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春秋左氏傳校本


 春秋《左氏傳》(襄公四、五、六)

春秋左氏傳
(隱公 桓公莊公閔公)(僖公上、中、下 )(文公上、下 )(宣公上、下 )(成公上、下 )
(襄公一、二、三) (四、五、六 )(昭公一、二、三、四) (五、六、七)(定公上、下)(哀公上、下)(序杜預略傳 ・後序)

春秋左氏傳校本第十七

襄公 起二十三年盡二十五年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
二十有三年、春、王二月、癸酉、朔、日有食之。無傳。
【読み】
〔經〕二十有三年、春、王の二月、癸酉[みずのと・とり]、朔、日之を食する有り。傳無し。

三月、己巳、杞伯匃卒。五同盟。○匃、古害反。
【読み】
三月、己巳[つちのと・み]、杞伯匃[かい]卒す。五たび同盟す。○匃は、古害反。

夏、邾畀我來奔。無傳。畀我、是庶其之黨。同有竊邑叛君之罪、來奔。故書。○畀、必利反。
【読み】
夏、邾[ちゅ]の畀我[ひが]來奔す。傳無し。畀我は、是れ庶其[しょき]の黨。同じく邑を竊み君に叛くの罪有りて、來奔す。故に書す。○畀は、必利反。

葬杞孝公。無傳。
【読み】
杞の孝公を葬る。傳無し。

陳殺其大夫慶虎及慶寅。書名、皆罪其專國叛君。言及、史異辭。無義例。
【読み】
陳其の大夫慶虎と慶寅とを殺す。名を書すは、皆其の國を專にし君に叛くを罪するなり。及と言うは、史の異辭なり。義例無し。

陳侯之弟黃、自楚歸于陳。諸侯納之曰歸。黃至楚自理得直。故爲楚所納。
【読み】
陳侯の弟黃、楚より陳に歸る。諸侯之を納るるを歸ると曰う。黃楚に至り自ら理して直きを得。故に楚の爲に納れらる。

晉欒盈復入于晉、以惡入曰復入。
【読み】
晉の欒盈晉に復入し、惡を以て入るを復入と曰う。

入于曲沃。兵敗奔曲沃、據曲沃衆、還與君爭。非欲出附他國。故不言叛。○還、戶關反。
【読み】
曲沃に入る。兵敗れて曲沃に奔り、曲沃の衆に據りて、還りて君と爭う。出でて他國に附かんと欲するに非ず。故に叛くと言わず。○還は、戶關反。

秋、齊侯伐衛、遂伐晉。兩事。故言遂。
【読み】
秋、齊侯衛を伐ち、遂に晉を伐つ。兩事なり。故に遂にと言う。

八月、叔孫豹帥師救晉、次于雍楡。豹救晉、待命于雍楡。故書次。雍楡、晉地。汲郡朝歌縣東有雍城。○雍、於用反。朝、如字。
【読み】
八月、叔孫豹師を帥いて晉を救い、雍楡[ようゆ]に次[やど]る。豹晉を救いて、命を雍楡に待つ。故に次ると書す。雍楡は、晉の地。汲郡朝歌縣の東に雍城有り。○雍は、於用反。朝は、字の如し。

己卯、仲孫速卒。孟莊子也。
【読み】
己卯[つちのと・う]、仲孫速卒す。孟莊子なり。

冬、十月、乙亥、臧孫紇出奔邾。書名者、阿順季氏、爲之廢長立少、以取奔亡。罪之。
【読み】
冬、十月、乙亥[きのと・い]、臧孫紇[ぞうそんこつ]出でて邾に奔る。名を書すは、季氏に阿順して、之が爲に長を廢して少を立て、以て奔亡を取ればなり。之を罪するなり。

晉人殺欒盈。齊侯襲莒。輕行掩其不備、曰襲。因伐晉還襲莒。不言遂者、閒有事。○輕、遣政反。
【読み】
晉人欒盈を殺す。齊侯莒を襲う。輕行して其の備えざるを掩うを、襲うと曰う。晉を伐ちて還るに因りて莒を襲う。遂にと言わざるは、閒に事有ればなり。○輕は、遣政反。

〔傳〕二十三年、春、杞孝公卒。晉悼夫人喪之。悼夫人、晉平公母。杞孝公姊妹。○喪、如字。
【読み】
〔傳〕二十三年、春、杞の孝公卒す。晉の悼夫人之に喪す。悼夫人は、晉の平公の母。杞の孝公の姊妹なり。○喪は、字の如し。

平公不徹樂。非禮也。徹、去也。
【読み】
平公樂を徹せず。禮に非ざるなり。徹は、去るなり。

禮爲鄰國闕。禮、諸侯絕期。故以鄰國責之。○爲、于僞反。期、居其反。
【読み】
禮に鄰國の爲にも闕く、と。禮に、諸侯は期を絕つ、と。故に鄰國を以て之を責む。○爲は、于僞反。期は、居其反。

陳侯如楚。朝也。
【読み】
陳侯楚に如く。朝するなり。

公子黃愬二慶於楚。楚人召之。二慶、虎及寅也。二十年、二慶譖黃。黃奔楚自理。今陳侯往。楚乃信黃、爲召二慶。○愬、息路反。
【読み】
公子黃二慶を楚に愬[うった]う。楚人之を召[よ]ぶ。二慶は、虎と寅となり。二十年、二慶黃を譖す。黃楚に奔りて自ら理す。今陳侯往く。楚乃ち黃を信じて、爲に二慶を召ぶ。○愬は、息路反。

使慶樂往。殺之。慶樂、二慶之族。二慶畏誅。故不敢自往。○使慶樂往、絶句。
【読み】
慶樂をして往かしむ。之を殺す。慶樂は、二慶の族。二慶誅を畏る。故に敢えて自ら往かず。○使慶樂往は、絶句。

慶氏以陳叛。因陳侯在楚而叛之。不書叛、不以告。
【読み】
慶氏陳を以[い]て叛く。陳侯の楚に在るに因りて之に叛く。叛くを書さざるは、以て告げざればなり。

夏、屈建從陳侯圍陳。
【読み】
夏、屈建陳侯に從いて陳を圍む。

陳人城、治城以距君。屈建、楚莫敖。○從、才用反。又如字。
【読み】
陳人城き、城を治めて以て君を距む。屈建は、楚の莫敖。○從は、才用反。又字の如し。

板隊而殺人、役人相命、各殺其長、慶氏忿其板隊、遂殺築人。故役人怒而作亂。○隊、直類反。
【読み】
板隊[お]ちて人を殺せしかば、役人相命じて、各々其の長を殺し、慶氏其の板の隊つるを忿り、遂に築人を殺す。故に役人怒りて亂を作す。○隊は、直類反。

遂殺慶虎・慶寅。楚人納公子黃。
【読み】
遂に慶虎・慶寅を殺せり。楚人公子黃を納る。

君子謂慶氏不義。不可肆也。肆、放也。
【読み】
君子謂えらく、慶氏不義なり。肆にす可からざるなり。肆は、放なり。

故書曰、惟命不于常。周書康誥。言有義則存、無義則亡。
【読み】
故に書に曰く、惟れ命常に于[おい]てせず、と。周書の康誥。義有れば則ち存し、義無ければ則ち亡ぶるを言う。

晉將嫁女于吳。齊侯使析歸父媵之。以藩載欒盈及其士、藩、車之有障蔽者。使若媵妾在其中。○析、星曆反。媵、以證反。藩、方元反。
【読み】
晉將に女を吳に嫁せんとす。齊侯析歸父をして之に媵[よう]せしむ。藩を以て欒盈と其の士とを載せ、藩は、車の障蔽有る者。媵妾の其の中に在るが若くならしむ。○析は、星曆反。媵は、以證反。藩は、方元反。

納諸曲沃。欒盈邑也。
【読み】
諸を曲沃に納る。欒盈が邑なり。

欒盈夜見胥午而告之。胥午、守曲沃大夫。
【読み】
欒盈夜胥午を見て之に告ぐ。胥午は、曲沃を守る大夫。

對曰、不可。天之所廢、誰能興之。子必不免。吾非愛死也。知不集也。集、成也。○知、音智。又如字。
【読み】
對えて曰く、不可なり。天の廢する所は、誰か能く之を興さん。子必ず免れじ。吾れ死を愛[おし]むに非ざるなり。集[な]らざるを知ればなり、と。集は、成るなり。○知は、音智。又字の如し。

盈曰、雖然、因子而死、吾無悔矣。我實不天、子無咎焉。言我雖不爲天所祐、子無天咎。故可因。
【読み】
盈曰く、然りと雖も、子に因りて死せば、吾れ悔い無けん。我は實に不天なるも、子は咎無し、と。言うこころは、我れ天の爲に祐けられずと雖も、子は天の咎無し。故に因る可し。

許諾。伏之而觴曲沃人。胥午匿盈而飮其衆。○飮、於鴆反。
【読み】
許諾す。之を伏せて曲沃の人に觴[しょう]す。胥午盈を匿して其の衆に飮ましむ。○飮は、於鴆反。

樂作。午言曰、今也得欒孺子何如。孺子、欒盈。
【読み】
樂作る。午言いて曰く、今や欒孺子を得ば何如、と。孺子は、欒盈。

對曰、得主而爲之死、猶不死也。皆歎。有泣者。爵行。又言。皆曰、得主、何貳之有。盈出徧拜之。謝衆之思己。
【読み】
對えて曰く、主を得て之が爲に死せば、猶死せざるがごとけん、と。皆歎ず。泣く者有り。爵行[めぐ]る。又言う。皆曰く、主を得ば、何の貳すること之れ有らん、と。盈出でて徧く之を拜す。衆の己を思うを謝す。

四月、欒盈帥曲沃之甲、因魏獻子、以晝入絳。獻子、魏舒。絳、晉國都。
【読み】
四月、欒盈曲沃の甲を帥いて、魏獻子に因り、晝を以て絳に入る。獻子は、魏舒。絳は、晉の國都。

初、欒盈佐魏莊子於下軍。莊子、魏絳。獻子之父。
【読み】
初め、欒盈魏莊子に下軍に佐たり。莊子は、魏絳。獻子の父。

獻子私焉。故因之。私相親愛。
【読み】
獻子私す。故に之に因れり。私に相親愛す。

趙氏以原屛之難怨欒氏。成八年、莊姬譖之、欒・郤爲徵。○屛、薄輕反。
【読み】
趙氏原屛の難を以て欒氏を怨む。成八年、莊姬之を譖して、欒・郤徵を爲す。○屛は、薄輕反。

韓・趙方睦。韓起讓趙武。故和睦。
【読み】
韓・趙方に睦まじ。韓起趙武に讓る。故に和睦す。

中行氏以伐秦之役怨欒氏、十四年、晉伐秦、欒黶違荀偃命曰、余馬首欲東。
【読み】
中行氏秦を伐つの役を以て欒氏を怨みて、十四年、晉秦を伐ちて、欒黶[らんえん]荀偃の命に違いて曰く、余が馬首は東せんと欲す、と。

而固與范氏和親。范宣子佐中行偃於中軍。
【読み】
固より范氏と和親す。范宣子中行偃に中軍に佐たり。

知悼子少而聽於中行氏。悼子、知罃之子、荀盈也。少、年十七也。知氏・中行氏同祖。故相聽從。○知、音智。
【読み】
知悼子少[わか]くして中行氏に聽く。悼子は、知罃[ちおう]の子、荀盈なり。少しとは、年十七なり。知氏・中行氏祖を同じくす。故に相聽從す。○知は、音智。

程鄭嬖於公。鄭亦荀氏宗。
【読み】
程鄭公に嬖せらる。鄭も亦荀氏の宗。

唯魏氏及七輿大夫與之。七輿、官名。
【読み】
唯魏氏と七輿大夫とのみ之に與す。七輿は、官の名。

樂王鮒侍坐於范宣子。或告曰、欒氏至矣。宣子懼。桓子曰、奉君以走固宮、必無害也。桓子、樂王鮒。
【読み】
樂王鮒范宣子に侍坐す。或ひと告げて曰く、欒氏至れり、と。宣子懼る。桓子曰く、君を奉じて以て固宮に走らば、必ず害無けん。桓子は、樂王鮒。

且欒氏多怨、子爲政、欒氏自外、子在位、其利多矣。旣有利權、又執民柄。賞罰爲民柄。
【読み】
且つ欒氏は怨み多く、子は政を爲し、欒氏は外よりし、子は位に在り、其の利多し。旣に利の權有り、又民の柄を執る。賞罰は民の柄爲り。

將何懼焉。欒氏所得、其唯魏氏乎。而可強取也。夫克亂在權。子無懈矣。
【読み】
將[はた]何そ懼れん。欒氏が得る所は、其れ唯魏氏か。而れども強いて取る可し。夫れ亂に克つは權に在り。子懈ること無かれ、と。

公有姻喪。夫人有杞喪。○强、其丈反。
【読み】
公姻の喪有り。夫人杞の喪有り。○强は、其丈反。

王鮒使宣子墨縗冒絰、晉自殽戰還、遂常墨縗。○縗、七雷反。
【読み】
王鮒宣子をして墨縗[ぼくさい]し絰[てつ]を冒[かぶ]らせ、晉殽[こう]の戰より還り、遂に常に墨縗す。○縗は、七雷反。

二婦人輦以如公、恐欒氏有内應距之。故爲婦人服而入。
【読み】
二婦人のごとく輦[れん]して以て公に如き、欒氏に内應有りて之を距がんことを恐る。故に婦人の服をして入るなり。

奉公以如固宮。固宮、宮之有臺觀備守者。○觀、古喚反。
【読み】
公を奉じて以て固宮に如かしむ。固宮は、宮の臺觀備守有る者なり。○觀は、古喚反。

范鞅逆魏舒、用王鮒計、欲强取之。
【読み】
范鞅魏舒を逆うれば、王鮒の計を用いて、之を强取せんことを欲す。

則成列旣乘、將逆欒氏矣。趨進曰、欒氏帥賊以入。鞅之父與二三子在君所矣。二三子、諸大夫。
【読み】
則ち列を成して旣に乘り、將に欒氏を逆えんとせり。趨り進みて曰く、欒氏賊を帥いて以て入れり。鞅の父と二三子と君の所に在り。二三子は、諸大夫。

使鞅逆吾子。鞅請驂乘持帶。驂乘必持帶、備隋隊。○隋、徒果反。隊、直類反。
【読み】
鞅をして吾子を逆えしむ。鞅請う、驂乘して帶を持[と]らん、と。驂乘すれば必ず帶を持るは、隋隊に備うるなり。○隋は、徒果反。隊は、直類反。

遂超乘、跳上獻子車。○跳、徒彫反。
【読み】
遂に超乘し、獻子の車に跳り上る。○跳は、徒彫反。

右撫劒、左援帶、劫之。○援、音袁。
【読み】
右に劒を撫[おさ]え、左に帶を援[と]り、之を劫かす。○援は、音袁。

命驅之出。僕請。請所至。
【読み】
命じて之を驅りて出でしむ。僕請う。至る所を請う。

鞅曰、之公。宣子逆諸階、逆獻子。
【読み】
鞅曰く、公に之け、と。宣子諸を階に逆え、獻子を逆う。

執其手、賂之以曲沃。恐不與己同心。
【読み】
其の手を執り、之に賂うに曲沃を以てす。己と心を同じくせざることを恐る。

初、斐豹、隸也。著於丹書。蓋犯罪沒爲官奴、以丹書其罪。○斐、音非。一芳匪反。
【読み】
初め、斐豹[ひひょう]は、隸なり。丹書に著[しる]さる。蓋し罪を犯して沒して官奴と爲り、丹を以て其の罪を書す。○斐は、音非。一に芳匪反。

欒氏之力臣曰督戎。國人懼之。斐豹謂宣子曰、苟焚丹書、我殺督戎。宣子喜曰、而殺之、所不請於君焚丹書者、有如日。言不負要、明如日。
【読み】
欒氏の力臣を督戎と曰う。國人之を懼る。斐豹宣子に謂いて曰く、苟も丹書を焚かば、我れ督戎を殺さん、と。宣子喜びて曰く、而[なんじ]之を殺さば、君に請いて丹書を焚かざる所の者あらば、日の如きこと有らん、と。言うこころは、要めに負[そむ]かざること、明らかなること日の如し。

乃出豹而閉之。閉著門外。○著、陟略反。
【読み】
乃ち豹を出だして之を閉ず。門外に閉著す。○著は、陟略反。

督戎從之。踰隱而待之。隱、短牆也。
【読み】
督戎之を從[お]う。隱を踰えて之を待つ。隱は、短牆なり。

督戎踰入。豹自後擊而殺之。范氏之徒在臺後。公臺之後。
【読み】
督戎踰えて入る。豹後[しりえ]より擊ちて之を殺す。范氏の徒臺後に在り。公臺の後。

欒氏乘公門。乘、登也。
【読み】
欒氏公門に乘[のぼ]る。乘は、登るなり。

宣子謂鞅曰、矢及君屋死之。鞅用劒以帥卒。用劒、短兵接敵。欲致死。
【読み】
宣子鞅に謂いて曰く、矢君の屋に及ばば之に死せよ、と。鞅劒を用いて以て卒を帥ゆ。劒を用ゆるは、短兵敵に接するなり。死を致さんと欲するなり。

欒氏退。攝車從之、鞅、攝宣子戎車。
【読み】
欒氏退く。車を攝して之を從い、鞅、宣子の戎車を攝す。

遇欒樂。樂、盈之族。
【読み】
欒樂に遇う。樂は、盈の族。

曰、樂之。死將訟女於天。言雖死猶不舍女罪。
【読み】
曰く、樂之を勉めよ。死すとも將に女を天に訟えんとす、と。言うこころは、死すと雖も猶女の罪を舍[ゆる]さじ。
*「勉」は、頭注に「按勉、或作免。壞字也。」とある。

樂射之。不中。又注、注、屬矢於弦也。○射、食亦反。中、去聲。注、之住反。屬、之玉反。
【読み】
樂之を射る。中らず。又注[つ]けんとして、注は、矢を弦に屬くるなり。○射は、食亦反。中は、去聲。注は、之住反。屬は、之玉反。

則乘槐本而覆。欒樂車櫟槐而覆。○覆、芳服反。櫟、音歷。
【読み】
則ち槐本[かいほん]に乘りて覆る。欒樂の車槐を櫟[こす]りて覆る。○覆は、芳服反。櫟は、音歷。

或以戟鉤之、斷肘而死。欒魴傷。欒盈奔曲沃。晉人圍之。魴、欒氏族。○斷、音短。
【読み】
或ひと戟を以て之を鉤[か]け、肘を斷ちて死す。欒魴傷つく。欒盈曲沃に奔る。晉人之を圍む。魴は、欒氏の族。○斷は、音短。

秋、齊侯伐衛。先驅、穀榮御王孫揮。召揚爲右。先驅、先鋒軍。○召、上照反。
【読み】
秋、齊侯衛を伐つ。先驅は、穀榮王孫揮に御たり。召揚右爲り。先驅は、先鋒軍。○召は、上照反。

申驅、成秩御莒恆。申鮮虞之傅摯爲右。申驅、次前軍。傅摯、申鮮虞之子。○鮮、音僊。
【読み】
申驅は、成秩莒恆に御たり。申鮮虞の傅摯右爲り。申驅は、前軍に次ぐなり。傅摯は、申鮮虞の子。○鮮は、音僊。

曹開御戎。晏父戎爲右。公御右也。
【読み】
曹開戎に御たり。晏父戎右爲り。公の御右なり。

貳廣、上之登御邢公。盧蒲癸爲右。貳廣、公副車。○廣、古曠反。
【読み】
貳廣は、上之登邢公に御たり。盧蒲癸右爲り。貳廣は、公の副車。○廣は、古曠反。

啓、牢成御襄罷師。狼蘧疏爲右。左翼曰啓。○罷、音皮。又音彼。一皮買反。
【読み】
啓は、牢成襄罷師に御たり。狼蘧疏[ろうきょそ]右爲り。左翼を啓と曰う。○罷は、音皮。又音彼。一に皮買反。

胠、商子車御侯朝。桓跳爲右。右翼曰胠。○胠、起居反。又音脅。朝、如字。一直遙反。跳、徒彫反。
【読み】
胠[きょ]は、商子車侯朝に御たり。桓跳右爲り。右翼を胠と曰う。○胠は、起居反。又音脅。朝は、字の如し。一に直遙反。跳は、徒彫反。

大殿、商子游御夏之御寇。崔如爲右。大殿、後軍。○殿、都練反。夏、戶雅反。御、魚呂反。
【読み】
大殿は、商子游夏之御寇に御たり。崔如右爲り。大殿は、後軍。○殿は、都練反。夏は、戶雅反。御は、魚呂反。

燭庸之越駟乘。四人共乘殿車也。傳具載此、言莊公廢舊臣任武力。
【読み】
燭庸之越駟乘たり。四人共に殿車に乘るなり。傳具[つぶさ]に此を載するは、莊公舊臣を廢して武力に任ずるを言うなり。

自衛將遂伐晉。晏平仲曰、君恃勇力以伐盟主。若不濟、國之福也。不德而有功、憂必及君。崔杼諫曰、不可。臣聞之、小國閒大國之敗而毀焉、必受其咎。君其圖之。弗聽。陳文子見崔武子、文子、陳完之孫、須無。武子、崔杼也。
【読み】
衛より將に遂に晉を伐たんとす。晏平仲曰く、君勇力を恃みて以て盟主を伐つ。若し濟[な]らずんば、國の福なり。不德にして功有らば、憂え必ず君に及ばん、と。崔杼諫めて曰く、不可なり。臣之を聞く、小國大國の敗れを閒して毀れば、必ず其の咎を受く、と。君其れ之を圖れ、と。聽かず。陳文子崔武子を見て、文子は、陳完の孫、須無。武子は、崔杼なり。

曰、將如君何。武子曰、吾言於君、君弗聽也。以爲盟主、而利其難。羣臣若急、君於何有。言有急、不能顧君。欲弑之以說晉。
【読み】
曰く、將に君を如何にせんとする、と。武子曰く、吾れ君に言えども、君聽かざるなり。以て盟主として、其の難を利す。羣臣若し急あらば、君に於て何か有らん。言うこころは、急有らば、君を顧みること能わず。之を弑して以て晉に說かんと欲す。

子姑止之。文子退、告其人曰、崔子將死乎。謂君甚、而又過之。弑君之惡、過於背盟主。
【読み】
子姑く之を止めよ、と。文子退きて、其の人に告げて曰く、崔子は將に死せんとするか。君を甚だしと謂いて、又之に過ぎたり。君を弑するの惡、盟主に背くより過ぐ。

不得其死。過君以義、猶自抑也。況以惡乎。自抑損。
【読み】
其の死を得じ。君に過ぐるに義を以てするも、猶自ら抑うるなり。況んや惡を以てするをや、と。自ら抑損す。

齊侯遂伐晉、取朝歌。朝歌、今屬汲郡。
【読み】
齊侯遂に晉を伐ち、朝歌を取る。朝歌は、今汲郡に屬す。

爲二隊、入孟門、登大行、二隊、分兵爲二部。孟門、晉隘道。大行山、在河内郡北。○隊、戶對反。大、音泰。
【読み】
二隊と爲し、孟門に入り、大行に登り、二隊は、兵を分けて二部とするなり。孟門は、晉の隘道。大行山は、河内郡の北に在り。○隊は、戶對反。大は、音泰。

張武軍於熒庭、張武軍、謂築壘壁。熒庭、晉地。○熒、戶扃反。
【読み】
武軍を熒庭[けいてい]に張り、武軍を張るとは、壘壁を築くを謂う。熒庭は、晉の地。○熒は、戶扃反。

戍郫邵、取晉邑而守之。○郫、婢支反。
【読み】
郫邵を戍り、晉の邑を取りて之を守る。○郫は、婢支反。

封少水、封晉尸於少水、以爲京觀。○少、詩照反。
【読み】
少水を封じて、晉の尸を少水に封じて、以て京觀と爲す。○少は、詩照反。

以報平陰之役、乃還。平陰役、在十八年。
【読み】
以て平陰の役に報い、乃ち還る。平陰の役は、十八年に在り。

趙勝帥東陽之師以追之、獲晏氂。趙勝、趙旃之子。東陽、晉之山東、魏郡廣平以北。晏氂、齊大夫。○勝、音升。一申證反。氂、力之反。
【読み】
趙勝東陽の師を帥いて以て之を追い、晏氂[あんり]を獲たり。趙勝は、趙旃の子。東陽は、晉の山東、魏郡廣平以北なり。晏氂は、齊の大夫。○勝は、音升。一に申證反。氂は、力之反。

八月叔孫豹帥師救晉、次于雍楡。禮也。救盟主。故曰禮。
【読み】
八月叔孫豹師を帥いて晉を救い、雍楡に次る。禮なり。盟主を救う。故に禮と曰う。

季武子無適子。公彌長。而愛悼子、欲立之。公彌、公鉏。悼子、紇也。○適、丁歷反。紇、恨發反。
【読み】
季武子適子無し。公彌長たり。而れども悼子を愛し、之を立てんことを欲す。公彌は、公鉏。悼子は、紇なり。○適は、丁歷反。紇は、恨發反。

訪於申豐曰、彌與紇、吾皆愛之。欲擇才焉而立之。申豐趨退。歸、盡室將行。申豐、季氏屬大夫。
【読み】
申豐に訪[と]いて曰く、彌と紇と、吾れ皆之を愛す。才を擇びて之を立てんことを欲す、と。申豐趨り退く。歸りて、室を盡くして將に行[さ]らんとす。申豐は、季氏の屬大夫。

他日又訪焉。對曰、其然、將具敝車而行。其然、猶必爾。
【読み】
他日又訪う。對えて曰く、其れ然らば、將に敝車を具えて行らん、と。其れ然らば、猶必ず爾のごとし。

乃止。止、不立紇。
【読み】
乃ち止む。止むとは、紇を立てざるなり。

訪於臧紇。臧紇曰、飮我酒。吾爲子立之。季氏飮大夫酒、臧紇爲客。爲上賓。○飮、於鴆反。下同。
【読み】
臧紇に訪う。臧紇曰く、我に酒を飮ませよ。吾れ子の爲に之を立てん、と。季氏大夫に酒を飮ましめ、臧紇を客とす。上賓とす。○飮は、於鴆反。下も同じ。

旣獻。已獻酒。
【読み】
旣に獻ず。已に酒を獻ず。

臧孫命北面重席、新樽絜之、酒樽旣新、復絜澡之。○重、去聲。
【読み】
臧孫命じて北面に席を重ね、樽を新たにして之を絜くせしめ、酒樽旣に新たに、復之を絜澡す。○重は、去聲。

召悼子、降逆之。大夫皆起。臧孫下迎悼子。
【読み】
悼子を召して、降りて之を逆う。大夫皆起つ。臧孫下りて悼子を迎う。

及旅、而召公鉏、獻酬禮畢而通行爲旅。
【読み】
旅に及びて、公鉏を召して、獻酬の禮畢わりて通行するを旅と爲す。

使與之齒。使從庶子之禮、列在悼子之下。
【読み】
之と齒せしむ。庶子の禮に從いて、列して悼子の下に在らしむ。

季孫失色。恐公鉏不從。
【読み】
季孫色を失う。公鉏が從わざらんことを恐る。

季氏以公鉏爲馬正。馬正、家司馬。
【読み】
季氏公鉏を以て馬正と爲す。馬正は、家の司馬。

慍而不出。閔子馬見之、閔子馬、閔馬父。
【読み】
慍みて出でず。閔子馬之を見て、閔子馬は、閔馬父。

曰、子無然。禍福無門。唯人所召。爲人子者、患不孝、不患無所。所、位處。
【読み】
曰く、子然ること無かれ。禍福は門無し。唯人の召く所のままなり。人の子爲る者は、孝ならざるを患えて、所無きを患えざれ。所は、位處なり。

敬共父命。何常之有。言廢置在父。無常位也。
【読み】
父の命を敬共せんのみ。何の常か之れ有らん。言うこころは、廢置は父に在り。常位無し。

若能孝敬、富倍季氏可也。父寵之則可富。
【読み】
若し能く孝敬ならば、富季氏に倍せんも可なり。父之を寵せば則ち富む可し。

姦回不軌、禍倍下民可也。禍甚於貧賤。
【読み】
姦回不軌ならば、禍下民に倍せんも可なり、と。禍貧賤より甚だし。

公鉏然之、敬共朝夕、恪居官次。次、舍也。
【読み】
公鉏之を然りとし、朝夕に敬共して、恪[つつし]みて官次に居れり。次は、舍なり。

季孫喜。使飮己酒、而以具往、盡舍旃。具、饗燕之具。○舍、音捨。
【読み】
季孫喜ぶ。己に酒を飮ましめよとて、具を以て往き、盡く旃を舍[お]きぬ。具は、饗燕の具。○舍は、音捨。

故公鉏氏富。又出爲公左宰。出季氏家臣、仕於公。
【読み】
故に公鉏氏富めり。又出でて公の左宰と爲れり。季氏の家臣を出でて、公に仕う。

孟孫惡臧孫、不相善。○惡、烏路反。
【読み】
孟孫は臧孫を惡み、相善からず。○惡は、烏路反。

季孫愛之。愛其成己志。
【読み】
季孫は之を愛す。其の己が志を成せるを愛す。

孟氏之御騶豐點好羯也。羯、孟莊子之庶子、孺子秩之弟、孝伯也。○騶、側留反。好、呼報反。羯、居竭反。
【読み】
孟氏の御騶豐點羯[けつ]を好す。羯は、孟莊子の庶子、孺子秩の弟、孝伯なり。○騶は、側留反。好は、呼報反。羯は、居竭反。

曰、從余言、必爲孟孫。爲孟孫後。
【読み】
曰く、余が言に從わば、必ず孟孫と爲らん、と。孟孫の後と爲らん。

再三云。羯從之。孟莊子疾。豐點謂公鉏、苟立羯、請讎臧氏。使孟氏與公鉏共憎臧孫。
【読み】
再三云う。羯之に從う。孟莊子疾む。豐點公鉏に謂えらく、苟も羯を立てば、請う、臧氏に讎せん、と。孟氏をして公鉏と共に臧孫を憎ましめんとす。

公鉏謂季孫曰、孺子秩、固其所也。固自當立。
【読み】
公鉏季孫に謂いて曰く、孺子秩は、固りて其の所なり。固より自ら當に立つべし。

若羯立、則季氏信有力於臧氏矣。臧氏因季孫之欲而爲定之、猶爲有力。今若專立孟氏之少、則季氏有力、過於臧氏。
【読み】
若し羯立たば、則ち季氏信に臧氏より力め有らん、と。臧氏季孫の欲に因りて之を定むることを爲すも、猶力め有りと爲す。今若し孟氏の少きを專立せば、則ち季氏力め有ること、臧氏より過ぐ。

弗應。己卯、孟孫卒。公鉏奉羯立于戶側。戶側、喪主。
【読み】
應えず。己卯、孟孫卒す。公鉏羯を奉じて戶側に立つ。戶側は、喪主。

季孫至、入哭而出。曰、秩焉在。公鉏曰、羯在此矣。季孫曰、孺子長。公鉏曰、何長之有。唯其才也。季孫廢鉏立紇、云欲擇才。故以此答之。
【読み】
季孫至り、入りて哭して出づ。曰く、秩は焉[いずく]に在るや、と。公鉏曰く、羯此に在り、と。季孫曰く、孺子長なり、と。公鉏曰く、何の長か之れ有らん。唯其れ才なり。季孫鉏を廢して紇を立つるに、才を擇ばんと欲すと云えり。故に此を以て之に答う。

且夫子之命也。遂誣孟孫。
【読み】
且夫子の命なり、と。遂に孟孫を誣う。

遂立羯。秩奔邾。
【読み】
遂に羯を立つ。秩邾に奔る。

臧孫入哭甚哀、多涕。出。其御曰、孟孫之惡子也、而哀如是。季孫若死、其若之何。臧孫曰、季孫之愛我、疾疢也。常志相順從、身之害。○疢、恥刃反。
【読み】
臧孫入りて哭して甚だ哀しみ、涕多し。出づ。其の御曰く、孟孫の子を惡みしも、而れども哀しむこと是の如し。季孫若し死せば、其れ之を若何、と。臧孫曰く、季孫の我を愛するは、疾疢[しっちん]なり。常に志相順從するは、身の害なり。○疢は、恥刃反。

孟孫之惡我、藥石也。常志相違戾、猶藥石之療疾。
【読み】
孟孫の我を惡めるは、藥石なり。常に志相違戾するは、猶藥石の疾を療するがごとし。

美疢不如惡石。夫石猶生我。愈己疾也。
【読み】
美疢は惡石に如かず。夫の石なるは猶我を生かす。己が疾を愈[いや]すなり。

疢之美、其毒滋多。孟孫死。吾亡無日矣。
【読み】
疢の美なるは、其の毒滋[ます]々多し。孟孫死せり。吾れ亡びんこと日無けん、と。

孟氏閉門、告於季孫、曰、臧氏將爲亂、不使我葬。欲爲公鉏讎臧氏。
【読み】
孟氏門を閉じ、季孫に告げて、曰く、臧氏將に亂を爲さんとし、我をして葬らしめず、と。公鉏が爲に臧氏に讎せんと欲す。

季孫不信。臧孫聞之、戒。戒、爲備也。
【読み】
季孫信ぜず。臧孫之を聞きて、戒む。戒は、備えを爲すなり。

冬、十月、孟氏將辟、藉除於臧氏。辟、穿藏也。於臧氏借人除葬道。○辟、婢亦反。亦甫亦反。藉、音借。又如字。藏、去聲。
【読み】
冬、十月、孟氏將に辟せんとし、除を臧氏に藉[か]る。辟は、穿藏なり。臧氏に於て人を借りて葬道を除せんとす。○辟は、婢亦反。亦甫亦反。藉は、音借。又字の如し。藏は、去聲。

臧孫使正夫助之。正夫、隧正。○隧、音遂。
【読み】
臧孫正夫をして之を助けしむ。正夫は、隧正。○隧は、音遂。

除於東門、甲從已而視之。畏孟氏。故從甲士見作者。○從、才用反。一如字。
【読み】
東門に除するとき、甲を已に從えて之を視る。孟氏を畏る。故に甲士を從えて作者を見る。○從は、才用反。一に字の如し。

孟氏又告季孫。季孫怒。命攻臧氏。見其有甲故。
【読み】
孟氏又季孫に告ぐ。季孫怒る。命じて臧氏を攻めしむ。其の甲有るを見る故なり。

乙亥、臧紇斬鹿門之關、以出奔邾。魯南城東門。
【読み】
乙亥、臧紇鹿門の關を斬りて、以て出でて邾に奔る。魯の南城の東門。

初、臧宣叔娶于鑄、生賈及爲而死。鑄國、濟北蛇丘縣所治。○蛇、音移。
【読み】
初め、臧宣叔鑄[しゅ]に娶り、賈と爲とを生みて死す。鑄國は、濟北蛇丘縣の所治。○蛇は、音移。

繼室以其姪。女子謂兄弟之子爲姪。○姪、大結反。又丈一反。
【読み】
室を繼ぐに其の姪を以てす。女子兄弟の子を謂いて姪と爲す。○姪は、大結反。又丈一反。

穆姜之姨子也。姪、穆姜姨母之子。與穆姜爲姨昆弟。
【読み】
穆姜の姨の子なり。姪は、穆姜の姨母の子。穆姜と姨昆弟爲り。

生紇。長於公宮。姜氏愛之。故立之。立爲宣叔嗣。
【読み】
紇を生む。公宮に長ず。姜氏之を愛す。故に之を立つ。立てて宣叔の嗣と爲す。

臧賈・臧爲出在鑄。還舅氏也。
【読み】
臧賈・臧爲出でて鑄に在り。舅氏に還るなり。

臧武仲自邾使告臧賈、且致大蔡焉、大蔡、大龜。
【読み】
臧武仲邾より臧賈に告げしめ、且つ大蔡を致して、大蔡は、大龜。

曰、紇不佞、失守宗祧。遠祖廟爲祧。○祧、他凋反。
【読み】
曰く、紇不佞にして、宗祧[そうちょう]を守ることを失えり。遠祖の廟を祧と爲す。○祧は、他凋反。

敢告不弔。不爲天所弔恤。
【読み】
敢えて不弔を告ぐ。天の爲に弔恤せられず。

紇之罪不及不祀。言應有後。
【読み】
紇の罪祀らざるに及ばず。言うこころは、應に後有るべし。

子以大蔡納請、其可。請爲先人立後。
【読み】
子大蔡を以て納れ請いて、其れ可なり。先人の爲に後を立てんことを請う。

賈曰、是家之禍也。非子之過也。賈聞命矣。再拜受龜、使爲以納請。賈使爲爲己請。
【読み】
賈曰く、是れ家の禍なり。子の過ちに非ざるなり。賈命を聞けり、と。再拜して龜を受け、爲をして以て納れ請わしむ。賈爲をして己が爲に請わしむ。

遂自爲也。爲、自爲請。
【読み】
遂に自ら爲にす。爲は、自ら爲に請う。

臧孫如防、防、臧孫邑。
【読み】
臧孫防に如き、防は、臧孫の邑。

使來告曰、紇非能害也。知不足也。言使甲從己、但慮事淺耳。○知、音智。
【読み】
來り告げしめて曰く、紇能く害せんとに非ざるなり。知足らざればなり。言うこころは、甲をして己に從わしめしは、但事を慮ること淺きのみ。○知は、音智。

非敢私請。爲其先人請也。
【読み】
敢えて私に請うに非ず。其の先人の爲に請うなり。

苟守先祀、無廢二勳、二勳、文仲・宣叔。
【読み】
苟も先祀を守り、二勳を廢すること無くば、二勳は、文仲・宣叔。

敢不辟邑。據邑請後。故孔子以爲要君。
【読み】
敢えて邑を辟[さ]けざらんや、と。邑に據りて後を請う。故に孔子以て君を要すと爲す。

乃立臧爲。臧紇致防而奔齊。
【読み】
乃ち臧爲を立つ。臧紇防を致して齊に奔る。

其人曰、其盟我乎。謂陳其罪惡、盟諸大夫、以爲戒。
【読み】
其の人曰く、其れ我に盟わんか、と。其の罪惡を陳べ、諸大夫に盟いて、以て戒めと爲すを謂う。

臧孫曰、無辭。廢長立少、季孫所忌。故謂無辭以罪己。
【読み】
臧孫曰く、辭無けん、と。長を廢して少を立つるは、季孫が忌む所。故に辭の以て己を罪すること無しと謂う。

將盟臧氏、季孫召外史掌惡臣、而問盟首焉。惡臣、謂奔亡者。盟首、載書之章首。
【読み】
將に臧氏に盟わんとし、季孫外史の惡臣を掌れるを召して、盟首を問う。惡臣は、奔亡する者を謂う。盟首は、載書の章首。

對曰、盟東門氏也、曰、毋或如東門遂不聽公命、殺適立庶。文公命立子惡。公子遂殺之立宣公。
【読み】
對えて曰く、東門氏に盟うや、曰く、東門遂が公命を聽かずして、適を殺して庶を立つるが如くなること或ること毋かれ、と。文公命じて子惡を立てしむ。公子遂に之を殺して宣公を立つ。

盟叔孫氏也、曰、毋或如叔孫僑如欲廢國常、蕩覆公室。謂譖公與季・孟於晉。○覆、芳服反。
【読み】
叔孫氏に盟うや、曰く、叔孫僑如が國常を廢して、公室を蕩覆せんと欲するが如くなること或ること毋かれ、と。公と季・孟とを晉に譖するを謂う。○覆は、芳服反。

季孫曰、臧孫之罪、皆不及此。孟椒曰、盍以其犯門斬關。季孫用之。乃盟臧氏曰、無或如臧孫紇干國之紀、犯門斬關。干、亦犯也。
【読み】
季孫曰く、臧孫の罪、皆此に及ばず、と。孟椒曰く、盍ぞ其の門を犯し關を斬りしを以てせざる、と。季孫之を用ゆ。乃ち臧氏に盟いて曰く、臧孫紇が國の紀を干して、門を犯し關を斬るが如くなること或ること無かれ、と。干も、亦犯すなり。

臧孫聞之曰、國有人焉。誰居。其孟椒乎。孟椒、孟獻子之孫、子服惠伯。居、猶與也。○居、音基。與、音餘。
【読み】
臧孫之を聞きて曰く、國に人有り。誰ぞや。其れ孟椒か、と。孟椒は、孟獻子の孫、子服惠伯。居は、猶與のごとし。○居は、音基。與は、音餘。

晉人克欒盈于曲沃、盡殺欒氏之族黨。欒魴出奔宋。
【読み】
晉人欒盈に曲沃に克ち、盡く欒氏の族黨を殺す。欒魴出でて宋に奔る。

書曰晉人殺欒盈、不言大夫、言自外也。自外犯君而入、非復晉大夫。
【読み】
書して晉人欒盈を殺すと曰いて、大夫と言わざるは、外よりするを言うなり。外より君を犯して入り、復晉の大夫に非ず。

齊侯還自晉、不入。不入國。
【読み】
齊侯晉より還りて、入らず。國に入らず。

遂襲莒、門于且于、且于、莒邑。○且、子餘反。
【読み】
遂に莒を襲い、且于[しょう]を門[せ]め、且于は、莒の邑。○且は、子餘反。

傷股而退。齊侯傷。
【読み】
股に傷つきて退く。齊侯傷つく。

明日、將復戰、期于壽舒。壽舒、莒地。
【読み】
明日、將に復戰わんとして、壽舒に期す。壽舒は、莒の地。

杞殖・華還載甲、夜入且于之隧、宿於莒郊。二子、齊大夫。且于隧、狹路。○殖、市力反。華、胡化反。還、音旋。
【読み】
杞殖・華還甲を載せて、夜且于の隧に入り、莒の郊に宿る。二子は、齊の大夫。且于の隧は、狹路。○殖は、市力反。華は、胡化反。還は、音旋。

明日、先遇莒子於蒲侯氏。蒲侯氏、近莒之邑。
【読み】
明日、先ず莒子に蒲侯氏に遇う。蒲侯氏は、莒に近き邑。

莒子重賂之、使無死。曰、請有盟。欲以盟要二子、無致死戰。
【読み】
莒子重く之に賂いて、死すること無からしめんとす。曰く、請う、盟うこと有らん、と。盟を以て二子に要して、死戰を致すこと無からんと欲す。

華周對曰、貪貨棄命、亦君所惡也。華周、卽華還。
【読み】
華周對えて曰く、貨を貪りて命を棄つるは、亦君の惡む所なり。華周は、卽ち華還。

昏而受命、日未中而棄之、何以事君。莒子親鼓之、從而伐之。獲杞梁。杞梁、卽杞殖。
【読み】
昏にして命を受け、日未だ中せずして之を棄てば、何を以て君に事えん、と。莒子親ら之に鼓ち、從いて之を伐つ。杞梁を獲たり。杞梁は、卽ち杞殖。

莒人行成。勝大國益懼。故行成。
【読み】
莒人成[たい]らぎを行う。大國に勝ちて益々懼る。故に成らぎを行う。

齊侯歸、遇杞梁之妻於郊、梁戰死。妻行迎喪。
【読み】
齊侯歸り、杞梁の妻に郊に遇い、梁戰死す。妻行きて喪を迎う。

使弔之。辭曰、殖之有罪、何辱命焉。言若有罪、不足弔。
【読み】
之を弔わしむ。辭して曰く、殖が罪有らば、何ぞ命を辱くせん。言うこころは、若し罪有らば、弔するに足らず。

若免於罪、猶有先人之敝廬在。下妾不得與郊弔。婦人無外事故。下、猶賤也。○與、音預。
【読み】
若し罪に免れば、猶先人の敝廬の在る有り。下妾郊弔に與ることを得ず、と。婦人は外事無き故なり。下は、猶賤しきがごとし。○與は、音預。

齊侯弔諸其室。傳善婦人有禮。
【読み】
齊侯諸を其の室に弔う。傳婦人禮有るを善す。

齊侯將爲臧紇田。與之田邑。
【読み】
齊侯將に臧紇が田を爲さんとす。之に田邑を與う。

臧孫聞之、見齊侯、與之言伐晉。齊侯自道伐晉之功。○見、賢遍反。齊侯、絕句。
【読み】
臧孫之を聞きて、齊侯に見え、之と晉を伐ちしことを言う。齊侯自ら晉を伐つの功を道[い]う。○見は、賢遍反。齊侯は、絕句。

對曰、多則多矣。抑君似鼠。夫鼠晝伏夜動、不穴於寢廟、畏人故也。今君聞晉之亂、而後作焉、作、起兵也。
【読み】
對えて曰く、多なることは則ち多なり。抑[そも]々君は鼠に似たり。夫れ鼠は晝伏し夜動き、寢廟に穴せざるは、人を畏るる故なり。今君晉の亂を聞きて、而して後に作すも、作は、兵を起こすなり。

寧將事之。非鼠如何。乃弗與田。臧孫知齊侯將敗、不欲受其邑。故以比鼠。欲使怒而止。
【読み】
寧[やす]くば將に之に事えんとす。鼠に非ずして如何、と。乃ち田を與えず。臧孫齊侯の將に敗れんとするを知り、其の邑を受けんことを欲せず。故に以て鼠に比す。怒りて止めしめんことを欲するなり。

仲尼曰、知之難也、有臧武仲之知、謂能辟齊禍。○知、音智。下同。
【読み】
仲尼曰く、知の難きや、臧武仲の知有りて、能く齊の禍を辟くるを謂う。○知は、音智。下も同じ。

而不容於魯國、抑有由也。作不順、而施不恕也。夏書曰、念玆在玆、逸書也。念此事在此身。言行事當常念如在己身也。
【読み】
魯國に容れられざるは、抑々由有り。作すこと順ならずして、施すこと恕せざればなり。夏書に曰く、玆を念うこと玆に在りとは、逸書なり。此の事を念うは此の身に在り。言うこころは、事を行うこと當に常に念いて己が身に在るが如くなるべし。

順事恕施也。
【読み】
事を順にし施を恕にするなり。


〔經〕二十有四年、春、叔孫豹如晉。賀克欒氏。
【読み】
〔經〕二十有四年、春、叔孫豹晉に如く。欒氏に克つを賀す。

仲孫羯帥師侵齊。夏、楚子伐吳。秋、七月、甲子、朔、日有食之。旣。無傳。
【読み】
仲孫羯[ちゅうそんけつ]師を帥いて齊を侵す。夏、楚子吳を伐つ。秋、七月、甲子[きのえ・ね]、朔、日之を食する有り。旣く。傳無し。

齊崔杼帥師伐莒。大水。無傳。
【読み】
齊の崔杼師を帥いて莒を伐つ。大水あり。傳無し。

八月、癸巳、朔、日有食之。無傳。
【読み】
八月、癸巳[みずのと・み]、朔、日之を食する有り。傳無し。

公會晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子于夷儀。冬、楚子・蔡侯・陳侯・許男伐鄭。公至自會。無傳。
【読み】
公晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に夷儀に會す。冬、楚子・蔡侯・陳侯・許男鄭を伐つ。公會より至る。傳無し。

陳鍼宜咎出奔楚。陳鍼子八世孫。慶氏之黨。書名、惡之也。○鍼、其廉反。惡、烏路反。
【読み】
陳の鍼宜咎[けんぎきゅう]出でて楚に奔る。陳の鍼子八世の孫。慶氏の黨。名を書すは、之を惡みてなり。○鍼は、其廉反。惡は、烏路反。

叔孫豹如京師。大饑。無傳。
【読み】
叔孫豹京師に如く。大いに饑ゆ。傳無し。

〔傳〕二十四年、春、穆叔如晉。范宣子逆之。問焉曰、古人有言曰、死而不朽。何謂也。穆叔未對。宣子曰、昔匃之祖、自虞以上爲陶唐氏、陶唐、堯所治地。大原晉陽縣也。終虞之世以爲號。故曰、自虞以上。
【読み】
〔傳〕二十四年、春、穆叔晉に如く。范宣子之を逆う。問いて曰く、古人言えること有り曰く、死して朽ちず、と。何の謂いぞや。穆叔未だ對えず。宣子曰く、昔匃[かい]の祖、虞より以上を陶唐氏と爲し、陶唐は、堯の治むる所の地。大原晉陽縣なり。虞の世を終うるまで以て號と爲す。故に曰く、虞より以上、と。

在夏爲御龍氏、謂劉累也。事見昭二十九年。
【読み】
夏に在りては御龍氏と爲し、劉累を謂うなり。事昭二十九年に見ゆ。

在商爲豕韋氏、豕韋、國名。東郡白馬縣東南有韋城。
【読み】
商に在りては豕韋氏[しいし]と爲し、豕韋は、國の名。東郡白馬縣の東南に韋城有り。

在周爲唐・杜氏、唐・杜、二國名。殷末豕韋國於唐。周成王滅唐、遷之於杜。爲杜伯。杜伯之子隰叔奔晉。四世及士會、食邑於范、復爲范氏。杜、今京兆杜縣。
【読み】
周に在りては唐・杜氏と爲し、唐・杜は、二國の名。殷の末豕韋唐に國す。周の成王唐を滅ぼして、之を杜に遷す。杜伯と爲す。杜伯の子隰叔[しゅうしゅく]晉に奔る。四世にして士會に及びて、范に食邑し、復范氏と爲る。杜は、今の京兆杜縣。

晉主夏盟爲范氏。其是之謂乎。晉爲諸夏盟主、范氏復爲之佐。言己世爲興家。
【読み】
晉夏の盟を主りてより范氏と爲れり。其れ是を謂うか、と。晉諸夏の盟主と爲り、范氏復之が佐と爲る。言うこころは、己世々興家爲り。

穆叔曰、以豹所聞、此之謂世祿。非不朽也。魯有先大夫、曰臧文仲。旣沒、其言立。立、謂不廢絕。
【読み】
穆叔曰く、豹が聞く所を以てすれば、此を之れ世祿と謂う。朽ちざるに非ざるなり。魯に先大夫有り、臧文仲と曰う。旣に沒すれども、其の言立てり。立つとは、廢絕せざるを謂う。

其是之謂乎。豹聞之、大上有立德。黃帝・堯・舜。○大、音泰。
【読み】
其れ是を之れ謂うか。豹之を聞く、大上は德を立つること有り。黃帝・堯・舜。○大は、音泰。

其次有立功。禹・稷。
【読み】
其の次は功を立つること有り。禹・稷。

其次有立言。史佚・周任・臧文仲。
【読み】
其の次は言を立つること有り。史佚・周任・臧文仲。

雖久不廢、此之謂不朽。若夫保姓受氏、以守宗祊、祊、廟門。○祊、布彭反。
【読み】
久しと雖も廢らざる、此を之れ不朽と謂う、と。若し夫れ姓を保ち氏を受けて、以て宗祊[そうほう]を守り、祊は、廟門。○祊は、布彭反。

世不絕祀、無國無之。祿之大者。不可謂不朽。傳善穆叔之知言。
【読み】
世々祀を絕たざるは、國として之れ無きは無し。祿の大なる者なるのみ。不朽と謂う可からず、と。傳穆叔の言を知るを善す。

范宣子爲政、諸侯之幣重。鄭人病之。二月、鄭伯如晉。子產寓書於子西、以告宣子、寓、寄也。
【読み】
范宣子政を爲して、諸侯の幣重し。鄭人之を病[うれ]う。二月、鄭伯晉に如く。子產書を子西に寓[よ]せて、以て宣子に告げて、寓は、寄するなり。

曰、子爲晉國、四鄰諸侯、不聞令德、而聞重幣。僑也惑之。僑聞君子長國家者、非無賄之患、而無令名之難。夫諸侯之賄、聚於公室、則諸侯貳。貳、離也。○長、丁丈反。
【読み】
曰く、子晉國を爲[おさ]めて、四鄰の諸侯、令德を聞かずして、重幣を聞く。僑や之に惑いぬ。僑聞く、君子の國家に長たる者は、賄無きを患えとするに非ずして、令名無きを難[なや]みとす、と。夫れ諸侯の賄、公室に聚まらば、則ち諸侯貳[はな]れん。貳は、離るるなり。○長は、丁丈反。

若吾子賴之、則晉國貳。賴、恃用之。
【読み】
若し吾子之に賴らば、則ち晉國貳れん。賴は、之を恃み用ゆるなり。

諸侯貳、則晉國壞。晉國貳、則子之家壞。何沒沒也、沒沒、沈滅之言。○沒、如字。一音妹。
【読み】
諸侯貳れば、則ち晉國壞[やぶ]れん。晉國貳れば、則ち子の家壞れん。何ぞ沒沒たる、沒沒は、沈滅の言。○沒は、字の如し。一に音妹。

將焉用賄。夫令名、德之輿也。德須令名以遠聞。○聞、音問。又如字。
【読み】
將に焉[いずく]に賄を用いんとする。夫れ令名は、德の輿なり。德は令名を須て以て遠く聞こゆ。○聞は、音問。又字の如し。

德、國家之基也。有基無壞。無亦是務乎。有德則樂。樂則能久。詩云、樂君子、邦家之基、有令德也夫。詩、小雅。言君子樂美其道、爲邦家之基。所以濟令德。○樂樂、竝音洛。
【読み】
德は、國家の基なり。基有れば壞るること無し。亦是を務むること無からんや。德有れば則ち樂しむ。樂しめば則ち能く久し。詩に云う、樂しみある君子は、邦家の基なりとは、令德有ればなるかな。詩は、小雅。言うこころは、君子其の道を樂美にして、邦家の基を爲す。令德を濟す所以なり。○樂樂は、竝音洛。
*「旨」は漢籍國字解全書では「只」。

