民、忠也。祝史正辭、信也。正辭、不虛稱君美。
【読み】
季梁之を止めて曰く、天方に楚に授く。楚の羸きは、其れ我を誘[あざむ]くなり。君何ぞ急にする。臣聞く小の能く大に敵するや、小道あり大淫なればなり、と。所謂道とは、民に忠にして神に信あるなり。上民を利せんことを思うは、忠なり。祝史辭を正しくするは、信なり。辭を正しくすとは、君の美を虛しく稱せざるなり。

今民餒而君逞欲、逞、快也。○餒、奴罪反。
【読み】
今民餒[う]えて君欲を逞[こころよ]くし、逞は、快きなり。○餒は、奴罪反。

祝史矯舉以祭。臣不知其可也。詐稱功德以欺鬼神。
【読み】
祝史矯舉して以て祭る。臣其の可なることを知らず、と。功德を詐稱して以て鬼神を欺くなり。

公曰、吾牲牷肥腯、粢盛豐備。何則不信。牲、牛・羊・豕也。牷、純色完全也。腯、亦肥也。黍稷曰粢、在器曰盛。○牷、音全。腯、徒忽反。
【読み】
公曰く、吾が牲牷[せいせん]は肥腯[ひとつ]、粢盛は豐備なり。何ぞ則ち不信ならん、と。牲は、牛・羊・豕なり。牷は、純色完全なり。腯も、亦肥ゆるなり。黍稷を粢と曰い、器に在るを盛と曰う。○牷は、音全。腯は、徒忽反。

對曰、夫民、神之主也。言鬼神之情、依民而行。
【読み】
對えて曰く、夫れ民は、神の主なり。鬼神の情は、民に依りて行うを言う。

是以聖王先成民、而後致力於神。故奉牲以告曰、博碩肥腯。謂民力之普存也。博、廣也。碩、大也。
【読み】
是を以て聖王は先ず民を成して、而して後に力を神に致す。故に牲を奉げて以て告げて曰く、博碩肥腯、と。民力の普く存するを謂うなり。博は、廣きなり。碩は、大いなり。

謂其畜之碩大蕃滋也。謂其不疾瘯蠡也。謂其備腯咸有也。雖告神以博碩肥腯、其實皆當兼此四謂。民力適完、則六畜旣大而滋也。皮毛無疥癬、兼備而無有所闕。○畜、吁又反。瘯、七木反。蠡、力果反。瘯瘰、皮肥也。
【読み】
其の畜の碩大蕃滋なるを謂うなり。其の瘯蠡[ぞくれい]を疾まざるを謂うなり。其の備腯して咸[ことごと]く有るを謂うなり。神に告ぐるに博碩肥腯を以てすと雖も、其の實は皆當に此の四謂を兼ぬるべし。民力適に完きときは、則ち六畜旣に大いにして滋きなり。皮毛に疥癬無く、兼ね備わりて闕くる所有ること無きなり。○畜は、吁又反。瘯は、七木反。蠡は、力果反。瘯瘰[ぞくるい]、皮肥なり。

奉盛以告曰、絜粢豐盛。謂其三時不害、而民和年豐也。三時、春・夏・秋。
【読み】
盛を奉げて以て告げて曰く、絜粢豐盛、と。其の三時害あらずして、民和し年豐かなるを謂うなり。三時は、春・夏・秋。

奉酒醴以告曰、嘉栗旨酒。嘉、善也。栗、謹敬也。
【読み】
酒醴を奉げて以て告げて曰く、嘉栗の旨酒、と。嘉は、善きなり。栗は、謹敬なり。

謂其上下皆有嘉德、而無違心也。所謂馨香、無讒慝也。馨、香之遠聞。○慝、他得反。
【読み】
其の上下皆嘉德有りて、違心無きを謂うなり。所謂馨香ありて、讒慝無きなり。馨は、香の遠く聞こゆるなり。○慝は、他得反。

故務其三時、脩其五敎、父義、母慈、兄友、弟恭、子孝。
【読み】
故に其の三時を務め、其の五敎を脩め、父義、母慈、兄友、弟恭、子孝。

親其九族、以致其禋祀。禋、絜敬。九族、謂外祖父、外祖母、從母子、及妻父、妻母、姑之子、姊妹之子、女子之子、幷己之同族、皆外親有服而異族者也。
【読み】
其の九族を親しみて、以て其の禋祀を致す。禋は、絜敬。九族は、外祖父、外祖母、從母の子、及び妻の父、妻の母、姑の子、姊妹の子、女子の子、己の同族を幷すると、皆外親の服有りて族を異にする者を謂うなり。
*「幷己之同族」の幷について、頭註に「按幷或非」とある。


於是乎民和而神降之福。故動則有成。
【読み】
是に於て民和して神之に福を降す。故に動けば則ち成ること有り。

今民各有心、而鬼神乏主。民饑餒也。
【読み】
今民各々心有りて、鬼神主に乏し。民饑餒[きだい]す。

君雖獨豐、其何福之有。君姑脩政、而親兄弟之國、庶免於難。隨侯懼而脩政。楚不敢伐。
【読み】
君獨り豐かにすと雖も、其れ何の福か之れ有らん。君姑く政を脩めて、兄弟の國を親しまば、庶わくは難を免れん、と。隨侯懼れて政を脩む。楚敢えて伐たず。

夏、會于成、紀來諮謀齊難也。齊欲滅紀。故來謀之。○難、乃旦反。
【読み】
夏、成に會するは、紀來りて齊の難を諮謀するなり。齊紀を滅ぼさんと欲す。故に來りて之を謀る。○難は、乃旦反。

北戎伐齊。齊使乞師于鄭。鄭大子忽帥師救齊。六月、大敗戎師、獲其二帥大良・少良、甲首三百、以獻於齊。甲首、被甲者首。○二帥、所類反。少、詩照反。
【読み】
北戎齊を伐つ。齊師を鄭に乞わしむ。鄭の大子忽師を帥て齊を救う。六月、大いに戎の師を敗り、其の二帥大良・少良、甲首三百を獲て、以て齊に獻ず。甲首は、甲を被る者の首。○二帥は、所類反。少は、詩照反。

於是諸侯之大夫戍齊。齊人饋之餼。生曰餼。
【読み】
是に於て諸侯の大夫齊を戍[まも]る。齊人之に餼[き]を饋[おく]る。生を餼と曰う。

使魯爲其班。後鄭。班、次也。魯親班齊饋、則亦使大夫戍齊矣。經不書、蓋史闕文。
【読み】
魯をして其の班[ついで]を爲さしむ。鄭を後にす。班は、次なり。魯親ら齊の饋を班ずるときは、則ち亦大夫をして齊を戍らしむるなり。經に書さざるは、蓋し史の闕文ならん。

鄭忽以其有功也怒。故有郎之師。郎師在十年。
【読み】
鄭忽其の功有るを以てや怒る。故に郎の師有り。郎の師は十年に在り。

公之未昏於齊也、齊侯欲以文姜妻鄭大子忽。大子忽辭。人問其故。大子曰、人各有耦。齊大。非吾耦也。詩云、自求多福。詩、大雅文王。言求福由己、非由人也。○妻、七計反。
【読み】
公の未だ齊に昏せざりしや、齊侯文姜を以て鄭の大子忽に妻せんと欲す。大子忽辭す。人其の故を問う。大子曰く、人各々耦有り。齊は大なり。吾が耦に非ず。詩に云う、自ら多福を求む、と。詩は、大雅文王。福を求むるは己に由る、人に由るに非ざるを言うなり。○妻は、七計反。

在我而已。大國何爲。君子曰、善自爲謀。言獨絜其身、謀不及國。
【読み】
我に在るのみ。大國何をかせん、と。君子曰く、善く自ら謀を爲せり、と。獨り其の身を絜くして、謀國に及ばざるを言う。

及其敗戎師也、齊侯又請妻之。欲以他女妻之。
【読み】
其の戎の師を敗るに及んでや、齊侯又之に妻せんことを請う。他の女を以て之に妻せんと欲す。

固辭。人問其故。大子曰、無事於齊、吾猶不敢。今以君命奔齊之急、而受室以歸、是以師昏也。民其謂我何。言必見怪於民。
【読み】
固辭す。人其の故を問う。大子曰く、齊に事無かりしも、吾れ猶敢えてせざりき。今君命を以て齊の急に奔りて、室を受けて以て歸らば、是れ師を以て昏するなり。民其れ我を何とか謂わん、と。必ず民に怪しまるるを言う。

遂辭諸鄭伯。假父之命以爲辭。爲十一年、鄭忽出奔衛傳。
【読み】
遂に諸を鄭伯に辭す。父の命を假りて以て辭を爲す。十一年、鄭忽衛に出奔する爲の傳なり。

秋、大閱、簡車馬也。
【読み】
秋、大いに閱するは、車馬を簡ぶなり。

九月、丁卯、子同生。以大子生之禮舉之。接以大牢、大牢、牛・羊・豕也。以禮接夫人、重適也。○接、如字。禮記作音捷。
【読み】
九月、丁卯[ひのと・う]、子同生まる。大子生まるるの禮を以て之を舉ぐ。接するに大牢を以てし、大牢は、牛・羊・豕なり。禮を以て夫人に接するは、適を重んずるなり。○接は、字の如し。禮記に音捷に作る。

卜士負之、士妻食之、禮、世子生三日、卜士負之、射人以桑弧蓬矢、射天地四方。卜士之妻爲乳母。○食、音嗣。射天地、食亦反。
【読み】
士を卜して之を負わしめ、士の妻之を食[やしな]い、禮に、世子生まれて三日、士を卜して之を負わしめ、射人桑弧蓬矢を以て、天地四方を射る。士の妻を卜して乳母とす、と。○食は、音嗣。射天地は、食亦反。

公與文姜宗婦命之。世子生三月、君夫人沐浴於外寢、立於阼階、西郷。世婦抱子升自西階、君命之乃降。蓋同宗之婦。
【読み】
公文姜宗婦と之に命[な]づく。世子生まれて三月、君夫人外寢に沐浴し、阼階に立ちて、西に郷[む]かう。世婦子を抱いて西階より升り、君之に命づけて乃ち降る。蓋し同宗の婦ならん。

公問名於申繻。對曰、名有五。有信、有義、有象、有假、有類。申繻、魯大夫。○繻、音須。
【読み】
公名を申繻に問う。對えて曰く、名に五つ有り。信有り、義有り、象有り、假有り、類有り。申繻は、魯の大夫。○繻は、音須。

以名生爲信、若唐叔虞、魯公子友。
【読み】
名を以て生まるるを信と爲し、唐叔虞、魯の公子友の若し。

以德命爲義、若文王名昌、武王名發。
【読み】
德を以て命づくるを義と爲し、文王名は昌、武王名は發の若し。

以類命爲象、若孔子首象尼丘。
【読み】
類を以て命づくるを象と爲し、孔子の首[こうべ]尼丘に象るが若し。

取於物爲假、若伯魚生、人有饋之魚。因名之曰鯉。
【読み】
物に取るを假と爲し、伯魚生まるるとき、人之に魚を饋る有り。因りて之を名づけて鯉と曰うが若し。

取於父爲類。若子同生、有與父同者。
【読み】
父に取るを類と爲す。子同生まれて、父と同じきこと有る者の若し。

不以國、國君之子、不自以本國爲名也。
【読み】
國を以てせず、國君の子、自ら本國を以て名と爲さざるなり。

不以官、不以山川、不以隱疾、隱、痛。疾、患。避不祥也。
【読み】
官を以てせず、山川を以てせず、隱疾を以てせず、隱は、痛む。疾は、患う。不祥を避くるなり。

不以畜牲、畜牲、六畜。
【読み】
畜牲を以てせず、畜牲は、六畜。

不以器幣。幣、玉帛。
【読み】
器幣を以てせず。幣は、玉帛。

周人以諱事神。名、終將諱之。君父之名、固非君子所斥。然禮、旣卒哭、以木鐸徇曰、舍故而諱新。謂舍親盡之祖、而諱新死者。故言以諱事神、名、終將諱之。自父至高祖、皆不敢斥言。○舍、音捨。
【読み】
周人は諱を以て神に事う。名は、終われば將に之を諱まんとす。君父の名は、固より君子の斥[さ]す所に非ず。然れども禮に、旣に卒哭して、木鐸を以て徇[とな]えて曰く、故きを舍てて新らしきを諱め、と。親盡くるの祖を舍てて、新たに死する者を諱むを謂う。故に言う、諱を以て神に事う、名は、終われば將に之を諱まんとす、と。父より高祖に至るまでは、皆敢えて斥し言わず。○舍は、音捨。

故以國則廢名、國不可易。故廢名。
【読み】
故に國を以てすれば則ち名を廢し、國は易う可からず。故に名を廢す。

以官則廢職、以山川則廢主、改其山川之名。
【読み】
官を以てすれば則ち職を廢し、山川を以てすれば則ち主を廢し、其の山川の名を改む。

以畜牲則廢祀、名豬則廢豬、名羊則廢羊。
【読み】
畜牲を以てすれば則ち祀を廢し、豬と名づくれば則ち豬を廢し、羊と名づくれば則ち羊を廢す。

以器幣則廢禮。晉以僖侯廢司徒、僖侯、名司徒。廢爲中軍。
【読み】
器幣を以てすれば則ち禮を廢す。晉は僖侯を以て司徒を廢し、僖侯、名は司徒。廢して中軍と爲す。

宋以武公廢司空、武公、名司空。廢爲司城。
【読み】
宋は武公を以て司空を廢し、武公、名は司空。廢して司城と爲す。

先君獻・武廢二山。二山、具・敖也。魯獻公、名具。武公、名敖。更以其郷名山。○敖、五羔反。
【読み】
先君は獻・武二山を廢す。二山は、具・敖なり。魯の獻公、名は具。武公、名は敖。更めて其の郷を以て山に名づく。○敖は、五羔反。

是以大物不可以命。
【読み】
是を以て大物は以て命づく可からず、と。

公曰、是其生也、與吾同物。命之曰同。物、類也。謂同日。
【読み】
公曰く、是れ其の生まるるや、吾と物を同じくせり、と。之を命づけて同と曰う。物は、類なり。日を同じくするを謂う。

冬、紀侯來朝。請王命以求成于齊。公告不能。紀微弱、不能自通於天子。欲因公以請王命。公無寵於王。故告不能。請上疑有脫字。
【読み】
冬、紀侯來朝す。王命を請いて以て齊に成らがんことを求めんとす。公能わずと告ぐ。紀は微弱、自ら天子に通ずること能わず。公に因りて以て王命を請わんと欲す。公王に寵無し。故に能わずと告ぐ。請の上に疑うらくは脫字有らん。


〔經〕七年、春、二月、己亥、焚咸丘。無傳。焚、火田也。咸丘、魯地。高平鉅野縣南有咸亭。譏盡物。故書。
【読み】
〔經〕七年、春、二月、己亥[つちのと・い]、咸丘に焚[やきがり]す。傳無し。焚は、火田なり。咸丘は、魯の地。高平鉅野縣の南に咸亭有り。物を盡くすを譏る。故に書す。

夏、穀伯綏來朝。鄧侯吾離來朝。不揔稱朝者、各自行朝禮也。穀國、在南郷筑陽縣北。○筑、逐。不書秋冬、史闕文也。詳四年注。
【読み】
夏、穀伯綏[すい]來朝す。鄧侯吾離來朝す。朝を揔稱せざるは、各々自ら朝禮を行えばなり。穀國は、南郷筑陽縣の北に在り。○筑は、逐。秋冬を書さざるは、史の闕文なり。四年の注に詳らかなり。

〔傳〕七年、春、穀伯・鄧侯來朝。名、賤之也。辟陋小國賤之、禮不足。故書名。以春來、夏乃行朝禮。故經書夏。○辟、匹亦反。
【読み】
〔傳〕七年、春、穀伯・鄧侯來朝す。名いうは、之を賤しむなり。辟陋の小國之を賤しむは、禮足らざればなり。故に名を書す。春を以て來り、夏乃ち朝禮を行う。故に經夏に書す。○辟は、匹亦反。

夏、盟・向求成于鄭。旣而背之。盟・向、二邑名。隱十一年、王以與鄭。故求與鄭成。○盟、音孟。向、傷亮反。背、音佩。
【読み】
夏、盟・向成[たい]らぎを鄭に求む。旣にして之に背く。盟・向は、二邑の名。隱十一年、王以て鄭に與う。故に鄭と成らがんことを求む。○盟は、音孟。向は、傷亮反。背は、音佩。

秋、鄭人・齊人・衛人伐盟・向。王遷盟・向之民于郟。郟、王城。
【読み】
秋、鄭人・齊人・衛人盟・向を伐つ。王盟・向の民を郟[こう]に遷す。郟は、王城。

冬、曲沃伯誘晉小子侯殺之。曲沃伯、武公也。小子侯、哀侯子。
【読み】
冬、曲沃の伯晉の小子侯を誘[あざむ]きて之を殺す。曲沃の伯は、武公なり。小子侯は、哀侯の子。


〔經〕八年、春、正月、己卯、烝。無傳。此夏之仲月。非爲過。而書者、爲下五月復烝見瀆也。例在五年。○見、賢遍反。
【読み】
〔經〕八年、春、正月、己卯[つちのと・う]、烝す。傳無し。此れ夏の仲月なり。過ぐるとするには非ず。而るに書すは、下の五月に復烝して瀆すを見す爲なり。例は五年に在り。○見は、賢遍反。

天王使家父來聘。無傳。家父、天子大夫。家、氏。父、字。
【読み】
天王家父をして來聘せしむ。傳無し。家父は、天子の大夫。家は、氏。父は、字。

夏、五月、丁丑、烝。無傳。
【読み】
夏、五月、丁丑[ひのと・うし]、烝す。傳無し。

秋、伐邾。無傳。
【読み】
秋、邾[ちゅ]を伐つ。傳無し。

冬、十月、雨雪。無傳。今八月也。書時失。○雨、于付反。
【読み】
冬、十月、雪雨[ふ]る。傳無し。今の八月なり。時の失を書す。○雨は、于付反。

祭公來。遂逆王后于紀。祭公、諸侯爲天子三公者。王使魯主昏。故祭公來、受命而迎也。天子無外。故因稱王后。卿不書、舉重略輕。○祭、側界反。
【読み】
祭公來る。遂に王后を紀に逆[むか]う。祭公は、諸侯の天子の三公と爲る者なり。王魯をして昏を主らしむ。故に祭公來り、命を受けて迎うるなり。天子は外無し。故に因りて王后と稱す。卿書さざるは、重きを舉げて輕きを略するなり。○祭は、側界反。

傳〕八年、春、滅翼。曲沃滅之。
【読み】
〔傳〕八年、春、翼を滅ぼす。曲沃之を滅ぼす。

隨少師有寵。楚鬭伯比曰、可矣。讎有釁。不可失也。釁、瑕隙也。無德者寵、國之釁也。
【読み】
隨の少師寵有り。楚の鬭伯比曰く、可なり。讎に釁[きん]有り。失う可からざるなり、と。釁は、瑕隙なり。德無き者が寵せらるは、國の釁なり。

夏、楚子合諸侯于沈鹿。沈鹿、楚地。
【読み】
夏、楚子諸侯を沈鹿に合す。沈鹿は、楚の地。

黃・隨不會。黃國、今弋陽縣。
【読み】
黃・隨會せず。黃國は、今の弋陽縣。

使薳章讓黃。責其不會。
【読み】
薳章[いしょう]をして黃を讓[せ]めしむ。其の會せざるを責む。

楚子伐隨、軍於漢・淮之閒。季梁請、下之。弗許而後戰。下之、請服也。○下、遐嫁反。
【読み】
楚子隨を伐ち、漢・淮の閒に軍す。季梁請う、之に下らん。許さずして後に戰わん。之に下るは、服せんと請うなり。○下は、遐嫁反。

所以怒我而怠寇也。少師謂隨侯曰、必速戰。不然、將失楚師。隨侯禦之。
【読み】
我を怒らして寇を怠らす所以なり、と。少師隨侯に謂いて曰く、必ず速やかに戰え。然らずんば、將に楚の師を失わんとす、と。隨侯之を禦ぐ。

望楚師。遙見楚師。
【読み】
楚の師を望む。遙かに楚の師を見る。

季梁曰、楚人上左、君必左。君、楚君也。
【読み】
季梁曰く、楚人は左を上[たっと]べば、君必ず左ならん。君は、楚の君なり。

無與王遇。且攻其右。右無良焉。必敗。偏敗、衆乃攜矣。少師曰、不當王、非敵也。弗從。不從季梁謀。
【読み】
王と遇うこと無かれ。且[しばら]く其の右を攻めよ。右には良無けん。必ず敗れん。偏敗れば、衆乃ち攜[はな]れん、と。少師曰く、王に當たらざれば、敵に非ざるなり、と。從わず。季梁の謀に從わず。

戰于速杞。隨師敗績。隨侯逸。速杞、隨地。逸、逃也。
【読み】
速杞に戰う。隨の師敗績す。隨侯逸る。速杞は、隨の地。逸は、逃るなり。

鬭丹獲其戎車與其戎右少師。鬭丹、楚大夫。戎車、君所乘兵車也。戎右、車右也。寵之、故爲右。
【読み】
鬭丹其の戎車と其の戎右少師とを獲たり。鬭丹は、楚の大夫。戎車は、君の乘る所の兵車なり。戎右は、車右なり。之を寵す、故に右とす。

秋、隨及楚平。楚子將不許。鬭伯比曰、天去其疾矣。去疾、謂少師見獲而死。
【読み】
秋、隨と楚と平らがんとす。楚子將に許さざらんとす。鬭伯比曰く、天其の疾を去れり。疾を去るは、少師獲られて死するを謂う。

隨未可克也。乃盟而還。
【読み】
隨には未だ克つ可からず、と。乃ち盟いて還る。

冬、王命虢仲、立晉哀侯之弟緡于晉。虢仲、王卿士、虢公、林父。○緡、亡巾反。
【読み】
冬、王虢仲に命じて、晉の哀侯の弟緡[びん]を晉に立つ。虢仲は、王の卿士、虢公、林父。○緡は、亡巾反。

祭公來。遂逆王后于紀。禮也。天子娶於諸侯、使同姓諸侯爲之主。祭公來受命於魯。故曰禮。
【読み】
祭公來る。遂に王后を紀に逆う。禮なり。天子諸侯に娶れば、同姓の諸侯をして之が主爲らしむ。祭公來りて命を魯に受く。故に禮と曰う。


〔經〕九年、春、紀季姜歸于京師。季姜、桓王后也。季、字。姜、紀姓也。書字者、伸父母之尊。
【読み】
〔經〕九年、春、紀の季姜京師に歸[とつ]ぐ。季姜は、桓王の后なり。季は、字。姜は、紀の姓なり。字を書すは、父母の尊きを伸ぶるなり。

夏、四月。秋、七月。冬、曹伯使其世子射姑來朝。曹伯有疾。故使其子來朝。○射姑、音亦。又音夜。
【読み】
夏、四月。秋、七月。冬、曹伯其の世子射姑[やこ]をして來朝せしむ。曹伯疾有り。故に其の子をして來朝せしむ。○射姑は、音亦。又音夜。

〔傳〕九年、春、紀季姜歸于京師。凡諸侯之女行、唯王后書。爲書婦人行例也。適諸侯、雖告魯猶不書。
【読み】
〔傳〕九年、春、紀の季姜京師に歸ぐ。凡そ諸侯の女の行く、唯王后のみ書す。婦人の行くを書す爲の例なり。諸侯に適くは、魯に告ぐると雖も猶書さず。

巴子使韓服告于楚、請與鄧爲好。韓服、巴行人。巴國、在巴郡江州縣。
【読み】
巴子韓服をして楚に告げしめて、鄧と好を爲さんと請う。韓服は、巴の行人。巴國は、巴郡の江州縣に在り。

楚子使道朔將巴客以聘於鄧。道朔、楚大夫。巴客、韓服。
【読み】
楚子道朔をして巴の客を將[い]て以て鄧に聘せしむ。道朔は、楚の大夫。巴の客は、韓服なり。

鄧南鄙鄾人、攻而奪之幣、鄾、在今鄧縣南、沔水之北。○鄾、音憂。
【読み】
鄧の南鄙の鄾人[ゆうひと]、攻めて之が幣を奪い、鄾は、今の鄧縣の南、沔水の北に在り。○鄾は、音憂。

殺道朔及巴行人。楚子使薳章讓於鄧。鄧人弗受。言非鄾人所攻。
【読み】
道朔と巴の行人とを殺す。楚子薳章[いしょう]をして鄧を讓[せ]めしむ。鄧人受けず。鄾人の攻むる所に非ずと言う。

夏、楚使鬭廉帥師及巴師圍鄾。鬭廉、楚大夫。
【読み】
夏、楚鬭廉をして師を帥て巴の師と鄾を圍ましむ。鬭廉は、楚の大夫。

鄧養甥・耼甥帥師救鄾、三逐巴師。不克。二甥、皆鄧大夫。○耼、乃甘反。
【読み】
鄧の養甥[ようせい]・耼甥[たんせい]師を帥て鄾を救い、三たび巴の師を逐う。克たず。二甥は、皆鄧の大夫。○耼は、乃甘反。

鬭廉衡陳其師於巴師之中、以戰而北。衡、橫也。分巴師爲二部。鬭廉橫陳於其閒、以與鄧師戰而僞北。北、走也。○衡、如字。一音橫。陳、直覲反。
【読み】
鬭廉其の師を巴師の中に衡陳して、以て戰いて北[に]ぐ。衡は、橫なり。巴の師を分けて二部とす。鬭廉其の閒に橫陳して、以て鄧の師と戰いて僞り北ぐ。北は、走るなり。○衡は、字の如し。一に音橫。陳は、直覲反。

鄧人逐之、背巴師。而夾攻之。楚師僞走、鄧師逐之、背巴師。巴師攻之。楚師自前還與戰。○背、音佩。
【読み】
鄧人之を逐いて、巴の師を背にす。而して夾みて之を攻む。楚師僞りて走り、鄧の師之を逐いて、巴の師を背にす。巴の師之を攻む。楚の師前より還りて與に戰う。○背は、音佩。

鄧師大敗。鄾人宵潰。宵、夜也。
【読み】
鄧師大いに敗れぬ。鄾人宵潰[つい]ゆ。宵は、夜なり。

秋、虢仲・芮伯・梁伯・荀侯・賈伯伐曲沃。梁國、在馮翊夏陽縣。荀・賈、皆國名。
【読み】
秋、虢仲・芮伯・梁伯・荀侯・賈伯曲沃を伐つ。梁國は、馮翊夏陽縣に在り。荀・賈は、皆國の名。

冬、曹大子來朝。賓之以上卿。禮也。諸侯之適子、未誓於天子、而攝其君、則以皮帛繼子男。故賓之以上卿。各當其國之上卿。○適、丁歷反。
【読み】
冬、曹の大子來朝す。之を賓するに上卿を以てす。禮なり。諸侯の適子、未だ天子に誓せずして、其の君を攝するは、則ち皮帛を以て子男に繼ぐ。故に之を賓するに上卿を以てす。各々其の國の上卿に當たるなり。○適は、丁歷反。

享曹大子。初獻、樂奏而歎。酒始獻。
【読み】
曹の大子を享す。初めて獻ずるとき、樂奏して歎ず。酒始めて獻ず。

施父曰、曹大子其有憂乎。非歎所也。施父、魯大夫。○施、色豉反。
【読み】
施父曰く、曹の大子は其れ憂え有らんか。歎ずる所に非ざるなり、と。施父は、魯の大夫。○施は、色豉反。


〔經〕十年、春、王正月、庚申、曹伯終生卒。未同盟、而赴以名。
【読み】
〔經〕十年、春、王の正月、庚申[かのえ・さる]、曹伯終生卒す。未だ同盟せざるに、赴[つ]ぐるに名を以てす。

夏、五月、葬曹桓公。無傳。
【読み】
夏、五月、曹の桓公を葬る。傳無し。

秋、公會衛侯于桃丘。弗遇。無傳。衛侯與公爲會期、中背公更與齊・鄭。故公獨往而不相遇也。桃丘、衛地。濟北東阿縣東南有桃城。
【読み】
秋、公衛侯に桃丘に會せんとす。遇わず。傳無し。衛侯公と會期を爲し、中ごろ公に背いて更に齊・鄭に與す。故に公獨り往いて相遇わざるなり。桃丘は、衛の地。濟北東阿縣の東南に桃城有り。

冬、十有二月、丙午、齊侯・衛侯・鄭伯來戰于郎。改侵伐而書來戰、善魯之用周班、惡三國討有辭。○惡、烏洛反。又烏路反。
【読み】
冬、十有二月、丙午[ひのえ・うま]、齊侯・衛侯・鄭伯來りて郎に戰う。侵伐を改めて來戰と書すは、魯の周班を用ゆるを善し、三國の有辭を討ずるを惡むなり。○惡は、烏洛反。又烏路反。

〔傳〕十年、春、曹桓公卒。終施父之言。
【読み】
〔傳〕十年、春、曹の桓公卒す。施父の言を終う。

虢仲譖其大夫詹父於王。虢仲、王卿士。詹父、屬大夫。○譖、側鴆反。
【読み】
虢仲其の大夫詹父[せんぽ]を王に譖る。虢仲は、王の卿士。詹父は、屬大夫。○譖は、側鴆反。

詹父有辭。以王師伐虢。夏、虢公出奔虞。虞國、在河東大陽縣。
【読み】
詹父辭有り。王の師を以て虢を伐つ。夏、虢公出でて虞に奔る。虞國は、河東大陽縣に在り。

秋、秦人納芮伯萬于芮。四年圍魏所執者。
【読み】
秋、秦人芮伯萬を芮に納る。四年魏を圍みて執る所の者なり。

初、虞叔有玉。虞叔、虞公之弟。
【読み】
初め、虞叔玉有り。虞叔は、虞公の弟。

虞公求旃。旃、之也。○旃、之然反。
【読み】
虞公旃[これ]を求む。旃[せん]は、之なり。○旃は、之然反。

弗獻。旣而悔之曰、周諺有之。匹夫無罪。懷璧其罪。人利其璧、以璧爲罪。
【読み】
獻ぜず。旣にして之を悔いて曰く、周の諺に之れ有り。匹夫罪無し。璧を懷くは其れ罪なり、と。人其の璧を利として、璧を以て罪と爲す。

吾焉用此。其以賈害也。賈、買也。○焉、音煙。賈、音古。
【読み】
吾れ焉ぞ此を用いん。其れ以て害を賈わんや、と。賈は、買うなり。○焉は、音煙。賈は、音古。

乃獻之。又求其寶劍。叔曰、是無厭也。無厭將及我。將殺我。○厭、於鹽反。
【読み】
乃ち之を獻ず。又其の寶劍を求む。叔曰く、是れ厭くこと無し。厭くこと無くんば將に我に及ばんとす、と。將に我を殺さんとす。○厭は、於鹽反。

遂伐虞公。故虞公出奔共池。共池、地名。闕。○共、音洪。一音恭。
【読み】
遂に虞公を伐つ。故に虞公出でて共池に奔る。共池は、地の名。闕く。○共は、音洪。一に音恭。

冬、齊・衛・鄭來戰于郎、我有辭也。
【読み】
冬、齊・衛・鄭來りて郎に戰うとは、我れ辭有るなり。

初北戎病齊、在六年。
【読み】
初め北戎齊を病ましめ、六年に在り。

諸侯救之、鄭公子忽有功焉。齊人餼諸侯、使魯次之、魯以周班後鄭、鄭人怒、請師於齊。齊人以衛師助之。故不稱侵伐。不稱侵伐、而以戰爲文、明魯直諸侯曲。故言我有辭。以禮自釋、交綏而退無敗績。○綏、荀隹反。
【読み】
諸侯之を救いしとき、鄭の公子忽功有り。齊人諸侯に餼し、魯をして之を次でせしに、魯周班を以て鄭を後にせしかば、鄭人怒り、師を齊に請う。齊人衛の師を以[い]て之を助く。故に侵伐を稱せず。侵伐を稱せずして、戰を以て文を爲すは、魯は直く諸侯は曲れるを明かす。故に我れ辭有りと言う。禮を以て自ら釋き、交々綏[すい]して退いて敗績すること無し。○綏は、荀隹反。

先書齊・衛、王爵也。鄭主兵、而序齊・衛下者、以王爵次之也。春秋所以見魯猶秉周禮。
【読み】
先ず齊・衛を書すは、王爵なればなり。鄭兵を主りて、齊・衛の下に序ずるは、王爵を以て之を次[つい]ずるなり。春秋魯猶周の禮を秉るを見す所以なり。


〔經〕十有一年、春、正月、齊人・衛人・鄭人盟于惡曹。惡曹、地闕。
【読み】
〔經〕十有一年、春、正月、齊人・衛人・鄭人惡曹に盟う。惡曹は、地闕く。

夏、五月、癸未、鄭伯寤生卒。同盟於元年、赴以名。
【読み】
夏、五月、癸未[みずのと・ひつじ]、鄭伯寤生卒す。元年に同盟し、赴[つ]ぐるに名を以てす。

秋、七月、葬鄭莊公。無傳。三月而葬。速。
【読み】
秋、七月、鄭の莊公を葬る。傳無し。三月にして葬る。速きなり。

九月、宋人執鄭祭仲。祭、氏。仲、名。不稱行人、聽迫脅以逐君、罪之也。行人例、在襄十一年。釋例詳之。
【読み】
九月、宋人鄭の祭仲を執う。祭は、氏。仲は、名。行人と稱せざるは、迫り脅すを聽[ゆる]して以て君を逐えば、之を罪するなり。行人の例は、襄十一年に在り。釋例之を詳らかにす。

突歸于鄭。突、厲公也。爲宋所納。故曰歸。例在成十八年。不稱公子、從告也。文連祭仲。故不言鄭。
【読み】
突鄭に歸る。突は、厲公なり。宋の爲に納れらる。故に歸ると曰う。例は成十八年に在り。公子と稱せざるは、告ぐるに從うなり。文祭仲に連なる。故に鄭と言わず。

鄭忽出奔衛。忽、昭公也。莊公旣葬、不稱爵者、鄭人賤之、以名赴。
【読み】
鄭の忽出でて衛に奔る。忽は、昭公なり。莊公旣に葬りて、爵を稱せざるは、鄭人之を賤しみ、名を以て赴ぐればなり。

柔會宋公・陳侯・蔡叔盟于折。無傳。柔、魯大夫。未賜族者。蔡叔、蔡大夫。叔、名也。折、地闕。○折、之設反。
【読み】
柔宋公・陳侯・蔡の叔に會して折に盟う。傳無し。柔は、魯の大夫。未だ族を賜わざる者なり。蔡の叔は、蔡の大夫。叔は、名なり。折は、地闕く。○折は、之設反。

公會宋公于夫鍾。無傳。夫鍾、郕地。○夫、音扶。
【読み】
公宋公に夫鍾に會す。傳無し。夫鍾は、郕[せい]の地。○夫は、音扶。

冬、十有二月、公會宋公于闞。無傳。闞、魯地。在東平須昌縣東南。○闞、口暫反。
【読み】
冬、十有二月、公宋公に闞[かん]に會す。傳無し。闞は、魯の地。東平須昌縣の東南に在り。○闞は、口暫反。

〔傳〕十一年、春、齊・衛・鄭・宋盟于惡曹。宋不書、經闕。
【読み】
〔傳〕十一年、春、齊・衛・鄭・宋惡曹に盟う。宋書さざるは、經闕けたり。

楚屈瑕將盟貳・軫。貳・軫、二國名。○屈、居勿反。
【読み】
楚の屈瑕將に貳[じ]・軫[しん]に盟わんとす。貳・軫は、二國の名。○屈は、居勿反。

鄖人軍於蒲騷、將與隨・絞・州・蓼伐楚師。鄖國、在江夏。雲杜縣東南有鄖城。蒲騷、鄖邑。絞、國名。州國、在南郡華容縣東南。蓼國、今義陽棘縣東南湖陽城。○鄖、音云。騷、音蕭。絞、古卯反。
【読み】
鄖人[うんひと]蒲騷に軍して、將に隨・絞・州・蓼[りょう]と楚の師を伐たんとす。鄖國は、江夏に在り。雲杜縣の東南に鄖城有り。蒲騷は、鄖の邑。絞は、國の名。州國は、南郡華容縣の東南に在り。蓼國は、今の義陽棘縣の東南の湖陽城。○鄖は、音云。騷は、音蕭。絞は、古卯反。

莫敖患之。莫敖、楚官名。卽屈瑕。○敖、五刀反。
【読み】
莫敖之を患う。莫敖は、楚の官名。卽ち屈瑕なり。○敖は、五刀反。

鬭廉曰、鄖人軍其郊、必不誡。且日虞四邑之至也。虞、度也。四邑、隨・絞・州・蓼也。邑亦國也。
【読み】
鬭廉曰く、鄖人其の郊に軍すれば、必ず誡めじ。且つ日々に四邑の至るを虞[はか]らん。虞は、度るなり。四邑は、隨・絞・州・蓼なり。邑も亦國なり。

君次於郊郢以禦四邑。君、謂屈瑕也。郊郢、楚地。○郢、以井反。
【読み】
君は郊郢[こうえい]に次[やど]りて以て四邑を禦げ。君は、屈瑕を謂うなり。郊郢は、楚の地。○郢は、以井反。

我以銳師宵加於鄖。鄖有虞心而恃其城、恃近其城。
【読み】
我れ銳師を以て宵鄖に加えん。鄖虞る心有りて其の城を恃めば、其の城に近きを恃むなり。

莫有鬭志。若敗鄖師、四邑必離。
【読み】
鬭志有ること莫けん。若し鄖の師を敗らば、四邑必ず離れん、と。

莫敖曰、盍請濟師於王。盍、何不也。濟、益也。
【読み】
莫敖曰く、盍ぞ師を濟[ま]すことを王に請わざる、と。盍は、何ぞせざるなり。濟は、益すなり。

對曰、師克、在和、不在衆。商・周之不敵、君之所聞也。商、紂也。周、武王也。傳曰、武王有亂臣十人、紂有億兆夷人。
【読み】
對えて曰く、師の克つは、和に在り、衆に在らず。商・周の敵せざりしは、君の聞ける所なり。商は、紂なり。周は、武王なり。傳に曰く、武王亂臣十人有り、紂億兆の夷人有り、と。

成軍以出。又何濟焉。
【読み】
軍を成して以て出でたり。又何ぞ濟さん、と。

莫敖曰、卜之。對曰、卜以決疑。不疑何卜。遂敗鄖師於蒲騷、卒盟而還。卒盟貳・軫。
【読み】
莫敖曰く、之を卜せん、と。對えて曰く、卜は以て疑いを決す。疑わずんば何ぞ卜せん、と。遂に鄖の師を蒲騷に敗り、卒に盟いて還れり。卒に貳・軫に盟う。

鄭昭公之敗北戎也、在六年。
【読み】
鄭の昭公の北戎を敗りしや、六年に在り。

齊人將妻之。昭公辭。祭仲曰、必取之。君多内寵、子無大援。將不立。三公子皆君也。子突、子亹、子儀之母、皆有寵。○妻、七計反。亹、亡匪反。
【読み】
齊人將に之を妻せんとす。昭公辭す。祭仲曰く、必ず之を取[めと]れ。君内寵多く、子大いなる援け無し。將に立たざらんとす。三公子は皆君なり、と。子突、子亹[び]、子儀の母、皆寵有り。○妻は、七計反。亹は、亡匪反。

