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春秋左氏傳校本


 春秋《左氏傳》(昭公一、二、三、四)

春秋左氏傳
(隱公 桓公莊公閔公)(僖公上、中、下 )(文公上、下 )(宣公上、下 )(成公上、下 )
(襄公一、二、三) (四、五、六 )(昭公一、二、三、四) (五、六、七)(定公上、下)(哀公上、下)(序杜預略傳 ・後序)

春秋左氏傳校本第二十

昭公 起元年盡三年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

昭公 名、裯。襄公子。母齊歸。在位二十五年、遜于齊。在外八年、凡三十三年。薨于乾侯。謚法、威儀恭明曰昭。
【読み】
昭公 名は、裯[ちゅう]。襄公の子。母は齊歸。在位二十五年、齊に遜る。外に在ること八年、凡そ三十三年なり。乾侯に薨ず。謚法に、威儀恭明なるを昭と曰う、と。

〔經〕
元年、春、王正月、公卽位。無傳。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。

叔孫豹會晉趙武・楚公子圍・齊國弱・宋向戌・衛齊惡・陳公子招・蔡公孫歸生・鄭罕虎・許人・曹人于虢。招、實陳侯母弟。不稱弟者、義與莊二十五年公子友同。今讀舊書、則楚當先晉。而先書趙武者、亦取宋盟貴武之信。故尙之也。衛在陳・蔡上、先至於會。○招、常遙反。虢、瓜百反。當先、悉薦反。
【読み】
叔孫豹晉の趙武・楚の公子圍・齊の國弱・宋の向戌[しょうじゅつ]・衛の齊惡・陳の公子招・蔡の公孫歸生・鄭の罕虎・許人・曹人に虢[かく]に會す。招は、實は陳侯の母弟なり。弟と稱せざるは、義莊二十五年の公子友と同じ。今舊書を讀むときは、則ち楚當に晉に先だつべし。而るに先ず趙武を書すは、亦宋の盟に武の信を貴ぶに取る。故に之を尙ぶなり。衛の陳・蔡の上に在るは、先ず會に至ればなり。○招は、常遙反。虢は、瓜百反。當先は、悉薦反。

三月取鄆。不稱將師、將卑師少。書取、言易也。○鄆、音運。
【読み】
三月鄆[うん]を取る。將師を稱せざるは、將卑しく師少なければなり。取ると書すは、易きを言うなり。○鄆は、音運。

夏、秦伯之弟鍼出奔晉。稱弟、罪秦伯。○鍼、其廉反。
【読み】
夏、秦伯の弟鍼[けん]出でて晉に奔る。弟と稱するは、秦伯を罪するなり。○鍼は、其廉反。

六月、丁巳、邾子華卒。無傳。三同盟。
【読み】
六月、丁巳[ひのと・み]、邾子[ちゅし]華卒す。傳無し。三たび同盟す。

晉荀吳帥師敗狄于大鹵。大鹵、大原晉陽縣。○大鹵、如字。又音泰。
【読み】
晉の荀吳師を帥いて狄を大鹵[たいろ]に敗る。大鹵は、大原晉陽縣。○大鹵は、字の如し。又音泰。

秋、莒去疾自齊入于莒。國逆而立之曰入。○去、起呂反。
【読み】
秋、莒の去疾齊より莒に入る。國逆[むか]えて之を立つるを入ると曰う。○去は、起呂反。

莒展輿出奔吳。弑君賊、未會諸侯。故不稱爵。
【読み】
莒の展輿出でて吳に奔る。君を弑する賊にして、未だ諸侯に會せず。故に爵を稱せず。

叔弓帥師疆鄆田。春取鄆、今正其封疆。
【読み】
叔弓師を帥いて鄆の田を疆[さか]う。春鄆を取り、今其の封疆を正す。

葬邾悼公。無傳。
【読み】
邾の悼公を葬る。傳無し。

冬、十有一月、己酉、楚子麇卒。楚以瘧疾赴。故不書弑。○麇、九倫反。
【読み】
冬、十有一月、己酉[つちのと・とり]、楚子麇[きん]卒す。楚瘧疾[ぎゃくしつ]を以て赴[つ]ぐ。故に弑を書さず。○麇は、九倫反。

楚公子比出奔晉。書名、罪之。
【読み】
楚の公子比出でて晉に奔る。名を書すは、之を罪するなり。

〔傳〕元年、春、楚公子圍聘于鄭。且娶於公孫段氏。伍舉爲介。伍舉、椒舉。介、副也。
【読み】
〔傳〕元年、春、楚の公子圍鄭に聘す。且公孫段氏に娶らんとす。伍舉介爲り。伍舉は、椒舉。介は、副なり。

將入館。就客舍。
【読み】
將に入りて館せんとす。客舍に就く。

鄭人惡之、知楚懷詐。○惡、烏路反。
【読み】
鄭人之を惡み、楚の詐りを懷くを知る。○惡は、烏路反。

使行人子羽與之言、乃館於外。舍城外。
【読み】
行人子羽をして之と言わしめて、乃ち外に館す。城外に舍す。

旣聘、將以衆逆。以兵入逆婦。
【読み】
旣に聘し、將に衆を以て逆えんとす。兵を以て入りて婦を逆う。

子產患之、使子羽辭曰、以敝邑褊小、不足以容從者。請墠聽命。欲於城外除地爲墠、行昏禮。○褊、必淺反。墠、音善。
【読み】
子產之を患え、子羽をして辭せしめて曰く、敝邑の褊小なるを以て、以て從者を容るるに足らず。請う墠[せん]にして命を聽かん、と。城外に於て地を除いて墠を爲り、昏禮を行わんことを欲す。○褊は、必淺反。墠は、音善。

令尹命大宰伯州犂對曰、君辱貺寡大夫圍、謂圍將使豐氏撫有而室。豐氏、公孫段。
【読み】
令尹大宰伯州犂[はくしゅうり]に命じて對えしめて曰く、君辱く寡大夫圍に貺[たま]い、圍に謂えらく、將に豐氏をして而[なんじ]の室を撫有せしめんとす、と。豐氏は、公孫段。

圍布几筵、告於莊・共之廟而來。莊王、圍之祖。共王、圍之父。
【読み】
圍几筵を布き、莊・共の廟に告げて來れり。莊王は、圍の祖。共王は、圍の父。

若野賜之、是委君貺於草莽也。是寡大夫不得列於諸卿也。言不得從卿禮。
【読み】
若し野にして之を賜わば、是れ君の貺を草莽に委[す]つるなり。是れ寡大夫諸卿に列ぬることを得ざるなり。言うこころは、卿の禮に從うことを得ざるなり。

不寧唯是。又使圍蒙其先君、蒙、欺也。告先君而來、不得成禮於女氏之廟。故以爲欺先君。
【読み】
不寧[むし]ろ唯是のみならんや。又圍をして其の先君を蒙[あざむ]かしめて、蒙は、欺くなり。先君に告げて來りて、禮を女氏の廟に成すことを得ず。故に以て先君を欺くと爲す。

將不得爲寡君老。大臣稱老。懼辱命而黜退。
【読み】
將に寡君の老と爲ることを得ざらんとす。大臣は老と稱す。命を辱めて黜退せられんことを懼る。

其蔑以復矣。唯大夫圖之。
【読み】
其れ以て復すこと蔑[な]からん。唯大夫之を圖れ、と。

子羽曰、小國無罪。恃實其罪。恃大國而無備、則是罪。
【読み】
子羽曰く、小國罪無し。恃むは實に其の罪なり。大國を恃みて備え無きは、則ち是れ罪なり。

將恃大國之安靖己、而無乃包藏禍心以圖之。小國失恃、而懲諸侯、使莫不憾者、距違君命、而有所壅塞不行是懼。言己失所恃、則諸侯懲恨以距君命、壅塞不行。所懼唯此。
【読み】
將に大國の己を安靖せんことを恃まんとするに、而るに乃ち禍心を包藏して以て之を圖ること無からんや。小國恃みを失いて、諸侯を懲らさば、憾みざる者莫くして、君命を距違して、壅塞して行われざる所有らしめんこと是れ懼る。言うこころは、己恃む所を失わば、則ち諸侯懲恨して以て君命を距み、壅塞して行われざらん。懼るる所は唯此のみ。

不然、敝邑館人之屬也。館人、守舍之人也。
【読み】
然らずんば、敝邑は館人の屬なり。館人は、守舍の人なり。

其敢愛豐氏之祧。祧、遠祖廟。○祧、他彫反。
【読み】
其れ敢えて豐氏の祧[ちょう]を愛まんや、と。祧は、遠祖の廟。○祧は、他彫反。

伍舉知其有備也、請垂櫜而入。垂櫜、示無弓。○櫜、音羔。弓衣也。
【読み】
伍舉其の備え有るを知るや、櫜[こう]を垂れて入らんと請う。櫜を垂るとは、弓無きを示すなり。○櫜は、音羔。弓衣なり。

許之。
【読み】
之を許す。

正月、乙未、入逆而出。
【読み】
正月、乙未[きのと・ひつじ]、入りて逆えて出づ。

遂會於虢。虢、鄭地。
【読み】
遂に虢に會す。虢は、鄭の地。

尋宋之盟也。宋盟、在襄二十七年。
【読み】
宋の盟を尋[かさ]ぬるなり。宋の盟は、襄二十七年に在り。

祁午謂趙文子曰、宋之盟、楚人得志於晉。得志、謂先歃。午、祁奚子。○歃、所洽反。
【読み】
祁午趙文子に謂いて曰く、宋の盟に、楚人志を晉に得たり。志を得るとは、先ず歃るを謂うなり。午は、祁奚の子。○歃は、所洽反。

今令尹之不信、諸侯之所聞也。子弗戒、懼又如宋。恐楚復得志。
【読み】
今令尹の不信は、諸侯の聞ける所なり。子戒めずば、懼らくは又宋の如くならん。楚復志を得んことを恐る。

子木之信、稱於諸侯、猶詐晉而駕焉。駕、猶陵也。詐、謂衷甲。○衷、音忠。
【読み】
子木の信は、諸侯に稱せられしも、猶晉を詐りて駕[しの]げり。駕は、猶陵ぐのごとし。詐は、甲を衷[うち]にするを謂う。○衷は、音忠。

況不信之尤者乎。尤、甚也。
【読み】
況んや不信の尤[はなは]だしき者をや。尤は、甚だなり。

楚重得志於晉、晉之恥也。
【読み】
楚重ねて志を晉に得ば、晉の恥なり。

子相晉國以爲盟主、於今七年矣。襄二十五年始爲政。以春言。故云七年。○重、直用反。
【読み】
子晉國を相けて以て盟主爲ること、今に於て七年なり。襄二十五年始めて政を爲す。春を以て言う。故に七年と云うなり。○重は、直用反。

再合諸侯、襄二十五年、會夷儀、二十六年、會澶淵。
【読み】
再び諸侯を合わせ、襄二十五年、夷儀に會し、二十六年、澶淵[せんえん]に會す。

三合大夫、襄二十七年、會于宋、三十年、會澶淵、及今會虢也。
【読み】
三たび大夫を合わせ、襄二十七年、宋に會し、三十年、澶淵に會し、及び今虢に會するなり。

服齊・狄、寧東夏、襄二十八年、齊侯・白狄朝晉。
【読み】
齊・狄を服せしめ、東夏を寧んじ、襄二十八年、齊侯・白狄晉に朝す。

平秦亂、襄二十六年、秦・晉爲成。
【読み】
秦の亂を平らげ、襄二十六年、秦・晉成らぎを爲す。

城淳于。襄二十九年、城杞之淳于、杞遷都。
【読み】
淳于に城く。襄二十九年、杞の淳于に城きて、杞都を遷す。

師徒不頓、國家不罷、民無謗讟、讟、誹也。
【読み】
師徒頓[にぶ]からず、國家罷[つか]れず、民謗讟[ぼうとく]無く、讟は、誹るなり。

諸侯無怨、天無大災。子之力也。有令名矣。而終之以恥、午也是懼。吾子其不可以不戒。
【読み】
諸侯怨むること無く、天大災無し。子の力なり。令名有り。而るに之を終わるに恥を以てせんこと、午や是れ懼る。吾子其れ以て戒めずんばある可からず、と。

文子曰、武受賜矣。受午言。
【読み】
文子曰く、武賜を受けり。午の言を受く。

然宋之盟、子木有禍人之心、武有仁人之心。是楚所以駕於晉也。今武猶是心也。楚又行僭、僭、不信。
【読み】
然れども宋の盟に、子木は人に禍するの心有り、武は人に仁するの心有り。是れ楚の晉を駕ぎし所以なり。今武猶是の心なり。楚又僭を行うも、僭は、不信なり。

非所害也。武將信以爲本、循而行之。譬如農夫、是穮是蔉、穮、耘也。壅苗爲蔉。○穮、音標。蔉、音袞。
【読み】
害とする所に非ざるなり。武將に信以て本と爲し、循いて之を行わんとす。譬えば農夫の、是れ穮[くさぎ]り是れ蔉[つちか]えば、穮[ひょう]は、耘[くさぎ]るなり。苗に壅[つちか]うを蔉[こん]と爲す。○穮は、音標。蔉は、音袞。

雖有饑饉、必有豐年。言耕鉏不以水旱息、必獲豐年之收。○饉、其靳反。收、手又反。又如字。
【読み】
饑饉有りと雖も、必ず豐年有るが如し。言うこころは、耕鉏水旱を以て息めざれば、必ず豐年の收を獲ん。○饉は、其靳反。收は、手又反。又字の如し。

且吾聞之、能信不爲人下。吾未能也。自恐未能信也。
【読み】
且つ吾れ之を聞く、能く信なれば人の下と爲らず、と。吾れ未だ能わざるなり。自ら未だ信なること能わざるを恐るるなり。

詩曰、不僭不賊、鮮不爲則、信也。詩、大雅。僭、不信。賊、害人也。
【読み】
詩に曰く、僭せず賊せざれば、則爲らざること鮮しとは、信なり。詩は、大雅。僭は、不信なり。賊は、人を害するなり。

能爲人則者、不爲人下矣。吾不能是難。楚不爲患。
【読み】
能く人の則と爲る者は、人の下と爲らず。吾れ能わざること是れ難[なや]みとす。楚患えと爲らず、と。

楚令尹圍請、用牲、讀舊書、加于牲上而已。舊書、宋之盟書。楚恐晉先歃。故欲從舊書、加于牲上、不歃血。經所以不書盟。○難、乃旦反。
【読み】
楚の令尹圍請う、牲を用い、舊書を讀みて、牲上に加えんのみ、と。舊書は、宋の盟書なり。楚晉先ず歃らんことを恐る。故に舊書に從い、牲上に加え、血を歃らざらんことを欲す。經盟を書さざる所以なり。○難は、乃旦反。

晉人許之。三月、甲辰、盟。
【読み】
晉人之を許す。三月、甲辰[きのえ・たつ]、盟う。

楚公子圍設服離衛。設君服、二人執戈、陳於前以自衛。離、陳也。
【読み】
楚の公子圍服を設けて離[つら]ね衛る。君服を設け、二人戈を執り、前に陳ね以て自ら衛る。離は、陳ぬるなり。

叔孫穆子曰、楚公子美矣。君哉。美服似君。
【読み】
叔孫穆子曰く、楚の公子は美なり。君なるかな、と。美服君に似たり。

鄭子皮曰、二執戈者前矣。禮、國君行、有二執戈者在前。
【読み】
鄭の子皮曰く、二りの戈を執る者前なり、と。禮に、國君行かば、二りの戈を執る者前に在る有り、と。

蔡子家曰、蒲宮、有前不亦可乎。公子圍在會、特緝蒲爲王殿屋屛蔽、以自殊異。言旣造王宮而居之。雖服君服、無所怪也。
【読み】
蔡の子家曰く、蒲宮すれば、前有るも亦可ならんや、と。公子圍會に在りて、特に蒲を緝[あつ]めて王の殿屋屛蔽を爲して、以て自ら殊異にす。言うこころは、旣に王宮を造りて之に居る。君服を服すと雖も、怪しき所無し。

楚伯州犂曰、此行也、辭而假之寡君。聞諸大夫譏之。故言假以飾令尹過。
【読み】
楚の伯州犂曰く、此の行や、辭して之を寡君に假れり、と。諸大夫の之を譏るを聞く。故に假ると言いて以て令尹の過ちを飾るなり。

鄭行人揮曰、假不反矣。言將遂爲君。
【読み】
鄭の行人揮曰く、假りて反さざらん、と。言うこころは、將に遂に君爲らんとす。

伯州犂曰、子姑憂子皙之欲背誕也。襄三十年、鄭子皙殺伯有、背命放誕。將爲國難。言子且自憂此。無爲憂令尹不反戈。○背、音佩。
【読み】
伯州犂曰く、子姑く子皙の背誕せんと欲するを憂えよ、と。襄三十年、鄭の子皙伯有を殺し、命に背きて放誕なり。將に國難を爲さんとす。言うこころは、子且く自ら此を憂えよ。令尹が戈を反さざるを憂うることを爲すこと無かれ。○背は、音佩。

子羽曰、當璧猶在。假而不反、子其無憂乎。子羽、行人揮。當璧、謂弃疾。事在昭十三年。言弃疾有當璧之命。圍雖取國、猶將有難。不無憂也。
【読み】
子羽曰く、當璧猶在り。假りて反さざるも、子其れ憂え無からん、と。子羽は、行人揮。當璧は、弃疾を謂う。事は昭十三年に在り。言うこころは、弃疾當璧の命有り。圍國を取ると雖も、猶將に難有らんとす。憂え無しとせざるなり。

齊國子曰、吾代二子愍矣。國子、國弱也。二子、謂王子圍及伯州犂。圍此冬便簒位、不能自終。州犂亦尋爲圍所殺。故言可愍。
【読み】
齊の國子曰く、吾は二子に代わりて愍[うれ]えり、と。國子は、國弱なり。二子は、王子圍と伯州犂とを謂う。圍此の冬便ち位を簒いて、自ら終わること能わず。州犂も亦尋[つい]で圍の爲に殺さる。故に愍う可しと言う。

陳公子招曰、不憂何成。二子樂矣。言以憂生事、事成而樂。○樂、音洛。
【読み】
陳の公子招曰く、憂えずんば何ぞ成らん。二子は樂せん、と。言うこころは、憂えを以て事を生じ、事成りて樂しむ。○樂は、音洛。

衛齊子曰、苟或知之、雖憂何害。齊子、齊惡。言先知爲備、雖有憂難、無所損害。
【読み】
衛の齊子曰く、苟も之を知ること或らば、憂うと雖も何の害あらん、と。齊子は、齊惡。言うこころは、先ず知りて備えを爲さば、憂難有りと雖も、損害する所無し。

宋合左師曰、大國令、小國共。吾知共而已。共承大國命、不能知其禍福。○共、音恭。
【読み】
宋の合左師曰く、大國は令し、小國は共す。吾は共を知るのみ、と。大國の命を共承して、其の禍福を知ること能わず。○共は、音恭。

晉樂王鮒曰、小旻之卒章善矣。吾從之。小旻、詩小雅。其卒章、義取非唯暴虎馮河之可畏也、不敬小人亦危殆。王鮒從斯義。故不敢譏議公子圍。○鮒、音附。
【読み】
晉の樂王鮒曰く、小旻の卒章は善し。吾れ之に從わん、と。小旻は、詩の小雅。其の卒章は、義唯暴虎馮河の畏る可きのみに非ず、小人を敬せざるも亦危殆なるに取る。王鮒斯の義に從う。故に敢えて公子圍を譏議せず。○鮒は、音附。

退會。子羽謂子皮曰、叔孫絞而婉。絞、切也。譏其似君、反謂之美。故曰婉。
【読み】
會より退く。子羽子皮に謂いて曰く、叔孫は絞にして婉なり。絞は、切なり。其の君に似たるを譏りて、反って之を美と謂う。故に婉と曰う。

宋左師簡而禮。無所臧否。故曰簡。共事大國。故曰禮。○否、音鄙。
【読み】
宋の左師は簡にして禮あり。臧否する所無し。故に簡と曰う。大國に共事す。故に禮と曰う。○否は、音鄙。

樂王鮒字而敬。字、愛也。不犯凶人。所以自愛敬。
【読み】
樂王鮒は字にして敬なり。字は、愛しむなり。凶人を犯さず。自ら愛敬する所以なり。

子與子家持之。子、子皮。子家、蔡公孫歸生。持之、言無所取與。
【読み】
子と子家とは之を持にせり。子は、子皮。子家は、蔡の公孫歸生。之を持にすとは、取與する所無きを言う。

皆保世之主也。齊・衛・陳大夫、其不免乎。國子代人憂、子招樂憂、齊子雖憂弗害。夫弗及而憂、與可憂而樂、與憂而弗害、皆取憂之道也。憂必及之。大誓曰、民之所欲、天必從之。逸書。○樂、音洛。
【読み】
皆保世の主なり。齊・衛・陳の大夫は、其れ免れざらんか。國子は人に代わりて憂え、子招は憂えを樂しみ、齊子は憂うと雖も害あらずとす。夫れ及ばずして憂うると、憂う可くして樂しむと、憂えて害あらずとするとは、皆憂えを取るの道なり。憂え必ず之に及ばん。大誓に曰く、民の欲する所は、天必ず之に從う、と。逸書。○樂は、音洛。

三大夫兆憂。憂能無至乎。開憂兆也。
【読み】
三大夫は憂えを兆せり。憂え能く至ること無からんや。憂兆を開くなり。

言以知物、其是之謂矣。物、類也。察言以知禍福之類。八年、陳招殺大子、國弱・齊惡、當身各無患。
【読み】
言以て物を知るとは、其れ是を謂うなり、と。物は、類なり。言を察して以て禍福の類を知るなり。八年、陳の招大子を殺し、國弱・齊惡は、當身各々患無し。

季武子伐莒、取鄆。兵未加莒而鄆服。故書取而不言伐。
【読み】
季武子莒を伐ちて、鄆を取る。兵未だ莒に加えずして鄆服す。故に取るを書して伐つを言わず。

莒人告於會。楚告於晉曰、尋盟未退。尋弭兵之盟。
【読み】
莒人會に告ぐ。楚晉に告げて曰く、盟を尋ねて未だ退かず。弭兵の盟を尋ぬ。

而魯伐莒、瀆齊盟。瀆、慢也。
【読み】
而るに魯莒を伐ちて、齊盟を瀆[あなど]れり。瀆は、慢るなり。

請戮其使。時叔孫豹在會。欲戮之。
【読み】
請う、其の使いを戮せん、と。時に叔孫豹會に在り。之を戮せんと欲す。

樂桓子相趙文子。桓子、樂王鮒。相、佐也。
【読み】
樂桓子趙文子を相く。桓子は、樂王鮒。相は、佐くなり。

欲求貨於叔孫、而爲之請、使請帶焉。難指求貨。故以帶爲辭。○而爲、去聲。
【読み】
貨を叔孫に求めて、之が爲に請わんと欲して、帶を請わしむ。貨を求むることを指し難し。故に帶を以て辭と爲す。○而爲は、去聲。

弗與。梁其踁曰、貨以藩身。子何愛焉。踁、叔孫家臣。○踁、戶定反。
【読み】
與えず。梁其踁[りょうきけい]曰く、貨は以て身を藩[まも]らんとす。子何ぞ愛しめる、と。踁は、叔孫の家臣。○踁は、戶定反。

叔孫曰、諸侯之會、衛社稷也。我以貨免、魯必受師。言不戮其使、必伐其國。
【読み】
叔孫曰く、諸侯の會は、社稷を衛らんとなり。我れ貨を以て免るれば、魯必ず師を受けん。言うこころは、其の使いを戮せざれば、必ず其の國を伐たん。

是禍之也。何衛之爲。人之有牆、以蔽惡也。喩己爲國衛。如牆爲人蔽。
【読み】
是れ之を禍するなり。何ぞ衛るとせん。人の牆有るは、以て惡を蔽わんとなり。己は國の衛り爲り。牆の人の蔽い爲るが如きに喩う。

牆之隙壞、誰之咎也。咎在牆。
【読み】
牆の隙壞あるは、誰が咎ぞや。咎牆に在り。

衛而惡之、吾又甚焉。罪甚牆。
【読み】
衛りて之を惡しくせば、吾れ又焉より甚だし。罪牆より甚だし。

雖怨季孫、魯國何罪。怨季孫之伐莒。
【読み】
季孫を怨むと雖も、魯國何の罪ある。季孫が莒を伐つを怨む。

叔出季處、有自來矣。吾又誰怨。季孫守國、叔孫出使、所從來久。今遇此戮無所怨也。
【読み】
叔は出でて季は處るは、自りて來ること有り。吾れ又誰をか怨みん。季孫國を守り、叔孫出でて使いするは、從來する所久し。今此の戮に遇うも怨むる所無し。

然鮒也賄。弗與不已。召使者、裂裳帛而與之、曰、帶其褊矣。言帶褊盡。故裂裳、示不相逆。
【読み】
然れども鮒や賄をす。與えずんば已まじ、と。使者を召し、裳帛を裂きて之を與えて、曰く、帶は其れ褊せり、と。言うこころは、帶褊盡す。故に裳を裂きて、相逆わざるを示すなり。

趙孟聞之曰、臨患不忘國、忠也。謂言魯國何罪。
【読み】
趙孟之を聞きて曰く、患えに臨みて國を忘れざるは、忠なり。魯國何の罪あると言うを謂う。

思難不越官、信也。謂言叔出季處。○難、乃旦反。下同。
【読み】
難を思いて官を越えざるは、信なり。叔出でて季處ると言うを謂う。○難は、乃旦反。下も同じ。

圖國忘死、貞也。謂不以貨免。
【読み】
國を圖りて死を忘るるは、貞なり。貨を以て免れざるを謂う。

謀主三者、義也。三者、忠・信・貞。
【読み】
謀三つの者を主とするは、義なり。三つの者とは、忠・信・貞。

有是四者。又可戮乎。幷義而四。
【読み】
是の四つの者有り。又戮す可けんや、と。義を幷せて四つ。

乃請諸楚曰、魯雖有罪、其執事不辟難、執事、謂叔孫。
【読み】
乃ち諸を楚に請いて曰く、魯罪有りと雖も、其の執事難を辟けず、執事は、叔孫を謂う。

畏威而敬命矣。謂不敢辟戮。
【読み】
威を畏れて命を敬せり。敢えて戮を辟けざるを謂う。

子若免之、以勸左右、可也。若子之羣吏、處不辟汚、汚、勞事。
【読み】
子若し之を免して、以て左右を勸めば、可なり。若し子の羣吏、處りて汚を辟けず、汚は、勞事。

出不逃難、不苟免。
【読み】
出でて難を逃れずんば、苟も免れず。

其何患之有。患之所生、汚而不治、難而不守、所由來也。能是二者、又何患焉。不靖其能、其誰從之。安靖賢能、則衆附從。
【読み】
其れ何の患えか之れ有らん。患えの生ずる所は、汚にして治めず、難ありて守らざれば、由り來る所なり。是の二つの者を能くせば、又何ぞ患えん。其の能を靖んぜずんば、其れ誰か之に從わん。賢能を安靖すれば、則ち衆附從す。

魯叔孫豹、可謂能矣。請免之以靖能者。
【読み】
魯の叔孫豹は、能と謂う可し。請う、之を免して以て能者を靖んぜん。

子會而赦有罪、不伐魯。
【読み】
子會して有罪を赦し、魯を伐たず。

又賞其賢、赦叔孫。
【読み】
又其の賢を賞せば、叔孫を赦す。

諸侯其誰不欣焉望楚而歸之、視遠如邇。疆場之邑、一彼一此。何常之有。言今衰世。疆場無定主。
【読み】
諸侯其れ誰か欣焉として楚を望みて之に歸すること、遠きを視るも邇きが如くならざらん。疆場の邑は、一彼一此なり。何の常か之れ有らん。言うこころは、今は衰世。疆場定主無し。

王伯之令也、言三王・五伯、有令德時。
【読み】
王伯の令ありしや、三王・五伯、令德有りし時を言う。

引其封疆、引、正也。正封界。
【読み】
其の封疆を引[ただ]して、引は、正すなり。封界を正す。

而樹之官、樹、立也。立官以守國。
【読み】
之が官を樹てて、樹は、立つなり。官を立てて以て國を守る。

舉之表旗、旌旗以表貴賤。
【読み】
之が表旗を舉げて、旌旗以て貴賤を表す。

而著之制令、爲諸侯作制度法令、使不得相侵犯。
【読み】
之が制令を著し、諸侯の爲に制度法令を作り、相侵犯することを得ざらしむ。

過則有刑、猶不可壹。於是乎虞有三苗、三苗、饕餮。放三危者。
【読み】
過てば則ち刑有るも、猶壹にす可からず。是に於て虞に三苗有り、三苗は、饕餮[とうてつ]。三危に放たる者。

夏有觀・扈、觀國、今頓丘衛縣。扈、在始平鄠縣。書序曰、啓與有扈戰于甘之野。○觀、音館。
【読み】
夏に觀・扈[こ]有り、觀國は、今の頓丘の衛縣。扈は、始平の鄠縣[こけん]に在り。書序に曰く、啓と有扈と甘の野に戰う、と。○觀は、音館。

商有姺・邳、二國、商諸侯。邳、今下邳縣。○姺、西典反。又西禮反。
【読み】
商に姺[せん]・邳有り、二國は、商の諸侯。邳は、今の下邳縣。○姺は、西典反。又西禮反。

周有徐・奄。二國、皆嬴姓。書序曰、成王伐淮夷、遂踐奄。徐卽淮夷。
【読み】
周に徐・奄有り。二國は、皆嬴[えい]姓。書序に曰く、成王淮夷を伐ち、遂に奄を踐[き]る、と。徐は卽淮夷なり。

自無令王、諸侯逐進、遂、猶競也。
【読み】
令王無かりしより、諸侯逐進して、遂は、猶競うのごとし。

狎主齊盟。其又可壹乎。彊弱無常。故更主盟。○更、音庚。
【読み】
狎[こも]々齊盟を主れり。其れ又壹にす可けんや。彊弱常無し。故に更々盟を主る。○更は、音庚。

恤大舍小、足以爲盟主。大、謂簒弑滅亡之禍。
【読み】
大を恤れみ小を舍てば、以て盟主爲るに足らん。大は、簒弑滅亡の禍を謂う。

又焉用之。焉用治小事。○焉、於虔反。
【読み】
又焉ぞ之を用いん。焉ぞ小事を治むることを用いん。○焉は、於虔反。

封疆之削、何國蔑有。主齊盟者、誰能辯焉。辯、治也。
【読み】
封疆の削らる、何れの國にか有ること蔑からん。齊盟を主る者、誰か能く辯[おさ]めん。辯は、治むるなり。

吳・濮有釁、楚之執事、豈其顧盟。吳在東、濮在南。今建寧郡南有濮夷。釁、過也。
【読み】
吳・濮に釁[きん]有らば、楚の執事、豈其れ盟を顧みんや。吳は東に在り、濮は南に在り。今建寧郡の南に濮夷有り。釁は、過ちなり。

莒之疆事、楚勿與知、諸侯無煩、不亦可乎。莒・魯爭鄆、爲日久矣。苟無大害於其社稷、可無亢也。亢、禦。○與、音預。亢、苦浪反。又音剛。
【読み】
莒の疆事、楚與り知ること勿く、諸侯煩無きは、亦可ならずや。莒・魯の鄆を爭うは、日爲ること久し。苟も其の社稷に大害無くんば、亢[ふせ]ぐこと無かる可し。亢は、禦ぐなり。○與は、音預。亢は、苦浪反。又音剛。

去煩宥善、莫不競勸。子其圖之。固請諸楚。楚人許之。乃免叔孫。
【読み】
煩を去り善を宥めば、競勸せざること莫けん。子其れ之を圖れ、と。固く諸を楚に請う。楚人之を許す。乃ち叔孫を免す。

令尹享趙孟、賦大明之首章。大明、詩大雅。首章言文王明明照於下。故能赫赫盛於上。令尹意在首章。故特稱首章、以自光大。○去、起呂反。
【読み】
令尹趙孟を享して、大明の首章を賦す。大明は、詩の大雅。首章に文王明明として下に照らかなり。故に能く赫赫として上に盛んなるを言う。令尹の意首章に在り。故に特に首章を稱して、以て自ら光大にす。○去は、起呂反。

趙孟賦小宛之二章。小宛、詩小雅。二章取其各敬爾儀、天命不又。言天命一去、不可復還。以戒令尹。
【読み】
趙孟小宛の二章を賦す。小宛は、詩の小雅。二章は其の各々爾の儀を敬せよ、天命又せざるというに取る。言うこころは、天命一たび去らば、復還る可からず。以て令尹を戒む。

事畢。趙孟謂叔向曰、令尹自以爲王矣。何如。問將能成否。
【読み】
事畢わる。趙孟叔向[しゅくきょう]に謂いて曰く、令尹自ら王たらんと以爲[おも]えり。何如、と。將能く成らんや否やと問う。

對曰、王弱、令尹疆。其可哉。言可成。
【読み】
對えて曰く、王弱く、令尹疆し。其れ可ならんかな。言うこころは、成る可し。

雖可不終。趙孟曰、何故。對曰、彊以克弱而安之、彊不義也。安於勝君。是彊而不義。
【読み】
可なりと雖も終えじ、と。趙孟曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、彊以て弱に克ちて之に安んずるは、彊くして不義なるなり。君に勝つに安んず。是れ彊くして不義なり。

不義而彊、其斃必速。詩曰、赫赫宗周、襃姒滅之、彊不義也。詩、小雅。襃姒、周幽王后。幽王惑焉、而行不義。遂至滅亡。言雖赫赫盛彊、不義足以滅之。○滅、如字。詩作烕。
【読み】
不義にして彊きは、其の斃ること必ず速やかなり。詩に曰く、赫赫たる宗周も、襃姒之を滅ぼすとは、彊くして不義なるなり。詩は、小雅。襃姒は、周の幽王の后。幽王惑いて、不義を行う。遂に滅亡に至れり。言うこころは、赫赫として盛彊なりと雖も、不義なれば以て之を滅ぼすに足る。○滅は、字の如し。詩烕に作る。

令尹爲王、必求諸侯。晉少懦矣。懦、弱也。○懦、乃亂反。
【読み】
令尹王と爲らば、必ず諸侯を求めん。晉少しく懦[よわ]し。懦は、弱きなり。○懦は、乃亂反。

諸侯將往。若獲諸侯、其虐滋甚。滋、益也。
【読み】
諸侯將に往かんとす。若し諸侯を獲ば、其の虐滋々甚だしからん。滋は、益々なり。

民弗堪也。將何以終。夫以彊取、取不以道。
【読み】
民堪えじ。將に何を以て終わらんとする。夫れ彊を以て取り、取るに道を以てせず。

不義而克、必以爲道。以不義爲道。
【読み】
不義にして克たば、必ず以て道とせん。不義を以て道とす。

道以淫虐、弗可久已矣。爲十三年、楚弑靈王傳。
【読み】
道として以て淫虐ならば、久しかる可からざるのみ、と。十三年、楚靈王を弑する爲の傳なり。

夏、四月、趙孟・叔孫豹・曹大夫入于鄭。會罷過鄭。
【読み】
夏、四月、趙孟・叔孫豹・曹の大夫鄭に入る。會より罷[かえ]りて鄭を過ぐ。

鄭伯兼享之。子皮戒趙孟、戒享期。
【読み】
鄭伯之を兼ね享せんとす。子皮趙孟に戒め、享期を戒む。

禮終。趙孟賦瓠葉。受所戒禮、畢而賦詩。瓠葉、詩小雅。義取古人不以微薄廢禮、雖瓠葉兔首、猶與賓客享之。○瓠、戶故反。
【読み】
禮終わる。趙孟瓠葉[こよう]を賦す。戒むる所の禮を受け、畢わりて詩を賦す。瓠葉は、詩の小雅。義古人微薄を以て禮を廢せず、瓠葉兔首と雖も、猶賓客と與に之を享するに取る。○瓠は、戶故反。

子皮遂戒穆叔、且告之。告以趙孟賦瓠葉。
【読み】
子皮遂に穆叔に戒め、且つ之を告ぐ。告ぐるに趙孟瓠葉を賦するを以てす。

穆叔曰、趙孟欲一獻。瓠葉詩、義取薄物而以獻酬。知欲一獻。
【読み】
穆叔曰く、趙孟一獻を欲するならん。瓠葉の詩、義薄物にして以て獻酬するに取る。一獻を欲することを知る。

子其從之。子皮曰、敢乎。言不敢。
【読み】
子其れ之に從え、と。子皮曰く、敢えてせんや、と。敢えてせざるを言う。

穆叔曰、夫人之所欲也。又何不敢。夫人、趙孟。○夫、音扶。
【読み】
穆叔曰く、夫の人の欲する所なり。又何ぞ敢えてせざらん、と。夫人は、趙孟。○夫は、音扶。

及享、具五獻之籩豆於幕下。朝聘之制、大國之卿、五獻。
【読み】
享に及びて、五獻の籩豆を幕下に具う。朝聘の制、大國の卿は、五獻なり。

趙孟辭。趙孟自以今非聘鄭、故辭五獻。
【読み】
趙孟辭す。趙孟自ら今鄭に聘するに非ざるを以て、故に五獻を辭す。

私於子產、私語。
【読み】
子產に私して、私語なり。

曰、武請於冢宰矣。冢宰、子皮。請、謂賦瓠葉。
【読み】
曰く、武冢宰に請えり、と。冢宰は、子皮。請うとは、瓠葉を賦せしを謂う。

乃用一獻。趙孟爲客。禮終乃宴。卿會公侯、享宴皆折俎、不體薦。○折、之設反。
【読み】
乃ち一獻を用ゆ。趙孟客爲り。禮終わりて乃ち宴す。卿の公侯に會するは、享宴皆折俎ありて、體薦せず。○折は、之設反。

穆叔賦鵲巢。鵲巢、詩召南。言鵲有巢而鳩居之。喩晉君有國、趙孟治之。
【読み】
穆叔鵲巢[じゃくそう]を賦す。鵲巢は、詩の召南。言うこころは、鵲巢有りて鳩之に居る。晉君國を有ち、趙孟之を治むるに喩う。

趙孟曰、武不堪也。又賦采蘩。亦詩召南。義取蘩菜薄物、可以薦公侯、享其信不求其厚也。
【読み】
趙孟曰く、武堪えざるなり、と。又采蘩[さいはん]を賦す。亦詩の召南。義蘩菜は薄物なるも、以て公侯に薦む可し、其の信を享けて其の厚きを求めざるに取るなり。

曰、小國爲蘩。大國省穡而用之、其何實非命。穆叔言、小國微薄猶蘩菜、大國能省愛、用之而不棄、則何敢不從命。穡、愛也。○省、所景反。又所幸反。
【読み】
曰く、小國は蘩爲り。大國省穡して之を用いば、其れ何ぞ實に命に非ざらん、と。穆叔言う、小國微薄にして猶蘩菜のごとくなるも、大國能く省愛して、之を用いて棄てざれば、則ち何ぞ敢えて命に從わざらん、と。穡は、愛するなり。○省は、所景反。又所幸反。

子皮賦野有死麕之卒章。野有死麕、詩召南。卒章曰、舒而脫脫兮。無感我帨兮。無使尨也吠。脫脫、安徐。帨、佩巾。義取君子徐以禮來、無使我失節、而使狗驚吠。喩趙孟以義撫諸侯、無以非禮相加陵。○脫、吐外反。帨、始銳反。
【読み】
子皮野有死麕[やゆうしきん]の卒章を賦す。野有死麕は、詩の召南。卒章に曰く、舒[しず]かにして脫脫[たいたい]たり。我が帨[ぜい]を感[うご]かすこと無かれ。尨[いぬ]をして吠えしむること無かれ、と。脫脫は、安徐。帨は、佩巾。義君子徐[しず]かに禮を以て來り、我をして節を失わしめて、狗をして驚吠せしむること無かれというに取る。趙孟義を以て諸侯を撫して、非禮を以て相加陵すること無きに喩う。○脫は、吐外反。帨は、始銳反。

趙孟賦常棣。常棣、詩小雅。取其凡今之人、莫如兄弟。言欲親兄弟之國。
【読み】
趙孟常棣[じょうてい]を賦す。常棣は、詩の小雅。其の凡そ今の人、兄弟に如くは莫しというに取る。言うこころは、兄弟の國を親せんことを欲す。

且曰、吾兄弟比以安、尨也可使無吠。受子皮之詩。○比、毗志反。下同。
【読み】
且つ曰く、吾が兄弟比して以て安んぜば、尨や吠ゆること無からしむ可し、と。子皮の詩を受く。○比は、毗志反。下も同じ。

穆叔・子皮及曹大夫興拜。三大夫、皆兄弟國。興、起也。
【読み】
穆叔・子皮曹の大夫と興[た]ちて拜す。三大夫は、皆兄弟の國。興は、起つなり。

舉兕爵曰、小國賴子、知免於戾矣。兕爵、所以罰不敬。言小國蒙趙孟德比以安、自知免此罰戮。
【読み】
兕爵[じしゃく]を舉げて曰く、小國子に賴りて、戾[つみ]に免ることを知れり、と。兕爵は、不敬を罰する所以なり。言うこころは、小國趙孟の德を蒙り比して以て安く、自ら此の罰戮を免るるを知る。

飮酒樂。趙孟出曰、吾不復此矣。不復見此樂。○樂、音洛。復、去聲。下同。
【読み】
酒を飮みて樂しむ。趙孟出でて曰く、吾れ此を復びせじ、と。復此の樂を見じ。○樂は、音洛。復は、去聲。下も同じ。

天王使劉定公勞趙孟於潁、館於雒汭。王、周景王。定公、劉夏。潁水、出陽城縣。雒汭、在河南鞏縣南。水曲流爲汭。
【読み】
天王劉定公をして趙孟を潁に勞わしめ、雒汭[らくぜい]に館す。王は、周の景王。定公は、劉夏。潁水は、陽城縣に出づ。雒汭は、河南鞏縣の南に在り。水の曲流を汭と爲す。

劉子曰、美哉禹功、見河雒而思禹功。
【読み】
劉子曰く、美なるかな禹の功、河雒を見て禹の功を思うなり。

明德遠矣。微禹、吾其魚乎。吾與子弁冕端委、以治民臨諸侯、禹之力也。弁冕、冠也。端委、禮衣。言今得共服冠冕有國家者、皆由禹之力。
【読み】
明德遠し。禹微かりせば、吾れ其れ魚ならんか。吾と子と弁冕端委して、以て民を治め諸侯に臨むは、禹の力なり。弁冕は、冠なり。端委は、禮衣。言うこころは、今共に冠冕を服して國家を有つことを得るは、皆禹の力に由る。

子盍亦遠績禹功、而大庇民乎。勸趙孟使纂禹功。
【読み】
子盍ぞ亦遠く禹の功を績[つ]ぎて、大いに民を庇わざるや、と。趙孟を勸めて禹の功を纂[つ]がしむ。

對曰、老夫罪戾是懼。焉能恤遠。吾儕偸食、朝不謀夕。何其長也。言欲苟免目前。不能念長久。
【読み】
對えて曰く、老夫罪戾を是れ懼る。焉ぞ能く遠きを恤えん。吾儕は偸食[とうしょく]して、朝夕を謀らず。何ぞ其れ長きをせんや、と。言うこころは、苟も目前を免れんことを欲す。長久を念うこと能わず。

劉子歸以語王曰、諺所謂老將知而耄及之者、八十曰耄。耄、亂也。○知、音智。
【読み】
劉子歸りて以て王に語りて曰く、諺に所謂老いて將に知ならんとして耄之に及ぶとは、八十を耄と曰う。耄は、亂るるなり。○知は、音智。

其趙孟之謂乎。爲晉正卿、以主諸侯。而儕於隸人、朝不謀夕。言其自比於賤人、而無恤民之心。
【読み】
其れ趙孟を謂うか。晉の正卿として、以て諸侯を主れり。而るに隸人に儕[ひと]しくして、朝夕を謀らずという。言うこころは、其れ自ら賤人に比して、民を恤うるの心無し。

棄神人矣。民爲神主。不恤民。故神人皆去。
【読み】
神人に棄てられたり。民は神の主爲り。民を恤えず。故に神人皆去つ。

神怒民叛、何以能久。趙孟不復年矣。言將死。不復見明年。
【読み】
神怒り民叛かば、何を以て能く久しからん。趙孟復年せじ。言うこころは、將に死せんとす。復明年を見じ。

神怒、不歆其祀、民叛、不卽其事。祀事不從、又何以年。爲此冬趙孟卒起本。
【読み】
神怒れば、其の祀を歆[う]けず、民叛けば、其の事に卽かず。祀事從わざれば、又何を以て年せん、と。此の冬趙孟卒する爲の起本なり。

叔孫歸。虢會歸。
【読み】
叔孫歸る。虢の會より歸るなり。

曾夭御季孫以勞之。旦及日中不出。恨季孫伐莒、使己幾被戮。
【読み】
曾夭季孫に御して以て之を勞う。旦より日中に及べども出でず。季孫莒を伐ち、己をして幾ど戮を被らしめんとするを恨む。

曾夭謂曾阜、曾阜、叔孫家臣。
【読み】
曾夭曾阜に謂いて、曾阜は、叔孫の家臣。

曰、旦及日中。吾知罪矣。魯以相忍爲國也。忍其外、不忍其内、焉用之。欲受楚戮、是忍其外。日中不出、是不忍其内。
【読み】
曰く、旦より日中に及べり。吾れ罪を知れり。魯は相忍ぶを以て國を爲せり。其の外に忍びて、其の内に忍びざること、焉ぞ之を用いん、と。楚の戮を受けんと欲するは、是れ其の外に忍ぶなり。日中まで出でざるは、是れ其の内に忍びざるなり。

阜曰、數月於外。言叔孫勞役在外數月。○數、所主反。
【読み】
阜曰く、外に數月せり。言うこころは、叔孫勞役して外に在ること數月なり。○數は、所主反。

一旦於是、庸何傷。賈而欲贏、而惡嚻乎。言譬如商賈求贏利者、不得惡諠嚻之聲。○賈、音古。惡、烏路反。下同。嚻、許驕反。又五高反。
【読み】
是に一旦するも、庸て何ぞ傷まん。賈して贏[えい]を欲して、嚻[ごう]を惡まんや、と。言うこころは、譬えば商賈の贏利を求むる者の、諠嚻の聲を惡むことを得ざるが如し。○賈は、音古。惡は、烏路反。下も同じ。嚻は、許驕反。又五高反。

阜謂叔孫曰、可以出矣。叔孫指楹曰、雖惡是、其可去乎。乃出見之。楹、柱也。以諭魯有季孫、猶屋有柱。○去、起呂反。
【読み】
阜叔孫に謂いて曰く、以て出づ可し、と。叔孫楹を指して曰く、是を惡むと雖も、其れ去る可けんや、と。乃ち出でて之を見る。楹は、柱なり。以て魯に季孫有るは、猶屋の柱有るがごときに諭う。○去は、起呂反。

鄭徐吾犯之妹美。犯、鄭大夫。
【読み】
鄭の徐吾犯の妹美なり。犯は、鄭の大夫。

公孫楚聘之矣。楚、子南。穆公孫。
【読み】
公孫楚之を聘す。楚は、子南。穆公の孫。

公孫黑又使强委禽焉。禽、鴈也。納采用鴈。○强、其丈反。
【読み】
公孫黑又强いて禽を委せしむ。禽は、鴈なり。納采に鴈を用ゆ。○强は、其丈反。

犯懼、告子產。子產曰、是國無政。非子之患也。唯所欲與。犯請於二子、請使女擇焉。皆許之。子皙盛飾入、布幣而出。布陳贄幣。子皙、公孫黑。
【読み】
犯懼れて、子產に告ぐ。子產曰く、是れ國に政無きなり。子の患えには非ざるなり。唯與えんと欲する所のままなり、と。犯二子に請えらく、請う、女をして擇ばしめん、と。皆之を許す。子皙盛飾して入り、幣を布きて出づ。贄幣を布陳す。子皙は、公孫黑。

子南戎服入、左右射、超乘而出。女自房觀之、曰、子皙信美矣。抑子南夫也。言丈夫。○乘、繩證反。
【読み】
子南戎服して入り、左右に射、超乘して出づ。女房より之を觀て、曰く、子皙は信に美なり。抑々子南は夫なり。言うこころは、丈夫なり。○乘は、繩證反。

夫夫婦婦、所謂順也。適子南氏。
【読み】
夫夫たり婦婦たるは、所謂順なり、と。子南氏に適く。

子皙怒。旣而櫜甲以見子南。欲殺之而取其妻。子南知之、執戈逐之、及衝、擊之以戈。衝、交道。
【読み】
子皙怒る。旣にして櫜甲[こうこう]して以て子南を見る。之を殺して其の妻を取らんと欲す。子南之を知り、戈を執りて之を逐い、衝に及びて、之を擊つに戈を以てす。衝は、交道。

子皙傷而歸。告大夫曰、我好見之、不知其有異志也。故傷。大夫皆謀之。子產曰、直鈞、幼賤有罪。罪在楚也。先聘、子南直也。子南用戈、子皙直也。子產力未能討。故鈞其事、歸罪於楚。○好、如字。一呼報反。
【読み】
子皙傷つきて歸る。大夫に告げて曰く、我れ之を好見して、其の異志有るを知らざりき。故に傷けり、と。大夫皆之を謀る。子產曰く、直鈞しきは、幼賤に罪有り。罪は楚に在り、と。先ず聘するは、子南の直なり。子南戈を用ゆるは、子皙の直なり。子產力未だ討ずること能わず。故に其の事を鈞しくして、罪を楚に歸するなり。○好は、字の如し。一に呼報反。

乃執子南而數之曰、國之大節有五。女皆奸之。奸、犯也。○女、音汝。下皆同。
【読み】
乃ち子南を執えて之を數[せ]めて曰く、國の大節五有り。女皆之を奸せり。奸は、犯すなり。○女は、音汝。下も皆同じ。

畏君之威、聽其政、尊其貴、事其長、養其親。五者所以爲國也。今君在國、女用兵焉、不畏威也。奸國之紀、不聽政也。奸國之紀、謂傷人。○長、丁丈反。養、如字。
【読み】
君の威を畏れ、其の政を聽き、其の貴を尊び、其の長に事え、其の親を養う。五つの者は國を爲むる所以なり。今君國に在すに、女兵を用ゆるは、威を畏れざるなり。國の紀を奸すは、政を聽かざるなり。國の紀を奸すとは、人を傷つくるを謂う。○長は、丁丈反。養は、字の如し。

子皙上大夫、女嬖大夫、而弗下之、不尊貴也。幼而不忌、不事長也。忌、畏也。
【読み】
子皙は上大夫、女は嬖大夫にして、之に下らざるは、貴を尊ばざるなり。幼にして忌[おそ]れざるは、長に事えざるなり。忌は、畏るるなり。

兵其從兄、不養親也。君曰、余不女忍殺。宥女以遠。勉速行乎。無重而罪。五月、庚辰、鄭放游楚於吳。
【読み】
其の從兄を兵するは、親を養わざるなり。君曰く、余女を殺すに忍びず。女を宥むるに遠を以てす、と。勉めて速やかに行[さ]らんか。而の罪を重ぬること無かれ、と。五月、庚辰[かのえ・たつ]、鄭游楚を吳に放つ。

將行子南、子產咨於大叔。大叔、游楚之兄子。○從兄、如字。又才用反。
【読み】
將子南を行らんとするに、子產大叔に咨[と]う。大叔は、游楚の兄の子。○從兄は、字の如し。又才用反。

大叔曰、吉不能亢身。焉能亢宗。亢、蔽也。○亢、苦浪反。
【読み】
大叔曰く、吉や身を亢[おお]うこと能わず。焉ぞ能く宗を亢わん。亢は、蔽うなり。○亢は、苦浪反。

彼國政也。非私難也。子圖鄭國。利則行之。又何疑焉。周公殺管叔而蔡蔡叔。蔡、放也。○難、乃旦反。蔡蔡、上素葛反。下如字。
【読み】
彼は國政なり。私の難に非ざるなり。子は鄭國を圖る。利ならば則ち之を行え。又何ぞ疑わん。周公は管叔を殺して蔡叔を蔡[はな]てり。蔡は、放つなり。○難は、乃旦反。蔡蔡は、上は素葛反。下は字の如し。

夫豈不愛。王室故也。吉若獲戾、子將行之。何有於諸游。爲二年、鄭殺公孫黑傳。○夫、音扶。
【読み】
夫れ豈愛せざらんや。王室の故なり。吉若し戾を獲ば、子將に之を行らんとす。諸游に何か有らん、と。二年、鄭公孫黑を殺す爲の傳なり。○夫は、音扶。

秦后子有寵於桓、如二君於景。后子、秦桓公子、景公母弟鍼也。其權寵如兩君。
【読み】
秦の后子桓に寵有りて、景に二君の如し。后子は、秦の桓公の子、景公の母弟鍼なり。其の權寵兩君の如し。

其母曰、弗去懼選。選、數也。恐景公數其罪而加戮。○選、息轉反。又素短反。數、所主反。
【読み】
其の母曰く、去らずんば懼らくは選[かぞ]えられん、と。選は、數うるなり。恐らくは景公其の罪を數えて戮を加えん。○選は、息轉反。又素短反。數は、所主反。

癸卯、鍼適晉。其車千乘。
【読み】
癸卯[みずのと・う]、鍼晉に適く。其の車千乘あり。

書曰秦伯之弟鍼出奔晉、罪秦伯也。罪失敎。
【読み】
書して秦伯の弟鍼出でて晉に奔ると曰うは、秦伯を罪するなり。敎えを失うを罪す。

后子享晉侯。爲晉侯設享禮。
【読み】
后子晉侯を享す。晉侯の爲に享禮を設く。

造舟于河、造舟爲梁、通秦・晉之道。○造、七報反。
【読み】
河に造舟し、造舟して梁と爲して、秦・晉の道を通ず。○造は、七報反。

十里舍車、一舍八乘、爲八反之備。
【読み】
十里に車を舍き、一舍に八乘、八反の備えを爲す。

自雍及絳。雍・絳相去千里、用車八百乘。○雍、於用反。
【読み】
雍より絳に及ぶ。雍・絳相去ること千里、車八百乘を用ゆ。○雍は、於用反。

歸取酬幣、備九獻之儀。始禮自齎其一。故續送其八酬酒幣。
【読み】
歸りて酬幣を取らしめ、九獻の儀を備うる。始禮は自ら其の一つを齎[もたら]す。故に其の八つの酬酒幣を續ぎ送るなり。

終事八反。每十里以八乘車、各以次載幣、相授而還。不徑至。故言八反。千里用車八百乘、其二百乘以自隨。故言千乘。傳言秦鍼之出、極奢富以成禮、欲盡敬於所赴。
【読み】
事を終うるまで八反す。十里每に八乘の車を以てして、各々次を以て幣を載せて、相授けて還る。徑[ただ]ちに至らず。故に八反と言う。千里に車八百乘を用い、其の二百乘は以て自ら隨う。故に千乘と言う。傳秦鍼の出づる、奢富を極めて以て禮を成して、敬を赴[つ]ぐる所に盡くせんと欲するを言う。

司馬侯問焉曰、子之車盡於此而已乎。對曰、此之謂多矣。若能少此、吾何以得見。言己坐車多故出奔。○見、賢遍反。
【読み】
司馬侯問いて曰く、子の車此に盡きたるのみか、と。對えて曰く、此を多しと謂えり。若し能く此より少なくば、吾れ何を以て見ゆることを得ん、と。言うこころは、己車の多き故に坐して出奔す。○見は、賢遍反。

女叔齊以告公、叔齊、司馬侯。
【読み】
女叔齊以て公に告げ、叔齊は、司馬侯。

且曰、秦公子必歸。臣聞、君子能知其過、必有令圖。令圖、天所贊也。后子見趙孟。趙孟曰、吾子其曷歸。問何時當歸。
【読み】
且つ曰く、秦の公子は必ず歸らん。臣聞く、君子能く其の過ちを知れば、必ず令圖有り、と。令圖は、天の贊くる所なり、と。后子趙孟を見る。趙孟曰く、吾子其れ曷[いつ]か歸らん、と。何の時か當に歸るべきと問う。

對曰、鍼懼選於寡君、是以在此。將待嗣君。趙孟曰、秦君何如。對曰、無道。趙孟曰、亡乎。對曰、何爲。一世無道、國未艾也。艾、絕也。○艾、魚廢反。
【読み】
對えて曰く、鍼寡君に選えられんことを懼れ、是を以て此に在り。將に嗣君を待たんとす、と。趙孟曰く、秦君は何如、と。對えて曰く、無道なり、と。趙孟曰く、亡びんか、と。對えて曰く、何爲れぞ。一世の無道にしては、國未だ艾[た]えざるなり。艾は、絕えるなり。○艾は、魚廢反。

國於天地、有與立焉。言欲輔助之者多。
【読み】
天地に國するは、與に立つること有り。言うこころは、之を輔助せんと欲する者多し。

不數世淫、弗能斃也。趙孟曰、天乎。對曰、有焉。趙孟曰、其幾何。對曰、鍼聞之、國無道而年穀和熟、天贊之也。贊、佐助也。
【読み】
數世の淫ならざれば、斃るること能わざるなり、と。趙孟曰く、天か、と。對えて曰く、有り、と。趙孟曰く、其れ幾何ぞ、と。對えて曰く、鍼之を聞く、國無道にして年穀和熟するは、天の之を贊くるなり、と。贊は、佐助なり。

鮮不五稔。鮮、少也。少尙當歷五年。多則不啻。
【読み】
鮮きも五稔ならざらんや、と。鮮は、少なきなり。少なきも尙當に五年を歷るべし。多くば則ち啻[ただ]ならず。

趙孟視蔭曰、朝夕不相及。誰能待五。蔭、日景也。趙孟意衰、以日景自喩。故言朝夕不相及、誰能待五。○蔭、於金反。景、如字。又於領反。
【読み】
趙孟蔭を視て曰く、朝夕相及ばず。誰か能く五を待たん、と。蔭は、日景なり。趙孟意衰え、日景を以て自ら喩う。故に朝夕相及ばず、誰か能く五を待たんと言う。○蔭は、於金反。景は、字の如し。又於領反。

后子出而告人曰、趙孟將死矣。主民、翫歲而愒日。翫・愒、皆貪也。○愒、苦蓋反。
【読み】
后子出でて人に告げて曰く、趙孟將に死せんとす。民を主りて、歲を翫[むさぼ]りて日を愒[むさぼ]る。翫[がん]・愒[かい]は、皆貪るなり。○愒は、苦蓋反。

其與幾何。言不能久。○與、如字。又預。
【読み】
其れ與に幾何かあらん、と。言うこころは、久しきこと能わず。○與は、字の如し。又預。

鄭爲游楚亂故、游楚、子南。
【読み】
鄭游楚の亂の爲の故に、游楚は、子南。

六月、丁巳、鄭伯及其大夫盟于公孫段氏。罕虎・公孫僑・公孫段・印段・游吉・駟帶私盟于閨門之外。實薰隧。閨門、鄭城門。薰隧、門外道名。實之者、爲明年、子產數子皙罪、稱薰隧盟起本。
【読み】
六月、丁巳、鄭伯其の大夫と公孫段氏に盟う。罕虎・公孫僑・公孫段・印段・游吉・駟帶私に閨門の外に盟う。實は薰隧なり。閨門は、鄭の城門。薰隧は、門外の道の名。之を實にするは、明年、子產子皙の罪を數めて、薰隧の盟を稱する爲の起本なり。

公孫黑强與於盟、使大史書其名、且曰七子。自欲同於六卿。故曰七子。○强、其丈反。與、音預。
【読み】
公孫黑强いて盟に與り、大史をして其の名を書さしめ、且つ七子と曰う。自ら六卿に同じからんと欲す。故に七子と曰う。○强は、其丈反。與は、音預。

子產弗討。子皙强。討之、恐亂國。
【読み】
子產討ぜず。子皙强し。之を討ぜば、恐らくは國を亂らん。

晉中行穆子敗無終及羣狄于大原。卽大鹵也。無終、山戎。
【読み】
晉の中行穆子無終と羣狄とを大原に敗りぬ。卽ち大鹵なり。無終は、山戎。

崇卒也。崇、衆也。
【読み】
卒を崇[あつ]めてなり。崇は、衆なり。
*「衆」は、漢籍國字解全書では「聚」。

將戰、魏舒曰、彼徒我車、所遇又阨。地險不便車。○阨、於懈反。
【読み】
將に戰わんとするとき、魏舒曰く、彼は徒我は車、遇う所又阨[あい]なり。地險にして車に便ならず。○阨は、於懈反。

以什共車、必克。更增十人、以當一車之用。○共、音恭。
【読み】
什を以て車に共せば、必克たん。更に十人を增して、以て一車の用に當つるなり。○共は、音恭。

困諸阨、又克。車每困於阨道。今去車。故爲必克。○去、起呂反。
【読み】
諸を阨に困しめば、又克たん。車每[つね]に阨道に困しむ。今車を去る。故に必ず克つとす。○去は、起呂反。

請皆卒。去車爲步卒。
【読み】
請う、皆卒とせん。車を去てて步卒とす。

自我始。乃毀車以爲行、魏舒先自毀其屬車爲步陳。○行、戶郎反。陳、直覲反。下五陳・未陳同。
【読み】
我より始めん、と。乃ち車を毀りて以て行を爲し、魏舒先ず自ら其の屬車を毀りて步陳と爲す。○行は、戶郎反。陳は、直覲反。下の五陳・未陳も同じ。

五乘爲三伍。乘車者車三人。五乘、十五人。今改去車、更以五人爲伍、分爲三伍。○五乘、繩證反。
【読み】
五乘を三伍と爲す。車に乘る者車ごとに三人なり。五乘は、十五人なり。今改めて車を去り、更に五人を以て伍と爲し、分けて三伍と爲す。○五乘は、繩證反。

荀吳之嬖人不肯卽卒。斬以徇。魏舒輒斬之。荀吳不恨。所以能立功。
【読み】
荀吳の嬖人肯えて卒に卽かず。斬りて以て徇[とな]う。魏舒輒ち之を斬る。荀吳恨みず。能く功を立つる所以なり。

爲五陳以相離、兩於前、伍於後、專爲右角、參爲左角、偏爲前拒、皆臨時處置之名。○拒、九甫反。
【読み】
五陳を爲して以て相離ち、兩を前に、伍を後に、專を右角と爲し、參を左角と爲し、偏を前拒と爲して、皆時に臨みて處置するの名。○拒は、九甫反。

以誘之。翟人笑之。笑其失常。
【読み】
以て之を誘く。翟人之を笑う。其の常を失うを笑う。

未陳而薄之、大敗之。傳言苟吳能用善謀。
【読み】
未だ陳せずして之に薄[せま]り、大いに之を敗れり。傳苟吳能く善謀を用ゆるを言う。

莒展輿立、而奪羣公子秩。公子召去疾于齊。秋、齊公子鉏納去疾。齊雖納去疾、莒人先召之。故從國逆例書入。去疾奔齊、在襄三十一年。
【読み】
莒の展輿立ちて、羣公子の秩を奪う。公子去疾を齊より召ぶ。秋、齊の公子鉏去疾を納る。齊去疾を納ると雖も、莒人先ず之を召ぶ。故に國逆の例に從いて入ると書す。去疾齊に奔るは、襄三十一年に在り。

展輿奔吳。吳外孫。
【読み】
展輿吳に奔る。吳の外孫なればなり。

叔弓帥師疆鄆田。因莒亂也。此春取鄆、今正其疆界。
【読み】
叔弓師を帥いて鄆の田を疆う。莒の亂に因りてなり。此の春鄆を取り、今其の疆界を正すなり。

於是莒務婁・瞀胡及公子滅明、以大厖與常儀靡奔齊。三子、展輿黨。大厖・常儀靡、莒二邑。○務、如字。又音謀。一音無。瞀、音茂。一音謀。
【読み】
是に於て莒の務婁[ぼうろう]・瞀胡[ぼうこ]と公子滅明と、大厖[たいぼう]と常儀靡とを以[い]て齊に奔る。三子は、展輿の黨。大厖・常儀靡は、莒の二邑。○務は、字の如し。又音謀。一に音無。瞀は、音茂。一に音謀。

君子曰、莒展之不立、棄人也夫。奪羣公子秩、是弃人。
【読み】
君子曰く、莒展の立たざるは、人を棄てたるなり。羣公子の秩を奪うは、是れ人を弃つるなり。

人可棄乎。詩曰、無競維人、善矣。詩、周頌。言惟得人則國家彊。
【読み】
人棄つ可けんや。詩に曰く、維れ人より競[つよ]きは無しとは、善し、と。詩は、周頌。言うこころは、惟れ人を得れば則ち國家彊し。

晉侯有疾。鄭伯使公孫僑如晉聘、且問疾。叔向問焉曰、寡君之疾病。卜人曰、實沈・臺駘爲祟。史莫之知。敢問此何神也。子產曰、昔高辛氏有二子。伯曰閼伯、季曰實沈。高辛、帝嚳。○駘、他才反。閼、於葛反。嚳、音酷。
【読み】
晉侯疾有り。鄭伯公孫僑をして晉に如きて聘し、且つ疾を問わしむ。叔向問いて曰く、寡君の疾病なり。卜人曰く、實沈・臺駘祟りを爲す、と。史之を知るもの莫し。敢えて問う、此れ何れの神ぞや、と。子產曰く、昔高辛氏に二子有り。伯を閼伯[あつはく]と曰い、季を實沈と曰う。高辛は、帝嚳[ていこく]。○駘は、他才反。閼は、於葛反。嚳は、音酷。

居于曠林、不相能也。曠林、地闕。○能、如字。又奴代反。
【読み】
曠林に居りて、相能[むつ]まじからず。曠林は、地闕く。○能は、字の如し。又奴代反。

日尋干戈、以相征討。尋、用也。
【読み】
日々に干戈を尋[もち]いて、以て相征討す。尋は、用ゆるなり。

后帝不臧、后帝、堯也。臧、善也。
【読み】
后帝臧[よみ]せず、后帝は、堯なり。臧は、善なり。

遷閼伯于商丘、主辰。商丘、宋地。主祀辰星。辰、大火也。
【読み】
閼伯を商丘に遷して、辰を主らしむ。商丘は、宋の地。辰星を祀ることを主る。辰は、大火なり。

商人是因。故辰爲商星。商人、湯先相土。封商丘、因閼伯故國祀辰星。
【読み】
商人是に因る。故に辰を商の星と爲す。商人は、湯の先相土なり。商丘に封ぜられ、閼伯の故國に因りて辰星を祀れり。

遷實沈于大夏、主參。大夏、今晉陽縣。○參、音森。下同。
【読み】
實沈を大夏に遷して、參を主らしむ。大夏は、今の晉陽縣。○參は、音森。下も同じ。

唐人是因、以服事夏・商。唐人、若劉累之等。累遷魯縣、此在大夏。
【読み】
唐人是に因りて、以て夏・商に服事す。唐人とは、劉累の等の若きなり。累は魯縣に遷り、此は大夏に在り。

其季世曰唐叔虞。唐人之季世、其君曰叔虞。
【読み】
其の季世を唐叔虞と曰う。唐人の季世にして、其の君を叔虞と曰う。

當武王邑姜方震大叔、邑姜、武王后。齊大公之女。懷胎爲震。大叔、成王之弟、叔虞。○震、音振。又音申。大、音泰。
【読み】
武王の邑姜の方に大叔を震[はら]めるに當たり、邑姜は、武王の后。齊の大公の女。懷胎を震と爲す。大叔は、成王の弟、叔虞。○震は、音振。又音申。大は、音泰。

夢帝謂己、余命而子曰虞。帝、天。取唐君之名。
【読み】
夢に帝己に謂えらく、余而[なんじ]の子を命[なづ]けて虞と曰わん。帝は、天。唐君の名を取るなり。

將與之唐、屬諸參、而蕃育其子孫。及生、有文在其手曰虞。遂以命之。及成王滅唐而封大叔焉。故參爲晉星。叔虞封唐。是爲晉侯。○屬、之玉反。蕃、音煩。
【読み】
將に之に唐を與え、諸を參に屬して、其の子孫を蕃育せんとす、と。生まるるに及びて、文の其の手に在る有りて虞と曰う。遂に以て之に命けぬ。成王の唐を滅ぼすに及びて大叔を封ぜり。故に參を晉の星と爲す。叔虞唐に封ぜらる。是を晉侯と爲す。○屬は、之玉反。蕃は、音煩。

由是觀之、則實沈、參神也。
【読み】
是に由りて之を觀れば、則ち實沈は、參の神なり。

昔金天氏有裔子曰昧。爲玄冥師、生允格・臺駘。金天氏、帝少暭。裔、遠也。玄冥、水官。昧爲水官之長。
【読み】
昔金天氏に裔子有り昧と曰う。玄冥の師と爲り、允格[いんかく]・臺駘を生む。金天氏は、帝少暭。裔は、遠きなり。玄冥は、水官。昧を水官の長と爲す。

臺駘能業其官、纂昧之業。
【読み】
臺駘能く其の官を業にし、昧の業を纂ぐ。

宣汾・洮、宣、猶通也。汾・洮、二水名。○洮、他刀反。
【読み】
汾・洮[とう]を宣[とお]し、宣は、猶通すのごとし。汾・洮は、二水の名。○洮は、他刀反。

障大澤、陂障之。○障、之尙反。又音章。
【読み】
大澤に障して、之に陂障す。○障は、之尙反。又音章。

以處大原。大原、晉陽也。臺駘之所居。
【読み】
以て大原に處れり。大原は、晉陽なり。臺駘の居る所。

帝申嘉之、封諸汾川、帝、顓頊。
【読み】
帝申ねて之を嘉して、諸を汾川に封じ、帝は、顓頊[せんぎょく]。

沈・姒・蓐・黃實守其祀、四國、臺駘之後。○沈、音審。
【読み】
沈[しん]・姒・蓐[じょく]・黃實に其の祀を守りしを、四國は、臺駘の後。○沈は、音審。

今晉主汾而滅之矣。滅四國。
【読み】
今晉汾を主りて之を滅ぼせり。四國を滅ぼす。

由是觀之、則臺駘、汾神也。
【読み】
是に由りて之を觀れば、則ち臺駘は、汾の神なり。

抑此二者、不及君身。山川之神、則水旱癘疫之災、於是乎禜之、有水旱之災、則禜祭山川之神、若臺駘者。周禮、四曰禜祭。爲營欑、用幣、以祈福祥。○禜、音詠。欑、子管反。
【読み】
抑々此の二りの者は、君の身に及ばず。山川の神は、則ち水旱癘疫の災あれば、是に於て之を禜[えい]し、水旱の災有れば、則ち山川の神、臺駘の若き者を禜祭するなり。周禮に、四に禜祭と曰う。營欑[えいさん]を爲し、幣を用いて、以て福祥を祈る。○禜は、音詠。欑は、子管反。

日月星辰之神、則雪霜風雨之不時、於是乎禜之。星辰之神、若實沈者。
【読み】
日月星辰の神は、則ち雪霜風雨の時ならざれば、是に於て之を禜するのみ。星辰の神は、實沈の若き者。

若君身、則亦出入・飮食・哀樂之事也。山川星辰之神、又何爲焉。言實沈・臺駘不爲君疾。
【読み】
君の身の若きは、則ち亦出入・飮食・哀樂の事なり。山川星辰の神、又何ぞ爲さん。言うこころは、實沈・臺駘君の疾を爲さず。

僑聞之、君子有四時。朝以聽政、聽國政。
【読み】
僑之を聞く、君子に四時有り。朝は以て政を聽き、國政を聽く。

晝以訪問、問可否。
【読み】
晝は以て訪問し、可否を問う。

夕以脩令、念所施。
【読み】
夕は以て令を脩め、施す所を念う。

夜以安身。於是乎節宣其氣、宣、散也。
【読み】
夜は以て身を安んず、と。是に於て其の氣を節宣して、宣は、散るなり。

勿使有所壅閉湫底、以露其體、湫、集也。底、滯也。露、羸也。壹之則血氣集滯、而體羸露。○壅、於勇反。湫、子小反。又音秋。底、丁禮反。
【読み】
壅閉湫底する所有りて、以て其の體を露[つか]らし、湫は、集まるなり。底は、滯るなり。露は、羸[つか]れるなり。之を壹にすれば則ち血氣集滯して、體羸露[るいろ]す。○壅は、於勇反。湫は、子小反。又音秋。底は、丁禮反。

玆心不爽、而昏亂百度。玆、此也。爽、明也。百度、百事之節。
【読み】
玆の心爽ならずして、百度を昏亂せしむること勿し。玆は、此なり。爽は、明らかなり。百度は、百事の節。

今無乃壹之。同四時也。
【読み】
今乃ち之を壹にすること無からんや。四時を同じくするなり。

則生疾矣。
【読み】
則ち疾を生じぬ。

僑又聞之、内官不及同姓。内官、嬪御。
【読み】
僑又之を聞く、内官は同姓に及ばず。内官は、嬪御。

其生不殖、殖、長也。
【読み】
其の生殖せず、殖は、長ずるなり。

美先盡矣、則相生疾。同姓之相與、先美也。美極則盡。盡則生疾。
【読み】
美先ず盡くれば、則ち疾を相生ず。同姓の相與するは、先ず美なり。美極まれば則ち盡く。盡くれば則ち疾を生ず。

君子是以惡之。故志曰、買妾不知其姓、則卜之。違此二者、古之所愼也。壹四時、取同姓、二者古人所愼。○惡、如字。又烏路反。取、七住反。
【読み】
君子是を以て之を惡む、と。故に志に曰く、妾を買うに其の姓を知らざれば、則ち之を卜う、と。此の二つの者に違うは、古の愼む所なり。四時を壹にし、同姓を取る、二つの者は古人の愼む所なり。○惡は、字の如し。又烏路反。取は、七住反。

男女辨姓、禮之大司也。辨、別也。
【読み】
男女姓を辨つは、禮の大司なり。辨は、別つなり。

今君内實有四姬焉。同姓姬四人。
【読み】
今君の内實に四姬有り。同姓の姬四人。

其無乃是也乎。若由是二者、弗可爲也已。爲、治也。
【読み】
其れ乃ち是なること無からんや。若し是の二つの者に由らば、爲む可からざるのみ。爲は、治むるなり。

四姬有省猶可。無則必生疾矣。據異姓、去同姓。故言省。○省、所景反。又所幸反。
【読み】
四姬を省くこと有らば猶可なり。無くば則ち必ず疾を生ぜん、と。異姓に據りて、同姓を去る。故に省くと言う。○省は、所景反。又所幸反。

叔向曰、善哉。肸未之聞也。此皆然矣。
【読み】
叔向曰く、善いかな。肸[きつ]未だ之を聞かざりき。此れ皆然り、と。

叔向出。行人揮送之。送叔向。
【読み】
叔向出づ。行人揮之を送る。叔向を送る。

叔向問鄭故焉、且問子皙。對曰、其與幾何。言將敗不久。○與、如字。又音預。
【読み】
叔向鄭の故を問い、且つ子皙を問う。對えて曰く、其れ幾何かあらん。言うこころは、將に敗れんとすること久しからず。○與は、字の如し。又音預。
*頭注に、「按與、語助也。一說、與、助也。言助之者少也。」とある。

無禮而好陵人、怙富而卑其上。弗能久矣。爲明年、鄭殺公孫黑傳。
【読み】
無禮にして人を陵ぐことを好み、富を怙[たの]みて其の上を卑しむ。久しきこと能わじ、と。明年、鄭公孫黑を殺す爲の傳なり。

晉侯聞子產之言曰、博物君子也。重賄之。
【読み】
晉侯子產の言を聞きて曰く、博物の君子なり、と。重く之に賄う。

晉侯求醫於秦。秦伯使醫和視之。曰、疾不可爲也。是謂近女室。疾如蠱。蠱、惑疾。
【読み】
晉侯醫を秦に求む。秦伯醫和をして之を視せしむ。曰く、疾爲む可からざるなり。是を女室に近づくと謂う。疾蠱の如し。蠱は、惑疾。

非鬼非食、惑以喪志。惑女色而失志。○喪、息浪反。
【読み】
鬼に非ず食に非ず、惑いて以て志を喪えり。女色に惑いて志を失う。○喪は、息浪反。

良臣將死。天命不祐。良臣不匡救君過。故將死、而不爲天所祐。
【読み】
良臣將に死せんとす。天命祐けず、と。良臣君の過ちと匡救せず。故に將に死せんとして、天の爲に祐けられず。

公曰、女不可近乎。對曰、節之。先王之樂、所以節百事也。故有五節。五聲之節。
【読み】
公曰く、女は近づく可からざるか、と。對えて曰く、之を節するなり。先王の樂は、百事を節する所以なり。故に五節有り。五聲の節。