上帝臨女、無貳爾心、有令名也夫。詩、大雅。言武王爲天所臨、不敢懷貳心。所以濟令名。○女、音汝。
【読み】
上帝女に臨み、爾の心に貳あること無しとは、令名有ればなるかな。詩は、大雅。言うこころは、武王天の爲に臨まれ、敢えて貳心を懷かず。令名を濟す所以なり。○女は、音汝。

恕思以明德、則令名載而行之。是以遠至邇安。毋寧使人謂子、子實生我。毋寧、寧也。
【読み】
恕思して以て德を明らかにすれば、則ち令名載せて之を行う。是を以て遠きは至り邇きは安し。毋寧[むし]ろ人をして子を謂わしめよ、子實に我を生ず、と。毋寧は、寧ろなり。

而謂子浚我以生乎。浚、取也。言取我財以自生。
【読み】
而るを子を我に浚[と]りて以て生ずと謂わせんか。浚は、取るなり。言うこころは、我が財を取りて以て自ら生ず。

象有齒以焚其身。賄也。焚、斃也。
【読み】
象に齒有りて以て其の身を焚[たお]す。賄あればなり、と。焚は、斃るるなり。

宣子說。乃輕幣。
【読み】
宣子說ぶ。乃ち幣を輕くす。

是行也、鄭伯朝晉、爲重幣故。且請伐陳也。鄭伯稽首。宣子辭。子西相、曰、以陳國之介恃大國、而陵虐於敝邑、介、因也。大國、楚也。
【読み】
是の行や、鄭伯晉に朝するは、重幣の爲の故なり。且つ陳を伐たんことを請うなり。鄭伯稽首す。宣子辭す。子西相けて、曰く、陳國の大國に介恃して、敝邑を陵虐するを以て、介は、因るなり。大國は、楚なり。

寡君是以請罪焉。請得罪於陳也。
【読み】
寡君是を以て罪を請う。罪を得ることを陳に請うなり。

敢不稽首。爲明年、鄭入陳傳。
【読み】
敢えて稽首せざらんや、と。明年、鄭陳に入る爲の傳なり。

孟孝伯侵齊、晉故也。前年齊伐晉。魯爲晉報侵。
【読み】
孟孝伯齊を侵すは、晉の故なり。前年齊晉を伐つ。魯晉の爲に報侵す。

夏、楚子爲舟師以伐吳。舟師、水軍。
【読み】
夏、楚子舟師を爲して以て吳を伐つ。舟師は、水軍。

不爲軍政、不設賞罰之差。
【読み】
軍政を爲さざりしかば、賞罰の差を設けず。

無功而還。爲下吳召舒鳩起本。
【読み】
功無くして還る。下の吳舒鳩を召す爲の起本なり。

齊侯旣伐晉而懼。將欲見楚子。楚子使薳啓彊如齊聘、且請期。請會期。○彊、其良反。又居良反。
【読み】
齊侯旣に晉を伐ちて懼る。將に楚子を見んと欲す。楚子薳啓彊[いけいきょう]をして齊に如きて聘し、且つ期を請わしむ。會期を請うなり。○彊は、其良反。又居良反。

齊社。蒐軍實、使客觀之。祭社、因閱數軍器、以示薳啓彊。
【読み】
齊社す。軍實を蒐[けみ]して、客をして之を觀せしむ。社を祭り、因りて軍器を閱數して、以て薳啓彊に示す。

陳文子曰、齊將有寇。吾聞之、兵不戢、必取其族。戢、藏也。族、類也。取其族、還自害也。○戢、側立反。
【読み】
陳文子曰く、齊將に寇有らんとす。吾れ之を聞く、兵戢[おさ]めざれば、必ず其の族を取る、と。戢[しゅう]は、藏むるなり。族は、類なり。其の族を取るとは、還って自ら害するなり。○戢は、側立反。

秋、齊侯聞將有晉師、夷儀之師。
【読み】
秋、齊侯將に晉の師有らんとすと聞き、夷儀の師。

使陳無宇從薳啓彊如楚辭、且乞師。辭有晉師、未得相見。
【読み】
陳無宇をして薳啓彊に從いて楚に如きて辭し、且つ師を乞わしむ。晉の師有り、未だ相見ることを得ざることを辭す。

崔杼帥師送之、遂伐莒、侵介根。介根、莒邑。今城陽黔陬縣東北計基城、是也。齊旣與莒平、因兵出侵之、言無信也。○黔、其廉反。又其今反。陬、側留反。
【読み】
崔杼師を帥いて之を送り、遂に莒を伐ちて、介根を侵す。介根は、莒の邑。今の城陽黔陬縣の東北の計基城、是れなり。齊旣に莒と平らぎ、兵の出づるに因りて之を侵すは、信無きを言うなり。○黔は、其廉反。又其今反。陬は、側留反。

會于夷儀、將以伐齊。水不克。晉合諸侯、以報前年見伐。
【読み】
夷儀に會するは、將に以て齊を伐たんとするなり。水ありて克わず。晉諸侯を合わせて、以て前年伐たるるに報ゆ。

冬、楚子伐鄭以救齊、門于東門、次于棘澤。以齊無宇乞師故也。
【読み】
冬、楚子鄭を伐ちて以て齊を救い、東門を門め、棘澤に次る。齊の無宇師を乞うを以ての故なり。

諸侯還救鄭。夷儀諸侯。
【読み】
諸侯還りて鄭を救う。夷儀の諸侯。

晉侯使張骼・輔躒致楚師、求御于鄭。欲得鄭人自御。知其地利故也。○骼、庚百反。一古洛反。躒、力狄反。又音洛。
【読み】
晉侯張骼[ちょうかく]・輔躒[ほれき]をして楚の師を致さしめんとして、御を鄭に求む。鄭人を得て自ら御せんと欲す。其の地利を知る故なり。○骼は、庚百反。一に古洛反。躒は、力狄反。又音洛。

鄭人卜、宛射犬吉。射犬、鄭公孫。○宛、於元反。射、食亦反。
【読み】
鄭人卜するに、宛射犬吉なり。射犬は、鄭の公孫。○宛は、於元反。射は、食亦反。

子大叔戒之曰、大國之人、不可與也。言不可與等也。欲使卑下之。大叔、游吉。○大叔、音泰。
【読み】
子大叔之を戒めて曰く、大國の人は、與にす可からざるなり、と。言うこころは、與に等しくす可からざるなり。之に卑下せしめんと欲す。大叔は、游吉。○大叔は、音泰。

對曰、無有衆寡、其上一也。言在己上者有常分、無大小國之異。
【読み】
對えて曰く、衆寡有ること無く、其の上は一なり、と。言うこころは、己が上に在る者は常の分有り、大小國の異なる無し。

大叔曰、不然。部婁無松柏。部婁、小阜。松柏、大木。喩小國異於大國。○部、蒲口反。又扶苟反。婁、路口反。又力侯反。
【読み】
大叔曰く、然らず。部婁[ほうろう]に松柏無し、と。部婁は、小阜。松柏は、大木。小國大國に異なるに喩う。○部は、蒲口反。又扶苟反。婁は、路口反。又力侯反。

二子在幄、坐射犬于外、二子、張骼・輔躒。幄、帳也。
【読み】
二子幄に在り、射犬を外に坐せしめ、二子は、張骼・輔躒。幄は、帳なり。

旣食而後食之。使御廣車而行、廣車、兵車。○後食、音嗣。廣、古曠反。
【読み】
旣に食して而して後に之を食わしむ。廣車を御して行かしめて、廣車は、兵車。○後食は、音嗣。廣は、古曠反。

己皆乘乘車。乘車、安車。
【読み】
己は皆乘車に乘る。乘車は、安車。

將及楚師、而後從之乘、皆踞轉而鼓琴。轉、衣裝。○轉、張戀反。
【読み】
將に楚の師に及ばんとして、而して後に之に從いて乘り、皆轉に踞して琴を鼓[ひ]く。轉は、衣裝。○轉は、張戀反。

近。不告而馳之。射大恨。故近敵不告而馳。
【読み】
近づく。告げずして之に馳す。射大いに恨む。故に敵に近づけども告げずして馳す。

皆取冑於櫜而冑、入壘皆下、搏人以投、收禽挾囚。禽、獲也。○櫜、古毛反。挾、音協。
【読み】
皆冑を櫜[こう]に取りて冑をき、壘に入りて皆下り、人を搏[う]ちて以て投げ、禽を收めて囚を挾む。禽は、獲なり。○櫜は、古毛反。挾は、音協。

弗待而出。射犬又不待二子。
【読み】
待たずして出づ。射犬又二子を待たず。

皆超乘、抽弓而射。旣免、復踞轉而鼓琴。曰、公孫、同乘兄弟也。言同乘、義如兄弟。
【読み】
皆超乘し、弓を抽[ひ]きて射る。旣に免れ、復轉に踞して琴を鼓く。曰く、公孫、同乘は兄弟なり。言うこころは、同乘は、義兄弟の如し。

胡再不謀。謂不告而馳、不待而出。
【読み】
胡ぞ再び謀らざる、と。告げずして馳せ、待たずして出づるを謂う。

對曰、曩者志入而已。今則怯也。皆笑曰、公孫之亟也。亟、急也。言其性急、不能受屈。
【読み】
對えて曰く、曩[さき]には入るに志すのみ。今は則ち怯なり、と。皆笑いて曰く、公孫の亟なるや、と。亟は、急なり。言うこころは、其れ性急にして、屈を受くること能わず。

楚子自棘澤還、使薳啓彊帥師送陳無宇。傳言齊・楚固相結也。
【読み】
楚子棘澤より還り、薳啓彊をして師を帥いて陳無宇を送らしむ。傳齊・楚固く相結ぶを言うなり。

吳人爲楚舟師之役故、在此年夏。○爲、于僞反。
【読み】
吳人楚の舟師の役の爲の故に、此の年の夏に在り。○爲は、于僞反。

召舒鳩人。舒鳩人叛楚。舒鳩、楚屬國。召欲與共伐楚。
【読み】
舒鳩人を召[よ]ぶ。舒鳩人楚に叛く。舒鳩は、楚の屬國。召びて與に共に楚を伐たんと欲す。

楚子師于荒浦、荒浦、舒鳩地。
【読み】
楚子荒浦に師し、荒浦は、舒鳩の地。

使沈尹壽與師祁犂讓之。二子、楚大夫。
【読み】
沈尹壽と師祁犂とをして之を讓[せ]めしむ。二子は、楚の大夫。

舒鳩子敬逆二子、而告無之、且請受盟。二子復命。王欲伐之。薳子曰、不可。令尹薳子馮。
【読み】
舒鳩子敬みて二子を逆えて、之れ無しと告げ、且つ盟を受けんと請う。二子復命す。王之を伐たんと欲す。薳子[いし]曰く、不可なり。令尹薳子馮。

彼告不叛、且請受盟。而又伐之、伐無罪也。姑歸息民、以待其卒。卒、終也。
【読み】
彼れ叛かずと告げ、且つ盟を受けんと請う。而るを又之を伐つは、罪無きを伐つなり。姑く歸りて民を息めて、以て其の卒わりを待たん。卒は、終わりなり。

卒而不貳、吾又何求。若猶叛我、無辭有庸。乃還。彼無辭、我有功。爲明年、楚滅舒鳩傳。
【読み】
卒わりにして貳あらざれば、吾又何をか求めん。若し猶我に叛かば、辭無くして庸有り、と。乃ち還る。彼れ辭無く、我れ功有り。明年、楚舒鳩を滅ぼす爲の傳なり。

陳人復討慶氏之黨。鍼宜咎出奔楚。言宜咎所以稱名。
【読み】
陳人復慶氏の黨を討ず。鍼宜咎出でて楚に奔る。宜咎が名を稱する所以を言う。

齊人城郟。郟、王城也。於是穀雒鬭毀王宮。齊叛晉、欲求媚於天子。故爲王城之。○郟、古洽反。
【読み】
齊人郟[こう]に城く。郟は、王城なり。是に於て穀雒鬭いて王宮を毀る。齊晉に叛き、媚を天子に求めんと欲す。故に王の爲に之を城く。○郟は、古洽反。

穆叔如周聘、且賀城。王嘉其有禮也、賜之大路。大路、天子所賜車之揔名。爲昭四年、叔孫以所賜路葬張本。
【読み】
穆叔周に如きて聘し、且つ城を賀す。王其の禮有るを嘉し、之に大路を賜う。大路は、天子賜う所の車の揔名。昭四年、叔孫賜う所の路を以て葬る爲の張本なり。

晉侯嬖程鄭、使佐下軍。代欒盈也。
【読み】
晉侯程鄭を嬖し、下軍に佐たらしむ。欒盈に代わるなり。

鄭行人公孫揮如晉聘。揮、子羽也。
【読み】
鄭の行人公孫揮晉に如きて聘す。揮は、子羽なり。

程鄭問焉、曰、敢問降階何由。問自降下之道。
【読み】
程鄭問いて、曰く、敢えて問う、降階は何[いずく]に由らん、と。自ら降下するの道を問う。

子羽不能對。歸以語然明。然明、鬷蔑。○語、魚據反。鬷、子公反。
【読み】
子羽對うること能わず。歸りて以て然明に語る。然明は、鬷蔑[そうべつ]。○語は、魚據反。鬷は、子公反。

然明曰、是將死矣。不然將亡。貴而知懼、懼而思降、乃得其階。階、猶道也。
【読み】
然明曰く、是れ將に死せんとす。然らずんば將に亡せんとす。貴くして懼れを知り、懼れて降らんことを思えば、乃ち其の階を得。階は、猶道のごとし。

下人而已。又何問焉。言易知。
【読み】
人に下らんのみ。又何ぞ問わん。言うこころは、知り易し。

且夫旣登而求降階者、知人也。不在程鄭。其有亡釁乎。不然、其有惑疾、將死而憂也。言鄭本小人。爲明年、程鄭卒張本。○知、音智。
【読み】
且つ夫れ旣に登りて降階を求むる者は、知人なり。程鄭に在らず。其れ亡釁有らんか。然らずんば、其れ惑疾有りて、將に死せんとして憂うるならん、と。言うこころは、鄭は本小人なり。明年、程鄭卒する爲の張本なり。○知は、音智。


〔經〕二十有五年、春、齊崔杼帥師伐我北鄙。夏、五月、乙亥、齊崔杼弑其君光。齊侯雖背盟主、未有無道於民。故書臣、罪崔杼也。
【読み】
〔經〕二十有五年、春、齊の崔杼師を帥いて我が北鄙を伐つ。夏、五月、乙亥[きのと・い]、齊の崔杼其の君光を弑す。齊侯盟主に背くと雖も、未だ民に無道有らず。故に臣を書すは、崔杼を罪するなり。

公會晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子・滕子・薛伯・杞伯・小邾子于夷儀。六月、壬子、鄭公孫舍之帥師入陳。子產之言、陳以不義見人。故舍之無譏。釋例詳之。
【読み】
公晉侯・宋公・衛侯・鄭伯・曹伯・莒子・邾子[ちゅし]・滕子・薛伯・杞伯・小邾子に夷儀に會す。六月、壬子[みずのえ・ね]、鄭の公孫舍之師を帥いて陳に入る。子產の言に、陳不義を以て人を見る、と。故に舍之譏ること無し。釋例之を詳らかにす。

秋、八月、己巳、諸侯同盟于重丘。夷儀之諸侯也。重丘、齊地。己巳、七月十一日。經誤。○重、直龍反。
【読み】
秋、八月、己巳[つちのと・み]、諸侯重丘に同盟す。夷儀の諸侯なり。重丘は、齊の地。己巳は、七月十一日。經の誤りなり。○重は、直龍反。

公至自會。無傳。
【読み】
公會より至る。傳無し。

衛侯入于夷儀。夷儀、本邢地。衛滅邢而爲衛邑。晉愍衛衎失國、使衛分之一邑。書入者、自外而入之辭。非國逆之例。○衎、苦旦反。
【読み】
衛侯夷儀に入る。夷儀は、本邢の地。衛邢を滅ぼして衛の邑と爲る。晉衛の衎[かん]國を失えるを愍[あわ]れみて、衛をして之に一邑を分けしむ。入ると書すは、外よりして入るの辭。國逆の例に非ず。○衎は、苦旦反。

楚屈建帥師滅舒鳩。傳在衛侯入夷儀上、經在下、從告。
【読み】
楚の屈建師を帥いて舒鳩を滅ぼす。傳は衛侯夷儀に入るの上に在り、經は下に在るは、告ぐるに從うなり。

冬、鄭公孫夏帥師伐陳。陳猶未服。
【読み】
冬、鄭の公孫夏師を帥いて陳を伐つ。陳猶未だ服せず。

十有二月、吳子遏伐楚、門于巢。卒。遏、諸樊也。爲巢牛臣所殺。不書滅者、楚人不獲其尸、吳以卒告。未同盟而赴以名。○遏、音頞。又音謁。
【読み】
十有二月、吳子遏[あつ]楚を伐ち、巢を門[せ]む。卒す。遏は、諸樊なり。巢の牛臣の爲に殺さる。滅を書さざるは、楚人其の尸を獲ず、吳卒を以て告ぐればなり。未だ同盟せずして赴[つ]ぐるに名を以てす。○遏は、音頞。又音謁。

〔傳〕二十五年、春、齊崔杼帥師伐我北鄙、以報孝伯之師也。前年、魯使孟孝伯爲晉伐齊。
【読み】
〔傳〕二十五年、春、齊の崔杼師を帥いて我が北鄙を伐つは、以て孝伯の師に報ゆるなり。前年、魯孟孝伯をして晉の爲に齊を伐たしむ。

公患之、使告于晉。孟公綽曰、崔子將有大志。志在弑君。孟公綽、魯大夫。
【読み】
公之を患え、晉に告げしめんとす。孟公綽曰く、崔子將に大志有らんとす。志君を弑するに在り。孟公綽は、魯の大夫。

不在病我。必速歸。何患焉。其來也不寇、不爲寇害。
【読み】
我を病ましむるに在らず。必ず速やかに歸らん。何ぞ患えん。其の來るや寇せず、寇害を爲さず。

使民不嚴。欲得民心。
【読み】
民を使うこと嚴ならず。民心を得んことを欲す。

異於他日。齊師徒歸。徒、空也。
【読み】
他日に異なり、と。齊の師徒[むな]しく歸る。徒は、空しきなり。

齊棠公之妻、東郭偃之姊也。棠公、齊棠邑大夫。
【読み】
齊の棠公[とうこう]の妻は、東郭偃の姊なり。棠公は、齊の棠邑の大夫。

東郭偃臣崔武子。棠公死。偃御武子以弔焉。見棠姜而美之、美其色也。
【読み】
東郭偃崔武子に臣たり。棠公死す。偃武子に御して以て弔う。棠姜を見て之を美とし、其の色を美とす。

使偃取之。爲己取也。○取、如字。又七住反。
【読み】
偃をして之を取[めと]らしめんとす。己が爲に取るなり。○取は、字の如し。又七住反。

偃曰、男女辨姓。辨、別也。
【読み】
偃曰く、男女は姓を辨つ。辨は、別つなり。

今君出自丁、齊丁公、崔杼之祖。
【読み】
今君は丁より出で、齊の丁公は、崔杼の祖。

臣出自桓。不可。齊桓公小白、東郭偃之祖。同姜姓。故不可昏。
【読み】
臣は桓より出づ。不可なり。齊の桓公小白は、東郭偃の祖。同じく姜姓なり。故に昏す可からず。

武子筮之。遇困 坎下兌上、困。
【読み】
武子之を筮す。困 坎下兌上は、困。

之大過巽下兌上、大過。困六三變爲大過。
【読み】
大過に之くに遇う。巽下兌上は、大過。困の六三變じて大過と爲る。

史皆曰、吉。阿崔子。
【読み】
史皆曰く、吉なり、と。崔子に阿る。

示陳文子。文子曰、夫從風。坎爲中男。故曰夫。變而爲巽。故曰從風。
【読み】
陳文子に示す。文子曰く、夫風に從えり。坎を中男と爲す。故に夫と曰う。變じて巽と爲る。故に風に從うと曰う。

風隕。妻不可娶也。風能隕落物者。變而隕落。故曰妻不可娶。
【読み】
風隕[おと]す。妻娶る可からざるなり。風は能く物を隕落する者なり。變じて隕落す。故に妻娶る可からずと曰う。

且其繇曰、困于石、據于蒺藜。入于其宮、不見其妻。凶。困六三爻辭。○繇、直又反。
【読み】
且つ其の繇[ちゅう]に曰く、石に困しみ、蒺藜に據る。其の宮に入りて、其の妻を見ず。凶なり、と。困の六三の爻辭。○繇は、直又反。

困于石、往不濟也。坎爲險、爲水。水之險者石。不可以動。
【読み】
石に困しむとは、往きて濟らざるなり。坎を險と爲し、水と爲す。水の險なる者は石なり。以て動かす可からず。

據于蒺藜、所恃傷也。坎爲險、兌爲澤。澤之生物而險者蒺藜。恃之則傷。
【読み】
蒺藜に據るとは、恃む所にして傷つくなり。坎を險と爲し、兌を澤と爲す。澤の物を生じて險なる者は蒺藜なり。之を恃めば則ち傷つく。

入于其宮、不見其妻、凶、無所歸也。易曰、非所困而困、名必辱。非所據而據、身必危。旣辱且危、死期將至。妻其可得見邪。今卜昏而遇此卦。六三失位無應、則喪其妻、失其所歸也。
【読み】
其の宮に入りて、其の妻を見ず、凶なりとは、歸する所無きなり、と。易に曰く、困しむ所に非ずして困しめば、名必ず辱めらる。據る所に非ずして據れば、身必ず危うし。旣に辱められ且つ危うければ、死期將に至らんとす。妻其れ見ることを得可けんや、と。今昏を卜して此の卦に遇う。六三位を失いて應無きは、則ち其の妻を喪いて、其の歸する所を失うなり。

崔子曰、嫠也。何害。先夫當之矣。寡婦曰嫠。言棠公已當此凶。
【読み】
崔子曰く、嫠[り]なり。何の害あらん。先夫之に當たれり、と。寡婦を嫠と曰う。言うこころは、棠公已に此の凶に當たれり。

遂取之。
【読み】
遂に之を取る。

莊公通焉、驟如崔氏。以崔子之冠賜人。侍者曰、不可。公曰、不爲崔子、其無冠乎。言雖不爲崔子、猶自應有冠。
【読み】
莊公通じ、驟[しば]々崔氏に如く。崔子の冠を以て人に賜う。侍者曰く、不可なり、と。公曰く、崔子爲らずとも、其れ冠無からんや、と。言うこころは、崔子爲らずと雖も、猶自ずから冠有る應し。

崔子因是。因是怒公。
【読み】
崔子是に因れり。是に因りて公を怒る。

又以其閒伐晉也、閒晉之難而伐之。
【読み】
又其の閒して晉を伐ちしを以てや、晉の難を閒して之を伐つ。

曰、晉必將報。欲弑公以說于晉。而不獲閒。公鞭侍人賈舉、而又近之。乃爲崔子閒公。伺公閒隙。○說、音悅。又如字。爲、去聲。下同。
【読み】
曰く、晉必ず將に報いんとす、と。公を弑して以て晉に說かんことを欲す。而れども閒を獲ず。公侍人賈舉を鞭ちて、又之を近づく。乃ち崔子の爲に公を閒す。公の閒隙を伺う。○說は、音悅。又字の如し。爲は、去聲。下も同じ。

夏、五月、莒爲且于之役故、莒子朝于齊。且于役、在二十三年。○且、音疽。
【読み】
夏、五月、莒且于の役の爲の故に、莒子齊に朝す。且于の役は、二十三年に在り。○且は、音疽。

甲戌、饗諸北郭。崔子稱疾不視事。欲使公來。
【読み】
甲戌[きのえ・いぬ]、諸を北郭に饗す。崔子疾を稱して事を視ず。公をして來らしめんと欲す。

乙亥、公問崔子、問疾。
【読み】
乙亥、公崔子を問い、疾を問う。

遂從姜氏。姜入于室、與崔子自側戶出。公拊楹而歌。歌以命姜。拊、芳甫反。
【読み】
遂に姜氏に從う。姜室に入り、崔子と側戶より出づ。公楹[えい]を拊[う]ちて歌う。歌いて以て姜に命ず。拊は、芳甫反。

侍人賈舉止衆從者而入、閉門。爲崔子閉公也。重言侍人者、別下賈舉。
【読み】
侍人賈舉衆從者を止めて入り、門を閉ず。崔子の爲に公を閉ずるなり。重ねて侍人と言うは、下の賈舉に別つなり。

甲興。公登臺而請。弗許。請免。
【読み】
甲興る。公臺に登りて請う。許さず。免れんことを請う。

請盟。弗許。請自刃於廟。弗許。求還廟自殺也。
【読み】
盟を請う。許さず。廟に自刃せんと請う。許さず。廟に還りて自殺せんことを求むるなり。

皆曰、君之臣杼疾病、不能聽命。不能親聽公命。
【読み】
皆曰く、君の臣杼疾病にして、命を聽くこと能わず。親ら公命を聽くこと能わず。

近於公宮、言崔子宮近公宮、或淫者詐稱公。
【読み】
公宮に近ければ、言うこころは、崔子の宮公宮に近ければ、或は淫者詐りて公と稱するならん。

陪臣干掫、有淫者。不知二命。干掫、行夜。言行夜得淫人、受崔子命討之。不知他命。○干、讀曰犴。胡旦反。又如字。掫、側留反。又子倶反。一音陬。說文、掫、夜戒有所擊也。行、去聲。
【読み】
陪臣干掫[かんしゅう]するに、淫者有り。二命を知らず、と。干掫は、行夜なり。言うこころは、行夜して淫人を得て、崔子の命を受けて之を討ず。他命を知らず。○干は、讀んで犴と曰う。胡旦反。又字の如し。掫は、側留反。又子倶反。一に音陬。說文に、掫は、夜戒して擊つ所有るなり。行は、去聲。

公踰牆。又射之。中股。反隊。遂弑之。
【読み】
公牆を踰えんとす。又之を射る。股に中つ。反り隊[お]つ。遂に之を弑す。

賈舉・州綽・邴師・公孫敖・封具・鐸父・襄伊・僂堙皆死。八子、皆齊勇力之臣。爲公所嬖者。與公共死於崔子之宮。○射、食亦反。中、丁仲反。隊、直類反。僂、力侯反。堙、音因。
【読み】
賈舉・州綽・邴師[へいし]・公孫敖・封具・鐸父・襄伊・僂堙[ろういん]皆死す。八子は、皆齊の勇力の臣。公の爲に嬖せらる者。公と共に崔子の宮に死す。○射は、食亦反。中は、丁仲反。隊は、直類反。僂は、力侯反。堙は、音因。

祝佗父祭於高唐。高唐有齊別廟也。
【読み】
祝佗父高唐を祭る。高唐に齊の別廟有り。

至、復命、不說弁而死於崔氏。爵弁、祭服。○說、他活反。
【読み】
至りて、復命し、弁を說かずして崔氏に死す。爵弁は、祭服。○說は、他活反。

申蒯侍漁者。侍漁、監取魚之官。○蒯、苦怪反。
【読み】
申蒯は侍漁者なり。侍漁は、魚を取ることを監するの官。○蒯は、苦怪反。

退謂其宰曰、爾以帑免。帑、宰之妻子。○帑、音奴。
【読み】
退きて其の宰に謂いて曰く、爾帑を以て免れよ。帑は、宰の妻子。○帑は、音奴。

我將死。其宰曰、免、是反子之義也。與之皆死。反死君之義。
【読み】
我は將に死なんとす、と。其の宰曰く、免れば、是れ子の義に反するなり、と。之と皆死す。君に死するの義に反す。

崔氏殺鬷蔑于平陰。鬷蔑、平陰大夫。公外嬖。傳言莊公所養非國士。故其死難、皆嬖寵之人。
【読み】
崔氏鬷蔑[そうべつ]を平陰に殺す。鬷蔑は、平陰の大夫。公の外嬖なり。傳莊公の養う所は國士に非ず。故に其の難に死するは、皆嬖寵の人なるを言う。

晏子立於崔氏之門外。聞難而來。
【読み】
晏子崔氏の門外に立つ。難を聞きて來る。

其人曰、死乎。曰、獨吾君也乎哉。吾死也。言己與衆臣無異。
【読み】
其の人曰く、死なんか、と。曰く、獨り吾が君ならんや。吾れ死なんや、と。言うこころは、己衆臣と異なること無し。

曰、行乎。曰、吾罪也乎哉。吾亡也。自謂無罪。
【読み】
曰く、行[さ]らんか、と。曰く、吾れ罪あらんや。吾れ亡せんや、と。自ら罪無きを謂う。

曰、歸乎。曰、君死。安歸。言安可以歸。
【読み】
曰く、歸らんか、と。曰く、君死す。安[いずく]に歸らん。言うこころは、安に以て歸る可き。

君民者、豈以陵民。社稷是主。臣君者、豈爲其口實。社稷是養。言君不徒居民上、臣不徒求祿、皆爲社稷。○爲、于僞反。注及下同。
【読み】
民に君たる者は、豈以て民を陵ぐならんや。社稷を是れ主らんとす。君に臣たる者は、豈其の口實の爲ならんや。社稷を是れ養わんとす。言うこころは、君は徒に民の上に居らず、臣は徒に祿を求めず、皆社稷の爲なり。○爲は、于僞反。注及び下も同じ。

故君爲社稷死則死之、爲社稷亡則亡之。謂以公義死亡。
【読み】
故に君社稷の爲に死すれば則ち之に死し、社稷の爲に亡すれば則ち之に亡す。公義を以て死亡するを謂う。

若爲己死而爲己亡、非其私暱、誰敢任之。私暱、所親愛也。非所親愛、無爲當其禍。○暱、女乙反。任、音壬。
【読み】
若し己が爲に死して己が爲に亡すれば、其の私暱[しじつ]に非ざれば、誰か敢えて之に任ぜん。私暱は、親愛する所なり。親愛する所に非ざれば、其の禍に當たることを爲すこと無けん。○暱は、女乙反。任は、音壬。

且人有君而弑之。吾焉得死之。而焉得亡之。言己非正卿。見待無異於衆臣。故不得死其難也。
【読み】
且つ人君有りて之を弑す。吾れ焉ぞ之に死することを得ん。而して焉ぞ之に亡することを得ん。言うこころは、己は正卿に非ず。待せらるること衆臣に異なること無し。故に其の難に死することを得ざるなり。

將庸何歸。將用死亡之義、何所歸趣。
【読み】
將に庸て何[いずく]に歸せん、と。將に死亡の義を用ゆれば、何の所に歸趣せんとす。

門啓而入、枕尸股而哭、以公尸枕己股。○枕、之鴆反。
【読み】
門啓けて入り、尸を股に枕せしめて哭し、公の尸を以て己が股に枕せしむ。○枕は、之鴆反。

興、三踊而出。人謂崔子、必殺之。崔子曰、民之望也。舍之得民。舍、置也。
【読み】
興[た]ちて、三踊して出づ。人崔子に謂えらく、必ず之を殺せ、と。崔子曰く、民の望みなり。之を舍[お]きて民を得ん、と。舍は、置くなり。

盧蒲癸奔晉、王何奔莒。二子、莊公黨。爲二十八年、殺慶舍張本。
【読み】
盧蒲癸晉に奔り、王何莒に奔る。二子は、莊公の黨。二十八年、慶舍を殺す爲の張本なり。

叔孫宣伯之在齊也、宣伯、魯叔孫僑如。成十六年、奔齊。
【読み】
叔孫宣伯の齊に在りしや、宣伯は、魯の叔孫僑如。成十六年、齊に奔る。

叔孫還納其女於靈公。嬖、生景公。還、齊羣公子。納宣伯女於靈公。○還、音旋。
【読み】
叔孫還其の女を靈公に納れぬ。嬖せられ、景公を生む。還は、齊の羣公子。宣伯の女を靈公に納る。○還は、音旋。

丁丑、崔杼立而相之、慶封爲左相。盟國人於大宮、大宮、大公廟。
【読み】
丁丑[ひのと・うし]、崔杼立てて之に相となり、慶封左相と爲る。國人に大宮に盟いて、大宮は、大公の廟。

曰、所不與崔・慶者。晏子仰天歎曰、嬰所不唯忠於君、利社稷者是與、有如上帝、乃歃。盟書云、所不與崔・慶者、有如上帝。讀書未終、晏子抄荅易其辭、因自歃。○歃、所洽反。
【読み】
曰く、崔・慶に與せざる所の者あらば、と。晏子天を仰ぎて歎じて曰く、嬰は唯君に忠をし、社稷を利する者に是れ與せざる所あらば、上帝の如きこと有らんといいて、乃ち歃[すす]る。盟書に云う、崔・慶に與せざる所の者あらば、上帝の如きこと有らん、と。書を讀みて未だ終わらざるに、晏子抄荅して其の辭を易え、因りて自ら歃るなり。○歃は、所洽反。

辛巳、公與大夫及莒子盟。莒子朝齊遇崔杼作亂、未去。故復與景公盟。
【読み】
辛巳[かのと・み]、公大夫及び莒子と盟う。莒子齊に朝して崔杼が亂を作すに遇いて、未だ去らず。故に復景公と盟う。

大史書曰、崔杼弑其君。崔子殺之。其弟嗣書。而死者二人。嗣、續也。幷前有三人死。
【読み】
大史書して曰く、崔杼其の君を弑す、と。崔子之を殺す。其の弟嗣ぎて書す。而して死する者二人。嗣は、續ぐなり。前を幷せて三人の死する有り。

其弟又書。乃舍之。南史氏聞大史盡死、執簡以往。聞旣書矣、乃還。傳言齊有直史、崔杼之罪所以聞。
【読み】
其の弟又書す。乃ち之を舍[ゆる]す。南史氏大史盡く死すと聞き、簡を執りて以て往く。旣に書せりと聞き、乃ち還る。傳齊に直史有りて、崔杼の罪聞ゆる所以を言う。

閭丘嬰以帷縳其妻而載之、與申鮮虞乘而出。二子、莊公近臣。○縳、直轉反。
【読み】
閭丘嬰帷を以て其の妻を縳[てん]して之を載せ、申鮮虞と乘りて出づ。二子は、莊公の近臣。○縳は、直轉反。

鮮虞推而下之、下嬰妻也。○推、如字。又他回反。
【読み】
鮮虞推して之を下して、嬰の妻を下すなり。○推は、字の如し。又他回反。

曰、君昏不能匡、危不能救、死不能死、而知匿其暱。匿、藏也。暱、親也。○暱、女乙反。
【読み】
曰く、君昏くして匡すこと能わず、危うくして救うこと能わず、死して死すること能わずして、其の暱を匿すことを知る。匿は、藏すなり。暱は、親しきなり。○暱は、女乙反。

其誰納之。行及弇中、將舍。弇中、狹道。○弇、於撿反。又於廉反。
【読み】
其れ誰か之を納れん、と。行きて弇中[えんちゅう]に及び、將に舍[やど]らんとす。弇中は、狹道。○弇は、於撿反。又於廉反。

嬰曰、崔・慶其追我。鮮虞曰、一與一。誰能懼我。言道狹。雖衆無所用。
【読み】
嬰曰く、崔・慶其れ我を追わん、と。鮮虞曰く、一と一となり。誰か能く我を懼[おど]さん、と。言うこころは、道狹し。衆と雖も用ゆる所無し。

遂舍、枕轡而寢、恐失馬也。○枕、之鴆反。
【読み】
遂に舍り、轡を枕にして寢ね、馬を失わんことを恐るるなり。○枕は、之鴆反。

食馬而食、駕而行。出弇中。謂嬰曰、速驅之。崔・慶之衆、不可當也。遂來奔。道廣衆得用。故不可當。○食馬、音嗣。
【読み】
馬に食ませて食い、駕して行く。弇中を出づ。嬰に謂いて曰く、速やかに之を驅せよ。崔・慶の衆には、當たる可からざるなり、と。遂に來奔す。道廣くして衆用ゆることを得。故に當たる可からず。○食馬は、音嗣。

崔氏側莊公于北郭、側、瘞埋之。不殯於廟。
【読み】
崔氏莊公を北郭に側し、側は、之を瘞埋[えいまい]するなり。廟に殯せず。

丁亥、葬諸士孫之里。士孫、人姓。因名里。死十三日便葬。不待五月。
【読み】
丁亥[ひのと・い]、諸を士孫の里に葬る。士孫は、人の姓。因りて里に名づく。死して十三日にして便ち葬る。五月を待たず。

四翣。喪車之飾。諸侯六翣。○翣、所甲反。
【読み】
四翣[しそう]。喪車の飾り。諸侯は六翣。○翣は、所甲反。

不蹕。蹕、止行人。
【読み】
蹕[ひっ]せず。蹕は、行人を止むるなり。

下車七乘。不以兵甲。下車、送葬之車。齊舊依上公禮九乘。又有兵甲。今皆降損。
【読み】
下車七乘。兵甲を以てせず。下車は、送葬の車。齊舊上公の禮に依りて九乘。又兵甲有り。今皆降損す。

晉侯濟自泮、泮、闕。
【読み】
晉侯泮より濟り、泮は、闕く。

會于夷儀伐齊、以報朝歌之役。朝歌役、在二十三年。不書伐齊、齊人逆服、兵不加。
【読み】
夷儀に會して齊を伐ち、以て朝歌の役に報ゆ。朝歌の役は、二十三年に在り。齊を伐つことを書さざるは、齊人逆え服して、兵加えざればなり。

齊人以莊公說。以弑莊公說晉也。○說、如字。又音悅。
【読み】
齊人莊公を以て說く。莊公を弑するを以て晉に說くなり。○說は、字の如し。又音悅。

使隰鉏請成、慶封如師。慶封獨使於晉、不通諸侯。故不書。鉏、隰明之曾孫。○鉏、仕居反。
【読み】
隰鉏[しゅうしょ]をして成[たい]らぎを請い、慶封をして師に如かしむ。慶封獨り晉に使いして、諸侯に通ぜず。故に書さず。鉏は、隰明の曾孫。○鉏は、仕居反。

男女以班、賂晉侯以宗器樂器、宗器、祭祀之器。樂器、鐘磬之屬。
【読み】
男女以て班[わ]けて、晉侯に賂うに宗器樂器を以てし、宗器は、祭祀の器。樂器は、鐘磬の屬。

自六正・三軍之六卿。
【読み】
六正・三軍の六卿。

五吏・三十帥・五吏、文職。三十帥、武職。皆軍卿之屬官。○帥、所類反。
【読み】
五吏・三十帥・五吏は、文職。三十帥は、武職。皆軍卿の屬官。○帥は、所類反。

三軍之大夫・百官之正長・師旅、百官正長、羣有司也。師旅、小將帥。
【読み】
三軍の大夫・百官の正長・師旅より、百官の正長は、羣有司なり。師旅は、小將帥。

及處守者、皆有賂。皆以男女爲賂。處守、守國者。○處守、手又反。
【読み】
處守の者に及ぶまで、皆賂有り。皆男女を以て賂と爲す。處守は、國を守る者。○處守は、手又反。

晉侯許之。晉侯受賂還。不譏者、齊有喪、師自宜退。
【読み】
晉侯之を許す。晉侯賂を受けて還る。譏らざるは、齊喪有りて、師自ら退く宜し。

使叔向告於諸侯。告齊服。
【読み】
叔向[しゅくきょう]をして諸侯に告げしむ。齊の服するを告ぐ。

公使子服惠伯對曰、君舍有罪、以靖小國。君之惠也。寡君聞命矣。
【読み】
公子服惠伯をして對えしめて曰く、君有罪を舍[ゆる]して、以て小國を靖んず。君の惠みなり。寡君命を聞けり、と。

晉侯使魏舒・宛沒逆衛侯。衛獻公以十四年奔齊。○宛、於元反。
【読み】
晉侯魏舒・宛沒をして衛侯を逆えしむ。衛の獻公十四年を以て齊に奔る。○宛は、於元反。

將使衛與之夷儀。崔子止其帑、以求五鹿。崔杼欲得衛之五鹿。故留衛侯妻子於齊以質之。
【読み】
將に衛をして之に夷儀を與えしめんとす。崔子其の帑を止めて、以て五鹿を求む。崔杼衛の五鹿を得んと欲す。故に衛侯の妻子を齊に留めて以て之を質とす。

初、陳侯會楚子伐鄭、在前年。
【読み】
初め、陳侯楚子に會して鄭を伐つとき、前年に在り。

當陳隧者、井堙木刊。隧、徑也。堙、塞也。刊、除也。
【読み】
陳の隧に當たる者は、井は堙[ふさ]ぎ木は刊[き]れり。隧は、徑なり。堙[いん]は、塞ぐなり。刊は、除くなり。

鄭人怨之。六月、鄭子展・子產帥車七百乘伐陳。宵突陳城、突、穿也。
【読み】
鄭人之を怨む。六月、鄭の子展・子產車七百乘を帥いて陳を伐つ。宵陳城を突[うが]ち、突は、穿つなり。

遂入之。
【読み】
遂に之に入る。

陳侯扶其大子偃師奔墓。欲逃冢閒。
【読み】
陳侯其の大子偃師を扶けて墓に奔る。冢閒に逃げんと欲す。

遇司馬桓子。曰、載余。陳之司馬。
【読み】
司馬桓子に遇う。曰く、余を載せよ、と。陳の司馬。

曰、將巡城。不欲載公。以巡城辭。
【読み】
曰く、將に城を巡らんとす、と。公を載することを欲せず。城を巡るを以て辭す。

遇賈獲、賈獲、陳大夫。
【読み】
賈獲が、賈獲は、陳大夫。

載其母妻。下之而授公車。公曰、舍而母。辭曰、不祥。雖急猶不欲男女無別。
【読み】
其の母妻を載するに遇う。之を下して公に車を授く。公曰く、而[なんじ]の母を舍[お]け、と。辭して曰く、不祥なり、と。急なりと雖も猶男女別無きを欲せず。

與其妻扶其母以奔墓。亦免。
【読み】
其の妻と與に其の母を扶けて以て墓に奔る。亦免る。

子展命師、無入公宮。與子產親御諸門。欲服之而已。故禁侵掠。○御、魚呂反。掠、音亮。
【読み】
子展師に命ずらく、公宮に入ること無かれ、と。子產と與に親ら諸を門に御[とど]む。之を服せんことを欲するのみ。故に侵掠を禁ず。○御は、魚呂反。掠は、音亮。

陳侯使司馬桓子賂以宗器、陳侯免、擁社、免、喪服。擁社、抱社主示服。○免、音問。注同。
【読み】
陳侯司馬桓子をして賂うに宗器を以てせしめ、陳侯免[ぶん]して、社を擁し、免は、喪服。社を擁すとは、社主を抱きて服するを示すなり。○免は、音問。注も同じ。

使其衆男女別而纍、以待於朝。纍、自囚係以待命。○纍、類悲反。一呂軌反。
【読み】
其の衆をして男女別けて纍[るい]して、以て朝に待たしむ。纍は、自ら囚係して以て命を待つなり。○纍は、類悲反。一に呂軌反。

子展執縶而見。見陳侯。○縶、陟立反。
【読み】
子展縶[ちゅう]を執りて見ゆ。陳侯に見ゆ。○縶は、陟立反。

再拜稽首、承飮而進獻。承飮、奉觴。示不失臣敬。
【読み】
再拜稽首して、飮を承[ささ]げて進獻ず。飮を承ぐるとは、觴を奉ずるなり。臣の敬を失わざるを示す。

子美入、數俘而出。子美、子產也。但數其所獲人數。不將以歸。○數、所主反。
【読み】
子美入り、俘を數えて出づ。子美は、子產なり。但其の獲る所の人數を數うるのみ。將いて以て歸らず。○數は、所主反。

祝祓社、司徒致民、司馬致節、司空致地、乃還。祓、除也。節、兵符。陳亂。故正其衆官、脩其所職、以安定之、乃還也。○祓、芳弗反。又音廢。
【読み】
祝社に祓い、司徒民を致し、司馬節を致し、司空地を致して、乃ち還る。祓は、除[はら]うなり。節は、兵符。陳亂る。故に其の衆官を正し、其の所職を脩め、以て之を安定して、乃ち還れり。○祓は、芳弗反。又音廢。

秋、七月、己巳、同盟于重丘、齊成故也。伐齊而稱同盟、以明齊亦同盟。
【読み】
秋、七月、己巳、重丘に同盟するは、齊成らぐ故なり。齊を伐ちて同盟すと稱するは、以て齊も亦同盟することを明らかにす。

趙文子爲政。趙武、代范匃。
【読み】
趙文子政を爲す。趙武、范匃[はんかい]に代わる。

令薄諸侯之幣、而重其禮。以重禮待諸侯。
【読み】
諸侯の幣を薄くせしめて、其の禮を重くす。重禮を以て諸侯を待つ。

穆叔見之。謂穆叔曰、自今以往、兵其少弭矣。弭、止也。○弭、亡氏反。
【読み】
穆叔之を見る。穆叔に謂いて曰く、今より以往、兵其れ少しく弭[や]まん。弭[び]は、止むなり。○弭は、亡氏反。

齊崔・慶新得政。將求善於諸侯。武也、知楚令尹。令尹、屈建。
【読み】
齊の崔・慶新たに政を得たり。將に善を諸侯に求めんとす。武や、楚の令尹を知れり。令尹は、屈建。

若敬行其禮、道之以文辭、以靖諸侯、兵可以弭。爲二十七年、晉・楚盟于宋傳。
【読み】
若し敬みて其の禮を行い、之を道[みちび]くに文辭を以てして、以て諸侯を靖んぜば、兵以て弭む可し、と。二十七年、晉・楚宋に盟う爲の傳なり。

楚薳子馮卒。屈建爲令尹、屈建、子木。
【読み】
楚の薳子馮[いしひょう]卒す。屈建令尹と爲り、屈建は、子木。

屈蕩爲莫敖。代屈建。宣十二年、邲之役楚有屈蕩。爲左廣之右。世本、屈蕩、屈建之祖父。今此屈蕩與之同姓名。○邲、扶必反。廣、古曠反。
【読み】
屈蕩莫敖と爲る。屈建に代わる。宣十二年、邲の役にも楚に屈蕩有り。左廣の右と爲る。世本に、屈蕩は、屈建の祖父、と。今此の屈蕩之と姓名を同じくす。○邲は、扶必反。廣は、古曠反。

舒鳩人卒叛。前年、辭不叛。
【読み】
舒鳩人卒に叛く。前年、叛かずと辭す。

楚令尹子木伐之、及離城。離城、舒鳩城。
【読み】
楚の令尹子木之を伐ち、離城に及ぶ。離城は、舒鳩の城。

吳人救之。子木遽以右師先。先至舒鳩。
【読み】
吳人之を救う。子木遽に右師を以て先んず。先ず舒鳩に至る。

子彊・息桓・子捷・子騈・子盂帥左師以退。五人不及子木。與吳相遇而退。
【読み】
子彊・息桓・子捷・子騈[しへん]・子盂左師を帥いて以て退く。五人子木に及ばず。吳と相遇いて退く。

吳人居其閒七日。居楚兩軍之閒。
【読み】
吳人其の閒に居ること七日。楚の兩軍の閒に居る。

子彊曰、久將墊隘。隘乃禽也。不如速戰。墊隘、慮水雨。○墊、丁念反。
【読み】
子彊曰く、久しくば將に墊隘[てんあい]せんとす。隘ならば乃ち禽にせられん。速やかに戰うに如かず。墊隘は、水雨を慮るなり。○墊は、丁念反。

請以其私卒誘之。簡師陳以待我。簡閱精兵、駐後爲陳。○陳、直覲反。
【読み】
請う、其の私卒を以て之を誘かん。師を簡[えら]びて陳して以て我を待て。精兵を簡閱して、後に駐[とど]まりて陳を爲す。○陳は、直覲反。

我克則進。奔則亦視之。視其形勢而救助之。
【読み】
我克たば則ち進め。奔るも則ち亦之を視よ。其の形勢を視て之を救い助けよ。

乃可以免。不然、必爲吳禽。從之。五人以其私卒先擊吳師。吳師奔。登山以望、見楚師不繼、復逐之、傅諸其軍。吳還遂五子、至其本軍。○傅、音附。
【読み】
乃ち以て免る可し。然らずんば、必ず吳の禽と爲らん、と。之に從う。五人其の私卒を以て先ず吳の師を擊つ。吳の師奔る。山に登りて以て望み、楚の師の繼がざるを見て、復之を逐い、諸に其の軍に傅[つ]く。吳還りて五子を遂いて、其の本軍に至る。○傅は、音附。

簡師會之。吳師大敗。遂圍舒鳩。舒鳩潰。八月、楚滅舒鳩。五子旣敗吳師、遂前及子木、共圍滅舒鳩。
【読み】
簡師之に會す。吳の師大いに敗れぬ。遂に舒鳩を圍む。舒鳩潰ゆ。八月、楚舒鳩を滅ぼす。五子旣に吳の師を敗り、遂に前[すす]みて子木に及び、共に圍みて舒鳩を滅ぼすなり。

衛獻公入于夷儀。爲下自夷儀與甯喜言張本。
【読み】
衛の獻公夷儀に入る。下の夷儀より甯喜と言う爲の張本なり。

鄭子產獻捷于晉。獻入陳之功、而不獻其俘。
【読み】
鄭の子產捷を晉に獻ず。陳に入るの功を獻じて、其の俘を獻ぜず。

戎服將事。戎服、軍旅之衣。異於朝服。
【読み】
戎服して事を將[おこな]う。戎服は、軍旅の衣。朝服に異なり。

晉人問陳之罪。對曰、昔虞閼父爲周陶正、以服事我先王、閼父、舜之後。當周之興、閼父爲武王陶正。
【読み】
晉人陳の罪を問う。對えて曰く、昔虞の閼父[あつほ]周の陶正と爲り、以て我が先王に服事せしとき、閼父は、舜の後。周の興るに當たりて、閼父武王の陶正と爲る。

我先王賴其利器用也、與其神明之後也、舜、聖。故謂之神明。
【読み】
我が先王其の器用に利なると、其の神明の後なるとに賴りて、舜は、聖なり。故に之を神明と謂う。

庸以元女大姬配胡公、庸、用字。元女、武王之長女。胡公、閼父之子、滿也。○大、音泰。
【読み】
庸て元女大姬を以て胡公に配して、庸は、用の字。元女は、武王の長女。胡公は、閼父の子、滿なり。○大は、音泰。

而封諸陳、以備三恪。周得天下、封夏・殷二王後、又封舜後謂之恪、幷二王後爲三國。其禮轉降。示敬而已。故曰三恪。
【読み】
諸を陳に封じて、以て三恪[さんかく]に備えり。周天下を得て、夏・殷二王の後を封じ、又舜の後を封じて之を恪と謂い、二王の後を幷せて三國と爲す。其の禮轉々降る。敬を示すのみ。故に三恪と曰う。

則我周之自出、至于今是賴。言陳、周之甥、至今賴周德。
【読み】
則ち我が周の自出にして、今に至るまで是れ賴れり。言うこころは、陳は、周の甥にして、今に至るまで周の德に賴るなり。

桓公之亂、蔡人欲立其出。陳桓公鮑卒。於是陳亂。事、在魯桓五年。蔡出、桓公之子、厲公也。
【読み】
桓公の亂に、蔡人其の出を立てんことを欲す。陳の桓公鮑卒す。是に於て陳亂る。事、魯桓五年に在り。蔡の出は、桓公の子、厲公なり。

我先君莊公奉五父而立之、五父佗、桓公弟。殺大子免而代之。鄭莊公因就定其位。
【読み】
我が先君莊公五父を奉じて之を立てしに、五父佗は、桓公の弟。大子免を殺して之に代わる。鄭の莊公因りて就きて其の位を定む。

蔡人殺之、欲立其出故。
【読み】
蔡人之を殺せしかば、其の出を立てんことを欲する故なり。

我又與蔡人奉戴厲公、奉戴、猶奉事。
【読み】
我れ又蔡人と厲公を奉戴して、奉戴は、猶奉事のごとし。

至於莊・宣、皆我之自立。陳莊公・宣公、皆厲公子。
【読み】
莊・宣に至るまで、皆我れ自りて立てり。陳の莊公・宣公は、皆厲公の子。

夏氏之亂、成公播蕩、又我之自入、君所知也。播蕩、流移失所。宣十一年、陳夏徵舒弑靈公。靈公之子成公奔晉、自晉因鄭而入也。
【読み】
夏氏の亂に、成公播蕩せしも、又我れ自りて入りしは、君の知れる所なり。播蕩は、流移して所を失うなり。宣十一年、陳の夏徵舒靈公を弑す。靈公の子成公晉に奔り、晉より鄭に因りて入れり。

今陳忘周之大德、蔑我大惠、弃我姻親、介恃楚衆、以憑陵我敝邑、不可億逞。億、度也。逞、盡也。
【読み】
今陳周の大德を忘れ、我が大惠を蔑ろにし、我が姻親を弃て、楚の衆に介恃して、以て我が敝邑に馮陵すること、億逞す可からず。億は、度るなり。逞は、盡くすなり。