弗從。
【読み】
從わざりき。

夏、鄭莊公卒。
【読み】
夏、鄭の莊公卒す。

初、祭封人仲足有寵於莊公。祭、鄭地。陳留長垣縣東北有祭城。封人、守封疆者。因以所守爲氏。
【読み】
初め、祭の封人仲足莊公に寵有り。祭は、鄭の地。陳留長垣縣の東北に祭城有り。封人は、封疆を守る者。因りて守る所を以て氏とす。

莊公使爲卿。爲公娶鄧曼。生昭公。故祭仲立之。曼、鄧姓。○爲、于僞反。曼、音萬。
【読み】
莊公卿爲らしむ。公の爲に鄧曼を娶る。昭公を生めり。故に祭仲之を立つ。曼は、鄧の姓。○爲は、于僞反。曼は、音萬。

宋雍氏女於鄭莊公。曰雍姞。生厲公。雍、氏。姞、姓。宋大夫也。以女妻人曰女。○雍、於恭反。女、尼據反。姞、其吉反。
【読み】
宋の雍氏鄭の莊公に女[めあ]わす。雍姞[ようきつ]と曰う。厲公を生む。雍は、氏。姞は、姓。宋の大夫なり。女を以て人に妻すを女と曰う。○雍は、於恭反。女は、尼據反。姞は、其吉反。

雍氏宗有寵於宋莊公。故誘祭仲而執之。祭仲之如宋、非會非聘、見誘而以行人應命。
【読み】
雍氏の宗宋の莊公に寵有り。故に祭仲を誘[あざむ]きて之を執う。祭仲の宋に如くは、會に非ず聘に非ず、誘かれて行人を以て命に應ず。

曰、不立突、將死。亦執厲公而求賂焉。祭仲與宋人盟、以厲公歸而立之。
【読み】
曰く、突を立てずんば、將に死なんとす、と。亦厲公を執えて賂を求む。祭仲宋人と盟い、厲公を以[い]て歸りて之を立つ。

秋、九月、丁亥、昭公奔衛。己亥、厲公立。雍氏宗宗、宗族也。指其大宗。與昭廿八年、梗陽人大宗同。
【読み】
秋、九月、丁亥[ひのと・い]、昭公衛に奔る。己亥[つちのと・い]、厲公立つ。雍氏の宗の宗は、宗族なり。其の大宗を指す。昭廿八年、梗陽人大宗と同じ。


〔經〕十有二年、春、正月。夏、六月、壬寅、公會杞侯・莒子盟于曲池。曲池、魯地。魯國汶陽縣北有曲水亭。
【読み】
〔經〕十有二年、春、正月。夏、六月、壬寅[みずのえ・とら]、公杞侯・莒子に會して曲池に盟う。曲池は、魯の地。魯國汶陽縣の北に曲水亭有り。

秋、七月、丁亥、公會宋公・燕人盟于穀丘。穀丘、宋地。燕人、南燕大夫。
【読み】
秋、七月、丁亥[ひのと・い]、公宋公・燕人に會して穀丘に盟う。穀丘は、宋の地。燕人は、南燕の大夫。

八月、壬辰、陳侯躍卒。無傳。厲公也。十一年、與魯大夫盟於折。不書葬、魯不會也。壬辰、七月二十三日。書於八月、從赴。
【読み】
八月、壬辰[みずのえ・たつ]、陳侯躍卒す。傳無し。厲公なり。十一年、魯の大夫と折に盟う。葬を書さざるは、魯會せざればなり。壬辰は、七月二十三日。八月に書すは、赴[つ]ぐるに從うなり。

公會宋公于虛。虛、宋地。○虛、去魚反。
【読み】
公宋公に虛に會す。虛は、宋の地。○虛は、去魚反。

冬、十有一月、公會宋公于龜。龜、宋地。
【読み】
冬、十有一月、公宋公に龜に會す。龜は、宋の地。

丙戌、公會鄭伯盟于武父。武父、鄭地。陳留濟陽縣東北有武父城。
【読み】
丙戌[ひのえ・いぬ]、公鄭伯に會して武父に盟う。武父は、鄭の地。陳留濟陽縣の東北に武父城有り。

丙戌、衛侯晉卒。無傳。重書丙戌、非義例。因史成文也。未同盟、而赴以名。
【読み】
丙戌、衛侯晉卒す。傳無し。重ねて丙戌を書すは、義例に非ず。史の成文に因るなり。未だ同盟せざれども、赴ぐるに名を以てす。

十有二月、及鄭師伐宋。丁未、戰于宋。旣書伐宋、又重書戰者、以見宋之無信也。莊十一年傳例曰、皆陳曰戰。尤其無信。故以獨戰爲文。
【読み】
十有二月、鄭の師と宋を伐つ。丁未[ひのと・ひつじ]、宋に戰う。旣に宋を伐つと書して、又重ねて戰うと書すは、以て宋の信無きを見すなり。莊十一年の傳例に曰く、皆陳するを戰と曰う、と。其の信無きを尤[とが]む。故に獨戰を以て文を爲す。

〔傳〕十二年、夏、盟于曲池、平杞・莒也。隱四年、莒人伐杞。自是遂不平。
【読み】
〔傳〕十二年、夏、曲池に盟うは、杞・莒を平らぐるなり。隱四年、莒人杞を伐つ。是れより遂に平らがず。

公欲平宋・鄭。秋、公及宋公盟于句瀆之丘。句瀆之丘、卽穀丘也。宋以立厲公故、多責賂於鄭。鄭人不堪。故不平。○句、古侯反。瀆、音豆。
【読み】
公宋・鄭を平らげんと欲す。秋、公と宋公と句瀆[こうとう]の丘に盟う。句瀆の丘は、卽ち穀丘なり。宋厲公を立つるを以ての故に、多く賂を鄭に責む。鄭人堪えず。故に平らがず。○句は、古侯反。瀆は、音豆。

宋成未可知也。故又會于虛。冬、又會于龜。宋公辭平。故與鄭伯盟于武父。宋公貪鄭賂。故與公三會、而卒辭不與鄭平。
【読み】
宋の成[たい]らぎ未だ知る可からず。故に又虛に會す。冬、又龜に會す。宋公平らぎを辭す。故に鄭伯と武父に盟う。宋公鄭の賂を貪る。故に公と三たび會すれども、卒に辭して鄭と平らがず。

遂帥師而伐宋、戰焉。宋無信也。
【読み】
遂に師を帥て宋を伐ち、戰う。宋信無ければなり。

君子曰、苟信不繼、盟無益也。詩云、君子屢盟。亂是用長。無信也。詩、小雅。言無信故數盟。數盟則情疏。情疏則憾結。故云長亂。○長、丁丈反。
【読み】
君子曰く、苟も信繼がざれば、盟も益無し、と。詩に云う、君子屢々盟う。亂是を用て長ず、と。信無ければなり。詩は、小雅。言うこころは、信無き故に數々盟う。數々盟えば則ち情疏なり。情疏なれば則ち憾み結ぶ。故に亂を長ずと云う。○長は、丁丈反。

楚伐絞、軍其南門。莫敖屈瑕曰、絞小而輕。輕則寡謀。請無扞采樵者以誘之。扞、衛也。樵、薪也。○輕、遣政反。扞、戶旦反。
【読み】
楚絞を伐ち、其の南門に軍す。莫敖屈瑕曰く、絞小にして輕々し。輕々しければ則ち謀寡し。請う、樵を采る者を扞[まも]ること無くして以て之を誘[あざむ]かん、と。扞は、衛るなり。樵は、薪なり。○輕は、遣政反。扞は、戶旦反。

從之。絞人獲三十人。獲楚人也。
【読み】
之に從う。絞人三十人を獲たり。楚人を獲るなり。

明日絞人爭出、驅楚役徒於山中。楚人坐其北門、而覆諸山下。坐、猶守也。覆、設伏兵而待之。○覆、扶又反。
【読み】
明日絞人爭い出でて、楚の役徒を山中に驅る。楚人其の北門を坐[まも]りて、諸を山下に覆[おそ]う。坐は、猶守るのごとし。覆は、伏兵を設けて之を待つなり。○覆は、扶又反。

大敗之、爲城下之盟而還。城下盟、諸侯所深恥。
【読み】
大いに之を敗り、城下の盟を爲して還る。城下の盟は、諸侯の深く恥ずる所なり。

伐絞之役、楚師分涉於彭。彭水、在新城昌魏縣。
【読み】
絞を伐つの役に、楚の師分かれて彭を涉[わた]る。彭水は、新城昌魏縣に在り。

羅人欲伐之、使伯嘉諜之。三巡數之。羅、熊姓國。在宜城縣西山中。後徙南郡枝江縣。伯嘉、羅大夫。諜、伺也。巡、徧也。○數、色主反。
【読み】
羅人之を伐たんと欲し、伯嘉をして之を諜[うかが]わしむ。三たび巡りて之を數えぬ。羅は、熊姓の國。宜城縣の西山中に在り。後に南郡の枝江縣に徙る。伯嘉は、羅の大夫。諜は、伺うなり。巡は、徧[めぐ]るなり。○數は、色主反。


〔經〕十有三年、春、二月、公會紀侯・鄭伯、己巳、及齊侯・宋公・衛侯・燕人戰。齊師・宋師・衛師・燕師敗績。大崩曰敗績。例在莊十一年。或稱人、或稱師、史異辭也。衛宣公未葬、惠公稱侯以接鄰國、非禮也。
【読み】
〔經〕十有三年、春、二月、公紀侯・鄭伯に會し、己巳[つちのと・み]、齊侯・宋公・衛侯・燕人と戰う。齊の師・宋の師・衛の師・燕の師敗績す。大崩を敗績と曰う。例は莊十一年に在り。或は人と稱し、或は師と稱するは、史の異辭なり。衛の宣公未だ葬らざるに、惠公侯と稱して以て鄰國に接するは、禮に非ざるなり。

三月、葬衛宣公。無傳。
【読み】
三月、衛の宣公を葬る。傳無し。

夏、大水。無傳。
【読み】
夏、大水あり。傳無し。

秋、七月。冬、十月。無傳。
【読み】
秋、七月。冬、十月。傳無し。

〔傳〕十三年、春、楚屈瑕伐羅。鬭伯比送之、還。謂其御曰、莫敖必敗。舉趾高。心不固矣。趾、足也。
【読み】
〔傳〕十三年、春、楚の屈瑕羅を伐つ。鬭伯比之を送り、還る。其の御に謂いて曰く、莫敖は必ず敗れん。趾を舉ぐること高し。心固からず、と。趾は、足なり。

遂見楚子曰、必濟師。難言屈瑕將敗。故以益師諷諫。○見、賢遍反。難、乃旦反。
【読み】
遂に楚子に見えて曰く、必ず師を濟[ま]せ、と。屈瑕將に敗れんとするを言うことを難んずる。故に師を益すを以て諷諫す。○見は、賢遍反。難は、乃旦反。

楚子辭焉。不解其旨。故拒之。○解、戶買反。
【読み】
楚子辭す。其の旨を解せず。故に之を拒む。○解は、戶買反。

入告夫人鄧曼。鄧曼曰、大夫其非衆之謂。鄧曼、楚武王夫人。言伯比意不在於益衆也。
【読み】
入りて夫人鄧曼に告ぐ。鄧曼曰く、大夫は其れ衆を謂うには非ず。鄧曼は、楚の武王の夫人。言うこころは、伯比が意は衆を益すに在らず。

其謂君撫小民以信、訓諸司以德、而威莫敖以刑也。莫敖狃於蒲騷之役、將自用也。狃、也。蒲騷役、在十一年。○狃、女久反。、時世反。
【読み】
其れ君の小民を撫づるに信を以てし、諸司を訓[おし]うるに德を以てして、莫敖を威[おど]すに刑を以てせんことを謂うならん。莫敖蒲騷の役に狃[な]れて、將に自ら用いんとす。狃[じゅう]は、[せつ]なり。蒲騷の役は、十一年に在り。○狃は、女久反。は、時世反。
は立心偏に犬とある。


必小羅。君若不鎭撫、其不設備乎。夫固謂君訓衆而好鎭撫之、撫小民以信也。○好、呼報反。又如字。
【読み】
必ず羅を小なりとせん。君若し鎭撫せずんば、其れ備えを設けざらんか。夫れ固より君の衆に訓えて好く之を鎭撫し、小民を撫づるに信を以てするなり。○好は、呼報反。又字の如し。

召諸司而勸之以令德、訓諸司以德也。
【読み】
諸司を召して之を勸むるに令德を以てし、諸司を訓うるに德を以てするなり。

見莫敖而告諸天之不假易也。諸、之也。言天不借貸慢易之人。威莫敖以刑也。○易、以豉反。
【読み】
莫敖を見て諸に天の易[あなど]るに假さざるを告げんことを謂うならん。諸は、之なり。言うこころは、天は慢易の人に借貸せず。莫敖を威すに刑を以てするなり。○易は、以豉反。

不然、夫豈不知楚師之盡行也。
【読み】
然らずんば、夫れ豈楚の師の盡く行きしを知らざんや、と。

楚子使賴人追之。不及。賴國、在義陽縣。賴人仕於楚者。○盡、津忍反。此類可以意求。
【読み】
楚子賴人をして之を追わしむ。及ばず。賴國は、義陽縣に在り。賴人は楚に仕うる者。○盡は、津忍反。此の類意を以て求む可し。

莫敖使徇于師曰、諫者有刑。徇、宣令也。○徇、似俊反。
【読み】
莫敖師に徇[とな]えしめて曰く、諫むる者は刑有らん、と。徇は、令を宣ぶるなり。○徇は、似俊反。

及鄢、亂次以濟。鄢水、在襄陽宜城縣。入漢。○鄢、於晩反。又於萬反。
【読み】
鄢[えん]に及び、次を亂して以て濟[わた]る。鄢水は、襄陽の宜城縣に在り。漢に入る。○鄢は、於晩反。又於萬反。

遂無次。且不設備、及羅。羅與盧戎兩軍之、盧戎、南蠻。
【読み】
遂に次無し。且備えを設けず、羅に及ぶ。羅と盧戎と兩つどころより之に軍し、盧戎は、南蠻。

大敗之。莫敖縊于荒谷。羣帥囚于冶父、縊、自經也。荒谷・冶父、皆楚地。
【読み】
大いに之を敗る。莫敖荒谷に縊[くび]る。羣帥冶父に囚われて、縊は、自ら經するなり。荒谷・冶父は、皆楚の地。

以聽刑。楚子曰、孤之罪也。皆免之。
【読み】
以て刑を聽く。楚子曰く、孤の罪なり、と。皆之を免す。

宋多責賂於鄭。立突賂。
【読み】
宋多く賂を鄭に責む。突を立つる賂なり。

鄭不堪命。故以紀・魯及齊與宋・衛・燕戰。不書所戰、後也。公後地期、而及其戰。故不書所戰之地。
【読み】
鄭命に堪えず。故に紀・魯を以[い]て齊と宋・衛・燕と戰う。戰う所を書さざるは、後れたればなり。公地期に後れて、其の戰に及ぶ。故に戰う所の地を書さず。

鄭人來請脩好。
【読み】
鄭人來りて好を脩めんことを請う。


〔經〕十有四年、春、正月、公會鄭伯于曹。脩十二年武父之好。以曹地、曹與會。
【読み】
〔經〕十有四年、春、正月、公鄭伯に曹に會す。十二年武父の好を脩む。曹を以て地するは、曹も會に與るなり。

無冰。無傳。書時失。
【読み】
冰無し。傳無し。時の失を書す。

夏、五、不書月、闕文。
【読み】
夏、五、月を書さざるは、闕文なり。

鄭伯使其弟語來盟。秋、八月、壬申、御廩災。御廩、藏公所親耕以奉粢盛之倉。天火曰災。例在宣十六年。○廩、力錦反。
【読み】
鄭伯其の弟語をして來盟せしむ。秋、八月、壬申[みずのえ・さる]、御廩災あり。御廩は、公の親ら耕して以て粢盛に奉ずる所を藏むるの倉。天火を災と曰う。例は宣十六年に在り。○廩は、力錦反。

乙亥、嘗。先其時、亦過也。旣戒日致齊。廩雖災、苟不害嘉穀、則祭不應廢。故書以示法。○先、悉薦反。
【読み】
乙亥[きのと・い]、嘗す。其の時に先だつも、亦過つなり。旣に日を戒めて致齊す。廩災ありと雖も、苟も嘉穀を害せざれば、則ち祭廢す應からず。故に書して以て法を示す。○先は、悉薦反。

冬、十有二月、丁巳、齊侯祿父卒。無傳。隱六年盟於艾。
【読み】
冬、十有二月、丁巳[ひのと・み]、齊侯祿父卒す。傳無し。隱六年艾[がい]に盟う。

宋人以齊人・蔡人・衛人・陳人伐鄭。凡師能左右之曰以。例在僖二十六年。
【読み】
宋人齊人・蔡人・衛人・陳人を以[い]て鄭を伐つ。凡そ師能く之を左右するを以ると曰う。例は僖二十六年に在り。

〔傳〕十四年、春、會于曹。曹人致餼。禮也。熟曰饔、生曰餼。
【読み】
〔傳〕十四年、春、曹に會す。曹人餼を致す。禮なり。熟を饔と曰い、生を餼と曰う。

夏、鄭子人來尋盟、且脩曹之會。子人、卽弟語也。其後爲子人氏。
【読み】
夏、鄭の子人來りて盟を尋[かさ]ね、且曹の會を脩む。子人は、卽ち弟語なり。其の後を子人氏とす。

秋、八月、壬申、御廩災。乙亥、嘗、書不害也。災其屋。救之則息。不及穀。故曰書不害。
【読み】
秋、八月、壬申[みずのえ・さる]、御廩災あり。乙亥[きのと・い]、嘗すとは、害あらざるを書すなり。其の屋に災す。之を救えば則ち息む。穀に及ばず。故に害あらざるを書すと曰う。

冬、宋人以諸侯伐鄭、報宋之戰也。在十二年。
【読み】
冬、宋人諸侯を以て鄭を伐つは、宋の戰に報ゆるなり。十二年に在り。

焚渠門、入及大逵、渠門、鄭城門。逵、道方九軌。
【読み】
渠門を焚き、入りて大逵[たいき]に及び、渠門は、鄭の城門。逵は、道九軌を方[なら]ぶるなり。

伐東郊、取牛首。東郊、鄭郊。牛首、鄭邑。
【読み】
東郊を伐ち、牛首を取る。東郊は、鄭の郊。牛首は、鄭の邑。

以大宮之椽歸、爲盧門之椽。大宮、鄭祖廟。盧門、宋城門。告伐而不告入取。故不書。○大、音泰。
【読み】
大宮の椽を以て歸り、盧門の椽と爲す。大宮は、鄭の祖廟。盧門は、宋の城門。伐つを告げて入りて取るを告げず。故に書さず。○大は、音泰。


〔經〕十有五年、春、二月、天王使家父來求車。三月、乙未、天王崩。無傳。桓王也。
【読み】
〔經〕十有五年、春、二月、天王家父をして來りて車を求めしむ。三月、乙未[きのと・ひつじ]、天王崩ず。傳無し。桓王なり。

夏、四月、己巳、葬齊僖公。無傳。
【読み】
夏、四月、己巳[つちのと・み]、齊の僖公を葬る。傳無し。

五月、鄭伯突出奔蔡。突旣簒立、權不足以自固、又不能倚任祭仲、反與小臣造賊盜之計。故以自奔爲文、罪之也。例在昭三年。
【読み】
五月、鄭伯突出でて蔡に奔る。突旣に簒立し、權以て自ら固くするに足らず、又祭仲に倚任すること能わず、反って小臣と賊盜の計を造す。故に自ら奔るを以て文を爲すは、之を罪するなり。例は昭三年に在り。

鄭世子忽復歸于鄭。忽實居君位。故今還、以復其位之例爲文也。稱世子者、忽爲大子、有母氏之寵、宗卿之援、有功於諸侯。此大子之盛者也。而守介節、以失大國之助、知三公子之强、不從祭仲之言、修小善、絜小行、從匹夫之仁、忘社稷之大計。故君子謂之善自爲謀。言不能謀國也。父卒而不能自君、鄭人亦不君之、出則降名以赴、入則逆以大子之禮。始於見逐、終於見殺。三公子更立、亂鄭國者、實忽之由。復歸例在成十八年。
【読み】
鄭の世子忽鄭に復歸す。忽實に君位に居る。故に今還るとき、其の位に復るの例を以て文を爲すなり。世子と稱するは、忽大子と爲りて、母氏の寵、宗卿の援け有り、諸侯に功有り。此れ大子の盛んなる者なり。而れども介節を守りて、以て大國の助けを失い、三公子の强きを知れども、祭仲の言に從わず、小善を修め、小行を絜くして、匹夫の仁に從い、社稷の大計を忘る。故に君子之を善く自ら謀を爲すと謂う。國を謀ること能わざるを言うなり。父卒して自ら君たること能わず、鄭人も亦之を君とせず、出づれば則ち名を降して以て赴[つ]げ、入れば則ち逆[むか]うるに大子の禮を以てす。逐わるるに始まり、殺さるるに終わる。三公子更々立ちて、鄭國を亂る者は、實に忽に之れ由れり。復歸の例は成十八年に在り。

許叔入于許。許叔、莊公弟也。隱十一年、鄭使許大夫奉許叔、居許東偏。鄭莊公旣卒、乃入居位。許人嘉之、以字告也。叔本不去國。雖稱入、非國逆例。
【読み】
許叔許に入る。許叔は、莊公の弟なり。隱十一年、鄭許の大夫をして許叔を奉じて、許の東偏に居らしむ。鄭の莊公旣に卒して、乃ち入りて位に居る。許人之を嘉し、字を以て告ぐるなり。叔は本國を去らず。入ると稱すと雖も、國逆うるの例に非ず。

公會齊侯于艾。邾人・牟人・葛人來朝。無傳。三人皆附庸之世子也。其君應稱名。故其子降稱人。牟國、今泰山牟縣。葛國、在梁國寧陵縣東北。
【読み】
公齊侯に艾[がい]に會す。邾人[ちゅひと]・牟人[ぼうひと]・葛人來朝す。傳無し。三人は皆附庸の世子なり。其の君應に名を稱すべし。故に其の子降して人と稱す。牟國は、今の泰山の牟縣。葛國は、梁國寧陵縣の東北に在り。

秋、九月、鄭伯突入于櫟。櫟、鄭別都也。今河南陽翟縣。未得國、直書入、無義例也。○櫟、音歷。
【読み】
秋、九月、鄭伯突櫟[れき]に入る。櫟は、鄭の別都なり。今の河南陽翟縣なり。未だ國を得ざれども、直に入ると書すは、義例無きなり。○櫟は、音歷。

冬、十有一月、公會宋公・衛侯・陳侯于袲伐鄭。袲、宋地。在沛國相縣西南。先行會禮而後伐也。○袲、昌氏反。相、息亮反。
【読み】
冬、十有一月、公宋公・衛侯・陳侯に袲[し]に會して鄭を伐つ。袲は、宋の地。沛國相縣の西南に在り。先ず會禮を行いて後に伐つなり。○袲は、昌氏反。相は、息亮反。

〔傳〕十五年、春、天王使家父來求車、非禮也。
【読み】
〔傳〕十五年、春、天王家父をして來りて車を求めしむるは、禮に非ざるなり。

諸侯不貢車服。車服、上之所以賜下。
【読み】
諸侯は車服を貢せず。車服は、上の下に賜う所以なり。

天子不私求財。諸侯有常職貢。
【読み】
天子は私に財を求めず。諸侯常の職貢有り。

祭仲專。鄭伯患之、使其婿雍糾殺之。將享諸郊。雍姬知之。謂其母曰、父與夫孰親。其母曰、人盡夫也。父一而已。胡可比也。婦人在室則天父、出則天夫。女以爲疑。故母以所生爲本解之。
【読み】
祭仲專なり。鄭伯之を患え、其の婿雍糾をして之を殺さしめんとす。將に諸を郊に享せんとす。雍姬之を知る。其の母に謂いて曰く、父と夫と孰れか親しき、と。其の母曰く、人は盡く夫なり。父は一りのみ。胡ぞ比す可けんや、と。婦人室に在れば則ち父を天とし、出づれば則ち夫を天とす。女以て疑いを爲す。故に母所生を以て本と爲して之を解く。

遂告祭仲曰、雍氏舍其室、而將享子於郊。吾惑之。以告。祭仲殺雍糾、尸諸周氏之汪。汪、池也。周氏、鄭大夫。殺而暴其尸以示戮也。○舍、音捨。汪、烏黃反。暴、步卜反。
【読み】
遂に祭仲に告げて曰く、雍氏其の室を舍てて、將に子を郊に享せんとす。吾れ之に惑う、と。以て告げり。祭仲雍糾を殺して、諸を周氏の汪に尸[さら]す。汪は、池なり。周氏は、鄭の大夫。殺して其の尸を暴して以て戮を示すなり。○舍は、音捨。汪は、烏黃反。暴は、步卜反。

公載以出。愍其見殺。故載其尸共出國。
【読み】
公載せて以て出づ。其の殺さるるを愍[いた]む。故に其の尸を載せて共に國を出づ。

曰、謀及婦人。宜其死也。
【読み】
曰く、謀婦人に及べり。宜なり其の死すること、と。

夏、厲公出奔蔡。六月、乙亥、昭公入。
【読み】
夏、厲公出でて蔡に奔る。六月、乙亥[きのと・い]、昭公入る。

許叔入于許。
【読み】
許叔許に入る。

公會齊侯于艾、謀定許也。
【読み】
公齊侯に艾に會するは、許を定めんことを謀るなり。

秋、鄭伯因櫟人殺檀伯、而遂居櫟。檀伯、鄭守櫟大夫。
【読み】
秋、鄭伯櫟人に因りて檀伯を殺して、遂に櫟に居る。檀伯は、鄭の櫟を守る大夫。

冬、會于袲、謀伐鄭、將納厲公也。弗克而還。
【読み】
冬、袲に會して、鄭を伐たんことを謀るは、將に厲公を納れんとするなり。克わずして還る。


〔經〕十有六年、春、正月、公會宋公・蔡侯・衛侯于曹。夏、四月、公會宋公・衛侯・陳侯・蔡侯伐鄭。春旣謀之。今書會者、魯諱議納不正。蔡常在衛上。今序陳下、蓋後至。
【読み】
〔經〕十有六年、春、正月、公宋公・蔡侯・衛侯に曹に會す。夏、四月、公宋公・衛侯・陳侯・蔡侯に會して鄭を伐つ。春旣に之を謀る。今會を書すは、魯不正を納るることを議するを諱みてなり。蔡は常に衛の上に在り。今陳の下に序ずるは、蓋し後れて至るならん。

秋、七月、公至自伐鄭。用飮至之禮。故書。
【読み】
秋、七月、公鄭を伐ちてより至る。飮至の禮を用ゆ。故に書す。

冬、城向。傳曰、書時也。而下有十一月、舊說因謂傳誤。此城向、亦倶是十一月、但本事異、各隨本而書之耳。經書夏、叔弓如滕、五月、葬滕成公、傳云五月、叔弓如滕。卽知但稱時者、未必與下月異也。又推校此年、閏在六月、則月却而節前、水星可在十一月而正也。詩云、定之方中、作于楚宮。此未正中也。功役之事、皆揔指天象。不與言歷數同也。故傳之釋經、皆通言一時。不月別。○向、失亮反。定、丁佞反。
【読み】
冬、向[しょう]に城く。傳に曰く、時なるを書すなり、と。而れども下に十一月有れば、舊說に因りて傳の誤りなりと謂う。此の向に城くも、亦倶に是れ十一月なるも、但本事異なれば、各々本に隨いて之を書すのみ。經に夏、叔弓滕に如く、五月、滕の成公を葬ると書し、傳には五月、叔弓滕に如くと云う。卽ち知る、但時を稱する者は、未だ必ずしも下の月と異ならざるを。又此の年を推し校[はか]るに、閏六月に在れば、則ち月却[しりぞ]きて節前[すす]めば、水星十一月に在りて正しかる可し。詩に云う、定の方に中せんとす、楚宮を作る、と。此れ未だ正中ならざるなり。功役の事は、皆揔べて天象を指す。歷數を言うと同じからざるなり。故に傳の經を釋く、皆通して一時を言う。月ごとに別たず。○向は、失亮反。定は、丁佞反。

十有一月、衛侯朔出奔齊。惠公也。朔讒構取國。故不言二公子逐。罪之也。
【読み】
十有一月、衛侯朔出でて齊に奔る。惠公なり。朔讒構して國を取る。故に二公子逐うと言わず。之を罪するなり。

〔傳〕十六年、春、正月、會于曹、謀伐鄭也。前年冬謀納厲公、不克。故復更謀。
【読み】
〔傳〕十六年、春、正月、曹に會するは、鄭を伐たんことを謀るなり。前年冬厲公を納れんことを謀りて、克わず。故に復更に謀る。

夏、伐鄭。
【読み】
夏、鄭を伐つ。

秋、七月、公至自伐鄭、以飮至之禮也。
【読み】
秋、七月、公鄭を伐ちてより至るとは、飮至の禮を以てすればなり。

冬、城向、書時也。
【読み】
冬、向に城くは、時なるを書すなり。

初、衛宣公烝於夷姜、生急子。夷姜、宣公之庶母也。上淫曰烝。
【読み】
初め、衛の宣公夷姜に烝して、急子を生む。夷姜は、宣公の庶母なり。上淫を烝と曰う。

屬諸右公子。爲之娶於齊而美。公取之、生壽及朔。屬壽於左公子。左右媵之子、因以爲號。○屬、音燭。下同。爲、于僞反。媵、羊證反。
【読み】
諸を右公子に屬す。之が爲に齊に娶りて美なり。公之を取り、壽と朔とを生む。壽を左公子に屬す。左右媵の子、因りて以て號と爲す。○屬は、音燭。下も同じ。爲は、于僞反。媵は、羊證反。

夷姜縊。失寵而自經死。
【読み】
夷姜縊[くび]る。寵を失いて自ら經して死す。

宣姜與公子朔構急子。宣姜、宣公所取急子之妻。構會其過惡。○構、古豆反。會、古外反。
【読み】
宣姜公子朔と急子を構う。宣姜は、宣公が取る所の急子の妻。其の過惡を構會す。○構は、古豆反。會は、古外反。

公使諸齊、使盜待諸莘、將殺之。莘、衛地。陽平縣西北有莘亭。○公使、所吏反。莘、所巾反。
【読み】
公諸を齊に使いせしめて、盜をして諸を莘[しん]に待たしめ、將に之を殺さんとす。莘は、衛の地。陽平縣の西北に莘亭有り。○公使は、所吏反。莘は、所巾反。

壽子告之、使行。行、去也。
【読み】
壽子之に告げて、行[さ]らしむ。行は、去るなり。

不可、曰、棄父之命、惡用子矣。惡、安也。○惡、音烏。
【読み】
可[き]かずして、曰く、父の命を棄てば、惡[いずく]んぞ子を用いん。惡は、安んぞなり。○惡は、音烏。

有無父之國則可也。及行、飮以酒、壽子載其旌以先。盜殺之。急子至、曰、我之求也。此何罪。請殺我乎。又殺之。二公子故怨惠公。
【読み】
父無きの國有らば則ち可なり、と。行くに及んで、飮ましむるに酒を以てし、壽子其の旌を載せて以て先だつ。盜之を殺す。急子至りて、曰く、我を之れ求むるならん。此れ何の罪かある。請う、我を殺さん、と。又之を殺す。二公子故に惠公を怨む。

十一月、左公子洩、右公子職、立公子黔牟。黔牟、羣公子。○飮、於鴆反。洩、息列反。黔、其廉反。
【読み】
十一月、左公子洩[せつ]、右公子職、公子黔牟[けんぼう]を立つ。黔牟は、羣公子。○飮は、於鴆反。洩は、息列反。黔は、其廉反。

惠公奔齊。
【読み】
惠公齊に奔る。


〔經〕十有七年、春、正月、丙辰、公會齊侯・紀侯盟于黃。黃、齊地。
【読み】
〔經〕十有七年、春、正月、丙辰[ひのえ・たつ]、公齊侯・紀侯に會して黃に盟う。黃は、齊の地。

二月、丙午、公會邾儀父盟于趡。趡、魯地。稱字、義與蔑盟同。二月無丙午。丙午、三月四日也。日月必有誤。○趡、翠軌反。
【読み】
二月、丙午[ひのえ・うま]、公邾[ちゅ]の儀父に會して趡[すい]に盟う。趡は、魯の地。字を稱するは、義蔑の盟と同じ。二月に丙午無し。丙午は、三月四日なり。日月必ず誤り有らん。○趡は、翠軌反。

夏、五月、丙午、及齊師戰于奚。奚、魯地。皆陳曰戰。○陳、直覲反。
【読み】
夏、五月、丙午、齊の師と奚に戰う。奚は、魯の地。皆陳するを戰と曰う。○陳は、直覲反。

六月、丁丑、蔡侯封人卒。十一年、大夫盟于折。
【読み】
六月、丁丑[ひのと・うし]、蔡侯封人卒す。十一年、大夫折に盟う。

秋、八月、蔡季自陳歸于蔡。季、蔡侯弟也。言歸、爲陳所納。
【読み】
秋、八月、蔡季陳より蔡に歸る。季は、蔡侯の弟なり。歸と言うは、陳の爲に納れらるればなり。

癸巳、葬蔡桓侯。無傳。稱侯、蓋謬誤。三月而葬、速。
【読み】
癸巳[みずのと・み]、蔡の桓侯を葬る。傳無し。侯と稱するは、蓋し謬誤ならん。三月にして葬るは、速きなり。

及宋人・衛人伐邾。冬、十月朔、日有食之。甲・乙者、歷之紀也。晦・朔者、日月之會也。日食不可以不存晦・朔。晦・朔須甲・乙而可推。故日食、必以書朔日爲例。
【読み】
宋人・衛人と邾を伐つ。冬、十月朔、日之を食する有り。甲・乙は、歷の紀なり。晦・朔は、日月の會なり。日食は以て晦・朔を存せざる可からず。晦・朔は甲・乙を須[もっ]て推す可し。故に日食は、必ず朔日を書すを以て例とす。

〔傳〕十七年、春、盟于黃、平齊・紀、且謀衛故也。齊欲滅紀、衛逐其君。
【読み】
〔傳〕十七年、春、黃に盟うは、齊・紀を平らげ、且衛の故を謀るなり。齊は紀を滅ぼさんと欲し、衛は其の君を逐う。

及邾儀父盟于趡、尋蔑之盟也。蔑盟、在隱元年。
【読み】
邾の儀父と趡に盟うは、蔑の盟を尋[かさ]ぬるなり。蔑の盟は、隱元年に在り。

夏、及齊師戰于奚、疆事也。爭疆界也。
【読み】
夏、齊の師と奚に戰うは、疆の事なり。疆界を爭うなり。

於是齊人侵魯疆。疆吏來告。公曰、疆場之事、愼守其一、而備其不虞。虞、度也。不度、猶不意也。○場、音亦。
【読み】
是に於て齊人魯の疆を侵す。疆吏來り告ぐ。公曰く、疆場の事は、愼みて其の一を守りて、其の不虞に備えよ。虞は、度るなり。不度は、猶不意のごとし。○場は、音亦。

姑盡所備焉。事至而戰。又何謁焉。齊背盟而來。公以信待。故不書侵伐。
【読み】
姑く備うる所を盡くせ。事至らば戰え。又何ぞ謁[つ]げん、と。齊盟に背きて來れり。公信を以て待つ。故に侵伐を書さず。

蔡桓侯卒。蔡人召蔡季于陳。桓侯無子。故召季而立之。季内得國人之望、外有諸侯之助。故書字以善得衆。稱歸以明外納。
【読み】
蔡の桓侯卒す。蔡人蔡季を陳より召す。桓侯子無し。故に季を召して之を立つ。季内に國人の望を得、外に諸侯の助有り。故に字を書して以て衆を得るを善す。歸ると稱して以て外より納るるを明かす。

秋、蔡季自陳歸于蔡、蔡人嘉之也。嘉之。上以字告。
【読み】
秋、蔡季陳より蔡に歸るとは、蔡人之を嘉するなり。之を嘉す。上に字を以て告ぐ。

伐邾、宋志也。邾・宋爭疆。魯從宋志、背趡之盟。
【読み】
邾を伐つは、宋の志なり。邾・宋疆を爭う。魯宋の志に從いて、趡の盟に背く。

冬、十月朔、日有食之。不書日、官失之也。
【読み】
冬、十月朔、日之を食する有り。日を書さざるは、官之を失えるなり。

天子有日官。諸侯有日御。日官・日御、典歷數者。
【読み】
天子に日官有り。諸侯に日御有り。日官・日御は、歷數を典る者。

日官居卿以厎日。禮也。日官、天子掌歷者。不在六卿之數、而位從卿。故言居卿也。厎、平也。謂平歷數。○厎、音旨。
【読み】
日官は卿に居りて以て日を厎[たい]らかにす。禮なり。日官は、天子の歷を掌る者。六卿の數に在らずして、位は卿に從う。故に卿に居ると言うなり。厎は、平らなり。歷數を平らかにするを謂う。○厎は、音旨。

日御不失日、以授百官于朝。日官平歷以班諸侯。諸侯奉之不失天時、以授百官。
【読み】
日御日を失わずして、以て百官に朝に授く。日官歷を平らかにして以て諸侯に班[わか]つ。諸侯之を奉じて天の時を失わず、以て百官を授く。

初、鄭伯將以高渠彌爲卿。昭公惡之、固諫。不聽。昭公立。懼其殺己也、辛卯、弑昭公而立公子亹。公子亹、昭公弟。○惡、烏路反。亹、音尾。
【読み】
初め、鄭伯將に高渠彌を以て卿と爲さんとす。昭公之を惡み、固く諫む。聽かず。昭公立つ。其の己を殺さんことを懼るるや、辛卯[かのと・う]、昭公を弑して公子亹[び]を立つ。公子亹は、昭公の弟。○惡は、烏路反。亹は、音尾。

君子謂、昭公知所惡矣。公子達曰、公子達、魯大夫。
【読み】
君子謂う、昭公は惡む所を知れり、と。公子達曰く、公子達は、魯の大夫。

高伯其爲戮乎。復惡已甚矣。復、重也。本爲昭公所惡、而復弑君、重爲惡也。○復、扶又反。一音服。則乖註意。復惡、疑報惡之誤。韓非子論之詳矣。
【読み】
高伯は其れ戮せられんか。惡を復[かさ]ぬること已甚し、と。復は、重ぬるなり。本昭公の爲に惡まれて、復君を弑するは、重ねて惡を爲すなり。○復は、扶又反。一に音服。則ち乖註の意。復惡は、疑うらくは報惡の誤りならん。韓非子之を論ずること詳らかなり。


〔經〕十有八年、春、王正月、公會齊侯于濼。濼水、在濟南歷城縣西、北入濟。○濼、盧篤力角二反。
【読み】
〔經〕十有八年、春、王の正月、公齊侯に濼に會す。濼水は、濟南歷城縣の西に在り、北して濟に入る。○濼は、盧篤力角二反。