遲速本末以相及、中聲以降、五降之後、不容彈矣。此謂先王之樂得中聲、聲成五降而息也。降、罷退。○彈、徒丹反。又徒旦反。
【読み】
遲速本末以て相及ぼし、中聲にして以て降り、五降の後、容[まさ]に彈ずべからず。此れ先王の樂は中聲を得、聲成りて五降して息むを謂うなり。降は、罷退なり。○彈は、徒丹反。又徒旦反。

於是有煩手淫聲、慆堙心耳、乃忘平和。君子弗聽也。五降而不息、則雜聲竝奏。所謂鄭・衛之聲。○慆、吐刀反。
【読み】
是に於て煩手淫聲すること有れば、心耳を慆堙[とういん]して、乃ち平和を忘れしむ。君子は聽かざるなり。五降して息まざれば、則ち雜聲竝に奏す。所謂鄭・衛の聲なり。○慆は、吐刀反。

物亦如之。言百事皆如樂。不可失節。
【読み】
物も亦之の如し。言うこころは、百事皆樂の如し。節を失う可からず。

至於煩、乃舍也已。無以生疾。煩不舍則生疾。○舍、音捨。
【読み】
煩に至れば、乃ち舍[や]むるのみ。以て疾を生ずること無かれ。煩にして舍まざれば則ち疾を生ず。○舍は、音捨。

君子之近琴瑟、以儀節也。非以慆心也。爲心之節儀、使動不過度。
【読み】
君子の琴瑟を近づくるは、以て儀節をするなり。以て心を慆[ふさ]がんとには非ず。心の節儀を爲して、動きて度を過ぎざらしむ。

天有六氣、謂陰陽風雨晦明也。
【読み】
天に六氣有り、陰陽風雨晦明を謂うなり。

降生五味、謂金味辛、木味酸、水味鹹、火味苦、土味甘、皆由陰陽風雨而生。
【読み】
降りて五味を生じ、金の味は辛く、木の味は酸く、水の味は鹹[しおから]く、火の味は苦く、土の味は甘く、皆陰陽風雨よりして生ずるを謂う。

發爲五色、辛色白、酸色靑、鹹色黑、苦色赤、甘色黃。發、見也。○見、賢遍反。
【読み】
發して五色と爲り、辛の色は白く、酸の色は靑く、鹹[かん]の色は黑く、苦の色は赤く、甘の色は黃なり。發は、見るなり。○見は、賢遍反。

徵爲五聲。白聲商、靑聲角、黑聲羽、赤聲徵、黃聲宮。徵、驗也。○聲徵、張里反。
【読み】
徵して五聲と爲る。白の聲は商、靑の聲は角、黑の聲は羽、赤の聲は徵、黃の聲は宮。徵は、驗なり。○聲徵は、張里反。

淫生六疾。淫、過也。滋味聲色、所以養人。然過則生害。
【読み】
淫[す]ぐれば六疾を生ず。淫は、過ぐるなり。滋味聲色は、人を養う所以なり。然れども過ぐれば則ち害を生ず。

六氣曰陰陽風雨晦明也。分爲四時、序爲五節。六氣之化、分而序之、則成四時、得五行之節。
【読み】
六氣を陰陽風雨晦明と曰う。分かれて四時と爲り、序でて五節と爲る。六氣の化、分かれて之を序づれば、則ち四時を成し、五行の節を得。

過則爲菑。陰淫寒疾、寒過則爲冷。
【読み】
過ぐれば則ち菑[わざわい]を爲す。陰淫は寒疾し、寒過ぐれば則ち冷を爲す。

陽淫熱疾、熱過則喘渴。
【読み】
陽淫は熱疾し、熱過ぐれば則ち喘渴す。

風淫末疾、末、四支也。風爲緩急。
【読み】
風淫は末疾し、末は、四支なり。風は緩急を爲す。

雨淫腹疾、雨濕之氣爲洩注。
【読み】
雨淫は腹疾し、雨濕の氣は洩注を爲す。

晦淫惑疾、晦、夜也。爲宴寢過節、則心惑亂。
【読み】
晦淫は惑疾し、晦は、夜なり。宴寢節に過ぐることを爲せば、則ち心惑亂す。

明淫心疾。明、晝也。思慮煩多、心勞生疾。
【読み】
明淫は心疾す。明は、晝なり。思慮煩多なれば、心勞して疾を生ず。

女陽物而晦時。淫則生内熱惑蠱之疾。女常隨男。故言陽物。家道常在夜。故言晦時。
【読み】
女は陽の物にして晦の時なり。淫すれば則ち内熱惑蠱の疾を生ず。女は常に男に隨う。故に陽の物と言う。家道は常に夜に在り。故に晦の時と言う。

今君不節不時。能無及此乎。
【読み】
今君節あらず時あらず。能く此に及ぶこと無からんや、と。

出告趙孟。趙孟曰、誰當良臣。對曰、主是謂矣。主相晉國、於今八年。晉國無亂、諸侯無闕。可謂良矣。和聞之、國之大臣、榮其寵祿、任其大節、有菑禍興而無改焉、改、改行以救菑。○行、去聲。
【読み】
出でて趙孟に告ぐ。趙孟曰く、誰か良臣に當たれる、と。對えて曰く、主を是れ謂うなり。主晉國を相けて、今に八年なり。晉國亂無く、諸侯闕けたること無し。良と謂う可し。和之を聞く、國の大臣、其の寵祿に榮え、其の大節に任じて、菑禍の興ること有りて改むること無ければ、改は、行いを改めて以て菑を救うなり。○行は、去聲。

必受其咎。今君至於淫以生疾、將不能圖恤社稷。禍孰大焉。主不能禦。吾是以云也。云主將死。
【読み】
必ず其の咎を受く、と。今君淫にして以て疾を生じて、將に社稷を圖り恤うること能わざらんとするに至れり。禍孰れか焉より大ならん。主禦ぐこと能わず。吾れ是を以て云えり、と。主將に死せんとするを云う。

趙孟曰、何謂蠱。對曰、淫溺惑亂之所生也。溺、沈沒於嗜欲。
【読み】
趙孟曰く、何を蠱と謂うや、と。對えて曰く、淫溺惑亂の生ずる所なり。溺は、嗜欲に沈沒するなり。

於文、皿蟲爲蠱。文、字也。皿、器也。器受蟲害者爲蠱。○皿、命景反。又讀若猛。
【読み】
文に於て、皿蟲[めいこ]を蠱と爲す。文は、字なり。皿は、器なり。器の蟲の害を受くる者を蠱と爲す。○皿は、命景反。又讀んで猛の若し。

穀之飛亦爲蠱。穀久積則變爲飛蟲。名曰蠱。
【読み】
穀の飛ぶも亦蠱と爲す。穀久しく積めば則ち變じて飛蟲と爲る。名づけて蠱と曰う。

在周易、女惑男、風落山、謂之蠱巽下艮上、蠱。巽爲長女、爲風、艮爲少男、爲山。少男而說長女非匹。故惑。山木得風而落。
【読み】
周易に在りて、女男を惑わし、風山を落す、之を蠱と謂う。巽下艮上は、蠱なり。巽を長女と爲し、風と爲し、艮を少男と爲し、山と爲す。少男にして長女を說ぶは匹に非ず。故に惑う。山木風を得て落つ。

皆同物也。物、猶類也。
【読み】
皆同物なり、と。物は、猶類のごとし。

趙孟曰、良醫也。厚其禮而歸之。贈賄之禮。
【読み】
趙孟曰く、良醫なり、と。其の禮を厚くして之を歸す。贈賄の禮なり。

楚公子圍使公子黑肱・伯州犂城犫・櫟・郟。黑肱、王子圍之弟、子皙也。犫縣、屬南陽。郟縣、屬襄城。櫟、今河南陽翟縣。三邑、本鄭地。○犫、尺州反。櫟、音歷。又音鑠。郟、音夾。
【読み】
楚の公子圍公子黑肱・伯州犂をして犫[しゅう]・櫟[れき]・郟[こう]に城かしむ。黑肱は、王子圍の弟、子皙なり。犫縣は、南陽に屬す。郟縣は、襄城に屬す。櫟は、今の河南陽翟縣なり。三邑は、本鄭の地。○犫は、尺州反。櫟は、音歷。又音鑠。郟は、音夾。

鄭人懼。子產曰、不害。令尹將行大事、謂將弑君。
【読み】
鄭人懼る。子產曰く、害あらず。令尹將に大事を行わんとして、將に君を弑せんとするを謂う。

而先除二子也。二子、謂黑肱・伯州犂。
【読み】
先ず二子を除かんとするなり。二子は、黑肱・伯州犂を謂う。

禍不及鄭。何患焉。
【読み】
禍鄭に及ばず。何ぞ患えん、と。

冬、楚公子圍將聘于鄭。伍舉爲介。未出竟。聞王有疾而還。伍舉遂聘。十一月、己酉、公子圍至、入問王疾、縊而弑之。縊、絞也。孫卿曰、以冠纓絞之。長歷推、己酉、十二月六日。經傳皆言十一月、月誤也。○縊、一豉反。
【読み】
冬、楚の公子圍將に鄭に聘せんとす。伍舉介爲り。未だ竟を出でず。王疾有りと聞きて還る。伍舉遂に聘す。十一月、己酉、公子圍至り、入りて王の疾を問い、縊りて之を弑す。縊[い]は、絞めるなり。孫卿曰く、冠纓を以て之を絞す、と。長歷もて推すに、己酉は、十二月六日。經傳皆十一月と言うは、月の誤りなり。○縊は、一豉反。

遂殺其二子幕及平夏。皆郟敖子。
【読み】
遂に其の二子幕と平夏とを殺す。皆郟敖の子。

右尹子干出奔晉。子干、王子比。
【読み】
右尹子干出でて晉に奔る。子干は、王子比。

宮廐尹子皙出奔鄭。因築城而去。
【読み】
宮廐尹子皙出でて鄭に奔る。城を築くに因りて去る。

殺大宰伯州犂于郟。葬王于郟。謂之郟敖。郟敖、楚子麇。
【読み】
大宰伯州犂を郟に殺す。王を郟に葬る。之を郟敖と謂う。郟敖は、楚子麇。

使赴于鄭。伍舉問應爲後之辭焉。問赴者。
【読み】
鄭に赴[つ]げしむ。伍舉後爲る應きの辭を問う。赴者に問うなり。

對曰、寡大夫圍。伍舉更之曰、共王之子圍爲長。伍舉更赴辭使從禮。此告終稱嗣、不以簒弑赴諸侯。○共、音恭。長、丁丈反。
【読み】
對えて曰く、寡大夫圍、と。伍舉之を更めて曰く、共王の子圍長爲り、と。伍舉赴辭を更めて禮に從わしむ。此れ終を告げ嗣を稱し、簒弑を以て諸侯に赴げざるなり。○共は、音恭。長は、丁丈反。

子干奔晉、從車五乘。叔向使與秦公子同食。食祿同。○從、才用反。
【読み】
子干晉に奔るや、從車五乘なり。叔向秦の公子と食を同じくせしむ。食祿同じ。○從は、才用反。

皆百人之餼。百人、一卒也。其祿足百人。○餼、音墍。
【読み】
皆百人の餼なり。百人は、一卒なり。其の祿百人に足る。○餼は、音墍。

趙文子曰、秦公子富。謂秦鍼富强、秩祿不宜與子干同。
【読み】
趙文子曰く、秦の公子は富めり。秦の鍼は富强、秩祿子干と同じかる宜からずと謂う。

叔向曰、底祿以德。底、致也。○底、音旨。
【読み】
叔向曰く、祿を底[いた]すは德を以てす。底は、致すなり。○底は、音旨。
*「底」は「厎」。

德鈞以年、年同以尊。公子以國。不聞以富。且夫以千乘去其國、彊禦已甚。詩曰、不侮鰥寡、不畏彊禦。詩、大雅。侮、陵也。○夫、音扶。
【読み】
德鈞しければ年を以てし、年同じければ尊を以てす。公子は國を以てす。富を以てすることを聞かず。且つ夫れ千乘を以て其の國を去るは、彊禦已甚だし。詩に曰く、鰥寡を侮[しの]がず、彊禦を畏れず、と。詩は、大雅。侮は、陵ぐなり。○夫は、音扶。

秦・楚匹也。
【読み】
秦・楚は匹なり、と。

使后子與子干齒。以年齒爲高下而坐。
【読み】
后子と子干とをして齒せしむ。年齒を以て高下を爲して坐せしむ。

辭曰、鍼懼選、楚公子不獲。是以皆來。亦唯命。不獲、不得自安。言倶奔事有優劣。唯主人命所處。謙辭。
【読み】
辭して曰く、鍼は選えらるるを懼れ、楚の公子は獲ず。是を以て皆來れり。亦唯命のままなり。獲ずとは、自ら安んずることを得ざるなり。言うこころは、倶に奔るも事に優劣有り。唯主人處する所を命ぜよ、と。謙辭なり。

且臣與羇齒、無乃不可乎。后子先來仕。欲自同於晉臣爲主人。子干後來奔、以爲羇旅之客。
【読み】
且つ臣と羇と齒せば、乃ち不可なること無からんや。后子先ず來りて仕う。自ら晉の臣に同じくして主人爲らんと欲す。子干後に來奔して、以て羇旅の客爲り。

史佚有言曰、非羇何忌。忌、敬也。欲謙以自別。
【読み】
史佚言えること有り曰く、羇に非ずして何ぞ忌[うやま]わん、と。忌は、敬うなり。謙して以て自ら別たんと欲す。

楚靈王卽位、薳罷爲令尹、薳啓彊爲大宰。靈王、公子圍也。卽位易名熊虔。○罷、音皮。彊、其良反。
【読み】
楚の靈王位に卽き、薳罷[いひ]を令尹と爲し、薳啓彊を大宰と爲す。靈王は、公子圍なり。位に卽きて名を熊虔と易う。○罷は、音皮。彊は、其良反。

鄭游吉如楚、葬郟敖、且聘立君。歸。謂子產曰、具行器矣。行器、會備。
【読み】
鄭の游吉楚に如き、郟敖を葬り、且つ立君に聘す。歸る。子產に謂いて曰く、行器を具えよ。行器は、會の備えなり。

楚王汰侈而自說其事。必合諸侯。吾往無日矣。子產曰、不數年未能也。爲四年、會申傳。○說、音悅。一始悅反。數、所主反。
【読み】
楚王汰侈にして自ら其の事を說ぶ。必ず諸侯を合わせん。吾れ往かんこと日無けん、と。子產曰く、數年ならざれば未だ能わじ、と。四年、申に會する爲の傳なり。○說は、音悅。一に始悅反。數は、所主反。

十二月、晉旣烝。烝、冬祭也。
【読み】
十二月、晉旣に烝す。烝は、冬祭なり。

趙孟適南陽、將會孟子餘。孟子餘、趙衰、趙武之曾祖。其廟在晉之南陽溫縣。往會祭之。
【読み】
趙孟南陽に適き、將に孟子餘に會せんとす。孟子餘は、趙衰、趙武の曾祖。其の廟晉の南陽溫縣に在り。往きて之を祭るに會す。

甲辰、朔、烝于溫。趙氏烝祭。甲辰、十二月朔。晉旣烝、趙孟乃烝其家廟、則晉烝當在甲辰之前。傳言十二月、月誤。
【読み】
甲辰、朔、溫に烝す。趙氏烝祭す。甲辰は、十二月朔。晉旣に烝して、趙孟乃ち其の家廟に烝すれば、則ち晉の烝は當に甲辰の前に在るべし。傳十二月と言うは、月の誤りなり。

庚戌、卒。十二月七日。終劉定公・秦后子之言。
【読み】
庚戌[かのえ・いぬ]、卒す。十二月七日。劉定公・秦の后子の言を終わる。

鄭伯如晉弔。及雍乃復。弔趙氏。蓋趙氏辭之而還。傳言大夫彊、諸侯畏而弔之。○雍、於用反。
【読み】
鄭伯晉に如きて弔わんとす。雍に及びて乃ち復る。趙氏を弔うなり。蓋し趙氏之を辭して還るならん。傳大夫彊く、諸侯畏れて之を弔するを言う。○雍は、於用反。


〔經〕二年、春、晉侯使韓起來聘。夏、叔弓如晉。叔弓、叔老子。
【読み】
〔經〕二年、春、晉侯韓起をして來聘せしむ。夏、叔弓晉に如く。叔弓は、叔老の子。

秋、鄭殺其大夫公孫黑。書名、惡之。薰隧盟、子產不討、遂以爲卿。故書名。○惡、烏路反。
【読み】
秋、鄭其の大夫公孫黑を殺す。名を書すは、之を惡むなり。薰隧の盟に、子產討ぜず、遂に以て卿と爲す。故に名を書す。○惡は、烏路反。

冬、公如晉、至河乃復。弔少姜也。晉人辭之。故還。
【読み】
冬、公晉に如き、河に至りて乃ち復る。少姜を弔するなり。晉人之を辭す。故に還る。

季孫宿如晉。致襚服也。公實以秋行、冬還乃書。
【読み】
季孫宿晉に如く。襚服[すいふく]を致すなり。公實は秋を以て行き、冬還りて乃ち書すなり。

〔傳〕二年、春、晉侯使韓宣子來聘。公卽位故。
【読み】
〔傳〕二年、春、晉侯韓宣子をして來聘せしむ。公位に卽く故なり。

且告爲政而來見。禮也。代趙武爲政。雖盟主而脩好同盟。故曰禮。○見、賢遍反。
【読み】
且つ政を爲すことを告げて來り見ゆ。禮なり。趙武に代わりて政を爲す。盟主と雖も好を同盟に脩む。故に禮と曰う。○見は、賢遍反。

觀書於大史氏。見易象與魯春秋、曰、周禮盡在魯矣。易象、上下經之象辭。魯春秋、史記之策書。春秋遵周公之典以序事。故曰周禮盡在魯矣。
【読み】
書を大史氏に觀る。易象と魯の春秋とを見て、曰く、周の禮は盡く魯に在り。易象は、上下經の象の辭。魯の春秋は、史記の策書。春秋は周公の典に遵いて以て事を序づ。故に周の禮は盡く魯に在りと曰う。

吾乃今知周公之德、與周之所以王也。易象・春秋、文王・周公之制。當此時、儒道廢、諸國多闕。唯魯備。故宣子適魯而說之。○以王、于況反。說、音悅。
【読み】
吾れ乃ち今周公の德と、周の王たる所以を知れり、と。易象・春秋は、文王・周公の制。此の時に當たりて、儒道廢して、諸國闕けたること多し。唯魯のみ備わる。故に宣子魯に適きて之を說ぶなり。○以王は、于況反。說は、音悅。

公享之。季武子賦緜之卒章。緜、詩大雅。卒章、義取文王有四臣。故能以緜緜致興盛。以晉侯比文王、以韓子比四輔。
【読み】
公之を享す。季武子緜の卒章を賦す。緜は、詩の大雅。卒章は、義文王四臣有り。故に能く以て緜緜として興盛を致すに取る。晉侯を以て文王に比し、韓子を以て四輔に比す。

韓子賦角弓。角弓、詩小雅。取其兄弟昏姻、無胥遠矣。言兄弟之國、宜相親。
【読み】
韓子角弓を賦す。角弓は、詩の小雅。其の兄弟昏姻、胥[あい]遠ざかること無きに取る。言うこころは、兄弟の國は、宜しく相親しむべし。

季武子拜曰、敢拜子之彌縫敝邑。寡君有望矣。彌縫、猶補合也。謂以兄弟之義。
【読み】
季武子拜して曰く、敢えて子の敝邑を彌縫するを拜す。寡君望むこと有り、と。彌縫は、猶補合のごとし。兄弟の義を以てするを謂う。

武子賦節之卒章。節、詩小雅。卒章、取式訛爾心、以畜萬邦。以言晉德可以畜萬邦。○節、才結反。
【読み】
武子節の卒章を賦す。節は、詩の小雅。卒章は、式[もっ]て爾の心を訛して、以て萬邦を畜[やしな]えというに取る。以て言うこころは、晉の德以て萬邦を畜う可し、と。○節は、才結反。

旣享、宴于季氏。有嘉樹焉。宣子譽之。譽其好也。○譽、音餘。
【読み】
旣に享して、季氏に宴す。嘉樹有り。宣子之を譽む。其の好きを譽むるなり。○譽は、音餘。

武子曰、宿敢不封殖此樹。以無忘角弓。封、厚也。殖、長也。
【読み】
武子曰く、宿敢えて此の樹を封殖せざらんや。以て角弓を忘るること無けん、と。封は、厚きなり。殖は、長きなり。

遂賦甘棠。甘棠、詩召南。召伯息於甘棠之下。詩人思之、而愛其樹。武子欲封殖嘉樹如甘棠。以宣子比召公。
【読み】
遂に甘棠を賦す。甘棠は、詩の召南。召伯甘棠の下に息う。詩人之を思いて、其の樹を愛す。武子嘉樹を封殖すること甘棠の如くせんと欲す。宣子を以て召公に比するなり。

宣子曰、起不堪也。無以及召公。
【読み】
宣子曰く、起堪えざるなり。以て召公に及ぶこと無し、と。

宣子遂如齊納幣。爲平公聘少姜。
【読み】
宣子遂に齊に如きて幣を納る。平公の爲に少姜を聘す。

見子雅。子雅召子旗、子旗、子雅之子。
【読み】
子雅を見る。子雅子旗を召して、子旗は、子雅の子。

使見宣子。宣子曰、非保家之主也。不臣。志氣亢。○見、賢遍反。下見彊同。
【読み】
宣子に見えしむ。宣子曰く、保家の主に非ざるなり。不臣なり、と。志氣亢ず。○見は、賢遍反。下の見彊も同じ。

見子尾。子尾見彊。彊、子尾之子。
【読み】
子尾を見る。子尾彊を見えしむ。彊は、子尾の子。

宣子謂之如子旗。亦不臣。
【読み】
宣子之を謂うこと子旗の如し。亦不臣という。

大夫多笑之。唯晏子信之曰、夫子君子也。夫子、韓起。
【読み】
大夫多く之を笑う。唯晏子のみ之を信じて曰く、夫子は君子なり。夫子は、韓起。

君子有信。其有以知之矣。爲十年、齊欒施・高彊來奔張本。
【読み】
君子は信有り。其れ以て之を知ること有らん。十年、齊の欒施・高彊來奔する爲の張本なり。

自齊聘於衛。衛侯享之。北宮文子賦淇澳。淇澳、詩衛風。美武公也。言宣子有武公之德。○澳、於六反。
【読み】
齊より衛に聘す。衛侯之を享す。北宮文子淇澳[きいく]を賦す。淇澳は、詩の衛風。武公を美むるなり。言うこころは、宣子武公の德有り。○澳は、於六反。

宣子賦木瓜。木瓜、亦衛風。義取於欲厚報以爲好。
【読み】
宣子木瓜[ぼっか]を賦す。木瓜も、亦衛風。義厚報して以て好を爲さんと欲するに取る。

夏、四月、韓須如齊逆女。須、韓起之子。逆少姜。
【読み】
夏、四月、韓須齊に如きて女を逆[むか]う。須は、韓起の子。少姜を逆う。

齊陳無宇送女、致少姜。少姜有寵於晉侯。晉侯謂之少齊。爲立別號。所以寵異之。
【読み】
齊の陳無宇女を送り、少姜を致す。少姜晉侯に寵有り。晉侯之を少齊と謂う。爲に別號を立つ。之を寵異する所以なり。

謂陳無宇非卿、欲使齊以適夫人禮送少姜。○適、丁歷反。
【読み】
陳無宇を卿に非ずと謂いて、齊をして適夫人の禮を以て少姜を送らしめんと欲す。○適は、丁歷反。

執諸中都。中都、晉邑。在西河界休縣東南。
【読み】
諸を中都に執う。中都は、晉の邑。西河界休縣の東南に在り。

少姜爲之請曰、送從逆班。班、列也。
【読み】
少姜之が爲に請いて曰く、送るは逆うるの班に從う。班は、列なり。

畏大國也、猶有所易、是以亂作。韓須、公族大夫。陳無宇、上大夫。言齊畏晉、改易禮制、使上大夫送、遂致此執辱之罪。蓋少姜謙以示譏。
【読み】
大國を畏るるや、猶易うる所有りしかば、是を以て亂作れり、と。韓須は、公族大夫。陳無宇は、上大夫。言うこころは、齊晉を畏れ、禮制を改易して、上大夫をして送らしめ、遂に此の執辱の罪を致せり。蓋し少姜謙して以て譏りを示すなり。

叔弓聘于晉、報宣子也。此春、韓宣子來聘。
【読み】
叔弓晉に聘するは、宣子に報ゆるなり。此の春、韓宣子來聘す。

晉侯使郊勞。聘禮、賓至近郊、君使卿勞之。○勞、力報反。
【読み】
晉侯郊勞せしむ。聘禮に、賓近郊に至るときは、君卿をして之を勞わしむ、と。○勞、力報反。

辭曰、寡君使弓來繼舊好、固曰、女無敢爲賓。徹命於執事、敝邑弘矣。徹、達也。○女、音汝。下皆同。
【読み】
辭して曰く、寡君弓をして來りて舊好を繼がしめ、固より曰く、女敢えて賓爲ること無し、と。命を執事に徹せば、敝邑の弘[さいわい]なり。徹は、達するなり。○女は、音汝。下も皆同じ。

敢辱郊使。請辭。辭郊勞。○使、所吏反。
【読み】
敢えて郊使を辱くせんや。請う、辭す、と。郊勞を辭す。○使は、所吏反。

致館。辭曰、寡君命下臣來繼舊好。好合使成、臣之祿也。得通君命、則於己爲榮祿。
【読み】
館を致す。辭して曰く、寡君下臣に命じて來りて舊好を繼がしむ。好く合い使い成らば、臣の祿[さいわい]なり。君命を通ずることを得ば、則ち己に於て榮祿爲り。

敢辱大館。敢、不敢。
【読み】
敢えて大館を辱くせんや、と。敢は、不敢なり。

叔向曰、子叔子知禮哉。吾聞之、曰、忠信、禮之器也。卑讓、禮之宗也。宗、猶主也。
【読み】
叔向曰く、子叔子は禮を知るかな。吾れ之を聞く、曰く、忠信は、禮の器なり。卑讓は、禮の宗なり、と。宗は、猶主のごとし。

辭不忘國、忠信也。謂稱舊好。
【読み】
辭國を忘れざるは、忠信なり。舊好と稱するを謂う。

先國後己、卑讓也。始稱敝邑之弘、先國也。次稱臣之祿、後己也。
【読み】
國を先にし己を後にするは、卑讓なり。始め敝邑の弘と稱するは、國を先にするなり。次に臣の祿と稱するは、己を後にするなり。

詩曰、敬愼威儀、以近有德。夫子近德矣。詩、大雅。
【読み】
詩に曰く、威儀を敬愼すれば、以て有德に近づく、と。夫子德に近づけり、と。詩は、大雅。

秋、鄭公孫黑將作亂。欲去游氏而代其位。游氏、大叔之族。黑爲游楚所傷。故欲害其族。○去、起呂反。
【読み】
秋、鄭の公孫黑將に亂を作さんとす。游氏を去りて其の位に代わらんと欲す。游氏は、大叔の族。黑游楚の爲に傷つけらる。故に其の族を害せんと欲す。○去は、起呂反。

傷疾作而不果。前年、游楚所擊創。○創、初良反。
【読み】
傷疾作りて果たさず。前年、游楚擊つ所の創なり。○創は、初良反。

駟氏與諸大夫欲殺之。駟氏、黑之族。
【読み】
駟氏諸大夫と之を殺さんと欲す。駟氏は、黑の族。

子產在鄙、聞之、懼弗及、乘遽而至、遽、傳驛。○傳、中戀反。
【読み】
子產鄙に在り、之を聞き、及ばざらんことを懼れ、遽に乘じて至り、遽は、傳驛。○傳は、中戀反。

使吏數之、責數其罪。
【読み】
吏をして之を數[せ]めしめて、其の罪を責數す。

曰、伯有之亂、在襄三十年。
【読み】
曰く、伯有の亂に、襄三十年に在り。

以大國之事、而未爾討也。務共大國、不暇治女罪。○共、音恭。下同。
【読み】
大國の事あるを以て、未だ爾を討ぜざりき。大國に共するを務めて、女の罪を治むるに暇あらざりし。○共は、音恭。下も同じ。

爾有亂心無厭、國不女堪。專伐伯有。而罪一也。昆弟爭室、而罪二也。謂爭徐吾犯之妹。○厭、於鹽反。
【読み】
爾亂心有りて厭くこと無く、國女に堪えず。專ら伯有を伐つ。而[なんじ]の罪一なり。昆弟室を爭う、而の罪二なり。徐吾犯の妹を爭うを謂う。○厭は、於鹽反。

薰隧之盟、女矯君位、而罪三也。謂使大史書七子。
【読み】
薰隧の盟に、女君位を矯[いつわ]る、而の罪三なり。大史をして七子を書さしむるを謂う。

有死罪三。何以堪之。不速死、大刑將至。
【読み】
死罪三つ有り。何を以て之に堪えん。速やかに死せずんば、大刑將に至らんとす、と。

再拜稽首、辭曰、死在朝夕。無助天爲虐。子產曰、人誰不死。凶人不終。命也。作凶事爲凶人。不助天、其助凶人乎。
【読み】
再拜稽首して、辭じて曰く、死朝夕に在り。天を助けて虐を爲すこと無かれ、と。子產曰く、人誰か死なざらん。凶人は終わらず。命なり。凶事を作すを凶人と爲す。天を助けずして、其れ凶人を助けんや、と。

請以印爲褚師。印、子皙之子。褚師、市官。○褚、張呂反。
【読み】
印を以て褚師と爲さんと請う。印は、子皙の子。褚師は、市官。○褚は、張呂反。

子產曰、印也若才、君將任之。不才、將朝夕從女。女罪之不恤、而又何請焉。不速死、司寇將至。七月、壬寅、縊。尸諸周氏之衢、衢、道也。
【読み】
子產曰く、印や若し才ならば、君將に之に任ぜんとす。不才ならば、將に朝夕に女に從わんとす。女の罪を恤えずして、又何ぞ請わん。速やかに死せずんば、司寇將に至らんとす、と。七月、壬寅[みずのえ・とら]、縊る。諸を周氏の衢[く]に尸[さら]し、衢は、道なり。

加木焉。書其罪於木、以加尸上。
【読み】
木を加う。其の罪を木に書して、以て尸の上に加う。

晉少姜卒。公如晉、及河。晉侯使士文伯來辭曰、非伉儷也。晉侯溺於所幸、爲少姜行夫人之服。故諸侯弔、不敢以私煩諸侯。故止之。
【読み】
晉の少姜卒す。公晉に如き、河に及ぶ。晉侯士文伯をして來りて辭せしめて曰く、伉儷[こうれい]に非ざるなり。晉侯所幸に溺れ、少姜の爲に夫人の服を行う。故に諸侯弔するも、敢えて私を以て諸侯を煩わさず。故に之を止む。

請君無辱。公還。季孫宿遂致服焉。致少姜之襚服。公以末秋行、始冬還。還乃書之。故經在冬。
【読み】
請う、君辱くすること無かれ、と。公還る。季孫宿遂に服を致す。少姜の襚服を致すなり。公末秋を以て行き、始冬に還る。還れば乃ち之を書す。故に經冬に在り。

叔向言陳無宇於晉侯曰、彼何罪。彼、無宇。
【読み】
叔向陳無宇を晉侯に言いて曰く、彼れ何の罪かある。彼は、無宇。

君使公族逆之、齊使上大夫送之、猶曰不共、君求以貪。國則不共、逆卑於送。是晉國不共。
【読み】
君公族をして之を逆えしめ、齊上大夫をして之を送らしむるを、猶不共なりと曰わんは、君の求め以[はなは]だ貪れり。國則ち共せずして、逆うるは送るより卑し。是れ晉國共せざるなり。

而執其使、君刑己頗。何以爲盟主。頗、不平。○頗、普多反。
【読み】
其の使いを執うるは、君の刑己[はなは]だ頗なり。何を以て盟主爲らん。頗は、不平。○頗は、普多反。

且少姜有辭。謂請無宇之辭。
【読み】
且少姜も辭有りし、と。無宇を請うの辭を謂う。

冬、十月、陳無宇歸。晉侯赦之。
【読み】
冬、十月、陳無宇歸る。晉侯之を赦す。

十一月、鄭印段如晉弔。弔少姜。
【読み】
十一月、鄭の印段晉に如きて弔う。少姜を弔う。


〔經〕三年、春、王正月、丁未、滕子原卒。襄二十五年、盟重丘。○重、直恭反。
【読み】
〔經〕三年、春、王の正月、丁未[ひのと・ひつじ]、滕子原卒す。襄二十五年、重丘に盟う。○重は、直恭反。

夏、叔弓如滕。五月、葬滕成公。卿共小國之葬禮過厚。葬襄公、滕子來會。故魯厚報之。○共、音恭。下皆同。
【読み】
夏、叔弓滕に如く。五月、滕の成公を葬る。卿小國の葬禮に共するは過厚なり。襄公を葬るとき、滕子來會す。故に魯之に厚報す。○共は、音恭。下も皆同じ。

秋、小邾子來朝。八月、大雩。冬、大雨雹。無傳。記災。○雨、于付反。雹、蒲學反。
【読み】
秋、小邾子[しょうちゅし]來朝す。八月、大いに雩[う]す。冬、大いに雹雨[ふ]る。傳無し。災を記すなり。○雨は、于付反。雹は、蒲學反。

北燕伯款出奔齊。不書大夫逐之、而言奔、罪之也。書名、從告。
【読み】
北燕伯款出でて齊に奔る。大夫之を逐うを書さずして、奔ると言うは、之を罪するなり。名を書すは、告ぐるに從うなり。

〔傳〕三年、春、王正月、鄭游吉如晉、送少姜之葬。梁丙與張趯見之。二子、晉大夫。○趯、他歷反。
【読み】
〔傳〕三年、春、王の正月、鄭の游吉晉に如きて、少姜の葬を送る。梁丙と張趯[ちょうてき]と之を見る。二子は、晉の大夫。○趯は、他歷反。

梁丙曰、甚矣哉、子之爲此來也。卿共妾葬、過禮甚。○爲、于僞反。
【読み】
梁丙曰く、甚だしきかな、子の此の爲に來れるや、と。卿妾の葬に共するは、禮を過ぐること甚だし。○爲は、于僞反。

子大叔曰、將得已乎。言不得止。
【読み】
子大叔曰く、將[はた]已むことを得んや。止むことを得ざるを言う。

昔文・襄之霸也、晉文公・襄公。
【読み】
昔文・襄の霸たるや、晉の文公・襄公。

其務不煩諸侯、令諸侯三歲而聘、五歲而朝、有事而會、不協而盟、明王之制、歲聘閒朝、在十三年。今簡之。
【読み】
其の務め諸侯を煩わさず、諸侯をして三歲にして聘し、五歲にして朝し、事有れば會し、協[あ]わずして盟い、明王の制は、歲ごとに聘し閒に朝すること、十三年に在り。今之を簡[おろそ]かにす。

君薨、大夫弔、卿共葬事、夫人、士弔、大夫送葬、先王之制、諸侯之喪、士弔、大夫送葬、在三十年。蓋時俗過制。故文・襄雖節之、猶過於古。
【読み】
君薨ずれば、大夫弔し、卿葬事に共し、夫人は、士弔し、大夫葬を送らしめて、先王の制は、諸侯の喪には、士弔し、大夫葬を送ること、三十年に在り。蓋し時俗制に過ぐ。故に文・襄之を節すと雖も、猶古に過ぐるならん。

足以昭禮命事謀闕而已、朝聘以昭禮、盟會以謀闕。
【読み】
以て禮を昭らかにし事を命じ闕けたるを謀るに足るのみにして、朝聘して以て禮を昭らかにし、盟會して以て闕けたるを謀る。

無加命矣。命有常。
【読み】
加命無かりき。命常有り。

今嬖寵之喪、不敢擇位、而數於守適。不敢以其位卑、而令禮數如守適夫人。然則時適夫人之喪、弔送之禮、已過文・襄之制。○而數、所具反。又所主反。適、丁歷反。
【読み】
今嬖寵の喪に、敢えて位を擇ばずして、數守適に於てす。敢えて其の位の卑しきを以てせずして、禮數をして守適夫人の如くならしむ。然らば則ち時に適夫人の喪は、弔送の禮、已に文・襄の制に過ぎたり。○而數は、所具反。又所主反。適は、丁歷反。

唯懼獲戾。豈敢憚煩。少姜有寵而死、齊必繼室。繼室、復薦女。
【読み】
唯戾[つみ]を獲んことを懼る。豈敢えて煩を憚らんや。少姜寵有りて死すれば、齊必ず室を繼がん。室を繼ぐとは、復女を薦むるなり。

今玆吾又將來賀。不唯此行也。張趯曰、善哉、吾得聞此數也。然自今子其無事矣。譬如火焉。火、心星。
【読み】
今玆[ことし]吾れ又將に來り賀せんとす。唯此の行のみにあらじ、と。張趯曰く、善いかな、吾れ此の數を聞くことを得たり。然れども今より子其れ事無からん。譬えば火の如し。火は、心星。

火中、寒暑乃退。心以季夏昏中而暑退、季冬旦中而寒退。
【読み】
火中すれば、寒暑乃ち退く。心季夏の昏を以て中して暑退き、季冬の旦に中して寒退く。

此其極也。能無退乎。晉將失諸侯。諸侯求煩不獲。言將不能復煩諸侯。
【読み】
此れ其の極なり。能く退くこと無からんや。晉將に諸侯を失わんとす。諸侯煩を求むとも獲ざらん、と。言うこころは、將に復諸侯を煩わすこと能わざらんとす。

二大夫退。子大叔告人曰、張趯有知、其猶在君子之後乎。譏其無隱諱。○知、音智。
【読み】
二大夫退く。子大叔人に告げて曰く、張趯知有るも、其れ猶君子の後に在らんか、と。其の隱諱無きを譏る。○知は、音智。

丁未、滕子原卒。同盟。故書名。同盟於襄之世。亦應從同盟之禮。故傳發之。
【読み】
丁未、滕子原卒す。同盟なり。故に名を書す。襄の世に同盟す。亦同盟の禮に從う應し。故に傳之を發す。

齊侯使晏嬰請繼室於晉、復以女繼少姜。
【読み】
齊侯晏嬰をして室を繼がんことを晉に請わしめて、復女を以て少姜に繼がんとす。

曰、寡人願事君、朝夕不倦、將奉質幣、以無失時、則國家多難、是以不獲。不得自來。○質、之二反。又如字。難、乃旦反。
【読み】
曰く、寡人君に事えて、朝夕に倦まずして、質幣を將奉して、以て時を失うこと無けんことを願えども、則ち國家多難にして、是を以て獲ず。自ら來たることを得ず。○質は、之二反。又字の如し。難は、乃旦反。
*頭注に「按各本於晉下、有曰寡君使嬰五字。唯穆本無之。」とある。

不腆先君之適、謂少姜。
【読み】
不腆なる先君の適、少姜を謂う。

以備内官、焜燿寡人之望、則又無祿、早世隕命、寡人失望。
【読み】
以て内官に備えて、寡人の望みを焜燿[こんよう]せしも、則ち又無祿にして、早世隕命して、寡人望みを失えり。

君若不忘先君之好、惠顧齊國、辱收寡人、徼福於大公・丁公、徼、要也。二公、齊先君。言收恤寡人、則先君與之福也。○焜、胡本反。又音昆。徼、古堯反。
【読み】
君若し先君の好を忘れず、齊國を惠顧して、寡人を辱收し、福を大公・丁公に徼[もと]めんとし、徼[きょう]は、要むるなり。二公は、齊の先君なり。言うこころは、寡人を收恤せば、則ち先君も之に福を與えん。○焜は、胡本反。又音昆。徼は、古堯反。

照臨敝邑、鎭撫其社稷、則猶有先君之適、適、夫人之女。
【読み】
敝邑を照臨し、其の社稷を鎭撫せば、則ち猶先君の適、適は、夫人の女。

及遺姑姊妹、遺、餘也。
【読み】
及び遺れる姑姊妹、遺は、餘るなり。

若而人。言如常人。不敢譽。
【読み】
若而人有り。言うこころは、常人の如しとなり。敢えて譽めざるなり。

君若不棄敝邑、而辱使董振擇之、以備嬪嬙、寡人之望也。董、正也。振、整也。嬪嬙、婦官。○振、之刃反。一音眞。
【読み】
君若し敝邑を棄てずして、辱く董振して之を擇びて、以て嬪嬙[ひんきょう]に備えしめば、寡人の望みなり、と。董は、正すなり。振は、整うなり。嬪嬙は、婦官。○振は、之刃反。一に音眞。

韓宣子使叔向對曰、寡君之願也。寡君不能獨任其社稷之事、未有伉儷、在縗絰之中、是以未敢請。制、夫人之服則葬訖、君臣乃釋服。○任、音壬。
【読み】
韓宣子叔向をして對えしめて曰く、寡君の願いなり。寡君獨り其の社稷の事に任[た]うること能わず、未だ伉儷[こうれい]有らざるも、縗絰[さいてつ]の中に在れば、是を以て未だ敢えて請わざりき。制に、夫人の服は則ち葬訖[おわ]れば、君臣乃ち服を釋く、と。○任は、音壬。

君有辱命、惠莫大焉。若惠顧敝邑、撫有晉國、賜之内主、豈唯寡君。舉羣臣實受其貺。其自唐叔以下、實寵嘉之。唐叔、晉之祖。
【読み】
君辱命有り、惠焉より大なるは莫し。若し敝邑を惠顧し、晉國を撫有して、之が内主を賜わば、豈唯寡君のみならんや。羣臣を舉[こぞ]りて實に其の貺[たまもの]を受けん。其れ唐叔より以下も、實に之を寵嘉せん、と。唐叔は、晉の祖。

旣成昏、許昏成。
【読み】
旣に昏を成し、昏を許して成る。

晏子受禮。受賓享之禮。
【読み】
晏子禮を受く。賓享の禮を受く。

叔向從之宴、相與語。叔向曰、齊其何如。問興衰。
【読み】
叔向之に從いて宴して、相與に語る。叔向曰く、齊其れ何如、と。興衰を問う。

晏子曰、此季世也。吾弗知、齊其爲陳氏矣。不知其他。唯知齊將爲陳氏。
【読み】
晏子曰く、此れ季世なり。吾れ知らず、齊は其れ陳氏爲らん。其の他を知らず。唯齊の將に陳氏爲らんとするを知るのみ。

公棄其民、而歸於陳氏。棄民不恤。
【読み】
公其の民を棄てて、陳氏に歸せしむ。民を棄てて恤れまず。

齊舊四量。豆・區・釜・鍾。四升爲豆、各自其四、以登於釜、四豆爲區。區、斗六升。四區爲釜。釜、六斗四升。登、成也。○量、音亮。下同。區、烏侯反。下皆同。
【読み】
齊は舊四量。豆・區[おう]・釜・鍾あり。四升を豆と爲し、各々其の四にしてより、以て釜に登り、四豆を區と爲す。區は、斗六升。四區を釜と爲す。釜は、六斗四升なり。登は、成るなり。○量は、音亮。下も同じ。區は、烏侯反。下も皆同じ。

釜十則鍾。六斛四斗。
【読み】
釜十は則ち鍾なり。六斛[こく]四斗。

陳氏三量、皆登一焉。鍾乃大矣。登、加也。加一、謂加舊量之一也。以五升爲豆、五豆爲區、五區爲釜、則區二斗、釜八斗、鐘八斛。
【読み】
陳氏は三量を、皆一を登す。鍾乃ち大なり。登は、加うるなり。一を加うとは、舊量の一を加うるを謂うなり。五升を以て豆と爲し、五豆を區と爲し、五區を釜と爲せば、則ち區は二斗、釜は八斗、鐘は八斛。

以家量貸、而以公量收之。貸厚而收薄。
【読み】
家量を以て貸して、公量を以て之を收む。貸すは厚くして收むるは薄し。

山木如市、弗加於山、魚鹽蜃蛤、弗加於海。賈如在山海、不加貴。○蜃、食軫反。賈、音嫁。
【読み】
山木市に如けども、山より加えず、魚鹽蜃蛤も、海より加えず。賈山海に在るが如くにして、貴を加えず。○蜃は、食軫反。賈は、音嫁。

民參其力、二入於公、而衣食其一。言公重賦斂。○參、七南反。又音三。
【読み】
民其の力を參にして、二は公に入れて、其の一を衣食にす。公賦斂を重くするを言う。○參は、七南反。又音三。

公聚朽蠹、而三老凍餒。三老、謂上壽・中壽・下壽。皆八十已上、不見養遇。
【読み】
公聚は朽蠹[きゅうと]して、三老は凍餒[とうたい]す。三老は、上壽・中壽・下壽を謂う。皆八十已上にして、養遇せられず。

國之諸市、屨賤踊貴。踊、刖足者屨。言刖多。○踊、音勇。
【読み】
國の諸市、屨[くつ]は賤しくして踊は貴し。踊は、足を刖[き]る者の屨なり。刖[あしぎり]の多きを言う。○踊は、音勇。

民人痛疾、而或燠休之、燠休、痛念聲。謂陳氏也。○燠、於喩反。一於六反。休、虛喩反。又許留反。
【読み】
民人痛疾すれば、或は之を燠休[いくきゅう]して、燠休は、痛念の聲なり。陳氏を謂うなり。○燠は、於喩反。一に於六反。休は、虛喩反。又許留反。

其愛之如父母、而歸之如流水。欲無獲民、將焉辟之。箕伯・直柄・虞遂・伯戲、四人、皆舜後。陳氏之先。○戲、許宜反。
【読み】
其の之を愛すること父母の如くにして、之に歸すること流水の如し。民を獲ること無からんと欲すとも、將焉ぞ之を辟けん。箕伯・直柄・虞遂・伯戲、四人は、皆舜の後。陳氏の先なり。○戲は、許宜反。

其相胡公・大姬、已在齊矣。胡公、四人之後。周始封陳之祖。大姬、其妃也。言陳氏雖爲人臣、然將有國。其先祖鬼神、已與胡公共在齊。○大、音泰。
【読み】
其れ胡公・大姬を相けて、已に齊に在り、と。胡公は、四人の後。周始めて封ずる陳の祖なり。大姬は、其の妃なり。言うこころは、陳氏人臣爲りと雖も、然れども將に國を有たんとす。其の先祖の鬼神、已に胡公と共に齊に在り。○大は、音泰。

叔向曰、然。雖吾公室、今亦季世也。戎馬不駕、卿無軍行、言晉衰弱、不能征討救諸侯。○行、戶郎反。
【読み】
叔向曰く、然り。吾が公室と雖も、今亦季世なり。戎馬駕せず、卿軍行無く、言うこころは、晉衰弱して、征討して諸侯を救うこと能わず。○行は、戶郎反。

公乘無人、卒列無長。百人爲卒。言人皆非其人、非其長。○乘、繩證反。
【読み】
公乘に人無く、卒列に長無し。百人を卒と爲す。言うこころは、人皆其の人に非ず、其の長に非ず。○乘は、繩證反。

庶民罷敝、而宮室滋侈、滋、益也。
【読み】
庶民罷敝して、宮室滋々侈り、滋は、益々なり。

道殣相望、餓死爲殣。○殣、音覲。路冢也。
【読み】
道殣[どうきん]相望みて、餓死を殣と爲す。○殣は、音覲。路冢なり。

而女富溢尤。女、嬖寵之家。
【読み】
女富溢々尤[はなは]だし。女は、嬖寵の家。

民聞公命、如逃寇讎。欒・郤・胥・原・狐・續・慶・伯降在皁隸。八姓、晉舊臣之族也。皁隸、賤官。
【読み】
民公の命を聞けば、寇讎を逃ぐるが如し。欒[らん]・郤[げき]・胥・原・狐・續・慶・伯降りて皁隸[そうれい]に在り。八姓は、晉の舊臣の族なり。皁隸は、賤官。

政在家門、大夫專政。
【読み】
政家門に在りて、大夫政を專にす。

民無所依、君日不悛、以樂慆憂。慆、藏。悛、改也。○慆、音滔。樂、音洛。
【読み】
民依る所無く、君日々に悛[あらた]めず、樂を以て憂えを慆[おさ]む。慆は、藏むる。悛は、改むるなり。○慆は、音滔。樂は、音洛。

公室之卑、其何日之有。言今至。
【読み】
公室の卑しからんこと、其れ何れの日か之れ有らん。今至るを言う。

讒鼎之銘、讒、鼎名也。
【読み】
讒鼎の銘に、讒は、鼎の名なり。

曰、昧旦丕顯、後世猶怠。昧旦、早起也。丕、大也。言夙興以務大顯、後世猶解怠。
【読み】
曰く、昧旦に丕[おお]いに顯らかにするも、後世猶怠る、と。昧旦は、早起なり。丕は、大いなり。言うこころは、夙に興きて以て務めて大いに顯らかにするも、後世猶解怠す。

況日不悛。其能久乎。
【読み】
況んや日々に悛めざるをや。其れ能く久しからんや、と。

晏子曰、子將若何。問何以免此難。
【読み】
晏子曰く、子將に若何にせんとする、と。何を以て此の難を免れんと問う。

叔向曰、晉之公族盡矣。肸聞之、公室將卑、其宗族枝葉先落、則公從之。肸之宗十一族、同祖爲崇。○肸、許乙反。
【読み】
叔向曰く、晉の公族盡きたり。肸[きつ]之を聞く、公室の將に卑しからんとするは、其の宗族の枝葉先ず落つれば、則ち公之に從う、と。肸の宗は十一族なりしも、同祖を崇と爲す。○肸は、許乙反。

唯羊舌氏在而已。肸又無子、無賢子。
【読み】
唯羊舌氏在るのみ。肸又子無く、賢子無し。

公室無度。無法度。
【読み】
公室度無し。法度無し。

幸而得死。言得以壽終爲幸。
【読み】
幸いにして死することを得んのみ。言うこころは、壽を以て終わることを得るを幸いとす。

豈其獲祀。言必不得祀。
【読み】
豈其れ祀らるることを獲んや、と。言うこころは、必ず祀らるることを得ず。

初、景公欲更晏子之宅。曰、子之宅近市、湫隘嚻塵。不可以居。湫、下。隘、小。嚻、聲。塵、土。○湫、子小反。徐音秋。又在酒反。
【読み】
初め、景公晏子の宅を更めんと欲す。曰く、子の宅市に近くして、湫隘[しょうあい]嚻塵[ごうじん]なり。以て居る可からず。湫は、下[ひく]き。隘は、小さき。嚻は、聲。塵は、土。○湫は、子小反。徐音秋。又在酒反。

請更諸爽塏者。爽、明。塏、燥。○塏、音凱。
【読み】
請う、諸を爽塏[そうがい]なる者に更めん、と。爽は、明らか。塏は、燥く。○塏は、音凱。

辭曰、君之先臣容焉。先臣、晏子之先人。
【読み】
辭して曰く、君の先臣容れたり。先臣は、晏子の先人。

臣不足以嗣之、於臣侈矣。侈、奢也。
【読み】
臣以て之を嗣ぐに足らざれば、臣に於ては侈れるなり。侈は、奢るなり。

且小人近市、朝夕得所求、小人之利也。敢煩里旅。旅、衆也。不敢勞衆爲己宅。
【読み】
且つ小人市に近くして、朝夕求むる所を得るは、小人の利なり。敢えて里旅を煩わさんや、と。旅は、衆なり。敢えて衆を勞して己が宅を爲さず。

公笑曰、子近市。識貴賤乎。對曰、旣利之。敢不識乎。公曰、何貴何賤。於是景公繁於刑、繁、多也。
【読み】
公笑いて曰く、子市に近し。貴賤を識れりや、と。對えて曰く、旣に之を利とす。敢えて識らざらんや、と。公曰く、何れか貴く何れか賤しき、と。是に於て景公刑を繁[おお]くして、繁は、多きなり。

有鬻踊者。故對曰、踊貴屨賤。旣已告於君。故與叔向語而稱之。傳護晏子、令不與張趯同譏。○鬻、羊六反。賣也。
【読み】
踊を鬻[ひさ]ぐ者有り。故に對えて曰く、踊は貴く屨は賤し、と。旣已に君に告げぬ。故に叔向と語りて之を稱せり。傳晏子を護して、張趯と譏りを同じくせざらしむ。○鬻[いく]は、羊六反。賣るなり。

景公爲是省於刑。
【読み】
景公是が爲に刑を省けり。

君子曰、仁人之言、其利博哉。晏子一言而齊侯省刑。詩曰、君子如祉、亂庶遄已。詩小雅。如、行也。祉、福也。遄、疾也。言君子行福、則庶幾亂疾止也。○爲、于僞反。
【読み】
君子曰く、仁人の言は、其の利博いかな。晏子一言にして齊侯刑を省けり。詩に曰く、君子祉[さいわい]を如[おこな]わば、亂庶わくは遄[すみ]やかに已まん、と。詩は小雅。如は、行うなり。祉は、福なり。遄は、疾やかなり。言うこころは、君子福を行わば、則ち庶幾わくは亂疾やかに止まん。○爲は、于僞反。

其是之謂乎。
【読み】
其れ是を之れ謂うか、と。

及晏子如晉、公更其宅。反則成矣。旣拜、拜、謝新宅。
【読み】
晏子が晉に如くに及びて、公其の宅を更む。反れば則ち成れり。旣に拜して、拜は、新宅を謝するなり。

乃毀之而爲里室、皆如其舊、本壞里室以大晏子之宅。故復之。○壞、音怪。
【読み】
乃ち之を毀ちて里室と爲して、皆其の舊の如くにして、本里室を壞りて以て晏子の宅を大にす。故に之を復す。○壞は、音怪。

則使宅人反之。還其故室。○還、音環。
【読み】
則ち宅人をして之を反さしむ。其の故室を還す。○還は、音環。

且諺曰、非宅是卜。唯鄰是卜。卜良鄰。
【読み】
且つ諺に曰く、宅を是れ卜するに非ず。唯鄰を是れ卜す、と。良鄰を卜す。

二三子先卜鄰矣。二三子、謂鄰人。
【読み】
二三子先に鄰を卜せり。二三子は、鄰人を謂う。

違卜不祥。君子不犯非禮、去儉卽奢爲非禮。
【読み】
卜に違うは不祥なり。君子は非禮を犯さず、儉を去りて奢に卽くを非禮と爲す。

小人不犯不祥、古之制也。吾敢違諸乎。卒復其舊宅。公弗許。因陳桓子以請。乃許之。傳言齊・晉之衰、賢臣懷憂、且言陳氏之興。
【読み】
小人は不祥を犯さざるは、古の制なり。吾れ敢えて諸に違わんや、と。卒に其の舊宅に復る。公許さず。陳桓子に因りて以て請う。乃ち之を許す。傳齊・晉の衰えて、賢臣憂えを懷くを言い、且つ陳氏の興るを言う。

夏、四月、鄭伯如晉。公孫段相。甚敬而卑、禮無違者。晉侯嘉焉、授之以策、策、賜命之書。
【読み】
夏、四月、鄭伯晉に如く。公孫段相く。甚だ敬して卑しく、禮違う者無し。晉侯嘉して、之を授くるに策を以てして、策は、命を賜うの書なり。

曰、子豐有勞於晉國、子豐、段之父。
【読み】
曰く、子豐が晉國に勞有りしこと、子豐は、段の父。

余聞而弗忘。賜女州田、州縣、今屬河内郡。○女、音汝。
【読み】
余聞きて忘れず。女に州の田を賜いて、州縣は、今河内郡に屬す。○女は、音汝。

以胙乃舊勳。伯石再拜稽首、受策以出。
【読み】
以て乃の舊勳に胙[むく]ゆ、と。伯石再拜稽首して、策を受けて以て出づ。

君子曰、禮其人之急也乎。伯石之汰也、汰、驕也。
【読み】
君子曰く、禮は其れ人の急なるか。伯石の汰[おご]るも、汰は、驕るなり。

一爲禮於晉、猶荷其祿。況以禮終始乎。詩曰、人而無禮、胡不遄死。其是之謂乎。
【読み】
一たび禮を晉に爲して、猶其の祿を荷えり。況んや禮を以て終始するをや。詩に曰く、人として禮無くんば、胡ぞ遄やかに死せざる、と。其れ是を之れ謂うか、と。

初、州縣、欒豹之邑也。豹、欒盈族。○荷、戶可反。
【読み】
初め、州縣は、欒豹の邑なり。豹は、欒盈の族。○荷は、戶可反。

及欒氏亡、范宣子・趙文子・韓宣子皆欲之。文子曰、溫吾縣也。州本屬溫。溫、趙氏邑。
【読み】
欒氏が亡ぶるに及びて、范宣子・趙文子・韓宣子皆之を欲す。文子曰く、溫は吾が縣なり、と。州は本溫に屬す。溫は、趙氏の邑。

二宣子曰、自郤稱以別三傳矣。郤稱、晉大夫。始受州。自是州與溫別、至今傳三家。○稱、尺證反。傳、直專反。
【読み】
二宣子曰く、郤稱よりして以て別れて三傳せり。郤稱は、晉の大夫。始めて州を受く。是よりして州は溫と別れ、今に至りて
三家に傳えたり。○稱は、尺證反。傳は、直專反。


晉之別縣、不唯州。誰獲治之。言縣邑旣別甚多。無有得追而治取之。
【読み】
晉の縣を別つこと、唯州のみにあらず。誰か之を治むることを獲ん、と。言うこころは、縣邑旣に別るること甚だ多し。追て之を治め取ることを得ること有ること無し。

文子病之、乃舍之。二子曰、吾不可以正議而自與也。皆舍之。
【読み】
文子之を病[うれ]え、乃ち之を舍つ。二子曰く、吾れ正議を以てして自ら與う可からず、と。皆之を舍つ。

及文子爲政、趙獲曰、可以取州矣。獲、文子之子。○乃舍、音赦。又音捨。下同。
【読み】
文子が政を爲すに及びて、趙獲曰く、以て州を取る可し、と。獲は、文子の子。○乃舍は、音赦。又音捨。下も同じ。

文子曰、退。使獲退也。
【読み】
文子曰く、退け。獲をして退かしむるなり。

二子之言義也。二子、二宣子也。
【読み】
二子の言は義なり。二子は、二宣子なり。

違義禍也。余不能治余縣。又焉用州。其以徼禍也。君子曰、弗知實難。患不知禍所起。
【読み】
義に違うは禍なり。余余が縣を治むること能わず。又焉ぞ州を用いんや。其れ以て禍を徼めんや。君子曰く、知らざるは實に難し。禍の起こる所を知らざるを患う。

知而弗從、禍莫大焉。有言州必死。
【読み】
知りて從わざるは、禍焉より大なるは莫し、と。州を言うこと有らば必ず死せん、と。

豐氏故主韓氏。故、猶舊也。豐氏至晉、舊以韓氏爲主人。
【読み】
豐氏は故より韓氏を主とす。故は、猶舊のごとし。豐氏晉に至れば、舊より韓氏を以て主人と爲す。

伯石之獲州也、韓宣子爲之請之。爲其復取之之故。後若還晉、因自欲取之。爲七年、豐氏歸州張本。○爲、去聲。自爲介外皆同。
【読み】
伯石の州を獲るや、韓宣子之が爲に之を請えるなり。其の復すとき之を取らんが爲の故なり。後若し晉に還さば、因りて自ら之を取らんと欲す。七年、豐氏州を歸す爲の張本なり。○爲は、去聲。爲介より外は皆同じ。

五月、叔弓如滕、葬滕成公。子服椒爲介。及郊、遇懿伯之忌、敬子不入。忌、怨也。懿伯、椒之叔父。敬子、叔弓也。叔弓禮椒、爲之辟仇。○辟、音避。
【読み】
五月、叔弓滕に如きて、滕の成公を葬る。子服椒介爲り。郊に及び、懿伯の忌に遇い、敬子入らず。忌は、怨むなり。懿伯は、椒の叔父。敬子は、叔弓なり。叔弓椒を禮するは、之が仇を辟けるが爲なり。○辟は、音避。

惠伯曰、公事有公利、無私忌。椒請先入。乃先受館。敬子從之。惠伯、子服椒也。傳言叔弓之有禮。
【読み】
惠伯曰く、公事には公利有りて、私忌無し。椒請う、先ず入らん、と。乃ち先ず館を受く。敬子之に從う。惠伯は、子服椒なり。傳叔弓の禮有るを言う。

晉韓起如齊逆女。爲平公逆。
【読み】
晉の韓起齊に如きて女を逆う。平公の爲に逆う。

公孫蠆爲少姜之有寵也、以其子更公女、而嫁公子。更嫁公女。○蠆、敕邁反。更、平聲。
【読み】
公孫蠆[こうそんたい]少姜の寵有りしが爲に、其の子を以て公女に更えて、公の子を嫁がしむ。公の女を更め嫁す。○蠆は、敕邁反。更は、平聲。

人謂宣子、子尾欺晉。晉胡受之。宣子曰、我欲得齊而遠其寵、寵將來乎。寵謂子尾。○遠、去聲。
【読み】
人宣子に謂えらく、子尾晉を欺く。晉胡ぞ之を受けん、と。宣子曰く、我れ齊を得んと欲して其の寵を遠ざけば、寵將來らんや、と。寵は子尾を謂う。○遠は、去聲。

秋、七月、鄭罕虎如晉、賀夫人。
【読み】
秋、七月、鄭の罕虎晉に如きて、夫人を賀す。

且告曰、楚人日徵敝邑、以不朝立王之故。楚靈王新立。
【読み】
且つ告げて曰く、楚人日々に敝邑を徵すに、立王に朝せざるの故を以てす。楚の靈王新たに立つ。

敝邑之往、則畏執事、其謂寡君而固有外心。其不往、則宋之盟云。云交相見。
【読み】
敝邑往かば、則ち執事の、其れ寡君を而[なんじ]固より外心有りと謂わんことを畏る。其れ往かざるときは、則ち宋の盟に云えり。交々相見えんと云う。

進退罪也。寡君使虎布之。布、陳也。
【読み】
進退罪あり。寡君虎をして之を布かしむ、と。布は、陳ぶるなり。

宣子使叔向對曰、君若辱有寡君、在楚何害。脩宋盟也。君苟思盟、寡君乃知免於戾矣。君若不有寡君、雖朝夕辱於敝邑、寡君猜焉。猜、疑也。
【読み】
宣子叔向をして對えしめて曰く、君若し辱く寡君を有せば、楚に在るも何の害あらん。宋の盟を脩むるなり。君苟も盟を思わば、寡君乃ち戾[つみ]に免るることを知れり。君若し寡君を有せざれば、朝夕に敝邑に辱くすと雖も、寡君猜[うたが]わん。猜は、疑うなり。

君實有心、何辱命焉。言若有事晉心、至楚可不須告。
【読み】
君實に心有らば、何ぞ命ずることを辱くせん。言うこころは、若し晉に事うる心有らば、楚に至るも告ぐることを須いざる可し。

君其往也。苟有寡君、在楚猶在晉也。
【読み】
君其れ往け。苟も寡君を有せば、楚に在るも猶晉に在るがごとし、と。

張趯使謂大叔曰、自子之歸也、歸、在此年春。
【読み】

張趯大叔に謂わしめて曰く、子の歸りしより、歸は、此の年の春に在り。

小人糞除先人之敝廬、曰、子其將來。今子皮實來。小人失望。大叔曰、吉賤。不獲來。賤、非上卿。
【読み】
小人先人の敝廬を糞除して、曰く、子其れ將に來らんとす、と。今子皮實に來れり。小人望みを失えり、と。大叔曰く、吉は賤し。來ることを獲ず。賤しとは、上卿に非ざるなり。

畏大國、尊夫人也。且孟曰而將無事。吉庶幾焉。孟、張趯也。庶幾如趯言。
【読み】
大國を畏れ、夫人を尊びてなり。且つ孟而[なんじ]將に事無からんとすと曰えり。吉庶幾えり、と。孟は、張趯なり。趯が言の如くならんことを庶幾う。

小邾穆公來朝。季武子欲卑之。不欲以諸侯禮待之。
【読み】
小邾穆公來朝す。季武子之を卑しめんと欲す。諸侯の禮を以て之を待することを欲せず。

穆叔曰、不可。曹・滕・二邾、實不忘我好。敬以逆之、猶懼其貳。又卑一睦焉、一睦、謂小邾。
【読み】
穆叔曰く、不可なり。曹・滕・二邾は、實に我が好を忘れず。敬して以て之を逆うるも、猶其の貳あらんことを懼る。又一睦を卑しまば、一睦は、小邾を謂う。

逆羣好也。其如舊而加敬焉。志曰、能敬無災。又曰、敬逆來者、天所福也。季孫從之。
【読み】
羣好に逆うなり。其れ舊の如くにして敬を加えよ。志に曰く、能く敬すれば災い無し、と。又曰く、敬して來者を逆うるは、天の福する所なり、と。季孫之に從う。

八月、大雩、旱也。
【読み】
八月、大いに雩するは、旱すればなり。

齊侯田於莒。莒、齊東竟。○好、去聲。
【読み】
齊侯莒に田[かり]す。莒は、齊の東竟。○好は、去聲。

盧蒲嫳見、泣且請曰、余髮如此種種。余奚能爲。嫳、慶封之黨。襄二十八年、放之於竟。種種、短也。自言衰老、不能復爲害。○嫳、普結反。見、賢遍反。種、章勇反。
【読み】
盧蒲嫳[きょほべつ]見え、泣き且つ請いて曰く、余が髮此の如く種種たり。余奚ぞ能くせん、と。嫳は、慶封の黨。襄二十八年、之を竟に放つ。種種は、短きなり。自ら衰老して、復害を爲すこと能わずと言う。○嫳は、普結反。見は、賢遍反。種は、章勇反。

公曰、諾。吾告二子。二子、子雅・子尾。
【読み】
公曰く、諾。吾れ二子に告げん、と。二子は、子雅・子尾。

歸而告之。子尾欲復之。子雅不可、曰、彼其髮短、而心甚長。其或寢處我矣。言不可信。
【読み】
歸りて之を告ぐ。子尾之を復さんと欲す。子雅可[き]かずして、曰く、彼れ其の髮短くして、心甚だ長し。其れ或は我に寢處せん、と。言うこころは、信ず可からず。

九月、子雅放盧蒲嫳于北燕。恐其復作亂。
【読み】
九月、子雅盧蒲嫳を北燕に放つ。其の復亂を作さんことを恐る。

燕簡公多嬖寵。欲去諸大夫、而立其寵人。冬、燕大夫比以殺公之外嬖。比、相親比。○去、上聲。比、毗志反。
【読み】
燕の簡公嬖寵多し。諸大夫を去りて、其の寵人を立てんと欲す。冬、燕の大夫比して以て公の外嬖を殺す。比は、相親比するなり。○去は、上聲。比は、毗志反。

公懼、奔齊。
【読み】
公懼れ、齊に奔る。

書曰北燕伯款出奔齊、罪之也。款罪輕於衛衎、重於蔡朱。故舉中示例。○衎、苦旦反。
【読み】
書して北燕伯款出でて齊に奔ると曰うは、之を罪するなり。款の罪衛衎[かん]より輕くして、蔡朱より重し。故に中を舉げて例を示す。○衎は、苦旦反。

十月、鄭伯如楚。子產相。楚子享之、賦吉日。吉日、詩小雅。宣王田獵之詩。楚王欲與鄭伯共田。故賦之。
【読み】
十月、鄭伯楚に如く。子產相く。楚子之を享して、吉日を賦す。吉日は、詩の小雅。宣王田獵するの詩なり。楚王鄭伯と共に田せんと欲す。故に之を賦す。

旣享。子產乃具田備。王以田江南之夢。楚之雲夢、跨江南北。○夢、如字。又莫公反。
【読み】
旣に享す。子產乃ち田の備えを具う。王以て江南の夢に田す。楚の雲夢は、江の南北に跨る。○夢は、字の如し。又莫公反。

齊公孫竈卒。竈、子雅。
【読み】
齊の公孫竈[こうそんそう]卒す。竈は、子雅。

司馬竈見晏子、司馬竈、齊大夫。
【読み】
司馬竈晏子を見て、司馬竈は、齊の大夫。

曰、又喪子雅矣。晏子曰、惜也、子旗不免。殆哉。以其不臣。○喪、息浪反。
【読み】
曰く、又子雅を喪えり、と。晏子曰く、惜しいかな、子旗免れじ。殆きかな。其の不臣を以てなり。○喪は、息浪反。

姜族弱矣。而嬀將始昌。嬀、陳氏。○嬀、九危反。
【読み】
姜の族弱りたり。而して嬀[き]將に始めて昌えんとす。嬀は、陳氏。○嬀は、九危反。

二惠競爽、猶可。子雅・子尾、齊惠公之孫也。競、彊也。爽、明也。
【読み】
二惠競爽せば、猶可なり。子雅・子尾は、齊の惠公の孫なり。競は、彊きなり。爽は、明らかなり。

又弱一个焉。姜其危哉。○个、古賀反。
【読み】
又一个[いっか]を弱くす。姜其れ危うきかな、と。○个は、古賀反。



經元年。不稱將。下匠反。下同。帥。所類反。言易。以豉反。大鹵。音魯。莒展出奔吳。一本作莒展輿。○今本亦同。疆鄆。居良反。注同。以瘧。音虐。書弑。申志反。或作殺。音同。
傳。且娶。七住反。爲介。音界。注同。從者。才用反。辱貺。音況。布几。木亦作机。筵。音延。莊共。音恭。草莽。莫蕩反。而懲。直升反。不憾。戶暗反。所雍。於勇反。本又作壅。注及下注同。○今本亦壅。垂櫜。古刀反。復得。扶又反。下雖復同。而駕。如字。又音加。注及下同。子相。息亮反。東夏。戶雅反。淳于。音純。不罷。音皮。謗讟。音獨。誹也。方畏反。行僭。子念反。下同。是穮。彼驕反。是蔉。古本反。耘也。音云。除草也。耕鉏。仕居反。鮮不。息淺反。特緝。七入反。誕也。音但。便簒。初患反。小旻。亡巾反。馮河。皮冰反。絞。古卯反。而婉。紆阮反。注同。臧否。悲矣反。舊方九反。持之。如字。本或作恃、誤。當身。丁浪反。瀆齊。徒木反。其使。所吏反。下注其使・出使・下召使者同。相趙。息亮反。注同。以藩。方元反。之隙。去逆反。之咎。其九反。注同。也賄。呼罪反。辟汚。音烏。注及下同。疆。居良反。注及下至莒之疆事同。場。音亦。注同。表旗。音其。饕。吐刀反。餮。吐結反。夏有。戶雅反。觀。舊音官。扈。音戶。鄠縣。音戶。邳。皮悲反。嬴姓。音盈。狎主。戶甲反。吳濮。音卜。有釁。許靳反。禦也。魚呂反。○今本無也字。宥善。音又。小宛。紆阮反。可復。扶又反。襃姒。音似。過鄭。古禾反。猶與賓客享之。許丈反。又普庚反。於幕。武博反。采蘩。音煩。死麏。九倫反。○今本麕。使尨。武江反。也吠。扶廢反。兕爵。徐履反。於戾。力計反。下同。於潁。營井反。於雒汭。如銳反。劉夏。戶雅反。弁端委。本亦作弁冕端委。○今本亦同。子蓋。戶臘反。何不也。亦遠績功。本或作亦遠績禹功。○今本亦同。大庇。必利反。又音祕。焉能。於虔反。下焉用・焉能同。吾儕。仕皆反。朝不。如字。下同。以語。魚據反。而耄。莫報反。不歆。許金反。曾夭。於兆反。幾被。音祈。曾阜。扶九反。欲贏。音盈。注同。惡讙。呼端反。或作喧。○今本亦喧。指楹。音盈。贄幣。音至。櫜甲。古刀反。本或作衷。丁隆反。及衝。尺容反。奸之。音干。女嬖。必計反。弗下。戶嫁反。無重。直用反。又直勇反。而蔡。素葛反。說文作■(上が殺、下が米)。音同。字從殺下米。云、■(左が米、右が悉)■(上が殺、下が米)散之也。會杜義。千乘。繩證反。下及注同。爲晉侯。于僞反。造舟。李巡注爾雅云、比其舩而度也。郭云、倂舟爲橋。自齎。子兮反。本又作賚、同。而還。音環。不徑。古定反。己坐。才臥反。女叔齊。音汝。其幾何。居豈反。下同。鮮不。息淺反。注同。五稔。而甚反。不啻。始豉反。視蔭。本亦作陰。朝夕。如字。注同。翫歲。五喚反。說文云、習厭也。又作忨。云、貪也。其與。如字。又音預。鄭爲。于僞反。閨門。音圭。實薰。許云反。隧。音遂。數子皙。色主反。又色具反。大原。音泰。崇卒。子忽反。下及注皆同。又阨。本又作隘。不便。婢面反。以什。音十。以徇。辭俊反。疆鄆。居良反。注同。務婁。竝如字。厖。武江反。也夫。音扶。爲崇。息遂反。帝嚳。苦毒反。相土。息亮反。大夏。戶雅反。注及下同。主參。所林反。注及下同。方震。本又作娠。之愼反。懷胎。他來反。有裔。以制反。曰昧。音妹。爲玄冥師。師、長也。少暭。詩照反。下戶老反。之長。丁丈反。下殖長同。纂昧。子管反。宣汾。扶云反。陂障。彼皮反。顓頊。音專。下許玉反。姒。音似。癘。音例。疫。音役。禜之。徐一音營。哀樂。音洛。朝以。如字。湫。徐一音在酒反。服云、著也。底。服云、止也。露羸。劣危反。下同。嬪御。婢人反。辨別。彼列反。去同。起呂反。幾何。居豈反。而好。呼報反。怙富。音戶。近女。附近之近。下同。如蠱。音古。不佑。音又。以降。音絳。下及注同。或音戶江反。堙。音因。爲菑。音災。下同。喘渴。昌兗反。洩注。息列反。下如字。思慮。息利反。主相。息亮反。其咎。其九反。能御。魚呂反。本亦作禦。○今本亦禦。淫溺。乃狄反。耆欲。時志反。○今本嗜。皿蟲。字林、音猛。巽下。音遜。艮上。古恨反。長女。丁丈反。下同。少男。詩照反。下同。而說。音悅。櫟。徐失灼反。郟。古洽反。爲介。音界。出竟。音境。殺之。申志反。○今本弑。絞也。古卯反。幕。音莫。平夏。戶雅反。宮廐。居久反。五乘。繩證反。下同。之餼。許氣反。一卒。子忽反。不侮。亡甫反。鰥寡。古頑反。史佚。音逸。自別。彼列反。薳啓彊。一音居良反。汰侈。音泰。旣烝。之承反。趙衰。初危反。
經二年。少姜。詩照反。傳放此。致襚。音遂。
傳。脩好。呼報反。所以王。周弘正依字讀。四臣。大顚・閎夭・散宜生・南宮适。四輔。謂先後・奔奏・疏附・禦侮。彌縫。扶恭反。補合。如字。一音閤。賦節。徐如字。式訛。五禾反。殖長。丁丈反。召南。上照反。下同。爲平公。于僞反。下文爲之請同。亢也。苦浪反。○今本無也字。淇。音其。爲好。呼報反。後文注皆同。介休。音界。下許虯反。○今本介作界。以近。附近之近。下同。驛。音亦。女矯。居表反。朝夕。如字。下同。以印。一刃反。之衢。其于反。非伉。苦浪反。儷。力計反。其使。所吏反。
經三年。
傳。
閒朝。閒厠之閒。守適。本或作嫡。而令。力呈反。復薦。扶又反。下不出者皆同。朝夕。如字。不腆。他典反。焜。服云、明也。燿。羊照反。服云、照也。殞命。于敏反。○今本隕。之好。呼報反。大公。音泰。要也。一遙反。敢譽。音餘。嬪廧。本又作嬙。在良反。○今本亦嬙。在衰。七雷反。本亦作縗。今本亦縗。絰。直結反。其貺。音況。吾弗知。絕句。以五升爲豆四豆爲區四區爲釜。舊本如此。直加豆爲五升。而區釜自大。故杜云、區二斗、釜八斗、是也。本或作五豆爲區、五區爲釜者謂加舊豆爲五、亦與杜注相會。非於五升之豆又五五而加也。○今本亦五豆爲區、五區爲釜。量貸。他代反。蛤。古答反。賦斂。力驗反。公聚。徐在喩反。一音在主反。朽蠹。丁故反。三老。服云、工老・商老・農老也。凍。丁貢反。餒。奴罪反。上壽。音授。下同。以上。時掌反。○今本以作已。屨賤。九具反。刖者。音月。又五刮反。而或燠。徐音憂。又於到反。休之。賈云、燠、厚也。休、美也。將焉。於虔反。其相。息亮反。服如字。卒列。子忽反。注同。無長。丁丈反。注同。罷敝。音皮。尺氏反。又昌氏反。道殣。說文云、道中死者人所覆也。毛詩、作墐。傳云、墐路冢也。欒郤。去逆反。皁。才早反。隸。力計反。不悛。七全反。以樂。一音岳。慆憂。吐刀反。讒鼎。仕咸反。服云、疾讒之鼎也。昧旦。音妹。丕顯。普悲反。怠解。佳賣反。○今本解怠。況日。人實反。此難。乃旦反。近市。附近之近。下同。隘。於賣反。嚻塵。許驕反。一音五高反。爽塏。苦待反。燥也。素早反。朝夕。如字。下雖朝夕同。令不與。力呈反。省於。所景反。下同。如祉。音恥。遄。市專反。故復。音服。下卒復・爲其復・欲復之同。諺曰。音彥。段相。息亮反。筴。初革反。○今本策。以胙。才路反。之汰。音泰。猶荷。任也。一音可。以別。絕句。又焉。於虔反。爲介。音界。猜焉。七才反。糞除。甫問反。東竟。音境。盧蒲嫳。一音匹舌反。子產相。息亮反。