我是以有往年之告。謂鄭伯稽首、告晉請伐鄭。
【読み】
我れ是を以て往年の告げ有り。鄭伯稽首して、晉に告げて鄭を伐たんことを請いしを謂う。

未獲成命、未得伐陳命。
【読み】
未だ成命を獲ざるに、未だ陳を伐つの命を得ず。

則有我東門之役、前年、陳從楚、伐鄭東門。
【読み】
則ち我が東門の役有りて、前年、陳楚に從いて、鄭の東門を伐つ。

當陳隧者、井堙木刊。敝邑大懼不競而恥大姬。上辱大姬之靈。
【読み】
陳の隧に當たれる者は、井は堙ぎ木は刊れり。敝邑大いに懼れらくは競わずして大姬を恥ずかしめんことを。上大姬の靈を辱む。

天誘其衷、啓敝邑之心、啓、開也。開道其心。故得勝。
【読み】
天其の衷を誘[すす]めて、敝邑の心を啓き、啓は、開くなり。其の心を開道す。故に勝ちを得たり。

陳知其罪、授手于我。用敢獻功。
【読み】
陳其の罪を知りて、手を我に授けり。用て敢えて功を獻ず、と。

晉人曰、何故侵小。對曰、先王之命、唯罪所在、各致其辟。辟、誅也。○辟、婢亦反。
【読み】
晉人曰く、何の故に小を侵せる、と。對えて曰く、先王の命に、唯罪の在る所は、各々其の辟を致せ、と。辟は、誅なり。○辟は、婢亦反。

且昔天子之地一圻、方千里。○圻、音祈。
【読み】
且つ昔天子の地一圻[いっき]、方千里。○圻は、音祈。

列國一同、方百里。
【読み】
列國は一同、方百里。

自是以衰。衰、差降。○衰、初危反。
【読み】
是よりして以て衰[そ]ぐ。衰は、差降なり。○衰は、初危反。

今大國多數圻矣。若無侵小、何以至焉。
【読み】
今大國多きは數圻なり。若し小を侵すこと無くば、何を以て焉に至らん、と。

晉人曰、何故戎服。
【読み】
晉人曰く、何の故に戎服せる、と。

對曰、我先君武・莊爲平・桓卿士。鄭武公・莊公爲周平王・桓王卿士。○數、色主反。下同。
【読み】
對えて曰く、我が先君武・莊は平・桓の卿士爲り。鄭の武公・莊公は周の平王・桓王の卿士と爲る。○數は、色主反。下も同じ。

城濮之役、文公布命曰、各復舊職。晉文公。
【読み】
城濮の役に、文公命を布きて曰く、各々舊職に復せよ、と。晉の文公。

命我文公、戎服輔王、以授楚捷。不敢廢王命故也。城濮、在僖二十八年。
【読み】
我が文公に命じて、戎服して王を輔けしめて、以て楚の捷を授けり。敢えて王命を廢せざる故なり、と。城濮は、僖二十八年に在り。

士莊伯不能詰。士莊伯、士弱也。
【読み】
士莊伯詰[なじ]ること能わず。士莊伯は、士弱なり。

復於趙文子。文子曰、其辭順。犯順不祥。乃受之。
【読み】
趙文子に復す。文子曰く、其の辭順なり。順を犯すは不祥なり、と。乃ち之を受く。

冬、十月、子展相鄭伯如晉、拜陳之功。謝晉受其功。
【読み】
冬、十月、子展鄭伯を相けて晉に如き、陳の功を拜す。晉の其の功を受けたるを謝す。

子西復伐陳。陳及鄭平。前雖入陳、服之而已。故更伐以結成。
【読み】
子西復陳を伐つ。陳鄭と平らぐ。前に陳に入ると雖も、之を服するのみ。故に更に伐ちて以て成らぎを結ぶ。

仲尼曰、志有之、志、古書。
【読み】
仲尼曰く、志に之れ有り、志は、古書。

言以足志、文以足言。足、猶成也。○足、將住反。又如字。
【読み】
言以て志を足し、文以て言を足す、と。足は、猶成すがごとし。○足は、將住反。又字の如し。

不言、誰知其志。言之無文、行而不遠。雖得行、猶不能及遠。
【読み】
言わずんば、誰か其の志を知らん。言の文無きは、行われて遠からず。行わるることを得と雖も、猶遠くに及ぶこと能わず。

晉爲伯鄭入陳。非文辭不爲功。愼辭哉。樞機之發、榮辱之主。
【読み】
晉伯として鄭陳に入る。文辭に非ずんば功を爲さじ。辭を愼まんかな、と。樞機の發は、榮辱の主なり。

楚蔿掩爲司馬。蔿子馮之子。
【読み】
楚の蔿掩司馬と爲る。蔿子馮の子。

子木使庀賦、庀、治。○庀、匹婢反。
【読み】
子木賦を庀[おさ]め、庀[ひ]は、治むる。○庀は、匹婢反。

數甲兵。閱數之。
【読み】
甲兵を數えしむ。之を閱數す。

甲午、蔿掩書土田。書土地之所宜。
【読み】
甲午[きのえ・うま]、蔿掩土田を書す。土地の宜しき所を書す。

度山林、度量山林之材、以共國用。○度、待洛反。
【読み】
山林を度り、山林の材を度量して、以て國用に共す。○度は、待洛反。

鳩藪澤、鳩、聚也。聚成藪澤、使民不得焚燎壞之。欲以備田獵之處。
【読み】
藪澤[そうたく]を鳩[あつ]め、鳩は、聚むるなり。藪澤を聚め成して、民をして焚燎して之を壞ることを得ざらしむ。以て田獵の處に備えんと欲す。

辨京陵、辨、別也。絕高曰京、大阜曰陵。別之以爲冢墓之地。
【読み】
京陵を辨ち、辨は、別つなり。絕高を京と曰い、大阜を陵と曰う。之を別ちて以て冢墓の地と爲す。

表淳鹵、淳鹵、埆薄之地。表、異。輕其賦稅。○淳、音純。鹵、音魯。說文云、鹵、西方鹹地。
【読み】
淳鹵[じゅんろ]を表にし、淳鹵は、埆薄[かくはく]の地。表は、異なり。其の賦稅を輕くす。○淳は、音純。鹵は、音魯。說文に云う、鹵は、西方の鹹地[かんち]。

數疆潦、疆界有流潦者、計數減其租入。
【読み】
疆潦[きょうろう]を數え、疆界に流潦有る者は、計數して其の租入を減ず。

規偃豬、偃豬、下濕之地。規度其受水多少。○偃、於建反。一如字。
【読み】
偃豬を規り、偃豬は、下濕の地。其の水を受くるの多少を規度す。○偃は、於建反。一に字の如し。

町原防、廣平曰原。防、隄也。隄防閒地。不得方正如井田、別爲小頃町。○町、徒頂反。
【読み】
原防を町にし、廣平を原と曰う。防は、隄なり。隄防の閒地。方正井田の如くなることを得ざるは、別けて小頃町を爲る。○町は、徒頂反。

牧隰皐、隰皐、水厓下濕。爲芻牧之地。
【読み】
隰皐を牧にし、隰皐は、水厓の下濕。芻牧の地と爲す。

井衍沃、衍沃、平美之地。則如周禮制以爲井田。六尺爲步、步百爲畝、畝百爲夫、九夫爲井。○衍、以善反。下平曰衍、有漑曰沃。
【読み】
衍沃を井にし、衍沃は、平美の地。則ち周禮の如く制して以て井田と爲すなり。六尺を步と爲し、步百を畝と爲し、畝百を夫と爲し、九夫を井と爲す。○衍は、以善反。下平を衍と曰い、漑有るを沃と曰う。

量入脩賦、量九土之所入、而治理其賦稅。○量、音良。又音亮。
【読み】
入るを量りて賦を脩め、九土の入る所を量りて、其の賦稅を治理す。○量は、音良。又音亮。

賦車籍馬、籍、疏其毛色歲齒、以備軍用。
【読み】
車を賦し馬を籍し、籍は、其の毛色歲齒を疏して、以て軍用に備うるなり。

賦車兵・車兵、甲士。
【読み】
車兵・車兵は、甲士。

徒兵・步卒。
【読み】
徒兵・步卒。

甲楯之數。使器杖有常數。○楯、食準反。又音尹。
【読み】
甲楯[こうじゅん]の數を賦す。器杖をして常數有らしむ。○楯は、食準反。又音尹。

旣成、以授子木。禮也。得治國之禮。傳言楚之所以興。
【読み】
旣に成りて、以て子木に授く。禮なり。國を治むるの禮を得。傳楚の興る所以を言う。

十二月、吳子諸樊伐楚、以報舟師之役。舟師、在二十四年也。
【読み】
十二月、吳子諸樊楚を伐ちて、以て舟師の役に報ゆ。舟師は、二十四年に在るなり。

門于巢。攻巢門。
【読み】
巢を門む。巢の門を攻む。

巢牛臣曰、吳王勇而輕。若啓之、將親門。啓、開門也。○輕、遣政反。
【読み】
巢の牛臣曰く、吳王勇にして輕し。若し之を啓かば、將に親ら門めんとす。啓は、門を開くなり。○輕は、遣政反。

我獲射之、必殪。殪、死也。○射、食亦反。殪、於計反。
【読み】
我れ之を射ることを獲ば、必ず殪[たお]れん。殪[えい]は、死ぬなり。○射は、食亦反。殪は、於計反。

是君也死、疆其少安。從之。吳子門焉。牛臣隱於短牆以射之。卒。
【読み】
是の君や死せば、疆其れ少しく安からん、と。之に從う。吳子門む。牛臣短牆に隱れて以て之を射る。卒す。

楚子以滅舒鳩賞子木。辭曰、先大夫蔿子之功也。以與蔿掩。往年楚子將伐舒鳩。蔿子馮請退師以須其叛。楚子從之、卒獲舒鳩。故子木辭賞、以與其子。
【読み】
楚子舒鳩を滅ぼせるを以て子木を賞す。辭して曰く、先大夫蔿子の功なり、と。以て蔿掩に與う。往年楚子將に舒鳩を伐たんとす。蔿子馮師を退けて以て其の叛くを須たんと請う。楚子之に從い、卒に舒鳩を獲たり。故に子木賞を辭して、以て其の子に與う。

晉程鄭卒。子產始知然明。前年、然明謂程鄭將死。今如其言。故知之。
【読み】
晉の程鄭卒す。子產始めて然明を知る。前年、然明程鄭將に死せんとすと謂う。今其の言の如し。故に之を知る。

問爲政焉。對曰、視民如子、見不仁者誅之如鷹鸇之逐鳥雀也。子產喜、以語子大叔。且曰、他日吾見蔑之面而已。蔑、然明名。○鸇、之然反。語、魚據反。
【読み】
政を爲すを問う。對えて曰く、民を視ること子の如く、不仁の者を見ては之を誅すること鷹鸇[ようせん]の鳥雀を逐うが如くす、と。子產喜び、以て子大叔に語る。且つ曰く、他日吾れ蔑の面を見るのみ。蔑は、然明の名。○鸇は、之然反。語は、魚據反。

今吾見其心矣。
【読み】
今吾れ其の心を見たり、と。

子大叔問政於子產。子產曰、政如農功。日夜思之、思其始而成其終、朝夕而行之、行無越思、思而後行。
【読み】
子大叔政を子產に問う。子產曰く、政は農功の如し。日夜之を思い、其の始めを思いて其の終わりを成し、朝夕にして之を行い、行い思いを越ゆること無きこと、思いて後に行う。

如農之有畔、言有次。
【読み】
農の畔有るが如くなれば、次で有るを言う。

其過鮮矣。
【読み】
其の過ち鮮し、と。

衛獻公自夷儀使與甯喜言。求復國也。
【読み】
衛の獻公夷儀より甯喜と言わしむ。國に復らんことを求むるなり。

甯喜許之。大叔文子聞之、大叔儀也。
【読み】
甯喜之を許す。大叔文子之を聞きて、大叔儀なり。

曰、烏呼、詩所謂我躬不說、皇恤我後者。甯子可謂不恤其後矣。皇、暇也。詩、小雅。言今我不能自容說。何暇念其後乎。謂甯子必身受禍、不得恤其後也。○說、音悅。
【読み】
曰く、烏呼、詩に所謂我れ躬ら說[い]れられず、我が後を恤うるに皇[いとま]あらんやという者なり。甯子は其の後を恤えずと謂う可し。皇は、暇なり。詩は、小雅。言うこころは、今我れ自ら容說すること能わず。何ぞ其の後を念うに暇あらんや。甯子必ず身ら禍を受け、其の後を恤うることを得ざるを謂う。○說は、音悅。

將可乎哉。殆必不可。君子之行、思其終也、思使終可成。
【読み】
將[はた]可ならんや。殆ど必ず不可ならん。君子の行いは、其の終わりを思い、終わりをして成る可からしめんことを思う。

思其復也。思其可復行。
【読み】
其の復を思うなり。其の復行す可きを思う。

書曰、愼始而敬終、終以不困。逸書。
【読み】
書に曰く、始めを愼み終わりを敬すれば、終わり以て困[くる]しまず、と。逸書。

詩曰、夙夜匪解、以事一人。一人、以喩君。
【読み】
詩に曰く、夙夜解[おこた]らず、以て一人に事うる、と。一人は、以て君に喩う。

今甯子視君、不如弈棋。弈、圍棋也。
【読み】
今甯子君を視ること、弈棋[えきき]に如かず。弈は、圍棋なり。

其何以免乎。弈者舉棋不定、不勝其耦。而況置君而弗定乎。必不免矣。九世之卿族、一舉而滅之。可哀也哉。甯氏出自衛武公。及喜九世也。
【読み】
其れ何を以て免れんや。弈者も棋を舉げて定まらざれば、其の耦に勝たず。而るを況んや君を置きて定まらざるをや。必ず免れじ。九世の卿族、一舉して之を滅ぼす。哀しむ可きかな、と。甯氏は衛の武公より出づ。喜に及びて九世なり。



經二十三年。復入。扶又反。注同。君爭。爭鬭之爭。爲之。于僞反。廢長。丁丈反。立少。詩照反。
傳。喪之。徐息浪反。徹去。起呂反。其長。丁丈反。媵之。一音繩證反。有鄣。之亮反。又音章。○今本障。無咎。其九反。所祐。音又。而觴。式羊反。午匿。女力反。徧拜。音遍。之難。乃旦反。子少。詩照反。注同。嬖於。必計反。七輿。音餘。王鮒。音附。侍坐。如字。一音才臥反。以走。如字。一音奏。民柄。彼命反。無解。佳賣反。○今本懈。墨縗。本又作衰。内應。應對之應。備守。手又反。旣乘。繩證反。下驂乘・超乘、幷注同。上獻子。時掌反。督戎。丁毒反。帥卒。子忽反。訟女。音汝。注同。槐本。音懷。肘。張九反。王孫揮。許韋反。之傅摯。音至。本或作申鮮虞之子傅摯。晏父戎。音甫。邢公。音刑。牢成。魯刀反。一本作罕成。狼。音郎。蘧疏。其居反。胠。一音起業反。駟乘。繩證反。閒大國。閒厠之閒。又如字。其咎。其九反。其難。乃旦反。欲殺。申志反。下同。○今本弑。以說。音悅。又如字。於背。音佩。二隊。徐徒猥反。行。徐戶郎反。一音如字。隘道。於懈反。廷。音庭。本亦作庭。○今本亦庭。築壘。力軌反。辟。音壁。○今本壁。少水。地名。京觀。官喚反。晏氂。徐音來。公彌長。丁丈反。下皆同。公鉏。仕居反。具敝車。婢世反。徐扶滅反。吾爲。于僞反。下注爲定・爲公鉏同。重席。直恭反。復絜。扶又反。下非復、下文復戰同。澡之。音早。位處。昌慮反。朝夕。如字。恪居。苦各反。豐點。都簟反。徐之廉反。弗應。應對之應。焉在。於虔反。之療。力召反。娶于。七住反。鑄。之樹反。所治。直吏反。爲先人。于僞反。下爲己請・自爲請・爲其先人、下文遂自爲也皆同。要君。一遙反。下同。毋或。音無。下同。殺適。丁歷反。盍以。戶臘反。狹路。戶夾反。敝廬。力居反。見齊侯。一讀以見字絕句。齊侯向下讀。
經二十四年。宜咎。其九反。大饑。居疑反。又音機。
傳。以上。時掌反。注同。所治。直吏反。事見。賢遍反。隰叔。徐入反。主夏。戶雅反。注同。復爲。扶又反。下同。史佚。音佚。周任。音壬。寓書。音遇。之賄。呼罪反。將焉。於虔反。也夫。音扶。下也夫同。毋寧。音無。浚我。思俊反。以焚。扶云反。焚斃。婢世反。子說。音悅。爲重幣。于僞反。下注魯爲同。子西相。息亮反。介恃。音戒。注及下同。蒐軍。所求反。因閱。音悅。數。所主反。黔。如淳音耿弇反。陬縣。一音子侯反。韋昭音諏。射犬。徐神石反。卑下。遐嫁反。常分。扶問反。婁。本或作樓。小阜。扶有反。在幄。於角反。己皆乘乘車。下乘字繩證反。注及下皆同。皆踞。倶慮反。轉。一音張臠反。衣裝。側良反。一本作囊。○今本亦囊。取冑。直救反。入壘。力軌反。搏人。音博。徐甫各反。復踞。扶又反。下復討同。曩者。乃黨反。■(上が日、下が郷)也。怯也。去業反。之亟。居力反。注同。荒浦。判五反。師祁犂。力兮反。又利之反。公孫揮。許韋反。降下。戶嫁反。又如字。下人。戶嫁反。言易。以豉反。且夫。音扶。亡釁。許覲反。
經二十五年。雖背。音佩。
傳。爲晉。于僞反。下爲己娶同。孟公綽。昌若反。徐本作卓。音綽。使偃取之。本或作娶字。辯別。彼列反。坎下。苦敢反。兌上。徒外反。巽下。音遜。中男。丁仲反。風隕。于敏反。不可取。七住反。注同。○今本娶。蒺。音疾。藜。力私反。無應。應對之應。則喪。息浪反。嫠也。本亦作釐。力之反。驟如。愁又反。徐在遘反。閒伐。閒厠之閒。注閒晉之難同。之難。乃旦反。欲殺。申志反。○今本弑。又近。附近之近。下近於公宮、幷注同。且于。子餘反。公拊。拍也。楹。音盈。衆從。才用反。重言。直用反。別下。彼列反。掫。說文云、從手、取聲。字林、同音子侯反。服本作諏。子須反。云、謀也。今傳本或作諏。猶依掫音。股。音古。封具。求付反。鐸父。徒洛反。祝佗。徒何反。弁。皮彥反。監取。古銜反。鬷蔑。子公反。死難。乃旦反。下皆同。而殺。申志反。○今本弑。吾焉。於虔反。下同。三踊。羊寵反。而相。息亮反。下同。大宮。音泰。注同。乃歃。一音所甲反。故復。扶又反。以帷。位悲反。虞乘。繩證反。知匿。女力反。狹道。音洽。瘞。於滯反。埋之。無皆反。不蹕。音必。七乘。繩證反。注及下七百乘同。自泮。普半反。獨使。所吏反。正長。丁丈反。注同。守國者。如字。或手又反。陳隧。音遂。徐又徒猥反。下同。井堙。音因。木刊、苦干反。隧陘。古定反。無別。彼列反。下文同。陳侯免。徐音萬。喪冠也。擁社。於勇反。而見。賢遍反。注同。俘。芳夫反。道之。音導。遽以。其據反。子捷。在接反。子騈。蒲賢反。又蒲丁反。子盂。音于。隘。於懈反。私卒。子忽反。下同。後駐。張住反。復逐。扶又反。下復伐陳同。舒鳩潰。戶内反。虞閼。於葛反。妃胡公。音配。本亦作配。○今本亦配。之長。丁丈反。三恪。苦洛反。五父佗。徒何反。夏氏。戶雅反。播蕩。補賀反。介恃。音戒。以馮。皮冰反。可億。於力反。逞。勑景反。億度。待洛反。其衷。音忠。開道。音導。城濮。音卜。能詰。起吉反。相鄭。息亮反。以共。音恭。藪澤。素口反。焚燎。力召反。之處。昌慮反。辨別。彼列反。下同。埆薄。音學。疆。居良反。注同。賈其兩反。潦。音老。豬。陟魚反。尙書傳云、停水曰豬。防隄。丁兮反。小頃。苦穎反。牧隰。州牧之牧。步卒。子忽反。器杖。直良反。疆其。居良反。鷹。於陵反。鸇。徐居延反。朝夕。如字。匪解。佳賣反。弈。音亦。棋。音其。

春秋左氏傳校本第十八

襄公 起二十六年盡二十八年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔傳〕會于夷儀之歲、齊人城郟。在二十四年。不直言會夷儀者、別二十五年夷儀會。○郟、古洽反。
【読み】
〔傳〕夷儀に會するの歲、齊人郟[こう]に城く。二十四年に在り。直に夷儀に會すと言わざるは、二十五年の夷儀の會に別つなり。○郟は、古洽反。

其五月、秦・晉爲成。晉韓起如秦涖盟、秦伯車如晉涖盟。伯車、秦伯之弟、鍼也。○鍼、其廉反。
【読み】
其の五月、秦・晉成[たい]らぎを爲す。晉の韓起秦に如きて涖[のぞ]みて盟い、秦の伯車晉に如きて涖みて盟う。伯車は、秦伯の弟、鍼[けん]なり。○鍼は、其廉反。

成而不結。不結固也、傳爲後年脩成起本。當繼前年之末、而特跳此者、傳寫失之。釋文、跳、直彫反。附注、徒彫反。
【読み】
成らぎて結ばず。結固せざるなり、傳後年成らぎを脩むる爲の起本なり。當に前年の末に繼ぐべくして、特に此に跳[こ]えたるは、傳寫之を失えり。釋文、跳は、直彫反。附注、徒彫反。


〔經〕
二十有六年、春、王二月、辛卯、衛甯喜弑其君剽。○剽、匹妙反。
【読み】
〔經〕二十有六年、春、王の二月、辛卯[かのと・う]、衛の甯喜其の君剽[ひょう]を弑す。○剽は、匹妙反。

衛孫林父入于戚以叛。衎雖未居位、林父專邑背國。猶爲叛也。
【読み】
衛の孫林父戚に入りて以て叛く。衎[かん]未だ位に居らずと雖も、林父邑を專にして國に背く。猶叛くと爲すなり。

甲午、衛侯衎復歸于衛。復其位曰復歸。名與不名、傳無義例。
【読み】
甲午[きのえ・うま]、衛侯衎[かん]衛に復歸す。其の位に復るを復歸と曰う。名いうと名いわざるとは、傳に義例無し。

夏、晉侯使荀吳來聘。吳、荀偃子。
【読み】
夏、晉侯荀吳をして來聘せしむ。吳は、荀偃の子。

公會晉人・鄭良霄・宋人・曹人于澶淵。卿會公侯、皆應貶。方責宋向戌後期。故書良霄以駮之。若皆稱人、則嫌向戌直以會公貶之。○澶、市延反。駮、邦角反。
【読み】
公晉人・鄭の良霄[りょうしょう]・宋人・曹人に澶淵[せんえん]に會す。卿の公侯に會するは、皆應に貶すべし。方に宋の向戌[しょうじゅつ]が期に後るるを責む。故に良霄を書して以て之を駮[ばく]す。若し皆人と稱すれば、則ち向戌も直に公に會するを以て之を貶するに嫌あればなり。○澶は、市延反。駮は、邦角反。

秋、宋公殺其世子痤。稱君以殺、惡其父子相殘害。○痤、才何反。惡、烏路反。
【読み】
秋、宋公其の世子痤[ざ]を殺す。君を稱して以て殺すは、其の父子相殘害するを惡みてなり。○痤は、才何反。惡は、烏路反。

晉人執衛甯喜。八月、壬午、許男甯卒于楚。未同盟、而赴以名。
【読み】
晉人衛の甯喜を執う。八月、壬午[みずのえ・うま]、許男甯楚に卒す。未だ同盟せずして、赴ぐるに名を以てす。

冬、楚子・蔡侯・陳侯伐鄭。葬許靈公。
【読み】
冬、楚子・蔡侯・陳侯鄭を伐つ。許の靈公を葬る。

〔傳〕二十六年、春、秦伯之弟鍼如晉脩成。脩會夷儀歲之成。
【読み】
〔傳〕二十六年、春、秦伯の弟鍼[けん]晉に如きて成らぎを脩む。夷儀に會する歲の成らぎを脩む。

叔向命召行人子員。欲使荅秦命。○員、音云。
【読み】
叔向[しゅくきょう]命じて行人子員[しうん]を召す。秦の命に荅えしめんと欲す。○員は、音云。

行人子朱曰、朱也當御。御、進也。言次當行。
【読み】
行人子朱曰く、朱や御に當たれり、と。御は、進むなり。言うこころは、次で行くに當たる。

三云。叔向不應。子朱怒曰、班爵同、同爲大夫。
【読み】
三たび云う。叔向應えず。子朱怒りて曰く、班爵同じきに、同じく大夫爲り。

何以黜朱於朝。黜、退也。
【読み】
何を以て朱を朝に黜けたる、と。黜は、退くなり。

撫劒從之。從叔向也。
【読み】
劒を撫して之に從う。叔向に從うなり。

叔向曰、秦・晉不和久矣。今日之事、幸而集、集、成。
【読み】
叔向曰く、秦・晉和せざること久し。今日の事、幸いにして集[な]らば、集は、成るなり。

晉國賴之。不集、三軍暴骨。子員道二國之言無私。子常易之。姦以事君者、吾所能御也。拂衣從之。拂衣、褰裳。○暴、蒲卜反。御、魚呂反。
【読み】
晉國之に賴らん。集らずんば、三軍骨を暴[さら]せん。子員は二國の言を道[い]いて私無し。子は常に之を易う。姦以て君に事うる者は、吾が能く御ぐ所なり、と。衣を拂いて之に從う。衣を拂うとは、裳を褰[かか]ぐるなり。○暴は、蒲卜反。御は、魚呂反。

人救之。
【読み】
人之を救う。

平公曰、晉其庶乎。庶幾於治。
【読み】
平公曰く、晉其れ庶[ちか]からんか。治まるに庶幾し。

吾臣之所爭者大。師曠曰、公室懼卑。臣不心競而力爭、謂二子不心競爲忠、而撫劒拂衣。
【読み】
吾が臣の爭う所の者大なり、と。師曠曰く、公室懼らくは卑しからん。臣心にて競わずして力にて爭い、二子心に競いて忠を爲さずして、劒を撫して衣を拂うを謂う。

不務德而爭善。爭謂所行爲善。
【読み】
德を務めずして爭いて善とす。爭いて行う所を謂いて善と爲す。

私欲已侈。能無卑乎。私欲侈則公義廢。○侈、昌氏反。
【読み】
私欲已[はなは]だ侈れり。能く卑しきこと無からんや、と。私欲侈れば則ち公義廢す。○侈は、昌氏反。

衛獻公使子鮮爲復。使爲己求反國。○鮮、音仙。爲、于僞反。注同。
【読み】
衛の獻公子鮮をして爲に復らしむ。己が爲に國に反らんことを求めしむ。○鮮は、音仙。爲は、于僞反。注も同じ。

辭。辭不能。
【読み】
辭す。能わずと辭す。

敬姒强命之。敬姒、獻公及子鮮之母。○强、其丈反。
【読み】
敬姒[けいじ]强いて之に命ず。敬姒は、獻公と子鮮との母。○强は、其丈反。

對曰、君無信。臣懼不免。敬姒曰、雖然、以吾故也。許諾。
【読み】
對えて曰く、君信無し。臣免れざらんことを懼る、と。敬姒曰く、然りと雖も、吾が故を以てせよ、と。許諾す。

初、獻公使與甯喜言。言復國。
【読み】
初め、獻公甯喜と言わしむ。國に復らんことを言う。

甯喜曰、必子鮮在。不然、必敗。子鮮賢。國人信之。必欲使在其閒。
【読み】
甯喜曰く、必ず子鮮在れ。然らずんば、必ず敗れん、と。子鮮賢なり。國人之を信ず。必ず其の閒に在らしめんと欲す。

故公使子鮮。子鮮不獲命於敬姒、不得止命。
【読み】
故に公子鮮をせしむ。子鮮命を敬姒に獲ず、止命を得ず。

以公命與甯喜言。曰、苟反、政由甯氏。祭則寡人。
【読み】
公命を以て甯喜と言う。曰く、苟も反らば、政は甯氏に由らん。祭は則ち寡人なり、と。

甯喜告蘧伯玉。伯玉曰、瑗不得聞君之出。敢聞其入。十四年、孫氏欲逐獻公。瑗走從近關出。○瑗、于眷反。
【読み】
甯喜蘧伯玉に告ぐ。伯玉曰く、瑗[えん]は君の出づるを聞くことを得ざりき。敢えて其の入るを聞かんや、と。十四年、孫氏獻公を逐わんと欲す。瑗走りて近關より出づ。○瑗は、于眷反。

遂行、從近關出。告右宰穀。衛大夫。
【読み】
遂に行[さ]り、近關より出づ。右宰穀に告ぐ。衛の大夫。

右宰穀曰、不可。獲罪於兩君、前出獻公、今弑剽。
【読み】
右宰穀曰く、不可なり。罪を兩君に獲ば、前に獻公を出だし、今剽を弑す。

天下誰畜之。畜、猶容也。○畜、許六反。
【読み】
天下誰か之を畜[やしな]わん、と。畜は、猶容るるのごとし。○畜は、許六反。

悼子曰、吾受命於先人。不可以貳。悼子、甯喜也。受命、在二十年。
【読み】
悼子曰く、吾れ命を先人に受けたり。以て貳ある可からず、と。悼子は、甯喜なり。命を受くること、二十年に在り。

穀曰、我請使焉而觀之。觀、知可還否。○使、所吏反。還、音環。
【読み】
穀曰く、我れ請う、使いして之を觀ん、と。觀るは、還る可きや否やを知るなり。○使は、所吏反。還は、音環。

遂見公於夷儀。反曰、君淹恤在外十二年矣。淹、久也。
【読み】
遂に公に夷儀に見ゆ。反りて曰く、君淹恤して外に在ること十二年なり。淹は、久しきなり。

而無憂色、亦無寬言、猶夫人也。言其爲人猶如故。○夫、音扶。
【読み】
而るに憂色無く、亦寬言無く、猶夫の人なり。言うこころは、其の人と爲り猶故の如し。○夫は、音扶。

若不已、死無日矣。已、止也。
【読み】
若し已まずんば、死せんこと日無けん、と。已は、止むなり。

悼子曰、子鮮在。右宰穀曰、子鮮在何益。多而能亡。於我何爲。言子鮮爲義、多不過亡出。
【読み】
悼子曰く、子鮮在り、と。右宰穀曰く、子鮮在りて何の益あらん。多くとも能く亡せんのみ。我に於て何をかせん、と。言うこころは、子鮮が義を爲す、多くとも亡出するに過ぎず。

悼子曰、雖然、不可以已。
【読み】
悼子曰く、然りと雖も、以て已む可からず、と。

孫文子在戚、孫嘉聘於齊、孫襄居守。二子、孫文子之子。
【読み】
孫文子は戚に在り、孫嘉は齊に聘し、孫襄のみ居守す。二子は、孫文子の子。

二月、庚寅、甯喜・右宰穀伐孫氏。不克。伯國傷。伯國、孫襄也。父兄皆不在。故乘弱攻之。
【読み】
二月、庚寅[かのえ・とら]、甯喜・右宰穀孫氏を伐つ。克たず。伯國傷つく。伯國は、孫襄なり。父兄皆在らず。故に弱みに乘じて之を攻む。

甯子出舍於郊。欲奔。
【読み】
甯子出でて郊に舍[やど]る。奔らんと欲す。

伯國死、孫氏夜哭。國人召甯子。甯子復攻孫氏克之。辛卯、殺子叔及大子角。子叔、衛侯剽。言子叔、剽無謚故。
【読み】
伯國死して、孫氏夜哭す。國人甯子を召ぶ。甯子復孫氏を攻めて之に克つ。辛卯、子叔と大子角とを殺す。子叔は、衛侯剽。子叔と言うは、剽謚無き故なり。

書曰甯喜弑其君剽、言罪之在甯氏也。嫌受父命納舊君無罪。故發之。
【読み】
書して甯喜其の君剽を弑すと曰うは、罪の甯氏に在るを言うなり。父の命を受けて舊君を納るるは罪無きに嫌あり。故に之を發す。

孫林父以戚如晉。以邑屬晉。
【読み】
孫林父戚を以て晉に如く。邑を以て晉に屬す。

書曰入于戚以叛、罪孫氏也。
【読み】
書して戚に入り以[い]て叛くと曰うは、孫氏を罪するなり。

臣之祿、君實有之。義則進、否則奉身而退。專祿以周旋、戮也。林父事剽而衎入。義可以退。唯以專邑自隨爲罪。故傳發之。
【読み】
臣の祿は、君實に之を有つ。義なれば則ち進み、否らざれば則ち身を奉じて退かんのみ。祿を專にして以て周旋するは、戮[つみ]なり。林父剽に事えて衎入る。義以て退く可し。唯邑を專にして自ら隨うるを以て罪と爲す。故に傳之を發す。

甲午、衛侯入。書曰復歸、國納之也。本晉納之夷儀。今從夷儀入國。嫌若晉所納。故發國納之例、言國之所納、而復其位。
【読み】
甲午、衛侯入る。書して復歸すと曰うは、國之を納るればなり。本晉之を夷儀に納る。今夷儀より國に入る。晉の納るる所の若きに嫌あり。故に國納の例を發して、國の納るる所にして、其の位に復るを言う。

大夫逆於竟者、執其手而與之言、道逆者、自車揖之、逆於門者、頷之而已。頷、搖其頭。言衎驕心易生。○竟、音境。頷、五感反。
【読み】
大夫の竟に逆うる者には、其の手を執りて之と言い、道に逆うる者には、車より之を揖し、門に逆うる者には、之を頷するのみ。頷は、其の頭を搖[うご]かすなり。衎の驕心生じ易きを言う。○竟は、音境。頷は、五感反。

公至。使讓大叔文子曰、寡人淹恤在外、二三子皆使寡人、朝夕聞衛國之言、二三子、諸大夫。
【読み】
公至る。大叔文子を讓[せ]めしめて曰く、寡人淹恤して外に在るとき、二三子皆寡人をして、朝夕衛國の言を聞かしめしに、二三子は、諸大夫。

吾子獨不在寡人。在、存問之。公聞文子答甯喜之言。故忿之。
【読み】
吾子獨り寡人に在らず。在とは、之を存問するなり。公文子甯喜に答うるの言を聞く。故に之を忿るなり。

古人有言曰、非所怨勿怨。寡人怨矣。所怨在親親。
【読み】
古人言えること有り曰く、怨むる所に非ざれば怨むること勿かれ、と。寡人怨む、と。怨むる所は親親に在り。

對曰、臣知罪矣。臣不佞、不能負羈絏以從扞牧圉。臣之罪一也。有出者、有居者、出、謂衎、居、謂剽也。○絏、息列反。扞、戶幹反。
【読み】
對えて曰く、臣罪を知れり。臣不佞、羈絏[きせつ]を負いて以て從いて牧圉を扞[まも]ること能わず。臣の罪一なり。出づる者有り、居る者有り、出づるとは、衎を謂い、居るとは、剽を謂うなり。○絏は、息列反。扞は、戶幹反。

臣不能貳通外内之言以事君。臣之罪二也。有二罪。敢忘其死。乃行、從近關出。公使止之。傳言衛侯不能安和大臣。
【読み】
臣貳ありて外内の言を通じて以て君に事うること能わず。臣の罪二なり。二罪有り。敢えて其の死を忘れんや、と。乃ち行[さ]り、近關より出づ。公之を止めしむ。傳衛侯大臣を安和すること能わざるを言う。

衛人侵戚東鄙。以林父叛故。
【読み】
衛人戚の東鄙を侵す。林父の叛くを以ての故なり。

孫氏愬于晉。晉戍茅氏。茅氏、戚東鄙。
【読み】
孫氏晉に愬[うった]う。晉茅氏[ぼうし]を戍[まも]る。茅氏は、戚の東鄙。

殖綽伐茅氏、殺晉戍三百人。殖綽、齊人。今來在衛。
【読み】
殖綽茅氏を伐ち、晉の戍三百人を殺す。殖綽は、齊人。今來りて衛に在り。

孫蒯追之、弗敢擊。文子曰、厲之不如。厲、惡鬼也。
【読み】
孫蒯之を追い、敢えて擊たず。文子曰く、厲にだも如かず、と。厲は、惡鬼なり。

遂從衛師、敗之圉、蒯感父言、更還遂殖綽。圉、衛地。
【読み】
遂に衛の師を從いて、之を圉[ぎょ]に敗り、蒯父の言に感じて、更に還りて殖綽を遂う。圉は、衛の地。

雍鉏獲殖綽。雍鉏、孫氏臣。
【読み】
雍鉏殖綽を獲たり。雍鉏は、孫氏の臣。

復愬于晉。爲下晉討衛張本。
【読み】
復晉に愬う。下の晉衛を討ずる爲の張本なり。

鄭伯賞入陳之功、入陳、在前年。
【読み】
鄭伯陳に入るの功を賞し、陳に入るは、前年に在り。

三月、甲寅、朔、享子展、賜之先路三命之服、先路・次路、皆王所賜車之總名。蓋請之於王。
【読み】
三月、甲寅[きのえ・とら]、朔、子展を享して、之に先路三命の服を賜いて、先路・次路は、皆王の賜う所の車の總名。蓋し之を王に請いしならん。

先八邑。以路及命服爲邑先。八邑、三十二井。○先、悉薦反。
【読み】
八邑に先だつ。路と命服とを以て邑の先と爲す。八邑は、三十二井。○先は、悉薦反。

賜子產次路再命之服、先六邑。子產辭邑曰、自上以下、隆殺以兩、禮也。臣之位在四。上卿、子展。次卿、子西。十一年、良霄見經。十九年、乃立子產爲卿。故位在四。○殺、所界反。
【読み】
子產に次路再命の服を賜いて、六邑に先だつ。子產邑を辭して曰く、上より以下、隆殺兩を以てするは、禮なり。臣の位四に在り。上卿は、子展。次卿は、子西。十一年に、良霄[りょうしょう]經に見ゆ。十九年に、乃ち子產を立てて卿と爲す。故に位四に在り。○殺は、所界反。

且子展之功也。臣不敢及賞禮。請辭邑。賞禮、以禮見賞。謂六邑也。
【読み】
且つ子展の功なり。臣敢えて賞禮に及ばず。請う、邑を辭す、と。賞禮は、禮を以て賞せらるなり。六邑を謂うなり。

公固予之。乃受三邑。位次當受二邑。以公固與之、故受三邑。
【読み】
公固く之に予う。乃ち三邑を受く。位次當に二邑を受くべし。公固く之を與うるを以て、故に三邑を受く。

公孫揮曰、子產其將知政矣。知國政。
【読み】
公孫揮曰く、子產其れ將に政を知らんとす。國政を知る。

讓不失禮。
【読み】
讓りて禮を失わず、と。

晉人爲孫氏故、召諸侯。將以討衛也。
【読み】
晉人孫氏の爲の故に、諸侯を召す。將に以て衛を討ぜんとするなり。

夏、中行穆子來聘、召公也。召公爲澶淵會。
【読み】
夏、中行穆子來聘するは、公を召すなり。公を召して澶淵の會を爲す。

楚子・秦人侵吳、及雩婁、聞吳有備而還。雩婁、今屬安豐郡。○婁、如字。徐力倶反。
【読み】
楚子・秦人吳を侵して、雩婁[うろう]に及び、吳備え有りと聞きて還る。雩婁は、今安豐郡に屬す。○婁は、字の如し。徐力倶反。

遂侵鄭。
【読み】
遂に鄭を侵す。

五月、至于城麇。鄭皇頡戍之、皇頡、鄭大夫。守城麇之邑。○麇、九倫反。頡、戶結反。
【読み】
五月、城麇[じょうきん]に至る。鄭の皇頡[こうけつ]之を戍り、皇頡は、鄭の大夫。城麇の邑を守る。○麇は、九倫反。頡は、戶結反。

出與楚師戰、敗。穿封戌囚皇頡、公子圍與之爭之、公子圍、共王子、靈王也。○戌、音恤。
【読み】
出でて楚の師と戰いて、敗らる。穿封戌[せんほうじゅつ]皇頡を囚えて、公子圍之と之を爭い、公子圍は、共王の子、靈王なり。○戌は、音恤。

正於伯州犂。正曲直也。
【読み】
伯州犂[はくしゅうれい]に正す。曲直を正すなり。

伯州犂曰、請問於囚。乃立囚。伯州犂曰、所爭君子也。其何不知。言王子圍及穿封戌、皆非細人。易別識也。
【読み】
伯州犂曰く、請う、囚に問わん、と。乃ち囚を立つ。伯州犂曰く、爭う所は君子なり。其れ何ぞ知らざらん、と。言うこころは、王子圍と穿封戌とは、皆細人に非ず。別識し易きなり。

上其手曰、夫子爲王子圍。寡君之貴介弟也。介、大也。
【読み】
其の手を上げて曰く、夫子を王子圍と爲す。寡君の貴介弟なり、と。介は、大なり。

下其手曰、此子爲穿封戌。方城外之縣尹也。誰獲子。上下手以道囚意。
【読み】
其の手を下げて曰く、此の子を穿封戌と爲す。方城外の縣尹なり。誰か子を獲たる、と。手を上下して以て囚の意を道[みちび]く。

囚曰、頡遇王子弱焉。弱、敗也。言爲王子所得。
【読み】
囚曰く、頡王子に遇いて弱[やぶ]れたり、と。弱は、敗るるなり。言うこころは、王子の爲に得らる。

戌怒、抽戈逐王子圍。弗及。楚人以皇頡歸。
【読み】
戌怒り、戈を抽きて王子圍を逐う。及ばず。楚人皇頡を以[い]て歸る。

印堇父與皇頡戍城麇。印堇父、鄭大夫。
【読み】
印堇父[いんきんぽ]皇頡と城麇を戍る。印堇父は、鄭の大夫。

楚人囚之以獻於秦。鄭人取貨於印氏以請之。子大叔爲令正。主作辭令之正。
【読み】
楚人之を囚えて以て秦に獻ず。鄭人貨を印氏に取りて以て之を請わんとす。子大叔令正爲り。辭令を作ることを主るの正。

以爲請。子產曰、不獲。謂大叔辭以貨請堇父必不得。○爲、去聲。
【読み】
以て爲に請わんとす。子產曰く、獲られざらん。大叔の辭にて貨を以て堇父を請うも必ず得られざるを謂う。○爲は、去聲。

受楚之功、而取貨於鄭、不可謂國。秦不其然。受楚獻功、大名也。以貨免之、小利也。故謂秦不爾。
【読み】
楚の功を受けて、貨を鄭に取らば、國と謂う可からず。秦其れ然らざらん。楚の功を獻ずるを受くるは、大名なり。貨を以て之を免すは、小利なり。故に秦爾らずと謂う。

若曰拜君之勤。鄭國微君之惠、楚師其猶在敝邑之城下、其可。辭如此、堇父可得。
【読み】
若し君の勤めたるを拜す。鄭國君の惠み微かりせば、楚の師は其れ猶敝邑の城下に在らんと曰わば、其れ可ならん、と。辭此の如くにして、堇父得可し。

弗從。遂行。秦人不予。更幣、從子產、而後獲之。更遣使執幣、用子產辭、乃得堇父。傳稱子產之善。
【読み】
從わず。遂に行く。秦人予えず。更に幣して、子產に從いて、而して後に之を獲たり。更に使いを遣わして幣を執りて、子產の辭を用いて、乃ち堇父を得たり。傳子產の善きを稱す。

六月、公會晉趙武・宋向戌・鄭良霄・曹人于澶淵以討衛、疆戚田。正戚之封疆。
【読み】
六月、公晉の趙武・宋の向戌・鄭の良霄・曹人に澶淵に會して以て衛を討じて、戚の田を疆う。戚の封疆を正しくす。

取衛西鄙懿氏六十以與孫氏。戚城西北五十里有懿城。因姓以名城。取田六十井也。
【読み】
衛の西鄙懿氏六十を取りて以て孫氏に與う。戚城の西北五十里に懿城有り。姓に因りて以て城に名づく。田六十井を取るなり。

趙武不書、尊公也。罪武會公侯。
【読み】
趙武書さざるは、公を尊びてなり。武が公侯に會するを罪す。

向戌不書、後也。後會期。
【読み】
向戌書さざるは、後れたればなり。會期に後るるなり。

鄭先宋、不失所也。如期至。
【読み】
鄭宋に先だつは、所を失わざればなり。期の如くにして至る。

於是衛侯會之。晉將執之、不得與會。故不書。
【読み】
是に於て衛侯之に會す。晉將に之を執えんとして、會に與ることを得ず。故に書さず。

晉人執寧喜・北宮遺、使女齊以先歸。討其弑君伐孫氏也。遺、北宮括之子。女齊、司馬侯。歸晉而後告諸侯。故經書在秋。○女、音汝。
【読み】
晉人寧喜・北宮遺を執え、女齊をして以て先ず歸らしむ。其の君を弑し孫氏を伐つを討ずるなり。遺は、北宮括の子。女齊は、司馬侯。晉に歸りて後に諸侯に告ぐ。故に經には書して秋に在り。○女は、音汝。

衛侯如晉。晉人執而囚之於士弱氏。士弱、晉主獄大夫。
【読み】
衛侯晉に如く。晉人執えて之を士弱氏に囚う。士弱は、晉の獄を主る大夫。

秋、七月、齊侯・鄭伯爲衛侯故、如晉。欲共請之。
【読み】
秋、七月、齊侯・鄭伯衛侯の爲の故に、晉に如く。共に之を請わんと欲す。

晉侯兼享之。晉侯賦嘉樂。嘉樂、詩大雅。取其嘉樂君子、顯顯令德、宜民宜人、受祿于天。○嘉、戶嫁反。
【読み】
晉侯兼ねて之を享す。晉侯嘉樂を賦す。嘉樂は、詩の大雅。其の嘉樂の君子、顯顯たる令德あり、民に宜しく人に宜しく、祿を天に受くるというに取る。○嘉は、戶嫁反。

國景子相齊侯、景子、國弱。
【読み】
國景子齊侯を相けて、景子は、國弱。

賦蓼蕭。蓼蕭、詩小雅。言大平澤及遠、若露之在蕭。以喩晉君恩澤及諸侯。○蓼、音六。
【読み】
蓼蕭[りくしょう]を賦す。蓼蕭は、詩の小雅。言うこころは、大平の澤遠くに及ぶこと、露の蕭に在るが若し。以て晉君の恩澤諸侯に及ぶに喩う。○蓼は、音六。

子展相鄭伯、賦緇衣。緇衣、詩鄭風。義取適子之館兮、還予授子之粲兮。言不敢違遠於晉。
【読み】
子展鄭伯を相けて、緇衣[しい]を賦す。緇衣は、詩の鄭風。義子の館に適き、還らば予れ子に粲[さん]を授けんというに取る。言うこころは、敢えて晉に違遠せざるなり。

叔向命晉侯拜二君。曰、寡君敢拜齊君之安我先君之宗祧也、敢拜鄭君之不貳也。蓼蕭・緇衣、二詩所趣各不同。故拜二君辭異。
【読み】
叔向晉侯に命じて二君を拜せしむ。曰く、寡君敢えて齊君の我が先君の宗祧[そうちょう]を安んずるを拜し、敢えて鄭君の貳あらざるを拜す、と。蓼蕭・緇衣、二詩の趣く所各々同じからず。故に二君を拜するの辭異なり。

國子使晏平仲私於叔向、私與叔向語。
【読み】
國子晏平仲をして叔向に私せしめて、私に叔向と語る。

曰、晉君宣其明德於諸侯、恤其患而補其闕、正其違而治其煩。所以爲盟主也。今爲臣執君。若之何。謂晉爲林父執衛侯。
【読み】
曰く、晉君其の明德を諸侯に宣べ、其の患えを恤えて其の闕くるを補い、其の違えるを正しくして其の煩わしきを治む。盟主爲る所以なり。今臣の爲に君を執う。之を若何、と。晉林父が爲に衛侯を執うるを謂う。

叔向告趙文子。文子以告晉侯。晉侯言衛侯之罪、使叔向告二君。言自以殺晉戍三百人爲罪。不以林父故。
【読み】
叔向趙文子に告ぐ。文子以て晉侯に告ぐ。晉侯衛侯の罪を言いて、叔向をして二君に告げしむ。言うこころは、自ら晉の戍三百人を殺すを以て罪と爲す。林父の故を以てせず。

國子賦轡之柔矣。逸詩。見周書。義取寬政以安諸侯、若柔轡之御剛馬。
【読み】
國子轡之柔矣[ひしじゅうし]を賦す。逸詩。周書に見ゆ。義寬政以て諸侯を安んずること、柔轡の剛馬を御するが若くなるに取る。

子展賦將仲子兮。將仲子、詩鄭風。義取衆言可畏。衛侯雖別有罪、而衆人猶謂晉爲臣執君。○將、七羊反。
【読み】
子展將仲子兮[しょうちゅうしけい]を賦す。將仲子は、詩の鄭風。義衆言畏る可しというに取る。衛侯別に罪有りと雖も、而れども衆人猶晉を臣の爲に君を執うと謂わん。○將は、七羊反。

晉侯乃許歸衛侯。
【読み】
晉侯乃ち衛侯を歸さんことを許す。

叔向曰、鄭七穆、罕氏其後亡者也。子展儉而壹。子展、鄭子罕之子。居身儉、而用心壹。鄭穆公十一子。子然、二子孔、三族已亡。子羽不爲卿。故唯言七穆。○鄭七穆、謂子展公孫舍之、罕氏也。子西公孫夏、駟氏也。子產公孫僑、國氏也。伯有良霄、良氏也。子大叔游吉、游氏也。子石公孫段、豐氏也。伯石印段、印氏也。穆公十一子、謂子良公子去疾也。子罕公子喜也。子駟公子騑也。子國公子發也。子孔公子嘉也。子游公子偃也。子豐也。子印也。子羽也。子然也。士子孔也。子然二子孔已亡、子羽不爲卿。故止七也。
【読み】
叔向曰く、鄭の七穆にては、罕氏は其れ後に亡びん者なり。子展儉にして壹なり、と。子展は、鄭の子罕の子。身を居くこと儉にして、心を用ゆること壹なり。鄭の穆公十一子あり。子然と、二りの子孔の、三族は已に亡ぶ。子羽は卿爲らず。故に唯七穆と言う。○鄭の七穆は、子展公孫舍之は、罕氏なり。子西公孫夏は、駟氏なり。子產公孫僑は、國氏なり。伯有良霄は、良氏なり。子大叔游吉は、游氏なり。子石公孫段は、豐氏なり。伯石印段は、印氏なりと謂う。穆公十一子は、子良公子去疾なり。子罕公子喜なり。子駟公子騑なり。子國公子發なり。子孔公子嘉なり。子游公子偃なり。子豐なり。子印なり。子羽なり。子然なり。士子孔なりと謂う。子然二子孔已に亡び、子羽卿爲らず。故に止[ただ]七なり。

初、宋芮司徒生女子。芮司徒、宋大夫。○芮、如銳反。
【読み】
初め、宋の芮司徒[ぜいしと]女子を生む。芮司徒は、宋の大夫。○芮は、如銳反。

赤而毛。棄諸堤下。共姬之妾取以入、共姬、宋伯姬也。
【読み】
赤くして毛あり。諸を堤下に棄つ。共姬の妾取りて以て入り、共姬は、宋の伯姬なり。

名之曰棄。長而美。平公入夕。平公、共姬子也。○長、長丈反。
【読み】
之を名づけて棄と曰う。長じて美なり。平公入りて夕す。平公は、共姬の子なり。○長は、長丈反。

共姬與之食。公見棄也、而視之尤。尤、甚也。
【読み】
共姬之と食う。公棄を見て、之を視て尤[はなは]だし。尤は、甚だなり。

姬納諸御。嬖。生佐。佐、元公。
【読み】
姬諸を御に納る。嬖せらる。佐を生む。佐は、元公。

惡而婉。佐貌惡而心順。
【読み】
惡[みにく]くして婉なり。佐貌惡くして心順なり。

大子痤美而很。貌美而心很戾。○很、胡懇反。
【読み】
大子痤美にして很[こん]なり。貌美にして心很戾なり。○很は、胡懇反。

合左師畏而惡之。合左師、向戌。○惡、烏路反。
【読み】
合左師畏れて之を惡む。合左師は、向戌。○惡は、烏路反。

寺人惠牆伊戾爲大子内師而無寵。惠牆、氏。伊戾、名。
【読み】
寺人惠牆伊戾大子の内師として寵無し。惠牆は、氏。伊戾は、名。

秋、楚客聘於晉、過宋。上已有秋、復發傳者、中閒有初、不言秋、則嫌楚客過在他年。
【読み】
秋、楚の客晉に聘して、宋を過ぐ。上已に秋有り、復傳を發するは、中閒に初有れば、秋を言わざれば、則ち楚の客の過ぐること他年に在るに嫌あり。