公與夫人姜氏遂如齊。公本與夫人倶行。至濼、公與齊侯行會禮。故先書會濼。旣會而相隨至齊。故曰遂。
【読み】
公夫人姜氏と遂に齊に如く。公本夫人と倶に行く。濼に至り、公齊侯と會禮を行う。故に先ず濼に會するを書す。旣に會して相隨いて齊に至る。故に遂にと曰う。

夏、四月、丙子、公薨于齊。不言戕、諱之也。戕例在宣十八年。
【読み】
夏、四月、丙子[ひのえ・ね]、公齊に薨ず。戕[そこな]わると言わざるは、之を諱みてなり。戕うの例は宣十八年に在り。

丁酉、公之喪至自齊。無傳。告廟也。丁酉、五月一日。有日而無月。
【読み】
丁酉[ひのと・とり]、公の喪齊より至る。傳無し。廟に告ぐるなり。丁酉は、五月一日。日有りて月無し。

秋、七月。冬、十有二月、己丑、葬我君桓公。無傳。九月乃葬。緩慢也。
【読み】
秋、七月。冬、十有二月、己丑[つちのと・うし]、我が君桓公を葬る。傳無し。九月乃ち葬る。緩慢なり。

〔傳〕十八年、春、公將有行。遂與姜氏如齊。始議行事。
【読み】
〔傳〕十八年、春、公將に行くこと有らんとす。遂に姜氏と齊に如く。始めて行く事を議す。

申繻曰、女有家、男有室、無相瀆也、謂之有禮。易此必敗。女安夫之家、夫安妻之室。違此則爲瀆。今公將姜氏如齊。故知其當致禍亂。
【読み】
申繻曰く、女に家有り、男に室有り、相瀆るること無き、之を禮有りと謂う。此を易えば必ず敗れん、と。女は夫の家を安んじ、夫は妻の室を安んず。此に違えば則ち瀆るると爲す。今公姜氏を將[い]て齊に如く。故に其の當に禍亂を致すべきを知る。

公會齊侯于濼、遂及文姜如齊。齊侯通焉。公謫之。謫、譴也。○謫、直革反。
【読み】
公齊侯に濼に會し、遂に文姜と齊に如く。齊侯通ず。公之を謫[せ]む。謫は、譴むるなり。○謫は、直革反。

以告。夫人告齊侯。
【読み】
以て告ぐ。夫人齊侯に告ぐ。

夏、四月、丙子、享公、齊侯爲公設享燕之禮。
【読み】
夏、四月、丙子[ひのえ・ね]、公を享し、齊侯公の爲に享燕の禮を設く。

使公子彭生乘公。公薨于車。上車曰乘。彭生多力、拉公幹而殺之。○乘、如字。又繩證反。拉、力答反。幹、古旦反。
【読み】
公子彭生をして公を乘せしむ。公車に薨ず。車に上るを乘ると曰う。彭生多力、公の幹[からだ]を拉[ひし]いで之を殺す。○乘は、字の如し。又繩證反。拉は、力答反。幹は、古旦反。

魯人告于齊曰、寡君畏君之威、不敢寧居。來脩舊好、禮成而不反。無所歸咎、惡於諸侯。請以彭生除之。除恥辱之惡也。
【読み】
魯人齊に告げて曰く、寡君君の威を畏れて、敢えて寧居せず。來りて舊好を脩めしに、禮成りて反らず。咎を歸する所無く、諸侯に惡し。請う、彭生を以て之を除かん、と。恥辱の惡を除くなり。

齊人殺彭生。不書、非卿。
【読み】
齊人彭生を殺す。書さざるは、卿に非ざればなり。

秋、齊侯師于首止。陳師首止、討鄭弑君也。首止、衛地。陳留襄邑縣東南有首郷。
【読み】
秋、齊侯首止に師す。師を首止に陳して、鄭の君を弑するを討つなり。首止は、衛の地。陳留襄邑縣の東南に首郷有り。

子亹會之。高渠彌相。不知齊欲討己。○相、息亮反。
【読み】
子亹之に會す。高渠彌相[たす]く。齊の己を討ぜんと欲するを知らず。○相は、息亮反。

七月、戊戌、齊人殺子亹、而轘高渠彌。車裂曰轘。○轘、音患。
【読み】
七月、戊戌[つちのえ・いぬ]、齊人子亹を殺して、高渠彌を轘にす。車裂を轘と曰う。○轘は、音患。

祭仲逆鄭子于陳而立之。鄭子、昭公弟、子儀也。
【読み】
祭仲鄭子を陳より逆[むか]えて之を立つ。鄭子は、昭公の弟、子儀なり。

是行也、祭仲知之。故稱疾不往。人曰、祭仲以知免。仲曰、信也。時人譏祭仲失忠臣之節。仲以子亹爲渠彌所立。本旣不正。又不能固位安民。宜其見除。故卽而然譏者之言、以明本意。○知、音智。
【読み】
是の行や、祭仲之を知れり。故に疾と稱して往かず。人曰く、祭仲は知を以て免れたり、と。仲曰く、信なり、と。時人祭仲の忠臣の節を失うを譏る。仲以[おも]えらく、子亹は渠彌の爲に立てらる。本旣に正しからず。又位を固くし民を安んずること能わず。宜なり其の除かるること、と。故に卽いて譏者の言を然りとし、以て本意を明かす。○知は、音智。

周公欲弑莊王、而立王子克。莊王、桓王大子。王子克、莊王弟、子儀。
【読み】
周公莊王を弑して、王子克を立てんと欲す。莊王は、桓王の大子。王子克は、莊王の弟、子儀なり。

辛伯告王。遂與王殺周公黑肩。王子克奔燕。辛伯、周大夫。
【読み】
辛伯王に告ぐ。遂に王と周公黑肩を殺す。王子克燕に奔る。辛伯は、周の大夫。

初、子儀有寵於桓王。桓王屬諸周公。辛伯諫曰、竝后、妾如后。○屬、音燭。
【読み】
初め、子儀桓王に寵有り。桓王諸を周公に屬す。辛伯諫めて曰く、后に竝び、妾后の如し。○屬は、音燭。

匹嫡、庶如嫡。
【読み】
嫡に匹し、庶嫡の如し。

兩政、臣擅命。
【読み】
政を兩つにし、臣命を擅[ほしいまま]にす。

耦國、都如國。
【読み】
國に耦[なら]ぶは、都國の如し。

亂之本也。周公弗從。故及。及於難也。
【読み】
亂の本なり、と。周公從わず。故に及べり。難に及ぶなり。



經元年。脩好。呼報反。傳同。近垂。附近之近。令鄭。力呈反。
傳。渝盟。羊主反。無享。許丈反。遣使。所吏反。宋華。戶化反。大夫氏也。後皆同。父督。音篤。
經二年。閏。音圭。召陵。上照反。
傳。爲賂。于僞反。注除爲會一字竝同。惡其。烏路反。婉。於阮反。大宰。音泰。遂相。息亮反。下注傳相同。著儉。張慮反。後不音者同。祀天車。本或無天字者非。袞。古本反。黻。音弗。下同。笏。音忽。舄。音昔。紞。字林、丁坎反。而上。時掌反。下上下同。藉玉。在夜反。馬膺。於陵反。黼。音甫。相戾。力計反。械。戶戒反。鈴。音零。額。顏客反。鑣。彼驕反。旂。勤衣反。而寘。之豉反。置也。官邪。似嗟反。雒邑。本亦作洛。受夏。戶雅反。郟。古洽反。鄏。音辱。近楚。附近之近。舊好。呼報反。注同。以上。時掌反。曰仇。音求。君之名子。如字。或彌政反。其替。他計反。廢也。少子。詩照反。以諷。方鳳反。適子。丁歷反。爲小宗。本或作爲大宗誤。等衰。初危反。注同。無復。扶又反。分別。彼列反。衰殺。所界反。覦。字林、羊住反。說文云、欲也。侯甸。徒練反。
經三年。約言。如字。又於妙反。長垣。音袁。
傳。隰。下溼曰隰。騑。芳非反。各徇。似俊反。媒介。音界。之好。呼報反。注同。齊侯送姜氏。本或作送姜氏于讙。公子。公女。馮翊。音翼。
經四年。公狩。手又反。夏之。戶雅反。下同。伯糾。居黝反。
傳。
經五年。雩。音于。祭名。龍見。賢遍反。螽。音終。定陶。同勞反。
傳。五父。音甫。襲。音習。王卒。尊忽反。下同。縫。扶容反。五乘。繩證反。麾。許危反。名仲字足。一本作字仲足。○今本亦仲足。重言。直用反。遠爲。于僞反。閉。必計反。又必結反。字林、方結反。烝。之承反。不復。音服。後不音者皆同。危難。乃旦反。
經六年。省文。所景反。閱。音悅。是適。丁歷反。傳同。長子。丁丈反。
傳。瑕。下加反。而被。皮寄反。下注被甲同。難閒。閒厠之閒。師侈。昌氏反。又式氏反。抗衡。苦浪反。矯舉。居兆反。蕃滋。音煩。瘯、本又作蔟。同。無疥。音界。癬。息淺反。說文云、乾瘍。遠聞。音問。又如字。九族。杜釋與孔安國・鄭玄不同。禋祀。音因。饑。音飢。又音機。饋。其媿反。遣也。餼。許旣反。牲腥曰餼。桑弧。音胡。蓬矢。步工反。于阼。才故反。○今本于作於。鯉。音里。周人以諱事神名。絶句。衆家多以名字屬下句。鐸。待洛反。徇。似俊反。本又作殉。同。
經七年。焚。扶云反。綏來。須唯反。
傳。辟陋。本又作僻。同。郟。古洽反。
經八年。烝。之承反。爲下。于僞反。復烝。扶又反。
傳。釁。許覲反。注同。弋。餘職反。將失楚師。一本無師字。天去。起呂反。注同。
經九年。伸父母。音申。
傳。爲書。于僞反。爲好。呼報反。沔。面善反。陳。一如字。而夾。古洽反。又音古協反。宵潰。戶對反。夏陽。戶雅反。適子。丁歷反。享曹。許兩反。施父。音甫。
經十年。中背。如字。一音丁仲反。下音佩。
傳。詹父。章廉反。諺。音彥。以見。賢遍反。
經十一年。聽迫。吐定反。于折。一音一列反。須昌。宣踰反。
傳。屈。居勿反。楚大夫氏。貳軫。音二。下之忍反。蒲騷。一音縿。州蓼。音了。本或作鄝。同。江夏。戶雅反。溳城。音云。亦作鄖。○今本亦鄖。棘。紀力反。湖。音胡。且日。人逸反。虞度。待洛反。郊郢。一音以政反。恃近。附近之近。盍請。戶臘反。濟。箋計反。億兆。於力反。大援。於眷反。亹。本或作斖。封疆。居良反。姞。一音其秩反。應命。應對之應。
經十二年。汶。音問。躍。羊略反。武父。音甫。地名有父字者皆同甫音。重書。直用反。下同。以見。賢遍反。皆陳。直覲反。
傳。婁盟。力倶反。本又作屢。音同。○今本亦屢。故數。音朔。下同。而憾。戶暗反。○今本而作則。采樵。在遙反。諜。徒協反。枝江。質而反。諜伺也。音笥。巡徧。音遍。
經十三年。
傳。必濟。箋計反。風諫。方鳳反。本亦作諷。○今本亦諷。狃忕。一音時設反。不借。子夜反。貸。他代反。慢。武諫反。亂次以濟。本或作亂次以濟其水。廬。如字。本或作盧。音同。○今本亦盧。縊于。一豉反。荒谷。如字。本或作巟。音同。冶父。音也。脩好。呼報反。
經十四年。之好。呼報反。曹與。音預。先其。一如字。致齊。側皆反。
傳。逵。求龜反。椽。直專反。榱也。圓曰椽、方曰桷。說文云、周謂之榱、齊・魯謂之桷。
經十五年。倚任。於綺反。守介。音界。小行。下孟反。更立。音庚。牟人。亡侯反。翟。徒歷反。
傳。檀。徒丹反。
經十六年。
傳。故復。扶又反。烝。之承反。急子。如字。詩作伋。上淫。時掌反。一音如字。飮以酒。一本以作之。黔。一音琴。
經十七年。
傳。疆事。居良反。注及下皆同。虞度。待洛反。下同。齊背。音佩。下同。復重。直用反。下同。
經十八年。濼。一音洛。說文、匹沃反。言戕。在良反。
傳。瀆。徒木反。謫。責也。王又丁革反。譴。遣戰反。爲公。于僞反。上車。時掌反。舊好。呼報反。歸咎。其九反。裂。音列。以知。一如字。欲弑。申志反。匹嫡。丁歷反。注同。臣擅。市戰反。於難。乃旦反。

春秋左氏傳校本第三

莊公 起元年盡三十二年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

莊公 名同。桓公子。母文姜。謚法、勝敵克亂曰莊。
【読み】
莊公 名は同。桓公の子。母は文姜。謚法に、敵に勝ち亂に克つを莊と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王正月。三月、夫人孫于齊。夫人、莊公母也。魯人責之。故出奔。内諱奔謂之孫。猶孫讓而去。○孫、本作遜。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月。三月、夫人齊に孫[のが]る。夫人は、莊公の母なり。魯人之を責む。故に出奔す。内奔るを諱みて之を孫ると謂う。猶孫讓して去るがごとし。○孫は、本遜に作る。

夏、單伯送王姬。無傳。單伯、天子卿也。單、采地。伯、爵也。王將嫁于齊、旣命魯爲主。故單伯送女、不稱使也。王姬不稱字、以王爲尊、且別於内女也。天子嫁女於諸侯、使同姓諸侯主之、不親昏。尊卑不敵。○單、音善。
【読み】
夏、單伯[ぜんはく]王姬を送る。傳無し。單伯は、天子の卿なり。單は、采地。伯は、爵なり。王將に齊に嫁がせんとして、旣に魯に命じて主と爲す。故に單伯女を送るに、使と稱せず。王姬字を稱せざるは、王を以て尊と爲し、且内女に別つなり。天子の女を諸侯に嫁するは、同姓の諸侯をして之を主らしめて、親ら昏せず。尊卑敵せざらればなり。○單は、音善。

秋、築王姬之館于外。公在諒闇、慮齊侯當親迎。不忍便以禮接於廟、又不敢逆王命。故築舍於外。○諒、音梁。又音亮。迎、魚敬反。
【読み】
秋、王姬の館を外に築く。公諒闇に在り、齊侯當に親迎すべきを慮る。便ち禮を以て廟に接するに忍びず、又敢えて王命に逆わず。故に舍を外に築く。○諒は、音梁。又音亮。迎は、魚敬反。

冬、十月、乙亥、陳侯林卒。無傳。未同盟、而赴以名。
【読み】
冬、十月、乙亥[きのと・い]、陳侯林卒す。傳無し。未だ同盟せざれども、赴[つ]ぐるに名を以てす。

王使榮叔來錫桓公命。無傳。榮叔、周大夫。榮、氏。叔、字。錫、賜也。追命桓公、褒稱其德。若昭七年、王追命衛襄之比。
【読み】
王榮叔をして來りて桓公に命を錫わしむ。傳無し。榮叔は、周の大夫。榮は、氏。叔は、字。錫は、賜うなり。桓公に追命して、其の德を褒稱す。昭七年、王衛襄に追命するの比の若し。

王姬歸于齊。無傳。不書逆、公不與接。
【読み】
王姬齊に歸ぐ。傳無し。逆[むか]うるを書さざるは、公與に接せざればなり。

齊師遷紀郱・鄑・郚。無傳。齊欲滅紀。故徙其三邑之民、而取其地。郱、在東莞臨朐縣東南。郚、在朱虛縣東南。北海都昌縣西有訾城。○郱、蒲丁反。鄑、子斯反。郚、音吾。朐、其倶反。訾、子斯反。
【読み】
齊の師紀の郱[へい]・鄑[し]・郚[ご]を遷す。傳無し。齊紀を滅ぼさんと欲す。故に其の三邑の民を徙[うつ]して、其の地を取る。郱は、東莞臨朐縣の東南に在り。郚は、朱虛縣の東南に在り。北海都昌縣の西に訾[し]城有り。○郱は、蒲丁反。鄑は、子斯反。郚は、音吾。朐は、其倶反。訾は、子斯反。

〔傳〕元年、春、不稱卽位、文姜出故也。文姜與桓倶行、而桓爲齊所殺。故不敢還。莊公父弑母出。故不忍行卽位之禮。據文姜未還、故傳稱文姜出也。姜於是感公意而還。不書、不告廟。
【読み】
〔傳〕元年、春、卽位を稱せざるは、文姜出づる故なり。文姜桓と倶に行きて、桓齊の爲に殺さる。故に敢えて還らず。莊公父弑され母出づ。故に卽位の禮を行うに忍びず。文姜未だ還らざるに據り、故に傳に文姜出づと稱す。姜是に於て公の意に感じて還る。書さざるは、廟に告げざればなり。

三月、夫人孫于齊。不稱姜氏、絕不爲親。禮也。姜氏、齊姓。於文姜之義、宜與齊絕。而復奔齊。故於其奔、去姜氏以示義。
【読み】
三月、夫人齊に孫る。姜氏を稱せざるは、絕ちて親と爲さざるなり。禮なり。姜氏は、齊の姓。文姜の義に於て、宜しく齊と絕つべし。而るに復齊に奔る。故に其の奔るに於て、姜氏を去りて以て義を示す。

秋、築王姬之館于外。爲外、禮也。齊彊魯弱、又委罪於彭生、魯不能讎齊。然喪制未闋。故異其禮、得禮之變。○闋、苦穴反。
【読み】
秋、王姬の館を外に築く。外に爲るは、禮なり。齊は彊く魯は弱く、又罪を彭生に委ぬれば、魯齊を讎とすること能わず。然れども喪制未だ闋[おわ]らず。故に其の禮を異にして、禮の變を得たり。○闋[けつ]は、苦穴反。


〔經〕二年、春、王二月、葬陳莊公。無傳。魯往會之。故書。例在昭六年。
【読み】
〔經〕二年、春、王の二月、陳の莊公を葬る。傳無し。魯往いて之に會す。故に書す。例は昭六年に在り。

夏、公子慶父帥師伐於餘丘。無傳。於餘丘、國名也。莊公時年十五、則慶父、莊公庶兄。
【読み】
夏、公子慶父師を帥て於餘丘[およきゅう]を伐つ。傳無し。於餘丘は、國の名なり。莊公時に年十五なれば、則ち慶父は、莊公の庶兄なり。

秋、七月、齊王姬卒。無傳。魯爲之主、比之内女。
【読み】
秋、七月、齊の王姬卒す。傳無し。魯之が主と爲れば、之を内女に比す。

冬、十有二月、夫人姜氏會齊侯于禚。夫人行不以禮。故還皆不書。不告廟也。禚、齊地。○禚、諸若反。
【読み】
冬、十有二月、夫人姜氏齊侯に禚[しゃく]に會す。夫人行くに禮を以てせず。故に還ること皆書さず。廟に告げざればなり。禚は、齊の地。○禚は、諸若反。

乙酉、宋公馮卒。無傳。再與桓同盟。○馮、皮氷反。
【読み】
乙酉[きのと・とり]、宋公馮卒す。傳無し。再び桓と同盟す。○馮は、皮氷反。

〔傳〕二年、冬、夫人姜氏會齊侯于禚、書姦也。文姜前與公倶如齊、後懼而出奔、至此始與齊好會。會非夫人之事。顯然書之。傳曰書姦、姦在夫人。文姜比年出會。其義皆同。
【読み】
〔傳〕二年、冬、夫人姜氏齊侯に禚に會するは、姦を書すなり。文姜前に公と倶に齊に如き、後に懼れて出奔し、此に至りて始めて齊と好會す。會は夫人の事に非ず。顯然として之を書す。傳に姦を書すと曰うは、姦夫人に在るなり。文姜比年に出でて會す。其の義皆同じ。


〔經〕三年、春、王正月、溺會齊師伐衛。溺、魯大夫。疾其專命而行。故去氏。○溺、乃狄反。去、起呂反。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、溺齊の師に會して衛を伐つ。溺は、魯の大夫。其の命を專にして行くを疾[にく]む。故に氏を去れり。○溺は、乃狄反。去は、起呂反。

夏、四月、葬宋莊公。無傳。
【読み】
夏、四月、宋の莊公を葬る。傳無し。

五月、葬桓王。秋、紀季以酅入于齊。季、紀侯弟。酅、紀邑。在齊國東安平縣。齊欲滅紀。故季以邑入齊、爲附庸。先祀不廢、社稷有奉。故書字貴之。○酅、戶圭反。
【読み】
五月、桓王を葬る。秋、紀季酅[けい]を以[い]て齊に入る。季は、紀侯の弟。酅は、紀の邑。齊國の東安平縣に在り。齊紀を滅ぼさんと欲す。故に季邑を以て齊に入りて、附庸と爲る。先祀廢せず、社稷奉ずる有り。故に字を書して之を貴ぶ。○酅は、戶圭反。

冬、公次于滑。滑、鄭地。在陳留襄邑縣西北。傳例曰、凡師、過信爲次。兵未有所加、所次則書之。旣書兵所加、則不書其所次。以事爲宜、非虛次。
【読み】
冬、公滑に次[やど]る。滑は、鄭の地。陳留襄邑縣の西北に在り。傳例に曰く、凡そ師、信に過ぐるを次と爲す、と。兵未だ加うる所有らざれば、次る所則ち之を書す。旣に兵の加うる所を書せば、則ち其の次る所を書さず。事を以て宜しきを爲して、虛しく次るのみに非ざるなり。

〔傳〕三年、春、溺會齊師伐衛、疾之也。傳重明上例。
【読み】
〔傳〕三年、春、溺齊の師に會して衛を伐てば、之を疾むなり。傳重ねて上の例を明かす。

夏、五月、葬桓王、緩也。以桓十五年三月崩、七年乃葬。故曰緩。
【読み】
夏、五月、桓王を葬るは、緩[おそ]きなり。桓十五年三月を以て崩じて、七年にして乃ち葬る。故に緩しと曰う。

秋、紀季以酅入于齊。紀於是乎始判。判、分也。言分爲附庸始於此。
【読み】
秋、紀季酅を以て齊に入る。紀是に於て始めて判[わか]れぬ。判は、分かるるなり。分かれて附庸と爲ること此に始まるを言う。

冬、公次于滑、將會鄭伯謀紀故也。鄭伯辭以難。厲公在櫟故。○難、乃旦反。櫟、音歷。
【読み】
冬、公滑に次るは、將に鄭伯に會して紀の故を謀らんとするなり。鄭伯辭するに難を以てす。厲公櫟[れき]に在る故なり。○難は、乃旦反。櫟は、音歷。

凡師、一宿爲舍、再宿爲信、過信爲次。爲經書次例也。舍宿不書、輕也。言凡師、通君臣。
【読み】
凡そ師、一宿を舍と爲し、再宿を信と爲し、信に過ぐるを次と爲す。經に次を書す爲の例なり。舍宿書さざるは、輕ければなり。凡そ師と言うは、君臣に通ず。


〔經〕四年、春、王二月、夫人姜氏享齊侯于祝丘。無傳。享、食也。兩君相見之禮。非夫人所用。直書以見其失。祝丘、魯地。○食、音嗣。又如字。
【読み】
〔經〕四年、春、王の二月、夫人姜氏齊侯を祝丘に享す。傳無し。享は、食なり。兩君相見ゆるの禮なり。夫人用ゆる所に非ず。直に書して以て其の失を見す。祝丘は、魯の地。○食は、音嗣。又字の如し。

三月、紀伯姬卒。無傳。隱二年、裂繻所逆者。内女、唯諸侯夫人卒葬皆書。恩成於敵體。
【読み】
三月、紀の伯姬卒す。傳無し。隱二年、裂繻逆[むか]うる所の者。内女は、唯諸侯の夫人のみ卒葬皆書す。恩は敵體に成ればなり。

夏、齊侯・陳侯・鄭伯遇于垂。無傳。
【読み】
夏、齊侯・陳侯・鄭伯垂に遇う。傳無し。

紀侯大去其國。以國與季、季奉社稷。故不言滅。不見迫逐。故不言奔。大去者、不反之辭。
【読み】
紀侯其の國を大去す。國を以て季に與え、季社稷を奉ず。故に滅ぶと言わず。迫逐せられず。故に奔ると言わず。大去とは、反らざるの辭。

六月、乙丑、齊侯葬紀伯姬。無傳。紀季入酅、爲齊附庸、而紀侯大去其國。齊侯加禮初附、以崇厚義。故攝伯姬之喪、而以紀國夫人禮葬之。
【読み】
六月、乙丑[きのと・うし]、齊侯紀の伯姬を葬る。傳無し。紀季酅[けい]を入れて、齊の附庸と爲りて、紀侯其の國を大去す。齊侯禮を初附に加え、以て厚義を崇ぶ。故に伯姬の喪を攝して、紀國夫人の禮を以て之を葬る。

秋、七月。冬、公及齊人狩于禚。無傳。公越竟與齊微者倶狩。失禮可知。○狩、手又反。
【読み】
秋、七月。冬、公齊人と禚[しゃく]に狩す。傳無し。公竟を越えて齊の微者と倶に狩す。禮を失うこと知る可し。○狩は、手又反。

〔傳〕四年、春、王三月、楚武王荆尸、授師孑焉、以伐隨。尸、陳也。荆亦楚也。更爲楚陳兵之法。揚雄方言、孑者、戟也。然則楚始於此參用戟爲陳。○孑、吉熱反。方言云、楚謂戟爲孑。爲陳、直覲反。
【読み】
〔傳〕四年、春、王の三月、楚の武王荆尸して、師に孑[ほこ]を授けて、以て隨を伐たんとす。尸は、陳なり。荆も亦楚なり。更に楚の陳兵の法を爲る。揚雄が方言に、孑は、戟なり、と。然らば則ち楚始めて此に於て戟を參え用いて陳を爲すなり。○孑は、吉熱反。方言云う、楚戟を謂いて孑と爲す、と。爲陳は、直覲反。

將齊。入告夫人鄧曼曰、余心蕩。將授兵於廟。故齊。蕩、動散也。○齊、側皆反。
【読み】
將に齊せんとす。入りて夫人鄧曼に告げて曰く、余が心蕩[うご]きぬ、と。將に兵を廟に授けんとす。故に齊す。蕩は、動き散るなり。○齊は、側皆反。

鄧曼歎曰、王祿盡矣。盈而蕩、天之道也。先君其知之矣。故臨武事、將發大命、而蕩王心焉。楚爲小國。僻陋在夷、至此武王始起其衆、僭號稱王、陳兵授師、志意盈滿、臨齊而散。故鄧曼以天地鬼神、爲徵應之符。
【読み】
鄧曼歎じて曰く、王の祿盡きたり。盈ちて蕩くは、天の道なり。先君其れ之を知れり。故に武事に臨み、將に大命を發せんとして、王の心を蕩かすなり。楚は小國爲り。僻陋にして夷に在り、此に至りて武王始めて其の衆を起こし、僭號して王と稱し、兵を陳ね師に授け、志意盈滿し、齊に臨みて散ず。故に鄧曼天地鬼神を以て、徵應の符と爲せり。

若師徒無虧、王薨於行、國之福也。王薨於行、不死於敵。
【読み】
若し師徒虧[か]くること無く、王行に薨ぜば、國の福なり、と。王行に薨ずとは、敵に死せざるなり。

王遂行、卒於樠木之下。樠木、木名。○樠、郎蕩反。又莫昆反。又武元反。
【読み】
王遂に行き、樠木[ろうぼく]の下に卒す。樠木は、木の名。○樠は、郎蕩反。又莫昆反。又武元反。

令尹鬭祁・莫敖屈重除道梁溠、營軍臨隨。隨人懼、行成。時祕王喪。故爲奇兵、更開直道。溠水、在義陽厥縣西、東南入鄖水。梁、橋也。隨人不意其至。故懼而行成。○重、直用反。一直容反。溠、側嫁反。鄖、音云。
【読み】
令尹鬭祁・莫敖屈重道を除[はら]い溠[さ]に梁[はし]し、軍を營じて隨に臨む。隨人懼れて、成[たい]らぎを行う。時に王の喪を祕す。故に奇兵を爲し、更に直道を開くなり。溠水は、義陽厥縣の西に在り、東南して鄖水[うんすい]に入る。梁は、橋なり。隨人其の至るに不意なり。故に懼れて成らぎを行う。○重は、直用反。一に直容反。溠は、側嫁反。鄖は、音云。

莫敖以王命入盟隨侯、且請爲會於漢汭而還、汭、内也。謂漢西。○汭、如銳反。水曲曰汭。
【読み】
莫敖王命を以て入りて隨侯に盟い、且請いて會を漢汭[かんぜい]に爲して還り、汭は、内なり。漢西を謂う。○汭は、如銳反。水曲を汭と曰う。

濟漢而後發喪。
【読み】
漢を濟[わた]りて後に喪を發せり。

紀侯不能下齊、以與紀季。不能降屈事齊、盡以國與季。明季不叛。
【読み】
紀侯齊に下ること能わず、以て紀季に與う。降屈して齊に事うること能わず、盡く國を以て季に與う。季が叛かざるを明かすなり。

夏、紀侯大去其國、違齊難也。違、辟也。○難、乃旦反。林注、汭、水曲也。楚師濟漢而歸也。附注、汭、内解依鄭箋、非也。或云、請會、期他日爲會也。
【読み】
夏、紀侯其の國を大去するは、齊の難を違[さ]くるなり。違は、辟くるなり。○難は、乃旦反。林注に、汭は、水曲なり。楚師漢を濟りて歸るなり、と。附注の、汭は、内なりの解の鄭箋に依るとは、非なり。或ひと云う、會を請うは、他日會を爲すを期す、と。


〔經〕五年、春、王正月。夏、夫人姜氏如齊師。無傳。書姦。
【読み】
〔經〕五年、春、王の正月。夏、夫人姜氏齊の師に如く。傳無し。姦を書すなり。

秋、郳犁來來朝。附庸國也。東海昌慮縣東北有郳城。犁來、名。○郳、五兮反。
【読み】
秋、郳[げい]の犁來[れいらい]來朝す。附庸の國なり。東海昌慮縣の東北に郳城有り。犁來は、名。○郳は、五兮反。

冬、公會齊人・宋人・陳人・蔡人伐衛。
【読み】
冬、公齊人・宋人・陳人・蔡人に會して衛を伐つ。

〔傳〕五年、秋、郳犁來來朝。名、未王命也。未受爵命爲諸侯。傳發附庸稱名例也。其後數從齊桓、以尊周室、王命以爲小邾子。○數、音朔。
【読み】
〔傳〕五年、秋、郳の犁來來朝す。名いうは、未だ王に命ぜられざればなり。未だ爵命を受けて諸侯と爲さざるなり。傳に附庸名を稱するの例を發するなり。其の後數々齊の桓に從いて、以て周室を尊び、王命じて以て小邾[ちゅ]子とす。○數は、音朔。

冬伐衛、納惠公也。惠公、朔也。桓十六年、出奔齊。
【読み】
冬衛を伐つは、惠公を納れんとなり。惠公は、朔なり。桓十六年、齊に出奔す。


〔經〕六年、春、王正月、王人子突救衛。王人、王之微官也。雖官卑而見授以大事。故稱人而又稱字。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、王人子突衛を救う。王人は、王の微官なり。官卑しと雖も授くるに大事を以てせらる。故に人と稱して又字を稱す。

夏、六月、衛侯朔入于衛。朔爲諸侯所納。不稱歸而以國逆爲文、朔懼失衆心、以國逆告也。歸・入例、在成十八年。
【読み】
夏、六月、衛侯朔衛に入る。朔諸侯の爲に納れらるる。歸と稱せずして國逆を以て文を爲すは、朔衆心を失わんことを懼れて、國逆を以て告ぐるなり。歸・入の例は、成十八年に在り。

秋、公至自伐衛。無傳。告於廟也。
【読み】
秋、公衛を伐ちてより至る。傳無し。廟に告ぐるなり。

螟。無傳。爲災。○螟、音冥。
【読み】
螟[めい]あり。傳無し。災いを爲す。○螟は、音冥。

冬、齊人來歸衛俘。公羊・穀梁經傳皆言衛寶。此傳亦言寶。唯此經言俘。疑經誤。俘、囚也。○俘、芳夫反。
【読み】
冬、齊人來りて衛の俘を歸[おく]る。公羊・穀梁の經傳皆衛の寶と言う。此の傳も亦寶と言う。唯此の經のみ俘と言う。疑うらくは經の誤りならん。俘は、囚なり。○俘は、芳夫反。

〔傳〕六年、春、王人救衛。
【読み】
〔傳〕六年、春、王人衛を救う。

夏、衛侯入。放公子黔牟于周、放寗跪于秦、殺左公子洩・右公子職、寗跪、衛大夫。宥之以遠曰放。○寗、乃定反。跪、其毀反。
【読み】
夏、衛侯入る。公子黔牟[けんぼう]を周に放ち、寗跪[ねいき]を秦に放ち、左公子洩[せつ]・右公子職を殺して、寗跪は、衛の大夫。之を宥むるに遠を以てするを放と曰う。○寗は、乃定反。跪は、其毀反。

乃卽位。
【読み】
乃ち位に卽く。

君子以二公子之立黔牟、爲不度矣。夫能固位者、必度於本末、而後立衷焉。不知其本、不謀。知本之不枝、弗强。本末、終始也。衷、節適也。譬之樹木、本弱者、其枝必披。非人力所能强成。○度、待洛反。下同。衷、丁仲反。王音忠。强、其丈反。披、普靡反。又普知反。
【読み】
君子二公子の黔牟を立てしを以て、度らずとす。夫の能く位を固くする者は、必ず本末を度りて、而して後に衷を立つ。其の本を知らざれば、謀らず。本の枝せざるを知れば、强いず。本末は、終始なり。衷は、節適なり。之を樹木に譬うれば、本弱き者は、其の枝必ず披[ひら]く。人力の能く强いて成す所に非ず。○度は、待洛反。下も同じ。衷は、丁仲反。王音忠。强は、其丈反。披は、普靡反。又普知反。

詩云、本枝百世。詩、大雅。言文王本枝倶茂、蕃滋百世也。
【読み】
詩云、本枝百世、と。詩は、大雅。文王本枝倶に茂く、蕃滋すること百世なるを言うなり。

冬、齊人來歸衛寶、文姜請之也。公親與齊共伐衛、事畢而還。文姜淫於齊侯。故求其所獲珍寶、使以歸魯。欲說魯以謝慙。○說、音悅。
【読み】
冬、齊人來りて衛の寶を歸るは、文姜之を請えばなり。公親ら齊と共に衛を伐ち、事畢りて還る。文姜齊侯に淫す。故に其の獲たる所の珍寶を求めて、以て魯に歸らしむ。魯を說ばせて以て慙を謝せんと欲す。○說は、音悅。

楚文王伐申、過鄧。鄧祁侯曰、吾甥也。祁、謚也。姊妹之子曰甥
【読み】
楚の文王申を伐ち、鄧を過ぐ。鄧の祁侯曰く、吾が甥なり、と。祁は、謚なり。姊妹の子を甥と曰う。

止而享之。騅甥・耼甥・養甥請殺楚子。皆鄧甥。仕於舅氏也。○騅、音佳。
【読み】
止めて之を享す。騅甥・耼甥[たんせい]・養甥楚子を殺さんと請う。皆鄧の甥。舅氏に仕う。○騅は、音佳。

鄧侯弗許。三甥曰、亡鄧國者、必此人也。若不早圖、後君噬齊。若齧腹齊。喩不可及。
【読み】
鄧侯許さず。三甥曰く、鄧國を亡ぼさん者は、必ず此人ならん。若し早く圖らずんば、後君齊[ほぞ]を噬[か]まん。腹齊を齧[か]むが若し。及ぶ可からざるに喩う。

其及圖之乎。圖之、此爲時矣。鄧侯曰、人將不食吾餘。言自害其甥、必爲人所賤。
【読み】
其れ之を圖るに及ばんや。之を圖らんとならば、此を時と爲す、と。鄧侯曰く、人將に吾が餘りを食わざらんとす、と。自ら其の甥を害せば、必ず人の爲に賤めらるるを言う。

對曰、若不從三臣、抑社稷實不血食。而君焉取餘。言君無復餘。○焉、於虔反。
【読み】
對えて曰く、若し三臣に從わずんば、抑々社稷も實に血食せず。而るを君焉[いずく]に餘りを取らん、と。君復餘り無きを言う。○焉は、於虔反。

弗從。
【読み】
從わず。

還年、楚子伐鄧。伐申還之年。
【読み】
還る年、楚子鄧を伐つ。申を伐ちて還るの年なり。

十六年、楚復伐鄧、滅之。魯莊公十六年、楚終强盛。爲經書楚事張本。
【読み】
十六年、楚復鄧を伐ちて、之を滅ぼせり。魯の莊公十六年、楚終に强盛なり。經に楚の事を書す爲の張本なり。


〔經〕七年、春、夫人姜氏會齊侯于防。防、魯地。
【読み】
〔經〕七年、春、夫人姜氏齊侯に防に會す。防は、魯の地。

夏、四月、辛卯、夜、恆星不見。恆、常也。謂常見之星。辛卯、四月五日。月光尙微。蓋時無雲、日光不以昏沒。○見、賢遍反。
【読み】
夏、四月、辛卯[かのと・う]、夜、恆星見えず。恆は、常なり。常にして見るの星を謂う。辛卯は、四月五日。月光尙微なり。蓋し時に雲無く、日光昏を以て沒せざるならん。○見は、賢遍反。

夜中、星隕如雨。如、而也。夜半乃有雲、星落而且雨。其數多。皆記異也。日光不匿、恆星不見。而云夜中者、以水漏知之。○中、丁仲反。又如字。隕、于閔反。
【読み】
夜中、星隕ちて雨ふる。如は、而なり。夜半にして乃ち雲有り、星落ちて且雨ふる。其の數多し。皆異を記すなり。日光匿れず、恆星見えず。而るに夜中と云うは、水漏を以て之を知るなり。○中は、丁仲反。又字の如し。隕は、于閔反。

秋、大水。無傳。
【読み】
秋、大水あり。傳無し。

無麥・苗。今五月、周之秋。平地出水、漂殺熟麥及五稼之苗。○漂、匹妙反。
【読み】
麥・苗無し。今の五月は、周の秋。平地水を出だして、熟麥と五稼の苗とを漂殺す。○漂は、匹妙反。

冬、夫人姜氏會齊侯于穀。無傳。穀、齊地。今濟北穀城縣。
【読み】
冬、夫人姜氏齊侯に穀に會す。傳無し。穀は、齊の地。今の濟北穀城縣なり。

〔傳〕七年、春、文姜會齊侯于防、齊志也。文姜數與齊侯會。至齊地、則姦發夫人。至魯地、則齊侯之志。故傳畧舉二端以言之。○數、音朔。
【読み】
〔傳〕七年、春、文姜齊侯に防に會するは、齊の志なり。文姜數々齊侯と會す。齊の地に至るは、則ち姦夫人に發す。魯の地に至るは、則ち齊侯の志なり。故に傳畧二端を舉げて以て之を言う。○數は、音朔。