春秋左氏傳校本第二十一

昭公 起四年盡七年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
四年、春、王正月、大雨雹。當雪而雹。故以爲災而書之。○雨、于付反。雹、蒲學反。
【読み】
〔經〕四年、春、王の正月、大いに雹雨[ふ]る。當に雪ふるべくして雹ふる。故に以て災いと爲して之を書す。○雨は、于付反。雹は、蒲學反。

夏、楚子・蔡侯・陳侯・鄭伯・許男・徐子・滕子・頓子・胡子・沈子・小邾子・宋世子佐・淮夷會于申。楚靈王始合諸侯。○沈、音審。
【読み】
夏、楚子・蔡侯・陳侯・鄭伯・許男・徐子・滕子・頓子・胡子・沈子[しんし]・小邾子[しょうちゅし]・宋の世子佐・淮夷申に會す。楚の靈王始めて諸侯を合わす。○沈は、音審。

楚人執徐子。稱人以執、以不道於其民告。
【読み】
楚人徐子を執う。人と稱して以て執うるは、其の民に不道なるを以て告ぐればなり。

秋、七月、楚子・蔡侯・陳侯・許男・頓子・胡子・沈子・淮夷伐吳。因申會以伐吳。不言諸侯者、鄭・徐・滕・小邾・宋、不在故也。胡、國。汝陰縣西北有胡城。
【読み】
秋、七月、楚子・蔡侯・陳侯・許男・頓子・胡子・沈子・淮夷吳を伐つ。申の會に因りて以て吳を伐つ。諸侯と言わざるは、鄭・徐・滕・小邾・宋、在らざる故なり。胡は、國。汝陰縣の西北に胡城有り。

執齊慶封殺之。楚子欲行霸、爲齊討慶封。故稱齊。
【読み】
齊の慶封を執えて之を殺す。楚子霸を行わんと欲し、齊の爲に慶封を討ず。故に齊と稱す。

遂滅賴。九月、取鄫。鄫、莒邑。傳例曰、克邑不用師徒曰取。○鄫、才陵反。
【読み】
遂に賴を滅ぼす。九月、鄫[しょう]を取る。鄫は、莒の邑。傳例に曰く、邑に克ちて師徒を用いざるを取ると曰う、と。○鄫は、才陵反。

冬、十有二月、乙卯、叔孫豹卒。
【読み】
冬、十有二月、乙卯[きのと・う]、叔孫豹卒す。

〔傳〕四年、春、王正月、許男如楚。楚子止之。欲與具田。
【読み】
〔傳〕四年、春、王の正月、許男楚に如く。楚子之を止む。與に具に田[かり]せんと欲す。

遂止鄭伯、復田江南。許男與焉。前年、楚子已與鄭伯田江南。故言復。○復、扶又反。與、音預。
【読み】
遂に鄭伯を止め、復江南に田[かり]す。許男與れり。前年、楚子已に鄭伯と江南に田す。故に復と言う。○復は、扶又反。與は、音預。

使椒舉如晉求諸侯、二君待之。二君、鄭・許。
【読み】
椒舉をして晉に如きて諸侯を求め、二君之を待つ。二君は、鄭・許。

椒舉致命曰、寡君使舉曰。日君有惠、賜盟于宋、宋盟在襄二十七年。
【読み】
椒舉命を致して曰く、寡君舉をして曰わしむ。日[さき]に君惠有りて、盟を宋に賜いて、宋の盟は襄二十七年に在り。

曰、晉・楚之從、交相見也。以歲之不易、不易、言有難。○易、以豉反。
【読み】
曰く、晉・楚の從は、交々相見えん、と。歲の易からざるを以て、易からざるは、難有るを言うなり。○易は、以豉反。

寡人願結驩於二三君、欲得諸侯謀事補闕。
【読み】
寡人驩[かん]を二三君に結ばんことを願い、諸侯を得て事を謀り闕けたるを補わんと欲す。

使舉請閒。君若苟無四方之虞、虞、度也。○閒、音閑。一如字。
【読み】
舉をして閒を請わしむ。君若し苟も四方の虞無くば、虞は、度るなり。○閒は、音閑。一に字の如し。

則願假寵以請於諸侯。欲借君之威寵、以致諸侯。
【読み】
則ち願わくは寵を假りて以て諸侯に請わん、と。君の威寵を借りて、以て諸侯を致さんと欲す。

晉侯欲勿許。司馬侯曰、不可。楚王方侈。天或者欲逞其心以厚其毒、而降之罰、未可知也。其使能終、亦未可知也。晉・楚唯天所相。相、助也。
【読み】
晉侯許すこと勿からんと欲す。司馬侯曰く、不可なり。楚王方に侈れり。天或は其の心を逞くせんとして以て其の毒を厚くして、之に罰を降さんことを欲するも、未だ知る可からず。其れ能く終えしめんも、亦未だ知る可からず。晉・楚は唯天の相くる所のままなり。相は、助くるなり。

不可與爭。君其許之、而脩德以待其歸。若歸於德、吾猶將事之。況諸侯乎。若適淫虐、楚將弃之。弃不以爲君。
【読み】
與に爭う可からず。君其れ之を許して、德を脩めて以て其の歸を待て。若し德に歸せば、吾れ猶將に之に事えんとす。況んや諸侯をや。若し適に淫虐ならば、楚將に之を弃てんとす。弃てて以て君と爲さず。

吾又誰與爭。
【読み】
吾れ又誰と與に爭わん、と。

曰、晉有三不殆。其何敵之有。殆、危也。
【読み】
曰く、晉に三つの殆[あやう]からざる有り。其れ何の敵か之れ有らん。殆は、危うきなり。

國險而多馬、齊・楚多難。多簒弑之難。
【読み】
國險にして馬多く、齊・楚は難多し。簒弑の難多し。

有是三者。何郷而不濟。對曰、恃險與馬、而虞鄰國之難、是三殆也。四嶽・ 東嶽、泰。西嶽、華。南嶽、衡。北嶽、恆。○郷、許亮反。
【読み】
是の三つの者有り。何[いずく]に郷[む]かいて濟[な]らざらん、と。對えて曰く、險と馬とを恃みて、鄰國の難を虞[はか]るは、是れ三つの殆きなり。四嶽・ 東嶽は、泰。西嶽は、華。南嶽は、衡。北嶽は、恆。○郷は、許亮反。

三塗・ 在河南陸渾縣南。○渾、戶昏反。
【読み】
三塗・ 河南陸渾縣の南に在り。○渾は、戶昏反。

陽城・ 在陽城縣東北。
【読み】
陽城・ 陽城縣の東北に在り。

大室・ 在河南陽城縣西南。○大、音泰。
【読み】
大室・ 河南陽城縣の西南に在り。○大は、音泰。

荆山・ 在新城沶郷縣南。○沶、音市。漢書音穉。
【読み】
荆山・ 新城沶郷縣[しきょうけん]の南に在り。○沶は、音市。漢書音穉。

中南、在始平武功縣南。
【読み】
中南は、始平武功縣の南に在り。

九州之險也、是不一姓。雖是天下至險、無德則滅亡。
【読み】
九州の險なるも、是れ一姓ならず。是れ天下の至險と雖も、德無ければ則ち滅亡す。

冀之北土、燕・代。○燕、烏賢反。
【読み】
冀の北土は、燕・代。○燕は、烏賢反。

馬之所生、無興國焉。恃險與馬、不可以爲固也。從古以然。是以先王務脩德音、以亨神人。亨、通也。
【読み】
馬の生ずる所なるも、興れる國無し。險と馬とを恃むは、以て固しと爲す可らざるなり。古より以て然り。是を以て先王務めて德音を脩めて、以て神人に亨[とお]れり。亨は、通るなり。

不聞其務險與馬也。鄰國之難、不可虞也。或多難以固其國、啓其疆土、或無難以喪其國、失其守宇。於國則四垂爲宇。
【読み】
其の險と馬とを務むることを聞かざるなり。鄰國の難をば、虞る可からざるなり。或は難多くして以て其の國を固くして、其の疆土を啓くあり、或は難無くして以て其の國を喪い、其の守宇を失うあり。國に於ては則ち四垂を宇と爲す。

若何虞難。齊有仲孫之難而獲桓公、至今賴之。仲孫、公孫無知。事在莊九年。
【読み】
若何ぞ難を虞らん。齊に仲孫の難有りて桓公を獲、今に至るまで之に賴れり。仲孫は、公孫無知。事は莊九年に在り。

晉有里・丕之難而獲文公、是以爲盟主。里克・丕鄭。事在僖九年。○丕、普悲反。
【読み】
晉に里・丕の難有りて文公を獲、是を以て盟主と爲れり。里克・丕鄭。事は僖九年に在り。○丕は、普悲反。

衛・邢無難、敵亦喪之。閔二年、狄滅衛、僖二十五年、衛滅邢。
【読み】
衛・邢は難無かりしも、敵亦之を喪ぼせり。閔二年、狄衛を滅ぼし、僖二十五年、衛邢を滅ぼす。

故人之難、不可虞也。恃此三者、而不脩政德、亡於不暇。又何能濟。君其許之。紂作淫虐、文王惠和、殷是以隕、周是以興。夫豈爭諸侯。
【読み】
故に人の難をば、虞る可からざるなり。此の三つの者を恃みて、政德を脩めざるは、亡ぶるに於て暇あらず。又何ぞ能く濟らん。君其れ之を許せ。紂は淫虐を作し、文王は惠和なりしかば、殷は是を以て隕ち、周は是を以て興れり。夫れ豈諸侯を爭わんや、と。

乃許楚使。使叔向對曰、寡君有社稷之事。是以不獲春秋時見。言不得自往。謙辭。○見、賢遍反。
【読み】
乃ち楚の使いに許す。叔向[しゅくきょう]をして對えしめて曰く、寡君社稷の事有り。是を以て春秋に時に見ゆることを獲ず。言うこころは、自ら往くことを得ず。謙辭なり。○見は、賢遍反。

諸侯君實有之。何辱命焉。
【読み】
諸侯は君實に之れ有せり。何ぞ命を辱くせん、と。

椒舉遂請昏。蓋楚子遣舉時、兼使求昏。
【読み】
椒舉遂に昏を請う。蓋し楚子舉を遣る時、兼ねて昏を求めしむるならん。

晉侯許之。
【読み】
晉侯之を許す。

楚子問於子產曰、晉其許我諸侯乎。對曰、許君。晉君少安、不在諸侯。安於少小不能遠圖。
【読み】
楚子子產に問いて曰く、晉其れ我に諸侯を許さんか、と。對えて曰く、君に許さん。晉君少しきに安んじて、諸侯に在らず。少小に安んじて遠圖すること能わず。

其大夫多求、貪也。
【読み】
其の大夫は多く求めて、貪なり。

莫匡其君。在宋之盟、又曰如一。晉・楚同也。
【読み】
其の君を匡すこと莫し。宋の盟に在りても、又一の如くならんと曰う。晉・楚同じからん。

若不許君、將焉用之。焉用宋盟。
【読み】
若し君に許さずんば、將[はた]焉ぞ之を用いん、と。焉ぞ宋の盟を用いん。

王曰、諸侯其來乎。對曰、必來。從宋之盟、承君之歡、不畏大國。大國、晉也。
【読み】
王曰く、諸侯其れ來らんか、と。對えて曰く、必ず來らん。宋の盟に從い、君の歡を承け、大國を畏れず。大國は、晉なり。

何故不來。不來者、其魯・衛・曹・邾乎。曹畏宋、邾畏魯、魯・衛偪於齊而親於晉。唯是不來。其餘君之所及也。誰敢不至。言楚威力所能及。
【読み】
何の故か來らざらん。來らざらん者は、其れ魯・衛・曹・邾か。曹は宋を畏れ、邾は魯を畏れ、魯・衛は齊に偪られて晉に親し。唯是れのみ來らざらん。其の餘は君の及ぶ所のままなり。誰か敢えて至らざらん、と。言うこころは、楚の威力の能く及ばん所のままなり。

王曰、然則吾所求者、無不可乎。對曰、求逞於人、不可。逞、快也。求人以快意、人必違之。
【読み】
王曰く、然らば則ち吾が求むる所の者は、不可なること無からんか、と。對えて曰く、逞くせんことを人に求むれば、不可なり。逞は、快きなり。人に求むるに快意を以ゆれば、人必ず之に違う。

與人同欲、盡濟。爲下會申傳。
【読み】
人と欲を同じくせば、盡く濟らん、と。下の申に會する爲の傳なり。

大雨雹。季武子問於申豐曰、雹可禦乎。禦、止也。申豐、魯大夫。
【読み】
大いに雹雨る。季武子申豐に問いて曰く、雹は禦む可けんや、と。禦は、止むるなり。申豐は、魯の大夫。

對曰、聖人在上無雹。雖有不爲災。
【読み】
對えて曰く、聖人上に在すときは雹無し。有りと雖も災いを爲さず。

古者日在北陸而藏冰、陸、道也。謂夏十二月、日在虛危、冰堅而藏之。
【読み】
古は日北陸に在りて冰を藏め、陸は、道なり。夏の十二月、日虛危に在りて、冰堅くして之を藏むるを謂う。

西陸朝覿而出之。謂夏三月、日在昴畢、蟄蟲出而用冰。春分之中、奎星朝見東方。
【読み】
西陸朝覿[ちょうてき]にして之を出だす。夏の三月、日昴畢[ぼうひつ]に在り、蟄蟲出でて冰を用ゆるを謂う。春分の中、奎星[けいせい]朝に東方に見ゆ。

其藏冰也、深山窮谷、固陰沍寒、於是乎取之。沍、閉也。必取積陰之冰、所以道逹其氣、使不爲災。
【読み】
其の冰を藏むるや、深山窮谷、固陰沍寒[ごかん]、是に於て之を取る。沍は、閉じるなり。必ず積陰の冰を取ることは、其の氣を道逹して、災いを爲さざらしむる所以なり。

其出之也、朝之祿位、賓食喪祭、於是乎用之。言不獨共公。○共、音泰。
【読み】
其の之を出だすや、朝の祿位、賓食喪祭、是に於て之を用ゆ。言うこころは、獨公に共するのみにあらず。○共は、音泰。

其藏之也、黑牡秬黍、以享司寒。黑牡、黑牲也。秬、黑黍也。司寒、玄冥。北方之神。故物皆用黑。有事於冰。故祭其神。○牡、茂后反。
【読み】
其の之を藏むるや、黑牡[こくぼう]秬黍[きょしょ]、以て司寒を享[まつ]る。黑牡は、黑牲なり。秬は、黑黍なり。司寒は、玄冥。北方の神。故に物皆黑を用ゆ。冰に事有り。故に其の神を祭る。○牡は、茂后反。

其出之也、桃弧棘矢、以除其災。桃弓棘箭、所以禳除凶邪。將御至尊故。
【読み】
其の之を出だすや、桃弧棘矢、以て其の災いを除けり。桃弓棘箭は、凶邪を禳除する所以。將に至尊に御せんとする故なり。

其出入也時。食肉之祿、冰皆與焉。食肉之祿、謂在朝廷治其職事、就官食者。○與、音預。
【読み】
其の出入や時あり。食肉の祿は、冰皆與る。食肉の祿とは、朝廷に在りて其の職事を治め、官に就きて食う者を謂う。○與は、音預。

大夫・命婦、喪浴用冰。命婦、大夫妻。
【読み】
大夫・命婦は、喪浴に冰を用ゆ。命婦は、大夫の妻。

祭寒而藏之、享司寒。
【読み】
寒を祭りて之を藏め、司寒を享る。

獻羔而啓之。謂二月春分、獻羔祭韭、始開冰室。
【読み】
羔[こう]を獻じて之を啓く。二月春分、羔を獻じ韭[きゅう]を祭り、始めて冰室を開くを謂う。

公始用之、公先用、優尊。
【読み】
公始めて之を用い、公先ず用ゆるは、尊を優[ゆたか]にするなり。

火出而畢賦。火星昏見東方、謂三月・四月中。
【読み】
火出でて畢[ことごと]く賦す。火星昏に東方に見るは、三月・四月の中を謂う。

自命夫・命婦至於老疾、無不受冰。老、致仕在家者。
【読み】
命夫・命婦より老疾に至るまで、冰を受けざること無し。老は、致仕して家に在る者。

山人取之、縣人傳之、山人、虞官。縣人、遂屬。○傳、平聲。
【読み】
山人之を取り、縣人之を傳え、山人は、虞官。縣人は、遂の屬。○傳は、平聲。

輿人納之、隸人藏之。輿・隸、皆賤官。
【読み】
輿人之を納れ、隸人之を藏む。輿・隸は、皆賤官。

夫冰以風壯、冰因風寒而堅。
【読み】
夫れ冰は風を以て壯に、冰は風寒に因りて堅し。

而以風出。順春風而散用。
【読み】
而して風を以て出だす。春風に順いて散用す。

其藏之也周、周、密也。
【読み】
其の之を藏むるや周に、周は、密なり。

其用之也徧、及老疾。
【読み】
其の之を用ゆるや徧きときは、老疾に及ぶ。

則冬無愆陽、愆、過也。謂冬溫。
【読み】
則ち冬に愆陽[けんよう]無く、愆は、過つなり。冬溫かなるを謂う。

夏無伏陰、伏陰、謂夏寒。
【読み】
夏に伏陰無く、伏陰は、夏寒きを謂う。

春無凄風、凄、寒也。
【読み】
春に凄風無く、凄は、寒きなり。

秋無苦雨、霖雨、爲人所患苦。
【読み】
秋に苦雨無く、霖雨は、人の爲に患苦せらるるなり。

雷出不震、震、霆也。
【読み】
雷出でて震せず、震は、霆なり。

無菑霜雹、癘疾不降、癘、惡氣也。
【読み】
菑[わざわい]する霜雹無く、癘疾降らず、癘は、惡氣なり。

民不夭札。短折爲夭。夭死爲札。○札、側八反。一音截。
【読み】
民夭札せず。短折を夭と爲す。夭死を札と爲す。○札は、側八反。一音截[せつ]。

今藏川池之冰、弃而不用、旣不藏深山窮谷之冰、又火出不畢賦、有餘則弃之。
【読み】
今川池の冰を藏め、弃てて用いず、旣に深山窮谷の冰を藏めず、又火出でて畢く賦せず、餘有れば則ち之を弃つ。

風不越而殺、雷不發而震。越、散也。言陰陽失序、雷風爲害。
【読み】
風越[ち]らずして殺し、雷發せずして震す。越は、散るなり。陰陽序を失い、雷風害を爲すを言う。

雹之爲菑、誰能禦之。
【読み】
雹の菑を爲すことを、誰か能く之を禦めん。

七月之卒章、藏冰之道也。七月、詩豳風。卒章曰、二之日、鑿冰沖沖、謂十二月鑿而取之。三之日、納于凌陰、凌陰、冰室也。四之日、其蚤獻羔祭韭、謂二月春分、蚤開冰室、以薦宗廟。○凌、陵證反。
【読み】
七月の卒章は、冰を藏むるの道なり。七月は、詩の豳風[ひんふう]。卒章に曰く、二の日、冰を鑿つこと沖沖たりとは、十二月鑿ちて之を取るを謂う。三の日、凌陰に納るとは、凌陰は、冰室なり。四の日、其れ蚤[つと]に羔を獻じ韭を祭るとは、二月春分、蚤に冰室を開きて、以て宗廟に薦むるを謂う。○凌は、陵證反。

夏、諸侯如楚。魯・衛・曹・邾不會。曹・邾辭以難、公辭以時祭、衛侯辭以疾。如子產言。○難、乃旦反。
【読み】
夏、諸侯楚に如く。魯・衛・曹・邾會せず。曹・邾は辭するに難を以てし、公は辭するに時祭を以てし、衛侯は辭するに疾を以てす。子產の言の如し。○難は、乃旦反。

鄭伯先待于申。自楚先至會地。
【読み】
鄭伯先ず申に待つ。楚より先ず會地に至る。

六月、丙午、楚子合諸侯于申。椒舉言於楚子曰、臣聞諸侯無歸。禮以爲歸。今君始得諸侯。其愼禮矣。霸之濟否、在此會也。夏啓有鈞臺之享、啓、禹子。河南陽翟縣南有鈞臺陂。蓋啓享諸侯於此。
【読み】
六月、丙午[ひのえ・うま]、楚子諸侯を申に合わす。椒舉楚子に言いて曰く、臣聞く、諸侯は歸する無し。禮に以て歸することを爲す、と。今君始めて諸侯を得たり。其れ禮を愼め。霸の濟否は、此の會に在り。夏啓に鈞臺の享有り、啓は、禹の子。河南陽翟縣の南に鈞臺陂有り。蓋し啓諸侯を此に享するならん。

商湯有景亳之命、河南鞏縣西南有湯亭。或言亳卽偃師。
【読み】
商湯に景亳[けいはく]の命有り、河南鞏縣の西南に湯亭有り。或ひと言う、亳は卽ち偃師、と。

周武有孟津之誓、將伐紂也。
【読み】
周武に孟津の誓い有り、將に紂を伐たんとするなり。

成有岐陽之蒐、成王歸自奄、大蒐於岐山之陽。岐山、在扶風美陽縣西北。
【読み】
成に岐陽の蒐[しゅう]有り、成王奄より歸り、岐山の陽[みなみ]に大蒐す。岐山は、扶風美陽縣の西北に在り。

康有酆宮之朝、酆、在始平。鄠縣東有靈臺。康王於是朝諸侯。
【読み】
康に酆宮[ほうきゅう]の朝有り、酆は、始平に在り。鄠[こ]縣の東に靈臺有り。康王是に於て諸侯を朝す。

穆有塗山之會、穆王會諸侯於塗山。塗山、在壽春東北。
【読み】
穆に塗山の會有り、穆王諸侯を塗山に會す。塗山は、壽春の東北に在り。

齊桓有召陵之師、在僖四年。
【読み】
齊桓に召陵の師有り、僖四年に在り。

晉文有踐土之盟、在僖二十八年。
【読み】
晉文に踐土の盟有り、僖二十八年に在り。

君其何用。宋向戌・鄭公孫僑在、諸侯之良也。君其選焉。選擇所用。○向、舒亮反。戌、音恤。
【読み】
君其れ何れを用いんとする。宋の向戌[しょうじゅつ]・鄭の公孫僑在り、諸侯の良なり。君其れ選べ、と。用ゆる所を選擇せよ。○向は、舒亮反。戌は、音恤。

王曰、吾用齊桓。用會召陵之禮。
【読み】
王曰く、吾は齊桓を用いん、と。召陵に會するの禮を用いん。

王使問禮於左師與子產。左師曰、小國習之、大國用之。敢不薦聞。言所聞、謙示所未行。
【読み】
王禮を左師と子產とに問わしむ。左師曰く、小國之を習い、大國之を用ゆ。敢えて聞けるを薦めざらんや、と。聞ける所と言うは、謙して未だ行わざる所なるを示すなり。

獻公合諸侯之禮六。其禮六、儀也。宋爵、公。故獻公禮。
【読み】
公諸侯を合わすの禮六を獻ず。其の禮六とは、儀なり。宋の爵は、公。故に公の禮を獻ず。

子產曰、小國共職。敢不薦守。獻伯・子・男會公之禮六。鄭、伯爵。故獻伯・子・男會公之禮。其禮同。所從言之異。○共、音恭。守、手又反。
【読み】
子產曰く、小國は職に共す。敢えて守りを薦めざらんや、と。伯・子・男公に會するの禮六を獻ず。鄭は、伯爵。故に伯・子・男公に會するの禮を獻ず。其の禮は同じ。從りて言う所の異なるなり。○共は、音恭。守は、手又反。

君子謂、合左師善守先代、子產善相小國。
【読み】
君子謂えらく、合左師は善く先代を守り、子產は善く小國を相く、と。

王使椒舉侍於後以規過。規正二子之過。
【読み】
王椒舉をして後に侍して以て過ちを規さしむ。二子の過ちを規正す。

卒事不規。王問其故。對曰、禮吾未見者有六焉。又何以規。左師・子產所獻六禮、楚皆未嘗行。
【読み】
事を卒うるまで規さず。王其の故を問う。對えて曰く、禮に吾が未だ見ざる者六有り。又何を以て規さん、と。左師・子產獻ずる所の六禮、楚皆未だ嘗て行わず。

宋大子佐後至。王田於武城、久而弗見。椒舉請辭焉。請王辭謝之。
【読み】
宋の大子佐後れて至る。王武城に田し、久しくして見ず。椒舉辭せんと請う。王の之を辭謝せんことを請う。

王使往曰、屬有宗祧之事於武城。言爲宗廟田獵。○屬、章玉反。適也。祧、他彫反。
【読み】
王往かしめて曰く、屬[たま]々武城に宗祧[そうちょう]の事有りぬ。言うこころは、宗廟の爲に田獵す。○屬は、章玉反。適々なり。祧は、他彫反。

寡君將墮幣焉。敢謝後見。恨其後至故。言將因諸侯會布幣乃相見。經幷書宋大子佐、知此言在會前。○墮、許規反。見、如字。又賢遍反。
【読み】
寡君將に幣を墮さんとす。敢えて後に見ることを謝せしむ、と。其の後れて至るを恨むる故なり。言うこころは將に諸侯の會の幣を布くに因りて乃ち相見んとす。經に宋の大子佐を幷せ書せば、知んぬ、此の言は會の前に在りしことを。○墮は、許規反。見は、字の如し。又賢遍反。

徐子吳出也。以爲貳焉。故執諸申。言楚子以疑罪執諸侯。
【読み】
徐子は吳の出なり。以て貳ありと爲す。故に諸を申に執う。楚子疑罪を以て諸侯を執うるを言う。

楚子示諸侯侈。自奢侈。
【読み】
楚子諸侯に侈りを示す。自ら奢侈す。

椒舉曰、夫六王・二公之事、六王、啓・湯・武・成・康・穆也。二公、齊桓・晉文。
【読み】
椒舉曰く、夫れ六王・二公の事は、六王は、啓・湯・武・成・康・穆なり。二公は、齊桓・晉文なり。

皆所以示諸侯禮也。諸侯所由用命也。夏桀爲仍之會、有緡叛之、仍・緡、皆國名。
【読み】
皆諸侯に禮を示す所以なり。諸侯由りて命を用ゆる所なり。夏桀仍[じょう]の會を爲して、有緡[ゆうびん]之に叛き、仍・緡は、皆國の名。

商紂爲黎之蒐、東夷叛之、黎、東夷國名。
【読み】
商紂黎の蒐を爲して、東夷之に叛き、黎は、東夷の國の名。

周幽爲大室之盟、戎狄叛之。大室、中嶽。
【読み】
周幽大室の盟を爲して、戎狄之に叛きぬ。大室は、中嶽。

皆所以示諸侯也。諸侯所由弃命也。今君以汰。無乃不濟乎。王弗聽。
【読み】
皆諸侯に汰[おご]りを示す所以なり。諸侯由りて命を弃つる所なり。今君以[はなは]だ汰れり。乃ち濟らざること無からんや、と。王聽かず。
*「汰」は、漢籍國字解全書では「汏」。以下同じ。

子產見左師曰、吾不患楚矣。汰而愎諫。愎、很也。○汰、音泰。愎、皮逼反。很、胡懇反。
【読み】
子產左師を見て曰く、吾れ楚を患えず。汰りて諫めに愎[もと]れり。愎[ひょく]は、很るなり。○汰は、音泰。愎は、皮逼反。很は、胡懇反。

不過十年。左師曰、然。不十年侈、其惡不遠。遠惡而後弃。惡及遠方、則人弃之。
【読み】
十年を過ぎじ、と。左師曰く、然り。十年の侈りならざれば、其の惡遠からず。惡を遠くして而して後に弃てらる。惡遠方に及びて、則ち人之を弃つ。

善亦如之。德遠而後興。爲十三年、楚弑其君傳。
【読み】
善も亦之の如し。德遠くして而して後に興る、と。十三年、楚其の君を弑する爲の傳なり。

秋、七月、楚子以諸侯伐吳。宋大子・鄭伯先歸、經所以更敍諸侯也。時晉之屬國皆歸。獨言二國者、鄭伯久於楚、宋大子不得時見。故慰遣之。○見、賢遍反。又如字。
【読み】
秋、七月、楚子諸侯を以[い]て吳を伐つ。宋の大子・鄭伯先ず歸り、經に更に諸侯を敍づる所以なり。時に晉の屬國皆歸る。獨り二國と言うは、鄭伯は楚に久しく、宋の大子は時に見ることを得ず。故に慰めて之を遣るなり。○見は、賢遍反。又字の如し。

宋華費遂・鄭大夫從。從伐吳以答見慰。○費、扶味反。從、才用反。
【読み】
宋の華費遂・鄭の大夫從う。吳を伐つに從いて以て慰めらるるに答う。○費は、扶味反。從は、才用反。

使屈申圍朱方。朱方、吳邑。齊慶封所封也。屈申、屈蕩之子。○屈、居勿反。
【読み】
屈申をして朱方を圍ましむ。朱方は、吳の邑。齊の慶封が封ぜらるる所なり。屈申は、屈蕩の子なり。○屈は、居勿反。

八月、甲申、克之、執齊慶封、而盡滅其族。慶封以襄二十八年奔吳。八月無甲申。日誤。
【読み】
八月、甲申[きのえ・さる]、之に克ち、齊の慶封を執えて、盡く其の族を滅ぼす。慶封襄二十八年を以て吳に奔れり。八月に甲申無し。日の誤りなり。

將戮慶封。椒舉曰、臣聞無瑕者可以戮人。慶封惟逆命。是以在此。逆命、謂性不恭順。
【読み】
將に慶封を戮せんとす。椒舉曰く、臣聞く、瑕無き者以て人を戮す可し、と。慶封は惟命に逆う。是を以て此に在り。命に逆うとは、性恭順ならざるを謂う。

其肯從於戮乎。言不肯默而從戮。
【読み】
其れ肯えて戮に從わんや。言うこころは、肯えて默して戮に從わざらん。

播於諸侯、焉用之。播、揚也。○播、波佐反。又波可反。
【読み】
諸侯に播[あ]げんこと、焉ぞ之を用いん、と。播は、揚ぐるなり。○播は、波佐反。又波可反。

王弗聽。負之釜鉞、以徇於諸侯、使言曰、無或如齊慶封、弑其君、弱其孤、以盟其大夫。齊崔杼弑君。慶封其黨也。故以弑君罪責之。
【読み】
王聽かず。之に釜鉞[ふえつ]を負わせて、以て諸侯に徇[とな]えて、言わしめて曰く、齊の慶封が、其の君を弑し、其の孤を弱しとし、以て其の大夫に盟えるが如くなること或ること無かれ、と。齊の崔杼君を弑す。慶封は其の黨なり。故に君を弑するの罪を以て之を責む。

慶封曰、無或如楚共王之庶子圍、弑其君兄之子麇、而代之以盟諸侯。王使速殺之。
【読み】
慶封曰く、楚の共王の庶子圍が、其の君兄の子麇[きん]を弑して、之に代わりて以て諸侯に盟えるが如くなること或ること無かれ、と。王速やかに之を殺さしめり。

遂以諸侯滅賴。賴子面縛銜璧、士袒、輿櫬從之、造於中軍。中軍、王所將。○麇、九倫反。袒、音但。
【読み】
遂に諸侯を以て賴を滅ぼす。賴子面縛して璧を銜[ふく]み、士袒[はだぬ]ぎ、櫬[しん]を輿[にな]いて之に從い、中軍に造[いた]る。中軍は、王の將いる所。○麇は、九倫反。袒は、音但。

王問諸椒舉。對曰、成王克許、在僖六年。
【読み】
王諸を椒舉に問う。對えて曰く、成王許に克ちしとき、僖六年に在り。

許僖公如是、王親釋其縛、受其璧、焚其櫬。王從之。從舉言。
【読み】
許の僖公是の如くせしかば、王親ら其の縛を釋き、其の璧を受け、其の櫬を焚けり、と。王之に從う。舉の言に從う。

遷賴於鄢。鄢、楚邑。○鄢、於晩反。又於建反。
【読み】
賴を鄢[えん]に遷す。鄢は、楚の邑。○鄢は、於晩反。又於建反。

楚子欲遷許於賴。使鬭韋龜與公子弃疾城之而還。爲許城也。韋龜、子文之玄孫。
【読み】
楚子許を賴に遷さんと欲す。鬭韋龜と公子弃疾とをして之に城かしめて還る。許の爲に城くなり。韋龜は、子文の玄孫。

申無宇曰、楚禍之首、將在此矣。召諸侯而來、伐國而克、城竟莫校。謂築城於外竟、諸侯無與爭。○竟、音境。
【読み】
申無宇曰く、楚の禍の首めは、將に此に在らんとす。諸侯を召せば來り、國を伐てば克ち、竟に城きて校[むく]ゆること莫し。城を外竟に築くを、諸侯與に爭うこと無きを謂う。○竟は、音境。

王心不違。民其居乎。言將有事、不得安也。
【読み】
王の心違わず。民其れ居らんや。言うこころは、將に事有らんとして、安きを得ざるなり。

民之不處、其誰堪之。不堪王命、乃禍亂也。
【読み】
民の處らざるは、其れ誰か之に堪えん。王命に堪えずんば、乃ち禍亂あらん、と。

九月、取鄫、言易也。
【読み】
九月、鄫を取るとは、易きを言うなり。

莒亂。著丘公立而不撫鄫。鄫叛而來。故曰取。
【読み】
莒亂る。著丘公立ちて鄫を撫でず。鄫叛きて來る。故に取ると曰う。

凡克邑、不用師徒曰取。著丘公、去疾也。不書奔者、潰散而來、將帥微也。重發例者、以通叛而自來。○易、以豉反。著、直居反。又直據反。
【読み】
凡そ邑に克ちて、師徒を用いざるを取ると曰う。著丘公は、去疾なり。奔るを書さざるは、潰散して來り、將帥微なればなり。重く例を發するは、叛きて自ら來るに通ずるを以てなり。○易は、以豉反。著は、直居反。又直據反。

鄭子產作丘賦。丘、十六井。當出馬一匹・牛三頭。今子產別賦其田、如魯之田賦。田賦、在哀十一年。
【読み】
鄭の子產丘賦を作る。丘は、十六井。當に馬一匹・牛三頭を出だすべし。今子產別に其の田を賦すること、魯の田賦の如し。田賦は、哀十一年に在り。

國人謗之、謗、毀也。
【読み】
國人之を謗りて、謗は、毀るなり。

曰、其父死於路、謂子國爲尉氏所殺。
【読み】
曰く、其の父は路に死し、子國尉氏の爲に殺さるを謂う。

己爲蠆尾、謂子產重賦毒害百姓。○蠆、敕邁反。
【読み】
己は蠆尾[たいび]と爲り、子產重賦して百姓を毒害するを謂う。○蠆は、敕邁反。

以令於國。國將若之何。子寬以告。子寬、鄭大夫。
【読み】
以て國に令す。國將に之を若何せんとする、と。子寬以て告ぐ。子寬は、鄭の大夫。

子產曰、何害。苟利社稷、死生以之。以、用也。
【読み】
子產曰く、何の害あらん。苟も社稷に利あらば、死生之を以[もち]いん、と。以は、用ゆるなり。

且吾聞爲善者不改其度。故能有濟也。民不可逞。度不可改。度、法也。
【読み】
且つ吾れ聞く、善を爲す者は其の度を改めず。故に能く濟すこと有り、と。民は逞からしむ可からず。度は改む可からず。度は、法なり。

詩曰、禮義不愆、何恤於人言。逸詩。子產自以爲、權制濟國。於禮義無愆。
【読み】
詩に曰く、禮義愆[あやま]らざれば、何ぞ人の言を恤えん、と。逸詩。子產自ら以爲えらく、權制して國を濟う。禮義に於て愆ち無し、と。

吾不遷矣。遷、移也。
【読み】
吾は遷らず、と。遷は、移るなり。

渾罕曰、國氏其先亡乎。渾罕、子寬。○渾、平聲。
【読み】
渾罕曰く、國氏は其れ先ず亡びんか。渾罕は、子寬。○渾は、平聲。

君子作法於涼、其敝猶貪。涼、薄也。
【読み】
君子法を涼に作すも、其の敝猶貪る。涼は、薄きなり。

作法於貪、敝將若之何。言不可久行。
【読み】
法を貪に作さば、敝將[はた]之を若何。言うこころは、久しく行う可からず。

姬在列者、在列國也。
【読み】
姬の列に在る者、列國に在るなり。

蔡及曹・滕、其先亡乎。偪而無禮。蔡、偪楚、曹・滕、偪宋。
【読み】
蔡と曹・滕とは、其れ先ず亡びんか。偪られて禮無し。蔡は、楚に偪られ、曹・滕は、宋に偪らる。

鄭先衛亡。偪而無法。偪晉・楚。
【読み】
鄭は衛に先だちて亡びん。偪られて法無し。晉・楚に偪らる。

政不率法、而制於心。民各有心。何上之有。子產權時救急。渾罕譏之正道。
【読み】
政法に率わずして、心に制す。民各々心有り。何の上か之れ有らん、と。子產は時を權りて急を救う。渾罕之を正道に譏る。

冬、吳伐楚、入棘・櫟・麻、棘・櫟・麻、皆楚東鄙邑。譙國酇縣東北有棘亭。汝陰新蔡縣東北有櫟亭。○櫟、力狄反。徐又失灼反。酇、才河反。
【読み】
冬、吳楚を伐ち、棘・櫟・麻に入りて、棘・櫟・麻は、皆楚の東鄙の邑。譙國酇縣の東北に棘亭有り。汝陰新蔡縣の東北に櫟亭有り。○櫟は、力狄反。徐又失灼反。酇は、才河反。

以報朱方之役。朱方役、在此年秋。
【読み】
以て朱方の役に報ゆ。朱方の役は、此の年の秋に在り。

楚沈尹射奔命於夏汭。夏汭、漢水曲入江。今夏口也。吳兵在東北、楚盛兵在東南、以絕其後。○射、食夜反。又食亦反。
【読み】
楚の沈尹射夏汭[かぜい]に奔命す。夏汭は、漢水の曲がりて江に入るなり。今の夏口なり。吳の兵東北に在り、楚兵を盛んにして東南に在りて、以て其の後を絕つ。○射は、食夜反。又食亦反。

尹宜咎城鍾離、宜咎、本陳大夫。襄二十四年、奔楚。、之林反。
【読み】
尹宜咎[しんいんぎきょう]鍾離に城き、宜咎は、本は陳の大夫。襄二十四年、楚に奔る。○は、之林反。
*「葴」は、漢籍國字解全書では「箴」。

薳啓疆城巢、然丹城州來。然丹、鄭穆公孫。襄十九年、奔楚。○薳、于委反。
【読み】
薳啓疆[いけいきょう]巢に城き、然丹州來に城く。然丹は、鄭の穆公の孫。襄十九年、楚に奔る。○薳は、于委反。

東國水、不可以城。彭生罷賴之師。彭生、楚大夫。罷鬭韋龜城賴之師。○罷、皮買反。
【読み】
東國水あり、以て城く可からず。彭生賴の師を罷む。彭生は、楚の大夫。鬭韋龜賴に城くの師を罷む。○罷は、皮買反。

初、穆子去叔孫氏、及庚宗、成十六年、辟僑如之難奔齊。庚宗、魯地。○難、乃旦反。
【読み】
初め、穆子叔孫氏を去るとき、庚宗に及び、成十六年、僑如の難を辟けて齊に奔る。庚宗は、魯の地。○難は、乃旦反。

遇婦人、使私爲食而宿焉。問其行。告之故。哭而送之。婦人聞而哭之。
【読み】
婦人に遇い、私に食を爲さしめて宿す。其の行を問う。之に故を告ぐ。哭して之を送る。婦人聞きて之を哭す。

適齊、娶於國氏、國氏、齊正卿。姜姓。
【読み】
齊に適き、國氏に娶り、國氏は、齊の正卿。姜姓。

生孟丙・仲壬。夢天壓己、弗勝、穆子夢也。○壓、於甲反。勝、音升。下同。
【読み】
孟丙・仲壬を生む。夢みらく、天己を壓[あっ]して、勝[た]えず、穆子夢みるなり。○壓は、於甲反。勝は、音升。下も同じ。

顧而見人、黑而上僂、上僂、肩傴。○僂、力主反。傴、紆甫反。
【読み】
顧みて人を見れば、黑くして上僂[じょうる]、上僂は、肩傴[けんう]。○僂は、力主反。傴は、紆甫反。

深目而豭喙、口象豬。○豭、音加。喙、許穢反。
【読み】
深目にして豭喙[かかい]、口豬に象[に]たり。○豭は、音加。喙は、許穢反。

號之曰牛助余、乃勝之。旦而皆召其徒、無之。徒、從者。○號、胡到反。一戶刀反。
【読み】
之を號[よ]びて牛余を助けよと曰えば、乃ち之に勝う、と。旦にして皆其の徒を召すに、之れ無し。徒は、從者。○號は、胡到反。一に戶刀反。

且曰、志之。志、識也。○識、申志反。
【読み】
且曰く、之を志[しる]せ、と。志は、識すなり。○識は、申志反。

及宣伯奔齊、饋之。宣伯、僑如、穆子之兄。成十六年、奔齊、穆子饋宣伯。
【読み】
宣伯が齊に奔るに及びて、之に饋る。宣伯は、僑如、穆子の兄。成十六年、齊に奔り、穆子宣伯に饋る。

宣伯曰、魯以先子之故、先子、宣伯先人。
【読み】
宣伯曰く、魯先子の故を以て、先子は、宣伯の先人。

將存吾宗。必召女。召女何如。對曰、願之久矣。言兄始爲亂、己則有今日之願。蓋忿言。○女、音汝。
【読み】
將に吾が宗を存せんとす。必ず女を召ばん。女を召ばば何如、と。對えて曰く、之を願うこと久し、と。言うこころは、兄始めて亂を爲してより、己則ち今日の願い有り。蓋し忿言ならん。○女は、音汝。

魯人召之。不告而歸。旣立。在齊生孟丙・仲壬。魯召之立爲卿。襄二年、始見經。
【読み】
魯人之を召ぶ。告げずして歸る。旣に立つ。齊に在りて孟丙・仲壬を生む。魯之を召びて立てて卿と爲す。襄二年、始めて經に見ゆ。

所宿庚宗之婦人獻以雉。獻穆子。
【読み】
宿りし所の庚宗の婦人獻ずるに雉を以てす。穆子に獻ず。

問其姓、問有子否。○女生曰姓。姓、謂子也。
【読み】
其の姓を問えば、子有りや否やと問う。○女の生めるを姓と曰う。姓は、子を謂うなり。

對曰、余子長矣。能奉雉而從我矣。襄二年、豎牛五六歲。○奉、芳勇反。
【読み】
對えて曰く、余が子長ぜり。能く雉を奉げて我に從えり、と。襄二年に、豎牛は五六歲。○奉は、芳勇反。

召而見之、則所夢也。未問其名、號之曰牛、曰唯。皆召其徒使視之、遂使爲豎。豎、小臣也。傳言從夢未必吉。
【読み】
召して之を見れば、則ち夢にみし所なり。未だ其の名を問わずして、之を號びて牛と曰えば、唯と曰う。皆其の徒を召して之を視せしめ、遂に豎爲らしむ。豎は、小臣なり。傳夢に從うも未だ必ずしも吉ならざるを言う。

有寵。長使爲政。爲家政。
【読み】
寵有り。長じて政を爲さしむ。家政を爲す。

公孫明知叔孫於齊。公孫明、齊大夫子明也。與叔孫相親知。
【読み】
公孫明叔孫を齊に知る。公孫明は、齊の大夫子明なり。叔孫と相親知す。

歸、未逆國姜、子明取之。國姜、孟仲母。○取、七住反。
【読み】
歸りて、未だ國姜を逆えざるに、子明之を取りぬ。國姜は、孟仲の母。○取は、七住反。

故怒、其子長而後使逆之。子、孟丙・仲壬。
【読み】
故に怒り、其の子長じて後に之を逆えしめり。子は、孟丙・仲壬。

田於丘蕕、丘蕕、地名。○蕕、音由。
【読み】
丘蕕[きゅうゆう]に田して、丘蕕は、地の名。○蕕は、音由。

遂遇疾焉。豎牛欲亂其室而有之、强與孟盟。不可。欲使從己。孟不肯。○强、其丈反。
【読み】
遂に疾に遇う。豎牛其の室を亂して之を有たんと欲し、强いて孟と盟わんとす。可[き]かず。己に從わしめんと欲す。孟肯わず。○强は、其丈反。

叔孫爲孟鍾。曰、爾未際。際、接也。孟未與諸大夫相接見。○爲、于僞反。又如字。
【読み】
叔孫孟の爲に鍾[かねい]る。曰く、爾未だ際せず。際は、接わるなり。孟未だ諸大夫と相接見せず。○爲は、于僞反。又字の如し。

饗大夫以落之。以豭豬血釁鐘曰落。
【読み】
大夫を饗して以て之を落せよ、と。豭豬の血を以て鐘に釁[ちぬ]るを落と曰う。

旣具。饗禮具。
【読み】
旣に具わる。饗禮具わる。

使豎牛請日。請饗日。
【読み】
豎牛をして日を請わしむ。饗日を請う。

入弗謁、謁、白也。
【読み】
入りて謁[もう]さず、謁は、白すなり。

出命之日。詐命日。
【読み】
出でて之に日を命ず。詐りて日を命ず。

及賓至、聞鍾聲。牛曰、孟有北婦人之客。北婦人、國姜也。客、謂公孫明。
【読み】
賓の至るに及びて、鍾聲を聞く。牛曰く、孟北婦人の客有り、と。北婦人は、國姜なり。客は、公孫明を謂う。

怒。將往。牛止之。賓出。使拘而殺諸外。殺孟丙。
【読み】
怒る。將に往かんとす。牛之を止む。賓出づ。拘えて諸を外に殺さしむ。孟丙を殺す。

牛又强與仲盟。不可。仲與公御萊書觀於公。萊書、公御子名。仲與之私遊觀於公宮。○强、上聲。觀、古亂反。又如字。
【読み】
牛又强いて仲と盟わんとす。可かず。仲公の御萊書と公に觀[あそ]ぶ。萊書は、公の御子の名。仲之と私に公宮に遊觀す。○强は、上聲。觀は、古亂反。又字の如し。

公與之環。賜玉環。
【読み】
公之に環を與う。玉環を賜う。

使牛入示之。示叔孫。
【読み】
牛をして入りて之を示さしむ。叔孫に示す。

入不示。出命佩之。牛謂叔孫、見仲而何。而何、如何。○見、賢遍反。下同。
【読み】
入りて示さず。出でて命じて之を佩[お]ばしむ。牛叔孫に謂えらく、仲を見えしは而何[いかん]、と。而何は、如何なり。○見は、賢遍反。下も同じ。

叔孫曰、何爲。恠牛言。
【読み】
叔孫曰く、何爲れぞ。牛の言を恠[あや]しむ。

曰、不見、旣自見矣。言仲已自往見公。
【読み】
曰く、見えしめざるも、旣に自ら見えたり。言うこころは、仲已に自ら往きて公に見えぬ。

公與之環而佩之矣。遂逐之。奔齊。疾急、命召仲。牛許而不召。杜洩見。告之飢渴、授之戈。杜洩、叔孫氏宰也。牛不食叔孫、叔孫怒。欲使杜洩殺之。○洩、息列反。食、音嗣。
【読み】
公之に環を與えて之を佩べり、と。遂に之を逐う。齊に奔る。疾急なるとき、命じて仲を召ばしむ。牛許して召ばず。杜洩[とせつ]見ゆ。之に飢渴を告げ、之に戈を授く。杜洩は、叔孫氏の宰なり。牛叔孫に食わせず、叔孫怒る。杜洩をして之を殺さんと欲す。○洩は、息列反。食は、音嗣。

對曰、求之而至。又何去焉。言求食可得。無爲去豎牛。蓋杜洩力不能去。設辭以免。○去、起呂反。下同。
【読み】
對えて曰く、之を求めば至らん。又何ぞ去らん、と。言うこころは、食を求めば得る可し。豎牛を去ることを爲すこと無し。蓋し杜洩力去ること能わず。辭を設けて以て免るならん。○去は、起呂反。下も同じ。

豎牛曰、夫子疾病。不欲見人。使寘饋于个而退、寘、置也。个、東西廂。○廂、息羊反。
【読み】
豎牛曰く、夫子の疾病なり。人を見ることを欲せず、と。饋を个[ひさし]に寘きて退かしめ、寘[し]は、置くなり。个は、東西の廂。○廂は、息羊反。

牛弗進。則置虛、命徹。寫器令空、示若叔孫已食、命去之。
【読み】
牛進めず。則ち虛を置き、命じて徹せしむ。器を寫して空しからしめ、叔孫已に食するが若きを示して、命じて之を去らしむ。

十二月、癸丑、叔孫不食、乙卯、卒。三日絕糧。
【読み】
十二月、癸丑[みずのと・うし]、叔孫食わず、乙卯、卒す。三日糧を絕つ。

牛立昭子而相之。昭子、豹之庶子、叔孫婼也。○相、息亮反。婼、敕略反。
【読み】
牛昭子を立てて之を相く。昭子は、豹の庶子、叔孫婼[しゅくそんちゃく]なり。○相は、息亮反。婼は、敕略反。

公使杜洩葬叔孫。豎牛賂叔仲昭子與南遺、昭子、叔仲帶也。南遺、季氏家臣。
【読み】
公杜洩をして叔孫を葬らしむ。豎牛叔仲昭子と南遺とに賂いて、昭子は、叔仲帶なり。南遺は、季氏の家臣。

使惡杜洩於季孫而去之。憎洩不與己同志。
【読み】
杜洩を季孫に惡ませて之を去らしむ。洩が己と志を同じくせざるを憎む。

杜洩將以路葬、且盡卿禮。路、王所賜叔孫車。
【読み】
杜洩將に路を以て葬り、且卿禮を盡くさんとす。路は、王の叔孫に賜いし所の車。

南遺謂季孫曰、叔孫未乘路。葬焉用之。且冢卿無路、介卿以葬、不亦左乎。冢卿、謂季孫。介、次也。左、不便。
【読み】
南遺季孫に謂いて曰く、叔孫未だ路に乘らず。葬るに焉ぞ之を用いん。且つ冢卿も路無きに、介卿以て葬らば、亦左ならずや、と。冢卿は、季孫を謂う。介は、次なり。左は、不便なり。

季孫曰、然。使杜洩舍路。舍、置也。○舍、式夜反。或音捨。
【読み】
季孫曰く、然り、と。杜洩をして路を舍[お]かしむ。舍は、置くなり。○舍は、式夜反。或は音捨。

不可、曰、夫子受命於朝、而聘于王、在襄二十四年。夫子、謂叔孫。
【読み】
可かずして、曰く、夫子命を朝に受けて、王に聘せしも、襄二十四年に在り。夫子は、叔孫を謂う。

王思舊勳而賜之路、感其有禮、以念其先人。
【読み】
王舊勳を思いて之に路を賜いしかば、其の禮有るを感じて、以て其の先人を念う。

復命而致之君、豹不敢自乘。
【読み】
復命じて之を君に致せしに、豹敢えて自ら乘らず。

君不敢逆王命而復賜之、使三官書之。吾子爲司徒、實書名、謂季孫也。書名、定位號。○復、扶又反。
【読み】
君敢えて王命に逆わずして復之を賜いて、三官をして之を書さしめり。吾子は司徒と爲りて、實に名を書し、季孫を謂うなり。名を書すは、位號を定むるなり。○復は、扶又反。

夫子爲司馬、與工正書服、謂叔孫也。服、車服之器。工正所書。
【読み】
夫子は司馬と爲りて、工正と服を書し、叔孫を謂うなり。服は、車服の器。工正の書す所。

孟孫爲司空、以書勳。勳、功也。
【読み】
孟孫は司空と爲りて、以て勳を書せり。勳は、功なり。

今死而弗以、是弃君命也。書在公府而弗以、是廢三官也。若命服、生弗敢服、死又不以、將焉用之。乃使以葬。
【読み】
今死して以いずんば、是れ君命を弃つるなり。書は公府に在りて以いずんば、是れ三官を廢つるなり。若し命服にして、生くるとき敢えて服せず、死して又以いずんば、將に焉に之を用いんとする、と。乃ち以て葬らしむ。

季孫謀去中軍。豎牛曰、夫子固欲去之。誣叔孫以媚季孫。
【読み】
季孫中軍を去らんことを謀る。豎牛曰く、夫子固より之を去らんことを欲せり、と。叔孫を誣いて以て季孫に媚ぶ。


〔經〕五年、春、王正月、舍中軍。襄十一年、始立中軍。○舍、音捨。傳同。
【読み】
〔經〕五年、春、王の正月、中軍を舍つ。襄十一年、始めて中軍を立つ。○舍は、音捨。傳も同じ。

楚殺其大夫屈申。書名、罪之。
【読み】
楚其の大夫屈申を殺す。名を書すは、之を罪するなり。

公如晉。夏、莒牟夷以牟婁及防玆來奔。城陽平昌縣西南有防亭、姑幕縣東北有玆亭。
【読み】
公晉に如く。夏、莒の牟夷[ぼうい]牟婁と防玆とを以て來奔す。城陽平昌縣の西南に防亭有り、姑幕縣の東北に玆亭有り。

秋、七月、公至自晉。戊辰、叔弓帥師敗莒師于蚡泉。蚡泉、魯地。○蚡、扶粉反。
【読み】
秋、七月、公晉より至る。戊辰[つちのえ・たつ]、叔弓師を帥いて莒の師を蚡泉[ふんせん]に敗る。蚡泉は、魯の地。○蚡は、扶粉反。

秦伯卒。無傳。不書名、未同盟。
【読み】
秦伯卒す。傳無し。名を書さざるは、未だ同盟せざるなり。

冬、楚子・蔡侯・陳侯・許男・頓子・沈子・徐人・越人伐吳。
【読み】
冬、楚子・蔡侯・陳侯・許男・頓子・沈子[しんし]・徐人・越人吳を伐つ。

〔傳〕五年、春、王正月、舍中軍、卑公室也。罷中軍、季孫稱左師、孟子稱右師、叔孫氏則自以叔孫爲軍名。
【読み】
〔傳〕五年、春、王の正月、中軍を舍つるは、公室を卑しめるなり。中軍を罷めて、季孫は左師と稱し、孟子は右師と稱し、叔孫氏は則ち自ら叔孫を以て軍の名とす。

毀中軍于施氏、成諸臧氏。季孫不欲親其議、勑二家、會諸大夫、發毀置之計。又取其令名。
【読み】
中軍を施氏に毀ち、諸を臧氏に成す。季孫其の議を親らすることを欲せず、二家に勑し、諸大夫を會して、毀置の計を發せしむ。又其の令名を取るなり。

初作中軍、三分公室而各有其一、三家各有一軍家屬。
【読み】
初め中軍を作るとき、公室を三分して各々其の一を有ち、三家各々一軍の家屬を有つ。

季氏盡征之、無所入於公。
【読み】
季氏は盡く之を征し、公に入る所無し。

叔孫氏臣其子弟、以父兄歸公。
【読み】
叔孫氏は其の子弟を臣にし、父兄を以て公に歸す。

孟氏取其半焉。復以子弟之半歸公。
【読み】
孟氏は其の半ばを取れり。復子弟の半ばを以て公に歸す。

及其舍之也、四分公室、季氏擇二、簡擇取二分。○二分、扶運反。或如字。
【読み】
其の之を舍つるに及びて、公室を四分にして、季氏は二を擇び、簡擇して二分を取る。○二分は、扶運反。或は字の如し。

二子各一、皆盡征之、而貢于公。國人盡屬三家、三家隨時獻公而已。
【読み】
二子は各々一、皆盡く之を征して、公に貢するのみ。國人盡く三家に屬して、三家時に隨いて公に獻ずるのみ。

以書使杜洩告於殯、告叔孫之柩。
【読み】
書を以て杜洩[とせつ]をして殯に告げしめて、叔孫の柩に告ぐ。

曰、子固欲毀中軍。旣毀之矣。故告。杜洩曰、夫子唯不欲毀也。故盟諸僖閎、詛諸五父之衢。皆在襄十一年。
【読み】
曰く、子固より中軍を毀たんことを欲せり。旣に之を毀てり。故に告ぐ、と。杜洩曰く、夫子は唯毀つことを欲せず。故に諸を僖閎に盟い、諸を五父の衢[く]に詛[ちか]えり、と。皆襄十一年に在り。

受其書而投之、投、擲也。
【読み】
其の書を受けて之を投げ、投は、擲[なげう]つなり。

帥士而哭之。痛叔孫之見誣。
【読み】
士を帥いて之を哭す。叔孫の誣いらるるを痛む。

叔仲子謂季孫曰、帶受命於子叔孫。曰、葬鮮者自西門。不以壽終爲鮮。西門非魯朝正門。○鮮、音仙。又息淺反。
【読み】
叔仲子季孫に謂いて曰く、帶命を子叔孫に受けぬ。曰く、鮮を葬るは西門よりす、と。壽を以て終わらざるを鮮と爲す。西門は魯朝の正門に非ず。○鮮は、音仙。又息淺反。

季孫命杜洩。命使從西門。
【読み】
季孫杜洩に命ず。命じて西門よりせしむ。

杜洩曰、卿喪自朝、魯禮也。從生存朝覲之正路。
【読み】
杜洩曰く、卿の喪朝よりするは、魯の禮なり。生存朝覲の正路に從う。

吾子爲國政、未改禮而又遷之、遷、易也。
【読み】
吾子國政を爲して、未だ禮を改めずして又之を遷[か]えば、遷は、易うるなり。

羣臣懼死。不敢自也。自、從也。
【読み】
羣臣死せんことを懼る。敢えて自[したが]わざるなり、と。自は、從うなり。

旣葬而行。善杜洩能辟禍。
【読み】
旣に葬りて行[さ]る。杜洩能く禍を辟くるを善す。

仲至自齊。聞喪而來。
【読み】
仲齊より至る。喪を聞きて來る。

季孫欲立之。南遺曰、叔孫氏厚、則季氏薄。彼實家亂。子勿與知。不亦可乎。南遺使國人助豎牛、以攻諸大庫之庭。攻仲壬也。魯城内有大庭氏之虛。於其上作庫。○與、音預。虛、起居反。
【読み】
季孫之を立てんと欲す。南遺曰く、叔孫氏厚きときは、則ち季氏薄し。彼れ實に家亂る。子與り知ること勿かれ。亦可ならずや、と。南遺國人をして豎牛を助けて、以て諸を大庫の庭に攻めしむ。仲壬を攻むるなり。魯の城内に大庭氏の虛有り。其の上に庫を作る。○與は、音預。虛は、起居反。

司宮射之。中目而死。豎牛取東鄙三十邑、以與南遺。取叔孫氏邑。○射、食亦反。
【読み】
司宮之を射る。目に中りて死す。豎牛東鄙の三十邑を取りて、以て南遺に與う。叔孫氏の邑を取る。○射は、食亦反。

昭子卽位、朝其家衆曰、豎牛禍叔孫氏、使亂大從、使從於亂。○大從、如字。
【読み】
昭子位に卽き、其の家衆を朝せしめて曰く、豎牛叔孫氏に禍して、亂に大いに從わしめ、亂に從わしむ。○大從は、字の如し。

殺適立庶。又披其邑、將以赦罪。披、析也。謂以邑與南遺。昭子不知豎牛餓殺其父。故但言其見罪。○披、普彼反。見、賢遍反。
【読み】
適を殺し庶を立てり。又其の邑を披[さ]きて、將に以て罪を赦されんとす。披は、析くなり。邑を以て南遺に與うるを謂う。昭子豎牛が其の父を餓殺せるを知らず。故に但其の見罪を言うなり。○披は、普彼反。見は、賢遍反。

罪莫大焉。必速殺之。豎牛懼、奔齊。孟・仲之子、殺諸塞關之外、齊・魯界上關。○塞、悉代反。
【読み】
罪焉より大なるは莫し。必ず速やかに之を殺せ、と。豎牛懼れ、齊に奔る。孟・仲の子、諸を塞關の外に殺して、齊・魯の界上の關。○塞は、悉代反。

投其首於寧風之棘上。寧風、齊地。
【読み】
其の首を寧風の棘上に投ぜり。寧風は、齊の地。

仲尼曰、叔孫昭子之不勞、不可能也。不以立己爲功勞。據其所言善之。時魯人不以餓死語昭子。
【読み】
仲尼曰く、叔孫昭子の勞とせざるは、能くす可からざるなり。己を立つるを以て功勞と爲さず。其の言う所に據りて之を善す。時に魯人餓死を以て昭子に語げざるなり。

周任有言曰、爲政者不賞私勞、不罰私怨。詩云、有覺德行、四國順之。詩、大雅。覺、直也。言德行直、則四方順從之。○任、音壬。
【読み】
周任言えること有り曰く、政を爲す者は私勞を賞せず、私怨を罰せず、と。詩に云う、覺[なお]き德行有れば、四國之に順う、と。詩は、大雅。覺は、直きなり。言うこころは、德行直きときは、則ち四方之に順從す。○任は、音壬。

初、穆子之生也、莊叔以周易筮之。莊叔、穆子父、得臣也。
【読み】
初め、穆子の生まるるや、莊叔周易を以て之を筮す。莊叔は、穆子の父、得臣なり。

遇明夷 離下坤上、明夷。
【読み】
明夷 離下坤上は、明夷。

之謙艮下坤上、謙。明夷初九變爲謙。
【読み】
に之くに遇う。艮下坤上は、謙。明夷の初九變じて謙と爲る。

以示卜楚丘。楚丘、卜人姓名。
【読み】
以て卜楚丘に示す。楚丘は、卜人の姓名。

曰、是將行。行、出奔。
【読み】
曰く、是れ將に行らんとす。行は、出奔。

而歸爲子祀。奉祭祀。
【読み】
而れども歸りて子が祀を爲さん。祭祀を奉ず。

以讒人入。其名曰牛。卒以餒死。明夷、日也。離爲日。夷、傷也。日明傷。
【読み】
讒人を以て入らん。其の名を牛と曰わん。卒に以て餒死せん。明夷は、日なり。離を日と爲す。夷は、傷るなり。日の明傷る。

日之數十。甲至癸。
【読み】
日の數は十なり。甲より癸に至る。

故有十時、亦當十位。自王已下、其二爲公、其三爲卿。日中當王、食時當公、平旦爲卿、雞鳴爲士、夜半爲皁、人定爲輿、黃昏爲隸、日入爲僚、晡時爲僕、日昳爲臺。隅中・日出、闕不在第、尊王公、曠其位。○皁、才早反。昳、田結反。
【読み】
故に十時有り、亦十位に當たる。王より已下、其の二を公と爲し、其の三を卿と爲す。日中を王に當て、食時を公に當て、平旦を卿と爲し、雞鳴を士と爲し、夜半を皁[そう]と爲し、人定を輿と爲し、黃昏を隸と爲し、日入を僚と爲し、晡時[ほじ]を僕と爲し、日昳[にってつ]を臺と爲す。隅中・日出は、闕けて第に在らざるは、王公を尊びて、其の位を曠くするなり。○皁は、才早反。昳は、田結反。

日上其中。日中、盛明。故以當王。
【読み】
日は其の中を上とす。日中は、盛明。故に以て王に當つ。

食日爲二、公位。
【読み】
食の日を二と爲し、公位。

旦日爲三。卿位。
【読み】
旦の日を三と爲す。卿位。

明夷之謙、明而未融。其當旦乎。融、朗也。離在坤下、日在地中之象。又變爲謙。謙道卑退。故曰明而未融。日明未融。故曰、其當旦乎。
【読み】
明夷の謙に之くは、明にして未だ融[あき]らかならず。其れ旦に當たれるか。融は、朗らかなり。離坤の下に在るは、日地中に在るの象なり。又變じて謙と爲る。謙道は卑退。故に明にして未だ融らかならずと曰う。日の明未だ融らかならず。故に曰う、其れ旦に當たれるか、と。

故曰、爲子祀。莊叔、卿也。卜豹爲卿。故知爲子祀。
【読み】
故に曰く、子が祀を爲さん、と。莊叔は、卿なり。豹を卜して卿と爲る。故に子が祀を爲さんことを知る。

日之謙當鳥。故曰、明夷于飛。離爲日、爲鳥。離變爲謙。日光不足。故當鳥。鳥飛行。故曰于飛。
【読み】
日の謙に之くは鳥に當たれり。故に曰く、明夷于[ゆ]き飛ぶ、と。離を日と爲し、鳥と爲す。離變して謙と爲る。日光足らず。故に鳥に當つ。鳥は飛び行く。故に于き飛ぶと曰う。

明而未融。故曰、垂其翼。於日爲未融、於鳥爲垂翼。
【読み】
明にして未だ融らかならず。故に曰く、其の翼を垂る、と。日に於ては未だ融らかならずと爲し、鳥に於ては翼を垂ると爲す。

象日之動。故曰、君子于行。明夷初九、得位有應。君子象也。在明傷之世、居謙下之位。故將辟難而行。
【読み】
日の動に象る。故に曰く、君子于き行く、と。明夷の初九、位を得て應有り。君子の象なり。明傷るの世に在りて、謙下の位に居る。故に將に難を辟けて行らんとす。

當三在旦。故曰、三日不食。旦位在三、又非食時。故曰、三日不食。
【読み】
三に當たりて旦に在り。故に曰く、三日食わず、と。旦の位は三に在り、又食時に非ず。故に曰く、三日食わず、と。

離、火也。艮、山也。離爲火。火焚山、山敗。離・艮合體故。
【読み】
離は、火なり。艮は、山なり。離を火と爲す。火山を焚けば、山敗れぬ。離・艮體を合わす故なり。

於人爲言。艮爲言。
【読み】
人に於ては言と爲す。艮を言と爲す。

敗言爲讒。爲離所焚。故言敗。○敗、必邁反。又如字。
【読み】
言を敗るを讒と爲す。離の爲に焚かるる。故に言敗れぬ。○敗は、必邁反。又字の如し。

故曰、有攸往、主人有言。言必讒也。離變爲艮。故言、有所往。往而見燒。故主人有言。言而見敗。故必讒言。
【読み】
故に曰く、往く攸有り、主人言有り、と。言あらば必ず讒ならん。離變じて艮と爲る。故に言う、往く所有り、と。往きて燒かるる。故に主人言うこと有り。言いて敗らる。故に必ず讒言なり。

純離爲牛。易、離下離上、離。畜牝牛吉。故言、純離爲牛。
【読み】
純離を牛と爲す。易に、離下離上は、離。牝牛を畜うは吉なり、と。故に言う、純離を牛と爲す、と。

世亂讒勝。勝將適離。故曰、其名曰牛。離焚山則離勝。譬世亂則讒勝。山焚則離獨存。故知、名牛也。豎牛非牝牛。故不吉。
【読み】
世亂るれば讒勝つ。勝たば將に離に適かんとす。故に曰く、其の名を牛と曰わん、と。離山を焚けば則ち離勝つ。世亂るれば則ち讒勝つに譬う。山焚ければ則ち離獨り存す。故に知る、名は牛なるを。豎牛は牝牛に非ず。故に不吉なり。

謙不足、飛不翔、謙道沖退。故飛不遠翔。
【読み】
謙は足らず、飛びて翔[かけ]らず、謙道は沖退。故に飛びて遠翔せず。

垂不峻、翼不廣。峻、高也。翼垂下。故不能廣遠。
【読み】
垂れて峻[たか]からず、翼廣からず。峻は、高きなり。翼垂下す。故に廣遠なること能わず。

故曰、其爲子後乎。不遠翔。故知、不遠去。
【読み】
故に曰く、其れ子が後爲らんか、と。遠翔せず。故に知る、遠去せざることを。

吾子亞卿也。抑少不終。旦日、正卿之位。莊叔父子世爲亞卿。位不足以終盡卦體。蓋引而致之。
【読み】
吾子は亞卿なり。抑々少しく終わらじ、と。旦日は、正卿の位。莊叔父子世々亞卿爲り。位以て卦體を終え盡くすに足らず。蓋し引きて之を致すなり。

楚子以屈伸爲貳於吳、乃殺之。造生貳心。
【読み】
楚子屈伸を以て吳に貳ありと爲し、乃ち之を殺す。貳心を造生す、と。

以屈生爲莫敖。生、屈建子。
【読み】
屈生を以て莫敖と爲す。生は、屈建の子。

使與令尹子蕩如晉逆女。過鄭。鄭伯勞子蕩于氾、勞屈生于菟氏。氾・菟氏、皆鄭地。○過、古禾反。勞、力報反。後皆同。氾、徐扶嚴反。菟、大胡反。
【読み】
令尹子蕩と晉に如きて女を逆えしむ。鄭を過ぐ。鄭伯子蕩を氾に勞い、屈生を菟氏[とし]に勞う。氾・菟氏は、皆鄭の地。○過は、古禾反。勞は、力報反。後も皆同じ。氾は、徐扶嚴反。菟は、大胡反。

晉侯送女于邢丘。子產相鄭伯、會晉侯于邢丘。傳言楚强、諸侯畏敬其使。
【読み】
晉侯女を邢丘に送る。子產鄭伯を相けて、晉侯に邢丘に會す。傳楚强くして、諸侯其の使いを畏敬するを言う。

公如晉。卽位而往見。
【読み】
公晉に如く。位に卽きて往きて見ゆ。

自郊勞至于贈賄、往有郊勞、去有贈賄。
【読み】
郊勞より贈賄に至るまで、往くに郊勞有り、去るに贈賄有り。

無失禮。揖讓之禮。
【読み】
禮を失うこと無し。揖讓の禮。

晉侯謂女叔齊曰、魯侯不亦善於禮乎。對曰、魯侯焉知禮。公曰、何爲。自郊勞至于贈賄、禮無違者。何故不知。對曰、是儀也。不可謂禮。
【読み】
晉侯女叔齊に謂いて曰く、魯侯亦禮に善からずや、と。對えて曰く、魯侯焉ぞ禮知らん、と。公曰く、何爲れぞ。郊勞より贈賄に至るまで、禮違う者無し。何の故に知らずとする、と。對えて曰く、是れ儀なり。禮と謂う可からず。

禮所以守其國、行其政令、無失其民者也。今政令在家、在大夫。
【読み】
禮は其の國を守り、其の政令を行い、其の民を失うこと無き所以の者なり。今政令家に在れども、大夫に在り。

不能取也、有子家羈、弗能用也、羈、莊公玄孫、懿伯也。
【読み】
取ること能わず、子家羈[しかき]有れども、用ゆること能わず、羈は、莊公の玄孫、懿伯なり。

奸大國之盟、陵虐小國、謂伐莒取鄆。
【読み】
大國の盟を奸して、小國を陵虐し、莒を伐ちて鄆[うん]を取るを謂う。

利人之難、謂往年莒亂而取鄫。○難、乃旦反。下竝同。
【読み】
人の難を利して、往年莒亂れて鄫[しょう]を取るを謂う。○難は、乃旦反。下も竝同じ。

不知其私、不自知有私難。
【読み】
其の私を知らず、自ら私難有ることを知らず。

公室四分、民食於他、他、謂三家也。言魯君與民無異。
【読み】
公室四分し、民のこと他に食すれども、他は、三家を謂うなり。言うこころは、魯君民と異なること無し。

思莫在公、不圖其終、無爲公謀終始者。○思、息吏反。一如字。
【読み】
思い公に在るもの莫く、其の終わりを圖らず、公の爲に終始を謀る者無し。○思は、息吏反。一に字の如し。

爲國君、難將及身、不恤其所。禮之本末、將於此乎在。在恤民與憂國。
【読み】
國君として、難將に身に及ばんとすれども、其の所を恤えず。禮の本末は、將[はた]此に於て在り。民を恤うると國を憂うるとに在り。

而屑屑焉習儀以亟。言以習儀爲急。
【読み】
而るを屑屑焉[せつせつえん]として儀を習いて以て亟[すみ]やかにす。言うこころは、儀を習うを以て急と爲す。

言善於禮、不亦遠乎。
【読み】
禮に善しと言うは、亦遠からずや、と。

君子謂、叔侯於是乎知禮。時晉侯亦失政。叔齊以此諷諫。○諷、芳鳳反。
【読み】
君子謂えらく、叔侯是に於て禮を知れり、と。時に晉侯亦政を失う。叔齊此を以て諷諫す。○諷は、芳鳳反。

晉韓宣子如楚送女。叔向爲介。鄭子皮・子大叔勞諸索氏。河南城皐縣東有大索城。○索、悉洛反。
【読み】
晉の韓宣子楚に如きて女を送る。叔向[しゅくきょう]介爲り。鄭の子皮・子大叔諸を索氏に勞う。河南城皐縣の東に大索城有り。○索は、悉洛反。

大叔謂叔向曰、楚王侈已甚。子其戒之。叔向曰、侈已甚、身之災也。焉能及人。若奉吾幣帛、愼吾威儀、守之以信、行之以禮、敬始而思終、終無不復、事皆可復行。
【読み】
大叔叔向に謂いて曰く、楚王侈已甚[はなは]だし。子其れ之を戒めよ、と。叔向曰く、侈の已甚だしきは、身の災いなり。焉ぞ能く人に及ぼさん。若し吾が幣帛を奉げ、吾が威儀を愼み、之を守るに信を以てし、之を行うに禮を以てし、始めを敬して終わりを思い、終わりて復せざること無く、事皆復行す可し。
*「汰」は、漢籍國字解全書では「汏」。以下同じ。

從而不失儀、從、順也。
【読み】
從いて儀を失わず、從は、順うなり。

敬而不失威、道之以訓辭、奉之以舊法、考之以先王、以先王之禮成其好。
【読み】
敬して威を失わず、之を道[みちび]くに訓辭を以てし、之を奉ずるに舊法を以てし、之を考うるに先王を以てし、先王の禮を以て其の好を成す。

度之以二國、度晉・楚之勢而行之。○度、待洛反。
【読み】
之を度るに二國を以てせば、晉・楚の勢を度りて之を行う。○度は、待洛反。

雖汰侈若我何。
【読み】
汰侈なりと雖も我を若何にせん、と。

及楚。楚子朝其大夫曰、晉吾仇敵也。苟得志焉、無恤其他。今其來者、上卿・上大夫也。若吾以韓起爲閽、刖足使守門。
【読み】
楚に及ぶ。楚子其の大夫を朝せしめて曰く、晉は吾が仇敵なり。苟も志を得ば、其の他を恤うること無し。今其の來る者は、上卿・上大夫なり。若し吾れ韓起を以て閽[こん]と爲し、足を刖[き]りて門を守らしむるなり。

以羊舌肸爲司宮、加宮刑。○肸、許乙反。
【読み】
羊舌肸[ようぜつきつ]を以て司宮と爲さば、宮刑を加うるなり。○肸は、許乙反。

足以辱晉、吾亦得志矣。可乎。大夫莫對。薳啓彊曰、可。苟有其備、何故不可。恥匹夫不可以無備。況恥國乎。
【読み】
以て晉を辱むるに足り、吾も亦志を得ん。可ならんか、と。大夫對うるもの莫し。薳啓彊[いけいきょう]曰く、可なり。苟も其の備え有らば、何の故に不可ならん。匹夫を恥むるも以て備え無くんばある可からず。況んや國を恥むるをや。