大子知之。請野享之。公使往。伊戾請從之。公曰、夫不惡女乎。夫、謂大子也。○夫、音扶。女、音汝。
【読み】
大子之を知る。野にして之を享せんと請う。公往かしむ。伊戾之に從わんと請う。公曰く、夫[かれ]女を惡まずや、と。夫は、大子を謂うなり。○夫は、音扶。女は、音汝。

對曰、小人之事君子也、惡之不敢遠、好之不敢近、敬以待命。敢有貳心乎。縱有共其外、莫共其内。伊戾爲大子内師。不行、恐内侍廢闕。○遠、于萬反。好、呼報反。
【読み】
對えて曰く、小人の君子に事うるや、之に惡まるも敢えて遠ざからず、之に好んぜらるも敢えて近づかず、敬して以て命を待つのみ。敢えて貳心有らんや。縱[たと]い其の外に共すること有りとも、其の内に共すること莫からん。伊戾は大子の内師爲り。行かずんば、恐らくは内侍廢闕せん。○遠は、于萬反。好は、呼報反。

臣請往也。遣之。至則欿用牲、加書徵之、詐作盟處、爲大子反。徵、驗也。○欿、古感反。
【読み】
臣請う、往かん、と。之を遣る。至れば則ち欿[あな]して牲を用い、書を加えて之を徵とし、詐りて盟處を作り、大子反すと爲す。徵は、驗なり。○欿は、古感反。

而騁告公、騁、馳也。○騁、勑景反。
【読み】
騁[は]せて公に告げて、騁[てい]は、馳すなり。○騁は、勑景反。

曰、大子將爲亂。旣與楚客盟矣。公曰、爲我子。又何求。對曰、欲速。言欲速得公位。
【読み】
曰く、大子將に亂を爲さんとす。旣に楚の客と盟えり、と。公曰く、我が子爲り。又何をか求めん、と。對えて曰く、速やかならんことを欲するなり、と。言うこころは、速やかに公位を得んことを欲するなり。

公使視之、則信有焉。有盟徵也。
【読み】
公之を視せしむれば、則ち信に焉れ有り。盟徵有るなり。

問諸夫人與左師、夫人、佐母、棄也。
【読み】
諸を夫人と左師とに問えば、夫人は、佐の母、棄なり。

則皆曰、固聞之。公囚大子。大子曰、唯佐也能免我。以其婉也。
【読み】
則ち皆曰く、固より之を聞けり、と。公大子を囚う。大子曰く、唯佐や能く我を免れしめん、と。其の婉なるを以てなり。

召而使請。曰、日中不來、吾知死矣。左師聞之、聒而與之語。聒、讙也。欲使佐失期。○讙、呼端反。
【読み】
召して請わしめんとす。曰く、日中まで來らずんば、吾れ死することを知らん、と。左師之を聞きて、聒[かまびす]しくして之と語る。聒[かつ]は、讙しきなり。佐をして期を失わしめんと欲す。讙[かん]は、呼端反。

過期。乃縊而死。佐爲大子。公徐聞其無罪也、乃亨伊戾。
【読み】
期を過ぐ。乃ち縊れて死す。佐大子と爲る。公徐[ようや]く其の罪無きを聞き、乃ち伊戾を亨[に]る。

左師見夫人之步馬者、步馬、習馬。○縊、一賜反。亨、普彭反。
【読み】
左師夫人の馬を步まする者を見て、馬を步まするとは、馬を習わすなり。○縊は、一賜反。亨は、普彭反。

問之。對曰、君夫人氏也。左師曰、誰爲君夫人。余胡弗知。圉人歸以告夫人。夫人使饋之錦與馬、先之以玉、以玉爲錦馬之先。○先、悉薦反。又如字。
【読み】
之を問う。對えて曰く、君夫人氏のなり、と。左師曰く、誰をか君夫人と爲せる。余胡ぞ知らざらん、と。圉人歸りて以て夫人に告ぐ。夫人之に錦と馬とを饋り、之に先んずるに玉を以てして、玉を以て錦馬の先とす。○先は、悉薦反。又字の如し。

曰君之妾棄使某獻、左師改命曰君夫人、而後再拜稽首受之。左師令使者改命也。傳言宋公闇、左師諛、大子所以無罪而死。
【読み】
君の妾棄某をして獻ぜしむと曰わば、左師命を改めて君夫人と曰わせて、而して後に再拜稽首して之を受けり。左師使者をして命を改めしむるなり。傳宋公闇く、左師諛いて、大子罪無くして死する所以を言う。

鄭伯歸自晉、請衛侯歸。
【読み】
鄭伯晉より歸り、衛侯を請いて歸る。

使子西如晉聘。辭曰、寡君來煩執事。懼不免於戾。言自懼失敬於大國而得罪。
【読み】
子西をして晉に如きて聘せしむ。辭して曰く、寡君來りて執事を煩わせり。戾[つみ]に免れざらんことを懼る。言うこころは、自ら敬を大國に失して罪を得ざらんことを懼る。

使夏謝不敏。夏、子西名。
【読み】
夏をして不敏を謝せしむ、と。夏は、子西の名。

君子曰、善事大國。將求於人、必先下之。言鄭所以能自安。
【読み】
君子曰く、善く大國に事えり、と。將に人に求めんとすれば、必ず先ず之に下る。鄭の能く自ら安んずる所以を言う。

初、楚伍參與蔡大師子朝友。其子伍舉與聲子相善也。聲子、子朝之子。伍舉、子胥祖父、椒舉也。○朝、如字。
【読み】
初め、楚の伍參蔡の大師子朝と友たり。其の子伍舉聲子と相善し。聲子は、子朝の子。伍舉は、子胥の祖父、椒舉なり。○朝は、字の如し。

伍舉娶於王子牟。王子牟爲申公而亡。獲罪出奔。
【読み】
伍舉王子牟[ぼう]に娶る。王子牟申公と爲りて亡ぐ。罪を獲て出奔す。

楚人曰、伍舉實送之。伍舉奔鄭。將遂奔晉。聲子將如晉、遇之於鄭郊、班荆相與食、而言復故。班、布也。布荆坐地、共議歸楚事。朋友世親。
【読み】
楚人曰く、伍舉實に之を送れり、と。伍舉鄭に奔る。將に遂に晉に奔らんとす。聲子將に晉に如かんとし、之に鄭の郊に遇い、荆を班[し]きて相與に食いて、復らん故[こと]を言う。班は、布くなり。荆を布きて地に坐して、共に楚に歸る事を議す。朋友世々親しければなり。

聲子曰、子行也。吾必復子。及宋向戌將平晉・楚、平、在明年。
【読み】
聲子曰く、子行け。吾れ必ず子を復さん、と。宋の向戌が將に晉・楚を平らげんとするに及びて、平らぐるは、明年に在り。

聲子通使於晉。爲國通平事。
【読み】
聲子使いを晉に通ず。國の爲に平事を通ずるなり。

還、如楚。令尹子木與之語、問晉故焉、故、事。
【読み】
還りて、楚に如く。令尹子木之と語り、晉の故を問い、故は、事。

且曰、晉大夫與楚孰賢。對曰、晉卿不如楚、其大夫則賢。皆卿材也。如杞梓・皮革自楚往也。杞梓、皆木名。
【読み】
且つ曰く、晉の大夫と楚の孰れか賢れる、と。對えて曰く、晉の卿は楚に如かざれども、其の大夫は則ち賢なり。皆卿の材なり。杞梓・皮革の楚より往くが如し。杞梓は、皆木の名。

雖楚有材、晉實用之。言楚亡臣多在晉。
【読み】
楚に材有りと雖も、晉實に之を用いたり、と。言うこころは、楚の亡臣多く晉に在り。

子木曰、夫獨無族姻乎。夫、謂晉。
【読み】
子木曰く、夫[かれ]獨り族姻無からんや、と。夫は、晉を謂う。

對曰、雖有、而用楚材實多。
【読み】
對えて曰く、有りと雖も、而れども楚の材を用ゆること實に多し。

歸生聞之、歸生、聲子名。
【読み】
歸生之を聞く、歸生は、聲子の名。

善爲國者、賞不僭而刑不濫。賞僭、則懼及淫人、刑濫、則懼及善人。若不幸而過、寧僭無濫。與其失善、寧其利淫。無善人、則國從之。從之亡也。
【読み】
善く國を爲むる者は、賞僭[たが]わずして刑濫[みだ]りならず、と。賞僭えば、則ち淫人に及ばんことを懼れ、刑濫るれば、則ち善人に及ばんことを懼る。若し不幸にして過つとも、寧ろ僭うとも濫りなること無かれ。其の善を失わんよりは、寧ろ其れ淫を利せん。善人無ければ、則ち國之に從う。之に從いて亡ぶるなり。

詩曰、人之云亡、邦國殄瘁、無善人之謂也。詩、大雅。殄、盡也。瘁、病也。
【読み】
詩に曰く、人の云[ここ]に亡ぶる、邦國殄瘁[てんすい]すとは、善人無きを謂うなり。詩は、大雅。殄は、盡くるなり。瘁は、病むなり。

故夏書曰、與其殺不辜、寧失不經、懼失善也。逸書也。不經、不用常法。
【読み】
故に夏書に曰く、其の不辜を殺さんよりは、寧ろ不經に失せんとは、善を失わんことを懼れてなり。逸書なり。不經は、常法を用いざるなり。

商頌有之曰、不僭不濫、不敢怠皇、命于下國、封建厥福。詩商頌。言殷湯賞不僭差、刑不濫溢、不敢怠解自寬暇。故能爲下國所命、爲天子。
【読み】
商頌に之れ有り曰く、僭わず濫りならず、敢えて怠皇せず、下國に命ぜられて、封[おお]いに厥の福を建てり、と。詩は商頌。言うこころは、殷湯賞僭差せず、刑濫溢[らんいつ]せず、敢えて怠解して自ら寬暇せず。故に能く下國の爲に命ぜられて、天子と爲れり。

此湯所以獲天福也。
【読み】
此れ湯の天福を獲し所以なり。

古之治民者、勸賞而畏刑、樂行賞而憚用刑。
【読み】
古の民を治むる者は、賞に勸[たの]しみて刑を畏れ、賞を行うことを樂しみて刑を用ゆることを憚る。

恤民不倦、賞以春夏、刑以秋冬。順天時。
【読み】
民を恤えて倦まず、賞するは春夏を以てし、刑するは秋冬を以てす。天の時に順う。

是以將賞、爲之加膳。加膳則飫賜。飫、饜也。酒食賜下、無不饜足。所謂加膳也。
【読み】
是を以て將に賞せんとすれば、之が爲に膳を加う。膳を加うれば則ち賜に飫[あ]かしむ。飫[よ]は、饜[あ]くなり。酒食下に賜いて、饜足[えんそく]せざること無し。所謂膳を加うるなり。

此以知其勸賞也。將刑、爲之不舉。不舉則徹樂。不舉盛饌。
【読み】
此を以て其の賞を勸しむことを知るなり。將に刑せんとすれば、之が爲に舉せず。舉せざれば則ち樂を徹す。盛饌[せいせん]を舉げず。

此以知其畏刑也。夙興夜寐、朝夕臨政。此以知其恤民也。三者禮之大節也。有禮無敗。
【読み】
此を以て其の刑を畏るることを知るなり。夙に興き夜に寐ねて、朝夕政に臨む。此を以て其の民を恤うることを知るなり。三つの者は禮の大節なり。禮有れば敗るること無し。

今楚多淫刑。其大夫逃死於四方、而爲之謀主、以害楚國、不可救療。所謂不能也。療、治也。所謂楚人不能用其材也。
【読み】
今楚は淫刑多し。其の大夫の死を四方に逃れて、之が謀主と爲りて、以て楚國を害すること、救療す可からず。所謂能わざるなり。療は、治むるなり。所謂楚人其の材を用ゆること能わざるなり。

子儀之亂、析公奔晉。在文十四年。
【読み】
子儀の亂に、析公晉に奔る。文十四年に在り。

晉人寘諸戎車之殿、以爲謀主。殿、後軍。○殿、多練反。
【読み】
晉人諸を戎車の殿に寘きて、以て謀主と爲す。殿は、後軍。○殿は、多練反。

繞角之役、晉將遁矣。析公曰、楚師輕窕、易震蕩也。若多鼓鈞聲以夜軍之、鈞同其聲。○窕、勑堯反。又通弔反。
【読み】
繞角[じょうかく]の役に、晉將に遁げんとす。析公曰く、楚の師輕窕[けいちょう]にして、震蕩し易し。若し鼓を多くし聲を鈞[ひと]しくして夜を以て之に軍せば、其の聲を鈞同す。○窕は、勑堯反。又通弔反。

楚師必遁。晉人從之、楚師宵潰。晉遂侵蔡、襲沈獲其君、敗申息之師於桑隧、獲申麗而還。成六年、晉欒書救鄭與楚師遇於繞角。楚師還。晉侵沈獲沈子。八年、復侵楚敗申息、獲申麗。○麗、力馳反。
【読み】
楚の師必ず遁げん、と。晉人之に從い、楚の師宵潰ゆ。晉遂に蔡を侵し、沈を襲いて其の君を獲、申息の師を桑隧に敗り、申麗を獲て還れり。成六年、晉の欒書鄭を救いて楚の師と繞角に遇う。楚の師還る。晉沈を侵して沈子を獲。八年、復楚を侵して申息を敗り、申麗を獲。○麗は、力馳反。

鄭於是不敢南面、楚失華夏、則析公之爲也。
【読み】
鄭是に於て敢えて南面せず、楚華夏を失いしは、則ち析公の爲[しわざ]なり。

雍子之父兄譖雍子、君與大夫不善是也。不是其曲直。
【読み】
雍子の父兄雍子を譖せしとき、君と大夫と善く是[ただ]さず。其の曲直を是さず。

雍子奔晉。晉人與之鄐、鄐、晉邑。○鄐、許六反。又超六反。
【読み】
雍子晉に奔る。晉人之に鄐[きく]を與えて、鄐は、晉の邑。○鄐は、許六反。又超六反。

以爲謀主。彭城之役、晉・楚遇於靡角之谷、在成十八年。
【読み】
以て謀主と爲す。彭城の役に、晉・楚靡角の谷に遇い、成十八年に在り。

晉將遁矣。雍子發命於軍曰、歸老幼、反孤疾、二人役歸一人、簡兵蒐乘、簡、擇。蒐、閱。
【読み】
晉將に遁げんとす。雍子命を軍に發して曰く、老幼を歸し、孤疾を反し、二人役するは一人を歸し、兵を簡[えら]び乘を蒐し、簡は、擇ぶ。蒐は、閱す。

秣馬蓐食、師陳焚次。次、舍也。焚舍、示必死。○陳、直覲反。
【読み】
馬に秣[まぐさか]い蓐に食い、師陳して次を焚け。次は、舍なり。舍を焚くとは、必死を示すなり。○陳は、直覲反。

明日將戰。行歸者、而逸楚囚、欲使楚知之。
【読み】
明日將に戰わんとす、と。歸る者を行かせて、楚の囚を逸[ゆる]せば、楚をして之を知らしめんと欲す。

楚師宵潰。晉降彭城而歸諸宋、以魚石歸。在元年。○降、戶江反。
【読み】
楚の師宵潰えぬ。晉彭城を降して諸を宋に歸して、魚石を以[い]て歸れり。元年に在り。○降は、戶江反。

楚失東夷、子辛死之、則雍子之爲也。楚東小國及陳、見楚不能救彭城皆叛。五年、楚人討陳叛故、殺令尹子辛。
【読み】
楚東夷を失い、子辛之に死せしは、則ち雍子の爲なり。楚の東の小國と陳と、楚の彭城を救うこと能わざるを見て皆叛く。五年、楚人陳の叛く故を討じて、令尹子辛を殺す。

子反與子靈爭夏姬、子靈、巫臣。
【読み】
子反子靈と夏姬を爭いて、子靈は、巫臣。

而雍害其事、子反亦雍害巫臣、不使得取夏姬。○雍、於勇反。
【読み】
其の事を雍害せしかば、子反も亦巫臣を雍害して、夏姬を取[めと]ることを得せしめず。○雍は、於勇反。

子靈奔晉。晉人與之邢、邢、晉邑。
【読み】
子靈晉に奔る。晉人之に邢を與えて、邢は、晉の邑。

以爲謀主、扞禦北狄、通吳於晉、敎吳叛楚、敎之乘車、射御、驅侵、使其子狐庸爲吳行人焉。吳於是伐巢、取駕、克棘、入州來。駕・棘、皆楚邑。譙國酇縣東北有棘亭。○譙、在遙反。酇、才多反。又子旦反。
【読み】
以て謀主と爲し、北狄を扞禦して、吳を晉に通じ、吳に楚に叛くことを敎え、之に車を乘り、射御し、驅侵するを敎え、其の子狐庸をして吳の行人爲らしむ。吳是に於て巢を伐ち、駕を取り、棘に克ち、州來に入れり。駕・棘は、皆楚の邑。譙國酇縣の東北に棘亭有り。○譙は、在遙反。酇は、才多反。又子旦反。

楚罷於奔命、至今爲患、則子靈之爲也。事見成七年。○罷、音皮。
【読み】
楚奔命に罷[つか]れて、今に至るまで患えを爲すは、則ち子靈の爲なり。事は成七年に見ゆ。○罷は、音皮。

若敖之亂、伯賁之子賁皇奔晉。晉人與之苗、若敖亂、在宣四年。苗、晉邑。○賁、扶云反。
【読み】
若敖の亂に、伯賁の子賁皇晉に奔る。晉人之に苗を與えて、若敖の亂は、宣四年に在り。苗は、晉の邑。○賁は、扶云反。

以爲謀主。鄢陵之役、在成十六年。○鄢、音偃。
【読み】
以て謀主と爲す。鄢陵の役に、成十六年に在り。○鄢は、音偃。

楚晨壓晉軍而陳。晉將遁矣。苗賁皇曰、楚師之良、在其中軍王族而已。言楚之精卒、唯在中軍。○陳、直覲反。
【読み】
楚晨に晉の軍を壓[あっ]して陳す。晉將に遁げんとす。苗賁皇曰く、楚の師の良は、其の中軍の王族に在るのみ。言うこころは、楚の精卒は、唯中軍に在るのみ。○陳は、直覲反。

若塞井夷竈、成陳以當之、塞井夷竈、以爲陳。
【読み】
若し井を塞ぎ竈を夷[たい]らげ、陳を成して以て之に當たり、井を塞ぎ竈を夷らげて、以て陳を爲す。

欒・范易行以誘之、欒書時將中軍。范爕佐之。易行、謂簡易兵備。欲令楚貪己、不復顧二穆之兵。○易、以豉反。又音亦。行、戶郎反。又音衡。
【読み】
欒・范行を易[おろそ]かにして以て之を誘かば、欒書時に中軍に將たり。范爕[はんしょう]之に佐たり。行を易かにすとは、兵備を簡易にするを謂う。楚をして己を貪りて、復二穆の兵を顧みざらしめんと欲するなり。○易は、以豉反。又音亦。行は、戶郎反。又音衡。

中行・二郤必克二穆。郤錡時將上軍。中行偃佐之。郤至佐新軍。令此三人、分良以攻二穆之兵。楚子重・子辛、皆出穆王。故曰二穆。○錡、魚綺反。
【読み】
中行・二郤必ず二穆に克たん。郤錡時に上軍に將たり。中行偃之に佐たり。郤至新軍に佐たり。此の三人をして、良を分けて以て二穆の兵を攻めしむ。楚の子重・子辛は、皆穆王より出づ。故に二穆と曰う。○錡は、魚綺反。

吾乃四萃於其王族、必大敗之。四萃、四面集攻之。
【読み】
吾れ乃ち其の王族に四萃せば、必ず大いに之を敗らん、と。四萃は、四面より集まりて之を攻むるなり。

晉人從之、楚師大敗、王夷師熸。夷、傷也。吳・楚之閒、謂火滅爲熸。○熸、子潛反。
【読み】
晉人之に從い、楚の師大いに敗れ、王夷[きず]つき師熸[き]えぬ。夷は、傷つくなり。吳・楚の閒、火の滅ぶるを謂いて熸[せん]と爲す。○熸は、子潛反。

子反死之、鄭叛吳興、楚失諸侯、則苗賁皇之爲也。
【読み】
子反之に死し、鄭叛き吳興り、楚諸侯を失いしは、則ち苗賁皇の爲なり、と。

子木曰、是皆然矣。聲子曰、今又有甚於此。椒舉娶於申公子牟。子牟得戾而亡。君大夫謂椒舉、女實遣之。懼而奔鄭、引領南望曰、庶幾赦余、亦弗圖也。言楚亦不以爲意。
【読み】
子木曰く、是れ皆然り、と。聲子曰く、今又此より甚だしきこと有り。椒舉申公子牟に娶る。子牟戾を得て亡ぐ。君大夫椒舉を謂えらく、女實に之を遣れり、と。懼れて鄭に奔り、領[えり]を引きて南望して曰く、余を赦さんことを庶幾うも、亦圖らず、と。言うこころは、楚も亦以て意と爲さず。

今在晉矣。晉人將與之縣、以比叔向。以舉才能比叔向。
【読み】
今晉に在り。晉人將に之に縣を與えて、以て叔向に比せんとす。舉の才能を以て叔向に比す。

彼若謀害楚國、豈不爲患。
【読み】
彼れ若し楚國を害せんことを謀らば、豈患えを爲さざらんや、と。

子木懼、言諸王、益其祿爵而復之。聲子使椒鳴逆之。椒鳴、伍舉子。傳言聲子有辭、伍舉所以得反、子孫復仕於楚。
【読み】
子木懼れ、諸を王に言いて、其の祿爵を益して之を復す。聲子椒鳴をして之を逆えしめり。椒鳴は、伍舉の子。傳聲子辭有り、伍舉反ることを得て、子孫復楚に仕うる所以を言う。

許靈公如楚、請伐鄭。十六年、晉伐許、他國皆大夫、獨鄭伯自行。故許恚欲報之。○恚、一睡反。
【読み】
許の靈公楚に如き、鄭を伐たんことを請う。十六年、晉許を伐つとき、他國は皆大夫、獨り鄭伯自ら行く。故に許恚[うら]みて之に報いんと欲す。○恚[い]は、一睡反。

曰、師不興、孤不歸矣。八月、卒于楚。楚子曰、不伐鄭、何以求諸侯。冬、十月、楚子伐鄭。爲許。
【読み】
曰く、師興らずんば、孤歸らじ、と。八月、楚に卒す。楚子曰く、鄭を伐たずんば、何を以て諸侯を求めん、と。冬、十月、楚子鄭を伐つ。許の爲なり。

鄭人將禦之。子產曰、晉・楚將平、諸侯將和。和、在明年。
【読み】
鄭人將に之を禦がんとす。子產曰く、晉・楚將に平らがんとし、諸侯將に和せんとす。和は、明年に在り。

楚王是故昧於一來。昧、猶貪冒。
【読み】
楚王是の故に一來を昧[むさぼ]れり。昧は、猶貪冒のごとし。

不如使逞而歸。乃易成也。逞、快也。
【読み】
逞くして歸らしむるに如かじ。乃ち成らぎ易からん。逞は、快きなり。

夫小人之性、釁於勇、嗇於禍、以足其性、而求名焉者。非國家之利也。若何從之。釁、動也。嗇、貪也。言鄭之欲與楚戰者、皆釁勇貪名之人、非能爲國計慮久利。不可從也。○釁、許覲反。足、子住反。又如字。
【読み】
夫れ小人の性は、勇に釁[うご]き、禍を嗇[むさぼ]りて、以て其の性を足して、名を求めんとする者なり。國家を利せんとには非ざるなり。若何ぞ之に從わん、と。釁は、動くなり。嗇は、貪るなり。言うこころは、鄭の楚と戰わんことを欲する者は、皆勇に釁き名を貪るの人にして、能く國の爲に久利を計慮するに非ず。從う可からざるなり。○釁は、許覲反。足は、子住反。又字の如し。

子展說、不禦寇。
【読み】
子展說び、寇を禦がず。

十二月、乙酉、入南里、墮其城、南里、鄭邑。○說、音悅。墮、許規反。
【読み】
十二月、乙酉[きのと・とり]、南里に入りて、其の城を墮[こぼ]ち、南里は、鄭の邑。○說は、音悅。墮[き]は、許規反。

涉於樂氏、樂氏、津名。
【読み】
樂氏より涉り、樂氏は、津の名。

門于師之梁。鄭城門。
【読み】
師之梁を門む。鄭の城門。

縣門發。獲九人焉。涉于氾而歸、於氾城下、涉汝水南歸。○縣、音玄。氾、音凡。
【読み】
縣門發[と]ず。九人を獲たり。氾より涉りて歸り、氾城の下に於て、汝水を涉りて南に歸る。○縣は、音玄。氾は、音凡。

而後葬許靈公。卒靈公之志、而後葬之。
【読み】
而して後に許の靈公を葬れり。靈公の志を卒えて、而して後に之を葬る。

衛人歸衛姬于晉。乃釋衛侯。衛侯以女說晉、而後得免。
【読み】
衛人衛姬を晉に歸[とつ]がす。乃ち衛侯を釋[ゆる]す。衛侯女を以て晉に說きて、而して後に免ることを得。

君子是以知平公之失政也。傳言晉之衰。
【読み】
君子是を以て平公の政を失うを知れり。傳晉の衰うるを言う。

晉韓宣子聘于周。王使請事。問何事來聘。
【読み】
晉の韓宣子周に聘す。王事を請わしむ。何事にて來聘せしと問う。

對曰、晉士起將歸時事於宰旅。無他事矣。起、宣子名。禮、諸侯大夫、入天子國稱士。時事、四時貢職。宰旅、冢宰之下士。言獻職貢於宰旅、不敢斥尊。
【読み】
對えて曰く、晉の士起將に時事を宰旅に歸せんとす。他の事無し、と。起は、宣子の名。禮に、諸侯の大夫、天子の國に入れば士と稱す、と。時事とは、四時の貢職なり。宰旅は、冢宰の下士なり。職貢を宰旅に獻ずと言うは、敢えて尊を斥[さ]さざるなり。

王聞之曰、韓氏其昌阜於晉乎。辭不失舊。阜、大也。傳言周衰、諸侯莫能如禮、唯韓起不失舊。
【読み】
王之を聞きて曰く、韓氏は其れ晉に昌阜せんか。辭舊を失わず、と。阜は、大なり。傳周衰えて、諸侯能く禮の如くすること莫く、唯韓起舊を失わざるを言う。

齊人城郟之歲、在二十四年。
【読み】
齊人郟に城くの歲、二十四年に在り。

其夏、齊烏餘以廩丘奔晉、烏餘、齊大夫。廩丘、今東郡廩丘縣故城、是。
【読み】
其の夏、齊の烏餘廩丘を以て晉に奔り、烏餘は、齊の大夫。廩丘は、今の東郡廩丘縣の故城、是れなり。

襲衛羊角、取之、今廩丘縣所治羊角城、是。
【読み】
衛の羊角を襲いて、之を取り、今の廩丘縣の所治の羊角城、是れなり。

遂襲我高魚。高魚城、在廩丘縣東北。
【読み】
遂に我が高魚を襲う。高魚城は、廩丘縣の東北に在り。

有大雨、自其竇入、雨。故水竇開。○竇、音豆。
【読み】
大雨有り、其の竇[あな]より入り、雨ふる。故に水竇[すいとう]開く。○竇は、音豆。

介于其庫、入高魚庫而介其甲。
【読み】
其の庫に介して、高魚の庫に入りて其の甲を介す。

以登其城、克而取之、取魯高魚無所諱、而不書、其義未聞。
【読み】
以て其の城に登り、克ちて之を取り、魯の高魚を取ること諱む所無くして、書さざるは、其の義未だ聞かざればなり。

又取邑于宋。於是范宣子卒、宣子、范匃。
【読み】
又邑を宋に取れり。是に於て范宣子卒して、宣子は、范匃[はんかい]。

諸侯弗能治也、及趙文子爲政、乃卒治之。
【読み】
諸侯治むること能わず、趙文子が政を爲すに及びて、乃ち卒に之を治めり。

文子言於晉侯曰、晉爲盟主、諸侯或相侵也、則討而使歸其地。今烏餘之邑、皆討類也。言於此類、宜見討。
【読み】
文子晉侯に言いて曰く、晉は盟主爲れば、諸侯相侵すこと或るや、則ち討じて其の地を歸さしむ。今烏餘の邑は、皆討の類なり。言うこころは、此の類に於て、宜しく討ぜらるべし。

而貪之、是無以爲盟主也。請歸之。公曰、諾、孰可使也。對曰、胥梁帶能無用師。晉侯使往。胥梁帶、晉大夫。能無用師、言有權謀。
【読み】
而るを之を貪らば、是れ以て盟主爲ること無けん。請う、之を歸さん、と。公曰く、諾、孰か使う可き、と。對えて曰く、胥梁帶能く師を用ゆること無けん、と。晉侯往かしむ。胥梁帶は、晉の大夫。能く師を用ゆること無けんとは、權謀有るを言う。


〔經〕二十有七年、春、齊侯使慶封來聘。景公卽位、通嗣君也。
【読み】
〔經〕二十有七年、春、齊侯慶封をして來聘せしむ。景公位に卽きて、嗣君を通ずるなり。

夏、叔孫豹會晉趙武・楚屈建・蔡公孫歸生・衛石惡・陳孔奐・鄭良霄・許人・曹人于宋。案傳、會者十四國。齊・秦不交相見。邾・滕爲私屬。皆不與盟。宋爲主人。地於宋、則與盟可知。故經唯序九國大夫。楚先晉歃。而書先晉、貴信也。陳于晉會、常在衛上。孔奐非上卿。故在石惡下。○奐、呼亂反。先、悉薦反。又如字。
【読み】
夏、叔孫豹晉の趙武・楚の屈建・蔡の公孫歸生・衛の石惡・陳の孔奐・鄭の良霄[りょうしょう]・許人・曹人に宋に會す。傳を案ずるに、會する者十四國なり。齊・秦は交々相見えず。邾[ちゅ]・滕は私屬爲り。皆盟に與らず。宋は主人爲り。宋に地すれば、則ち盟に與ること知る可し。故に經は唯九國の大夫を序ず。楚晉に先だちて歃る。而るを晉を先に書するは、信を貴びてなり。陳晉の會に于て、常に衛の上に在り。孔奐上卿に非ず。故に石惡の下に在り。○奐は、呼亂反。先は、悉薦反。又字の如し。

衛殺其大夫甯喜。甯喜弑剽立衎。衎今雖不以弑剽致討、於大義宜追討之。故經以國討爲文、書名也。書在宋會下、從赴。
【読み】
衛其の大夫甯喜を殺す。甯喜剽[ひょう]を弑して衎[かん]を立つ。衎今剽を弑するを以て討を致さずと雖も、大義に於て宜しく之を追討すべし。故に經國討を以て文を爲して、名を書せるなり。書すこと宋會の下に在るは、赴[つ]ぐるに從うなり。

衛侯之弟鱄出奔晉。衛侯始者云、政由甯氏、祭則寡人。而今復患其專、緩荅免餘、旣負其前信、且不能友于賢弟、使至出奔。故書弟以罪兄。○鱄、市轉反。又音專。
【読み】
衛侯の弟鱄[せん]出でて晉に奔る。衛侯始めに云う、政は甯氏に由り、祭は則ち寡人なり、と。而るに今復其の專らなるを患えて、免餘に緩荅して、旣に其の前信に負[そむ]き、且賢弟に友于すること能わずして、出奔に至らしむ。故に弟と書して以て兄を罪す。○鱄は、市轉反。又音專。

秋、七月、辛巳、豹及諸侯之大夫盟于宋。夏會之大夫也。豹不倚順以顯弱命之君、而辨小是以自從。故以違命貶之。釋例論之備矣。
【読み】
秋、七月、辛巳[かのと・み]、豹諸侯の大夫と宋に盟う。夏會するの大夫なり。豹順に倚りて以て弱命の君を顯さずして、小是を辨して以て自ら從う。故に命に違えるを以て之を貶す。釋例之を論ずること備なり。

冬、十有二月、乙卯、朔、日有食之。今長曆推、十一月朔、非十二月。傳曰、辰在申、再失閏。若是十二月、則爲三失閏。故知經誤。
【読み】
冬、十有二月、乙卯[きのと・う]、朔、日之を食する有り。今長曆もて推すに、十一月朔にして、十二月に非ず。傳に曰く、辰申に在り、再び閏を失えり、と。若し是れ十二月ならば、則ち三たび閏を失うと爲す。故に經の誤れるを知る。

〔傳〕二十七年、春、胥梁帶使諸喪邑者、具車徒以受地、必周。諸喪邑、謂齊・魯・宋也。周、密也。必密來勿以受地爲名。○喪、息浪反。
【読み】
〔傳〕二十七年、春、胥梁帶諸々邑を喪える者をして、車徒を具えて以て地を受けしむらく、必ず周[ひそ]かにせよ、と。諸々邑を喪えるとは、齊・魯・宋を謂うなり。周は、密かなり。必ず密かに來りて地を受くるを以て名とすること勿かれ、と。○喪は、息浪反。

使烏餘具車徒以受封。烏餘以地來。故詐許封之。
【読み】
烏餘をして車徒を具えて以て封を受けしむ。烏餘地を以て來る。故に詐りて之を封ぜんことを許す。

烏餘以其衆出。出受封。
【読み】
烏餘其の衆を以[い]て出づ。出でて封を受く。

使諸侯僞效烏餘之封者、效、致也。使齊・魯・宋、僞若致邑封烏餘者。
【読み】
諸侯をして烏餘の封を效[いた]す者と僞らしめて、效は、致すなり。齊・魯・宋をして、僞りて邑を致して烏餘を封ずる者の若くならしむ。

而遂執之、盡獲之、皆獲其徒衆。
【読み】
遂に之を執え、盡く之を獲、皆其の徒衆を獲たり。

皆取其邑而歸諸侯。諸侯是以睦於晉。傳言趙文子賢、故平公雖失政、而諸侯猶睦。
【読み】
皆其の邑を取りて諸侯に歸す。諸侯是を以て晉に睦まじ。傳趙文子賢、故に平公政を失うと雖も、而れども諸侯猶睦まじきを言う。

齊慶封來聘。其車美。孟孫謂叔孫曰、慶季之車、不亦美乎。季、慶封字。
【読み】
齊の慶封來聘す。其の車美なり。孟孫叔孫に謂いて曰く、慶季の車、亦美ならずや、と。季は、慶封の字。

叔孫曰、豹聞之、服美不稱、必以惡終。美車何爲。叔孫與慶封食。不敬。爲賦相鼠。亦不知也。相鼠、詩鄘風。曰、相鼠有皮。人而無儀。人而無儀、不死何爲。慶封不知此詩爲己。言其闇甚。爲明年、慶封來奔傳。○稱、尺證反。鄘、音容。
【読み】
叔孫曰く、豹之を聞く、服の美稱[かな]わざれば、必ず惡を以て終わる、と。車を美にして何をかせん、と。叔孫慶封と食す。不敬なり。爲に相鼠を賦す。亦知らざるなり。相鼠は、詩の鄘風。曰く、鼠を相[み]るに皮有り。人にして儀無けんや。人にして儀無くば、死せずして何をかせん、と。慶封此の詩己が爲なるを知らず。其の闇きことの甚だしきを言う。明年、慶封來奔する爲の傳なり。○稱は、尺證反。鄘は、音容。

衛甯喜專。公患之。公孫免餘請殺之。免餘、衛大夫。
【読み】
衛の甯喜專らなり。公之を患う。公孫免餘之を殺さんと請う。免餘は、衛の大夫。

公曰、微甯子不及此。及此、反國也。
【読み】
公曰く、甯子微かりせば此に及ばじ。此に及ぶとは、國に反るなり。

吾與之言矣。言政由甯氏。
【読み】
吾れ之と言えり。政甯氏に由ると言えり。

事未可知。恐伐之未必勝。
【読み】
事未だ知る可からず。恐らくは之を伐つも未だ必ずしも勝たじ。

祗成惡名。止也。祗、適也。○祗、音支。
【読み】
祗[まさ]に惡名を成さん。止めよ、と。祗は、適になり。○祗は、音支。

對曰、臣殺之。君勿與知。乃與公孫無地・公孫臣謀、二公孫、衛大夫。○勿與、音預。
【読み】
對えて曰く、臣之を殺さん。君與り知ること勿かれ、と。乃ち公孫無地・公孫臣と謀り、二公孫は、衛の大夫。○勿與は、音預。

使攻甯氏。弗克、皆死。無地及臣皆死。
【読み】
甯氏を攻めしむ。克たずして、皆死す。無地と臣と皆死す。

公曰、臣也無罪、父子死余矣。獻公出時、公孫臣之父爲孫氏所殺。
【読み】
公曰く、臣や罪無くして、父子余に死したり、と。獻公出づる時、公孫臣の父孫氏の爲に殺さる。

夏、免餘復攻甯氏、殺甯喜及右宰穀、尸諸朝。穀不書、非卿也。
【読み】
夏、免餘復甯氏を攻め、甯喜と右宰穀とを殺して、諸を朝に尸[さら]す。穀書さざるは、卿に非ざればなり。

石惡將會宋之盟、受命而出。衣其尸、枕之股而哭之。欲斂以亡。懼不免。且曰、受命矣。乃行。行會于宋。爲明年、石惡奔傳。○衣、於旣反。枕、之鴆反。
【読み】
石惡將に宋の盟に會せんとし、命を受けて出づ。其の尸に衣せ、之に股に枕させて之を哭す。斂して以て亡[に]げんと欲す。免れざらんことを懼る。且曰く、命を受けたり、と。乃ち行く。行きて宋に會す。明年、石惡奔る爲の傳なり。○衣は、於旣反。枕は、之鴆反。

子鮮曰、逐我者出、謂孫林父。
【読み】
子鮮曰く、我を逐う者は出で、孫林父を謂う。

納我者死。謂甯喜。
【読み】
我を納るる者は死す。甯喜を謂う。

賞罰無章。何以沮勸。君失其信、而國無刑。不亦難乎。難以治國。
【読み】
賞罰章無し。何を以て沮勸[そかん]せん。君其の信を失いて、國刑無し。亦難からずや。以て國を治め難し。

且鱄實使之。使甯喜納君。
【読み】
且つ鱄實に之をせしめり、と。甯喜をして君を納れしむ。

遂出奔晉。公使止之。不可。不肯留。
【読み】
遂に出でて晉に奔る。公之を止めしむ。可[き]かず。留まることを肯ぜず。

及河、又使止之。止使者而盟於河。誓不還。
【読み】
河に及ぶとき、又之を止めしむ。使者を止めて河に盟う。還らざるを誓う。

託於木門、木門、晉邑。
【読み】
木門に託して、木門は、晉の邑。

不郷衛國而坐。怨之深也。○郷、許亮反。
【読み】
衛國に郷[む]かいて坐せず。怨むるの深きなり。○郷は、許亮反。

木門大夫勸之仕。不可。曰、仕而廢其事、罪也。從之、昭吾所以出也。將誰愬乎。從之、謂治其事也。事治則明己出欲仕。無所自愬。
【読み】
木門の大夫之に仕えんことを勸む。可かず。曰く、仕えて其の事を廢するは、罪なり。之に從えば、吾が出でたる所以を昭らかにするなり。將[はた]誰にか愬[うった]えん。之に從うとは、其の事を治むるを謂うなり。事治むれば則ち己が出づるの仕えんことを欲するを明らかにするなり。自ら愬うる所無し。

吾不可以立於人之朝矣。終身不仕。自誓不仕終身。
【読み】
吾は以て人の朝に立つ可からず、と。身を終うるまで仕えざりき。自ら誓いて仕えずして身を終わるなり。

公喪之、如稅服終身。稅、卽繐也。喪服繐縗裳、縷細而希。非五服之常、本無月數。痛愍子鮮。故特爲此服。此服無月數、而獻公尋薨。故言終身。○喪、息郎反。稅、音歲。又吐外反。
【読み】
公之を喪すること、稅服[たいふく]の如くにして身を終われり。稅は、卽ち繐[けい]なり。喪服に繐縗[けいさい]の裳は、縷[いと]細にして希なり。五服の常に非ず、本月數無し。子鮮を痛愍[つうびん]す。故に特に此の服を爲すなり。此の服月數無くして、獻公尋[つ]いで薨ず。故に身を終わると言う。○喪は、息郎反。稅は、音歲。又吐外反。

公與免餘邑六十。辭曰、唯卿備百邑。臣六十矣。下有上祿、亂也。此一乘之邑。非四井之邑。論語稱千室、又云、十室。明通稱。○通稱、尺證反。
【読み】
公免餘に邑六十を與う。辭して曰く、唯卿のみ百邑を備う。臣は六十なり。下上の祿を有つは、亂なり。此は一乘の邑。四井の邑に非ず。論語に千室と稱し、又云う、十室、と。通稱なること明けし。○通稱は、尺證反。

臣弗敢聞。且甯子唯多邑。故死。臣懼死之速及也。公固與之。受其半。以爲少師。公使爲卿。辭曰、大叔儀不貳、能贊大事。贊、佐也。
【読み】
臣敢えて聞かず。且つ甯子唯邑多し。故に死せり。臣死の速やかに及ばんことを懼る、と。公固く之に與う。其の半ばを受く。以て少師と爲す。公卿爲らしむ。辭して曰く、大叔儀貳あらずして、能く大事を贊[たす]く。贊は、佐くなり。

君其命之。乃使文子爲卿。文子、大叔儀。
【読み】
君其れ之に命ぜよ、と。乃ち文子をして卿爲らしむ。文子は、大叔儀。

宋向戌善於趙文子、又善於令尹子木。欲弭諸侯之兵以爲名。欲獲息民之名。
【読み】
宋の向戌[しょうじゅつ]趙文子に善く、又令尹子木に善し。諸侯の兵を弭[や]めて以て名を爲さんと欲す。民を息うの名を獲んと欲す。

如晉告趙孟。趙孟謀於諸大夫。韓宣子曰、兵、民之殘也。財用之蠧。蠧、害物之蟲。
【読み】
晉に如きて趙孟に告ぐ。趙孟諸大夫に謀る。韓宣子曰く、兵は、民の殘なり。財用の蠧[と]なり。蠧は、物を害するの蟲。

小國之大菑也。將或弭之。雖曰不可、必將許之。言雖知兵不得久弭、今不可不許。○菑、音災。
【読み】
小國の大菑[たいさい]なり。將に或は之を弭めんとす。可ならずと曰うと雖も、必ず將之を許せ。言うこころは、兵の久しく弭むることを得ざるを知ると雖も、今許さずんばある可からず。○菑は、音災。

弗許、楚將許之以召諸侯。則我失爲盟主矣。晉人許之。如楚。楚亦許之。如齊。齊人難之。陳文子曰、晉・楚許之、我焉得已。且人曰弭兵、而我弗許、則固攜吾民矣。將焉用之。齊人許之。告於秦。秦亦許之。皆告於小國、爲會於宋。
【読み】
許さずんば、楚將に之を許して以て諸侯を召さんとす。則ち我れ盟主爲ることを失わん、と。晉人之を許す。楚に如く。楚も亦之を許す。齊に如く。齊人之を難[はば]む。陳文子曰く、晉・楚之を許すを、我れ焉んぞ已むことを得ん。且つ人兵を弭めんと曰いて、我れ許さずんば、則ち固より吾が民を攜[はな]さん。將焉にか之を用いん、と。齊人之を許す。秦に告ぐ。秦も亦之を許す。皆小國に告げて、會を宋に爲さんとす。

五月甲辰、晉趙武至於宋。丙午、鄭良霄至。六月丁未、朔、宋人享趙文子。叔向爲介。司馬置折俎。禮也。折俎、體解節折、升之於俎。合卿享宴之禮。故曰禮也。周禮、司馬掌會同之事。○難、乃旦反。下同。
【読み】
五月甲辰[きのえ・たつ]、晉の趙武宋に至る。丙午[ひのえ・うま]、鄭の良霄至る。六月丁未[ひのと・ひつじ]、朔、宋人趙文子を享す。叔向介爲り。司馬折俎を置く。禮なり。折俎は、體解節折して、之を俎に升すなり。卿の享宴するの禮に合う。故に禮なりと曰う。周禮に、司馬會同の事を掌る、と。○難は、乃旦反。下も同じ。

仲尼使舉是禮也、以爲多文辭。宋向戌自美弭兵之意、敬逆趙武。趙武・叔向因享宴之會、展賓主之辭。故仲尼以爲多文辭。
【読み】
仲尼是の禮を舉げしめて、以爲えらく、文辭多し、と。宋の向戌自ら兵を弭むるの意を美とし、敬みて趙武を逆う。趙武・叔向享宴の會に因りて、賓主の辭を展ぶ。故に仲尼以爲えらく、文辭多し、と。

戊申、叔孫豹・齊慶封・陳須無・衛石惡至。須無、陳文子。
【読み】
戊申[つちのえ・さる]、叔孫豹・齊の慶封・陳須無・衛の石惡至る。須無は、陳文子。

甲寅、晉荀盈從趙武至。趙武命盈追己。故言從趙武。後武遣盈如楚。
【読み】
甲寅[きのえ・とら]、晉の荀盈趙武を從[お]いて至る。趙武盈に命じて己を追わしむ。故に趙武を從うと言う。後に武盈を遣わして楚に如かしむ。

丙辰、邾悼公至。小國故君自來。
【読み】
丙辰[ひのえ・たつ]、邾[ちゅ]の悼公至る。小國故に君自ら來る。

壬戌、楚公子黑肱先至、成言於晉。時令尹子木止陳、遣黑肱就晉大夫、成盟載之言、兩相然可。
【読み】
壬戌[みずのえ・いぬ]、楚の公子黑肱先ず至り、言を晉に成す。時に令尹子木陳に止まり、黑肱を遣わして晉の大夫に就きて、盟載の言を成して、兩に相然可す。

丁卯、宋向戌如陳、從子木成言於楚。就於陳、成楚之要言。
【読み】
丁卯[ひのと・う]、宋の向戌陳に如き、子木に從いて言を楚に成す。陳に就きて、楚の要言を成す。

戊辰、滕成公至。亦小國。君自來。
【読み】
戊辰[つちのえ・たつ]、滕の成公至る。亦小國。君自ら來る。

子木謂向戌、請晉・楚之從、交相見也。使諸侯從晉・楚者、更相朝見。○見、賢遍反。
【読み】
子木向戌に謂えらく、晉・楚の從は、交々相見えんことを請う、と。諸侯の晉・楚に從える者をして、更々相朝見せしめんとす。○見は、賢遍反。

庚午、向戌復於趙孟。趙孟曰、晉・楚・齊・秦、匹也。晉之不能於齊、猶楚之不能於秦也。不能服而使之。
【読み】
庚午[かのえ・うま]、向戌趙孟に復す。趙孟曰く、晉・楚・齊・秦は、匹なり。晉の齊に能わざるは、猶楚の秦に能わざるがごとし。服せしめて之を使うこと能わず。

楚君若能使秦君辱於敝邑、寡君敢不固請於齊。請齊使朝楚。
【読み】
楚の君若し能く秦君をして敝邑に辱くせしめば、寡君敢えて固く齊に請わざらんや、と。齊に請いて楚に朝せしめん。

壬申、左師復言於子木。子木使馹謁諸王。馹、傳也。謁、告也。○馹、人實反。傳、陟戀反。
【読み】
壬申[みずのえ・さる]、左師子木に復言す。子木馹[じつ]をして諸を王に謁[つ]げしむ。馹は、傳なり。謁は、告ぐなり。○馹は、人實反。傳は、陟戀反。

王曰、釋齊・秦、他國請相見也。經所以不書齊・秦。
【読み】
王曰く、齊・秦を釋[お]きて、他國は相見えんことを請う、と。經齊・秦を書さざる所以なり。

秋、七月、戊寅、左師至。從陳還。
【読み】
秋、七月、戊寅[つちのえ・とら]、左師至る。陳より還る。

是夜也、趙孟及子皙盟、以齊言。子皙、公子黑肱。素要齊其辭、至盟時不得復訟爭。
【読み】
是の夜や、趙孟と子皙と盟いて、以て言を齊[ととの]う。子皙は、公子黑肱。素[あらかじ]め其の辭を要齊して、盟時に至りて復訟爭することを得ざらしむ。

庚辰、子木至自陳。陳孔奐・蔡公孫歸生至。二國大夫與子木倶至。
【読み】
庚辰[かのえ・たつ]、子木陳より至る。陳の孔奐・蔡の公孫歸生至る。二國の大夫子木と倶に至る。

曹・許之大夫皆至。
【読み】
曹・許の大夫皆至る。

以藩爲軍、示不相忌。
【読み】
藩を以て軍を爲し、相忌まざることを示す。

晉・楚各處其偏。晉處北、楚處南。
【読み】
晉・楚各々其の偏に處る。晉北に處り、楚南に處る。

伯夙謂趙孟、伯夙、荀盈。
【読み】
伯夙趙孟に謂いて、伯夙は、荀盈。

曰、楚氛甚惡。懼難。氛、氣也。言楚有襲晉之氣。○氛、芳云反。
【読み】
曰く、楚の氛[ふん]甚だ惡し。懼らくは難あらん、と。氛は、氣なり。言うこころは、楚に晉を襲うの氣有り。○氛は、芳云反。

趙孟曰、吾左還入於宋、若我何。營在宋北。東頭爲上。故晉營在東。有急、可左廻入宋東門。
【読み】
趙孟曰く、吾れ左還して宋に入らば、我を若何にせん、と。營宋の北に在り。東頭を上と爲す。故に晉の營東に在り。急有らば、左に廻りて宋の東門に入る可し。

辛巳、將盟於宋西門之外。楚人衷甲。甲在衣中。欲因會擊晉。○衷、音忠。又丁仲反。
【読み】
辛巳、將に宋の西門の外に盟わんとす。楚人甲を衷[うち]にす。甲衣中に在るなり。會に因りて晉を擊たんと欲す。○衷は、音忠。又丁仲反。

伯州犂曰、合諸侯之師、以爲不信、無乃不可乎。夫諸侯望信於楚。是以來服。若不信、是棄其所以服諸侯也。固請釋甲。子木曰、晉・楚無信久矣。事利而已。苟得志焉、焉用有信。大宰退、大宰、伯州犂。
【読み】
伯州犂[はくしゅうれい]曰く、諸侯の師を合わせて、以て不信を爲さば、乃ち不可なること無からんや。夫れ諸侯は信を楚に望む。是を以て來服す。若し不信ならば、是れ其の諸侯を服する所以を棄つるなり、と。固く甲を釋かんと請う。子木曰く、晉・楚信無きこと久し。事利あらんのみ。苟も志を得ば、焉んぞ信有ることを用いん、と。大宰退きて、大宰は、伯州犂。

告人曰、令尹將死矣。不及三年。求逞志而棄信。志將逞乎。志以發言、言以出信、信以立志、參以定之。志・言・信、三者具而後身安存。
【読み】
人に告げて曰く、令尹將に死せんとす。三年に及ばじ。志を逞くせんことを求めて信を棄つ。志將逞からんや。志以て言を發し、言以て信を出だし、信以て志を立て、參にて以て之を定む。志・言・信、三つの者具わりて而して後に身安存す。

信亡。何以及三。爲明年、子木死起本。
【読み】
信亡びたり。何を以て三に及ばん。明年、子木死する爲の起本なり。

趙孟患楚衷甲、以告叔向。叔向曰、何害也。匹夫一爲不信、猶不可。單斃其死。單、盡也。斃、踣也。○單、音丹。踣、蒲北反。
【読み】
趙孟楚の甲を衷にするを患えて、以て叔向に告ぐ。叔向曰く、何の害あらん。匹夫も一たび不信を爲せば、猶不可なり。單[ことごと]く其の死に斃[たう]る。單は、盡くなり。斃は、踣[たう]るなり。○單は、音丹。踣[ほく]は、蒲北反。

若合諸侯之卿、以爲不信、必不捷矣。食言者不病。不病者單斃於死。
【読み】
若し諸侯の卿を合わせて、以て不信を爲さば、必ず捷[か]たじ。言を食む者は病むのみならず。病まざる者も單く死に斃るなり。

非子之患也。楚食言。當死。晉不食言。故無患。
【読み】
子の患えに非ざるなり。楚言を食む。當に死すべし。晉言を食まず。故に患え無し。

夫以信召人、而以僭濟之、濟、成也。○僭、子念反。不信也。
【読み】
夫れ信を以て人を召して、僭を以て之を濟[な]さば、濟は、成すなり。○僭は、子念反。不信なり。

必莫之與也。安能害我。且吾因宋以守病、爲楚所病、則欲入宋城。
【読み】
必ず之に與するもの莫からん。安ぞ能く我を害せん。且つ吾れ宋に因りて以て病を守らば、楚の爲に病ましめられば、則ち宋の城に入らんと欲す。

則夫能致死。雖倍楚可也。宋爲地主。致死助我、則力可倍楚。○夫、如字。或音扶。
【読み】
則ち夫[かれ]能く死を致さん。楚に倍すと雖も可なり。宋は地主爲り。死を致して我を助けば、則ち力楚に倍す可し。○夫は、字の如し。或は音扶。
*漢籍國字解全書には、「雖倍楚可也。」の前に「與宋致死、」(宋と死を致さば、)がある。