夏、恆星不見、夜明也。星隕如雨、與雨偕也。偕、倶也。
【読み】
夏、恆星見えざるは、夜明なればなり。星隕ちて雨ふるは、雨と偕にするなり。偕は、倶なり。

秋、無麥・苗、不害嘉穀也。黍稷尙可更種。故曰不害嘉穀。
【読み】
秋、麥・苗無しとは、嘉穀を害せざるなり。黍稷は尙更に種える可し。故に嘉穀を害せずと曰う。


〔經〕八年、春、王正月、師次于郎、以俟陳人・蔡人。無傳。期共伐郕。陳・蔡不至。故駐師于郎以待之。
【読み】
〔經〕八年、春、王の正月、師郎に次[やど]りて、以て陳人・蔡人を俟つ。傳無し。共に郕[せい]を伐たんことを期す。陳・蔡至らず。故に師を郎に駐めて以て之を待つ。

甲午、治兵。治兵於廟習號令。將以圍郕。
【読み】
甲午[きのえ・うま]、治兵す。廟に治兵して號令を習わす。將に以て郕を圍まんとす。

夏、師及齊師圍郕。郕降于齊師。二國同討而齊獨納郕。○降、戶江反。
【読み】
夏、師齊の師と郕[せい]を圍む。郕齊の師に降る。二國同じく討ちて齊獨り郕を納る。○降は、戶江反。

秋、師還。時史善公克己復禮、全軍而還。故特書師還。
【読み】
秋、師還る。時史公の己に克ち禮を復し、軍を全くして還るを善とす。故に特に師還ると書す。

冬、十有一月、癸未、齊無知弑其君諸兒。稱臣、臣之罪也。○兒、如字。一音五兮反。
【読み】
冬、十有一月、癸未[みずのと・ひつじ]、齊の無知其の君諸兒を弑す。臣を稱するは、臣の罪なり。○兒は、字の如し。一に音五兮反。

〔傳〕八年、春、治兵于廟。禮也。
【読み】
〔傳〕八年、春、廟に治兵す。禮なり。

夏、師及齊師圍郕。郕降于齊師。仲慶父請伐齊師。齊不與魯共其功。故欲伐之。
【読み】
夏、師齊の師と郕を圍む。郕齊の師に降る。仲慶父齊の師を伐たんと請う。齊魯と其の功を共にせず。故に之を伐たんと欲す。

公曰、不可。我實不德。齊師何罪。罪我之由。夏書曰、皐陶邁種德。夏書、逸書也。稱皐陶能勉種德。邁、勉也。
【読み】
公曰く、不可なり。我れ實に不德なり。齊の師何の罪かある。罪は我に由れり。夏書に曰く、皐陶邁[つと]めて德を種[し]く、と。夏書は、逸書なり。皐陶能く勉めて德を種くを稱す。邁は、勉むるなり。

德乃降。姑務脩德以待時乎。言苟有德、乃爲人所降服。姑、且也。
【読み】
德あれば乃ち降る。姑く務めて德を脩めて以て時を待たん、と。言うこころは、苟も德有れば、乃ち人の爲に降服せらる、と。姑は、且くなり。

秋、師還。
【読み】
秋、師還る。

君子是以善魯莊公。傳言經所以卽用舊史之文。
【読み】
君子是を以て魯の莊公を善とす。傳は經に卽いて舊史の文を用ゆる所以を言う。

齊侯使連稱・管至父戍葵丘。連稱・管至父、皆齊大夫。戍、守也。葵丘、齊地。臨淄縣西有地、名葵丘。○稱、尺證反。又如字。
【読み】
齊侯連稱・管至父をして葵丘[ききゅう]を戍らしむ。連稱・管至父は、皆齊の大夫。戍は、守るなり。葵丘は、齊の地。臨淄縣の西に地有り、葵丘と名づく。○稱は、尺證反。又字の如し。

瓜時而往。曰、及瓜而代。期戍。公問不至。問、命也。○期、音基。
【読み】
瓜の時にして往く。曰く、瓜に及んで代えん、と。期まで戍る。公の問至らず。問は、命なり。○期は、音基。

請代。弗許。故謀作亂。僖公之母弟曰夷仲年。生公孫無知。有寵於僖公、衣服禮秩如適。適、太子。○適、丁歷反。
【読み】
代わりを請う。許さず。故に亂を作さんことを謀る。僖公の母弟を夷仲年と曰う。公孫無知を生む。僖公に寵有り、衣服禮秩適の如し。適は、太子。○適は、丁歷反。

襄公絀之。二人因之以作亂。二人、連稱・管至父。○絀、勑律反。
【読み】
襄公之を絀[しりぞ]く。二人之に因りて以て亂を作す。二人は、連稱・管至父。○絀[ちゅつ]は、勑律反。

連稱有從妹、在公宮。無寵。使閒公。伺公之閒隙。○從、才用反。下同。
【読み】
連稱に從妹有り、公宮に在り。寵無し。公を閒せしむ。公の閒隙を伺う。○從は、才用反。下も同じ。

曰、捷、吾以女爲夫人。捷、克也。宣無知之言。○捷、在接反。女、音汝。
【読み】
曰く、捷[か]たば、吾れ女を以て夫人と爲さん、と。捷は、克つなり。無知の言を宣ぶ。○捷は、在接反。女は、音汝。

冬、十二月、齊侯游于姑棼、遂田于貝丘、姑棼・貝丘、皆齊地。田、獵也。樂安博昌縣南有地、名貝丘。○棼、扶云反。貝、補蓋反。
【読み】
冬、十二月、齊侯姑棼[こふん]に游び、遂に貝丘に田し、姑棼・貝丘は、皆齊の地。田は、獵なり。樂安博昌縣の南に地有り、貝丘と名づく。○棼は、扶云反。貝は、補蓋反。

見大豕。從者曰、公子彭生也。公見大豕、而從者見彭生。皆妖鬼。
【読み】
大豕を見る。從者曰く、公子彭生なり、と。公は大豕を見て、從者は彭生を見る。皆妖鬼なり。

公怒曰、彭生敢見。射之。豕人立而啼。公懼、隊于車、傷足喪屨。反、誅屨於徒人費。誅、責也。○見、賢遍反。射、食亦反。隊、直類反。喪、息浪反。費、音祕。
【読み】
公怒りて曰く、彭生敢えて見えんや、と。之を射る。豕人のごとく立ちて啼く。公懼れ、車より隊[お]ち、足を傷り屨[くつ]を喪う。反りて、屨を徒人費に誅[せ]む。誅は、責むるなり。○見は、賢遍反。射は、食亦反。隊は、直類反。喪は、息浪反。費は、音祕。

弗得。鞭之見血。走出。遇賊于門。劫而束之。費曰、我奚御哉。袒而示之背。信之。費請先入、詐欲助賊。○御、魚呂反。袒、音但。
【読み】
得ず。之を鞭ち血を見る。走り出づ。賊に門に遇う。劫[おびや]かして之を束ねんとす。費曰く、我れ奚ぞ御[ふせ]がんや、と。袒[はだぬ]いで之に背を示す。之を信ず。費請いて先ず入り、詐いて賊を助けんと欲す。○御は、魚呂反。袒は、音但。

伏公而出鬭、死于門中。石之紛如死于階下。石之紛如、齊小臣。亦鬭死。
【読み】
公を伏せて出でて鬭い、門中に死す。石之紛如階下に死す。石之紛如は、齊の小臣。亦鬭死す。

遂入、殺孟陽于牀。孟陽、亦小臣。代公居牀。
【読み】
遂に入り、孟陽を牀に殺す。孟陽も、亦小臣。公に代わりて牀に居る。

曰、非君也。不類。見公之足于戶下。遂弑之、而立無知。經書十一月癸未。長曆推之、月六日也。傳云十二月、傳誤。
【読み】
曰く、君に非ざるなり。類せず、と。公の足を戶下に見る。遂に之を弑して、而して無知を立つ。經に十一月癸未と書す。長曆もて之を推すに、月の六日なり。傳に十二月と云うは、傳の誤りなり。

初、襄公立、無常。政令無常。
【読み】
初め、襄公立ちて、常無し。政令常無し。

鮑叔牙曰、君使民慢。亂將作矣。奉公子小白出奔莒。鮑叔牙、小白傅。小白、僖公庶子。○鮑、步卯反。
【読み】
鮑叔牙曰く、君民を使うこと慢[みだ]りなり。亂將に作らんとす、と。公子小白を奉じて出でて莒[きょ]に奔る。鮑叔牙は、小白の傅。小白は、僖公の庶子。○鮑は、步卯反。

亂作。管夷吾・召忽奉公子糾來奔。管夷吾・召忽、皆子糾傅也。子糾、小白庶兄。來不書、皆非卿也。爲九年公伐齊納子糾、齊小白入于齊傳。○召、時照反。
【読み】
亂作る。管夷吾・召忽公子糾を奉じて來奔す。管夷吾・召忽は、皆子糾の傅なり。子糾は、小白の庶兄。來るを書さざるは、皆卿に非ざればなり。九年公齊を伐ちて子糾を納れ、齊の小白齊に入る爲の傳なり。○召は、時照反。

初、公孫無知虐于雍廩。雍廩、齊大夫。爲殺無知傳。
【読み】
初め、公孫無知雍廩を虐げぬ。雍廩は、齊の大夫。無知を殺す爲の傳なり。


〔經〕九年、春、齊人殺無知。無知弑君而立、未列於會。故不書爵。例在成十六年。
【読み】
〔經〕九年、春、齊人無知を殺す。無知君を弑して立ち、未だ會に列ならず。故に爵を書さず。例は成十六年に在り。

公及齊大夫盟于蔇。齊亂無君。故大夫得敵於公。蓋欲迎子糾也。來者非一人。故不稱名。蔇、魯地。琅邪繒縣北有蔇亭。○蔇、其器反。
【読み】
公齊の大夫と蔇[き]に盟う。齊亂れて君無し。故に大夫公に敵するを得。蓋し子糾を迎えんと欲するならん。來者一人に非ず。故に名を稱せず。蔇は、魯の地。琅邪繒縣の北に蔇亭有り。○蔇は、其器反。

夏、公伐齊、納子糾。齊小白入于齊。二公子各有黨。故雖盟而迎子糾、當須伐乃得入。又出在小白之後。小白稱入、從國逆之文、本無位。
【読み】
夏、公齊を伐ちて、子糾を納る。齊の小白齊に入る。二公子各々黨有り。故に盟いて子糾を迎うと雖も、當に伐つを須ちて乃ち入ることを得るべし。又出づること小白の後に在り。小白入ると稱して、國逆の文に從うは、本位無ければなり。

秋、七月、丁酉、葬齊襄公。無傳。九月乃葬、亂故也。
【読み】
秋、七月、丁酉[ひのと・とり]、齊の襄公を葬る。傳無し。九月にして乃ち葬るは、亂の故なり。

八月、庚申、及齊師戰于乾時。我師敗績。小白旣定。而公猶不退師、歷時而戰、戰遂大敗。不稱公戰公敗、諱之。乾時、齊地。時水、在樂安界、岐流。旱則竭涸。故曰乾時。○乾、音干。
【読み】
八月、庚申[かのえ・さる]、齊の師と乾時に戰う。我が師敗績す。小白旣に定まる。而るに公猶師を退けず、時を歷て戰い、戰いて遂に大いに敗らる。公戰い公敗らると稱せざるは、之を諱みてなり。乾時は、齊の地。時水は、樂安の界に在り、岐流す。旱には則ち竭涸す。故に乾時と曰う。○乾は、音干。

九月、齊人取子糾殺之。公子爲賊亂則書。齊實告殺、而書齊取殺者、時史惡齊志在譎以求管仲、非不忍其親。故極言之。○惡、烏路反。譎、古穴反。
【読み】
九月、齊人子糾を取[とら]えて之を殺す。公子賊亂を爲せば則ち書す。齊實は殺を告げて、齊取え殺すと書すは、時史齊の志譎[いつわ]りて以て管仲を求むるに在りて、其の親に忍びざるに非ざるを惡む。故に極めて之を言うなり。○惡は、烏路反。譎は、古穴反。

冬、浚洙。無傳。洙水、在魯城北、下合泗。浚、深之。爲齊備。
【読み】
冬、洙を浚[ふか]くす。傳無し。洙水は、魯城の北に在り、下りて泗に合う。浚は、之を深くするなり。齊の爲に備うるなり。

〔傳〕九年、春、雍廩殺無知。
【読み】
〔傳〕九年、春、雍廩無知を殺す。

公及齊大夫盟于蔇、齊無君也。
【読み】
公齊の大夫と蔇に盟うは、齊君無ければなり。

夏、公伐齊、納子糾。桓公自莒先入。桓公、小白。
【読み】
夏、公齊を伐ちて、子糾を納る。桓公莒より先ず入る。桓公は、小白。

秋、師及齊師戰于乾時。我師敗績。公喪戎路、傳乘而歸。戎路、兵車。傳乘、乘他車。○喪、息浪反。乘、繩證反。乘他、如字。
【読み】
秋、師齊の師と乾時に戰う。我が師敗績す。公戎路を喪い、傳乘して歸る。戎路は、兵車。傳乘は、他の車に乘るなり。○喪は、息浪反。乘は、繩證反。乘他は、字の如し。

秦子・梁子以公旗辟于下道。二子、公御及戎右也。以誤齊師。○辟、音避。
【読み】
秦子・梁子公の旗を以て下道に辟く。二子は、公の御と戎右となり。以て齊の師を誤らす。○辟は、音避。

是以皆止。止、獲也。
【読み】
是を以て皆止[え]らる。止は、獲るなり。

鮑叔帥師來言曰、子糾、親也。請君討之。鮑叔乘勝而進軍。志在生得管仲。故託不忍之辭。
【読み】
鮑叔師を帥て來り言いて曰く、子糾は、親なり。請う君之を討ぜよ。鮑叔勝に乘じて軍を進む。志管仲を生得するに在り。故に忍びざるの辭に託す。

管・召、讎也。請受而甘心焉。管仲射桓公。故曰讎。甘心、言欲快意戮殺之。
【読み】
管・召は、讎なり。請う受けて甘心せん、と。管仲桓公を射る。故に讎と曰う。甘心は、快意に之を戮殺せんと欲するを言う。

乃殺子糾于生竇。生竇、魯地。○竇、音豆。
【読み】
乃ち子糾を生竇[せいとう]に殺す。生竇は、魯の地。○竇は、音豆。

召忽死之。管仲請囚。鮑叔受之、及堂阜而稅之。堂阜、齊地。東莞蒙陰縣西北有夷吾亭。或曰、鮑叔解夷吾縛於此。因以爲名。○稅、土活反。一失銳反。
【読み】
召忽之に死す。管仲囚われんと請う。鮑叔之を受け、堂阜に及んで之を稅[と]く。堂阜は、齊の地。東莞蒙陰縣の西北に夷吾亭有り。或ひと曰く、鮑叔夷吾の縛を此に解く。因りて以て名とす、と。○稅は、土活反。一に失銳反。

歸而以告曰、管夷吾治於高傒。高傒、齊卿高敬仲也。言管仲治理政事之才、多於敬仲。○傒、音兮。
【読み】
歸りて以て告げて曰く、管夷吾は高傒より治む。高傒は、齊の卿の高敬仲なり。言うこころは、管仲が政事を治理するの才、敬仲より多し。○傒は、音兮。

使相可也。公從之。○相、息亮反。
【読み】
相たらしめて可なり、と。公之に從う。○相は、息亮反。


〔經〕十年、春、王正月、公敗齊師于長勺。齊人雖成列、魯以權譎稽之、列成而不得用。故以未陳爲文。例在十一年。長勺、魯地。○勺、上酌反。陳、直覲反。
【読み】
〔經〕十年、春、王の正月、公齊の師を長勺に敗る。齊人列を成すと雖も、魯權譎を以て之を稽[とど]め、列成りて用ゆることを得ず。故に未だ陳せざるを以て文を爲す。例は十一年に在り。長勺は、魯の地。○勺は、上酌反。陳は、直覲反。

二月、公侵宋。無傳。侵例、在二十九年。
【読み】
二月、公宋を侵す。傳無し。侵の例は、二十九年に在り。

三月、宋人遷宿。無傳。宋强遷之而取其地。故文異於邢遷。○强、其丈反。
【読み】
三月、宋人宿を遷す。傳無し。宋强いて之を遷して其の地を取る。故に文邢遷るに異なり。○强は、其丈反。

夏、六月、齊師・宋師次于郎。不言侵伐、齊爲兵主、背蔇之盟。義與長勺同。
【読み】
夏、六月、齊の師・宋の師郎に次[やど]る。侵伐を言わざるは、齊兵主と爲りて、蔇の盟に背けばなり。義は長勺と同じ。

公敗宋師于乘丘。乘丘、魯地。○乘、繩證反。
【読み】
公宋の師を乘丘に敗る。乘丘は、魯の地。○乘は、繩證反。

秋、九月、荆敗蔡師于莘、荆、楚本號。後改爲楚、楚辟陋在夷。於此始通中國。然告命之辭、猶未合典禮。故不稱將帥。莘、蔡地。○莘、所巾反。將、子匠反。帥、所類反。
【読み】
秋、九月、荆蔡の師を莘に敗り、荆は、楚の本號。後改めて楚とす、楚辟陋にして夷に在り。此に於て始めて中國に通ず。然れども告命の辭、猶未だ典禮に合わず。故に將帥を稱せず。莘は、蔡の地。○莘は、所巾反。將は、子匠反。帥は、所類反。

以蔡侯獻舞歸。獻舞、蔡季。
【読み】
蔡侯獻舞を以[い]て歸る。獻舞は、蔡季。

冬、十月、齊師滅譚。譚國、在濟南平陵縣西南。傳曰譚無禮、此直釋所以見滅。經無義例。他皆放此。滅例在文十五年。
【読み】
冬、十月、齊の師譚[たん]を滅ぼす。譚國は、濟南平陵縣の西南に在り。傳に譚禮無しと曰うは、此れ直に滅ぼさるる所以を釋くなり。經に義例無し。他皆此に放え。滅の例は文十五年に在り。

譚子奔莒。不言出奔、國滅無所出。
【読み】
譚子莒に奔る。出奔と言わざるは、國滅びて出づる所無ければなり。

〔傳〕十年、春、齊師伐我。不書侵伐、齊背蔇之盟、我有辭。
【読み】
〔傳〕十年、春、齊の師我を伐つ。侵伐を書さざるは、齊蔇の盟に背いて、我れ辭有ればなり。

公將戰。曹劌請見。曹劌、魯人。○劌、古衛反。見、賢遍反。
【読み】
公將に戰わんとす。曹劌[そうけい]見えんことを請わんとす。曹劌は、魯の人。○劌は、古衛反。見は、賢遍反。

其郷人曰、肉食者謀之。又何閒焉。肉食、在位者。閒、猶與也。○與、音預。
【読み】
其の郷人曰く、肉食の者之を謀る。又何ぞ閒せん、と。肉食は、位に在る者。閒は、猶與るがごとし。○與は、音預。

劌曰、肉食者鄙。未能遠謀。乃入見。
【読み】
劌曰く、肉食の者は鄙[いや]し。未だ遠く謀ること能わず、と。乃ち入りて見ゆ。

問何以戰。公曰、衣食所安、弗敢專也。必以分人。對曰、小惠未徧。民弗從也。分公衣食、所惠不過左右。故曰未徧。
【読み】
問う、何を以て戰わんとする、と。公曰く、衣食安んずる所、敢えて專にせず。必ず以て人に分かてり、と。對えて曰く、小惠未だ徧からず。民從わず、と。公の衣食を分かつは、惠む所左右に過ぎず。故に未だ徧からずと曰う。

公曰、犧牲玉帛、弗敢加也。必以信。祝辭不敢以小爲大、以惡爲美。
【読み】
公曰く、犧牲玉帛、敢えて加えず。必ず信を以てせり、と。祝辭敢えて小を以て大と爲し、惡を以て美と爲さず。

對曰、小信未孚、神弗福也。孚、大信也。
【読み】
對えて曰く、小信未だ孚ならず、神福せず、と。孚は、大信なり。

公曰、小大之獄、雖不能察、必以情。必盡己情。察、審也。
【読み】
公曰く、小大の獄、察すること能わずと雖も、必ず情を以てせり、と。必ず己が情を盡くす。察は、審らかなり。

對曰、忠之屬也。上思利民、忠也。
【読み】
對えて曰く、忠の屬なり。上民を利せんと思うは、忠なり。

可以一戰。戰則請從。
【読み】
以て一戰す可し。戰わば則ち請う從わん、と。

公與之乘。共乘兵車。○從、去聲。乘、繩證反。
【読み】
公之と乘る。共に兵車に乘る。○從は、去聲。乘は、繩證反。

戰于長勺。公將鼓之。劌曰、未可。齊人三鼓。劌曰、可矣。齊師敗績。公將馳之。劌曰、未可。下視其轍、視車跡也。○三、息暫反。又如字。
【読み】
長勺に戰う。公將に之に鼓たんとす。劌曰く、未だ可ならず、と。齊人三たび鼓つ。劌曰く、可なり、と。齊の師敗績す。公將に之に馳せんとす。劌曰く、未だ可ならず、と。下りて其の轍を視、車跡を視るなり。○三は、息暫反。又字の如し。

登軾而望之、曰、可矣。遂逐齊師。
【読み】
軾に登りて之を望みて、曰く、可なり、と。遂に齊の師を逐う。

旣克。公問其故。對曰、夫戰、勇氣也。一鼓作氣、再而衰、三而竭。彼竭我盈。故克之。夫大國難測也。懼有伏焉。恐詐奔。
【読み】
旣に克つ。公其の故を問う。對えて曰く、夫れ戰は、勇氣なり。一たび鼓ちて氣を作し、再びして衰え、三たびして竭く。彼れ竭き我れ盈つ。故に之に克てり。夫れ大國は測り難し。伏有らんことを懼る。詐り奔らんことを恐る。

吾視其轍亂、望其旗靡。故逐之。旗靡轍亂、怖遽。
【読み】
吾れ其の轍を視れば亂れ、其の旗を望めば靡く。故に之を逐えり、と。旗靡き轍亂るは、怖遽するなり。

夏、六月、齊師・宋師次于郎。公子偃曰、宋師不整。可敗也。公子偃、魯大夫。
【読み】
夏、六月、齊の師・宋の師郎に次る。公子偃曰く、宋の師整わず。敗れ可し。公子偃は、魯の大夫。

宋敗、齊必還。請擊之。公弗許。自雩門竊出、蒙皐比而先犯之。雩門、魯南城門。皐比、虎皮。○比、音毗。
【読み】
宋敗れば、齊必ず還らん。請う、之を擊たん、と。公許さず。雩門[うもん]より竊かに出でて、皐比を蒙らせて先ず之を犯す。雩門は、魯の南城門。皐比は、虎の皮。○比は、音毗。

公從之、大敗宋師于乘丘。齊師乃還。
【読み】
公之に從い、大いに宋の師を乘丘に敗る。齊の師乃ち還る。

蔡哀侯娶于陳。息侯亦娶焉。息嬀將歸、過蔡。蔡侯曰、吾姨也。妻之姊妹曰姨。
【読み】
蔡の哀侯陳に娶る。息侯も亦娶る。息嬀將に歸らんとし、蔡を過ぐ。蔡侯曰く、吾が姨なり、と。妻の姊妹を姨と曰う。

止而見之。弗賓。不禮敬也。
【読み】
止めて之を見る。賓せず。禮敬せざるなり。

息侯聞之怒。使謂楚文王曰、伐我。吾求救於蔡而伐之。楚子從之。秋、九月、楚敗蔡師于莘、以蔡侯獻舞歸。
【読み】
息侯之を聞いて怒る。楚の文王に謂わしめて曰く、我を伐て。吾れ救いを蔡に求めて之を伐たん、と。楚子之に從う。秋、九月、楚蔡の師を莘に敗り、蔡侯獻舞を以て歸る。

齊侯之出也、過譚。譚不禮焉。及其入也、諸侯皆賀。譚又不至。以九年入。○過、平聲。
【読み】
齊侯の出づるや、譚を過ぐ。譚禮せず。其の入るに及んでや、諸侯皆賀す。譚又至らず。九年を以て入る。○過は、平聲。

冬、齊師滅譚、譚無禮也。譚子奔莒、同盟故也。傳言譚不能及遠、所以亡。
【読み】
冬、齊の師譚を滅ぼすは、譚禮無ければなり。譚子莒に奔るは、同盟の故なり。傳、譚の遠きに及ぶこと能わずして、亡ぶる所以を言う。


〔經〕十有一年、春、王正月。無傳。
【読み】
〔經〕十有一年、春、王の正月。傳無し。

夏、五月、戊寅、公敗宋師于鄑。鄑、魯地。傳例曰、敵未陳曰敗某師。○鄑、子斯反。
【読み】
夏、五月、戊寅[つちのえ・とら]、公宋の師を鄑[し]に敗る。鄑は、魯の地。傳例に曰く、敵未だ陳せざるを某の師を敗ると曰う、と。○鄑は、子斯反。

秋、宋大水。使弔之。故書。
【読み】
秋、宋大水あり。之を弔せしむ。故に書す。

冬、王姬歸于齊。魯主昏。不書齊侯逆、不見公。
【読み】
冬、王姬齊に歸[とつ]ぐ。魯昏を主る。齊侯の逆[むか]うるを書さざるは、公を見ざればなり。

〔傳〕十一年、夏、宋爲乘丘之役故、侵我。公禦之。宋師未陳而薄之、敗諸鄑。
【読み】
〔傳〕十一年、夏、宋乘丘の役の爲の故に、我を侵す。公之を禦ぐ。宋の師未だ陳せずして之に薄[せま]り、諸を鄑に敗る。

凡師、敵未陳曰敗某師。通謂設權譎變詐以勝敵。彼我不得成列、成列而不得用。故以未陳獨敗爲文。○爲乘、于僞反。陳、直覲反。
【読み】
凡そ師、敵未だ陳せざるを某の師を敗ると曰う。通じて權譎變詐を設けて以て敵に勝つを謂う。彼我列を成すことを得ず、列を成せども用ゆることを得ず。故に未だ陳せずして獨敗るを以て文を爲す。○爲乘は、于僞反。陳は、直覲反。

皆陳曰戰。堅而有備。各得其所。成敗決於志力者也。
【読み】
皆陳するを戰と曰う。堅くして備え有り。各々其の所を得。成敗志力に決する者なり。

大崩曰敗績。師徒撓敗、若沮岸崩山、喪其功績。故曰敗績。○撓、乃孝反。一音乃巧反。沮、在呂反。壞也。一音子餘反。岸崩、謂之沮。
【読み】
大いに崩るるを敗績と曰う。師徒撓敗すること、沮岸崩山の若くにして、其の功績を喪う。故に敗績と曰う。○撓は、乃孝反。一に音乃巧反。沮は、在呂反。壞るなり。一に音子餘反。岸崩るる、之を沮と謂う。

得雋曰克。謂若大叔段之比、才力足以服衆、威權足以自固、進不成爲外寇强敵、退復狡壯、有二君之難、而實非二君、克而勝之、則不言彼敗績、但書所克之名。○雋、音俊。
【読み】
雋[しゅん]を得るを克つと曰う。大叔段の比の、才力以て衆を服するに足り、威權以て自ら固くするに足り、進んで外寇强敵爲ることを成さざるも、退いては復狡壯、二君の難有りて、實は二君に非ず、克ちて之に勝てば、則ち彼れ敗績すと言わず、但克つ所の名を書すが若きを謂う。○雋は、音俊。

覆而敗之曰取某師。覆謂威力兼備、若羅網所掩覆。一軍皆見禽制。故以取爲文。
【読み】
覆いて之を敗るを某の師を取ると曰う。覆は威力兼備し、羅網の掩覆する所の若きを謂う。一軍皆禽制せらる。故に取るを以て文を爲す。

京師敗、曰王師敗績于某。王者無敵於天下。天下非所得與戰者。然春秋之世、據有其事、事列於經、則不得不因申其義。有時而敗、則以自敗爲文。明天下莫之得校。○校、音敎。
【読み】
京師敗るるを、王の師某に敗績すと曰う。王者は天下に敵無し。天下與に戰うことを得る所の者に非ず。然れども春秋之世、其の事有るに據りて、事經に列ぬれば、則ち因りて其の義を申べざることを得ず。時有りて敗るれば、則ち自ら敗るるを以て文を爲す。天下之に校[くら]ぶることを得ること莫きを明かす。○校は、音敎。

秋、宋大水。公使弔焉、曰、天作淫雨、害於粢盛。若之何不弔。不爲天所愍弔。
【読み】
秋、宋大水あり。公弔せしめて、曰く、天淫雨を作して、粢盛を害す。之を若何ぞ弔せられざるや、と。天の爲に愍弔[びんちょう]せられず。

對曰、孤實不敬、天降之災。又以爲君憂。拜命之辱。謝辱厚命。
【読み】
對えて曰く、孤實に不敬にして、天之に災いを降せり。又以て君の憂えを爲せり。命の辱[かたじけな]きを拜す、と。厚命を辱くするを謝す。

臧文仲曰、宋其興乎。臧文仲、魯大夫。
【読み】
臧文仲曰く、宋は其れ興らん。臧文仲は、魯の大夫。

禹・湯罪己、其興也悖焉。悖、盛貌。○悖、蒲忽反。一作勃。
【読み】
禹・湯己を罪して、其の興るや悖[ぼつ]焉たり。悖は、盛んなる貌。○悖は、蒲忽反。一に勃に作る。

桀・紂罪人、其亡也忽焉。忽、速貌。
【読み】
桀・紂人を罪して、其の亡ぶるや忽焉たり。忽は、速やかなる貌。

且列國有凶、稱孤、禮也。列國諸侯、無凶則常稱寡人。
【読み】
且つ列國凶有るとき、孤と稱するは、禮なり。列國の諸侯、凶無ければ則ち常に寡人と稱す。

言懼而名禮。其庶乎。言懼、罪己。名禮、稱孤。其庶、庶幾於興。○言懼而名禮、絶句。
【読み】
言懼れて名禮あり。其れ庶からんか、と。言懼るとは、己を罪するなり。名禮ありとは、孤と稱するなり。其れ庶からんとは、興るに庶幾からんとなり。○言懼れて名禮ありは、絶句。

旣而聞之、曰、公子御說之辭也。宋莊公子。○御、魚呂反。說、音悅。
【読み】
旣にして之を聞けば、曰く、公子御說の辭なり、と。宋の莊公の子。○御は、魚呂反。說は、音悅。

臧孫達曰、是宜爲君。有恤民之心。
【読み】
臧孫達曰く、是れ宜なり君爲ること。民を恤うるの心有りき、と。

冬、齊侯來逆共姬。齊桓公也。○共、音恭。
【読み】
冬、齊侯來りて共姬を逆[むか]う。齊の桓公なり。○共は、音恭。

乘丘之役、在十年。
【読み】
乘丘の役に、十年に在り。

公以金僕姑射南宮長萬。金僕姑、矢名。南宮長萬、宋大夫。○射、食亦反。長、丁文反。
【読み】
公金僕姑を以て南宮長萬を射る。金僕姑は、矢の名。南宮長萬は、宋の大夫。○射は、食亦反。長は、丁文反。

公右歂孫生搏之。搏、取也。不書獲、萬時未爲卿。○歂、市專反。搏、音博。
【読み】
公の右歂孫生[せんそんせい]之を搏[とら]えぬ。搏は、取るなり。獲を書さざるは、萬時に未だ卿と爲らざればなり。○歂は、市專反。搏は、音博。

宋人請之。宋公靳之、戲而相愧曰靳。魯聽其得還。○靳、居覲反。服云、恥而惡之曰靳。
【読み】
宋人之を請う。宋公之を靳[はずかし]めて、戲れて相愧[はずかし]むるを靳[きん]と曰う。魯其を聽[ゆる]して還ることを得せしむ。○靳は、居覲反。服云う、恥じて之を惡むを靳と曰う、と。

曰、始吾敬子。今子魯囚也。吾弗敬子矣。病之。萬不以爲戲、而以爲己病。爲宋萬弑君傳。
【読み】
曰く、始め吾れ子を敬せり。今子は魯の囚なり。吾れ子を敬せず、と。之を病む。萬以て戲れと爲さずして、以て己が病と爲す。宋の萬君を弑する爲の傳なり。


〔經〕十有二年、春、王三月、紀叔姬歸于酅。無傳。紀侯去國而死、叔姬歸魯。紀季自定於齊、而後歸之。全守節義、以終婦道。故繫之紀、而以初嫁爲文、賢之也。來歸不書、非寧、且非大歸。○酅、音攜。
【読み】
〔經〕十有二年、春、王の三月、紀の叔姬酅[けい]に歸る。傳無し。紀侯國を去りて死して、叔姬魯に歸る。紀季自ら齊に定まりて、而して後に之に歸る。節義を全守して、以て婦道を終うる。故に之を紀に繫けて、初嫁を以て文を爲すは、之を賢としてなり。來歸書さざるは、寧に非ず、且大歸に非ざればなり。○酅は、音攜。

夏、四月。秋、八月、甲午、宋萬弑其君捷、及其大夫仇牧。捷、閔公也。不書葬、亂也。萬及仇牧皆宋卿。仇牧稱名、不警而遇賊、無善事可褒。
【読み】
夏、四月。秋、八月、甲午[きのえ・うま]、宋の萬其の君捷を弑して、其の大夫仇牧に及ぶ。捷は、閔公なり。葬を書さざるは、亂れたればなり。萬と仇牧とは皆宋の卿なり。仇牧名を稱するは、警めずして賊に遇いて、善事の褒む可き無ければなり。

冬、十月、宋萬出奔陳。奔例、在宣十年。
【読み】
冬、十月、宋の萬出でて陳に奔る。奔るの例は、宣十年に在り。

〔傳〕十二年、秋、宋萬弑閔公于蒙澤。蒙澤、宋地。梁國有蒙縣。
【読み】
〔傳〕十二年、秋、宋の萬閔公を蒙澤に弑す。蒙澤は、宋の地。梁國に蒙縣有り。

遇仇牧于門。批而殺之。手批之也。○批、普迷反。又蒲穴反。擊也。
【読み】
仇牧に門に遇う。批[う]ちて之を殺す。手にて之を批つなり。○批は、普迷反。又蒲穴反。擊つなり。

遇大宰督于東宮之西。又殺之。殺督不書、宋不以告。○大、音泰。
【読み】
大宰督に東宮の西に遇う。又之を殺す。督を殺すこと書さざるは、宋以て告げざればなり。○大は、音泰。

立子游。子游、宋公子。
【読み】
子游を立つ。子游は、宋の公子。

羣公子奔蕭、公子御說奔亳。蕭、宋邑。今沛國蕭縣。亳、宋邑。蒙縣西北有亳城。
【読み】
羣公子蕭[しょう]に奔り、公子御說亳[はく]に奔る。蕭は、宋の邑。今の沛國蕭縣。亳は、宋の邑。蒙縣の西北に亳城有り。

南宮牛・猛獲帥師圍亳。牛、長萬之子。猛獲、其黨。
【読み】
南宮牛・猛獲師を帥て亳を圍む。牛は、長萬の子。猛獲は、其の黨。

冬、十月、蕭叔大心、叔、蕭大夫名。
【読み】
冬、十月、蕭の叔大心、叔は、蕭の大夫の名。

及戴・武・宣・穆・莊之族、宋五公之子孫。
【読み】
戴・武・宣・穆・莊の族と、宋の五公の子孫。

以曹師伐之、殺南宮牛于師、殺子游于宋、立桓公。桓公、御說。
【読み】
曹師を以[い]て之を伐ち、南宮牛を師に殺し、子游を宋に殺して、桓公を立つ。桓公は、御說。

猛獲奔衛、南宮萬奔陳。以乘車輦其母、一日而至。乘車、非兵車。駕人曰輦。宋去陳二百六十里。言萬之多力。○乘、繩證反。
【読み】
猛獲衛に奔り、南宮萬陳に奔る。乘車を以て其の母を輦[れん]にし、一日にして至る。乘車は、兵車に非ず。人を駕するを輦と曰う。宋陳を去ること二百六十里。萬の多力を言う。○乘は、繩證反。

宋人請猛獲于衛。衛人欲勿與。石祁子曰、不可。石祁子、衛大夫。
【読み】
宋人猛獲を衛に請う。衛人與うること勿からんと欲す。石祁子曰く、不可なり。石祁子は、衛の大夫。

天下之惡一也。惡於宋而保於我。保之何補。得一夫而失一國、與惡而棄好、非謀也。宋・衛本同好國。○好、呼報反。
【読み】
天下の惡は一なり。宋に惡にして我に保つ。之を保つも何の補かある。一夫を得て一國を失い、惡に與して好を棄つるは、謀に非ず、と。宋・衛は本同好の國。○好は、呼報反。

衛人歸之。亦請南宮萬于陳以賂。陳人使婦人飮之酒、而以犀革裹之。比及宋、手足皆見。宋人皆醢之。醢、肉醤。幷醢猛獲。故言皆。○請南宮長萬于陳以賂、絕句。飮、於鴆反。見、賢遍反。醢、音海。
【読み】
衛人之を歸す。亦南宮萬を陳に請うに賂を以てす。陳人婦人をして之に酒を飮ましめて、犀の革を以て之を裹[つつ]む。宋に及ぶ比[ころ]、手足皆見る。宋人皆之を醢[ひしお]にす。醢[かい]は、肉醤。幷せて猛獲を醢にす。故に皆と言う。○請南宮長萬于陳以賂は、絕句。飮は、於鴆反。見は、賢遍反。醢は、音海。


〔經〕十有三年、春、齊侯・宋人・陳人・蔡人・邾人會于北杏。北杏、齊地。○杏、戶猛反。
【読み】
〔經〕十有三年、春、齊侯・宋人・陳人・蔡人・邾人[ちゅひと]北杏に會す。北杏は、齊の地。○杏は、戶猛反。

夏、六月、齊人滅遂。遂國、在濟北蛇丘縣東北。○蛇、音移。
【読み】
夏、六月、齊人遂を滅ぼす。遂國は、濟北蛇丘縣の東北に在り。○蛇は、音移。

秋、七月。冬、公會齊侯盟于柯。此柯、今濟北東阿、齊之阿邑。猶祝柯今爲祝阿。○柯、古何反。
【読み】
秋、七月。冬、公齊侯に會して柯に盟う。此の柯は、今の濟北東阿、齊の阿邑。猶祝柯を今祝阿と爲るがごとし。○柯は、古何反。

〔傳〕十三年、春、會于北杏、以平宋亂。宋有弑君之亂。齊桓欲修霸業。
【読み】
〔傳〕十三年、春、北杏に會して、以て宋の亂を平らぐ。宋に君を弑するの亂有り。齊桓霸業を修めんと欲す。

遂人不至。夏、齊人滅遂、而戍之。戍、守也。
【読み】
遂人至らず。夏、齊人遂を滅ぼして、之を戍る。戍は、守るなり。

冬、盟于柯、始及齊平也。始與齊桓通好。
【読み】
冬、柯に盟うは、始めて齊と平らぐなり。始めて齊桓と好を通ず。

宋人背北杏之會。○背、音佩。
【読み】
宋人北杏の會に背く。○背は、音佩。


〔經〕十有四年、春、齊人・陳人・曹人伐宋。背北杏會故。
【読み】
〔經〕十有四年、春、齊人・陳人・曹人宋を伐つ。北杏の會に背く故なり。

夏、單伯會伐宋。旣伐宋、單伯乃至。故曰會伐宋。單伯、周大夫。
【読み】
夏、單伯[ぜんはく]宋を伐つに會す。旣に宋を伐ちて、單伯乃ち至る。故に宋を伐つに會すと曰う。單伯は、周の大夫。