是以聖王務行禮、不求恥人。朝聘有珪、珪以爲信。
【読み】
是を以て聖王は務めて禮を行いて、人を恥むることを求めず。朝聘に珪有り、珪以て信と爲す。

享頫有璋、享、饗也。頫、見也。旣朝聘而享見也。臣爲君使執璋。○頫、他弔反。又他彫反。見、賢遍反。爲、于僞反。
【読み】
享頫[きょうちょう]に璋有り、享は、饗[う]くるなり。頫は、見ゆるなり。旣に朝聘して享見するなり。臣君の爲に使いすれば璋を執る。○頫は、他弔反。又他彫反。見は、賢遍反。爲は、于僞反。

小有述職、諸侯適天子曰述職。
【読み】
小に述職有り、諸侯天子に適くを述職と曰う。

大有巡功、天子巡守曰巡功。
【読み】
大に巡功有り、天子巡守するを巡功と曰う。

設机而不倚、爵盈而不飮、言務行禮。
【読み】
机を設けて倚らず、爵盈ちて飮まず、言うこころは、務めて禮を行う。

宴有好貨、宴飮以貨爲好。衣服車馬、在客所無。○好、去聲。
【読み】
宴に好貨有り、宴飮に貨を以て好と爲す。衣服車馬は、客に在りて無き所なり。○好は、去聲。

飧有陪鼎、熟食爲飧。陪、加也。加鼎、所以厚殷勤。○飧、音孫。
【読み】
飧に陪鼎有り、熟食を飧と爲す。陪は、加うるなり。加鼎は、殷勤を厚くする所以なり。○飧は、音孫。

入有郊勞、賓至、逆勞之於郊。
【読み】
入るに郊勞有り、賓至れば、逆えて之を郊に勞う。

出有贈賄。去則贈之以貨賄。
【読み】
出づるに贈賄有り。去れば則ち之に贈るに貨賄を以てす。

禮之至也。
【読み】
禮の至りなり。

國家之敗、失之道也。則禍亂興。失朝聘宴好之道。
【読み】
國家の敗るるは、之が道を失えばなり。則ち禍亂興る。朝聘宴好の道を失う。

城濮之役、在僖二十八年。
【読み】
城濮の役に、僖二十八年に在り。

晉無楚備、以敗於邲、在宣十二年。言兵禍始於城濮。○邲、皮必反。
【読み】
晉楚の備え無くして、以て邲[ひつ]に敗れ、宣十二年に在り。言うこころは、兵禍城濮に始まる。○邲は、皮必反。

邲之役、楚無晉備、以敗於鄢。在成十六年。○鄢、於晩反。
【読み】
邲の役より、楚晉の備え無くして、以て鄢[えん]に敗れたり。成十六年に在り。○鄢は、於晩反。

自鄢以來、晉不失備、而加之以禮、重之以睦。君臣和也。
【読み】
鄢より以來、晉備えを失わずして、之に加うるに禮を以てし、之に重ぬるに睦を以てす。君臣和するなり。

是以楚弗能報而求親焉。旣獲姻親。又欲恥之以召寇讎。備之若何。言何以爲備。
【読み】
是を以て楚報ゆること能わずして親を求めり。旣に姻親を獲たり。又之を恥めて以て寇讎を召かんと欲す。之を備えんこと若何。言うこころは、何を以て備えと爲さん。

誰其重此。言怨重。
【読み】
誰か其れ此より重からん。怨みの重きを言う。

若有其人、恥之可也。謂有賢人以敵晉、則可恥之。
【読み】
若し其の人有らば、之を恥めて可なり。賢人の以て晉に敵する有らば、則ち之を恥む可きを謂う。

若其未有、君亦圖之。
【読み】
若し其れ未だ有らざれば、君も亦之を圖れ。

晉之事君、臣曰可矣。求諸侯而麇至、麇、羣也。○麇、丘隕反。又其鄖反。
【読み】
晉の君に事うる、臣は可なりと曰えり。諸侯を求めて麇至[きんし]し、麇は、羣なり。○麇は、丘隕反。又其鄖反。

求昏而薦女、薦、進也。
【読み】
昏を求めて女を薦め、薦は、進むるなり。

君親送之、上卿及上大夫致之。猶欲恥之、君其亦有備矣。不然何。
【読み】
君親ら之を送り、上卿と上大夫と之を致せり。猶之を恥めんと欲するは、君も其れ亦備え有らん。然らずんば何。
*「柰」は、漢籍國字解全書では「奈」。

韓起之下、趙成・中行吳・魏舒・范鞅・知盈、五卿位在韓起之下、皆三軍之將佐也。成、趙武之子。吳、荀偃之子。○行、戶郎反。鞅、於丈反。
【読み】
韓起の下には、趙成・中行吳・魏舒・范鞅・知盈あり、五卿は位韓起の下に在り、皆三軍の將佐なり。成は、趙武の子。吳は、荀偃の子。○行は、戶郎反。鞅は、於丈反。

羊舌肸之下、祁午・張趯・籍談・女齊・梁丙・張骼・輔躒・苗賁皇、皆諸侯之選也。言非凡人。○趯、他歷反。骼、古百反。或音各。躒、力狄反。又力各反。賁、音扮。選、去聲。
【読み】
羊舌肸の下には、祁午・張趯・籍談・女齊・梁丙・張骼・輔躒・苗賁皇あり、皆諸侯の選なり。言うこころは、凡人に非ず。○趯は、他歷反。骼は、古百反。或は音各。躒は、力狄反。又力各反。賁は、音扮。選は、去聲。

韓襄爲公族大夫、韓須受命而使矣。襄、韓無忌子也。爲公族大夫。須、起之門子。年雖幼、已任出使。○任、音壬。
【読み】
韓襄は公族大夫と爲り、韓須は命を受けて使いせり。襄は、韓無忌の子なり。公族大夫爲り。須は、起の門子。年幼しと雖も、已に出でて使いするに任えたり。○任は、音壬。

箕襄・邢帶・ 二人韓氏族。
【読み】
箕襄・邢帶・ 二人は韓氏の族。

叔禽・叔椒・子羽、皆韓起庶子。
【読み】
叔禽・叔椒・子羽は、皆韓起の庶子。

皆大家也。韓賦七邑、皆成縣也。成縣、賦百乘也。
【読み】
皆大家なり。韓が賦七邑は、皆成縣なり。成縣は、賦百乘なり。

羊舌四族、彊家也。四族、銅鞮伯華・叔向・叔魚・叔虎、兄弟四人。○鞮、丁兮反。
【読み】
羊舌が四族は、彊家なり。四族は、銅鞮伯華[どうていはくか]・叔向・叔魚・叔虎、兄弟四人なり。○鞮は、丁兮反。
*漢籍國字解全書では、「彊家」の前に「皆」が有る。

晉人若喪韓起・楊肸、五卿・八大夫、五卿、趙成以下、八大夫、祁午以下。○喪、息浪反。叔向、本羊舌氏。食采於楊。
【読み】
晉人若し韓起・楊肸を喪わば、五卿・八大夫、五卿は、趙成より以下、八大夫は、祁午より以下。○喪は、息浪反。叔向は、本羊舌氏。楊に食采す。

輔韓須・楊石、石、叔向子、食我也。○食、音嗣。
【読み】
韓須・楊石を輔けて、石は、叔向の子、食我なり。○食は、音嗣。

因其十家九縣、韓氏七、羊舌四。而言十家、舉大數也。羊舌四家、共二縣。故但言彊家。
【読み】
其の十家九縣の、韓氏七、羊舌四。而るに十家と言うは、大數を舉ぐるなり。羊舌四家、二縣を共にす。故に但彊家と言う。

長轂九百、長轂、戎車也。縣百乘。○轂、古木反。
【読み】
長轂九百、長轂は、戎車なり。縣ごとに百乘。○轂は、古木反。

其餘四十縣遺守四千、計遺守國者、尙有四千乘。
【読み】
其の餘の四十縣の遺守四千に因り、計るに遺りの國を守る者、尙四千乘有り。

奮其武怒、以報其大恥、伯華謀之、伯華、叔向兄。
【読み】
其の武怒を奮い、以て其の大恥を報いんとし、伯華之を謀り、伯華は、叔向の兄。

中行伯・魏舒帥之、伯、中行吳。
【読み】
中行伯・魏舒之を帥いば、伯は、中行吳。

其蔑不濟矣。
【読み】
其れ濟らざること蔑けん。

君將以親易怨、失婚姻之親。
【読み】
君將に親を以て怨みに易え、婚姻の親を失う。

實無禮以速寇。而未有其備、使羣臣往遺之禽、以逞君心、何不可之有。
【読み】
實に無禮にして以て寇を速[まね]かんとす。而るに未だ其の備え有らずして、羣臣をして往きて之に禽を遺らしめて、以て君の心を逞くせんこと、何の不可か之れ有らん、と。

王曰、不穀之過也。大夫無辱。謝薳啓彊。○遺、唯季反。
【読み】
王曰く、不穀の過ちなり。大夫辱くすること無かれ、と。薳啓彊に謝す。○遺は、唯季反。

厚爲韓子禮。王欲敖叔向以其所不知而不能。言叔向之多知。○敖、五報反。
【読み】
厚く韓子が禮を爲す。王叔向に敖るに其の知らざる所を以てせんと欲して能わず。叔向の知多きを言う。○敖は、五報反。

亦厚其禮。
【読み】
亦其の禮を厚くす。

韓起反。鄭伯勞諸圉。圉、鄭地名。
【読み】
韓起反る。鄭伯諸を圉に勞う。圉は、鄭の地の名。

辭不敢見。禮也。奉使君命未反故。○見、賢遍反。
【読み】
辭して敢えて見えず。禮なり。使いを奉じて君命未だ反りもうさざる故なり。○見は、賢遍反。

鄭罕虎如齊、娶於子尾氏。自爲逆也。
【読み】
鄭の罕虎齊に如きて、子尾氏に娶る。自ら爲に逆うるなり。

晏子驟見之。陳桓子問其故。對曰、能用善人、民之主也。謂授子產政。
【読み】
晏子驟[しば]々之を見る。陳桓子其の故を問う。對えて曰く、能く善人を用ゆるは、民の主なり。子產に政を授くるを謂う。

夏、莒牟夷以牟婁及防玆來奔。牟夷非卿而書、尊地也。尊、重也。重地。故書。以名其人、終爲不義。
【読み】
夏、莒の牟夷牟婁と防玆とを以て來奔す。牟夷は卿に非ずして書すは、地を尊びてなり。尊は、重んずるなり。地を重んず。故に書す。以て其の人に名いうは、終に不義とするなり。

莒人愬于晉。愬魯受牟夷。
【読み】
莒人晉に愬[うった]う。魯の牟夷を受くるを愬う。

晉侯欲止公。范獻子曰、不可。人朝而執之、誘也。討不以師、而誘以成之、惰也。爲盟主而犯此二者、無乃不可乎。請歸之、閒而以師討焉。閒、暇也。○誘、音酉。閒、音閑。又如字。
【読み】
晉侯公を止めんと欲す。范獻子曰く、不可なり。人朝して之を執うるは、誘[あざむ]くなり。討ずるに師を以てせずして、誘きて以て之を成すは、惰なり。盟主として此の二つの者を犯さば、乃ち不可なること無からんや。請う、之を歸して、閒あるときにして師を以て討ぜん、と。閒は、暇なり。○誘は、音酉。閒は、音閑。又字の如し。

乃歸公。
【読み】
乃ち公を歸す。

秋、七月、公至自晉。莒人來討、討受牟夷。
【読み】
秋、七月、公晉より至る。莒人來討し、牟夷を受くるを討ず。

不設備。戊辰、叔弓敗諸蚡泉。莒未陳也。嫌君臣異。故重發例。
【読み】
備えを設けず。戊辰、叔弓諸を蚡泉に敗る。莒未だ陳せざればなり。君臣異なるに嫌あり。故に重ねて例を發す。

冬、十月、楚子以諸侯及東夷伐吳、以報棘・櫟・麻之役。役在四年。
【読み】
冬、十月、楚子諸侯と東夷とを以て吳を伐ち、以て棘・櫟・麻の役に報ゆ。役は四年に在り。

薳射以繁揚之師會於夏汭。會楚子。○射、食夜反。又食亦反。
【読み】
薳射繁揚の師を以て夏汭に會す。楚子に會す。○射は、食夜反。又食亦反。

越大夫常壽過帥師會楚子于瑣。瑣、楚地。○過、古禾反。
【読み】
越の大夫常壽過師を帥いて楚子に瑣に會す。瑣は、楚の地。○過は、古禾反。

聞吳師出、薳啓彊帥師從之、從吳師也。
【読み】
吳の師出づと聞きて、薳啓彊師を帥いて之を從[お]い、吳の師を從うなり。

遽不設備。吳人敗諸鵲岸。廬江舒縣有鵲尾渚。
【読み】
遽[あわ]てて備えを設けず。吳人諸を鵲岸に敗る。廬江舒縣に鵲尾渚有り。

楚子以馹至於羅汭。馹、傳也。羅、水名。○馹、人實反。
【読み】
楚子馹[じつ]を以て羅汭に至る。馹は、傳なり。羅は、水の名。○馹は、人實反。

吳子使其弟蹶由犒師。犒、勞。○蹶、居衛反。
【読み】
吳子其の弟蹶由[けいゆう]をして師を犒[ねぎら]わしむ。犒は、勞う。○蹶は、居衛反。

楚人執之、將以釁鼓。王使問焉、曰、女卜來吉乎。對曰、吉。寡君聞君將治兵於敝邑、卜之以守龜曰、余亟使人犒師請行、以觀王怒之疾徐、而爲之備。尙克知之。言吳令龜如此。○女、音汝。守、手又反。下同。
【読み】
楚人之を執え、將に以て鼓に釁[ちぬ]らんとす。王問わしめて、曰く、女來ることを卜するに吉なりや、と。對えて曰く、吉なり。寡君君の將に敝邑に治兵せんとするを聞き、之を卜するに守龜を以てして曰く、余亟やかに人をして師を犒い行を請わしめて、以て王の怒りの疾徐を觀て、之が備えを爲さんとす。尙[ねが]わくは克く之を知らん、と。言うこころは、吳の龜に令すること此の如し。○女は、音汝。守は、手又反。下も同じ。

龜兆告吉曰、克可知也。君若驩焉好逆使臣、滋敝邑休怠、休、解也。○好、呼報反。解、佳買反。
【読み】
龜兆吉を告げて曰く、克く知る可けん、と。君若し驩焉として好して使臣を逆えば、敝邑の休怠を滋[ま]して、休は、解[おこた]るなり。○好は、呼報反。解は、佳買反。

而忘其死、亡無日矣。今君奮焉震電馮怒、馮、盛也。○馮、皮冰反。
【読み】
其の死を忘れて、亡びんこと日無けん。今君奮焉として震電馮怒して、馮は、盛んなり。○馮は、皮冰反。

虐執使臣、將以釁鼓、則吳知所備矣。敝邑雖羸、若早脩完、完器備。○羸、力危反。
【読み】
使臣を虐執して、將に以て鼓に釁らんとせば、則ち吳備うる所を知らん。敝邑羸[つか]れたりと雖も、若し早く脩完せば、器備を完くす。○羸は、力危反。

其可以息師。息楚之師。
【読み】
其れ以て師を息む可し。楚の師を息む。

難易有備、可謂吉矣。
【読み】
難易備え有らば、吉なりと謂う可し。

且吳社稷是卜。豈爲一人。使臣獲釁軍鼓、而敝邑知備以禦不虞、其爲吉孰大焉。國之守龜、其何事不卜。言常卜。○豈爲、于僞反。
【読み】
且つ吳は社稷を是れ卜す。豈一人の爲のみならんや。使臣軍鼓に釁ることを獲て、敝邑備えを知りて以て不虞を禦がば、其の吉爲ること孰れか焉より大ならん。國の守龜は、其れ何事をか卜せざらん。言うこころは、常に卜す。○豈爲は、于僞反。

一臧一否、其誰能常之。城濮之兆、其報在邲。城濮戰、楚卜吉、其效乃在邲。○否、悲矣反。
【読み】
一臧一否、其れ誰か能く之を常にせん。城濮の兆は、其の報邲に在りき。城濮の戰に、楚の卜の吉なりしは、其の效は乃ち邲に在り。○否は、悲矣反。

今此行也、其庸有報志。言吳有報楚意。
【読み】
今此の行や、其れ庸て報ゆる志有らんとす、と。言うこころは、吳楚に報ゆる意有り。

乃弗殺。
【読み】
乃ち殺さず。

楚師濟於羅汭。沈尹赤會楚子次於萊山。薳射帥繁揚之師、先入南懷。楚師從之、及汝淸。南懷・汝淸、皆楚界。
【読み】
楚の師羅汭を濟る。沈尹赤楚子に會して萊山に次[やど]る。薳射繁揚の師を帥いて、先ず南懷に入る。楚の師之に從い、汝淸に及ぶ。南懷・汝淸は、皆楚の界。

吳不可入。有備。
【読み】
吳入る可からず。備え有り。

楚子遂觀兵於坻箕之山。觀、示也。○坻、直夷反。
【読み】
楚子遂に兵を坻箕[ちき]の山に觀す。觀は、示すなり。○坻は、直夷反。

是行也、吳早設備、楚無功而還。以蹶由歸。楚子懼吳、使沈尹射待命于巢、薳啓彊待命于雩婁。禮也。善有備。○雩、音于。婁、力侯反。又力具反。
【読み】
是の行や、吳早く備えを設け、楚功無くして還れり。蹶由を以て歸る。楚子吳を懼れ、沈尹射をして命を巢に待ち、薳啓彊をして命を雩婁に待たしむ。禮なり。備え有るを善す。○雩は、音于。婁は、力侯反。又力具反。

秦后子復歸於秦。元年、奔晉。
【読み】
秦の后子秦に復歸す。元年、晉に奔る。

景公卒故也。終五稔之言。
【読み】
景公卒する故なり。五稔の言を終わる。


〔經〕六年、春、王正月、杞伯益姑卒。再同盟。
【読み】
〔經〕六年、春、王の正月、杞伯益姑卒す。再び同盟す。

葬秦景公。夏、季孫宿如晉。葬杞文公。無傳。
【読み】
秦の景公を葬る。夏、季孫宿晉に如く。杞の文公を葬る。傳無し。

宋華合比出奔衛。合比事君不以道、自取奔亡。書名罪之。○華、戶化反。比、如字。
【読み】
宋の華合比出でて衛に奔る。合比君に事うるに道を以てせずして、自ら奔亡を取る。名を書して之を罪す。○華は、戶化反。比は、字の如し。

秋、九月、大雩。楚薳罷帥師伐吳。○罷、音皮。
【読み】
秋、九月、大いに雩[う]す。楚の薳罷[いひ]師を帥いて吳を伐つ。○罷は、音皮。

冬、叔弓如楚。齊侯伐北燕。
【読み】
冬、叔弓楚に如く。齊侯北燕を伐つ。

〔傳〕六年、春、王正月、杞文公卒。弔如同盟。禮也。魯怨杞因晉取其田。而今不廢喪紀。故禮之。
【読み】
〔傳〕六年、春、王の正月、杞の文公卒す。弔すること同盟の如くす。禮なり。魯杞の晉に因りて其の田を取りしを怨む。而るに今喪紀を廢せず。故に之を禮とす。

大夫如秦葬景公。禮也。合先王士弔、大夫送葬之禮。
【読み】
大夫秦に如きて景公を葬る。禮なり。先王の士弔い、大夫葬を送るの禮に合う。

三月、鄭人鑄刑書。鑄刑書於鼎、以爲國之常法。
【読み】
三月、鄭人刑書を鑄る。刑書を鼎に鑄て、以て國の常法と爲す。

叔向使詒子產書、詒、遺也。○遺、唯季反。
【読み】
叔向[しゅくきょう]子產に書を詒[おく]らしめて、詒は、遺るなり。○遺は、唯季反。

曰、始吾有虞於子。虞、度也。言準度子產、以爲己法。○度、音鐸。下同。
【読み】
曰く、始め吾れ子に虞[はか]ること有りき。虞は、度るなり。子產に準度して、以て己が法と爲すを言う。○度は、音鐸。下も同じ。

今則已矣。已、止也。
【読み】
今は則ち已みぬ。已は、止むなり。

昔先王議事以制、不爲刑辟、懼民之有爭心也。臨事制刑、不豫設法也。法豫設、則民知爭端。○辟、婢亦反。下同。
【読み】
昔先王事を議して以て制して、刑辟を爲らざりしは、民の爭心有らんことを懼れてなり。事に臨みて刑を制し、豫め法を設けざるなり。法豫め設くるときは、則ち民爭端を知る。○辟は、婢亦反。下も同じ。

猶不可禁禦。是故閑之以義、閑、防也。
【読み】
猶禁禦す可からず。是の故に之を閑[ふせ]ぐに義を以てし、閑は、防ぐなり。

糾之以政、糾、舉也。
【読み】
之を糾すに政を以てし、糾は、舉ぐるなり。

行之以禮、守之以信、奉之以仁、奉、養也。
【読み】
之を行うに禮を以てし、之を守るに信を以てし、之を奉ずるに仁を以てし、奉は、養うなり。

制爲祿位、以勸其從、勸從敎。
【読み】
祿位を制し爲して、以て其の從を勸め、敎えに從うを勸む。

嚴斷刑罰、以威其淫。淫、放也。○斷、丁亂反。下同。
【読み】
刑罰に嚴斷して、以て其の淫を威す。淫は、放[ほしいまま]なり。○斷は、丁亂反。下も同じ。

懼其未也。故誨之以忠、聳之以行、聳、懼也。○行、下孟反。
【読み】
懼れらくは其の未だならんことを。故に之に誨ゆるに忠を以てし、之を聳[おど]すに行を以てし、聳は、懼すなり。○行は、下孟反。

敎之以務、時所急。
【読み】
之を敎ゆるに務めを以てし、時の急なる所。

使之以和、說以使民。
【読み】
之を使うに和を以てし、說ばせて以て民を使う。

臨之以敬、涖之以彊、施之於事爲涖。
【読み】
之に臨むに敬を以てし、之に涖むに彊を以てし、之を事に施すを涖むと爲す。

斷之以剛。義斷恩。
【読み】
之を斷ずるに剛を以てす。義恩を斷ず。

猶求聖哲之上、明察之官、上、公王也。官、卿大夫也。
【読み】
猶聖哲の上、明察の官、上は、公王なり。官は、卿大夫なり。

忠信之長、慈惠之師。民於是乎可任使也、而不生禍亂。
【読み】
忠信の長、慈惠の師を求む。民是に於て任使す可くして、禍亂を生ぜず。

民知有辟、則不忌於上、權移於法。故民不畏上。
【読み】
民辟[のり]有ることを知るときは、則ち上を忌まず、權法に移る。故に民上を畏れず。

竝有爭心、以徵於書、而徼幸以成之。因危文以生爭、緣徼幸以成其巧僞。○徼、古堯反。
【読み】
竝に爭心有りて、以て書に徵して、徼幸[きょうこう]して以て之を成さんとす。危文に因りて以て爭いを生じ、緣りて徼幸して以て其の巧僞を成す。○徼は、古堯反。

弗可爲矣。爲、治也。
【読み】
爲む可からず。爲は、治むるなり。

夏有亂政而作禹刑、商有亂政而作湯刑、夏・商之亂、著禹・湯之法。言不能議事以制。
【読み】
夏に亂政有りて禹刑を作り、商に亂政有りて湯刑を作り、夏・商の亂に、禹・湯の法を著す。事を議して以て制すること能わざるを言う。

周有亂政而作九刑。周之衰、亦爲刑書、謂之九刑。
【読み】
周に亂政有りて九刑を作れり。周の衰うるに、亦刑書を爲して、之を九刑と謂う。

三辟之興、皆叔世也。言刑書、不起於始盛之世。
【読み】
三辟の興るは、皆叔世なり。言うこころは、刑書は、始盛の世に起こらず。

今吾子相鄭國、作封洫、在襄三十年。○洫、況域反。
【読み】
今吾子鄭國に相として、封洫[ほうきょく]を作り、襄三十年に在り。○洫は、況域反。

立謗政、作丘賦。在四年。
【読み】
謗政を立て、丘賦を作る。四年に在り。

制參辟、鑄刑書、制參辟、謂用三代之末法。
【読み】
參辟を制して、刑書を鑄、參辟を制するとは、三代の末法を用ゆるを謂う。

將以靖民。不亦難乎。詩曰、儀式刑文王之德。日靖四方。詩、頌。言文王以德爲儀式。故能日有安靖四方之功。刑、法也。
【読み】
將に以て民を靖めんとす。亦難からずや。詩に曰く、儀式刑[のり]とするは文王の德なり。日々に四方を靖んず、と。詩は、頌。言うこころは、文王德を以て儀式とす。故に能く日々に四方を安靖するの功有り。刑は、法なり。

又曰、儀刑文王、萬邦作孚。詩、大雅。言文王作儀法、爲天下所信。孚、信也。
【読み】
又曰く、儀刑をする文王、萬邦に孚とせらるることを作す、と。詩は、大雅。言うこころは、文王儀法を作りて、天下の爲に信ぜらる。孚は、信なり。

如是何辟之有。言詩唯以德與信、不以刑也。
【読み】
是の如きは何の辟か之れ有らん。言うこころは、詩は唯德と信とを以てして、刑を以てせず。

民知爭端矣。將弃禮而徵於書、以刑書爲徵。
【読み】
民爭端を知れり。將に禮を弃てて書に徵せんとして、刑書を以て徵と爲す。

錐刀之末、將盡爭之。錐刀末、喩小事。
【読み】
錐刀の末も、將に盡く之を爭わんとす。錐刀の末とは、小事に喩う。

亂獄滋豐、賄賂竝行。終子之世、鄭其敗乎。肸聞之、國將亡、必多制。數改法。
【読み】
亂獄滋々豐[さか]んに、賄賂竝び行われん。子の世を終えば、鄭其れ敗れんか。肸之を聞く、國將に亡びんとすれば、必ず制多し、と。數々法を改む。

其此之謂乎。
【読み】
其れ此を之れ謂うか、と。

復書曰、若吾子之言。復、報也。
【読み】
復書に曰く、吾子の言の若し。復は、報なり。

僑不才。不能及子孫。吾以救世也。旣不承命、敢忘大惠。以見箴戒爲惠。
【読み】
僑不才なり。子孫に及ぼすこと能わず。吾は以て世を救わんとなり。旣に命を承けざるも、敢えて大惠を忘れんや、と。箴戒せらるるを以て惠と爲す。

士文伯曰、火見、鄭其火乎。火、心星。周五月、昏見。○見、音現。
【読み】
士文伯曰く、火見えば、鄭其れ火あらん。火は、心星。周の五月、昏に見ゆ。○見は、音現。

火未出而作火、以鑄刑器、刑器、鼎也。
【読み】
火未だ出でずして火を作して、以て刑器を鑄、刑器は、鼎なり。

藏爭辟焉。火如象之、不火何爲。象、類也。同氣相求。火未出而用火、相感而致災。
【読み】
爭辟を藏む。火如し之に象らば、火あらずして何をかせん、と。象は、類なり。同氣相求む。火未だ出でずして火を用ゆれば、相感じて災を致すなり。

夏、季孫宿如晉、拜莒田也。謝前年受牟夷邑不見討。
【読み】
夏、季孫宿晉に如くは、莒の田を拜するなり。前年牟夷の邑を受けて討ぜられざるを謝す。

晉侯享之。有加籩。籩豆之數、多於常禮。
【読み】
晉侯之を享す。加籩有り。籩豆の數、常禮より多し。

武子退、使行人告曰、小國之事大國也、苟免於討、不敢求貺。貺、賜也。
【読み】
武子退きて、行人をして告げしめて曰く、小國の大國に事うるや、苟も討を免るれば、敢えて貺[たまもの]を求めず。貺[きょう]は、賜なり。

得貺、不過三獻。周禮、大夫三獻。
【読み】
貺を得るも、三獻を過ぎず。周禮に、大夫は三獻、と。

今豆有加、下臣弗堪。無乃戾也。懼以不堪爲罪。
【読み】
今豆に加有り、下臣堪えず。乃ち戾[つみ]たること無からんや、と。懼れらくは堪えざるを以て罪と爲らん。

韓宣子曰、寡君以爲驩也。以加禮致驩心。
【読み】
韓宣子曰く、寡君以て驩を爲さんとす、と。禮を加うるを以て驩心を致す。

對曰、寡君猶未敢。未敢當此加也。
【読み】
對えて曰く、寡君も猶未だ敢てせず。未だ敢えて此の加に當たらざるなり。

況下臣、君之隸也。敢聞加貺。固請徹加、而後卒事。晉人以爲知禮、重其好貨。宴好之貨。○好、去聲。
【読み】
況んや下臣は、君の隸なり。敢えて加貺を聞かんや、と。固く請いて加を徹せしめて、而して後に事を卒われり。晉人以て禮を知れりと爲して、其の好貨を重くせり。宴好の貨。○好は、去聲。

宋寺人柳有寵。有寵於平公。○柳、寺人名。
【読み】
宋の寺人柳寵有り。平公に寵有り。○柳は、寺人の名。

大子佐惡之。華合比曰、我殺之。欲以求媚大子。○惡、烏路反。
【読み】
大子佐之を惡む。華合比曰く、我れ之を殺さん、と。以て媚を大子に求めんと欲す。○惡は、烏路反。

柳聞之、乃坎用牲埋書、詐爲盟處。
【読み】
柳之を聞き、乃ち坎して牲を用い書を埋めて、詐りて盟處を爲す。

而告公曰、合比將納亡人之族。亡人、華臣也。襄十七年、奔陳。
【読み】
公に告げて曰く、合比將に亡人の族を納れんとす。亡人は、華臣なり。襄十七年、陳に奔る。

旣盟于北郭矣。公使視之、有焉。遂逐華合比。合比奔衛。
【読み】
旣に北郭に盟えり、と。公之を視せしめ、焉れ有り。遂に華合比を逐う。合比衛に奔る。

於是華亥欲代右師、亥、合比弟。欲得合比處。
【読み】
是に於て華亥右師に代わらんと欲し、亥は、合比の弟。合比が處を得んと欲す。

乃與寺人柳比、從爲之徵曰、聞之久矣。聞合比欲納華臣。○柳比、毗志反。
【読み】
乃ち寺人柳と比して、從いて之が徵を爲して曰く、之を聞くこと久し、と。合比が華臣を納れんと欲するを聞く。○柳比は、毗志反。

公使代之。代合比爲右師。
【読み】
公之に代わらしむ。合比に代わりて右師と爲る。

見於左師。左師、向戌。○見、賢遍反。又如字。
【読み】
左師に見ゆ。左師は、向戌。○見は、賢遍反。又字の如し。

左師曰、女夫也、必亡。夫、謂華亥。○女、音汝。下同。
【読み】
左師曰く、女は、必ず亡びん。夫は、華亥を謂う。○女は、音汝。下も同じ。

女喪而宗室。於人何有。人亦於女何有。言人亦不能愛女。○喪、息浪反。
【読み】
女而[なんじ]の宗室を喪ぼす。人に於て何か有らん。人も亦女に於て何か有らん。言うこころは、人も亦女を愛すること能わず。○喪は、息浪反。

詩曰、宗子維城。毋俾城壞。毋獨斯畏。詩、大雅。言宗子之固若城。俾、使也。
【読み】
詩に曰く、宗子は維れ城なり。城を壞れしむること毋かれ。獨りにして斯に畏るること毋かれ、と。詩は、大雅。言うこころは、宗子の固きこと城の若し。俾は、使なり。

女其畏哉。爲二十年、華亥出奔傳。
【読み】
女其れ畏れんかな、と。二十年、華亥出奔する爲の傳なり。

六月、丙戌、鄭災。終士文伯之言。
【読み】
六月、丙戌[ひのえ・いぬ]、鄭災あり。士文伯の言を終わる。

楚公子弃疾如晉、報韓子也。報前年送女。
【読み】
楚の公子弃疾晉に如き、韓子に報ゆ。前年女を送りしに報ゆ。

過鄭。鄭罕虎・公孫僑・游吉從鄭伯以勞諸柤。辭不敢見。不敢當國君之勞。柤、鄭地。○過、如字。又平聲。從、去聲。或如字。勞、去聲。柤、音査。見、賢遍反。
【読み】
鄭を過ぐ。鄭の罕虎・公孫僑・游吉鄭伯に從いて以て諸を柤[さ]に勞う。辭して敢えて見えず。敢えて國君の勞に當たらず。柤は、鄭の地。○過は、字の如し。又平聲。從は、去聲。或は字の如し。勞は、去聲。柤は、音査。見は、賢遍反。

固請見之。見如見王。見鄭伯如見楚王。言弃疾共而有禮。
【読み】
固く之を見んことを請う。見ること王に見ゆるが如し。鄭伯を見ること楚王に見ゆるが如し。弃疾共にして禮有るを言う。

以其乘馬八匹、私面。私見鄭伯。○乘、去聲。
【読み】
其の乘馬八匹を以て、私面す。私に鄭伯に見ゆ。○乘は、去聲。

見子皮、如上卿、如見楚卿。
【読み】
子皮を見ること、上卿の如くにして、楚の卿を見るが如くす。

以馬六匹、見子產以馬四匹、見子大叔以馬二匹。降殺以兩。○殺、所界反。
【読み】
馬六匹を以てし、子產を見るに馬四匹を以てし、子大叔を見るに馬二匹を以てす。降殺兩を以てす。○殺は、所界反。

禁芻牧採樵、不入田、不犯田種。
【読み】
芻牧採樵を禁じて、田に入らず、田種を犯さず。

不樵樹、不采蓺、蓺、種也。
【読み】
樹を樵にせず、蓺[げい]を采らず、蓺は、種なり。

不抽屋、不强匃。誓曰、有犯命者、君子廢、小人降。君子則廢黜不得居位、小人則退給下劇也。○匃、音蓋。
【読み】
屋を抽[ぬ]かず、强いて匃[こ]わず。誓いて曰く、命を犯す者有らば、君子は廢て、小人は降さん、と。君子は則ち廢黜して位に居ることを得ず、小人は則ち退けて下劇に給す。○匃は、音蓋。

舍不爲暴、主不慁賓。慁、患也。○慁、戶困反。
【読み】
舍[やど]りて暴を爲さず、主賓を慁[うれ]えず。慁[こん]は、患うるなり。○慁は、戶困反。

往來如是。鄭三卿皆知其將爲王也。三卿、罕虎・公孫僑・游吉。
【読み】
往來是の如し。鄭の三卿皆其の將に王爲らんとするを知れり。三卿は、罕虎・公孫僑・游吉。

韓宣子之適楚也、楚人弗逆。公子弃疾及晉竟、晉侯將亦弗逆。叔向曰、楚辟我衷。辟、邪也。衷、正也。○竟、音境。辟、匹亦反。衷、音忠。
【読み】
韓宣子の楚に適きしや、楚人逆えざりき。公子弃疾晉の竟に及び、晉侯も將に亦逆えざらんとす。叔向曰く、楚は辟、我は衷。辟は、邪なり。衷は、正なり。○竟は、音境。辟は、匹亦反。衷は、音忠。

若何效辟。詩曰、爾之敎矣、民胥效矣。詩、小雅。言上敎下效。
【読み】
若何ぞ辟に效わん。詩に曰く、爾の敎ゆる、民胥[あい]效う、と。詩は、小雅。言うこころは、上敎え下效う。

從我而已。焉用效人之辟。書曰、聖作則。逸書。則、法也。
【読み】
我に從わんのみ。焉ぞ人の辟に效うことを用いん。書に曰く、聖則を作す、と。逸書。則は、法なり。

無寧以善人爲則。無寧、寧也。
【読み】
無寧[むし]ろ善人を以て則とせんのみ。無寧は、寧ろなり。

而則人之辟乎。匹夫爲善、民猶則之。況國君乎。晉侯說、乃逆之。傳言叔向知禮。
【読み】
而るを人の辟に則らんや。匹夫も善をすれば、民猶之に則る。況んや國君をや。晉侯說び、乃ち之を逆う。傳叔向が禮を知るを言う。

秋、九月、大雩、旱也。
【読み】
秋、九月、大いに雩するは、旱するなり。

徐儀楚聘于楚。儀楚、徐大夫。
【読み】
徐の儀楚楚に聘す。儀楚は、徐の大夫。

楚子執之。逃歸。懼其叛也、使薳洩伐徐。薳洩、楚大夫。
【読み】
楚子之を執えんとす。逃げ歸る。其の叛かんことを懼れ、薳洩[いせつ]をして徐を伐たしむ。薳洩は、楚の大夫。

吳人救之。令尹子蕩帥師伐吳、師于豫章、而次于乾谿。乾谿、在譙國城父縣南。楚東竟。
【読み】
吳人之を救う。令尹子蕩師を帥いて吳を伐ち、豫章に師して、乾谿[かんけい]に次る。乾谿は、譙國城父縣の南に在り。楚の東竟なり。

吳人敗其師於房鍾、房鍾、吳地。
【読み】
吳人其の師を房鍾に敗り、房鍾は、吳の地。

獲宮廐尹弃疾。鬭韋龜之父。
【読み】
宮廐尹弃疾を獲たり。鬭韋龜の父。

子蕩歸罪於薳洩而殺之。歸罪於薳洩不以敗告。故不書。
【読み】
子蕩罪を薳洩に歸して之を殺す。罪を薳洩に歸して敗を以て告げず。故に書さず。

冬、叔弓如楚、聘、且弔敗也。弔爲吳所敗。
【読み】
冬、叔弓楚に如くは、聘して、且つ敗を弔うなり。吳の爲に敗らるるを弔う。

十一月、齊侯如晉、請伐北燕也。告盟主。
【読み】
十一月、齊侯晉に如くは、北燕を伐たんことを請うなり。盟主に告ぐ。

士匃相士鞅逆諸河。禮也。士匃、晉大夫。相、爲介。得敬逆來者之禮。○匃、古害反。
【読み】
士匃[しかい]士鞅を相けて諸を河に逆う。禮なり。士匃は、晉の大夫。相は、介と爲るなり。來者を敬し逆うるの禮を得。○匃は、古害反。

晉侯許之。十二月、齊侯遂伐北燕、將納簡公。簡公、北燕伯。三年出奔齊。
【読み】
晉侯之を許す。十二月、齊侯遂に北燕を伐ち、將に簡公を納れんとす。簡公は、北燕伯。三年に齊に出奔す。

晏子曰、不入。燕有君矣。民不貳。吾君賄、左右諂諛。作大事不以信、未嘗可也。爲明年、曁齊平傳。
【読み】
晏子曰く、入らじ。燕に君有り。民貳あらず。吾が君は賄をし、左右は諂諛[てんゆ]す。大事を作すに信を以てせざれば、未だ嘗て可ならざるなり、と。明年、齊と平らぐ爲の傳なり。


〔經〕七年、春、王正月、曁齊平。曁、與也。燕與齊平。前年冬、齊伐燕、閒無異事。故不重言燕、從可知。
【読み】
〔經〕七年、春、王の正月、齊と平らぐ。曁は、與なり。燕齊と平らぐなり。前年の冬、齊燕を伐ち、閒に異事無し。故に重ねて燕を言わざるも、從りて知る可ければなり。

三月、公如楚。叔孫婼如齊涖盟。無傳。公將遠適楚。故叔孫如齊尋舊好。○婼、敕畧反。又音釋。
【読み】
三月、公楚に如く。叔孫婼[しゅくそんちゃく]齊に如きて涖みて盟う。傳無し。公將に遠く楚に適かんとす。故に叔孫齊に如きて舊好を尋[かさ]ぬ。○婼は、敕畧反。又音釋。

夏、四月、甲辰、朔、日有食之。秋、八月、戊辰、衛侯惡卒。元年、大夫盟于虢。
【読み】
夏、四月、甲辰[きのえ・たつ]、朔、日之を食する有り。秋、八月、戊辰[つちのえ・たつ]、衛侯惡卒す。元年に、大夫虢[かく]に盟う。

九月、公至自楚。冬、十有一月、癸未、季孫宿卒。十有二月、癸亥、葬衛襄公。
【読み】
九月、公楚より至る。冬、十有一月、癸未[みずのと・ひつじ]、季孫宿卒す。十有二月、癸亥[みずのと・い]、衛の襄公を葬る。

〔傳〕七年、春、王正月、曁齊平、齊求之也。齊伐燕。燕人賂之、反從求平。如晏子言。
【読み】
〔傳〕七年、春、王の正月、齊と平らぐは、齊之を求むるなり。齊燕を伐つ。燕人之に賂せしかば、反って從りて平らぎを求む。晏子が言の如し。

癸巳、齊侯次于虢。虢、燕竟。
【読み】
癸巳[みずのと・み]、齊侯虢[かく]に次[やど]る。虢は、燕の竟。

燕人行成、曰、敝邑知罪。敢不聽命。先君之敝器、請以謝罪。敝器、瑤罋玉櫝之屬。
【読み】
燕人成らぎを行いて、曰く、敝邑罪を知れり。敢えて命を聽かざらんや。先君の敝器、請う、以て罪を謝せん、と。敝器は、瑤罋玉櫝の屬。

公孫皙曰、受服而退、俟釁而動、可也。皙、齊大夫。
【読み】
公孫皙曰く、服を受けて退き、釁を俟ちて動かんこと、可なり、と。皙は、齊の大夫。

二月、戊午、盟于濡上。濡水、出高陽縣東北、至河閒鄚縣、入易水。○濡、音須。又女干反。
【読み】
二月、戊午[つちのえ・うま]、濡上に盟う。濡水は、高陽縣の東北に出で、河閒鄚縣に至りて、易水に入る。○濡は、音須。又女干反。

燕人歸燕姬、嫁女與齊侯。
【読み】
燕人燕姬を歸[とつ]がしめ、女を嫁して齊侯に與う。

賂以瑤罋・玉櫝・斝耳。不克而還。瑤、玉也。櫝、匱也。斝耳、玉爵。○斝、古雅反。一音嫁。
【読み】
賂うに瑤罋[ようおう]・玉櫝[ぎょくとく]・斝耳[かじ]を以てす。克わずして還る。瑤は、玉なり。櫝は、匱なり。斝耳は、玉爵。○斝は、古雅反。一に音嫁。

楚子之爲令尹也、爲王旌以田。析羽爲旌。王旌游至於軫。○游、音留。
【読み】
楚子の令尹爲りしや、王の旌を爲して以て田[かり]す。析羽を旌と爲す。王の旌は游[りゅう]軫に至れり。○游は、音留。

芋尹無宇斷之曰、一國兩君、其誰堪之。
【読み】
芋尹無宇之を斷ちて曰く、一國に兩君あらば、其れ誰か之に堪えん、と。

及卽位、爲章華之宮、納亡人以實之。章華、南郡華容縣。○芋、于付反。斷、音短。
【読み】
位に卽くに及びて、章華の宮を爲り、亡人を納れて以て之に實つ。章華は、南郡華容縣。○芋は、于付反。斷は、音短。

無宇之閽入焉。有罪亡入章華宮。
【読み】
無宇が閽入る。罪有りて亡げて章華宮に入る。

無宇執之。有司弗與、王有司也。
【読み】
無宇之を執えんとす。有司與えずして、王の有司なり。

曰、執人於王宮、其罪大矣。執而謁諸王。執無宇也。
【読み】
曰く、人を王宮に執えんとす、其の罪大なり、と。執えて諸を王に謁[つ]ぐ。無宇を執うるなり。

王將飮酒。遇其歡也。
【読み】
王將に酒を飮まんとす。其の歡に遇うなり。

無宇辭曰、天子經畧、經營天下、畧有四海。故曰經畧。
【読み】
無宇辭して曰く、天子は經畧し、天下を經營し、四海を畧有す。故に經畧と曰う。

諸侯正封、封疆有定分。
【読み】
諸侯は正封するは、封疆定分有り。

古之制也。封畧之内、何非君土。食土之毛、誰非君臣。毛、草也。
【読み】
古の制なり。封畧の内は、何れか君の土に非ざらん。土の毛を食うは、誰か君の臣に非ざらん。毛は、草なり。

故詩曰、普天之下、莫非王土、率土之濱、莫非王臣。詩、小雅。濱、涯也。
【読み】
故に詩に曰く、普天の下、王土に非ざること莫く、率土の濱、王臣に非ざること莫し、と。詩は、小雅。濱は、涯なり。

天有十日、甲至癸。
【読み】
天に十日有り、甲より癸に至る。

人有十等。王至臺。
【読み】
人に十等有り。王より臺に至る。

下所以事上、上所以共神也。故王臣公、公臣大夫、大夫臣士、士臣皁、皁臣輿、輿臣隸、隸臣僚、僚臣僕、僕臣臺。馬有圉、牛有牧、養馬曰圉、養牛曰牧。○共、音恭。
【読み】
下の上に事うる所以は、上の神に共する所以なり。故に王の臣は公、公の臣は大夫、大夫の臣は士、士の臣は皁[そう]、皁の臣は輿、輿の臣は隸、隸の臣は僚、僚の臣は僕、僕の臣は臺なり。馬に圉有り、牛に牧有りて、馬を養うを圉と曰い、牛を養うを牧と曰う。○共は、音恭。

以待百事。今有司曰、女胡執人於王宮。將焉執之。
【読み】
以て百事を待つ。今有司曰く、女胡ぞ人を王宮に執うる、と。將に焉に之を執えんとせん。

周文王之法曰、有亡荒閱。荒、大也。閱、蒐也。有亡人當大蒐其衆。
【読み】
周の文王の法に曰く、亡ぐること有らば荒閱せよ、と。荒は、大なり。閱は、蒐むるなり。亡人有らば當に其の衆を大蒐すべし。

所以得天下也。吾先君文王、楚文王。
【読み】
天下を得し所以なり。吾が先君文王、楚の文王。

作僕區之法、僕區、刑書名。○區、烏侯反。徐如字。服云、僕、隱也。區、匿也。爲隱匿亡人之法也。
【読み】
僕區[ぼくおう]の法を作りて、僕區は、刑書の名。○區は、烏侯反。徐字の如し。服云う、僕は、隱なり。區は、匿なり。亡人を隱匿するの法を爲すなり。

曰、盜所隱器、隱盜所得器。
【読み】
曰く、盜の器を隱す所は、盜の得る所の器を隱す。

與盜同罪。所以封汝也。行善法。故能啓疆、北至汝水。
【読み】
盜と罪を同じくす、と。汝を封にせし所以なり。善法を行う。故に能く疆を啓き、北汝水に至れり。

若從有司、是無所執逃臣也。逃而舍之、是無陪臺也。言皆將逃。
【読み】
若有司に從わば、是れ逃臣を執うる所無きなり。逃げて之を舍[ゆる]さば、是れ陪臺無きなり。言うこころは、皆將に逃げんとす。

王事無乃闕乎。
【読み】
王の事乃ち闕くること無からんや。

昔武王數紂之罪、以告諸侯曰、紂爲天下逋逃主、萃淵藪。萃、集也。天下逋逃悉以紂爲淵藪、集而歸之。○數、色具反。又色主反。逋、布吳反。藪、素口反。
【読み】
昔武王紂の罪を數えて、以て諸侯に告げて曰く、紂を天下の逋逃[ほとう]の主と爲して、萃[あつ]まりて淵藪とす、と。萃は、集まるなり。天下の逋逃悉く紂を以て淵藪と爲し、集まりて之に歸す。○數は、色具反。又色主反。逋は、布吳反。藪は、素口反。

故夫致死焉。人欲致死討紂。○夫、音扶。又方于反。
【読み】
故に夫々死を致せり。人々死を致して紂を討ぜんと欲す。○夫は、音扶。又方于反。

君王始求諸侯而則紂、無乃不可乎。
【読み】
君王始めて諸侯を求めて紂に則らば、乃ち不可なること無からんや。

若以二文之法取之、盜有所在矣。言王亦爲盜。
【読み】
若し二文の法を以て之を取らば、盜在る所有らん、と。言うこころは、王も亦盜爲り。

王曰、取而臣以往。往、去也。
【読み】
王曰く、而[なんじ]が臣を取りて以て往け。往は、去るなり。

盜有寵、未可得也。盜有寵王自謂。爲葬靈王張本。
【読み】
盜は寵有り、未だ得可からず、と。盜は寵有りと王自ら謂う。靈王を葬る爲の張本なり。

遂赦之。赦無宇。
【読み】
遂に之を赦す。無宇を赦す。

楚子成章華之臺、願與諸侯落之。宮室始成、祭之爲落。臺、今在華容城内。
【読み】
楚子章華の臺を成して、諸侯と之を落せんことを願う。宮室始めて成り、之を祭るを落と爲す。臺は、今華容城内に在り。

大宰薳啓彊曰、臣能得魯侯。薳啓彊來召公。辭曰、昔先君成公、命我先大夫嬰齊曰、吾不忘先君之好、將使衡父照臨楚國、鎭撫其社稷、以輯寧爾民。嬰齊受命于蜀、蜀盟、在成二年。衡父、公衡。○好、呼報反。輯、音集。
【読み】
大宰薳啓彊[いけいきょう]曰く、臣能く魯侯を得ん、と。薳啓彊來りて公を召ぶ。辭に曰く、昔先君成公、我が先大夫嬰齊に命じて曰く、吾れ先君の好を忘れず、將に衡父をして楚國を照臨し、其の社稷を鎭撫して、以て爾が民を輯寧せしめんとす、と。嬰齊命を蜀に受け、蜀の盟は、成二年に在り。衡父は、公衡。○好は、呼報反。輯は、音集。

奉承以來、弗敢失隕、而致諸宗祧。言奉成公此語、以告宗廟。○祧、他彫反。
【読み】
奉承して以て來りて、敢えて失隕せずして、諸を宗祧[そうちょう]に致せり。言うこころは、成公の此の語を奉じて、以て宗廟に告げたり。○祧は、他彫反。

日我先君共王、引領北望、日月以冀、冀魯朝。○共、音恭。
【読み】
日[さき]に我が先君共王、領[うなじ]を引きて北望し、日月に以て冀い、魯の朝せんことを冀う。○共は、音恭。

傳序相授、於今四王矣、四王、共・康・郟敖及靈。
【読み】
傳序相授け、今に四王なれども、四王は、共・康・郟敖[こうごう]及び靈。

嘉惠未至。唯襄公之辱臨我喪、襄公二十八年、如楚、臨康王喪。
【読み】
嘉惠未だ至らず。唯襄公の辱く我が喪に臨みしも、襄公二十八年、楚に如き、康王の喪に臨む。

孤與其二三臣、悼心失圖、在哀喪故。
【読み】
孤と其の二三臣と、心を悼ましめ圖を失い、哀喪に在る故なり。

社稷之不皇、況能懷思君德。皇、暇也。言有大喪多不暇。
【読み】
社稷だも皇[いとま]あらざれば、況んや能く君の德を懷思せんや。皇は、暇なり。言うこころは、大喪有りて暇あらざること多し。

今君若步玉趾、辱見寡君、趾、足也。
【読み】
今君若し玉趾を步ませ、辱く寡君を見て、趾は、足なり。

寵靈楚國、以信蜀之役、致君之嘉惠、是寡君旣受貺矣。何蜀之敢望。言但欲使君來。不敢望如蜀復有質子。○復、去聲。質、音致。下同。
【読み】
楚國を寵靈して、以て蜀の役を信にし、君の嘉惠を致さば、是れ寡君旣に貺を受けたるなり。何ぞ蜀を敢えて望まん。言うこころは、但君をして來らしめんと欲す。敢えて蜀の如く復質子有ることを望まず。○復は、去聲。質は、音致。下も同じ。

其先君鬼神實嘉賴之。豈唯寡君。君若不來、使臣請問行期。問魯見伐之期。
【読み】
其れ先君の鬼神實に之を嘉賴せん。豈唯寡君のみならんや。君若し來らずんば、使臣行期を請い問う。魯に伐たるるの期を問う。

寡君將承質幣而見于蜀、以請先君之貺。請、問也。○見、音現。
【読み】
寡君將に質幣を承けて蜀に見えて、以て先君の貺を請わんとす、と。請は、問うなり。○見は、音現。

公將往。夢襄公祖。祖、祭道神。
【読み】
公將に往かんとす。夢みらく、襄公祖す、と。祖は、道神を祭るなり。

梓愼曰、君不果行。襄公之適楚也、夢周公祖而行。今襄公實祖。君其不行。子服惠伯曰、行。先君未嘗適楚。故周公祖以道之。襄公適楚矣。而祖以道君。不行何之。
【読み】
梓愼[ししん]曰く、君行くことを果たさじ。襄公の楚に適きしや、周公祖すと夢みて行きぬ。今襄公實に祖す。君其れ行かざらん、と。子服惠伯曰く、行かん。先君は未だ嘗て楚に適かず。故に周公祖して以て之を道[みちび]きぬ。襄公は楚に適けり。而るに祖して以て君を道く。行かずして何に之かん。

三月、公如楚。鄭伯勞于師之梁。鄭城門。○勞、去聲。
【読み】
三月、公楚に如く。鄭伯師之梁に勞う。鄭の城門。○勞は、去聲。

孟僖子爲介。不能相儀。僖子、仲孫貜。○貜、倶縛反。
【読み】
孟僖子介爲り。儀を相くること能わず。僖子は、仲孫貜[ちゅうそんかく]。○貜は、倶縛反。

及楚。不能答郊勞。爲下僖子病不能相禮張本。
【読み】
楚に及ぶ。郊勞に答うること能わざりき。下の僖子禮を相くること能わざるを病む爲の張本なり。

夏、四月、甲辰、朔、日有食之。晉侯問於士文伯曰、誰將當日食。對曰、魯・衛惡之。受其凶惡。○惡之、如字。又去聲。
【読み】
夏、四月、甲辰、朔、日之を食する有り。晉侯士文伯に問いて曰く、誰か將に日食に當たらんとする、と。對えて曰く、魯・衛之に惡しからん。其の凶惡を受く。○惡之は、字の如し。又去聲。

衛大魯小。公曰、何故。對曰、去衛地、如魯地。衛地、豕韋也。魯地、降婁也。日食於豕韋之末、及降婁之始乃息。故禍在衛大、在魯小。周四月、今二月。故日在降婁。○降、戶江反。
【読み】
衛は大に魯は小ならん、と。公曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、衛の地を去りて、魯の地に如きぬ。衛の地は、豕韋なり。魯の地は、降婁なり。日豕韋の末に食して、降婁の始めに及びて乃ち息む。故に禍衛に在りては大、魯に在りては小。周の四月は、今の二月。故に日降婁に在り。○降は、戶江反。

於是有災、魯實受之。災發於衛、而魯受其餘禍。
【読み】
是に於て災有りて、魯實に之を受けん。災衛に發して、魯其の餘禍を受く。

其大咎、其衛君乎。魯將上卿。八月、衛侯卒、十一月、季孫宿卒。
【読み】
其の大咎は、其れ衛君か。魯は將に上卿ならんとす、と。八月、衛侯卒し、十一月、季孫宿卒す。

公曰、詩所謂彼日而食、于何不臧者、何也。感日食而問詩。
【読み】
公曰く、詩に所謂彼の日にして食するは、于[ここ]に何か臧からざるとは、何ぞや、と。日食に感じて詩を問う。

對曰、不善政之謂也。國無政、不用善、則自取謫于日月之災。謫、譴也。
【読み】
對えて曰く、政を善くせざるを謂うなり。國政無く、善を用いざれば、則ち自ら謫[せめ]を日月の災に取る。謫[たく]は、譴[せめ]なり。

故政不可不愼也。務三而已。一曰、擇人。擇賢人。
【読み】
故に政は愼まずんばある可からず。三つを務むるのみ。一に曰く、人を擇ぶ。賢人を擇ぶ。

二曰、因民。因民所利而利之。
【読み】
二に曰く、民に因る。民の利する所に因りて之を利す。

三曰、從時。順四時之所務。
【読み】
三に曰く、時に從う、と。四時の所務に順う。

晉人來治杞田。前女叔侯不盡歸。今公適楚、晉人恨。故復來治杞田。
【読み】
晉人來りて杞の田を治む。前に女叔侯盡くは歸さず。今公楚に適けば、晉人恨む。故に復來りて杞の田を治む。

季孫將以成與之。成、孟氏邑。本杞田。
【読み】
季孫將に成を以て之に與えんとす。成は、孟氏の邑。本杞の田。

謝息爲孟孫守。不可。謝息、僖子家臣。○爲、去聲。下同。守、音狩。守臣同。
【読み】
謝息孟孫が爲に守る。可[き]かず。謝息は、僖子の家臣。○爲は、去聲。下も同じ。守は、音狩。守臣も同じ。

曰、人有言曰、雖有挈缾之知、守不假器、禮也。挈缾、汲者。喩小知爲人守器、猶知不以借人。○知、音智。
【読み】
曰く、人言えること有り曰く、挈缾[けっぺい]の知有りと雖も、守りて器を假さずとは、禮なり。挈缾は、汲む者。小知にして人の爲に器を守るも、猶不以て人に借さざることを知るに喩う。○知は、音智。

夫子從君。而守臣喪邑、夫子、謂孟僖子從公如楚。○喪、去聲。
【読み】
夫子君に從えり。而るを守臣邑を喪わば、夫子は、孟僖子公に從いて楚に如くを謂う。○喪は、去聲。

雖吾子亦有猜焉。言季孫亦將疑我不忠。
【読み】
吾子と雖も亦猜[うたが]うこと有らん、と。言うこころは、季孫も亦將に我が不忠を疑わんとす。

季孫曰、君之在楚、於晉罪也。言晉罪君之至楚。
【読み】
季孫曰く、君の楚に在るは、晉に於ては罪なり。言うこころは、晉君の楚に至るを罪とす。

又不聽晉、魯罪重矣。晉師必至。吾無以待之。不如與之、閒晉而取諸杞。候晉閒隙、可復伐杞取之。○閒、如字。
【読み】
又晉に聽[ゆる]さずんば、魯の罪重し。晉の師必ず至らん。吾れ以て之を待つこと無し。如かじ、之に與え、晉を閒して諸を杞に取らんには。晉の閒隙を候[うかが]いて、復杞を伐ちて之を取る可し。○閒は、字の如し。

吾與子桃。魯國卞縣東南有桃虛。
【読み】
吾れ子に桃を與えん。魯國卞縣の東南に桃虛有り。

成反、誰敢有之。是得二成也。魯無憂而孟孫益邑、子何病焉。辭以無山。與之萊・柞。萊・柞、二山。○萊、音來。柞、子洛反。又音昨。
【読み】
成反らば、誰か敢えて之を有たん。是れ二成を得るなり。魯憂え無くして孟孫邑を益さば、子何ぞ病まん、と。辭するに山無きを以てす。之に萊・柞[さく]を與う。萊・柞は、二山。○萊は、音來。柞は、子洛反。又音昨。

乃遷于桃。謝息遷也。
【読み】
乃ち桃に遷る。謝息遷るなり。

晉人爲杞取成。不書、非公命。
【読み】
晉人杞の爲に成を取る。書さざるは、公命に非ざればなり。

楚子享公于新臺。章華臺也。
【読み】
楚子公を新臺に享す。章華臺なり。

使長鬣者相、鬣、鬚也。欲先夸魯侯。○鬣、力輒反。相、去聲。
【読み】
長鬣[ちょうりょう]の者をして相け、鬣は、鬚[ひげ]なり。先ず魯侯に夸[ほこ]らんと欲す。○鬣は、力輒反。相は、去聲。

好以大屈。宴好之賜。大屈、弓名。○好、呼報反。屈、居勿反。
【読み】
好するに大屈を以てす。宴好の賜。大屈は、弓の名。○好は、呼報反。屈は、居勿反。

旣而悔之。薳啓彊聞之、見公。公語之。拜賀。公曰、何賀。對曰、齊與晉・越欲此久矣。寡君無適與也、而傳諸君。君其備禦三鄰、言齊・晉・越、將伐魯而取之。○見、賢遍反。語、魚據反。適、丁歷反。
【読み】
旣にして之を悔ゆ。薳啓彊之を聞き、公に見ゆ。公之に語る。拜賀す。公曰く、何ぞ賀する、と。對えて曰く、齊と晉・越と此を欲すること久し。寡君適として與うること無くして、諸を君に傳えたり。君其れ三鄰に備禦して、言うこころは、齊・晉・越、將に魯を伐ちて之を取らんとす。○見は、賢遍反。語は、魚據反。適は、丁歷反。

愼守寶矣。敢不賀乎。公懼。乃反之。傳言楚靈不信、所以不終。
【読み】
愼みて寶を守れ。敢えて賀せざらんや、と。公懼る。乃ち之を反す。傳楚靈不信、終わらざる所以を言う。

鄭子產聘于晉。晉侯有疾。韓宣子逆客。私焉、私語。
【読み】
鄭の子產晉に聘す。晉侯疾有り。韓宣子客を逆う。私して、私語。

曰、寡君寢疾、於今三月矣。竝走羣望、晉所望祀山川、皆走往祈禱。
【読み】
曰く、寡君疾に寢ぬること、今に三月なり。竝に羣望に走れども、晉の望祀する所の山川、皆走り往きて祈禱す。

有加而無瘳。今夢黃熊入于寢門。其何厲鬼也。對曰、以君之明、子爲大政。其何厲之有。
【読み】
加うること有りて瘳[い]ゆること無し。今黃熊寢門に入ると夢む。其れ何の厲鬼ぞや、と。對えて曰く、君の明を以て、子大政を爲す。其れ何の厲か之れ有らん。

昔堯殛鯀于羽山、羽山、在東海祝其縣西南。○熊、音雄。獸名。亦作能。如字。一奴來反。三足鼈也。解者云、獸非入水之物。故知爲鼈也。說文云、能、熊屬。
【読み】
昔堯鯀を羽山に殛せしに、羽山は、東海祝其縣の西南に在り。○熊は、音雄。獸の名。亦能に作る。字の如し。一に奴來反。三足鼈なり。解者云う、獸の水に入るの物に非ず。故に鼈爲ることを知る、と。說文に云う、能は、熊の屬、と。

其神化爲黃熊、以入于羽淵、實爲夏郊、三代祀之。鯀、禹父。夏家郊祭之、歷殷・周二代、又通在羣神之數、幷見祀。
【読み】
其の神化して黃熊と爲りて、以て羽淵に入り、實に夏の郊と爲り、三代之を祀れり。鯀は、禹の父。夏家之を郊祭して、殷・周二代を歷て、又通じて羣神の數に在りて、幷に祀らる。

晉爲盟主、其或者未之祀也乎。言周衰晉爲盟主、得佐天子祀羣神。
【読み】
晉盟主と爲りて、其れ或は未だ之を祀らざるか、と。言うこころは、周衰え晉盟主と爲れば、天子を佐けて羣神を祀ることを得。

韓子祀夏郊。祀鯀。
【読み】
韓子夏の郊を祀る。鯀を祀る。

晉侯有閒。閒、差也。○差、初買反。
【読み】
晉侯閒[い]ゆること有り。閒は、差[い]ゆるなり。○差は、初買反。

賜子產莒之二方鼎。方鼎、莒所貢。
【読み】
子產に莒の二方鼎を賜う。方鼎は、莒の貢する所。

子產爲豐施歸州田於韓宣子、豐施、鄭公孫段之子。三年、晉以州田賜段。○爲、于僞反。
【読み】
子產豐施が爲に州の田を韓宣子に歸して、豐施は、鄭の公孫段の子。三年、晉州の田を以て段に賜う。○爲は、于僞反。

曰、日君以夫公孫段、爲能任其事、而賜之州田。今無祿早世、不獲久享君德。其子弗敢有。不敢以聞於君、私致諸子。此年正月、公孫段卒。○夫、音扶。任、音壬。下同。
【読み】
曰く、日に君夫の公孫段を以て、能く其の事に任えたりと爲して、之に州の田を賜えり。今無祿にして早世し、久しく君の德を享くることを獲ず。其の子敢えて有たず。敢えて君に以聞せずして、私に諸を子に致す、と。此の年の正月、公孫段卒す。○夫は、音扶。任は、音壬。下も同じ。

宣子辭。子產曰、古人有言曰、其父析薪、其子弗克負荷。荷、擔也。以微薄喩貴重。○荷、河可反。擔、丁甘反。
【読み】
宣子辭す。子產曰く、古人言えること有り曰く、其の父薪を析くに、其の子負荷すること克わず、と。荷は、擔うなり。微薄を以て貴重に喩う。○荷は、河可反。擔は、丁甘反。

施將懼不能任其先人之祿。其況能任大國之賜。縱吾子爲政而可、後之人若屬有疆埸之言、敝邑獲戾、恐後代宣子者、將以鄭取晉邑罪鄭。○屬、音燭。
【読み】
施將[はた]懼れらくは其の先人の祿に任うること能わざらんことを。其れ況んや能く大國の賜に任えんや。縱[たと]い吾子政を爲して可なりとするも、後の人若し疆埸[きょうえき]の言有るに屬[あた]らば、敝邑戾[つみ]を獲て、恐れらくは後の宣子に代わる者、將に鄭の晉の邑を取るを以て鄭を罪せんとすることを。○屬は、音燭。

而豐氏受其大討。吾子取州、是免敝邑於戾、而建置豐氏也。敢以爲請。傳言子產貞而不諒。
【読み】
豐氏其の大討を受けん。吾子州を取らば、是れ敝邑を戾に免れしめて、豐氏を建置するなり。敢えて以て請うことを爲す、と。傳子產貞にして諒ならざることを言う。

宣子受之、以告晉侯。晉侯以與宣子。宣子爲初言、病有之、初言、謂與趙文子爭州田。
【読み】
宣子之を受けて、以て晉侯に告ぐ。晉侯以て宣子に與う。宣子初めの言の爲に、之を有つことを病みて、初めの言とは、趙文子と州の田を爭いしを謂う。

以易原縣於樂大心。樂大心、宋大夫。原、晉邑。以賜樂大心。
【読み】
以て原縣に樂大心に易えぬ。樂大心は、宋の大夫。原は、晉の邑。以て樂大心に賜いしもの。

鄭人相驚以伯有曰、伯有至矣。則皆走、不知所往。襄三十年、鄭殺伯有。言其鬼至。
【読み】
鄭人相驚かすに伯有を以てして曰く、伯有至れり、と。則ち皆走りて、往く所を知らず。襄三十年、鄭伯有を殺せり。其の鬼の至るを言う。

鑄刑書之歲二月、在前年。
【読み】
刑書を鑄るの歲の二月、前年に在り。

或夢伯有介而行、介、甲也。
【読み】
或ひと夢みらく、伯有介して行きて、介は、甲なり。

曰、壬子、余將殺帶也。駟帶助子皙殺伯有。壬子、六年三月三日。
【読み】
曰く、壬子[みずのえ・ね]に、余將に帶を殺さんとす。駟帶子皙を助けて伯有を殺せり。壬子は、六年三月三日。

明年壬寅、余又將殺段也。公孫段、豐氏黨。壬寅、此年正月二十八日。
【読み】
明年壬寅[みずのえ・とら]に、余又將に段を殺さんとす、と。公孫段は、豐氏の黨。壬寅は、此の年の正月二十八日。

及壬子、駟帶卒。國人益懼。齊・燕平之月、此年正月。
【読み】
壬子に及び、駟帶卒す。國人益々懼る。齊・燕平らぐの月の、此の年の正月。

壬寅、公孫段卒。國人愈懼。其明月、子產立公孫洩及良止以撫之。乃止。公孫洩、子孔之子也。十九年、鄭殺子孔。良止、伯有子也。立以爲大夫、使有宗廟。
【読み】
壬寅、公孫段卒す。國人愈々懼る。其の明月、子產公孫洩と良止とを立てて以て之を撫づ。乃ち止みぬ。公孫洩は、子孔の子なり。十九年、鄭子孔を殺す。良止は、伯有の子なり。立てて以て大夫と爲して、宗廟有らしむ。

子大叔問其故。子產曰、鬼有所歸、乃不爲厲。吾爲之歸也。大叔曰、公孫洩何爲。子孔不爲厲。問何爲復立洩。
【読み】
子大叔其の故を問う。子產曰く、鬼は歸する所有れば、乃ち厲を爲さず。吾れ之が歸を爲せり、と。大叔曰く、公孫洩は何爲れぞ、と。子孔厲を爲さず。問う、何爲れぞ復洩を立てたる、と。

子產曰、說也。爲身無義而圖說。伯有無義、以妖鬼。故立之、恐惑民。幷立洩、使若自以大義存誅絕之後者、以解說民心。○說、如字。下同。又始銳反。
【読み】
子產曰く、說ばんとなり。身の義無きが爲にして說ばんことを圖れり。伯有は義無く、妖鬼を以てす。故に之を立てば、恐れらくは民を惑わせんことを。幷せて洩を立てて、自ら大義を以て誅絕の後を存する者の若くならしむるは、民心を解說するを以てなり。○說は、字の如し。下も同じ。又始銳反。

從政、有所反之以取媚也。民不可使知之。故治政、或當反道以求媚於民。
【読み】
政に從うには、之に反して以て媚を取る所有るなり。民は之を知らしむ可からず。故に政を治むるに、或は當に道に反して以て媚を民に求むるべし。

不媚不信、說而後信之。
【読み】
媚びざれば信ぜず、說びて後に之を信ず。

不信、民不從也。
【読み】
信ぜざれば、民從わざるなり、と。

及子產適晉、趙景子問焉、景子、晉中軍佐、趙成。
【読み】
子產が晉に適くに及びて、趙景子問いて、景子は、晉の中軍の佐、趙成。

曰、伯有猶能爲鬼乎。子產曰、能。人生、始化曰魄。魄、形也。
【読み】
曰く、伯有猶能く鬼を爲さんか、と。子產曰く、能くせん。人の生、始めて化するを魄と曰う。魄は、形なり。

旣生魄。陽曰魂。陽、神氣也。
【読み】
旣に魄を生ず。陽を魂と曰う。陽は、神氣なり。

用物精多、則魂魄强。物、權勢。
【読み】
物を用いて精多ければ、則ち魂魄强し。物は、權勢。

是以有精爽、至於神明。爽、明也。
【読み】
是を以て精爽有りて、神明に至りぬ。爽は、明らかなり。

匹夫匹婦强死、其魂魄猶能馮依於人、以爲淫厲。强死、不病也。人、謂匹夫匹婦賤身。○强、其丈反。下同。
【読み】
匹夫匹婦も强死すれば、其の魂魄猶能く人に馮依して、以て淫厲を爲せり。强死とは、病まざるなり。人は、匹夫匹婦の賤身を謂う。○强は、其丈反。下も同じ。

況良霄、我先君穆公之冑、子良之孫、子耳之子、敝邑之卿、從政三世矣。鄭雖無腆、腆、厚也。○子良公子去疾生子耳公孫輒、輒生伯有良霄。三世爲鄭卿。
【読み】
況んや良霄[りょうしょう]は、我が先君穆公の冑、子良の孫、子耳の子、敝邑の卿にして、政に從うこと三世なり。鄭無腆なりと雖も、腆は、厚きなり。○子良公子去疾子耳公孫輒[こうそんちょう]を生み、輒伯有良霄を生む。三世鄭の卿爲り。

抑諺曰、蕞爾國。蕞、小貌。○蕞、在最反。
【読み】
抑々諺に曰く、蕞爾[さいじ]たるも國なり、と。蕞は、小さき貌。○蕞は、在最反。

而三世執其政柄。其用物也弘矣。其取精也多矣。其族又大、所馮厚矣。良霄魂魄所馮者貴重。
【読み】
而るに三世其の政柄を執れり。其の物を用ゆるや弘し。其の精を取るや多し。其の族又大にして、馮[よ]る所厚し。良霄が魂魄の馮る所の者貴重なり。

而强死。能爲鬼、不亦宜乎。傳言子產之博敏。
【読み】
而して强死す。能く鬼を爲すこと、亦宜ならずや、と。傳子產の博敏を言う。

子皮之族、飮酒無度。相尙以奢、相困以酒。
【読み】
子皮の族、酒を飮みて度無し。相尙ぶるに奢を以てし、相困しむるに酒を以てす。

故馬師氏與子皮氏有惡。馬師氏、公孫鉏之子、罕朔也。襄三十年、馬師頡出奔。公孫鉏代之爲馬師。與子皮倶同一族。
【読み】
故に馬師氏子皮氏と惡むこと有り。馬師氏は、公孫鉏[こうそんしょ]の子、罕朔なり。襄三十年、馬師頡[ばしけつ]出奔す。公孫鉏之に代わりて馬師と爲る。子皮と倶に同一族なり。

齊師還自燕之月、在此年二月。
【読み】
齊の師燕より還るの月、此の年の二月に在り。

罕朔殺罕魋。魋、子皮弟。
【読み】
罕朔罕魋[かんたい]を殺す。魋は、子皮の弟。

罕朔奔晉。韓宣子問其位於子產。問朔可使在何位。
【読み】
罕朔晉に奔る。韓宣子其の位を子產に問う。朔何れの位に在らしむ可きやと問う。

子產曰、君之羈臣、苟得容以逃死、何位之敢擇。卿違從大夫之位、謂以禮去者、降位一等。
【読み】
子產曰く、君の羈臣、苟も容れられて以て死を逃るることを得ば、何の位をか敢えて擇ばん。卿の違[さ]るは大夫の位に從い、禮を以て去る者は、位一等を降すを謂う。

罪人以其罪降。罪重則降多。
【読み】
罪人は其の罪を以て降す。罪重ければ則ち降すこと多し。

古之制也。朔於敝邑、亞大夫也。其官馬師也。大夫位、馬師職。
【読み】
古の制なり。朔が敝邑に於るは、亞大夫なり。其の官は馬師なり。大夫は位、馬師は職。

獲戾而逃。唯執政所寘之。得免其死、爲惠大矣。又敢求位。宣子爲子產之敏也、使從嬖大夫。爲子產故、使降一等、不以罪降。○爲子、于僞反。
【読み】
戾を獲て逃げたり。唯執政の之を寘く所のままなり。其の死を免るることを得ば、惠爲ること大なり。又敢えて位を求めんや、と。宣子子產の敏なるが爲に、嬖大夫に從わしむ。子產が爲の故に、一等を降さしめ、罪を以て降さず。○爲子は、于僞反。

秋、八月、衛襄公卒。
【読み】
秋、八月、衛の襄公卒す。

晉大夫言於范獻子曰、衛事晉爲睦。睦、和也。
【読み】
晉の大夫范獻子に言いて曰く、衛の晉に事うること睦まじと爲す。睦は、和なり。

晉不禮焉、庇其賊人而取其地。賊人、孫林父。其地、戚也。
【読み】
晉禮せずして、其の賊人を庇いて其の地を取れり。賊人は、孫林父。其の地は、戚なり。

故諸侯貳。詩曰、鶺鴒在原、兄弟急難。詩、小雅。鶺鴒、雝渠也。飛則鳴、行則搖。喩兄弟相救於急難不可自舍。○難、如字。又乃旦反。
【読み】
故に諸侯貳あり。詩に曰く、鶺鴒原に在り、兄弟急難あり、と。詩は、小雅。鶺鴒は、雝渠[ようきょ]なり。飛べば則ち鳴き、行けば則ち搖らぐ。兄弟急難に相救いて自ら舍つ可からざるに喩う。○難は、字の如し。又乃旦反。

又曰、死喪之威、兄弟孔懷。威、畏也。言有死喪、則兄弟宜相懷思。
【読み】
又曰く、死喪の威[おそ]れは、兄弟孔[はなは]だ懷[おも]え、と。威は、畏れなり。言うこころは、死喪有れば、則ち兄弟宜しく相懷思すべし。

兄弟之不睦、於是乎不弔。不相弔恤。
【読み】
兄弟の睦まじからざるも、是に於て弔まず。相弔恤せず。

況遠人誰敢歸之。今又不禮於衛之嗣、嗣、新君也。
【読み】
況んや遠人誰か敢えて之に歸せん。今又衛の嗣に禮あらずんば、嗣は、新君なり。

衛必叛我。是絕諸侯也。獻子以告韓宣子。宣子說、使獻子如衛弔、且反戚田。傳言戚田所由還衛。○說、音悅。
【読み】
衛必ず我に叛かん。是れ諸侯を絕つなり、と。獻子以て韓宣子に告ぐ。宣子說び、獻子をして衛に如きて弔し、且つ戚の田を反さしむ。傳戚の田の由りて衛に還る所を言う。○說は、音悅。

衛齊惡告喪于周、且請命。王使成簡公如衛弔、簡公、王卿士也。
【読み】
衛の齊惡喪を周に告げ、且つ命を請う。王成簡公をして衛に如きて弔し、簡公は、王の卿士なり。

且追命襄公曰、叔父陟恪、在我先王之左右、以佐事上帝。陟、登也。恪、敬也。帝、天也。叔父、謂襄公。命、如今之哀策。
【読み】
且つ襄公に追命せしめて曰く、叔父陟恪[ちょくかく]して、我が先王の左右に在りて、以て佐けて上帝に事れり。陟は、登るなり。恪は、敬なり。帝は、天なり。叔父は、襄公を謂う。命は、今の哀策の如し。