子何懼焉。又不及是。曰弭兵以召諸侯、而稱兵以害我、稱、舉也。
【読み】
子何ぞ懼れん。又是に及ばじ。兵を弭めんと曰いて以て諸侯を召して、兵を稱[あ]げて以て我を害せば、稱は、舉ぐるなり。

吾庸多矣。非所患也。晉獨取信。故其功多。
【読み】
吾が庸多し。患うる所に非ざるなり、と。晉獨り信を取る。故に其の功多し。

季武子謂叔孫以公命、曰、視邾・滕。兩事晉・楚、則貢賦重。故欲比小國。武子恐叔孫不從其言。故假公命以敦之。
【読み】
季武子叔孫に謂わしむるに公命というを以てして、曰く、邾・滕に視[なぞら]えよ、と。晉・楚に兩事すれば、則ち貢賦重し。故に小國に比せんことを欲す。武子叔孫が其の言に從わざらんことを恐る。故に公命を假りて以て之を敦くす。

旣而齊人請邾、宋人請滕、皆不與盟。私屬二國故。○與、音預。
【読み】
旣にして齊人邾を請い、宋人滕を請いて、皆盟に與らず。二國を私屬する故なり。○與は、音預。

叔孫曰、邾・滕、人之私也。我列國也。何故視之。宋・衛、吾匹也。乃盟。
【読み】
叔孫曰く、邾・滕は、人の私なり。我は列國なり。何の故に之に視えん。宋・衛は、吾が匹なり、と。乃ち盟う。

故不書其族。言違命也。季孫專政於國、魯君非得有命。今君唯以此命告豹。豹宜崇大順以顯弱命之君。而遂其小是。故貶之。
【読み】
故に其の族を書さず。命に違えるを言うなり。季孫政を國に專にし、魯君命ずること有ることを得るに非ず。今君唯此の命を以て豹に告ぐ。豹宜しく大順を崇[あが]めて以て弱命の君を顯すべし。而るを其の小是を遂ぐ。故に之を貶す。

晉・楚爭先。爭先歃血。
【読み】
晉・楚先を爭う。先ず血を歃らんことを爭う。

晉人曰、晉固爲諸侯盟主。未有先晉者也。楚人曰、子言晉・楚匹也。若晉常先、是楚弱也。且晉・楚狎主諸侯之盟也久矣。狎、更也。○先晉、去聲。或如字。狎、戶甲反。更、音庚。
【読み】
晉人曰く、晉固より諸侯の盟主爲り。未だ晉に先だつ者有らざるなり、と。楚人曰く、子晉・楚は匹なりと言えり。若し晉常に先だたば、是れ楚は弱きなり。且つ晉・楚狎[こも]々諸侯の盟を主るや久し。狎は、更々なり。○先晉は、去聲。或は字の如し。狎は、戶甲反。更は、音庚。

豈專在晉。叔向謂趙孟曰、諸侯歸晉之德只。只、辭。○只、之氏反。
【読み】
豈專ら晉に在らんや、と。叔向趙孟に謂いて曰く、諸侯は晉の德に歸す。只は、辭。○只は、之氏反。

非歸其尸盟也。尸、主也。
【読み】
其の盟を尸[つかさど]るに歸するに非ざるなり。尸は、主るなり。

子務德。無爭先。且諸侯盟、小國固必有尸盟者。小國主辨具。○辨、皮莧反。
【読み】
子德を務めよ。先を爭うこと無かれ。且つ諸侯の盟に、小國固より必ず盟を尸る者有り。小國は辨具を主る。○辨は、皮莧反。

楚爲晉細、不亦可乎。欲推使楚主盟。
【読み】
楚晉の細を爲さば、亦可ならずや、と。推して楚をして盟を主らしめんと欲す。

乃先楚人。
【読み】
乃ち楚人を先にす。

書先晉、晉有信也。蓋孔子追正之。
【読み】
書して晉を先にするは、晉信有ればなり。蓋し孔子追いて之を正すならん。

壬午、宋公兼享晉・楚之大夫。趙孟爲客。客、一坐所尊。故季孫飮大夫酒、臧紇爲客。
【読み】
壬午[みずのえ・うま]、宋公晉・楚の大夫を兼ね享す。趙孟を客と爲す。客とは、一坐の尊ぶ所なり。故に季孫大夫に酒を飮ましむるに、臧紇を客とせり。

子木與之言。弗能對。使叔向侍言焉。子木亦不能對也。
【読み】
子木之と言う。對うること能わず。叔向をして侍り言わしむ。子木も亦對うること能わず。

乙酉、宋公及諸侯之大夫盟于蒙門之外。前盟、諸大夫不敢敵公。禮也。今宋公以近在其國、故謙而重盟。故不書。蒙門、宋城門。
【読み】
乙酉[きのと・とり]、宋公諸侯の大夫と蒙門の外に盟う。前盟は、諸大夫敢えて公に敵せず。禮なり。今宋公近く其の國に在るを以て、故に謙して重ねて盟う。故に書さず。蒙門は、宋の城門。

子木問於趙孟曰、范武子之德何如。士會賢聞於諸侯。故問之。
【読み】
子木趙孟に問いて曰く、范武子の德何如、と。士會の賢諸侯に聞こゆ。故に之を問う。

對曰、夫子之家事治、言於晉國無隱情、其祝史陳信於鬼神、無愧辭。祝陳馨香、德足副之。故不愧。
【読み】
對えて曰く、夫子の家事治まり、晉國に言いて情を隱すこと無く、其の祝史信を鬼神に陳べて、辭に愧ずること無し、と。祝馨香を陳べて、德之に副うに足れり。故に愧じず。

子木歸、以語王。王曰、尙矣哉、尙、上也。○語、魚據反。
【読み】
子木歸りて、以て王に語[つ]ぐ。王曰く、尙[かみ]なるかな、尙は、上なり。○語は、魚據反。

能歆神人。歆、享也。使神享其祭、人懷其德。○歆、許金反。
【読み】
能く神人に歆[う]けらるること。歆[きん]は、享くるなり。神をして其の祭を享け、人をして其の德に懷かしむ。○歆は、許金反。

宜其光輔五君、以爲盟主也。五君、謂文・襄・靈・成・景。
【読み】
宜なり其の五君を光輔して、以て盟主と爲ること、と。五君は、文・襄・靈・成・景を謂う。

子木又語王曰、宜晉之伯也。有叔向以佐其卿。楚無以當之。不可與爭。晉荀寅遂如楚涖盟。重結晉・楚之好。
【読み】
子木又王に語げて曰く、宜なり晉の伯たるや。叔向有りて以て其の卿を佐く。楚以て之に當たること無し。與に爭う可からず、と。晉の荀寅遂に楚に如きて涖みて盟う。晉・楚の好を重結す。

鄭伯享趙孟于垂隴。自宋還過鄭。
【読み】
鄭伯趙孟を垂隴に享す。宋より還りて鄭を過ぐ。

子展・伯有・子西・子產・子大叔・二子石從。二子石、印段・公孫段。○從、才用反。
【読み】
子展・伯有・子西・子產・子大叔・二子石從う。二子石は、印段・公孫段。○從は、才用反。

趙孟曰、七子從君以寵武也。請皆賦以卒君貺。武亦以觀七子之志。詩以言志。
【読み】
趙孟曰く、七子君に從いて以て武を寵せり。請う、皆賦して以て君の貺[たまもの]を卒えよ。武も亦以て七子の志を觀ん、と。詩は以て志を言う。

子展賦草蟲。草蟲、詩召南。曰、未見君子。憂心忡忡。亦旣見止、亦旣覯止、我心則降。以趙孟爲君子。○忡、勑忠反。降、戶江反。又如字。
【読み】
子展草蟲を賦す。草蟲は、詩の召南。曰く、未だ君子を見ず。憂うる心忡忡[ちゅうちゅう]たり。亦旣に見、亦旣に覯[み]れば、我が心則ち降れり、と。趙孟を以て君子と爲す。○忡は、勑忠反。降は、戶江反。又字の如し。

趙孟曰、善哉、民之主也。在上不忘降。故可以主民。
【読み】
趙孟曰く、善いかな、民の主たること。上に在りて降ることを忘れず。故に以て民に主たる可し。

抑武也不足以當之。辭君子。
【読み】
抑々武や以て之に當たるに足らず、と。君子を辭す。

伯有賦鶉之賁賁。鶉之賁賁、詩鄘風。衛人刺其君淫亂、鶉鵲之不若。義取人之無良、我以爲兄、我以爲君也。○鶉、順倫反。賁、音奔。
【読み】
伯有鶉之賁賁[じゅんしほんほん]を賦す。鶉之賁賁は、詩の鄘風。衛人其の君の淫亂にして、鶉鵲にだも之れ若かざるを刺[そし]る。義人の良無きを、我れ以て兄と爲し、我れ以て君と爲すというに取る。○鶉は、順倫反。賁は、音奔。

趙孟曰、牀笫之言不踰閾。況在野乎。非使人之所得聞也。笫、簀也。此詩刺淫乱。故云、牀笫之言。閾、門限。使人、趙孟自謂。○笫、側里反。
【読み】
趙孟曰く、牀笫[しょうし]の言は閾を踰えず。況んや野に在るをや。使人の聞くことを得る所に非ざるなり、と。笫は、簀[さく]なり。此の詩淫乱を刺る。故に云う、牀笫の言、と。閾は、門限。使人は、趙孟自ら謂う。○笫は、側里反。

子西賦黍苗之四章。黍苗、詩小雅。四章曰、肅肅謝功、召伯營之。列列征師、召伯成之。比趙孟於召伯。
【読み】
子西黍苗[しょびょう]の四章を賦す。黍苗は、詩の小雅。四章に曰く、肅肅たる謝の功、召伯之を營む。列列たる征師、召伯之を成す、と。趙孟を召伯に比するなり。

趙孟曰、寡君在。武何能焉。推善於其君。
【読み】
趙孟曰く、寡君在す。武何ぞ能くせん、と。善を其の君に推す。

子產賦隰桑。隰桑、詩小雅。義取思見君子盡心以事之。曰、旣見君子、其樂如何。○盡、津忍反。
【読み】
子產隰桑[しゅうそう]を賦す。隰桑は、詩の小雅。義君子を見れば心を盡くして以て之に事えんことを思うに取る。曰く、旣に君子を見れば、其の樂しみ如何、と。○盡は、津忍反。

趙孟曰、武請受其卒章。卒章曰、心乎愛矣、遐不謂矣。中心藏之。何日忘之。趙武欲子產之見規誨。
【読み】
趙孟曰く、武請う、其の卒章を受けん、と。卒章に曰く、心に愛すれば、遐[なん]ぞ謂[つ]げざらん。中心に之を藏む。何れの日か之を忘れん、と。趙武子產の規誨せられんことを欲す。

子大叔賦野有蔓草。野有蔓草、詩鄭風。取其邂逅相遇、適我願兮。
【読み】
子大叔野有蔓草を賦す。野有蔓草は、詩の鄭風。其の邂逅に相遇えば、我が願いに適えりというに取る。

趙孟曰、吾子之惠也。大叔喜於相遇。故趙孟受其惠。
【読み】
趙孟曰く、吾子の惠みなり、と。大叔相遇うを喜ぶ。故に趙孟其の惠みを受く。

印段賦蟋蟀。蟋蟀、詩唐風。曰、無以太康。職思其居。好樂無荒、良士瞿瞿。言瞿瞿然顧禮儀。
【読み】
印段蟋蟀[しゅっしゅつ]を賦す。蟋蟀は、詩の唐風。曰く、以て太[はなは]だ康ずること無かれ。職として其の居を思え。樂を好みて荒むこと無かれ、良士は瞿瞿[くく]たり、と。言うこころは、瞿瞿然として禮儀を顧みるなり。

趙孟曰、善哉、保家之主也。吾有望矣。能戒懼不荒。所以保家。
【読み】
趙孟曰く、善いかな、家を保つの主や。吾れ望むこと有り、と。能く戒懼して荒まず。家を保つ所以なり。

公孫段賦桑扈。桑扈、詩小雅。義取君子有禮文。故能受天之祜。
【読み】
公孫段桑扈[そうこ]を賦す。桑扈は、詩の小雅。義君子禮文有り。故に能く天の祜[さいわい]を受くるというに取る。

趙孟曰、匪交匪敖、福將焉往。此桑扈詩卒章。趙孟因以取義。○敖、五報反。
【読み】
趙孟曰く、匪[か]の交わり敖らざれば、福將に焉に往かん、と。此れ桑扈の詩の卒章。趙孟因りて以て義を取る。○敖は、五報反。

若保是言也、欲辭福祿得乎。
【読み】
若し是の言を保たば、福祿を辭せんと欲すとも得んや、と。

卒享。文子告叔向曰、伯有將爲戮矣。詩以言志。志誣其上、而公怨之、以爲賓榮。言誣、則鄭伯未有其實。趙孟倡賦詩以自寵。故言公怨之、以爲賓榮。
【読み】
享を卒わる。文子叔向に告げて曰く、伯有は將に戮せられんとす。詩は以て志を言う。志其の上を誣いて、之を公怨して、以て賓榮と爲す。誣うと言うは、則ち鄭伯其の實有らざるなり。趙孟倡えて詩を賦せしめて以て自ら寵とす。故に之を公怨して、以て賓榮と爲すと言う。

其能久乎。幸而後亡。言必先亡。
【読み】
其れ能く久しからんや。幸いにして後に亡びん、と。言うこころは、必ず先ず亡びん。

叔向曰、然。已侈。所謂不及五稔者、夫子之謂矣。稔、年也。爲三十年、鄭殺良霄傳。○侈、昌氏反。又尸氏反。稔、而甚反。
【読み】
叔向曰く、然り。已[はなは]だ侈れり。所謂五稔に及ばずとは、夫子を謂うなり、と。稔は、年なり。三十年、鄭良霄を殺す爲の傳なり。○侈は、昌氏反。又尸氏反。稔は、而甚反。

文子曰、其餘皆數世之主也。子展、其後亡者也。在上不忘降。謂賦草蟲曰我心則降。○降、戶江反。
【読み】
文子曰く、其の餘は皆數世の主なり。子展は、其れ後に亡びん者なり。上に在りて降ることを忘れず。草蟲を賦して我が心則ち降ると曰うを謂う。○降は、戶江反。

印氏、其次也。樂而不荒。謂賦蟋蟀曰好樂無荒。
【読み】
印氏は、其の次なり。樂しみて荒まず。蟋蟀を賦して樂を好みて荒むこと無かれと曰うを謂う。

樂以安民、不淫以使之、後亡、不亦可乎。
【読み】
樂しみて以て民を安んじ、淫せずして以て之を使わば、後に亡びんこと、亦可ならずや、と。

宋左師請賞曰、請免死之邑。欲宋君稱功加厚賞。故謙言免死之邑也。
【読み】
宋の左師賞を請いて曰く、死を免るの邑を請う、と。宋君の功を稱して厚賞を加えんことを欲す。故に謙して死を免るの邑と言う。

公與之邑六十。以示子罕。子罕曰、凡諸侯小國、晉・楚所以兵威之。畏而後上下慈和。慈和而後能安靖其國家、以事大國。所以存也。無威則驕。驕則亂生。亂生必滅。所以亡也。天生五材、金・木・水・火・土也。
【読み】
公之に邑六十を與う。以て子罕に示す。子罕曰く、凡そ諸侯小國は、晉・楚の兵を以て之を威す所なり。畏れて後に上下慈和す。慈和して後に能く其の國家を安靖して、以て大國に事う。存する所以なり。威無ければ則ち驕る。驕れば則ち亂生ず。亂生ずれば必ず滅ぶ。亡ぶる所以なり。天五材を生じて、金・木・水・火・土なり。

民竝用之。廢一不可。誰能去兵。兵之設久矣。所以威不軌而昭文德也。聖人以興、謂湯武。○去、起呂反。下同。
【読み】
民竝に之を用ゆ。一を廢つれば不可なり。誰か能く兵を去らん。兵の設けたること久し。不軌を威して文德を昭らかにする所以なり。聖人は以て興り、湯・武を謂う。○去は、起呂反。下も同じ。

亂人以廢。謂桀・紂。
【読み】
亂人は以て廢す。桀・紂を謂う。

廢興・存亡・昏明之術、皆兵之由也。而子求去之、不亦誣乎。以誣道蔽諸侯、罪莫大焉。縱無大討、而又求賞、無厭之甚也。削而投之。削賞左師之書。○厭、於鹽反。
【読み】
廢興・存亡・昏明の術、皆兵に由れり。而るを子之を去らんことを求むるは、亦誣いざるや。誣道を以て諸侯を蔽うは、罪焉より大なるは莫し。縱[たと]い大討無くとも、而るに又賞を求むるは、厭くこと無きの甚だしきなり、と。削りて之を投ず。左師を賞するの書を削るなり。○厭は、於鹽反。

左師辭邑。向氏欲攻司城。司城、子罕。
【読み】
左師邑を辭す。向氏司城を攻めんと欲す。司城は、子罕。

左師曰、我將亡、夫子存我。德莫大焉。又可攻乎。
【読み】
左師曰く、我れ將に亡びんとするを、夫子我を存せり。德焉より大なるは莫し。又攻む可けんや、と。

君子曰、彼己之子、邦之司直、詩鄭風。司、主也。○己、音記。
【読み】
君子曰く、彼の己[こ]の子は、邦の司直なりとは、詩の鄭風。司は、主るなり。○己は、音記。

樂喜之謂乎。樂喜、子罕也。善其不阿向戌。
【読み】
樂喜を謂うか。樂喜は、子罕なり。其の向戌に阿らざるを善す。

何以恤我。我其收之、逸詩。恤、憂也。收、取也。
【読み】
何を以て我を恤えん。我れ其れ之を收めんとは、逸詩なり。恤は、憂うるなり。收は、取るなり。

向戌之謂乎。善向戌能知其過。
【読み】
向戌の謂うか、と。向戌能く其の過ちを知るを善す。

齊崔杼生成及彊而寡。偏喪曰寡。寡、特也。○喪、息浪反。
【読み】
齊の崔杼成と彊とを生みて寡なり。偏喪を寡と曰う。寡は、特[ひとり]なり。○喪は、息浪反。

娶東郭姜、生明。東郭姜以孤入。曰棠無咎。無咎、棠公之子。
【読み】
東郭姜を娶りて、明を生む。東郭姜孤を以[い]て入る。棠無咎と曰う。無咎は、棠公の子。

與東郭偃相崔氏。東郭偃、姜之弟。○相、去聲。
【読み】
東郭偃と與に崔氏を相く。東郭偃は、姜の弟。○相は、去聲。

崔成有病而廢之、有惡疾也。
【読み】
崔成病有りて之を廢して、惡疾有るなり。

而立明。成請老于崔。濟南東朝陽縣西北有崔氏城。成欲居崔邑以終老。
【読み】
明を立つ。成崔に老せんと請う。濟南の東朝陽縣の西北に崔氏城有り。成崔邑に居りて以て老を終えんと欲す。

崔子許之。偃與無咎弗予、曰、崔宗邑也。必在宗主。宗邑、宗廟所在。宗主、謂崔明。
【読み】
崔子之を許す。偃と無咎と予えずして、曰く、崔は宗邑なり。必ず宗主に在らん、と。宗邑は、宗廟の在る所なり。宗主は、崔明を謂う。

成與彊怒。將殺之。告慶封曰、夫子之身、亦子所知也。唯無咎與偃是從、父兄莫得進矣。大恐害夫子。敢以告。夫子、謂崔杼。
【読み】
成と彊と怒る。將に之を殺さんとす。慶封に告げて曰く、夫子の身も、亦子の知れる所なり。唯無咎と偃とに是れ從いて、父兄進むことを得ること莫し。大いに恐れらくは夫子に害あらんことを。敢えて以て告ぐ、と。夫子は、崔杼を謂う。

慶封曰、子姑退。吾圖之。告盧蒲嫳。嫳、慶封屬大夫。封以成・彊之言告嫳。○嫳、普結反。
【読み】
慶封曰く、子姑く退け。吾れ之を圖らん、と。盧蒲嫳[ろほへつ]に告ぐ。嫳は、慶封の屬大夫。封成・彊の言を以て嫳に告ぐ。○嫳は、普結反。

盧蒲嫳曰、彼君之讎也。天或者將弃彼矣。彼實家亂。子何病焉。君、謂齊莊公。爲崔杼所弑。
【読み】
盧蒲嫳曰く、彼は君の讎なり。天或は將に彼を弃てんとす。彼れ實に家亂る。子何ぞ病[うれ]えん。君は、齊の莊公を謂う。崔杼の爲に弑せらる。

崔之薄、慶之厚也。崔敗則慶專權。
【読み】
崔の薄きは、慶の厚きなり。崔敗るれば則ち慶權を專にす。

他日又告。成・彊復告。
【読み】
他日又告ぐ。成・彊復告ぐ。

慶封曰、苟利夫子、必去之。難吾助女。
【読み】
慶封曰く、苟も夫子に利あらば、必ず之を去れ。難あらば吾れ女を助けん、と。

九月、庚辰、崔成・崔彊殺東郭偃・棠無咎於崔氏之朝。崔子怒而出。其衆皆逃。求人使駕。不得。使圉人駕、寺人御而出。圉人、養馬者。寺人、奄士。
【読み】
九月、庚辰、崔成・崔彊東郭偃・棠無咎を崔氏の朝に殺す。崔子怒りて出づ。其の衆皆逃ぐ。人を求めて駕せしめんとす。得ず。圉人をして駕せしめ、寺人御して出づ。圉人は、馬を養う者。寺人は、奄士。

且曰、崔氏有福、止余猶可。恐滅家禍不止其身。
【読み】
且曰く、崔氏福有りて、余に止まらば猶可なり、と。家を滅ぼして禍の其の身に止まらざらんことを恐る。

遂見慶封。慶封曰、崔・慶一也。言如一家。
【読み】
遂に慶封を見る。慶封曰く、崔・慶は一なり。言うこころは、一家の如し。

是何敢然。請爲子討之。使盧蒲嫳帥甲以攻崔氏。崔氏堞其宮而守之。堞、短垣。使其衆居短垣内以守。○堞、音牒。
【読み】
是れ何ぞ敢えて然れる。請う、子の爲に之を討ぜん、と。盧蒲嫳をして甲を帥いて以て崔氏を攻めしむ。崔氏其の宮に堞[かき]して之を守る。堞は、短垣。其の衆をして短垣の内に居て以て守らしむ。○堞は、音牒。

弗克。使國人助之。遂滅崔氏、殺成與彊、而盡俘其家。其妻縊。妻、東郭姜。
【読み】
克たず。國人をして之を助けしむ。遂に崔氏を滅ぼし、成と彊とを殺して、盡く其の家を俘にす。其の妻縊る。妻は、東郭姜。

嫳復命於崔子、且御而歸之。嫳爲崔子御。
【読み】
嫳崔子に復命し、且御して之に歸る。嫳崔子の御と爲る。

至則無歸矣。乃縊。終入於其宮、不見其妻、凶。
【読み】
至れば則ち歸すべき無し。乃ち縊る。其の宮に入りて、其の妻を見ず、凶なりというを終わる。

崔明夜辟諸大墓。開先人之冢以藏之。○辟、婢亦反。亦甫亦反。
【読み】
崔明夜諸を大墓に辟す。先人の冢を開きて以て之を藏む。○辟は、婢亦反。亦甫亦反。

辛巳、崔明來奔。慶封當國。當國、秉政。
【読み】
辛巳、崔明來奔す。慶封國に當たる。國に當たるとは、政を秉るなり。

楚薳罷如晉涖盟。罷、令尹子蕩。報荀盈也。○罷、音皮。
【読み】
楚の薳罷[いひ]晉に如きて涖みて盟う。罷は、令尹子蕩。荀盈に報ゆるなり。○罷は、音皮。

晉侯享之。將出、賦旣醉。旣醉、詩大雅。曰、旣醉以酒、旣飽以德。君子萬年、介爾景福。以美晉侯、比之大平君臣也。
【読み】
晉侯之を享す。將に出でんとして、旣醉を賦す。旣醉は、詩の大雅。曰く、旣に醉うに酒を以てし、旣に飽くに德を以てす。君子萬年、爾の景福を介[おお]いにす、と。以て晉侯を美めて、之を大平の君臣に比す。

叔向曰、薳氏之有後於楚國也宜哉。承君命、不忘敏。子蕩將知政矣。敏以事君、必能養民。政其焉往。言政必歸之。
【読み】
叔向曰く、薳氏の楚國に後有るや宜なるかな。君命を承けて、敏を忘れず。子蕩將に政を知らんとす。敏にして以て君に事えば、必ず能く民を養わん。政其れ焉に往かん、と。言うこころは、政必ず之に歸せん。

崔氏之亂、在二十五年。
【読み】
崔氏の亂に、二十五年に在り。

申鮮虞來奔、僕賃於野、以喪莊公。爲齊莊公服喪。○賃、女鴆反。喪、如字。又息浪反。
【読み】
申鮮虞來奔し、野に僕賃して、以て莊公に喪す。齊の莊公の爲に喪を服す。○賃は、女鴆反。喪は、字の如し。又息浪反。

冬、楚人召之。遂如楚、爲右尹。傳言楚能用賢。
【読み】
冬、楚人之を召ぶ。遂に楚に如き、右尹と爲る。傳楚の能く賢を用ゆるを言う。

十一月、乙亥、朔、日有食之。辰在申。司歷過也。再失閏矣。謂斗建指申。周十一月、今之九月。斗當建戌、而在申。故知再失閏也。文十一年三月甲子至今年、七十一歲、應有二十六閏。今長歷推、得二十四閏。通計少再閏。釋例言之詳矣。
【読み】
十一月、乙亥[きのと・い]、朔、日之を食する有り。辰申に在り。司歷の過ちなり。再び閏を失えるなり。斗建申を指すを謂う。周の十一月は、今の九月なり。斗當に戌に建[さ]すべくして、申に在り。故に再び閏を失えるを知るなり。文十一年三月甲子より今年に至るまで、七十一歲なれば、應に二十六閏有るべし。今長歷もて推せば、二十四閏を得。通計再閏を少[か]く。釋例に之を言うこと詳らかなり。


〔經〕二十有八年、春、無冰。前年知其再失閏。頓置兩閏、以應天正。故此年正月建子、得以無冰爲災而書。
【読み】
〔經〕二十有八年、春、冰無し。前年其の再び閏を失えることを知る。頓[にわか]に兩閏を置きて、以て天正に應ずるなり。故に此の年の正月は建子なれば、冰無きを以て災いと爲して書すことを得。

夏、衛石惡出奔晉。甯喜之黨。書名、惡之。○惡之、烏路反。
【読み】
夏、衛の石惡出でて晉に奔る。甯喜の黨。名を書すは、之を惡みてなり。○惡之は、烏路反。

邾子來朝。秋、八月、大雩。仲孫羯如晉。告將朝楚。○羯、居謁反。
【読み】
邾子[ちゅし]來朝す。秋、八月、大いに雩[う]す。仲孫羯[ちゅうそんけつ]晉に如く。將に楚に朝せんとするを告ぐるなり。○羯は、居謁反。

冬、齊慶封來奔。崔杼之黨。耆酒荒淫而出。書名、罪之。自魯奔吳不書、以絕位不爲卿。○耆、市志反。
【読み】
冬、齊の慶封來奔す。崔杼の黨。酒を耆[この]み荒淫して出づ。名を書すは、之を罪するなり。魯より吳に奔ること書さざるは、位を絕ちて卿爲らざるを以てなり。○耆[し]は、市志反。

十有一月、公如楚。爲宋之盟故朝楚。
【読み】
十有一月、公楚に如く。宋の盟の爲の故に楚に朝す。

十有二月、甲寅、天王崩。靈王也。
【読み】
十有二月、甲寅[きのえ・とら]、天王崩ず。靈王なり。

乙未、楚子昭卒。康王也。十二月無乙未。日誤。
【読み】
乙未[きのと・ひつじ]、楚子昭卒す。康王なり。十二月に乙未無し。日の誤りなり。

〔傳〕二十八年、春、無冰。
【読み】
〔傳〕二十八年、春、冰無し。

梓愼曰、今茲宋・鄭其饑乎。梓愼、魯大夫。今年鄭游吉・宋向戌言之、明年饑甚。傳乃詳其事。
【読み】
梓愼曰く、今茲[ことし]宋・鄭其れ饑えんか。梓愼は、魯の大夫。今年鄭の游吉・宋の向戌之を言い、明年饑甚だし。傳乃ち其の事を詳らかにするなり。

歲在星紀。而淫於玄枵、歲、歲星也。星紀在丑。斗牛之次。玄枵在子。虛危之次。十八年、晉董叔曰、天道多在西北。是歲歲星在亥。至此年、十一歲。故在星紀。明年乃當在玄枵、今已在玄枵、淫行失次。
【読み】
歲星紀に在り。而るに玄枵[げんきょう]に淫して、歲は、歲星なり。星紀は丑に在り。斗牛の次なり。玄枵は子に在り。虛危の次なり。十八年、晉の董叔曰く、天道多く西北に在り、と。是の歲歲星亥に在りき。此の年に至りて、十一歲なり。故に星紀に在り。明年乃ち當に玄枵に在るべきに、今已に玄枵に在るは、淫行して次を失えるなり。

以有時菑。陰不堪陽。時菑、無冰也。盛陰用事而溫無冰。是陰不勝陽、地氣發洩。○菑、音災。洩、息列反。
【読み】
以て時菑[じさい]有り。陰陽に堪えざるなり。時菑は、冰無きなり。盛陰事を用いて溫かにして冰無し。是れ陰陽に勝たずして、地氣發洩するなり。○菑は、音災。洩は、息列反。

蛇乘龍。蛇、玄武之宿。虛危之星。龍、歲星。歲星、木也。木爲靑龍。失次出虛危下、爲蛇所乘。
【読み】
蛇龍に乘る。蛇は、玄武の宿。虛危の星なり。龍は、歲星。歲星は、木なり。木を靑龍と爲す。次を失いて虛危の下に出でて、蛇の爲に乘せらる。

龍、宋・鄭之星也。歲星本位在東方。東方房心爲宋、角亢爲鄭。故以龍爲宋・鄭之星。○亢、音剛。又苦浪反。
【読み】
龍は、宋・鄭の星なり。歲星の本位は東方に在り。東方房心を宋と爲し、角亢を鄭と爲す。故に龍を以て宋・鄭の星と爲す。○亢は、音剛。又苦浪反。

宋・鄭必饑。玄枵虛中也。玄枵三宿、虛星在其中。
【読み】
宋・鄭必ず饑えん。玄枵は中を虛にするなり。玄枵の三宿、虛星其の中に在り。

枵、耗名也。土虛而民耗。不饑何爲。歲爲宋・鄭之星。今失常淫入虛耗之次。時復無冰、地氣發洩。故曰土虛民耗。
【読み】
枵は、耗[こう]の名なり。土虛して民耗す。饑えずして何をか爲さん、と。歲は宋・鄭の星爲り。今常を失いて淫して虛耗の次に入る。時に復冰無く、地氣發洩す。故に土虛して民耗すと曰う。

夏、齊侯・陳侯・蔡侯・北燕伯・杞伯・胡子・沈子・白狄朝于晉。宋之盟故也。陳侯・蔡侯・胡子・沈子、楚屬也。宋盟曰、晉・楚之從、交相見。故朝晉。燕國、今薊縣。○薊、音計。
【読み】
夏、齊侯・陳侯・蔡侯・北燕伯・杞伯・胡子・沈子・白狄晉に朝す。宋の盟の故なり。陳侯・蔡侯・胡子・沈子は、楚の屬なり。宋の盟に曰く、晉・楚の從は、交々相見えん、と。故に晉に朝するなり。燕國は、今の薊縣。○薊は、音計。

齊侯將行。慶封曰、我不與盟。何爲於晉。以宋盟釋齊・秦。
【読み】
齊侯將に行かんとす。慶封曰く、我は盟に與らず。晉に何をか爲さん、と。宋の盟に齊・秦を釋[お]くというを以てなり。

陳文子曰、先事後賄、禮也。事大國、當先從其政事、而後薦賄以副己心。
【読み】
陳文子曰く、事を先にして賄を後にするは、禮なり。大國に事うるは、當に先ず其の政事に從いて、而して後に賄を薦めて以て己が心に副う。

小事大、未獲事焉、從之如志、禮也。言當從大國請事、以順其志。
【読み】
小の大に事うるは、未だ事を獲ざれば、之に從いて志の如くするは、禮なり。言うこころは、當に大國に從いて事を請いて、以て其の志に順うべし。

雖不與盟、敢叛晉乎。重丘之盟、未可忘也。子其勸行。重丘盟、在二十五年。○重、直龍反。
【読み】
盟に與らずと雖も、敢えて晉に叛かんや。重丘の盟、未だ忘る可からざるなり。子其れ行を勸めよ、と。重丘の盟は、二十五年に在り。○重は、直龍反。

衛人討甯氏之黨。故石惡出奔晉。衛人立其從子圃、以守石氏之祀。禮也。石惡之先石碏有大功於衛國、惡之罪不及不祀。故曰禮。○從、才用反。碏、七略反。
【読み】
衛人甯氏の黨を討ず。故に石惡出でて晉に奔る。衛人其の從子圃を立て、以て石氏の祀を守らしむ。禮なり。石惡の先石碏衛國に大功有り、惡の罪祀らざるに及ばず。故に禮と曰う。○從は、才用反。碏は、七略反。

邾悼公來朝、時事也。傳言來朝非宋盟、宋盟唯施於朝晉・楚。
【読み】
邾の悼公來朝するは、時の事なり。傳來朝は宋の盟に非ず、宋の盟は唯晉・楚に朝するに施するを言う。

秋、八月、大雩、旱也。
【読み】
秋、八月、大いに雩するは、旱すればなり。

蔡侯歸自晉、入于鄭。鄭伯享之。不敬。子產曰、蔡侯其不免乎。不免禍。
【読み】
蔡侯晉より歸り、鄭に入る。鄭伯之を享す。不敬なり。子產曰く、蔡侯は其れ免れざらんか。禍を免れじ。

日其過此也、往日至晉時。○過、古禾古臥二反。
【読み】
日[さき]に其の此を過ぎしや、往日晉に至る時。○過は、古禾古臥二反。

君使子展迋勞於東門之外。而傲。迋、往也。○迋、于況反。後同。
【読み】
君子展をして迋[ゆ]きて東門の外に勞わしむ。而るに傲れり。迋[きょう]は、往くなり。○迋は、于況反。後も同じ。

吾曰、猶將更之。今還、受享而惰。乃其心也。君小國、事大國、而惰傲以爲己心、將得死乎。若不免、必由其子。其爲君也、淫而不父。通大子般之妻。
【読み】
吾れ曰えり、猶將に之を更めんとす、と。今還るに、享を受けて惰る。乃ち其の心なり。小國に君とし、大國に事えて、惰傲以て己が心を爲せば、將[はた]死することを得んや。若し免れずば、必ず其の子に由らん。其の君爲るや、淫にして父たらず。大子般の妻に通ず。

僑聞之、如是者、恆有子禍。爲三十年、蔡世子般弑其君傳。
【読み】
僑之を聞く、是の如き者は、恆に子の禍有り、と。三十年、蔡の世子般其の君を弑する爲の傳なり。

孟孝伯如晉、告將爲宋之盟故如楚也。魯、晉屬。故告晉而行。
【読み】
孟孝伯晉に如くは、將に宋の盟の爲の故に楚に如かんとするを告ぐるなり。魯は、晉の屬。故に晉に告げて行く。

蔡侯之如晉也、鄭伯使游吉如楚。及漢。楚人還之、曰、宋之盟、君實親辱。君、謂鄭伯。○還、音環。
【読み】
蔡侯の晉に如くや、鄭伯游吉をして楚に如かしむ。漢に及ぶ。楚人之を還して、曰く、宋の盟に、君實に親ら辱くせり。君は、鄭伯を謂う。○還は、音環。

今吾子來。寡君謂吾子姑還。吾將使馹奔問諸晉而以告。問鄭君應來朝否。○馹、人實反。
【読み】
今吾子來る。寡君吾子に謂えらく、姑く還れ。吾れ將に馹[じつ]をして奔りて諸を晉に問わしめて以て告げんとす、と。鄭君來朝す應きや否やを問うなり。○馹は、人實反。

子大叔曰、宋之盟、君命將利小國、而亦使安定其社稷、鎭撫其民人、以禮承天之休。休、福祿也。
【読み】
子大叔曰く、宋の盟に、君命ずらく、將に小國を利して、亦其の社稷を安定し、其の民人を鎭撫して、禮を以て天の休[さいわい]を承けしめんとす、と。休は、福祿なり。

此君之憲令、而小國之望也。憲、法也。
【読み】
此れ君の憲令にして、小國の望みなり。憲は、法なり。

寡君是故使吉奉其皮幣、聘用乘皮束帛。
【読み】
寡君是の故に吉をして其の皮幣を奉ぜしめ、聘には乘皮束帛を用ゆ。

以歲之不易、聘於下執事。言歲有饑荒之難。故鄭伯不得自朝楚。○易、以豉反。
【読み】
歲の易からざるを以て、下執事に聘せり。言うこころは、歲饑荒の難有り。故に鄭伯自ら楚に朝することを得ず。○易は、以豉反。

今執事有命曰、女何與政令之有。必使而君棄而封守、跋涉山川、蒙犯霜露、以逞君心。小國將君是望。敢不唯命是聽。無乃非盟載之言、以闕君德、而執事有不利焉。小國是懼。不然、其何勞之敢憚。
【読み】
今執事命有りて曰く、女何ぞ政令に與ることか之れ有らん。必ず而[なんじ]の君をして而の封守を棄てて、山川を跋涉し、霜露を蒙犯して、以て君の心を逞くせしめよ、と。小國は將に君を是れ望まんとす。敢えて唯命是れ聽かざらんや。乃ち盟載の言に非ずして、以て君の德を闕きて、執事不利有ること無からんや。小國是れ懼る。然らずんば、其れ何ぞ勞を敢えて憚らん、と。

子大叔歸、復命、告子展曰、楚子將死矣。不脩其政德、而貪昧於諸侯、以逞其願。欲久得乎。周易有之、在復 震下坤上、復。
【読み】
子大叔歸りて、復命し、子展に告げて曰く、楚子は將に死せんとす。其の政德を脩めずして、諸侯を貪昧して、以て其の願いを逞くせんとす。久しからんことを欲すとも得んや。周易に之れ有り、復 震下坤上は、復。

之頤震下艮上、頤。復上六變得頤。
【読み】
頤[い]に之くに在り。震下艮上は、頤。復の上六變じて頤を得。

曰、迷復、凶。復上六爻辭也。復、反也。極陰反陽之卦。上處極位、迷而復反、失道已遠、遠而無應。故凶。
【読み】
曰く、迷いて復らんとす、凶なり、と。復の上六の爻の辭なり。復は、反るなり。極陰陽に反るの卦。上極位に處りて、迷いて復反するも、道を失うこと已に遠く、遠くして應無し。故に凶なり。

其楚子之謂乎。欲復其願、謂欲得鄭朝以復其願。
【読み】
其れ楚子を謂うか。其の願いに復らんことを欲して、鄭の朝を得て以て其の願いに復らんことを欲するを謂う。

而棄其本。不脩德。
【読み】
其の本を棄つ。德を脩めず。

復歸無所。是謂迷復。失道已遠、又無所歸。
【読み】
復歸せんとするに所無し。是を迷復と謂う。道を失うこと已に遠く、又歸する所無し。

能無凶乎。君其往也。送葬而歸、以快楚心。言楚子必死。君往、當送其葬。
【読み】
能く凶無からんや。君其れ往け。葬を送りて歸りて、以て楚の心を快くせしめよ。言うこころは、楚子必ず死せん。君往かば、當に其の葬を送るべし。

楚不幾十年、未能恤諸侯也。幾、近也。言失道遠者、復之復難。
【読み】
楚十年に幾からずんば、未だ諸侯を恤うること能わじ。幾は、近きなり。言うこころは、道を失うこと遠き者は、復るも復難し。

吾乃休吾民矣。休、息也。言楚不能復爲害。
【読み】
吾れ乃ち吾が民を休めん、と。休は、息むなり。言うこころは、楚復害を爲すこと能わず。

裨竈曰、今茲周王及楚子皆將死。裨竈、鄭大夫。
【読み】
裨竈[ひそう]曰く、今茲[ことし]周王と楚子と皆將に死せんとす。裨竈は、鄭の大夫。

歲棄其次、而旅於明年之次、以害鳥帑。周・楚惡之。旅、客處也。歲星棄星紀之次、客在玄枵。歲星所在、其國有福。失次於北、禍衝在南。南爲朱鳥、鳥尾曰帑。鶉火・鶉尾、周・楚之分。故周王・楚子受其咎。倶論歲星過次、梓愼則曰宋・鄭饑、裨竈則曰周・楚王死。傳故備舉以示卜占惟人所在。○帑、音奴。惡、如字。一烏路反。
【読み】
歲其の次を棄てて、明年の次に旅して、以て鳥帑を害す。周・楚之に惡し、と。旅は、客處なり。歲星星紀の次を棄てて、玄枵に客在す。歲星の在る所は、其の國福有り。次を北に失いて、禍衝南に在り。南を朱鳥と爲し、鳥尾を帑と曰う。鶉火・鶉尾は、周・楚の分なり。故に周王・楚子其の咎を受くるなり。倶に歲星の次を過ぐるを論じて、梓愼は則ち宋・鄭饑ゆと曰い、裨竈は則ち周・楚の王死すと曰う。傳故に備に舉して以て卜占は惟人に在る所なるを示すなり。○帑は、音奴。惡は、字の如し。一に烏路反。

九月、鄭游吉如晉、告將朝于楚、以從宋之盟。子產相鄭伯以如楚。舍不爲壇。至敵國郊、除地封土、爲壇以受郊勞。
【読み】
九月、鄭の游吉晉に如きて、將に楚に朝して、以て宋の盟に從わんとすと告ぐ。子產鄭伯を相けて以て楚に如く。舍[やど]りて壇を爲さず。敵國の郊に至れば、地を除い土を封じ、壇を爲して以て郊勞を受く。

外僕言曰、昔先大夫相先君適四國、未嘗不爲壇。外僕、掌次舍者。
【読み】
外僕言いて曰く、昔先大夫先君を相けて四國に適けば、未だ嘗て壇を爲さずんばあらず。外僕は、次舍を掌る者。

自是至今、亦皆循之。今子草舍。無乃不可乎。子產曰、大適小則爲壇、小適大苟舍而已。焉用壇。
【読み】
是より今に至るまで、亦皆之に循えり。今子は草舍す。乃ち不可なること無からんや、と。子產曰く、大小に適くときは則ち壇を爲し、小大に適くときは苟も舍るのみ。焉ぞ壇を用いん。

僑聞之。大適小有五美。宥其罪戾、赦其過失、救其菑患、賞其德刑、刑、法也。
【読み】
僑之を聞く。大の小に適くは五美有り。其の罪戾を宥して、其の過失を赦し、其の菑患を救い、其の德刑を賞し、刑は、法なり。

敎其不及、小國不困、懷服如歸。是故作壇以昭其功、宣告後人、無怠於德。怠、解也。
【読み】
其の及ばざるを敎え、小國困しまず、懷服すること歸るが如し。是の故に壇を作りて以て其の功を昭らかにし、後人に宣告して、德に怠ること無からしむ。怠は、解[おこた]るなり。

小適大有五惡。說其罪戾、自解說也。
【読み】
小の大に適くは五惡有り。其の罪戾を說き、自ら解說するなり。

請其不足、行其政事、奉行大國之政。
【読み】
其の足らざるを請い、其の政事を行い、大國の政を奉行す。

共其職貢、從其時命。從朝會之命。
【読み】
其の職貢に共し、其の時命に從うなり。朝會の命に從う。

不然則重其幣帛、以賀其福而弔其凶。皆小國之禍也。焉用作壇以昭其禍。所以告子孫、無昭禍焉可也。無昭禍以告子孫。
【読み】
然らずんば則ち其の幣帛を重ねて、以て其の福を賀して其の凶を弔うなり。皆小國の禍なり。焉ぞ壇を作りて以て其の禍を昭らかにすることを用いん。子孫に告ぐる所以は、禍を昭らかにすること無くして可なり、と。禍を昭らかにして以て子孫に告ぐること無し。

齊慶封好田而耆酒。與慶舍政、舍、慶封子。慶封當國、不自爲政、以付舍。○耆、市志反。
【読み】
齊の慶封田[かり]を好みて酒を耆[この]む。慶舍に政を與え、舍は、慶封の子。慶封國に當たり、自ら政を爲さずして、以て舍に付す。○耆は、市志反。

則以其内實遷于盧蒲嫳氏、易内而飮酒。内實、寶物妻妾也。移而居嫳家。
【読み】
則ち其の内實を以て盧蒲嫳氏に遷り、内を易えて酒を飮む。内實は、寶物妻妾なり。移りて嫳の家に居る。

數日、國遷朝焉。就於盧蒲氏朝見封。
【読み】
數日、國遷りて朝す。盧蒲氏に就きて封に朝見す。

使諸亡人得賊者以告而反之。亡人、辟崔氏難出奔者。
【読み】
諸々亡人の賊を得たる者をして以て告げしめて之を反す。亡人は、崔氏の難を辟けて出奔する者。

故反盧蒲癸。癸臣子之。子之、慶舍。
【読み】
故に盧蒲癸を反す。癸子之に臣たり。子之は、慶舍。

有寵。妻之。子之以其女妻癸。○妻、七計反。
【読み】
寵有り。之に妻す。子之其の女を以て癸に妻す。○妻は、七計反。

慶舍之士謂盧蒲癸曰、男女辨姓。子不辟宗、何也。辨、別也。別姓而後可相取。慶氏・盧蒲氏皆姜姓。
【読み】
慶舍の士盧蒲癸に謂いて曰く、男女は姓を辨つ。子宗を辟けざるは、何ぞや、と。辨は、別つなり。姓を別けて而して後に相取る可し。慶氏・盧蒲氏は皆姜姓。

曰、宗不余辟。言舍欲妻己。
【読み】
曰く、宗余を辟けず。言うこころは、舍己に妻せんと欲す。

余獨焉辟之。賦詩斷章。余取所求焉。惡識宗。言己苟欲有求於慶氏。不能復顧禮。譬如賦詩者取其一章而已。○斷、音短。惡、音烏。注同。
【読み】
余獨り焉ぞ之を辟けん。詩を賦するには章を斷つ。余求むる所を取らんとす。惡ぞ宗を識らん、と。言うこころは、己苟も慶氏に求め有らんと欲す。復禮を顧みること能わず。譬えば詩を賦する者の其の一章を取るが如きのみ。○斷は、音短。惡は、音烏。注も同じ。

癸言王何而反之。二人皆嬖。二子、皆莊公黨。二十五年、崔氏弑莊公。癸・何出奔。今還、求寵於慶氏、欲爲莊公報讎。
【読み】
癸王何を言いて之を反す。二人皆嬖せらる。二子は、皆莊公の黨。二十五年、崔氏莊公を弑す。癸・何出奔す。今還りて、寵を慶氏に求め、莊公の爲に讎を報いんことを欲す。

使執寢戈而先後之。寢戈、親近兵杖。○先、悉薦反。後、戶豆反。
【読み】
寢戈を執りて之を先後せしむ。寢戈は、親近の兵杖。○先は、悉薦反。後は、戶豆反。

公膳、日雙雞。卿大夫之膳食。
【読み】
公膳は、日々に雙雞なり。卿大夫の膳食。

饔人竊更之以鶩。御者知之、則去其肉、而以其洎饋。御、進食者。饔人・御者、欲使諸大夫怨慶氏、減其膳。蓋盧蒲癸・王何之謀。○鶩、音木。鴨也。去、起呂反。藏也。洎、其器反。肉汁也。
【読み】
饔人[ようじん]竊かに之を更うるに鶩[ぼく]を以てす。御者之を知り、則ち其の肉を去[おさ]めて、其の洎[しる]を以て饋[おく]る。御は、食を進むる者なり。饔人・御者、諸大夫をして慶氏を怨ましめんことを欲して、其の膳を減らす。蓋し盧蒲癸・王何の謀ならん。○鶩は、音木。鴨なり。去は、起呂反。藏むるなり。洎[き]は、其器反。肉汁なり。

子雅・子尾怒。二子、皆惠公孫。
【読み】
子雅・子尾怒る。二子は、皆惠公の孫。

慶封告盧蒲嫳。以二子怒告嫳。
【読み】
慶封盧蒲嫳に告ぐ。二子の怒れるを以て嫳に告ぐ。

盧蒲嫳曰、譬之如禽獸。吾寢處之矣。言能殺而席其皮。
【読み】
盧蒲嫳曰く、之を譬えば禽獸の如し。吾れ之に寢處せん、と。言うこころは、能く殺して其の皮を席にす。

使析歸父告晏平仲。欲與共謀子雅・子尾。
【読み】
析歸父をして晏平仲に告げしむ。與に共に子雅・子尾を謀らんことを欲す。

平仲曰、嬰之衆不足用也。知無能謀也。言弗敢出。不敢洩謀。○知、音智。
【読み】
平仲曰く、嬰の衆は用ゆるに足らず。知は能く謀ること無し。言敢えて出ださず。敢えて謀を洩らさず。○知は、音智。

有盟可也。子家曰、子之言云。子家、析歸父。
【読み】
盟有らんこと可なり、と。子家曰く、子の言に云う。子家は、析歸父。

又焉用盟。告北郭子車。子車、齊大夫。
【読み】
又焉ぞ盟を用いん、と。北郭子車に告ぐ。子車は、齊の大夫。

子車曰、人各有以事君。非佐之所能也。佐、子車名。
【読み】
子車曰く、人各々以て君に事うること有り。佐が能くする所に非ざるなり、と。佐は、子車の名。

陳文子謂桓子、桓子、文子之子、無宇。
【読み】
陳文子桓子に謂いて、桓子は、文子の子、無宇。

曰、禍將作矣。吾其何得。對曰、得慶氏之木百車於莊。慶封時有此木、積於六軌之道。
【読み】
曰く、禍將に作らんとす。吾れ其れ何をか得ん、と。對えて曰く、慶氏の木百車を莊に得ん、と。慶封時に此の木有りて、六軌の道に積む。

文子曰、可愼守也已。善其不志於貨財。
【読み】
文子曰く、愼み守る可きのみ、と。其の貨財に志さざるを善す。

盧蒲癸・王何卜攻慶氏、示子之兆、龜兆。
【読み】
盧蒲癸・王何慶氏を攻めんことを卜し、子之に兆を示して、龜兆。

曰、或卜攻讎。敢獻其兆。子之曰、克。見血。
【読み】
曰く、或ひと讎を攻めんことを卜す。敢えて其の兆を獻ず、と。子之曰く、克たん。血を見ん、と。

冬、十月、慶封田于萊。陳無宇從。丙辰、文子使召之。請曰、無宇之母疾病。請歸。慶季卜之、季、慶封。○萊、音來。從、去聲。
【読み】
冬、十月、慶封萊に田す。陳無宇從う。丙辰[ひのえ・たつ]、文子之を召ばしむ。請いて曰く、無宇の母疾病なり。請う、歸らん、と。慶季之を卜し、季は、慶封。○萊は、音來。從は、去聲。

示之兆、曰、死。奉龜而泣。無宇泣。○奉、芳勇反。
【読み】
之に兆を示して、曰く、死せん、と。龜を奉じて泣く。無宇泣く。○奉は、芳勇反。

乃使歸。慶嗣聞之、嗣、慶封之族。
【読み】
乃ち歸らしむ。慶嗣之を聞きて、嗣は、慶封の族。

曰、禍將作矣。謂子家速歸。子家、慶封字。
【読み】
曰く、禍將に作らんとす。子家に謂えらく、速やかに歸れ。子家は、慶封の字。

禍作、必於嘗。嘗、秋祭。
【読み】
禍の作らんは、必ず嘗に於てせん。嘗は、秋祭。

歸、猶可及也。子家弗聽。亦無悛志。悛、改寤也。○悛、七全反。
【読み】
歸らば、猶及ぶ可し、と。子家聽かず。亦悛むる志無し。悛は、改寤なり。○悛は、七全反。

子息曰、亡矣。幸而獲在吳・越。子息、慶嗣。
【読み】
子息曰く、亡びん。幸いにして吳・越に在ることを獲ん、と。子息は、慶嗣。

陳無宇濟水、而戕舟發梁。戕、殘壞也。不欲慶封得救難。○戕、在羊反。
【読み】
陳無宇水を濟りて、舟を戕[そこな]い梁を發[あば]く。戕[しょう]は、殘壞なり。慶封が難を救うことを得んことを欲せず。○戕、在羊反。

盧蒲姜謂癸曰、有事而不告我、必不捷矣。姜、癸妻。慶舍女。
【読み】
盧蒲姜癸に謂いて曰く、事有りて我に告げずんば、必ず捷たじ、と。姜は、癸の妻。慶舍の女。

癸告之。告欲殺慶舍。
【読み】
癸之を告ぐ。慶舍を殺さんことを欲するを告ぐ。

姜曰、夫子愎。莫之止、將不出。我請止之。夫子、謂慶舍。○愎、皮逼反。
【読み】
姜曰く、夫子は愎[もと]れり。之を止むること莫くば、將に出でざらんとす。我れ請う、之を止めん、と。夫子は、慶舍を謂う。○愎は、皮逼反。