秋、七月、荆入蔡。入例在文十五年。
【読み】
秋、七月、荆蔡に入る。入るの例は文十五年に在り。

冬、單伯會齊侯・宋公・衛侯・鄭伯于鄄。鄄、衛地。今東郡鄄城也。齊桓脩霸業、卒平宋亂、宋人服從。欲歸功天子。故赴以單伯會諸侯爲文。○鄄、音絹。一音眞。
【読み】
冬、單伯齊侯・宋公・衛侯・鄭伯に鄄[けん]に會す。鄄は、衛の地。今の東郡鄄城なり。齊桓霸業を脩め、卒に宋の亂を平らげ、宋人服從す。功を天子に歸せんと欲す。故に赴[つ]ぐるに單伯諸侯に會するを以て文を爲す。○鄄は、音絹。一に音眞。

〔傳〕十四年、春、諸侯伐宋、齊請師于周。齊欲崇天子。故請師、假王命以示大順。經書人、傳言諸侯、總衆國之辭。
【読み】
〔傳〕十四年、春、諸侯宋を伐ち、齊師を周に請う。齊天子を崇めんと欲す。故に師を請い、王命を假りて以て大順を示す。經に人と書し、傳に諸侯と言うは、衆國を總ぶるの辭なり。

夏、單伯會之、取成于宋而還。
【読み】
夏、單伯之に會し、成[たい]らぎを宋に取りて還る。

鄭厲公自櫟侵鄭、厲公以桓十五年入櫟、遂居之。○櫟、音歷。
【読み】
鄭の厲公櫟[れき]より鄭を侵し、厲公桓十五年を以て櫟に入り、遂に之に居る。○櫟は、音歷。

及大陵。獲傅瑕。大陵、鄭地。傅瑕、鄭大夫。
【読み】
大陵に及ぶ。傅瑕を獲たり。大陵は、鄭の地。傅瑕は、鄭の大夫。

傅瑕曰、苟舍我、吾請納君。與之盟而赦之。六月、甲子、傅瑕殺鄭子及其二子、而納厲公。鄭子、莊四年稱伯會諸侯。今見殺不稱君、無謚者、微弱、臣子不以君禮成喪、告諸侯。○舍、音捨。
【読み】
傅瑕曰く、苟し我を舍[ゆる]さば、吾れ請う、君を納れん、と。之と盟いて之を赦す。六月、甲子[きのえ・ね]、傅瑕鄭子と其の二子とを殺して、厲公を納れぬ。鄭子は、莊四年に伯と稱して諸侯に會せり。今殺さるるに君と稱せず、謚無きは、微弱にして、臣子君の禮を以て喪を成し、諸侯に告げざればなり。○舍は、音捨。

初、内蛇與外蛇鬭於鄭南門中、内蛇死。六年而厲公入。公聞之、問於申繻曰、猶有妖乎。對曰、人之所忌、其氣燄以取之。妖由人興也。尙書洛誥、無若火始燄燄。未盛而進退之時。以喩人心不堅正。○繻、音須。
【読み】
初め、内の蛇と外の蛇と鄭の南門の中に鬭い、内の蛇死したり。六年にして厲公入る。公之を聞き、申繻に問いて曰く、妖有るに猶[よ]れるか、と。對えて曰く、人の忌む所は、其の氣燄[きえん]して以て之を取る。妖は人に由りて興れり。尙書の洛誥に、火の始め燄燄たるが若くなること無し、と。未だ盛んならずして進退するの時なり。以て人心の堅正ならざるに喩う。○繻は、音須。

人無釁焉、妖不自作。人棄常、則妖興。故有妖。
【読み】
人釁[きん]無ければ、妖自ら作らず。人常を棄つるときは、則ち妖興る。故に妖有りしなり、と。

厲公入、遂殺傅瑕。使謂原繁曰、傅瑕貳。言有二心於己。○釁、許靳反。
【読み】
厲公入り、遂に傅瑕を殺す。原繁に謂わしめて曰く、傅瑕貳あり。己に二心有るを言う。○釁は、許靳反。

周有常刑、旣伏其罪矣。納我而無二心者、吾皆許之上大夫之事。吾願與伯父圖之。上大夫、卿也。伯父、謂原繁。疑原繁有二心。
【読み】
周に常刑有りて、旣に其の罪に伏せり。我を納れて二心無き者は、吾れ皆之に上大夫の事を許さんとす。吾れ願わくは伯父と之を圖らん。上大夫は、卿なり。伯父は、原繁を謂う。原繁に二心有らんことを疑う。

且寡人出、伯父無裏言、無納我之言。
【読み】
且つ寡人が出づるに、伯父裏言無く、我を納るるの言無し。

入、又不念寡人。不親附己。
【読み】
入るに、又不寡人を念わず。己に親附せず。

寡人憾焉。對曰、先君桓公、命我先人、典司宗祏。桓公、鄭始受封君也。宗祏、宗廟中藏主石室。言己世爲宗廟守臣。○祏、音石。守、手又反。
【読み】
寡人憾む、と。對えて曰く、先君桓公、我が先人に命じて、宗祏[そうせき]を典司せしめり。桓公は、鄭の始めて封を受けし君なり。宗祏は、宗廟中の主を藏むる石室なり。己世々宗廟の守臣爲るを言う。○祏は、音石。守は、手又反。

社稷有主、而外其心、其何貳如之。苟主社稷、國内之民、其誰不爲臣。臣無二心、天之制也。子儀在位十四年矣。子儀、鄭子也。
【読み】
社稷主有りて、其の心を外にせば、其れ何の貳か之に如かん。苟も社稷を主らば、國内の民、其れ誰か臣爲らざらん。臣に二心無きは、天の制なり。子儀位に在ること十四年なり。子儀は、鄭子なり。

而謀召君者、庸非貳乎。庸、用也。
【読み】
而るを君を召[よ]ばわんことを謀るは、庸[もっ]て貳に非ずや。庸は、用てなり。

莊公之子、猶有八人。若皆以官爵行賂、勸貳而可以濟事、君其若之何。臣聞命矣。
【読み】
莊公の子、猶八人有り。若し皆官爵を以て賂を行い、貳を勸めて以て事を濟す可くんば、君其れ之を若何にせん。臣命を聞けり、と。

乃縊而死。○莊公子猶有八人、傳唯見四人。子忽・子亹・子儀竝死。獨厲公在。八人名字、記傳無聞。
【読み】
乃ち縊れて死す。○莊公の子猶八人有りは、傳は唯四人を見す。子忽・子亹・子儀竝に死す。獨厲公のみ在り。八人の名字、記傳に聞くこと無し。

蔡哀侯爲莘故、繩息嬀以語楚子。莘役、在十年。繩、譽也。○爲莘、于僞反。語、魚據反。繩、食承反。
【読み】
蔡の哀侯莘の爲の故に、息嬀を繩[ほ]めて以て楚子に語[つ]ぐ。莘の役は、十年に在り。繩は、譽むるなり。○爲莘は、于僞反。語は、魚據反。繩は、食承反。

楚子如息、以食入享、遂滅息、僞設享食之具。○食、音嗣。
【読み】
楚子息に如き、食を以て入りて享し、遂に息を滅ぼし、僞りて享食の具を設く。○食は、音嗣。

以息嬀歸。生堵敖及成王焉、未言。未與王言。○堵、丁古反。
【読み】
息嬀を以[い]て歸る。堵敖と成王とを生むも、未だ言わず。未だ王と言わず。○堵は、丁古反。

楚子問之。對曰、吾一婦人而事二夫。縱弗能死、其又奚言。楚子以、蔡侯滅息。遂伐蔡。欲以說息嬀。○說、音悅。
【読み】
楚子之を問う。對えて曰く、吾れ一婦人にして二夫に事う。縱[たと]い死すること能わずとも、其れ又奚ぞ言わん、と。楚子以えらく、蔡侯息を滅ぼさせり、と。遂に蔡を伐つ。以て息嬀を說ばせんと欲す。○說は、音悅。

秋、七月、楚入蔡。
【読み】
秋、七月、楚蔡に入る。

君子曰、商書所謂惡之易也、如火之燎于原、不可郷邇。其猶可撲滅者、其如蔡哀侯乎。商書、盤庚。言惡易長而難滅。
【読み】
君子曰く、商書に所謂惡の易きや、火の原を燎くが如く、郷[む]かい邇[ちか]づく可からず。其れ猶撲ち滅[け]す可けんやとは、其れ蔡の哀侯の如きか、と。商書は、盤庚。惡は長じ易くして滅ぼし難きを言う。

冬、會于鄄、宋服故也。
【読み】
冬、鄄に會するは、宋服する故なり。


〔經〕十有五年、春、齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯會于鄄。夏、夫人姜氏如齊。無傳。夫人、文姜。齊桓公姊妹。父母在、則禮有歸寧、沒、則使卿寧。
【読み】
〔經〕十有五年、春、齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯鄄[けん]に會す。夏、夫人姜氏齊に如く。傳無し。夫人は、文姜。齊の桓公の姊妹。父母在せば、則ち禮に歸寧有り、沒すれば、則ち卿をして寧せしむ。

秋、宋人・齊人・邾人伐郳。宋主兵。故序齊上。○郳、五兮反。
【読み】
秋、宋人・齊人・邾人[ちゅひと]郳[げい]を伐つ。宋兵を主る。故に齊の上に序ず。○郳は、五兮反。

鄭人侵宋。冬、十月。
【読み】
鄭人宋を侵す。冬、十月。

〔傳〕十五年、春、復會焉。齊始霸也。始爲諸侯長。○復、扶又反。
【読み】
〔傳〕十五年、春、復會す。齊始めて霸たり。始めて諸侯の長と爲る。○復は、扶又反。

秋、諸侯爲宋伐郳。郳、附庸。屬宋而叛。故齊桓爲之伐郳。
【読み】
秋、諸侯宋の爲に郳を伐つ。郳は、附庸なり。宋に屬して叛く。故に齊桓之が爲に郳を伐つ。

鄭人閒之而侵宋。
【読み】
鄭人之を閒して宋を侵す。


〔經〕十有六年、春、王正月。夏、宋人・齊人・衛人伐鄭。宋主兵也。班序上下、以國大小爲次、征伐、則以主兵爲先。春秋之常也。他皆放此。
【読み】
〔經〕十有六年、春、王の正月。夏、宋人・齊人・衛人鄭を伐つ。宋兵を主るなり。班序の上下は、國の大小を以て次を爲し、征伐は、則ち主兵を以て先と爲す。春秋の常なり。他も皆此に放え。

秋、荆伐鄭。冬、十有二月、會齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・滑伯・滕子同盟於幽。書會、魯會之。不書其人、微者也。言同盟、服異也。陳國小、每盟會皆在衛下。齊桓始霸、楚亦始彊。陳侯介於二大國之閒、而爲三恪之客。故齊桓因進之、遂班在衛上、終於春秋。滑國、都費。河南緱氏縣。幽、宋地。○費、扶味反。又音祕。緱、古侯反。
【読み】
秋、荆鄭を伐つ。冬、十有二月、齊侯・宋公・陳侯・衛侯・鄭伯・許男・滑伯・滕子に會して幽に同盟す。會を書すは、魯之に會するなり。其の人を書さざるは、微者なればなり。同盟と言うは、異を服するなり。陳は國小にして、盟會每に皆衛の下に在り。齊桓始めて霸たり、楚も亦始めて彊し。陳侯二大國の閒に介[はさ]まりて、三恪の客爲り。故に齊桓因りて之を進めて、遂に班[ついで]衛の上に在りて、春秋を終うる。滑國は、費に都す。河南の緱氏縣なり。幽は、宋の地。○費は、扶味反。又音祕。緱は、古侯反。

邾子克卒。無傳。克、儀父名。稱子者、蓋齊桓請王命、以爲諸侯。再同盟。
【読み】
邾子[ちゅし]克卒す。傳無し。克は、儀父の名。子と稱するは、蓋し齊桓王命を請いて、以て諸侯と爲すならん。再び同盟す。

〔傳〕十六年、夏、諸侯伐鄭、宋故也。鄭侵宋故。
【読み】
〔傳〕十六年、夏、諸侯鄭を伐つは、宋の故なり。鄭宋を侵す故なり。

鄭伯自櫟入、在十四年。
【読み】
鄭伯櫟[れき]より入りしとき、十四年に在り。

緩告于楚。秋、楚伐鄭、及櫟、爲不禮故也。
【読み】
緩[おそ]く楚に告げぬ。秋、楚鄭を伐ちて、櫟に及ぶは、不禮の爲の故なり。

鄭伯治與於雍糾之亂者。在桓十五年。○爲、于僞反。與、音預。
【読み】
鄭伯雍糾の亂に與りし者を治む。桓十五年に在り。○爲は、于僞反。與は、音預。

九月、殺公子閼、刖强鉏。二子、祭仲黨。斷足曰刖。○閼、安末反。刖、音月。又五刮反。鉏、仕魚反。
【読み】
九月、公子閼[あつ]を殺し、强鉏[きょうしょ]を刖[あしき]る。二子は、祭仲の黨。足を斷つを刖[げつ]と曰う。○閼は、安末反。刖は、音月。又五刮反。鉏は、仕魚反。

公父定叔出奔衛。共叔段之孫。定、謚也。
【読み】
公父定叔出でて衛に奔る。共叔段の孫。定は、謚なり。

三年而復之。曰、不可使共叔無後於鄭。使以十月入。曰、良月也、就盈數焉。數滿於十。
【読み】
三年にして之を復す。曰く、共叔をして鄭に後無からしむ可からず、と。十月を以て入らしむ。曰く、良月なり、盈數に就かしむ、と。數は十に滿つ。

君子謂、強鉏不能衛其足。言其不能早辟害。
【読み】
君子謂[おも]えらく、強鉏其の足を衛ること能わず、と。其の早く害を辟くること能わざるを言う。

冬、同盟于幽、鄭成也。
【読み】
冬、幽に同盟するは、鄭成[たい]らぐなり。

王使虢公命曲沃伯、以一軍爲晉侯。曲沃武公、遂幷晉國。僖王因就命爲晉侯。小國故一軍。
【読み】
王虢公をして曲沃の伯に命じて、一軍を以て晉侯と爲らしむ。曲沃の武公、遂に晉國を幷す。僖王因りて就いて命じて晉侯と爲す。小國故に一軍なり。

初、晉武公伐夷、執夷詭諸。夷詭諸、周大夫。夷、采地名。○詭、九委反。
【読み】
初め、晉の武公夷を伐ち、夷詭諸を執う。夷詭諸は、周の大夫。夷は、采地の名。○詭は、九委反。

蔿國請而免之。蔿國、周大夫。○蔿、于委反。
【読み】
蔿國[いこく]請いて之を免す。蔿國は、周の大夫。○蔿は、于委反。

旣而弗報。詭諸不報施於蔿國。○施、始豉反。
【読み】
旣にして報いず。詭諸蔿國に報施せず。○施は、始豉反。

故子國作亂。謂晉人曰、與我伐夷而取其地。使晉取夷地。
【読み】
故に子國亂を作す。晉人に謂いて曰く、我と夷を伐ちて其の地を取れ、と。晉をして夷の地を取らしむ。

遂以晉師伐夷、殺夷詭諸。
【読み】
遂に晉の師を以[い]て夷を伐ち、夷詭諸を殺す。

周公忌父出奔虢。周公忌父、王卿士。辟子國之難。
【読み】
周公忌父出でて虢に奔る。周公忌父は、王の卿士。子國の難を辟く。

惠王立、而復之。魯桓十五年經書桓王崩。魯莊三年經書葬桓王。自此以來、周有莊王、又有僖王、崩葬皆不見於經傳。王室微弱、不能復自通於諸侯。故傳因周公忌父之事、而見惠王。惠王立在此年之末。附注、惠王之立、當在明年。傳於此云立而復之者、蓋終言之耳。杜注恐誤。
【読み】
惠王立ちて、之を復す。魯桓十五年の經に桓王崩ずと書す。魯莊三年の經に桓王を葬ると書す。此より以來、周に莊王有り、又僖王有るも、崩葬皆經傳に見えず。王室微弱にして、復自ら諸侯に通ずること能わず。故に傳、周公忌父の事に因りて、惠王を見す。惠王の立つは此の年の末に在り。附注に、惠王の立つは、當に明年に在るべし、と。傳此に於て立ちて之を復すと云うは、蓋し之を終言するのみ。杜注恐らくは誤りならん。


〔經〕十有七年、春、齊人執鄭詹。齊桓始霸。鄭旣伐宋、又不朝齊。詹、爲鄭執政大臣。詣齊見執。不稱行人、罪之也。行人例、在襄十一年。諸執大夫、皆稱人以執之。大夫賤故。○詹、之廉反。
【読み】
〔經〕十有七年、春、齊人鄭の詹[せん]を執う。齊桓始めて霸たり。鄭旣に宋を伐ち、又齊に朝せず。詹は、鄭の執政の大臣爲り。齊に詣[いた]りて執えらる。行人と稱せざるは、之を罪するなり。行人の例は、襄十一年に在り。諸々大夫を執うるは、皆人と稱して以て之を執う。大夫は賤しき故なり。○詹は、之廉反。

夏、齊人殲于遂。殲、盡也。齊人戍遂、翫而無備。遂人討而盡殺之。故時史因以自盡爲文。○殲、子廉反。
【読み】
夏、齊人遂に殲[つ]く。殲[せん]は、盡くなり。齊人遂を戍り、翫[もてあそ]びて備え無し。遂人討じて盡く之を殺す。故に時史因りて自ら盡くを以て文を爲す。○殲は、子廉反。

秋、鄭詹自齊逃來。無傳。詹不能伏節守死、以解國患、而遁逃苟免。書逃以賤之。
【読み】
秋、鄭の詹齊より逃げ來る。傳無し。詹節に伏して死を守り、以て國の患えを解くこと能わずして、遁逃して苟も免る。逃ぐると書して以て之を賤しむなり。

冬、多麋。無傳。麋多則害五稼。故以災書。○麋、亡悲反。
【読み】
冬、麋[び]多し。傳無し。麋の多きは則ち五稼を害す。故に災いを以て書す。○麋は、亡悲反。

〔傳〕十七年、春、齊人執鄭詹、鄭不朝也。
【読み】
〔傳〕十七年、春、齊人鄭の詹を執うるは、鄭朝せざればなり。

夏、遂因氏・頜氏・工婁氏・須遂氏饗齊戍、醉而殺之。齊人殲焉。饗、酒食也。四族、遂之彊宗。齊滅遂戍之、在十三年。○頜、烏納反。又苦荅反。
【読み】
夏、遂の因氏・頜[こう]氏・工婁氏・須遂氏齊の戍を饗し、醉わせて之を殺す。齊人殲く。饗は、酒食なり。四族は、遂の彊宗。齊遂を滅ぼして之を戍るは、十三年に在り。○頜は、烏納反。又苦荅反。


〔經〕十有八年、春、王三月、日有食之。無傳。不書日、官失之。
【読み】
〔經〕十有八年、春、王の三月、日之を食する有り。傳無し。日を書さざるは、官之を失うなり。

夏、公追戎于濟西。戎來侵魯。公逐之於濟水之西。
【読み】
夏、公戎を濟の西に追う。戎來りて魯を侵す。公之を濟水の西に逐う。

秋、有、短弧也。蓋以含沙射人爲災。、音或。本草謂之射工。
【読み】
秋、[よく]有り。は、短弧なり。蓋し沙を含んで人を射るを以て災いを爲すならん。○は、音或。本草に之を射工[せきこう]と謂う。

冬、十月。
【読み】
冬、十月。

〔傳〕十八年、春、虢公・晉侯朝王。王饗醴。命之宥。王之覲羣后、始則行饗禮、先置醴酒、示不忘古。飮宴則命以幣物。宥、助也。所以助歡敬之意。言備設。
【読み】
〔傳〕十八年、春、虢公・晉侯王に朝す。王饗して醴あり。之に宥を命ず。王の羣后を覲する、始めは則ち饗禮を行い、先ず醴酒を置くは、古を忘れざるを示すなり。飮宴は則ち命ずるに幣物を以てす。宥は、助なり。歡敬の意を助くる所以なり。備に設くるを言う。

皆賜玉五瑴、馬三匹。非禮也。雙玉爲瑴。○瑴、音角。
【読み】
皆玉五瑴[かく]、馬三匹を賜う。禮に非ざるなり。雙玉を瑴とす。○瑴は、音角。

王命諸侯、名位不同、禮亦異數。不以禮假人。侯而與公同賜、是借人禮。
【読み】
王の諸侯に命ずる、名位同じからざれば、禮も亦數を異にす。禮を以て人に假さざるなり。侯にして公と賜を同じくす、是れ人に禮を借すなり。

虢公・晉侯・鄭伯使原莊公逆王后于陳。陳嬀歸于京師。虢・晉朝王。鄭伯又以齊執其卿、故求王爲援、皆在周。倡義爲王定昏。陳人敬從。得同姓宗國之禮。故傳詳其事。不書、不告。
【読み】
虢公・晉侯・鄭伯原莊公をして王后を陳より逆[むか]えしむ。陳嬀京師に歸[とつ]ぐ。虢・晉王に朝す。鄭伯も又齊の其の卿を執るを以て、故に王の援けを爲さんことを求め、皆周に在り。義を倡えて王の爲に昏を定む。陳人敬從す。同姓宗國の禮を得。故に傳其の事を詳らかにす。書さざるは、告げざればなり。

實惠后。陳嬀後號惠后、寵愛少子、亂周室。事在僖二十四年。故傳於此竝正其后稱。○稱、尺證反。
【読み】
實に惠后なり。陳嬀後に惠后と號し、少子を寵愛して、周室を亂る。事は僖二十四年に在り。故に傳此に於て竝に其の后稱を正す。○稱は、尺證反。

夏、公追戎于濟西。不言其來、諱之也。戎來侵魯、魯人不知、去乃追之。故諱不言其來。
【読み】
夏、公戎を濟の西に追う。其の來るを言わざるは、之を諱みてなり。戎來りて魯を侵して、魯人知らず、去りて乃ち之を追う。故に諱みて其の來るを言わず。

秋、有、爲災也。
【読み】
秋、有るは、災いを爲せるなり。

初、楚武王克權、使鬭緡尹之。權、國名。南郡當陽縣東南有權城。鬭緡、楚大夫。○緡、亡巾反。
【読み】
初め、楚の武王權に克ちて、鬭緡[とうびん]をして之に尹たらしむ。權は、國の名。南郡當陽縣の東南に權城有り。鬭緡は、楚の大夫。○緡は、亡巾反。

以叛。圍而殺之、緡以權叛。○以叛句。
【読み】
以[い]て叛く。圍んで之を殺し、緡權を以[い]て叛く。○以叛は句。

遷權於那處、那處、楚地。南郡編縣東南有那口城。○那、乃多反。處、昌呂反。又昌慮反。
【読み】
權を那處に遷し、那處は、楚の地。南郡編縣の東南に那口城有り。○那は、乃多反。處は、昌呂反。又昌慮反。

使閻敖尹之。閻敖、楚大夫。
【読み】
閻敖をして之に尹たらしむ。閻敖は、楚の大夫。

及文王卽位、與巴人伐申、而驚其師。驚巴師。
【読み】
文王の位に卽くに及びて、巴人と申を伐ちて、其の師を驚かす。巴の師を驚かす。

巴人叛楚、而伐那處、取之、遂門于楚。攻楚城門。
【読み】
巴人楚に叛きて、那處を伐ちて、之を取り、遂に楚を門[せ]む。楚の城門を攻む。

閻敖游涌而逸。涌水、在南郡華容縣。閻敖旣不能守城、又游涌水而走。○涌、音勇。
【読み】
閻敖涌を游[およ]いで逸る。涌水は、南郡華容縣に在り。閻敖旣に城を守ること能わず、又涌水を游いで走る。○涌は、音勇。

楚子殺之、其族爲亂。
【読み】
楚子之を殺しかば、其の族亂を爲せり。

冬、巴人因之以伐楚。
【読み】
冬、巴人之に因りて以て楚を伐つ。


〔經〕十有九年、春、王正月。夏、四月。秋、公子結媵陳人之婦、于鄄、遂及齊侯・宋公盟。無傳。公子結、魯大夫。公羊・穀梁皆以爲、魯女媵陳公之婦。其稱陳人之婦、未入國、略言也。大夫出竟、有可以安社稷、利國家者、則專之可也。結在鄄、聞齊・宋有會、權事之宜、去其本職、遂與二君爲盟。故備書之。本非魯公意、而又失媵陳之好。故冬各來伐。
【読み】
〔經〕十有九年、春、王の正月。夏、四月。秋、公子結陳人の婦に媵[よう]し、鄄[けん]に于[ゆ]きて、遂に齊侯・宋公と盟う。傳無し。公子結は、魯の大夫。公羊・穀梁皆以爲えらく、魯の女陳公の婦媵す。其の陳人の婦と稱するは、未だ國に入らざれば、略して言うなり。大夫竟を出づれば、以て社稷を安んじ、國家を利す可き者有れば、則ち之を專らにして可なり。結鄄に在り、齊・宋會有りとを聞き、事の宜を權り、其の本職を去て、遂に二君と盟を爲す。故に之を備に書す。本魯公の意に非ずして、又陳に媵するの好を失う。故に冬各々來り伐つ。

夫人姜氏如莒。無傳。非父母國而往、書姦。
【読み】
夫人姜氏莒に如く。傳無し。父母の國に非ずして往くは、姦を書すなり。

冬、齊人・宋人・陳人伐我西鄙。無傳。幽之盟、魯使微者會、鄄之盟、又使媵臣行。所以受敵。鄙、邊邑。
【読み】
冬、齊人・宋人・陳人我が西鄙を伐つ。傳無し。幽の盟に、魯微者をして會せしめ、鄄の盟に、又媵臣をして行かしむ。敵を受くる所以なり。鄙は、邊邑。

〔傳〕十九年、春、楚子禦之、大敗於津。禦巴人、爲巴人所敗。津、楚地。或曰、江陵縣有津郷。
【読み】
〔傳〕十九年、春、楚子之を禦ぎ、大いに津に敗らる。巴人を禦ぎて、巴人の爲に敗らる。津は、楚の地。或ひと曰く、江陵縣に津郷有り、と。

還。鬻拳弗納。遂伐黃、鬻拳、楚大閽。黃、嬴姓國。今弋陽縣。○鬻、音育。
【読み】
還る。鬻拳[いくけん]納れず。遂に黃を伐ち、鬻拳は、楚の大閽。黃は、嬴[えい]姓の國。今の弋陽縣。○鬻は、音育。

敗黃師于踖陵。踖陵、黃地。○踖、在亦反。一音七略反。
【読み】
黃の師を踖陵[せきりょう]に敗る。踖陵は、黃の地。○踖は、在亦反。一に音七略反。

還。及湫有疾。南郡鄀縣東南有湫城。○湫、子小反。鄀、音若。
【読み】
還る。湫[しょう]に及んで疾有り。南郡鄀縣の東南に湫城有り。○湫は、子小反。鄀は、音若。

夏、六月、庚申、卒。鬻拳葬諸夕室、夕室、地名。
【読み】
夏、六月、庚申[かのえ・さる]、卒す。鬻拳諸を夕室に葬り、夕室は、地の名。

亦自殺也。而葬於絰皇。絰皇、冢前闕。生守門。故死不失職。○絰、田結反。
【読み】
亦自殺す。而して絰皇[てっこう]に葬る。絰皇は、冢前の闕。生きるときは門を守る。故に死して職を失わず。○絰は、田結反。

初、鬻拳强諫楚子。楚子弗從。臨之以兵。懼而從之。鬻拳曰、吾懼君以兵。罪莫大焉。遂自刖也。楚人以爲大閽、謂之大伯。若今城門校尉官。○强、其丈反。大伯、音泰。
【読み】
初め、鬻拳楚子を强諫す。楚子從わず。之に臨むに兵を以てす。懼れて之に從う。鬻拳曰く、吾れ君を懼[おど]すに兵を以てす。罪焉より大なるは莫し、と。遂に自ら刖[あしき]る。楚人以て大閽と爲して、之を大伯と謂う。今の城門校尉の官の若し。○强は、其丈反。大伯は、音泰。

使其後掌之。使其子孫常主此官。
【読み】
其の後をして之を掌らしめり。其の子孫をして常に此の官を主らしむ。

君子曰、鬻拳可謂愛君矣。諫以自納於刑。刑猶不忘納君於善。言愛君、明非臣法也。楚能盡其忠愛。所以興。
【読み】
君子曰く、鬻拳は君を愛すと謂う可し。諫めて以て自ら刑に納る。刑せらるも猶君を善に納るることを忘れず、と。君を愛すと言うは、臣の法に非ざるを明かすなり。楚能く其の忠愛を盡くす。興る所以なり。

初、王姚嬖于莊王、生子頹。王姚、莊王之妾也。姚、姓也。
【読み】
初め、王姚[おうよう]莊王に嬖せられ、子頹[したい]を生む。王姚は、莊王の妾なり。姚は、姓なり。

子頹有寵。蔿國爲之師。及惠王卽位、周惠王、莊王孫。
【読み】
子頹寵有り。蔿國[いこく]之が師と爲る。惠王位に卽くに及んで、周の惠王は、莊王の孫。

取蔿國之圃以爲囿。圃、園也。囿、苑也。
【読み】
蔿國の圃を取りて以て囿と爲す。圃は、園なり。囿は、苑なり。

邊伯之宮、近於王宮。王取之。邊伯、周大夫。
【読み】
邊伯の宮、王宮に近し。王之を取る。邊伯は、周の大夫。

王奪子禽・祝跪、與詹父田、三子、周大夫。○跪、求委反。
【読み】
王子禽・祝跪と、詹父[せんぽ]との田を奪いて、三子は、周の大夫。○跪は、求委反。

而收膳夫之秩。膳夫、石速也。秩、祿也。
【読み】
膳夫の秩を收む。膳夫は、石速なり。秩は、祿なり。

故蔿國・邊伯・石速・詹父・子禽・祝跪作亂、因蘇氏。蘇氏、周大夫。桓王奪其十二邑以與鄭。自此以來、遂不和。
【読み】
故に蔿國・邊伯・石速・詹父・子禽・祝跪亂を作して、蘇氏に因る。蘇氏は、周の大夫。桓王其の十二邑を奪いて以て鄭に與う。此より以來、遂に和せず。

秋、五大夫奉子頹以伐王。石速、士也。故不在五大夫數。
【読み】
秋、五大夫子頹を奉じて以て王を伐つ。石速は、士なり。故に五大夫の數に在らず。

不克。出奔溫。溫、蘇氏邑。
【読み】
克たず。出でて溫に奔る。溫は、蘇氏の邑。

蘇子奉子頹以奔衛。衛師・燕師伐周。燕、南燕。
【読み】
蘇子子頹を奉じて以て衛に奔る。衛の師・燕の師周を伐つ。燕は、南燕。

冬、立子頹。
【読み】
冬、子頹を立つ。


〔經〕二十年、春、王二月、夫人姜氏如莒。無傳。
【読み】
〔經〕二十年、春、王の二月、夫人姜氏莒に如く。傳無し。

夏、齊大災。無傳。來告以大。故書。天火曰災。例在宣十六年。
【読み】
夏、齊大災あり。傳無し。來り告ぐるに大を以てす。故に書す。天火を災と曰う。例は宣十六年に在り。

秋、七月。冬、齊人伐戎。無傳。
【読み】
秋、七月。冬、齊人戎を伐つ。傳無し。

〔傳〕二十年、春、鄭伯和王室。不克。克、能也。
【読み】
〔傳〕二十年、春、鄭伯王室を和せんとす。克わず。克は、能うなり。

執燕仲父。燕仲父、南燕伯。爲伐周故。
【読み】
燕の仲父を執う。燕の仲父は、南燕の伯。周を伐つ爲の故なり。

夏、鄭伯遂以王歸。王處于櫟。秋、王及鄭伯入于鄔。鄔、王所取鄭邑。○鄔、音塢。
【読み】
夏、鄭伯遂に王を以[い]て歸る。王櫟[れき]に處る。秋、王鄭伯と鄔[お]に入る。鄔は、王の取る所の鄭の邑。○鄔は、音塢[お]。

遂入成周、取其寶器而還。
【読み】
遂に成周に入り、其の寶器を取りて還る。

冬、王子頹享五大夫。樂及徧舞。皆舞六代之樂。
【読み】
冬、王子頹五大夫を享す。樂徧舞に及ぶ。皆六代の樂を舞わす。

鄭伯聞之、見虢叔、叔、虢公字。
【読み】
鄭伯之を聞き、虢叔を見て、叔は、虢公の字。

曰、寡人聞之、哀樂失時、殃咎必至。今王子頹歌舞不倦、樂禍也。夫司寇行戮、司寇、刑官。○樂、音洛。
【読み】
曰く、寡人之を聞く、哀樂時を失えば、殃咎[おうきゅう]必ず至る、と。今王子頹歌舞して倦まざるは、禍を樂むなり。夫れ司寇戮を行えば、司寇は、刑官。○樂は、音洛。

君爲之不舉。去盛饌。
【読み】
君之が爲に舉せず。盛饌を去る。

而況敢樂禍乎。奸王之位、禍孰大焉。臨禍忘憂、憂必及之。盍納王乎。虢公曰、寡人之願也。○奸、音干。盍、胡臘反。
【読み】
而るを況んや敢えて禍を樂しまんや。王の位を奸すは、禍孰れか焉より大ならん。禍に臨んで憂えを忘るれば、憂え必ず之に及ばん。盍ぞ王を納れざるや、と。虢公曰く、寡人の願いなり、と。○奸は、音干。盍は、胡臘反。


〔經〕二十有一年、春、王正月。夏、五月、辛酉、鄭伯突卒。十六年、與魯大夫盟于幽。
【読み】
〔經〕二十有一年、春、王の正月。夏、五月、辛酉[かのと・とり]、鄭伯突卒す。十六年、魯の大夫と幽に盟う。

秋、七月、戊戌、夫人姜氏薨。無傳。薨寢祔姑、赴於諸侯。故具小君禮書之。
【読み】
秋、七月、戊戌[つちのえ・いぬ]、夫人姜氏薨ず。傳無し。寢に薨じ姑に祔し、諸侯に赴[つ]ぐる。故に小君の禮を具えて之を書す。

冬、十有二月、葬鄭厲公。無傳。八月乃葬、緩慢也。
【読み】
冬、十有二月、鄭の厲公を葬る。傳無し。八月にして乃ち葬るは、緩慢なり。

〔傳〕二十一年、春、胥命于弭。夏、同伐王城。鄭・虢相命也。弭、鄭地。○弭、面爾反。
【読み】
〔傳〕二十一年、春、弭[び]に胥命ず。夏、同じく王城を伐つ。鄭・虢相命ずるなり。弭は、鄭の地。○弭は、面爾反。

鄭伯將王自圉門入、虢叔自北門入、殺王子頹及五大夫。
【読み】
鄭伯王を將[い]て圉門[ぎょもん]より入り、虢叔北門より入り、王子頹と五大夫とを殺す。

鄭伯享王于闕西辟、樂備。闕、象魏也。樂備、備六代之樂。○圉、魚呂反。辟、蒲歷反。
【読み】
鄭伯王を闕の西辟に享して、樂備うる。闕は、象魏なり。樂備うるとは、六代の樂を備うるなり。○圉は、魚呂反。辟は、蒲歷反。

王與之武公之略、自虎牢以東。略、界也。鄭武公傅平王、平王賜之自虎牢以東、後失其地。故惠王今復與之。虎牢、河南成皐縣。
【読み】
王之に武公の略[さかい]、虎牢より以東を與う。略は、界なり。鄭の武公平王に傅たるとき、平王之に虎牢より以東を賜い、後に其の地を失う。故に惠王今復之を與う。虎牢は、河南の成皐縣。

原伯曰、鄭伯效尤。其亦將有咎。原伯、原莊公也。言效子頹舞徧樂。
【読み】
原伯曰く、鄭伯尤に效う。其れ亦將に咎有らんとす、と。原伯は、原の莊公なり。子頹が徧樂を舞わすに效うを言う。

五月、鄭厲公卒。
【読み】
五月、鄭の厲公卒す。

王巡虢守。巡守於虢國也。天子省方、謂之巡守。○守、音狩。
【読み】
王虢の守を巡る。虢國を巡守するなり。天子方を省る、之を巡守と謂う。○守は、音狩。

虢公爲王宮于玤。玤、虢地。○玤、蒲項反。
【読み】
虢公王宮を玤[ほう]に爲る。玤は、虢の地。○玤は、蒲項反。

王與之酒泉。酒泉、周邑。
【読み】
王之に酒泉を與う。酒泉は、周の邑。

鄭伯之享王也、王以后之鞶鑑予之、后、王后也。鞶帶而以鑑爲飾也。今西方羗胡猶然。古之遺服。○鞶、步干反。
【読み】
鄭伯の王を享するや、王后の鞶鑑を以て之に予え、后は、王后なり。鞶帶して鑑を以て飾とするなり。今西方の羗胡[きょうこ]猶然り。古の遺服なり。○鞶は、步干反。

虢公請器、王予之爵。爵、飮酒器。
【読み】
虢公器を請えば、王之に爵を予えり。爵は、飮酒の器。

鄭伯由是始惡於王。爲僖二十四年、鄭執王使張本。○惡、烏路反。
【読み】
鄭伯是に由りて始めて王を惡む。僖二十四年、鄭王の使を執うる爲の張本なり。○惡は、烏路反。

冬、王歸自虢。傳言王之偏也。
【読み】
冬、王虢より歸る。傳、王の偏なるを言う。


〔經〕二十有二年、春、王正月、肆大眚。無傳。赦有罪也。易稱赦過宥罪、書稱眚災肆赦、傳稱肆眚圍鄭。皆放赦罪人、盪滌衆故、以新其心。有時而用之。非制所常。故書。○眚、所景反。
【読み】
〔經〕二十二有年、春、王の正月、大眚[たいせい]を肆[ゆる]す。傳無し。有罪を赦すなり。易に過を赦し罪を宥むと稱し、書に眚災は肆赦すと稱し、傳に眚を肆して鄭を圍むと稱す。皆罪人を放赦し、衆故を盪滌して、以て其の心を新たにするなり。時有りて之を用ゆ。制の常にする所に非ず。故に書す。○眚は、所景反。

癸丑、葬我小君文姜。無傳。反哭成喪。故稱小君。
【読み】
癸丑[みずのと・うし]、我が小君文姜を葬る。傳無し。反哭して喪を成す。故に小君と稱す。

陳人殺其公子御寇。宣公太子也。陳人惡其殺太子之名。故不稱君父、以國討公子告。○御、音禦。
【読み】
陳人其の公子御寇を殺す。宣公の太子なり。陳人其の太子を殺すの名を惡む。故に君父を稱せず、公子を國討するを以て告ぐ。○御は、音禦。

夏、五月。秋、七月、丙申、及齊高傒盟于防。無傳。高傒、齊之貴卿、而與魯之微者盟、齊桓謙接諸侯、以崇霸業。
【読み】
夏、五月。秋、七月、丙申[ひのえ・さる]、齊の高傒と防に盟う。傳無し。高傒は、齊の貴卿にして、魯の微者と盟うは、齊桓謙りて諸侯に接わり、以て霸業を崇ぶなり。