余敢忘高圉・亞圉。二圉、周之先也。爲殷諸侯。亦受殷王追命者。
【読み】
余敢えて高圉・亞圉を忘れんや、と。二圉は、周の先なり。殷の諸侯と爲る。亦殷王の追命を受くる者なり。

九月、公至自楚。孟僖子病不能相禮、不能相儀荅郊勞。以此爲己病。
【読み】
九月、公楚より至る。孟僖子禮を相くること能わざりしを病みて、儀を相け郊勞に荅うること能わず。此を以て己が病と爲す。

乃講學之、講、習也。
【読み】
乃ち之を講學し、講は、習うなり。

苟能禮者從之。
【読み】
苟も禮を能くする者には之に從えり。

及其將死也、二十四年、孟僖子卒。傳終言之。
【読み】
其の將に死なんとするに及びて、二十四年、孟僖子卒す。傳之を終え言う。

召其大夫、僖子屬大夫。
【読み】
其の大夫を召して、僖子の屬大夫。

曰、禮、人之幹也。無禮無以立。吾聞將有達者。曰孔丘。僖子卒時、孔丘年三十五。
【読み】
曰く、禮は、人の幹なり。禮無ければ以て立つこと無し。吾れ聞く、將に達者有らんとす。孔丘と曰う。僖子卒する時、孔丘年三十五。

聖人之後也、聖人、殷湯。
【読み】
聖人の後にして、聖人は、殷湯。

而滅於宋。孔子六代祖孔父嘉爲宋督所殺。其子奔魯。
【読み】
宋に滅びたり。孔子六代の祖孔父嘉宋督の爲に殺さる。其の子魯に奔る。

其祖弗父何以有宋而授厲公、弗父何、孔父嘉之高祖。宋閔公之子、厲公之兄。何、適嗣。當立、以讓厲公。
【読み】
其の祖弗父何は宋を有つべきを以て厲公に授け、弗父何は、孔父嘉の高祖。宋の閔公の子、厲公の兄。何は、適嗣。當に立つべきを、以て厲公に讓れり。

及正考父、弗父何之曾孫。
【読み】
正考父に及びて、弗父何の曾孫。

佐戴・武・宣、三人皆宋君。
【読み】
戴・武・宣を佐けて、三人は皆宋の君。

三命茲益共。三命、上卿也。言位高益共。
【読み】
三命せられて玆益[ますます]共なり。三命は、上卿なり。言うこころは、位高くして益々共なり。

故其鼎銘云、考父廟之鼎。
【読み】
故に其の鼎銘に云う、考父が廟の鼎。

一命而僂、再命而傴、三命而俯、俯共於傴。傴共於僂。○僂、力主反。傴、紆羽反。
【読み】
一命せられて僂[る]し、再命せられて傴[う]し、三命せられて俯し、俯は傴より共なり。傴は僂より共なり。○僂は、力主反。傴は、紆羽反。

循牆而走。言不敢安行。
【読み】
牆に循いて走る。言うこころは、敢えて安行せず。

亦莫余敢侮。其共如是、人亦不敢侮之。
【読み】
亦余を敢えて侮ること莫けん。其の共是の如くならば、人も亦敢えて之を侮らじ。

饘於是、鬻於是、以餬余口。於是鼎中爲饘・鬻。饘・鬻、糊屬。言至儉。○饘、之然反。鬻、之六反。
【読み】
是に饘[せん]し、是に鬻[しゅく]し、以て余が口に餬[こ]せん、と。是の鼎中に於て饘・鬻を爲る。饘・鬻は、糊の屬。至儉を言う。○饘は、之然反。鬻は、之六反。

其共也如是。臧孫紇有言、紇、武仲也。
【読み】
其の共や是の如し。臧孫紇[ぞうそんこつ]言えること有り、紇は、武仲なり。

曰、聖人有明德者、若不當世、其後必有達人。聖人之後有明德、而不當大位、謂正考父。
【読み】
曰く、聖人の明德有る者にして、若し世に當たらざれば、其の後必ず達人有り、と。聖人の後にして明德有りて、大位に當たらずとは、正考父を謂う。

今其將在孔丘乎。我若獲沒、得以壽終。
【読み】
今其れ將に孔丘に在らんとするか。我れ若し沒することを獲ば、壽を以て終わることを得。

必屬說與何忌於夫子、使事之、說、南宮敬叔。何忌、孟懿子。皆僖子之子。○屬、音燭。說、音悅。
【読み】
必ず說と何忌とを夫子に屬して、之に事えて、說は、南宮敬叔。何忌は、孟懿子。皆僖子の子。○屬は、音燭。說は、音悅。

而學禮焉、以定其位。知禮則位安。
【読み】
禮を學ばしめて、以て其の位を定めよ、と。禮を知れば則ち位安し。

故孟懿子與南宮敬叔師事仲尼。
【読み】
故に孟懿子と南宮敬叔とを仲尼に師とし事えり。

仲尼曰、能補過者、君子也。詩曰、君子是則是效。詩、小雅。
【読み】
仲尼曰く、能く過ちを補う者は、君子なり。詩に曰く、君子に是れ則り是れ效う、と。詩は、小雅。

孟僖子可則效已矣。
【読み】
孟僖子は則り效う可きのみ、と。

單獻公弃親用羈。獻公、周卿士、單靖公之子、頃公之孫。羈、寄客也。○單、音善。
【読み】
單獻公親を弃てて羈を用ゆ。獻公は、周の卿士、單靖公の子、頃公の孫。羈は、寄客なり。○單は、音善。

冬、十月、辛酉、襄・頃之族、殺獻公而立成公。襄公、頃公之父。成公、獻公弟。○頃、音傾。
【読み】
冬、十月、辛酉[かのと・とり]、襄・頃の族、獻公を殺して成公を立つ。襄公は、頃公の父。成公は、獻公の弟。○頃は、音傾。

十一月、季武子卒。晉侯謂伯瑕、伯瑕、士文伯。
【読み】
十一月、季武子卒す。晉侯伯瑕に謂いて、伯瑕は、士文伯。

曰、吾所問日食從矣。可常乎。衛侯・武子皆卒故。
【読み】
曰く、吾が問う所の日食從えり。常とす可きか、と。衛侯・武子皆卒する故なり。

對曰、不可。六物不同、各異時。
【読み】
對えて曰く、不可なり。六物同じからず、各々時を異にす。

民心不壹、敎政殊。
【読み】
民心壹ならず、敎政殊にす。

事序不類、有變易。
【読み】
事序類せず、變易有り。

官職不則。治官居職非一法。
【読み】
官職則あらず。官を治め職に居ること一法に非ず。

同始異終。胡可常也。詩曰、或燕燕居息、或憔悴事國。詩、小雅。言不同。○憔、在遙反。詩作盡。
【読み】
始めを同じくするも終わりを異にす。胡ぞ常とす可けんや。詩に曰く、或は燕燕として居息し、或は憔悴して國に事うる、と。詩は、小雅。同じからざるを言う。○憔は、在遙反。詩は盡に作る。

其異終也如是。公曰、何謂六物。對曰、歲時日月星辰是謂也。公曰、多語寡人辰、而莫同。何謂辰。對曰、日月之會是謂辰。一歲日月十二會。所會謂之辰。○語、魚據反。
【読み】
其の終わりを異にするや是の如し、と。公曰く、何をか六物と謂うや、と。對えて曰く、歲時日月星辰是を謂うなり、と。公曰く、多く寡人に辰を語りて、而れども同じきこと莫し。何をか辰と謂うや、と。對えて曰く、日月の會是を辰と謂う。一歲に日月十二會す。會する所之を辰と謂う。○語は、魚據反。

故以配日。謂以子丑配甲乙。
【読み】
故に以て日に配す、と。子丑を以て甲乙に配するを謂う。

衛襄公夫人姜氏無子。姜氏、宣姜。
【読み】
衛の襄公の夫人姜氏子無し。姜氏は、宣姜。

嬖人婤姶生孟縶。孔成子夢康叔謂己、立元。成子、衛卿、孔達之孫、烝鉏也。元、孟縶弟。夢時元未生。○婤、音周。又直周反。姶、烏荅反。縶、張立反。
【読み】
嬖人婤姶[しゅうおう]孟縶[もうちゅう]を生む。孔成子夢みらく、康叔己に謂う、元を立てよ。成子は、衛の卿、孔達の孫、烝鉏[じょうしょ]なり。元は、孟縶の弟。夢みる時元未だ生まれず。○婤は、音周。又直周反。姶は、烏荅反。縶は、張立反。

余使羈之孫圉與史苟相之。羈、烝鉏子。苟、史朝子。
【読み】
余羈の孫圉と史苟とをして之を相けしめん、と。羈は、烝鉏の子。苟は、史朝の子。

史朝亦夢康叔謂己、余將命而子苟與孔烝鉏之曾孫圉相元。史朝見成子告之夢。夢協。協、合也。
【読み】
史朝も亦夢みらく、康叔己に謂う、余將に而[なんじ]の子苟と孔烝鉏[こうじょうしょ]の曾孫圉とに命じて元を相けんとす、と。史朝成子を見て之に夢を告ぐ。夢協[あ]えり。協は、合うなり。

晉韓宣子爲政、聘于諸侯之歲、在二年。
【読み】
晉の韓宣子政を爲して、諸侯に聘するの歲、二年に在り。

婤姶生子。名之曰元。孟縶之足不良。弱行。跛也。
【読み】
婤姶子を生む。之を名づけて元と曰う。孟縶が足不良なり。行くに弱し。跛なり。
*頭注に、「不良句、按弱、一作能。三足鼈曰能。」とある。

孔成子以周易筮之、曰、元尙享衛國、主其社稷。令蓍辭。
【読み】
孔成子周易を以て之を筮して、曰く、元尙わくは衛國を享け、其の社稷を主らん、と。蓍に令するの辭。

遇屯震下坎上、屯。
【読み】
屯[ちゅん]に遇う。震下坎上は、屯。

又曰、余尙立縶。尙克嘉之。嘉、善也。
【読み】
又曰く、余尙わくは縶を立てん。尙わくは克く之より嘉からん、と。嘉は、善きなり。

遇屯之比坤下坎上、比。屯初九爻變。○比、音鼻。
【読み】
の比に之くに遇う。坤下坎上は、比。屯の初九の爻變ず。○比は、音鼻。

以示史朝。史朝曰、元亨。又何疑焉。周易曰、屯、元亨。
【読み】
以て史朝に示す。史朝曰く、元は亨るという。又何ぞ疑わん、と。周易に曰く、屯は、元いに亨る、と。

成子曰、非長之謂乎。言屯之元亨謂年長。非謂名元。○長、丁丈反。下同。
【読み】
成子曰く、長を謂うに非ずや、と。言うこころは、屯の元亨は年の長を謂う。名の元を謂に非ず。○長は、丁丈反。下も同じ。

對曰、康叔名之。可謂長矣。善之長也。
【読み】
對えて曰く、康叔之を名づく。長と謂う可し。善の長なり。

孟非人也。將不列於宗。不可謂長。足跛非全人。不可列爲宗主。
【読み】
孟は人に非ざるなり。將に宗に列ならざらんとす。長と謂う可からず。足跛は全人に非ず。列なりて宗主と爲る可からず。

且其繇曰、利建侯。繇、卦辭。○繇、直又反。
【読み】
且つ其の繇[ちゅう]に曰く、建てて侯とするに利あり、と。繇は、卦の辭。○繇は、直又反。

嗣吉何建。建非嗣也。嗣子有常位。故無所卜、又無所建。今以位不定、卜嗣得吉、則當從吉而建之也。
【読み】
嗣吉ならば何ぞ建てん。建つるとは嗣に非ざるなり。嗣子は常位有り。故に卜する所無く、又建つる所無し。今位定まらざるを以て、嗣を卜して吉を得ば、則ち當に吉に從いて之を建つべし。

二卦皆云。謂再得屯卦、皆有建侯之文。
【読み】
二卦に皆云う。再び屯卦を得て、皆建侯の文有るを謂う。

子其建之。康叔命之、二卦告之。筮襲於夢、武王所用也。弗從何爲。外傳云、大誓曰、朕夢協朕卜、襲於休祥。戎商必克。此武王辭。
【読み】
子其れ之を建てよ。康叔之を命じ、二卦之を告ぐ。筮夢に襲[かな]えるは、武王の用いし所なり。從わずして何をかせん。外傳に云う、大誓に曰く、朕が夢朕が卜に協い、休祥を襲[かさ]ぬ。商を戎せば必ず克たん、と。此れ武王の辭なり。

弱足者居。跛則偏弱。居其家不能行。
【読み】
弱足の者は居る。跛は則ち偏弱。其の家に居りて行くこと能わず。

侯主社稷、臨祭祀、奉民人、事鬼神、從會朝。又焉得居。各以所利、不亦可乎。孟跛利居。元吉利建。
【読み】
侯は社稷を主り、祭祀に臨み、民人を奉じ、鬼神に事え、會朝に從う。又焉ぞ居ることを得ん。各々利ある所を以てする、亦可ならずや、と。孟の跛は居るに利あり。元の吉は建つるに利あり。

故孔成子立靈公。十二月、癸亥、葬衛襄公。靈公、元也。
【読み】
故に孔成子靈公を立つ。十二月、癸亥、衛の襄公を葬る。靈公は、元なり。



經四年。爲齊。于僞反。
傳。有難。乃旦反。下及注同。驩。喚端反。虞度。待洛反。侈。昌氏反。又尺氏反。逞。勑景反。所相。息亮反。注同。不殆。直改反。簒。初患反。殺。申志反。○今本弑。何郷。本又作嚮。四嶽。音岳。岱。音代。○今本泰。以亨。許庚反。注同。其疆。居良反。以喪。息浪反。下同。衛邢。音刑。紂。直九反。以隕。于敏反。許楚使。所吏反。叔向。許丈反。將焉。於虔反。注同。偪。彼力反。可禦。魚呂反。下誰能禦之同。謂夏。戶雅反。下同。西陸朝。如字。注同。覿。徒歷反。在昴。音卯。蟄蟲。直立反。下除中反。奎星。苦圭反。沍寒。戶故反。以道。音導。秬黍。音巨。玄冥。亡丁反。桃弧。音胡。以禳。如羊反。凶邪。似嗟反。喪浴。音欲。祭寒而藏之。本或作祭司寒者非。祭韭。音九。輿人。音餘。風壯。側亮反。也徧。音遍。無愆。起虔反。凄風。七西反。霖雨。音林。震霆。音亭。又音挺。又音亭佞反。無菑。音災。下同。癘疾。音例。夭札。字林作。壯列反。而殺。如字。又色界反。徐色例反。豳風。彼貧反。鑿。在洛反。沖沖。直忠反。凌陰。一音陵。其蚤。音早。夏啓。戶雅反。注放此。鈞臺。音均。臺陂。彼宜反。景亳。步各反。鞏縣。九勇反。盟津。音孟。○今本孟。岐陽。其宜反。之蒐。所求反。酆宮。芳弓反。召陵。上照反。公孫僑。其驕反。善相。息亮反。言爲。于僞反。爲仍。而承反。有緡。亡巾反。爲黎。力兮反。播於。徐云、字或作幡。敷袁反。焉用之。於虔反。斧鉞。音越。以徇。似俊反。崔杼。直呂反。楚共。音恭。輿櫬。初覲反。棺也。造於。七報反。所將。子匠反。下將帥同。釋其縛。如字。舊扶臥反。爲許。于僞反。與爭。爭鬭之爭。去疾。起呂反。潰散。戶對反。將帥。所類反。重發。直用反。罕。徐許但反。於涼。音良。徐音亮。沈尹射。一音夜。於夏。戶雅反。注同。汭。如銳反。宜咎。其九反。啓彊。其良反。又居良反。罷賴。徐甫綺反。娶於。七住反。天壓。一音於輒反。而猳。○今本豭。從者。才用反。志識。一音式。饋之。求位反。餉也。始見。賢遍反。下接見同。子長。丁丈反。下同。爲豎。上注反。取之。一音如字。釁鍾。許覲反。○今本鍾作鐘。使拘。音倶。萊書。音來。杜泄。○今本洩。使寘。之豉反。本或作奠。于个。古賀反。謂廟屋。廂也。本又作箱。○今本無也字。令空。力呈反。牛賂。音路。使惡。烏路反。葬焉。於虔反。下將焉用同。介卿。音界。左乎。如字。注同。舊音佐。不便。婢面反。以媚。眉冀反。
經五年。牟夷。亡侯反。姑幕。亡博反。
傳。臧氏。子郎反。復以。扶又反。於殯。必刃反。之柩。其又反。僖閎。音宏。詛諸。側慮反。之衢。其倶反。擲地。直亦反。○今本地作也。不以壽。音授。中目。丁仲反。殺適。丁歷反。本又作嫡。析也。星歷反。死語。魚據反。德行。下孟反。注同。坤上。苦門反。艮下。古恨反。以餒。奴罪反。餓也。爲輿。音餘。爲僚。力彫反。晡時。布吳反。禺中。遇倶反。○今本隅。有應。應對之應。謙下。如字。又遐嫁反。避難。乃旦反。○今本避作辟。有攸。音由。牝牛。頻忍反。舊扶死反。子產相。息亮反。其使。所吏反。往見。賢遍反。贈賄。呼罪反。女叔齊。音汝。焉知。於虔反。子家羈。居宜反。奸大國。音干。取鄆。音運。無爲。于僞反。屑屑。先結反。以亟。紀力反。以此諷。本亦作風。音同。爲介。音界。子大叔。音泰。焉能。於虔反。道之。音導。其好。呼報反。吾仇。音求。爲閽。音昬。刖足。音月。又五刮反。有璋。音章。享饗。竝許丈反。鄭服皆以享爲獻耳。君使。所吏反。述職。述其所治國之功職也。巡功。巡所守之功績。巡守。手又反。設机。音几。不倚。於綺反。陪鼎。薄廻反。徐扶杯反。城濮。音卜。重之以睦。直用反。姻親。音因。知盈。音智。之將。子匠反。輔櫟。本又作躒。○今本亦躒。苗賁皇。扶云反。而使。所吏反。注及下注同。韓賦七邑。韓襄起之兄子、箕襄・邢帶二人、韓氏族、韓須・叔禽・叔椒・子羽四人、皆韓起子、凡七人、人一邑。百乘。繩證反。下皆同。羊舌四族。見注不錄。多知。一音智。娶於。七住反。自爲。于僞反。驟見。仕救反。愬于。悉路反。惰。徒臥反。未陳。直覲反。故重。直用反。於瑣。素果反。○今本於作于。遽不。其據反。鵲岸。五旦反。傳也。中戀反。犒師。苦報反。以釁。許覲反。余亟。紀力反。使臣。所吏反。下竝同。馮怒。徐敷冰反。脩完。音丸。以禦。魚呂反。一否。舊方有反。萊山。音來。觀兵。舊音官。讀爾雅者皆官喚反。注同。雩。徐況于反。如淳同。韋昭音虛。婁。如淳音樓。五稔。而甚反。
經六年。合比。一音毗志反。
傳。鑄刑。之樹反。使詒。以之反。有爭。爭鬭之爭。注及下皆同。禁禦。魚呂反。聳之。息勇反。說以。音悅。莅之。音利。又音類。今本涖。之長。丁丈反。而儌。本又作邀。其巧。如字。又苦孝反。夏有。戶雅反。注同。相鄭。息亮反。立謗。布浪反。參辟。七南反。一音三。日靖。音靜。錐刀。音追。盡爭。此一字如字。數改。所角反。見鍼。之林反。○今本箴。火見。賢遍反。注同。求貺。音況。爲驩。音歡。寺人。本又作侍。柳。良久反。盟處。昌慮反。下同。女夫。方于反。注同。毋俾。必爾反。諸柤。側加反。芻。初倶反。采樵。似遙反。下同。○今本采作採。不抽。勑留反。不强。其丈反。又其良反。匃。本或作丐。乞也。說文作匃云、乞也。逯安說亡人爲匃。廢黜。勑律反。楚僻。○今本辟。下僻邪・效僻同。僻邪。似嗟反。效僻。戶孝反。下同。焉用。於虔反。侯悅。音悅。薳泄。息列反。○今本洩。乾谿。苦兮反。城父。音甫。宮廐。九又反。士匃。本或作丐。相。息亮反。注同。士鞅。於丈反。今傳本皆作士匃相士鞅。古本士匃或作王正。學者皆以士匃是范宣子、卽士鞅之父、王正爲是。王元規云、古人質、口不言之耳。何妨爲介也。案士文伯是士鞅之族。亦名匃。無妨。今相范鞅卽文伯也。然士文伯名、古本或有作正者。解見前卷襄三十一年。爲介。音界。左右諂。勑檢反。諛。羊朱反。
經七年。曁齊。其器反。傳同。不重。直用反。舊好。呼報反。
傳。于虢。瓜百反。燕竟。音境。瑤。音遙。罋。烏送反。徐於容反。玉櫝。徒木反。公孫皙。星歷反。徐思益反。俟釁。許覲反。濡上。一音而。又而于二反。鄚縣。音莫。本又作莫。斝耳。禮記、夏曰醆、殷曰斝、周曰爵。說文、斝從斗。匱也。其位反。王旌。音精。析羽。星歷反。於軫。之刃反。封疆。居良反。下同。定分。扶問反。溥天。音普。毛傳云、大也。今之左氏傳本或作普。○今本亦普。之濱。音賓。濱涯。五佳反。有圉。魚呂反。女胡。音汝。將焉。於虔反。荒閱。音悅。閱蒐。所求反。萃。在醉反。以輯。一音七入反。失隕。于敏反。傳序。直專反。郟敖。古洽反。質子。一音如字。使臣。所吏反。質幣。音至。徐之二反。又如字。而見。賢遍反。以道之。音導。下同。爲介。音界。相儀。息亮反。仲孫貜。一音倶碧反。惡之。一音烏路反非也。大咎。其九反。取謫。直革反。譴也。遣戰反。故復。扶又反。下復伐同。孫守。手又反。挈。苦結反。缾。蒲丁反。汲者。音急。以借。子夜反。有猜。七才反。桃虛。起居反。鬚。音須。先夸。苦華反。大屈。服云、大曲也。賈云、寶金。可以爲劒出大屈地。而傳。直專反。祈禱。丁浪反。一音丁報反。無瘳。勑留反。堯殛。紀力反。誅也。本又作極。音義同。鯀。古本反。夏郊。戶雅反。注及下同。析薪。星歷反。負荷。本亦作何。有疆。居良反。埸。音亦。介而。音界。公孫泄。息列反。○今本洩。復立。扶又反。治政。直吏反。說而後信。音悅。曰魄。普白反。馮依。皮冰反。注同。之冑。直又反。無腆。他典反。政柄。彼命反。公孫鉏。仕居反。馬師頡。戶結反。罕魋。徒回反。所寘。之豉反。從嬖。必計反。庇其。必利反。又音祕。■(上が卽で下が鳥)。本又作卽。精又反。○今本鶺。鴒。本又作令。力丁反。行則搖。音遙。又以照反。還衛。音環。陟恪。苦各反。高圉。魚呂反。孟僖子病不能禮。本或作病不能相禮。相音息亮反。○今本亦病不能相禮。相儀。息亮反。郊勞。力報反。適嗣。丁歷反。敢侮。亡甫反。鬻。孫炎云、淖麋也。以餬。音胡。婤。徐勑周反。烝鉏。之承反。使羈。居宜反。相之。息亮反。下同。史朝。如字。跛也。浪我反。遇屯。張倫反。之比。毗志反。注同。元亨。許庚反。注元亨皆同。康叔名之。如字。徐武政反。嗣吉何建。本或作可建。又焉。於虔反。

春秋左氏傳校本第二十二

昭公 起八年盡十二年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
八年、春、陳侯之弟招殺陳世子偃師。以首惡從殺例。故稱弟、又稱世子。○招、常遙反。
【読み】
〔經〕八年、春、陳侯の弟招陳の世子偃師を殺す。首惡を以て殺の例に從う。故に弟と稱し、又世子と稱す。○招は、常遙反。

夏、四月、辛丑、陳侯溺卒。襄二十七年、大夫盟于宋。○溺、乃歷反。
【読み】
夏、四月、辛丑[かのと・うし]、陳侯溺卒す。襄二十七年、大夫宋に盟う。○溺は、乃歷反。

叔弓如晉。楚人執陳行人干徵師殺之。稱行人、明非行人罪。
【読み】
叔弓晉に如く。楚人陳の行人干徵師を執えて之を殺す。行人と稱するは、行人の罪に非ざるを明らかにするなり。

陳公子留出奔鄭。留爲招所立、未成君而出奔。
【読み】
陳の公子留出でて鄭に奔る。留招の爲に立てられ、未だ君と成らずして出奔す。

秋、蒐于紅。革車千乘、不言大者、經文闕也。紅、魯地。沛國蕭縣西有紅亭。遠疑。○沛、音貝。
【読み】
秋、紅に蒐す。革車千乘、大いにと言わざるは、經文の闕けたるなり。紅は、魯の地。沛國蕭縣の西に紅亭有り。遠ければ疑わし。○沛は、音貝。

陳人殺其大夫公子過。與招共殺偃師。書名罪之。○過、古禾反。
【読み】
陳人其の大夫公子過を殺す。招と共に偃師を殺す。名を書すは之を罪するなり。○過は、古禾反。

大雩。無傳。不旱而秋雩、過也。
【読み】
大いに雩[う]す。傳無し。旱せずして秋雩するは、過てるなり。

冬、十月、壬午、楚師滅陳。不稱將帥、不以告。壬午、月十八日。
【読み】
冬、十月、壬午[みずのえ・うま]、楚の師陳を滅ぼす。將帥を稱せざるは、以て告げざればなり。壬午は、月の十八日。

執陳公子招、放之于越。無傳。復稱公子、兄已卒。○復、扶又反。
【読み】
陳の公子招を執えて、之を越に放つ。傳無し。復公子と稱するは、兄已に卒すればなり。○復は、扶又反。

殺陳孔奐。無傳。招之黨。楚殺之。○奐、呼亂反。
【読み】
陳の孔奐を殺す。傳無し。招の黨なり。楚之を殺すなり。○奐は、呼亂反。

葬陳哀公。嬖人袁克葬之、魯往會。故書。
【読み】
陳の哀公を葬る。嬖人袁克之を葬り、魯往きて會す。故に書す。

〔傳〕八年、春、石言于晉魏楡。魏楡、晉地。
【読み】
〔傳〕八年、春、石晉の魏楡[ぎゆ]に言う。魏楡は、晉の地。

晉侯問於師曠曰、石何故言。對曰、石不能言。或馮焉。謂有精神馮依石而言。
【読み】
晉侯師曠に問いて曰く、石何の故に言える、と。對えて曰く、石は言うこと能わず。或は馮[よ]るならん。精神有りて石に馮依して言うを謂う。

不然、民聽濫也。濫、失也。○濫、力暫反。
【読み】
然らずんば、民の聽の濫ならん。濫は、失なり。○濫は、力暫反。

抑臣又聞之。抑、疑辭。
【読み】
抑々臣又之を聞けり。抑は、疑辭。

曰、作事不時、怨讟動于民、則有非言之物而言。今宮室崇侈、民力彫盡、彫、傷也。
【読み】
曰く、事を作すこと時ならず、怨讟[えんとく]民に動けば、則ち言うに非ざるの物にして言うこと有り、と。今宮室崇侈にして、民力彫盡し、彫は、傷むなり。

怨讟竝作、莫保其性。性、命也。民不敢自保其性命。
【読み】
怨讟竝び作りて、其の性を保つこと莫し。性は、命なり。民敢えて自ら其の性命を保たず。

石言、不亦宜乎。
【読み】
石の言う、亦宜ならずや、と。

於是晉侯方築虒祁之宮。虒祁、地名。在絳西四十里、臨汾水。○虒、音斯。
【読み】
是に於て晉侯方に虒祁[しき]の宮を築く。虒祁は、地の名。絳の西四十里に在り、汾水に臨む。○虒は、音斯。

叔向曰、子野之言、君子哉。子野、師曠字。
【読み】
叔向[しゅくきょう]曰く、子野の言、君子なるかな。子野は、師曠の字。

君子之言、信而有徵。故怨遠於其身。怨咎遠其身也。○遠、于萬反。
【読み】
君子の言は、信にして徵有り。故に怨み其の身に遠ざかる。怨咎其の身に遠ざかるなり。○遠は、于萬反。

小人之言、僭而無徵。故怨咎及之。詩曰、哀哉不能言、匪舌是出、唯躬是瘁。詩、小雅也。不能言、謂不知言理、以僭言見退者。其言非不從舌出、以僭而無信、自取瘁病故哀之。○出、如字。又尺遂反。
【読み】
小人の言は、僭にして徵無し。故に怨咎之に及ぶ。詩に曰く、哀しいかな言うこと能わざる、舌より是れ出だすに匪ずや、唯躬を是れ瘁[や]ましむ。詩は、小雅なり。言うこと能わずとは、言の理を知らずして、僭言を以て退けらるる者を謂う。其の言舌より出ださざるに非ず、僭にして信無く、自ら瘁病を取るを以ての故に之を哀しむ。○出は、字の如し。又尺遂反。

哿矣能言、巧言如流、俾躬處休。其是之謂乎。哿、嘉也。巧言如流、謂非正言而順敍、以聽言見答者。言其可嘉、以信而有徵、自取安逸。師曠此言、緣問流轉、終歸于諫。故以比巧言如流也。當叔向時、詩義如此。故與今說詩者小異。○哿、古可反。
【読み】
哿[よ]いかな言を能くする、巧言流るるが如くにして、躬をして休に處らしむ、と。其れ是を之れ謂うか。哿[か]は、嘉きなり。巧言流るるが如しとは、正言に非ずして順敍し、聽言を以て答えらる者を謂う。言うこころは、其の嘉す可きは、信にして徵有りて、自ら安逸を取るを以てなり。師曠が此の言、問いに緣りて流轉して、終に諫めに歸す。故に以て巧言の流るるが如きに比するなり。叔向の時に當たりて、詩の義此の如し。故に今の詩を說く者と小し異なり。○哿は、古可反。

是宮也成、諸侯必叛。君必有咎。夫子知之矣。爲十年、晉侯彪卒傳。
【読み】
是の宮や成らば、諸侯必ず叛かん。君必ず咎有らん。夫子之を知れり、と。十年、晉侯彪卒する爲の傳なり。

陳哀公元妃鄭姬生悼大子偃師、元妃、嫡夫人也。
【読み】
陳の哀公の元妃鄭姬悼大子偃師を生み、元妃は、嫡夫人なり。

二妃生公子留、下妃生公子勝。二妃嬖。留有寵。屬司徒招與公子過。招及過、皆哀公弟也。○屬、音燭。
【読み】
二妃公子留を生み、下妃公子勝を生む。二妃嬖せらる。留寵有り。諸を司徒招と公子過とに屬す。招と過とは、皆哀公の弟なり。○屬は、音燭。

哀公有癈疾。○癈、甫肺反。
【読み】
哀公癈疾有り。○癈は、甫肺反。

三月、甲申、公子招・公子過殺悼大子偃師、而立公子留。夏、四月、辛亥、哀公縊。憂恚自殺。經書辛丑、從赴。○恚、一睡反。
【読み】
三月、甲申[きのえ・さる]、公子招・公子過悼大子偃師を殺して、公子留を立つ。夏、四月、辛亥[かのと・い]、哀公縊る。憂恚[ゆうい]して自殺す。經辛丑に書すは、赴[つ]ぐるに從うなり。○恚は、一睡反。

干徵師赴于楚、干徵師、陳大夫。
【読み】
干徵師楚に赴[つ]げ、干徵師は、陳の大夫。

且告有立君。公子勝愬之于楚。以招・過殺偃師告愬也。
【読み】
且つ立君有るを告ぐ。公子勝之を楚に愬[うった]う。招・過が偃師を殺すを以て告げ愬う。

楚人執而殺之。殺干徵師。
【読み】
楚人執えて之を殺す。干徵師を殺す。

公子留奔鄭。
【読み】
公子留鄭に奔る。

書曰陳侯之弟招殺陳世子偃師、罪在招也。楚人執陳行人干徵師殺之、罪不在行人也。疑爲招赴楚、當同罪。故重發之。
【読み】
書して陳侯の弟招陳の世子偃師を殺すと曰うは、罪招に在ればなり。楚人陳の行人干徵師を執えて之を殺すとは、罪行人に在ざるなり。招が爲に楚に赴げば、當に同罪なるべきに疑わし。故に重ねて之を發す。

叔弓如晉、賀虒祁也。賀宮成。
【読み】
叔弓晉に如くは、虒祁を賀するなり。宮の成るを賀す。

游吉相鄭伯以如晉。亦賀虒祁也。
【読み】
游吉鄭伯を相けて以て晉に如く。亦虒祁を賀するなり。

史趙見子大叔曰、甚哉其相蒙也。蒙、欺也。○相、息亮反。下相吾室同。
【読み】
史趙子大叔を見て曰く、甚だしいかな其の相蒙[あざむ]くや。蒙は、欺くなり。○相は、息亮反。下の相吾室も同じ。

可弔也。而又賀之。子大叔曰、若何弔也。其非唯我賀、將天下實賀。言諸侯畏晉。非獨鄭。
【読み】
弔す可し。而るを又之を賀せり、と。子大叔曰く、若何ぞ弔せん。其れ唯我のみ賀するに非ず、將に天下實に賀せんとす、と。言うこころは、諸侯晉を畏る。獨り鄭のみに非ず。

秋、大蒐于紅。自根牟至于商・衛。革車千乘。大蒐、數軍實、簡車馬也。根牟、魯東界。琅邪陽都縣有牟郷。商、宋地。魯西竟接宋・衛也。言千乘、明大蒐、且見魯衆之大數也。
【読み】
秋、紅に大蒐す。根牟より商・衛に至る。革車千乘あり。大蒐は、軍實を數え、車馬を簡[えら]ぶなり。根牟は、魯の東界。琅邪陽都縣に牟郷有り。商は、宋の地。魯の西竟宋・衛に接われり。千乘と言うは、大蒐を明らかにし、且つ魯の衆の大數を見すなり。

七月、甲戌、齊子尾卒。子旗欲治其室、子旗、欒施也。欲幷治子尾之家政。
【読み】
七月、甲戌[きのえ・いぬ]、齊の子尾卒す。子旗其の室を治めんと欲し、子旗は、欒施[らんし]なり。子尾の家政を幷せ治めんと欲す。

丁丑、殺梁嬰、梁嬰、子尾家宰。
【読み】
丁丑[ひのと・うし]、梁嬰を殺し、梁嬰は、子尾が家宰。

八月、庚戌、逐子成・子工・子車。三子、齊大夫。子尾之屬。子成、頃公子、固也。子工、成之弟、鑄也。子車、頃公之孫、捷也。
【読み】
八月、庚戌[かのえ・いぬ]、子成・子工・子車を逐う。三子は、齊の大夫。子尾の屬。子成は、頃公の子、固なり。子工は、成の弟、鑄なり。子車は、頃公の孫、捷なり。

皆來奔。不書、非卿。
【読み】
皆來奔す。書さざるは、卿に非ざればなり。

而立子良氏之宰。子良、子尾之子、高彊也。子旗爲子良立宰。
【読み】
而して子良氏の宰を立つ。子良は、子尾の子、高彊なり。子旗子良が爲に宰を立つ。

其臣曰、孺子長矣。孺子、謂子良。
【読み】
其の臣曰く、孺子長ぜり。孺子は、子良を謂う。

而相吾室、欲兼我也。兼、幷也。
【読み】
而るを吾が室を相くるは、我を兼ねんことを欲するなり、と。兼は、幷すなり。

授甲將攻之。陳桓子善於子尾。亦授甲將助之。或告子旗。子旗不信。則數人告。將往。又數人告於道。遂如陳氏。桓子將出矣。聞之而還、聞子旗至。
【読み】
甲を授けて將に之を攻めんとす。陳桓子子尾に善し。亦甲を授けて將に之を助けんとす。或ひと子旗に告ぐ。子旗信ぜず。則ち數人告ぐ。將に往かんとす。又數人道に告ぐ。遂に陳氏に如く。桓子將に出でんとす。之を聞きて還り、子旗が至るを聞く。

游服而逆之。去戎備、著常游戲之服。
【読み】
游服して之を逆[むか]う。戎備を去り、常の游戲の服を著く。

請命。問桓子所至。
【読み】
命を請う。桓子に至る所を問う。

對曰、聞彊氏授甲將攻子。子聞諸。曰、弗聞。子盍亦授甲。無宇請從。無宇、桓子名。○從、才用反。
【読み】
對えて曰く、彊氏甲を授けて將に子を攻めんとすと聞く。子諸を聞けりや、と。曰く、聞かず、と。子盍ぞ亦甲を授けざる。無宇請う、從わん、と。無宇は、桓子の名。○從は、才用反。

子旗曰、子胡然。彼孺子也。吾誨之、猶懼其不濟。吾又寵秩之。謂爲之立宰。
【読み】
子旗曰く、子胡ぞ然らん。彼は孺子なり。吾れ之を誨ゆるも、猶懼らくは其れ濟らざらんことを。吾又之を寵秩せり。之が爲に宰を立つるを謂う。

其若先人何。子盍謂之。謂之、使無攻我。
【読み】
其れ先人を若何。子盍ぞ之に謂わざる。之に謂うとは、我を攻むること無からしむるなり。

周書曰、惠不惠、茂不茂。周書、康誥也。言當施惠於不惠者、勸勉於不勉者。茂、勉也。
【読み】
周書に曰く、惠まざるを惠ませ、茂[つと]めざるを茂めしむ、と。周書は、康誥なり。言うこころは、當に惠みを惠まざる者に施さしめ、勉めを勉めざる者に勸めしむ。茂は、勉むるなり。

康叔所以服弘大也。服、行也。
【読み】
康叔の服[おこな]いて弘大なりし所以なり、と。服は、行うなり。

桓子稽顙曰、頃・靈福子。頃公・靈公、欒氏所事之君。
【読み】
桓子稽顙[けいそう]して曰く、頃・靈子に福せり。頃公・靈公は、欒氏の事えし所の君なり。

吾猶有望。望子旗惠及己。
【読み】
吾も猶望み有り、と。子旗が惠みの己に及ばんことを望む。

遂和之如初。和欒・高二家。
【読み】
遂に之を和して初めの如し。欒・高二家を和す。

陳公子招歸罪於公子過而殺之。言招所以不死而得放。
【読み】
陳の公子招罪を公子過に歸して之を殺す。招が死なずして放を得る所以を言う。

九月、楚公子弃疾帥師奉孫吳圍陳。孫吳、悼大子偃師之子、惠公。
【読み】
九月、楚の公子弃疾師を帥いて孫吳を奉じて陳を圍む。孫吳は、悼大子偃師の子、惠公なり。

宋戴惡會之。戴惡、宋大夫。
【読み】
宋の戴惡之に會す。戴惡は、宋の大夫。

冬、十一月、壬午、滅陳。壬午、十月十八日。傳言十一月誤。
【読み】
冬、十一月、壬午、陳を滅ぼす。壬午は、十月十八日。傳十一月と言うは誤れり。

輿嬖袁克殺馬毀玉以葬。輿、衆也。袁克、嬖人之貴者。欲以非禮厚葬哀公。
【読み】
輿嬖の袁克馬を殺し玉を毀ちて以て葬らんとす。輿は、衆なり。袁克は、嬖人の貴き者。非禮を以て哀公を厚葬せんと欲す。

楚人將殺之。請寘之。置馬玉。
【読み】
楚人將に之を殺さんとす。之を寘かんと請う。馬玉を置く。

旣又請私。私盡君臣恩。
【読み】
旣にして又私せんことを請う。私に君臣の恩を盡くさんとす。

私於幄、加絰於顙而逃。幄、帳也。逃、不欲爲楚臣。○絰、直結反。
【読み】
幄に私し、絰[てつ]を顙[ひたい]に加えて逃ぐ。幄は、帳なり。逃ぐるは、楚の臣と爲ることを欲せざるなり。○絰は、直結反。

使穿封戌爲陳公、戌、楚大夫。滅陳爲縣、使戌爲縣公。
【読み】
穿封戌をして陳公爲らしめて、戌は、楚の大夫。陳を滅ぼして縣と爲し、戌をして縣公爲らしむ。

曰、城麇之役不諂。城麇役、在襄二十六年。戌與靈王爭皇頡。○麇、九倫反。
【読み】
曰く、城麇[じょうきん]の役に諂わざりし、と。城麇の役は、襄二十六年に在り。戌と靈王と皇頡[こうけつ]を爭えり。○麇は、九倫反。

侍飮酒於王。王曰、城麇之役、女知寡人之及此、女其辟寡人乎。及此、謂爲王。○女、音汝。
【読み】
飮酒に王に侍る。王曰く、城麇の役に、女寡人の此に及ばんことを知らば、女其れ寡人を辟けんか、と。此に及ぶとは、王と爲るを謂う。○女は、音汝。

對曰、若知君之及此、臣必致死、禮以息楚。息、寧靜也。
【読み】
對えて曰く、若し君の此に及ばんことを知らば、臣必ず死を致して、禮して以て楚を息えん、と。息は、寧靜なり。

晉侯問於史趙曰、陳其遂亡乎。對曰、未也。公曰、何故。對曰、陳顓頊之族也。陳祖舜。舜出顓頊。
【読み】
晉侯史趙に問いて曰く、陳其れ遂に亡びんか、と。對えて曰く、未だし、と。公曰く、何の故ぞ、と。對えて曰く、陳は顓頊[せんぎょく]の族なり。陳の祖は舜。舜は顓頊より出づ。

歲在鶉火、是以卒滅。陳將如之。顓頊氏以歲在鶉火而滅。火盛而水滅。
【読み】
歲鶉火[じゅんか]に在りしとき、是を以て卒に滅びたり。陳も將に之の如くならんとす。顓頊氏歲鶉火に在るを以て滅びたり。火盛んにして水滅ぶるなり。

今在析木之津、猶將復由。箕斗之閒有天漢。故謂之析木之津。由、用也。
【読み】
今析木の津に在り、猶將に復由[もち]いんとす。箕斗の閒に天漢有り。故に之を析木の津と謂う。由は、用ゆるなり。

且陳氏得政于齊、而後陳卒亡。物莫能兩盛。
【読み】
且陳氏政を齊に得て、而して後に陳卒に亡びん。物能く兩ながら盛んなること莫し。

自幕至于瞽瞍、無違命。幕、舜之先。瞽瞍、舜父。從幕至瞽瞍、閒無違天命廢絕者。
【読み】
幕より瞽瞍に至るまで、命に違える無し。幕は、舜の先。瞽瞍は、舜の父。幕より瞽瞍に至るまで、閒天命に違いて廢絕する者無し。

舜重之以明德、寘德于遂。遂、舜後。蓋殷之興、存舜之後而封遂。言舜德乃至於遂。
【読み】
舜之に重ぬるに明德を以てして、德を遂に寘けり。遂は、舜の後。蓋し殷の興るとき、舜の後を存して遂を封ぜしならん。舜の德乃ち遂に至れるを言う。

遂世守之、及胡公不淫。故周賜之姓、使祀虞帝。胡公滿、遂之後也。事周武王。賜姓曰嬀、封諸陳紹舜後。
【読み】
遂世々之を守り、胡公に及ぶまで淫せず。故に周之に姓を賜いて、虞帝を祀らしめり。胡公滿は、遂の後なり。周の武王に事う。姓を賜いて嬀と曰い、諸を陳に封じて舜の後を紹がしむ。

臣聞盛德必百世祀。虞之世數未也。繼守將在齊。其兆旣存矣。言陳氏興盛於齊、形兆已見。
【読み】
臣聞く、盛德は必ず百世祀らる、と。虞の世數未だし。繼守は將に齊に在らんとす。其の兆旣に存せり、と。陳氏の齊に興盛する、形兆已に見るを言う。


〔經〕九年、春、叔弓會楚子于陳。以事往。非行會禮。
【読み】
〔經〕九年、春、叔弓楚子に陳に會す。事を以て往く。會禮を行うに非ず。

許遷于夷。許畏鄭欲遷。故以自遷爲文。
【読み】
許夷に遷る。許鄭を畏れて遷らんと欲す。故に自ら遷るを以て文と爲す。

夏、四月、陳災。天火曰災。陳旣已滅、降爲楚縣、而書陳災者、猶晉之梁山・沙鹿崩、不書晉。災害、繫於所災所害。故以所在爲名。
【読み】
夏、四月、陳災あり。天火を災と曰う。陳旣已に滅び、降りて楚の縣と爲りて、陳災ありと書すは、猶晉の梁山・沙鹿崩るを、晉を書さざるがごとし。災害は、災ある所害ある所に繫ぐ。故に在る所を以て名とす。

秋、仲孫貜如齊。○貜、倶縛反。
【読み】
秋、仲孫貜齊に如く。○貜は、倶縛反。

冬、築郎囿。
【読み】
冬、郎に囿を築く。

〔傳〕九年、春、叔弓・宋華亥・鄭游吉・衛趙黶會楚子于陳。楚子在陳。故四國大夫往。非盟主所召。不行會禮。故不揔書。○黶、於減反。
【読み】
〔傳〕九年、春、叔弓・宋の華亥・鄭の游吉・衛の趙黶[ちょうえん]楚子に陳に會す。楚子陳に在り。故に四國の大夫往く。盟主の召す所に非ず。會禮を行わず。故に揔べ書さず。○黶は、於減反。

二月、庚申、楚公子弃疾遷許于夷。實城父。此時改城父爲夷。故傳實之。城父縣屬譙郡。
【読み】
二月、庚申[かのえ・さる]、楚の公子弃疾許を夷に遷す。實は城父なり。此の時城父を改めて夷と爲す。故に傳之を實にす。城父縣は譙郡に屬す。

取州來・淮北之田以益之。益許田。
【読み】
州來・淮北の田を取りて以て之を益す。許の田を益す。

伍舉授許男田。
【読み】
伍舉許男に田を授く。

然丹遷城父人於陳、以夷濮西田益之、以夷田在濮水西者、與城父人。
【読み】
然丹城父の人を陳に遷し、夷の濮西の田を以て之に益し、夷田の濮水の西に在る者を以て、城父の人に與う。

遷方城外人於許。成十五年、許遷於葉。因謂之許。今許遷於夷。故以方城外人實其處。傳言靈王使民不安。○葉、始涉反。
【読み】
方城外の人を許に遷す。成十五年、許葉[しょう]に遷る。因りて之を許と謂う。今許夷に遷る。故に方城外の人を以て其の處に實つ。傳靈王民をして安からざらしむるを言う。○葉は、始涉反。

周甘人與晉閻嘉爭閻田。甘人、甘大夫、襄也。閻嘉、晉閻縣大夫。
【読み】
周の甘人晉の閻嘉と閻の田を爭う。甘人は、甘の大夫、襄なり。閻嘉は、晉の閻縣の大夫。

晉梁丙・張趯率陰戎伐潁。陰戎、陸渾之戎。潁、周邑。○趯、他歷反。
【読み】
晉の梁丙・張趯[ちょうてき]陰戎を率いて潁を伐つ。陰戎は、陸渾の戎。潁は、周の邑。○趯は、他歷反。

王使詹桓伯辭於晉。辭、責讓之。桓伯、周大夫。
【読み】
王詹桓伯[せんかんはく]をして晉に辭せしむ。辭は、之を責讓するなり。桓伯は、周の大夫。

曰、我自夏以后稷、魏・駘・芮・岐・畢、吾西土也。在夏世、以后稷功受此五國、爲西土之長。駘、在始平武功縣所治釐城。岐、在扶風美陽縣西北。○駘、他來反。芮、如銳反。釐、他來反。一力之反。
【読み】
曰く、我れ夏の后稷を以てせしより、魏・駘・芮・岐・畢は、吾が西土なり。夏の世に在りて、后稷の功を以て此の五國を受けて、西土の長と爲れり。駘は、始平武功縣の所治釐城に在り。岐は、扶風美陽縣の西北に在り。○駘は、他來反。芮は、如銳反。釐は、他來反。一に力之反。

及武王克商、蒲姑・商奄、吾東土也。樂安博昌縣北有蒲姑城。○蒲、如字。又音薄。奄、於檢反。
【読み】
武王の商に克つに及びて、蒲姑[はくこ]・商奄は、吾が東土なり。樂安博昌縣の北に蒲姑城有り。○蒲は、字の如し。又音薄。奄は、於檢反。

巴・濮・楚・鄧、吾南土也。肅愼・燕・亳、吾北土也。肅愼、北夷。在玄菟北三千餘里。
【読み】
巴・濮・楚・鄧は、吾が南土なり。肅愼・燕・亳[はく]は、吾が北土なり。肅愼は、北夷。玄菟の北三千餘里に在り。

吾何邇封之有。邇、近也。
【読み】
吾れ何の邇封か之れ有らん。邇は、近きなり。

文・武・成・康之建母弟、以蕃屛周、亦其廢隊是爲。爲後世廢隊、兄弟之國、當救濟之。○隊、音墜。爲、去聲。
【読み】
文・武・成・康の母弟を建てて、以て周に蕃屛とせしも、亦其の廢隊[はいつい]是が爲なり。後世の廢隊せば、兄弟の國、當に之を救濟すべきが爲なり。○隊は、音墜。爲は、去聲。

豈如弁髦而因以敝之。童子垂髦、始冠必三加冠、成禮而弃其始冠。故言弁髦因以敝之。弁、亦冠也。○始冠、去聲。
【読み】
豈弁髦の如くにして因りて以て之を敝[やぶ]らんや。童子は垂髦、始めて冠すれば必ず三たび冠を加え、禮を成して其の始冠を弃つ。故に弁髦は因りて以て之を敝ると言う。弁も、亦冠なり。○始冠は、去聲。

先王居檮杌于四裔、以禦螭魅。言檮杌、畧舉四凶之一。下言四裔、則三苗在其中。
【読み】
先王檮杌[とうこつ]を四裔に居きて、以て螭魅[ちみ]を禦がしむ。檮杌を言うは、畧して四凶の一を舉ぐるなり。下四裔と言えば、則ち三苗其の中に在り。

故允姓之姦、居于瓜州、允姓、陰戎之祖。與三苗倶放三危者。瓜州、今敦煌。
【読み】
故に允姓[いんせい]の姦は、瓜州に居りしに、允姓は、陰戎の祖。三苗と倶に三危に放たる者なり。瓜州は、今の敦煌。

伯父惠公歸自秦、而誘以來、僖十五年、晉惠公自秦歸。二十二年、秦・晉遷陸渾之戎於伊川。
【読み】
伯父惠公秦より歸りて、誘いて以て來り、僖十五年、晉の惠公秦より歸る。二十二年、秦・晉陸渾の戎を伊川に遷す。

使偪我諸姬、入我郊甸。則戎焉取之。邑外爲郊、郊外爲甸。言戎取周郊甸之地。○焉、於虔反。又如字。
【読み】
我が諸姬に偪り、我が郊甸[こうてん]に入らしめり。則ち戎焉ぞ之を取らん。邑外を郊と爲し、郊外を甸と爲す。戎周の郊甸の地を取るを言う。○焉は、於虔反。又字の如し。

戎有中國、誰之咎也。咎在晉。
【読み】
戎の中國を有ちしは、誰の咎ぞや。咎晉に在り。

后稷封殖天下、今戎制之。不亦難乎。后稷修封疆、殖五糓、今戎得之、唯以畜牧。
【読み】
后稷天下を封殖せしに、今戎之を制す。亦難からずや。后稷封疆を修め、五糓を殖やせしに、今戎之を得て、唯以て畜牧す。

伯父圖之。
【読み】
伯父之を圖れ。

我在伯父、猶衣服之有冠冕、木水之有本原、民人之有謀主也。民人謀主、宗族之師長。
【読み】
我が伯父に在るは、猶衣服の冠冕有り、木水の本原有り、民人の謀主有るがごとし。民人の謀主は、宗族の師長なり。

伯父若裂冠毀冕、拔本塞原、專弃謀主、雖戎狄其何有余一人。伯父猶然、則雖戎狄、無所可責。晉率陰戎伐周邑。故云然。
【読み】
伯父若し冠を裂き冕を毀り、本を拔き原を塞ぎ、專ら謀主を弃てば、戎狄と雖も其れ余一人に何か有らん、と。伯父猶然らば、則ち戎狄と雖も、責む可き所無し。晉陰戎を率いて周の邑を伐つ。故に然云う。

叔向謂宣子曰、文之伯也、豈能改物。言文公雖霸、未能改正朔、易服色。○伯、如字。又音霸。
【読み】
叔向[しゅくきょう]宣子に謂いて曰く、文の伯たるも、豈能く物を改めんや。言うこころは、文公霸たりと雖も、未だ正朔を改め、服色を易うること能わず。○伯は、字の如し。又音霸。

翼戴天子、而加之以共。翼、佐也。
【読み】
天子を翼戴して、之に加うるに共を以てせり。翼は、佐くなり。

自文以來、世有衰德、而暴滅宗周、宗周、天子。
【読み】
文より以來、世々衰德有りて、宗周を暴滅して、宗周は、天子。

以宣示其侈。諸侯之貳、不亦宜乎。且王辭直。子其圖之。
【読み】
以て其の侈を宣示す。諸侯の貳あるは、亦宜ならずや。且つ王の辭直なり。子其れ之を圖れ、と。

宣子說。
【読み】
宣子說ぶ。

王有姻喪。外親之喪。○說、音悅。
【読み】
王姻の喪有り。外親の喪。○說は、音悅。

使趙成如周弔、且致閻田與襚、襚、送死衣。
【読み】
趙成をして周に如きて弔し、且つ閻の田と襚[すい]とを致し、襚は、死を送る衣。

反潁俘。王亦使賓滑執甘大夫襄以說於晉。晉人禮而歸之。賓滑、周大夫。○說、如字。又音悅。
【読み】
潁の俘を反さしむ。王も亦賓滑をして甘の大夫襄を執えて以て晉に說かしむ。晉人禮して之を歸す。賓滑は、周の大夫。○說は、字の如し。又音悅。

夏、四月、陳災。鄭裨竈曰、五年、陳將復封。封五十二年而遂亡。子產問其故。對曰、陳、水屬也。陳、顓頊之後。故爲水屬。○復、扶又反。下同。
【読み】
夏、四月、陳災あり。鄭の裨竈[ひそう]曰く、五年にして、陳將に復封ぜられんとす。封ぜられて五十二年にして遂に亡びん、と。子產其の故を問う。對えて曰く、陳は、水の屬なり。陳は、顓頊の後なり。故に水の屬と爲す。○復は、扶又反。下も同じ。

火、水妃也。火畏水。故爲之妃。○妃、平聲。一音配。
【読み】
火は、水の妃[はい]なり。火は水を畏る。故に之が妃と爲る。○妃は、平聲。一に音配。

而楚所相也。相、治也。楚之先祝融爲高辛氏火正、主治火事。○相、息亮反。
【読み】
而して楚の相[おさ]むる所なり。相は、治むるなり。楚の先祝融は高辛氏の火正と爲り、火事を治むることを主れり。○相は、息亮反。

今火出而火陳、火、心星也。火出、於周爲五月。而以四月出者、以長歷推、前年誤置閏。
【読み】
今火出でて陳に火あるは、火は、心星なり。火出づるは、周に於て五月と爲す。而るに四月を以て出づるは、長歷を以て推すに、前年誤りて閏を置けるなり。

逐楚而建陳也。水得妃而興。陳興則楚衰。故曰逐楚而建陳。
【読み】
楚を逐いて陳を建つるなり。水妃を得て興る。陳興れば則ち楚衰う。故に楚を逐いて陳を建つと曰う。

妃以五成。故曰五年。妃、合也。五行各相妃合、得五而成。故五歲而陳復封。爲十三年、陳侯吳歸于陳傳。○妃、音配。
【読み】
妃は五を以て成る。故に五年と曰う。妃は、合うなり。五行各々相妃合して、五を得て成る。故に五歲にして陳復封ぜらるなり。十三年、陳侯吳陳に歸る爲の傳なり。○妃は、音配。

歲五及鶉火而後陳卒亡、楚克有之。天之道也。故曰五十二年。是歲歲在星紀。五歲及大梁、而陳復封。自大梁四歲而及鶉火、後四周四十八歲、凡五及鶉火、五十二年。天數以五爲紀。故五及鶉火、火盛水衰。
【読み】
歲五たび鶉火に及びて後に陳卒に亡び、楚克く之を有たん。天の道なり。故に五十二年と曰うなり。是の歲歲星紀に在り。五歲にして大梁に及びて、陳復封ぜらる。大梁より四歲にして鶉火に及び、後四周して四十八歲、凡そ五たび鶉火に及びて、五十二年なり。天數は五を以て紀と爲す。故に五たび鶉火に及びて、火盛んにして水衰うるなり。

晉荀盈如齊逆女。自爲逆。○爲、于僞反。
【読み】
晉の荀盈齊に如きて女を逆う。自ら爲に逆う。○爲は、于僞反。

還。六月、卒于戲陽。魏郡内黃縣北有戲陽城。○戲、許宜反。
【読み】
還る。六月、戲陽に卒す。魏郡内黃縣の北に戲陽城有り。○戲は、許宜反。

殯于絳。未葬。晉侯飮酒樂。膳宰屠蒯趨入、請佐公使尊。公之使人執尊酌酒。請爲之佐。○樂、音洛。蒯、苦怪反。
【読み】
絳に殯す。未だ葬らず。晉侯酒を飮みて樂しむ。膳宰屠蒯[とかい]趨り入りて、公の使尊に佐たらんと請う。公の使人尊を執りて酒を酌む。之が佐爲らんと請う。○樂は、音洛。蒯は、苦怪反。

許之。公許之。
【読み】
之を許す。公之を許す。

而遂酌以飮工。工、樂師師曠也。○飮、於鴆反。下同。
【読み】
而して遂に酌みて以て工に飮ましむ。工は、樂師師曠なり。○飮は、於鴆反。下も同じ。

曰、女爲君耳。將司聰也。樂所以聰耳。○女、音汝。下皆同。
【読み】
曰く、女は君の耳爲り。將に聰を司らんとす。樂は耳を聰にする所以なり。○女は、音汝。下も皆同じ。

辰在子卯、謂之疾日。疾、惡也。紂以甲子喪、桀以乙卯亡。故國君以爲忌日。
【読み】
辰の子卯に在る、之を疾日と謂う。疾は、惡なり。紂は甲子を以て喪び、桀は乙卯を以て亡ぶ。故に國君以て忌日と爲す。

君徹宴樂、學人舍業。爲疾故也。君之卿佐、是謂股肱。股肱或虧、何痛如之。言痛疾過於忌日。○舍、音捨。爲、于僞反。下同。
【読み】
君宴樂を徹し、學人業を舍つ。疾の爲の故なり。君の卿佐、是を股肱と謂う。股肱或は虧くるは、何の痛みか之に如かん。言うこころは、痛疾忌日に過ぐ。○舍は、音捨。爲は、于僞反。下も同じ。

女弗聞而樂。是不聰也。不聞是義而作樂。
【読み】
女聞かずして樂す。是れ不聰なり、と。是の義を聞かずして樂を作す。

又飮外嬖嬖叔。外都大夫之嬖者。
【読み】
又外嬖の嬖叔に飮ましむ。外都の大夫の嬖せらる者。

曰、女爲君目。將司明也。職在外。故主視。
【読み】
曰く、女は君の目爲り。將に明を司らんとす。職外に在り。故に視を主る。

服以旌禮、旌、表也。
【読み】
服以て禮を旌[あらわ]し、旌は、表すなり。

禮以行事。事、政令。
【読み】
禮以て事を行う。事は、政令。

事有其物、物、類也。
【読み】
事に其の物有り、物は、類なり。

物有其容。容、貌也。
【読み】
物に其の容有り。容は、貌なり。

今君之容、非其物也。有卿佐之喪。而作樂歡會。故曰非其物。
【読み】
今君の容、其の物に非ざるなり。卿佐の喪有り。而るに樂を作して歡會す。故に其の物に非ずと曰う。

而女不見。是不明也。
【読み】
而るを女見ず。是れ不明なり、と。

亦自飮也、曰、味以行氣、氣以實志、氣和則志充。
【読み】
亦自ら飮むや、曰く、味以て氣を行[めぐ]らし、氣以て志を實て、氣和すれば則ち志充つ。

志以定言、在心爲志、發口爲言。
【読み】
志以て言を定め、心に在るを志と爲し、口に發するを言と爲す。

言以出令。臣實司味、二御失官、而君弗命、臣之罪也。工與嬖叔、侍御君者。失官、不聰明。
【読み】
言以て令を出だす。臣實に味を司り、二御官を失いて、君命ぜざるは、臣の罪なり、と。工と嬖叔とは、君に侍御する者。官を失うとは、聰明ならざるなり。

公說、徹酒。
【読み】
公說び、酒を徹す。

初、公欲廢知氏而立其外嬖。爲是悛而止。○說、音悅。知、音智。下同。悛、七全反。
【読み】
初め、公知氏を廢して其の外嬖を立てんと欲す。是が爲に悛めて止む。○說は、音悅。知は、音智。下も同じ。悛は、七全反。

秋、八月、使荀躒佐下軍以說焉。躒、荀盈之子、知文子也。佐下軍、代父也。說、自解說。○躒、力狄反。又音洛。
【読み】
秋、八月、荀躒をして下軍に佐たらしめて以て說く。躒は、荀盈の子、知文子なり。下軍に佐たるは、父に代わるなり。說くとは、自ら解說するなり。○躒は、力狄反。又音洛。

孟僖子如齊殷聘。禮也。自叔老聘齊、至今二十年。禮意久曠。今脩盛聘、以無忘舊好。故曰禮。
【読み】
孟僖子齊に如きて殷聘す。禮なり。叔老が齊に聘してより、今に至るまで二十年。禮意久しく曠し。今盛聘を脩めて、以て舊好を忘るること無し。故に禮と曰う。

冬、築郎囿、書時也。
【読み】
冬、郎に囿を築くとは、時を書すなり。

季平子欲其速成也。叔孫昭子曰、詩曰、經始勿亟、庶民子來。詩、大雅。言文王始經營靈臺、非急疾之。衆民自以子義來、勸樂爲之。○樂、如字。又五敎反。一音洛。
【読み】
季平子其の速やかに成らんことを欲す。叔孫昭子曰く、詩に曰く、經始すること亟[すみ]やかにすること勿きも、庶民子來す、と。詩は、大雅。言うこころは、文王始めて靈臺を經營するに、之を急疾するに非ず。衆民自ら子の義を以て來り、勸樂して之を爲す。○樂は、字の如し。又五敎反。一に音洛。

焉用速成。其以勦民也。勦、勞也。○勦、初交反。又子小反。
【読み】
焉ぞ速やかに成すことを用いん。其れ以て民を勦[つか]らさん。勦は、勞るるなり。○勦[そう]は、初交反。又子小反。

無囿猶可。無民其可乎。
【読み】
囿無きは猶可なり。民無きは其れ可ならんや、と。


〔經〕十年、春、王正月。夏、齊欒施來奔。耆酒好内、以取敗亡。故書名。
【読み】
〔經〕十年、春、王の正月。夏、齊の欒施來奔す。酒を耆み内を好みて、以て敗亡を取る。故に名を書す。

秋、七月、季孫意如・叔弓・仲孫貜帥師伐莒。三大夫皆卿。故書之。季孫爲主、二子從之。
【読み】
秋、七月、季孫意如・叔弓・仲孫貜師を帥いて莒を伐つ。三大夫は皆卿。故に之を書す。季孫主と爲り、二子之に從う。

戊子、晉侯彪卒。五同盟。
【読み】
戊子[つちのえ・ね]、晉侯彪卒す。五たび同盟す。

九月、叔孫婼如晉。葬晉平公。三月而葬。速。
【読み】
九月、叔孫婼[しゅくそんちゃく]晉に如く。晉の平公を葬る。三月にして葬る。速きなり。

十有二月、甲子、宋公成卒。十一同盟也。無冬、史闕文。○成、音城。或音恤。
【読み】
十有二月、甲子[きのえ・ね]、宋公成卒す。十一たび同盟す。冬無きは、史の闕文なり。○成は、音城。或は音恤。

〔傳〕十年、春、王正月、有星出于婺女。客星也。不書、非孛。○孛、蒲對反。
【読み】
〔傳〕十年、春、王の正月、星の婺女[ぶじょ]に出づる有り。客星なり。書さざるは、孛[はい]に非ざればなり。○孛は、蒲對反。

鄭裨竈言於子產曰、七月、戊子、晉君將死。今玆歲在顓頊之虛。歲、歲星也。顓頊之虛、謂玄枵。○虛、起魚反。
【読み】
鄭の裨竈[ひそう]子產に言いて曰く、七月、戊子、晉君將に死せんとす。今玆[ことし]歲顓頊の虛に在り。歲は、歲星なり。顓頊の虛は、玄枵[げんきょう]を謂う。○虛は、起魚反。

姜氏・任氏實守其地。姜、齊姓。任、薛姓。齊・薛二國、守玄枵之地。
【読み】
姜氏・任氏實に其の地を守れり。姜は、齊の姓。任は、薛の姓。齊・薛二國は、玄枵の地を守る。

居其維首、而有妖星焉、告邑姜也。客星居玄枵之維首。邑姜、齊大公女、晉唐叔之母。星占、婺女爲旣嫁之女、織女爲處女。邑姜、齊之旣嫁女。妖星在婺女、齊得歲。故知禍歸邑姜。
【読み】
其の維首に居りて、妖星有るは、邑姜に告ぐるなり。客星玄枵の維首に居るなり。邑姜は、齊の大公の女、晉の唐叔の母。星占に、婺女を旣嫁の女と爲し、織女を處女と爲す。邑姜は、齊の旣嫁の女。妖星婺女に在りて、齊歲を得。故に禍の邑姜に歸するを知るなり。

邑姜、晉之妣也。天以七紀。二十八宿、面七。
【読み】
邑姜は、晉の妣なり。天は七を以て紀す。二十八宿、面ごとに七。

戊子、逢公以登。星。斯於是乎出。逢公、殷諸侯居齊地者。逢公將死。妖星出婺女。時非歲星所在。故齊自當禍、而以戊子日卒。
【読み】
戊子に、逢公以て登りぬ。星ありき。斯れ是に於て出でたり。逢公は、殷の諸侯の齊の地に居りし者。逢公將に死せんとす。妖星婺女に出づ。時歲星の在る所に非ず。故に齊自ら禍に當たりて、戊子の日を以て卒せり。

吾是以譏之。爲晉侯彪卒傳。
【読み】
吾れ是を以て之を譏す、と。晉侯彪卒する爲の傳なり。

齊惠欒・高氏皆耆酒、欒・高二族、皆出惠公。
【読み】
齊惠の欒・高氏皆酒を耆み、欒・高二族は、皆惠公より出づ。

信内多怨、說婦人言。故多怨。
【読み】
内を信じて怨み多く、婦人の言を說ぶ。故に怨み多し。

彊於陳・鮑氏而惡之。惡陳・鮑。○惡、烏路反。
【読み】
陳・鮑氏より彊くして之を惡む。陳・鮑を惡む。○惡は、烏路反。

夏、有告陳桓子曰、子旗・子良將攻陳・鮑。亦告鮑氏。桓子授甲而如鮑氏。遭子良醉而騁。欲及子良醉。故驅告鮑文子。
【読み】
夏、陳桓子に告ぐるもの有り曰く、子旗・子良將に陳・鮑を攻めんとす、と。亦鮑氏に告ぐ。桓子甲を授けて鮑氏に如く。子良が醉えるに遭わんとして騁[てい]す。子良が醉えるに及ばんと欲す。故に驅して鮑文子に告ぐ。

遂見文子、文子、鮑國。
【読み】
遂に文子を見れば、文子は、鮑國。

則亦授甲矣。使視二子、二子、子旗・子良。
【読み】
則ち亦甲を授けり。二子を視せしむれば、二子は、子旗・子良。

則皆將飮酒。桓子曰、彼雖不信、彼、傳言者。
【読み】
則ち皆將に酒を飮まんとす。桓子曰く、彼は不信と雖も、彼は、言を傳うる者。

聞我授甲、則必逐我。及其飮酒也、先伐諸。陳・鮑方睦。遂伐欒・高氏。子良曰、先得公、陳・鮑焉往。欲以公自輔助。
【読み】
我が甲を授けしを聞かば、則ち必ず我を逐わん。其の酒を飮むに及びて、先ず諸を伐たんか、と。陳・鮑方に睦まじ。遂に欒・高氏を伐つ。子良曰く、先ず公を得ば、陳・鮑焉[いずく]に往かん、と。公を以て自ら輔助せんと欲す。

遂伐虎門。欲入、公不聽。故伐公門。
【読み】
遂に虎門を伐つ。入らんと欲するに、公聽かず。故に公門を伐つ。

晏平仲端委立于虎門之外。端委、朝服。
【読み】
晏平仲端委して虎門の外に立つ。端委は、朝服。

四族召之。無所往。四族、欒・高・陳・鮑。
【読み】
四族之を召ぶ。往く所無し。四族は、欒・高・陳・鮑。

其徒曰、助陳・鮑乎。曰、何善焉。言無善義可助。
【読み】
其の徒曰く、陳・鮑を助けんか、と。曰く、何か善とせん、と。言うこころは、善義の助く可き無し。

助欒・高乎。曰、庸愈乎。罪惡不差於陳・鮑。○差、初賣反。
【読み】
欒・高を助けんか、と。曰く、庸[もっ]て愈[た]えんや、と。罪惡陳・鮑より差えず。○差は、初賣反。

然則歸乎。曰、君伐。焉歸。公召之而後入。
【読み】
然らば則ち歸らんか、と。曰く、君伐たる。焉に歸らん。公之を召して而して後に入る。

公卜使王黑以靈姑銔率、吉。請斷三尺焉而用之。王黑、齊大夫。靈姑銔、公旗名。斷三尺、不敢與君同。○銔、扶眉反。又音■(上が不、下が十)。率、所律反。又所類反。斷、丁管反。
【読み】
公王黑をして靈姑銔[れいこひ]を以て率いしめんと卜するに、吉なり。請いて三尺を斷ちて之を用ゆ。王黑は、齊の大夫。靈姑銔は、公の旗の名。三尺を斷るは、敢えて君と同じくせざるなり。○銔は、扶眉反。又音■(上が不、下が十)。率は、所律反。又所類反。斷は、丁管反。

五月、庚辰、戰于稷。稷、祀后稷之處。
【読み】
五月、庚辰[かのえ・たつ]、稷に戰う。稷は、后稷を祀る處。

欒・高敗。又敗諸莊。莊、六軌之道。
【読み】
欒・高敗れぬ。又諸を莊に敗る。莊は、六軌の道。

國人追之。又敗諸鹿門。鹿門、齊城門。
【読み】
國人之を追う。又諸を鹿門に敗る。鹿門は、齊の城門。

欒施・高彊來奔。高彊不書、非卿。
【読み】
欒施・高彊來奔す。高彊書さざるは、卿に非ざればなり。

陳・鮑分其室。晏子謂桓子、必致諸公。讓、德之主也。讓之謂懿德。凡有血氣、皆有爭心。故利不可强。不可强取。○强、其丈反。
【読み】
陳・鮑其の室を分かたんとす。晏子桓子に謂えらく、必ず諸を公に致せ。讓は、德の主なり。讓るを懿德と謂う。凡そ血氣有るは、皆爭心有り。故に利は强う可からず。强いて取る可からず。○强は、其丈反。

思義爲愈。義、利之本也。蘊利生孼。蘊、畜也。孼、妖害也。○蘊、紆粉反。
【読み】
義を思うを愈れりと爲す。義は、利の本なり。利を蘊[たくわ]うれば孼[わざわい]を生ず。蘊は、畜うるなり。孼[げつ]は、妖害なり。○蘊は、紆粉反。

姑使無蘊乎。可以滋長。桓子盡致諸公、而請老于莒。莒、齊邑。○長、丁丈反。
【読み】
姑く蘊うること無からしめんか。以て滋長す可し、と。桓子盡く諸を公に致して、請いて莒に老す。莒は、齊の邑。○長は、丁丈反。

桓子召子山、子山・子商・子周、襄三十一年、子尾所逐羣公子。
【読み】
桓子子山を召び、子山・子商・子周は、襄三十一年に、子尾が逐う所の羣公子なり。

私具幄幕器用、從者之衣屨、私具、不告公。
【読み】
私に幄幕器用と、從者の衣屨を具えて、私に具うるとは、公に告げざるなり。

而反棘焉。棘、子山故邑。齊國西安縣東有戟里亭。
【読み】
棘を反す。棘は、子山の故邑。齊國西安縣の東に戟里亭有り。

子商亦如之、而反其邑。子周亦如之、而與之夫于。子周本無邑。故更與之。濟南於陵縣西北有于亭。
【読み】
子商にも亦之の如くして、其の邑を反す。子周にも亦之の如くして、之に夫于を與う。子周本邑無し。故に更に之に與う。濟南於陵縣の西北に于亭有り。

反子城・子公・公孫捷、三子、八年子旗所逐。
【読み】
子城・子公・公孫捷を反して、三子は、八年に子旗が逐う所。

而皆益其祿。凡公子公孫之無祿者、私分之邑。桓子以己邑分之。
【読み】
皆其の祿を益す。凡そ公子公孫の祿無き者には、私に之に邑を分かつ。桓子己が邑を以て之に分かつ。

國之貧約孤寡者、私與之粟、曰、詩云、陳錫載周、能施也。詩、大雅。言文王能布陳大利、以賜天下、行之周徧。○施、始豉反。
【読み】
國の貧約孤寡なる者には、私に之に粟を與えて、曰く、詩に云う、陳[し]き錫[たま]い載[おこな]うこと周[あまね]しとは、能く施せるなり。詩は、大雅。言うこころは、文王能く大利を布陳して、以て天下に賜い、之を行うこと周徧なり。○施は、始豉反。

桓公是以霸。齊桓公亦能施以致霸。
【読み】
桓公是を以て霸たりき、と。齊の桓公も亦能く施して以て霸を致す。

公與桓子莒之旁邑。辭。讓不受。
【読み】
公桓子に莒の旁邑を與う。辭す。讓りて受けず。

穆孟姬爲之請高唐。陳氏始大。穆孟姬、景公母。傳言陳氏所以興。
【読み】
穆孟姬之が爲に高唐を請う。陳氏始めて大なり。穆孟姬は、景公の母。傳陳氏が興る所以を言う。

秋、七月、平子伐莒、取郠。郠、莒邑。取郠不書、公見討於平丘、魯諱之。○郠、音梗。
【読み】
秋、七月、平子莒を伐ち、郠[こう]を取る。郠は、莒の邑。郠を取ること書さざるは、公平丘に討ぜられて、魯之を諱めばなり。○郠は、音梗。

獻俘、始用人於亳社。以人祭殷社。
【読み】
俘を獻じ、始めて人を亳社[はくしゃ]に用ゆ。人を以て殷社を祭る。

臧武仲在齊、聞之、曰、周公其不饗魯祭乎。周公饗義。魯無義。詩曰、德音孔昭。視民不佻。詩、小雅。佻、偸也。言明德君子必愛民。○佻、他彫反。
【読み】
臧武仲齊に在りて、之を聞きて、曰く、周公は其れ魯の祭を饗けざらん。周公は義に饗く。魯義無し。詩に曰く、德音孔[はなは]だ昭らかなり。民を視ること佻[うす]からず、と。詩は、小雅。佻[ちょう]は、偸[うす]きなり。言うこころは、明德の君子は必ず民を愛す。○佻は、他彫反。

佻之謂甚矣。而壹用之。將誰福哉。壹、同也。同人於畜牲。
【読み】
佻きだも之を甚だしと謂う。而るを壹[おな]じく之を用ゆ。將[はた]誰か福せんや、と。壹は、同じなり。人を畜牲に同じくす。

戊子、晉平公卒。如裨竈之言。
【読み】
戊子、晉の平公卒す。裨竈の言の如し。

鄭伯如晉、及河。晉人辭之。游吉遂如晉。禮、諸侯不相弔。故辭。
【読み】
鄭伯晉に如き、河に及ぶ。晉人之を辭す。游吉遂に晉に如く。禮に、諸侯は相弔せず、と。故に辭す。

九月、叔孫婼・齊國弱・宋華定・衛北宮喜・鄭罕虎・許人・曹人・莒人・邾人・薛人・杞人・小邾人如晉。葬平公也。經不書諸侯大夫者、非盟會。
【読み】
九月、叔孫婼・齊の國弱・宋の華定・衛の北宮喜・鄭の罕虎・許人・曹人・莒人・邾人[ちゅひと]・薛人・杞人・小邾人晉に如く。平公を葬るなり。經諸侯の大夫を書さざるは、盟會に非ざればなり。