癸曰、諾。十一月、乙亥、嘗于大公之廟。慶舍涖事。臨祭事。
【読み】
癸曰く、諾、と。十一月、乙亥[きのと・い]、大公の廟に嘗す。慶舍事に涖まんとす。祭事に臨む。

盧蒲姜告之、且止之。弗聽。曰、誰敢者。遂如公。至公所。
【読み】
盧蒲姜之を告げ、且つ之を止む。聽かず。曰く、誰か敢えてせん者ぞ、と。遂に公に如く。公所に至る。

麻嬰爲尸、爲祭尸。
【読み】
麻嬰尸と爲り、祭尸と爲る。

慶奊爲上獻。上獻、先獻者。○奊、戶結反。
【読み】
慶奊[けいけつ]上獻と爲る。上獻は、先ず獻ずる者。○奊は、戶結反。

盧蒲癸・王何執寢戈、慶氏以其甲環公宮。廟在宮内。○環、如字。又音患。
【読み】
盧蒲癸・王何寢戈を執り、慶氏其の甲を以て公宮を環らす。廟は宮内に在り。○環は、字の如し。又音患。

陳氏・鮑氏之圉人爲優。優、俳。
【読み】
陳氏・鮑氏の圉人優を爲す。優は、俳なり。

慶氏之馬善驚。士皆釋甲束馬、束絆之也。
【読み】
慶氏の馬は善く驚く。士皆甲を釋きて馬を束ねて、之を束絆するなり。

而飮酒、且觀優、至於魚里。魚里、里名。優在魚里。就觀之。
【読み】
酒を飮み、且優を觀んとして、魚里に至る。魚里は、里の名。優魚里に在り。就きて之を觀る。

欒・高・陳・鮑之徒、介慶氏之甲、欒、子雅。高、子尾。陳、陳須無。鮑、鮑國。
【読み】
欒・高・陳・鮑の徒、慶氏の甲を介し、欒は、子雅。高は、子尾。陳は、陳須無。鮑は、鮑國。

子尾抽桷擊扉三。桷、椽也。扉、門闔也。以桷擊扉爲期。○桷、音
【読み】
子尾桷を抽きて扉を擊つこと三たび。桷は、椽なり。扉は、門闔なり。桷を以て扉を擊ちて期を爲す。○桷は、音

盧蒲癸自後刺子之。王何以戈擊之、解其左肩。猶援廟桷動於甍、甍、屋棟。○刺、七亦反。甍、亡耕反。
【読み】
盧蒲癸後より子之を刺す。王何戈を以て之を擊ち、其の左肩を解く。猶廟桷を援[と]りて甍を動かし、甍は、屋棟。○刺は、七亦反。甍は、亡耕反。

以俎壺投殺人而後死。言其多力。
【読み】
俎壺を以て投げて人を殺して後に死せり。其の多力を言う。

遂殺慶繩・麻嬰。慶繩、慶奊。
【読み】
遂に慶繩[けいじょう]・麻嬰を殺す。慶繩は、慶奊。

公懼。鮑國曰、羣臣爲君故也。言欲尊公室。非爲亂。
【読み】
公懼る。鮑國曰く、羣臣は君の爲の故なり、と。言うこころは、公室を尊ばんことを欲す。亂を爲さんとには非ず。

陳須無以公歸、稅服而如内宮。言公懼於外難。○稅、吐活反。一如字。
【読み】
陳須無公を以[い]て歸り、服を稅[ぬ]ぎて内宮に如く。公外難を懼るるを言う。○稅は、吐活反。一に字の如し。

慶封歸。遇告亂者。丁亥、伐西門。弗克。還伐北門。克之。入伐内宮。陳・鮑在公所故。
【読み】
慶封歸る。亂を告ぐる者に遇う。丁亥[ひのと・い]、西門を伐つ。克たず。還りて北門を伐つ。之に克つ。入りて内宮を伐つ。陳・鮑公所に在る故なり。

弗克。反陳于嶽、嶽、里名。○陳、直覲反。
【読み】
克たず。反りて嶽に陳し、嶽は、里の名。○陳は、直覲反。

請戰。弗許。遂來奔。
【読み】
戰わんと請う。許さず。遂に來奔す。

獻車於季武子。美。澤可以鑑。光鑑形也。
【読み】
車を季武子に獻ず。美なり。澤にして以て鑑む可し。光形を鑑むなり。

展莊叔見之、魯大夫。
【読み】
展莊叔之を見て、魯の大夫。

曰、車甚澤、人必瘁。宜其亡也。叔孫穆子食慶封。慶封氾祭。禮食有祭、示有所先也。氾祭、遠散所祭不共。○氾、芳劒反。
【読み】
曰く、車甚だ澤なれば、人必ず瘁[かじ]くという。宜なり其の亡びしこと、と。叔孫穆子慶封に食わしむ。慶封氾祭す。禮に食するとき祭ること有るは、先とする所有るを示すなり。氾祭は、祭る所を遠く散じて不共なるなり。○氾は、芳劒反。

穆子不說。使工爲之誦茅鴟。工、樂師。茅鴟、逸詩。刺不敬。○說、音悅。
【読み】
穆子說ばず。工をして之が爲に茅鴟[ぼうし]を誦せしむ。工は、樂師。茅鴟は、逸詩。不敬を刺る。○說は、音悅。

亦不知。旣而齊人來讓。讓魯受慶封。
【読み】
亦知らず。旣にして齊人來り讓[せ]む。魯の慶封を受くるを讓む。

奔吳。吳句餘予之朱方。句餘、吳子夷末也。朱方、吳邑。○句、古侯反。
【読み】
吳に奔る。吳の句餘之に朱方を予う。句餘は、吳子夷末なり。朱方は、吳の邑。○句は、古侯反。

聚其族焉而居之。富於其舊。子服惠伯謂叔孫曰、天殆富淫人。慶封又富矣。穆子曰、善人富謂之賞、淫人富謂之殃。天其殃之也。其將聚而殲旃。殲、盡也。旃、之也。爲昭四年、殺慶封傳。○殲、子潛反。
【読み】
其の族を聚めて之に居る。其の舊より富めり。子服惠伯叔孫に謂いて曰く、天殆ど淫人を富まさんとす。慶封又富めり、と。穆子曰く、善人の富める之を賞と謂い、淫人の富める之を殃と謂う。天其れ之に殃[わざわい]するならん。其れ將に聚めて旃[これ]を殲[つ]くさんとするならん、と。殲は、盡くすなり。旃は、之なり。昭四年、慶封を殺す爲の傳なり。○殲は、子潛反。

癸巳、天王崩。未來赴。亦未書。禮也。嫌時已聞喪當書。故發例。
【読み】
癸巳[みずのと・み]、天王崩ず。未だ來り赴[つ]げず。亦未だ書さず。禮なり。時已に喪を聞けば當に書すべきに嫌あり。故に例を發せり。

崔氏之亂、喪羣公子。故鉏在魯、叔孫還在燕、賈在句瀆之丘。在襄二十五年。
【読み】
崔氏の亂に、羣公子を喪えり。故に鉏魯に在り、叔孫還燕に在り、賈句瀆[こうとう]の丘に在り。襄二十五年に在り。

及慶氏亡、皆召之、具其器用、而反其邑焉。反、還也。
【読み】
慶氏が亡ぶるに及びて、皆之を召し、其の器用を具えて、其の邑を反す。反は、還るなり。

與晏子邶殿其鄙六十。邶殿、齊別都。以邶殿邊鄙六十邑與晏嬰。○邶、蒲對反。殿、多薦反。亦如字。
【読み】
晏子に邶殿[はいでん]の其の鄙六十を與う。邶殿は、齊の別都。邶殿の邊鄙六十邑を以て晏嬰に與う。○邶は、蒲對反。殿は、多薦反。亦字の如し。

弗受。子尾曰、富、人之所欲也。何獨弗欲。對曰、慶氏之邑足欲。故亡。吾邑不足欲也。益之以邶殿、乃足欲。足欲、亡無日矣。在外、不得宰吾一邑。不受邶殿、非惡富也。恐失富也。且夫富、如布帛之有幅焉、爲之制度、使無遷也。遷、移也。○惡、去聲。夫、音扶。
【読み】
受けず。子尾曰く、富は、人の欲する所なり。何ぞ獨り欲せざる、と。對えて曰く、慶氏の邑は欲するに足れり。故に亡びたり。吾が邑は欲するに足らざるなり。之を益すに邶殿を以てせば、乃ち欲するに足らん。欲するに足らば、亡びんこと日無けん。外に在らば、吾が一邑だも宰することを得じ。邶殿を受けざるは、富を惡むに非ざるなり。富を失わんことを恐れてなり。且つ夫れ富は、布帛の幅有るが如くして、之が制度を爲して、遷ること無からしめんとす。遷は、移るなり。○惡は、去聲。夫は、音扶。

夫民、生厚而用利。於是乎正德以幅之、言厚利皆人之所欲。唯正德可以爲之幅。
【読み】
夫れ民は、生厚くして用利あらんとす。是に於て正德以て之に幅して、言うこころは、厚利は皆人の欲する所。唯正德以て之が幅と爲す可し。

使無黜嫚、黜、猶放也。
【読み】
黜嫚[ちゅつまん]すること無からしむる、黜は、猶放のごとし。

謂之幅利。利過則爲敗。吾不敢貪多、所謂幅也。
【読み】
之を利に幅すと謂う。利過ぐれば則ち敗れを爲す。吾が敢えて多きを貪らざるは、所謂幅なり、と。

與北郭佐邑六十。受之。與子雅邑。辭多受少。與子尾邑。受而稍致之。致、還公。
【読み】
北郭佐に邑六十を與う。之を受く。子雅に邑を與う。多きを辭して少なきを受く。子尾に邑を與う。受けて稍[ようや]く之を致す。致すとは、公に還すなり。

公以爲忠。故有寵。
【読み】
公以て忠なりと爲す。故に寵有り。

釋盧蒲嫳于北竟。釋、放也。
【読み】
盧蒲嫳を北竟に釋[はな]つ。釋は、放つなり。

求崔杼之尸將戮之。不得。叔孫穆子曰、必得之。武王有亂臣十人。亂、治也。○治、直吏反。
【読み】
崔杼の尸を求めて將に之を戮せんとす。得られず。叔孫穆子曰く、必ず之を得ん。武王は亂臣十人有り。亂は、治むるなり。○治は、直吏反。

崔杼其有乎。不十人、不足以葬。葬必須十人。崔氏不能令十人同心。故必得。
【読み】
崔杼は其れ有らんや。十人ならざれば、以て葬るに足らず、と。葬は必ず十人を須ゆ。崔氏十人をして同心ならしむること能わず。故に必ず得ん。

旣崔氏之臣曰、與我其拱璧、崔氏大璧。
【読み】
旣にして崔氏の臣曰く、我に其の拱璧を與えば、崔氏の大璧。

吾獻其柩。於是得之。十二月、乙亥、朔、齊人遷莊公殯于大寢、更殯之於路寢也。十二月戊戌朔。乙亥誤。○柩、其救反。
【読み】
吾れ其の柩を獻ぜん、と。是に於て之を得たり。十二月、乙亥、朔、齊人莊公の殯を大寢に遷し、更に之を路寢に殯するなり。十二月戊戌朔。乙亥は誤りなり。○柩は、其救反。

以其棺尸崔杼於市。崔氏弑莊公、又葬不如禮。故以莊公棺著崔杼尸邊、以章其罪。○著、丁略反。
【読み】
其の棺を以て崔杼を市に尸す。崔氏莊公を弑し、又葬ること禮の如くならず。故に莊公の棺を以て崔杼の尸の邊に著けて、以て其の罪を章すなり。○著は、丁略反。

國人猶知之、皆曰、崔子也。始求崔杼之尸不得。故傳云、國皆知之。
【読み】
國人猶之を知り、皆曰く、崔子なり、と。始め崔杼の尸を求めて得ず。故に傳に云う、國皆之を知れり、と。

爲宋之盟故、公及宋公・陳侯・鄭伯・許男如楚。公過鄭。鄭伯不在。已在楚。
【読み】
宋の盟の爲の故に、公宋公・陳侯・鄭伯・許男と楚に如く。公鄭を過ぐ。鄭伯在らず。已に楚に在り。

伯有迋勞於黃崖。不敬。滎陽宛陵縣西有黃水、西南至新鄭城、西入洧。○迋、音旺。勞、力報反。
【読み】
伯有迋[ゆ]きて黃崖に勞う。不敬なり。滎陽宛陵縣の西に黃水有り、西南して新鄭城に至り、西して洧に入る。○迋は、音旺。勞は、力報反。

穆叔曰、伯有無戾於鄭、鄭必有大咎。伯有不受戮、必還爲鄭國害。
【読み】
穆叔曰く、伯有鄭に戾[つみ]無くば、鄭必ず大咎有らん。伯有戮を受けずんば、必ず還って鄭國の害を爲さん。

敬、民之主也。而棄之。何以承守。言無以承先祖守其家。
【読み】
敬は、民の主なり。而るを之を棄つ。何を以て承守せん。言うこころは、以て先祖に承けて其の家を守ること無し。

鄭人不討、必受其辜。濟澤之阿、言薄土。○濟、子禮反。
【読み】
鄭人討ぜずんば、必ず其の辜を受けん。濟澤の阿の、薄土を言う。○濟は、子禮反。

行潦之蘋藻、言賤菜。
【読み】
行潦の蘋藻も、賤菜を言う。

寘諸宗室、薦宗廟。
【読み】
諸を宗室に寘き、宗廟に薦む。

季蘭尸之、敬也。言取蘋藻之菜於阿澤之中、使服蘭之女而爲之主、神猶享之。以其敬也。
【読み】
季蘭之を尸[つかさど]るは、敬なり。言うこころは、蘋藻の菜を阿澤の中に取りて、蘭を服するの女をして之が主爲らしむれば、神猶之を享く。其の敬するを以てなり。

敬可棄乎。爲三十年、鄭殺良霄傳。
【読み】
敬棄つ可けんや、と。三十年、鄭良霄を殺す爲の傳なり。

及漢。楚康王卒。公欲反。叔仲昭伯曰、我楚國之爲。豈爲一人行也。昭伯、叔仲帶。○爲、于僞反。
【読み】
漢に及ぶ。楚の康王卒す。公反らんことを欲す。叔仲昭伯曰く、我は楚國の爲なり。豈一人の爲に行かんや、と。昭伯は、叔仲帶。○爲は、于僞反。

子服惠伯曰、君子有遠慮、小人從邇。邇、近也。
【読み】
子服惠伯曰く、君子は遠慮有り、小人は邇きに從う。邇は、近きなり。

飢寒之不恤、誰遑其後。遑、暇也。
【読み】
飢寒も恤えずして、誰か其の後に遑あらん。遑は、暇なり。

不如姑歸也。叔孫穆子曰、叔仲子專之矣。言足專任。
【読み】
姑く歸らんに如かざるなり、と。叔孫穆子曰く、叔仲子は之を專らにせらる。言うこころは、專任するに足れり。

子服子始學者也。言未識遠。
【読み】
子服子は始めて學べる者なり、と。言うこころは、未だ遠きを識らず。

榮成伯曰、遠圖者忠也。成伯、榮駕鵞。○駕、音加。鵞、五河反。
【読み】
榮成伯曰く、遠圖する者は忠なり、と。成伯は、榮駕鵞。○駕は、音加。鵞は、五河反。

公遂行。從昭伯謀。
【読み】
公遂に行く。昭伯の謀に從う。

宋向戌曰、我一人之爲。非爲楚也。飢寒之不恤、誰能恤楚。姑歸而息民、待其立君而爲之備。宋公遂反。
【読み】
宋の向戌曰く、我は一人の爲なり。楚の爲には非ざるなり。飢寒を恤えずして、誰か能く楚を恤えん。姑く歸りて民を息え、其の立君を待ちて之が備えを爲さん、と。宋公遂に反る。

楚屈建卒。趙文子喪之如同盟。禮也。宋盟有衷甲之隙。不以此廢好。故曰禮。○喪、如字。又息浪反。
【読み】
楚の屈建卒す。趙文子之に喪すること同盟の如くす。禮なり。宋の盟に衷甲の隙有り。此を以て好を廢てず。故に禮と曰う。○喪は、字の如し。又息浪反。

王人來告喪。問崩日、以甲寅告。故書之。以徵過也。徵、審也。此緩告非有事宜。直臣子怠慢。故於此發例。○徵、張陵反。
【読み】
王人來りて喪を告ぐる。崩日を問えば、甲寅を以て告ぐ。故に之を書す。以て過ちを徵[あき]らかにするなり。徵は、審らかにするなり。此の緩告は事宜有るに非ず。直に臣子の怠慢なり。故に此に於て例を發せり。○徵は、張陵反。



傳。別二十。彼列反。涖盟。音利。又音類。伯車。音居。傳爲。于僞反。特跳。直彫反。傳寫。直專反。
經二十六年。背國。音佩。
傳。不應。應對之應。暴骨。徐扶沃反。道二國。音導。拂衣。芳弗反。騫裳。起虔反。本或作褰。音雖同義非也。說文云、褰、袴也。○今本亦褰。於治。直吏反。而力爭。爭鬭之爭。已侈。一音尸氏反。敬娰。音似。蘧伯玉。其居反。瑗。徐于萬反。今殺。申志反。○今本弑。誰畜。一音勑六反。遂見。賢遍反。一音如字。淹恤。於廉反。徐於嚴反。孫襄居守。手又反。復攻。扶又反。下復愬同。頷之。本又作顉。易生。以豉反。大叔。音泰。朝夕。如字。負羈。居宜反。紲。○今本絏。牧圉。魚呂反。下同。復愬。悉路反。先輅。音路。本亦作路。○今本亦路。先八邑。一音如字。見經。賢遍反。人爲。于僞反。及雩。音于。徐況于反。如淳同。韋昭音虛。或一呼反。婁。如淳音樓。易。以豉反。別識。彼列反。上其手。時掌反。下注同。介弟。音界。道囚。音導。抽戈。勑留反。印。一刃反。菫父。音謹。以爲請。一音如字。更遣使。所吏反。疆戚。居良反。注同。不得與。音預。爲衛侯故。于僞反。下爲臣・注爲林父・爲臣同。相齊。息亮反。下同。大平。音泰。緇衣。側其反。粲兮。七旦反。違遠。于萬反。宗祧。他彫反。見周書。賢遍反。諸隄。徐丁兮反。沈直兮反。○今本堤。共姬。音恭。而婉。紆阮反。惠廧。音牆。或作牆。○今本亦牆。伊戾。力計反。復發。扶又反。敢近。附近之近。有共。音恭。本又作供。下同。盟處。昌慮反。聒而。古活反。下同。使饋。其位反。左師令。力呈反。使者。所吏反。下文通使同。左師諛。羊朱反。使夏。戶雅反。先下。遐嫁反。娶於。七住反。子牟。亡侯反。爲申公。如字。舊于僞反。爲國。于僞反。杞梓。徐上音起。下音子。不僭。子念反。下皆同。不濫。力暫反。殄。徒典反。瘁。在醉反。怠解。佳賣反。爲之。于僞反。下爲之不舉同。則飫。於據反。饜。本亦作厭。於豔反。下同。饌。仕眷反。朝夕。如字。救療。力召反。析公。星歷反。人寘。之豉反。將遁。徒困反。易震。以豉反。鈞聲。音均。徐居旬反。宵潰。戶内反。桑隧。音遂。復侵。扶又反。華夏。戶雅反。蒐。所留反。乘。繩證反。閱也。音悅。○今本無也字。秣馬。音末。蓐食。音辱。之邢。音刑。事見。賢遍反。精卒。子忽反。欲令。力呈反。下同。不復。扶又反。下復仕同。四萃。在醉反。娶於。本又作取。七住反。女實。音汝。爲許。于僞反。下爲國同。昧於。音妹。貪冒。亡報反。又亡北反。不禦。魚呂反。于氾。徐扶嚴反。廩丘。力甚反。所治。直吏反。介于。音界。於比。必利反。
經二十七年。不與。音預。下同。晉歃。所洽反。又所甲反。復患。扶又反。倚順。於綺反。
傳。爲賦。于僞反。注同。相鼠。息亮反。注同。復攻。扶又反。欲斂。力驗反。内我。音納。本又作納。○今本亦納。以沮。在呂反。止使者。所吏反。誰愬。悉路反。公喪。一音息浪反。繐衰。七雷反。本亦作縗。○今本亦縗。一乘。繩證反。少師。詩照反。欲弭。徐武婢反。■(蠹の石の下に木が加わる)本又作蠹。丁故反。○今本亦蠹。我焉。於虔反。下將焉用之・焉用有信・焉能害我同。爲介。音戒。後注同。折。之設反。注同。徐又音制。俎。莊呂反。使舉是禮也。沈云、舉、謂記錄之也。黑肱。古弘反。更相。音庚。子晢。星歷反。得復。扶又反。以藩。方元反。楚氛。徐扶云反。斃。婢世反。一坐。才臥反。飮大夫。於鴆反。而重。直用反。下二字同。聞於。音問。又如字。事治。直吏反。無媿。九位反。○今本作愧。之好。呼報反。草蟲。直忠反。召南。上照反。下同。覯。古豆反。踰閾。音域。徐況逼反。非使。所吏反。注同。簀。音責。其樂。音洛。下注及文至樂以安民竝同。蔓。音萬。邂。戶賣反。逅。戶豆反。印段。一刃反。蟋蟀。所律反。大康。音泰。其居。音據。好樂。呼報反。下同。瞿瞿。倶付反。受天之祜。音戶。焉往。於虔反。下政其焉往同。倡賦。昌亮反。已侈。字林、充豉反。皆數。所主反。蔽諸侯。必世反。徐甫世反。服虔・王肅・董遇竝作弊。婢世反。無厭。徐於廉反。娶東。七住反。无咎。音無。本亦作無。下其九反。○今本亦無。朝陽。如字。一音直遙反。盧蒲嫳。徐敷結反。復告。扶又反。難。乃旦反。吾助女。音汝。圉人。魚呂反。請爲。于僞反。下注嫳爲・爲齊莊同。堞其。徐養涉反。
經二十八年。以應。應對之應。爲宋。于僞反。
傳。梓愼。音子。玄枵。許驕反。發泄。○今本洩。耗名。呼報反。時復。扶又反。北燕。烏賢反。不與。音預。下同。後賄。呼罪反。圃。布五反。日其。人實反。勞于。力報反。○今本于作於。而傲。五報反。下同。而惰。徒臥反。君小國事大國。古本無小字。將爲。于僞反。之休。許虯反。注同。乘皮。繩證反。之難。乃旦反。曰女。音汝。何與。音預。跋涉。白末反。敢憚。徒旦反。之頤。以之反。無應。應對之應。不幾。居依反。又音祈。不能復。扶又反。下復顧同。裨竈。避支反。禍衝。尺容反。之分。扶問反。相鄭。息亮反。下同。爲壇。徒丹反。郊勞。力報反。焉用。於虔反。下焉用作壇・焉避之・焉用盟同。宥其。音又。其菑。音災。怠解。佳賣反。共其。音恭。好田。呼報反。數日。所主反。見封。賢遍反。之難。乃旦反。○今本無之字。辨別。彼列反。下同。相取。七住反。本亦作娶。惡識。安也。皆嬖。必計反。下同。欲爲。于僞反。親近。附近之近。兵杖。直亮反。膳。市戰反。饋。其位反。改寤。五故反。救難。乃旦反。下外難同。大公。音泰。優俳。皮皆反。絆之。音半。介慶。音界。擊扉。音非。門扇也。椽也。直專反。門闔。戶臘反。猶援。音爰。於甍。字林、亡成反。爲君。于僞反。下爲之誦同。于嶽。五角反。以鑑。古暫反。必瘁。在醉反。本或作萃。食慶。音嗣。茅。亡交反。鴟。尺之反。刺不敬。七賜反。喪羣。息浪反。故鉏。仕居反。公子鉏也。本或作故公鉏者非。句瀆。音豆。有幅。音福。無黜。勑律反。嫚。徐音慢。北竟。音境。能令。力呈反。拱璧。居勇反。徐音恭。爲宋。于僞反。過鄭。古禾反。黃崖。本又作涯。魚佳反。行潦。音老。之蘋。音頻。藻。音早。寘諸。之豉反。之隙。去逆反。本或作郤。廢好。呼報反。徵過。本或作懲誤。

春秋左氏傳校本第十九

襄公 起二十九年盡三十一年
            晉        杜氏            集解
            唐        陸氏            音義
            尾張    秦    鼎        校本

〔經〕
二十有九年、春、王正月、公在楚。公在外闕朝正之禮甚多。而唯書此一年者、魯公如楚、旣非常。此公又踰年。故發此一事以明常。
【読み】
〔經〕二十有九年、春、王の正月、公楚に在り。公外に在りて朝正の禮を闕くこと甚だ多し。而るに唯此の一年を書すは、魯公の楚に如く、旣に常に非ず。此の公又年を踰ゆ。故に此の一事を發して以て常を明らかにするなり。

夏、五月、公至自楚。庚午、衛侯衎卒。無傳。四同盟。○衎、苦旦反。
【読み】
夏、五月、公楚より至る。庚午[かのえ・うま]、衛侯衎[かん]卒す。傳無し。四たび同盟す。○衎は、苦旦反。

閽弑吳子餘祭。閽、守門者。下賤非士。故不言盜。○祭、側界反。
【読み】
閽吳子餘祭を弑す。閽は、門を守る者。下賤にして士に非ず。故に盜と言わず。○祭は、側界反。

仲孫羯會晉荀盈・齊高止・宋華定・衛世叔儀・鄭公孫段・曹人・莒人・滕人・薛人・小邾人城杞。公孫段、伯石也。三十年、伯有死乃命爲卿。今蓋以攝卿行。○羯、居謁反。
【読み】
仲孫羯[ちゅうそんけつ]晉の荀盈・齊の高止・宋の華定・衛の世叔儀・鄭の公孫段・曹人・莒人・滕人・薛人・小邾人[しょうちゅひと]に會して杞に城く。公孫段は、伯石なり。三十年、伯有死して乃ち命ぜられて卿と爲る。今蓋し卿を攝するを以て行くならん。○羯は、居謁反。

晉侯使士鞅來聘。杞子來盟。杞復稱子、用夷禮也。
【読み】
晉侯士鞅をして來聘せしむ。杞子來り盟う。杞復子と稱するは、夷禮を用ゆればなり。

吳子使札來聘。吳子餘祭旣遣札聘上國而後死、札以六月到魯、未聞喪也。不稱公子、其禮未同於上國。○札、側八反。
【読み】
吳子札をして來聘せしむ。吳子餘祭旣に札をして上國に聘せしめて後に死し、札は六月を以て魯に到れば、未だ喪を聞かざるなり。公子と稱せざるは、其の禮未だ上國に同じからざればなり。○札は、側八反。

秋、九月、葬衛獻公。無傳。
【読み】
秋、九月、衛の獻公を葬る。傳無し。

齊高止出奔北燕。止、高厚之子。○燕、音煙。
【読み】
齊の高止出でて北燕に奔る。止は、高厚の子。○燕は、音煙。

冬、仲孫羯如晉。
【読み】
冬、仲孫羯晉に如く。

〔傳〕二十九年、春、王正月、公在楚、釋不朝正于廟也。釋、解也。告廟在楚、解公所以不朝正。
【読み】
〔傳〕二十九年、春、王の正月、公楚に在りとは、廟に朝正せざるを釋くなり。釋は、解くなり。廟に楚に在ることを告ぐるとは、公の朝正せざる所以を解くなり。

楚人使公親襚。諸侯有遣使賵襚之禮。今楚欲依遣使之比。○襚、音遂。說文、衣死人衣。○賵、芳鳳反。比、必利反。
【読み】
楚人公をして親ら襚[すい]せしむ。諸侯使いを遣わして賵襚[ぼうすい]するの禮有り。今楚遣使の比に依らんと欲す。○襚は、音遂。說文に、死人に衣するの衣、と。○賵は、芳鳳反。比は、必利反。

公患之。穆叔曰、祓殯而襚、則布幣也。先使巫祓除殯之凶邪、而行襚禮、與朝而布幣無異。○祓、音拂。
【読み】
公之を患う。穆叔曰く、殯に祓いして襚すれば、則ち幣を布くなり、と。先ず巫をして殯の凶邪を祓除せしめて、襚禮を行うときは、朝して幣を布くと異なること無し。○祓は、音拂。

乃使巫以桃茢先祓殯。茢、黍穰。○茢、音列。鄭注、周禮云、茢、苕箒。
【読み】
乃ち巫をして桃茢[とうれつ]を以て先ず殯を祓わしむ。茢は、黍穰。○茢は、音列。鄭注、周禮に云う、茢は、苕箒、と。

楚人弗禁。旣而悔之。禮、君臨臣喪、乃祓殯。故楚悔之。
【読み】
楚人禁ぜず。旣にして之を悔ゆ。禮に、君臣の喪に臨めば、乃ち殯を祓いす、と。故に楚之を悔ゆ。

二月、癸卯、齊人葬莊公於北郭。兵死不入兆域。故葬北郭。
【読み】
二月、癸卯[みずのと・う]、齊人莊公を北郭に葬る。兵死は兆域に入らず。故に北郭に葬る。

夏、四月、葬楚康王。公及陳侯・鄭伯・許男送葬、至於西門之外。諸侯之大夫皆至于墓。
【読み】
夏、四月、楚の康王を葬る。公陳侯・鄭伯・許男と葬を送り、西門の外に至る。諸侯の大夫皆墓に至る。

楚郟敖卽位。郟敖、康王子、熊麇也。○郟、古洽反。
【読み】
楚の郟敖[こうごう]位に卽く。郟敖は、康王の子、熊麇[ゆうきん]なり。○郟は、古洽反。

王子圍爲令尹。圍、康王弟。
【読み】
王子圍令尹と爲る。圍は、康王の弟。

鄭行人子羽曰、是謂不宜。必代之昌。松柏之下、其草不殖。言楚君弱、令尹强。物不兩盛。爲昭元年、圍弑郟敖起本。
【読み】
鄭の行人子羽曰く、是を宜しからずと謂う。必ず之に代わりて昌えん。松柏の下は、其の草殖えず、と。言うこころは、楚君は弱く、令尹は强し。物兩ながら盛んならず。昭元年、圍郟敖を弑する爲の起本なり。

公還、及方城、季武子取卞、取卞邑以自益。○卞、皮彥反。
【読み】
公還りて、方城に及ぶとき、季武子卞[べん]を取り、卞邑を取りて以て自ら益す。○卞は、皮彥反。

使公冶問、問公起居。公冶、季氏屬大夫。○冶、音也。
【読み】
公冶をして問わしめ、公の起居を問うなり。公冶は、季氏の屬大夫。○冶は、音也。

璽書追而與之、璽、印也。○璽、音徙。
【読み】
璽書して追いて之に與えて、璽は、印なり。○璽は、音徙。

曰、聞守卞者將叛、臣帥徒以討之。旣得之矣。敢告。公冶致使而退、致季氏使命。○使、所吏反。
【読み】
曰く、卞を守る者將に叛かんとすると聞き、臣徒を帥いて以て之を討ぜり。旣に之を得たり。敢えて告ぐ、と。公冶使いを致して退き、季氏の使命を致す。○使は、所吏反。

及舍而後聞取卞。發書乃聞之。
【読み】
舍に及びて後に卞を取ることを聞きぬ。書を發して乃ち之を聞く。

公曰、欲之而言叛、祗見疏也。言季氏欲得卞而欺我言叛、益疏我。○祗、音支。
【読み】
公曰く、之を欲して叛きしと言うは、祗[まさ]に疏[うと]まるるなり、と。言うこころは、季氏卞を得んと欲して我を欺きて叛きしと言うは、益々我を疏むなり。○祗は、音支。

公問公冶曰、吾可以入乎。以季氏疏己、故不敢入。
【読み】
公公冶に問いて曰く、吾れ以て入る可けんや、と。季氏が己を疏むを以て、故に敢えて入らず。

對曰、君實有國。誰敢違君。公與公冶冕服。以卿服玄冕賞之。
【読み】
對えて曰く、君實に國を有てり。誰か敢えて君に違わん、と。公公冶に冕服を與う。卿服の玄冕を以て之を賞す。

固辭。强之而後受。公欲無入。榮成伯賦式微。乃歸。式微、詩邶風。曰、式微式微。胡不歸。式、用也。義取寄寓之微陋、勸公歸也。○强、其丈反。
【読み】
固く辭す。之を强いて而して後に受く。公入ること無からんと欲す。榮成伯式微を賦す。乃ち歸る。式微は、詩の邶風[はいふう]。曰く、式[もっ]て微なり式て微なり。胡ぞ歸らざる、と。式は、用てなり。義寄寓の微陋に取りて、公に歸ることを勸むるなり。○强は、其丈反。

五月、公至自楚。
【読み】
五月、公楚より至る。

公冶致其邑於季氏、本從季氏得邑。故還之。
【読み】
公冶其の邑を季氏に致して、本季氏に從いて邑を得。故に之を還す。

而終不入焉。不入季孫家。
【読み】
終に入らず。季孫の家に入らず。

曰、欺其君、何必使余。季孫見之、則言季氏如他日。不見、則終不言季氏。及疾、聚其臣、大夫家臣。
【読み】
曰く、其の君を欺くに、何ぞ必ずしも余を使わん、と。季孫之を見れば、則ち季氏を言うこと他日の如し。見ざれば、則ち終に季氏を言わず。疾むに及びて、其の臣を聚めて、大夫の家臣。

曰、我死、必無以冕服斂。非德賞也。言公畏季氏而賞其使。非以我有德。○斂、力驗反。
【読み】
曰く、我れ死なば、必ず冕服を以て斂すること無かれ。德賞に非ざるなり。言うこころは、公季氏を畏れて其の使いを賞せり。我が德有るを以てするに非ず。○斂は、力驗反。

且無使季氏葬我。
【読み】
且季氏をして我を葬らしむること無かれ、と。

葬靈王。不書、魯不會。
【読み】
靈王を葬る。書さざるは、魯會せざればなり。

鄭上卿有事。子展使印段往。伯有曰、弱。不可。印段年少官卑。
【読み】
鄭の上卿事有り。子展印段をして往かしめんとす。伯有曰く、弱し。不可なり、と。印段年少[わか]く官卑し。

子展曰、與其莫往、弱不猶愈乎。詩云、王事靡盬。不遑啓處。詩、小雅。盬、不堅固也。啓、跪也。言王事無不堅固。故不暇跪處。○盬、音古。
【読み】
子展曰く、其の往くこと莫からんよりは、弱きとも猶愈らずや。詩に云う、王事盬[もろ]きこと靡[な]し。遑[いとま]ありて啓處せず、と。詩は、小雅。盬[こ]は、堅固ならざるなり。啓は、跪くなり。言うこころは、王事堅固ならざること無し。故に暇ありて跪處せず。○盬は、音古。

東西南北、誰敢寧處。謂上卿。
【読み】
東西南北、誰か敢えて寧處せん。上卿を謂う。

堅事晉・楚、以蕃王室也。言我固事晉・楚、乃所以蕃屛王室。○蕃、芳元反。
【読み】
堅く晉・楚に事うるは、以て王室に蕃せんとなり。言うこころは、我れ固く晉・楚に事うるは、乃ち王室に蕃屛たる所以なり。○蕃は、芳元反。

王事無曠。何常之有。遂使印段如周。傳言周衰卑於晉・楚。
【読み】
王事は曠[むな]しくすること無し。何の常か之れ有らん、と。遂に印段をして周に如かしむ。傳周衰えて晉・楚より卑しきを言う。

吳人伐楚、獲俘焉以爲閽、使守舟。吳子餘祭觀舟。閽以刀弑之。言以刀、明近刑人。
【読み】
吳人楚を伐ちて、俘を獲て以て閽と爲して、舟を守らしむ。吳子餘祭舟を觀る。閽刀を以て之を弑す。刀を以てすと言うは、刑人を近づくるを明らかにするなり。

鄭子展卒、子皮卽位。子皮代父爲上卿。
【読み】
鄭の子展卒し、子皮位に卽く。子皮父に代わりて上卿と爲る。

於是鄭饑而未及麥、民病。子皮以子展之命、餼國人粟戶一鍾。在喪故以父命也。六斛四斗曰鐘。○餼、許氣反。
【読み】
是に於て鄭饑えて未だ麥に及ばず、民病む。子皮子展の命というを以て、國人に粟戶ごとに一鍾を餼[おく]る。喪に在る故に父の命を以てす。六斛四斗を鐘と曰う。○餼は、許氣反。

是以得鄭國之民。故罕氏常掌國政、以爲上卿。宋司城子罕聞之曰、鄰於善、民之望也。民亦望君爲善。
【読み】
是を以て鄭國の民を得たり。故に罕氏常に國政を掌りて、以て上卿爲り。宋の司城子罕之を聞きて曰く、善に鄰れば、民に望まる、と。民も亦君の善を爲さんことを望む。

宋亦饑。請於平公、出公粟以貸、使大夫皆貸。司城氏貸而不書。施而不德。○施、始豉反。下同。
【読み】
宋も亦饑ゆ。平公に請いて、公の粟を出だして以て貸し、大夫をして皆貸さしむ。司城氏は貸して書さず。施して德とせず。○施は、始豉反。下も同じ。

爲大夫之無者貸。宋無人。叔向聞之曰、鄭之罕・宋之樂、其後亡者也。二者其皆得國乎。得掌國政。○向、許丈反。
【読み】
大夫の無き者の爲に貸す。宋に人無し。叔向[しゅくきょう]之を聞きて曰く、鄭の罕・宋の樂は、其れ後に亡びん者なり。二りの者は其れ皆國を得んか。國政を掌ることを得。○向は、許丈反。
*「饑」は、漢籍國字解全書では「飢」。

民之歸也。施而不德、樂氏加焉。其以宋升降乎。升降、隨宋盛衰。
【読み】
民之れ歸するなり。施して德とせず、樂氏は加えり。其れ宋を以て升降せんか、と。升降は、宋に隨いて盛衰するなり。

晉平公、杞出也。故治杞。治理其地修其城。
【読み】
晉の平公は、杞の出なり。故に杞を治む。其の地を治理して其の城を修む。

六月、知悼子合諸侯之大夫以城杞。孟孝伯會之。
【読み】
六月、知悼子諸侯の大夫を合わせて以て杞に城く。孟孝伯之に會す。

鄭子大叔與伯石往。大叔不書、不親事。○知、音智。大叔、音泰。
【読み】
鄭の子大叔伯石と往く。大叔書さざるは、事を親らせざればなり。○知は、音智。大叔、音泰。

子大叔見大叔文子、文子、衛大叔儀。
【読み】
子大叔大叔文子を見て、文子は、衛の大叔儀。

與之語。文子曰、甚乎其城杞也。子大叔曰、若之何哉。晉國不恤周宗之闕、而夏肄是屛。周宗、諸姬也。夏肆、杞。肆、餘也。屛、城也。○肆、以二反。
【読み】
之と語る。文子曰く、甚だしきかな其れ杞に城くや、と。子大叔曰く、之を若何にせんや。晉國周宗の闕けたるを恤えずして、夏肄[かい]を是れ屛[おお]う。周宗は、諸姬なり。夏肆は、杞なり。肆は、餘りなり。屛は、城くなり。○肆は、以二反。

其棄諸姬、亦可知也已。諸姬是棄、其誰歸之。吉也聞之、棄同卽異、是謂離德。詩曰、協比其鄰、昏姻孔云。詩、小雅。言王者和協近親、則昏姻甚歸附也。
【読み】
其の諸姬を棄つるも、亦知る可きのみ。諸姬を是れ棄てば、其れ誰か之に歸せん。吉や之を聞く、同を棄て異に卽く、是を離德と謂う、と。詩に曰く、其の鄰を協比して、昏姻孔[はなは]だ云[めぐ]る、と。詩は、小雅。言うこころは、王者近親を和協すれば、則ち昏姻甚だ歸附す。

晉不鄰矣。其誰云之。云、猶旋。旋歸之。
【読み】
晉鄰せず。其れ誰か之に云らん、と。云は、猶旋るのごとし。旋りて之に歸するなり。

齊高子容與宋司徒見知伯。女齊相禮。子容、高止也。司徒、華定也。知伯、荀盈也。女齊、司馬侯也。相禮、侍威儀也。○女、音汝。
【読み】
齊の高子容宋の司徒と與に知伯を見る。女齊禮を相[たす]く。子容は、高止なり。司徒は、華定なり。知伯は、荀盈なり。女齊は、司馬侯なり。禮を相くるは、威儀に侍るなり。○女は、音汝。

賓出。司馬侯言於知伯曰、二子皆將不免。子容專。專、自是也。
【読み】
賓出づ。司馬侯知伯に言いて曰く、二子は皆將に免れざらんとす。子容は專らなり。專は、自ら是とするなり。

司徒侈。皆亡家之主也。知伯曰、何如。對曰、專則速及、速及禍也。
【読み】
司徒は侈れり。皆家を亡ぼすの主なり、と。知伯曰く、何如、と。對えて曰く、專らなれば則ち速やかに及び、速やかに禍に及ぶなり。

侈將以其力斃。力盡而自斃。
【読み】
侈れば將に其の力を以て斃れんとす。力盡きて自ら斃る。

專則人實斃之。將及矣。爲此秋、高止出奔燕、昭二十年、華定出奔陳傳。
【読み】
專らなれば則ち人實に之を斃す。將に及ばんとす、と。此の秋、高止燕に出奔し、昭二十年、華定陳に出奔する爲の傳なり。

范獻子來聘、拜城杞也。謝魯爲杞城。
【読み】
范獻子來聘するは、杞に城きしを拜するなり。魯の杞の爲に城けるを謝す。

公享之。展莊叔執幣。公將以酬賓。
【読み】
公之を享す。展莊叔幣を執る。公將に以て賓に酬せんとす。

射者三耦。二人爲耦。○耦、音偶。
【読み】
射者三耦す。二人を耦と爲す。○耦は、音偶。

公臣不足、取於家臣。家臣、展瑕・展玉父爲一耦、公臣、公巫召伯仲・顏莊叔爲一耦、鄫鼓父・黨叔爲一耦。言公室卑微、公臣不能備於三耦。○召、上照反。鄫、才陵反。黨、音掌。
【読み】
公臣足らず、家臣に取る。家臣は、展瑕・展玉父を一耦と爲し、公臣は、公巫召伯仲・顏莊叔を一耦と爲し、鄫鼓父[しょうこほ]・黨叔を一耦と爲す。公室卑微にして、公の臣三耦を備うること能わざるを言う。○召は、上照反。鄫は、才陵反。黨は、音掌。

晉侯使司馬女叔侯來治杞田。使魯歸前侵杞田。所歸少。故不書。
【読み】
晉侯司馬女叔侯をして來りて杞の田を治めしむ。魯をして前に侵せる杞の田を歸さしむ。歸す所少なし。故に書さず。

弗盡歸也。晉悼夫人慍曰、齊也取貨。夫人、平公母。杞女也。謂叔侯取貨於魯。故不盡歸杞田。○慍、紆運反。
【読み】
盡く歸さず。晉の悼夫人慍りて曰く、齊や貨を取れり。夫人は、平公の母。杞の女なり。叔侯貨を魯に取る。故に盡く杞の田を歸さざずと謂う。○慍は、紆運反。

先君若有知也、不尙取之。不尙叔侯之取貨。
【読み】
先君若し知ること有らば、之を取ることを尙ばじ、と。叔侯が貨を取ることを尙ばじ。

公告叔侯。叔侯曰、虞・虢・焦・滑・霍・揚・韓・魏、皆姬姓也。八國、皆晉所滅。焦、在陝縣。揚、屬平陽郡。○虢、瓜百反。
【読み】
公叔侯に告ぐ。叔侯曰く、虞・虢・焦・滑・霍・揚・韓・魏は、皆姬姓なり。八國は、皆晉の滅ぼす所。焦は、陝縣に在り。揚は、平陽郡に屬す。○虢は、瓜百反。

晉是以大。若非侵小、將何所取。武・獻以下、兼國多矣。武公・獻公、晉始盛之君。
【読み】
晉是を以て大なり。若し小を侵すに非ずんば、將[はた]何れに取る所あらん。武・獻より以下、國を兼ぬること多し。武公・獻公は、晉の始盛の君。

誰得治之。杞、夏餘也、而卽東夷、行夷禮。
【読み】
誰か之を治むることを得ん。杞は、夏の餘にして、東夷に卽き、夷禮を行う。

魯、周公之後也、而睦於晉。以杞封魯猶可。而何有焉。何有盡歸之。
【読み】
魯は、周公の後にして、晉に睦まじ。杞を以て魯を封ずるも猶可なり。而るを何ぞ有らん。何ぞ盡く之を歸すこと有らん。

魯之於晉也、職貢不乏、玩好時至、公卿大夫相繼於朝、史不絕書、書魯朝聘。
【読み】
魯の晉に於けるや、職貢乏しからず、玩好時に至り、公卿大夫朝に相繼ぎ、史書すことを絕たず、魯の朝聘を書す。

府無虛月。無月不受魯貢。
【読み】
府に虛月無し。月として魯の貢を受けざること無し。

如是可矣。何必瘠魯以肥杞。且先君而有知也、毋寧夫人。而焉用老臣。言先君毋寧怪夫人之所爲。無用責我。○瘠、在亦反。
【読み】
是の如きは可なり。何ぞ必ずしも魯を瘠せしめて以て杞を肥やさん。且つ先君にして知ること有らば、毋寧[むし]ろ夫人ならん。而るを焉ぞ老臣を用いん、と。言うこころは、先君毋寧ろ夫人の爲す所を怪しまん。我を責むることを用ゆること無からん。○瘠は、在亦反。

杞文公來盟。魯歸其田。故來盟。
【読み】
杞の文公來り盟う。魯其の田を歸す。故に來盟す。

書曰子、賤之也。賤其用夷禮。
【読み】
書して子と曰うは、之を賤しみてなり。其の夷禮を用ゆるを賤しむなり。

吳公子札來聘。見叔孫穆子、說之。謂穆子曰、子其不得死乎。不得以壽死。○說、音悅。
【読み】
吳の公子札來聘す。叔孫穆子を見て、之を說ぶ。穆子に謂いて曰く、子は其れ死を得ざらんか。壽を以て死することを得ず。○說は、音悅。

好善而不能擇人。吾聞君子務在擇人。吾子爲魯宗卿、而任其大政、不愼舉、何以堪之。禍必及子。爲昭四年、豎牛作亂起本。
【読み】
善を好みて人を擇ぶこと能わず。吾れ聞く、君子は務め人を擇ぶに在り、と。吾子魯の宗卿として、其の大政に任じて、舉ぐることを愼まずんば、何を以て之に堪えん。禍必ず子に及ばん、と。昭四年、豎牛亂を作す爲の起本なり。

請觀於周樂。魯以周公故、有天子禮樂。
【読み】
周の樂を觀んことを請う。魯周公の故を以て、天子の禮樂有り。

使工爲之歌周南・召南。此皆各依其本國歌所常用聲曲。
【読み】
工をして之が爲に周南・召南を歌わしむ。此れ皆各々其の本國の歌の常に用ゆる所の聲曲に依るなり。

曰、美哉、美其聲。
【読み】
曰く、美なるかな、其の聲を美む。

始基之矣。周南・召南、王化之基。
【読み】
始めて之を基せり。周南・召南は、王化の基。

猶未也。猶有商紂、未盡善也。
【読み】
猶未だし。猶商紂有りて、未だ善を盡くさざるなり。

然勤而不怨矣。未能安樂。然其音不怨怒。
【読み】
然れども勤めて怨みず、と。未だ安樂すること能わず。然れども其の音怨怒せず。

爲之歌邶・鄘・衛。武王伐紂、分其地爲三監。三監叛。周公滅之、更封康叔、幷三監之地。故三國盡被康叔之化。
【読み】
之が爲に邶[はい]・鄘[よう]・衛を歌う。武王紂を伐ち、其の地を分けて三監と爲す。三監叛く。周公之を滅ぼし、更に康叔を封じて、三監の地を幷す。故に三國盡く康叔の化を被れり。

曰、美哉、淵乎。憂而不困者也。淵、深也。亡國之音、哀以思。其民困。衛康叔・武公、德化深淵、雖遭宣公淫亂、懿公滅亡、民猶秉義、不至於困。
【読み】
曰く、美なるかな、淵乎たり。憂えて困しまざる者なり。淵は、深きなり。亡國の音は、哀しくして以て思う。其の民困しめばなり。衛の康叔・武公、德化深淵、宣公の淫亂、懿公の滅亡に遭うと雖も、民猶義を秉り、困しむに至らず。

吾聞衛康叔・武公之德如是。是其衛風乎。康叔、周公弟。武公、康叔九世孫。皆衛之令德君也。聽聲以爲別。故有疑言。○別、彼列反。
【読み】
吾れ聞く、衛の康叔・武公の德是の如し、と。是れ其れ衛風か、と。康叔は、周公の弟。武公は、康叔九世の孫。皆衛の令德の君なり。聲を聽きて以て別つことを爲す。故に疑言有り。○別は、彼列反。

爲之歌王。王、黍離也。幽王遇西戎之禍、平王東遷、王政不行於天下、風俗下與諸侯同。故不爲雅。
【読み】
之が爲に王を歌う。王は、黍離なり。幽王西戎の禍に遇い、平王東遷して、王政天下に行われず、風俗下りて諸侯と同じ。故に雅と爲さず。

曰、美哉、思而不懼。其周之東乎。宗周隕滅。故憂思。猶有先王之遺風。故不懼。
【読み】
曰く、美なるかな、思いて懼れず。其れ周の東せるか、と。宗周隕滅す。故に憂思す。猶先王の遺風有り。故に懼れず。

爲之歌鄭。詩第七。
【読み】
之が爲に鄭を歌う。詩の第七。

曰、美哉、其細已甚。民弗堪也。是其先亡乎。美其有治政之音、譏其煩碎、知不能久。
【読み】
曰く、美なるかな、其の細已甚だし。民堪えざるなり。是れ其れ先ず亡びんか、と。其の治政の音有るを美むるも、其の煩碎を譏り、久しきこと能わざるを知る。

爲之歌齊。詩第八。
【読み】
之が爲に齊を歌う。詩の第八。

曰、美哉、泱泱乎。大風也哉。泱泱、弘大之聲。○泱、於良反。又於郎反。
【読み】
曰く、美なるかな、泱泱乎たり。大風なるかな。泱泱は、弘大の聲。○泱は、於良反。又於郎反。

表東海者、其大公乎。大公封齊、爲東海之表式。
【読み】
東海に表たる者は、其れ大公か。大公齊に封ぜられて、東海の表式と爲る。

國未可量也。言其或將復興。
【読み】
國未だ量る可からざるなり、と。言うこころは、其れ或は將に復興らんとす。

爲之歌豳。詩第十五。豳、周之舊國。在新平漆縣東北。
【読み】
之が爲に豳[ひん]を歌う。詩の第十五。豳は、周の舊國。新平漆縣の東北に在り。

曰、美哉、蕩乎。樂而不淫。其周公之東乎。蕩乎、蕩然也。樂而不淫、言有節。周公遭管・蔡之變、東征三年、爲成王陳后稷先公不敢荒淫、以成王業。故言其周公之東乎。○樂、音岳。又音洛。
【読み】
曰く、美なるかな、蕩乎たり。樂しみて淫せず。其れ周公の東せるか、と。蕩乎は、蕩然なり。樂しみて淫せずとは、節有るを言うなり。周公管・蔡の變に遭い、東征すること三年、成王の爲に后稷先公敢えて荒淫せずして、以て王業を成せしを陳ぶ。故に其れ周公の東せるかと言う。○樂は、音岳。又音洛。

爲之歌秦。詩第十一。後仲尼刪定。故不同。
【読み】
之が爲に秦を歌う。詩の第十一。後に仲尼刪定す。故に同じからず。

曰、此之謂夏聲。夫能夏、則大。大之至也。其周之舊乎。秦本在西戎汧隴之西。秦仲始有車馬禮樂。去戎狄之音、而有諸夏之聲。故謂之夏聲。及襄公佐周、平王東遷、而受其故地。故曰周之舊。○汧、苦賢反。去、上聲。
【読み】
曰く、此を之れ夏聲と謂う。夫れ能く夏なれば、則ち大なり。大の至りなり。其れ周の舊か、と。秦は本西戎汧隴[けんろう]の西に在り。秦仲始めて車馬禮樂有り。戎狄の音を去りて、諸夏の聲有り。故に之を夏聲と謂う。襄公周を佐け、平王東遷するに及びて、其の故地を受く。故に周の舊と曰う。○汧は、苦賢反。去は、上聲。

爲之歌魏。詩第九。魏、姬姓國。閔元年、晉獻公滅之。
【読み】
之が爲に魏を歌う。詩の第九。魏は、姬姓の國。閔元年、晉の獻公之を滅ぼす。

曰、美哉、渢渢乎。大而婉、險而易行。以德輔此、則明主也。渢渢、中庸之聲。婉、約也。險、當爲儉。字之誤也。大而約、則儉節易行。惜其國小無明君也。○渢、扶弓反。又敷劒反。又音凡。
【読み】
曰く、美なるかな、渢渢乎たり。大にして婉、險にして行い易し。德を以て此を輔けば、則ち明主ならん、と。渢渢は、中庸の聲なり。婉は、約なり。險は、當に儉に爲るべし。字の誤りなり。大にして約なれば、則ち儉節にして行い易し。其の國小にして明君無きを惜しむなり。○渢は、扶弓反。又敷劒反。又音凡。