冬、公如齊納幣。無傳。公不使卿、而親納幣、非禮也。母喪未再期而圖昏。二傳不見所譏。左氏又無傳。失禮明故也。
【読み】
冬、公齊に如きて幣を納る。傳無し。公卿を使わしめずして、親ら幣を納るるは、禮に非ざるなり。母の喪未だ再期をせずして昏を圖る。二傳譏る所を見ず。左氏も又傳無し。禮を失うこと明らかなる故なり。

〔傳〕二十二年、春、陳人殺其大子御寇。傳稱大子、以實言。
【読み】
〔傳〕二十二年、春、陳人其の大子御寇を殺す。傳に大子と稱するは、實を以て言うなり。

陳公子完與顓孫奔齊。公子完・顓孫、皆御寇之黨。
【読み】
陳の公子完顓孫[せんそん]と齊に奔る。公子完・顓孫は、皆御寇の黨。

顓孫自齊來奔。不書、非卿。
【読み】
顓孫齊より來奔す。書さざるは、卿に非ざればなり。

齊侯使敬仲爲卿。敬仲、陳公子完。
【読み】
齊侯敬仲をして卿爲らしむ。敬仲は、陳の公子完。

辭曰、羇旅之臣、羇、寄也。旅、客也。
【読み】
辭して曰く、羇旅[きりょ]の臣、羇は、寄るなり。旅は、客なり。

幸若獲宥、及於寬政、宥、赦也。
【読み】
幸いに若し宥[ゆる]さるるを獲て、寬政に及び、宥は、赦すなり。

赦其不閑於敎訓、而免於罪戾、弛於負擔、弛、去離也。
【読み】
其の敎訓に閑[なら]わざるを赦して、罪戾を免れて、負擔を弛さるれば、弛は、去り離すなり。

君之惠也。所獲多矣。敢辱高位、以速官謗。敢、不敢也。
【読み】
君の惠なり。獲る所多し。敢えて高位を辱くして、以て官の謗りを速[まね]かんや。敢は、敢えてせずなり。

請以死告。以死自誓。
【読み】
請う、死を以て告ぐ。死を以て自ら誓う。

詩云、翹翹車乘、招我以弓。豈不欲往。畏我友朋。逸詩也。翹翹、遠貌。古者聘士以弓。言雖貪顯命、懼爲朋友所譏責。○乘、繩證反。
【読み】
詩に云う、翹翹[ぎょうぎょう]たる車乘、我を招くに弓を以てす。豈往くことを欲せざらんや。我が友朋を畏る、と。逸詩なり。翹翹は、遠き貌。古は士を聘するに弓を以てす。言うこころは、顯命を貪ると雖も、朋友の爲に譏責せられんことを懼る。○乘は、繩證反。

使爲工正。掌百工之官。
【読み】
工正爲らしむ。百工を掌るの官。

飮桓公酒。樂。齊桓賢之。故就其家會。據主人辭。故言飮桓公酒。○飮、於鴆反。樂、音洛。
【読み】
桓公に酒を飮ましむ。樂しむ。齊桓之を賢とす。故に其の家に就いて會す。主人の辭に據る。故に桓公に酒を飮ましむと言う。○飮は、於鴆反。樂は、音洛。

公曰、以火繼之。辭曰、臣卜其晝、未卜其夜。不敢。
【読み】
公曰く、火を以て之に繼げ、と。辭して曰く、臣其の晝を卜して、未だ其の夜を卜せず。敢えてせず、と。

君子曰、酒以成禮、不繼以淫、義也。夜飮爲淫樂。
【読み】
君子曰く、酒は以て禮を成し、繼ぐに淫を以てせざるは、義なり。夜飮を淫樂とす。

以君成禮、弗納於淫、仁也。
【読み】
君を以て禮を成し、淫に納れざるは、仁なり、と。

初、懿氏卜妻敬仲。懿氏、陳大夫。龜曰卜。○妻、七計反。
【読み】
初め、懿氏敬仲に妻せんことを卜す。懿氏は、陳の大夫。龜を卜と曰う。○妻は、七計反。

其妻占之。曰吉。懿氏妻。
【読み】
其の妻之を占う。曰く吉なり。懿氏の妻。

是謂鳳皇于飛、和鳴鏘鏘、雄曰鳳、雌曰皇。雌雄倶飛、相和而鳴鏘鏘然。猶敬仲夫妻、相隨適齊、有聲譽。
【読み】
是を鳳皇于[ゆ]き飛びて、和鳴すること鏘鏘[しょうしょう]たり、雄を鳳と曰い、雌を皇と曰う。雌雄倶に飛び、相和して鳴くこと鏘鏘然たり。猶敬仲夫妻、相隨いて齊に適き、聲譽有るがごとし。

有嬀之後、將育于姜、嬀、陳姓。姜、齊姓。
【読み】
有嬀の後、將に姜に育われんとす、嬀は、陳の姓。姜は、齊の姓。

五世其昌、竝于正卿、八世之後、莫之與京。京、大也。
【読み】
五世にして其れ昌えて、正卿に竝び、八世の後、之と與に京[おお]いなる莫からんと謂う。京は、大なり。

陳厲公、蔡出也。姊妹之子曰出。
【読み】
陳の厲公は、蔡の出[おい]なり。姊妹の子を出と曰う。

故蔡人殺五父而立之。五父、陳侘也。殺陳侘、在桓六年。
【読み】
故に蔡人五父を殺して之を立つ。五父は、陳侘なり。陳侘を殺すは、桓六年に在り。

生敬仲。其少也、周史有以周易見陳侯者。周大史也。○少、詩照反。
【読み】
敬仲を生む。其の少きとき、周の史周易を以て陳侯に見ゆる者有り。周の大史なり。○少は、詩照反。

陳侯使筮之。蓍曰筮。
【読み】
陳侯之を筮せしむ。蓍を筮と曰う。

遇觀 坤下巽上觀。○觀、古亂反。
【読み】
坤下巽上は觀。○觀は、古亂反。

之否坤下乾上否。觀六四爻變而爲否。
【読み】
に之くに遇う。坤下乾上は否。觀の六四の爻變じて否と爲る。

曰、是謂觀國之光、利用賓于王。此周易觀卦六四爻辭。易之爲書、六爻皆有變象、又有互體。聖人隨其義而論之。
【読み】
曰く、是を國の光を觀る、王に賓たるに用ゆるに利ありと謂う。此れ周易觀の卦の六四の爻の辭。易の書爲る、六爻皆變象有り、又互體有り。聖人其の義に隨いて之を論ず。

此其代陳有國乎。不在此、其在異國。非此其身、在其子孫。光遠而自他有耀者也。坤、土也。巽、風也。乾、天也。風爲天。於土上、山也。巽變爲乾。故曰風爲天。自二至四、有艮象。艮爲山。
【読み】
此れ其れ陳に代わりて國を有たんか。此に在らずして、其れ異國に在らん。此の其の身に非ずして、其の子孫に在らん。光は遠くして他より耀くこと有る者なればなり。坤は、土なり。巽は、風なり。乾は、天なり。風天と爲る。土上に於ては、山なり。巽變じて乾と爲る。故に風天と爲ると曰う。二より四に至り、艮の象有り。艮を山とす。

有山之材、而照之以天光。於是乎居土上。山則材之所生。上有乾、下有坤。故言居土上、照之以天光。
【読み】
山の材有りて、之に照らさるるに天光を以てす。是に於て土上に居る。山は則ち材の生ずる所。上に乾有り、下に坤有り。故に土上に居り、之に照らさるるに天光を以てすと言う。

故曰、觀國之光。利用賓于王。四爲諸侯。變而之乾。有國朝王之象。
【読み】
故に曰く、國の光を觀る、と。王に賓たるに用ゆるに利あり。四を諸侯と爲す。變じて乾に之く。國を有ちて王に朝するの象なり。

庭實旅百、奉之以玉帛。天地之美具焉。故曰、利用賓于王。艮爲門庭、爲金玉、坤爲布帛。諸侯朝王、陳贄幣之象。旅、陳也。百、言物備。
【読み】
庭實百を旅[つら]ね、之を奉ずるに玉帛を以てす。天地の美具われり。故に曰く、王に賓たるに用ゆるに利あり、と。艮を門庭と爲し、乾を金玉と爲し、坤を布帛と爲す。諸侯王に朝して、贄幣を陳ぬるの象なり。旅は、陳ぬるなり。百は、物の備わるを言う。

猶有觀焉。故曰、其在後乎。因觀文以博占。故言猶有觀。非在己之言。故知在子孫。
【読み】
猶觀ること有り。故に曰く、其れ後に在らんか、と。觀の文に因りて以て博く占う。故に猶觀ること有りと言う。己に在るの言に非ず。故に子孫に在るを知る。

風行而著於土。故曰、其在異國乎。若在異國、必姜姓也。姜、大嶽之後也。姜姓之先、爲堯四嶽。○著、直略反。
【読み】
風行きて土に著く。故に曰う、其れ異國に在らん、と。若し異國に在らば、必ず姜姓ならん。姜は、大嶽の後なり。姜姓の先は、堯の四嶽爲り。○著は、直略反。

山嶽則配天。物莫能兩大。陳衰、此其昌乎。變而象艮。故知當興於大嶽之後。得大嶽之權、則有配天之大功。故知陳必衰。
【読み】
山嶽あれば則ち天に配す。物能く兩つながら大なること莫し。陳衰えば、此れ其れ昌んならんか。變じて艮に象る。故に當に大嶽の後に興るべきを知る。大嶽の權を得れば、則ち天に配するの大功有り。故に陳必ず衰えんことを知る。

及陳之初亡也、昭八年、楚滅陳。
【読み】
陳の初めて亡ぶるに及んでや、昭八年、楚陳を滅す。

陳桓子始大於齊。桓子、敬仲五世孫、陳無宇。
【読み】
陳桓子始めて齊に大なり。桓子は、敬仲五世の孫、陳無宇。

其後亡也、哀十七年、楚復滅陳。
【読み】
其の後に亡ぶるや、哀十七年、楚復陳を滅ぼす。

成子得政。成子、陳常也。敬仲八世孫。陳完有禮於齊、子孫世不忘德、德協於卜。故傳備言其終始。卜筮者、聖人所以定猶豫、決疑似、因生義敎者也。尙書洪範、通龜筮以同卿士之數。南蒯卜亂、而遇元吉、惠伯荅以忠信則可。臧會卜僭、遂獲其應。丘明故舉諸縣驗於行事者、以示來世。而君子志其善者遠者。他皆放此。○蒯、苦怪反。
【読み】
成子政を得たり。成子は、陳常なり。敬仲八世の孫。陳完齊に禮有り、子孫世々德を忘れず、德卜に協[かな]う。故に傳備に其の終始を言う。卜筮は、聖人の猶豫を定め、疑似を決する所以にして、因りて義敎を生ずる者なり。尙書洪範に、龜筮を通じて以て卿士の數に同じくす、と。南蒯[なんかい]亂を卜して、元吉に遇えば、惠伯荅うるに忠信なれば則ち可なるを以てす。臧會[そうかい]僭を卜して、遂に其の應を獲たり。丘明故に諸々行事に縣驗ある者を舉げて、以て來世に示す。而して君子其の善き者遠き者を志[しる]せり。他も皆此に放え。○蒯は、苦怪反。


〔經〕二十有三年、春、公至自齊。無傳。
【読み】
〔經〕二十有三年、春、公齊より至る。傳無し。

祭叔來聘。無傳。穀梁以、祭叔爲祭公來聘魯。天子内臣、不得外交。故不言使。不與其得使聘。○祭、側界反。
【読み】
祭叔來聘す。傳無し。穀梁に以えらく、祭叔祭公の爲に魯に來聘す、と。天子の内臣は、外交を得ず。故に使と言わず。其の使聘を得ることを與[ゆる]さざるなり。○祭は、側界反。

夏、公如齊觀社。齊因祭社蒐軍實。故公往觀之。
【読み】
夏、公齊に如きて社を觀る。齊社を祭るに因りて軍實を蒐[しゅう]す。故に公往いて之を觀る。

公至自齊。無傳。
【読み】
公齊より至る。傳無し。

荆人來聘。無傳。不書荆子使某來聘、君臣同辭者、蓋楚之始通、未成其禮。
【読み】
荆人來聘す。傳無し。荆子某をして來聘せしむと書せずして、君臣辭を同じくするは、蓋し楚の始めて通ずる、未だ其の禮を成さざればなり。

公及齊侯遇于穀。無傳。○穀、音谷。
【読み】
公齊侯と穀に遇う。傳無し。○穀は、音谷。

蕭叔朝公。無傳。蕭、附庸國。叔、名。就穀朝公。故不言來。凡在外朝、則禮不得具。嘉禮不野合。
【読み】
蕭叔[しょうしゅく]公に朝す。傳無し。蕭は、附庸の國。叔は、名。穀に就いて公に朝す。故に來ると言わず。凡そ外に在りて朝すれば、則ち禮具わることを得ず。嘉禮は野合せざればなり。

秋、丹桓宮楹。桓公廟也。楹、柱也。
【読み】
秋、桓宮の楹[はしら]を丹にす。桓公の廟なり。楹[えい]は、柱なり。

冬、十有一月、曹伯射姑卒。無傳。未同盟、而赴以名。○射、示亦反。又音
【読み】
冬、十有一月、曹伯射姑[やこ]卒す。傳無し。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。○射は、示亦反。又音

十有二月、甲寅、公會齊侯盟于扈。無傳。扈、鄭地。在滎陽卷縣西北。○扈、音戶。卷、音權。
【読み】
十有二月、甲寅[きのえ・とら]、公齊侯に會して扈[こ]に盟う。傳無し。扈は、鄭の地。滎陽卷縣の西北に在り。○扈は、音戶。卷は、音權。

〔傳〕二十三年、夏、公如齊觀社、非禮也。
【読み】
〔傳〕二十三年、夏、公齊に如きて社を觀るは、禮に非ざるなり。

曹劌諫曰、不可。夫禮所以整民也。故會以訓上下之則、制財用之節、貢賦多少。
【読み】
曹劌[そうけい]諫めて曰く、不可なり。夫れ禮は民を整うる所以なり。故に會して以て上下の則を訓えて、財用の節を制し、貢賦の多少。

朝以正班爵之義、帥長幼之序、征伐以討其不然。不然、不用命。
【読み】
朝以て班爵の義を正し、長幼の序に帥[したが]い、征伐して以て其の不然を討ず。不然は、命を用いざるなり。

諸侯有王、從王事。
【読み】
諸侯に王有り、王事に從う。

王有巡守、省四方。
【読み】
王に巡守有りて、四方を省す。

以大習之。大習會朝之禮。
【読み】
以て大いに之を習わす。會朝の禮を大習す。

非是君不舉矣、君舉必書。書於策。
【読み】
是に非ざれば君舉せず、君舉すは必ず書す。策に書す。

書而不法、後嗣何觀。
【読み】
書して法ならざれば、後嗣何をか觀ん、と。

晉桓・莊之族偪。桓叔・莊伯之子孫强盛、偪迫公室。○偪、彼力反。
【読み】
晉の桓・莊の族偪る。桓叔・莊伯の子孫强盛にして、公室に偪迫す。○偪は、彼力反。

獻公患之。士蔿曰、去富子、則羣公子可謀也已。士蔿、晉大夫。富子、二族之富强者。○蔿、于委反。去、起呂反。
【読み】
獻公之を患う。士蔿[しい]曰く、富子を去らば、則ち羣公子謀る可きのみ、と。士蔿は、晉の大夫。富子は、二族の富强なる者。○蔿は、于委反。去は、起呂反。

公曰、爾試其事。士蔿與羣公子謀、譖富子而去之。以罪狀誣之。同族惡其富强。故士蔿得因而閒之。用其所親爲譖則似信。離其骨肉則黨弱。羣公子終所以見滅。○惡、烏路反。
【読み】
公曰く、爾其の事を試みよ、と。士蔿羣公子と謀り、富子を譖して之を去れり。罪狀を以て之を誣う。同族其の富强を惡む。故に士蔿因りて之を閒することを得たり。其の所親を用いて譖を爲さば則ち信に似たり。其の骨肉を離れては則ち黨弱し。羣公子終に滅ぼさるる所以なり。○惡は、烏路反。

秋、丹桓宮之楹。或云、士蔿當作土。土氏出於唐杜。
【読み】
秋、桓宮の楹を丹にす。或ひと云う、士蔿は當に土に作るべし。土氏唐杜より出づ、と。


〔經〕二十有四年、春、王三月、刻桓宮桷。刻、鏤也。桷、椽也。將逆夫人。故爲盛飾。
【読み】
〔經〕二十有四年、春、王の三月、桓宮の桷[かく]に刻む。刻は、鏤なり。桷は、椽なり。將に夫人を逆[むか]えんとす。故に盛飾を爲す。

葬曹莊公。無傳。
【読み】
曹の莊公を葬る。傳無し。

夏、公如齊逆女。無傳。親逆、禮也。
【読み】
夏、公齊に如きて女を逆[むか]う。傳無し。親ら逆うるは、禮なり。

秋、公至自齊。無傳。
【読み】
秋、公齊より至る。傳無し。

八月、丁丑、夫人姜氏入。哀姜也。公羊傳以爲、姜氏要公、不與公倶入。蓋以孟任故。丁丑入、而明日乃朝廟。○要、於遙反。任、音壬。後同。
【読み】
八月、丁丑[ひのと・うし]、夫人姜氏入る。哀姜なり。公羊傳に以爲えらく、姜氏公を要して、公と倶に入らず、と。蓋し孟任が故を以てならん。丁丑に入りて、明日乃ち廟に朝せるなり。○要は、於遙反。任は、音壬。後も同じ。

戊寅、大夫・宗婦覿用幣。宗婦、同姓大夫之婦。禮小君至、大夫執贄以見。明臣子之道。莊公欲奢夸夫人。故使大夫・宗婦同贄倶見。
【読み】
戊寅[つちのえ・とら]、大夫・宗婦覿[まみ]ゆるに幣を用ゆ。宗婦は、同姓の大夫の婦。禮に小君至れば、大夫贄を執りて以て見ゆ、と。臣子の道を明らかにするなり。莊公夫人に奢夸[しゃか]せんと欲す。故に大夫・宗婦をして贄を同じくして倶に見えしむ。

大水。無傳。
【読み】
大水あり。傳無し。

冬、戎侵曹。無傳。
【読み】
冬、戎曹を侵す。傳無し。

曹羈出奔陳。無傳。羈、蓋曹世子也。先君旣葬。而不稱爵者、微弱不能自定、曹人以名赴。
【読み】
曹の羈[き]出でて陳に奔る。傳無し。羈は、蓋し曹の世子ならん。先君旣に葬る。而るを爵を稱せざるは、微弱にして自ら定むること能わず、曹人名を以て赴[つ]ぐればなり。

赤歸于曹。無傳。赤、曹僖公也。蓋爲戎所納。故曰歸。
【読み】
赤曹に歸る。傳無し。赤は、曹の僖公なり。蓋し戎の爲に納れらるるならん。故に歸ると曰う。

郭公。無傳。蓋經闕誤也。自曹羈以下、公羊・穀梁之說旣不了。又不可通之於左氏。故不采用。
【読み】
郭公。傳無し。蓋し經の闕誤ならん。曹羈より以下、公羊・穀梁の說旣に了[あき]らかならず。又之を左氏に通ず可からず。故に采り用いず。

〔傳〕二十四年、春、刻其桷。皆非禮也。幷非丹楹。故言皆。
【読み】
〔傳〕二十四年、春、其の桷に刻む。皆禮に非ざるなり。楹[はしら]に丹ぬるを幷せ非る。故に皆と言う。

御孫諫曰、臣聞之、儉、德之共也。侈、惡之大也。御孫、魯大夫。○御、魚呂反。
【読み】
御孫諫めて曰く、臣之を聞く、儉は、德の共なり。侈は、惡の大なり、と。御孫は、魯の大夫。○御は、魚呂反。

先君有共德。而君納諸大惡、無乃不可乎。以不丹楹刻桷爲共。
【読み】
先君共德有り。而るを君諸を大惡に納るれば、乃ち不可なること無からんや、と。楹に丹ぬり桷に刻まざるを以て共とす。

秋、哀姜至。公使宗婦覿用幣。非禮也。傳不言大夫、唯舉非常。
【読み】
秋、哀姜至る。公宗婦をして覿ゆるに幣を用いしむ。禮に非ざるなり。傳に大夫を言わざるは、唯非常を舉ぐるなり。

御孫曰、男贄、大者玉帛。公・侯・伯・子・男、執玉、諸侯世子・附庸・孤卿、執帛。
【読み】
御孫曰く、男の贄は、大なる者は玉帛。公・侯・伯・子・男は、玉を執り、諸侯の世子・附庸・孤卿は、帛を執る。

小者禽鳥。卿執羔、大夫執鴈、士執雉。
【読み】
小なる者は禽鳥。卿は羔を執り、大夫は鴈を執り、士は雉を執る。

以章物也。章所執之物、別貴賤。
【読み】
以て物を章らかにするなり。執る所の物を章らかにして、貴賤を別つ。

女贄、不過榛栗・棗脩。以告虔也。榛、小栗。脩、脯。虔、敬也。皆取其名以示敬。○榛、側巾反。脩、鍛脯加薑桂曰脩。
【読み】
女の贄は、榛栗・棗脩に過ぎず。以て虔[つつし]みを告ぐるなり。榛は、小栗。脩は、脯。虔は、敬なり。皆其の名を取りて以て敬を示す。○榛は、側巾反。脩は、鍛脯薑桂を加うるを脩と曰う。

今男女同贄。是無別也。男女之別、國之大節也。而由夫人亂之、無乃不可乎。
【読み】
今男女贄を同じくす。是れ別無きなり。男女の別は、國の大節なり。而るに夫人に由りて之を亂さば、乃ち不可なること無からんや、と。

晉士蔿又與群公子謀、使殺游氏之二子。游氏二子、亦桓・莊之族。
【読み】
晉の士蔿又群公子と謀り、游氏の二子を殺さしむ。游氏の二子も、亦桓・莊の族。

士蔿告晉侯曰、可矣。不過二年、君必無患。
【読み】
士蔿晉侯に告げて曰く、可なり。二年を過ぎずして、君必ず患え無からん、と。


〔經〕二十有五年、春、陳侯使女叔來聘。女叔、陳卿。女、氏。叔、字。○女、音汝。
【読み】
〔經〕二十有五年、春、陳侯女叔をして來聘せしむ。女叔は、陳の卿。女は、氏。叔は、字。○女は、音汝。

夏、五月、癸丑、衛侯朔卒。無傳。惠公也。書名、十六年、與内大夫盟于幽。
【読み】
夏、五月、癸丑[みずのと・うし]、衛侯朔卒す。傳無し。惠公なり。名を書すは、十六年、内大夫と幽に盟えり。

六月、辛未、朔、日有食之。鼓用牲于社。鼓、伐鼓也。用牲以祭社。傳例曰、非常也。
【読み】
六月、辛未[かのと・ひつじ]、朔、日之を食する有り。鼓して牲を社に用ゆ。鼓は、鼓を伐つなり。牲を用いて以て社を祭る。傳例に曰く、常に非ざるなり、と。

伯姬歸于杞。無傳。不書逆女、逆者微。
【読み】
伯姬杞に歸[とつ]ぐ。傳無し。女を逆[むか]うるを書さざるは、逆うる者微なればなり。

秋、大水。鼓用牲于社于門。門、國門也。傳例曰、亦非常也。
【読み】
秋、大水あり。鼓して牲を社に門に用ゆ。門は、國門なり。傳例に曰く、亦常に非ざるなり、と。

冬、公子友如陳。無傳。報女叔之聘。諸魯出朝聘、皆書如。不果彼國必成其禮。故不稱朝聘。春秋之常也。公子友、莊公之母弟、稱公子者、史策之通言。母弟至親、異於他臣。其相殺害、則稱弟以示義。至嘉好之事、兄弟篤睦、非例所興。或稱弟、或稱公子、仍舊史之文也。母弟例、在宣十七年。
【読み】
冬、公子友陳に如く。傳無し。女叔の聘に報ゆるなり。諸々魯より出でて朝聘するは、皆如くと書す。果たして彼の國其の禮を成すことを必とせず。故に朝聘と稱せず。春秋の常なり。公子友は、莊公の母弟なるに、公子と稱するは、史策の通言なり。母弟は至親、他の臣に異なり。其の相殺害するは、則ち弟と稱して以て義を示す。嘉好の事に至りては、兄弟は篤睦、例の興る所に非ず。或は弟と稱し、或は公子と稱すは、舊史の文に仍るなり。母弟の例は、宣十七年に在り。

〔傳〕二十五年、春、陳女叔來聘、始結陳好也。嘉之。故不名。季友相魯。原仲相陳。二人有舊。故女叔來聘、季友冬亦報聘。嘉好接備。卿以字爲嘉、則稱名其常也。
【読み】
〔傳〕二十五年、春、陳の女叔來聘するは、始めて陳の好を結ぶなり。之を嘉す。故に名いわず。季友魯に相たり。原仲陳に相たり。二人舊有り。故に女叔來聘し、季友冬亦報聘す。好接の備わるを嘉す。卿字を以て嘉すとすれば、則ち名を稱するは其の常なり。

夏、六月、辛未、朔、日有食之。鼓用牲于社。非常也。非常鼓之月。長曆推之、辛未、實七月朔。置閏失所。故致月錯。
【読み】
夏、六月、辛未、朔、日之を食する有り。鼓して牲を社に用ゆ。常に非ざるなり。常鼓の月に非ず。長曆もて之を推すに、辛未は、實は七月朔なり。閏を置くこと所を失う。故に月の錯りを致す。

唯正月之朔、慝未作。正月、夏之四月。周之六月、謂正陽之月。今書六月、而傳云唯者、明此月非正陽月也。慝、陰氣。○正、音政。慝、他得反。
【読み】
唯正月の朔には、慝未だ作らず。正月とは、夏の四月なり。周の六月は、正陽の月を謂うなり。今六月と書して、傳に唯と云うは、此の月は正陽の月に非ざるを明かすなり。慝は、陰氣。○正は、音政。慝は、他得反。

日有食之、於是乎用幣于社、伐鼓于朝。日食、曆之常也。然食於正陽之月、則諸侯用幣于社、請救於上公、伐鼓于朝、退而自責。以明陰不宜侵陽、臣不宜掩君、以示大義。
【読み】
日之を食する有れば、是に於て幣を社に用い、鼓を朝に伐つなり。日食は、曆の常なり。然れども正陽の月に食すれば、則ち諸侯は幣を社に用い、救を上公に請い、鼓を朝に伐ちて、退いて自ら責む。以て陰は陽を侵す宜からず、臣は君を掩う宜からざるを明かして、以て大義を示すなり。

秋、大水。鼓用牲于社于門。亦非常也。失常禮。
【読み】
秋、大水あり。鼓して牲を社に門に用ゆ。亦常に非ざるなり。常禮を失う。

凡天災、有幣無牲。天災、日月食、大水也。祈請而已。不用牲也。
【読み】
凡そ天災には、幣有りて牲無し。天災は、日月の食と、大水となり。祈請するのみ。牲を用いざるなり。

非日月之眚、不鼓。眚、猶災也。月侵日爲眚。陰陽逆順之事、賢聖所重。故特鼓之。○眚、所景反。
【読み】
日月の眚[せい]に非ざれば、鼓たず。眚は、猶災いのごとし。月日を侵すを眚とす。陰陽逆順の事は、賢聖の重んずる所。故に特に之に鼓つ。○眚は、所景反。

晉士蔿使羣公子盡殺游氏之族、乃城聚而處之。聚、晉邑。
【読み】
晉の士蔿羣公子をして盡く游氏の族を殺さしめ、乃ち聚に城きて之を處く。聚は、晉の邑。

冬、晉侯圍聚、盡殺羣公子。卒如士蔿之計。
【読み】
冬、晉侯聚を圍みて、盡く羣公子を殺す。卒に士蔿の計の如し。


〔經〕二十有六年、春、公伐戎。無傳。
【読み】
〔經〕二十有六年、春、公戎を伐つ。傳無し。

夏、公至自伐戎。無傳。
【読み】
夏、公戎を伐ちてより至る。傳無し。

曹殺其大夫。無傳。不稱名、非其罪。例在文七年。
【読み】
曹其の大夫を殺す。傳無し。名を稱せざるは、其の罪に非ざるなり。例は文七年に在り。

秋、公會宋人・齊人伐徐。無傳。宋序齊上、主兵。
【読み】
秋、公宋人・齊人に會して徐を伐つ。傳無し。宋齊の上に序ずるは、兵を主るなり。

冬、十有二月、癸亥、朔、日有食之。無傳。
【読み】
冬、十有二月、癸亥[みずのと・い]、朔、日之を食する有り。傳無し。

〔傳〕二十六年、春、晉士蔿爲大司空。大司空、卿官。
【読み】
〔傳〕二十六年、春、晉の士蔿大司空と爲る。大司空は、卿官。

夏、士蔿城絳、以深其宮。絳、晉所都也。今平陽絳邑縣。
【読み】
夏、士蔿絳[こう]に城きて、以て其の宮を深くす。絳は、晉の都する所なり。今の平陽絳邑縣。

秋、虢人侵晉。冬、虢人又侵晉。爲傳明年晉將伐虢張本。此年經傳各自言其事者、或經是直文、或策書雖存、而簡牘散落、不究其本末。故傳不復申解、但言傳事而已。
【読み】
秋、虢人晉を侵す。冬、虢人又晉を侵す。傳明年晉將に虢を伐たんとする爲の張本なり。此の年經傳各々自ら其の事を言うは、或は經は是れ直文、或は策書存すと雖も、而れども簡牘散落して、其の本末を究めず。故に傳復申解せずして、但傳の事を言うのみ。


〔經〕二十有七年、春、公會杞伯姬于洮。伯姬、莊公女。洮、魯地。○洮、他刀反。
【読み】
〔經〕二十有七年、春、公杞の伯姬に洮[とう]に會す。伯姬は、莊公の女。洮は、魯の地。○洮は、他刀反。

夏、六月、公會齊侯・宋公・陳侯・鄭伯同盟于幽。秋、公子友如陳、葬原仲。原仲、陳大夫。原、氏。仲、字也。禮、臣旣卒不名。故稱字。季友違禮會外大夫葬。具見其事、亦所以知譏。○見、賢遍反。
【読み】
夏、六月、公齊侯・宋公・陳侯・鄭伯に會して幽に同盟す。秋、公子友陳に如き、原仲を葬る。原仲は、陳の大夫。原は、氏。仲は、字なり。禮に、臣旣に卒すれば名いわず、と。故に字を稱す。季友禮に違いて外大夫の葬に會す。具に其の事を見すも、亦譏ることを知る所以なり。○見は、賢遍反。

冬、杞伯姬來。傳例曰、歸寧。
【読み】
冬、杞の伯姬來る。傳例に曰く、歸寧なり、と。

莒慶來逆叔姬。無傳。慶、莒大夫。叔姬、莊公女。卿自爲逆則稱字。例在宣五年。
【読み】
莒の慶來りて叔姬を逆[むか]う。傳無し。慶は、莒の大夫。叔姬は、莊公の女。卿自ら爲に逆うれば則ち字を稱す。例は宣五年に在り。

杞伯來朝。無傳。杞稱伯者、蓋爲時王所黜。
【読み】
杞伯來朝す。傳無し。杞伯と稱するは、蓋し時王の爲に黜けられしならん。

公會齊侯于城濮。無傳。城濮、衛地。將討衛也。
【読み】
公齊侯に城濮[じょうぼく]に會す。傳無し。城濮は、衛の地。將に衛を討ぜんとするなり。

〔傳〕二十七年、春、公會杞伯姬于洮、非事也。非諸侯之事。
【読み】
〔傳〕二十七年、春、公杞の伯姬に洮に會するは、事に非ざるなり。諸侯の事に非ず。

天子非展義不巡守。天子巡守、所以宣布德義。
【読み】
天子義を展ぶるに非ざれば巡守せず。天子の巡守は、德義を宣布する所以なり。

諸侯非民事不舉。卿非君命不越竟。○竟、音境。
【読み】
諸侯は民事に非ざれば舉せず。卿は君命に非ざれば竟を越えず。○竟は、音境。

夏、同盟于幽、陳・鄭服也。二十二年、陳亂而齊納敬仲、二十五年、鄭文公之四年、獲成於楚。皆有二心於齊。今始服也。
【読み】
夏、幽に同盟するは、陳・鄭服するなり。二十二年、陳亂れて齊敬仲を納れ、二十五年、鄭の文公の四年、成[たい]らぎを楚に獲。皆齊に二心有り。今始めて服するなり。

秋、公子友如陳葬原仲、非禮也。原仲、季友之舊也。
【読み】
秋、公子友陳に如きて原仲を葬るは、禮に非ざるなり。原仲は、季友の舊なり。

冬、杞伯姬來、歸寧也。寧、問父母安否。
【読み】
冬、杞の伯姬來るは、歸寧するなり。寧は、父母の安否を問うなり。

凡諸侯之女、歸寧曰來、出曰來歸。歸、不反之辭。
【読み】
凡そ諸侯の女は、歸寧するを來ると曰い、出ださるるを來歸すと曰う。歸は、反らざるの辭。

夫人、歸寧曰如某、出曰歸于某。
【読み】
夫人は、歸寧するを某に如くと曰い、出ださるるを某に歸ると曰う。

晉侯將伐虢。士蔿曰、不可。虢公驕。若驟得勝於我、必弃其民。弃民不養之。
【読み】
晉侯將に虢を伐たんとす。士蔿曰く、不可なり。虢公驕れり。若し驟[しば]々我に勝つことを得ば、必ず其の民を弃[す]てん。民を弃てて之を養わず。

無衆而後伐之、欲禦我誰與。夫禮樂慈愛、戰所畜也。夫民、讓事樂和、愛親哀喪、而後可用也。上之使民、以義・讓・哀・樂爲本。言不可力强。○畜、勑六反。下同。樂、音洛。
【読み】
衆無くして後に之を伐たば、我を禦がんと欲すとも誰か與せん。夫れ禮樂慈愛は、戰の畜うる所なり。夫れ民は、事を讓り和を樂しみ、親を愛し喪を哀しみて、而して後に用ゆ可し。上の民を使うは、義・讓・哀・樂を以て本とす。力强す可からざるを言う。○畜は、勑六反。下も同じ。樂は、音洛。

虢弗畜也。亟戰、將饑。言虢不畜義讓而力戰。○亟、欺冀反。
【読み】
虢畜えず。亟[しば]々戰わば、將に饑えんとす、と。虢義讓を畜えずして力戰するを言う。○亟は、欺冀反。

王使召伯廖賜齊侯命。召伯廖、王卿士。賜命爲侯伯。○召、音邵。廖、力彫反。
【読み】
王召伯廖[しょうはくりょう]をして齊侯に命を賜わしむ。召伯廖は、王の卿士。命を賜いて侯伯と爲る。○召は、音邵。廖は、力彫反。

且請伐衛。以其立子頹也。立子頹、在十九年。
【読み】
且つ衛を伐たんことを請う。其の子頹を立てしを以てなり。子頹を立つるは、十九年に在り。


〔經〕二十有八年、春、王三月、甲寅、齊人伐衛。衛人及齊人戰。衛人敗績。齊侯稱人者、諱取賂而還、以賤者告。不地者、史失之。
【読み】
〔經〕二十有八年、春、王の三月、甲寅[きのえ・とら]、齊人衛を伐つ。衛人齊人と戰う。衛人敗績す。齊侯人と稱するは、賂を取りて還るを諱み、賤者を以て告ぐればなり。地いわざるは、史之を失うなり。

夏、四月、丁未、邾子瑣卒。無傳。未同盟而赴以名。
【読み】
夏、四月、丁未[ひのと・ひつじ]、邾子[ちゅし]瑣卒す。傳無し。未だ同盟せずして赴[つ]ぐるに名を以てす。

秋、荆伐鄭。公會齊人・宋人救鄭。冬、築郿。郿、魯下邑。傳例曰、邑曰築。○郿、亡悲反。
【読み】
秋、荆鄭を伐つ。公齊人・宋人に會して鄭を救う。冬、郿[び]に築く。郿は、魯の下邑。傳例に曰く、邑を築くと曰う、と。○郿は、亡悲反。

大無麥・禾。書於冬者、五穀畢入、計食不足而後書也。
【読み】
大いに麥・禾無し。冬に書すは、五穀畢く入りて、食を計るに足らずして後に書すなり。

臧孫辰告糴于齊。臧孫辰、魯大夫、臧文仲。
【読み】
臧孫辰[ぞうそうしん]糴[てき]を齊に告ぐ。臧孫辰は、魯の大夫、臧文仲なり。

〔傳〕二十八年、春、齊侯伐衛。戰敗衛師、數之以王命、取賂而還。
【読み】
〔傳〕二十八年、春、齊侯衛を伐つ。戰いて衛の師を敗り、之を數[せ]むるに王命を以てし、賂を取りて還る。

晉獻公娶于賈。無子。賈、姬姓國也。
【読み】
晉の獻公賈[か]に娶る。子無し。賈は、姬姓の國なり。

烝於齊姜、齊姜、武公妾。
【読み】
齊姜に烝して、齊姜は、武公の妾。

生秦穆夫人及大子申生。又娶二女於戎。大戎狐姬生重耳、大戎、唐叔子孫別在戎狄者。○重、直龍反。
【読み】
秦の穆夫人と大子申生とを生む。又二女を戎に娶る。大戎の狐姬重耳を生み、大戎は、唐叔の子孫の別に戎狄に在る者。○重は、直龍反。

小戎子生夷吾。小戎、允姓之戎。子、女也。
【読み】
小戎の子夷吾を生む。小戎は、允姓の戎。子は、女なり。

晉伐驪戎。驪戎男女以驪姬。驪戎、在京兆新豐縣。其君姬姓。其爵男也。納女於人曰女。○女、昵據反。
【読み】
晉驪戎を伐つ。驪戎男女[めあ]わすに驪姬を以てす。驪戎は、京兆新豐縣に在り。其の君は姬姓。其の爵は男なり。女を人に納るるを女と曰う。○女は、昵據反。

歸、生奚齊。其娣生卓子。
【読み】
歸りて、奚齊を生む。其の娣卓子を生む。

驪姬嬖。欲立其子、賂外嬖梁五與東關嬖五、姓梁、名五。在閨闥之外者。東關嬖五、別在關塞者。亦名五。皆大夫。爲獻公所嬖幸、視聽外事。
【読み】
驪姬嬖せらる。其の子を立てんと欲して、外嬖梁五と東關嬖五とに賂いて、姓は梁、名は五。閨闥の外に在る者なり。東關の嬖五は、別に關塞に在る者なり。亦名は五。皆大夫なり。獻公の爲に嬖幸せられて、外事を視聽す。