鄭子皮將以幣行。見新君之贄。○見、音現。下至因見同。
【読み】
鄭の子皮將に幣を以て行かんとす。新君に見ゆるの贄。○見は、音現。下因見に至るまで同じ。

子產曰、喪焉用幣。用幣必百兩。載幣用車百乘。
【読み】
子產曰く、喪に焉ぞ幣を用いん。幣を用いば必ず百兩ならん。幣を載するに車百乘を用ゆ。

百兩必千人。千人至、將不行。行、用也。
【読み】
百兩なれば必ず千人ならん。千人にて至るも、將に行[もち]いざらんとす。行は、用ゆるなり。

不行、必盡用之。不得見新君、將自費用盡。
【読み】
行いざるも、必ず盡く之を用いん。新君に見ゆることを得ざるも、將に自費して用い盡くさんとす。

幾千人而國不亡。言千人之費不可數。○幾、音紀。數、所角反。
【読み】
幾たびか千人にして國亡びざらんや、と。言うこころは、千人の費は數す可からず。○幾は、音紀。數は、所角反。

子皮固請以行。
【読み】
子皮固く請いて以て行く。

旣葬。諸侯之大夫欲因見新君。叔孫昭子曰、非禮也。弗聽。叔向辭之曰、大夫之事畢矣。送葬禮畢。
【読み】
旣に葬る。諸侯の大夫因りて新君に見えんと欲す。叔孫昭子曰く、禮に非ず、と。聽かず。叔向[しゅくきょう]之を辭して曰く、大夫の事畢われり。送葬の禮畢わる。

而又命孤。孤斬焉在衰絰之中。旣葬未卒哭。故猶服斬衰。
【読み】
而るを又孤に命ず。孤斬焉として衰絰[さいてつ]の中に在り。旣に葬りて未だ卒哭せず。故に猶斬衰を服す。

其以嘉服見、則喪禮未畢、其以喪服見、是重受弔也。大夫將若之何。皆無辭以見。
【読み】
其れ嘉服を以て見えんとすれば、則ち喪禮未だ畢わらず、其れ喪服を以て見えんとすれば、是れ重ねて弔を受くるなり。大夫將之を若何、と。皆辭の以て見ゆる無し。

子皮盡用其幣歸。謂子羽曰、非知之實難。將在行之。言不患不知、患不能行。○以見、音現。下同。
【読み】
子皮盡く其の幣を用いて歸る。子羽に謂いて曰く、知ることの實に難きに非ず。將に之を行うに在らんとす。言うこころは、知らざるを患えず、行うこと能わざるを患う。○以見は、音現。下も同じ。

夫子知之矣。我則不足。言己由子產之戒、旣知其不可、遂行之。是我之不足。
【読み】
夫子之を知れり。我は則ち足らず。言うこころは、己子產の戒めに由り、旣に其の不可を知りて、遂に之を行う。是れ我の足らざるなり。

書曰、欲敗度、縱敗禮、逸書。
【読み】
書に曰く、欲は度を敗り、縱は禮を敗るとは、逸書。

我之謂矣。夫子知度與禮矣。我實縱欲、而不能自克也。欲因喪以慶新君。故縱而行之、不能自勝。○勝、音升。
【読み】
我を謂うなり。夫子は度と禮とを知れり。我は實に縱欲にして、自ら克つこと能わざりき、と。喪に因りて以て新君を慶せんと欲す。故に縱にして之を行いて、自ら勝つこと能わず。○勝は、音升。

昭子至自晉。大夫皆見。高彊見而退。高彊、子良。
【読み】
昭子晉より至る。大夫皆見ゆ。高彊見えて退く。高彊は、子良。

昭子語諸大夫曰、爲人子不可不愼也哉。昔慶封亡、子尾多受邑而稍致諸君、君以爲忠、而甚寵之。將死、疾于公宮。在公宮被疾。○語、魚據反。
【読み】
昭子諸大夫に語げて曰く、人の子と爲りては愼まずんばある可からざるかな。昔慶封亡びしとき、子尾多く邑を受けて稍[ようや]くに諸を君に致せしかば、君以て忠と爲して、甚だ之を寵せり。將に死なんとせしとき、公宮に疾む。公宮に在りて疾を被る。○語は、魚據反。

輦而歸。君親推之。推其車而送之。○推、如字。又他回反。
【読み】
輦[れん]にして歸る。君親ら之を推せり。其の車を推して之を送る。○推は、字の如し。又他回反。

其子不能任、是以在此。忠爲令德、其子弗能任、罪猶及之。難不愼也。喪夫人之力、弃德曠宗、以及其身。不亦害乎。夫人、謂子尾。曠、空也。○任、音壬。喪、息浪反。
【読み】
其の子任うること能わず、是を以て此に在り。忠は令德爲るも、其の子任うること能わざれば、罪猶之に及べり。愼まざること難し。夫の人の力を喪いて、德を弃て宗を曠[むな]しくし、以て其の身に及べり。亦害ならずや。夫の人は、子尾を謂う。曠は、空しきなり。○任は、音壬。喪は、息浪反。

詩曰、不自我先、不自我後、其是之謂乎。詩、小雅。言禍亂不在他、正當己身。以喩高彊身自取此禍。
【読み】
詩に曰く、我より先ならず、我より後ならずとは、其れ是を之れ謂うか、と。詩は、小雅。言うこころは、禍亂他に在らずして、正に己が身に當たる。以て高彊が身自ら此の禍を取るに喩う。

冬、十二月、宋平公卒。初、元公惡寺人柳、欲殺之。元公、平公大子、佐也。○惡、烏路反。
【読み】
冬、十二月、宋の平公卒す。初め、元公寺人柳を惡みて、之を殺さんと欲す。元公は、平公の大子、佐なり。○惡は、烏路反。

及喪、柳熾炭于位、以溫地。
【読み】
喪に及びて、柳炭を位に熾[おこ]し、以て地を溫む。

將至則去之。使公坐其處。○去、去呂反。
【読み】
將に至らんとすれば則ち之を去る。公をして其の處に坐せしむ。○去は、去呂反。

比葬、又有寵。言元公好惡無常。
【読み】
葬る比[ころおい]、又寵有り。元公の好惡常無きを言う。


〔經〕十有一年、春、王二月、叔弓如宋。葬宋平公。夏、四月、丁巳、楚子虔誘蔡侯般殺之于申。蔡公雖弑父而立、楚子誘而殺之、刑其羣士、蔡大夫深怨。故以楚子名告。○般、音班。
【読み】
〔經〕十有一年、春、王の二月、叔弓宋に如く。宋の平公を葬る。夏、四月、丁巳[ひのと・み]、楚子虔蔡侯般を誘きて之を申に殺す。蔡公父を弑して立つと雖も、楚子誘きて之を殺し、其の羣士を刑すれば、蔡の大夫深く怨む。故に楚子の名を以て告ぐ。○般は、音班。

楚公子弃疾帥師圍蔡。五月、甲申、夫人歸氏薨。昭公母。胡女。歸姓。
【読み】
楚の公子弃疾師を帥いて蔡を圍む。五月、甲申[きのえ・さる]、夫人歸氏薨ず。昭公の母。胡の女。歸姓。

大蒐于比蒲。○比、音毗。
【読み】
比蒲に大蒐す。○比は、音毗。

仲孫貜會邾子盟于祲祥。祲祥、地闕。○祲、子鴆反。又七林反。
【読み】
仲孫貜邾子[ちゅし]に會して祲祥[しんしょう]に盟う。祲祥は、地闕く。○祲は、子鴆反。又七林反。

秋、季孫意如會晉韓起・齊國弱・宋華亥・衛北宮佗・鄭罕虎・曹人・杞人于厥憖。厥憖、地闕。○佗、徒何反。憖、魚靳反。又五巾反。一五轄反。
【読み】
秋、季孫意如晉の韓起・齊の國弱・宋の華亥・衛の北宮佗・鄭の罕虎・曹人・杞人に厥憖[けつぎん]に會す。厥憖は、地闕く。○佗は、徒何反。憖は、魚靳反。又五巾反。一に五轄反。

九月、己亥、葬我小君齊歸。齊、謚。
【読み】
九月、己亥[つちのと・い]、我が小君齊歸を葬る。齊は、謚。

冬、十有一月、丁酉、楚師滅蔡。執蔡世子有以歸用之。用之、殺以祭山。
【読み】
冬、十有一月、丁酉[ひのと・とり]、楚の師蔡を滅ぼす。蔡の世子有を執えて以[い]て歸り之を用ゆ。之を用ゆるとは、殺して以て山を祭るなり。

〔傳〕十一年、春、王二月、叔弓如宋、葬平公也。嫌以聘事行。故傳具之。
【読み】
〔傳〕十一年、春、王の二月、叔弓宋に如くは、平公を葬るなり。聘事を以て行くに嫌あり。故に傳之を具にす。

景王問於萇弘曰、今茲諸侯、何實吉、何實凶。萇弘、周大夫。○萇、直良反。
【読み】
景王萇弘[ちょうこう]に問いて曰く、今茲[ことし]諸侯、何れか實に吉、何れか實に凶なる、と。萇弘は、周の大夫。○萇は、直良反。

對曰、蔡凶。此蔡侯般弑其君之歲也。歲在豕韋。襄三十年、蔡世子般弑其君。歲在豕韋。至今十三歲。歲復在豕韋。般卽靈侯也。
【読み】
對えて曰く、蔡凶ならん。此れ蔡侯般が其の君を弑せし歲なり。歲豕韋に在り。襄三十年、蔡の世子般其の君を弑す。歲豕韋に在り。今に至りて十三歲。歲復豕韋に在り。般は卽ち靈侯なり。

弗過此矣。言蔡凶不過此年。
【読み】
此を過ぎじ。蔡の凶此の年を過ぎざるを言う。

楚將有之。然壅也。蔡近楚。故知楚將有之。楚無德而享大利。所以壅積其惡。
【読み】
楚將に之を有たんとす。然れども壅[つちか]うなり。蔡楚に近し。故に楚將に之を有たんとするを知る。楚德無くして大利を享く。其の惡を壅積する所以なり。

歲及大梁、蔡復楚凶。天之道也。楚靈王弑立之歲、歲在大梁。到昭十三年、歲復在大梁。美惡周必復。故知楚凶。
【読み】
歲大梁に及ばば、蔡復り楚凶あらん。天の道なり。楚の靈王弑立の歲、歲大梁に在り。昭十三年に到りて、歲復大梁に在り。美惡は周りて必ず復る。故に楚の凶を知る。

楚子在申。召蔡靈侯。靈侯將往。蔡大夫曰、王貪而無信、唯蔡於感。蔡近楚之大國。故楚常恨其不服順。○感、戶暗反。
【読み】
楚子申に在り。蔡の靈侯を召ぶ。靈侯將に往かんとす。蔡の大夫曰く、王貪りて信無く、唯蔡を於[ここ]に感[うら]む。蔡は楚に近き大國。故に楚常に其の服順せざるを恨む。○感は、戶暗反。

今幣重而言甘。誘我也。不如無往。蔡侯不可。三月、丙申、楚子伏甲而饗蔡侯於申、醉而執之。夏、四月、丁巳、殺之、刑其士七十人。
【読み】
今幣重くして言甘し。我を誘くなり。往くこと無きに如かず、と。蔡侯可[き]かず。三月、丙申[ひのえ・さる]、楚子甲を伏せて蔡侯を申に饗し、醉わせて之を執う。夏、四月、丁巳、之を殺し、其の士七十人を刑す。

公子弃疾帥師圍蔡。傳言楚子無道。
【読み】
公子弃疾師を帥いて蔡を圍む。傳楚子の無道を言う。

韓宣子問於叔向曰、楚其克乎。對曰、克哉。蔡侯獲罪於其君、謂弑父而立。
【読み】
韓宣子叔向[しゅくきょう]に問いて曰く、楚其れ克たんか、と。對えて曰く、克たんかな。蔡侯罪を其の君に獲て、父を弑して立つを謂う。

而不能其民。不能施德。
【読み】
其の民に能くせず。德を施すこと能わず。

天將假手於楚以斃之。借楚手以討蔡。
【読み】
天將に手を楚に假りて以て之を斃さんとす。楚の手を借りて以て蔡を討ず。

何故不克。然肸聞之、不信以幸、不可再也。楚王奉孫吳以討於陳、曰、將定而國。陳人聽命。而遂縣之。事在八年。
【読み】
何の故に克たざらん。然れども肸[きつ]之を聞く、不信にして以て幸いあるは、再びす可からず、と。楚王孫吳を奉じて以て陳を討じて、曰く、將に而[なんじ]の國を定めんとす、と。陳人命を聽く。而るを遂に之を縣にす。事八年に在り。

今又誘蔡而殺其君、以圍其國。雖幸而克、必受其咎。弗能久矣。桀克有緡、以喪其國、紂克東夷、而隕其身。紂爲黎之蒐、東夷叛之、桀爲仍之會、有緡叛之。故伐而克之。
【読み】
今又蔡を誘きて其の君を殺して、以て其の國を圍む。幸いにして克つと雖も、必ず其の咎を受けん。久しきこと能わじ。桀有緡[ゆうびん]に克ちて、以て其の國を喪ぼし、紂東夷に克ちて、其の身を隕せり。紂黎の蒐を爲して、東夷之に叛き、桀仍の會を爲して、有緡之に叛く。故に伐ちて之に克つ。

楚小位下、而亟暴於二王。能無咎乎。
【読み】
楚は小に位下にして、亟[しば]々二王より暴なり。能く咎無からんや。

天之假助不善、非祚之也。厚其凶惡、而降之罰也。且譬之如天、其有五材而將用之、力盡而敝之。是以無拯、不可沒振。金・木・水・火・土五者、爲物用久、則必有敝盡。盡則弃捐。故言無拯。拯、猶救助也。不可沒振、猶沒不可復振。○亟、欺冀反。
【読み】
天の不善に假し助くるは、之を祚[さいわい]するに非ざるなり。其の凶惡を厚くして、之に罰を降さんとなり。且之を譬うるに天の、其の五材有りて之を將い用いて、力盡きて之を敝るが如し。是を以て拯[すく]うこと無く、沒して振う可からざるなり。金・木・水・火・土の五つの者、物の用爲ること久しきときは、則ち必ず敝れ盡きること有り。盡きれば則ち弃捐[きえん]す。故に拯うこと無しと言う。拯は、猶救助のごとし。沒して振う可からずとは、猶沒するの復振う可からずというがごとし。○亟は、欺冀反。

五月、齊歸薨。
【読み】
五月、齊歸薨ず。

大蒐于比蒲、非禮也。
【読み】
比蒲に大蒐するは、禮に非ざるなり。

孟僖子會邾莊公、盟于祲祥、脩好。禮也。蒐、非存亡之由。故臨喪不宜爲之。盟會、以安社稷。故喪盟謂之禮。
【読み】
孟僖子邾の莊公に會して、祲祥に盟い、好を脩む。禮なり。蒐は、存亡の由に非ず。故に喪に臨みては之を爲す宜からず。盟會は、以て社稷を安んず。故に喪盟するは之を禮と謂う。

泉丘人有女。夢以其帷幕孟氏之廟。泉丘、魯邑。
【読み】
泉丘の人女有り。其の帷を以て孟氏の廟に幕すと夢む。泉丘は、魯の邑。

遂奔僖子。其僚從之、鄰女爲僚友者、隨而奔僖子。
【読み】
遂に僖子に奔る。其の僚之に從い、鄰女の僚友爲る者、隨いて僖子に奔る。

盟于淸丘之社、曰、有子、無相弃也。二女自共盟。
【読み】
淸丘の社に盟いて、曰く、子有らば、相弃つること無けん、と。二女自ら共に盟う。

僖子使助薳氏之簉。簉、副倅也。薳氏之女、爲僖子副妾、別居在外。故僖子納泉丘人女、令副助之。○薳、爲彼反。簉、初又反。
【読み】
僖子薳氏[いし]の簉[しゅう]を助けしむ。簉は、副倅なり。薳氏の女、僖子が副妾と爲り、別居して外に在り。故に僖子泉丘人の女を納れて、之を副助せしむ。○薳は、爲彼反。簉は、初又反。

反自祲祥、宿于薳氏、生懿子及南宮敬叔於泉丘人。其僚無子。使字敬叔。字、養也。似雙生。
【読み】
祲祥より反り、薳氏に宿り、懿子と南宮敬叔とを泉丘の人に生ましむ。其の僚は子無し。敬叔を字[やしな]わしむ。字は、養うなり。雙生に似たり。

楚師在蔡。向四月之師。
【読み】
楚の師蔡に在り。向[さき]の四月の師なり。

晉荀吳謂韓宣子曰、不能救陳、又不能救蔡、物以無親。物、事也。
【読み】
晉の荀吳韓宣子に謂いて曰く、陳を救うこと能わず、又蔡を救うこと能わずんば、物以て親しむこと無けん。物は、事なり。

晉之不能、亦可知也己。爲盟主而不恤亡國、將焉用之。
【読み】
晉の不能なる、亦知る可きのみ。盟主と爲りて亡國を恤えずんば、將に焉にか之を用いんとする、と。

秋、會于厥憖、謀救蔡也。不書救蔡、不果救。
【読み】
秋、厥憖に會するは、蔡を救わんことを謀るなり。蔡を救うことを書さざるは、救うことを果たさざればなり。

鄭子皮將行。子產曰、行不遠。不能救蔡也。蔡小而不順、楚大而不德、天將弃蔡以壅楚、盈而罰之。盈其惡。
【読み】
鄭の子皮將に行かんとす。子產曰く、行くこと遠からじ。蔡を救うこと能わじ。蔡は小にして不順、楚は大にして不德、天將に蔡を弃てて以て楚を壅い、盈たせて之を罰せんとす。其の惡を盈たす。

蔡必亡矣。且喪君而能守者鮮矣。三年、王其有咎乎。美惡周必復。王惡周矣。元年、楚子弑君而立、歲在大梁。後三年、十三歲、歲星周復於大梁。○復於、去聲。
【読み】
蔡必ず亡びん。且つ君を喪いて能く守る者は鮮し。三年にして、王其れ咎有らんか。美惡は周りて必ず復る。王の惡周らん、と。元年、楚子君を弑して立つとき、歲大梁に在り。後三年なれば、十三歲、歲星周りて大梁に復る。○復於は、去聲。

晉人使狐父請蔡于楚。弗許。狐父、晉大夫。
【読み】
晉人狐父をして蔡を楚に請わしむ。許さず。狐父は、晉の大夫。

單子會韓宣子于戚。單子、單成公。
【読み】
單子韓宣子に戚に會す。單子は、單の成公。

視下言徐。叔向曰、單子其將死乎。朝有著定、著定、朝内列位常處。謂之表著。
【読み】
視ること下[ひく]く言うこと徐[しず]かなり。叔向曰く、單子其れ將に死せんとするか。朝に著定有り、著定は、朝内列位の常處。之を表著と謂う。

會有表、野會、設表以爲位。
【読み】
會に表有り、野會は、表を設けて以て位を爲す。

衣有襘、帶有結、襘、領會。結、帶結也。○襘、古外反。
【読み】
衣に襘[かい]有り、帶に結有り、襘は、領會。結は、帶結なり。○襘は、古外反。

會朝之言、必聞于表著之位。所以昭事序也。視不過結襘之中、所以道容貌也。言以命之、容貌以明之。失則有闕。今單子爲王官伯、而命事於會、視不登帶、言不過步、貌不道容、而言不昭矣。不道不共、不昭不從。貌正曰共、言順曰從。
【読み】
會朝の言は、必ず表著の位に聞ゆ。事序を昭らかにする所以なり。視ること結襘の中を過ぎざるは、容貌を道[みちび]く所以なり。言以て之を命じ、容貌以て之を明らかにす。失[あやま]てば則ち闕くること有り。今單子王官の伯と爲りて、事を會に命じて、視ること帶より登らず、言うこと步を過ぎざるは、貌容を道かずして、言昭らかならざるなり。道かざれば共ならず、昭らかならざれば從ならず。貌の正を共と曰い、言の順を從と曰う。

無守氣矣。爲此年冬、單子卒起本。
【読み】
守氣無し、と。此の年の冬、單子卒する爲の起本なり。

九月、葬齊歸。公不慼。晉士之送葬者、歸以語史趙。史趙曰、必爲魯郊。言昭公必出在郊野。不能有國。○語、魚據反。
【読み】
九月、齊歸を葬る。公慼[かな]しまず。晉の士の葬を送る者、歸りて以て史趙に語る。史趙曰く、必ず魯の郊と爲らん、と。言うこころは、昭公必ず出でて郊野に在らん。國を有つこと能わじ。○語は、魚據反。

侍者曰、何故。曰、歸姓也。不思親、祖不歸也。姓、生也。言不思親、則不爲祖考所歸佑。
【読み】
侍者曰く、何の故ぞ、と。曰く、歸の姓なり。親を思まざれば、祖歸せざるなり、と。姓は、生なり。言うこころは、親を思わざれば、則ち祖考の爲に歸佑せられず。

叔向曰、魯公室其卑乎。君有大喪、國不廢蒐。謂蒐比蒲。
【読み】
叔向曰く、魯の公室其れ卑しからんか。君大喪有れども、國蒐を廢てず。比蒲に蒐するを謂う。

有三年之喪、而無一日之慼。國不恤喪、不忌君也。忌、畏也。
【読み】
三年の喪有りて、一日の慼しみ無し。國喪を恤えざるは、君を忌[おそ]れざるなり。忌は、畏るるなり。

君無慼容、不顧親也。國不忌君、君不顧親、能無卑乎。殆其失國。爲二十五年、公孫於齊傳。
【読み】
君慼容無きは、親を顧みざるなり。國君を忌れず、君親を顧みずんば、能く卑しきこと無からんや。殆ど其れ國を失わん、と。二十五年、公齊に孫[のが]るる爲の傳なり。

冬、十一月、楚子滅蔡、用隱大子于岡山。蔡靈公之大子、蔡侯廬之父。
【読み】
冬、十一月、楚子蔡を滅ぼして、隱大子を岡山に用ゆ。蔡の靈公の大子、蔡侯廬の父。

申無宇曰、不祥。五牲不相爲用。況用諸侯乎。五牲、牛・羊・豕・犬・雞。○爲、去聲。或如字。
【読み】
申無宇曰く、不祥なり。五牲も相爲に用いず。況んや諸侯を用ゆるをや。五牲は、牛・羊・豕・犬・雞。○爲は、去聲。或は字の如し。

王必悔之。悔爲暴虐。
【読み】
王必ず之を悔いん、と。暴虐をせしことを悔いん。

十二月、單成公卒。終叔向之言。
【読み】
十二月、單の成公卒す。叔向の言を終わる。

楚子城陳・蔡・不羹、襄城縣東南有不羮城。定陵西北有不羮亭。○羮、音郎。漢書作更字。
【読み】
楚子陳・蔡・不羹に城き、襄城縣の東南に不羮城有り。定陵の西北に不羮亭有り。○羮は、音郎。漢書に更の字に作る。

使弃疾爲蔡公。王問於申無宇曰、弃疾在蔡、何如。對曰、擇子莫如父、擇臣莫如君。鄭莊公城櫟而寘子元焉、使昭公不立。子元、鄭公子。莊公寘子元於櫟。桓十五年、厲公因之以殺櫟大夫檀伯、遂居櫟、卒使昭公不安位而見殺。○櫟、力狄反。
【読み】
弃疾をして蔡公爲らしむ。王申無宇に問いて曰く、弃疾蔡に在り、何如、と。對えて曰く、子を擇ぶは父に如くは莫く、臣を擇ぶは君に如くは莫し。鄭の莊公櫟に城きて子元を寘き、昭公をして立たざらしむ。子元は、鄭の公子。莊公子元を櫟に寘く。桓十五年、厲公之に因りて以て櫟の大夫檀伯を殺して、遂に櫟に居り、卒に昭公をして位に安んぜずして殺されしむ。○櫟は、力狄反。

齊桓公城穀而寘管仲焉、至于今賴之。城穀、在莊三十二年。
【読み】
齊の桓公穀に城きて管仲を寘き、今に至るまで之に賴れり。穀に城くは、莊三十二年に在り。

臣聞五大不在邊、五細不在庭、上古金・木・水・火・土、謂之五官。玄鳥氏・丹鳥氏亦有五。又以五鳩鳩民、五雉爲五工正。蓋立官之本也。末世隨事施職。是以官無常數。今無宇稱習古言。故云五大也。言五官之長、專盛過節、則不可居邊、細弱不勝任、亦不可居朝廷。
【読み】
臣聞く、五大は邊に在[お]かず、五細は庭に在かず、上古は金・木・水・火・土、之を五官と謂う。玄鳥氏・丹鳥氏にも亦五つ有り。又五鳩を以て民を鳩[あつ]め、五雉を五工正と爲す。蓋し立官の本ならん。末世は事に隨いて職を施す。是を以て官常數無し。今無宇古言を稱習す。故に五大と云えり。言うこころは、五官の長、專盛にして節に過ぐるは、則ち邊に居く可からず、細弱にして任に勝えざるも、亦朝廷に居く可からず。

親不在外、羈不在内。今弃疾在外、鄭丹在内。襄十九年、丹奔楚。
【読み】
親は外に在かず、羈は内に在かず、と。今弃疾外に在りて、鄭丹内に在り。襄十九年、丹楚に奔る。

君其少戒。
【読み】
君其れ少しく戒めよ、と。

王曰、國有大城、何如。對曰、鄭京・櫟實殺曼伯、曼伯、檀伯也。厲公得櫟、又幷京。○曼、音萬。
【読み】
王曰く、國に大城有るは、何如、と。對えて曰く、鄭の京・櫟實に曼伯を殺し、曼伯は、檀伯なり。厲公櫟を得、又京を幷す。○曼は、音萬。

宋蕭・亳實殺子游、在莊十二年。
【読み】
宋の蕭・亳實に子游を殺し、莊十二年に在り。

齊渠丘實殺無知、在莊九年。渠丘、今齊國西安縣也。齊大夫雍廩邑。
【読み】
齊の渠丘實に無知を殺し、莊九年に在り。渠丘は、今の齊國西安縣なり。齊の大夫雍廩が邑。

衛蒲・戚實出獻公。蒲、甯殖邑。戚、孫林父邑。出獻公、在襄十四年。
【読み】
衛蒲・戚實に獻公を出だせり。蒲は、甯殖が邑。戚は、孫林父が邑。獻公を出だすことは、襄十四年に在り。

若由是觀之、則害於國。末大必折、折其本。
【読み】
若し是に由りて之を觀れば、則ち國に害あり。末大なれば必ず折れ、其の本を折る。

尾大不掉、君所知也。爲十三年、陳・蔡作亂傳。○掉、徒弔反。
【読み】
尾大なれば掉[うご]かされずとは、君の知れる所なり、と。十三年、陳・蔡亂を作す爲の傳なり。○掉[ちょう]は、徒弔反。


〔經〕十有二年、春、齊高偃帥師納北燕伯于陽。三年、燕伯出奔齊。高偃、高傒玄孫、齊大夫。陽、卽唐、燕別邑。中山有唐縣。不言于燕、未得國都。○傒、音奚。
【読み】
〔經〕十有二年、春、齊の高偃師を帥いて北燕伯を陽に納れぬ。三年、燕伯齊に出奔す。高偃は、高傒の玄孫、齊の大夫。陽は、卽ち唐、燕の別邑。中山に唐縣有り。燕にと言わざるは、未だ國都を得ざればなり。○傒は、音奚。

三月、壬申、鄭伯嘉卒。五同盟。
【読み】
三月、壬申[みずのえ・さる]、鄭伯嘉卒す。五たび同盟す。

夏、宋公使華定來聘。定、華椒孫。
【読み】
夏、宋公華定をして來聘せしむ。定は、華椒の孫。

公如晉。至河乃復。晉人以莒故辭公。
【読み】
公晉に如く。河に至りて乃ち復る。晉人莒を以ての故に公を辭す。

五月、葬鄭簡公。三月而葬。速。
【読み】
五月、鄭の簡公を葬る。三月にして葬る。速きなり。

楚殺其大夫成熊。傳在葬簡公上。經從赴。
【読み】
楚其の大夫成熊を殺す。傳は簡公を葬るの上に在り。經は赴[つ]ぐるに從うなり。

秋、七月。冬、十月、公子憖出奔齊。書名、謀亂故也。○憖、魚覲反。一讀爲整。
【読み】
秋、七月。冬、十月、公子憖[ぎん]出でて齊に奔る。名を書すは、亂を謀る故なり。○憖は、魚覲反。一に讀みて整と爲す。

楚子伐徐。不書圍、以乾谿師告。
【読み】
楚子徐を伐つ。圍むを書さざるは、乾谿の師を以て告ぐればなり。

晉伐鮮虞。不書將帥、史闕文。
【読み】
晉鮮虞を伐つ。將帥を書さざるは、史の闕文なり。

〔傳〕十二年、春、齊高偃納北燕伯款于唐、因其衆也。言因唐衆欲納之。故得先入唐。
【読み】
〔傳〕十二年、春、齊の高偃北燕伯款を唐に納るるは、其の衆に因れるなり。言うこころは、唐の衆の之を納れんと欲するに因る。故に先ず唐に入ることを得たり。

三月、鄭簡公卒。將爲葬除。除葬道。○爲、于僞反。
【読み】
三月、鄭の簡公卒す。將に葬の爲に除かんとす。葬道を除く。○爲は、于僞反。

及游氏之廟、游氏、子大叔族。
【読み】
游氏の廟に及び、游氏は、子大叔の族。

將毀焉。子大叔使其除徒執用以立、而無庸毀。用、毀廟具。
【読み】
將に毀たんとす。子大叔其の除徒をして用を執りて以て立ちて、庸[もっ]て毀つこと無からしむ。用は、廟を毀つ具。

曰、子產過女而問何故不毀、乃曰、不忍廟也。諾。將毀矣。敎毀廟者之辭。○女、音汝。
【読み】
曰く、子產女に過りて何の故に毀たざると問わば、乃ち曰え、廟に忍びず、と。諾す。將に毀たんとす、と。廟を毀つ者に敎ゆるの辭。○女は、音汝。

旣如是。子產乃使辟之。
【読み】
旣にして是の如くす。子產乃ち之を辟けしむ。

司墓之室有當道者。簡公別營葬地、不在鄭先公舊墓。故道有臨時迂直也。司墓之室、鄭之掌公墓大夫徒屬之家。○迂、音于。
【読み】
司墓の室道に當たる者有り。簡公別に葬地を營じて、鄭の先公の舊墓に在らず。故に道時に臨みて迂直有り。司墓の室とは、鄭の公墓を掌る大夫の徒屬の家なり。○迂は、音于。

毀之、則朝而塴。塴、下棺。○朝、如字。塴、北鄧反。又甫贈反。又作窆。音砭。
【読み】
之を毀てば、則ち朝にして塴[ほう]す。塴は、棺を下ろすなり。○朝は、字の如し。塴は、北鄧反。又甫贈反。又窆[へん]に作る。音砭[へん]。

弗毀、則日中而塴。子大叔請毀之。曰、無若諸侯之賓何。不欲久留賓。
【読み】
毀たざれば、則ち日中にして塴す。子大叔之を毀たんと請う。曰く、諸侯の賓を若何ともすること無し、と。久しく賓を留むることを欲せず。

子產曰、諸侯之賓能來會吾喪、豈憚日中。無損於賓而民不害、何故不爲。遂弗毀。日中而葬。
【読み】
子產曰く、諸侯の賓の能く來りて吾が喪に會するは、豈日中を憚らんや。賓に損無くして民に害あらずば、何の故に爲さざらん、と。遂に毀たず。日中にして葬る。

君子謂子產於是乎知禮。禮無毀人以自成也。
【読み】
君子謂えらく、子產是に於て禮を知れり。禮は人を毀ちて以て自ら成すこと無し、と。

夏、宋華定來聘、通嗣君也。宋元公新卽位。
【読み】
夏、宋の華定來聘するは、嗣君を通ずるなり。宋の元公新たに位に卽けり。

公享之。爲賦蓼蕭。弗知。又不答賦。蓼蕭、詩小雅。義取燕笑語兮、是以有譽處兮。樂與華定燕語也。又曰、旣見君子、爲龍爲光。欲以寵光賓也。又曰、宜兄宜弟、令德壽凱。言賓有令德、可以壽樂也。又曰、和鸞雍雍、萬福攸同。言欲與賓同福祿也。
【読み】
公之を享す。爲に蓼蕭[りくしょう]を賦す。知らず。又答賦せず。蓼蕭は、詩の小雅。義燕して笑語す、是を以て譽れ有りて處るというに取る。華定と燕語するを樂しむなり。又曰く、旣に君子を見て、龍を爲し光を爲さん、と。以て賓を寵光せんと欲するなり。又曰く、兄に宜しく弟に宜し、令德壽凱せり、と。賓令德有り、以て壽樂す可きを言う。又曰く、和鸞雍雍たり、萬福同じくする攸、と。賓と福祿を同じくせんと欲するを言うなり。

昭子曰、必亡。宴語之不懷、懷、思也。
【読み】
昭子曰く、必ず亡びん。宴語を懷[おも]わず、懷は、思うなり。

寵光之不宣、宣、揚也。
【読み】
寵光を宣[あ]げず、宣は、揚ぐるなり。

令德之不知、同福之不受、將何以在。爲二十年、華定出奔傳。
【読み】
令德を知らず、同福を受けず、將[はた]何を以て在らんや、と。二十年、華定出奔する爲の傳なり。

齊侯・衛侯・鄭伯如晉、朝嗣君也。晉昭公新立。
【読み】
齊侯・衛侯・鄭伯晉に如くは、嗣君に朝するなり。晉の昭公新たに立つ。

公如晉。亦欲朝嗣君。
【読み】
公晉に如く。亦嗣君に朝せんと欲す。

至河乃復。取郠之役、在十年。
【読み】
河に至りて乃ち復る。郠[こう]を取るの役に、十年に在り。

莒人愬于晉。晉有平公之喪、未之治也。故辭公。公子憖遂如晉。憖、魯大夫。如晉不書、還不復命而奔。故史不書於策。
【読み】
莒人晉に愬[うった]う。晉平公の喪有りて、未だ之を治せず。故に公を辭す。公子憖遂に晉に如く。憖は、魯の大夫。晉に如くこと書さざるは、還りて復命せずして奔る。故に史策に書さざればなり。

晉侯享諸侯。子產相鄭伯、辭於享、請免喪而後聽命。簡公未葬。
【読み】
晉侯諸侯を享す。子產鄭伯を相けて、享を辭し、喪を免れて而して後に命を聽かんと請う。簡公未だ葬らず。

晉人許之。禮也。善晉不奪孝子之情。
【読み】
晉人之を許す。禮なり。晉孝子の情を奪わざるを善す。

晉侯以齊侯宴。中行穆子相。穆子、荀吳。
【読み】
晉侯齊侯と宴す。中行穆子相く。穆子は、荀吳。

投壺、晉侯先。穆子曰、有酒如淮、有肉如坻。淮、水名。坻、山名。○坻、直疑反。
【読み】
投壺し、晉侯先だつ。穆子曰く、酒有り淮の如く、肉有り坻[ち]の如し。淮は、水の名。坻は、山の名。○坻は、直疑反。

寡君中此、爲諸侯師。中之。齊侯舉矢曰、有酒如澠、有肉如陵。澠水、出齊國臨淄縣北、入時水。陵、大阜也。○中、丁仲反。下同。澠、音繩。
【読み】
寡君此を中てば、諸侯の師爲らん、と。之に中つ。齊侯矢を舉げて曰く、酒有り澠[じょう]の如く、肉有り陵の如し。澠水は、齊國臨淄縣の北に出でて、時水に入る。陵は、大阜なり。○中は、丁仲反。下も同じ。澠は、音繩。

寡人中此、與君代興。代、更也。○更、音庚。
【読み】
寡人此を中てば、君と代々興らん、と。代は、更々なり。○更は、音庚。

亦中之。
【読み】
亦之に中つ。

伯瑕謂穆子、伯瑕、士文伯。
【読み】
伯瑕穆子に謂いて、伯瑕は、士文伯。

曰、子失辭。吾固師諸侯矣。壺何爲焉。其以中雋也。言投壺中、不足爲雋異。
【読み】
曰く、子辭を失えり。吾れ固より諸侯に師たり。壺何をかせん。其れ中つるを以て雋[すぐ]るとせんや。言うこころは、投壺して中つるも、雋異[しゅんい]とするに足らず。

齊君弱吾君。歸弗來矣。欲與晉君代興。是弱之。
【読み】
齊君吾が君を弱しとせり。歸らば來らざらん、と。晉君と代々興らんと欲す。是れ之を弱しとするなり。

穆子曰、吾軍帥彊禦、卒乘競勸、今猶古也。齊將何事。言晉德不衰於古。齊不事晉、將無所事。
【読み】
穆子曰く、吾が軍帥彊禦、卒乘競勸すること、今猶古のごとし。齊將に何れに事えんとする、と。言うこころは、晉の德古より衰えず。齊晉に事えずんば、將に事うる所無からんとす。

公孫傁趨進曰、日旰君勤。可以出矣。以齊侯出。傁、齊大夫。傳言晉之衰。○傁、素口反。亦所流反。旰、古旦反。
【読み】
公孫傁趨り進みて曰く、日旰[た]け君勤む。以て出ず可し、と。齊侯を以[い]て出ず。傁は、齊の大夫。傳晉の衰えたるを言う。○傁は、素口反。亦所流反。旰[かん]は、古旦反。

楚子謂成虎若敖之餘也、遂殺之。成虎、令尹子玉之孫。與鬭氏同出於若敖。宣四年、鬭椒作亂。今楚子信譖、而託討若敖之餘。
【読み】
楚子成虎を若敖の餘なりと謂いて、遂に之を殺す。成虎は、令尹子玉の孫。鬭氏と同じく若敖より出ず。宣四年、鬭椒亂を作しぬ。今楚子譖を信じて、若敖の餘を討ずるに託す。

或譖成虎於楚子。成虎知之而不能行。
【読み】
或ひと成虎を楚子に譖[しこ]づ。成虎之を知りて行[さ]ること能わざりき。

書曰楚殺其大夫成、懷寵也。解經所以書名。
【読み】
書して楚其の大夫成を殺すと曰うは、寵を懷えばなり。經の名を書す所以を解く。
*頭注に、「按成熊、舊作虎、寫誤也。」とある。

六月、葬鄭簡公。傳終子產辭享。明旣葬、則爲免喪。經書五月誤。
【読み】
六月、鄭の簡公を葬る。傳子產享を辭するを終わる。明けし、旣に葬れば、則ち喪を免ぐとすることを。經五月に書すは誤りなり。

晉荀吳僞會齊師者、假道於鮮虞、遂入昔陽。鮮虞、白狄別種。在中山新市縣。昔陽、肥國都。樂平沾縣東有昔陽城。
【読み】
晉の荀吳齊の師に會する者の僞[まね]して、道を鮮虞に假り、遂に昔陽に入る。鮮虞は、白狄の別種。中山新市縣に在り。昔陽は、肥の國都。樂平沾[てん]縣の東に昔陽城有り。

秋、八月、壬午、滅肥、以肥子緜皐歸。肥、白狄也。緜皐、其君名。鉅鹿下曲陽縣西南有肥累城。爲下晉伐鮮虞起。○累、音壘。
【読み】
秋、八月、壬午[みずのえ・うま]、肥を滅ぼし、肥子緜皐を以て歸る。肥は、白狄なり。緜皐は、其の君の名。鉅鹿下曲陽縣の西南に肥累城有り。下の晉鮮虞を伐つ爲の起なり。○累、音壘。

周原伯絞虐其輿臣、使曹逃。原伯絞、周大夫、原公也。輿、衆也。曹、群也。
【読み】
周の原伯絞其の輿臣を虐げて、曹をして逃げしむ。原伯絞は、周の大夫、原公なり。輿は、衆なり。曹は、群なり。

冬、十月、壬申、朔、原輿人逐絞、而立公子跪尋。跪尋、絞弟。
【読み】
冬、十月、壬申[みずのえ・さる]、朔、原の輿人絞を逐いて、公子跪尋[きじん]を立つ。跪尋は、絞の弟。

絞奔郊。郊、周邑。
【読み】
絞郊に奔る。郊は、周の邑。

甘簡公無子。立其弟過。甘簡公、周卿士。○過、古禾反。下之子過同。
【読み】
甘簡公子無し。其の弟過を立つ。甘簡公は、周の卿士。○過は、古禾反。下の之子過も同じ。

過將去成・景之族。成公・景公、皆過之先君。○去、起呂反。
【読み】
過將に成・景の族を去らんとす。成公・景公は、皆過の先君。○去は、起呂反。

成・景之族賂劉獻公。欲使殺過。劉獻公亦周卿士。劉定公子。
【読み】
成・景の族劉獻公に賂う。過を殺さしめんと欲す。劉獻公も亦周の卿士。劉定公の子。

丙申、殺甘悼公、悼公、卽過。
【読み】
丙申[ひのえ・さる]、甘悼公を殺して、悼公は、卽ち過なり。

而立成公之孫鰌。鰌、平公。○鰌、音秋。
【読み】
成公の孫鰌[しゅう]を立つ。鰌は、平公。○鰌は、音秋。

丁酉、殺獻大子之傅庾皮之子過、過、劉獻公大子之傅。
【読み】
丁酉[ひのと・とり]、獻大子の傅庾皮[ゆひ]の子過を殺し、過は、劉獻公の大子の傅。

殺瑕辛于市、及宮嬖綽・王孫沒・劉州鳩・陰忌・老陽子。六子、周大夫。及庾過、皆甘悼公之黨。傳言周衰、原・甘二族所以遂微。
【読み】
瑕辛を市に殺し、宮嬖綽・王孫沒・劉州鳩・陰忌・老陽子に及ぶ。六子は、周の大夫。及び庾過は、皆甘悼公の黨。傳周衰えて、原・甘二族の遂に微なる所以を言う。

季平子立、而不禮於南蒯。蒯、南遺之子。季氏費邑宰。○蒯、苦怪反。費、音祕。
【読み】
季平子立ちて、南蒯に禮あらず。蒯は、南遺の子。季氏が費邑の宰。○蒯は、苦怪反。費は、音祕。

南蒯謂子仲、子仲、公子憖。
【読み】
南蒯子仲に謂えらく、子仲は、公子憖。

吾出季氏、而歸其室於公。室、季氏家財。
【読み】
吾れ季氏を出だして、其の室を公に歸さん。室は、季氏の家財。

子更其位。更、代也。○更、音庚。
【読み】
子其の位に更われ。更は、代わるなり。○更は、音庚。

我以費爲公臣。子仲許之。南蒯語叔仲穆子、且告之故。穆子、叔仲帶之子、叔仲小也。語以欲出季氏、以不見禮故。○語、魚據反。
【読み】
我れ費を以[い]て公の臣と爲らん、と。子仲之を許す。南蒯叔仲穆子に語り、且つ之に故を告ぐ。穆子は、叔仲帶の子、叔仲小なり。語るに季氏を出ださんと欲するは、禮せられざるを以ての故なるを以てす。○語は、魚據反。

季悼子之卒也、叔孫昭子以再命爲卿。悼子、季武子之子、平子父也。傳言叔孫之見命、乃在平子爲卿之前。
【読み】
季悼子の卒するや、叔孫昭子再命を以て卿と爲る。悼子は、季武子の子、平子の父なり。傳叔孫の命ぜらるるは、乃ち平子卿と爲るの前に在るを言う。

及平子伐莒、克之、更受三命。十年、平子伐莒、以功加三命。昭子不伐莒、亦以例加爲三命。
【読み】
平子が莒を伐ちて、之に克つに及びて、更に三命を受く。十年、平子莒を伐ち、功を以て三命を加う。昭子は莒を伐たざるも、亦例を以て加えて三命と爲る。

叔仲子欲構二家、欲構使相憎。
【読み】
叔仲子二家を構えんと欲し、構えて相憎ましめんと欲す。

謂平子曰、三命踰父兄、非禮也。言昭子受三命、自踰其先人。
【読み】
平子に謂いて曰く、三命父兄に踰ゆるは、禮に非ざるなり、と。昭子三命を受けて、自ら其の先人に踰ゆるを言う。

平子曰、然。故使昭子。使昭子自貶黜。
【読み】
平子曰く、然り、と。故に昭子をせしむ。昭子をして自ら貶黜せしむ。

昭子曰、叔孫氏有家禍、殺適立庶。故婼也及此。禍在四年。
【読み】
昭子曰く、叔孫氏家の禍有りて、適を殺して庶を立つ。故に婼[ちゃく]や此に及べり。禍は四年に在り。

若因禍以斃之、則聞命矣。言因亂討己、不敢辭。
【読み】
若し禍に因りて以て之を斃さば、則ち命を聞かん。言うこころは、亂に因りて己を討ぜば、敢えて辭せず。

若不廢君命、則固有著矣。著、位次。
【読み】
若し君命を廢せずんば、則ち固より著有り、と。著は、位次なり。

昭子朝而命吏曰、婼將與季氏訟。書辭無頗。頗、偏也。○頗、普何反。
【読み】
昭子朝して吏に命じて曰く、婼將に季氏と訟えんとす。書辭頗なること無かれ、と。頗は、偏なり。○頗は、普何反。

季孫懼、而歸罪於叔仲子。故叔仲小・南蒯・公子憖謀季氏。
【読み】
季孫懼れて、罪を叔仲子に歸す。故に叔仲小・南蒯・公子憖季氏を謀る。

憖告公、而遂從公如晉。憖、子仲。
【読み】
憖公に告げて、遂に公に從いて晉に如く。憖は、子仲。

南蒯懼不克、以費叛、如齊。子仲還、及衛、聞亂、逃介而先。介、副使也。
【読み】
南蒯克たざらんことを懼れ、費を以て叛き、齊に如く。子仲還り、衛に及び、亂を聞き、介を逃げて先だつ。介は、副使なり。

及郊、聞費叛、遂奔齊。言及郊、解經所以書出。
【読み】
郊に及び、費の叛くと聞き、遂に齊に奔る。郊に及ぶと言うは、經の出づと書す所以を解くなり。

南蒯之將叛也、其郷人或知之、過之而歎、郷人過蒯而歎。
【読み】
南蒯の將に叛かんとするや、其の郷人或は之を知り、之を過りて歎じ、郷人蒯を過りて歎ず。

且言曰、恤恤乎、湫乎、攸乎。恤恤、憂患。湫、愁隘。攸、懸危之貌。○湫、子小反。又在酒反。一音秋。
【読み】
且つ言いて曰く、恤恤乎たり、湫乎たり、攸乎たり。恤恤は、憂患。湫は、愁隘。攸は、懸危の貌。○湫は、子小反。又在酒反。一に音秋。

深思而淺謀、邇身而遠志、家臣而君圖。家臣而圖人君之事。故言思深而謀淺、身近而志遠。○思、息嗣反。
【読み】
深思にして淺謀、邇身にして遠志、家臣にして君圖す。家臣にして人君の事を圖る。故に思深くして謀淺く、身近くして志遠しと言う。○思は、息嗣反。

有人矣哉。言今有此人、微以感之。
【読み】
人有るかな、と。今此の人有りと言いて、微に以て之を感ぜしむ。

南蒯枚筮之。不指其事、汎卜吉凶。
【読み】
南蒯之を枚筮す。其の事を指さずして、吉凶を汎卜す。

遇坤 坤下坤上、坤。
【読み】
坤下坤上は、坤。

之比坤下坎上、比。坤六五爻變。
【読み】
に之くに遇う。坤下坎上は、比。坤の六五の爻變ず。

曰、黃裳元吉。坤六五爻辭。
【読み】
曰く、黃裳元吉、と。坤の六五の爻の辭。

以爲大吉也。示子服惠伯曰、卽欲有事、何如。惠伯曰、吾嘗學此矣。忠信之事則可。不然必敗。外彊内溫、忠也。坎、險。故彊。坤、順。故溫。彊而能溫。所以爲忠。
【読み】
大吉と以爲えり。子服惠伯に示して曰く、卽[も]し事有らんと欲せば、何如、と。惠伯曰く、吾れ嘗て此を學べり。忠信の事は則ち可なり。然らざれば必ず敗るる。外彊く内溫なるは、忠なり。坎は、險。故に彊。坤は、順。故に溫。彊にして能く溫。忠爲る所以なり。

和以率貞、信也。水和而土安正。和正、信之本也。
【読み】
和以て貞に率うは、信なり。水は和して土は安正。和正は、信の本なり。

故曰、黃裳元吉。黃、中之色也。裳、下之飾也。元、善之長也。中不忠、不得其色、言非黃。
【読み】
故に曰く、黃裳なれば元吉、と。黃は、中の色なり。裳は、下の飾りなり。元は、善の長なり。中忠ならざれば、其の色を得ず、黃に非ざるを言う。

下不共、不得其飾、不爲裳。
【読み】
下共ならざれば、其の飾りを得ず、裳と爲らず。

事不善、不得其極。失中德。
【読み】
事善ならざれば、其の極を得ず。中德を失う。

外内倡和爲忠、不相違也。○和、戶臥反。
【読み】
外内倡和するを忠と爲し、相違わざるなり。○和は、戶臥反。

率事以信爲共、率、猶行也。
【読み】
事を率[おこな]うに信を以てするを共と爲し、率は、猶行うのごとし。

供養三德爲善。三德、謂正直・剛克・柔克也。○供、九用反。養、餘亮反。
【読み】
三德を供養するを善と爲す。三德は、正直・剛克・柔克を謂うなり。○供は、九用反。養は、餘亮反。

非此三者弗當。非忠・信・善、不當此卦。○當、如字。或丁浪反。
【読み】
此の三つの者に非ざれば當たらず。忠・信・善に非ざれば、此の卦に當たらず。○當は、字の如し。或は丁浪反。

且夫易、不可以占險。將何事也。且可飾乎。夫易、猶此易。謂黃裳元吉之卦。問其何事、欲令從下之飾。
【読み】
且つ夫の易は、以て險を占う可からず。將に何を事とせんとする。且[しばら]く飾る可けんか。夫の易は、猶此の易のごとし。黃裳元吉の卦を謂う。其れ何を事とせんと問うは、下の飾りに從わしめんと欲するなり。

中美能黃、上美爲元、下美則裳。參成可筮。參美盡備、吉可如筮。
【読み】
中の美は能く黃、上の美は元爲り、下の美は則ち裳。參つながら成りて筮す可し。參美盡く備わりて、吉筮の如くなる可し。

猶有闕也、筮雖吉、未也。有闕、謂不參成。
【読み】
猶闕くること有れば、筮吉なりと雖も、未だし、と。闕くること有りとは、參成せざるを謂う。

將適費。飮郷人酒。南蒯自其家還適費。○飮、於鴆反。
【読み】
將に費に適かんとす。郷人に酒を飮ましむ。南蒯其の家より還りて費に適く。○飮は、於鴆反。

郷人或歌之曰、我有圃、生之杞乎。言南蒯在費、欲爲亂。如杞生於園圃。非宜也。杞、世所謂枸杞也。
【読み】
郷人の或ひと之を歌いて曰く、我に圃有り、之に杞を生ぜんか。言うこころは、南蒯費に在りて、亂を爲さんと欲す。杞の園圃に生ずるが如し。宜しきに非ず。杞は、世の所謂枸杞[くこ]なり。

從我者子乎。子、男子之通稱。言從己可不失今之尊。○稱、尺證反。
【読み】
我に從わん者は子ならんか。子は、男子の通稱。己に從わば今の尊を失わざる可きを言う。○稱は、尺證反。

去我者鄙乎。倍其鄰者恥乎。鄰、猶親也。
【読み】
我を去らん者は鄙ならんか。其の鄰に倍かん者は恥ならんか。鄰は、猶親のごとし。

已乎已乎。非吾黨之士乎。已乎已乎、言自遂不改。
【読み】
已めんや已めんや。吾が黨の士に非ざらんや、と。已乎已乎とは、自遂して改めざるを言う。

平子欲使昭子逐叔仲小。欲以自解說。
【読み】
平子昭子をして叔仲小を逐わしめんと欲す。以て自ら解說せんと欲す。

小聞之、不敢朝。昭子命吏謂小待政於朝、曰、吾不爲怨府。言不能爲季氏逐小、生怨禍之聚。爲明年、叔弓圍費傳。
【読み】
小之を聞きて、敢えて朝せず。昭子吏に命じて小に政を朝に待てと謂わしめて、曰く、吾れ怨みの府と爲らず、と。言うこころは、季氏の爲に小を逐いて、怨禍の聚を生ずること能わず。明年、叔弓費を圍む爲の傳なり。

楚子狩于州來、狩、冬獵也。
【読み】
楚子州來に狩し、狩は、冬獵なり。

次于潁尾、潁水之尾。在下蔡西。
【読み】
潁尾に次[やど]り、潁水の尾。下蔡の西に在り。

使蕩侯・潘子・司馬督・嚻尹午・陵尹喜帥師圍徐、以懼吳。五子、楚大夫。徐、吳與國。故圍之以偪吳。○嚻、五刀反。又許驕反。
【読み】
蕩侯・潘子・司馬督・嚻尹午[ごういんご]・陵尹喜をして師を帥いて徐を圍ましめて、以て吳を懼[おど]す。五子は、楚の大夫。徐は、吳の與國。故に之を圍みて以て吳に偪る。○嚻は、五刀反。又許驕反。

楚子次于乾谿、在譙國城父縣南。
【読み】
楚子乾谿に次りて、譙國城父縣の南に在り。

以爲之援。雨雪。王皮冠、秦復陶、秦所遺羽衣也。○雨、于付反。復、音服。一音福。
【読み】
以て之が援を爲す。雪雨[ふ]る。王皮冠し、秦の復陶し、秦の遺る所の羽衣なり。○雨は、于付反。復は、音服。一に音福。

翠被、以翠羽飾被。
【読み】
翠被し、翠羽を以て被を飾る。

豹舃、以豹皮爲履。
【読み】
豹舃[ひょうせき]し、豹皮を以て履と爲す。

執鞭以出。執鞭以敎令。
【読み】
鞭を執りて以て出づ。鞭を執りて以て敎令す。

僕析父從。楚大夫。○從、才用反。
【読み】
僕析父從う。楚の大夫。○從は、才用反。

右尹子革夕。子革、鄭丹。夕、莫見。○莫、音暮。見、賢遍反。
【読み】
右尹子革夕す。子革は、鄭丹。夕は、莫見。○莫は、音暮。見は、賢遍反。

王見之、去冠被、舍鞭、敬大臣。○去、起呂反。舍、音捨。
【読み】
王之を見て、冠被を去り、鞭を舍て、大臣を敬す。○去は、起呂反。舍は、音捨。

與之語曰、昔我先王熊繹、楚始封君。
【読み】
之と語りて曰く、昔我が先王熊繹、楚の始封の君。

與呂伋・ 齊大公之子、丁公。
【読み】
呂伋[りょきゅう]・ 齊の大公の子、丁公。

王孫牟・ 衛康叔子、康伯。
【読み】
王孫牟・ 衛の康叔の子、康伯。

燮父・ 晉唐叔之子。○燮、素協反。
【読み】
燮父[しょうほ]・ 晉の唐叔の子。○燮は、素協反。

禽父、周公子、伯禽。
【読み】
禽父と、周公の子、伯禽。

竝事康王、康王、成王子。
【読み】
竝に康王に事えしに、康王は、成王の子。

四國皆有分、我獨無有。四國、齊・晉・魯・衛。分、珍寶之器。○分、扶問反。下同。
【読み】
四國は皆分有りて、我れ獨り有ること無し。四國は、齊・晉・魯・衛。分は、珍寶の器。○分は、扶問反。下も同じ。

今吾使人於周、求鼎以爲分。王其與我乎。對曰、與君王哉。昔我先王熊繹辟在荆山、在新城沶郷縣南。○辟、匹亦反。沶、音市。
【読み】
今吾れ人を周に使わして、鼎を求めて以て分と爲さんとす。王其れ我に與えんか、と。對えて曰く、君王に與えんかな。昔我が先王熊繹荆山に辟在して、新城沶郷[しきょう]縣の南に在り。○辟は、匹亦反。沶は、音市。

篳路藍縷、以處草莽、跋涉山林、以事天子、唯是桃弧棘矢、以共禦王事。桃弧棘矢、以禦不祥。言楚在山林、少所出有。○共、音恭。禦、魚呂反。
【読み】
篳路[ひつろ]藍縷[らんい]にて、以て草莽に處り、山林を跋涉して、以て天子に事え、唯れ是れ桃弧棘矢、以て王事に共禦せり。桃弧棘矢は、以て不祥を禦ぐ。言うこころは、楚は山林に在りて、出だす所の有[もの]少なし。○共は、音恭。禦は、魚呂反。

齊、王舅也。成王母、齊大公女。
【読み】
齊は、王の舅なり。成王の母は、齊の大公の女。

晉及魯・衛、王母弟也。楚是以無分、而彼皆有。今周與四國、服事君王、將唯命是從。豈其愛鼎。
【読み】
晉と魯・衛とは、王の母弟なり。楚是を以て分無くして、彼皆有り。今周と四國と、君王に服事して、將に唯命に是れ從わんとす。豈其れ鼎を愛まんや、と。

王曰、昔我皇祖伯父昆吾、舊許是宅、陸終氏生六子。長曰昆吾、少曰季連。季連、楚之祖。故謂昆吾爲伯父。昆吾嘗居許地。故曰舊許是宅。
【読み】
王曰く、昔我が皇祖伯父昆吾、舊許に是れ宅りしに、陸終氏六子を生む。長を昆吾と曰い、少を季連と曰う。季連は、楚の祖。故に昆吾を謂いて伯父と爲す。昆吾嘗て許の地に居れり。故に舊許に是れ宅ると曰う。

今鄭人貪賴其田、而不我與。我若求之、其與我乎。對曰、與君王哉。周不愛鼎。鄭敢愛田。
【読み】
今鄭人其の田を貪賴して、我に與えず。我れ若し之を求めば、其れ我に與えんか、と。對えて曰く、君王に與えんかな。周だも鼎を愛まず。鄭敢えて田を愛まんや、と。

王曰、昔諸侯遠我而畏晉。今我大城陳・蔡・不羹、賦皆千乘。子與有勞焉。諸侯其畏我乎。對曰、畏君王哉。是四國者、專足畏也。四國、陳・蔡・二不羹。○遠、于萬反。羹、音郎。與、音預。
【読み】
王曰く、昔諸侯我を遠ざけて晉を畏れたり。今我れ大いに陳・蔡・不羹に城きて、賦皆千乘なり。子與りて勞有り。諸侯其れ我を畏れんか、と。對えて曰く、君王を畏れんかな。是の四國なる者は、專ら畏るるに足れり。四國は、陳・蔡・二不羹。○遠は、于萬反。羹は、音郎。與は、音預。

又加之以楚。敢不畏君王哉。
【読み】
又之に加うるに楚を以てす。敢えて君王を畏れざらんや、と。

工尹路請曰、君王命剝圭以爲鏚柲。鏚、斧也。柲、柄也。破圭玉以飾斧柄。○鏚、音戚。柲、音祕。
【読み】
工尹路請いて曰く、君王命じて圭を剝[やぶ]りて以て鏚柲[せきひ]を爲さしむ。鏚は、斧なり。柲は、柄なり。圭玉を破りて以て斧の柄を飾るなり。○鏚は、音戚。柲は、音祕。

敢請命。請制度之命。
【読み】
敢えて命を請う、と。制度の命を請う。

王入視之。析父謂子革、吾子、楚國之望也。今與王言如響。國其若之何。譏其順王心如響應聲。
【読み】
王入りて之を視る。析父子革に謂えらく、吾子は、楚國の望みなり。今王と言うこと響の如し。國其れ之を若何、と。其の王の心に順うこと響の聲に應ずるが如きを譏る。

子革曰、摩厲以須王出、吾刃將斬矣。以己喩鋒刃。欲自摩厲以斬王之淫慝。
【読み】
子革曰く、摩厲して以て王の出づるを須ち、吾が刃將に斬らんとするなり、と。己を以て鋒刃に喩う。自ら摩厲して以て王の淫慝を斬らんと欲す。

王出復語。左史倚相趨過。倚相、楚史名。○復、扶又反。倚、於綺反。
【読み】
王出でて復語る。左史倚相趨り過ぐ。倚相は、楚の史の名。○復は、扶又反。倚は、於綺反。

王曰、是良史也。子善視之。是能讀三墳・五典・八索・九丘。皆古書名。○索、所白反。
【読み】
王曰く、是れ良史なり。子善く之を視よ。是れ能く三墳・五典・八索・九丘を讀めり、と。皆古書の名。○索は、所白反。

對曰、臣嘗問焉、昔穆王欲肆其心、周穆王。肆、極也。
【読み】
對えて曰く、臣嘗て焉に問えらくは、昔穆王其の心を肆[きわ]めんと欲し、周の穆王。肆は、極むるなり。

周行天下、將皆必有車轍馬跡焉、祭公謀父作祈招之詩、以止王心、謀父、周卿士。祈父、周司馬。世掌甲兵之職。招、其名。祭公方諫遊行。故指司馬官而言。此詩逸。○周行、如字。又下孟反。祭、側界反。招、常遙反。
【読み】
天下を周行して、將に皆必ず車轍馬跡有らせんとせしを、祭公謀父祈招の詩を作りて、以て王の心を止めしかば、謀父は、周の卿士。祈父は、周の司馬。世々甲兵の職を掌る。招は、其の名。祭公方に遊行を諫む。故に司馬官を指して言う。此の詩逸せり。○周行は、字の如し。又下孟反。祭は、側界反。招は、常遙反。

王是以獲沒於祗宮。獲沒、不見簒弑。○祗、音支。又音祈。
【読み】
王是を以て祗宮に沒することを獲たりという。沒することを獲るとは、簒弑せられざるなり。○祗は、音支。又音祈。

臣問其詩而不知也。若問遠焉、其焉能知之。王曰、子能乎。對曰、能。其詩曰、祈招之愔愔、式昭德音。愔愔、安和貌。式、用也。昭、明也。○愔、一心反。
【読み】
臣其の詩を問えども知らず。若し遠きを問わば、其れ焉ぞ能く之を知らん、と。王曰く、子能くするか、と。對えて曰く、能くす。其の詩に曰く、祈招の愔愔[いんいん]たる、式[もっ]て德音を昭らかにせよ。愔愔は、安和の貌。式は、用てなり。昭は、明らかなり。○愔は、一心反。

思我王度、式如玉、式如金。金・玉、取其堅重。
【読み】
我が王の度を思いて、式て玉の如くにし、式て金の如くにせよ。金・玉は、其の堅重に取る。

形民之力、而無醉飽之心。言國之用民、當隨其力任、如金冶之器、隨器而制形。故言形民之力、去其醉飽過盈之心。
【読み】
民の力を形にして、醉飽の心無かれ、と。言うこころは、國の民を用ゆる、當に其の力の任に隨いて、金冶の器の、器に隨いて形を制するが如くなるべし。故に言う、民の力を形にして、其の醉飽過盈の心を去る、と。

王揖而入、饋不食、寢不寐、數日、深感子革之言。○數、所主反。
【読み】
王揖して入り、饋[おく]れども食わず、寢ぬれども寐ねざること、數日、深く子革の言に感ず。○數は、所主反。

不能自克、以及於難。克、勝也。○難、乃旦反。勝、升證反。又音升。
【読み】
自ら克つこと能わずして、以て難に及べり。克は、勝つなり。○難は、乃旦反。勝は、升證反。又音升。

仲尼曰、古也有志、克己復禮、仁也。信善哉。楚靈王若能如是、豈其辱於乾谿。
【読み】
仲尼曰く、古に志有り、己に克ちて禮に復るは、仁なり、と。信に善いかな。楚の靈王若し能く是の如くならば、豈其れ乾谿に辱められんや、と。

晉伐鮮虞、因肥之役也。肥役、在此年。
【読み】
晉鮮虞を伐つは、肥の役に因るなり。肥の役は、此の年に在り。



經八年。干徵師。古丹反。蒐。所求反。于紅。戶東反。千乘。繩證反。不稱將。子匠反。帥。所類反。嬖人。必計反。
傳。魏楡。服云、魏、邑也。楡、州里名。或馮焉。皮冰反。注同。怨讟。徒木反。崇侈。昌氏反。又尺氏反。虒。本又作。同。祁。巨之反。一音巨支反。臨汾。扶云反。怨咎。其九反。下文同。僭而。子念反。注同。不信也。是瘁。在醉反。哿矣。毛詩傳云、可也。卑躬。必爾反。本又作俾。○今本亦俾。處休。許虯反。美也。適夫人。丁歷反。本又作嫡。○今本亦嫡。公子勝。升證反。又音升。哀公縊。一豉反。疑爲。于僞反。下爲子良立宰・爲之立宰同。故重。直用反。若何弔也。本或作若可弔也。千乘。繩證反。注同。數軍。色主反。西竟。音境。且見。賢遍反。頃公。音傾。下文竝同。鑄也。之樹反。捷也。在接反。孺子。而樹反。本亦作長矣。丁丈反。則數人。色主反。下同。去戎。起呂反。著常。張略反。子盍。胡臘反。下同。稽顙。音啓。下素黨反。請寘。之豉反。於幄。於角反。使穿。音川。封戌。音恤。不諂。勑檢反。皇頡。戶結反。顓。音專。頊。許玉反。鶉火。市春反。析木。星歷反。將復。扶又反。一音服。自幕。音莫。瞽。音古。瞍。素口反。舜重。直用反。曰嬀。九危反。已見。賢遍反。
經九年。仲孫貜。徐居碧反。
傳。濮西。音卜。其處。昌慮反。閻嘉。以廉反。詹桓。之廉反。自夏。戶雅反。注同。駘。依字應作邰。岐。其宜反。之長。丁丈反。下師長同。所治。直吏反。漦城。一音來。本或作釐。○今本亦釐。樂安。音洛。巴。必加反。燕。於賢反。亳。步各反。以蕃。方元反。屛周。必幷反。如卞。本又作弁。皮彥反。○今本亦弁。髦。音毛。檮。徒刀反。杌。五忽反。四裔。以制反。以禦。魚呂反。螭。勑知反。魅。本又作鬽。武冀反。之姦。古顏反。瓜州。古華反。敦。徒門反。煌。音皇。使偪。彼力反。郊甸。徒遍反。之咎。其九反。封殖。時力反。封疆。居良反。以畜。許又反。一音許六反。牧。音目。又音茂。與襚。音遂。潁俘。芳夫反。賓滑。呼八反。又干八反。屠。音徒。禮記作杜。請佐公使尊。使音如字。又所吏反。甲子喪。息浪反。荀躒。本又作櫟。舊好。呼報反。勿亟。紀力反。焉用。於虔反。
經十年。耆酒。市志反。傳同。好内。呼報反。侯彪。彼虯反。
傳。婺女。武付反。裨竈。婢支反。玄枵。許驕反。任氏。音壬。注同。大公。音泰。之妣。必履反。二十八宿。音秀。說婦人。音悅。而騁。勑領反。傳言者。直專反。先伐諸。一本無伐字。焉往。於虔反。下焉歸同。之處。昌慮反。有爭。爭鬭之爭。■(草冠に嬖)魚列反。○今本孼。蘊畜。勑六反。具幄。於角反。幕。音莫。從者。才用反。衣屨。九具反。載周。如字。詩作哉。毛云、哉、載也。鄭云、始也。周徧。音遍。爲之。于僞反。獻俘。芳夫反。亳社。步洛反。視民。如字。詩作示字。畜牲。許又反。之贄。音至。喪焉。於虔反。百乘。繩證反。自費。芳味反。下同。在衰。七雷反。本又作縗。絰。直結反。嘉服見。如字。又賢遍反。下同。是重。直用反。欲敗。必邁反。下同。夫人。音扶。注同。寺人。又作侍。柳熾。尺志反。炭。吐旦反。其處。昌慮反。比葬。必利反。元公好。呼報反。惡。烏路反。
經十一年。子虔。其連反。雖殺。申志反。傳放此。○今本弑。比蒲。徐扶夷反。北宮他。徒河反。○今本佗。齊歸。如字。
傳。歲復在。扶又反。下歲復在同。然壅。於勇反。注及後同。蔡近。附近之近。下同。以斃。婢世反。有緡。武巾反。以喪。息浪反。下且喪君同。而隕。于敏反。無咎。其九反。下同。非胙。本又朔祚。在路反。○今本亦祚。無拯。拯濟之拯。注同。沒振。之愼反。弃捐。以專反。捄助。音救。本亦作救。○今本亦救。不可復振。扶又反。本亦無此字。脩好。呼報反。夢以帷。位悲反。一本作夢以其帷。○今本亦同。幕孟。音莫。其僚。力彫反。薳氏。本又作蔿。之簉。本又作■(草冠に造)。說文、簉、縦副倅。七對反。令副。力呈反。雙生。如字。或一音所敬反。郷四月。本又作曏。亦作向。同。許亮反。○今本亦向。將焉。於虔反。鮮矣。息淺反。復在。本或作復於。○今本亦同。狐父。音胡。有著。張慮反。徐治居反。注及下同。常處。昌慮反。有襘。說文云、帶所結也。所以道。音導。下同。歸祐。音又。○今本佑。岡山。音剛。侯廬。力吳反。而寘。之豉反。下同。檀伯。徒丹反。之長。丁丈反。不勝。音升。實出。如字。徐音黜。
經十二年。成熊。音雄。不書將。子匠反。帥。所類反。
傳。迂直。一音於。而塴。禮家作窆。彼驗反。義同。豈憚。待旦反。爲賦。于僞反。蓼蕭。音六。壽樂。音洛。相鄭伯。息亮反。下同。如坻。徐直夷反。詩云、宛在水中坻。坻、水中高地也。入時水。如字。本或作溡。音同。齊君弱吾君。輕吾君以爲弱也。軍帥。所類反。强禦。魚呂反。卒。子忽反。乘。繩證反。別種。章勇反。沾縣。張廉反。韋昭音拈。字林、他兼反。緜皐。古刀反。肥累。一音力軌反。伯絞。古卯反。跪尋。求委反。又音詭。殺適。丁歷反。逃介。音界。注同。副使。所吏反。攸乎。如字。徐以帚反。愁隘。於賣反。懸危。音玄。本又作縣。枚筮。武回反。汎卜。芳劒反。遇坤。苦門反。之比。毗志反。注同。之長。丁丈反。外内倡。昌亮反。且夫。音扶。注同。欲令。力呈反。參成。七南反。又音三。有圃。布古反。之杞。音起。枸杞。音苟。本又作狗。倍其。音佩。爲季。于僞反。下同。守于。本亦作狩。同。手又反。注同。○今本亦狩。潘子。普于反。裻。音篤。本亦作督。○今本亦督。援。于眷反。王皮冠。一本作楚子皮冠。復陶。徒刀反。復陶、雨衣也。遺。唯季反。被。普義反。注及下同。舃。音昔。鞭。必緜反。或革傍作更者。五孟反、非也。析父。星歷反。熊繹。音亦。呂級。本又作伋。○今本亦伋。燮父。音甫。沶郷。一音示。篳。音必。藍縷。力甘反。下力主反。莽。武黨反。跋涉。蒲末反。長曰。丁丈反。少曰。詩照反。曾居。才能反。一本作嘗。○今本亦嘗。千乘。繩證反。剝。邦角反。如響。許丈反。本又作嚮。音同。應聲。應對之應。以斷。音短。慝。他得反。倚。徐其綺反。相。息亮反。三墳。扶云反。八索。本或作素。轍。直列反。祈招。一音昭。祈父。音甫。獲歿。音沒。○今本沒。簒。初患反。殺。申志反。○今本弑。焉能。於虔反。愔愔。徐於林反。金冶。音也。去其。起呂反。饋。其位反。

春秋左氏傳校本第二十三

昭公 起十三年盡十七年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
十有三年、春、叔弓帥師圍費。不書南蒯以費叛、不以告廟。○費、音祕。
【読み】
〔經〕十有三年、春、叔弓師を帥いて費を圍む。南蒯が費を以て叛くを書さざるは、以て廟に告げざればなり。○費は、音祕。

夏、四月、楚公子比自晉歸于楚。弑其君虔于乾谿。比去晉而不送、書歸者、依陳・蔡以入。言陳・蔡猶列国也。比歸而靈王死。故書弑其君。靈王無道、而弑稱臣、比非首謀而反書弑、比雖脅立、猶以罪加也。靈王死在五月、又不在乾谿。楚人生失靈王。故本其始禍以赴之。
【読み】
夏、四月、楚の公子比晉より楚に歸る。其の君虔を乾谿に弑す。比晉を去りて送らざるに、歸るを書すは、陳・蔡に依りて以て入ればなり。陳・蔡も猶列国のごときを言うなり。比歸りて靈王死す。故に其の君を弑すと書す。靈王無道にして、弑するに臣を稱し、比首謀に非ずして反って弑すと書すは、比脅されて立つと雖も、猶罪を以て加うるなり。靈王の死するは五月に在り、又乾谿に在らず。楚人生きながら靈王を失う。故に其の始禍に本づけて以て之を赴[つ]げたるなり。

楚公子棄疾殺公子比。比雖爲君、而未列於諸侯。故不稱爵。殺下稱人、罪棄疾。
【読み】
楚の公子棄疾公子比を殺す。比君爲りと雖も、而れども未だ諸侯に列ならず。故に爵を稱せず。殺すに人と稱せざるは、棄疾を罪するなり。

秋、公會劉子・晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子于平丘。平丘、在陳留長垣縣西南。○垣、音袁。
【読み】
秋、公劉子・晉侯・齊侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に平丘に會す。平丘は、陳留長垣縣の西南に在り。○垣は、音袁。

八月、甲戌、同盟于平丘。書同、齊服故。
【読み】
八月、甲戌[きのえ・いぬ]、平丘に同盟す。同と書すは、齊服する故なり。

公不與盟。魯不堪晉求。讒慝弘多。公不與盟、非國惡。故不諱。○與、音預。
【読み】
公盟に與らず。魯晉の求めに堪えず。讒慝弘[はなは]だ多きなり。公盟に與らざるも、國惡に非ず。故に諱まず。○與は、音預。

晉人執季孫意如以歸。公至自會。無傳。
【読み】
晉人季孫意如を執えて以[い]て歸る。公會より至る。傳無し。

蔡侯廬歸于蔡。○廬、音盧。又力居反。
【読み】
蔡侯廬蔡に歸る。○廬は、音盧。又力居反。

陳侯吳歸于陳。陳・蔡皆受封于楚。故稱爵。諸侯納之曰歸。
【読み】
陳侯吳陳に歸る。陳・蔡皆封を楚に受く。故に爵を稱す。諸侯之を納るるを歸と曰う。

冬、十月、葬蔡靈公。蔡復、而後以君禮葬之。
【読み】
冬、十月、蔡の靈公を葬る。蔡復して、而して後に君の禮を以て之を葬る。

公如晉、至河乃復。晉人辭公。
【読み】
公晉に如き、河に至りて乃ち復る。晉人公を辭す。

吳滅州來。州來、楚邑。用大師焉曰滅。
【読み】
吳州來を滅ぼす。州來は、楚の邑。大師を用ゆるを滅と曰う。

〔傳〕十三年、春、叔弓圍費。弗克。敗焉。爲費人所敗。不書、諱之。
【読み】
〔傳〕十三年、春、叔弓費を圍む。克たず。敗らる。費人の爲に敗らる。書さざるは、之を諱むなり。

平子怒。令見費人、執之以爲囚俘。冶區夫曰、非也。區夫、魯大夫。○區、烏侯反。一丘于反。
【読み】
平子怒る。費人を見ば、之を執えて以て囚俘とせよと令す。冶區夫[やおうふ]曰く、非なり。區夫は、魯の大夫。○區は、烏侯反。一に丘于反。

若見費人、寒者衣之、者食之、爲之令主、而共其乏困、費來如歸、南氏亡矣。民將叛之、誰與居邑。若憚之以威、懼之以怒、民疾而叛、爲之聚也。若諸侯皆然、費人無歸、不親南氏、將焉入矣。
【読み】
若し費人を見ば、寒えたる者は之に衣せ、えたる者は之に食わせ、之が令主と爲りて、其の乏困に共せば、費の來ること歸するが如くにして、南氏亡びん。民將之に叛かば、誰と與に邑に居らん。若し之を憚[おど]すに威を以てし、之を懼[おど]すに怒りを以てせば、民疾[にく]みて叛き、之が爲に聚まらん。若し諸侯皆然らば、費人歸する無く、南氏を親しまずして、將に焉に入らんとする、と。
*「餓」は、漢籍國字解全書では「飢」。