爲之歌唐。詩第十。唐、晉詩。
【読み】
之が爲に唐を歌う。詩の第十。唐は、晉の詩。

曰、思深哉。其有陶唐氏之遺民乎。不然、何憂之遠也。晉本唐國。故有堯之遺風。憂深思遠、情發於聲。○思、息嗣反。
【読み】
曰く、思い深きかな。其れ陶唐氏の遺民有るか。然らずんば、何ぞ憂うることの遠きや。晉は本唐國。故に堯の遺風有り。憂え深く思い遠く、情聲に發す。○思は、息嗣反。

非令德之後、誰能若是。爲之歌陳。詩第十二。
【読み】
令德の後に非ずば、誰か能く是の若くならん、と。之が爲に陳を歌う。詩の第十二。

曰、國無主。其能久乎。淫聲放蕩、無所畏忌。故曰國無主。
【読み】
曰く、國に主無し。其れ能く久しからんや、と。淫聲放蕩、畏忌する所無そ。故に國に主無しと曰う。

自鄶以下、無譏焉。鄶第十三、曹第十四。言季子聞此二國歌、不復譏論之。以其微也。○鄶、古外反。
【読み】
鄶より以下は、譏ること無し。鄶は第十三、曹は第十四。言うこころは、季子此の二國の歌を聞くも、復之を譏論せず。其の微なるを以てなり。○鄶は、古外反。

爲之歌小雅。小雅、小正。亦樂歌之常。
【読み】
之が爲に小雅を歌う。小雅は、小正。亦樂歌の常。

曰、美哉、思而不貳、思文・武之德、無貳叛之心。
【読み】
曰く、美なるかな、思いて貳あらず、文・武の德を思いて、貳叛の心無し。

怨而不言。有哀音。
【読み】
怨みて言わず。哀音有り。

其周德之衰乎。衰、小也。
【読み】
其れ周德の衰なるか。衰は、小なり。

猶有先王之遺民焉。謂有殷王餘俗。故未大衰。
【読み】
猶先王の遺民有り、と。殷王の餘俗有り。故に未だ大衰せざるを謂う。

爲之歌大雅。大雅、陳文王之德以正天下。
【読み】
之が爲に大雅を歌う。大雅は、文王の德以て天下を正すことを陳ぶ。

曰、廣哉、熙熙乎。熙熙、和樂聲。
【読み】
曰く、廣きかな、熙熙乎たり。熙熙は、和樂の聲。

曲而有直體。論其聲。
【読み】
曲にして直體有り。其聲を論ず。

其文王之德乎。雅・頌、所以詠盛德形容。故但歌其美者、不皆歌變雅。
【読み】
其れ文王の德か、と。雅・頌は、盛德の形容を詠ずる所以なり。故に但其の美なる者を歌いて、皆變雅を歌わず。

爲之歌頌。頌者、以其成功告於神明。
【読み】
之が爲に頌を歌う。頌は、其の成功を以て神明に告ぐるなり。

曰、至矣哉、言道備。
【読み】
曰く、至れるかな、道の備わるを言う。

直而不倨、倨、傲。○倨、音據。又音居。
【読み】
直くして倨[おご]らず、倨は、傲る。○倨は、音據。又音居。

曲而不屈、屈、撓。○撓、音鬧。
【読み】
曲りて屈[たわ]まず、屈は、撓む。○撓[どう]は、音鬧。

邇而不偪、謙退。○偪、彼力反。
【読み】
邇くして偪らず、謙退す。○偪は、彼力反。

遠而不攜、攜、貳。
【読み】
遠くして攜あらず、攜は、貳。

遷而不淫、淫、過蕩。
【読み】
遷りて淫せず、淫は、過蕩。

復而不厭、常日新。○厭、去聲。又平聲。
【読み】
復りて厭われず、常に日新す。○厭は、去聲。又平聲。

哀而不愁、知命。
【読み】
哀しみて愁えず、命を知る。

樂而不荒、節之以禮。
【読み】
樂しみて荒まず、之を節するに禮を以てす。

用而不匱、德弘大。
【読み】
用いて匱[とぼ]しからず、德弘大なり。

廣而不宣、不自顯。
【読み】
廣くして宣べず、自ら顯さず。

施而不費、因民所利而利之。○施、始豉反。
【読み】
施して費えず、民の利する所に因りて之を利す。○施は、始豉反。

取而不貪、義然後取。
【読み】
取りて貪らず、義ありて然して後に取る。

處而不底、守之以道。○底、音抵。
【読み】
處りて底[とど]まらず、之を守るに道を以てす。○底は、音抵。

行而不流、制之以義。
【読み】
行きて流れず、之を制するに義を以てす。

五聲和、宮・商・角・徵・羽、謂之五聲。
【読み】
五聲和し、宮・商・角・徵・羽、之を五聲と謂う。

八風平、八方之風、謂之八風。
【読み】
八風平らかに、八方の風、之を八風と謂う。

節有度、守有序。八音克諧、節有度也。無相奪倫、守有序也。
【読み】
節度有り、守序有り。八音克く諧[やわ]らぐは、節度有るなり。倫を相奪うこと無きは、守り序有るなり。

盛德之所同也。頌有殷・魯。故曰盛德之所同。
【読み】
盛德の同じき所なり、と。頌に殷・魯有り。故に盛德の同じき所と曰う。

見舞象箾・南籥者。象箾、舞所執。南籥、以籥舞也。皆文王之樂。○箾、音朔。
【読み】
象箾[しょうさく]・南籥[なんやく]を舞う者を見る。象箾は、舞の執る所。南籥は、籥を以て舞うなり。皆文王の樂なり。○箾は、音朔。

曰、美哉、猶有憾。美哉、美其容也。文王恨不及己致大平。
【読み】
曰く、美なるかな、猶憾み有り、と。美なるかなとは、其の容を美むるなり。文王己大平を致すに及ばざるを恨む。

見舞大武者。武王樂。
【読み】
大武を舞う者を見る。武王の樂。

曰、美哉、周之盛也、其若此乎。見舞韶濩者。殷湯樂。○濩、音護。又戶郭反。
【読み】
曰く、美なるかな、周の盛んなるや、其れ此の若きか、と。韶濩[しょうご]を舞う者を見る。殷湯の樂。○濩は、音護。又戶郭反。

曰、聖人之弘也。而猶有慙德。聖人之難也。慙於始伐。
【読み】
曰く、聖人の弘なり。而れども猶德に慙ずること有り。聖人の難きなり、と。始伐に慙ず。

見舞大夏者。禹之樂。
【読み】
大夏を舞う者を見る。禹の樂。

曰、美哉、勤而不德。非禹其誰能脩之。盡力溝洫、勤也。
【読み】
曰く、美なるかな、勤めて德とせず。禹に非ずんば其れ誰か能く之を脩めん、と。力を溝洫[こうきょく]に盡くすは、勤むるなり。

見舞韶箾者。舜樂。○箾、音蕭。
【読み】
韶箾[しょうしょう]を舞う者を見る。舜の樂。○箾は、音蕭。

曰、德至矣哉、大矣。如天之無不幬也、幬、覆也。
【読み】
曰く、德至れるかな、大なり。天の幬[おお]わざること無きが如く、幬[とう]は、覆うなり。

如地之無不載也。雖甚盛德、其蔑以加於此矣。觀止矣。若有他樂、吾不敢請已。魯用四代之樂。故及韶箾而季子知其終也。季札賢明才博、在吳雖已涉見此樂歌之文、然未聞中國雅聲。故請作周樂。欲聽其聲、然後依聲以參時政、知其興衰也。聞秦詩謂之夏聲、聞頌曰五聲和、八風平、皆論聲以參政也。舞畢、知其樂終、是素知其篇數。
【読み】
地の載せざること無きが如し。甚だしき盛德と雖も、其れ以て此に加うること蔑[な]し。觀止めり。若し他樂有りとも、吾れ敢えて請わざるのみ、と。魯は四代の樂を用ゆ。故に韶箾に及びて季子其の終えるを知れるなり。季札賢明才博、吳に在るとき已に此の樂歌の文を涉見すと雖も、然れども未だ中國の雅聲を聞かず。故に周の樂を作さんことを請う。其の聲を聽きて、然して後に聲に依りて以て時政に參[かんが]え、其の興衰を知らんことを欲するなり。秦の詩を聞きて之を夏聲と謂い、頌を聞きて五聲和し、八風平らかと曰うは、皆聲を論じて以て政を參うるなり。舞畢わりて、其の樂の終えるを知るは、是れ素より其の篇數を知ればなり。

其出聘也、通嗣君也。吳子餘祭嗣立。
【読み】
其の出でて聘するや、嗣君に通ずるなり。吳子餘祭嗣立す。

故遂聘于齊。說晏平仲。謂之曰、子速納邑與政。納、歸之公。○說、音悅。下皆同。
【読み】
故に遂に齊に聘す。晏平仲を說ぶ。之に謂いて曰く、子速やかに邑と政とを納れよ。納るるとは、之を公に歸すなり。○說は、音悅。下も皆同じ。

無邑無政、乃免於難。齊國之政、將有所歸。未獲所歸、難未歇也。歇、盡也。○難、乃旦反。
【読み】
邑無く政無くば、乃ち難に免れん。齊國の政、將に歸する所有らんとす。未だ歸する所を獲ざれば、難未だ歇[つ]きざるなり、と。歇は、盡くなり。○難は、乃旦反。

故晏子因陳桓子以納政與邑。是以免於欒・高之難。難、在昭八年。
【読み】
故に晏子陳桓子に因りて以て政と邑とを納る。是を以て欒・高の難に免れたり。難は、昭八年に在り。

聘於鄭。見子產、如舊相識。與之縞帶。子產獻紵衣焉。大帶也。吳地貴縞、鄭地貴紵。故各獻己所貴。示損己而不爲彼貨利。○縞、古老反。繒也。
【読み】
鄭に聘す。子產を見て、舊相識の如し。之に縞帶を與う。子產紵衣[ちょい]を獻ず。大帶なり。吳の地は縞を貴び、鄭の地は紵を貴ぶ。故に各々己が貴ぶ所を獻ず。己を損して彼が貨利と爲さざるを示す。○縞は、古老反。繒なり。

謂子產曰、鄭之執政侈。難將至矣。政必及子。子爲政、愼之以禮。不然、鄭國將敗。侈、謂伯有。
【読み】
子產に謂いて曰く、鄭の執政侈れり。難將に至らんとす。政必ず子に及ばん。子政を爲さば、之を愼むに禮を以てせよ。然らずんば、鄭國將に敗れんとす、と。侈るとは、伯有を謂う。

適衛。說蘧瑗・ 蘧伯玉。○瑗、于眷反。
【読み】
衛に適く。蘧瑗・ 蘧伯玉。○瑗は、于眷反。

史狗・ 史朝之子、文子。
【読み】
史狗・ 史朝の子、文子。

史鰌・ 史魚。○鰌、音秋。
【読み】
史鰌・ 史魚。○鰌は、音秋。

公子荆・公叔發・ 公叔文子。
【読み】
公子荆・公叔發・ 公叔文子。

公子朝。曰、衛多君子。未有患也。
【読み】
公子朝を說ぶ。曰く、衛に君子多し。未だ患え有らざるなり、と。

自衛如晉。將宿於戚、戚、孫文子之邑。
【読み】
衛より晉に如く。將に戚に宿らんとして、戚は、孫文子の邑。

聞鍾聲焉。曰、異哉。吾聞之也、辯而不德、必加於戮。辯、猶爭也。
【読み】
鍾聲を聞く。曰く、異なるかな。吾れ之を聞く、辯じて德あらざれば、必ず戮を加えらる、と。辯は、猶爭うのごとし。

夫子獲罪於君以在此。孫文子以戚叛。
【読み】
夫子罪を君に獲て以て此に在り。孫文子戚を以て叛く。

懼猶不足。而又何樂。夫子之在此也、猶燕之巢於幕上。言至危。
【読み】
懼るとも猶足らず。而るを又何ぞ樂せん。夫子の此に在るや、猶燕の幕上に巢くうがごとし。至危を言う。

君又在殯。而可以樂乎。獻公卒未葬。
【読み】
君又殯に在り。而るを以て樂す可けんや、と。獻公卒して未だ葬らず。

遂去之。不止宿。
【読み】
遂に之を去る。止宿せず。

文子聞之、終身不聽琴瑟。聞義能改。
【読み】
文子之を聞きて、終身琴瑟を聽かず。義を聞きて能く改む。

適晉。說趙文子・韓宣子・魏獻子。曰、晉國其萃於三族乎。言晉國之政將集於三家。
【読み】
晉に適く。趙文子・韓宣子・魏獻子を說ぶ。曰く、晉國は其れ三族に萃[あつ]まらんか、と。言うこころは、晉國の政將に三家に集らんとす。

說叔向。將行、謂叔向曰、吾子勉之。君侈而多良、大夫皆富。政將在家。富必厚施。故政在家。○施、式豉反。
【読み】
叔向を說ぶ。將に行[さ]らんとするとき、叔向に謂いて曰く、吾子之を勉めよ。君侈りて多く良とし、大夫皆富めり。政將に家に在らんとす。富めば必ず厚く施す。故に政家に在り。○施は、式豉反。

吾子好直。必思自免於難。
【読み】
吾子直を好む。必ず自ら難に免ることを思え、と。

秋、九月、齊公孫蠆・公孫竈放其大夫高止於北燕。蠆、子尾。竈、子雅。放者、宥之以遠。○蠆、勑邁反。
【読み】
秋、九月、齊の公孫蠆[こうそんたい]・公孫竈[こうそんそう]其の大夫高止を北燕に放つ。蠆は、子尾。竈は、子雅。放つとは、之を宥むるに遠きを以てするなり。○蠆は、勑邁反。

乙未、出。
【読み】
乙未[きのと・ひつじ]、出づ。

書曰出奔、罪高止也。實放書奔、所以示罪。
【読み】
書して出でて奔ると曰うは、高止を罪するなり。實は放ちて奔ると書すは、罪を示す所以なり。

高止好以事自爲功、且專。故難及之。
【読み】
高止事を以て自ら功とすることを好み、且專らなり。故に難之に及べり。

冬、孟孝伯如晉、報范叔也。范叔、士鞅也。此年夏來聘。
【読み】
冬、孟孝伯晉に如くは、范叔に報ゆるなり。范叔は、士鞅なり。此の年の夏來聘す。

爲高氏之難故、高豎以盧叛。豎、高止子。○爲、于僞反。
【読み】
高氏の難の爲の故に、高豎盧を以て叛く。豎は、高止の子。○爲は、于僞反。

十月、庚寅、閭丘嬰帥師圍盧。高豎曰、苟使高氏有後、請致邑。還邑於君。
【読み】
十月、庚寅[かのえ・とら]、閭丘嬰師を帥いて盧を圍む。高豎曰く、苟も高氏をして後有らしめば、請う、邑を致さん、と。邑を君に還すなり。

齊人立敬仲之曾孫酀。敬仲、高傒。○酀、於顯反。傒、音兮。
【読み】
齊人敬仲の曾孫酀[えん]を立つ。敬仲は、高傒。○酀は、於顯反。傒は、音兮。

良敬仲也。良、猶賢也。
【読み】
敬仲を良とするなり。良は、猶賢のごとし。

十一月、乙卯、高豎致盧而出奔晉。晉人城緜而寘旃。晉人善其致邑。
【読み】
十一月、乙卯[きのと・う]、高豎盧を致して出でて晉に奔る。晉人緜に城きて旃[これ]を寘く。晉人其の邑を致すを善す。

鄭伯有使公孫黑如楚。黑、子皙。
【読み】
鄭の伯有公孫黑をして楚に如かしむ。黑は、子皙。

辭曰、楚・鄭方惡。而使余往、是殺余也。伯有曰、世行也。言女世爲行人。○女、音汝。
【読み】
辭して曰く、楚・鄭方に惡し。而るを余をして往かしむるは、是れ余を殺すなり、と。伯有曰く、世々行きたり、と。言うこころは、女は世々行人爲り。○女は、音汝。

子皙曰、可則往、難則已。何世之有。伯有將强使之。子皙怒、將伐伯有氏。大夫和之。十二月、己巳、鄭大夫盟於伯有氏。裨諶曰、是盟也、其與幾何。言不能久也。裨諶、鄭大夫。○强、上聲。與、如字。或音預。
【読み】
子皙曰く、可なれば則ち往き、難あれば則ち已む。何の世ということ之れ有らん、と。伯有將に强いて之を使わんとす。子皙怒りて、將に伯有氏を伐たんとす。大夫之を和す。十二月、己巳[つちのと・み]、鄭の大夫伯有氏に盟う。裨諶[ひじん]曰く、是の盟や、其れ幾何[いくばく]ぞ。言うこころは、久しきこと能わざるなり。裨諶は、鄭の大夫。○强は、上聲。與は、字の如し。或は音預。

詩曰、君子屢盟。亂是用長。今是長亂之道也。禍未歇也。必三年而後能紓。紓、解也。○屢、力住反。長、丁丈反。紓、直呂反。又音舒。解、音蟹。
【読み】
詩曰く、君子屢々盟う。亂是を用て長ず、と。今は是れ亂を長ずるの道なり。禍未だ歇[や]まざるなり。必ず三年にして後に能く紓[と]けん、と。紓は、解くなり。○屢は、力住反。長は、丁丈反。紓は、直呂反。又音舒。解は、音蟹。

然明曰、政將焉往。裨諶曰、善之代不善、天命也。其焉辟子產。言政必歸子產。○焉、於虔反。
【読み】
然明曰く、政將に焉に往かんとする、と。裨諶曰く、善の不善に代わるは、天の命なり。其れ焉ぞ子產を辟けん。言うこころは、政必ず子產に歸せん。○焉は、於虔反。

舉不踰等、則位班也。子產位班、次應知政。
【読み】
舉等を踰えざれば、則ち位班なり。子產の位班、次で應に政を知るべし。

擇善而舉、則世隆也。世所高也。
【読み】
善を擇びて舉げば、則ち世の隆なり。世の高きとする所なり。

天又除之、奪伯有魄。喪其精神、爲子產驅除。○驅除、如字。
【読み】
天又之を除わんとして、伯有の魄を奪えり。其の精神を喪わせて、子產の爲に驅除す。○驅除は、字の如し。

子西卽世、將焉辟之。天禍鄭久矣。其必使子產息之。乃猶可以戾。戾、定也。
【読み】
子西卽世せば、將[はた]焉ぞ之を辟けん。天鄭に禍すること久し。其れ必ず子產をして之を息わしめん。乃ち猶以て戾[さだ]まる可し。戾は、定まるなり。

不然、將亡矣。
【読み】
然らずんば、將に亡びんとす、と。


〔經〕三十年、春、王正月、楚子使薳罷來聘。○罷、音皮。
【読み】
〔經〕三十年、春、王の正月、楚子薳罷[いひ]をして來聘せしむ。○罷は、音皮。

夏、四月、蔡世子般弑其君固。○般、音班。
【読み】
夏、四月、蔡の世子般其の君固を弑す。○般は、音班。

五月、甲午、宋災。天火曰災。
【読み】
五月、甲午[きのえ・うま]、宋災あり。天火を災と曰う。

宋伯姬卒。天王殺其弟佞夫。稱弟、以惡王殘骨肉。
【読み】
宋の伯姬卒す。天王其の弟佞夫を殺す。弟と稱するは、以て王の骨肉を殘[そこな]うを惡みてなり。

王子瑕奔晉。不言出奔、周無外。
【読み】
王子瑕晉に奔る。出奔と言わざるは、周は外無ければなり。

秋、七月、叔弓如宋。葬宋共姬。共姬、從夫謚也。叔弓、叔老之子。卿共葬事、禮過厚。三月而葬、速。
【読み】
秋、七月、叔弓宋に如く。宋の共姬を葬る。共姬は、夫の謚に從うなり。叔弓は、叔老の子。卿葬事に共する、禮厚きに過ぎたり。三月にして葬るは、速やかなり。

鄭良霄出奔許。耆酒荒淫。書名罪之。
【読み】
鄭の良霄[りょうしょう]出でて許に奔る。酒を耆[この]みて荒淫なり。名を書して之を罪す。

自許入于鄭。不言復入、獨還無兵。
【読み】
許より鄭に入る。復入ると言わざるは、獨り還りて兵無ければなり。

鄭人殺良霄。冬、十月、葬蔡景公。無傳。
【読み】
鄭人良霄を殺す。冬、十月、蔡の景公を葬る。傳無し。

晉人・齊人・宋人・衛人・鄭人・曹人・莒人・邾人・滕人・薛人・杞人・小邾人會于澶淵。宋災故。會未有言其事者。此言宋災故、以惡宋人不克己自責、而出會求財。○澶、市然反。
【読み】
晉人・齊人・宋人・衛人・鄭人・曹人・莒人・邾人[ちゅひと]・滕人・薛人・杞人・小邾人澶淵[せんえん]に會す。宋の災の故なり。會未だ其の事を言う者有らず。此に宋の災の故なりと言うは、以て宋人己に克ちて自ら責めずして、出會して財を求むるを惡みてなり。○澶は、市然反。

〔傳〕三十年、春、王正月、楚子使薳罷來聘、通嗣君也。郟敖卽位。
【読み】
〔傳〕三十年、春、王の正月、楚子薳罷をして來聘せしむるは、嗣君を通ずるなり。郟敖[こうごう]位に卽く。

穆叔問、王子之爲政何如。王子圍爲令尹。
【読み】
穆叔問う、王子の政を爲すこと何如、と。王子圍令尹と爲る。

對曰、吾儕小人。食而聽事、猶懼不給命、而不免於戾。焉與知政。固問焉。不告。穆叔告大夫曰、楚令尹將有大事。子蕩將與焉。子蕩、薳罷。○焉與、於虔反。與、音預。
【読み】
對えて曰く、吾儕は小人なり。食いて事を聽くも、猶命に給せずして、戾[つみ]に免れざらんことを懼る。焉ぞ政を與り知らん、と。固く問う。告げず。穆叔大夫に告げて曰く、楚の令尹將に大事有らんとす。子蕩將に與らんとす。子蕩は、薳罷。○焉與、於虔反。與は、音預。

助之匿其情矣。子圍素貴、郟敖微弱。諸侯皆知其將爲亂。故穆叔問之。
【読み】
之を助けて其の情を匿せり、と。子圍は素より貴く、郟敖は微弱。諸侯皆其の將に亂を爲さんとするを知る。故に穆叔之を問うなり。

子產相鄭伯以如晉。叔向問鄭國之政焉。對曰、吾得見與否、在此歲也。駟・良方爭、未知所成。駟氏、子皙也。良氏、伯有也。
【読み】
子產鄭伯を相けて以て晉に如く。叔向鄭國の政を問う。對えて曰く、吾れ見ることを得ると否[しか]らざるとは、此の歲に在り。駟・良方に爭い、未だ成[たい]らぐ所を知らず。駟氏は、子皙なり。良氏は、伯有なり。

若有所成、吾得見、乃可知也。叔向曰、不旣和矣乎。對曰、伯有侈而愎、愎、很也。○愎、皮力反。很、胡懇反。
【読み】
若し成らぐ所有らば、吾が見ることを得んこと、乃ち知る可し、と。叔向曰く、旣に和するならずや、と。對えて曰く、伯有は侈りて愎[もと]り、愎[ひょく]は、很[もと]るなり。○愎は、皮力反。很[こん]は、胡懇反。

子皙好在人上、莫能相下也。雖其和也、猶相積惡也。惡至無日矣。爲此年秋、良霄出奔傳。
【読み】
子皙は人の上に在ることを好み、能く相下ること莫し。其れ和すと雖も、猶惡を相積めり。惡の至らんこと日無けん、と。此の年の秋、良霄出奔する爲の傳なり。

二月、癸未、晉悼夫人食輿人之城杞者。輿、衆也。城杞、在往年。
【読み】
二月、癸未[みずのと・ひつじ]、晉の悼夫人輿人の杞に城く者に食わしむ。輿は、衆なり。杞に城くは、往年に在り。

絳縣人或年長矣。無子、而往與於食。有與疑年、使之年。使言其年。
【読み】
絳縣の人或ひと年長ぜり。子無くして、往きて食に與れり。與にすること有りて年を疑い、之をして年せしむ。其の年を言わしむ。

曰、臣小人也。不知紀年。臣生之歲、正月甲子朔、四百有四十五甲子矣。其季於今、三之一也。所稱正月、謂夏正月也。三分六甲之一、得甲子・甲戌盡癸未。
【読み】
曰く、臣は小人なり。紀年を知らず。臣が生まれし歲は、正月甲子[きのえ・ね]朔にして、四百有四十五甲子なり。其の季今に於て、三の一なり、と。稱する所の正月は、夏の正月を謂うなり。六甲を三分するの一は、甲子・甲戌より癸未に盡くるを得。

吏走問諸朝。皆不知。故問之。
【読み】
吏走りて諸を朝に問う。皆知らず。故に之を問う。

師曠曰、魯叔仲惠伯會郤成子于承匡之歲也。在文十一年。
【読み】
師曠曰く、魯の叔仲惠伯が郤成子に承匡に會せし歲なり。文十一年に在り。

是歲也、狄伐魯。叔孫莊叔於是乎敗狄于鹹、獲長狄僑如及虺也・豹也、而皆以名其子。七十三年矣。叔孫僑如・叔孫豹、皆取長狄名。○鹹、音咸。虺、虛鬼反。
【読み】
是の歲や、狄魯を伐つ。叔孫莊叔是に於て狄を鹹[かん]に敗り、長狄僑如と虺[き]や・豹やとを獲て、皆以て其の子に名づけたり。七十三年なり、と。叔孫僑如・叔孫豹は、皆長狄の名を取れり。○鹹は、音咸。虺は、虛鬼反。

史趙曰、亥有二首六身。史趙、晉大史。亥字、二畫在上、倂三人爲身、如筭之六。
【読み】
史趙曰く、亥に二首六身有り。史趙は、晉の大史。亥の字、二畫上に在り、三つの人を倂せて身とすれば、筭の六の如し。

下二如身、是其日數也。下亥上二畫、豎置身旁。
【読み】
二を下して身の如くすれば、是れ其の日數なり、と。亥の上の二畫を下して、豎[たて]に身の旁らに置くなり。

士文伯曰、然則二萬二千六百有六旬也。文伯、士弱之子。
【読み】
士文伯曰く、然らば則ち二萬二千六百有六旬なり、と。文伯は、士弱の子。

趙孟問其縣大夫、則其屬也。屬趙武。
【読み】
趙孟其の縣の大夫を問えば、則ち其の屬なり。趙武に屬す。

召之而謝過焉、曰、武不才、任君之大事、以晉國之多虞、不能由吾子、由、用也。
【読み】
之を召して過ちを謝して、曰く、武不才にして、君の大事に任じて、晉國の多虞を以て、吾子を由[もち]ゆること能わず、由は、用ゆるなり。

使吾子辱在泥塗久矣。武之罪也。敢謝不才。遂仕之、使助爲政。辭以老。與之田、使爲君復陶、復陶、主衣服之官。○復、音服。又音福。
【読み】
吾子をして泥塗に辱在せしむること久し。武の罪なり。敢えて不才を謝す、と。遂に之を仕えしめ、助けて政を爲さしめんとす。辭するに老を以てす。之に田を與え、君の復陶爲らしめ、復陶は、衣服を主るの官。○復は、音服。又音福。

以爲絳縣師、縣師、掌地域、辨其夫家人民。
【読み】
以て絳の縣師と爲して、縣師は、地域を掌り、其の夫家人民を辨ず。

而廢其輿尉。以役孤老故。
【読み】
其の輿尉を廢せり。孤老を役するを以ての故なり。

於是魯使者在晉、歸以語諸大夫。季武子曰、晉未可婾也。婾、薄也。○語、魚據反。
【読み】
是に於て魯の使者晉に在り、歸りて以て諸大夫に語る。季武子曰く、晉は未だ婾[うす]んず可からざるなり。婾は、薄んずるなり。○語は、魚據反。

有趙孟以爲大夫、有伯瑕以爲佐、伯瑕、士文伯。
【読み】
趙孟有りて以て大夫と爲り、伯瑕有りて以て佐と爲り、伯瑕は、士文伯。

有史趙・師曠而咨度焉、有叔向・女齊以師保其君。其朝多君子。其庸可婾乎。勉事之而後可。傳言晉所以强不失諸侯、且明歷也。
【読み】
史趙・師曠有りて咨度し、叔向・女齊有りて以て其の君に師保たり。其の朝君子多し。其れ庸[なん]ぞ婾んず可けんや。勉めて之に事えて而して後に可なり、と。傳晉の强くして諸侯を失わざる所以と、且歷に明らかなるを言うなり。

夏、四月、己亥、鄭伯及其大夫盟。駟・良爭故。
【読み】
夏、四月、己亥[つちのと・い]、鄭伯其の大夫と盟う。駟・良爭う故なり。

君子是以知鄭難之不已也。鄭伯微弱、不能制其臣下、君臣詛盟。故曰亂未已。
【読み】
君子是を以て鄭の難の已まざるを知れり。鄭伯微弱、其の臣下を制すること能わずして、君臣詛盟す。故に亂未だ已まずと曰う。

蔡景侯爲大子般娶于楚。通焉。大子弑景侯。終子產言有子禍也。○爲、于僞反。
【読み】
蔡の景侯大子般の爲に楚に娶る。通ず。大子景侯を弑す。子產子の禍有らんと言いしを終わるなり。○爲は、于僞反。

初、王儋季卒、儋季、周靈王弟。○儋、丁甘反。
【読み】
初め、王儋季[おうたんき]卒し、儋季は、周の靈王の弟。○儋は、丁甘反。

其子括將見王而歎。括除服見靈王、入朝而歎。
【読み】
其の子括將に王に見えんとして歎ず。括服を除[ぬ]ぎて靈王に見えんとし、朝に入りて歎ず。

單公子愆期爲靈王御士。過諸廷、愆期行過王廷。○單、音善。
【読み】
單公の子愆期靈王の御士爲り。廷を過ぎ、愆期行きて王廷を過ぐ。○單は、音善。

聞其歎而言、曰烏乎、必有此夫。欲有此朝廷之權。
【読み】
其の歎じて言うを聞けば、烏乎、必ず此を有たんかと曰いぬ。此の朝廷の權を有たんと欲す。

入以告王、且曰、必殺之。不慼而願大、視躁而足高。心在他矣。不殺必害。王曰、童子何知。及靈王崩、儋括欲立王子佞夫。佞夫、靈王子、景王弟。○躁、早報反。
【読み】
入りて以て王に告げ、且つ曰く、必ず之を殺せ。慼[いた]まずして願い大に、視ること躁[はや]くして足高し。心他に在り。殺さずんば必ず害あらん、と。王曰く、童子何をか知らん、と。靈王の崩ずるに及び、儋括王子佞夫を立てんと欲す。佞夫は、靈王の子、景王の弟。○躁は、早報反。

佞夫弗知。戊子、儋括圍蔿逐成愆。成愆、蔿邑大夫。○蔿、于委反。
【読み】
佞夫知らず。戊子[つちのえ・ね]、儋括蔿[い]を圍みて成愆を逐う。成愆は、蔿邑の大夫。○蔿は、于委反。

成愆奔平畤。平畤、周邑。○畤、音止。又音市。
【読み】
成愆平畤[へいし]に奔る。平畤は、周の邑。○畤は、音止。又音市。

五月、癸巳、尹言多・劉毅・單蔑・甘過・鞏成殺佞夫。五子、周大夫。
【読み】
五月、癸巳[みずのと・み]、尹言多・劉毅・單蔑・甘過・鞏成佞夫を殺す。五子は、周の大夫。

括・瑕・廖奔晉。括・廖不書、賤也。○廖、力彫反。一音勑留反。
【読み】
括・瑕・廖晉に奔る。括・廖書さざるは、賤しければなり。○廖は、力彫反。一に音勑留反。

書曰天王殺其弟佞夫、罪在王也。佞夫不知故。經書在宋災下、從赴。
【読み】
書して天王其の弟佞夫を殺すと曰うは、罪王に在ればなり。佞夫知らざる故なり。經に書して宋災ありの下に在るは、赴[つ]ぐるに從うなり。

或叫于宋大廟。叫、呼也。○呼、火故反。
【読み】
宋の大廟に叫ぶもの或り。叫は、呼ぶなり。○呼は、火故反。

曰譆譆出出。譆譆、熱也。出出、戒伯姬。○譆、許其反。出、如字。
【読み】
譆譆[きき]出出と曰えり。譆譆は、熱きなり。出出は、伯姬を戒むるなり。○譆は、許其反。出は、字の如し。

鳥鳴于亳社、殷社。
【読み】
鳥亳社[はくしゃ]に鳴くも、殷の社。

如曰譆譆。皆火妖也。
【読み】
譆譆と曰うが如くなりき。皆火妖なり。

甲午、宋大災。宋伯姬卒。待姆也。姆、女師。○姆、音茂。
【読み】
甲午、宋大災あり。宋の伯姬卒す。姆[ぼ]を待ちてなり。姆は、女師。○姆は、音茂。

君子謂、宋共姬、女而不婦。女待人。待人而行。
【読み】
君子謂えらく、宋の共姬は、女にして婦ならず。女は人を待つ。人を待ちて行く。

婦義事也。義、從宜也。伯姬時年六十左右。
【読み】
婦は義にして事をす、と。義は、宜しきに從うなり。伯姬時に年六十の左右ならん。

六月、鄭子產如陳涖盟。歸復命、告大夫曰、陳亡國也。不可與也。不可與結好。○好、呼報反。
【読み】
六月、鄭の子產陳に如きて涖[のぞ]みて盟う。歸りて復命し、大夫に告げて曰く、陳は亡國なり。與す可からざるなり。與に好を結ぶ可からず。○好は、呼報反。

聚禾粟、繕城郭、恃此二者而不撫其民。其君弱植、公子侈、大子卑、大夫敖。政多門、政不由一人。○植、直吏反。一音時力反。敖、亦作放。
【読み】
禾粟を聚め、城郭を繕[おさ]め、此の二つの者を恃みて其の民を撫でず。其の君弱植、公子侈り、大子卑しく、大夫敖れり。政門多くして、政一人に由らず。○植は、直吏反。一に音時力反。敖は、亦放に作る。

以介於大國。介、閒也。
【読み】
以て大國に介[はさ]まる。介は、閒なり。

能無亡乎。不過十年矣。爲昭八年、楚滅陳傳。
【読み】
能く亡ぶること無からんや。十年を過ぎじ、と。昭八年、楚陳を滅ぼす爲の傳なり。

秋、七月、叔弓如宋、葬共姬也。傷伯姬之遇災。故使卿共葬。
【読み】
秋、七月、叔弓宋に如くは、共姬を葬るなり。伯姬の災に遇えるを傷む。故に卿をして葬に共せしむ。

鄭伯有耆酒。爲窟室、窟室、地室。○耆、市志反。
【読み】
鄭の伯有酒を耆む。窟室を爲りて、窟室は、地室。○耆は、市志反。

而夜飮酒、擊鍾焉。朝至未己。朝者曰、公焉在。家臣。故謂伯有爲公。○焉在、於虔反。
【読み】
夜酒を飮みて、鍾を擊つ。朝至れども未だ己まず。朝する者曰く、公焉に在る、と。家臣なり。故に伯有を謂いて公と爲す。○焉在は、於虔反。

其人曰、吾公在壑谷。壑谷、窟室。
【読み】
其の人曰く、吾が公壑谷[がくこく]に在り、と。壑谷は、窟室。

皆自朝布路而罷。布路、分散。
【読み】
皆朝より布路して罷[しりぞ]く。布路は、分散。

旣而朝。伯有朝鄭君。
【読み】
旣にして朝す。伯有鄭君に朝す。

則又將使子皙如楚。歸而飮酒。庚子、子皙以駟氏之甲、伐而焚之。伯有奔雍梁。雍梁、鄭地。○雍、於用反。
【読み】
則ち又將に子皙をして楚に如かしめんとす。歸りて酒を飮む。庚子[かのえ・ね]、子皙駟氏の甲を以[い]て、伐ちて之を焚く。伯有雍梁に奔る。雍梁は、鄭の地。○雍は、於用反。

醒而後知之、遂奔許。大夫聚謀。子皮曰、仲虺之志、仲虺、湯左相。○醒、星頂反。
【読み】
醒めて後に之を知り、遂に許に奔る。大夫聚まり謀る。子皮曰く、仲虺[ちゅうき]の志に、仲虺は、湯の左相。○醒は、星頂反。

云、亂者取之、亡者侮之、推亡固存、國之利也。
【読み】
云う、亂るる者は之を取り、亡びんとする者は之を侮り、亡を推し存を固くするは、國の利なり、と。

罕・駟・豐同生。罕、子皮。駟、子皙。豐、公孫段也。三家本同母兄弟。
【読み】
罕・駟・豐は同生なり。罕は、子皮。駟は、子皙。豐は、公孫段なり。三家本同母兄弟。

伯有汰侈。故不免。三家同出、而伯有孤特。又汰侈。所以亡。
【読み】
伯有は汰侈。故に免れざりき。三家同出にして、伯有孤特なり。又汰侈なり。亡ぶる所以なり。

人謂子產、就直助彊。時謂子皙直、三家彊。
【読み】
人子產に謂えらく、直に就き彊を助けよ、と。時に子皙は直、三家は彊と謂う。

子產曰、豈爲我徒。徒、黨也。言不以駟・良爲黨。
【読み】
子產曰く、豈我が徒爲らんや。徒は、黨なり。言うこころは、駟・良を以て黨と爲さず。

國之禍難、誰知所敝。或主彊直、難乃不生。言能彊能直、則可弭難。今三家未能、則伯有方爭。○難、乃旦反。下同。
【読み】
國の禍難、誰か敝[さだ]まる所を知らん。或[も]し彊直を主らば、難乃ち生ぜじ。言うこころは、能く彊能く直ならば、則ち難を弭[や]む可し。今三家未だ能わざるは、則ち伯有方に爭うなり。○難は、乃旦反。下も同じ。

姑成吾所。欲以無所附著爲所。○著、直畧反。
【読み】
姑く吾が所を成さん、と。附著する所無きを以て所と爲さんと欲す。○著は、直畧反。

辛丑、子產斂伯有氏之死者而殯之、不及謀而遂行。不與於國謀。○斂、力豔反。
【読み】
辛丑[かのと・うし]、子產伯有氏の死者を斂めて之を殯し、謀に及ばずして遂に行[さ]る。國謀に與らず。○斂は、力豔反。

印段從之。義子產。
【読み】
印段之に從う。子產を義とす。

子皮止之。衆曰、人不我順、何止焉。子皮曰、夫子禮於死者。況生者乎。遂自止之。壬寅、子產入。癸卯、子石入。子石、印段。
【読み】
子皮之を止めんとす。衆曰く、人我に順わず、何ぞ止めん、と。子皮曰く、夫子死者に禮あり。況んや生者をや、と。遂に自ら之を止む。壬寅[みずのえ・とら]、子產入る。癸卯[みずのと・う]、子石入る。子石は、印段。

皆受盟于子皙氏。乙巳、鄭伯及其大夫盟于大宮、大宮、祖廟。
【読み】
皆盟を子皙氏に受く。乙巳[きのと・み]、鄭伯其の大夫と大宮に盟い、大宮は、祖廟。

盟國人于師之梁之外。師之梁、鄭城門。
【読み】
國人に師之梁の外に盟う。師之梁は、鄭の城門。

伯有聞鄭人之盟己也、怒。聞子皮之甲不與攻己也、喜。曰、子皮與我矣。癸丑、晨、自墓門之瀆入。墓門、鄭城門。○瀆、音豆。
【読み】
伯有鄭人の己に盟うと聞きて、怒る。子皮の甲の己を攻むるに與らずと聞きて、喜ぶ。曰く、子皮我に與せり、と。癸丑[みずのと・うし]、晨に、墓門の瀆[とう]より入る。墓門は、鄭の城門。○瀆は、音豆。

因馬師頡、介于襄庫、以伐舊北門。馬師頡、子羽孫。○頡、音纈。
【読み】
馬師頡[ばしけつ]に因りて、襄庫に介して、以て舊北門を伐つ。馬師頡は、子羽の孫。○頡は、音纈。

駟帶率國人以伐之。駟帶、子西之子、子皙之宗主。
【読み】
駟帶國人を率いて以て之を伐つ。駟帶は、子西の子、子皙の宗主。

皆召子產。駟氏・伯有倶召。
【読み】
皆子產を召[よ]ぶ。駟氏・伯有倶に召ぶ。

子產曰、兄弟而及此。吾從天所與。兄弟恩等。故無所偏助。
【読み】
子產曰く、兄弟にして此に及べり。吾は天の與する所に從わん、と。兄弟は恩等し。故に偏助する所無し。

伯有死於羊肆。羊肆、市列。
【読み】
伯有羊肆に死す。羊肆は、市列。

子產襚之、枕之股而哭之、斂而殯諸伯有之臣在市側者。旣而葬諸斗城。斗城、鄭地名。○枕、之鴆反。
【読み】
子產之に襚[すい]し、之を股に枕させて之を哭し、斂して諸を伯有の臣の市側に在る者に殯す。旣にして諸を斗城に葬る。斗城は、鄭の地名。○枕は、之鴆反。

子駟氏欲攻子產。子皮怒之曰、禮、國之幹也。殺有禮、禍莫大焉。乃止。斂葬伯有爲有禮。
【読み】
子駟氏子產を攻めんと欲す。子皮之を怒りて曰く、禮は、國の幹なり。有禮を殺すは、禍焉より大なるは莫し、と。乃ち止む。伯有を斂葬するは禮有りと爲す。

於是游吉如晉。還、聞難不入。懼禍幷及。
【読み】
是に於て游吉晉に如く。還り、難を聞きて入らず。禍の幷せ及ばんことを懼る。

復命于介、八月、甲子、奔晉。駟帶追之。及酸棗。與子上盟、用兩珪質于河。子上、駟帶也。沈珪於河爲信也。酸棗、陳留縣。
【読み】
介に復命せしめ、八月、甲子、晉に奔る。駟帶之を追う。酸棗[さんそう]に及ぶ。子上と盟い、兩珪を用いて河に質す。子上は、駟帶なり。珪を河に沈めて信と爲すなり。酸棗は、陳留縣。

使公孫肸入盟大夫。己巳、復歸。游吉歸也。○肸、許乙反。
【読み】
公孫肸[こうそんきつ]をして入りて大夫に盟わしむ。己巳[つちのと・み]、復歸す。游吉歸るなり。○肸は、許乙反。

書曰鄭人殺良霄、不稱大夫、言自外入也。旣出位絕、非復鄭大夫。
【読み】
書して鄭人良霄を殺すと曰いて、大夫と稱せざるは、外より入るを言うなり。旣に出でて位絕え、復鄭の大夫に非ず。

於子蟜之卒也、子蟜、公孫蠆。卒、在九年。○蟜、音矯。
【読み】
子蟜の卒するときに於てや、子蟜は、公孫蠆[こうそんたい]。卒するは、九年に在り。○蟜は、音矯。

將葬、公孫揮與裨竈晨會事焉、會葬事。
【読み】
將に葬らんとし、公孫揮と裨竈[ひそう]と晨に事に會せんとし、葬事に會す。

過伯有氏。其門上生莠。子羽曰、其莠猶在乎。子羽、公孫揮。以莠喩伯有。伯有侈。知其不能久存。
【読み】
伯有氏を過ぐ。其の門上に莠[ゆう]を生ず。子羽曰く、其の莠猶在らんか、と。子羽は、公孫揮。莠を以て伯有に喩う。伯有は侈る。其の久しく存すること能わざるを知る。

於是歲在降婁、降婁中而旦。降婁、奎婁也。周七月、今五月。降婁中而天明。○降、戶江反。
【読み】
是に於て歲降婁に在り、降婁中して旦[あ]く。降婁は、奎婁[けいろう]なり。周の七月は、今の五月なり。降婁中して天明く。○降は、戶江反。

裨竈指之曰、猶可以終歲。指降婁也。歲星十二年而一終。
【読み】
裨竈之を指して曰く、猶以て歲を終うる可し。降婁を指すなり。歲星は十二年にして一終す。

歲不及此次也已。不及降婁。
【読み】
歲此の次に及ばざらんのみ、と。降婁に及ばず。

及其亡也、歲在娵訾之口。娵訾、營室・東壁。二十八年、歲星淫在玄枵、今三十年、在娵訾。是歲星停在玄枵二年。○娵、子須反。訾、音玆。
【読み】
其の亡ぶるに及びて、歲娵訾[しゅし]の口に在り。娵訾は、營室・東壁。二十八年、歲星淫して玄枵[げんきょう]に在り、今三十年、娵訾に在り。是れ歲星玄枵に停在すること二年なり。○娵は、子須反。訾は、音玆。

其明年乃及降婁。僕展從伯有、與之皆死。僕展、鄭大夫。伯有黨。
【読み】
其の明年乃ち降婁に及べり。僕展伯有に從い、之と皆死す。僕展は、鄭の大夫。伯有の黨。

羽頡出奔晉、爲任大夫。羽頡、馬師頡。任、晉縣。今屬廣平郡。○任、音壬。
【読み】
羽頡出でて晉に奔り、任の大夫と爲る。羽頡は、馬師頡。任は、晉の縣。今廣平郡に屬す。○任は、音壬。

雞澤之會、在三年。
【読み】
雞澤の會に、三年に在り。

鄭樂成奔楚、遂適晉。羽頡因之、與之比而事趙文子、言伐鄭之說焉。以宋之盟故、不可。宋盟約弭兵故。
【読み】
鄭の樂成楚に奔り、遂に晉に適きぬ。羽頡之に因り、之と比して趙文子に事え、鄭を伐つの說を言う。宋の盟を以ての故に、可[き]かず。宋の盟に兵を弭めんことを約する故なり。

子皮以公孫鉏爲馬師。鉏、子罕之子。代羽頡。
【読み】
子皮公孫鉏[こうそんしょ]を以て馬師と爲す。鉏は、子罕の子。羽頡に代わる。

楚公子圍殺大司馬蔿掩而取其室。蔿掩二十五年爲大司馬。
【読み】
楚の公子圍大司馬蔿掩[いえん]を殺して其の室を取る。蔿掩は二十五年に大司馬と爲る。

申無宇曰、王子必不免。無宇、芋尹。
【読み】
申無宇曰く、王子は必ず免れじ。無宇は、芋尹。

善人、國之主也。王子相楚國、將善是封殖、而虐之、是禍國也。且司馬令尹之偏、偏、佐也。
【読み】
善人は、國の主なり。王子楚の國を相け、將に善を是れ封殖せんとして、之を虐ぐるは、是れ國に禍するなり。且つ司馬は令尹の偏にして、偏は、佐なり。

而王之四體也。倶股肱也。
【読み】
王の四體なり。倶に股肱なり。

絕民之主、去身之偏、艾王之體、以禍其國。無不祥大焉。何以得免。爲昭十三年、楚弑靈王傳。○去、起呂反。艾、魚廢反。
【読み】
民の主を絕ち、身の偏を去り、王の體を艾[き]りて、以て其の國に禍す。不祥焉より大なるは無し。何を以て免ることを得ん、と。昭十三年、楚靈王を弑する爲の傳なり。○去は、起呂反。艾は、魚廢反。

爲宋災故、諸侯之大夫會、以謀歸宋財。冬、十月、叔孫豹會晉趙武・齊公孫蠆・宋向戌・衛北宮佗・ 佗、北宮括之子。○佗、音沱。
【読み】
宋の災の爲の故に、諸侯の大夫會して、以て宋に財を歸[おく]らんことを謀る。冬、十月、叔孫豹晉の趙武・齊の公孫蠆[こうそんたい]・宋の向戌[しょうじゅつ]・衛の北宮佗・ 佗は、北宮括の子。○佗は、音沱。

鄭罕虎、虎、子皮。
【読み】
鄭の罕虎と、虎は、子皮。

及小邾之大夫、會于澶淵。旣而無歸於宋。故不書其人。
【読み】
小邾の大夫とに會して、澶淵に會す。旣にして宋に歸ること無し。故に其の人を書さず。

君子曰、信其不可不愼乎。澶淵之會、卿不書、不信也。夫諸侯之上卿、會而不信、寵名皆弃。不信之不可也如是。寵、謂族也。
【読み】
君子曰く、信は其れ愼まずんばある可からざるや。澶淵の會に、卿書さざるは、不信なればなり。夫れ諸侯の上卿も、會して不信なれば、寵名皆弃てらる。不信の不可なるや是の如し。寵は、族を謂うなり。
*頭注に「一讀、夫字屬上句。」とある。

詩曰、文王陟降、在帝左右、信之謂也。詩、大雅。言文王所以能上接天、下接人、動順帝者、唯以信。
【読み】
詩に曰く、文王陟降して、帝の左右に在りとは、信を謂うなり。詩は、大雅。言うこころは、文王能く上天に接わり、下人に接わり、動きて帝に順う所以の者は、唯信を以てなり。

又曰、淑愼爾止、無載爾僞、不信之謂也。逸詩也。言當善愼舉止、無載行詐僞。
【読み】
又曰く、淑[よ]く爾[なんじ]の止[ふるまい]を愼みて、爾の僞りを載[おこな]うこと無かれとは、不信を謂うなり。逸詩なり。言うこころは、當に善く舉止を愼みて、詐僞を載行すること無かるべし。

書曰某人某人會于澶淵、宋災故、尤之也。傳云、旣而無歸。所以釋諸侯大夫之不書也。又云、宋災故尤之、所以釋向戌之幷貶也。戌爲正卿、深致火災、燒殺其夫人、未聞克己之意、而以求財合諸侯。故與不歸財者同文。
【読み】
書して某の人某の人澶淵に會す、宋の災の故なりと曰うは、之を尤めてなり。傳に云う、旣にして歸ること無し、と。諸侯の大夫の書さざるを釋く所以なり。又云う、宋の災の故に之を尤むるなりとは、向戌の幷せ貶せらるるを釋く所以なり。戌正卿として、深く火災を致し、其の夫人を燒殺して、未だ克己の意を聞かずして、財を求むるを以て諸侯を合わす。故に財を歸らざる者と文を同じくす。

不書魯大夫、諱之也。向戌旣以災求財、諸侯許而不歸。客主皆貶。君子以尊尊之義也、君親有隱。故略不書魯大夫以示例。
【読み】
魯の大夫を書さざるは、之を諱みてなり、と。向戌旣に災を以て財を求め、諸侯許して歸らず。客主皆貶せらる。君子尊を尊ぶの義を以てや、君親には隱すこと有り。故に略して魯の大夫を書せずして以て例を示す。

鄭子皮授子產政。伯有死、子皮知政。以子產賢故讓之。
【読み】
鄭の子皮子產に政を授く。伯有死して、子皮政を知る。子產が賢なるを以ての故に之に讓る。

辭曰、國小而偪、偪近大國。
【読み】
辭して曰く、國小にして偪り、大國に偪り近づく。

族大寵多。不可爲也。爲、猶治也。
【読み】
族大に寵多し。爲[おさ]む可からざるなり、と。爲は、猶治むるのごとし。

子皮曰、虎帥以聽、誰敢犯子。子善相之。國無小。言在治政。
【読み】
子皮曰く、虎帥いて以て聽かば、誰か敢えて子を犯さん。子善く之を相けよ。國小なること無し。言うこころは、政を治むるに在り。

小能事大、國乃寬。爲大所恤故也。
【読み】
小も能く大に事うれば、國乃ち寬なり、と。大の爲に恤れまるる故なり。

子產爲政。有事伯石。賂與之邑。伯石、公孫段。有事、欲使之。
【読み】
子產政を爲す。伯石に事有り。賂いて之に邑を與う。伯石は、公孫段。事有りとは、之を使わんと欲するなり。

子大叔曰、國皆其國也。奚獨賂焉。言鄭大夫共憂鄭國事。何爲獨賂之。
【読み】
子大叔曰く、國は皆其の國なり。奚ぞ獨り賂わん、と。言うこころは、鄭の大夫共に鄭國の事を憂う。何爲れぞ獨り之を賂わん。

子產曰、無欲實難。言人不能無欲。
【読み】
子產曰く、欲無きは實に難し。言うこころは、人欲無きこと能わず。

皆得其欲、以從其事、而要其成、非我有成、其在人乎。言成猶在我。非在他也。○要、一遙反。
【読み】
皆其の欲を得て、以て其の事に從いて、其の成るを要せば、我が成ること有るに非ずして、其れ人に在らんや。言うこころは、成るは猶我に在り。他に在るに非ざるなり。○要は、一遙反。

何愛於邑。邑將焉往。言猶在國。
【読み】
何ぞ邑を愛[おし]まん。邑將に焉に往かんとす、と。言うこころは、猶國に在り。

子大叔曰、若四國何。恐爲四鄰所笑。
【読み】
子大叔曰く、四國を若何、と。恐らくは四鄰の爲に笑われん。

子產曰、非相違也、而相從也。言賂以邑、欲爲和順。
【読み】
子產曰く、相違わんとに非ずして、相從わんとなり。言うこころは、賂うに邑を以てするは、和順を爲さんと欲してなり。