使言於公曰、曲沃、君之宗也。曲沃、桓叔所封。先君宗廟所在。
【読み】
公に言わしめて曰く、曲沃は、君の宗なり。曲沃は、桓叔の封ぜらるる所。先君の宗廟の在る所。

蒲與二屈、君之疆也。蒲、今平陽の蒲子縣。二屈、今平陽の北屈縣。或云、二當爲北。○屈、求勿反。又居勿反。
【読み】
蒲と二屈とは、君の疆なり。蒲は、今の平陽蒲子縣。二屈は、今の平陽北屈縣。或ひと云う、二は當に北に爲るべし、と。○屈は、求勿反。又居勿反。

不可以無主。宗邑無主、則民不威。疆埸無主、則啓戎心。戎之生心、民慢其政、國之患也。若使大子主曲沃、而重耳夷吾主蒲與屈、則可以威民而懼戎。且旌君伐。旌、章也。伐、功也。
【読み】
以て主無かる可からず。宗邑主無ければ、則ち民威[おそ]れず。疆埸主無ければ、則ち戎の心を啓く。戎の心を生じ、民其の政を慢るは、國の患えなり。若し大子をして曲沃に主とし、重耳と夷吾とをして蒲と屈とに主たらしめば、則ち以て民を威して戎を懼れしむ可し。且君の伐[いさおし]を旌[あらわ]さん、と。旌は、章すなり。伐は、功なり。

使倶曰、狄之廣莫、於晉爲都、晉之啓土、不亦宜乎。廣莫、狄地之曠絕也。卽謂蒲與北屈也。言遣二公子出都之、則晉方當大開土界。獻公未決。故復使二五倶說此美。
【読み】
倶に曰わしむらく、狄の廣莫なる、晉に於て都と爲らば、晉の土を啓かんこと、亦宜ならざるや、と。廣莫は、狄地の曠絕なるなり。卽ち蒲と北屈とを謂うなり。言うこころは、二公子をして出でて之に都せしめば、則ち晉方に當に大いに土界を開くべし。獻公未だ決せず。故に復二五をして倶に此の美を說かしむ。

晉侯說之。
【読み】
晉侯之を說ぶ。

夏、使大子居曲沃、重耳居蒲城、夷吾居屈。群公子皆鄙。鄙、邊邑。○說、音悅。
【読み】
夏、大子をして曲沃に居り、重耳をして蒲城に居り、夷吾をして屈に居らしむ。群公子皆鄙なり。鄙は、邊邑。○說は、音悅。

唯二姬之子在絳。二五卒與驪姬譖羣公子、而立奚齊。晉人謂之二五耦。二耜相耦、廣一尺、共起一伐。言二人倶共墾傷晉室若此。○譖、責鴆反。耜、音似。廣、古曠反。
【読み】
唯二姬の子のみ絳に在り。二五卒に驪姬と羣公子を譖して、奚齊を立つ。晉人之を二五耦と謂う。二耜相耦して、廣さ一尺、共に一伐を起こす。二人倶共に晉室を墾傷すること此の若きを言う。○譖は、責鴆反。耜は、音似。廣は、古曠反。

楚令尹子元欲蠱文夫人、文王夫人息嬀也。子元、文王弟。蠱、惑以淫事。
【読み】
楚の令尹子元文夫人を蠱せんと欲し、文王の夫人息嬀なり。子元は、文王の弟。蠱は、惑わすに淫事を以てするなり。

爲館於其宮側、而振萬焉。振、動也。萬、舞也。
【読み】
館を其の宮の側に爲りて、萬を振るう。振は、動かすなり。萬は、舞なり。

夫人聞之、泣曰、先君以是舞也、習戎備也。今令尹不尋諸仇讎、而於未亡人之側。不亦異乎。尋、用也。婦人旣寡、自稱未亡人。
【読み】
夫人之を聞いて、泣いて曰く、先君の是の舞を以てせんや、戎備を習わせり。今令尹は諸を仇讎に尋[もち]いずして、未亡人の側に於てす。亦異[あや]しからずや、と。尋は、用ゆるなり。婦人旣に寡にして、自ら未亡人と稱す。

御人以告子元。御人、夫人之侍人。
【読み】
御人以て子元に告ぐ。御人は、夫人の侍人。

子元曰、婦人不忘襲讎。我反忘之。秋、子元以車六百乘伐鄭、入于桔柣之門。桔柣、鄭遠郊之門也。○乘、繩證反。桔、戶結反。柣、待結反。
【読み】
子元曰く、婦人も讎を襲うことを忘れず。我れ反って之を忘れたり、と。秋、子元車六百乘を以[い]て鄭を伐ち、桔柣[けつてつ]の門に入る。桔柣は、鄭の遠郊の門なり。○乘は、繩證反。桔は、戶結反。柣は、待結反。

子元・鬭御疆・鬭梧・耿之不比爲旆。子元自與三子特建旆以居前。緇廣充幅長尋曰旐。繼旐曰旆。○御、魚呂反。疆、其良反。又居良反。比、幷里反。
【読み】
子元・鬭御疆・鬭梧・耿之不比[こうしふひ]旆[はい]爲り。子元自ら三子と特に旆を建てて以て前に居る。緇廣さ充幅長さ尋を旐[ちょう]と曰う。旐に繼ぐを旆と曰う。○御は、魚呂反。疆は、其良反。又居良反。比は、幷里反。

鬭班・王孫游・王孫喜殿。三子在後爲反禦。○殿、丁見反。
【読み】
鬭班・王孫游・王孫喜殿たり。三子後に在りて反禦を爲す。○殿は、丁見反。

衆車入自純門、及逵市。純門、鄭外郭門也。逵市、郭内道上市。
【読み】
衆車純門より入り、逵市に及ぶ。純門は、鄭の外郭門なり。逵市は、郭内道上の市。

縣門不發。楚言而出。子元曰、鄭有人焉。縣門、施於内城門。鄭示楚以閒暇。故不閉城門、出兵而效楚言。故子元畏之、不敢進。○縣、音玄。
【読み】
縣門發[と]じず。楚言して出づ。子元曰く、鄭に人有り、と。縣門は、内城門に施す。鄭楚に示すに閒暇を以てす。故に城門を閉じずして、兵を出だして楚言を效う。故に子元之を畏れて、敢えて進まず。○縣は、音玄。

諸侯救鄭。楚師夜遁。
【読み】
諸侯鄭を救う。楚の師夜遁ぐ。

鄭人將奔桐丘。許昌縣東北有桐丘城。
【読み】
鄭人將に桐丘に奔らんとす。許昌縣の東北に桐丘城有り。

諜告曰、楚幕有烏。乃止。諜、閒也。幕、帳也。
【読み】
諜告げて曰く、楚の幕に烏有り、と。乃ち止む。諜は、閒なり。幕は、帳なり。

冬、饑。臧孫辰告糴于齊。禮也。經書大無麥・禾、傳言饑、傳又先書饑、在築郿上者、說始糴。經在下須得糴。嫌或諱饑。故曰禮。
【読み】
冬、饑す。臧孫辰糴を齊に告ぐ。禮なり。經は大いに麥・禾無しと書し、傳は饑すと言い、傳又先ず饑を書して、郿に築くの上に在るは、始めて糴するを說くなり。經下に在るは糴を得るを須つなり。或は饑を諱むに嫌あり。故に禮と曰う。

築郿、非都也。
【読み】
郿に築くは、都に非ざるなり。

凡邑、有宗廟先君之主曰都、無曰邑。邑曰築、都曰城。周禮、四縣爲都、四井爲邑。然宗廟所在、則雖邑曰都、尊之也。言凡邑、則他築非例。
【読み】
凡そ邑、宗廟先君の主有るを都と曰い、無きを邑と曰う。邑を築くと曰い、都を城くと曰う。周禮に、四縣を都とし、四井を邑とす、と。然れども宗廟の在る所は、則ち邑と雖も都と曰うは、之を尊んでなり。凡そ邑と言うは、則ち他の築は例に非ざるなり。


〔經〕二十有九年、春、新延廐。傳例曰、書不時。言新者、皆舊物不可用、更造之辭。○廐、居又反。
【読み】
〔經〕二十有九年、春、延廐を新たにす。傳例に曰く、時ならざるを書す、と。新と言うは、皆舊物用ゆ可からずして、更造するの辭なり。○廐は、居又反。

夏、鄭人侵許。傳例曰、無鐘鼓曰侵。
【読み】
夏、鄭人許を侵す。傳例に曰く、鐘鼓無きを侵と曰う、と。

秋、有蜚。傳例曰、爲災。○蜚、扶味反。
【読み】
秋、蜚[ひ]有り。傳例に曰く、災いを爲す、と。○蜚は、扶味反。

冬、十有二月、紀叔姬卒。無傳。紀國雖滅、叔姬執節守義。故繫之紀、賢而錄之。
【読み】
冬、十有二月、紀の叔姬卒す。傳無し。紀の國滅ぶと雖も、叔姬節を執り義を守る。故に之を紀に繫けて、賢として之を錄す。

城諸及防。諸・防、皆魯邑。傳例曰、書時也。諸非備難而興作、傳皆重云時以釋之。他皆放此。諸、今城陽諸縣。
【読み】
諸と防とに城く。諸・防は、皆魯の邑。傳例に曰く、時なるを書すなり、と。諸々難に備うるに非ずして興作する、傳皆重ねて時と云いて以て之を釋く。他も皆此に放え。諸は、今の城陽の諸縣。

〔傳〕二十九年、春、新作延廐、書不時也。經無作字、蓋闕。
【読み】
〔傳〕二十九年、春、新たに延廐を作るは、時ならざるを書すなり。經に作の字無きは、蓋し闕けたるならん。

凡馬、日中而出、日中而入。日中、春秋分也。治廐當以秋分、因馬向入而脩之。今以春作。故曰不時。○向、許亮反。
【読み】
凡そ馬、日中して出だし、日中して入る。日中は、春秋分なり。廐を治むるは當に秋分を以て、馬入るに向かうに因りて之を脩むべし。今春を以て作る。故に時ならずと曰う。○向は、許亮反。

夏、鄭人侵許。
【読み】
夏、鄭人許を侵す。

凡師、有鐘鼓曰伐、聲其罪。
【読み】
凡師、鐘鼓有るを伐つと曰い、其の罪を聲[な]らす。

無曰侵、鐘鼓無聲。
【読み】
無きを侵すと曰い、鐘鼓聲無し。

輕曰襲。掩其不備。○輕、遣政反。
【読み】
輕きを襲うと曰う。其の備えざるを掩う。○輕は、遣政反。

秋、有蜚、爲災也。
【読み】
秋、蜚有るは、災いを爲せるなり。

凡物、不爲災、不書。
【読み】
凡そ物、災いを爲さざれば、書さず。

冬、十二月、城諸及防、書時也。
【読み】
冬、十二月、諸と防とに城くは、時なるを書すなり。

凡土功、龍見而畢務、戒事也。謂今九月、周十一月。龍星、角亢。晨見東方、三務始畢。戒民以土功事。○見、賢遍反。亢、若浪反。又音剛。
【読み】
凡そ土功、龍見えて務めを畢わるは、事を戒むるなり。今の九月は、周の十一月を謂う。龍星は、角亢。晨に東方に見え、三務始めて畢わる。民を戒むるに土功の事を以てす。○見は、賢遍反。亢は、若浪反。又音剛。

火見而致用、大火、心星。次角亢見者。致築作之物。
【読み】
火見えて用を致し、大火は、心星。角亢に次で見る者。築作の物を致す。

水昏正而栽、謂今十月。定星昏而中。於是樹板幹而興作。○栽、才代反。一音再。說文云、築牆長板。定、多佞反。
【読み】
水昏に正しくして栽し、今の十月を謂う。定星昏にして中す。是に於て板幹を樹てて興作す。○栽は、才代反。一に音再。說文に云う、築牆の長板、と。定は、多佞反。

日至而畢。日南至、微陽始動。故土功息。
【読み】
日至にして畢わる。日南至して、微陽始めて動く。故に土功息む。

樊皮叛王。樊皮、周大夫。樊、其采地。皮、名。
【読み】
樊皮[はんひ]王に叛く。樊皮は、周の大夫。樊は、其の采地。皮は、名。


〔經〕三十年、春、王正月。夏、次于成。無傳。將卑師少。故直言次。齊將降鄣。故設備。○將、子匠反。降、戶江反。
【読み】
〔經〕三十年、春、王の正月。夏、成に次[やど]る。傳無し。將卑く師少し。故に直ちに次ると言う。齊將に鄣を降さんとす。故に備えを設く。○將は、子匠反。降は、戶江反。

秋、七月、齊人降鄣。無傳。鄣、紀附庸國。東平無鹽縣東北有鄣城。小國孤危、不能自固。蓋齊遙以兵威脅使降附。
【読み】
秋、七月、齊人鄣を降す。傳無し。鄣は、紀の附庸の國。東平無鹽縣の東北に鄣城有り。小國孤危にして、自ら固くすること能わず。蓋し齊遙かに兵威を以て脅して降附せしむるならん。

八月、癸亥、葬紀叔姬。無傳。以賢錄也。無臣子。故不作謚。
【読み】
八月、癸亥[みずのと・い]、紀の叔姬を葬る。傳無し。賢を以て錄するなり。臣子無し。故に謚を作らず。

九月、庚午、朔、日有食之。鼓用牲于社。無傳。
【読み】
九月、庚午[かのえ・うま]、朔、日之を食する有り。鼓して牲を社に用ゆ。傳無し。

冬、公及齊侯遇于魯濟。濟水、歷齊・魯界。在齊界爲齊濟、在魯界爲魯濟。蓋魯地。○濟、子禮反。
【読み】
冬、公齊侯と魯濟に遇う。濟水は、齊・魯の界を歷。齊の界に在るを齊濟と爲し、魯の界に在るを魯濟と爲す。蓋し魯の地ならん。○濟は、子禮反。

齊人伐山戎。山戎、北狄。
【読み】
齊人山戎を伐つ。山戎は、北狄。

〔傳〕三十年、春、王命虢公討樊皮。夏、四月、丙辰、虢公入樊、執樊仲皮歸于京師。
【読み】
〔傳〕三十年、春、王虢公に命じて樊皮を討ぜしむ。夏、四月、丙辰[ひのえ・たつ]、虢公樊に入り、樊仲皮を執えて京師に歸[おく]る。

楚公子元歸自伐鄭、而處王宮。欲遂蠱文夫人。
【読み】
楚の公子元鄭を伐ちてより歸りて、王宮に處る。遂に文夫人を蠱せんと欲す。

鬭射師諫。則執而梏之。射師、鬭廉也。足曰桎、手曰梏。○射、食亦反。梏、古毒反。
【読み】
鬭射師諫む。則ち執えて之を梏す。射師は、鬭廉なり。足に桎と曰い、手に梏と曰う。○射は、食亦反。梏は、古毒反。

秋、申公鬭班殺子元。申、楚縣。楚僭號、縣尹皆稱公。
【読み】
秋、申公鬭班子元を殺す。申は、楚の縣。楚僭號して、縣尹皆公と稱す。

鬭穀於菟爲令尹、自毀其家、以紓楚國之難。鬭穀於菟、令尹子文也。毀、滅。紓、緩也。○穀、奴走反。楚人謂乳曰穀。於、音烏。菟、音徒。紓、音舒。難、乃旦反。
【読み】
鬭穀於菟[とうどうおと]令尹と爲り、自ら其の家を毀ちて、以て楚國の難を紓[ゆる]くす。鬭穀於菟は、令尹子文なり。毀は、滅ぼす。紓は、緩きなり。○穀は、奴走反。楚人乳を謂いて穀と曰う。於は、音烏。菟は、音徒。紓は、音舒。難は、乃旦反。

冬、遇于魯濟、謀山戎也。以其病燕故也。齊桓行霸。故欲爲燕謀難。燕國、今薊縣。○薊、音計。
【読み】
冬、魯濟に遇うは、山戎を謀るなり。其の燕を病ましむるを以ての故なり。齊桓霸を行う。故に燕の爲に難を謀らんと欲す。燕國は、今の薊[けい]縣。○薊は、音計。


〔經〕三十有一年、春、築臺于郎。無傳。刺奢。且非土功之時。
【読み】
〔經〕三十有一年、春、臺を郎に築く。傳無し。奢りを刺[そし]る。且つ土功の時に非ず。

夏、四月、薛伯卒。無傳。未同盟。
【読み】
夏、四月、薛伯卒す。傳無し。未だ同盟せず。

築臺于薛。無傳。薛、魯地。
【読み】
臺を薛に築く。傳無し。薛は、魯の地。

六月、齊侯來獻戎捷。傳例曰、諸侯不相遺俘。捷、獲也。獻、奉上之辭。齊侯以獻捷禮來。故書以示過。
【読み】
六月、齊侯來りて戎の捷を獻ず。傳例に曰く、諸侯は俘を相遺[おく]らず、と。捷は、獲なり。獻は、上に奉ずるの辭。齊侯捷を獻ずるの禮を以て來る。故に書して以て過を示す。

秋、築臺于秦。無傳。東平范縣西北有秦亭。
【読み】
秋、臺を秦に築く。傳無し。東平范縣の西北に秦亭有り。

冬、不雨。無傳。不書旱、不爲災。例在僖三年。
【読み】
冬、雨ふらず。傳無し。旱と書さざるは、災いを爲さざればなり。例は僖三年に在り。

〔傳〕三十一年、夏、六月、齊侯來獻戎捷、非禮也。
【読み】
〔傳〕三十一年、夏、六月、齊侯來りて戎の捷を獻ずるは、禮に非ざるなり。

凡諸侯有四夷之功、則獻于王。王以警于夷。以警懼夷狄。
【読み】
凡そ諸侯四夷の功有れば、則ち王に獻ず。王以て夷を警む。以て夷狄を警懼す。

中國則否。諸侯不相遺俘。雖夷狄俘、猶不以相遺。
【読み】
中國は則ち否らず。諸侯は俘を相遺[おく]らず。夷狄の俘と雖も、猶以て相遺らず。


〔經〕三十有二年、春、城小穀。小穀、齊邑。濟北穀城縣城中有管仲井。大都以名通者、則不繫國。
【読み】
〔經〕三十有二年、春、小穀に城く。小穀は、齊の邑。濟北穀城縣の城中に管仲井有り。大都の名を以て通ずる者は、則ち國に繫けず。

夏、宋公・齊侯遇于梁丘。齊善宋之請見。故進其班。梁丘、在高平昌邑縣西南。
【読み】
夏、宋公・齊侯梁丘に遇う。齊宋の見えんと請うを善す。故に其の班[ついで]を進む。梁丘は、高平昌邑縣の西南に在り。

秋、七月、癸巳、公子牙卒。牙、慶父同母弟、僖叔也。飮酖而死、不以罪告。故得書卒。書日者、公有疾、不責公不與小斂。○酖、音鴆。
【読み】
秋、七月、癸巳[みずのと・み]、公子牙卒す。牙は、慶父が同母弟、僖叔なり。酖を飮んで死して、罪を以て告げず。故に卒を書すことを得たり。日を書すは、公疾有れば、公の小斂に與らざるを責めざるなり。○酖は、音鴆。

八月、癸亥、公薨于路寢。路寢、正寢也。公薨、皆書其所、詳凶變。
【読み】
八月、癸亥[みずのと・い]、公路寢に薨ず。路寢は、正寢なり。公の薨ずる、皆其の所を書すは、凶變を詳らかにするなり。

冬、十月、己未、子般卒。子般、莊公大子。先君未葬。故不稱爵。不書殺、諱之也。○般、音班。殺、音弑。一音如字。
【読み】
冬、十月、己未[つちのと・ひつじ]、子般卒す。子般は、莊公の大子。先君未だ葬らず。故に爵を稱せず。殺を書さざるは、之を諱みてなり。○般は、音班。殺は、音弑。一に音字の如し。

公子慶父如齊。無傳。慶父旣弑子般、季友出奔。國人不與。故懼而適齊、欲以求援。時無君。假赴告之禮而行。
【読み】
公子慶父齊に如く。傳無し。慶父旣に子般を弑して、季友出奔す。國人與せず。故に懼れて齊に適き、以て援けを求めんと欲す。時に君無し。赴告の禮を假りて行くなり。

狄伐邢。無傳。邢國、在廣平襄國縣。
【読み】
狄邢を伐つ。傳無し。邢國は、廣平の襄國縣に在り。

〔傳〕三十二年、春、城小穀、爲管仲也。公感齊桓之德。故爲管仲城私邑。○爲、于僞反。下同。
【読み】
〔傳〕三十二年、春、小穀に城くは、管仲が爲なり。公齊桓の德に感ず。故に管仲が爲に私邑に城く。○爲は、于僞反。下も同じ。

齊侯爲楚伐鄭之故、請會于諸侯。楚伐鄭、在二十八年。謀爲鄭報楚。
【読み】
齊侯楚の鄭を伐つ爲の故に、會を諸侯に請う。楚鄭を伐つは、二十八年に在り。鄭の爲に楚に報いんことを謀る。

宋公請先見于齊侯。夏、遇于梁丘。○見、音現。又如字。
【読み】
宋公先ず齊侯に見えんと請う。夏、梁丘に遇う。○見は、音現。又字の如し。

秋、七月、有神降于莘。有神、聲以接人。莘、虢地。○莘、所巾反。
【読み】
秋、七月、神有り莘に降る。神有りとは、聲以て人に接わるなり。莘は、虢の地。○莘は、所巾反。

惠王問諸内史過曰、是何故也。内史過、周大夫。○過、古禾反。
【読み】
惠王諸を内史過に問いて曰く、是れ何の故ぞ、と。内史過は、周の大夫。○過は、古禾反。

對曰、國之將興、明神降之。監其德也。將亡、神又降之。觀其惡也。故有得神以興、亦有以亡。虞・夏・商・周皆有之。亦有神異。
【読み】
對えて曰く、國の將に興らんとするや、明神之に降る。其の德を監るなり。將に亡びんとするや、神又之に降る。其の惡を觀るなり。故に神を得て以て興る有り、亦以て亡ぶる有り。虞・夏・商・周皆之れ有り、と。亦神異有り。

王曰、若之何。對曰、以其物享焉。其至之日、亦其物也。享、祭也。若以甲・乙日至、祭先脾、玉用蒼、服上靑。以此類祭之。
【読み】
王曰く、之を若何せん、と。對えて曰く、其の物を以て享[まつ]れ。其の至るの日も、亦其の物なり、と。享は、祭るなり。若し甲・乙の日を以て至れば、祭るに脾を先にし、玉は蒼を用い、服は靑を上[たっと]ぶ。此の類を以て之を祭るなり。

王從之。内史過往。聞虢請命、聞虢請於神、求賜土田之命。
【読み】
王之に從う。内史過往く。虢命を請うと聞き、虢神に請いて、土田を賜うの命を求むると聞く。

反曰、虢必亡矣。虐而聽於神。
【読み】
反りて曰く、虢は必ず亡びん。虐にして神に聽く、と。

神居莘六月。虢公使祝應・宗區・史嚚享焉。神賜之土田。祝、大祝。宗、宗人。史、大史。應・區・嚚、皆名。○區、音驅。嚚、五巾反。
【読み】
神莘に居ること六月。虢公祝應・宗區・史嚚[じぎん]をして享らしむ。神之に土田を賜う。祝は、大祝。宗は、宗人。史は、大史。應・區・嚚は、皆名。○區は、音驅。嚚は、五巾反。

史嚚曰、虢其亡乎。吾聞之、國將興、聽於民。政順民心。
【読み】
史嚚曰く、虢は其れ亡びん。吾れ之を聞く、國將に興らんとするや、民に聽く。政民心に順う。

將亡、聽於神。求福於神。
【読み】
將に亡びんとするや、神に聽く、と。福を神に求む。

神聰明正直而壹者也。依人而行。唯德是與。
【読み】
神は聰明正直にして壹なる者なり。人に依りて行う。唯德のみ是れ與す。

虢多涼德。其何土之能得。涼、薄也。爲僖二年、晉滅下陽傳。
【読み】
虢涼德多し。其れ何ぞ土を之れ能く得ん、と。涼は、薄きなり。僖二年、晉下陽を滅ぼす爲の傳なり。

初、公築臺臨黨氏、黨氏、魯大夫。築臺不書、不告廟。○黨、音掌。
【読み】
初め、公臺を築きて黨氏[しょうし]に臨み、黨氏は、魯の大夫。臺を築くこと書さざるは、廟に告げざればなり。○黨は、音掌。

見孟任、從之。閟。孟任、黨氏女。閟、不從公。○閟、音祕。
【読み】
孟任を見て、之に從わんとす。閟[と]ず。孟任は、黨氏の女。閟[ひ]は、公に從わざるなり。○閟は、音祕。

而以夫人言許之。許以爲夫人。
【読み】
而して夫人の言を以て之を許す。許すに夫人と爲すを以てす。

割臂盟公。生子般焉。
【読み】
臂を割いて公に盟う。子般を生む。

雩、講于梁氏。女公子觀之。雩、祭天也。講、肄也。梁氏、魯大夫。女公子、子般妹。○肄、音四。又以二反。
【読み】
雩[う]するとき、梁氏に講[なら]う。女公子之を觀る。雩は、天を祭るなり。講は、肄[なら]うなり。梁氏は、魯の大夫。女公子は、子般の妹。○肄は、音四。又以二反。

圉人犖自牆外與之戲。圉人、掌養馬者。以慢言戲之。○犖、音洛。
【読み】
圉人[ぎょじん]犖[らく]牆外より之と戲る。圉人は、馬を養うを掌る者。慢言を以て之に戲る。○犖は、音洛。

子般怒、使鞭之。公曰、不如殺之。是不可鞭。
【読み】
子般怒り、之を鞭たしむ。公曰く、之を殺すに如かず。是れ鞭つ可からず、と。

犖有力焉。能投蓋于稷門。蓋、覆也。稷門、魯南城門。走而自投、接其屋之桷、反覆門上。
【読み】
犖力有り。能く投じて稷門に蓋う。蓋は、覆うなり。稷門は、魯の南城門。走りて自ら投じて、其の屋の桷に接して、門上に反覆す。

公疾。問後於叔牙。對曰、慶父材。蓋欲進其同母兄。
【読み】
公疾む。後を叔牙に問う。對えて曰く、慶父材あり、と。蓋し其の同母兄を進めんと欲す。

問於季友。對曰、臣以死奉般。季友、莊公母弟。故欲立般。
【読み】
季友に問う。對えて曰く、臣死を以て般を奉ぜん、と。季友は、莊公の母弟。故に般を立てんと欲す。

公曰、郷者牙曰慶父材。成季使以君命命僖叔、待于鍼巫氏、成季、季友也。鍼巫氏、魯大夫。○郷、許亮反。鍼、其廉反。
【読み】
公曰く、郷[さき]に牙慶父材ありと曰えり、と。成季君命を以て僖叔に命じて、鍼巫氏[けんふし]を待たしめ、成季は、季友なり。鍼巫氏は、魯の大夫。○郷は、許亮反。鍼は、其廉反。

使鍼季酖之。酖、鳥名。其羽有毒、以畫酒飮之、則死。
【読み】
鍼季をして之に酖せしむ。酖は、鳥の名。其の羽に毒有り、以て酒を畫して之を飮めば、則ち死す。

曰、飮此則有後於魯國。不然、死且無後。飮之。歸及逵泉而卒。立叔孫氏。逵泉、魯地。不以罪誅。故得立後世其祿。
【読み】
曰く、此を飮まば則ち魯國に後有らん。然らずんば、死して且[まさ]に後無からんとす、と。之を飮む。歸りて逵泉に及びて卒す。叔孫氏を立つ。逵泉は、魯の地。罪を以て誅せず。故に後を立て其の祿を世々にすることを得たり。

八月、癸亥、公薨于路寢。子般卽位。次于黨氏。卽喪位。次、舍也。
【読み】
八月、癸亥、公路寢に薨ず。子般位に卽く。黨氏に次[やど]る。喪位に卽く。次は、舍なり。

冬、十月、己未、共仲使圉人犖賊子般于黨氏。共仲、慶父。○共、音恭。
【読み】
冬、十月、己未、共仲圉人犖をして子般を黨氏に賊せしむ。共仲は、慶父。○共は、音恭。

成季奔陳。出奔不書、國亂、史失之。
【読み】
成季陳に奔る。出奔を書さざるは、國亂れて、史之を失うなり。

立閔公。閔公、莊公庶子。於是年八歲。
【読み】
閔公を立つ。閔公は、莊公の庶子。是に於て年八歲。



經元年。遜于。○今本孫。采地。七代反。且別。彼列反。之比。必利反。
傳。父殺。音試。一音如字。○今本弑。而復。扶又反。去姜。起呂反。
經二年。
傳。好會。呼報反。
經三年。以酅。本又作攜。于滑。乎八于八二反。
傳。重明。直用反。在濼。一音書約反。
經四年。以見。賢遍反。越竟。音境。本又作境。
傳。僻陋。匹亦反。僭號。子念反。徵應。應對之應。梁溠。字林、壯加反。入員。或作鄖。○今本亦鄖。下齊。遐嫁反。
經五年。犂來。力兮反。昌慮。如字。又力於反。
傳。
經六年。
傳。宥之。音又。蕃滋。音煩。祁侯。巨支反。字林、上尸反。噬齊。市制反。下粗兮反。齧。五結反。無復。扶又反。下文同。
經七年。不匿。女力反。漂殺。一音匹遙反。
傳。偕。音皆。
經八年。
傳。夏書。戶雅反。後放此。皐陶。音遙。樂安。音洛。而啼。田兮反。屨。九具反。之紛。敷文反。于牀。士良反。子糾。居黝反。雍廩。力錦反。
經九年。繒縣。才陵反。岐流。其宜反。又巨移反。竭涸。戶各反。浚。蘇俊反。洙。音殊。泗。音四。
傳。傳乘。直專反。又丁戀反。讎也。市由反。射桓公。食亦反。而稅。本又作說。同。解。古買反。夷吾縛。扶略反。舊扶臥反。治於。直吏反。注同。
經十年。背蔇。音佩。傳同。滅譚。徒南反。
傳。何閒。閒厠之閒。未徧。音遍。注同。犠牲。許宜反。之屬。音蜀。其轍。直列反。登軾。音式。有伏。如字。舊扶又反。旗。音其。靡。音美。怖。普布反。遽也。其據反。雩門。音于。
經十一年。
傳。喪其。息浪反。得儁。本或作俊。之比。必利反。退復。扶又反。狡壯。交卯反。下側亮反。之難。乃旦反。京師敗。本或作京師敗績者非。桀紂。直久反。言懼而名禮。絕句。或以名字絕句者非。公子御。本或作禦。
經十二年。不警。居領反。
傳。批而。字林、父迷父節二反。奔亳。步各反。犀革。音西。裹之。音果。比及。必利反。
經十三年。
傳。通好。呼報反。
經十四年。甄城。一音旃。又舉然反。或作鄄。○今本亦鄄。
傳。鄭子。子儀。内蛇。市奢反。有妖。於驕反。炎以。音豔。○今本燄。洛誥。古報反。燄燄。音豔。無裏。音里。憾焉。戶暗反。乃縊。一賜反。爲莘。所巾反。譽。音餘。又如字。堵敖。五羔反。之易。以豉反。注同。之燎。力召反。又力弔反。郷邇。許亮反。撲滅。普卜反。般庚。步于反。本又作盤。○今本亦盤。易長。丁丈反。
經十五年。
傳。諸侯長。丁丈反。爲宋。于僞反。閒之。閒厠之閒。
經十六年。介於。音界。而爲三恪。苦各反。本或作爲三恪之客。○今本亦同。緱氏。一音苦侯反。
傳。宋故也。本或作爲宋故。公子閼。此閼若非字誤、則子當爲孫。斷足。丁管反。公父。音甫。王如字。共叔。音恭。遂幷。如字。王必政反。采地。七代反。後放此。之難。乃旦反。復自。扶又反。
經十七年。始伯。音霸。又如字。本又作霸。○今本又霸。翫而。五亂反。而盡。津忍反。遁逃。徒遜反。
傳。工婁。力侯反。饗齊。本又作享。
經十八年。■(上が或で下が虫)本又作蜮。短弧。本又作斷。同。丁管反。弧又作狐。音胡。射人。食亦反。
傳。饗醴。音禮。之宥。音又。是借。子夜反。爲王。于僞反。少子。詩照反。以畔。本或作叛。俗字。○今本亦叛。那處。或作。同。編縣。必緜反。一音步典反。
經十九年。媵陳。以證反。又繩證反。送也。出竟。音境。之好。呼報反。
傳。拳。求圓反。大閽。音昬。守門人也。嬴。音盈。字從女。夕室。朝夕之夕。校尉。戶敎反。字從木。王姚。羊消反。嬖于。必計反。子頹。戶回反。之圃。必古反。又音布。爲囿。音又。徐于目反。苑也。於阮反。近於。附近之近。而收。式周反。
經二十年。
傳。爲伐。于僞反。下文同。徧舞。音遍。殃咎。於良反。下其九反。去盛。起呂反。饌。仕眷反。
經二十一年。祔姑。音附。
傳。復興。扶又反。效尤。戶敎反。徧舞。音遍。鞶。一音蒲官反。紳帶也。鑑。工暫反。鏡也。始惡。或如字。王使。所吏反。
經二十二年。 盪。音蕩。本又作蕩。滌。徒歷反。御寇。本亦作禦。惡其。烏路反。不見。賢遍反。又如字。
傳。顓孫。音專。弛於。失氏反。負擔。丁暫反。去離。力智反。官謗。布浪反。翹翹。祁堯反。和鳴。如字。又戶臥反。注同。將將。七羊反。本又作鏘。○今本亦鏘。竝于正卿。本或作竝爲誤。陳侘。大多反。見陳侯。如字。又賢遍反。大史。音泰。使筮。上制反。蓍。音尸。之否。備矣反。注同。爻辭。戶交反。乾天。其然反。陳摯。音至。本又作贄。同。○今本亦贄。大嶽。音泰。下音岳。楚復。扶又反。猶豫。音預。本亦作預。其應。應對之應。縣驗。音玄。
經二十三年。爲祭公。于僞反。宮楹。音盈。卷縣。字林、丘權反。韋昭、丘云反。說文、丘粉反。
傳。長幼。丁丈反。閒之。閒厠之閒。
經二十四年。刻。音克。桷。音角。椽。直專反。覿。徒歷反。見也。以見。賢遍反。下同。奢夸。苦瓜反。
傳。御孫。本亦作禦。侈。昌紙反。又尸氏反。男贄。眞二反。別貴賤。彼列反。虔。音乾。
經二十五年。嘉好。呼報反。傳同。
傳。相魯。息亮反。下同。正月。建巳之月。夏之。戶雅反。城聚。才喩反。
經二十六年。
傳。牘。徒木反。究。音救。不復。扶又反。申解。居蟹反。
經二十七年。自爲。于僞反。黜。勑律反。濮。音卜。
傳。力强。其丈反。饑。居疑反。又音機。
經二十八年。瑣。素果反。糴。徒歷反。
傳。烝。之承反。驪。力知反。卓。勑角反。閨。音圭。闥。吐達反。關塞。素代反。之疆。居良反。下同。場。音亦。故復。扶又反。墾。苦很反。蠱。音古。鬭御。本亦作禦。鬭梧。音吾。旆。蒲貝反。長尋。直亮反。旐。音兆。純。如字。逵。求龜反。遁。徒困反。諜。音牒。幕。音莫。諜閒。閒厠之閒。
經二十九年。備難。乃旦反。皆重。直用反。
傳。嚮入。本或作向。同。○今本亦向。
經三十年。鄣。音章。下同。
傳。射師。一音食夜反。桎。之實反。楚僭。子念反。以紓。一音直汝反。欲爲。于僞反。
經三十一年。刺奢。七賜反。戎捷。在妾反。相遺。唯季反。傳同。俘。音孚。
傳。警。音景。戒懼也。
經三十二年。不與。音預。斂。力豔反。
傳。監其。本又作鑑。古暫反。脾。婢支反。大祝。音泰。下同。涼德。音良。犖。一音力角反。反覆。芳服反。畫酒。音獲。閔公。亡謹反。

春秋左氏傳校本第四

閔公 起元年盡二年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

閔公 名啓方。莊公之子。母叔姜。史記云、名開。謚法、在國遭難曰閔。
【読み】
閔公 名は啓方。莊公の子。母は叔姜。史記に云う、名は開、と。謚法に、國に在りて難に遭うを閔と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王正月、齊人救邢。夏、六月、辛酉、葬我君莊公。秋、八月、公及齊侯盟于落姑。落姑、齊地。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、齊人邢を救う。夏、六月、辛酉[かのと・とり]、我が君莊公を葬る。秋、八月、公齊侯と落姑に盟う。落姑は、齊の地。

季子來歸。季子、公子友之字。季子忠於社稷、爲國人所思。故賢而字之。齊侯許納。故曰歸。
【読み】
季子來歸す。季子は、公子友の字。季子社稷に忠にして、國人の爲に思わる。故に賢として之に字す。齊侯納るることを許す。故に歸と曰う。

冬、齊仲孫來。仲孫、齊大夫。以事出疆、因來省難。非齊侯命。故不稱使也。還、使齊侯務寧魯亂。故嘉而字之。來者事實、省難其志也。故經但書仲孫之來、而傳尋仲孫之志。
【読み】
冬、齊の仲孫來る。仲孫は、齊の大夫。事を以て疆を出でて、因りて來りて難を省る。齊侯の命に非ず。故に使と稱せず。還りて、齊侯をして務めて魯の亂を寧んぜしむ。故に嘉して之に字す。來るは事實、難を省るは其の志なり。故に經には但仲孫の來るを書して、傳には仲孫の志を尋ぬ。

〔傳〕元年、春、不書卽位、亂故也。國亂、不得成禮。
【読み】
〔傳〕元年、春、卽位を書さざるは、亂の故なり。國亂れて、禮を成すことを得ず。

狄人伐邢。狄伐邢、在往年冬。
【読み】
狄人邢を伐つ。狄邢を伐つは、往年の冬に在り。

管敬仲言於齊侯曰、戎狄豺狼。不可厭也。敬仲、管仲吾。○豺、士皆反。厭、於鹽反。
【読み】
管敬仲齊侯に言いて曰く、戎狄は豺狼なり。厭かしむ可からざるなり。敬仲は、管仲吾。○豺は、士皆反。厭は、於鹽反。

諸夏親暱。不可弃也。諸夏、中國也。暱、近也。
【読み】
諸夏は親暱[しんじつ]なり。弃[す]つ可からざるなり。諸夏は、中國なり。暱は、近きなり。

宴安酖毒。不可懷也。以宴安比之酖毒。
【読み】
宴安は酖毒なり。懷う可からざるなり。宴安を以て之を酖毒に比す。

詩云、豈不懷歸。畏此簡書。詩、小雅也。文王爲西伯、勞來諸侯之詩。
【読み】
詩に云う、豈歸ることを懷わざらんや。此の簡書を畏る、と。詩は、小雅なり。文王西伯と爲り、諸侯を勞來するの詩なり。

簡書、同惡相恤之謂也。同恤所惡。
【読み】
簡書は、同惡相恤うるの謂なり。同じく惡む所を恤う。

請救邢以從簡書。齊人救邢。
【読み】
請う、邢を救いて以て簡書に從わん、と。齊人邢を救う。

夏、六月、葬莊公。亂故、是以緩。十一月乃葬。
【読み】
夏、六月、莊公を葬る。亂の故に、是を以て緩[おく]るなり。十一月にして乃ち葬る。

秋、八月、公及齊侯盟于落姑、請復季友也。閔公初立、國家多難、以季子忠賢故、請霸主而復之。
【読み】
秋、八月、公齊侯と落姑に盟うは、季友を復さんことを請うなり。閔公初めて立ち、國家多難、季子の忠賢を以ての故に、霸主に請うて之を復さんとす。