平子從之。費人叛南氏。費叛南氏在明年。傳善區夫之謀、終言其效。○衣、於旣反。食、音嗣。共、音恭。爲之聚、于僞反。
【読み】
平子之に從う。費人南氏に叛く。費の南氏に叛くは明年に在り。傳區夫の謀を善して、其の效を終え言う。○衣は、於旣反。食は、音嗣。共は、音恭。爲之聚は、于僞反。

楚子之爲令尹也、殺大司馬薳掩而取其室、在襄三十年。○薳、于委反。
【読み】
楚子の令尹爲りしや、大司馬薳掩[いえん]を殺して其の室を取り、襄三十年に在り。○薳は、于委反。

及卽位、奪薳居田、居、掩之族。言薳氏所以怨。
【読み】
位に卽くに及びて、薳居が田を奪い、居は、掩の族。薳氏が怨れる所以を言う。

遷許而質許圍。遷許、在九年。圍、許大夫。○質、音致。
【読み】
許を遷して許の圍を質とす。許を遷すは、九年に在り。圍は、許の大夫。○質は、音致。

蔡洧有寵於王、王之滅蔡也、其父死焉。楚滅蔡、在十一年。洧仕楚、其父在國。故死。○洧、于軌反。
【読み】
蔡の洧[い]王に寵有り、王の蔡を滅ぼすや、其の父死しぬ。楚蔡を滅ぼすは、十一年に在り。洧は楚に仕え、其の父は國に在り。故に死せり。○洧は、于軌反。

王使與於守而行。使洧守國、王行至乾谿。○與、音預。守、手又反。
【読み】
王守に與らしめて行く。洧をして國を守らしめ、王行きて乾谿に至る。○與は、音預。守は、手又反。

申之會、越大夫戮焉。申會在四年。
【読み】
申の會に、越の大夫戮せらる。申の會は四年に在り。

王奪鬭韋龜中犫、韋龜、令尹子文玄孫。中犫、邑名。○犫、尺州反。
【読み】
王鬭韋龜が中犫[ちゅうしゅう]を奪い、韋龜は、令尹子文の玄孫。中犫は、邑の名。○犫は、尺州反。

又奪成然邑、而使爲郊尹。成然、韋龜子。郊尹、治郊竟大夫。
【読み】
又成然が邑を奪いて、郊尹爲らしむ。成然は、韋龜の子。郊尹は、郊竟を治むる大夫。

蔓成然故事蔡公。蔡公、棄疾也。故、猶舊也。韋龜以棄疾有當璧之命、故使成然事之。
【読み】
蔓成然故より蔡公に事う。蔡公は、棄疾なり。故は、猶舊のごとし。韋龜棄疾に當璧の命有るを以て、故に成然をして之に事えしむ。

故薳氏之族及薳居・許圍・蔡洧・蔓成然、皆王所不禮也。因羣喪職之族、啓越大夫常壽過作亂、常壽過、申會所戮者。○過、古禾反。
【読み】
故に薳氏の族と薳居・許の圍・蔡の洧・蔓成然とは、皆王の禮せざる所なり。羣喪職の族に因り、越の大夫常壽過を啓[みちび]きて亂を作し、常壽過は、申の會に戮せらる者なり。○過は、古禾反。

圍固城、克息舟、城而居之。息舟、楚邑。城之堅固者。
【読み】
固城を圍み、息舟に克ち、城きて之に居る。息舟は、楚の邑。城の堅固なる者。

觀起之死也、其子從在蔡、事朝吳。觀起死、在襄二十二年。朝吳、故蔡大夫、聲子之子。○從、如字。朝、如字。
【読み】
觀起の死するや、其の子從蔡に在り、朝吳に事う。觀起が死は、襄二十二年に在り。朝吳は、故の蔡の大夫、聲子の子。○從は、字の如し。朝は、字の如し。

曰、今不封蔡、蔡不封矣。我請試之。觀從以父死怨楚。故欲試作亂。
【読み】
曰く、今蔡を封ぜずんば、蔡は封ぜられざらん。我れ請う、之を試みん、と。觀從父死するを以て楚を怨む。故に試みに亂を作さんと欲す。

以蔡公之命、召子干・子皙、二子、皆靈王弟。元年、子干奔晉、子皙奔鄭。
【読み】
蔡公の命というを以て、子干・子皙を召び、二子は、皆靈王の弟。元年、子干晉に奔り、子皙鄭に奔る。

及郊而告之情、告以蔡公不知謀。
【読み】
郊に及びて之に情を告げ、告ぐるに蔡公が謀を知らざるを以てす。

强與之盟、入襲蔡。蔡公將食、見之而逃。不知其故。驚起辟之。○强、其丈反。
【読み】
强いて之と盟い、入りて蔡を襲う。蔡公將に食せんとし、之を見て逃ぐ。其の故を知らず。驚起して之を辟く。○强は、其丈反。

觀從使子干食、坎用牲、加書而速行、使子干居蔡公之牀、食蔡公之食、竝僞與蔡公盟之徵驗、以示衆。
【読み】
觀從子干をして食せしめ、坎して牲を用い、書を加えて速やかに行[さ]らしめ、子干をして蔡公の牀に居り、蔡公の食を食らわしめ、竝びに蔡公と盟うの徵驗を僞りて、以て衆に示す。

己徇於蔡、己、觀從也。○己、音紀。
【読み】
己は蔡に徇[とな]えて、己は、觀從なり。○己は、音紀。

曰、蔡公召二子、將納之、與之盟而遣之矣。將師而從之。詐言蔡公將以師助二子。
【読み】
曰く、蔡公二子を召して、將に之を納れんとし、之と盟いて之を遣れり。將に師して之に從わんとす、と。詐りて言う、蔡公將に師を以て二子を助けんとす、と。

蔡人聚、將執之。執觀從。
【読み】
蔡人聚まり、將に之を執えんとす。觀從を執えんとす。

辭曰、失賊成軍。而殺余何益。乃釋之。賊、謂子干・子皙也。言蔡公已成軍、殺己不解罪。
【読み】
辭して曰く、賊を失い軍を成せり。而るを余を殺すも何の益あらん、と。乃ち之を釋[ゆる]す。賊は、子干・子皙を謂うなり。蔡公已に軍を成せば、己を殺すも罪を解かざるを言う。

朝吳曰、二三子若能死亡、則如違之以待所濟。言若能爲靈王死亡、則可違蔡公之命、以待成敗所在。
【読み】
朝吳曰く、二三子若し能く死亡せば、則ち之に違いて以て濟る所を待つに如かんや。言うこころは、若し能く靈王の爲に死亡せば、則ち蔡公の命に違いて、以て成敗の在る所を待つ可し。

若求安定、則如與之以濟所欲。言與蔡公、則可得安定。
【読み】
若し安定を求めんとならば、則ち之に與して以て欲する所を濟すに如かんや。言うこころは、蔡公に與せば、則ち安定を得可し。

且違上、何適而可。言不可違上也。上、謂蔡公。
【読み】
且つ上に違わば、何くに適きて可ならん、と。言うこころは、上に違う可からざるなり。上は、蔡公を謂う。

衆曰、與之。乃奉蔡公、召二子而盟于鄧、潁川召陵縣西南有鄧城。二子、子干・子皙。
【読み】
衆曰く、之に與せん、と。乃ち蔡公を奉じ、二子を召して鄧に盟い、潁川召陵縣の西南に鄧城有り。二子は、子干・子皙。

依陳・蔡人以國。國陳・蔡而依之。
【読み】
陳・蔡人に依るに國せんとするを以てす。陳・蔡を國せんとすといいて之に依るなり。

楚公子比・ 子干。
【読み】
楚の公子比・ 子干。

公子黑肱・ 子皙。
【読み】
公子黑肱・ 子皙。

公子棄疾・ 蔡公。
【読み】
公子棄疾・ 蔡公。

蔓成然・蔡朝吳帥陳・蔡・不羹・許・葉之師、因四族之徒、四族、薳氏・許圍・蔡洧・蔓成然。○羮、音郎。葉、始涉反。
【読み】
蔓成然・蔡の朝吳陳・蔡・不羹・許・葉[しょう]の師を帥いて、四族の徒に因りて、四族は、薳氏・許の圍・蔡の洧・蔓成然。○羮は、音郎。葉は、始涉反。

以入楚、及郊。陳・蔡欲爲名。故請爲武軍。欲築壘壁以示後人、爲復讎之名。
【読み】
以て楚に入り、郊に及ぶ。陳・蔡名を爲さんと欲す。故に武軍を爲さんと請う。壘壁を築きて以て後人に示して、復讎の名を爲さんと欲す。

蔡公知之、曰、欲速。且役病矣。請藩而巳。乃藩爲軍。藩、離也。
【読み】
蔡公之を知りて、曰く、速やかならんことを欲す。且つ役病めり。請う藩せんのみ、と。乃ち藩して軍を爲す。藩は、離なり。
*頭注に「按藩離、或作籬。後人妄改也。陸云、依字應作籬。今作離、假借也。力知反。」とある。

蔡公使須務牟與史猈先入、因正僕人殺大子祿及公子罷敵。須務牟・史猈、楚大夫。蔡公之黨也。正僕、大子之近官。○猈、皮皆反。徐扶蟹反。又扶移反。罷、音皮。徐甫綺反。一蒲買反。
【読み】
蔡公須務牟[しゅぼうぼう]と史猈[しひ]とをして先ず入らしめ、正僕人に因りて大子祿と公子罷敵とを殺す。須務牟・史猈は、楚の大夫。蔡公の黨なり。正僕は、大子の近官。○猈は、皮皆反。徐扶蟹反。又扶移反。罷は、音皮。徐甫綺反。一に蒲買反。

公子比爲王、公子黑肱爲令尹、次于魚陂。竟陵縣城西北有甘魚陂。
【読み】
公子比王と爲り、公子黑肱令尹と爲り、魚陂に次[やど]る。竟陵縣の城の西北に甘魚陂有り。

公子棄疾爲司馬、先除王宮。使觀從從師于乾谿、而遂告之、從乾谿之師、告使叛靈王。
【読み】
公子棄疾司馬と爲り、先ず王宮を除[はら]う。觀從をして師に乾谿に從いて、遂に之に告げしめ、乾谿の師に從い、告げて靈王に叛かしむ。

且曰、先歸復所。後者劓。劓、截鼻。○劓、魚器反。
【読み】
且つ曰く、先ず歸らば所に復さん。後るる者は劓[はなき]らんと。劓[ぎ]は、鼻を截[き]るなり。○劓は、魚器反。

師及訾梁而潰。靈王還、至訾梁而衆散。○訾、子斯反。
【読み】
師訾梁[しりょう]に及びて潰ゆ。靈王還り、訾梁に至りて衆散ず。○訾は、子斯反。

王聞羣公子之死也、自投于車下曰、人之愛其子也、亦如余乎。侍者曰、甚焉。小人老而無子、知擠于溝壑矣。擠、隊也。○擠、子細反。
【読み】
王羣公子の死するを聞き、自ら車下に投じて曰く、人の其の子を愛するも、亦余が如くならんか、と。侍者曰く、焉より甚だし。小人は老いて子無ければ、溝壑[こうがく]に擠[お]ちんことを知るのみ、と。擠[せい]は、隊[お]つるなり。○擠は、子細反。

王曰、余殺人子多矣。能無及此乎。右尹子革曰、請待于郊。以聽國人。聽國人之所與。
【読み】
王曰く、余人の子を殺すこと多し。能く此に及ぶこと無からんや、と。右尹子革曰く、請う、郊に待て。以て國人に聽かん、と。國人の與する所を聽く。

王曰、衆怒不可犯也。曰、若入於大都、而乞師於諸侯。王曰、皆叛矣。曰、若亡於諸侯、以聽大國之圖君也。王曰、大福不再。祗取辱焉。然丹乃歸于楚。然丹、子革。棄王歸。○祗、音支。
【読み】
王曰く、衆の怒は犯す可からざるなり、と。曰く、若しくは大都に入りて、師を諸侯に乞わん、と。王曰く、皆叛けり、と。曰く、若しくは諸侯に亡[に]げて、以て大國の君を圖るを聽かん、と。王曰く、大福は再びせず。祗[まさ]に辱めを取らん、と。然丹乃ち楚に歸る。然丹は、子革。王を棄てて歸る。○祗は、音支。

王沿夏、將欲入鄢。夏、漢別名。順流爲沿。順漢水南至鄢。○夏、上聲。鄢、於建反。一於晩反。
【読み】
王夏に沿いて、將に鄢に入らんと欲す。夏は、漢の別名。流れに順うを沿と爲す。漢水に順いて南して鄢に至るなり。○夏は、上聲。鄢は、於建反。一に於晩反。

芋尹無宇之子申亥曰、吾父再奸王命、謂斷王旌、執人於章華宮。○芋、于付反。又音羽。
【読み】
芋尹無宇の子申亥曰く、吾が父再び王命を奸せしに、王の旌を斷ち、人を章華宮に執うるを謂う。○芋は、于付反。又音羽。

王弗誅。惠孰大焉。君不可忍。惠不可棄。吾其從王。乃求王、遇諸棘闈以歸。棘、里名。闈、門也。
【読み】
王誅せざりき。惠み孰れか焉より大ならん。君は忍ぶ可からず。惠みは棄つ可からず。吾れ其れ王に從わん、と。乃ち王を求めて、諸に棘闈[きょくい]に遇いて以て歸る。棘は、里の名。闈は、門なり。

夏、五月、癸亥、王縊于芋尹申亥氏。癸亥、五月二十六日。皆在乙卯・丙辰後。傳終言之。經書四月誤。
【読み】
夏、五月、癸亥[みずのと・い]、王芋尹申亥氏に縊る。癸亥は、五月二十六日。皆乙卯・丙辰の後に在り。傳之を終え言う。經四月と書すは誤れり。

申亥以其二女殉而葬之。
【読み】
申亥其の二女を以て殉として之を葬る。

觀從謂子干曰、不殺棄疾、雖得國猶受禍也。子干曰、余不忍也。子玉曰、人將忍子。子玉、觀從。
【読み】
觀從子干に謂いて曰く、棄疾を殺さずんば、國を得ると雖も猶禍を受けん、と。子干曰く、余忍びざるなり、と。子玉曰く、人將に子に忍びんとす。子玉は、觀從。

吾不忍俟也。乃行。
【読み】
吾れ俟つに忍びざるなり、と。乃ち行[さ]る。

國每夜駭曰、王入矣。相恐以靈王也。
【読み】
國每夜駭[おどろ]かして曰く、王入れり、と。相恐[おど]すに靈王を以てするなり。

乙卯、夜、棄疾使周走而呼曰、王至矣。周、徧也。乙卯、十八日。○呼、好故反。
【読み】
乙卯[きのと・う]、夜、棄疾周く走りて呼ばわしめて曰く、王至れり、と。周は、徧きなり。乙卯は、十八日。○呼は、好故反。

國人大驚。使蔓成然走告子干・子皙曰、王至矣。國人殺君・司馬。將來矣。司馬、謂棄疾也。言司馬見殺、以恐子干。
【読み】
國人大いに驚く。蔓成然をして走りて子干・子皙に告げて曰く、王至れり。國人君・司馬を殺せり。將に來らんとす、と。司馬は、棄疾を謂うなり。司馬殺さると言いて、以て子干を恐す。

君若早自圖也、可以無辱。衆怒如水火焉。不可爲謀。又有呼而走至者曰、衆至矣。二子皆自殺。不書弑君、位未定也。
【読み】
君若し早く自ら圖らば、以て辱め無かる可し。衆の怒りは水火の如し。謀を爲す可からず、と。又呼ばいて走り至る者有りて曰く、衆至れり、と。二子皆自殺す。君を弑すると書さざるは、位未だ定まらざればなり。

丙辰、棄疾卽位。名曰熊居。葬子干于訾。實訾敖。不成君、無號謚者、楚皆謂之敖。
【読み】
丙辰[ひのえ・たつ]、棄疾位に卽く。名を熊居と曰う。子干を訾に葬る。實に訾敖なり。君と成らずして、號謚無き者を、楚皆之を敖と謂う。

殺囚、衣之王服、而流諸漢、乃取而葬之、以靖國人。使子旗爲令尹。子旗、蔓成然。○衣、於旣反。
【読み】
囚を殺し、之に王服を衣せて、諸を漢に流し、乃ち取りて之を葬り、以て國人を靖んず。子旗をして令尹爲らしむ。子旗は、蔓成然。○衣は、於旣反。

楚師還自徐。前年、圍徐之師。
【読み】
楚の師徐より還る。前年、徐を圍むの師。

吳人敗諸豫章、獲其五帥。定二年、楚人伐吳師于豫章。吳人見舟于豫章、而潛師于巢、以軍楚師於豫章。又柏舉之役、吳人舍舟于淮汭、而自豫章與楚夾漢。此皆當在江北淮水南。蓋後徙在江南豫章。○帥、所類反。謂蕩侯・潘子・司馬裻・嚻尹午・陵尹喜。
【読み】
吳人諸を豫章に敗り、其の五帥を獲たり。定二年、楚人吳を伐ちて豫章に師す。吳人舟を豫章に見して、師を巢に潛めて、以て楚の師に豫章に軍す。又柏舉の役に、吳人舟を淮汭に舍きて、豫章より楚と漢を夾む。此れ皆當に江の北淮水の南に在るべし。蓋し後徙[うつ]して江南の豫章に在るならん。○帥は、所類反。蕩侯・潘子・司馬裻[しばとく]・嚻尹午[ごういんご]・陵尹喜を謂う。

平王封陳・蔡、復遷邑、復九年、所遷邑。
【読み】
平王陳・蔡を封じ、遷邑を復し、九年、遷す所の邑を復す。

致群賂、始舉事時所貨賂。
【読み】
群賂を致し、始め事を舉ぐる時の貨賂する所。

施舍寬民、宥罪舉職。舉職、脩廢官。
【読み】
施舍して民を寬[ゆる]くし、罪を宥め職を舉ぐ。職を舉ぐるは、廢官を脩むるなり。

召觀從。王曰、唯爾所欲。觀從敎子干殺棄疾、棄疾今召用之、明在君爲君之義。
【読み】
觀從を召す。王曰く、唯爾の欲する所のままなり、と。觀從子干に棄疾を殺すことを敎えしに、棄疾今召して之を用ゆるは、君に在りては君の爲にするの義を明かすなり。

對曰、臣之先佐開卜。乃使爲卜尹。佐卜人開龜兆。
【読み】
對えて曰く、臣の先は開卜に佐たり、と。乃ち卜尹爲らしむ。卜人の龜兆を開くを佐く。

使枝如子躬聘于鄭、且致犫・櫟之田。犫・櫟、本鄭邑。楚中取之。平王新立。故還以賂鄭。○櫟、音歷。
【読み】
枝如子躬をして鄭に聘し、且つ犫・櫟の田を致さしむ。犫・櫟は、本鄭の邑。楚中ごろ之を取る。平王新たに立つ。故に還して以て鄭に賂う。○櫟は、音歷。

事畢弗致。知鄭自說服、不復須賂故。
【読み】
事畢わりて致さず。鄭自ら說服して、復賂を須いざるを知る故なり。

鄭人請曰、聞諸道路。將命寡君以犫・櫟。敢請命。對曰、臣未聞命。旣復。王問犫・櫟。降服而對、降服、如今解冠也。謝違命。
【読み】
鄭人請いて曰く、諸を道路に聞く。將に寡君に命ずるに犫・櫟を以てせんとす、と。敢えて命を請う、と。對えて曰く、臣未だ命を聞かず、と。旣に復す。王犫・櫟を問う。降服して對えて、降服は、今の冠を解くが如きなり。命に違えるを謝するなり。

曰、臣過失命未之致也。王執其手曰、子毋勤。姑歸。不穀有事、其告子也。王善其有權。有事將復使之。
【読み】
曰く、臣命を過失して未だ之を致さざりき、と。王其の手を執りて曰く、子勤[うれ]えとすること毋かれ。姑く歸れ。不穀事有らば、其れ子に告げん、と。王其の權有るを善す。事有らば將に復之を使わんとす。

他年、芋尹申亥以王柩告。乃改葬之。
【読み】
他年、芋尹申亥王の柩を以て告ぐ。乃ち之を改め葬る。

初、靈王卜曰、余尙得天下。尙、庶幾。
【読み】
初め、靈王卜して曰く、余尙わくは天下を得ん、と。尙は、庶幾。

不吉。投龜詬天而呼曰、是區區者而不余畀、區區、小天下。○詬、呼豆反。又許后反。呼、火故反。
【読み】
不吉なり。龜を投げ天を詬[ののし]りて呼ばいて曰く、是の區區たる者にして余に畀[あた]えずんば、區區は、天下を小とするなり。○詬[こう]は、呼豆反。又許后反。呼は、火故反。

余必自取之。民患王之無厭也。故從亂如歸。
【読み】
余必ず自ら之を取らん、と。民王の厭くこと無きを患う。故に亂に從うこと歸るが如し。

初、共王無冢適。冢、大也。○厭、於鹽反。共、音恭。適、丁歷反、下同。
【読み】
初め、共王冢適無し。冢は、大なり。○厭は、於鹽反。共は、音恭。適は、丁歷反、下も同じ。

有寵子五人。無適立焉。乃大有事于群望、羣望、星辰山川。
【読み】
寵子五人有り。適として立つる無し。乃ち大いに群望に事有りて、羣望は、星辰山川。

而祈曰、請神擇於五人者、使主社稷。乃徧以璧見於群望曰、當璧而拜者、神所立也。誰敢違之。旣與巴姬密埋璧於大室之庭、巴姬、共王妾。大室、祖廟。
【読み】
祈りて曰く、請う、神五人の者を擇びて、社稷に主たらしめよ、と。乃ち徧く璧を以て群望に見えて曰く、璧に當たりて拜する者は、神の立つる所なり。誰か敢えて之に違わん、と。旣にして巴姬と密かに璧を大室の庭に埋め、巴姬は、共王の妾。大室は、祖廟。
*「旣與」は、漢籍國字解全書では「旣乃與」である。

使五人齊、而長入拜。從長幼、以次拜。○齊、側皆反。長、丁丈反。
【読み】
五人をして齊[ものいみ]して、長より入りて拜せしむ。長幼に從いて、次を以て拜す。○齊は、側皆反。長は、丁丈反。

康王跨之、過其上也。○跨、苦化反。
【読み】
康王は之に跨り、其の上を過ぐるなり。○跨は、苦化反。

靈王肘加焉、子干・子皙皆遠之。平王弱。抱而入、再拜皆厭紐。微見璧紐、以爲審識。○肘、中九反。遠、于萬反。厭、於甲反。又於輒反。紐、女九反。識、申志反。又如字。
【読み】
靈王は肘加わり、子干・子皙は皆之に遠ざかる。平王は弱[わか]し。抱かれて入り、再拜して皆紐を厭[お]しぬ。微しく璧紐を見わして、以て審識と爲す。○肘は、中九反。遠は、于萬反。厭は、於甲反。又於輒反。紐は、女九反。識は、申志反。又字の如し。

鬭韋龜屬成然焉。知其將立。故託其子。○屬、音燭。
【読み】
鬭韋龜成然を屬す。其の將に立たんとするを知る。故に其の子を託す。○屬は、音燭。

且曰、棄禮違命。楚其危哉。棄立長之禮、違當璧之命、終致靈王之亂。
【読み】
且曰く、禮を棄てて命に違う。楚其れ危うきかな、と。長を立つるの禮を棄て、當璧の命に違い、終に靈王の亂を致せり。

子干歸、韓宣子問於叔向曰、子干其濟乎。對曰、難。宣子曰、同惡相求、如市賈焉。何難。宣子謂弃疾親恃子干、共同好惡。故言如市賈同利以相求。○賈、音古。
【読み】
子干歸るとき、韓宣子叔向[しゅくきょう]に問いて曰く、子干其れ濟らんか、と。對えて曰く、難し、と。宣子曰く、同惡相求む、市賈の如し。何ぞ難からん、と。宣子謂えらく、弃疾親しく子干を恃みて、共に好惡を同じくす、と。故に言う、市賈の利を同じくして以て相求むるが如し、と。○賈は、音古。

對曰、無與同好。誰與同惡。言弃疾本不與子干同好、則亦不得同惡。
【読み】
對えて曰く、與に好を同じくする無し。誰か與に惡を同じくせん。言うこころは、弃疾本子干と好を同じくせざれば、則ち亦惡を同じくすることを得ず。

取國有五難。有寵而無人、一也。寵須賢人而固。
【読み】
國を取るに五難有り。寵有りて人無き、一なり。寵賢人を須ちて固し。

有人而無主、二也。雖有賢人、當須内主爲應。
【読み】
人有りて主無き、二なり。賢人有りと雖も、當に内主を須ちて應と爲すべし。

有主而無謀、三也。謀、策謀也。
【読み】
主有りて謀無き、三なり。謀は、策謀なり。

有謀而無民、四也。民、衆。
【読み】
謀有りて民無き、四なり。民は、衆。

有民而無德、五也。四者旣備、當以德成。
【読み】
民有りて德無き、五なり。四つの者旣に備わるも、當に德を以て成るべし。

子干在晉十三年矣。晉・楚之從、不聞達者。可謂無人。晉・楚之士從子干游、皆非達人。
【読み】
子干晉に在ること十三年なり。晉・楚の從える、達者を聞かず。人無しと謂う可し。晉・楚の士の子干に從いて游べる、皆達人に非ず。

族盡親叛。可謂無主。無親族在楚。
【読み】
族盡き親叛く。主無しと謂う可し。親族の楚に在る無し。

無釁而動。可謂無謀。召子干時、楚未有大釁。
【読み】
釁[きん]無くして動く。謀無しと謂う可し。子干を召ぶ時、楚未だ大釁有らず。

爲羇終世。可謂無民。終身羇客在晉。是無民。
【読み】
羇と爲りて世を終わる。民無しと謂う可し。終身羇客して晉に在り。是れ民無きなり。

亡無愛徵。可謂無德。楚人無愛念之者。
【読み】
亡げて愛徵無し。德無しと謂う可し。楚人之を愛念する者無し。

王虐而不忌。靈王暴虐、無所畏忌。將自亡。
【読み】
王虐にして忌まず。靈王暴虐にして、畏忌する所無し。將に自ら亡びんとす。

楚君子干、涉五難以殺舊君、誰能濟之。言楚借君子干以弑靈王、終無能成。
【読み】
楚子干を君とするとも、五難を涉[わた]りて以て舊君を殺せば、誰か能く之を濟さん。言うこころは、楚借[たと]い子干を君として以て靈王を弑すとも、終に能く成ること無し。

有楚國者、其棄疾乎。君陳・蔡、城外屬焉、城、方城也。時穿封戌旣死、棄疾幷領陳事。
【読み】
楚國を有たん者は、其れ棄疾か。陳・蔡に君として、城の外屬し、城は、方城なり。時に穿封戌旣に死して、棄疾陳の事を幷せ領す。

苛慝不作、盜賊伏隱、私欲不違、不以私欲違民事。○苛、音何。
【読み】
苛慝作らず、盜賊伏隱し、私欲もて違わずして、私欲を以て民事に違わず。○苛は、音何。

民無怨心。先神命之、先神、謂羣望。
【読み】
民怨心無し。先神之を命じ、先神は、羣望を謂う。

國民信之。羋姓有亂、必季實立、楚之常也。獲神、一也。當璧拜。○羋、彌爾反。
【読み】
國民之を信ず。羋姓[びせい]亂有れば、必ず季實に立つは、楚の常なり。神を獲る、一なり。璧に當たりて拜す。○羋は、彌爾反。

有民、二也。民信之。
【読み】
民有る、二なり。民之を信ず。

令德、三也。無苛慝。
【読み】
令德ある、三なり。苛慝無し。

寵貴、四也。貴妃子。
【読み】
寵貴なる、四なり。貴妃の子。

居常、五也。弃疾、季。
【読み】
常に居る、五なり。弃疾は、季なり。

有五利以去五難。誰能害之。
【読み】
五利有りて以て五難を去る。誰か能く之を害せん。

子干之官、則右尹也。數其貴寵、則庶子也。以神所命、則又遠之、其貴亡矣。位不尊。○去、起呂反。遠、于萬反。亡、音無。又如字。
【読み】
子干の官は、則ち右尹なり。其の貴寵を數うれば、則ち庶子なり。神の命ずる所を以てすれば、則ち又之に遠ざかり、其の貴亡し。位尊からず。○去は、起呂反。遠は、于萬反。亡は、音無。又字の如し。

其寵棄矣。父旣沒故。
【読み】
其の寵棄[すた]る。父旣に沒する故なり。

民無懷焉、非令德。
【読み】
民懷[なつ]くこと無く、令德に非ず。

國無與焉。無内主。
【読み】
國に與する無し。内主無し。

將何以立。
【読み】
將何を以て立てん、と。

宣子曰、齊桓・晉文不亦是乎。皆庶賤。
【読み】
宣子曰く、齊桓・晉文亦是れならずや、と。皆庶賤。

對曰、齊桓、衛姬之子也。有寵於僖。衛姬、齊僖公妾。
【読み】
對えて曰く、齊桓は、衛姬の子なり。僖に寵有り。衛姬は、齊の僖公の妾。

有鮑叔牙・賓須無・隰朋以爲輔佐、有莒・衛以爲外主、齊桓出、奔莒、衛有舅氏之助。
【読み】
鮑叔牙・賓須無・隰朋有りて以て輔佐と爲り、莒・衛有りて以て外主と爲り、齊桓出づるとき、莒に奔り、衛は舅氏の助け有り。

有國・高以爲内主。國氏・高氏、齊上卿。
【読み】
國・高有りて以て内主と爲る。國氏・高氏は、齊の上卿。

從善如流、言其疾也。
【読み】
善に從うこと流るるが如く、其の疾きを言うなり。

下善齊肅。齊、嚴也。肅、敬也。○齊、音齋。
【読み】
善に下りて齊肅なり。齊は、嚴なり。肅は、敬なり。○齊は、音齋。

不藏賄、淸也。
【読み】
賄を藏めず、淸なり。

不從欲、儉也。○從、子用反。
【読み】
欲に從わず、儉なり。○從は、子用反。

施舍不倦、施舍、猶言布恩德。
【読み】
施舍倦まず、施舍は、猶恩德を布くと言うがごとし。

求善不厭。是以有國、不亦宜乎。
【読み】
善を求めて厭かず。是を以て國を有たんこと、亦宜ならずや。

我先君文公、狐季姬之子也。有寵於獻。好學而不貳。言篤志。
【読み】
我が先君文公は、狐季姬の子なり。獻に寵有り。學を好みて貳あらず。篤志を言う。

生十七年、有士五人。狐偃・趙衰・顚頡・魏武子・司空季子。五子從出。○衰、初危反。從、才用反。
【読み】
生まれて十七年、士五人有り。狐偃・趙衰[ちょうし]・顚頡[てんけつ]・魏武子・司空季子。五子從いて出づ。○衰は、初危反。從は、才用反。

有先大夫子餘・子犯以爲腹心、子餘、趙衰。子犯、狐偃。
【読み】
先大夫子餘・子犯有りて以て腹心と爲り、子餘は、趙衰。子犯は、狐偃。

有魏犫・賈佗以爲股肱、魏犫、魏武子也。稱五人、而說四士、賈佗又不在本數。蓋叔向所賢。
【読み】
魏犫・賈佗有りて以て股肱と爲り、魏犫は、魏武子なり。五人を稱して、四士を說き、賈佗又本數に在らず。蓋し叔向が賢とする所ならん。

有齊・宋・秦・楚以爲外主、齊妻以女、宋贈以馬、楚王享之、秦伯納之。
【読み】
齊・宋・秦・楚有りて以て外主と爲り、齊は妻[めあわ]すに女を以てし、宋は贈るに馬を以てし、楚王は之を享し、秦伯は之を納る。

有欒・郤・狐・先以爲内主。謂欒枝・郤縠・狐突・先軫也。○郤、去逆反。縠、戶木反。
【読み】
欒・郤・狐・先有りて以て内主と爲る。欒枝・郤縠[げきこく]・狐突・先軫を謂うなり。○郤は、去逆反。縠は、戶木反。

亡十九年、守志彌篤。惠・懷棄民、惠公・懷公、不恤民也。
【読み】
亡ぐること十九年、志を守ること彌々篤し。惠・懷民を棄つれば、惠公・懷公、民を恤れまず。

民從而與之。獻無異親、民無異望。獻公之子九人、唯文公在。
【読み】
民從いて之に與す。獻異親無くして、民異望無し。獻公の子九人、唯文公のみ在り。

天方相晉、將何以代文。
【読み】
天方に晉を相くるに、將何を以て文に代えん。

此二君者、異於子干。共有寵子、國有奧主、謂棄疾也。○共、音恭。
【読み】
此の二君は、子干に異なり。共に寵子有り、國に奧主有り、棄疾を謂うなり。○共は、音恭。

無施於民、無援於外。去晉而不送、歸楚而不逆。何以冀國。傳言子干所以蒙弑君之名、棄疾所以得國。○施、式豉反。
【読み】
民に施無く、外に援け無し。晉を去りて送られず、楚に歸りて逆えられず。何を以て國を冀わん、と。傳子干が君を弑するの名を蒙る所以、棄疾が國を得る所以を言う。○施は、式豉反。

晉成虒祁。在八年。○虒、音斯。
【読み】
晉虒祁[しき]を成す。八年に在り。○虒は、音斯。

諸侯朝而歸者皆有貳心。賤其奢也。
【読み】
諸侯の朝して歸る者皆貳心有り。其の奢を賤しむなり。

爲取郠故、取郠、在十年。○爲、于僞反。郠、工杏反。
【読み】
郠[こう]を取る爲の故に、郠を取るは、十年に在り。○爲は、于僞反。郠は、工杏反。

晉將以諸侯來討。叔向曰、諸侯不可以不示威。知晉德薄、欲以威服之。
【読み】
晉將に諸侯を以[い]て來り討ぜんとす。叔向曰く、諸侯には以て威を示さずんばある可からず、と。晉の德薄きを知り、威を以て之を服せんと欲す。

乃竝徵會、告于吳。秋、晉侯會吳子于良。下邳有良城縣。
【読み】
乃ち竝びに會を徵し、吳に告ぐ。秋、晉侯吳子に良に會せんとす。下邳に良城縣有り。

水道不可。吳子辭。乃還。辭不會。
【読み】
水道可ならず。吳子辭す。乃ち還る。辭して會せず。

七月、丙寅、治兵于邾南。甲車四千乘。三十萬人。
【読み】
七月、丙寅[ひのえ・とら]、邾の南に治兵す。甲車四千乘。三十萬人。

羊舌鮒攝司馬。鮒、叔向弟也。攝、兼官。
【読み】
羊舌鮒司馬を攝す。鮒は、叔向の弟なり。攝は、兼官。

遂合諸侯于平丘。
【読み】
遂に諸侯を平丘に合わす。

子產・子大叔相鄭伯以會。子產以幄幕九行、幄幕、軍旅之帳。
【読み】
子產・子大叔鄭伯を相けて以て會す。子產は幄幕九を以て行き、幄幕は、軍旅の帳。
*「帳」は、漢籍國字解全書では「張」。以下同じ。

子大叔以四十。旣而悔之、每舍損焉、及會亦如之。亦九帳也。傳言子產之適宜、大叔之從善。
【読み】
子大叔は四十を以てす。旣にして之を悔い、舍る每に損して、會に及びて亦之の如くなりき。亦九帳なり。傳子產の宜しきに適い、大叔の善に從うを言う。

次于衛地。叔鮒求貨於衛、淫芻蕘者。欲使衛患之而致貨。○蕘、如遙反。
【読み】
衛の地に次る。叔鮒貨を衛に求めんとして、芻蕘[すうじょう]の者を淫せしむ。衛をして之に患えて貨を致さしめんと欲す。○蕘は、如遙反。

衛人使屠伯饋叔向羹與一篋錦、屠伯、衛大夫。
【読み】
衛人屠伯をして叔向に羹と一篋の錦とを饋らしめて、屠伯は、衛の大夫。

曰、諸侯事晉、未敢攜貳。況衛在君之宇下、屋宇之下、喩近也。
【読み】
曰く、諸侯の晉に事うる、未だ敢えて攜貳せず。況んや衛は君の宇下に在りて、屋宇の下とは、近きに喩うるなり。

而敢有異志。芻蕘者異於他日。敢請之。請止之。
【読み】
敢えて異志有らんや。芻蕘の者他日に異なり。敢えて之を請う、と。之を止めんことを請う。

叔向受羹反錦、受羹、示不逆其意。且非貨。
【読み】
叔向羹を受けて錦を反して、羹を受くるは、其の意に逆わざるを示す。且つ貨に非ざればなり。

曰、晉有羊舌鮒者、瀆貨無厭。瀆、數也。○厭、於鹽反。
【読み】
曰く、晉に羊舌鮒という者有り、貨に瀆れて厭くこと無し。瀆は、數々なり。○厭は、於鹽反。

亦將及矣。將及禍。
【読み】
亦將に及ばんとす。將に禍に及ばんとす。

爲此役也。役、事也。
【読み】
此の役を爲せり。役は、事なり。

子若以君命賜之、其已。客從之。未退而禁之。禁芻蕘者。
【読み】
子若し君命を以て之を賜わば、其れ已まん、と。客之に從う。未だ退かずして之を禁ぜり。芻蕘の者を禁ず。

晉人將尋盟。齊人不可。有貳心故。
【読み】
晉人將に盟を尋[かさ]ねんとす。齊人可[き]かず。貳心有る故なり。

晉侯使叔向告劉獻公、獻公、王卿士、劉子也。
【読み】
晉侯叔向をして劉獻公に告げしめて、獻公は、王の卿士、劉子なり。

曰、抑齊人不盟。若之何。對曰、盟以厎信。厎、致也。
【読み】
曰く、抑[おも]うに齊人盟わじ。之を若何、と。對えて曰く、盟は以て信を厎[いた]すなり。厎は、致すなり。

君苟有信、諸侯不貳。何患焉。告之以文辭、董之以武師、雖齊不許、君庸多矣。董、督也。庸、功也。討之有辭。故功多也。
【読み】
君苟も信有らば、諸侯貳あらじ。何ぞ患えん。之に告ぐるに文辭を以てし、之を董[ただ]すに武師を以てせば、齊許さずと雖も、君の庸多けん。董は、督すなり。庸は、功なり。之を討ずるに辭有り。故に功多し。

天子之老、請帥王賦、元戎十乘、以先啓行。天子大夫稱老。元戎、戎車在前者。啓、開也。行、道也。
【読み】
天子の老、請う、王賦を帥いて、元戎十乘、以て先ず行を啓[ひら]かん。天子の大夫を老と稱す。元戎は、戎車の前に在る者。啓は、開くなり。行は、道なり。

遲速唯君。欲佐晉討齊。
【読み】
遲速は唯君のままなり、と。晉を佐けて齊を討ぜんと欲す。

叔向告于齊曰、諸侯求盟、已在此矣。今君弗利。寡君以爲請。對曰、諸侯討貳、則有尋盟。若皆用命、何盟之尋。託用命以拒晉。
【読み】
叔向齊に告げて曰く、諸侯盟を求めて、已に此に在り。今君利とせず。寡君以て請うこと爲す、と。對えて曰く、諸侯貳を討ずるときは、則ち盟を尋ぬること有り。若し皆命を用いば、何の盟を之れ尋ねん、と。命を用ゆるに託して以て晉を拒む。

叔向曰、國家之敗、有事而無業、事則不經。業、貢賦之業。
【読み】
叔向曰く、國家の敗るるは、事有りて業無ければ、事則ち經ならず。業は、貢賦の業。

有業而無禮、經則不序。須禮而有次序。
【読み】
業有りて禮無ければ、經則ち序あらず。禮を須いて次序有り。

有禮而無威、序則不共。禮須威嚴而後共。
【読み】
禮有りて威無ければ、序則ち共ならず。禮は威嚴を須いて後に共なり。

有威而不昭、共則不明。威須昭告神明、而後信義著。
【読み】
威有りて昭らかならざれば、共則ち明らかならず。威は神明に昭告するを須いて、而して後に信義著る。

不明棄共。百事不終。所由傾覆也。信義不明、則棄威。不威棄禮。無禮無經。無經無業。故百事不成。
【読み】
明らかならざれば共を棄つ。百事終わらず。由りて傾覆する所なり。信義明らかならざれば、則ち威を棄つ。威あらざれば禮を棄つ。禮無ければ經無し。經無ければ業無し。故に百事成らず。

是故明王之制、使諸侯歲聘以志業、志、識也。歲聘以脩其職業。
【読み】
是の故に明王の制、諸侯をして歲ごとに聘して以て業を志[しる]し、志は、識すなり。歲ごとに聘して以て其の職業を脩む。

閒朝以講禮、三年而一朝、正班爵之義、率長幼之序。○閒、去聲。
【読み】
閒に朝して以て禮を講[なら]い、三年にして一朝し、班爵の義を正し、長幼の序に率う。○閒は、去聲。

再朝而會以示威、六年而一會、以訓上下之則、制財用之節。
【読み】
再朝にして會して以て威を示し、六年にして一會し、以て上下の則を訓え、財用の節を制す。

再會而盟以顯昭明。十二年而一盟。所以昭信義也。凡八聘、四朝、再會、王一巡守、盟于方嶽之下。
【読み】
再會して盟いて以て昭明を顯らかならしむ。十二年にして一盟す。信義を昭らかにする所以なり。凡そ八聘し、四朝し、再會し、王一たび巡守して、方嶽の下に盟う。

志業於好、聘也。○好、呼報反。
【読み】
業を好に志し、聘なり。○好は、呼報反。

講禮於等、朝也。
【読み】
禮を等に講い、朝なり。

示威於衆、會也。
【読み】
威を衆に示し、會なり。

昭明於神、盟也。
【読み】
明を神に昭らかにするは、盟なり。

自古以來、未之或失也。存亡之道、恆由是興。
【読み】
古より以來、未だ之を失うこと或らざるなり。存亡の道は、恆に是に由りて興れり。

晉禮主盟、依先王先公舊禮、主諸侯盟。
【読み】
晉禮にて盟を主り、先王先公の舊禮に依りて、諸侯の盟を主る。

懼有不治。奉承齊犧、齊盟之犧牲。○犧、許宜反。
【読み】
治めざること有らんことを懼る。齊犧を奉承して、齊盟の犧牲。○犧は、許宜反。

而布諸君、求終事也。終、竟也。
【読み】
諸を君に布きて、事を終えんことを求めり。終は、竟[お]わるなり。

君曰、余必廢之、何齊之有、唯君圖之。寡君聞命矣。
【読み】
君曰く、余必ず之を廢せん、何の齊ということ之れ有らん、と、唯君之を圖れ。寡君命を聞けり、と。

齊人懼。對曰、小國言之、大國制之。敢不聽從。旣聞命矣。敬共以往。遲速唯君。
【読み】
齊人懼る。對えて曰く、小國は之を言い、大國は之を制す。敢えて聽從せざらんや。旣に命を聞けり。敬共して以て往かん。遲速は唯君のままなり、と。

叔向曰、諸侯有閒矣。閒、隙也。
【読み】
叔向曰く、諸侯閒有り。閒は、隙なり。

不可以不示衆。八月、辛未、治兵、習戰。
【読み】
以て衆を示さずんばある可からず、と。八月、辛未、治兵し、戰を習わす。

建而不旆。建立旌旗、不曳其旆。旆、游也。
【読み】
建てて旆[はい]せず。旌旗を建立して、其の旆を曳かず。旆は、游[りゅう]なり。

壬申、復旆之。諸侯畏之。軍將戰則旆。故曳旆以恐之。○復、扶又反。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、復之を旆す。諸侯之を畏る。軍將に戰わんとするときは則ち旆す。故に旆を曳きて以て之を恐[おど]す。○復は、扶又反。

邾人・莒人愬于晉曰、魯朝夕伐我、幾亡矣。自昭公卽位、邾・魯同好。又不朝夕伐莒。無故怨愬。晉人信之。所謂讒慝弘多。
【読み】
邾人・莒人晉に愬[うった]えて曰く、魯朝夕我を伐ち、幾ど亡びんとす。昭公位に卽きしより、邾・魯好を同じくす。又朝夕莒を伐たず。故無くして怨愬す。晉人之を信ず。所謂讒慝弘だ多きなり。

我之不共、魯故之以。不共晉貢、以魯故也。
【読み】
我が共せざるは、魯の故を以てなり、と。晉の貢を共せざるは、魯の故を以てなり。

晉侯不見公。使叔向來辭曰、諸侯將以甲戌盟。寡君知不得事君矣。請君無勤。託謙辭以絕魯。
【読み】
晉侯公を見ず。叔向をして來り辭せしめて曰く、諸侯將に甲戌を以て盟わんとす。寡君君に事うることを得ざらんことを知る。請う、君勤むること無かれ、と。謙辭に託して以て魯を絕つ。

子服惠伯對曰、君信蠻夷之訴、蠻夷、謂邾・莒。
【読み】
子服惠伯對えて曰く、君蠻夷の訴えを信じて、蠻夷は、邾・莒を謂う。

以絕兄弟之國、棄周公之後。亦唯君。寡君聞命矣。叔向曰、寡君有甲車四千乘在。雖以無道行之、必可畏也。況其率道。其何敵之有。牛雖瘠僨於豚上、其畏不死。僨、仆也。○僨、方問反。
【読み】
以て兄弟の國を絕ち、周公の後を棄つ。亦唯君のままなり。寡君命を聞けり、と。叔向曰く、寡君甲車四千乘の在る有り。無道を以て之を行うと雖も、必ず畏る可けん。況んや其れ道に率うをや。其れ何の敵か之れ有らん。牛は瘠せたりと雖も豚上に僨[たお]るれば、其れ畏れて死なざらんや。僨[ふん]は、仆るるなり。○僨は、方問反。

南蒯・子仲之憂、其庸可棄乎。棄、猶忘也。
【読み】
南蒯・子仲の憂え、其れ庸て棄つ可けんや。棄は、猶忘るるがごとし。

若奉晉之衆、用諸侯之師、因邾・莒・杞・鄫之怒、四國近魯、數以小事相忿。鄫已滅、其民猶存。故幷以恐魯。
【読み】
若し晉の衆を奉じ、諸侯の師を用い、邾・莒・杞・鄫[しょう]の怒りに因りて、四國は魯に近く、數々小事を以て相忿る。鄫已に滅すれども、其の民猶存す。故に幷せて以て魯を恐す。

以討魯罪、閒其二憂、因南蒯・子仲二憂爲閒隙。
【読み】
以て魯の罪を討じて、其の二憂に閒せば、南蒯・子仲の二憂に因りて閒隙を爲す。

何求而弗克。魯人懼聽命。不敢與盟。
【読み】
何を求めて克たざらん、と。魯人懼れて命を聽く。敢えて盟に與らず。

甲戌、同盟于平丘、齊服也。經所以稱同。
【読み】
甲戌、平丘に同盟するとは、齊服するなり。經に同と稱する所以なり。

令諸侯、日中造于除。除地爲壇。盟會處。○造、七報反。壇、音善。
【読み】
諸侯に令すらく、日中に除に造[いた]れ、と。地を除いて壇を爲る。盟會の處。○造は、七報反。壇は、音善。

癸酉、退朝、先盟朝晉。○先、悉薦反。
【読み】
癸酉[みずのと・とり]に、朝より退きて、盟に先だちて晉に朝す。○先は、悉薦反。

子產命外僕、速張於除。張幄幕。
【読み】
子產外僕に命ずらく、速やかに除に張れ、と。幄幕を張らしむ。

子大叔止之、使待明日。及夕、子產聞其未張也、使速往、乃無所張矣。地已滿也。傳言子產每事敏於大叔。
【読み】
子大叔之を止めて、明日を待たしむ。夕に及びて、子產其の未だ張らざると聞きて、速やかに往かしむれば、乃ち張る所無し。地已に滿つ。傳子產每事大叔より敏なることを言う。

及盟、子產爭承。承、貢賦之次。
【読み】
盟に及び、子產承を爭う。承は、貢賦の次なり。

曰、昔天子班貢、輕重以列。列、位也。
【読み】
曰く、昔天子の貢を班[わか]てるは、輕重列を以てせり。列は、位なり。

列尊貢重、周之制也。公侯地廣。故所貢者多。
【読み】
列尊ければ貢重きは、周の制なり。公侯地廣し。故に貢する所の者多し。

卑而貢重者、甸服也。甸服、謂天子畿内、共職貢者。
【読み】
卑しくして貢重き者は、甸服[てんぷく]なり。甸服は、天子畿内の、職貢に共する者を謂う。

鄭伯・男也。而使從公侯之貢。言鄭國在甸服外、爵列伯・子・男。不應出公侯之貢。
【読み】
鄭は伯・男なり。而るを公侯の貢に從わしむ。言うこころは、鄭國は甸服の外に在り、爵は伯・子・男に列なる。公侯の貢を出だす應からず。

懼弗給也。敢以爲請。諸侯靖兵、好以爲事、靖、息也。○好、呼報反。
【読み】
懼れらくは給[つ]がざらんことを。敢えて以て請うことを爲す。諸侯兵を靖[やす]め、好以て事と爲して、靖は、息むなり。○好は、呼報反。

行理之命、行理、使人通聘問者。
【読み】
行理の命、行理は、使人の聘問を通ずる者。

無月不至。貢之無藝、藝、法制。
【読み】
月として至らざること無し。貢の藝無くして、藝は、法制。

小國有闕、所以得罪也。諸侯脩盟、存小國也。貢獻無極、亡可待也。存亡之制、將在今矣。
【読み】
小國闕くること有らば、罪を得る所以なり。諸侯盟を脩むるは、小國を存せんとなり。貢獻極まり無くば、亡びんこと待つ可きなり。存亡の制、將に今に在らんとす、と。

自日中以爭至于昏。晉人許之。
【読み】
日中より以て爭いて昏に至る。晉人之を許す。

旣盟。子大叔咎之曰、諸侯若討、其可瀆乎。瀆、易也。○易、以豉反。
【読み】
旣に盟う。子大叔之を咎めて曰く、諸侯若し討ぜば、其れ瀆[あなど]る可けんや、と。瀆は、易るなり。○易は、以豉反。

子產曰、晉政多門。政不出一家。
【読み】
子產曰く、晉の政門多し。政一家より出でず。

貳偸之不暇。何暇討。貳、不一。偸、苟且。
【読み】
貳偸[じとう]するだも暇あらず。何ぞ討ずるに暇あらん。貳は、不一。偸は、苟且。

國不競亦陵。何國之爲。不競爭、則爲人所侵陵、不成爲國。
【読み】
國競わざれば亦陵[しの]がれん。何ぞ國を爲さん。競爭せざれば、則ち人の爲に侵陵せられて、國爲ることを成さず。

公不與盟。信邾・莒之訴、欲討魯故。
【読み】
公盟に與らず。邾・莒の訴えを信じて、魯を討ぜんと欲する故なり。

晉人執季孫意如、以幕蒙之、蒙、裹也。
【読み】
晉人季孫意如を執えて、幕を以て之を蒙[つつ]み、蒙は、裹[つつ]むなり。

使狄人守之。司鐸射、魯大夫。○射、食亦反。又食夜反。
【読み】
狄人をして之を守らしむ。司鐸射、魯の大夫。○射は、食亦反。又食夜反。

懷錦奉壺飮冰以蒲伏焉。守者御之。乃與之錦而入。蒲伏竊往飮季孫。冰、箭筩蓋。可以取飮。○奉、芳勇反。蒲、步都反。又音扶。伏、蒲北反。又音服。御、魚呂反。飮、於鴆反。筩、音童。又音勇。
【読み】
錦を懷にして壺飮と冰とを奉げて以て蒲伏す。守者之を御[ふせ]ぐ。乃ち之に錦を與えて入る。蒲伏して竊かに往きて季孫に飮ましむ。冰は、箭筩[せんとう]の蓋。以て飮を取る可し。○奉は、芳勇反。蒲は、步都反。又音扶。伏は、蒲北反。又音服。御は、魚呂反。飮は、於鴆反。筩は、音童。又音勇。

晉人以平子歸。子服湫從。湫、子服惠伯。從至晉。○湫、子小反。徐音椒。從、才用反。
【読み】
晉人平子を以[い]て歸る。子服湫[しふくしょう]從う。湫は、子服惠伯。從いて晉に至る。○湫は、子小反。徐音椒。從は、才用反。

子產歸。未至、聞子皮卒、哭。且曰、吾已。已、猶決竟。
【読み】
子產歸る。未だ至らず、子皮が卒すと聞きて、哭す。且つ曰く、吾れ已みぬ、と。已は、猶決竟のごとし。

無爲爲善矣。唯夫子知我。言子皮知己之善。
【読み】
善をすることを爲すこと無し。唯夫子のみ我を知れり、と。言うこころは、子皮己が善を知れり。

仲尼謂、子產於是行也、足以爲國基矣。詩曰、樂君子、邦家之基。詩、小雅。言樂君子爲治。乃國家之基本。
【読み】
仲尼謂く、子產是の行に於るや、以て國の基を爲すに足れり。詩に曰く、樂しむ君子は、邦家の基なり、と。詩は、小雅。言うこころは、君子治を爲すを樂しむ。乃ち國家の基本なり。
*頭注に、「按樂旨、或作樂只。註樂與、一本作樂只。」とある。

子產、君子之求樂者也。且曰、合諸侯、藝貢事、禮也。嫌爭競不順。故以禮明之。
【読み】
子產は、君子の樂しみを求むる者なり。且曰く、諸侯を合わせて、貢事を藝するは、禮なり、と。爭競不順に嫌あり。故に禮を以て之を明らかにす。

鮮虞人聞晉師之悉起也、五年傳曰、遺守四千。今甲車四千乘。故爲悉起。
【読み】
鮮虞の人晉の師の悉く起こると聞くや、五年の傳に曰く、遺守四千、と。今甲車四千乘。故に悉く起こると爲す。

而不警邊、且不脩備。言夷狄無謀。
【読み】
邊を警めず、且備えを脩めず。夷狄の謀無きを言う。

晉荀吳自著雍以上軍侵鮮虞、及中人、驅衝競、中山望都縣西北有中人城。驅衝車與狄爭逐。
【読み】
晉の荀吳著雍より上軍を以て鮮虞を侵し、中人に及びて、衝を驅りて競い、中山望都縣の西北に中人城有り。衝車を驅りて狄と爭い逐う。

大獲而歸。爲十五年、晉伐鮮虞起。
【読み】
大いに獲て歸る。十五年、晉鮮虞を伐つ爲の起なり。

楚之滅蔡也、靈王遷許・胡・沈・道・房・申於荆焉。平王卽位、旣封陳・蔡、而皆復之。禮也。滅蔡、在十一年。許・胡・沈、小國也。道・房・申、皆故諸侯。楚滅以爲邑。荆、荆山也。傳言平王得安民之禮。汝南有吳防縣。卽防國。
【読み】
楚の蔡を滅ぼすや、靈王許・胡・沈・道・房・申を荆に遷せり。平王位に卽きて、旣に陳・蔡を封じて、皆之を復す。禮なり。蔡を滅ぼすは、十一年に在り。許・胡・沈は、小國なり。道・房・申は、皆故の諸侯。楚滅ぼして以て邑と爲す。荆は、荆山なり。傳平王安民の禮を得るを言う。汝南に吳防縣有り。卽ち防國なり。

隱大子之子廬歸于蔡。禮也。隱大子、大子有也。廬、蔡平侯。
【読み】
隱大子の子廬を蔡に歸す。禮なり。隱大子は、大子有なり。廬は、蔡の平侯。

悼大子之子吳歸于陳。禮也。悼大子、偃師也。吳、陳惠公。
【読み】
悼大子の子吳を陳に歸す。禮なり。悼大子は、偃師なり。吳は、陳の惠公。

冬、十月、葬蔡靈公。禮也。國復成禮以葬也。此陳・蔡事、傳皆言禮。嫌楚所封、不得比諸侯。故明之。
【読み】
冬、十月、蔡の靈公を葬る。禮なり。國復して禮を成して以て葬るなり。此の陳・蔡の事、傳皆禮と言う。楚の封ずる所は、諸侯に比することを得ざるに嫌あり。故に之を明らかにす。

公如晉。荀吳謂韓宣子曰、諸侯相朝、講舊好也。執其卿而朝其君、有不好焉。不如辭之。乃使士景伯辭公于河。景伯、士文伯之子、彌牟也。○舊好、呼報反。
【読み】
公晉に如く。荀吳韓宣子に謂いて曰く、諸侯相朝するは、舊好を講ずるなり。其の卿を執えて其の君を朝せしむるは、好からざること有り。之を辭せんに如かず、と。乃ち士景伯をして公を河に辭せしむ。景伯は、士文伯の子、彌牟なり。○舊好は、呼報反。

吳滅州來。令尹子旗請伐吳。王弗許、曰、吾未撫民人、未事鬼神、未脩守備、未定國家。而用民力、敗不可悔。州來在吳、猶在楚也。子姑待之。傳言平王所以能有國。
【読み】
吳州來を滅ぼす。令尹子旗吳を伐たんと請う。王許さず、曰く、吾れ未だ民人を撫でず、未だ鬼神に事えず、未だ守備を脩めず、未だ國家を定めず。而るに民力を用いば、敗らるれば悔ゆ可からず。州來の吳に在るは、猶楚に在るがごとし。子姑く之を待て、と。傳平王能く國を有つ所以を言う。

季孫猶在晉。子服惠伯私於中行穆子、私與之語。
【読み】
季孫猶晉に在り。子服惠伯中行穆子に私して、私に之と語る。

曰、魯事晉、何以不如夷之小國。魯兄弟也。土地猶大。所命能具。若爲夷棄之、使事齊・楚、其何瘳於晉。瘳、差也。○爲、于僞反。下同。
【読み】
曰く、魯の晉に事うること、何を以て夷の小國に如かざる。魯は兄弟なり。土地猶大なり。命ずる所能く具う。若し夷の爲に之を棄てて、齊・楚に事えしめば、其れ何ぞ晉に瘳[い]えん。瘳[ちゅう]は、差[い]ゆるなり。○爲は、于僞反。下も同じ。

親親與大、賞共罰否、所以爲盟主也。子其圖之。諺曰、臣一主二。言一臣必有二主。道不合、得去事他國。
【読み】
親を親しみ大に與し、共を賞して否を罰するは、盟主爲る所以なり。子其れ之を圖れ。諺に曰く、臣は一、主は二、と。言うこころは、一臣には必ず二主有り。道合わざれば、去りて他國に事うることを得。

吾豈無大國。言非獨晉可事。
【読み】
吾れ豈大國無からんや、と。言うこころは、獨り晉のみ事う可きに非ず。

穆子告韓宣子、且曰、楚滅陳・蔡不能救、而爲夷執親。將焉用之。乃歸季孫。
【読み】
穆子韓宣子に告げ、且つ曰く、楚陳・蔡を滅ぼせども救うこと能わずして、夷の爲に親を執う。將焉ぞ之を用いん、と。乃ち季孫を歸さんとす。

惠伯曰、寡君未知其罪、合諸侯而執其老。老、尊卿稱。
【読み】
惠伯曰く、寡君未だ其の罪を知らずして、諸侯を合わせて其の老を執えぬ。老は、卿を尊ぶの稱。

若猶有罪、死命可也。死晉命也。
【読み】
若し猶罪有らば、命に死して可なり。晉の命に死するなり。

若曰無罪而惠免之、諸侯不聞、是逃命也。何免之爲。請從君惠於會。欲得盟會見遣。不欲私去。
【読み】
若し罪無しと曰いて惠みて之を免すも、諸侯聞かずんば、是れ命を逃るるなり。何ぞ免さることを之れ爲さん。請う、君の惠みに會に從わん、と。盟會を得て遣られんと欲す。私に去ることを欲せざるなり。

宣子患之。謂叔向曰、子能歸季孫乎。對曰、不能。鮒也能。鮒、叔魚。
【読み】
宣子之を患う。叔向に謂いて曰く、子能く季孫を歸さんか、と。對えて曰く、能わず。鮒や能くせん、と。鮒は、叔魚。

乃使叔魚。叔魚見季孫曰、昔鮒也得罪於晉君、自歸於魯君、蓋襄二十一年、坐叔虎與欒氏黨、幷得罪。
【読み】
乃ち叔魚を使わしむ。叔魚季孫を見て曰く、昔鮒や罪を晉君に得て、魯君に自歸せしとき、蓋し襄二十一年、叔虎が欒氏と黨するに坐せられて、幷せて罪を得るならん。

微武子之賜、不至於今。武子、季平子祖父。
【読み】
武子の賜微かりせば、今に至らじ。武子は、季平子の祖父。

雖獲歸骨於晉、猶子則肉之。敢不盡情。歸子而不歸。鮒也聞諸吏、將爲子除館於西河。西使近河。
【読み】
骨を晉に歸すことを獲と雖も、猶子則ち之を肉づけるがごとし。敢えて情を盡くさざらんや。子を歸せども歸らず。鮒や諸を吏に聞く、將に子の爲に館を西河に除わんとす、と。西河に近づかしむ。

其若之何。且泣。泣以信其言。
【読み】
其れ之を若何、と。且つ泣く。泣きて以て其の言を信にす。

平子懼、先歸。惠伯待禮。待見遣之禮。
【読み】
平子懼れ、先ず歸る。惠伯禮を待つ。遣らるるの禮を待つ。


〔經〕十有四年、春、意如至自晉。書至者、喜得免。
【読み】
〔經〕十有四年、春、意如晉より至る。至るを書すは、免さるを得るを喜ぶなり。

三月、曹伯滕卒。無傳。四同盟。
【読み】
三月、曹伯滕卒す。傳無し。四たび同盟す。

夏、四月。無傳。
【読み】
夏、四月。傳無し。

秋、葬曹武公。無傳。
【読み】
秋、曹の武公を葬る。傳無し。

八月、莒子去疾卒。未同盟。○去、起呂反。
【読み】
八月、莒子去疾卒す。未だ同盟せず。○去は、起呂反。

冬、莒殺其公子意恢。以禍亂告、不必繫於爲卿。故雖公子亦書。意恢與亂君爲黨。故書名惡之。○恢、苦回反。惡、烏路反。
【読み】
冬、莒其の公子意恢[いかい]を殺す。禍亂を以て告ぐれば、必ずしも卿爲るに繫けず。故に公子と雖も亦書し。意恢亂君と黨を爲す。故に名を書して之を惡む。○恢は、苦回反。惡は、烏路反。

〔傳〕十四年、春、意如至自晉、尊晉罪己也。以舍族、爲尊晉罪己。○舍、音捨。
【読み】
〔傳〕十四年、春、意如晉より至るとは、晉を尊びて己を罪するなり。族を舍つるを以て、晉を尊び己を罪すと爲す。○舍は、音捨。

尊晉罪己、禮也。禮、脩己而不責人。
【読み】
晉を尊びて己を罪するは、禮なり。禮は、己を脩めて人を責めず。

南蒯之將叛也、盟費人。司徒老祁・慮癸、二人、南蒯家臣。
【読み】
南蒯の將に叛かんとするや、費人に盟う。司徒老祁[ろうき]・慮癸[りょき]、二人は、南蒯が家臣。

僞廢疾、使請於南蒯曰、臣願受盟而疾興。若以君靈不死、請待閒而盟。閒、差也。○差、初賣反。
【読み】
廢疾ありと僞り、南蒯に請わしめて曰く、臣盟を受けんことを願えども疾興れり。若し君の靈を以て死なずんば、請う、閒[い]ゆるを待ちて盟わん、と。閒は、差[い]ゆるなり。○差は、初賣反。

許之。二子因民之欲叛、請朝衆而盟、欲因合衆以作亂。
【読み】
之を許す。二子民の叛かんと欲するに因りて、衆を朝せしめて盟わんと請い、衆を合わすに因りて以て亂を作さんと欲す。
*漢籍國字解全書では「二子因民之欲叛」の後に「也」が入る。

遂劫南蒯曰、群臣不忘其君、君、謂季氏。
【読み】
遂に南蒯を劫かして曰く、群臣其の君を忘れざれども、君は、季氏を謂う。

畏子以及今。三年聽命矣。子若弗圖、費人不忍其君、將不能畏子矣。不能復畏子。○畏子以及今、絕句。
【読み】
子を畏れて以て今に及べり。三年命を聽けり。子若し圖らずんば、費人其の君に忍びざれば、將に子を畏るること能わざらんとす。復子を畏るること能わず。○畏子以及今は、絕句。

子何所不逞欲。請送子。送使出奔。
【読み】
子何れの所にか欲を逞しくせざらん。請う、子を送らん、と。送りて出奔せしむ。

請期五日、南蒯請期。冀有變。
【読み】
期を請うこと五日、南蒯期を請う。變有らんことを冀うなり。

遂奔齊。
【読み】
遂に齊に奔る。

侍飮酒於景公。公曰、叛夫。戲之。
【読み】
飮酒に景公に侍る。公曰く、叛夫なり、と。之に戲る。

對曰、臣欲張公室也。張、强也。
【読み】
對えて曰く、臣は公室を張らんと欲してなり、と。張は、强きなり。

子韓皙曰、齊大夫。
【読み】
子韓皙曰く、齊の大夫。

家臣而欲張公室、罪莫大焉。言越職。
【読み】
家臣にして公室を張らんと欲するは、罪焉より大なるは莫し、と。職を越ゆるを言う。

司徒老祁・慮癸來歸費。歸魯。
【読み】
司徒老祁・慮癸來りて費を歸す。魯に歸す。

齊侯使鮑文子致之。南蒯雖叛、費人不從、未專屬齊。二子逐蒯而復其舊。故經不書歸費。齊使文子致邑、欲以假好。非事實也。
【読み】
齊侯鮑文子をして之を致さしむ。南蒯叛くと雖も、費人從わず、未だ齊に專屬せず。二子蒯を逐いて其の舊に復す。故に經費を歸すことを書さず。齊文子をして邑を致さしむるは、以て好を假さんと欲してなり。事の實には非ざるなり。

夏、楚子使然丹簡上國之兵於宗丘、且撫其民。上國、在國都之西。西方居上流。故謂之上國。宗丘、楚地。
【読み】
夏、楚子然丹をして上國の兵を宗丘に簡[えら]び、且つ其の民を撫でしむ。上國は、國都の西に在り。西方は上流に居る。故に之を上國と謂う。宗丘は、楚の地。

分貧振窮、分、與也。振、救也。○分、如字。徐甫問反。
【読み】
貧に分かち窮を振[すく]い、分は、與うるなり。振は、救うなり。○分は、字の如し。徐甫問反。

長孤幼、養老疾、收介特、介特、單身民也。收養不使流散。○長、丁丈反。
【読み】
孤幼を長じ、老疾を養い、介特を收め、介特は、單身の民なり。收養して流散せしめず。○長は、丁丈反。

救災患、宥孤寡、寬其賦稅。
【読み】
災患を救い、孤寡を宥め、其の賦稅を寬くす。

赦罪戾、詰姦慝、詰、責問也。○詰、起吉反。
【読み】
罪戾を赦し、姦慝を詰り、詰は、責問なり。○詰は、起吉反。

舉淹滯、淹滯、有才德而未敍者。
【読み】
淹滯を舉げ、淹滯は、才德有りて未だ敍でざる者。

禮新敍舊、新、羇旅也。
【読み】
新を禮し舊を敍で、新は、羇旅なり。

祿勳合親、勳、功也。親、九族。
【読み】
勳に祿し親を合わせ、勳は、功なり。親は、九族。

任良物官。物、事也。
【読み】
良に任じ物をもて官にす。物は、事なり。

使屈罷簡東國之兵於召陵、兵在國都之東者。○罷、音皮。召、上照反。
【読み】
屈罷をして東國の兵を召陵に簡ばしめ、兵の國都の東に在る者。○罷は、音皮。召は、上照反。

亦如之。如然丹。
【読み】
亦之の如し。然丹が如し。

好於邊疆、結好四鄰。○好、呼報反。
【読み】
邊疆に好をし、好を四鄰に結ぶ。○好は、呼報反。

息民五年而後用師。禮也。
【読み】
民を息えること五年にして後に師を用いぬ。禮なり。

秋、八月、莒著丘公卒。郊公不慼。郊公、著丘公子。○著、直居反。徐直據反。
【読み】
秋、八月、莒の著丘公卒す。郊公慼[いた]まず。郊公は、著丘公の子。○著は、直居反。徐直據反。

國人弗順。欲立著丘公之弟庚輿。庚輿、莒共公。○與、音餘。
【読み】
國人順わず。著丘公の弟庚輿を立てんと欲す。庚輿は、莒の共公。○與は、音餘。

蒲餘侯惡公子意恢、而善於庚輿。蒲餘侯、莒大夫玆夫也。意恢、莒羣公子。○惡、烏路反。下同。
【読み】
蒲餘侯公子意恢を惡みて、庚輿に善し。蒲餘侯は、莒の大夫玆夫なり。意恢は、莒の羣公子。○惡は、烏路反。下も同じ。

郊公惡公子鐸、而善於意恢。鐸、亦羣公子。
【読み】
郊公公子鐸を惡みて、意恢に善し。鐸も、亦羣公子。

公子鐸因蒲餘侯而與之謀、曰、爾殺意恢。我出君而納庚輿。許之。爲下冬、殺意恢傳。
【読み】
公子鐸蒲餘侯に因りて之と謀りて、曰く、爾意恢を殺せ。我れ君を出だして庚輿を納れん、と。之を許す。下の冬、意恢を殺す爲の傳なり。

楚令尹子旗有德於王、不知度。有佐立之德。
【読み】
楚の令尹子旗王に德有りて、度を知らず。佐立の德有り。

與養氏比而求無厭。養氏、子旗之黨。養田基之後。○比、毗志反。厭、於鹽反。
【読み】
養氏と比して求め厭くこと無し。養氏は、子旗の黨。養田基の後。○比は、毗志反。厭は、於鹽反。

王患之。九月、甲午、楚子殺鬭成然、而滅養氏之族。使鬭辛居鄖、以無忘舊勳。辛、子旗之子、鄖公辛。○鄖、音云。
【読み】
王之を患う。九月、甲午[きのえ・うま]、楚子鬭成然を殺して、養氏の族を滅ぼす。鬭辛をして鄖[うん]に居らしめ、以て舊勳を忘るること無からんとなり。辛は、子旗の子、鄖公辛。○鄖は、音云。

冬、十二月、蒲餘侯玆夫殺莒公子意恢。郊公奔齊。公子鐸逆庚輿於齊。齊隰黨・公子鉏送之。有賂田。莒賂齊以田。
【読み】
冬、十二月、蒲餘侯玆夫莒の公子意恢を殺す。郊公齊に奔る。公子鐸庚輿を齊より逆う。齊の隰黨・公子鉏之を送る。賂田有り。莒齊に賂うに田を以てす。

晉邢侯與雍子爭鄐田、邢公、楚申公巫臣之子也。雍子、亦故楚人。○鄐、許六反。又超六反。
【読み】
晉の邢侯雍子と鄐[きく]の田を爭い、邢公は、楚の申公巫臣の子なり。雍子も、亦故に楚人。○鄐は、許六反。又超六反。

久而無成。士景伯如楚、士景伯、晉理官。
【読み】
久しくして成[たい]らぐこと無し。士景伯楚に如き、士景伯は、晉の理官。

叔魚攝理。攝代景伯。
【読み】
叔魚理を攝[か]ぬ。景伯を攝代す。

韓宣子命斷舊獄。罪在雍子。雍子納其女於叔魚。叔魚蔽罪邢侯。蔽、斷也。○斷、丁亂反。蔽、必世反。
【読み】
韓宣子命じて舊獄を斷ぜしむ。罪雍子に在り。雍子其の女を叔魚に納る。叔魚罪を邢侯に蔽[さだ]む。蔽は、斷ずるなり。○斷は、丁亂反。蔽は、必世反。

邢侯怒、殺叔魚與雍子於朝。宣子問其罪於叔向。叔向曰、三人同罪。施生戮死、可也。施、行罪也。
【読み】
邢侯怒り、叔魚と雍子とを朝に殺す。宣子其の罪を叔向に問う。叔向曰く、三人罪を同じくす。生に施し死を戮して、可なり。施は、罪を行うなり。

雍子自知其罪、而賂以買直、鮒也鬻獄、邢侯專殺。其罪一也。己惡而掠美爲昏、掠、取也。昏、亂也。○鬻、羊六反。掠、音亮。
【読み】
雍子は自ら其の罪を知りて、賂いて以て直を買い、鮒や獄を鬻[ひさ]ぎ、邢侯は殺を專らにす。其の罪一なり。己惡にして美を掠むるを昏と爲し、掠は、取るなり。昏は、亂るるなり。○鬻[いく]は、羊六反。掠は、音亮。

貪以敗官爲墨、墨、不潔之稱。○敗、必邁反。又如字。
【読み】
貪りて以て官を敗るを墨と爲し、墨は、不潔の稱。○敗は、必邁反。又字の如し。

殺人不忌爲賊。忌、畏也。
【読み】
人を殺して忌まざるを賊と爲す。忌は、畏るるなり。

夏書曰、昏・墨・賊殺。逸書。三者皆死刑。
【読み】
夏書に曰く、昏・墨・賊は殺す、と。逸書。三つの者は皆死刑。

皐陶之刑也。請從之。乃施邢侯、而尸雍子與叔魚於市。
【読み】
皐陶の刑なり。請う、之に從わん、と。乃ち邢侯に施して、雍子と叔魚とを市に尸[さら]せり。

仲尼曰、叔向古之遺直也。言叔向之直、有古人遺風。○施、如字。孔晁注國語、尸氏反。
【読み】
仲尼曰く、叔向は古の遺直なり。言うこころは、叔向の直、古人の遺風有り。○施は、字の如し。孔晁注國語、尸氏反。

治國制刑、不隱於親。謂國之大問、己所答當也。至於他事、則宜有隱。○當、丁浪反。
【読み】
國を治め刑を制するは、親に隱さず。國の大問は、己が當を答う所を謂うなり。他事に至りては、則ち宜しく隱すこと有るべし。○當は、丁浪反。

三數叔魚之惡、不爲末減。末、薄也。減、輕也。皆以正言之。○數、色主反。又色具反。
【読み】
三たび叔魚の惡を數えて、爲に末減せざりき。末は、薄きなり。減は、輕きなり。皆正を以て之を言う。○數は、色主反。又色具反。

曰義也夫。可謂直矣。於義未安。直則有之。○夫、音扶。一芳于反。
【読み】
義と曰いわんか。直と謂う可し。義に於ては未だ安からず。直は則ち之れ有り。○夫は、音扶。一に芳于反。

平丘之會、數其賄也、謂言瀆貨無厭。
【読み】
平丘の會に、其の賄を數えて、貨に瀆れて厭くこと無しと言いしを謂う。

以寬衛國、晉不爲暴。歸魯季孫、稱其詐也、謂言鮒也能。
【読み】
以て衛國を寬くして、晉暴を爲さず。魯に季孫を歸すに、其の詐りを稱して、鮒や能くすと言いしを謂う。

以寬魯國、晉不爲虐。邢侯之獄、言其貪也、以正刑書、晉不爲頗。三言而除三惡、加三利、三惡、暴・虐・頗也。三惡除則三利加。○頗、普何反。
【読み】
以て魯國を寬くして、晉虐を爲さず。邢侯の獄に、其の貪を言いて、以て刑書を正して、晉頗を爲さず。三言して三惡を除き、三利を加え、三惡は、暴・虐・頗なり。三惡除くときは則ち三利加わる。○頗は、普何反。

殺親益榮。榮名益己。
【読み】
親を殺して榮を益せり。榮名己に益す。

猶義也夫。三罪唯答宣子問、不可以不正。其餘則以直傷義。故重疑之。此段余別有說。
【読み】
猶義ならんか、と。三罪は唯宣子が問いに答うれば、以て正しくせずんばある可からず。其の餘は則ち直を以て義を傷る。故に重ねて之を疑えり。此の段余別に說有り。


〔經〕十有五年、春、王正月、吳子夷末卒。無傳。未同盟。
【読み】
〔經〕十有五年、春、王の正月、吳子夷末卒す。傳無し。未だ同盟せず。

二月、癸酉、有事于武宮。籥入、叔弓卒。去樂卒事。略書有事、爲叔弓卒起也。武宮、魯武公廟。成六年、復立之。○去、起呂反。
【読み】
二月、癸酉[みずのと・とり]、武宮に事有り。籥[やく]入りて、叔弓卒す。樂を去りて事を卒わる。略して事有りと書すは、叔弓卒する爲の起なり。武宮は、魯の武公の廟。成六年、復之を立つ。○去は、起呂反。