四國何尤焉。鄭書有之、鄭國史書。
【読み】
四國何ぞ尤めん。鄭書に之れ有り、鄭國の史書。

曰、安定國家、必大焉先。先和大族、而後國家安。
【読み】
曰く、國家を安定するは、必ず大を焉れ先にす、と。先ず大族を和して、後に國家安し。

姑先安大、以待其所歸。要其成也。
【読み】
姑く先ず大を安んじて、以て其の歸する所を待たん、と。其の成るを要するなり。

旣伯石懼而歸邑。卒與之。卒、終也。
【読み】
旣にして伯石懼れて邑を歸す。卒に之に與う。卒は、終になり。

伯有旣死。使大史命伯石爲卿。辭。大史退、則請命焉。請大史更命己。
【読み】
伯有旣に死す。大史をして伯石に命じて卿爲らしむ。辭す。大史退けば、則ち命ぜんことを請う。大史に更に己に命ぜんことを請う。

復命之、又辭。如是三、乃受策入拜。子產是以惡其爲人也、惡其虛飾。○三、息暫反。又如字。
【読み】
復之に命ずれば、又辭す。是の如くすること三たび、乃ち策を受けて入りて拜す。子產是を以て其の人と爲りを惡み、其の虛飾を惡む。○三は、息暫反。又字の如し。

使次己位。畏其作亂。故寵之。
【読み】
己が位に次がしむ。其の亂を作さんことを畏る。故に之を寵す。

子產使都鄙有章、國都及邊鄙、車服尊卑各有分部。○分、扶運反。
【読み】
子產都鄙をして章有り、國都と邊鄙と、車服尊卑各々分部有り。○分は、扶運反。

上下有服、公卿大夫、服不相踰。
【読み】
上下服有り、公卿大夫、服相踰えず。

田有封洫、封、疆也。洫、溝也。
【読み】
田に封洫[ほうきょく]有り、封は、疆なり。洫は、溝なり。

廬井有伍。廬、舍也。九夫爲井。使五家相保。
【読み】
廬井に伍有らしむ。廬は、舍なり。九夫を井と爲す。五家をして相保せしむ。

大人之忠儉者、謂卿大夫。
【読み】
大人の忠儉なる者は、卿大夫を謂う。

從而與之、泰侈者、因而斃之。因其有罪而斃踣之。○踣、蒲北反。
【読み】
從いて之に與え、泰侈なる者は、因りて之を斃す。其の罪有るに因りて之を斃踣[へいぼく]す。○踣は、蒲北反。

豐卷將祭。請田焉。弗許。田、獵也。○卷、眷勉反。
【読み】
豐卷將に祭らんとす。田[かり]せんと請う。許さず。田は、獵なり。○卷は、眷勉反。

曰、唯君用鮮。鮮、野獸。
【読み】
曰く、唯君のみ鮮を用ゆ。鮮は、野獸。

衆給而已。衆臣祭、以芻豢爲足。
【読み】
衆は給するのみ、と。衆臣の祭は、芻豢[すうかん]を以て足ると爲す。

子張怒、子張、豐卷。
【読み】
子張怒り、子張は、豐卷。

退而徵役。召兵欲攻子產。
【読み】
退きて役を徵す。兵を召して子產を攻めんと欲す。

子產奔晉。子皮止之、而逐豐卷。豐卷奔晉。子產請其田里、請於公不沒入。
【読み】
子產晉に奔らんとす。子皮之を止めて、豐卷を逐う。豐卷晉に奔る。子產其の田里を請いて、公に請いて沒入せず。

三年而復之、反其田里及其入焉。田里所收入。
【読み】
三年にして之を復し、其の田里と其の入とを反す。田里の收入する所。

從政一年、輿人誦之曰、取我衣冠而褚之、褚、畜也。奢侈者畏法。故畜藏。○褚、音貯。畜、音蓄。
【読み】
政に從うこと一年、輿人之を誦して曰く、我が衣冠を取りて之を褚[たくわ]えしめ、褚[ちょ]は、畜うなり。奢侈の者法を畏る。故に畜藏す。○褚は、音貯。畜は、音蓄。

取我田疇而伍之。孰殺子產。吾其與之。竝畔爲疇。○竝、蒲杏反。
【読み】
我が田疇を取りて之を伍にす。孰か子產を殺さん。吾れ其れ之に與せん、と。畔を竝ぶるを疇と爲す。○竝は、蒲杏反。

及三年、又誦之曰、我有子弟、子產誨之。我有田疇、子產殖之。殖、生也。○殖、時力反。又是吏反。
【読み】
三年に及び、又之を誦して曰く、我に子弟有り、子產之を誨ゆ。我に田疇有り、子產之を殖す。殖は、生ずるなり。○殖は、時力反。又是吏反。

子產而死、誰其嗣之。嗣、續也。傳言鄭所以興。
【読み】
子產にして死せば、誰か其れ之を嗣がん、と。嗣は、續ぐなり。傳鄭の興る所以を言う。


〔經〕三十有一年、春、王正月。夏、六月、辛巳、公薨于楚宮。公不居先君之路寢、而安所樂、失其所也。○樂、音洛。一音岳。一五敎反。
【読み】
〔經〕三十有一年、春、王の正月。夏、六月、辛巳[かのと・み]、公楚宮に薨ず。公先君の路寢に居らずして、樂しむ所に安んじて、其の所を失えり。○樂は、音洛。一に音岳。一に五敎反。

秋、九月、癸巳、子野卒。不書葬、未成君。
【読み】
秋、九月、癸巳[みずのと・み]、子野卒す。葬を書さざるは、未だ君と成らざればなり。

己亥、仲孫羯卒。冬、十月、滕子來會葬。諸侯會葬、非禮。
【読み】
己亥[つちのと・い]、仲孫羯[ちゅうそんけつ]卒す。冬、十月、滕子來りて葬に會す。諸侯葬に會するは、禮に非ず。

癸酉、葬我君襄公。十有一月、莒人弑其君密州。不稱弑者主名、君無道也。
【読み】
癸酉[みずのと・とり]、我が君襄公を葬る。十有一月、莒人其の君密州を弑す。弑する者の主名を稱せざるは、君無道なればなり。

〔傳〕三十一年、春、王正月、穆叔至自會。澶淵會還。
【読み】
〔傳〕三十一年、春、王の正月、穆叔會より至る。澶淵の會より還る。

見孟孝伯。語之曰、趙孟將死矣。其語偸、不似民主。偸、苟且。○語之、魚據反。下語諸同。
【読み】
孟孝伯を見る。之に語りて曰く、趙孟は將に死せんとす。其の語偸[とう]にして、民主に似ず。偸は、苟且[かりそめ]なり。○語之は、魚據反。下の語諸も同じ。

且年未盈五十、而諄諄焉如八九十者。弗能久矣。成二年、戰於鞌、趙朔已死。於是趙文子始生。至襄三十年、會澶淵。蓋年四十七八。故言未盈五十。○諄、之閏反。又之純反。
【読み】
且つ年未だ五十に盈たずして、諄諄焉たること八九十の者の如し。久しきこと能わじ。成二年、鞌[あん]に戰うとき、趙朔已に死す。是に於て趙文子始めて生まる。襄三十年、澶淵に會するに至る。蓋し年四十七八ならん。故に未だ五十に盈たずと言う。○諄は、之閏反。又之純反。

若趙孟死、爲政者其韓子乎。韓子、韓起。
【読み】
若し趙孟死せば、政をせん者は其れ韓子か。韓子は、韓起。

吾子盍與季孫言之。可以樹善。君子也。言韓起有君子之德。今方知政。可素往立善。
【読み】
吾子盍ぞ季孫と之を言わざる。以て善を樹[た]つ可し。君子なり。言うこころは、韓起は君子の德有り。今方に政を知らんとす。素[あらかじ]め往きて善を立つ可し。

晉君將失政矣。若不樹焉使早備魯、使韓子早爲魯備。
【読み】
晉君は將に政を失わんとす。若し樹てて早く魯に備えしめずして、韓子をして早く魯の備えを爲さしむ。

旣而政在大夫、韓子懦弱、大夫多貪、求欲無厭。齊・楚未足與也、魯其懼哉。孝伯曰、人生幾何。誰能無偸。朝不及夕。將安用樹。穆叔出而告人曰、孟孫將死矣。吾語諸趙孟之偸也、而又甚焉。言朝不及夕、偸之甚也。○懦、乃亂反。厭、於鹽反。
【読み】
旣にして政大夫に在らば、韓子は懦弱、大夫は多貪なれば、求欲厭くこと無からん。齊・楚は未だ與するに足らざれば、魯其れ懼れんかな、と。孝伯曰く、人生幾何ぞ。誰か能く偸すること無からん。朝夕に及ばず。將[はた]安ぞ樹つることを用いん、と。穆叔出でて人に告げて曰く、孟孫將に死せんとす。吾れ諸に趙孟の偸を語れば、又焉より甚だし、と。朝夕に及ばずと言うは、偸の甚だしきなり。○懦は、乃亂反。厭は、於鹽反。

又與季孫語晉故。如與孟孫言。
【読み】
又季孫と晉の故[こと]を語る。孟孫と言うが如し。

季孫不從。
【読み】
季孫從わず。

及趙文子卒、在昭元年。
【読み】
趙文子が卒するに及びて、昭元年に在り。

晉公室卑、政在侈家。韓宣子爲政、不能圖諸侯。魯不堪晉求、讒慝弘多。是以有平丘之會。平丘會、在昭十三年。晉人執季孫意如。
【読み】
晉の公室卑しくして、政侈家に在り。韓宣子政を爲して、諸侯を圖ること能わず。魯晉の求めに堪えず、讒慝弘多なり。是を以て平丘の會有り。平丘の會は、昭十三年に在り。晉人季孫意如を執う。

齊子尾害閭丘嬰、欲殺之、使帥師以伐陽州。陽州、魯地。
【読み】
齊の子尾閭丘嬰を害として、之を殺さんと欲し、師を帥いて以て陽州を伐たしむ。陽州は、魯の地。

我問師故。魯以師往問齊何故伐我。
【読み】
我れ師の故を問う。魯師を以て往きて齊何の故に我を伐つと問う。

夏、五月、子尾殺閭丘嬰、以說于我師。言伐魯者嬰所爲也。伐陽州不書、不成伐。○說、如字。
【読み】
夏、五月、子尾閭丘嬰を殺して、以て我が師に說く。魯を伐つは嬰の所爲なりと言う。陽州を伐つこと書さざるは、伐を成さざればなり。○說は、字の如し。

工僂灑・渻竈・孔虺・賈寅出奔莒。四子、嬰之黨。○僂、力侯反。灑、所蟹反。渻、生領反。虺、許鬼反。
【読み】
工僂灑[こうろうさい]・渻竈[せいそう]・孔虺[こうき]・賈寅[かいん]出でて莒に奔る。四子は、嬰の黨。○僂は、力侯反。灑は、所蟹反。渻は、生領反。虺は、許鬼反。

出羣公子。爲昭十年、欒高之難、復羣公子起本。
【読み】
羣公子を出だす。昭十年、欒高の難に、羣公子を復す爲の起本なり。

公作楚宮。適楚好其宮、歸而作之。
【読み】
公楚宮を作る。楚に適きて其の宮を好み、歸りて之を作る。

穆叔曰、大誓云、民之所欲、天必從之。今尙書大誓亦無此文。故諸儒疑之。
【読み】
穆叔曰く、大誓に云う、民の欲する所は、天必ず之に從う、と。今尙書の大誓に亦此の文無し。故に諸儒之を疑う。

君欲楚也夫。故作其宮。若不復適楚、必死是宮也。六月、辛巳、公薨于楚宮。
【読み】
君楚を欲するかな。故に其の宮を作れり。若し復楚に適かずんば、必ず是の宮に死せん、と。六月、辛巳、公楚宮に薨ず。

叔仲帶竊其拱璧、拱璧、公大璧。
【読み】
叔仲帶其の拱璧を竊みて、拱璧は、公の大璧。

以與御人、納諸其懷、而從取之。由是得罪。得罪、謂魯人薄之。故子孫不得志於魯。
【読み】
以て御人に與え、諸を其の懷に納れて、從いて之を取れり。是に由りて罪を得たり。罪を得たりとは、魯人之を薄んず。故に子孫志を魯に得ざるを謂う。

立胡女敬歸之子子野。胡、歸姓之國。敬歸、襄公妾。
【読み】
胡の女敬歸の子子野を立つ。胡は、歸姓の國。敬歸は、襄公の妾。

次于季氏。秋、九月、癸巳、卒。毀也。過哀毀瘠、以致滅性。○瘠、在亦反。
【読み】
季氏に次[やど]る。秋、九月、癸巳、卒す。毀[やつ]れたるなり。哀に過ぎて毀瘠し、以て性を滅ぼすことを致す。○瘠は、在亦反。

己亥、孟孝伯卒。終穆叔言。
【読み】
己亥、孟孝伯卒す。穆叔が言を終わる。

立敬歸之娣齊歸之子公子裯。齊、謚。裯、昭公名。○裯、直由反。
【読み】
敬歸の娣齊歸の子公子裯[ちゅう]を立つ。齊は、謚。裯は、昭公の名。○裯は、直由反。

穆叔不欲、曰、大子死、有母弟則立之。無則立長。立庶子則以年。
【読み】
穆叔欲せずして、曰く、大子死するとき、母弟有れば則ち之を立つ。無ければ則ち長を立つ。庶子を立つるには則ち年を以てす。

年鈞擇賢、義鈞則卜。古之道也。先人事、後卜筮也。義鈞謂賢等。
【読み】
年鈞しければ賢を擇び、義鈞しければ則ち卜す。古の道なり。人事を先にして、卜筮を後にするなり。義鈞しきは賢等しきを謂う。

非適嗣、何必娣之子。言子野非適嗣。○適、丁歷反。
【読み】
適嗣に非ざれば、何ぞ娣の子を必とせん。言うこころは、子野は適嗣に非ず。○適は、丁歷反。

且是人也、居喪而不哀、在慼而有嘉容。是謂不度。不度之人、鮮不爲患。若果立之、必爲季氏憂。武子不聽。卒立之。比及葬、三易衰、衰衽如故衰。言其嬉戲無度。○比、必利反。三、如字。又息暫反。衰、七雷反。
【読み】
且つ是の人や、喪に居て哀しまず、慼[うれ]えに在りて嘉容有り。是を不度と謂う。不度の人は、患えを爲さざること鮮し。若し果たして之を立てば、必ず季氏の憂えを爲さん、と。武子聽かず。卒に之を立つ。葬に及ぶ比[ころ]までに、三たび衰を易え、衰衽故衰の如くなりき。言うこころは、其の嬉戲度無し。○比は、必利反。三は、字の如し。又息暫反。衰は、七雷反。

於是昭公十九年矣。猶有童心。君子是以知其不能終也。爲昭二十五年、公孫於齊傳。
【読み】
是に於て昭公十九年なり。猶童心有り。君子是を以て其の終わりを能くせざるを知れり。昭二十五年、公齊に孫[のが]るる爲の傳なり。

冬、十月、滕成公來會葬。惰而多涕。惰、不敬也。○涕、他禮反。
【読み】
冬、十月、滕の成公來りて葬に會す。惰[おこた]りて涕多し。惰は、不敬なり。○涕は、他禮反。

子服惠伯曰、滕君將死矣。怠於其位、而哀已甚。兆於死所矣。有死兆。
【読み】
子服惠伯曰く、滕君は將に死せんとす。其の位に怠りて、哀しむこと已甚だし。死所に兆あり。死兆有り。

能無從乎。爲昭三年、滕子卒傳。
【読み】
能く從うこと無からんや、と。昭三年、滕子卒する爲の傳なり。

癸酉、葬襄公。
【読み】
癸酉、襄公を葬る。

公薨之月、子產相鄭伯以如晉。晉侯以我喪故、未之見也。子產使盡壞其館之垣而納車馬焉。士文伯讓之曰、敝邑以政刑之不脩、寇盜充斥、充、滿。斥、見。言其多。○壞、音怪。下皆同。斥見、賢遍反。下同。
【読み】
公薨ずるの月、子產鄭伯を相けて以て晉に如く。晉侯我が喪を以ての故に、未だ之を見ず。子產盡く其の館の垣を壞りて車馬を納れしむ。士文伯之を讓[せ]めて曰く、敝邑政刑の脩まらずして、寇盜充斥し、充は、滿つる。斥は、見る。其の多きを言う。○壞は、音怪。下も皆同じ。斥見は、賢遍反。下も同じ。

無若諸侯之屬辱在寡君者何、是以令吏人完客所館、館、舍也。
【読み】
諸侯の屬の寡君に辱在する者を何若ともすること無きを以て、是を以て吏人をして客の館する所を完くし、館は、舍るなり。

高其閈閎、閎、門也。○閈、戶旦反。閭也。里門曰閈。閎、獲耕反。衡門謂之閎。
【読み】
其の閈閎[かんこう]を高くし、閎は、門なり。○閈は、戶旦反。閭なり。里門を閈と曰う。閎は、獲耕反。衡門之を閎と謂う。

厚其牆垣、以無憂客使、無令客使憂寇盜。○使、所吏反。
【読み】
其の牆垣を厚くして、以て客使を憂えしむること無からしめんとするに、客使をして寇盜を憂えしむること無し。○使は、所吏反。

今吾子壞之。雖從者能戒、其若異客何。以敝邑之爲盟主、繕完葺牆、葺、覆也。○從、才用反。下同。
【読み】
今吾子之を壞れり。從者は能く戒しむと雖も、其れ異客を若何。敝邑の盟主爲るを以て、繕完して牆を葺いて、葺は、覆うなり。○從は、才用反。下も同じ。

以待賓客、若皆毀之、其何以共命。寡君使匃請命。請問毀垣之命。○共、音恭。匃、古害反。士文伯名也。
【読み】
以て賓客を待つに、若し皆之を毀たれば、其れ何を以て命に共せん。寡君匃[かい]をして命を請わしむ、と。垣を毀つの命を請問す。○共は、音恭。匃は、古害反。士文伯の名なり。

對曰、以敝邑褊小、介於大國、介、閒也。
【読み】
對えて曰く、敝邑の褊小にして、大國に介[はさ]まり、介は、閒なり。

誅求無時、誅、責也。
【読み】
誅求時無きを以て、誅は、責むるなり。

是以不敢寧居、悉索敝賦、以來會時事、隨時來朝會。○索、所白反。
【読み】
是を以て敢えて寧居せずして、悉く敝賦を索[つ]くして、以て來り時事に會せしに、時に隨い來りて朝會す。○索は、所白反。

逢執事之不閒、而未得見、又不獲聞命、未知見時。不敢輸幣、亦不敢暴露。其輸之、則君之府實也。非薦陳之、不敢輸也。薦陳、猶獻見也。○閒、音閑。暴、步卜反。下同。
【読み】
執事の閒[ひま]あらざるに逢いて、未だ見ることを得ず、又命を聞くことを獲ず、未だ見る時を知らず。敢えて幣を輸[いた]さず、亦敢えて暴露せず。其れ之を輸さんとすれば、則ち君の府實てり。之を薦陳するに非ざれば、敢えて輸されざるなり。薦陳は、猶獻見のごとし。○閒は、音閑。暴は、步卜反。下も同じ。

其暴露之、則恐燥濕之不時、而朽蠹以重敝邑之罪。
【読み】
其れ之を暴露せんとすれば、則ち恐れらくは燥濕の時ならずして、朽蠹[きゅうと]して以て敝邑の罪を重ねんことを。

僑聞、文公之爲盟主也、僑、子產名。文公、晉重耳。○燥、素早反。
【読み】
僑聞く、文公の盟主爲りしや、僑は、子產の名。文公は、晉の重耳。○燥は、素早反。

宮室卑庳、無觀臺榭、以崇大諸侯之館、館如公寢、庫廐繕脩、司空以時平易道路、易、治也。○庳、音婢。亦音卑。觀、古亂反。
【読み】
宮室卑庳[ひひ]に、觀臺榭[かんたいしゃ]無くして、以て諸侯の館を崇大にして、館公の寢の如く、庫廐繕脩し、司空時を以て道路を平易にし、易は、治むるなり。○庳は、音婢。亦音卑。觀は、古亂反。

圬人以時塓館宮室、圬人、塗者。塓、塗也。○圬、音烏。塓、莫歷反。
【読み】
圬人[おじん]時を以て館宮室を塓[ぬ]り、圬人は、塗る者。塓[へき]は、塗るなり。○圬は、音烏。塓は、莫歷反。

諸侯賓至、甸設庭燎、庭燎、設火於庭。
【読み】
諸侯の賓至れば、甸[てん]庭燎を設け、庭燎は、火を庭に設くるなり。

僕人巡宮、巡宮、行夜。○行、下孟反。下巡行同。
【読み】
僕人宮を巡り、巡宮は、夜を行[めぐ]るなり。○行は、下孟反。下の巡行も同じ。

車馬有所、有所處。
【読み】
車馬所有り、所處有り。

賓從有代、代客役。
【読み】
賓從代わること有り、客の役に代わる。

巾車脂轄、巾車、主車之官。
【読み】
巾車轄に脂さし、巾車は、車を主るの官。

隸人牧圉、各瞻其事、瞻視客所當得。
【読み】
隸人牧圉、各々其の事を瞻[み]、客の當に得べき所を瞻視す。

百官之屬、各展其物、展、陳也。謂羣官各陳其物以待賓。
【読み】
百官の屬、各々其の物を展ね、展は、陳ぬるなり。羣官各々其の物を陳ねて以て賓を待つを謂う。

公不留賓、而亦無廢事、賓得速去則事不廢。
【読み】
公賓を留めずして、亦廢事無く、賓速やかに去ることを得れども則ち事廢せず。

憂樂同之、事則巡之、巡、行也。
【読み】
憂樂之を同じくし、事あれば則ち之を巡り、巡は、行るなり。

敎其不知、而恤其不足、賓至如歸。無寧菑患。言見遇如此。寧當復有菑患邪。無寧、寧也。○菑、音災。
【読み】
其の知らざるを敎えて、其の足らざるを恤[めぐ]み、賓至りて歸るが如し。無寧[むし]ろ菑患[さいかん]あらんや。言うこころは、遇せらること此の如し。寧ろ當に復菑患有らんや。無寧は、寧ろなり。○菑は、音災。

不畏寇盜、而亦不患燥濕。
【読み】
寇盜を畏れずして、亦燥濕を患えじ。

今銅鞮之宮數里、銅鞮、晉離宮。○鞮、丁兮反。數、所主反。
【読み】
今銅鞮の宮は數里にして、銅鞮は、晉の離宮。○鞮は、丁兮反。數は、所主反。

而諸侯舍於隸人。舍、如隸人舍。
【読み】
諸侯の舍は隸人の於[ごと]し。舍は、隸人の舍の如し。

門不容車、而不可踰越。門庭之内迫迮、又有牆垣之限。○迮、側百反。
【読み】
門車を容れずして、踰越す可からず。門庭の内迫迮[はくさく]にして、又牆垣の限有り。○迮は、側百反。

盜賊公行、而夭癘不戒。癘、猶災也。言水潦無時。
【読み】
盜賊公行して、夭癘戒めず。癘は、猶災いのごとし。言うこころは、水潦[すいろう]時無し。

賓見無時、命不可知。若又勿壞、是無所藏幣以重罪也。敢請執事將何所命之。問晉命己所止之宜。○見、賢遍反。
【読み】
賓見ること時無く、命知る可からず。若し又壞ること勿くば、是れ幣を藏むる所無くして以て罪を重ねん。敢えて請う、執事將に何れの所をか之を命ぜんとする。晉己に止まらん所の宜しきを命ぜんことを問う。○見は、賢遍反。

雖君之有魯喪、亦敝邑之憂也。言鄭與魯、亦有同姓之憂。
【読み】
君に魯の喪有りと雖も、亦敝邑の憂えなり。言うこころは、鄭と魯とは、亦同姓の憂え有り。

若獲薦幣、薦、進也。
【読み】
若し幣を薦むるを獲ば、薦は、進むなり。

脩垣而行。行、去也。
【読み】
垣を脩めて行[さ]らん。行は、去るなり。

君之惠也。敢憚勤勞。
【読み】
君の惠みなり。敢えて勤勞を憚らんや、と。

文伯復命。反命於晉君。
【読み】
文伯復命す。晉君に反命す。

趙文子曰、信。信如子產言。
【読み】
趙文子曰く、信なり。信に子產の言の如し。

我實不德、而以隸人之垣以贏諸侯。贏、受也。○贏、音盈。
【読み】
我れ實に不德にして、隸人の垣を以て以て諸侯を贏[う]く。贏[えい]は、受くなり。○贏は、音盈。

是吾罪也。使士文伯謝不敏焉。晉侯見鄭伯有加禮。禮加敬。
【読み】
是れ吾が罪なり、と。士文伯をして不敏を謝せしむ。晉侯鄭伯を見て禮を加うること有り。禮敬を加う。

厚其宴好而歸之。乃築諸侯之館。
【読み】
其の宴好を厚くして之を歸す。乃ち諸侯の館を築く。

叔向曰、辭之不可以已也如是夫。子產有辭、諸侯賴之。若之何其釋辭也。詩曰、辭之輯矣、民之協矣。辭之繹矣、民之莫矣。詩、大雅。言辭輯睦、則民協同、辭說繹、則民安定。莫、猶定也。
【読み】
叔向[しゅくきょう]曰く、辭の以て已む可からざるや是の如きか。子產辭有り、諸侯之に賴れり。之を若何ぞ其れ辭を釋てん。詩に曰く、辭の輯[やわ]らげるは、民之れ協えり。辭の繹[よろこ]べるは、民之れ莫[さだ]まれり、と。詩は、大雅。言うこころは、辭輯睦すれば、則ち民協同し、辭說繹すれば、則ち民安定す。莫は、猶定まるのごとし。

其知之矣。謂詩人知辭之有益。
【読み】
其れ之を知れり、と。詩人辭の益有るを知るを謂う。

鄭子皮使印段如楚、以適晉告。禮也。得事大國之禮。
【読み】
鄭の子皮印段をして楚に如かしめ、晉に適くを以て告ぐ。禮なり。大國に事うるの禮を得たり。

莒犂比公生去疾及展輿。犂比、莒子密州之號。○比、音毗。去、起呂反。
【読み】
莒の犂比公[れいひこう]去疾と展輿とを生む。犂比は、莒子密州の號。○比は、音毗。去は、起呂反。

旣立展輿、立以爲世子。
【読み】
旣にして展輿を立て、立てて以て世子と爲す。

又廢之。犂比公虐。國人患之。十一月、展輿因國人以攻莒子、弑之、乃立。展輿立爲君。
【読み】
又之を廢す。犂比公虐なり。國人之を患う。十一月、展輿國人に因りて以て莒子を攻めて、之を弑し、乃ち立つ。展輿立ちて君と爲る。

去疾奔齊。齊出也。母、齊女也。
【読み】
去疾齊に奔る。齊の出なればなり。母は、齊の女なり。

展輿吳出也。爲明年、奔吳傳。
【読み】
展輿は吳の出なり。明年、吳に奔る爲の傳なり。

書曰莒人弑其君買朱鉏、買朱鉏、密州之字。○鉏、仕居反。
【読み】
書して莒人其の君買朱鉏を弑すと曰うは、買朱鉏は、密州の字。○鉏は、仕居反。

言罪之在也。罪在鉏也。傳始例申明君臣書弑。今者父子。故復重明例。○復、扶又反。
【読み】
罪の在るを言うなり。罪鉏に在るなり。傳始めの例は君臣弑するを書すを申明す。今は父子なり。故に復重ねて例を明かす。○復は、扶又反。

吳子使屈狐庸聘于晉。狐庸、巫臣之子也。成七年、適吳爲行人。○屈、居勿反。
【読み】
吳子屈狐庸をして晉に聘せしむ。狐庸は、巫臣の子なり。成七年、吳に適きて行人と爲る。○屈は、居勿反。

通路也。通吳・晉之路。
【読み】
路を通ずるなり。吳・晉の路を通ず。

趙文子問焉曰、延州來季子、其果立乎。延州來、季札邑。
【読み】
趙文子問いて曰く、延州來の季子は、其れ果たして立たんか。延州來は、季札の邑。

巢隕諸樊、在二十五年。
【読み】
巢諸樊を隕し、二十五年に在り。

閽戕戴吳。在二十九年。戴吳、餘祭。○祭、側界反。
【読み】
閽戴吳を戕[ころ]せり。二十九年に在り。戴吳は、餘祭。○祭は、側界反。

天似啓之。何如。對曰、不立。是二王之命也。非啓季子也。若天所啓、其在今嗣君乎。嗣君、謂夷昧。
【読み】
天之を啓くに似たり。何如、と。對えて曰く、立たじ。是れ二王の命なり。季子を啓くに非ざるなり。若し天の啓く所は、其れ今の嗣君に在らんか。嗣君は、夷昧を謂う。

甚德而度。德不失民、民歸德。
【読み】
甚だ德ありて度あり。德は民を失わず、民は德に歸す。

度不失事。審事情。
【読み】
度は事を失わず。事情を審らかにす。

民親而事有序。其天所啓也。有吳國者、必此君之子孫實終之。季子守節者也。雖有國不立。言其三兄雖欲傳國與之、終不肯立。
【読み】
民親しみて事序有り。其れ天の啓く所なり。吳國を有つ者は、必ず此の君の子孫實に之を終えん。季子は節を守る者なり。國を有つと雖も立たざらん、と。言うこころは、其の三兄國を傳えて之を與えんと欲すと雖も、終に立つことを肯わず。

十二月、北宮文子相衛襄公以如楚。文子、北宮佗。襄公、獻公子。
【読み】
十二月、北宮文子衛の襄公を相けて以て楚に如く。文子は、北宮佗。襄公は、獻公の子。

宋之盟故也。晉・楚之從、交相見也。
【読み】
宋の盟の故なり。晉・楚の從、交々相見えんとするなり。

過鄭。印段迋勞于棐林。如聘禮而以勞辭。用聘禮、而用郊勞之辭。○過、古禾反。迋、于況反。勞、力報反。棐、芳尾反。
【読み】
鄭を過ぐ。印段迋[ゆ]きて棐林[ひりん]に勞う。聘禮の如くにして勞辭を以てす。聘禮を用いて、郊勞の辭を用ゆ。○過は、古禾反。迋は、于況反。勞は、力報反。棐は、芳尾反。

文子入聘。報印段。
【読み】
文子入りて聘す。印段に報ゆ。

子羽爲行人。馮簡子與子大叔逆客。逆文子。
【読み】
子羽行人爲り。馮簡子と子大叔と客を逆[むか]う。文子を逆う。

事畢而出。言於衛侯曰、鄭有禮。其數世之福也。其無大國之討乎。詩云、誰能執熱、逝不以濯。詩、大雅。濯、以水濯手。○數、所主反。
【読み】
事畢わりて出づ。衛侯に言いて曰く、鄭禮有り。其れ數世の福なり。其れ大國の討無からんか。詩に云う、誰か能く熱を執りて、逝[ゆ]きて以て濯[あら]わざらん、と。詩は、大雅。濯は、水を以て手を濯う。○數は、所主反。

禮之於政、如熱之有濯也。濯以救熱、何患之有。此以上文子辭。
【読み】
禮の政に於ること、熱の濯うこと有るが如し。濯いて以て熱を救わば、何の患えか之れ有らん、と。此の以上は文子の辭。

子產之從政也、擇能而使之。馮簡子能斷大事、子大叔美秀而文、其貌美、其才秀。○斷、丁亂反。
【読み】
子產の政に從うや、能を擇びて之を使う。馮簡子は能く大事を斷じ、子大叔は美秀にして文あり、其の貌美、其の才秀。○斷は、丁亂反。

公孫揮能知四國之爲、知諸侯所欲爲。
【読み】
公孫揮は能く四國の爲[しわざ]を知りて、諸侯爲さんと欲する所を知る。

而辨於其大夫之族姓・班位・貴賤・能否、而又善爲辭令。裨諶能謀。謀於野則獲、得所謀也。
【読み】
其の大夫の族姓・班位・貴賤・能否を辨じて、又善く辭令を爲せり。裨諶[ひじん]は能く謀る。野に謀れば則ち獲、謀る所を得るなり。

謀於邑則否。此才性之蔽。
【読み】
邑に謀れば則ち否らず。此れ才性の蔽なり。

鄭國將有諸侯之事、子產乃問四國之爲於子羽、且使多爲辭令、與裨諶乘以適野、使謀可否、而告馮簡子使斷之。事成、乃授子大叔使行之、以應對賓客。是以鮮有敗事。北宮文子所謂有禮也。傳跡子產行事、以明北宮文子之言。○乘、去聲。
【読み】
鄭國將に諸侯の事有らんとすれば、子產乃ち四國の爲を子羽に問い、且多く辭令を爲らしめ、裨諶と乘じて以て野に適きて、可否を謀らしめて、馮簡子に告げて之を斷ぜしむ。事成れば、乃ち子大叔に授けて之を行わしめて、以て賓客に應對す。是を以て敗事有ること鮮し。北宮文子所謂禮有るなり。傳子產の行事を跡[たず]ねて、以て北宮文子の言を明かす。○乘は、去聲。

鄭人游于郷校、郷之學校。○校、戶孝反。鄭國謂學爲校。
【読み】
鄭人郷校に游びて、郷の學校。○校は、戶孝反。鄭國學を謂いて校とす。

以論執政。論其得失。
【読み】
以て執政を論ず。其の得失を論ず。

然明謂子產曰、毀郷校何如。患人於中謗議國政。
【読み】
然明子產に謂いて曰く、郷校を毀たば何如、と。人の中に於て國政を謗議するを患う。

子產曰、何爲。夫人朝夕退而游焉、以議執政之善否。其所善者、吾則行之。其所惡者、吾則改之。是吾師也。若之何毀之。我聞、忠善以損怨。爲忠善則怨謗息。○朝、直遙反。惡、去聲。又如字。
【読み】
子產曰く、何ぞせん。夫れ人朝夕より退きて游びて、以て執政の善否を議す。其の善とする所の者は、吾れ則ち之を行わん。其の惡とする所の者は、吾れ則ち之を改めん。是れ吾が師なり。之を若何ぞ之を毀たん。我れ聞く、忠善以て怨みを損す、と。忠善を爲せば則ち怨謗息む。○朝は、直遙反。惡は、去聲。又字の如し。

不聞作威以防怨。欲毀郷校卽作威。
【読み】
威を作して以て怨みを防ぐことを聞かざるなり。郷校を毀たんと欲するは卽ち威を作すなり。

豈不遽止。然猶防川。遽、畏懼也。
【読み】
豈遽[おそ]れて止まざらんや。然れども猶川を防ぐがごとし。遽は、畏懼なり。

大決所犯、傷人必多。吾不克救也。不如小決使道。道、通也。○道、音導。
【読み】
大決して犯す所は、人を傷ること必ず多し。吾れ救うこと克わざるなり。如かじ、小決して道[みちび]かしめんには。道は、通ずるなり。○道は、音導。

不如吾聞而藥之也。以爲己藥石。
【読み】
如かず、吾れ聞きて之を藥とせんには、と。以て己が藥石とす。

然明曰、蔑也今而後知吾子之信可事也。小人實不才。若果行此、其鄭國實賴之。豈唯二三臣。
【読み】
然明曰く、蔑や今にして後に吾子の信に事う可きことを知れり。小人實に不才なり。若し果たして此を行わば、其れ鄭國實に之に賴らん。豈唯二三臣のみならんや、と。

仲尼聞是語也、曰、以是觀之、人謂子產不仁、吾不信也。仲尼以二十二年生、於是十歲。長而後聞之。
【読み】
仲尼是の語を聞くや、曰く、是を以て之を觀れば、人子產を不仁なりと謂うとも、吾は信ぜざるなり、と。仲尼二十二年を以て生まれ、是に於て十歲なり。長じて後に之を聞けるなり。

子皮欲使尹何爲邑。爲邑大夫。
【読み】
子皮尹何をして邑を爲めしめんと欲す。邑の大夫と爲す。

子產曰、少。未知可否。尹何、年少。
【読み】
子產曰く、少[わか]し。未だ可否を知らず、と。尹何は、年少し。

子皮曰、愿。吾愛之。不吾叛也。愿、謹善也。
【読み】
子皮曰く、愿なり。吾れ之を愛す。吾に叛かじ。愿は、謹善なり。

使夫往而學焉、夫亦愈知治矣。夫、謂尹何。
【読み】
夫[かれ]をして往きて學ばしめば、夫も亦愈[こ]えて治を知らん、と。夫は、尹何を謂う。

子產曰、不可。人之愛人、求利之也。今吾子愛人、則以政。以政與之。
【読み】
子產曰く、不可なり。人の人を愛するは、之を利せんことを求むるなり。今吾子の人を愛するは、則ち政を以てす。政を以て之に與う。

猶未能操刀而使割也。其傷實多。多自傷。
【読み】
猶未だ刀を操ること能わずして割[さ]かしむるがごとし。其の傷つくこと實に多からん。多く自ら傷つく。

子之愛人、傷之而已。其誰敢求愛於子。子於鄭國、棟也。棟折榱崩。僑將厭焉。敢不盡言。子有美錦、不使人學製焉。製、裁也。○榱、所追反。厭、於甲反。又於輒反。下同。
【読み】
子の人を愛するは、之を傷つくるのみ。其れ誰か敢えて愛を子に求めん。子は鄭國に於て、棟なり。棟折るれば榱[たるき]崩る。僑將に厭[おさ]えられんとす。敢えて言を盡くさざらんや。子に美錦有らば、人をして學びながら製せしめじ。製は、裁つなり。○榱は、所追反。厭は、於甲反。又於輒反。下も同じ。

大官大邑、身之所庇也。而使學者製焉。其爲美錦、不亦多乎。言官邑之重、多於美錦。
【読み】
大官大邑は、身の庇わるる所なり。而るを學ぶ者をして製せしめんとす。其の美錦爲るより、亦多[まさ]らずや。言うこころは、官邑の重きは、美錦より多れり。

僑聞學而後入政。未聞以政學者也。若果行此、必有所害。譬如田獵。射御貫、則能獲禽。貫、習也。
【読み】
僑學びて而して後に政に入ることを聞く。未だ政を以て學ぶ者を聞かざるなり。若し果たして此を行わば、必ず害する所有らん。譬えば田獵の如し。射御貫[なら]えば、則ち能く禽を獲ん。貫は、習うなり。

若未嘗登車射御、則敗績厭覆是懼。何暇思獲。
【読み】
若し未だ嘗て車に登りて射御せざれば、則ち敗績厭覆是れ懼る。何ぞ獲ることを思うに暇あらん、と。

子皮曰、善哉。虎不敏。吾聞、君子務知大者遠者、小人務知小者近者。我小人也。衣服附在吾身、我知而愼之、大官大邑、所以庇身也、我遠而慢之。慢、易也。
【読み】
子皮曰く、善いかな。虎不敏なり。吾れ聞く、君子は務めて大なる者遠き者を知り、小人は務めて小さき者近き者を知る、と。我は小人なり。衣服の吾が身に附在するは、我れ知りて之を愼み、大官大邑は、身を庇う所以なるを、我れ遠ざけて之を慢れり。慢は、易るなり。

微子之言、吾不知也。他日我曰子爲鄭國、我爲吾家、以庇焉其可也。今而後知不足。自知謀慮不足謀其家。
【読み】
子の言微[な]かりせば、吾れ知らじ。他日に我れ子は鄭國を爲めよ、我は吾が家を爲め、以て庇われて其れ可なりと曰えり。今にして後に足らざるを知れり。自ら謀慮の其の家を謀るに足らざるを知る。

自今請、雖吾家、聽子而行。
【読み】
今より請う、吾が家と雖も、子に聽きて行わん、と。

子產曰、人心之不同、如其面焉。吾豈敢謂子面如吾面乎。抑心所謂危、亦以告也。
【読み】
子產曰く、人心の同じからざるは、其の面の如し。吾れ豈敢えて子が面吾が面の如しと謂わんや。抑々心の危うしと謂う所は、亦以て告げん、と。

子皮以爲忠。故委政焉。子產是以能爲鄭國。傳言子產之治、乃子皮之力。
【読み】
子皮以て忠なりと爲す。故に政を委ぬ。子產是を以て能く鄭國を爲めたり。傳子產の治は、乃ち子皮の力なるを言う。

衛侯在楚。北宮文子見令尹圍之威儀、言於衛侯曰、令尹似君矣。將有他志。言語・瞻視・行步不常。
【読み】
衛侯楚に在り。北宮文子令尹圍の威儀を見、衛侯に言いて曰く、令尹君に似たり。將に他志有らんとす。言語・瞻視・行步常ならず。

雖獲其志、不能終也。詩云、靡不有初。鮮克有終。終之實難。令尹其將不免。公曰、子何以知之。對曰、詩云、敬愼威儀、惟民之則。令尹無威儀。民無則焉。民所不則、以在民上、不可以終。
【読み】
其の志を獲ると雖も、終うること能わじ。詩に云う、初め有らざること靡[な]し。克く終わり有ること鮮し、と。終うるは實に難し。令尹其れ將に免れざらんとす、と。公曰く、子何を以て之を知れる、と。對えて曰く、詩に云う、威儀を敬愼すれば、惟れ民に則らる、と。令尹威儀無し。民則ること無し。民の則らざる所にして、以て民の上に在らば、以て終うる可からじ、と。

公曰、善哉。何謂威儀。對曰、有威而可畏、謂之威、有儀而可象、謂之儀。君有君之威儀、其臣畏而愛之、則而象之。故能有其國家、令聞長世。臣有臣之威儀、其下畏而愛之。故能守其官職、保族宜家。順是以下、皆如是。是以上下能相固也。衛詩曰、威儀棣棣。不可選也。詩、邶風。棣棣、富而閑也。選、數也。○鮮、息淺反。選、息袞反。數、所主反。下同。
【読み】
公曰く、善いかな。何をか威儀と謂うか、と。對えて曰く、威有りて畏る可き、之を威と謂い、儀有りて象る可き、之を儀と謂う。君に君の威儀有れば、其の臣畏れて之を愛し、則りて之に象る。故に能く其の國家を有ちて、令聞世に長し。臣に臣の威儀有れば、其の下畏れて之を愛す。故に能く其の官職を守り、族を保ち家に宜し。是に順うより以下、皆是の如し。是を以て上下能く相固し。衛の詩に曰く、威儀棣棣[ていてい]たり。選[かぞ]う可からず、と。詩は、邶風[はいふう]。棣棣は、富みて閑[なら]えるなり。選は、數うるなり。○鮮は、息淺反。選は、息袞反。數は、所主反。下も同じ。

言君臣上下、父子兄弟、内外大小、皆有威儀也。周詩曰、朋友攸攝、攝以威儀。詩、大雅。攸、所也。攝、佐也。
【読み】
君臣上下、父子兄弟、内外大小、皆威儀有るを言うなり。周の詩に曰く、朋友攝[たす]くる攸、攝くるに威儀を以てす、と。詩は、大雅。攸は、所なり。攝は、佐くるなり。

言朋友之道、必相敎訓、以威儀也。周書數文王之德、逸書。
【読み】
朋友の道は、必ず相敎訓するに、威儀を以てするを言うなり。周書に文王の德を數えて、逸書。

曰、大國畏其力、小國懷其德。言畏而愛之也。詩云、不識不知、順帝之則。言則而象之也。大雅。又言文王行事、無所斟酌、唯在則象上天。
【読み】
曰く、大國は其の力を畏れ、小國は其の德に懷く、と。畏れて之を愛するを言うなり。詩に云う、識らず知らず、帝の則に順う、と。則りて之に象るを言うなり。大雅。又言う、文王の行事、斟酌する所無く、唯上天に則象するに在り、と。

紂囚文王七年、諸侯皆從之囚、紂於是乎懼而歸之、可謂愛之。文王伐崇、再駕而降爲臣、文王聞崇德亂而伐之。三旬不降。退脩敎而復伐之、因壘而降。
【読み】
紂文王を囚うること七年、諸侯皆之に從いて囚われしかば、紂是に於て懼れて之を歸せしは、之を愛すと謂う可し。文王崇を伐てば、再駕して降りて臣と爲り、文王崇の德亂ると聞きて之を伐つ。三旬まで降らず。退きて敎えを脩めて復之を伐てば、壘に因りて降る。

蠻夷帥服、可謂畏之。文王之功、天下誦而歌舞之、可謂則之。文王之行、至今爲法、可謂象之。有威儀也。
【読み】
蠻夷帥いて服せしは、之を畏ると謂う可し。文王の功、天下誦して之を歌舞せしは、之に則ると謂う可し。文王の行、今に至るまで法と爲れるは、之に象ると謂う可し。威儀有ればなり。

故君子在位可畏、施舍可愛、進退可度、周旋可則、容止可觀、作事可法、德行可象、聲氣可樂。動作有文、言語有章、以臨其下。謂之有威儀也。○行、下孟反。下同。樂、音洛。又音岳。
【読み】
故に君子は在位畏る可く、施舍愛す可く、進退度とす可く、周旋則る可く、容止觀る可く、作事法る可く、德行象る可く、聲氣樂しむ可し。動作文有り、言語章有り、以て其の下に臨む。之を威儀有りと謂うなり、と。○行は、下孟反。下も同じ。樂は、音洛。又音岳。



經二十九年。閽。音昬。殺吳子。申志反。○今本弑。杞復。扶又反。
傳。遣使。所吏反。下同。祓殯。徐音廢。凶邪。似嗟反。桃茢。徐音例。黍穰。如羊反。熊麇。九倫反。取弁。本又作卞。魯邑。○今本亦卞。璽書。廣雅云、印謂之璽。印也。一刃反。邶風。音佩。寄寓。音遇。年少。詩照反。啓跪。其委反。以藩。○今本蕃。以貸。他代反。下同。而夏。戶雅反。注下皆放之此。協比。毗志反。相禮。息亮反。注同。司徒侈。昌氏反。又尸氏反。力斃。婢世反。爲杞。于僞反。下文爲之歌皆同。三耦。五口反。邵伯。○今本召。焦。子消反。滑。乎八反。玩好。呼報反。下好善同。毋寧。音無。而焉。於虔反。壽終。音授。○今本終作死。召南。上照反。本亦作邵。未盡。津忍反。安樂。音洛。下注和樂聲・下文樂而不荒同。邶鄘。音容。盡被。皮義反。以思。息嗣反。下注憂思同。隕滅。于敏反。有治。直吏反。泱泱。韋昭於康反。大公。音泰。將復。扶又反。下不復譏同。歌豳。彼貧反。爲成王。于僞反。王業。如字。又于況反。刪定。所姦反。去戎。一音如字。大而婉。紆阮反。易行。以豉反。注同。至矣哉。一本無矣字。倨傲。五報反。屈撓。乃孝反。不厭。於豔反。徐於瞻反。不匱。其位反。不費。芳味反。不底。丁禮反。角徵。張里反。南籥。羊略反。有感。戶暗反。本亦作憾。○今本亦憾。大平。音泰。舞韶。上昭反。本或作招。音同。溝洫。況域反。不幬。徒報反。未歇。許謁反。縞帶。徐古到反。紵衣。直呂反。蘧。其居反。史朝。如字。下文公子朝同。于幕。音莫。其萃。在醉反。宥之。音又。好以。呼報反。高豎。上主反。城緜。音綿。而寘。之豉反。旃。之然反。子皙。星歷反。裨。婢支反。湛。市林反。本亦作諶。○今本亦諶。幾何。居豈反。喪其。息浪反。驅除。一讀上丘具反。下直據反。
經三十年。佞夫。乃定反。以惡王。烏路反。下惡宋同。一音如字。共姬。音恭。注皆同。傳亦放此。耆酒。市志反。言復。扶又反。
傳。問王子圍之爲政。一本無圍字。服虔・王肅本同。○今本亦同。吾儕。仕皆反。匿其。女力反。相鄭。息亮反。方爭。爭鬭之爭。下注駟良爭同。好在。呼報反。相下。遐嫁反。食。音嗣。輿人之。音餘。年長。丁丈反。夏正。戶雅反。使走。如字。速疾之意也。服虔・王肅本作吏。云、吏不知歷者。○今本亦吏。僑如。其驕反。二畫。音獲。下同。倂三。步頂反。魯使。所吏反。可婾。他侯反。咨度。待洛反。鄭難。乃旦反。詛盟。側慮反。娶於。七住反。○今本於作于。子括。古活反。將見。賢遍反。注同。愆期。起虔反。下同。諸廷。音庭。注王廷同。嗚呼。本又作烏乎。音同。○今本烏乎。此夫。音扶。平畤。本或作疇。甘過。音戈。鞏成。九勇反。或叫。徐古弔反。于宋大廟。音泰。一本無大字。亳社。步各反。待姆。字林、亡又反。一音母。繕城。上戰反。以介。音界。卿共。音恭。窟室。口忽反。壑谷。呼洛反。而罷。皮買反。徐扶彼反。左相。息亮反。侮之。亡甫反。汰侈。音泰。弭難。彌氏反。不與。音預。下文不與同。師頡。戶結反。介于。音界。下同。襚之。音遂。股。音古。聞難。乃旦反。沈珪。音鴆。又如字。非復。扶又反。子蟜。居表反。公孫揮。許韋反。生莠。羊九反。草也。奎婁。苦圭反。訾。子斯反。東壁。音璧。玄枵。許驕反。之比。毗志反。公孫鉏。仕居反。芋尹。于付反。相楚。息亮反。下善相之同。爲宋。于僞反。北宮佗。徒何反。而偪。彼力反。在治。直吏反。焉往。於虔反。必大焉先。竝如字。復命。扶又反。受筴。初革反。○今本策。惡其。烏路反。注同。封洫。況域反。封疆。居良反。豐卷。徐居阮反。芻。初倶反。豢。音患。而褚。張呂反。■(衤+畜)勑六反。又許六反。本又作畜。同。○今本亦畜。竝畔。一音薄頂反。
經三十一年。殺者。申志反。○今本弑。
傳。 語偸。他侯反。盍與。戶臘反。民生幾何。居豈反。本或作民生無幾何。○今本民作人。朝不。如字。注同。讒慝。他得反。灑。舊所綺反。渻竈。徐本作省。所幸反。一音息幷反。一音銷。之難。乃旦反。好其。呼報反。大誓。音泰。本亦作泰。君欲楚也夫。音扶。若不復。扶又反。拱璧。九勇反。之娣。大計反。齊歸。如字。注同。立長。丁丈反。鮮不。息淺反。比及葬。一本無及字。■(衤+衰)本又作縗。亦作衰。同。○今本亦衰。衰衽。而甚反。徐而鴆反。嬉戲。許其反。惰而。徒臥反。相鄭。息亮反。使盡。子忍反。其館。古亂反。字從食。字林云、客舍也。旁或作舍非。之垣。音袁。牆也。是以令。力呈反。下注同。完客。音丸。其閈。沈云、閉也。葺牆。侵入反。徐音集。一音七入反。寡君使丐。丐、今傳本皆作此字。或作正字。釋例亦然。解者云、士文伯、是范氏之族、不應與范宣子同名、作正是也。案魯有仲嬰齊、是莊公之孫。又有公孫嬰齊、是文公之孫。仲嬰齊於公孫嬰齊爲從祖。同時同名。鄭有公孫段字子石、又云伯石印段字子石。傳又謂之二子石。然印段、則公孫段。從父兄弟之子、尙同名字。伯瑕與宣子何廢同乎。褊小。必淺反。介於。音界。注同。悉索。一音悉各反。未得見。賢遍反。下及注同。朽蠹。丁故反。蟲敗也。以重。直用反。下重罪同。僑聞。其驕反。重耳。直龍反。臺榭。音謝。本亦作謝。土高曰臺、有木曰榭。庫廐。九又反。平易。以豉反。注同。汚人。本又作圬。同。○今本亦圬。甸設。徒遍反。庭燎。力妙反。徐力遙反。一音力弔反。庭燎、大燭。巾車。如字。脂轄。戶瞎反。各瞻。之廉反。憂樂。音洛。當復。扶又反。水潦。音老。宴好。呼報反。如是夫。音扶。讀者亦以夫爲下句首。之輯。音集。又七入反。說懌。音悅。莒犂。徐力私反。或音力兮反。展輿。音餘。本又作與。音同。殺之乃立。殺音試。本或作乃自立者誤。○今本殺作弑。重明。直用反。屈狐庸。音胡。巢隕。于敏反。閽。音昬。戕。在良反。傳國。直專反。相衛。息亮反。棐林。本又作斐。以濯。直角反。以上。時掌反。裨。婢支反。諶。市林反。鮮有。息淺反。謗議。布浪反。夫人。音扶。下幷注同。朝夕。舊如字。不遽。其據反。長而。丁丈反。曰少。詩照反。注同。曰愿。音願。知治。直吏反。下注之治同。能操。七刀反。其傷多。一本作其傷實多。○今本亦同。棟也。丁弄反。榱崩。椽也。將厭。本又作壓。學製。音制。所庇。必利反。又音祕。貫則。古患反。注同。厭覆。芳服反。慢易。以豉反。令聞。音問。本亦作問。斟酌。之林反。而降。戶江反。注同。而復。扶又反。

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(引用文献)


江守孝三(Emori Kozo)