齊侯許之、使召諸陳。公次于郎以待之。非師旅之事。故不書次。
【読み】
齊侯之を許して、諸を陳に召さしむ。公郎に次[やど]りて以て之を待つ。師旅の事に非ず。故に次るを書さず。

季子來歸、嘉之也。
【読み】
季子來歸すとは、之を嘉するなり。

冬、齊仲孫湫來省難。湫、仲孫名。○湫、子小反。
【読み】
冬、齊の仲孫湫[ちゅうそんしょう]來りて難を省る。湫は、仲孫の名。○湫は、子小反。

書曰仲孫、亦嘉之也。
【読み】
書して仲孫と曰うも、亦之を嘉するなり。

仲孫歸。曰、不去慶父、魯難未已。時慶父亦還魯。○去、起呂反。下同。
【読み】
仲孫歸る。曰く、慶父を去らずんば、魯の難已まじ、と。時に慶父も亦魯に還る。○去は、起呂反。下も同じ。

公曰、若之何而去之。對曰、難不已、將自斃。斃、踣也。
【読み】
公曰く、之を若何にして之を去らん、と。對えて曰く、難已まずんば、將に自ら斃れんとす。斃は、踣[たお]るなり。

君其待之。
【読み】
君其れ之を待て、と。

公曰、魯可取乎。對曰、不可。猶秉周禮。周禮、所以本也。臣聞之、國將亡、本必先顚、而後枝葉從之。魯不弃周禮。未可動也。君其務寧魯難而親之。親有禮、因重固、能重能固、則當就成之。
【読み】
公曰く、魯取る可きか、と。對えて曰く、不可なり。猶周の禮を秉れり。周の禮は、本たる所以なり。臣之を聞く、國の將に亡びんとするや、本必ず先ず顚[くつがえ]りて、而して後に枝葉之に從う、と。魯周の禮を弃てず。動かす可からざるなり。君其れ務めて魯の難を寧んじて之を親しめ。有禮を親しみ、重固に因り、能く重く能く固くば、則ち當に就いて之を成すべし。

閒攜貳、離而相疑者、則當因而閒之。
【読み】
攜貳[けいじ]を閒[へだ]て、離れて相疑う者は、則ち當に因りて之を閒つべし。

覆昏亂、覆、敗也。
【読み】
昏亂を覆[やぶ]るは、覆は、敗るなり。

霸王之器也。霸王所用。故以器爲喩。○王、于況反。
【読み】
霸王の器なり、と。霸王用ゆる所。故に器を以て喩えとす。○王は、于況反。

晉侯作二軍。晉本一軍。見莊十六年。
【読み】
晉侯二軍を作る。晉は本一軍。莊十六年に見ゆ。

公將上軍、大子申生將下軍、趙夙御戎、畢萬爲右、爲公御・右也。夙、趙衰兄。畢萬、魏犫祖父。○將、子匠反。衰、初危反。犫、尺由反。
【読み】
公上軍に將となり、大子申生下軍に將となり、趙夙戎に御となり、畢萬右と爲り、公の御・右と爲るなり。夙は、趙衰の兄。畢萬は、魏犫[ぎしゅう]の祖父。○將は、子匠反。衰は、初危反。犫は、尺由反。

以滅耿、滅霍、滅魏。平陽皮氏縣東南有耿郷。永安縣東北有霍大山。三國皆姬姓。
【読み】
以て耿[こう]を滅ぼし、霍[かく]を滅ぼし、魏を滅ぼす。平陽皮氏縣の東南に耿郷有り。永安縣の東北に霍大山有り。三國は皆姬姓。

還。爲大子城曲沃。賜趙夙耿、賜畢萬魏、以爲大夫。
【読み】
還る。大子の爲に曲沃に城く。趙夙に耿を賜い、畢萬に魏を賜い、以て大夫とす。

士蔿曰、大子不得立矣。分之都城、而位以卿、先爲之極。又焉得立。位以卿、謂將下軍。
【読み】
士蔿[しい]曰く、大子は立つことを得ざらん。之に都城を分かちて、位するに卿を以てして、先ず之が極を爲せり。又焉んぞ立つことを得ん。位するに卿を以てすとは、下軍に將とするを謂う。

不如逃之。無使罪至、爲吳大伯、不亦可乎。大伯、周大王之適子。知其父欲立季歷。故讓位而適吳。
【読み】
之を逃るるに如かず。罪をして至らしむること無く、吳の大伯爲らんこと、亦可からずや。大伯は、周の大王の適子。其の父季歷を立てんことを欲するを知る。故に位を讓りて吳に適く。

猶有令名。與其及也。言雖去猶有令名。勝於留而及禍。
【読み】
猶令名有らん。其の及ばんに與[いず]れぞ。言うこころは、去ると雖も猶令名有らん。留まりて禍に及ぶに勝れり。

且諺曰、心苟無瑕、何恤乎無家。天若祚大子、其無晉乎。爲晉殺申生傳。
【読み】
且諺に曰く、心苟も瑕[きず]無くば、何ぞ家無きを恤えん、と。天若し大子に祚[さいわい]せば、其れ晉無からんや、と。晉申生を殺す爲の傳なり。

卜偃曰、畢萬之後必大。卜偃、晉掌卜大夫。
【読み】
卜偃[ぼくえん]曰く、畢萬の後必ず大ならん。卜偃は、晉の卜を掌る大夫。

萬、盈數也。魏、大名也。以是始賞、天啓之矣。天子曰兆民、諸侯曰萬民。今名之大、以從盈數。其必有衆。以魏從萬、有衆象。
【読み】
萬は、盈數なり。魏は、大名なり。是を以て始めて賞せらるるは、天の之を啓くなり。天子に兆民と曰い、諸侯に萬民と曰う。今名の大、以て盈數に從う。其れ必ず衆を有たん、と。魏を以て萬に從うは、衆を有つの象なり。

初、畢萬筮仕於晉、遇屯 震下坎上屯。
【読み】
初め、畢萬晉に仕えんことを筮して、屯[ちゅん]震下坎上は屯。

之比坤下坎上比。屯初九變而爲比。
【読み】
に之くに遇えり。坤下坎上は比。屯の初九變じて比と爲る。

辛廖占之。曰、吉。辛廖、晉大夫。○廖、力彫反。
【読み】
辛廖[しんりょう]之を占う。曰く、吉なり。辛廖は、晉の大夫。○廖は、力彫反。

屯固比入。吉孰大焉。其必蕃昌。屯、險難。所以爲堅固。比、親密。所以得入。
【読み】
屯固く比は入る。吉孰れか焉より大ならん。其れ必ず蕃昌せん。屯は、險難なり。堅固と爲る所以なり。比は、親密なり。入るを得る所以なり。

震爲土、震變爲坤。
【読み】
震土と爲り、震變じて坤と爲る。

車從馬、震爲車、坤爲馬。
【読み】
車馬に從い、震を車と爲し、坤を馬と爲す。

足居之、震爲足。
【読み】
足之を居き、震を足と爲す。

兄長之、震爲長男。○長、丁丈反。
【読み】
兄之に長となり、震を長男と爲す。○長は、丁丈反。

母覆之、坤爲母。
【読み】
母之を覆い、坤を母と爲す。

衆歸之。坤爲衆。
【読み】
衆之に歸す。坤を衆と爲す。

六體不易、初一爻變有此六義、不可易也。
【読み】
六體易わらず、初めの一爻變じて此の六義有り、易う可からず。

合而能固、安而能殺、公侯之卦也。比、合。屯、固。坤、安。震、殺。故曰公侯之卦。
【読み】
合いて能く固く、安くして能く殺すは、公侯の卦なり。比は、合う。屯は、固し。坤は、安し。震は、殺す。故に公侯の卦と曰う。

公侯之子孫。必復其始。萬、畢公高之後。傳爲魏之子孫衆多張本。
【読み】
公侯の子孫なり。必ず其の始めに復らん、と。萬は、畢公高の後なり。傳、魏の子孫の衆多なる爲の張本なり。
*注の「萬、畢」について、頭注に「萬畢或作畢萬。今從足利本」とある。


〔經〕二年、春、王正月、齊人遷陽。無傳。陽、國名。蓋齊人偪徙之。
【読み】
〔經〕二年、春、王の正月、齊人陽を遷す。傳無し。陽は、國の名。蓋し齊人偪りて之を徙[うつ]すならん。

夏、五月、乙酉、吉禘于莊公。三年喪畢、致新死者之主於廟、廟之遠主、當遷入祧。因是大祭、以審昭穆。謂之禘。莊公喪制未闋、時別立廟、廟成而吉祭、又不於大廟。故詳書以示譏。○祧、他彫反。昭、上饒反。闋、苦穴反。
【読み】
夏、五月、乙酉[きのと・とり]、莊公に吉禘[きってい]す。三年の喪畢り、新たに死する者の主を廟に致し、廟の遠き主は、當に遷して祧[ちょう]に入るべし。是に因りて大祭して、以て昭穆を審らかにす。之を禘と謂う。莊公の喪制未だ闋[おわ]らず、時に別に廟を立て、廟成りて吉祭し、又大廟に於てせず。故に詳らかに書して以て譏りを示す。○祧は、他彫反。昭は、上饒反。闋[けつ]は、苦穴反。

秋、八月、辛丑、公薨。實弑書薨、又不地者、皆史策諱之。
【読み】
秋、八月、辛丑[かのと・うし]、公薨ず。實は弑して薨ずと書し、又地いわざるは、皆史策之を諱みたるなり。

九月、夫人姜氏孫于邾。哀姜外淫。故孫稱姜氏。○孫、音遜。
【読み】
九月、夫人姜氏邾[ちゅ]に孫[のが]る。哀姜外淫す。故に孫るに姜氏と稱す。○孫は、音遜。

公子慶父出奔莒。弑閔公故。
【読み】
公子慶父出でて莒に奔る。閔公を弑する故なり。

冬、齊高子來盟。無傳。蓋高傒也。齊侯使來平魯亂。僖公新立。因遂結盟。故不稱使也。魯人貴之。故不書名。子、男子之美稱。○美稱、尺證反。
【読み】
冬、齊の高子來り盟う。傳無し。蓋し高傒ならん。齊侯來りて魯の亂を平らげしむ。僖公新たに立つ。因りて遂に盟を結ぶ。故に使と稱せざるなり。魯人之を貴ぶ。故に名を書さず。子は、男子の美稱。○美稱は、尺證反。

十有二月、狄入衛。書入、不能有其地。例在襄十三年。
【読み】
十有二月、狄衛に入る。入ると書すは、其の地を有つこと能わざるなり。例は襄十三年に在り。

鄭弃其師。高克見惡、久不得還。師潰而克奔陳。故克狀其事以告魯也。
【読み】
鄭其の師を弃[す]つ。高克惡まれて、久しく還ることを得ず。師潰[つい]えて克陳に奔る。故に克其の事を狀して以て魯に告ぐるなり。

〔傳〕二年、春、虢公敗犬戎于渭汭。犬戎、西戎別在中國者。渭水、出隴西、東入河。水之隈曲曰汭。○汭、如銳反。隈、烏囘反。
【読み】
〔傳〕二年、春、虢公犬戎を渭汭[いぜい]に敗る。犬戎は、西戎の別に中國に在る者。渭水は、隴西に出でて、東して河に入る。水の隈曲を汭と曰う。○汭は、如銳反。隈は、烏囘反。

舟之僑曰、無德而祿、殃也。殃將至矣。遂奔晉。舟之僑、虢大夫。
【読み】
舟之僑曰く、德無くして祿あるは、殃[わざわい]なり。殃將に至らんとす、と。遂に晉に奔る。舟之僑は、虢の大夫。

夏、吉禘于莊公。速也。
【読み】
夏、莊公に吉禘す。速きなり。

初、公傅奪卜齮田。公不禁。卜齮、魯大夫也。公卽位。年八歲、知愛其傅、而遂成其意、以奪齮田。齮忿其傅、幷及公。故慶父因之。○齮、魚綺反。
【読み】
初め、公の傅卜齮[ぼくき]の田を奪う。公禁ぜず。卜齮は、魯の大夫なり。公位に卽く。年八歲にして、其の傅を愛することを知りて、遂に其の意を成さしめて、以て齮の田を奪う。齮其の傅を忿り、幷せて公に及ぶ。故に慶父之に因る。○齮は、魚綺反。

秋、八月、辛丑、共仲使卜齮賊公于武闈。宮中小門、謂之闈。○共、音恭。
【読み】
秋、八月、辛丑、共仲卜齮をして公を武闈[ぶい]に賊せしむ。宮中の小門、之を闈と謂う。○共は、音恭。

成季以僖公適邾。僖公、閔公庶兄。成風之子。
【読み】
成季僖公を以[い]て邾に適く。僖公は、閔公の庶兄。成風の子。

共仲奔莒。乃入、立之。以賂求共仲于莒。莒人歸之。及密、使公子魚請。密、魯地。瑯邪費縣北有密如亭。公子魚、奚斯也。
【読み】
共仲莒に奔る。乃ち入りて、之を立つ。賂を以て共仲を莒に求む。莒人之を歸す。密に及ぶとき、公子魚をして請わしむ。密は、魯の地。瑯邪費縣の北に密如亭有り。公子魚は、奚斯なり。

不許。哭而往。共仲曰、奚斯之聲也。乃縊。慶父之罪雖重、季子推親親之恩、欲同之叔牙、存孟氏之族。故略其罪不書殺、又不書卒。
【読み】
許さず。哭して往く。共仲曰く、奚斯の聲なり、と。乃ち縊る。慶父の罪重しと雖も、季子親親の恩を推して、之を叔牙に同じくして、孟氏の族を存せんと欲す。故に其の罪を略して殺を書さず、又卒を書さず。

閔公、哀姜之娣叔姜之子也。故齊人立之。共仲通於哀姜。哀姜欲立之。閔公之死也、哀姜與知之。故孫于邾。齊人取而殺之于夷、以其尸歸。爲僖元年、齊人殺哀姜傳。夷、魯地。○與、音預。孫、音遜。
【読み】
閔公は、哀姜の娣の叔姜の子なり。故に齊人之を立つ。共仲哀姜に通ず。哀姜之を立てんことを欲す。閔公の死するや、哀姜之を與り知れり。故に邾に孫る。齊人取[とら]えて之を夷に殺し、其の尸を以て歸る。僖元年、齊人哀姜を殺す爲の傳なり。夷は、魯の地。○與は、音預。孫は、音遜。

僖公請而葬之。哀姜之罪已重。而僖公請其喪還者、外欲固齊以居厚、内存母子不絕之義、爲國家之大計。
【読み】
僖公請いて之を葬れり。哀姜の罪已[はなは]だ重し。而るに僖公其の喪を請いて還すは、外齊を固くして以て厚に居り、内母子不絕の義を存して、國家の大計を爲さんことを欲してなり。

成季之將生也、桓公使卜楚丘之父卜之。卜楚丘、魯掌卜大夫。
【読み】
成季の將に生まれんとするや、桓公卜楚丘の父をして之を卜せしむ。卜楚丘は、魯の卜を掌る大夫。

曰、男也。其名曰友。在公之右。在右、言用事。
【読み】
曰く、男なり。其の名を友と曰わん。公の右に在り。右に在るは、事を用ゆるを言う。

閒于兩社、爲公室輔。兩社、周社・亳社。兩社之閒、朝廷執政所在。
【読み】
兩社に閒[はさ]まり、公室の輔と爲らん。兩社は、周社・亳社。兩社の閒は、朝廷執政の在る所。

季氏亡、則魯不昌。又筮之。遇大有 乾下離上大有。
【読み】
季氏亡びば、則ち魯昌えず、と。又之を筮す。大有 乾下離上は大有。

之乾乾下乾上乾。大有六五變而爲乾。
【読み】
に之くに遇えり。乾下乾上は乾。大有の六五變じて乾と爲る。

曰、同復于父、敬如君所。筮者之辭也。乾爲君父。離變爲乾。故曰同復于父。見敬與君同。
【読み】
曰く、同じくして父に復り、敬せらること君所の如けん、と。筮者の辭なり。乾を君父と爲す。離變じて乾と爲る。故に同じくして父に復ると曰う。敬せらること君と同じ。

及生、有文在其手曰友。遂以命之。遂以爲名。
【読み】
生まるるに及んで、文の其の手に在る有り友と曰う。遂に以て之に命ぜり。遂に以て名と爲す。

冬、十二月、狄人伐衛。衛懿公好鶴、鶴有乘軒者。軒、大夫車。○好、呼報反。軒、許言反。
【読み】
冬、十二月、狄人衛を伐つ。衛の懿公鶴を好み、鶴軒に乘る者有り。軒は、大夫の車。○好は、呼報反。軒は、許言反。

將戰。國人受甲者皆曰、使鶴。鶴實有祿位。余焉能戰。公與石祁子玦、與甯莊子矢、使守。莊子、甯速也。玦、玉玦。○玦、古穴反。守、手又反。
【読み】
將に戰わんとす。國人の甲を受くる者皆曰う、鶴を使え。鶴實に祿位有り。余焉ぞ能く戰わん、と。公石祁子に玦[けつ]を與え、甯莊子[ねいそうし]に矢を與えて、守らしむ。莊子は、甯速なり。玦は、玉玦。○玦は、古穴反。守は、手又反。

曰、以此贊國、擇利而爲之。贊、助也。玦、示以當決斷、矢、示以禦難。
【読み】
曰く、此を以て國を贊け、利を擇びて之を爲せ、と。贊は、助くなり。玦は、示すに當に決斷すべきを以てし、矢は、示すに難を禦ぐを以てす。

與夫人繡衣、曰、聽於二子。取其文章順序。
【読み】
夫人に繡衣を與えて、曰く、二子に聽け、と。其の文章の順序に取る。

渠孔御戎、子伯爲右、黃夷前驅、孔嬰齊殿、傳言衛侯失民有素、雖臨事而戒、猶無所及。○殿、丁練反。
【読み】
渠孔戎に御となり、子伯右と爲り、黃夷前驅し、孔嬰齊殿となり、傳、衛侯民を失うこと素有り、事に臨みて戒むと雖も、猶及ぶ所無きを言う。○殿は、丁練反。

及狄人戰于熒澤。衛師敗績。遂滅衛。此熒澤、當在河北。君死國散經不書滅者、狄不能赴、衛之君臣皆盡無復文告、齊桓爲之告諸侯、言狄已去、言衛之存。故但以入爲文。○熒、戶扃反。
【読み】
狄人と熒澤[けいたく]に戰う。衛の師敗績す。遂に衛を滅ぼす。此の熒澤は、當に河北に在るべし。君死し國散じて經滅を書さざるは、狄赴[つ]ぐること能わず、衛の君臣皆盡きて復文告無く、齊桓之が爲に諸侯に告げて、狄已に去るを言い、衛の存するを言う。故に但入るを以て文と爲すなり。○熒は、戶扃反。

衛侯不去其旗。是以甚敗。
【読み】
衛侯其の旗を去[す]てず。是を以て甚だ敗れたり。

狄人囚史華龍滑與禮孔、以逐衛人。二人曰、我大史也。實掌其祭。不先、國不可得也。夷狄畏鬼。故恐言、當先白神。○去、起呂反。華、胡化反。
【読み】
狄人史の華龍滑と禮孔とを囚えて、以て衛人を逐う。二人曰く、我は大史なり。實に其の祭を掌れり。先だたずんば、國得可からず、と。夷狄鬼を畏る。故に恐[おど]して言う、當に先ず神に白[もう]すべし、と。○去は、起呂反。華は、胡化反。

乃先之。至則告守曰、不可待也。守、石・甯二大夫。
【読み】
乃ち之を先だつ。至りて則ち守に告げて曰く、待つ可からず、と。守は、石・甯の二大夫。

夜與國人出。狄入衛、遂從之、又敗諸河。衛將東走渡河。狄復逐而敗之。
【読み】
夜國人と出づ。狄衛に入り、遂に之を從[お]い、又諸を河に敗る。衛將に東走して河を渡らんとす。狄復逐って之を敗る。

初、惠公之卽位也少。蓋年十五六。
【読み】
初め、惠公の位に卽くや少[わか]し。蓋し年十五六ならん。

齊人使昭伯烝於宣姜。不可。强之。昭伯、惠公庶兄、宣公子頑也。昭伯不可。
【読み】
齊人昭伯をして宣姜に烝せしむ。可[き]かず。之を强う。昭伯は、惠公の庶兄、宣公の子頑なり。昭伯可かず。

生齊子・戴公・文公・宋桓夫人・許穆夫人。
【読み】
齊子・戴公・文公・宋の桓夫人・許の穆夫人を生む。

文公爲衛之多患也、先適齊。及敗、宋桓公逆諸河。迎衛敗衆。
【読み】
文公衛の患え多きが爲に、先ず齊に適く。敗るるに及んで、宋の桓公諸を河に逆[むか]う。衛の敗衆を迎う。

宵濟。夜渡、畏狄。
【読み】
宵[よる]濟[わた]る。夜渡るは、狄を畏れてなり。

衛之遺民、男女七百有三十人、益之以共・滕之民、爲五千人。共及滕、衛別邑。○共、音恭。
【読み】
衛の遺民、男女七百有三十人、之に益すに共・滕の民を以て、五千人と爲る。共と滕とは、衛の別邑。○共は、音恭。

立戴公以廬于曹。廬、舍也。曹、衛下邑。戴公名申。立其年卒、而立文公。
【読み】
戴公を立てて以て曹に廬す。廬は、舍るなり。曹は、衛の下邑。戴公名は申。立ちて其の年卒して、文公を立つ。

許穆夫人賦載馳。載馳、詩衛風也。許穆夫人痛衛之亡、思歸唁之、不可。故作詩以言志。
【読み】
許の穆夫人載馳[さいち]を賦す。載馳は、詩の衛風なり。許の穆夫人衛の亡ぶるを痛み、歸りて之を唁[とむら]わんことを思えども、不可なり。故に詩を作りて以て志を言う。

齊侯使公子無虧帥車三百乘、甲士三千人、以戍曹。無虧、齊桓公子武孟也。車甲之賦異於常。故傳別見之。
【読み】
齊侯公子無虧[むき]をして車三百乘、甲士三千人を帥いて、以て曹を戍らしむ。無虧は、齊の桓公の子武孟なり。車甲の賦常に異なり。故に傳別に之を見す。

歸公乘馬、祭服五稱、牛・羊・豕・雞・狗皆三百、與門材、歸、遺也。四馬曰乘、衣單複具曰稱。門材、使先立門戶。○稱、尺證反。
【読み】
公に乘馬、祭服五稱、牛・羊・豕・雞・狗皆三百と、門材とを歸[おく]り、歸は、遺るなり。四馬を乘と曰い、衣の單複具わるを稱と曰う。門材は、先ず門戶を立てしむるなり。○稱は、尺證反。

歸夫人魚軒、魚軒、夫人車。以魚皮爲飾。
【読み】
夫人に魚軒と、魚軒は、夫人の車。魚皮を以て飾りと爲す。

重錦三十兩。重錦、錦之熟細者。以二丈雙行。故曰兩。三十兩、三十匹也。
【読み】
重錦三十兩を歸る。重錦は、錦の熟細なる者。二丈を以て雙行す。故に兩と曰う。三十兩は、三十匹なり。

鄭人惡高克、使帥師次于河上、久而弗召。師潰而歸。高克奔陳。高克、鄭大夫也。好利而不顧其君。文公惡之、而不能遠。故使帥師而不召。
【読み】
鄭人高克を惡みて、師を帥いて河上に次[やど]らしめ、久しくして召さず。師潰[つい]えて歸る。高克陳に奔る。高克は、鄭の大夫なり。利を好みて其の君を顧みず。文公之を惡めども、遠ざくること能わず。故に師を帥いしめて召さず。

鄭人爲之賦淸人。淸人、詩鄭風也。刺文公退臣不以道、危國亡師之本。
【読み】
鄭人之が爲に淸人を賦す。淸人は、詩の鄭風なり。文公臣を退くるに道を以てせずして、國を危くし師を亡ぼすの本なるを刺[そし]る。

晉侯使大子申生伐東山皐落氏。赤狄別種也。皐落、其氏族。
【読み】
晉侯大子申生をして東山の皐落氏を伐たしむ。赤狄の別種なり。皐落は、其の氏族。

里克諫曰、大子奉冢祀社稷之粢盛、里克、晉大夫。冢、大也。
【読み】
里克諫めて曰く、大子は冢祀社稷の粢盛を奉じて、里克は、晉の大夫。冢は、大なり。

以朝夕視君膳者也。膳、厨膳。
【読み】
以て朝夕に君の膳を視る者なり。膳は、厨膳。

故曰冢子。君行則守、有守則從。從曰撫軍、守曰監國。古之制也。夫帥師、專行謀、帥師者、必專謀軍事。○守、手又反。下同。從、才用反。監、古銜反。
【読み】
故に冢子と曰う。君行けば則ち守り、守り有れば則ち從う。從うを撫軍と曰い、守るを監國と曰う。古の制なり。夫れ師を帥いれば、專ら謀を行い、師を帥いる者は、必ず專ら軍事を謀る。○守は、手又反。下も同じ。從は、才用反。監は、古銜反。

誓軍旅。宣號令也。
【読み】
軍旅に誓う。號令を宣ぶるなり。

君與國政之所圖也。非大子之事也。國政、正卿。
【読み】
君と國政との圖る所なり。大子の事に非ざるなり。國政は、正卿。

師在制命而已。命、將軍所制。
【読み】
師は命を制するに在るのみ。命は、將に軍の制する所。

稟命則不威、專命則不孝。故君之嗣適、不可以帥師。君失其官、帥師不威、將焉用之。大子統師、是失其官也。專命則不孝、是爲帥必不威也。
【読み】
命を稟くれば則ち威あらず、命を專らにすれば則ち不孝なり。故に君の嗣適は、以て師を帥いしむ可からず。君其の官を失い、師を帥いて威あらざること、將[はた]焉んぞ之を用いん。大子師を統ぶる、是れ其の官を失うなり。命を專らにすれば則ち不孝、是れ帥いて必ず威あらずと爲るなり。

且臣聞、皐落氏將戰。君其舍之。公曰、寡人有子、未知其誰立焉。不對而退。
【読み】
且つ臣聞く、皐落氏將に戰わんとす、と。君其れ之を舍[お]け、と。公曰く、寡人子有り、未だ其の誰をか立てんことを知らず、と。對えずして退く。

見大子。大子曰、吾其廢乎。對曰、告之以臨民、謂居曲沃。
【読み】
大子に見ゆ。大子曰く、吾れ其れ廢てられんか、と。對えて曰く、之に告ぐるに臨民を以てし、曲沃に居くを謂う。

敎之以軍旅。謂將下軍。
【読み】
之に敎ゆるに軍旅を以てす。下軍に將たるを謂う。

不共是懼。何故廢乎。且子懼不孝。無懼弗得立。脩己而不責人、則免於難。
【読み】
共せざるを是れ懼れよ。何の故に廢てられんや。且つ子不孝を懼る。立つことを得ざるを懼るること無けん。己を脩めて人を責めざれば、則ち難を免れん、と。

大子帥師。公衣之偏衣、偏衣、左右異色、其半似公服。○衣之偏、於旣反。下衣身之偏、衣之純、衣之尨服、同。
【読み】
大子師を帥いぬ。公之に偏衣を衣せ、偏衣は、左右色を異にして、其の半は公服に似たるなり。○衣之偏は、於旣反。下の衣身之偏。衣之純、衣之尨服[ぼうふく]、同じ。

佩之金玦。以金爲玦。
【読み】
之に金玦[きんけつ]を佩びしむ。金を以て玦と爲すなり。

狐突御戎、先友爲右、狐突、伯行。重耳外祖父也。爲申生御。申生以大子將上軍。
【読み】
狐突戎に御となり、先友右と爲り、狐突は、伯行。重耳の外祖父なり。申生の御爲り。申生大子を以て上軍に將たり。

梁餘子養御罕夷、先丹木爲右、罕夷、晉下軍卿也。梁餘子養爲罕夷御。
【読み】
梁餘子養罕夷[かんい]に御となり、先丹木右と爲り、罕夷は、晉の下軍の卿なり。梁餘子養は罕夷の御爲たり。

羊舌大夫爲尉。羊舌大夫、叔向祖父也。尉、軍尉。○向、許丈反。
【読み】
羊舌大夫尉爲り。羊舌大夫は、叔向の祖父なり。尉は、軍尉。○向は、許丈反。

先友曰、衣身之偏、偏、半也。
【読み】
先友曰く、身の偏を衣せ、偏は、半なり。

握兵之要。謂佩金玦、將上軍。
【読み】
兵の要を握らしむ。金玦を佩びて、上軍に將とするを謂う。

在此行也、子其勉之。偏躬無慝、分身衣之半、非惡意也。
【読み】
此の行に在りてや、子其れ之を勉めよ。偏躬は慝[あ]しきこと無く、身を分けて之に半を衣するは、惡意に非ざるなり。

兵要遠災。威權在己。可以遠害。○遠、去聲。下同。
【読み】
兵要は災いに遠ざかる。威權己に在り。以て害に遠ざかる可し。○遠は、去聲。下も同じ。

親以無災。又何患焉。
【読み】
親しまれて以て災い無し。又何をか患えん、と。

狐突歎曰、時、事之徵也。歎、以先友爲不知君心。
【読み】
狐突歎じて曰く、時は、事の徵なり。歎ずるは、先友を以て君の心を知らずと爲すなり。

衣、身之章也。章貴賤。
【読み】
衣は、身の章なり。貴賤を章らかにす。

佩、衷之旗也。旗、表也。所以表明其中心。○衷、音忠。
【読み】
佩は、衷の旗なり。旗は、表なり。其の中心を表明する所以なり。○衷は、音忠。

故敬其事、則命以始、賞以春夏。
【読み】
故に其の事を敬すれば、則ち命ずるに始めを以てし、賞するに春夏を以てす。

服其身、則衣之純、必以純色爲服。
【読み】
其の身に服すれば、則ち之に純を衣せ、必ず純色を以て服とす。

用其衷、則佩之度。衷、中也。佩玉者、士君子常度。
【読み】
其の衷を用ゆれば、則ち之に度を佩びしむ。衷は、中なり。玉を佩ぶ者は、士君子の常度。

今命以時卒、閟其事也。冬十二月、閟盡之時。
【読み】
今命ずるに時の卒りを以てするは、其の事を閟[と]ずるなり。冬十二月は、閟盡[ひじん]の時なり。

衣之尨服、遠其躬也。尨、雜色。
【読み】
之に尨服[ぼうふく]を衣するは、其の躬を遠ざくるなり。尨は、雜色。

佩以金玦、弃其衷也。服以遠之、時以閟之。尨涼、冬殺、金寒、玦離。胡可恃也。寒・涼・殺・離、言無溫潤。玦、如環而缺不連。
【読み】
佩びしむるに金玦を以てするは、其の衷を弃[す]つるなり。服以て之を遠ざけて、時以て之を閟ず。尨は涼しく、冬は殺し、金は寒く、玦は離る。胡ぞ恃む可けんや。寒・涼・殺・離は、溫潤無きを言う。玦は、環の如くにして缺[か]けて連ならず。

雖欲勉之、狄可盡乎。
【読み】
之を勉めんと欲すと雖も、狄盡くす可けんや、と。

梁餘子養曰、帥師者、受命於廟、受脤於社、脤、宜社之肉。盛以脤器。○脤、市軫反。
【読み】
梁餘子養曰く、師を帥いる者は、命を廟に受け、脤[しん]を社に受けて、脤は、社に宜するの肉。盛るに脤器を以てす。○脤は、市軫反。

有常服矣。不獲而尨。命可知也。韋弁服、軍之常也。尨、偏衣。
【読み】
常の服有り。獲ずして尨す。命知る可し。韋弁服は、軍の常なり。尨は、偏衣。

死而不孝。不如逃之。
【読み】
死して不孝なり。之を逃るるに如かず、と。

罕夷曰、尨奇無常、雜色奇怪、非常之服。
【読み】
罕夷曰く、尨奇は常無く、雜色奇怪は、非常の服。

金玦不復。雖復何爲。君有心矣。有害大子之心。
【読み】
金玦は復らず。復ると雖も何をか爲さん。君心有り、と。大子を害するの心有り。

先丹木曰、是服也、狂夫阻之。阻、疑也。言雖狂夫、猶知有疑。
【読み】
先丹木曰く、是の服や、狂夫も之に阻[うたが]いありとす。阻は、疑いなり。言うこころは、狂夫と雖も、猶疑い有るを知る。

曰、盡敵而反。曰、公辭。○盡、子忍反。下盡敵同。
【読み】
曰く、敵を盡くして反れ、と。曰くは、公の辭。○盡は、子忍反。下の盡敵も同じ。

敵可盡乎。雖盡敵、猶有内讒。不如違之。違、去也。
【読み】
敵盡くす可けんや。敵を盡くすと雖も、猶内讒有り。之を違[さ]るに如かず、と。違は、去るなり。

狐突欲行。行、亦去也。
【読み】
狐突行[さ]らんと欲す。行も、亦去るなり。

羊舌大夫曰、不可。違命不孝。弃事不忠。雖知其寒、惡不可取。子其死之。寒、薄也。
【読み】
羊舌大夫曰く、不可なり。命に違うは不孝なり。事を弃つるは不忠なり。其の寒[うす]きを知ると雖も、惡取る可からず。子其れ之に死せよ、と。寒は、薄きなり。

大子將戰。狐突諫曰、不可。昔辛伯諗周桓公、諗、告也。事在桓十八年。○諗、音審。說文云、深謀。
【読み】
大子將に戰わんとす。狐突諫めて曰く、不可なり。昔辛伯周の桓公に諗[つ]げて、諗[しん]は、告ぐるなり。事は桓十八年に在り。○諗は、音審。說文に云う、深謀、と。

云、内寵竝后、外寵二政、嬖子配適、大都耦國、亂之本也。周公弗從。故及於難。今亂本成矣。驪姬爲内寵、二五爲外寵、奚齊爲嬖子、曲沃爲大都。故曰亂本成矣。
【読み】
云う、内寵后に竝び、外寵政を二つにし、嬖子適に配[たぐ]い、大都國に耦[なら]ぶは、亂の本なり、と。周公從わず。故に難に及べり。今亂の本成れり。驪姬を内寵と爲し、二五を外寵と爲し、奚齊を嬖子と爲し、曲沃を大都と爲す。故に亂の本成れりと曰う。

立可必乎。孝而安民、子其圖之。奉身爲孝、不戰爲安民。
【読み】
立つこと必とす可けんや。孝にして民を安んぜんこと、子其れ之を圖れ。身を奉ずるを孝と爲し、戰わざるを民を安んずと爲す。

與其危身以速罪也。有功益見害。故言孰與危身以召罪。
【読み】
其の身を危うくして以て罪を速[まね]くに與[いず]れぞや、と。功有れば益々害せらる。故に身を危うくして以て罪を召[まね]くに孰與[いず]れぞと言う。

成風聞成季之繇、乃事之、成風、莊公之妾、僖公之母也。繇、卦兆之占辭。○繇、直救反。
【読み】
成風成季の繇[ちゅう]を聞き、乃ち之に事えて、成風は、莊公の妾、僖公の母なり。繇は、卦兆の占辭。○繇は、直救反。

而屬僖公焉。故成季立之。
【読み】
僖公を屬す。故に成季之を立つ。

僖之元年、齊桓公遷邢于夷儀、二年、封衛于楚丘。邢遷如歸、衛國忘亡。忘其滅亡之困。
【読み】
僖の元年、齊の桓公邢を夷儀に遷し、二年、衛を楚丘に封ず。邢の遷ること歸るが如く、衛國亡びしを忘れたり。其の滅亡の困しみを忘る。

衛文公大布之衣、大帛之冠、大布、麤布。大帛、厚繒。蓋用諸侯諒闇之服。○諒、音良。又音亮。
【読み】
衛の文公大布の衣、大帛の冠し、大布は、麤布。大帛は、厚繒。蓋し諸侯諒闇の服を用ゆるならん。○諒は、音良。又音亮。

務材、訓農、通商、惠工、加惠於百工、賞其利器用。
【読み】
材を務め、農を訓え、商を通じ、工を惠み、惠みを百工に加え、其の器用を利するを賞す。

敬敎、勸學、授方、任能。方、百事之宜也。
【読み】
敎えを敬し、學を勸め、方を授け、能に任ず。方は、百事の宜なり。

元年、革車三十乘、季年、乃三百乘。衛文公以此年冬立、齊桓公始平魯亂。故傳因言齊之所以霸、衛之所由興。革車、兵車。季年、在僖二十五年。蓋招懷迸散。故能致十倍之衆。○乘、繩證反。迸、檗諍反。
【読み】
元年に、革車三十乘、季年に、乃ち三百乘あり。衛の文公此の年の冬を以て立ち、齊の桓公始めて魯の亂を平らぐ。故に傳因りて齊の霸たる所以と、衛の由りて興る所とを言う。革車は、兵車。季年は、僖二十五年に在り。蓋し逬散[ほうさん]を招懷す。故に能く十倍の衆を致すならん。○乘は、繩證反。迸は、檗諍反。



經元年。出疆。居良反。省難。乃旦反。下及傳同。
傳。狼。音郎。諸夏。戶雅反。注同。親暱。女乙反。宴安。於見反。本又作晏。音同。一音烏諫反。酖毒。直蔭反。勞來。力報反。下力代反。自斃。婢世反。踣。蒲北反。閒攜。閒厠之閒。注同。覆昏。芳服反。注同。見莊。賢遍反。滅耿。古幸反。還爲。于僞反。又焉。於虔反。大伯。音泰。注同。適子。丁歷反。本又作嫡。且諺。音彥。若祚。在路反。遇屯。張倫反。之比。毗志反。注及下同。蕃昌。音煩。
經二年。吉禘。大計反。大廟。音泰。見惡。烏路反。師潰。戶内反。
傳。舟之僑。音喬。武闈。音韋。一音暉。費縣。音祕。又扶味反。乃縊。一賜反。亳社。步各反。余焉。於虔反。決斷。丁亂反。禦難。乃旦反。無復。扶又反。下復遂同。爲之。于僞反。下爲衛同。大史。音泰。故恐。丘勇反。也少。詩照反。烝於。之承反。强之。其丈反。以廬。力居反。歸唁。音彥。無虧。去危反。三百乘。繩證反。下及注同。別見。賢遍反。雞狗。音苟。歸遺。于季反。單複。音丹。下方服反。人惡。烏路反。注同。好利。呼報反。能遠。于萬反。爲之。于僞反。皐落。古刀反。別種。章勇反。粢盛。音咨。下音成。朝夕。如字。又張遙反。君膳。市戰反。嗣適。丁歷反。本又作嫡。下配適同。將焉。於虔反。謂將。子匠反。下將上軍竝同。不共。音恭。本又作供。於難。乃旦反。下同。無慝。他得反。旗也。音其。閟其。音祕。尨服。莫江反。盛以。音成。阻之。莊呂反。而屬。章欲反。衛文公大布之衣。本或作衣大布之衣誤。厚繒。疾陵反。


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(引用文献)


江守孝三(Emori Kozo)