夏、蔡朝吳出奔鄭。朝吳不遠讒人。所以見逐而書名。
【読み】
夏、蔡の朝吳出でて鄭に奔る。朝吳讒人を遠ざけず。逐われて名を書す所以なり。

六月、丁巳、朔、日有食之。無傳。
【読み】
六月、丁巳[ひのと・み]、朔、日之を食する有り。傳無し。

秋、晉荀吳帥師伐鮮虞。冬、公如晉。
【読み】
秋、晉の荀吳師を帥いて鮮虞を伐つ。冬、公晉に如く。

〔傳〕十五年、春、將禘于武公、戒百官。齊戒。
【読み】
〔傳〕十五年、春、將に武公に禘せんとし、百官を戒む。齊戒。

梓愼曰、禘之日、其有咎乎。吾見赤黑之祲。非祭祥也。喪氛也。祲、妖氛也。蓋見於宗廟。故以爲非祭祥也。氛、惡氣也。○祲、子鴆反。氛、芳云反。
【読み】
梓愼曰く、禘の日に、其れ咎有らんか。吾れ赤黑の祲[しん]を見る。祭祥に非ざるなり。喪氛[そうふん]なり。祲は、妖氛なり。蓋し宗廟に見ゆ。故に以て祭祥に非ずと爲すなり。氛は、惡氣なり。○祲は、子鴆反。氛は、芳云反。

其在涖事乎。涖、臨也。
【読み】
其れ事に涖むに在らんか。涖[り]は、臨むなり。

二月、癸酉、禘。叔弓涖事。籥入而卒。去樂卒事。禮也。大臣卒。故爲之去樂。○去、起呂反。
【読み】
二月、癸酉、禘す。叔弓事に涖む。籥入りて卒す。樂を去りて事を卒わる。禮なり。大臣卒す。故に之が爲に樂を去る。○去は、起呂反。

楚費無極害朝吳之在蔡也、朝吳、蔡大夫。有功於楚平王。故無極恐其有寵、疾害之。○費、扶味反。
【読み】
楚の費無極朝吳の蔡に在るを害[にく]むや、朝吳は、蔡の大夫。楚の平王に功有り。故に無極其の寵有らんことを恐れて、之を疾害す。○費は、扶味反。

欲去之。乃謂之曰、王唯信子。故處子於蔡。子亦長矣。而在下位。辱。必求之。吾助子請。請、求上位。
【読み】
之を去らんと欲す。乃ち之に謂いて曰く、王唯子を信ず。故に子を蔡に處けり。子も亦長ぜり。而るに下位に在り。辱なり。必ず之を求めよ。吾れ子を助けて請わん、と。請うとは、上位を求むるなり。

又謂其上之人、蔡人在上位者。
【読み】
又其の上の人に謂いて、蔡人の上位に在る者。

曰、王唯信吳。故處諸蔡。二三子莫之如也。而在其上。不亦難乎。弗圖、必及於難。夏、蔡人逐朝吳。朝吳出奔鄭。
【読み】
曰く、王唯吳を信ず。故に諸を蔡に處けり。二三子之に如くこと莫し。而るに其の上に在り。亦難からずや。圖らずんば、必ず難に及ばん、と。夏、蔡人朝吳を逐う。朝吳出でて鄭に奔る。

王怒曰、余唯信吳。故寘諸蔡。且微吳、吾不及此。女何故去之。無極對曰、臣豈不欲吳。非不欲善吳。○於難、乃旦反。
【読み】
王怒りて曰く、余唯吳を信ず。故に諸を蔡に寘けり。且つ吳微かりせば、吾れ此に及ばじ。女何の故に之を去れる、と。無極對えて曰く、臣豈吳を欲せざらんや。吳を善することを欲せざるに非ず。○於難は、乃旦反。

然而前知其爲人之異也。言其多權謀。
【読み】
然れども前より其の人と爲りの異なるを知れり。其の權謀多きを言う。

吳在蔡、蔡必速飛。去吳、所以翦其翼也。以鳥喩也。言吳在蔡、必能使蔡速强而背楚。
【読み】
吳蔡に在らば、蔡必ず速やかに飛ばん。吳を去るは、其の翼を翦る所以なり、と。鳥を以て喩うるなり。言うこころは、吳蔡に在らば、必ず能く蔡をして速やかに强くして楚に背かしめん。

六月、乙丑、王大子壽卒。周景王子。
【読み】
六月、乙丑[きのと・うし]、王の大子壽卒す。周の景王の子。

秋、八月、戊寅、穆后崩。大子壽之母也。傳爲晉荀躒如周葬穆后起。
【読み】
秋、八月、戊寅[つちのえ・とら]、穆后崩ず。大子壽の母なり。傳晉の荀躒周に如きて穆后を葬る爲の起なり。
*漢籍國字解全書には、「穆后」の前に「王」がある。

晉荀吳帥師伐鮮虞、圍鼓。鼓、白狄之別。鉅鹿下曲陽縣有鼓聚。
【読み】
晉の荀吳師を帥いて鮮虞を伐ち、鼓を圍む。鼓は、白狄の別。鉅鹿下曲陽縣に鼓聚有り。

鼓人或請以城叛。穆子弗許。左右曰、師徒不勤、而可以獲城。何故不爲。穆子曰、吾聞諸叔向。曰、好惡不愆、民知所適、事無不濟。愆、過也。適、歸也。
【読み】
鼓人或ひと城を以て叛かんと請う。穆子許さず。左右曰く、師徒勤めずして、以て城を獲可し。何の故に爲さざる、と。穆子曰く、吾れ諸を叔向に聞く。曰く、好惡愆[あやま]らざれば、民適[おもむ]く所を知りて、事濟らざること無し、と。愆は、過つなり。適は、歸くなり。

或以吾城叛、吾所甚惡也。人以城來、吾獨何好焉。賞所甚惡、若所好何。無以復加所好。
【読み】
或は吾が城を以て叛かば、吾が甚だ惡む所なり。人城を以て來るを、吾れ獨り何ぞ好せん。甚しく惡む所を賞せば、好む所を若何。以て復好む所に加うること無し。

若其弗賞、是失信也。何以庇民。力能則進、否則退、量力而行。吾不可以欲城而邇姦。所喪滋多。
【読み】
若し其れ賞せずんば、是れ信を失うなり。何を以て民を庇[おお]わん。力能くせば則ち進み、否ざれば則ち退き、力を量りて行わん。吾れ以て城を欲して姦に邇づく可からず。喪う所滋々多からん、と。

使鼓人殺叛人而繕守備。
【読み】
鼓人をして叛人を殺して守備を繕[おさ]めしむ。

圍鼓三月、鼓人或請降。使其民見。曰、猶有食色。姑脩而城。軍吏曰、獲城而弗取、勤民而頓兵。何以事君。穆子曰、吾以事君也。獲一邑而敎民怠、將焉用邑。邑以賈怠、不如完舊。完、猶保守。○見、賢遍反。賈、音古。下同。
【読み】
鼓を圍むこと三月、鼓人或ひと降らんと請う。其の民をして見えしむ。曰く、猶食色有り。姑く而[なんじ]の城を脩めよ、と。軍吏曰く、城を獲て取らず、民を勤めしめて兵を頓[にぶ]らさん。何を以て君に事えん、と。穆子曰く、吾は以て君に事えんとなり。一邑を獲て民に怠りを敎えば、將に焉に邑を用いんとする。邑以て怠りを賈うは、舊を完くするに如かず。完は、猶保守のごとし。○見は、賢遍反。賈は、音古。下も同じ。

賈怠無卒、卒、終也。
【読み】
怠りを賈えば卒わり無く、卒は、終わりなり。

棄舊不祥。鼓人能事其君。我亦能事吾君。率義不爽、爽、差也。
【読み】
舊を棄つるは不祥なり。鼓人も能く其の君に事えよ。我も亦能く吾が君に事えん。義に率いて爽[たが]わず、爽は、差うなり。

好惡不愆、城可獲而民知義所。知義所在也。荀吳必其能獲。故因以示義。
【読み】
好惡愆らざれば、城獲可くして民義所を知らん。義の在る所を知るなり。荀吳其の能く獲んことを必とす。故に因りて以て義を示す。

有死命而無二心、不亦可乎。
【読み】
命に死すること有りて二心無きは、亦可ならずや、と。

鼓人告食竭力盡、而後取之。克鼓而反。不戮一人。以鼓子鞮歸。鞮、鼓君名。、悅全反。鞮、丁兮反。
【読み】
鼓人食竭き力盡くと告げて、而して後に之を取る。鼓に克ちて反る。一人を戮せず。鼓子鞮[えんてい]を以[い]て歸る。鞮は、鼓君の名。○は、悅全反。鞮は、丁兮反。
*頭注に、「足利本、■作鳶。」とある。
*■は截の隹が鳥。

冬、公如晉、平丘之會故也。平丘會、公不與盟、季孫見執。今旣得免。故往謝之。
【読み】
冬、公晉に如くは、平丘の會の故なり。平丘の會に、公盟に與らずして、季孫執えらる。今旣に免ることを得。故に往きて之を謝す。

十二月、晉荀躒如周葬穆后。籍談爲介。旣葬除喪、以文伯宴、樽以魯壺。文伯、荀躒也。魯壺、魯所獻壺樽。○躒、力狄反。
【読み】
十二月、晉の荀躒周に如きて穆后を葬る。籍談介爲り。旣に葬りて喪を除き、文伯と宴し、樽に魯壺を以てす。文伯は、荀躒なり。魯壺は、魯の獻ずる所の壺樽。○躒は、力狄反。

王曰、伯氏、諸侯皆有以鎭撫王室。晉獨無有、何也。感魯壺而言也。鎭撫王室、謂貢獻之物。
【読み】
王曰く、伯氏、諸侯皆以て王室を鎭撫すること有り。晉獨り有ること無きは、何ぞや、と。魯壺に感じて言うなり。王室を鎭撫すとは、貢獻の物を謂うなり。

文伯揖籍談。文伯無辭。揖籍談使對。
【読み】
文伯籍談を揖[ゆう]す。文伯辭無し。籍談を揖して對えしむ。

對曰、諸侯之封也、皆受明器於王室、謂明德之分器。○分、扶問反。
【読み】
對えて曰く、諸侯の封ぜらるるや、皆明器を王室に受けて、明德の分器を謂う。○分は、扶問反。

以鎭撫其社稷。故能薦彝器於王。薦、獻也。彝、常也。謂可常寶之器、若魯壺之屬。
【読み】
以て其の社稷を鎭撫す。故に能く彝器を王に薦む。薦は、獻ずるなり。彝は、常なり。常に寶とす可きの器、魯壺の屬の若きを謂う。

晉居深山、戎狄之與鄰、而遠於王室、王靈不及、拜戎不暇。言王寵靈不見及。故數爲戎所加陵。○遠、于萬反。又如字。
【読み】
晉は深山に居り、戎狄と與に鄰して、王室に遠ざかり、王の靈及ばず、戎を拜するも暇あらず。言うこころは、王の寵靈及ばれず。故に數々戎の爲に加陵せらる。○遠は、于萬反。又字の如し。

其何以獻器。王曰、叔氏而忘諸乎。叔、籍談字。
【読み】
其れ何を以て器を獻ぜん、と。王曰く、叔氏にして諸を忘れたるか。叔は、籍談の字。

叔父唐叔、成王之母弟也。其反無分乎。密須之鼓、與其大路、文所以大蒐也。密須、姞姓國也。在安定陰密縣。文王伐之、得其鼓路以蒐。○蒐、所求反。
【読み】
叔父唐叔は、成王の母弟なり。其れ反って分無からんや。密須の鼓と、其の大路とは、文の大蒐せし所以なり。密須は、姞姓の國なり。安定陰密縣に在り。文王之を伐ちて、其の鼓路を得て以て蒐す。○蒐は、所求反。

闕鞏之甲、武所以克商也。闕鞏國所出鎧。○鞏、九勇反。
【読み】
闕鞏の甲は、武の商に克ちし所以なり。闕鞏國の出だす所の鎧。○鞏は、九勇反。

唐叔受之、以處參・虛、匡有戎狄。參・虛、實沈之次。晉之分野。○參、所金反。
【読み】
唐叔之を受けて、以て參・虛に處りて、戎狄を匡有せり。參・虛は、實沈の次。晉の分野なり。○參は、所金反。

其後襄之二路・ 周襄王所賜晉文公大路・戎路。
【読み】
其の後襄の二路・ 周の襄王晉の文公に賜う所の大路・戎路。

鏚鉞・秬鬯・ 鏚、斧也。鉞、金鉞。秬、黑黍。鬯、香酒。○鏚、音戚。鉞、音越。
【読み】
鏚鉞[せきえつ]・秬鬯[きょちょう]・ 鏚は、斧なり。鉞は、金鉞。秬は、黑黍。鬯は、香酒。○鏚は、音戚。鉞は、音越。

彤弓・虎賁、文公受之、以有南陽之田、事在僖二十八年。
【読み】
彤弓[とうきゅう]・虎賁[こほん]、文公之を受けて、以て南陽の田を有ちて、事は僖二十八年に在り。

撫征東夏。非分而何。
【読み】
東夏を撫征せり。分に非ずして何ぞ。

夫有勳而不廢、加重賞。
【読み】
夫れ勳有りて廢せず、重賞を加う。

有績而載、書功於策。
【読み】
績有りて載せ、功を策に書す。

奉之以土田、有南陽。
【読み】
之を奉ずるに土田を以てし、南陽を有つ。

撫之以彝器、弓鉞之屬。
【読み】
之を撫するに彝器を以てし、弓鉞の屬。

旌之以車服、襄之二路。
【読み】
之を旌[あらわ]すに車服を以てし、襄の二路。

明之以文章、旌旗。
【読み】
之を明らかにするに文章を以てし、旌旗。

子孫不忘、所謂福也。福祚之不登叔父焉在。言福祚不在叔父、當在誰邪。○福祚之不登叔父、絕句。
【読み】
子孫忘れざるは、所謂福なり。福祚は叔父に登らずして焉に在らん。言うこころは、福祚叔父に在らずして、當に誰に在るべきや。○福祚之不登叔父は、絕句。

且昔而高祖孫伯黶、司晉之典籍、以爲大政。故曰籍氏。孫伯黶、晉正卿。籍談九世祖。○黶、於斬反。
【読み】
且つ昔而の高祖孫伯黶、晉の典籍を司りて、以て大政を爲せり。故に籍氏と曰う。孫伯黶は、晉の正卿。籍談が九世の祖。○黶は、於斬反。

及辛有之二子董之、晉於是乎有董史。辛有、周人也。其二子適晉爲大史。籍黶與之共董督晉典、因爲董氏。董狐其後。
【読み】
辛有の二子と之を董[ただ]すに及びて、晉是に於て董史有り。辛有は、周人なり。其の二子晉に適きて大史と爲る。籍黶之と共に晉典を董督して、因りて董氏と爲る。董狐は其の後なり。

女司典之後也。何故忘之。
【読み】
女は司典の後なり。何の故に之を忘たる、と。

籍談不能對。賓出。王曰、籍父其無後乎。數典而忘其祖。忘祖業。○女、音汝。數、色主反。
【読み】
籍談對うること能わず。賓出づ。王曰く、籍父は其れ後無からんか。典を數えて其の祖を忘れたり、と。祖業を忘る。○女は、音汝。數は、色主反。

籍談歸、以告叔向。叔向曰、王其不終乎。吾聞之、所樂必卒焉。今王樂憂。若卒以憂、不可謂終。王一歲而有三年之喪二焉。天子絕期、唯服三年。故后雖期、通謂之三年喪。○期、居其反。
【読み】
籍談歸り、以て叔向に告ぐ。叔向曰く、王其れ終わらざらんか。吾れ之を聞く、樂しむ所は必ず卒わる、と。今王憂えを樂しむ。若し卒わるに憂えを以てせば、終わると謂う可からず。王一歲にして三年の喪二つ有り。天子期を絕ち、唯三年に服す。故に后は期と雖も、通じて之を三年の喪と謂う。○期は、居其反。

於是乎以喪賓宴、又求彝器。樂憂甚矣。且非禮也。彝器之來、嘉功之由。非由喪也。三年之喪、雖貴遂服、禮也。天子諸侯除喪、當在卒哭。今王旣葬而除。故譏其不遂。
【読み】
是に於て喪賓と宴し、又彝器を求む。憂えを樂しむこと甚だし。且つ禮に非ざるなり。彝器の來るは、嘉功に由れり。喪に由るに非ざるなり。三年の喪は、貴と雖も服を遂ぐるは、禮なり。天子諸侯の除喪は、當に卒哭に在るべし。今王旣に葬りて除く。故に其の遂げざるを譏る。

王雖弗遂、宴樂以早。亦非禮也。言今雖不能遂服、猶當靜嘿。而便宴樂。又失禮也。○嘿、亡北反。
【読み】
王遂げずと雖も、宴樂以[はなは]だ早し。亦禮に非ざるなり。言うこころは、今服を遂ぐること能わずと雖も、猶當に靜嘿[せいぼく]すべし。而るを便ち宴樂す。又禮を失うなり。○嘿は、亡北反。

禮、王之大經也。一動而失二禮。無大經矣。失二禮、謂旣不遂服、又設宴樂。
【読み】
禮は、王の大經なり。一たび動きて二禮を失えり。大經無し。二禮を失うとは、旣に服を遂げず、又宴樂を設くるを謂う。

言以考典、考、成也。
【読み】
言以て典を考[な]し、考は、成すなり。

典以志經。忘經而多言。舉典將焉用之。爲二十二年、王室亂傳。朱注、失二禮、謂因喪求器、又宴樂以早。趙云、杜喪議云、旣葬應除。此言除喪當在卒哭。文又少異。
【読み】
典以て經を志[しる]す。經を忘れて多言す。典を舉ぐるも將焉にか之を用いん、と。二十二年、王室亂るる爲の傳なり。朱注に、二禮を失うとは、喪に因りて器を求め、又宴樂以て早きを謂う、と。趙云う、杜喪議に云う、旣に葬れば應に除くべし、と。此には除喪は當に卒哭に在るべしと言う。文又少しく異なり。


〔經〕十有六年、春、齊侯伐徐。楚子誘戎蠻子殺之。夏、公至自晉。秋、八月、己亥、晉侯夷卒。未同盟。
【読み】
〔經〕十有六年、春、齊侯徐を伐つ。楚子戎蠻子を誘きて之を殺す。夏、公晉より至る。秋、八月、己亥[つちのと・い]、晉侯夷卒す。未だ同盟せず。

九月、大雩。季孫意如如晉。冬、十月、葬晉昭公。三月而葬。速。
【読み】
九月、大いに雩[う]す。季孫意如晉に如く。冬、十月、晉の昭公を葬る。三月にして葬る。速きなり。

〔傳〕十六年、春、王正月、公在晉。晉人止公。不書、諱之也。猶以取郠故也。公爲晉人所執止。故諱不書。
【読み】
〔傳〕十六年、春、王の正月、公晉に在り。晉人公を止む。書さざるは、之を諱みてなり。猶郠[こう]を取るを以ての故なり。公晉人の爲に執止せらる。故に諱て書さず。

齊侯伐徐。
【読み】
齊侯徐を伐つ。

楚子聞蠻氏之亂也、與蠻子之無質也、質、信也。○質、之實反。或音致。
【読み】
楚子蠻氏の亂ると、蠻子の質無きとを聞きて、質は、信なり。○質は、之實反。或は音致。

使然丹誘戎蠻子嘉殺之、遂取蠻氏。旣而復立其子焉。禮也。詐之非也。立其子禮也。河南新城縣東南有蠻城。
【読み】
然丹をして戎蠻子嘉を誘きて之を殺さしめ、遂に蠻氏を取る。旣にして復其の子を立つ。禮なり。之を詐るは非なり。其の子を立つるは禮なり。河南新城縣の東南に蠻城有り。

二月、丙申、齊師至于蒲隧。蒲隧、徐地。下邳取慮縣東有蒲如陂。○隧、音遂。取慮、上音秋。下力居反。
【読み】
二月、丙申[ひのえ・さる]、齊の師蒲隧に至る。蒲隧は、徐の地。下邳取慮縣の東に蒲如陂有り。○隧は、音遂。取慮は、上は音秋。下は力居反。

徐人行成。徐子及郯人・莒人會齊侯、盟于蒲隧、賂以甲父之鼎。甲父、古國名。高平昌邑縣東南有甲父亭。徐人得甲父鼎以賂齊。
【読み】
徐人成らぎを行う。徐子郯人[たんひと]・莒人と齊侯に會して、蒲隧に盟い、賂うに甲父の鼎を以てす。甲父は、古の國の名。高平昌邑縣の東南に甲父亭有り。徐人甲父の鼎を得て以て齊に賂う。

叔孫昭子曰、諸侯之無伯、害哉。爲小國害。
【読み】
叔孫昭子曰く、諸侯の伯無きは、害なるかな。小國の害爲り。

齊君之無道也、興師而伐遠方、會之有成而還、莫之亢也。無亢禦。
【読み】
齊君の無道なるや、師を興して遠方を伐ち、之を會して成らぎ有りて還るも、之を亢[ふせ]ぐこと莫し。亢禦する無し。

無伯也夫。詩曰、宗周旣滅、靡所止戾。正大夫離居、莫知我肄。詩、小雅。戾、定也。肄、勞也。言周舊爲天下宗。今乃衰滅、亂無息定、執政大夫離居異心、無有念民勞者也。○肄、以制反。
【読み】
伯無ければなるかな。詩に曰く、宗周旣に滅びんとして、止戾する所靡し。正大夫離居して、我が肄[くる]しみを知ること莫し、と。詩は、小雅。戾は、定むるなり。肄は、勞しむなり。言うこころは、周舊天下の宗爲り。今乃ち衰滅して、亂息定すること無く、執政の大夫離居異心にして、民の勞しみを念う者有ること無し。○肄は、以制反。

其是之謂乎。傳言晉之衰。
【読み】
其れ是を之れ謂うか、と。傳晉の衰えたるを言う。

三月、晉韓起聘于鄭。鄭伯享之。子產戒曰、苟有位於朝、無有不共恪。孔張後至、立於客閒。孔張、子孔之孫。
【読み】
三月、晉の韓起鄭に聘す。鄭伯之を享す。子產戒めて曰く、苟も朝に位有るは、共恪[きょうかく]せざること有ること無かれ、と。孔張後れて至り、客の閒に立つ。孔張は、子孔の孫。

執政禦之。執政、掌位列者。禦、止也。
【読み】
執政之を禦む。執政は、位列を掌る者。禦は、止むるなり。

適客後。又禦之。適縣閒。縣、樂肆。○縣、音玄。
【読み】
客の後に適く。又之を禦む。縣の閒に適く。縣は、樂肆。○縣は、音玄。

客從而笑之。
【読み】
客從いて之を笑う。

事畢。富子諫、富子、鄭大夫。諫子產也。
【読み】
事畢わる。富子諫めて、富子は、鄭の大夫。子產を諫むるなり。

曰、夫大國之人。不可不愼也。幾爲之笑、而不陵我。言數見笑、則心陵侮我。○幾、居豈反。又音機。
【読み】
曰く、夫は大國の人なり。愼まずんばある可からざるなり。幾たびか之が爲に笑われて、我を陵がざらんや。言うこころは、數々笑わるれば、則ち心我を陵侮す。○幾は、居豈反。又音機。

我皆有禮、夫猶鄙我。鄙、賤也。○夫、音扶。
【読み】
我れ皆禮有るも、夫猶我を鄙[いや]しむ。鄙は、賤しむなり。○夫は、音扶。

國而無禮、何以求榮。孔張失位、吾子之恥也。
【読み】
國にして禮無くば、何を以て榮を求めん。孔張が位を失うは、吾子の恥なり、と。

子產怒曰、發命之不衷、衷、當也。○衷、丁仲反。又音忠。
【読み】
子產怒りて曰く、命を發するの衷[あ]たらざる、衷は、當たるなり。○衷は、丁仲反。又音忠。

出令之不信、刑之頗類、緣事類以成偏頗。○頗、普多反。類、如字。一力對反。
【読み】
令を出だすの信ならざる、刑の類に頗なる、事類に緣りて以て偏頗を成す。○頗は、普多反。類は、字の如し。一に力對反。

獄之放紛、放、縱也。紛、亂也。
【読み】
獄の放紛なる、放は、縱なり。紛は、亂るるなり。

會朝之不敬、謂國無禮敬之心。
【読み】
會朝の敬せざる、國禮敬の心無きを謂う。

使命之不聽、下不從上命。
【読み】
使命の聽かざる、下上の命に從わず。

取陵於大國、罷民而無功、罪及而弗知、僑之恥也。
【読み】
陵がれを大國に取り、民を罷[つか]らして功無く、罪及びて知らざるは、僑の恥なり。

孔張、君之昆孫、子孔之後也。昆、兄也。子孔、鄭襄公兄、孔張之祖父。○罷、音皮。
【読み】
孔張は、君の昆孫、子孔の後なり。昆は、兄なり。子孔は、鄭の襄公の兄、孔張の祖父。○罷は、音皮。

執政之嗣也。子孔嘗執鄭國之政。
【読み】
執政の嗣なり。子孔嘗て鄭國の政を執る。

爲嗣大夫、承命以使、周於諸侯。國人所尊、諸侯所知、立於朝而祀於家、卿得自立廟於家。○使、所吏反。
【読み】
嗣大夫と爲り、命を承けて以て使いして、諸侯に周し。國人の尊ぶ所、諸侯の知る所、朝に立ちて家に祀り、卿は自ら廟を家に立つることを得。○使は、所吏反。

有祿於國、受祿邑。
【読み】
國に祿有り、祿邑を受く。

有賦於軍、軍出、卿賦百乘。
【読み】
軍に賦有り、軍出づれば、卿の賦百乘。

喪祭有職、有所主。
【読み】
喪祭に職有り、主る所有り。

受脤歸賑、受脤、謂君祭以肉賜大夫。歸脤、謂大夫祭歸肉於公。皆社之戎祭也。○脤、市軫反。
【読み】
脤[しん]を受け脤を歸[おく]り、脤を受くるとは、君祭れば肉を以て大夫に賜うを謂う。脤を歸るとは、大夫祭りて肉を公に歸るを謂う。皆社の戎祭なり。○脤は、市軫反。

其祭在廟、己有著位、在位數世、世守其業、而忘其所。僑焉得恥之。其祭在廟、謂助君祭。○數、色主反。
【読み】
其の祭に廟に在るときは、己著位有り、位に在ること數世、世々其の業を守りて、其の所を忘る。僑焉ぞ之を恥ずることを得ん。其の祭に廟に在りとは、君を助けて祭るを謂う。○數は、色主反。

辟邪之人、而皆及執政、是先王無刑罰也。言爲過謬者、自應用刑罰。○辟、四亦反。
【読み】
辟邪の人にして、皆執政に及ばば、是れ先王刑罰無きなり。言うこころは、過謬を爲す者、自ら應に刑罰を用ゆべし。○辟は、四亦反。

子寧以他規我。規、正也。
【読み】
子寧ろ他を以て我を規せ、と。規は、正すなり。

宣子有環、其一在鄭商。玉環、同工共朴、自共爲雙。
【読み】
宣子環有り、其の一つは鄭の商に在り。玉環、工を同じくし朴を共にし、自ら共に雙を爲す。

宣子謁諸鄭伯。謁、請也。
【読み】
宣子諸を鄭伯に謁[こ]う。謁は、請うなり。

子產弗與、曰、非官府之守器也。寡君不知。子大叔・子羽謂子產曰、韓子亦無幾求。言所求少。○幾、居豈反。
【読み】
子產與えずして、曰く、官府の守器に非ざるなり。寡君知らず、と。子大叔・子羽子產に謂いて曰く、韓子も亦幾ばくの求むるも無し。言うこころは、求むる所少なし。○幾は、居豈反。

晉國亦未可以貳。晉國、韓子不可偸也。偸、薄也。
【読み】
晉國も亦未だ以て貳す可からず。晉國には、韓子は偸[うす]くす可からざるなり。偸は、薄きなり。

若屬有讒人交鬭其閒、鬼神而助之、以興其凶怒、悔之何及。吾子何愛於一環。其以取憎於大國也。盍求而與之。子產曰、吾非偸晉而有二心。將終事之。是以弗與。忠信故也。僑聞、君子、非無賄之難。立而無令名之患。僑聞、爲國、非不能事大字小之難。無禮以定其位之患。夫大國之人、令於小國而皆獲其求、將何以給之。一共一否、爲罪滋大。滋、益也。○屬、音燭。難、乃旦反。又如字。共、音恭。
【読み】
若し屬[たま]々讒人の其の閒を交鬭せしむる有りて、鬼神にして之を助けて、以て其の凶怒を興さば、之を悔ゆとも何ぞ及ばん。吾子何ぞ一環を愛める。其れ以て憎みを大國に取らん。盍ぞ求めて之に與えざる、と。子產曰く、吾れ晉を偸くして二心有るには非ず。將に終に之に事えんとす。是を以て與えず。忠信の故なり。僑聞く、君子は、賄無きを難しとするに非ず。立ちて令名無きを患えとす、と。僑聞く、國を爲むるは、大に事え小を字[めぐ]むこと能わざるを難しとするに非ず。禮の以て其の位を定むること無きを患えとす、と。夫れ大國の人、小國に令して皆其の求めを獲ば、將何を以て之に給せん。一たびは共し一たびは否らざれば、罪を爲ること滋々大なり。滋は、益々なり。○屬は、音燭。難は、乃旦反。又字の如し。共は、音恭。

大國之求、無禮以斥之、何饜之有。吾且爲鄙邑、則失位矣。不復成國。○饜、於鹽反。
【読み】
大國の求め、禮の以て之を斥くること無くば、何の饜[あ]くことか之れ有らん。吾れ且鄙邑と爲らば、則ち位を失えるなり。復國を成さず。○饜は、於鹽反。

若韓子奉命以使、而求玉焉、貪淫甚矣。獨非罪乎。出一玉以起二罪、吾又失位、韓子成貪、將焉用之。且吾以玉賈罪、不亦銳乎。銳、細小也。○賈、音古。
【読み】
若し韓子命を奉じて以て使いして、玉を求めば、貪淫甚だし。獨り罪に非ずや。一玉を出だして以て二罪を起こし、吾れ又位を失い、韓子貪を成さんこと、將焉ぞ之を用いん。且つ吾れ玉を以て罪を賈わんことは、亦銳ならずや、と。銳は、細小なり。○賈は、音古。

韓子買諸賈人、旣成賈矣。商人曰、必告君大夫。韓子請諸子產曰、日起請夫環、執政弗義、弗敢復也。復、重求也。○成賈、音嫁。請夫、音扶。重、直用反。
【読み】
韓子諸を賈人に買わんとして、旣に賈を成せり。商人曰く、必ず君大夫に告さん、と。韓子諸を子產に請いて曰く、日[さき]に起夫の環を請いしに、執政義とせざれば、敢えて復びせざりき。復は、重ねて求むるなり。○成賈は、音嫁。請夫は、音扶。重は、直用反。

今買諸商人、商人曰、必以聞。敢以爲請。子產對曰、昔我先君桓公與商人皆出自周。鄭本在周畿内。桓公東遷、幷與商人倶。
【読み】
今諸を商人に買うに、商人曰く、必ず以て聞せん、と。敢えて以て請うことを爲す、と。子產對えて曰く、昔我が先君桓公と商人と皆周より出でたり。鄭本周の畿内に在り。桓公東遷するとき、幷せて商人と倶にす。

庸次比耦、庸、用也。用次更相從耦耕。○比、毗志反。
【読み】
次を庸[もっ]て比耦して、庸は、用てなり。次を用て更々相從いて耦耕す。○比は、毗志反。

以艾殺此地、斬之蓬・蒿・藜・藿而共處之、世有盟誓以相信也。曰、爾無我叛。我無强賈、無强市其物。○艾、魚廢反。藿、徒弔反。强、其丈反。下强奪同。又其良反。
【読み】
以て此の地を艾殺[がいさつ]し、之の蓬・蒿・藜・藿[ちょう]を斬りて共に之に處り、世々盟誓有りて以て相信ず。曰く、爾我に叛くこと無かれ。我れ强いて賈うこと無く、强いて其の物を市[か]うこと無し。○艾は、魚廢反。藿は、徒弔反。强は、其丈反。下の强奪も同じ。又其良反。

毋或匃奪。爾有利市寶賄、我勿與知。恃此質誓、故能相保、以至于今。今吾子以好來辱、而謂敝邑强奪商人、是敎敝邑背盟誓也。毋乃不可乎。吾子得玉而失諸侯、必不爲也。若大國令而共無藝、藝、法也。
【読み】
匃[こ]い奪うこと或ること毋からん。爾利市寶賄有らんも、我れ與り知ること勿からん、と。此の質誓を恃みて、故に能く相保ちて、以て今に至れり。今吾子好を以て來り辱くして、而して敝邑に商人に强奪せよと謂わば、是れ敝邑に盟誓に背くことを敎ゆるなり。乃ち不可なること毋からんや。吾子玉を得て諸侯を失わんことは、必ず爲さじ。若し大國令して共藝無くば、藝は、法なり。

鄭鄙邑也。亦弗爲也。不欲爲鄙邑之事。
【読み】
鄭は鄙邑なり。亦爲さざるなり。鄙邑の事を爲さんことを欲せず。

僑若獻玉、不知所成。敢私布之。布、陳也。
【読み】
僑若し玉を獻ぜば、成る所を知らず。敢えて私に之を布く、と。布は、陳ぶるなり。

韓子辭玉曰、起不敏、敢求玉以徼二罪。敢辭之。傳言子產知禮、宣子能改過。○徼、古堯反。
【読み】
韓子玉を辭して曰く、起不敏、敢えて玉を求めて以て二罪を徼[もと]めんや。敢えて之を辭す、と。傳子產禮を知り、宣子能く過ちを改むるを言う。○徼は、古堯反。

夏、四月、鄭六卿餞宣子於郊。餞、送行飮酒。
【読み】
夏、四月、鄭の六卿宣子を郊に餞す。餞は、行を送りて酒を飮むなり。

宣子曰、二三君子請皆賦。起亦以知鄭志。詩言志也。
【読み】
宣子曰く、二三君子請う、皆賦せよ。起も亦以て鄭の志を知らん、と。詩は志を言うなり。

子齹賦野有蔓草。子齹、子皮之子、嬰齊也。野有蔓草詩、鄭風。取其邂逅相遇、適我願兮。○齹、才何反。字林、才可反。
【読み】
子齹[しさ]野有蔓草を賦す。子齹は、子皮の子、嬰齊なり。野有蔓草の詩は、鄭風。其の邂逅に相遇い、我が願いに適うというに取る。○齹は、才何反。字林、才可反。

宣子曰、孺子善哉。吾有望矣。君子相願、己所望也。
【読み】
宣子曰く、孺子善いかな。吾れ望むこと有り、と。君子相願うは、己が望む所なり。

子產賦鄭之羔裘。言鄭、別於唐羔裘也。取其彼己之子、舍命不渝、邦之彥兮。以美韓子。○己、音記。舍、音赦。又音捨。
【読み】
子產鄭の羔裘を賦す。鄭と言うは、唐の羔裘に別つなり。其の彼の己が子、命に舍[お]りて渝[か]わらず、邦の彥なりというに取る。以て韓子を美む。○己は、音記。舍は、音赦。又音捨。

宣子曰、起不堪也。不堪國之司直。
【読み】
宣子曰く、起堪えざるなり、と。國の司直に堪えず。

子大叔賦褰裳。褰裳詩曰、子惠思我、褰裳涉溱、子不我思、豈無他人。言宣子思己、將有褰裳之志。如不我思、亦豈無他人。
【読み】
子大叔褰裳[けんしょう]を賦す。褰裳の詩に曰く、子我を惠思せば、裳を褰[かか]げて溱を涉らん、子我を思わざれば、豈他人無からんや、と。言うこころは、宣子己を思わば、將に褰裳の志有らん。如し我を思わざれば、亦豈他人無けんや。

宣子曰、起在此。敢勤子至於他人乎。言己今崇好在此。不復令子適他人。
【読み】
宣子曰く、起此に在り。敢えて子を勤めしめて他人に至らさらんや、と。言うこころは、己今好を崇めて此に在り。復子をして他人に適かしめず。

子大叔拜。謝宣子之有鄭。
【読み】
子大叔拜す。宣子が鄭を有することを謝す。

宣子曰、善哉、子之言是。是、褰裳。
【読み】
宣子曰く、善いかな、子の是を言える。是とは、褰裳なり。

不有是事、其能終乎。韓起不欲令鄭求他人。子大叔拜以答之。所以晉・鄭終善。
【読み】
是の事有らずば、其れ能く終えんや、と。韓起鄭をして他人を求めしめんことを欲せず。子大叔拜して以て之に答う。晉・鄭終に善き所以なり。

子游賦風雨。子游、駟帶之子、駟偃也。風雨詩、取其旣見君子、云胡不夷。
【読み】
子游風雨を賦す。子游は、駟帶の子、駟偃なり。風雨の詩は、其の旣に君子を見れば、云[ここ]に胡ぞ夷[よろこ]ばざらんというに取る。

子旗賦有女同車。子旗、公孫段之子、豐施也。有女同車、取其洵美且都。愛樂宣子之志。○樂、音洛。又五孝反。
【読み】
子旗有女同車を賦す。子旗は、公孫段の子、豐施なり。有女同車は、其の洵[まこと]に美に且都[みやびやか]なりというに取る。宣子の志を愛樂するなり。○樂は、音洛。又五孝反。

子柳賦蘀兮。子柳、印段之子、印癸也。蘀兮詩、取其倡、予和女。言宣子倡、己將和從之。○蘀、他洛反。
【読み】
子柳蘀兮[たくけい]を賦す。子柳は、印段の子、印癸なり。蘀兮の詩は、其れ倡えば、予女に和せんというに取る。言うこころは、宣子倡えば、己將に之に和從せんとす。○蘀は、他洛反。

宣子喜曰、鄭其庶乎。庶幾於興盛。
【読み】
宣子喜びて曰く、鄭は其れ庶からんか。興盛するに庶幾す。

二三君子以君命貺起、賦不出鄭志。詩皆鄭風。故曰不出鄭志。
【読み】
二三君子君命を以て起に貺[たま]いて、賦すること鄭の志を出でず。詩は皆鄭風。故に鄭の志を出でずと曰う。

皆昵燕好也。昵、親也。賦不出其國、以示親好。○昵、女乙反。
【読み】
皆昵[した]しみて燕好するものなり。昵[じつ]は、親しむなり。賦其の國を出でずして、以て親好を示すなり。○昵は、女乙反。

二三君子、數世之主也。可以無懼矣。宣子皆獻馬焉、而賦我將。我將詩、頌。取其日靖四方、我其夙夜、畏天之威。言志在靖亂、畏懼天威。
【読み】
二三君子は、數世の主なり。以て懼れ無かる可し、と。宣子皆馬を獻じて、我將を賦す。我將の詩は、頌。其の日々に四方を靖んじて、我れ其れ夙夜に、天の威を畏るというに取る。志亂を靖んずるに在りて、天威を畏懼するを言う。

子產拜、使五卿皆拜、曰、吾子靖亂。敢不拜德。
【読み】
子產拜し、五卿をして皆拜せしめて、曰く、吾子亂を靖んず。敢えて德と拜せざらんや、と。

宣子私覲於子產以玉與馬、曰、子命起舍夫玉。是賜我玉而免吾死也。敢不藉手以拜。以玉馬藉手拜謝。
【読み】
宣子私に子產を覲るに玉と馬とを以てして、曰く、子起に命じて夫の玉を舍てしむ。是れ我に玉を賜いて吾を死に免れしむるなり。敢えて手に藉[し]きて以て拜せざらんや、と。玉馬を以て手に藉きて拜謝す。

公至自晉。晉聽公歸。
【読み】
公晉より至る。晉公を聽[ゆる]して歸らしむ。

子服昭伯語季平子、昭伯、惠伯之子、子服囘也。隨公從晉還。
【読み】
子服昭伯季平子に語りて、昭伯は、惠伯の子、子服囘なり。公に隨いて晉より還る。

曰、晉之公室、其將遂卑矣。君幼弱、六卿彊而奢傲。將因是以習。習實爲常。能無卑乎。平子曰、爾幼。惡識國。昭伯尙少。平子不信其言。○惡、烏路反。
【読み】
曰く、晉の公室、其れ將に遂に卑しからんとす。君幼弱にして、六卿彊くして奢傲なり。將に是に因りて以て習わんとす。習い實に常と爲る。能く卑しきこと無からんや、と。平子曰く、爾幼[わか]し。惡んぞ國を識らんや、と。昭伯尙少し。平子其の言を信ぜず。○惡は、烏路反。

秋、八月、晉昭公卒。爲下平子如晉葬起。
【読み】
秋、八月、晉の昭公卒す。下の平子晉に如きて葬る爲の起なり。

九月、大雩、旱也。
【読み】
九月、大いに雩するは、旱りするなり。

鄭大旱。使屠擊・祝款・豎柎有事於桑山。三子、鄭大夫。有事、祭也。○柎、音附。又方于反。
【読み】
鄭大旱す。屠擊・祝款・豎柎[じゅふ]をして桑山に事有らしむ。三子は、鄭の大夫。事有りとは、祭なり。○柎は、音附。又方于反。

斬其木。不雨。子產曰、有事於山、蓺山林也。蓺、養護令繁殖。○蓺、音藝。
【読み】
其の木を斬る。雨ふらず。子產曰く、山に事有るは、山林を蓺[う]えんとなり。蓺[げい]は、養護して繁殖せしむるなり。○蓺は、音藝。

而斬其木、其罪大矣。奪之官邑。
【読み】
而るを其の木を斬るは、其の罪大なり、と。之が官邑を奪う。

冬、十月、季平子如晉、葬昭公。平子曰、子服囘之言猶信。自往見之。乃信回言。
【読み】
冬、十月、季平子晉に如きて、昭公を葬る。平子曰く、子服囘が言猶信なり。自ら往きて之を見る。乃ち回が言を信ず。

子服氏有子哉。有賢子也。
【読み】
子服氏子有るかな、と。賢子有るなり。


〔經〕十有七年、春、小邾子來朝。夏、六月、甲戌、朔、日有食之。秋、郯子來朝。八月、晉荀吳帥師滅陸渾之戎。○渾、戶門反。
【読み】
〔經〕十有七年、春、小邾子[しょうちゅし]來朝す。夏、六月、甲戌[きのえ・いぬ]、朔、日之を食する有り。秋、郯子[たんし]來朝す。八月、晉の荀吳師を帥いて陸渾の戎を滅ぼす。○渾は、戶門反。

冬、有星孛于大辰。大辰、房・心・尾也。妖變非常。故書。○孛、音佩。
【読み】
冬、星の大辰に孛[はい]する有り。大辰は、房・心・尾なり。妖變常に非ず。故に書す。○孛は、音佩。

楚人及吳戰于長岸。吳・楚兩敗、莫肯告負。故但書戰、而不書敗也。長岸、楚地。
【読み】
楚人吳と長岸に戰う。吳・楚兩敗し、肯えて負を告ぐる莫し。故に但戰を書して、敗を書さざるなり。長岸は、楚の地。

〔傳〕十七年、春、小邾穆公來朝。公與之燕。季平子賦采叔。采叔、詩小雅。取其君子來朝、何錫與之。以穆公喩君子。
【読み】
〔傳〕十七年、春、小邾の穆公來朝す。公之と燕す。季平子采叔を賦す。采叔は、詩の小雅。其の君子來朝す、何をか之に錫與せんというに取る。穆公を以て君子に喩う。

穆公賦菁菁者莪。菁菁者莪、亦詩小雅。取其旣見君子、樂且有儀。以答采叔。
【読み】
穆公菁菁者莪[せいせいしゃが]を賦す。菁菁者莪も、亦詩の小雅。其の旣に君子を見れば、樂しみて且儀有りというに取る。以て采叔に答う。

昭子曰、不有以國、其能久乎。嘉其能答賦。言其賢故能久有國。
【読み】
昭子曰く、有りて以て國せずんば、其れ能く久しからんや、と。其の能く答賦するを嘉す。其の賢なる故に能く久しく國を有つを言う。

夏、六月、甲戌、朔、日有食之。祝史請所用幣。禮、正陽之月、日食、當用幣於社。故請之。
【読み】
夏、六月、甲戌、朔、日之を食する有り。祝史用ゆる所の幣を請う。禮に、正陽の月、日食すれば、當に幣を社に用ゆべし、と。故に之を請う。

昭子曰、日有食之、天子不舉、不舉盛饌。
【読み】
昭子曰く、日之を食する有れば、天子舉せず、盛饌を舉げず。

伐鼓於社。責羣陰。
【読み】
鼓を社に伐つ。羣陰を責む。

諸侯用幣於社、請上公。
【読み】
諸侯は幣を社に用い、上公に請う。

伐鼓於朝。退自責。
【読み】
鼓を朝に伐つ。退きて自ら責む。

禮也。平子禦之、禦、禁也。
【読み】
禮なり、と。平子之を禦めて、禦は、禁ずるなり。

曰、止也。唯正月朔、慝未作、日有食之、於是乎有伐鼓用幣、禮也。其餘則否。大史曰、在此月也。正月、謂建巳正陽之月也。於周爲六月、於夏爲四月。慝、陰氣也。四月、純陽用事。陰氣未動、而侵陽、災重。故有伐鼓用幣之禮也。平子以爲六月非正月。故大史答言、在此月也。○正、音政。
【読み】
曰く、止めよ。唯正月の朔にのみ、慝未だ作らず、日之を食する有れば、是に於て鼓を伐ち幣を用ゆること有るは、禮なり。其の餘は則ち否らず、と。大史曰く、此の月に在るなり。正月は、建巳正陽の月たるを謂うなり。周に於ては六月と爲し、夏に於ては四月と爲す。慝は、陰氣なり。四月は、純陽事を用ゆ。陰氣未だ動かずして、陽を侵すは、災重し。故に鼓を伐ち幣を用ゆるの禮有り。平子以爲えらく、六月は正月に非ず、と。故に大史答えて言う、此の月に在り、と。○正は、音政。

日過分而未至。過春分而未夏至。
【読み】
日分を過ぎて未だ至ならず。春分を過ぎて未だ夏至ならず。

三辰有災。三辰、日・月・星也。日月相侵、又犯是宿。故三辰皆爲災。
【読み】
三辰に災有り。三辰は、日・月・星なり。日月相侵し、又是の宿を犯す。故に三辰皆災と爲る。

於是乎百官降物、降物、素服。
【読み】
是を於て百官物を降し、物を降すとは、素服するなり。

君不舉、辟移時、辟正寢、過日食時。
【読み】
君舉せず、辟けて時を移し、正寢を辟けて、日食の時を過ごす。

樂奏鼓、伐鼓。
【読み】
樂鼓を奏し、鼓を伐つ。

祝用幣、用幣於社。
【読み】
祝幣を用い、幣を社に用ゆ。

史用辭。用辭以自責。
【読み】
史辭を用ゆ。辭を用いて以て自ら責む。

故夏書曰、辰不集于房、逸書也。集、安也。房、舍也。日月不安其舍則食。
【読み】
故に夏書に曰く、辰房に集[やす]んぜず、逸書なり。集は、安んずるなり。房は、舍なり。日月其の舍に安からざれば則ち食す。

瞽奏鼓、瞽、樂師。
【読み】
瞽鼓を奏し、瞽は、樂師。

嗇夫馳、庶人走。車馬曰馳、步曰走。爲救日食備也。
【読み】
嗇夫馳せ、庶人走る、と。車馬を馳すと曰い、步を走ると曰う。日食を救う備えを爲すなり。

此月朔之謂也。當夏四月。謂之孟夏。言此六月、當夏家之四月。
【読み】
此の月朔を謂うなり。夏の四月に當たれり。之を孟夏と謂う、と。言うこころは、此の六月は、夏家の四月に當たれり。

平子弗從。昭子退曰、夫子將有異志。不君君矣。安君之災。故曰、有異志。
【読み】
平子從わず。昭子退きて曰く、夫子將に異志有らんとす。君を君とせず、と。君の災に安んず。故に曰く、異志有り、と。

秋、郯子來朝。公與之宴。昭子問焉曰、少皞氏鳥名官。何故也。少皞、金天氏。黃帝之子。己姓之祖也。問何故以鳥名官。
【読み】
秋、郯子來朝す。公之と宴す。昭子問いて曰く、少皞氏[しょうこうし]鳥もて官に名づく、と。何の故ぞ、と。少皞は、金天氏。黃帝の子。己姓の祖なり。問う、何の故に鳥を以て官に名づけし、と。

郯子曰、吾祖也。我知之。昔者黃帝氏以雲紀。故爲雲師而雲名。黃帝、軒轅氏。姬姓之祖也。黃帝受命有雲瑞。故以雲紀事。百官師長、皆以雲爲名號。縉雲氏、蓋其一官也。○縉、音進。
【読み】
郯子曰く、吾が祖なり。我れ之を知れり。昔黃帝氏は雲を以て紀す。故に雲師を爲して雲もて名づく。黃帝は、軒轅氏。姬姓の祖なり。黃帝命を受けて雲瑞有り。故に雲を以て事を紀す。百官師長、皆雲を以て名號と爲す。縉雲氏は、蓋し其の一官ならん。○縉は、音進。

炎帝氏以火紀。故爲火師而火名。炎帝、神農氏。姜姓之祖也。亦有火瑞。以火紀事、名百官。
【読み】
炎帝氏は火を以て紀す。故に火師を爲して火もて名づく。炎帝は、神農氏。姜姓の祖なり。亦火瑞有り。火を以て事を紀し、百官に名づく。

共工氏以水紀。故爲水師而水名。共工、以諸侯霸有九州者。在神農前、大皞後。亦受水瑞、以水名官。○共、音恭。
【読み】
共工氏は水を以て紀す。故に水師を爲して水もて名づく。共工は、諸侯を以て霸として九州を有つ者。神農の前、大皞の後に在り。亦水瑞を受け、水を以て官に名づく。○共は、音恭。

大皞氏以龍紀。故爲龍師而龍名。大皞、伏羲氏。風姓之祖也。有龍瑞。故以龍命官。
【読み】
大皞氏は龍を以て紀す。故に龍師を爲して龍もて名づく。大皞は、伏羲氏。風姓の祖なり。龍瑞有り。故に龍を以て官に命ず。

我高祖少皞摯之立也、鳳鳥適至。故紀於鳥、爲鳥師而鳥名。鳳鳥氏、歷正也。鳳鳥知天時。故以名歷正之官。
【読み】
我が高祖少皞摯[しょうこうし]の立つや、鳳鳥適に至れり。故に鳥に紀して、鳥師を爲して鳥もて名づく。鳳鳥氏は、歷正なり。鳳鳥天の時を知る。故に以て歷正の官に名づく。

玄鳥氏、司分者也。玄鳥、燕也。以春分來、秋分去。
【読み】
玄鳥氏は、分を司る者なり。玄鳥は、燕なり。春分を以て來り、秋分に去る。

伯趙氏、司至者也。伯趙、伯勞也。以夏至鳴、冬至止。
【読み】
伯趙氏は、至を司る者なり。伯趙は、伯勞なり。夏至に以りて鳴き、冬至に止む。

靑鳥氏、司啓者也。靑鳥、鶬鴳也。以立春鳴、立夏止。○鶬、音倉。鴳、於諫反。
【読み】
靑鳥氏は、啓を司る者なり。靑鳥は、鶬鴳[そうあん]なり。立春を以て鳴き、立夏に止む。○鶬は、音倉。鴳は、於諫反。

丹鳥氏、司閉者也。丹鳥、鷩雉也。以立秋來、立冬去、入大水爲蜃。上四鳥、皆歷正之屬官。○鷩、必滅反。蜃、市軫反。
【読み】
丹鳥氏は、閉を司る者なり。丹鳥は、鷩雉[へっち]なり。立秋を以て來り、立冬に去り、大水に入りて蜃と爲る。上の四鳥は、皆歷正の屬官。○鷩は、必滅反。蜃は、市軫反。

祝鳩氏、司徒也。祝鳩、鳩也。鳩、孝。故爲司徒、主敎民。、音隹。
【読み】
祝鳩氏は、司徒なり。祝鳩は、鳩[すいきゅう]なり。鳩は、孝なり。故に司徒と爲して、民を敎ゆるを主るなり。○は、音隹。
*■は、左が隹で右が鳥。

鴡鳩氏、司馬也。鴡鳩、王鴡也。鷙而有別。故爲司馬、主法制。○鴡、七徐反。鷙、音至。
【読み】
鴡鳩氏[しょきゅうし]は、司馬なり。鴡鳩は、王鴡なり。鷙[し]にして別有り。故に司馬と爲して、法制を主る。○鴡は、七徐反。鷙は、音至。

鳲鳩氏、司空也。鳲鳩、鴶鵴也。鳲鳩、平均。故爲司空、平水土。○鴶、簡八反。又音吉。鵴、居六反。
【読み】
鳲鳩氏[しきゅうし]は、司空なり。鳲鳩は、鴶鵴[きっきく]也。鳲鳩は、平均。故に司空と爲して、水土を平らかにす。○鴶は、簡八反。又音吉。鵴は、居六反。

爽鳩氏、司寇也。爽鳩、鷹也。鷙。故爲司寇、主盜賊。
【読み】
爽鳩氏は、司寇なり。爽鳩は、鷹なり。鷙なり。故に司寇と爲して、盜賊を主る。

鶻鳩氏、司事也。鶻鳩、鶻鵰也。春來冬去。故爲司事。
【読み】
鶻鳩氏[こっきゅうし]は、司事なり。鶻鳩は、鶻鵰[こっちょう]なり。春來り冬去る。故に司事と爲す。

五鳩鳩民者也。鳩、聚也。治民上聚。故以鳩爲名。
【読み】
五鳩は民を鳩[あつ]むる者なり。鳩は、聚むるなり。民を治むるは聚むることを上[たっと]ぶ。故に鳩を以て名と爲す。

五雉爲五工正。五雉、雉有五種。西方曰鷷雉、東方曰鶅雉、南方曰翟雉、北方曰鵗雉、伊洛之南曰翬雉。○種、章勇反。鷷、音存。又音遵。鶅、側其反。翟、音狄。又如字。鵗、香衣反。翬、許韋反。
【読み】
五雉[ごち]を五工正と爲す。五雉とは、雉に五種有り。西方のを鷷雉[そんち]と曰い、東方のを鶅雉[しち]と曰い、南方のを翟雉[てきち]と曰い、北方のを鵗雉[きち]と曰い、伊洛の南のを翬雉[きち]と曰う。○種は、章勇反。鷷は、音存。又音遵。鶅は、側其反。翟は、音狄。又字の如し。鵗は、香衣反。翬は、許韋反。

利器用、正度量、夷民者也。夷、平也。○量、音亮。
【読み】
器用を利し、度量を正して、民を夷[たい]らかにする者なり。夷は、平らかなり。○量は、音亮。

九扈爲九農正。扈有九種也。春扈、鳻鶞。夏扈、竊玄。秋扈、竊藍。冬扈、竊黃。棘扈、竊丹。行扈、唶唶。宵扈、嘖嘖。桑扈、竊脂。老扈、鷃鷃。以九扈爲九農之號。各隨其宜以敎民事。○扈、音戶。鳻、扶云反。鶞、勑倫反。唶、側百反。又助額反。嘖、音責。又音賾。
【読み】
九扈[きゅうこ]を九農正と爲す。扈に九種有るなり。春扈は、鳻鶞[ふんちん]。夏扈は、竊玄[せつげん]。秋扈は、竊藍。冬扈は、竊黃。棘扈は、竊丹。行扈は、唶唶[しゃくしゃく]。宵扈は、嘖嘖[さくさく]。桑扈は、竊脂。老扈は、鷃鷃[あんあん]。九扈を以て九農の號と爲す。各々其の宜しきに隨いて以て民事を敎ゆ。○扈は、音戶。鳻は、扶云反。鶞は、勑倫反。唶は、側百反。又助額反。嘖は、音責。又音賾。

扈民無淫者也。扈、止也。止民使不淫放。
【読み】
民を扈[とど]めて淫すること無からしむる者なり。扈は、止むるなり。民を止めて淫放せざらしむ。

自顓頊以來、不能紀遠、乃紀於近、爲民師而命以民事、則不能故也。顓頊氏、代少皞者。德不能致遠瑞、而以民事命官。
【読み】
顓頊[せんぎょく]より以來、遠きを紀すること能わず、乃ち近きに紀して、民の師を爲して命ずるに民事を以てするは、則ち能わざる故なり、と。顓頊氏は、少皞に代わる者。德遠瑞を致すこと能わずして、民事を以て官に命ず。

仲尼聞之、見於郯子而學之。於是仲尼年二十八。
【読み】
仲尼之を聞きて、郯子に見えて之を學ぶ。是に於て仲尼年二十八。

旣而告人曰、吾聞之、天子失官、學在四夷。猶信。失官、官不脩其職也。傳言聖人無常師。
【読み】
旣にして人に告げて曰く、吾れ之を聞く、天子官を失えば、學四夷に在り、と。猶信なり、と。官を失うとは、官其の職を脩めざるなり。傳聖人常の師無きを言う。

晉侯使屠蒯如周、請有事於雒與三塗。屠蒯、晉侯之膳宰也。以忠諫見進。雒、雒水也。三塗、山名。在陸渾南。○蒯、苦怪反。
【読み】
晉侯屠蒯をして周に如きて、雒[らく]と三塗とに事有らんことを請わしむ。屠蒯は、晉侯の膳宰なり。忠諫を以て進めらる。雒は、雒水なり。三塗は、山の名。陸渾の南に在り。○蒯は、苦怪反。

萇弘謂劉子曰、客容猛。非祭也。其伐戎乎。陸渾氏甚睦於楚。必是故也。君其備之。乃警戎備。警戒以備戎也。欲因晉以合勢。
【読み】
萇弘劉子に謂いて曰く、客の容猛なり。祭には非ざるなり。其れ戎を伐たんか。陸渾氏甚だ楚に睦まじ。必ず是の故ならん。君其れ之に備えよ、と。乃ち戎備を警む。警戒して以て戎に備うるなり。晉に因りて以て勢を合わせんと欲す。

九月、丁卯、晉荀吳帥師涉自棘津、河津名。
【読み】
九月、丁卯[ひのと・う]、晉の荀吳師を帥いて棘津より涉り、河津の名。

使祭史先用牲于雒。陸渾人弗知。師從之、庚午、遂滅陸渾、數之以其貳於楚也。陸渾子奔楚。其衆奔甘鹿。甘鹿、周地。
【読み】
祭史をして先ず牲を雒に用いしむ。陸渾の人知らず。師之に從い、庚午[かのえ・うま]、遂に陸渾を滅ぼし、之を數[せ]むるに其の楚に貳あるを以てす。陸渾子楚に奔る。其の衆甘鹿に奔る。甘鹿は、周の地。

周大獲。先警戎備。故獲。
【読み】
周大いに獲たり。先ず戎備を警む。故に獲[えもの]あり。

宣子夢文公攜荀吳而授之陸渾。故使穆子帥師。獻俘于文宮。欲以應夢。
【読み】
宣子夢みらく、文公荀吳を攜えて之に陸渾を授く、と。故に穆子をして師を帥いしめり。俘を文宮に獻ず。以て夢に應ぜんと欲す。

冬、有星孛于大辰西、及漢。夏之八月、辰星見在天漢西。今孛星出辰西、光芒東及天漢。
【読み】
冬、星の大辰の西に孛する有り、漢に及ぶ。夏の八月に、辰星の見るるは天漢の西に在り。今孛星辰の西に出でて、光芒東天漢に及ぶ。

申須曰、彗所以除舊布新也。申須、魯大夫。○彗、以銳反。又息遂反。
【読み】
申須曰く、彗は舊を除き新を布く所以なり。申須は、魯の大夫。○彗は、以銳反。又息遂反。

天事恆象。天道恆以象類告示人。
【読み】
天事は恆に象をす。天道は恆に象類を以て人に告示す。

今除於火。火出必布焉。諸侯其有火災乎。今火向伏。故知當須火出、乃布散爲災。
【読み】
今火に除う。火出でば必ず布かん。諸侯其れ火災有らんか、と。今火伏するに向かわんとす。故に當に火の出づるを須て、乃ち布散して災を爲すべきを知る。

梓愼曰、往年吾見之。是其徵也。徵、始有形象而徵也。
【読み】
梓愼曰く、往年吾れ之を見たり。是れ其の徵なり。徵は、始めて形象有りて徵あるなり。

火出而見、前年火出時。○見、賢遍反。
【読み】
火出でて見え、前年火出づる時。○見は、賢遍反。

今玆火出而章。必火入而伏。隨火沒也。
【読み】
今玆[ことし]火出でて章[あらわ]る。必ず火入りて伏せん。火に隨いて沒するなり。

其居火也久矣。歷二年。
【読み】
其の火に居ること久し。二年を歷たり。

其與不然乎。言必然也。○與、如字。音預。
【読み】
其れ與に然らざらんや。必ず然るを言うなり。○與は、字の如し。音預。

火出、於夏爲三月、謂昏見。
【読み】
火出づるは、夏に於ては三月と爲し、昏に見るを謂う。

於商爲四月、於周爲五月。夏數得天。得天正。
【読み】
商に於ては四月と爲し、周に於ては五月と爲す。夏の數は天を得たり。天正を得たり。

若火作、其四國當之。在宋・衛・陳・鄭乎。宋、大辰之虛也。大辰、大火。宋分野。○虛、起居反。下同。
【読み】
若し火作らば、其れ四國當たらん。宋・衛・陳・鄭に在らんか。宋は、大辰の虛なり。大辰は、大火。宋の分野。○虛は、起居反。下も同じ。

陳、大皞之虛也。大皞居陳。木、火所自出。
【読み】
陳は、大皞の虛なり。大皞陳に居れり。木は、火の自ら出づる所。

鄭、祝融之虛也。祝融、高辛氏之火正。居鄭。
【読み】
鄭は、祝融の虛なり。祝融は、高辛氏の火正。鄭に居れり。

皆火房也。房、舍也。
【読み】
皆火の房なり。房は、舍なり。

星孛及漢。漢、水祥也。天漢、水也。
【読み】
星孛して漢に及ぶ。漢は、水祥なり。天漢は、水なり。

衛、顓頊之虛也。故爲帝丘、衛、今濮陽縣。昔帝顓頊居之。其城内有顓頊冢。
【読み】
衛は、顓頊の虛なり。故に帝丘と爲し、衛は、今の濮陽縣。昔帝顓頊之に居れり。其の城内に顓頊の冢有り。

其星爲大水。衛星、營室。營室、水也。
【読み】
其の星を大水と爲す。衛の星は、營室。營室は、水なり。

水、火之牡也。牡、雄也。
【読み】
水は、火の牡なり。牡は、雄なり。

其以丙子若壬午作乎。水火所以合也。丙午、火。壬子、水。水火合而相薄。水少而火多。故水不勝火。○薄、音博。
【読み】
其れ丙子[ひのえ・ね]若しくは壬午[みずのえ・うま]を以て作らんか。水火の合う所以なり。丙午は、火。壬子は、水。水火合いて相薄[せま]る。水少なくして火多し。故に水火に勝たず。○薄は、音博。

若火入而伏、必以壬午。尙未知今孛星當復隨火星倶伏不。故言若。○復、扶又反。
【読み】
若し火入りて伏さば、必ず壬午を以てせん。尙未だ今の孛星當に復し火星に隨いて倶に伏すべきや不やを知らず。故に若しと言う。○復は、扶又反。

不過其見之月。火見周之五月。
【読み】
其の見ゆる月を過ぎじ、と。火の見ゆるは周の五月。

鄭裨竈言於子產曰、宋・衛・陳・鄭將同日火。若我用瓘斝玉瓚、鄭必不火。瓘、珪也。斝、玉爵也。瓚、勺也。欲以禳火。○裨、婢支反。斝、古雅反。瓚、才旦反。勺、上若反。
【読み】
鄭の裨竈子產に言いて曰く、宋・衛・陳・鄭將に同日に火あらんとす。若し我れ瓘斝[かんか]玉瓚[ぎょくさん]を用いば、鄭は必ず火あらじ、と。瓘は、珪なり。斝は、玉爵なり。瓚は、勺なり。以て火を禳[はら]わんと欲す。○裨は、婢支反。斝は、古雅反。瓚は、才旦反。勺、上若反。

子產弗與。以爲天災流行、非禳所息故也。爲明年、宋・衛・陳・鄭災傳。
【読み】
子產與えず。天災の流行するは、禳の息むる所に非ずと以爲える故なり。明年、宋・衛・陳・鄭災ある爲の傳なり。

吳伐楚。陽匃爲令尹。卜戰。不吉。陽匃、穆王曾孫、令尹子瑕。
【読み】
吳楚を伐つ。陽匃[ようかい]令尹爲り。戰を卜す。不吉なり。陽匃は、穆王の曾孫、令尹子瑕。

司馬子魚曰、我得上流。何故不吉。子魚、公子魴也。順江而下、易用勝敵。○魴、音房。
【読み】
司馬子魚曰く、我れ上流を得たり。何の故に不吉ならん。子魚は、公子魴なり。江に順いて下れば、用て敵に勝ち易し。○魴は、音房。

且楚故、司馬令龜。我請改卜。令曰、魴也以其屬死之、楚師繼之、尙大克之。吉。得吉兆。
【読み】
且つ楚の故は、司馬龜に令せり。我れ請う、改め卜せん、と。令して曰く、魴や其の屬を以て之に死して、楚の師之に繼がば、尙わくは大いに之に克たん、と。吉なり。吉兆を得たり。

戰于長岸。子魚先死。楚師繼之、大敗吳師、獲其乘舟餘皇。餘皇、舟名。○乘、如字。又繩證反。
【読み】
長岸に戰う。子魚先ず死す。楚の師之に繼ぎ、大いに吳の師を敗り、其の乘舟餘皇を獲たり。餘皇は、舟の名。○乘は、字の如し。又繩證反。

使隨人與後至者守之、環而塹之及泉、環、周也。○環、如字。又音患。
【読み】
隨人と後に至る者とをして之を守まらしめ、環らして之に塹[ほ]り泉に及ぼし、環は、周るなり。○環は、字の如し。又音患。

盈其隧炭、陳以待命。隧、出入道。
【読み】
其の隧に炭を盈てて、陳して以て命を待つ。隧は、出入の道。

吳公子光、光、諸樊之子、闔廬。
【読み】
吳の公子光、光は、諸樊の子、闔廬[こうりょ]。

請於其衆曰、喪先王之乘舟、豈唯光之罪。衆亦有焉。請藉取之、以救死。藉衆之力以取舟。
【読み】
其の衆に請いて曰く、先王の乘舟を喪いしは、豈唯光が罪のみならんや。衆も亦焉れ有り。請う、藉[か]りて之を取りて、以て死を救わん、と。衆の力を藉りて以て舟を取らん。

衆許之。使長鬣者三人、長鬣、多髭鬚。與吳人異形狀。詐爲楚人。○鬣、力輒反。
【読み】
衆之を許す。長鬣[ちょうりょう]の者三人をして、長鬣は、髭鬚[ししゅ]多きなり。吳人と形狀を異にす。詐りて楚人と爲る。○鬣は、力輒反。

潛伏於舟側曰、我呼餘皇則對。師夜從之、師、吳師也。○呼、呼路反。又如字。
【読み】
舟の側に潛伏せしめて曰く、我れ餘皇と呼ばば則ち對えよ、と。師夜之に從い、師は、吳の師なり。○呼は、呼路反。又字の如し。

三呼。皆迭對。迭、更也。
【読み】
三たび呼ぶ。皆迭[たが]いに對う。迭は、更々なり。

楚人從而殺之、楚師亂。吳人大敗之、取餘皇以歸。傳言吳光有謀。
【読み】
楚人從いて之を殺さんとし、楚の師亂る。吳人大いに之を敗り、餘皇を取りて以て歸る。傳吳光が謀有るを言う。



經十三年。乾谿。苦兮反。讒慝。他得反。
傳。囚俘。芳夫反。冶區夫。音也。若憚。待旦反。將焉。於虔反。其效。戶孝反。掩。於檢反。郊竟。音境。蔓成然。音萬。羣喪。息浪反。子皙。星歷反。己徇。似俊反。能爲。于僞反。黑肱。古弘反。築壘。力軌反。辟。音壁。本亦作壁。○今本亦壁。請藩。方元反。注同。須務牟。亡侯反。史猈。一音扶膽反。本或作篺。音同。魚陂。彼宜反。而潰。戶内反。知擠。說文云、排也。一音子禮反。溝壑。許各反。隊也。直類反。王沿。以全反。入鄢。入本或作至。再奸。音干。謂斷。丁管反。棘闈。音韋。孔晁云、棘、楚邑。闈、巷門。王縊。一豉反。殉而。似俊反。觀從謂子干。本或作謂子干曰。○今本亦同。夜駭。戶楷反。相恐。丘勇反。下同。周徧。音遍。不書殺。申志反。○今本弑。熊居。音雄。子旗。音其。見舟。賢遍反。淮汭。如銳反。羣賂。音路。宥罪。音又。爲君。于僞反。犫櫟。力狄反。自說。音悅。不復。扶又反。下將復使同。毋勤。音無。王柩。其久反。詬天。本亦作訽。余畀。必利反。徐甫至反。與也。乃徧。音遍。見於。賢遍反。下注微見同。巴姬。必加反。密埋。亡皆反。大室。音泰。五人齊。本又作齋。好惡。竝如字。又上呼報反。下烏路反。下皆放此。爲應。應對之應。無釁。許靳反。苛。本或作荷。音同。下同。慝。他得反。數其。所主反。下善。遐稼反。齊肅。側皆反。注同。藏賄。呼罪反。不厭。於豔反。好學。呼報反。顚頡。戶結反。賈佗。徒河反。齊妻。七計反。欒。魯官反。方相。息亮反。下同。奧主。烏報反。下邳。皮悲反。四千乘。繩證反。下及注皆同。羊舌鮒。音附。幄幕。於角反。下音莫。淫芻。初倶反。說文云、刈草也。蕘。飼牲曰芻。草薪曰蕘。屠伯。音徒。饋叔。其位反。一篋。苦協反。瀆貨。徒木反。數也。音朔。爲此役也。如字。或于僞反。以厎。音旨。傾覆。芳服反。長幼。丁丈反。巡守。手又反。方嶽。音岳。不治。直吏反。舊如字。不旆。步貝反。以恐。丘勇反。下同。愬于。音素。朝夕。如字。注同。幾亡。音祈。不共。音恭。注及下注同。雖瘠。在亦反。仆也。音付。一音蒲北反。杞鄫。才陵反。近魯。附近之近。數以。音朔。敢與。音預。下文不與同。爲墠。本或朔壇。○今本亦壇。會處。昌慮反。使人。所吏反。咎之。其九反。競爭。爭鬭之爭。下爭競同。蒙裹。音果。司鐸。徒洛反。以蒲。本又作匍。同。亦作扶。伏。本又作匐。同。守者。手又反。又如字。子服湫。一音子鳥反。案子服湫又作子服椒、止一人耳。爲治。直吏反。不警。音景。守備。手又反。何瘳。勑留反。差也。初賣反。諺曰。音彥。將焉。於虔反。卿稱。尺證反。坐叔。才臥反。使近。附近之近。
經十四年。
傳。司徒老祁。巨夷反。字林、上尸反。遂劫。居業反。能復。扶又反。子韓皙。星歷反。假好。呼報反。收介特。音界。又古賀反。注同。單身。音丹。宥孤。音又。賦稅。始銳反。罪戾。力計反。慝。他得反。邊疆。居良反。共公。音恭。公子鐸。待洛反。無厭。本又作饜。下注同。孔子鉏。仕居反。蔽罪。徐甫世反。王補弟反。鬻獄。鬻、賣也。之稱。尺證反。皐陶。音遙。乃施。服云、施罪於邢侯也。不爲。于僞反。故重。直用反。
經十五年。籥入。羊略反。爲叔弓。于僞反。復立。扶又反。不遠。于萬班。
傳。將禘。大計反。齊戒。側皆反。有咎。其九反。喪氛。徐扶云反。蓋見。賢遍反。莅事。音利。○今本涖。故爲。于僞反。亦長。丁丈反。故寘。之豉反。女何。音汝。而背。音佩。鼓聚。才喩反。好惡。呼報反。下烏路反。或竝依字讀。下竝注皆同。不愆。起虔反。復加。扶又反。以庇。必利反。又音祕。所喪。息浪反。而繕。市戰反。守備。手又反。請降。戶江反。將焉。於虔反。■(截の隹が鳥)本又作鳶。不與。音預。荀櫟。本又作躒。○今本亦躒。爲介。音界。樽以。本或作尊。又作罇。竝同。彝器。以之反。故數。音朔。姞姓。其吉反。又其乙反。出鎧。開代反。秬。音巨。鬯。音暢。彤弓。徒冬反。虎賁。音奔。東夏。戶雅反。焉在。於虔反。下將焉用之同。所樂。音洛。下文注皆同。靜默。本或朔嘿。同。○今本亦嘿。
經十六年。誘。音酉。雩。音于。
傳。旣而復。扶又反。下邳。普悲反。取慮。如淳取音陬訾之陬。慮音邾婁之婁。如陂。彼皮反。郯人。音談。甲父。音甫。之亢。苦浪反。也夫。音扶。我肄。徐以自反。恭恪。苦各反。○今本恭作共。禦之。魚呂反。注及下同。言數。音朔。陵侮。亡甫反。衷當。丁浪反。或如字。類。徐力猥反。放紛。芳云反。放從。子用反。○今本縱。百乘。繩證反。焉得。於虔反。下將焉用之同。僻。○今本辟。邪。似嗟反。共朴。普角反。之守。手又反。可偸。他侯反。盍求。戶臘反。何厭。○今本饜。不復。扶又反。下弗敢復幷注同。銳乎。悅歲反。成賈。本或作價。更相。音庚。蓬。蒲東反。蒿。呼高反。藜。力兮反。毋或。音無。下同。寶賄。呼罪反。或作貨。勿與。音預。以好。呼報反。下及注竝同。背盟。音佩。餞宣子。賤淺反。字林、子扇反。齹。字林、才可士知二反。說文、作■(上が佐で下が齒)。云、齒差跌也。在河千多二反。蔓。音萬。邂。戶賣反。逅。戶豆反。子。如住反。○今本孺。別於。彼列反。不渝。羊朱反。褰裳。起虔反。涉溱。側巾反。不復。扶又反。令子。力呈反。下同。印段。一刃反。其唱。昌亮反。本或作倡。同。○今本亦倡。和女。戶臥反。下同。女音汝。貺起。音況。數世。色主反。私覲。其靳反。命起舍。音捨。夫玉。音扶。藉手。在夜反。注同。語季。魚據反。奢傲。五報反。尙少。詩照反。屠擊。音徒。令繁。力呈反。
經十七年。孛。一音勃。長岸。五旦反。
傳。菁菁。子丁反。者莪。五河反。樂且。音洛。饌。仕眷反。禦之。魚呂反。注同。慝未。他得反。於夏。戶雅反。下文當夏四月、注當夏家同。是宿。音秀。瞽奏。音古。嗇夫。音色。少皞。詩照反。下胡老反。己姓。音紀。一音祀。師長。丁丈反。大皞。音泰。下同。少皞摯。音至。燕也。於見反。鴳。本亦作鷃。■(左が隹で右が鳥)鳩。本又作隹、本或作鷦。子遙反。或子堯反。鴡鳩。本或作雎。鷙而。本亦作摯。下同。有別。彼列反。鴶。本亦作秸。鵴。本亦作鞠。爽鳩。所丈反。鶻鵰。陟交反。又勑留反。又音彫。曰鷷。本或作蹲。曰希。如字。一音丁里反。本又作鵗。○今本亦鵗。鳻。一音如字。唶唶。一音子夜反。顓頊。音專。下許玉反。於雒。音洛。乃警。音景。獻俘。芳扶反。以應。應對之應。夏之。戶雅反。下文同。星見。賢遍反。嚮伏。許亮反。又作向。○今本亦向。之分。扶問反。○今本無之字。濮陽。音卜。之牡。茂后反。相搏。本又作薄。音同。○今本亦薄。瓘。古亂反。以禳。本亦作攘。如羊反。下同。陽匃。古害反。易用。以豉反。塹之。七豔反。其隧。音遂。炭。吐旦反。闔廬。戶臘反。下力居反。喪先王。息浪反。髭。子斯反。鬚。音須。皆迭。待結反。又音弟。迭更。音庚。十七年傳■(左が隹で右が鳥)鳩、舊作鷦鳩。今從釋文改之。


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(引用文献)


江守孝三(Emori Kozo)